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全国厚生関係部局長会議資料(老人保健福祉局)


 

1.老人保健の基盤整備安定化のための措置等について

(1)特別保健福祉事業

 被用者保険の拠出金負担増の緩和を図るとともに、老人保健制度の基盤の安定化を図るための措置として、厚生保険特別会計の特別保健福祉事業資金(1.5兆円)の運用益を、被用者保険における老人保健制度の基盤安定化等のために充てることとしており、平成2年度以来特別保健福祉事業を実施してきているが、平成9年度は、600億円を助成することとし、引き続き被用者保険の保険者の拠出金負担の軽減等を図ることとしている。
 ア.拠出金負担助成(調整助成)
 老人保健拠出金負担が重い被用者保険の保険者に対し、財政力等に応じ重点的に助成する。
 イ.特別事業助成
 被用者保険の保険者が行う在宅介護推進等事業等(老人保健施設の設備を含む)に対して助成する。
(2)老人保健健康増進等事業
 本事業は、老人の保健及び健康増進等を図るため、先駆的な老人保健、老人福祉、健康増進事業等に対する助成を行い、老人保健基盤の安定化に資することを目的とし、平成9年度においては、50億円を確保することとしている。
 本補助金の交付に当たっては、本事業の趣旨に沿った先駆的、モデル的な老人保健福祉事業に対して交付することとしているので、老人保健担当部門と老人福祉担当部門が十分連携を図り、老人保健福祉事業の積極的な取り組みをお願いしたい。

 

2.痴呆性老人対策の概要について

 人口の高齢化、とりわけ後期高齢者の増加とともに、痴呆性老人が著しく増大していることから、痴呆性老人対策が国民的課題となっている。
 このため、国においては高齢者関係三審議会の合同委員会として設置された痴呆性老人対策に関する検討会からの提言(「痴呆性老人対策に関する検討会報告」平成6年6月28日)を踏まえ、痴呆性老人対策に総合的に取り組むこととしており、新ゴールドプランにおいても新たに「痴呆性老人対策の総合的実施」を今後取り組むべき高齢者介護施策の基本的枠組みの一つとして掲げ、その施策の具体的目標として、(1)知識の普及・啓発、相談・情報提供体制の整備、(2)発症予防、早期発見・早期対応、(3)痴呆性老人の治療・ケアの充実、(4)痴呆に関する治療法の確立・調査研究の推進、(5)痴呆性老人の権利擁護に重点を置いて施策を推進しているところである。
 具体的には、老人性痴呆疾患センター及び在宅介護支援センターの整備を推進することにより相談・情報提供体制の充実を図るとともに、健康づくり及び老人保健事業の充実やかかりつけ医、保健婦、介護職員等を対象とした痴呆研修の実施により、発症予防、早期発見・早期対応のための施策を進めているところである。
 また、ホームヘルパーの増員やショートステイ及びデイサービスセンターの整備の促進など各種在宅対策の推進に加え、痴呆性老人向け毎日通所型デイサービスセンターの整備を図るとともに、施設対策として老人性痴呆疾患治療・療養病棟、老人保健施設痴呆専門棟及び特別養護老人ホームの整備の促進に努め、治療・ケア体制の一層の充実を図っているところである。
 さらに、検討会報告において新しいタイプのサービスとして検討が提言された痴呆性老人のグループホームについては、(福)全国社会福祉協議会において、平成6・7年度に「痴呆性老人のためのグループホームのあり方に関する調査研究事業」を実施し、先般、当該報告書を各都道府県及び指定都市に送付したので、活用方お願いする。
 また、平成8年度においては、「痴呆性老人のためのグループホームの運営に関する 調査研究事業」を実施しているところであり、今後の制度化の参考に資することとして いる。
 なお、介護保険制度においてグループホームを保険給付(在宅サービスの一つ)として位置付けていることから、平成9年度においては、痴呆対応型老人共同生活援助事業(痴呆性老人向けグループホーム)を創設することとしている。

 

3 老人保健福祉計画に基づく施策の推進

(1)老人保健福祉計画に基づく基盤整備の着実な推進

 ア.新ゴールドプランの中間地点としての平成9年度
 平成9年度は、新ゴールドプランの3年度目となるが、同時にプランの終了年度である平成11年度まで残すところあと3年度となる中間地点である。
 平成2年度からスタートしたゴールドプラン、平成7年度からスタートした新ゴールドプランは、いずれも、わが国が現在の北欧並みの高齢社会に急激に変化する20世紀の最後の10年間に、高齢者の保健福祉サービスの基盤を早急に整備することを目的として推進されてきた。とりわけ、新ゴールドプランの整備目標は、全国の地方公共団体において、それぞれの地域のサービス必要量を踏まえて作成した老人保健福祉計画の集計値を基礎においている。必要なサービス基盤を整えた上で、それぞれの地域が21世紀の本格的な高齢社会を迎えることができるようにすることが、新ゴールドプラン達成を目指す意義である。
 ゴールドプランによる保健福祉サービス基盤整備は、「高齢者が介護を要する状態になった場合でもできる限り住み慣れた家庭や地域で生活し続けられるよう、在宅サービスの充実を図るとともに、居宅での生活が困難になった場合は待つことなく、いつでも施設サービスを利用できるよう保健福祉施設を拡充する」ことを、基本的な考え方としている。
 この考え方に照らして新ゴールドプランの達成状況をみると、まず量的には、事業ごとに進捗の状況に差がみられ、また、地域ごとの進捗の状況をみると、特に在宅サービスの分野でかなりの差がみられる状況となっている。
 目標値に向けた整備の遅れている地域については、整備が遅れている理由についての分析、その分析に基づく対策の実施と、目標値達成に向けた年次計画の策定など、地域差の解消に向けた取組が必要である。
 次に、その整備のあり方については、地域の一人一人の高齢者の生活を支えていくためにはどのようなサービスが必要かという視点に立って、在宅サービスのそれぞれのメニューの整備を行うとともに、メニュー相互間の、あるいは施設の入退所前後における施設・在宅サービス間の有機的な連携が不可欠になる。
 地域の一人一人の高齢者の具体的なニードに立脚したサービス提供が実現できることがゴールドプランの真の達成の意味であることを念頭に置いて、新ゴールドプランの中間年度である平成9年度の保健福祉サービスの整備・展開について、これまでの進め方を点検し、的確に推進していくことが求められる。

 イ.介護保険制度の導入を展望した基盤整備の課題

 平成9年度は、併せて介護保険制度の導入を展望した対応が求められている。
 21世紀の本格的な高齢社会において、高齢者の自立を支援し、その多様な生活を支える観点から、高齢者自身による選択を基本とする利用者本位の仕組みにより、保健・福祉・医療にわたる介護サービスを総合的・一体的に提供することを目的に、介護保険法案を国会に提出中である。
 介護保険制度では、
 (1) 要介護高齢者が、在宅での自立した生活を営んでいくために必要な介護サービス を総合的・一体的に受けられるよう専門的なケアマネジメントを行うことを重視していること
 (2) 在宅に関する給付について、介護を必要とする多くの方々が、できる限り住み 慣れた家庭や地域で生活を送ることができるよう24時間対応が行えるような水準 を目指していること
 (3) また、要介護高齢者の在宅での自立した生活を支援する観点から、痴呆性老人 向けグループホームや住宅改修サービス等の新たなサービスを実施すること
 となっており、これらを念頭に置きながら、平成9年度以降保健福祉サービスの整備、運営の充実を図っていくことが必要になる。

(2)高齢者福祉サービスの基本的方向

 高齢者保健福祉施策のこれまでの取組と今後必要になる取組を展望した平成9年度の位置付けは以上掲げたとおりであるが、これらを踏まえると、これまで進めてきたサービスの整備、運営の方法等について再点検することが必要となっている。
 今後の高齢者福祉サービスの基本的方向は、在宅重視の理念を踏まえ、
 (1) 個々の要介護者にとって在宅で生活を送るために必要な介護ニーズを適切に 把握・発掘すること
 (2) 要介護者にとって最も適切な在宅サービスメニューを組み合わせ、一体的・ 総合的に提供すること
 (3) このようなサービスの組み合わせ及び身近な地域における提供が可能になる ような介護サービス基盤の整備を行うこと
 (4) 施設は在宅での生活が困難な重度の要介護者に対する専門的な処遇を行うもの として位置づけられること
 が重要な柱となるものと考えられる。
 このような観点を踏まえた、各サービスの今後の整備及び運営の基本的考え方は以下の通りである。

 ア.在宅サービス
 介護保険制度において基盤整備必要量の大幅な増加が見込まれていることから、既存施策の拡充・既存資源の利用・民間活力の導入等多様な手法を活用して、従来の整備計画を前倒しすることも含めて積極的な整備を進める。また、地域の要介護者の在宅での生活を支えていくための内容の充実、相互の連携を進める。

 (1)在宅介護支援センター
 在宅介護支援センターは、在宅介護に関する総合的な相談に応じ、介護等に関するニーズを把握・発掘し、これに対応した各種の保健福祉サービスが総合的に受けられるように市町村等関係行政機関、サービスの実施機関等との連絡調整等の便宜を供与することを目的としている。
 さらに、介護保険制度導入後は、ケアマネージメントを担う機関として大きな役割を果たし、介護ニーズを把握・発掘し、最もふさわしい介護サービスに結びつけていく重要な役割を担うものである。
 このため、今後、個々の要介護高齢者に最も必要なサービスは何か、どのようなサービスを組み合わせて提供することが適切かを把握・判断するケアマネージメント機能の強化に留意する必要がある。
 したがって、身近な地域に在宅介護支援センターが配置されるようその整備の促進を図るとともに、サービスに関する情報提供・相談、居宅訪問等による要介護高齢者の状態把握及びサービスニーズの掘り起こし、必要かつ適切なサービスの組み合わせ、サービス提供機関との連絡調整などを積極的に実施し、在宅介護支援センターの機能強化を図ることが必要である。
 機能の強化に当たっては、サービス提供機能の付与、サービス相互間の連携が効果的と考えられるが、平成9年度からは、在宅介護支援センター、ホームヘルパーステーション及び訪問看護ステーションを一体的に整備し、その連携を図る「在宅保健福祉サービス総合化モデル事業」を実施することとしているので積極的対応を期待する。
 また、居宅訪問はすべての活動の基本になることから、訪問活動の低調な在宅介護支援センターについては、特段の指導をお願いしたい。

