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年金福祉事業団
電話 3502−2481
年金局運用指導課
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平成11年度資金運用事業の状況(概要)


平成12年6月

厚生省年金局

年金福祉事業団

(注)この概要はわかりやすさを優先させておりますので、より詳細な説明は本編を参照してください。

(目次)

1.資金運用事業の目的と仕組み

2.資金運用の方法と管理
(1)基本ポートフォリオ
(2)毎年度の運用管理

3.平成11年度の運用環境・運用結果
(1) 運用環境
(2) 運用結果

(1) 概況
(2) 運用結果(時価)
(3) 資産構成の現状(平成12年3月末時価総額)
(4) 資産別総合収益額(平成11年度)

4.金利の支払い

5.管理目標の達成状況
(1) 長期的管理目標
(2) 短期的管理目標
(参考1) 資金運用の推移
(参考2) 新たな年金積立金自主運用の仕組み

1. 資金運用事業の目的と仕組み

 年金福祉事業団では、運用収益を確保することにより後世代の保険料負担をできる限り緩和し、公的年金制度を安定的に維持運営していくこと等を目的に、公的年金の積立金の一部を大蔵省資金運用部から長期固定金利で借り入れて、毎年度利払いしながら民間運用機関(信託銀行、生命保険会社及び投資顧問会社)に委託して、債券や株式などによって市場運用するほか、一部を自ら債券等によって運用しています。
 現在の仕組みは、下の図のとおりですが、平成13年度から実施される年金積立金の自主運用においては、毎年度の利払いが不要となり、被保険者の利益のために年金資金の性格にふさわしい長期的観点に立った運用を行うことができる仕組みに改まります。(参考2参照)

図
2.資金運用の方法と管理

(1)基本ポートフォリオ
 当団では、資金運用事業の実施に当たっては、公的年金の積立金が国民の貴重な財産であることを念頭に置いて、次のような方法を採用しています。

(1) 長期に保有される資金であります年金積立金の運用では、短期的な資産売買による売却益(実現収益)追求は不必要な取引費用がかかるため適当でなく、時価ベースの資産価値を長期的に増やすことを目指しています。
(2) 個々の債券や株式の価格は時には激しく変動しますが、最新の投資理論が示すように、国内外の債券や株式といった複数の資産を組合せたり、保有銘柄を分散したりすることによって、資産全体の価格変動を抑えながら、資産価値を増加させることができます。
(3) 以上のことから、許容できる収益変動の範囲内で長期的に最大の収益(資産価値の増加)を達成しうる債券や株式などの基準保有割合を設定し、それを堅持することが望ましいとされていますが、そのような基準保有割合を基本ポートフォリオと言い、当団では、以下のように定めて、管理しています。

国内債券58%、転換社債4%、国内株式22%、外国株式11%、短期資産5%
(2) 毎年度の運用管理
 当団は、次のような流れに従って毎年度の資金運用事業を実施しています。

投資対象資産間の配分額の決定→運用手法の決定→運用機関の選定→資金の配分→資金の回収・再配分
(注) バランス型運用とは、複数資産を運用する運用手法
 特化型運用とは、特定の資産に対して特化して運用する運用手法
 アクティブ運用とは、市場平均から意図的な乖離をとって市場平均を上回る収益を目指す運用手法
 パッシブ運用とは、取引手数料を抑えながら市場平均の収益を目指す運用手法

3. 平成11年度の運用環境・運用結果

(1) 運用環境

 平成11年度の債券や株式の市場をとりまく状況は、国内市場においては、景気が個人消費の低迷等から、回復感に乏しく、ゼロ金利政策が継続され、債券価格は、ほぼ横這いに推移しました。一方、各種政策効果による住宅投資の増加、生産の回復、設備投資の下げ止まり等、一部に回復の兆しが表われ始めたことを反映して、株価は上昇し、年度末では4年ぶりに日経平均が2万円台に乗る動きとなりました。
 外貨建て資産については、欧米の株価はそれぞれの国で総じて上昇したものの、円高が進んだため、円ベースでの収益は低迷しました。  以上の結果、当団の主要な資産の市場平均収益率は、以下のとおり国内株式及び転換社債が非常に好調な結果となりました。

