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健政発第1079号
保医発第1350号
医薬発第1155号
平成11年9月30日

各 都 道 府 県 知 事 殿

厚 生 省 健 康 政 策 局 長

厚 生 省 保 健 医 療 局 長

厚 生 省 医 薬 安 全 局 長


医療分野におけるコンピュータ西暦2000年問題に係る都道府県危機管理計画
の策定等について(通知)

 コンピュータ西暦2000年問題(以下「2000年問題」という。)については、各都道府県において危機管理計画の策定が進められているところであるが、同危機管理計画の策定にあたり、医療分野については、越年時に2000年問題に起因する患者への重大な健康被害が発生した場合、又は集団災害が発生した場合等に、迅速かつ十分な対応が可能となるよう、下記の点に留意しつつ、越年時等の情報連絡体制の確保等必要な危機管理体制の構築が図られるようお願いする。
 なお、本通知の写しを日本医師会会長、日本歯科医師会会長、日本薬剤師会会長、日本看護協会会長、日本助産婦会会長、日本病院会会長、全日本病院協会会長、日本病院薬剤師会会長、日本医療法人協会会長、全国自治体病院協議会会長、日本精神病院協会会長、日本透析医会会長、日本私立医科大学協会会長、日本臨床工学技士会会長、保健医療福祉情報システム工業会会長、日本医療機器関係団体協議会会長、在日米国商工会議所医療機器小委員会委員長及び欧州ビジネス協議会医療機器委員会委員長宛に発出していることを申し添える。

1 都道府県危機管理計画の策定について

(1)基本的考え方

 2000年問題については、予測を越えた被害の発生や情報連絡手段の未整備等により対応が遅れることも考えられる。このため、これらの事態を想定して予め所要の体制を確保することが必要であり、都道府県が策定する危機管理計画においては、医療分野について、以下の事項に留意しつつ、具体的な記載に努めること。
 また、都道府県は、実情に応じて、保健所等を中心とした二次医療圏ごとの危機管理計画を策定すること。
 なお、各都道府県で策定した計画の内容については、関係行政機関、管下の医療機関、医療用具製造業者等及び地域住民等に対し、十分な周知を図ること。

(2) 2000年問題対策本部の設置

ア 越年時等における2000年問題発生に備えて、医療分野の危機管理体制の強化を図るため、都道府県単位で「2000年問題対策本部」(以下「対策本部」という。)を設置すること。なお、都道府県全体で対策本部等が設置される場合においては、責任者の設定など医療分野における指揮命令系統等を明確にした上で、併設することとしてかまわない。

イ 対策本部は、総括責任者、役割ごとの担当者を定めるなど、指揮・情報伝達系統を明確にし、問題発生時に速やかな意志決定が可能な体制を整備すること。

ウ 都道府県の実情に応じ、保健所等の出先機関の活用や市町村との連携を図り、二次医療圏ごとに2000年問題に対する危機管理体制を構築すること。

エ 地域における問題発生への対応については、自治省の定めるレベルが参考となるが、2000年問題により多数の医療機関で患者の生命に被害が発生し、地域における通常の医療体制では対応が困難な場合などには、災害対策基本法に基づく災害に準じた対応を実施するため、円滑に災害対策本部を設置できるよう、関係部局間の連携のもとに体制整備を図ること。

(3)越年時に向けての対応

ア 医療機関における対応の徹底

 管下の医療機関に対し、医療機器等の安全性確認(プログラムの修正、模擬テストの実施等)、危機管理計画の策定など、引き続き障害発生の防止に向けた取組みの徹底を図ること。

(1) 重点医療機関について
 重点医療機関については、9月末までに危機管理計画の策定及び医療機器の修正等を完了するよう指導の徹底をお願いしているところであるが、取組みの遅れている重点医療機関に対しては、個別に直接対応し、取組みが遅れている理由を確認するなど、取組みが促進されるよう徹底した指導を行われたい。
 危機管理計画の策定指導に当たっては、平成11年6月30日付け健政発第743号・医薬発第810号貴職宛厚生省健康政策局長・医薬安全局長連名通知において示した「医療機関におけるコンピュータ西暦2000年問題策定指針」(以下「策定指針」という。)を有効活用されたい。
 また、医療用具製造業者等の対応が不十分なために取組みが遅れていることが判明した場合には、当該医療用具製造業者等の名称を医薬安全局に報告されたい。その報告に基づき、医薬安全局は当該医療用具製造業者等へ直接又は都道府県を通じて指導等を行う予定である。