 (2)ホームヘルプサービス
 ホームヘルプサービスについては、家庭の事情等による多様なニーズへの対応が不十分であることが見受けられるとともに、資質の向上が大きな課題になっている。
 特に、介護保険制度においては、より一層、ホームヘルパーの資質の確保や多様なニーズに柔軟に対応できる体制が求められるようになるため、養成研修事業の充実に努められるとともに、巡回型・チーム運営方式の普及などサービス提供体制の再検討が必要である。
 今後とも、24時間ホームヘルプサービスの実施や非常勤ホームヘルパーの活用等も含め、それぞれの高齢者のニーズに応じた弾力的かつ計画的なサービスの提供に適した体制の確保に配慮願いたい。
 また、介護保険制度においては、体制の整備の状況ではなく、どのようなサービスをどれだけ提供したかが保険給付に当たって評価されることとなる。このような状況を展望して、平成9年度から要介護者のニーズにあったよりきめ細かなサービスを効率的に提供するため、現行の「人件費補助方式」に加え、サービス提供に応じて補助する「事業費補助方式」を導入することとしているので積極的対応を期待する。

 (3)ショートステイ
 ショートステイは、在宅での介護が一時的に困難となった場合における介護を担う家族に対する有力な支援の方法であることから、サービス提供体制の整備を進めるとともに、積極的な広報活動等により、利用促進・利用率の向上を図る必要がある。
 このため、介護者や高齢者の状況に応じて、あらかじめ利用計画を定めて計画的に利用できる計画利用方式や利用券方式の導入に努めるとともに、高齢者の在宅生活の援助という趣旨に留意しつつ、特定の者に偏った利用ではなく、可能な限り多くの在宅高齢者が利用できるよう、計画的な事業運営に配意願いたい。
 また、介護保険制度の導入も踏まえ、ショートステイ施設を他の在宅サービスと一体的に組み合わせて整備を進めることが必要である。このため、平成9年度から在宅複合型施設の設置条件である老人短期入所施設の定員を30人から20人に緩和し、在宅複合型施設の整備を進めることとしているので積極的に導入を図られたい。

 (4)デイサービス
 デイサービスは、在宅の要援護老人の自立した生活を支援するために重要なサービスであり、サービスを必要とする高齢者の身近で実施されることが必要である。
 このため、従来より地域の実情に応じ小規模なデイサービスセンターの整備や、老人福祉施設以外の保育所、市町村保健センター、公民館、小中学校、その他の既存施設の空きスペースを活用し柔軟な運営を行うよう指導してきたところである。
 平成9年度からは、過疎地などのサービス提供効率の低い地域や専用施設の整備が困難な地域においても、自宅の近くで必要なサービスが受けられるよう、デイサービス実施施設を核として公衆浴場や公民館等の既存施設の社会資源を有効活用した出前方式の「サテライト型デイサービス事業」を実施することとしているので、積極的に導入を図られたい。

 (5)痴呆性老人向けグループホーム
 通常の家屋や既存の病院・施設などを改造した小規模な住空間において、少人数の痴呆性老人が専属のスタッフによりケアを受けながら共同生活を送る「痴呆性老人向けグループホーム」は、痴呆性の老人が地域において家庭的な雰囲気の中で安心した生活を送れる新しいタイプのサービスとして注目されている。
 新ゴールドプランにおける施策の基本的枠組みにおいても、グループホームにおけるサービス提供の推進を掲げるとともに、介護保険法案の中でも介護給付の一つとして位置付けられていることを踏まえ、平成9年度より「痴呆対応型老人共同生活援助事業(痴呆性老人向けグループホーム)」を創設することとしているので、積極的対応を期待する。

 イ.施設サービス
 在宅サービスに重点を置いた整備を進める観点に立って、老人保健福祉計画に基づく整備を着実に進めることを原則とする。
 (1)ケアハウス
 ケアハウスは、独立して生活するには不安のある高齢者が入居し、車椅子を利用しても自立した生活ができ、たとえ介護が必要になった場合においても外部のホームヘルプサービス等の在宅サービスを導入することにより生活を継続できるような、住機能を提供する施設として位置付けている。
 介護保険制度の導入、在宅サービスの充実に伴って、特別養護老人ホームは専門的処遇を必要とする重度の要介護者が入所する施設としての位置づけがより強くなってくると考えられる。ケアハウスは一人暮らし等が困難ではあるが重度の要介護には至っていない者や、特別養護老人ホームや老人保健施設における処遇の結果要介護度が軽減した者など、中軽度の要介護者のための在宅と施設の中間的な形態の施設としてニーズが高まってくるものと考えられ、これを踏まえた整備の促進が求められる。
 また、介護保険制度においては、ケアハウスが入居者に対して内容・水準の担保された各種の在宅サービスを提供する場合には、これを「特定施設入所者生活介護」として在宅給付の対象とすることとなっており、自ら在宅サービス提供能力を持つケアハウスの整備促進が期待される。
 現在、ホームヘルプサービス事業の委託が予定されている場合については、ケアハウスに併設されるホームヘルパーステーションが施設整備費補助の対象となるので、在宅サービスとの連携の強化による整備の促進に配慮願いたい。

 (2)特別養護老人ホーム
 特別養護老人ホームは、在宅での生活が困難な重度の要介護者に対する専門的な処遇を行う施設であるが、現状では在宅サービスの不備もあり、適切な在宅サービスの利用により在宅生活が可能な者も含めて「入所待機者」が多く、整備の要望も強い。
 しかし、在宅サービスと施設サービスの格差を放置したまま施設整備を更に進めることは、より施設へのニーズの集中を招き、在宅重視の理念に基づいた介護サービス基盤の整備にとって必ずしも適当ではないと考えられる。
 したがって、施設整備の必要性を把握する際には、入所待機者が多いことをもって直ちに施設整備の緊急性有りと判断せず、待機者の状況の調査、在宅サービスを活用した入所必要性を客観的に判断するなど入所待機者の管理を適切に行った上で的確に判断する必要があると考えられる。
 また、特別養護老人ホームは施設サービスの提供にとどまらず、在宅サービスを積極的に提供するための拠点として機能することが求められる。これまでも各種在宅サービスの併設を原則として進めてきたが、隣接市町村など圏域内の在宅サービスの拠点としても位置づけた上で整備を進めることが必要となる。
 また、必要な介護サービスの総合的、一体的な提供、病院から在宅への円滑な移行のためには、老人保健施設やデイケア、訪問看護との連携がとれていることも必要となる。
 また、特別養護老人ホーム入所者の処遇の面にあたっては、サービスの利用者の生活の継続性を尊重し、在宅での生活の延長線上にあるものととらえることが必要であり、このような観点から、引き続きリハビリテーションの充実、離床対策の推進を図るとともに、望ましい生活環境の確保に努められたい。

 

4.在宅福祉サービスの推進について

 平成9年度においても、新ゴールドプランの着実な推進を図るための予算を確保するとともに、介護保険制度の導入を展望した新たな事業の創設、事業の実施方法の見直しなどを行ったところであるので、管下市町村に対し在宅福祉サービスの一層の整備、拡充について特段の指導を願いたい。

(1)ホームヘルプサービス事業

 ア.ホームヘルパーの増員
(平成8年度) (平成9年度)
 122,482人 151,908人
〈167,408人〉
(29,426人増)
(含障害者プラン分)
 ホームヘルパーの増員は、在宅介護者の支援の観点からも重要であることから、市町村における本格的な取組が行われるよう一層の指導を願いたい。
 併せて、新カリキュラムによる講習会の積極的な実施等によりホームヘルプサービスの内容の充実を図るとともに、ホームヘルプサービス事業の実施状況の分析を行い事業が効率的かつ適正に運営されるよう特段の配慮を願いたい。

 イ.補助方式の見直し
 要介護者のニーズにあったきめ細やかなサービスを効率的に提供する体制を整備するため、介護保険制度への移行を展望して、現行の「人件費補助方式」に加え、「事業費補助方式(サービス提供量に応じて補助する方式)」を導入することとし、この2つの方式のどちらかを市町村が選択する方式に変更することとした。本方式への切替え時期については、平成9年7月を予定している。
 また、これと併せて、活動実績が著しく低い場合について常勤単価の適用は行わず、事業委託基準単価を適用する基準である「週20時間(月80時間)」を平成9年7月より「週25時間(月100時間)」とすることを予定している。(本基準は、あくまでも国から自治体への補助金交付に係る精算基準であり、ホームヘルパーの最低活動時間や事業の委託に係る条件ではない。)
 さらに、補助方式が変更されることと併せ、業務内容についても効率化・適正化を図る観点から、介護ニーズの掘り起こしや地域の実情に応じた業務の効率化を図るための事業を実施する場合については、優先的に「在宅福祉サービス推進等事業」(国 1/2、県 1/2(ただし、事業によっては国 10/10))で助成を行うこととしているので積極的に協議願いたい。((8)参照)



現行の「人件費補助方式」と「事業費補助方式」の選択制とする。

(平成9年7月実施予定)

1.「人件費補助方式」(現行補助方式)
区分 8年度単価 9年度単価案
常勤職員(年額) 3,376,621 円 3,408,699 円


介護中心型(時間給) 1,390 円 1,400 円
家事中心型(時間給) 920 円 930 円

○ 常勤ヘルパーの実働時間基準を週20時間から25時間に改正。

(平成9年7月実施予定)

○ 業務効率化促進事業、介護ニーズ掘り起こし事業等の実施。
(在宅福祉サービス推進等事業で別途助成。)

2.「事業費補助方式」(平成9年7月実施予定)
区 分 単価案


身体介護 2,860 円/1単位
家事援助 2,100 円/1単位


昼間帯 1,430 円/1回
早朝夜間 1,790 円/1回
深夜帯 2,860 円/1回
(注)1.滞在型の1単位は1時間程度。
2.巡回型の1回は30分程度。(深夜帯は20分程度)
3.1単位・回には移動時間を含む。
* 業務効率化促進事業等事業費補助方式への準備事業等について
は、在宅福祉サービス推進等事業で助成。

