健医発第 989 号
平成11年 7月 9日
各国立病院長 殿
各国立療養所長 殿
各国立高度専門医療センター総長 殿
厚生省保健医療局国立病院部長
コンピュータ西暦2000年問題対応にかかる
危機管理計画の改訂について
- 国立病院・療養所における西暦2000年問題への対応については、平成10年11月に作成した「国立病院・療養所等におけるコンピュータ西暦2000年問題対応実施要綱及びマニュアル」に基づき実施しているところであるが、平成11年3月末までに各施設において策定した危機管理計画については、施設によって、内容にかなりの差があるところである。
危機管理計画は、最新の情報を踏まえ、改訂作業を継続的に行うことによって、より適切なものとなり、万一の際に的確な対応が可能となるものである。
このため、各施設から報告されている危機管理計画を参考に、より詳細かつ具体的な「国立病院・療養所における西暦2000年問題危機管理計画モデル例」(以下「モデル例」という。)を策定し、危機管理計画の改訂に資することとしたものである。
貴職におかれては、既に策定した危機管理計画について、下記事項に留意のうえ、「モデル例」で提示した事項については、最低限盛り込むこととし、施設毎の特色に応じて、さらに必要な事項を付加したうえで、万一の際に的確な対応が可能となるよう改訂されたい。
また、国立病院部、地方医務(支)局にかかる危機管理計画については、現在検討中であり、追って通知する旨申し添える。
なお、「モデル例」に参考資料として掲載している厚生省及び日本医師会作成の「医療機関におけるコンピュータ西暦2000年問題危機管理計画策定指針」の趣旨については、本通知及び「モデル例」に既に取り入れているので、了知されたい。
記
1.危機管理計画策定の意義
- (1)医療機関において、危機管理計画を策定する目的は、2000年問題に起因する被害の発生を防止し、「患者の生命・健康を守ること」にある。
したがって、危機管理計画においては、「患者の安全性確保」を主眼に、2000年問題が発生する時点における、現場での患者への対応方法を明らかにするという視点が不可欠である。そして、各々の医療機関が、限られた資源を活用して対応するための、現実的かつ具体的な危機管理計画を策定することが重要である。
- (2)患者の生命・健康に影響を及ぼす医療機器、医療情報システム等の把握及びそれらの安全性確認などの万全の対策を講じたとしても、不測の事態の発生が考えられることから、対応体制、対応手順などを定めた危機管理計画の策定が重要である。
この危機管理計画については、各施設の設備・機能、人員等に応じて、問題発生時に迅速かつ適切な対応が図れるよう、具体的な内容のものでなければならない。
- (3)医療機関自らの対応状況、関連する医療機器等の納入業者や保守点検業者等の対応状況、さらには危機管理計画の職員に対する、教育・訓練の過程で発見された問題点等を踏まえて、適宜改訂を行い、より適切なものに作り直していく必要がある。
2.「モデル例」の基本的考え方
- 本「モデル例」は、救命救急センター、ICUを有する病棟、循環器病棟、小児科病棟、結核病棟、精神病棟、重心病棟、筋ジス病棟を有する仮想の7病棟350床の病院を想定し、具体的な対応体制、対応手順などを定めた危機管理計画のイメージを示したものである。
3.「モデル例」に基づく具体的な危機管理計画の改訂のポイント
- (1)病棟毎の特性を反映するため、病棟単位で待機体制・代替手段等を策定すること。
- ア.看護婦とともに医師の責任体制を明確化すること。
- イ.12月31日夕方の申し送り時点で、患者の状況とともに生命に影響を与える可能性のある機器等を最終確認し、施設に設ける対策本部への報告を実施すること。
- ウ.具体的な待機体制表、対応方法を作成すること。
- (2)各部門の対応について、12月下旬から1月3日までの具体的な作業マニュアルを時系列的に策定すること。
- (3)施設長以下施設幹部は、越年の待機体制のもと、待機を行うこと(対策本部の設置)。
- (4)すべての部門について、システム等毎に担当者、連絡先、代替方法を具体的に策定すること。
- (5)コンピュータシステムの動作確認は、各システムとの連携を考慮すること。
- (6)模擬テストの実施等の事前確認が不可能であった医療機器等を設置しているすべての部門について、動作確認計画を作成すること。
- (7)「コンピュータ西暦2000年問題対応確認票シール」を貼付したすべての医療機器について、貼付後の模擬テスト完了日等の記入漏れがないよう注意すること。
- (8)異常発生時の施設に設ける対策本部への報告にあたっては、患者等への対応を最優先とすること。また、正常稼働の場合も対策本部への報告を行うこと。
- (9)必要に応じて、転院先等の確保を行うこと。
- (10)必要に応じて、患者家族に対する事前説明を行うこと。
- (11)在宅医療への対応を行うこと。
- (12)ライフラインの供給停止も想定し、仮設資機材配置、飲料水の貯蔵量等を具体的に策定すること。
- (13)危機管理計画に基づく職員の教育・訓練を行うこと。
4.報告期日等
- (1)危機管理計画は、平成11年9月末日までに改訂作業を完了すること。
- (2)改訂にあたっては、9月末現在で想定される12〜1月の勤務体制等によることとし、確定時に変更があれば、差し替えること。
- (3)改訂作業完了後、国立病院・療養所にあっては地方医務(支)局を経由して国立病院部あて、国立高度専門医療センターにあっては国立病院部あて、速やかに提出すること。