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介護報酬の主な論点と基本的考え方
−中間とりまとめ−
平成10年10月26日
医療保険福祉審議会介護給付費部会
はじめに
医療保険福祉審議会介護給付費部会においては、4月以来これまで、7回にわたって、介護報酬の主な論点について審議を重ねてきたところであるが、今般、その審議の経過を踏まえ、幅広い関係者の準備や検討に資するよう、主な論点についての基本的考え方をとりまとめ、公表することとした。
従って、ここに示された基本的考え方については、今後の当部会の議論に伴い、変更があり得るものである。また、介護報酬を設定する場合、老人保健福祉部会において検討されている介護保険施設、居宅サービス事業者等の指定基準の検討が前提となるので、その審議状況を踏まえ、ここで示す基本的考え方についても必要に応じて修正等を行う必要がある。
今後、来年度のできる限り早い時期に報酬の骨格を示すことができるよう、主な論点についての基本的考え方を踏まえて、実態調査の方法や残された課題について議論を深めていく予定であり、ここに示された介護報酬設定の基本的考え方について、幅広い関係者の方々の理解と建設的な提言を期待するものである。
A 施設・在宅サービス共通の論点
1 介護報酬における地域差の勘案方法
- 現在、施設サービスについては、措置費の事務費及び診療報酬に導入されている入院環境料の地域区分は、国家公務員の調整手当の級地区分によっている。一方、在宅サービスについては、福祉サービスも、医療サービスも、地域差が設けられていない。
- 介護保険が導入されると、市町村域を越えるサービス利用も一般的になること、あまりに多数の地域に細分化して単価を設定すると、利用者からみてもわかりにくく、また、審査支払の事務も煩雑になること等からすれば、全国横断的な地域区分が適当と考えられる。
- 最低賃金の区分、生活保護における生活費の支給で使用している区分等を使用するという考え方もあるが、最低賃金の区分は都道府県単位であり、都市も地方も同じように評価されてしまうこと、生活保護における生活費の支給で使用している区分は、個人の消費支出に着目しており、人件費等が多くを占める事業者等の報酬に反映させるには適当でないと考えられる。
- 現在の施設に係る措置費の事務費等からの円滑な移行、介護サービスの地域区分の主たる要因は人件費であると考えられること等から、制度創設時には、国家公務員の調整手当の級地区分を基本としつつ、今後、必要に応じ、客観的な指標等を踏まえ、必要な補正を加えて用いることが適当である。
- また、特に離島等であって、特に移動に時間を要し、事業運営が非効率にならざるをえない地域における在宅訪問系サービスについては、現在の訪問看護の特別地域加算のような加算を検討する必要がある。こうした地域の範囲については、今後、現在の訪問看護ステーションの特別地域訪問看護加算の範囲や費用の実態等を踏まえて、検討するべきである。
2 要介護度の改善の誘因の付け方
- 介護保険では、施設サービスでは、要介護度に応じた報酬が設定されることとされており、また、在宅サービスでは、要介護度に応じて支給限度額が設定されることとされている。
- したがって、リハビリテーション等を行なうことにより要介護度が改善された場合に、介護報酬等の額が下がることになるため、国会の附帯決議においても、要介護度の改善への動機づけを勘案することが、指摘されているところである。
- 介護保険制度では、サービスの質を利用者が判断して選択することとなることから、まずは、事業者・施設自らが要介護度改善のための評価を行い、利用者の選択のための適切な情報の開示を行うことが重要である。この場合、利用者の適切な選択に資するよう、一定期間中の要介護者等について、改善・悪化・退所等の状況の変化を客観的に情報提供する必要がある。
- 介護報酬において事業者に改善の誘因を設けることは、要介護度の改善には事業者だけでなく、利用者の努力や意欲が重要であるにもかかわらず、利用者の負担が減らないという問題がある。また、そもそも医療・福祉等の専門職は、誘因がないと改善の努力をしないということではないこと、また、要介護度が改善しそうな者を事業者が選ぶといった問題も考えられる。