 ウ.24時間対応ヘルパー(巡回型)事業の推進
 これまでの在宅における要介護老人へのホームヘルパーの派遣は、昼夜のみが一般的であり、深夜は家族の介護に委ねられていたことから、介護を担う家族に大きな負担を強いることとなっていた。このため、平成7年度より、深夜等においても巡回して介護サービスを行う24時間対応型のヘルパー事業を創設したところである。既に63市町村において実施しているところであるが、平成9年度以降も引き続き推進していく考えであるので、積極的に協議願いたい。
 エ.チーム運営方式推進事業の拡充
(平成8年度) (平成9年度)
 2,700チーム 3,100チーム (400チーム増)

 本事業は、市町村のホームヘルプサービス事業の推進を図るうえで市町村に対する支援策としての効果も大きいものであることから、管下市町村に対し、事業の趣旨を徹底し積極的な取組が行われるよう一層の指導を願いたい。

 オ.費用負担基準の改正
 ホームヘルパーの手当額の改善に伴い、ホームヘルプサービス利用者の費用負担基準額の上限を家事中心型の非常勤ホームヘルパーの時間単価(930円)に引き上げることとしている。なお、改正後の基準適用は、平成9年7月を予定している。

 カ.事業の適正実施について
 平成7年度に会計検査院が実施した実地検査において、派遣活動が全くない月を派遣活動延べ月数に含めていたり、派遣活動の実績が著しく低い月についても交付要綱の趣旨に反して不適当な補助金の精算を行っていた事例がみられたとの指摘を受けた。
 これを踏まえ、交付要綱の一部を改正するとともに具体的な取扱基準を示し、指導しているところであるが、今後とも、これらの点を留意し、引き続き補助金の適正な執行に努められたい。(全国高齢者保健福祉関係主管課長会議(平成8年3月)資料参照)

(2)老人短期入所運営事業(ショートステイ)

 ア.老人短期入所専用ベットの増
(平成8年度)(平成9年度)
 36,727人分 44,834人分 (8,107人分増)
 管下市町村の要援護老人等の実態等を踏まえ広域的な観点に立った計画的な専用ベットの整備を行い本事業の拡充を図るよう指導願いたい。
 また、管下の特別養護老人ホームのうち、未だ本事業を実施していない施設については、一定規模の専用ベットの整備を行うよう指導願いたい。
 イ.適正な処遇の確保
 老人短期入所運営事業については、利用券方式の導入を図る等により、着実に利用件数の増加を見ており、利用施設においても1ベット当たりの利用率が相当高くなってきているところである。
 このような状況に鑑み、利用者の処遇に低下を来すことのないよう、必要な職員の確保に努めるよう十分指導願いたい。

(3)老人デイサービス運営事業

 ア.老人デイサービス運営事業実施か所数の増
 (平成8年度)(平成9年度)
 7,573か所 8,923か所 (1,350か所増)

 本事業は、一度実施されれば周辺地域においてもその有用性が認識されるものの、全体としては、なおその取組が目標に比して低調であることから、各都道府県においては、各市町村の老人保健福祉計画を踏まえ、計画的な設置の促進について特段の指導を願いたい。
 中でも、E型については、痴呆性老人対策の一つとしてその整備促進が急務であるが、老人保健福祉計画においても取組が低調であるので、身近な配置に向け、一層の取組をお願いしたい。
 また、要介護老人が多数居住していると考えられる人口集中地域や、特別養護老人ホーム等併設すべき施設はないが老人デイサービスのニーズが高い地域においては、単独型のデイサービスセンターや保育所等との合築併設等についても指導されたい。
 さらに、管下の特別養護老人ホームや老人福祉センター等で老人デイサービス運営事業を実施していない施設については、在宅福祉の拠点としての役割を担う観点からその実施方強力に指導願いたい。なお、既存の施設の活用による実施など事業の弾力的な運用について、可能な限り配慮する考えであるので、個別に事例に即し相談されたい。

 イ.サテライト型デイサービス事業の創設について
 利用者のニーズに対応したきめ細やかな基盤整備に資するため、公衆浴場、公民館、老人福祉センター、子どもの減少により空いた保育園や小学校の教室等既存の施設(社会資源)を活用した、出前方式のデイサービス事業を実施する「サテライト型デイサービス事業」を創設することとした。
 本事業実施に当たっては、デイサービスの各型ごとの事業を基本としつつ、弾力的実施について認める方針である。また、必要に応じ、日常動作訓練等の初度設備費補助を補助対象とするとともに、入浴サービスの確保が困難な地域においては、サテライト事業分として移動入浴車を補助対象とすることとしている。
 特に、過疎地などサービス提供効率の低い地域においては、デイサービス事業の普及を図るため有用な事業と考えられるので、積極的に協議願いたい。

 ウ.ホリデイサービス運営事業の推進について
 老人デイサービス事業は、休日には運営されていない実情にあるが、新ゴールドプランの基本理念であるサービスの普遍化の具現化の一環として、休日にもデイサービスを実施し、週7日、通年デイサービス事業を実施する体制がとれるよう、平成8年度からホリデイサービス運営事業を行っており、現在88施設が本事業を実施している。
 平成9年度においてもさらに100か所追加し、利用者及びその家族のニーズに応えていくこととしているので、積極的に協議願いたい。
 エ.デイサービスD型及びE型基準の弾力化について
 痴呆になっても住み慣れた地域や家庭で生活できるようにするため、地域の実情に応じた規模のデイサービスの提供策として、これまで地域の住民団体が中心となっていわゆるミニデイや託老所と呼ばれる一種のデイサービスが自主的に実施されてきている。
 これらのサービス体制が新ゴールドプランの期間中にできるだけD型及びE型に移行できるように、この期間中は利用定員を8人から5人に引き下げるなどの基準の弾力化を平成7年度から実施しているので、積極的な活用を願いたい。

 オ.事業の適正実施
 平成6年度に会計検査院が実施した会計検査において、委託に係る実績が市町村との契約額を下回っているにもかかわらず、委託額を実績額として報告し、その差額を繰越すという事例が見受けられたので、このような事態が生じないよう引き続き適正な執行について管下市町村を十分指導願いたい。
 なお、こうした事例は、法人との委託契約書に委託金額の変更条項がない市町村に多く見受けられるので、例えば、委託契約書に「事業の委託金は金○○○円とする。ただし、委託期間満了後収支精算額が委託料を下回った時は、その精算額をもって委託料とする。」などの変更条項を加えるなど適正に実施されるよう指導願いたい。

(4)在宅介護支援センター運営事業

 ア.在宅介護支援センター運営事業実施か所数の増
(平成8年度)(平成9年度)
 4,672か所6,172か所 (1,500か所増)

 在宅介護支援センターは、介護を要する高齢者が保健・福祉・医療の各種サービスを利用する場合に利用者の立場に立ったサービス提供を行う上で重要な役割を果たすものであるものの、その取組が目標に比べてやや低調であることから各都道府県においては、各市町村の老人保健福祉計画を踏まえ、適正配置に留意しつつ積極的な取組が行われるよう管下市町村に対し、特段の指導を願いたい。
 なお、既存施設の活用による実施など事業の弾力的な運用について、可能な限り配慮する考えであるので、事例に即し相談されたい。

 イ.在宅保健福祉サービス総合化モデル事業の創設について
 介護保険の導入に向けて、看護・介護を必要とする高齢者のニーズに適切に応えていくためには、(1)ニーズの的確かつ迅速な把握、(2)ニーズに応えたタイムリーなサービス提供、(3)保健・医療・福祉各分野をサービスの計画的かつ総合的に展開できる体制が重要であるため、在宅介護支援センター、ホームヘルパーステーション及び訪問看護ステーションが連携を図ることにより、24時間一体的にサービスを提供できる体制を整備する事業を創設する。
 本事業の実施に要する経費については、在宅介護支援センターの運営費に施設間の連携を図るための調整連絡会議費、コンピュータリース料等の経費を加算し、訪問看護ステーションに係る夜間の訪問看護婦の人件費については「在宅福祉サービス推進等事業費」により別途助成を行うことを考えている。平成9年度については、30か所程度で本モデル事業の実施を予定している。

 ウ.連携運営(ネットワ−ク)方式の積極的活用
 在宅介護支援センターは、休日・夜間においても機能を発揮する必要があることから、原則として特別養護老人ホームや老人保健施設などの入所施設との併設が基本とされている。しかしながら、今後、在宅介護支援センターを住民の身近なところに開設していく必要があるため、平成6年度から、複数の支援センターが連携して運営を行い、かつ、他のサービスとの協力体制を構築することにより、相互に補完して全体として休日・夜間にその機能を果たすことができる連携運営方式についても補助の対象としているので、この積極的な活用を願いたい。
 エ.適正な運営の確保
 在宅介護支援センタ−は、地域の要介護老人の状況を把握し、適切なサービス提供につなげていく役割を担っていることから、地域の高齢者を訪問すること等により、的確な状況把握が行われるよう指導されたい。
 在宅介護支援センターの適正な運営を確保するためには、福祉関係職種と保健医療関係職種を組み合わせた職員配置を維持し、併設施設等との連携の強化を図ることが必要である。
 また、事業の運営に当たっては、保健・医療・福祉の連携を確保するとともに関係団体の協力を得る必要があることから、在宅介護支援センター運営協議会を活発に開催するよう管下市町村に対し指導願いたい。

 オ.組織化の推進
 在宅介護支援センター事業の発展向上を期し、全国的な連絡調整を行うとともに、事業に関する調査、研究、協議を行い、かつ、その実践を図ることを目的として、平成3年に在宅介護支援センターの全国組織「全国在宅介護支援センター協議会」が設立されている。(事務局 全国社会福祉協議会内)
 本協議会は、保健、医療、福祉それぞれの関係者が参画して設立されたものであり、今後の在宅介護支援センターの運営の向上に極めて有用と考えられるので、管下の在宅介護支援センターの積極的な加入について配意願いたい。
 また、事業運営の向上や協力体制の確立のため、都道府県単位での組織化の推進についても配慮願いたい。

