平成12年版厚生白書の概要

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第2章 高齢者と健康

第1節 健康な長寿

○ 年齢による違いはあるが、概ね普通あるいは健康と思っている高齢者は増えてきている。高齢者の受療率も年齢によって異なる。また、寝たきりや要介護高齢者の割合も年齢によって異なり、横ばいまたは若干低下している傾向もみられ、今後の取組みによって更に健康な高齢者が増えていく可能性も示唆している。

○ これまでは、いかに長く生きられるか、平均寿命を延ばすことを目標にしてきたが、生活習慣病が増加している中で、これからは、生活の質を重視し、長くなった寿命を「心身に障害のない期間」として、健康で自立して暮らすことができること、すなわち「健康な長寿」を実現していくことが、高齢者と社会にとって真に豊かな長寿社会の達成のために重要となる。
 我が国のある研究では、75歳男性の平均余命7.81年のうち自立期間は8.24年(84%),女性では平均余命12.88年のうち自立期間10.20年と推計されている(図2-1-5)。

図2-1-5 平均自立期間(1995年)

第2節 長寿社会における健康づくり

1 生涯を通じた健康づくり

○ 高齢になるほど健康に対する関心は高まり、健康のために日頃から何らかのことを実践している者の割合も若い年齢層に比べると高くなっている。(図2-2-1)

図2-2-1 日ごろ健康のために実行している事柄(複数回答)

○ 生活習慣病を中心とした疾病構造に変化している中、これを予防し、高齢期においても生活の質(QOL)を維持し、障害の少ない生活を送り、健康寿命を延ばすためには、若い頃から正しい食生活や運動などの生活習慣を身につけ、健康管理に留意するなど、生涯を通じた健康づくりが重要である。
○ 平成12年度から「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」を掲げている。ここでは、科学的根拠に基づいて、がん、心臓病、脳卒中、糖尿病等の生活習慣病の原因となる食生活や運動、休養などの目標等を提示することにより、健康増進施策を総合的に推進することとしている。(図2-2-2)

図2-2-2 健康日本21の概要

○ 平成12年度から始まる老人保健事業計画(第4次計画)においても、個人個人に適切な保健サービスを提供するため、新たに健康度評価や個別健康教育を導入して、生活習慣病等の疾病予防と介護予防を推進することとしている。
○コラム『高齢者医療と健康づくり』から

 老人保健法に基づく事業実施が多い市町村では老人医療費が少ないことなどを示す研究、非喫煙者の医療費が喫煙者に比べて低いといった研究、高齢者の医療費が低い長野県の医療や保健活動の特徴を示す研究などを紹介しつつ、各地で行われている健康づくりへの取組みの例は今後の高齢者医療を考える上にも示唆を含むことを説明。

2 高齢者の健康づくり

○ 栄養、運動、休養など生活習慣の改善が脳卒中などの循環器疾患の予防にもつながる。脳卒中の危険因子、糖尿病と脳卒中に関する研究についても紹介。
○ 高齢期においても、適度な運動をすることで、健康・体力を保持・増進することができる。日常生活の家事、散歩などにより身体を動かすことも有益なことである。
 高齢者も身体運動により、体力や持久力が向上し、さらに疾病予防にもつながることを示す研究についても紹介。
○ 寝たきりの原因の第1は脳血管疾患、第2は転倒等による骨折である。身体活動や運動は疾病を予防するだけでなく、運動機能を高め、転倒による骨折などにより寝たきりになることを防ぐ。寝たきりは「寝かせきり」から生じるものであり、適切なリハビリテーション、ケアによって予防できることも知られている。
○ 食生活と生活習慣病との関連は深く、そのリスクを低下させるためには若いころから正しい食習慣を身につけることが重要である。
 現在の食生活・栄養状況を概観すると、男性ではいずれの世代でも肥満の割合が増加しているため、エネルギー消費とバランスを考え過剰摂取を慎む必要がある。
 一方、若い女性には行過ぎたダイエットによるやせすぎの者が増えており、健康な食生活を実践する必要がある。

図2-2-14 BMI(Body Mass Index:肥満指数)の変化

〇 骨粗鬆症になると骨折しやすくなり、寝たきりにつながりがちであるが、若い頃からカルシウム摂取に心がけることで予防できる。
 本年3月に作成された食生活指針について解説するとともに、内容も掲載。
○ 現状では80歳で20本の歯を有する者はわずかかであるが、歯の健康の維持は、食生活など明るい生活には欠かせない。口腔衛生状態や咀嚼能力の改善が疾病の減少やADLの改善にもつながる。「8020(ハチマルニマル)運動を提唱し、普及啓発活動を実施している。
○ WHOの健康の定義を待つまでもなく、身体の健康のみならず、こころの健康がいきいきと暮らしていくために不可欠である。睡眠などによる疲労を回復する「休む」ことと趣味など鋭気を「養う」面を合わせた「休養」が重要といわれている。
 また、高齢になると家に閉じこもりがちになりやすいが、地域の中でふれあいの場を提供する取組みも行われている。若い世代との交流の機会を持ちたいと考える高齢者も多い。
 さらに、おしゃれや身だしなみに気をつけたりすることがいきいきと暮らすことにつながるともいわれる。

第3節 長寿科学の振興

○ 高齢者に多い痴呆、寝たきり、骨粗しょう症などの疾病の予防、診断、治療法の開発、心理的・社会的問題の解決のために、自然科学から人文科学に至るまでの総合的な長寿科学の研究が今後一層重要である。

【その他】

 第2章においては、脳卒中を減らすための健康教育と広報活動の効果に関する研究、高齢者が気軽にできる運動を取り入れた地域における健康づくりの取組み、寝たきり予防のためのこれまでの施策、痴呆防止の取組み、在宅の要援護高齢者のための巡回歯科保健事業、世代交流の取組みなど、健康づくりに関する研究や各地の取組み事例を豊富に紹介している。


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