- 特に、在宅サービスについては、
- 複数事業者がサービスを提供している場合、改善に寄与した事業者の特定が困難であること。
- 区分支給限度額に加算等を行っても、改善に貢献した事業者の報酬に反映されるか不明であること。
- などの問題もある。
- こうしたことから、要介護度の改善の誘因を設けることは慎重にすべきであるという考え方がある一方、こうした問題点を整理し、客観的指標に基づき、改善の誘因を設けることを検討すべきという考え方もある。
- 仮に、要介護度の改善に対する誘因を導入する場合、その具体的な方法としては、例えば、
1)要援護者の要介護度が改善した後、一定期間、何らかの報酬額の支払を続ける方法
2)施設や事業所単位で一定期間の要介護者等の改善状況を包括的に評価する方法
等が考えられるが、2については、具体的な指標の確立や定期的に状況を把 握するための仕組みや、客観的な評価を行うための指標の確立など、大がかりな仕組みが必要であり、今後検討を要する課題が多いことから、実際に行うとすれば、制度創設当初は仕組みが容易でわかりやすい1で行うことが考えられる。
具体的には、
- 介護保険施設等において、要介護者の要介護度が改善した場合、一定期間、要介護度改善の加算を行う。
方法が考えられる。
- 今後、更に、要介護度改善のための誘因の導入の是非や情報開示のあり方や手法等も含め、具体的な検討を進める必要がある。
3 国が定める額より低い価格の設定
- 介護保険法に基づく給付は、被保険者がサービス提供者に支払った費用を事後的に補填するという現金給付の構成をとっているので、利用者が国が定める額以下の額しか支払わなかった場合には、その額を支払うこととされている。
- 訪問看護等の医療系のサービスについては、医療保険と介護保険で同様のサービスが提供されるものがあるが、医療保険では、従来より訪問看護等について国が定める額より低い額でのサービスの提供が認められていないこと等から、同じサービス事業部門で、一方を国が定める額で、他方をその額より低い額でサービス提供することになれば、一方の費用を他方に転嫁することとなる。このように価格差を設けることが不合理な場合には、運営基準に基づいて指導することとすべきである。
- 介護サービスの質が保証されるとすれば、より低い価格で介護サービスを提供すること自体は望ましいことであるが、こうした価格設定がサービスの質の低下につながることのないよう、運営基準に基づく指導や苦情処理の仕組み等において十分配慮する必要がある。
- また、この場合、支給限度額に余裕が生ずることが考えられるが、利用者にその限度額の範囲で、通常のサービス量を上回るサービスの利用を認めることとしてよいものと考えられる。
B 施設サービスにおける介護報酬の論点
1 報酬の基本構造
- 施設サービスの報酬は、要介護度に応じた額を設定することとされている。人員配置以外に、サービスの質を担保する方法が確立されればともかく、それまでの間においては、要介護度のみで報酬を設定すると重度の要介護者をできる限り少ない職員で介護する方が有利になることから、要介護度に合わせて人員配置も加味して報酬を設定するべきである。
- また、現在の診療報酬においても、人員配置が加味されており、現行制度からの円滑な移行を考慮しても、人員配置を加味した報酬を設定することが現実的である。
- 人員配置については、指定基準上の人員配置だけではなく、サービスの質の向上を促す観点から、介護サービス計画に基づく適切なサービスの提供等に配慮しつつ、一定の範囲で、より手厚い人員配置について評価を行うべきである。
2 定員別の報酬設定
- 現在、特別養護老人ホームについては、措置費上、定員別に単価が設定されているが、サービスの対価という観点からは、定員規模により、報酬に差を設けるのは適当でない。
- ただし、離島等で、小規模な施設にならざるをえない場合には、別途の配慮が必要と考えられる。
3 入院・入所期間に応じた報酬設定の考え方
