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健政発第1136号
医薬発第 940号
障 第 625号

平成10年10月20日

各都道府県知事 殿

厚生省健康政策局長

厚生省医薬安全局長

厚生省大臣官房障害保健福祉部長


医療分野における「コンピュータ西暦2000年問題」への対応について

 コンピュータのプログラムが西暦2000年以降の日付に対応していない場合にシステムが正常に機能しない、いわゆる「コンピュータ西暦2000年問題」(以下「2000年問題」という。)については、平成10年9月11日付けで高度情報通信社会推進本部(本部長:小渕恵三 内閣総理大臣)にて決定された「コンピュータ西暦2000年問題に関する行動計画」(以下「行動計画」という。)により、対応が必要な各領域において官民を挙げた具体的な行動が求められている。
 行動計画において、「医療」は民間における2000年問題への対応中、特に重要な分野と位置づけられており、医療機関、医療用具製造業者等においては、行動計画の別添2「民間企業コンピュータ西暦2000年問題総点検事項」(以下「総点検事項」という。)を参考としつつ、模擬テストの実施、危機管理計画の策定、対応状況に関する情報の提供等を含めた自主的な総点検を行うことが求められているところである。
 これを踏まえ、医療用具製造業者等においては、今般、薬事法上の医療用具について、その安全性を確認するとともに、医療機関等に対して当該安全性情報を適切に提供する必要があることから、2000年問題への対応について、別記1のとおり、その推進を図ることとしたので、貴管下関係業者に対し周知徹底方お願いする。
 また、各医療機関においても、医療用具製造業者等に対して安全性確認を行う等、必要な対応が求められるところであるので、別記1の医療用具関係業者の対応も念頭に置きつつ、別記2のとおり、貴管下医療機関において適切な対応がなされるよう、周知徹底方お願いする。
 なお、本通知の写しを日本医師会会長、日本歯科医師会会長、日本薬剤師会会長、日本看護協会会長、日本助産婦会会長、日本病院会会長、全日本病院協会会長、日本病院薬剤師会会長、日本医療法人協会会長、全国自治体病院協議会会長、日本精神病院協会会長、日本私立医科大学協会会長、文部省高等教育局医学教育課大学病院指導室長、法務省矯正局医療分類課長、日本臨床工学技士会会長、保健医療福祉情報システム工業会会長、日本医療機器関係団体協議会会長、在日米国商工会議所医療機器小委員会委員長、欧州ビジネス協議会医療機器委員会委員長及び財団法人医療機器センター理事長宛に発出していることを申し添える。



別 記 1

1 2000年問題に関する医療用具の市販後安全対策について

(1)医療用具の製造業者若しくは輸入販売業者又は外国製造承認取得者若しくは国内管理人(以下「製造業者等」という。)は、その製造し、若しくは輸入し、又は承認を受けた医療用具(以下「当該医療用具」という。)について、行動計画の別添2の総点検事項に留意しつつ、以下の取組みを行うこと。
 特に、別紙1に示す医療用具(以下「優先医療用具」という。)については、患者の多少にかかわらず、2000年問題によってその生命に影響を与える可能性が否定できないものであることにかんがみ、2000年問題への迅速かつ確実な対応が行われるよう万全を期すこと。