(5)老人日常生活用具給付等事業

 老人日常生活用具給付等事業の実施に当たっては、在宅介護支援センター及びこれと同等の機関が在宅福祉サービスとの調整機能を十分に果たし、対象者への適合等必要な審査を行い給付するよう指導願いたい。
 また、福祉用具の給付等の事業として、「政府管掌健康保険在宅介護支援事業」も実施されているので、積極的な活用を図るよう市町村を指導願いたい。

(6)高齢者総合相談センター運営事業

 高齢者総合相談センターは、高齢者に関するあらゆる悩みごと等の相談に応じる極めて有効な機関として機能しているが、近年、深刻化する痴呆性老人問題、要介護老人を抱える家族等の介護の悩み、高齢者に対する各種サービスに関する相談等多様化する相談のニーズに対し、適切かつ総合的に対応する相談機関として期待されている。今後も、(1)相談員等の資質の向上、(2)各種専門相談員の確保、(3)保健・福祉・医療等の関係機関との連携、(4)シルバー110番の啓発・広報等の充実に努められたい。

(7)痴呆対応型老人共同生活援助事業(痴呆性老人向けグループホーム)の創設につ いて

 痴呆性老人向けグループホームについては、平成6年度から調査研究事業を実施してきたところであるが、
 (1) 新ゴールドプランにおける「今後取り組むべき高齢者介護サービス基盤整備に 関する施策の基本的枠組み」の中でも「痴呆性老人対策の総合的実施」を新たに 掲げ、グループホームにおけるサービスの提供を推進することとしていること
 (2) 介護保険法案のなかでも介護給付の在宅サービスのひとつとして位置付けられて いること
 などの状況を踏まえ、「痴呆対応型老人共同生活援助事業(痴呆性老人向けグループホーム)」を平成9年度に創設する。
 痴呆性老人向けグループホームは、5〜9人程度の痴呆性老人が家庭的な環境で共同生活を送ることができるよう食事等の日常生活を援助し、痴呆性老人の自立生活及び介護する家族の支援を行う事業であるが、平成9年度においては25か所で実施することとしている。

(8)在宅福祉サービス推進等事業費について

 本事業は、市町村が行う在宅福祉サービスの普及定着及び利用促進に対する助成並びに市町村の在宅福祉サービスの整備拡充を図るために都道府県が行う事業に対し助成することにより在宅福祉対策の着実な推進に資するための事業に補助率 1/2として実施してきたところであるが、平成9年度より予算額のうち1億円について10/10の補助とすることとした。
 この 10/10補助については、ホームヘルプサービスの補助方式を「事業費補助方式」に変更する自治体に対して、(1)業務の効率化を図るための事業、(2)事業費補助方式への準備切替えに必要な事業、(3)事業の効率化・適正化を図るための事業等に優先的に補助することとしている。
 また、これまで本事業の実施に当たって、従来実施していた事業を安易に継続実施する傾向が見受けられるが、事業の効果等を十分検討のうえ真に必要な事業について協議されるよう特に留意されたい。
 さらに、平成9年度から過疎地域等において、民間事業者による24時間対応を含めたホームヘルプサービス、訪問入浴サービス及び福祉用具レンタルサービスを総合的に提供するモデル事業を実施し、介護保険の導入を展望して、民間サービスの活用に当たっての課題や問題点を把握する「過疎地域等在宅保健福祉サービス推進モデル事業」を本事業内で行うこととしている。(具体的には、「7.シルバーサービスの健全育成について」を参照。)

 

5.老人福祉施設の計画的な整備と運営について

(1)老人福祉施設の整備

 ア.整備方針
 老人福祉施設の整備については、老人保健福祉計画に基づいた、特別養護老人ホーム、ケアハウス等の老人福祉施設や在宅福祉サ−ビスの拠点である老人デイサ−ビスセンター等の計画的な整備拡充を図ることとしている。
 なお、地域間格差解消の観点から、整備目標に向けた整備が遅れている地域については、その理由をよく分析の上、整備目標の達成に向けた年次計画の策定等対策の実施に取り組まれたい。
 昨年、特別養護老人ホームの整備に係わる不祥事が発生した。これは制度を悪用して膨大な差益を生じさせた事件であり、誠に遺憾である。
 この反省に立ち、実態解明を進めるとともに、業務の再点検を行い、必要な改善措置を講ずることとしている。
 平成9年度の整備については、特別養護老人ホームの整備費について、予算編成の過程で、次に掲げる方向で具体的な改善事項をとりまとめ、それらを踏まえて適正な執行を図ることを前提に必要な予算額が認められている。
 ・ 補助金の交付対象施設の決定について、要件及び手続、方法の見直しを行い、 実態においても恣意的でなく、適正に行われるようにすること。
 ・ 補助金の交付決定、法人の認可、社会福祉・医療事業団の融資決定等に 当たっては、関係機関の間での相互の連絡調整を密にして総合的な事業審査の 仕組みを構築すること。
 ・ 特別養護老人ホーム等社会福祉施設の性格にかんがみ、その建設に当たって は、公共事業に準ずる厳密な取扱いが行われるよう早急に契約等に係る手続、 審査等のルール化・透明化を図ること。
 ・ 法人の運営・財務が恣意的にならないよう、理事者構成や運営・財務の 公正化、透明化等を図ること。
 具体的な改善事項は、1月末までに、厚生省内に設置された「施設整備業務等の再点検のための調査委員会」において取りまとめることとしているので、これを踏まえた対応を図ることとされたい。
 (参考)新ゴールドプラン関係施設の平成9年度整備量
 ○特別養護老人ホーム 15,600人分
 ○ケアハウス 13,150人分
 ○老人デイサ−ビスセンター 1,350か所
 ○短期入所(ショートステイ) 7,907人分
 ○在宅介護支援センター 1,500か所
 ○高齢者生活福祉センター 40か所

 (1)ケアハウスの整備
 ケアハウスについては、今後増大する一人暮らし老人や老人のみの世帯の高齢者ニーズや在宅サービスの活用により在宅サービス基盤整備にも資することから、ますますニーズが高まるものと考えられる。今後とも新ゴールドプランにより重点的な整備を図ることとしているので、引き続き積極的な整備をお願いしたい。
 また、ケアハウスは、地域の在宅福祉サービスを有効的に活用することによって円滑な運営が確保されるものであるため、設置に当たっては在宅福祉サービスの実施主体である市町村と十分調整を図られたい。
 さらに、設置地域のホームヘルパーの派遣体制の充実強化、老人デイサービスセンターの併設など在宅サービスの拡充を図り、ケアハウスを整備しやすい環境づくりを推進するよう各市町村に指導願いたい。
 なお、ケアハウスについては、地方公共団体において施設整備が決定した段階から住民への広報を強力に行うこと等により利用者の確保に努めるなどケアハウスの円滑な運営について十分配意願いたい。

 (2)在宅複合型施設の整備
 地域の多様なニーズに総合的に応えるため、平成6年度から在宅介護支援センター、老人デイサービスセンター及びホームヘルプサービス事業等それぞれの事業を合築複合化した在宅複合型施設の整備を行っている。
 平成9年度からは在宅福祉サービスの拠点施設の整備促進を図る観点から、老人短期入所施設の最低定員を緩和(30人20人)し、在宅福祉サービスの基盤整備をより一層推進することとしている。
 このような在宅複合型施設を地域の在宅支援の拠点とすることにより、限られたマンパワーを有効に活用することが可能となることはもちろん、在宅福祉サービスを効率的に提供することができ、また、利用者の個別ニーズに応じたサービスの組み合わせによって在宅生活の可能性を広げることができるなど、要介護老人の多様なニーズに対応することが可能となることから、引き続き積極的な整備について配慮願いたい。
 (3)ヘルパーステーションの整備促進
 ヘルパーステーションの整備費補助については、都市型複合デイサービスセンター、在宅複合型施設に加え、ヘルパー委託が可能な施設(特別養護老人ホーム、デイサービスセンター等)にも拡大を図っているところであるが、引き続き整備の促進を行うこととしている。

 (4)デイサービス事業及び短期入所(ショ-トステイ )事業の推進に伴う施設整備
 在宅福祉サービスの大幅な拡充に伴い、老人デイサービスセンター及びショートステイ専用居室の計画的な整備を図るため、各都道府県等においては老人保健福祉計画を踏まえつつ、管下市町村、老人福祉施設関係者との十分な調整により重点的かつ積極的な整備計画を立て推進するよう配慮されたい。
 また、平成9年度から、過疎地などサービス提供効率の低い地域において出前方式のデイサービス事業を実施することにより多様なニーズに対応する観点から「サテライト型デイサービス事業」が創設され、その初度設備について補助対象とすることとしている。
 初度設備 1か所あたり(基準額) 3,606千円

 (5)在宅介護支援センターの整備
 在宅介護支援センターは、地域における老人保健福祉サービスの普及、定着を図るうえで極めて重要な施設であることから、管下市町村、特別養護老人ホーム、老人保健施設、病院関係者に対し積極的な取組を行うよう指導願いたい。
 (6)特別養護老人ホームの整備
 特別養護老人ホームについては、緊急性の高い地域の整備に重点を置くとともに、予定地域(広域市町村圏)での特養の整備状況、ホームヘルパーの配置などの在宅福祉サ−ビスの取組状況などを総合的に勘案し、施設と在宅の均衡のとれた施設整備を進めることとしている。
 この際、単に入所待機者が多いことをもって特養の整備の緊急性を判断するのではなく、入所待機者の状況調査や在宅サービスを活用したうえでの特養入所の必要性等について厳格に把握し、入所待機者の管理を適切に行った上で整備を進めるようお願いしたい。
 特養の整備に当たっては、ショートステイ専用居室、老人デイサービスセンター、在宅介護支援センターの併設を原則としているところであるが、加えて、当該特養を拠点として圏域の市町村が連携し在宅サービスの水準の底上げを図ること、さらには、必要な介護サービスを総合的、一体的に提供していく観点から、老人デイケア、老人看護事業等の保健医療サービスとの連携がとれていること、病院から在宅への円滑な移行のために老人保健施設との連携がとられていることも重要な要素である。事業の採択に当たっては、それらの点も考慮することとしたい。
 また、老人保健福祉圏域内の広域調整については従前よりお願いしているところであるが、特に指定都市及び中核市については、都道府県との圏域内の十分な調整を経たものについて整備協議するようお願いしたい。
 加えて、在宅・施設両サービスの基盤が薄い地域において、各種在宅サービスを総合的に実施した上で、なお施設への入所が必要な方に対する小規模な複合施設の必要があれば、介護保険をめぐる議論の中でその必要性が指摘されたことを踏まえて、老人保健福祉計画策定時には制度的に対応されていなかったものではあるが、個別の要望をお伺いし、対応を検討することとしたい。