- 入院・入所期間に応じた評価については、現在も、各々の施設によって取扱いが異なっており、基本的には、各々の介護保険施設の持つ機能に応じてそのあり方を考える必要がある。
- 入院・入所が長期になるに伴って費用が逓減することが考えられるので、原則として全ての介護保険施設に逓減制を設けるべきという意見もあるが、介護保険では、要介護度に応じて、報酬を設定することとされているので、入所期間による逓減制を設ける必要性は低いという考え方もあり、今後、各々の介護保険施設の持つ機能のほか、現行制度との整合性にも配慮しながら、更に検討を加える必要がある。
- なお、入所時には手間がかかることや在宅復帰のための支援を促進する観点から、入所時や退所時の加算について検討するべきである。
4 必要な医療の評価
- 介護保険法では、施設サービスの介護報酬は要介護度と地域別の平均的な費用を勘案して設定することとされており、できるだけ包括的に評価し、出来高部分を多くは設けないことを原則とすべきである。
- ただし、リハビリテーションについては、要介護状態の悪化の防止という介護保険の理念を踏まえ、実施状況に応じた評価を行うことが適当と考えられる。
【介護療養型医療施設】
- 療養型病床群等の介護療養型医療施設について、透析等の複雑な処置、手術等が必要な場合や急性増悪時においては、急性期医療を行う病院(棟)等に移って、医療保険から給付を受けることを原則とする。
- こうした場合において、緊急その他やむをえない理由により、介護保険の適用対象である病棟で、同様の治療を行った場合にあっても、本質は急性期医療であること、転棟した場合との均衡等を考えれば、医療保険から給付すべきであるとの意見が多いが、今後、こうした場合の医療の実態等を踏まえ、医療保険との給付の関係について更に検討する必要がある。
- 急性増悪時等の治療以外の医療についても、包括的な評価を原則としつつ、必要な医療が妨げられることのないよう、介護保険の中で、リハビリテーション、精神科専門療法など、個別の評価を行う必要がある行為の範囲について検討するべきと考えられる。
- 介護療養型医療施設における終末期医療が妨げられないよう配慮する必要がある。
【介護老人保健施設】
- 老人保健施設については、現在の緊急時施設療養費と同様、緊急その他やむをえない場合に老人保健施設において一定の複雑な処置、手術等を行なった場合に限り、個別の給付を認めるべきと考えられる。
【介護老人福祉施設】
- 特別養護老人ホームにおける医療については、現在、配置医師により行なわれている健康管理等の実態を踏まえ、配置医師が行なうべき健康管理と他の医療機関等により提供される医療との関係を明確にする必要がある。
- 特別養護老人ホームで行なわれる機能訓練については、機能訓練に関し相当の知識・技術を持った者が配置されている等一定の要件を満たし、機能訓練の提供体制が強化されている場合には、実施状況に応じた評価を認めることが適当と考えられる。
5 現在の各種加算の取り扱い
- 要介護度と地域別の平均的な費用を勘案して包括的に評価するという介護報酬設定の基本的考え方を踏まえれば、各種加算は、できる限り整理し、包括的な評価に統合することにより、簡素化をはかるべきである。
- 現在の特別養護老人ホーム等における民間施設給与等改善費、痴呆性老人等介護加算等については、要介護度に応じた、基本的な報酬の中に包含していくことが適当である。寒冷地加算等についても、他の介護保険施設等との均衡を考慮すると、基本的な報酬の中に包含していく方向で検討すべきである。
6 施設整備費との関係
- 制度的な施設整備費補助金がある施設については、減価償却費が異なることから、報酬設定上、制度的補助金がない施設との整合性を図るべきである。
- 特別養護老人ホームの施設整備費補助及び施設整備費に係る介護報酬上の評価については、現在、中央社会福祉審議会における社会福祉法人の在り方の議論等にも留意して検討する必要がある。
C 在宅サービスにおける介護報酬の論点
1 訪問介護・訪問看護等における主な論点
【交通費の取扱い】