ア 役員等における基本認識の形成、関与及び取組体制
 製造業者等は、2000年問題に関する情報提供及び必要な対応を実施するにあたり、2000年問題担当役員、統括部署及び使用者たる医療機関等からの連絡窓口について明確化するなど、具体的な取組体制について速やかな確立を図ること。
イ 現状評価及び対応策の策定
 製造業者等は、2000年問題により当該医療用具に生じることが予想される問題点及び当該問題点への対応策について直ちに把握すること。
ウ コンピュータ・システム等の修正及び模擬テスト
 製造業者等は、当該医療用具のうち日付管理プログラム等の改良等が必要とされるものについては、ソフトウェアのインストール、基板の交換等の改修作業などの具体的な作業(以下「修正作業等」という。)に直ちに着手するとともに、可及的速やかに対応が完了するよう努めること。
 なお、当該医療用具がコンピュータネットワークを形成することにより、システムの一部として組み込まれる場合にあっては、単体での作動状況のみならず、ネットワークを介して入力されるデータによる作動状況及びネットワークにより出力されるデータの信頼性など、入出力機能を含むシステム全体の安全性の確保を図ることや、これまで当該医療用具に蓄積されたデータ等の情報が、西暦2000年以降も信頼性をもって扱うことができるのかどうかの確認についても、当該システムを保有する医療機関や医療情報システムメーカーと協力しつつ行うこと。また、製造業者等は、修正作業等が行われた当該医療用具について、模擬テストの実施により、修正されたシステム等が問題なく動作することを確認すること。
 この模擬テストについては、優先医療用具においては本年12月末までに、また、優先医療用具以外の医療用具においては平成11年6月末までに、それぞれ完了するよう努めること。
エ 危機管理計画の策定
 製造業者等は、2000年問題に起因する不測の事態に備え、危機管理計画の策定を行うこと。
 なお、危機管理計画に盛り込む項目例については、別紙2のとおりである。
オ 対応状況に関する情報の提供
 これらを踏まえ、製造業者等は、2000年問題によって当該医療用具に生じると予想される問題点及び当該医療用具における「問題なし」若しくは「修正作業等が必要」などの状況について、判明次第速やかに、卸及び代理店など販売業者を通じて、納入先の医療機関等に対し情報提供を行うとともに、修正作業等を鋭意推進すること。また、インターネット等を積極的に活用し、医療関係者のみならず、一般の国民に対しても広く情報提供に努められたいこと。
 なお、厚生省としても、ホームページ(http://www.mhw.go.jp)に「厚生省におけるコンピュータ西暦2000年問題への取組みについて」のページを開設し、収集した情報について幅広く提供していくこととしている。
(2)製造業者等は、これらの過程で、2000年問題によって医療用具に不具合が発生し、患者等の健康に影響が生じるおそれがあることを知ったときは、薬事法第77条の4の 2及び薬事法施行規則第64条の5の2に基づき、定められた期間内に厚生大臣あて医 療用具不具合症例報告等を行うこと。
 その際、修正作業等の詳細についても併せて報告すること。

(3)今後、本年12月中に、各都道府県を通じ、製造業者等に対して、2000年問題への対応状況に関する調査を実施する予定であるので、よろしく了知ありたいこと。

2 2000年問題への対応に関するプログラム改良等の取扱いについて

 2000年問題への対応における修正作業等については、当該医療用具の承認を受けた性能、安全性等に影響を与えない限り、既存の医療用具の修理とみなし、製造業者の他、修理業者において実施しても差し支えないこと。

3 2000年問題に起因する回収の取扱いについて

 製造業者等は、総点検の結果に応じて必要があれば、速やかに回収の措置を講ずること。
 また、製造業者等は、回収に着手したときは、薬事法第77条の4の3及び薬事法施行規則第64条の5の3に基づき、厚生大臣あて速やかに報告を行うこと。



別 記 2

医療機関に求められる2000年問題への対応について

1 自主的総点検の実施

 各医療機関は、その保有する医療用具等について、行動計画の別添2の総点検事項を参考としつつ、責任者又は担当部門の明確化、模擬テストの実施、危機管理計画の策定など適切な対応を行うこと。
 特に、優先医療用具及び別紙3に示す医療情報システム(以下「優先医療情報システム」という。)については、患者の多少にかかわらず、2000年問題によってその生命に影響を与える可能性が否定できないものであることにかんがみ、その安全性確認が迅速かつ確実に行われるよう万全を期すこと。

2 安全性確認について

 医療用具製造業者等へは、別記1にあるように、その安全性情報を医療機関等に対して適切に提供するよう周知しているところであるが、各医療機関においても保有する医療用具について、製造業者等へ安全性確認を行う等適切な対応を行うこと。
 また、当該医療用具がコンピュータネットワークを形成することにより、システムの一部として組み込まれる場合にあっては、単体での作動状況のみならず、ネットワークを介して入力されるデータによる作動状況及びネットワークにより出力されるデータの信頼性など、入出力機能を含むシステム全体の安全性の確保を図ることや、これまで当該医療用具に蓄積されたデータ等の情報が、西暦2000年以降も信頼性をもって扱うことができるのかどうかの確認についても、別記1にあるように、各医療機関においては、医療用具製造業者等の協力を得つつ、医療情報システムメーカーに対して安全性確認を行う等適切な対応をとること。

3 その他の医療情報システムへの対応

 なお、2000年問題によって患者の生命に直接影響を与えるものではないが、医事会計システム、発生源入力システム及び臨床検査部門システム等の医療情報システムにおいても、医療機関の円滑な業務遂行に影響を与える可能性があることから、医療情報システムメーカーへの照会等適切な対応をとること。

4 2000年問題への対応状況に関する調査について

 今後、各都道府県を通じて、医療機関に対し、2000年問題への対応状況に関する調査を実施する予定であるので、よろしく了知ありたいこと。



(別 紙 1)

患者の多少にかかわらず、2000年問題によってその生命に影響を与える可能性があると考えられる医療用具(優先医療用具)