 (7)高齢者生活福祉センターの整備
 過疎地域、離島等の地域的特性を考慮し、過疎地、離島等の高齢者に対する介護支援機能、居住機能及び地域における交流機能を総合的に有する小規模な複合施設として高齢者生活福祉センターの整備を進めている。
 平成9年度においても新ゴールドプランによりその重点的な整備を図ることとしているので、各都道府県等においては、過疎地、離島等で高齢者生活福祉センターの整備が必要と思われる市町村については、積極的に取り組むよう指導されたい。
 その際、診療施設や衛生施設その他保健・福祉サービスの提供施設との連携が図れれば、より高い機能が発揮できるので、この点についても併せて留意されたい。

 (8)養護老人ホーム2人以下の居室化整備等の促進
 養護老人ホームでは、いまだ改築が行われず3人以上の居室を有する施設が存在していることから、引き続き養護老人ホーム2人以下の居室化整備事業について国庫補助の優先採択を行うこととしている。また、社会福祉・医療事業団の融資についても5年間を無利子とするなど、改築を促進することとしている。
 なお、老朽化等に伴う養護老人ホームの改築等については、その緊急性等により改築整備を行っているところであるが、併せて地域の老人福祉サービスの拠点として、デイサービスセンターの設置、ショートステイ等の在宅サービスの取組を行うことを原則としていく方針である。

 (9)老人福祉施設付設作業所の一般財源化
 老人福祉施設付設作業所は、老人の希望と能力に応じた作業等社会的活動を行う場所として老人の生きがい等の増進を目的とするものであるが、平成8年度には補助金等の整理合理化の一環として、同作業所を除く老人福祉センターについて一般財源化されたことから、平成9年度からは同作業所についても同様に取り扱うこととしている。

 (10)昇降機設備補助対象施設の拡大
 昇降機設備については、平成9年度から新たに老人デイサービスセンター、在宅介護支援センターについても補助対象とすることとしている。
(2)老人福祉施設の運営
 ア.運営費の主な改善内容
 老人福祉施設の運営費については、入所者の一般生活費等について所要の改善を図るとともに、職員処遇の充実を図るため業務省力化等勤務条件改善費を次のように改善することとしているので、管下施設の職員処遇の充実について引き続き指導されたい。
 ○ 業務省力化等勤務条件改善費の改善
 寮母等の行う業務のうち委託、代替可能な業務について、外部委託や賃金職員の採用等により業務を省力化し、実質的に勤務時間の短縮が行えるよう改善措置を講じてきており、既に事業場の職員規模301人以上に該当する施設については、週40時間の改善措置が講じられている。
 平成9年度においては、それ以外の施設について現行週40時間30分を週40時間に改善することとしている。これによりすべての措置施設において週40時間労働体制が採れることとなることから、施設に対する指導についても留意の上、本体制の実施に向け指導願いたい。

 イ.老人保護費の適正な執行
 本年度の会計検査院の実地検査において、
 (1) 平成5年度の費用徴収について、被措置者の対象収入の算定及び扶養義務者の 認定を誤るなど、17県で総額4,853万円の過大な精算がなされていた
 (2) 常勤医師の人件費について、非常勤医師の人件費単価を適用すべきであるのに 常勤医師の人件費単価を適用し、5、6年度で12施設4,896万円の過大 交付が認められた
 (3) 入院患者日用品費について、入院している老人に支払われていないものなど、 5、6年度で1億8,839万円が認められた
 との指摘がなされたところである。
 費用徴収については、昨年も指摘されており、厳正な執行が求められるところであるので、管下の措置の実施機関等に対し、改めて適正な取扱いがなされるよう周知徹底を図るとともに、費用徴収額等の決定に当たって十分な審査を行い、適正を期すよう指導願いたい。
 常勤医師の人件費及び入院患者日用品費の問題については、審査・確認が十分でないことや基準が明確でないこと等が適性を欠く執行の要因として指摘されたことから、これに基づく取扱いの改善通知を既に発出したところであり、これにのっとり適正に取扱われるよう指導願いたい。
 昨今、特別養護老人ホーム等において措置費の不適正な使用等の事例の発生が 散見されている。老人福祉施設は公費で運営されており、適正な運営が何よりも求められていることから、こうした事態に対しては厳正に対処するよう改めてお願いしたい。併せて、今後老人福祉施設においてこうした事態が発生した場合(不祥事の情報を得た場合も含む)は、速やかに老人福祉計画課あて連絡願いたい。

 

6.介護保険制度を展望した老人福祉施策の展開について

(1)介護保険制度の導入に伴う老人福祉法の主な改正事項

ア.在宅・施設サービスの利用方式
 在宅サービス及び特別養護老人ホームについては、介護保険制度の導入によって、従来の行政の職権措置による入所・利用から、原則として利用者が自ら契約により入所・利用することになる。しかし、本人の心身の状況や家族関係等の諸事情により、契約では必ずしも適切に介護サービスを利用することが期待できず、老人福祉の観点から放置することができない場合が想定されるため、このような要援護老人に対して職権措置によりサービスを提供する仕組みを例外的に存続させることとしている。

イ.事業及び施設に関する事項
 在宅サービス及び特別養護老人ホームについては、介護保険による公的なサービス保障の仕組みに置き換えられることになるが、従来通り、事業や施設については老人福祉法上の規制を受けることになる。
 また、痴呆対応型老人共同生活援助事業(痴呆性老人向けグループホーム)は、新たに老人福祉法上の老人居宅生活支援事業に位置づけられる。

ウ.老人福祉計画に関する事項
 市町村老人福祉計画は、従来は福祉の措置の実施に関する計画として位置づけられていたが、在宅サービスや特別養護老人ホーム等のサービスが市町村の措置によって実施されるものではなくなることから、在宅サービスや施設サービスの供給体制の確保に関する計画として位置づけられ、介護保険事業計画と整合をとって定められることとなる。また、都道府県老人福祉計画は、従来通り広域施設を中心とするサービスの基盤整備に関する計画として位置づけられ、同じく介護保険事業支援計画と整合をとって定められることとなる。

(2)介護保険制度を展望した老人福祉行政の方向

 介護保険制度の導入に伴い、市町村は従来のように唯一の公的介護サービスの提供者ではなくなるが、一方で、介護サービスの適切かつ有効な利用のための情報提供・指導及び介護ニーズの発掘等を行うこと、介護保険給付の対象とならない者に対する要介護状態に至ることを防止する各種の支援を実施すること、地域の実情に応じて多様な担い手が総合的に要援護老人の支援を行う体制を整備することなど、介護サービスを受けている者、受けていない者を通じた高齢者の地域での生活支援基盤の整備が求められると考えられる。
 なお、介護保険制度を前提にした老人保健福祉計画の見直しについては、現在国会に提出されている介護保険法案は平成12年度からの施行が予定されており、これを前提とすれば、平成12年度を初年度とする介護保険事業計画が平成11年度中には策定され、老人保健福祉計画もこれと整合をとって平成12年度を初年度として見直されることになる。
 この計画の策定(見直し)の作業は、介護保険法の成立後早急に取りかかることになるので、その旨ご承知おきいただきたい。また、管下市町村に対してもその旨周知願いたい。

 

7.シルバーサービスの健全育成について

 近年の高齢者をめぐる社会、経済状況の変化を背景に、高齢者の生活福祉ニーズは、高度化し、また、多様化し、普遍化している。公的部門では、「高齢者保健福祉推進十か年戦略」の見直し(新ゴールドプラン)により、国民生活の基盤となる施策の一層の推進を図っているところであるが、これと相俟って、多様かつ高度なニーズに応えるためには、民間部門の創意工夫を生かしたシルバーサービスの発展が不可欠であり、その健全な育成を推進しているところである。
 シルバーサービスの健全育成については、国、地方公共団体が行政指導を行う際の指針(事業分野ごとのガイドライン)を策定するとともに、社会福祉・医療事業団等が政策融資を行っているところである。また、民間事業者による自主規制として(社)シルバーサービス振興会がシルバーマーク制度を導入するなどし、その健全育成を図ってきたところである。

(1)シルバ−マ−クに係る国の関与の廃止

 しかしながら、近年シルバ−サ−ビスの普及が着実に進んでいること、平成8年12月16日行政改革委員会意見「規制緩和の推進に関する意見(第2次)」において、「シルバ−マ−ク制度に係る国の関与の撤廃によって、競争の促進を行う必要がある」との指摘がなされたこと等を踏まえ、今般、シルバ−マ−クへの国の関与の根拠となる関係通知を改廃したところである。
 このことにより、シルバ−マ−クは国の関与のない民間の自主的な取組と位置付けられることとなる。したがって、在宅サ−ビスの民間事業者への委託は、市町村等がその責任において行うものであり、行政がこうした民間の取組に関与ることにより、当該取組が民間事業者による事業活動を不当に制限することとならないよう配慮されるとともに、貴管下市町村等に対してもその旨周知をお願いしたい。 なお、福祉サ−ビス事業者を評価し、その結果を表示する団体は複数存在するとしても差し支えないものと考えているので、その旨併せて御了知願いたい。

(2)在宅関連シルバーサービス事業の育成

 ア 民間シルバーサービスへの委託の拡大
 在宅福祉事業を効果的に実施する上で、機動的、弾力的なサービスの確保を図る観点から、民間事業者等を活用していくことは有力な手法である。老人保健福祉計画の実効ある推進を図り、今後増大、多様化する介護需要に的確に対応していくために、民間事業者等に業務委託を行うなどサービスの供給主体を多様化していくことについて積極的に取り組まれたい。