- 現在、訪問に要する交通費は、訪問看護では、利用者に実費負担を求めているのに対し、訪問介護では、利用者に負担を求めておらず、医療系サービスと福祉系サービスで取扱いが異なっており、介護保険の下では、同一の支給限度額の枠内での選択となるため、取扱いを統一することが求められる。
- 日常的に提供されるこれらの訪問系サービスの利用に不可欠な交通費については、報酬設定上、費用として評価することが適当である。
- しかし、通常のサービス提供地域や送迎地域になっていない地域の利用者が、自らの希望により遠方の事業者のサービスを利用する場合には、利用者に送迎や訪問の費用負担を求めることとしてもよいと考えられる。
2 訪問介護に係る主な論点
(1)報酬設定の単位
- 報酬設定の基本的な考え方としては、1家事援助や介護に関する行為を細分化して積み上げを行い、評価する方法、2時間単位で報酬を設定し、その時間により提供できるサービスの組合せを示す方法、3入浴、排泄等の主要な介護サービスにより大枠でサービスの組合せを設定し評価する方法の3つがある。
- 利用者の便宜や現場でのサービスの柔軟性を考慮すると、サービスに要する時間を念頭に置き、標準的なサービスの組合せを考慮の上、介護報酬を設定することが現実的と考えられる。なお、訪問介護については、介護の必要の程度がサービスの内容や時間に現われることとなるので、要介護度別に評価する必要はないと考えられる。
(2)介護サービス以外の事業に関する管理業務等の取扱い
- 訪問介護の事業所における登録ヘルパーを含む多数の訪問介護員の派遣スケジュール等の調整及び管理、その他事業者として必要な運営管理経費等、直接のサービス提供以外の業務についても、十分配慮する必要がある。
- なお、訪問介護の報酬の水準について、その専門性を確保するため身体介護を中心に、必要な供給量が確保できるよう、適切に評価する必要がある。
3 訪問看護に係る主な論点
(1)報酬設定の単位
- 訪問介護と同じように、サービスに要する時間とサービスの組合せ等に着目して設定する方法と、現在のように1日を単位とした報酬の設定方法が考えられる。サービスの組合せにおいては、療養上の世話の他、診療補助行為についてもサービス内容に加味して考える必要がある。
- 現在は、1日定額のため、重症者の加算等により、対象者の特性に応じた評価を行なっているが、介護保険では、療養上の世話等の組み合わせとそれに要する時間等により評価することが適当と考えられる。
(2)看護サービス以外の事業に関する管理業務等の取扱い
- 現在の訪問看護ステーションに係る訪問看護療養費は、管理的経費に対応する管理療養費と直接的なサービスの費用に対応する基本療養費の積み上げになっている。要介護度に応じた支給限度額の枠内での利用等の観点からすると、利用回数により評価が大きく異なるという仕組みは、介護保険の下では合理的でないので、各回の報酬が平準化されるよう、サービスに要する時間とサービスの組合せ等により、包括的に評価することが適当である。
- 訪問看護ステーションについては、別の機関に属する医師との連絡、報告等の業務が加わること等から、管理的経費について、特別の評価が必要と考えられる。
(3)急性増悪等の場合の訪問看護の給付の在り方
- 現在、診療報酬上は、神経難病、癌末期、急性増悪の場合には、週3日という回数制限が撤廃され、毎日訪問看護を行なうことが認められている。
- 要介護者が、こうした急性期医療が必要な状態、又は、要介護者の標準的なニーズを上回る医療ニーズを有すると認められる状態になった場合については、要介護度に応じた支給限度額の枠中では対応できないことから、医療保険との給付の適正な区分けを図る観点から、医療保険から給付をすることが考えられる。今後、介護保険と医療保険の具体的な給付の区分けの方法について更に検討する必要がある。
4 通所介護(デイサービス)・通所リハビリ(デイケア)に係る主な論点
(1)報酬設定の単位
- 要介護度に応じた評価をする場合であっても、サービス提供の実態等に鑑みれば、6段階ではなく、3段階程度の評価でよいと考えられる。
- 通所介護については、人員・設備基準上、現在の類型を統合化する方向で検討されており、現在の事業費補助方式のように、できる限り、人員・設備基準の違いを要介護度による介護報酬上の評価に包括する方向で検討することが適当である。