(平成11年度の市場平均収益率)国内債券2.08%、転換社債22.39%、国内株式35.46%、外国株式3.40%(円ベース)


( 参 考 ) 平 成 1 1 年 度 の 運 用 環 境

・ 国内債券(新発10年国債利回り)        
10年度末 1.760%  →  11年度末 1.775%
・ 国内株式市場(日経平均)        
10年度末 15,837円  →  11年度末 20,337円
(TOPIX)        
10年度末 1,267ポイント  →  11年度末 1,706ポイント
・ 米国株式市場(NYダウ)        
10年度末 9,786ドル  →  11年度末 10,922ドル
・ 為替        
10年度末 118.43円/ドル  →  11年度末 102.57円/ドル


(2) 運用結果

(1)概況
○収益状況(時価)
 総合収益額 2兆7,001億円  
 大蔵省資金運用部への
 借入金利息
9,285億円
 差引(利差益) 1兆7,717億円
 累積利差益 5,386億円 (平成10年度末 累積利差損 1兆2,381億円)

○収益状況(簿価)
 実現収益額 1兆3,759億円
 大蔵省資金運用部への
 借入金利息
9,285億円
 差引(利差益) 4,474億円
 累積利差損 1兆4,012億円 (平成10年度末 累積利差損 1兆8,486億円)


○ 最近、企業会計や企業年金でも、保有している債券や株式の価値の実態を正確に表すために、それらを取得した当時の価格で帳簿上評価するいわゆる「簿価」ではなく、現在市場で売買するとすればいくらで取引されるかを示すいわゆる「時価」で評価することがグローバル・スタンダードとなっています。「時価」と「簿価」の違いは、端的に言えば、債券や株式などの含み損益を含むか含まないかと言う点にあります。
 
○ また、年金資産を一旦売却して、含み益を現金化し簿価上実現収益を高めることは可能ですが、その現金は、基本ポートフォリオに応じて再度投資する必要があることから、取引費用の増大など運用の効率性が損なわれ、必ずしも年金加入者の利益にはなりません。
 
○ このようなことから、当団としても資金運用事業の収益状況や資産構成については、「時価」で管理していますが、正式な決算は、現在のところ「簿価」で行っていますので、ここでは、両方の評価を取り上げています。


(2) 運用結果(時価)

・運用手数料控除後の総合収益は2兆7,001億円、総合収益率は11.10%。
・借入金利息は9,285億円、借入金利(対運用元本平均残高比)は3.82%。
・利差益は1兆7,717億円。
・平成10年度末の累積利差損(累積赤字)▲ 1兆2 ,381億円は平成11年度末において5,386億円の累積利差益(累積黒字)に改善。
・平成11年度末の評価益は平成10年度末の6,105億円から1兆9,397億円に増加。
・平成11年度末の運用資産規模は27兆5,139億円。


図
(3) 資産構成の現状(平成12年3月末時価総額)

図

(単位:億円、%)
   資産額 構成比
債 券   155,907 56.66
  うち外国債券 12,606 4.58
転換社債 7,226 2.63
国内株式 71,463 25.97
外国株式 33,851 12.30
短期資産 6,691 2.43
合 計 275,139 100.00


(4) 資産別総合収益額(平成11年度)
両事業計
図

4.金利の支払い
 当団の運用資金は、大蔵省資金運用部からの長期固定金利の借入金です。過去の高金利時に借り入れた資金が残っているため、下のグラフに示すとおり、市場金利(平成11年度の新規財投預託金利)1.96%と比較して、平成11年度の借入金利(借入金利息の対運用元本平均残高比)は3.82%と引き続き高い状況です。
 こうした結果、平成11年度末の資金運用部からの借入金残高は、26兆7,530億円であり、この借入金の利払額が9,285億円です。