 イ 過疎地域等在宅保健福祉サ−ビス推進モデル事業の創設
 当事業は、都道府県・指定都市を実施主体として、最大で5万人程度の人口を有する広域市町村圏(過疎地域、山村僻地、島しょ等)等において、民間事業者や農協等の協同組合、民間非営利組織等により、24時間対応も含めたホ−ムヘルプサ−ビス、訪問入浴サ−ビス及び福祉用具レンタルサ−ビスを総合的に提供するモデル事業であり、介護保険制度の円滑な導入に向けた民間事業者等の活用に当たっての課題や問題点を把握することを目的に、平成9年度から実施することとしている。
 当事業の実施要綱等の詳細については、3月に行われる予定の全国高齢者保健福祉関係主管課長会議等においてお示ししたいと考えている。

 ウ シルバ−サ−ビスの普及啓発
 介護保険制度においては、民間活力を積極的に活用することとされており、各地域におけるシルバ−サ−ビスの健全育成は、従来にも増して重要な課題となっている。
 このため、各都道府県・指定都市におかれては、管下シルバ−サ−ビス関係団体と連携を図りつつ、シルバ−サ−ビスの普及啓発に努められたい。

(3)有料老人ホームの健全育成について

 ア 有料老人ホームに対する指導
 (ア)昨年、経営破綻をきたし、入居者に大きな影響を及ぼした有料老人ホ−ムがあることから、各都道府県におかれては、有料老人ホ−ムの経営状況等を改めてチェックするとともに、その際、不適切な経営状態のところがあれば、その原因を解明し対処方針等を報告させるなど、早急な対応を行うよう願いたい。
 (イ)入居者の安否を十分把握できずに、死亡後数日経って見つけられる事故が発生したところである。
 入居者は、安心・安全を期待して入居してくるものであることから、その安否確認は有料老人ホ−ムの基本的な責務であるが入居者のプライバシ−の確保も重要である。
 各都道府県においては、入居者の意向を尊重しつつ、より一層の安全・安心の確保が必要との観点から、有料老人ホ−ム設置者等と入居者が十分相談をした上安否確認を行うなど、日頃から意見交換を行うよう管下有料老人ホ−ムに対して指導されたい。

 (ウ)有料老人ホームは、自由契約による民間の事業として行われており、国としてはガイドラインを定め行政指導を行っているところである。
 近年、有料老人ホームに対する社会的関心が高まってきている中で、公正取引委員会の警告や総務庁の勧告を踏まえて開催された老人保健福祉局長の私的諮問機関たる「有料老人ホ−ムの健全育成及び処遇の向上に関する検討会」の報告書に基づき、平成7年3月有料老人ホ−ムの設置運営に対する指導の徹底についての局長通知を発出したところである。
 従来からの指導と併せ、当通知により(1)広告表示の適正化、重要事項説明書、入居契約書及び管理規程の作成・交付など適正な情報開示の徹底、(2)施設運営・経営の健全性の確保についても十分な指導をお願いするとともに、全国有料老人ホ−ム協会未加入ホ−ムのパンフレット、入居契約書、重要事項説明書、管理規程、介護基準の内容の適否について報告いただいているところであるが、依然として不適切な有料老人ホ−ムがみられるところである。
 また、現在、公正取引委員会が、パンフレット等に不適切な事例があることに基づき実態調査を行っているところであることから、都道府県においても引き続き改善指導を行うよう願いたい。

 (エ)有料老人ホームの設置に関する相談については、事前届出制が導入された趣旨を踏まえ、一層の指導監督の徹底を図られたい。
 なお、当該設置運営指導指針により、「定期的な立入調査」を実施する場合、特に、介護サービスをはじめ入居者に対するサービスが当該指針を満たし、適切に行われているかという点に重点を置いて実施することとしたところであるので、その調査結果及び改善指導内容については、当局まで、定期的に報告されたい。

 

8.福祉用具の研究開発・普及の促進について

 福祉用具については、新ゴールドプランにおいても、介護基盤の整備のための支援施策の総合的な実施を図る観点から、研究開発支援等を行うとともに、福祉用具の相談・情報提供・展示等の普及事業の推進を図るとされているところであるので、下記の点に留意し、積極的な取組をお願いする。
(1)福祉用具の研究開発・普及の促進
福祉用具の研究開発及び普及については、国、地方公共団体、民間事業者が、それぞれの役割を担いつつ、その推進を図っているところである。
 特に、地方公共団体については、(1)市町村が在宅介護支援センターを活用して行う相談・情報提供・展示等の事業を一層推進するとともに、(2)都道府県・指定都市においては介護実習・普及センターの整備を一層推進することにより、利用者に対してより専門的な展示・相談・情報提供等を行うことができるものである。
 したがって、各都道府県・指定都市においては、(2)の事業の推進を図るとともに、(1)の事業について管下市町村への指導及び援助を願いたい。
 また、福祉用具の研究開発及び普及に当たっては、「福祉用具の研究開発及び普及の促進に関する法律」に基づく国の指定法人である(財)テクノエイド協会がその中核として、地方公共団体からの情報収集や企業情報の提供等を行っているところであるので、積極的なご協力をお願いする。
(2)介護実習・普及センター運営事業
 ア 介護実習・普及センター事業については、平成4年度に創設されて以来、計画的に各都道府県・指定都市に設置を進めてきたところである。平成9年度においても、老人介護の実習等を通じて地域住民への介護知識、介護技術の普及を図るとともに、福祉用具の展示・相談体制を整備し、福祉用具の普及を図るため、新規に8か所の設置を行うこととしている。
 なお、新設の場合の施設整備については、「高齢者保健福祉推進特別事業について」(平成3年6月3日自治政第56号・厚生省発政第17号自治・厚生事務次官連名通知)による起債(地域福祉推進特別対策事業)の活用を図られたい。

 イ 特に、福祉用具の展示・相談事業については、福祉用具関係事業者及び事業者団体等と連携をし、円滑な事業の実施を図られたい。

 ウ また、老人保健拠出金事業の一つとして、福祉用具普及モデル事業が平成6年10月から3年間を目途に開始され、現在、全国13の道府県において実施されているところである。この事業は平成8年度をもって終了することとしているので、当該道府県におかれては、円滑な事業の終了にご協力をお願いしたい。

 

9.高齢者の生きがい・健康づくりの推進について

 (1)高齢者の生きがいと健康づくり推進事業について
 ア 「明るい長寿社会づくり推進機構」については、平成元年度以降順次設置してきたところであるが、平成6年度をもって全都道府県における整備が完了した。
 今後は従来の活動全体を質的に向上させることはもとより、推進機構設立の趣旨を踏まえ、高齢者の生きがいと健康づくりを単に福祉分野にとどまらず、教育、経済等あらゆる分野を視野におき、広範な団体等と連携することにより社会全体の運動に発展させる役割が期待されている。
 このため、平成9年度においては従来以上に、市町村をはじめ各種関係団体等との「連携」を強めるとともに、特に今後重要になってくるサラリーマンシニア対策等を中心とした一層創意工夫を凝らした効果的な事業展開に積極的に取り組んでいくよう各推進機構を指導願いたい。
 なお、推進機構の組織としての定着化に鑑み、平成9年度予算案においては、推進機構に対する国庫補助金のうち人件費相当分の経費について、一般財源化を予定しているところであるが、各都道府県においては、推進機構の事業の重要性に鑑み、その事業運営に支障のないよう適切な予算措置をお願いする。
 また、推進機構に対する国庫補助金については、新ゴールドプランの終了する平成12年度までに、国と地方の経費負担のあり方を見直す予定である。
 以上のような状況を踏まえ、推進機構の事業費確保の観点から、地域福祉基金の運用益の有効活用や研修受講者等には応分の利用者負担を求めるとともに、民間企業等の協力も十分得られるよう指導願いたい。

 イ 「高齢者の生きがいと健康づくり推進モデル市町村事業」については、平成 8年度の新規指定分の59か所の継続事業を行うとともに平成9年度も59か所の新規指定を予定しているところであり、事業実施にあたっては、推進機構並びに都道府県・指定都市老人クラブ連合会との連携を十分図るとともに、当該市町村の実情等に応じた事業の展開が図られるよう指導願いたい。

 ウ また、平成8年度から開始した「高齢者訪問支援活動推進員養成推進モデル事業」については、高齢者の社会活動への積極的参加の推進と高齢者による高齢者援護の推進を図る観点から、都道府県・指定都市老人クラブ連合会を中心に、一人暮らし高齢者等を訪問し、話し相手、外出介助、家事援助等の活動を行う指導的な実践者の養成を図ることとしているので、引き続き積極的な取組の検討をお願いしたい。

(2)老人クラブ活動について

 老人クラブの活動については、高齢者自身の生活を豊かにする活動と地域を豊かにする社会活動のバランスに配慮することが重要であるが、そのようなことを踏まえ、全国老人クラブ連合会が中心となり平成6年8月に「老人クラブ21世紀プラン」を策定して、その推進に積極的に努めているところであり、厚生省もこれを支援することとしている。
 また、新ゴ−ルドプランにおいても、「高齢者の社会参加・生きがい対策の推進」の観点から、老人クラブ活動の支援等を通じた高齢者の社会参加の推進を図ることとされたことに鑑み、各都道府県におかれても、この趣旨を踏まえ、老人クラブ活動の活性化についてなお一層の指導と協力を願いたい。
 なお、老人クラブ活動の支援についての老人福祉法第13条第2項の規定も踏まえ、地域福祉基金の運用益の有効活用はもとより、地方の実情に応じた地方単独の補助事業の実施についても十分検討願いたい。

(3)高齢者能力開発情報センター等について

 ア 「高齢者能力開発情報センター」については、就労斡旋事業の実績が必ずしも良好と言えないセンターが一部に見受けられ、先般の総務庁の行政監察においても同様の指摘があったことを踏まえ、7年度において事業の見直しを行ったある。 しかしながら、その活動実績は必ずしも十分なものではなく、また、近年シルバー人材センター等の類似施策が整備されてきたことなどから、同センターについては、今後そのあり方の抜本的な見直しをしていく予定である。