- 通所リハビリについては、人員・設備基準上も、病院型(通常規模型)、診療所型(小規模型)、老人保健施設型といった類型が検討されており、現行制度からの円滑な移行を勘案すれば、要介護度に、これらの施設ごとの人員・設備基準を加味する方法が適当と考えられる。
- 通所介護についても、利用者の多様なニーズに応えられるよう、通所リハビリと同様、時間の長短に応じた評価を設けることが適当と考えられる。
- 通所介護や通所リハビリにおける痴呆性老人の専門的処遇については、通所サービスの場合、施設サービスと比べ、柔軟な職員体制をとることが難しいこと等から、一定の人員配置等を要件に加算を検討することが適当と考えられる。
(2)入浴、食事、送迎等のサービス内容に応じた評価
- 現在、通所介護は、食事・送迎が必須であるが、通所リハビリは、送迎や食 事提供の有無によって、報酬額が異なる。多様なサービス展開を進める観点からは、食事・送迎について、その有無に応じた評価をすることが適当と考えられる。
- 通所サービスでは、入浴は必須ではないが、要介護状態の予防、悪化の防止という介護保険の目的、入浴の持つ機能回復の効果等に鑑みれば、その実施を評価することが適当である。また、特別浴については、同じ要介護度であっても、その実施により特に介護に時間を要すること等を考慮し、一般浴と比較して評価を厚くすることを検討すべきである。
- また、通所介護においても、介護保険制度における趣旨を踏まえ、機能訓練に関し相当の知識・技術を持った者が配置されている等一定の要件を満たし、機能訓練の提供体制が強化されている場合には、実施状況に応じた評価を認めるという考え方もある。
5 訪問入浴介護に係る主な論点
- 訪問入浴サービスは、通所困難な重度の者に提供されていること、要介護度に関わらない費用部分が大きいこと等を勘案すれば、要介護度に関わらず、平均的な費用で単価設定してよいと考えられる。
6 訪問リハビリに係る主な論点
- リハビリは、重度になるとメニューが減ることも考えられることから、要介護度に関わらず、平均的な費用で単価設定してよいと考えられる。
7 福祉用具貸与に係る主な論点
- 報酬設定の方法として、用具の種類ごとに公定価格を定める方法、公定価格を設定せず実際の賃貸の額とする方法等が考えられる。
- 個別に価格設定すると、機能等に着目した細かな分類を設定し、市場の実勢価格を把握し多くの単価を設定しなければならず、複雑な仕組みになること、多様な種類の用具について機能別等にまとめて公定価格を設定すれば、個別の機能の評価が不十分になること、また、公定価格を設定すれば、かえって、価格が硬直化するおそれがあること等を考えると、実際の賃貸価格で償還する方式を基本とすることが適当と考えられる。この場合、賃貸価格の情報開示が十分行われること等により、利用者の自由な選択による適正な価格形成が行われるような仕組みとすることが必要である。
- 報酬の設定に当たっては、納品・回収費用や設置費用、保管・消毒費用等通常要する経費を評価することが必要である。
8 短期入所生活介護・短期入所療養介護に係る主な論点
- 基本は介護保険施設を短期間利用するサービスであることから、要介護度別、地域区分等による評価については、施設との均衡を考慮する必要がある。施設サービスは利用できないこととされている要支援者の評価については、要介護者より低くならざるをえないものと考えられる。
- 短期入所は、長期入所(院)の高齢者と比較して、入所者の状態が安定せず処遇に手間がかかること、在宅生活の継続を支援するためには、施設入所に至らないよう短期入所の適切な利用を促す必要があること、現在の老人保健施設について短期の入所の場合に加算があること等を考慮すれば、長期入所の施設サービスと比較して、手厚く評価することが適当と考えられる。
- 短期入所についても、要介護状態の予防、悪化の防止の観点から、リハビリテーションについては、実施状況に応じた評価することが適当と考えられる。
