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I.なぜ新しい法律が制定されたのですか(法律制定の背景)

Q 1 家電製品は一年間にどのくらい廃棄されているのですか。

・ 家庭ごみを中心とした一般廃棄物は、全国で1年間に5070万t(平成7年度)が排出されています。ところが、一般廃棄物の埋立処分場は全国であと8.5年程度(首都圏では約4.8年分、近畿圏では約6.7年分)しかない状況です。廃棄される家電製品(エアコン、テレビ、電気冷蔵庫及び電気洗濯機)は年間約60万tで、一般廃棄物全体の約1%程度ですが、焼却による減量などが困難で埋立処分場の大きなひっ迫要因となっています。

ごみ最終処分量・残余年数の推移

ごみ排出量の推移


Q 2 現在、廃棄された家電製品はどのようにリサイクルされているのですか。

・ 我が国の一般廃棄物は以下のような流れで処理されています。このうちリサイクルされているものは全体の約10%程度です。

・ また、廃棄された家電製品については、約4割の市町村で何らかのリサイクルが行われていますが、半数以上がリサイクルされずに埋立処分されている状況にあります。しかし、家電製品は金属、ガラスなどリサイクルが可能な資源を多く有しており、リサイクルによる一層の減量が可能なものです。


ごみ処理フロー(1995年度実績)

現在の家電製品(エアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機)の処理の流れ 市町村における廃電気・電子機器等の処分方法

○市町村の処分方法
    テレビ 冷蔵庫 洗濯機 エアコン
処分業者に処分を委託している 市町村数 884 982 958 896
割合(%) 30.2 33.7 32.9 31.4
市町村が破砕後、資源回収し、埋立処分している 市町村数 1196 1178 1185 1160
割合(%) 40.9 40.4 40.7 40.6
市町村で破砕後、一部焼却し、埋立処分している 市町村数 182 141 142 139
割合(%) 6.2 4.8 4.9 4.9
市町村で直接埋立処分している 市町村数 447 394 412 428
割合(%) 15.3 13.5 14.1 15
その他(無料で資源回収業者に引き渡している市町村等) 市町村数 215 222 217 231
割合(%) 7.4 7.6 7.4 8.1

○資源回収の方法
    テレビ 冷蔵庫 洗濯機 エアコン
鉄のみを回収している 市町村数 433 424 439 396
割合(%) 13.9 13.6 14.1 12.7
鉄及び銅を回収している 市町村数 27 52 33 32
割合(%) 0.9 1.7 1.1 1
鉄及びアルミニウムを回収している 市町村数 776 776 789 764
割合(%) 24.9 24.9 25.3 24.5
鉄、銅及びアルミニウムを回収している 市町村数 318 334 327 343
割合(%) 10.2 10.7 10.5 11
その他(金属類全般について回収している等) 市町村数 128 132 137 136
割合(%) 4.1 4.2 4.4 4.4


Q 3 これまでのごみ処理に問題があったのですか。

・ 従来の我が国の廃棄物処理は、高温多湿の気候条件、狭い国土等の事情により「燃やして埋める」処理が主流でした。しかし、最終処分場のひっ迫等の現在の廃棄物処理をめぐる状況から、かつてないほど、廃棄物の減量とリサイクルが必要となっています。

・ このため、一般廃棄物の容積で約6割、重量で約2割強を占める容器包装廃棄物のリサイクルを進めるため平成7年(1995年)に容器包装リサイクル法(容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律)が制定され、平成9年(1997年)から缶、びん、ペットボトル等についてリサイクルが進められており、さらに、平成12年(2000年)からは全ての容器包装廃棄物についてリサイクルの対象となることとなっています。

・ また、平成9年(1997年)には、我が国の廃棄物処理の基本法である廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)が大幅に改正され、多量排出事業者の廃棄物の減量の推進とともに、再生利用認定制度の創設というリサイクル促進のための規制緩和が行われました。

・ 特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)はこのような流れを受けて、容器包装リサイクル法につづき、循環型経済社会を構築するための新しい法制度として、関係者がそれぞれ新しい役割分担の下、リサイクルを強力に進めるため制定されたものです。


Q 4 なぜ、家電製品を中心とするリサイクル法が作られたのですか。

・ 家庭から排出される廃棄物は基本的に市町村が収集し、処理を行ってきました。ところが、粗大ごみの中には、非常に大型で重いため他の廃棄物と一緒に収集することが困難であったり、非常に固い部品が含まれているため粗大ごみ処理施設での破砕が困難であるものが存在します。家電製品は、これに該当するものが多く、また、金属、ガラスなどの有用な資源が多く含まれるものの、市町村による処理・リサイクルが困難で大部分が埋め立てられている状況にあります。

・ 家電製品のリサイクルの実施を確保することは、このような状況に対応し、廃棄物の減量、資源の有効利用に大きく貢献するものです。このため、リサイクルの体制整備、製造業者、小売業者を含む関係者の適切な役割分担、技術、将来展望など様々な観点から検討を行い、特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)が制定されました。