 イ 「福祉人材バンク」については、その事業の効果的な推進のため、所管を社会・援護局へ移管するものである。

(4)全国健康福祉祭(ねんりんピック)について

 ア 第10回全国健康福祉祭山形大会(ねんりんピック '97山形)
 ・テーマ すてきに輝け ねんりん青春
 ・期 日 平成9年9月20日(土)〜9月23日(火)
 ・会 場 山形市 他18市町
 イ 本大会に対する選手等の派遣
 本大会の趣旨である高齢者の社会参加及び地域間交流を積極的に図るため、各イベントにおいて参加者の裾野を広げ、十分な参加体制を確保するよう、推進機構との十分な連携のもとに配慮願いたい。
 ウ 今後の開催予定地
 
第11回(平成10年度) 愛知県・名古屋市
第12回(平成11年度) 福井県
第13回(平成12年度) 大阪府・大阪市
第14回(平成13年度) 広島県・広島市
第15回(平成14年度) 福島県
第16回(平成15年度) 徳島県
第17回(平成16年度) 群馬県
 エ 地域における高齢者のスポーツ・文化活動等の推進
 ねんりんピックの目的、理念を地域に浸透させ、健康増進、文化活動の推進を図る観点から、各地方自治体においても、地域の実情に応じて地方版ねんりんピックの一層の積極的な実施について配慮願いたい。

 

10.高齢者の住宅対策・まちづくりの推進について

 本格的な高齢社会の到来を控え、心身の機能が低下しても、住み慣れた地域社会でできる限り自立して安全かつ快適な生活を継続していけるような住環境の整備を図ることが重要な課題となっている。
 新ゴールドプランにおいても、介護基盤の整備のための支援施策として、住宅対策、まちづくりの推進を図るとされているところであるので、下記の点に留意し、積極的な取組をお願いする。

(1)高齢者に配慮した住まい等の整備

 高齢者住宅整備資金貸付事業については、高齢者の居住環境を改善するため、都道府県又は市町村が、高齢者の専用居室等を増改築又は改造するために必要な経費を低利で融資し、高齢者とその家族の負担を軽減することを目的として実施してきたものであるが、未だに未実施あるいはPR不足等から取組が低調な県等が見られることから、貴管下市町村にも在宅福祉の充実を図る本制度の趣旨を周知徹底されたい。
 なお、年金福祉事業団の厚生・国民年金被保険者住宅貸付事業において、在宅ケア対応(バリアフリ−)住宅資金融資制度が実施されているところであり、高齢者住宅整備の一環としてその周知等にも配慮願いたい。
 また、高齢者向けの公共賃貸住宅整備については、平成8年5月に公営住宅法が改正され、高齢者世帯等に係る入居者資格の弾力化、福祉施設等の併設の推進など高齢社会への対応が図られたところであり、都道府県においても福祉・住宅相互の計画の調整、具体的な併設案件の相談等、住宅主管部局との緊密な連携を図られたい。

(2)高齢社会に対応したまちづくりの推進

 ア ふるさと21健康長寿のまちづくり事業
 本事業は、21世紀の本格的な高齢社会に対応するまちづくりの推進を目指し、公民協力のもとに高齢者にとって必要な健康や福祉の機能の総合的な整備を図るための基本計画の策定を行うもので、これまで120か所の地域で実施されてきたところである。今年度においても引き続き本事業を推進していくこととしており、積極的な活用をお願いしたい。
 また、全国の行政、住民、民間事業者が、どのように地域色豊かなまちづくりを進めていくべきかについて互いの理解と認識を深める契機として実施している「全国健康長寿のまちシンポジウム」を、平成9年度は兵庫県宝塚市で開催する予定であるので、各地方公共団体からも積極的な参加をお願いしたい。

 イ WAC事業
 「民間事業者による老後の保健及び福祉のための総合的施設の整備の促進に関する法律」(通称WAC法)に基づき、これまで、「奈良ニッセイエデンの園」、「松戸ニッセイエデンの園」、「豊田ほっとかん」、「中間ウエルパ−クヒルズ」、「宝塚エデンの園」の整備計画を厚生大臣認定してきたところであり、今春には、「松戸ニッセイエデンの園」、「豊田ほっとかん」がオ−プンする予定である。平成9年度税制改正では、法人税の特別償却、特別土地保有税の非課税措置が延長されたところであり、今後ともWAC事業の認定を進めていく予定であるが、本事業は揺籃期が長く、構想段階から事業開始後も地元市町村の支援が必要であるため、都道府県においても情報収集、指導監督をよろしくお願いしたい。

 

11.老人保健事業の推進について

(1)保健事業第3次計画の着実な推進

 保健事業第3次計画の目標達成と保健事業の一層の充実・強化のため、各般の施策を強力に推進していくこととしている。
 同計画の6年次目に当たる平成9年度においても、同計画に沿って、特に次の事項を中心に保健事業の一層の推進が図られるよう管下市町村に対し指導方お願いするとともに、これに必要な都道府県、市町村における財政措置についても、特段の御配意をお願いする。

 ア 健康手帳の更新
 健康手帳については、毎年、健康診査等の記録その他老後における健康の保持のために必要な事項及び各種の保健情報等を記録し自らの健康管理と適正な医療の確保に資することを目的として交付しているところであり、その重要性は一層高まっている。
 老人保健福祉審議会から提出された意見書においても、健康手帳を診療に関する情報提供や薬歴管理等に活用することが、当面取り組むべき課題とされている。 平成9年度においては、健康手帳の一層の活用を促進するため、内容の充実、老人医療制度の改正事項を盛り込むなど魅力ある健康手帳に見直すこととしており、その具体的な様式等については後日お示しする予定である。
 なお、平成9年度は老人医療受給対象者について、手帳の一斉更新を行うこととしているので、併せて御了知願うとともに、管下市町村に対し周知徹底方お願いする。

 イ 健康診査の充実
 (ア)健康診査については、毎年、第3次計画に基づき受診率の一層の向上を図っているところであるが、平成9年度においては、8年度と比較して、基本健康診査は2.0%、がん検診は1.7%〜3.6%上乗せした目標受診率を設定することとしている。
 また、受診率の実績が第3次計画の目標受診率を下回っている市町村に対しては、当該市町村における問題点を明らかにするとともに、地域の実情に即した健康診査実施体制の整備、効果的な広報活動、受診者の利便の確保等により受診率の向上が図られるよう、特段の指導をお願いする。
 (イ)健康診査受診後における受診者のフォローアップについて、現在のところ必ずしも十分に行われているとは言い難い状況にある。このため、「要精検」と判定された者で精検未受診のものに対する受診勧奨や、「要医療」及び「要指導」と判定された者に対する効果的な事後指導の実施について、特段の指導をお願いする。
 特に、生活習慣改善指導事業は、約半数の市町村が未実施の状況にあるので、積極的な実施が図られるよう管下市町村に対し、指導をお願いする。

 (ウ)費用徴収基準額については、保健事業の定着状況等にかんがみ、平成9年度において改定を行うこととしているが、その額については健康診査基準単価等と併せて、後日お示しする。

 ウ 健康診査管理指導等事業の充実
 (ア)健康診査の質的な充実を図る上において、精度管理事業への積極的な取組は極めて重要であるが、成人病検診管理指導協議会の活動状況は必ずしも活発に行われているとは言い難い状況にあるので、事業の活性化を図り、精度管理の向上に更に努められたい。
 (イ)市町村が行う保健事業を効果的、効率的に実施するためには、職域保健サービスの提供主体との連携強化が不可欠であるので、職域保健連絡協議会を設置していない都道府県については、速やかに設置されたい。

(2)新寝たきり老人ゼロ作戦の強化

 「新寝たきり老人ゼロ作戦」は、新ゴールドプランにおける重要な施策の一つとして推進しているところである。
 平成9年度においては、都道府県を中心に展開されている「新寝たきり老人ゼロ作戦」を更に充実・強化するため、新たに市町村を実施主体とした「新寝たきり老人ゼロ作戦普及啓発推進事業」を実施するとともに、寝たきりをつくらないための積極的な健康づくりを目的とした「寝たきり防止健康づくり推進事業」を実施することとし、さらに、従来から実施している機能訓練については、実施か所を拡大し、事業の充実を図ることとしているので、御了知願いたい。
 ア 新寝たきり老人ゼロ作戦普及啓発推進事業の強化
 都道府県を中心に展開されている「新寝たきり老人ゼロ作戦」をさらに効果的かつ強力に展開するため、より住民と密着している市町村が実施主体となり、寝たきり予防10か条等の広報、地域の実情に応じた各種イベント等の開催など積極的な普及啓発活動を行う「新寝たきり老人ゼロ作戦普及啓発推進事業」を平成9年度から実施することとしているので、積極的な事業実施をお願いする。

 イ 寝たきり防止健康づくり推進事業の創設
 寝たきりをなくすためには、先ず寝たきりをつくらないことが必要であり、元気な老人の健康を長く維持し、ADL(日常生活自立度)の低下防止を図ることが重要である。
 このため、平成9年度においては、市町村を実施主体として、高齢者を対象とし運動の実践を中心とした健康づくり事業を、保健医療局健康増進栄養課計上の
 「健康増進事業」の中で実施することとしているので、特段の御配慮をお願いする。

 ウ 機能訓練の拡充
 今後も増大することが予想されている寝たきり老人等に対する市町村の機能訓練を一層充実させるため、平成9年度においては、機能訓練A型の実施か所数を前年度より215か所増の6,073か所(累計)、機能訓練B型の実施か所数を前年度より814か所増の1,628か所(累計)としたので、市町村保健センター、老人福祉センター等の活用や特別養護老人ホーム等への委託等により、実施か所の拡大が図られるよう、市町村に対する指導をお願いする。
 また、機能訓練の未実施市町村の解消については、引き続き特段の指導、御配意をお願いする。

 

