平成12年版厚生白書の概要

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第3章 高齢者と社会・地域

第1節 高齢者の社会参加と生きがい

1 働く高齢者

○ 健康な高齢者は、健康づくりや社会貢献、生きがいなどの理由から、地域や社会への高い参加意識を持っている。高齢者の知識、経験を生かし、地域や社会に積極的に参加できるようなシステムづくり、支援が求められている。
○ 我が国の高齢者の就労意欲は、諸外国と比較しても高い。年齢が高くなるほど経済的な理由だけではなく、健康や生きがいのために働くことを希望する高齢者が増える傾向にある。(図3-1-2,3-1-3)

図3-1-2 主要先進国の労働力率

図3-1-3 高年齢就業者の就業理由

○ 現状では、実際の定年年齢と希望退職年齢には差がある。若年人口の減少も見込まれるため、働き続けたいという高齢者の希望を満たすだけでなく、社会の活力を維持するためにも高齢者の経験と能力を活用することが不可欠となろう。
○ 将来の年金の支給開始年齢の引上げに伴い、所得保障と雇用が何らかの形で継続するような配慮が必要となる。65歳までの本格的な就労機会の確保を目指しつつ、働く意欲のある高齢者が少なくとも65歳まで何らかの形で働き続けることができるような社会に向けた取組みが今後ますます重要となる。
○ 現役時代とは全く異なる分野で活躍する者もいるなど「人生二毛作、三毛作の時代」ともいえよう。収入を得るためだけでなく生きがい、健康、趣味、社会貢献を兼ねて様々な形態の働き方が登場している。多様化する高齢者のニーズに対応した働き方を選択できるよう支援することが重要である。
 コラム『高齢者の多様な働き方の例』の中で、起業・創業と協同組合、派遣労働や短時間勤務についても紹介。

2 学び、そして余暇を楽しむ高齢者

○ 高齢者にとって、生涯学習活動は、健康や社会参加の機会を生み出し、生活を豊かにすることにも役立っている。
 また、健康で積極的な高齢者が増え、旅行や運動など、余暇活動も多様化している。
コラムの中で、米国のシニアネットや(社)セカンドライフ協会の取組みも紹介。

第2節 支え合う地域と高齢者

1 地域において高齢者の生活を支援するサービス

〇 一人暮らしの高齢者の増加が見込まれる中、身近な地域において高齢者の生活を支えることにより、それまでと同様に住みなれた地域で暮らすことができる。
 市町村、住民、民間団体などが高齢者を支える様々な活動に取組んできたが、介護保険の導入を機にこうした機運が高まっている。
〇 地域の厚みのあるサービスは、介護を要する状態になることを予防する効果も持つ。
 地域の実情に応じたサービスの実施を支援するための介護予防・生活支援事業も平成12年度から実施されることとなっている。

2 地域を支えるボランティア活動

〇 ボランティア活動をする者は、1980年の約160万人から1999年の約696万人と大きく増加している。ボランティア活動の内容は福祉活動が多いが、なかでも高齢者を対象とした活動が多い。(図3-2-4)

図3-2-4 高齢者を対象とした主なボランティア活動の内容

〇 ボランティア活動を行う高齢者も増えており、ボランティアへの関心も高い。高齢者が地域において他の高齢者の生活を支える様々なサービスの担い手として活躍する場面も増えてきている。(図3-2-6)

図3-2-6 60歳以上の者の地域でのボランティア活動

〇 高齢者がボランティア活動に関心を持つようなってきた背景には、社会に貢献したいという意識もあろうが、経済的にも時間的にも比較的ゆとりがでてきた中で、ボランティア活動を通じた人や社会のつながりにそれまでの勤労生活では得られなかった楽しさや生きがい、自己実現などの価値を見出しているのではないだろうか。

〇 特に地縁をあまり持たない退職した雇用者など、ボランティア活動への関心はあるが、十分な情報を持たない者に対し、知識や経験を活かしながら希望するボランティア活動を行えるよう情報提供などの支援を充実していくことも重要であろう。
〇 長年培った知識、経験、技能を生かして、国際的に活躍する高齢者ボランティアも増えてきている。
○ 社協は、高齢者に対する様々なサービスに取組んでいるほか、ボランティア活動の支援、振興にも取組んでいる。また、生協や農協も高齢者サービスや地域に密着したボランティア活動を行っている。さらに福祉活動に取組む特定非営利活動法人(NPO法人)も多く、こうしたNPO法人の組織運営に企業などを退職した高齢者の知識・経験を生かしていくことも期待される。
○ 住民が主体的に福祉を中心とした地域づくりに参加したりする例もみられるようになっている。介護など身近な高齢者の福祉問題をきっかけに、様々な地域において地域社会の中での支えあいを見直し、福祉を中心とした地域づくりが進んでいくことが期待される。

【その他】

 長年取組まれている高齢者向け配食サービス、働く人のボランティア活動、国際ボランティア、地域住民が主体となったボランティア活動、イギリスにおけるボランティアの取組み、住民参加の地域づくりなどの取組み事例も紹介。

第3節 高齢者の生活環境

○ 手すりや段差のない屋内など高齢者に配慮した設備をもつ住宅(改修)が増加している。介護保険においても、手すりの設置などの費用を給付対象としているが、高齢者が住みなれた住宅で生活を続けることができるよう、こうした暮らしやすい(バリアフリー)住宅への取組みの支援は今後一層重要性を増していく。
○ 近年、地域のサービス拠点としての機能を備えるなど施設と地域との結びつきが強くなっている。
 また、施設を日常生活を送る場、すなわち、住宅の延長としての側面をもつものとして認識し、これにふさわしい施設環境づくりの動きも出てきている。
 施設の個室化も進んでいるほか、特別養護老人ホームなどにおいて居室をいくつかのグループに分けて一つの生活単位として、家庭的な環境の中でケアを行うユニットケア、痴呆性高齢者のケアとして、地域の中の家庭的な雰囲気で小人数の共同生活を送るグループホームという取組みも登場している。
○ 従来からある高齢者向け施設に加え、ケアサービス付きの賃貸住宅など、高齢者の住まい方の様々な選択肢が増えつつあり、住宅と施設との区分があいまいになりつつある。
 高齢者住宅施策と福祉施策との連携、高齢者と住まいについての行政の関わり方や支援のあり方も今後の課題である。
○ 高齢者が外出しやすい環境づくり、高齢者にやさしいまちづくりを目指した取組み事例も紹介。


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