【適正処理困難物制度】

・ 平成3年の廃棄物処理法の改正により適正処理困難物(指定一般廃棄物)制度が創設され、市町村は処理が困難な一般廃棄物について製造・販売業者等の協力を求めることができることになりました。現在は、廃タイヤ、廃スプリングマットレスとともに、25インチ以上の廃テレビジョン受信機、250リットル以上の廃電気冷蔵庫が対象となっています。この制度の下、家電販売店での家電製品の引取りが行われていますが、十分なリサイクルが行われているとは言えない状況にあります。

国内出荷台数の推移(電気冷蔵庫) 1980 1985 1990 1995 暦年
120リットル以下 847 1037 1596 1449 千台
(割合) 22.6% 28.0% 34.5% 30.9%  
121〜300リットル 2661 1634 1018 679 千台
(割合) 71.1% 44.2% 22.0% 14.5%  
301リットル以上 234 1029 2018 2566 千台
(割合) 6.3% 27.8% 43.6% 54.7%  
国内出荷台数の推移(テレビ) 1980 1985 1990 1995 暦年
15型以下 3571 4106 2419 3049 千台
(割合) 52.5% 54.2% 26.7% 25.0%  
16〜21型 2967 2922 2577 2837 千台
(割合) 43.6% 38.5% 28.5% 23.2%  
22〜25型 264 189 1397 1678 千台
(割合) 3.9% 2.5% 15.4% 13.7%  
26型以上 - 364 2654 2020 千台
(割合) 0.0% 4.8% 29.3% 16.5%  
ワイドテレビ - - - 2626 千台
(割合) 0.0% 0.0% 0.0% 21.5%  
工業会統計等


Q 5 家電製品(特定家庭用機器)はどのようなリサイクルが可能なのですか。

・ 近年の家電製品は、鉄・アルミ・銅といった金属やプラスチック類を素材とするものであり、テレビについてはブラウン管のガラスが大きな重量を占めます。また、家電製品は様々な部品から構成されるものであり、これを分解・解体し部品や素材ごとに選別することにより、再生利用の道が大きく開かれるものです。

・ 例えば鉄・アルミ・銅といった金属については、部品を分離し、それぞれの素材に選別することにより、金属製品の原材料として再生利用が可能です。

・ また、プラスチック類については、熱回収(サーマルリサイクル)を行うことができるとともに、技術開発の進展により再度プラスチック製品の原料などの原材料として再生利用される可能性が高まっています。

・ ブラウン管のガラスについては、再度ブラウン管用のガラスとして利用できるほか、様々なガラス原材料としての再生利用が可能です。

◇主要家電製品4品目の素材構成

品目 製造年 アルミニウム プラスチック ガラス 塩水 その他 金属・ガラス
(再掲)
エアコンディショナー 1983 53% 19% 9% 14% 4% 81%
1990 49% 18% 8% 14% 11% 75%
 うち室外機 1983 63% 18% 9% 6% 5% 90%
1990 58% 17% 8% 6% 12% 83%
 うち室内機 1983 13% 24% 12% 49% 3% 49%
1990 12% 23% 10% 47% 7% 45%
ブラウン管式テレビジョン受信機 1983 9% 2% 1% 10% 46% 23% 10% 68%
1993 12% 3% 1% 26% 53% 5% 69%
電気冷蔵庫 1983 59% 2% 4% 30% 4% 65%
1993 49% 4% 1% 43% 3% 54%
2槽式洗濯機 1983 52% 3% 2% 37% 6% 57%
1993 60% 3% 2% 31% 4% 65%
全自動洗濯機 1993 52% 2% 4% 33% 6% 3% 58%

出典:平成6年度新エネルギー・産業技術総合開発機構委託研究「非鉄金属系素材リサイクル促進技術研究開発:基礎調査研究、要素技術研究」(1983年値)、日本冷凍空調工業会調査(エアコンの1990年値。なお、1990年の室内機・室外機の値は試算値)
(各数値については四捨五入されており、合計値が100%にならないものもある。)


Q 6 他にもリサイクルが必要な廃棄物があると思うのですが。

・ 一般廃棄物の容積で約6割、重量で約2割強を占める容器包装廃棄物については、既に容器包装リサイクル法が制定され、リサイクルが実施されています。

・ 家電リサイクル法は、市町村等による処理が困難であり、資源としての有効利用の必要性が高いなどの状況にある廃棄物について、小売業者が引き取り、製造業者等がリサイクルを行う仕組みを作ったものです。

・ 容器包装リサイクル法や家電リサイクル法の対象となる廃棄物以外にもリサイクルが必要な廃棄物は存在しますが、製品の流通状況、廃棄物の性状、処理の方法や現状など異なる点があり、それぞれの廃棄物にとって最も効率的で効果的なリサイクルの方法や仕組みが検討されるものと考えます。


Q 7 外国の取組状況はどうなっているのですか。

・ ヨーロッパ諸国においては、家電製品リサイクルについて様々な動きが見られます。例えば、オランダでは事業者と自治体の合意の下での自主的な回収・処理の仕組みが実施されており、ドイツでは情報関連機器についての再生に関する政令が存在します。また、欧州連合(EU)では電気・電子機器の回収・リサイクルに関する指令案が検討されています。

・ 日本における家電リサイクル法は、このような外国の動きに先駆けた、家電製品を中心とする家庭用機械器具についての製造業者・輸入業者、小売業者に回収とリサイクルの義務を課す総合的な法制度ということができます。



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