平成10年版厚生白書の概要

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【序章 少子社会を考える】


○ 20世紀後半、日本は豊かさを目指して走り続けてきたが、その間、出生率は下がり続けた。日本は、結婚や子育てに「夢」を持てない社会になっているのではないだろうか。

○ 21世紀の第2四半世紀(人口2割減少、高齢化率3割)を見通し、そこに向けてどのような社会をつくろうとするのかが、今、問われている。大切なのは、人口が減少し続ける21世紀の日本に、「男女が共に暮らし、子どもを産み育てることに夢を持てる社会」をどのようにつくっていくか、ではないだろうか。

○ 少子化の要因への政策的対応の中核は、固定的な男女の役割分業や雇用慣行の是正と、育児と仕事の両立に向けた子育て支援。これらは着実に推進されることが必要。

○ 少子化の要因を生んでいる社会状況を更に掘り下げて考えてみれば、出生率の低下は、20世紀後半の経済成長の過程で進行した雇用者化、居住空間の郊外化などがいわば行き着くところまで行き着き、多くの国民の生活や社会の形が画一的・固定的になり過ぎた結果、結婚や子育ての魅力がなくなり、その負担感が増してきたところに、根本原因があるのではないだろうか。

○ とすれば、出生率の回復を目指し「男女が共に暮らし、子どもを産み育てることに夢を持てる社会」をつくる取組みとは、いろいろな役割を持つ自立した個人が、相互に結びつき、支え合い、「家庭、地域、職場、学校」といった生活に深く関わる場に多様な形で関わっていけるような社会をつくることではないか。言い換えれば、現在、社会の至るところにみられ始めた多様化・流動化の動きを活かし、個人の自立を基本にした「多様性と連帯の社会」をつくることが求められるのではないだろうか。

○ 以下、少子化が進行した20世紀後半特に最後の四半世紀を振り返るとともに、「子どもを産み育てることに夢を持てる社会」を形づくる自立した個人の生き方を尊重し、お互いを支え合える家族、自立した個人が連帯し支え合える地域、多様性のある生き方と調和する職場や学校の姿を展望してみることをねらいとした。
 本白書では、人口問題審議会の報告を踏まえ、少子社会について更なる問題提起を試みた。今後の国民的論議を期待。



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