器具器械6 呼吸補助器  
人工呼吸器 成人用人工呼吸器140602029
小児用人工呼吸器140602045
酸素供給装置 酸素発生式供給装置140608021
酸素濃縮式供給装置140608047
液体酸素気化式供給装置140608063
器具器械7 内蔵機能代用器  
心臓ペースメーカ及び関連機器 植込み型心臓ペースメーカ140204029
体外型心臓ペースメーカ140204061
人工腎臓装置 透析用監視装置140402027
多人数用透析液供給装置140402042
個人用透析装置140402069
人工心肺装置 人工心肺用ポンプ140406025
その他の血液体外循環機器 補助循環装置140499023
人工膵臓 人工膵臓140614000
腹膜灌流用装置 自動腹膜灌流装置140802021
器具器械8 保育器  
保育器 閉鎖循環式保育器140610028
器具器械12 理学診療用器具  
除細動器及び関連機器 植込み型除細動器140612048
脳・脊髄電気刺激装置 脳・脊髄電気刺激装置149910008
器具器械21 内蔵機能検査用器具  
集中患者監視装置及び関連機器 集中患者監視装置及び関連機器
060602008
一人用患者監視装置及び関連機器 ベッドサイドモニタ060604028
パルスオキシメータ060604044
新生児モニタ060604060
分娩監視装置060604086
経皮血中ガス分圧モニタ060604103
医用テレメータ及び関連機器 専用テレメータ060606022
多用途テレメータ060606048
器具器械74 医薬品注入器  
医薬品注入器 輸液ポンプ100606025
自動点滴装置100606041
植込み型医薬品注入器100606067

 以上の優先医療用具については、現時点での知見に基づき特定したものであり、上記以外の医療用具のうち特殊なものについても、今後、優先医療用具として追加される可能性があり得ることに留意すること。



(別 紙 2)

医療用具の製造業者等において危機管理計画に含むべき項目例

1 危機管理計画の策定及び策定に当たって必要な事項

(1)危機管理体制を構築するための組織の整備及び基本方針の策定

(2)危機管理計画の策定及び危機対応に当たっての責任の所在の明確化

(3)危機管理体制の整備スケジュールの策定

2 危機発生による影響の評価

(1)納入済みの医療用具に誤作動等が生じた場合に発生し得る事態の想定

(2)誤作動等が発生した場合に医療に対し及ぼす影響(患者への健康影響のみならず当該医療用具を使用した医療従事者に対する影響も含む。)の想定

(3)誤作動等が発生した医療用具に代替するもの(以下「代替医療用具」という。)の確保の有無及び数量等の見積もり

3 危機への対応

(1)代替医療用具の評価及び最善の危機対応方策の選定

(2)納入済みの医療用具に誤作動等が生じた場合の対処マニュアルの策定

・システムごとの修理又は復旧の方法(修理、交換、又は外部調達など)
・修理又は復旧の形態(手動による修理、又は自動システムの使用)
・修理又は復旧に至るまでの代替措置(代替医療用具の貸与など)
・誤作動等の事態が発生した場合の連絡体制(誤作動等により、医療行為に際し重大な影響を与えるような場合における情報提供等の手段を含む。)

(3)危機対応の予想時期の想定及び誤作動等が生じた場合の対処チームなどの設置

(4)2000年1月1日等問題の集中発生が想定される日における対応手続の設定(卸、代理店など販売業者等も含めた対応スタッフの一時的な常駐など。)

4 危機管理テストの実施・検証

(1)危機管理テストチームの設置及び危機管理に当たる要員、資材等の確保

(2)危機管理計画のテストプランの策定及びテストの実施及びテストプランの検証



(別 紙 3)

患者の多少にかかわらず、2000年問題によってその生命に影響を与える可能性があると考えられる医療情報システム(優先医療情報システム)

1 薬剤部門システム

・薬剤部門業務を管理するシステム。
・処方箋データ確認、自動調剤、薬品管理等を行うもの。
・他の医療情報システムと接続され連動して運用される場合もある。

2 放射線部門システム

・放射線部門業務を管理するシステム。
・特に放射線治療の情報処理を行うもの。
・他の医療情報システムと接続され連動して運用される場合もある。

3 透析部門システム

・透析部門業務を管理するシステム
・多数の透析装置の集中監視、透析条件の透析装置への自動設定、透析記録管理等を行うもの。

 以上の医療情報システムについては、現時点での知見に基づき特定したものであり、上記以外の医療情報システムのうち特殊なものについても、今後、優先医療情報システムとして追加される可能性があり得ることに留意すること。



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