- 現在、特別養護老人ホームでは、送迎サービスを実施することとされているが、老人保健施設等には送迎サービスがない。同じ支給限度額の中での選択、また、サービス利用に不可欠な場合があること等を考えれば、要介護者の自立度や介護者の事情等から送迎が必要な場合には加算等で評価を行うということが適当と考えられる。
【介護療養型医療施設等での短期入所療養介護】
- 療養型病床群等への短期入所の場合も、施設入所の場合と同様、入所後、複雑な処置、手術等が必要になったり、急性増悪の状態になった場合には、急性期医療を行う病院(棟)等に移って、医療保険から治療を受けることを原則とすべきである。また、緊急その他やむをえない理由により、短期入所の対象施設において、同様の治療を受けた場合においても、本質は急性期治療であること等から、医療保険から給付するべきであるとの意見が多いが、今後、こうした場合の医療の実態等を踏まえ、医療保険との給付の関係について更に検討する必要がある。
- 急性増悪時等の治療以外の医療については、包括的な評価を原則としつつ、必要な医療が妨げられることのないよう、介護保険の中で、個別の評価を行う必要がある行為の範囲について検討するべきと考えられる。
【介護老人保健施設での短期入所療養介護】
- 老人保健施設の短期入所療養介護の場合も、現在の緊急時施設療養費と同様緊急その他やむをえない理由により、老人保健施設において一定の複雑な処置、手術等を行なった場合に限り、個別の行為の算定を認めるべきと考えられる。
- 介護老人保健施設については、現在、結果的に、入所が一定期間以内であったかどうかで、短期入所かどうかを区別しているが、介護保険の下では施設サービスと在宅サービスで種類が異なること、短期入所療養介護については支給限度額もあること等から、一定期間で退所する前提で入所するものを短期入所療養介護と位置づけるべきである。
【短期入所生活介護】
- 短期入所生活介護については、単独型施設の場合、施設長や常勤職員の配置を義務づけているなど、施設併設や空床利用に比べ、より短期入所サービスに特化したサービスが提供されていることから、別に評価することが考えられる。
9 痴呆対応型共同生活介護に係る主な論点
- 介護保険法では、痴呆対応型共同生活介護について、著しい行動異常が見られる場合や疾患が急性の状態にある場合等の対応は念頭においていないことから、こうした場合には医療機関を始めとする適切な施設等への紹介が行われるよう、介護報酬における評価でも、要介護度の中度までの者に手厚く配慮することが適当と考えられる。また、定員が5〜9名と小規模であるという特性から、結果的に施設と比較して、手厚い評価になることが考えられる。
- 痴呆対応型共同生活介護は、痴呆を持つ要介護者に対し、症状の緩解等の一定の効果をあげるなど評価されているが、今後、様々な事業主体の参入が考えられること等を踏まえ、利用者の立場に立ったサービスの質が十分に確保されるよう十分な情報提供等に特に配慮する必要がある。
- 全体としては、介護保険施設と比較しても、厚めの人員配置となっているので、処遇の一環として通所介護等の外部サービスを利用する場合の費用も、痴呆対応型共同生活介護の報酬の中に含めて評価することが適当である。
- 家賃相当部分は入居者の負担とされており、施設の減価償却分については入居者の負担とする必要がある。
- 利用開始時は、施設と同様、共同生活に慣れるために様々な支援を要する場合が多いことから、加算を設けることを検討すべきである。
- なお、痴呆性老人に適した処遇を推進する観点から、施設部分の補助制度を検討する必要がある。
10 特定施設入所者生活介護に係る主な論点
- 特定施設入所者生活介護は、居宅サービスの位置づけであり、在宅の要介護者等に対するサービスとの均衡を勘案して、給付の対象となるサービスの範囲を検討する必要がある。
- 直接処遇職員の基準については、特別養護老人ホームに準ずるものとすることが検討されており、要介護者については、特別養護老人ホームにおける直接処遇職員による介護サービスを参考として、報酬を設定することが適当と考えられる。