借入金利息等の推移

5.管理目標の達成状況

(1)長期的管理目標

 長期的な管理目標は、大蔵省資金運用部からの長期固定金利の借入金の平均的な借入利息及び運用手数料を合計したコストを1%上回ることとしていますが、下の表に示すとおり、平成7年度から平成11年度までの5年平均の総合収益率 7.18%は、借入金利(借入金利息の対運用元本平均残高比) 4.77%を2.41%上回っています。

総合収益率・借入金利(借入金利息の対運用元本平均残高比)の推移

(2) 短期的管理目標

 長期目標達成のためには、年々の時間加重収益率(運用元本の流出入の影響を排除した時価に基づく収益率であり、運用能力を定量的に評価するときに用います。)が基本ポートフォリオ通りに債券や株式を保有したときの複合市場平均収益率を上回ることが必要で、それを短期的な管理目標としていますが、平成11年度の実績時間加重収益率 11.39%は、複合市場平均収益率10.02%を1.37%上回り、短期的な単年度管理目標を達成しています。
 また、下の表に示すとおり、平成7年度から平成11年度までの5年平均の実績時間加重収益率 8.26%は、複合市場平均収益率 7.84%を0.42%上回っています。


時間加重収益率の推移
(参考1) 資金運用の推移

(単位:億円)
年 度 61年度 62年度 63年度 元年度 2年度 3年度 4年度 5年度 6年度 7年度 8年度 9年度 10年度 11年度
借入金額 資金確保事業 5,000 11,000 20,500 29,000 39,500 50,000 59,050 67,950 72,350 74,900 75,670 75,670 75,670 75,670
年金財源強化事業 10,000 22,700 38,000 56,000 76,500 102,400 126,650 146,150 155,650 161,860 171,860 181,860 191,860
合計 5,000 21,000 43,200 67,000 95,500 126,500 161,450 194,600 218,500 230,550 237,530 247,530 257,530 267,530
収  益 総合収益率(%) 16.85 3.09 8.06 1.32 2.93 2.20 5.22 4.86 -0.34 11.03 3.98 7.06 2.71 11.10
実現収益率(%) 7.71 6.29 6.67 6.61 5.91 5.20 4.96 4.60 2.67 4.00 3.43 4.95 2.67 5.65
借入金利息の運用元本平均残高比(%) 6.17 5.11 5.00 4.94 5.32 5.66 5.71 5.54 5.44 5.44 5.28 5.03 4.39 3.82
  (参考)新規財投預託金利 (%) 5.99 4.97 4.92 5.17 6.80 6.24 5.21 4.31 4.47 3.41 3.20 2.48 1.72 1.96
利差損益
(単年度)
時価 (%) 10.68 -2.01 3.06 -3.62 -2.39 -3.46 -0.49 -0.68 -5.78 5.59 -1.30 2.03 -1.68 7.28
(億円) 211 -284 1,108 -2,201 -2,107 -4,095 -732 -1,253 -12,042 12,149 -2,890 4,599 -3,949 17,717
薄価 (%) 1.54 1.18 1.66 1.67 0.59 -0.46 -0.75 -0.94 -2.77 -1.44 -1.86 -0.08 -1.72 1.84
(億円) 30 165 603 1,016 517 -540 -1,130 -1,737 -5,777 -3,128 -4,133 -190 -4,052 4,474
累  積
利差損益
時価(億円) 196 -114 884 -1,426 -3,595 -7,864 -8,761 -10,090 -22,267 -9,940 -12,994 -8,432 -12,381 5,386
簿価(億円) 30 196 799 1,815 2,332 1,793 530 -1,207 -6,984 -10,112 -14,245 -14,434 -18,486 -14,012
年度末評価損益(億円) 166 -310 85 -3,241 -5,928 -9,657 -9,291 -8,883 -15,283 172 1,251 6,002 6,105 19,397

(注1)借入金額は、償還額を差し引いた各年度末時点での累計額。
(注2)平成4年度に133億円を国庫納付(年金財源強化事業)。4年度以降の累積利差損益額は国庫納付後の額。
(注3)時価の累積利差損益は、簿価の累積利差損益に年度末評価損益を加算。

新たな年金積立金自主運用の仕組み


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