医療保険制度の改正について(答申)
平成12年1月27日厚生省発保第9号で諮問のあった標記の件について、本審議会の意見は下記のとおりである。
記
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(1) 本審議会は、医療保険制度が国民生活の中で極めて重要な役割を果たしていることにかんがみ、平成7年の勧告及びその後の医療保険制度等の改正案の諮問に対する答申において、財政基盤の安定を含む抜本改革の必要性について繰り返し指摘してきた。今回も抜本改革が先送りされたのは遺憾というほかない。 (2) 抜本改革の最大の課題は、高齢者医療の制度改革である。急増を続ける高齢者の医療費の問題については、健康増進や疾病予防によって医療への依存を減らすことが最優先されなければならない。また、本年4月からの介護保険法の本格的施行によって、社会的入院等の非効率な医療資源の利用が抑制されることが期待される。 (3) 本審議会としては、政府及び関係者に対し抜本改革の取組にこれまで以上の努力を行うよう強く求めたい。しかし、これまでの同様、関係者間において意見の対立が解消されず、改革内容の取りまとめとその実現が遅れるようでは、国民の医療保険制度に対する不信が強まるだけでなく、医療保険制度が崩壊し、国民の生活にも重大な影響を及ぼす事態が来ないとも限らない。 |
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今回諮問のあった改正案は、老人に係る一部負担金についての定率負担の導入といった抜本改革につながる事項はあるものの、全体としてみれば診療報酬の引上げと老人に係る薬剤一部負担金の廃止に伴う財源対策としての色彩が強く、施策の一貫性も欠いている。特に薬剤の一部負担金は、薬剤に係るコスト意識を喚起し、薬剤使用の適正化を図るという観点から平成9年に導入されたばかりであるのに、その効果も十分見定めないまま廃止するのは問題である。 |
3 | その他の改正事項としては、国民健康保険の海外療養費の創設、育児休業期間中の健康保険料の事業主負担分の免除等、妥当なものもある。しかし、保険料率の設定に係る上限の見直しについては、介護保険の充実の妨げとなり得る措置を残しておくことにも問題がある一方、介護保険の第2号被保険者にかかる納付金に歯止めがなくなるなどの問題がある。このため、今後の介護保険の実施状況を見ながら、具体的にどのような影響と問題点があるかを踏まえて、今回の措置の再評価を行い、対応策を講じて行くべきである。 |