(2) 重点医療機関以外の医療機関について
 重点医療機関以外の医療機関については、2000年問題について啓発・広報を行い、医療機関の実状に応じて医療機器等の安全性確認及び危機管理計画の策定が図られるよう周知徹底をお願いしたい。
 医療機関への周知徹底に当たっては、平成11年3月31日付け健政発第382号・医薬発第427号貴職宛厚生省健康政策局長・医薬安全局長連名通知において示した「医療分野における「コンピュータ西暦2000年問題」への対応〜自主的総点検表〜」、「医療用具製造業者等リスト」及び「2000年問題発生の恐れがある製品リスト」並びに策定指針を活用するなどにより対応されたい。

イ 在宅療養患者への対応

 在宅において人工呼吸器等の優先医療用具を使用している患者(以下「在宅優先医療機器使用患者」という。)及びその使用する医療機器に関する情報収集に努めるとともに、患者及びその家族へ2000年問題や緊急時の対応等に関する情報提供を行うこと。
 また、在宅優先医療機器使用患者の主治医に対しては、患者が使用している医療機器について、2000年問題や緊急時の対応等に関する十分な説明を行うよう啓発すること。

ウ 情報連絡体制の整備

 「2 医療分野における2000年問題に係る情報連絡体制について」を踏まえ、越年時における障害発生状況に関する医療機関からの情報収集、国への報告及び医療機関等への情報提供を行うための連絡体制をあらかじめ整備しておくこと。また、連絡体制の整備に当たっては、重点医療機関等の連絡窓口(担当者、連絡先等)を記載したリストを、越年前のできるだけ早い時期に作成しておくこと。
 また、迅速な情報の収集・提供のための手段として、ファックス、電話、防災無線などの通信機器をあらかじめ適当数用意するとともに、不測の事態に備えて、これらの代替機器についても配慮すること。なお、広域災害・救急医療情報システムを導入している自治体については、必要に応じ補助手段として当該システムの活用を図ること。

エ 患者受入れ体制等の確保

 大量の患者発生等に備えて、患者の受入れ拠点となる重点医療機関のうち災害拠点病院、救命救急センター等に対し、患者の受入れ体制確保に係る越年時の待機体制及び医薬品、医療用具、その他災害時に備えた必要な物資の備蓄について、所要の指導を行うこと。
 また、越年時に医療需要が増大する可能性もあることから、休日夜間等の輪番体制についても、医師会等の協力を得て、余裕のある体制確保に努めること。

オ 通常の対応では困難な場合に備えての体制づくり

 通常の対応では困難なほど医療需要が増大した場合における災害対策基本法に基づく対応について、市町村等行政機関及び医療機関等関係機関と事前に調整を行うこと。

カ 模擬訓練の実施

 今後、政府において、関係省庁、地方公共団体、民間事業者等の参加の下に、2000年問題に係る情報連絡等の訓練を行う予定であるので、各都道府県においては、その機会を通じて、あるいは必要に応じて独自の訓練を実施するなどにより、越年時等に迅速な情報連絡が行われるよう配慮されたい。

(4) 越年時における対応

ア 情報の収集

 越年時における医療機関における障害発生の有無及び障害発生状況に関する情報を収集し、厚生省へ報告すること。

イ 情報の提供

 医療機器等における障害発生に関する情報を国、医療機関から収集し、管下の医療機関等に対し情報提供を行うこと。

ウ 医療提供体制の確保

 2000年問題による障害発生に備えて、地域における各医療機関の準備状況及び対応能力等を把握するとともに、十分な患者受入れ体制を確保しておくこと。その際、越年時は、医療機関における患者受入れ能力が通常でも低下する時期であることに留意すること。
 また、広域災害・救急医療情報システム等を活用するなどにより、管下の医療機関における患者受入れの可否、空床状況等の把握に努めること。

エ 多数の重症患者が発生した場合の対応

 管下で多数重症患者が発生した場合には、患者受入れについて医療機関との調整を行うとともに、管下の医療機関のみで対応できない場合には、隣接都道府県との連絡調整を行うこと。
 また、必要な場合には、消防機関等との連携のもとに、患者の搬送先について調整を行うこと。

(5)計画の見直し等

ア 都道府県危機管理計画の見直し

 都道府県においては、今後の訓練や医療機関等への指導等を通じて、適宜、危機管理計画の内容を見直し、見直した場合は、速やかにその旨を関係行政機関、管下の医療機関、医師会等関係団体に対し周知を図ること。

イ 都道府県危機管理計画の提出について

 都道府県においては、医療分野における2000年問題に係る危機管理計画(都道府県全体の危機管理計画における医療分野に係る部分)を平成11年10月31日までに作成し、厚生省健康政策局指導課あて、文書及び電子媒体(フロッピーディスク又は電子メール(shidoka@oak.ocn.ne.jp))にて送付すること。
 なお、計画を提出した後に見直しを行った場合は、当該見直し後の計画を速やかに提出すること。

