(別紙)
1998年8月5日

労働者派遣法の「法案要綱」の答申にあたっての労働者代表委員の意見


中央職業安定審議会労働者代表委員
相 馬 末 一江 夏 孝 次
津 田 淳二郎野 田 那智子
逢 見 直 人池 田  勇
久 川 博 彦

 7月15日の本審議会に「法案要綱」が諮問された際、労働側が強く指摘した実効性が伴う労働者保護措置について一部修正が図られたことは前向きに受けとめる。
 しかし、労働側が制度創設以来、10年余の派遣労働者の労働実態を踏まえ、かつ、ILO181号条約に規定されている雇用の安定や労働者保護のための抜本的な措置との対比では不十分であると言わざるを得ない。従って、労働側委員としては「答申案」については反対であることを表明する。
 なお、以下の労働側意見を「答申」に際し、添付されたい。

1 . 派遣労働者の雇用と権利の保護策の拡充措置について
(1)  派遣期間については同一の業務と特定した上で、1年を超える役務の提供をしてはならないとしていること、さらには一定のクーリング期間が設定されたことから常用代替の防止にはなる。しかし、これを守らない派遣元・派遣先事業主に対する責任が不十分のままとなっていることから派遣先での雇用責任を義務化すること。
(2)  労働条件に関する派遣先・派遣元の共同責任を明確にすることについて、省令で定めるとしているが、法に明記すべき。
 なお、「派遣元の講ずべき措置等」の30条及び31条を強行規定に改め、併せて「派遣先が講ずべき措置等」の39条に、派遣先事業主は派遣労働者の受け入れに際し、派遣労働者が派遣元との雇用契約時に就業条件などが文書で確認され、かつ、社会・雇用労働など各種保険に加入していることを確認し、条件不備の派遣労働者は受け入れてはならない旨を追加し、これを強行規定に改めること。
(3)  就業条件の明示については、これに違反した場合の処罰は法61条で定めているが、その実効性の担保策が十分でないのでこれを改善すること。
(4)  不合理な派遣契約の中途解除の禁止と派遣先の賠償責任の規定については、47条2に基づく「指針」に記載するということに止まっており不十分、派遣法に規定すること。
(5)  個人データの管理に係わる規定として「秘密の厳守」が新たに設けられたが、個人情報の保護の範囲が明記されておらず不十分である。保護すべき個人情報の範囲を明らかにするとともに、その実効性を担保するためにも「申告の不利益扱い」と同様にILO181号条約の第6条及び第14条の規定に則り、「罰則」を科すこと。
 
2 . 上記「1」の不安定雇用問題と労働者保護策の改善がはかられなければ、登録型派遣労働者については、新たな制度となる臨時的・一時的な労働力の需給調整への対応は認められない。
 
3 . 育児・介護ならびに高齢者特例派遣は、制度創設の趣旨が「臨時的・一時的」労働力の需給調整とは性格が異なることから、制度の趣旨が歪められ濫用されることが危惧されるため、濫用の防止をはかること。




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