- 要支援者については、要介護者ほどの人員配置は必要でないこと、在宅の要支援者に対するサービスとの均衡を考慮する必要があることを踏まえ、機能訓練等を重視する予防給付の考え方等を勘案しつつ、要介護者より緩和した別途の人員配置とした上で、それに応じた評価とすることが適当と考えられる。
- 有料老人ホーム、介護利用型軽費老人ホームは、自らの住居として選択したものであることから、共用施設・設備の減価償却分も含め利用者負担とするべきものと考えられる。
- 有料老人ホームについては、従来から、多様なニーズに対応するために、多様なサービスを提供してきている例があり、保険給付の範囲を超える上乗せサービスや横出しサービスについては、保険給付部分との区分を明確にする工夫をした上で、利用料を徴収することを認めるべきである。その際、事業者としては、サービスの内容や価格について十分な情報を提供する必要がある。
11 居宅療養管理指導に係る主な論点
【医師の居宅療養管理指導】
- 医師の居宅療養管理指導の内容については、介護保険が導入されることにより新たにかかりつけ医に期待される役割を念頭において、通院困難な要介護者等を対象に訪問して行う継続的な医学的管理に基づく、居宅介護支援事業者等に対する介護サービス計画の策定等に必要な情報提供、介護サービスを利用する上での留意事項、介護方法等についての利用者及び家族等に対する指導・助言を中心に評価することが適当と考えられる。
- 訪問診療、疾患の治療に関する具体的な指導管理、投薬、検査、処置等の個別の診療行為は医療保険から給付することが適当である。
- 医師の医学的管理に基づく居宅療養管理指導と寝たきり老人在宅総合診療料等の関連の診療報酬との関係については、両者の範囲を明確に区分した上で、別途の算定を認めることとするのが適当であるが、必要な場合には、診療報酬との調整を検討するべきである。
【歯科医師の居宅療養管理指導】
- 歯科医師の居宅療養管理指導の内容についても、医師の居宅療養管理と同様、 介護保険が導入されることにより、新たにかかりつけ歯科医に期待される役割を念頭において、通院困難な要介護者等を対象に訪問して行う継続的な歯科医学的管理に基づく、居宅介護支援事業者等に対する介護サービス計画の策定等に必要な情報提供、介護上必要な口腔衛生等に関する留意事項、介護方法等についての利用者及び家族等に対する指導・助言を中心に評価することが適当と考えられる。
- 訪問歯科診療、歯科疾患の治療に関する具体的な指導管理、投薬、検査、欠損補綴等の個別の診療行為は医療保険から給付することが適当である。
【薬剤師の訪問薬剤管理指導等】
- 訪問薬剤管理指導、訪問栄養食事指導、訪問歯科衛生指導など、通院困難な要介護者等に対する居宅療養管理指導については、現在の診療報酬でも評価されているものであり、それとの均衡に配慮して、評価をすべきである。
【交通費の取扱い】
- 居宅療養管理指導については、訪問介護、訪問看護等の訪問通所系サービスと支給限度額が一体で管理されることはないので、診療報酬との均衡を考えれば、交通費は、利用者の実費負担とすることが適当と考えられる。
12 居宅介護支援(居宅介護サービス計画費)に係る主な論点
- 居宅介護サービス計画費の評価方法については、1介護サービス計画作成等にかかる平均的費用を勘案し、月毎に定額の報酬を支払う方法、2要介護認定期間分の費用について包括して報酬を支払う方法、3計画作成の発生しない場合の平均的費用を勘案した月々の定額報酬に加え、計画作成月には計画作成費を加算等で支払う方法等が考えられる。
- 利用者にとっては、サービス利用についての苦情、サービス担当者や事業者の変更等に関し継続的な相談・助言が受けられること、支給限度額管理のため介護サービス計画に関する情報を定期的に審査支払機関に提出する必要があること、簡素・簡明な報酬が望ましいこと等を考慮すれば、制度創設後、当分の間は、月毎に定額の報酬を支払う方法が適当と考えられる。
- 介護サービス計画作成等の業務量に関する実態を勘案して、要介護度等に応じた評価か、要介護度に関わらずに評価をするか、さらに検討する必要がある。
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