2 医療分野における2000年問題に係る情報連絡体制について

(1)趣 旨

 2000年問題による国民の生命・健康への影響を可能な限り防止するため、以下のとおり、医療分野における被害状況、対応状況等について迅速な情報収集を行う体制を整備するとともに、同種被害の発生を極力抑える観点から必要な情報を速やかに関係機関に伝達する体制を確保すること。

(2)情報の収集・報告

ア 報告すべき情報の範囲

 都道府県は、越年時に以下の障害発生に関する情報を医療機関から収集し、厚生省へ報告すること。

(1) 2000年問題が原因と疑われる、医療機器等の誤作動により、患者の生命・健康に重大な影響が及んだ場合又はその恐れがある場合

注)単なる日付の記載異常、画像の乱れのように、直接には患者の生命・健康に影響しない誤作動等は対象外とすること。

(2) 2000年問題が原因と疑われる停電・断水・ガス供給の障害により、患者の生命・健康に重大な影響が及んだ場合又はその恐れがある場合

(3) 同時・多数の重症患者(概ね15名以上)の発生による診療の混乱を来した場合

イ 体制を確保する期間

 厚生省は、都道府県等関係機関との情報連絡を行う体制として、以下の期間必要な体制を確保することとする。ついては、都道府県においても同期間中、厚生省及び医療機関等と情報連絡を行うために必要な体制を確保されたい。
 なお、「特別なうるう日」である平成12年2月29日前後についても、越年時の状況等を踏まえて必要な体制をとることを予定しており、その内容については別途連絡する。

(1) 厳重警戒期間
 平成11年12月31日正午から平成12年1月1日の厚生省から厳重警戒解除の連絡があるまで(概ね午後5時を目途)

(2) その他の期間
 厳重警戒期間以外の年末年始の期間についても、厚生省は、都道府県や医療機関等の関係機関との連絡等が可能な体制を確保することとしており、詳細は追って連絡する。

ウ 収集対象及び時期

(1) 障害発生報告
 都道府県は、管内の医療機関に対し、上記アに該当する障害が発生した場合、可及的速やかに都道府県へ必ず報告するよう指導すること。
 都道府県は、医療機関から障害発生報告を受けた場合、可及的速やかに当該情報を厚生省へ必ず報告するとともに、必要な対応をとること。

(2) 障害対応結果(経過)報告
 (1)の障害発生報告において患者に被害が発生している場合には、当該医療機関は患者への対応を一通り終えた時点で、障害対応結果(経過)報告を都道府県に送付するよう周知すること。なお、医療機関から障害発生報告を受けた後、概ね6時間以内に障害対応結果(経過)報告がない場合、都道府県は、対応状況等について医療機関へ確認すること。

(3) 定時報告
 ・ 厳重警戒期間中については、都道府県が選定した重点医療機関に対し、都道府県は(1)の障害発生の有無に関わらず、一定時刻(午前2時、午前8時、午後2時を定時報告時点として現在予定)における発生状況を1時間以内(午前3時、午前9時、午後3時目途)に都道府県へ報告するよう指導すること。

 ・ 都道府県は、定時報告時点までに報告されたすべての障害発生報告を集計し、定時報告時点から2時間以内(午前4時、午前10時、午後4時目途)に厚生省へ定時集計報告を行うこと。

 ・ 厳重警戒期間以外の年始の期間については、都道府県は、一定時刻(概ね午後2時を予定)までの障害発生報告について集計した定時集計報告を、厚生省へ報告すること。

エ 報告手段及び厚生省の連絡窓口

 各報告は、原則としてファックスを用いて行うこととする。なお、報告様式及び厚生省の連絡窓口等については、別途連絡する。

(3)障害発生等に関する情報提供

ア 情報の提供

 ・ 厚生省は、下記イに該当する情報について、ファックス等を用いて速やかに都道府県へ当該情報を提供する。

 ・ 都道府県は、国から得られた情報を、医療機関等へ提供すること。

 ・ なお、具体的な情報提供の方法については、別途連絡する。

イ 提供する情報

 2000年問題(その可能性がある場合も含む)の発生により患者の生命・健康に重大な影響が及んだ場合又はそのおそれがある場合の情報

(4)都道府県の体制整備

ア 都道府県は上記業務を行うため連絡窓口(担当者、電話番号、ファックス番号等)を整備するとともに、予め障害発生時等における情報連絡体制について医療機関等に周知徹底を図ること。

イ 都道府県においては、通信手段としてファックスの他、トラブルに備え、代替通信機器を用意するほか、携帯電話、インターネットによる情報通信手段についても確保すること。


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