12.老人保健施設の整備と運営について

(1)老人保健施設の計画的整備

 老人保健施設については、各都道府県において策定されている老人保健福祉計画に沿ってその整備を進めているが、当該計画は、平成11年度末までに整備が必要な定員数を老人保健福祉圏域ごとに定めたものであるので、老人保健施設の整備に当たっては、各圏域における施設の適正配置を十分念頭においた上、関係する部局間において調整を行い、整備目標の計画的達成を図るよう、御配慮願いたい。
 また、老人保健施設の家庭復帰機能を十分に発揮するためには、入所者の家庭復帰後のケアの提供が円滑になされることが重要であり、地域の各種在宅支援対策との緊密な連携が求められることに留意し、老人保健施設の開設要望に対しては、地域における老人保健施設の利用ニーズの状況、関係市町村における在宅支援対策の取組状況、近隣の老人保健施設の利用実態等を十分把握した上、真に有効に機能すると期待できるものを選定するよう、御配慮願いたい。
 なお、老人保健施設の整備が進んでいない地域においては、市町村等との連携の下に整備を阻害している要因の分析、検討を行い、状況に応じて、例えば小中学校
 統廃合後の校舎用地等の再活用、公有地の無償貸与、公立施設の設置等を行うことにより、老人保健施設の整備促進を図るよう当該市町村に対する指導をお願いする。

(2)老人保健施設の施設整備に対する国庫補助等

 ア 平成9年度の国庫補助金及び老人保健拠出金事業助成金による老人保健施設の施設整備に係る国への整備計画の協議の取扱いについては、おって、通知することとしているところであるが、平成9年度より、新たに、病床が過剰となっている地域における整備計画については、当該地域における老人保健施設の整備率、病床過剰の程度、特定機能病院の病床数等を勘案しつつ、別途の取扱いとする方針である。
 また、最近、老人保健施設の整備要望が急増している地域もみられるので、各都道府県においては、(1)に掲げた趣旨を十分に踏まえた上、国及び都道府県の整備方針及び諸手続きの取扱いについて市町村及び関係者に周知徹底を図り、円滑な事業の推進が図られるよう御配慮願いたい。
 なお、3月上旬に各都道府県から平成9年度の国庫補助協議等に係るヒアリングを予定しているが、平成8年度の老人保健施設の施設整備事業の進捗状況をみると、国庫補助内示後に事業を取りやめるもの、また予定工期が大幅に遅れているため年度内に予定事業を完了できないものが生じていることに鑑み、貴職において個々の整備計画の妥当性について予め十分な審査をお願いする。

 イ 指導調査室による実地指導の結果等をみると、設備構造が法令及び通知に違反しているため、入所者等の利便が損なわれているなどの状況が多々みられるが、これは、貴職における施設開設希望者に対する事前協議の際等の指導及び審査が不十分なことに起因していると思慮されるので、その徹底について併せてお願いする。

 ウ 平成9年度における社会福祉・医療事業団の医療貸付事業については、老人保健施設及び病院等に対する融資枠として、2,950億円(対前年度当初比600億円増)を確保したところであるが、平成9年度の各施設に対する貸付方針については同事業団において検討しているところである。平成9年度においては、老人保健施設の整備が従来に比して増加することが見込まれるので、施設開設希望者に対しては、予め同事業団と連携をとり適切な資金計画を策定するよう指導をお願いする。

(3)老人保健施設の適切な運営

 ア 老人保健施設は、制度創設後、急速にその整備が進められてきているが、施設の量的拡大が図られる一方で、老人保健施設として期待されている機能が真に発揮されているのかという点について、疑問が呈されているところであり、むしろその低下が懸念される状況にある。

 イ 老人保健施設は、医療ケアと日常生活サービスを併せて提供することにより老人の自立を支援し、家庭復帰を目指す施設であるが、入所期間が長期にわたっている者の多い施設にあってその原因を分析するとともに、地域におけるホームヘルプサービス事業、老人訪問看護事業、デイケア、デイサービス及びショートステイ等の各種在宅支援事業の活用について十分検討し、その解消を図るよう関係市町村、施設関係者の指導をお願いする。

 ウ 社団法人全国老人保健施設協会において、国庫補助事業として各種研修会及び調査研究事業を実施しているところであるので、これらの積極的活用を図るとともに、各都道府県においても、例えば新規開設施設を重点においた研修の機会を提供するなど、施設職員の資質の向上に御配慮願いたい。
 また、平成5年度より実施している「特別養護老人ホーム・老人保健施設サービス評価事業」の積極的活用についての指導をお願いする。

 

13.老人訪問看護ステーションの計画的整備等について

(1)老人訪問看護ステーションの計画的整備

 ア 老人訪問看護ステーションは、疾病・負傷等により、家庭において寝たきり又は これに準ずる状態にある要介護老人に対し看護婦等が訪問して看護サービスを提供 し、住み慣れた地域社会や家庭における日常生活の中で動作能力の維持・回復を図 るとともに、生活の質の確保を重視した療養生活を支援することを目的としている。
 老人訪問看護ステーションについては、今後、増加する要介護老人の在宅療養の ニーズに対応するため、平成7年度から「新ゴールドプラン」の在宅サービスの一つとして位置付け、平成11年度までに、5,000か所整備することを目標としている。
 各都道府県においては、老人訪問看護制度の趣旨を踏まえ、要介護老人の動向、地域特性を勘案するとともに、老人訪問看護ステーションの開設の促進について特段の配慮をお願いする。
 特に、老人訪問看護ステーションの整備が進んでいない地域においては、市町村等との連携の下に整備が阻害されている要因の分析・検討を行うなどして、訪問看護サービスが効率的に実施できるよう整備の促進について配慮願いたい。
 平成8年4月より過疎地等における整備対策として、従たる事務所の設置を認めたところであり、この制度の活用を図られ一層の拡大をお願いする。

 イ 老人訪問看護ステーションの開設の促進を図るため、老人訪問看護ステーションの整備等に対する社会福祉・医療事業団等による融資制度、老人保健拠出金による成制度及び国庫補助制度が創設されているところであり、これらの事業の適切な運とともに、円滑な事業の実施に努められたい。

(2)老人訪問看護ステーションの適切な運営

 老人訪問看護ステーションが、円滑な看護サービスを提供するためには、地域における各種の保健・医療・福祉サービスと充分な連携を図ることが極めて重要であることから、平成9年度において「在宅保健福祉サービス総合化モデル事業(仮称)」を実施することとしており、管下の老人訪問看護ステーションと市町村や医療機関、在宅介護支援センター等福祉サービス提供機関との連携強化が一層促進されるよう配慮願いたい。
 なお、老人訪問看護ステーション全体の質の向上を図るため、各都道府県におかれても、老人訪問看護ステーションの適切な運営等について一層の指導をお願いする。

 

14.老人病棟制度の適用等について

(1)老人病棟制度は、高齢化に伴い増加する老人医療費の適正化と老人の心身の特性を踏まえた適正な医療の確保を目的としているが、この老人病棟を有する病院の数は平成8年5月1日現在、全国で1,623病院(前年同月比19病院減)であり、このうち特例許可老人病棟を有する病院が1,566病院、その他特例許可は受けていないが65歳以上の老人収容比率が60%以上の老人病棟を有する病院の数が58病院であった。

 これら老人病棟を有する病院の看護・介護体制の状況については、老人病棟入院医療管理料届出病棟の病床数が前年度より1万3千病床増加し約14万7千病床となり、 年々増加の傾向にある。

 なお、付添看護の解消が図れていない保険医療機関に対し、本年9月末までに看護・介護体制の充実した保険医療機関に移行するよう、指導をお願いする。

(2)保険外負担については、費用の内容及び金額等に関する事項の院内掲示を実施するとともに患者等に十分説明し承諾を得ることとし、「雑費」などのあいまいな理由での費用徴収が行われないよう引き続き保険医療機関に対し強力な指導をお願いする。

 

15.老人保健福祉関係の指導監査について

(1)老人医療費適正化対策の推進

 老人保健制度の安定的な運営を確保していくためには、老人医療費を適正なものとすることが重要な課題である。
 このため、従来から老人医療費の適正化対策の推進に努めてきたところであるが、高齢化の進行に伴い、長期にわたる入院などによる入院医療費の増加等により年々老人医療費が増加し続けている状況である。
 各都道府県においては、このような状況を踏まえ、平成9年度の老人医療事務指導監査の実施に当たり、指導監査体制の充実に努めることはもとより、特に、老人医療費の増加要因の分析を始め、「老人保健法による老人医療事務の指導監査の実施方針について」(平成5年3月22日付老企第72号老人保健福祉局長通知)により示している(1)レセプト点検の充実強化、(2)重複受診者・多受診者に対する訪問指導の充実強化、(3)交通事故等第三者行為による被害等の把握と求償事務の促進、(4)医療費通知の充実、(5)広報活動の推進等に重点をおいた指導監査を実施し、老人医療費の適正化対策の一層の推進が図られるよう管下市町村を指導願いたい。
 特に、こうした医療費適正化対策の徹底については、昨年、総務庁行政監察局の勧告を受けたところであり、重複受診者・多受診者対策の手引きの作成等を予定しているので積極的な取組をお願いしたい。

(2)老人保健施設の実地指導

 老人保健施設に対する実地指導については、老人保健施設が寝たきり等の状態にある老人に看護、介護、機能訓練等を行い、その家庭への復帰等を支援するものであることから、目的に沿った適正な施設運営が行われるよう、適切かつ効果的な指導を行っていく必要がある。
 また、在宅介護支援を推進する観点から、デイケア及び短期入所の積極的な実施並びに市町村保健福祉サービス等との連携についても併せて配慮が必要である。
 特に、老人保健施設が急増している都道府県にあっては、本庁の実地指導体制の充実強化に努めるとともに、実地指導事務を保健所等に委任している都道府県にあっては、研修会及び連絡会議等を実施して、共通の認識のもとに実地指導ができるよう体制の整備を図る必要がある。
 なお、法令・通達等の基本的事項を遵守していない施設については、是正改善の指示を行い、その改善状況を確認するなど、強力に指導願いたい。
 以上のことを基本に、各都道府県は保健所政令市等と連携を図り、平成9年度の実地指導に当たっては、次の事項に重点をおいて実施されたい。

 ア.適正な施設運営の確保
 ・デイケア、短期入所の積極的な実施
 ・夜勤体制の確保
 ・適切な利用料の取扱い
 ・非常災害対策の計画的な実施

 イ.適切な施設療養の提供
 ・適切な入退所(通所を含む。)判定の実施
 ・家庭復帰を目標とした計画的な施設療養の実施
 ・入所者の多様なニーズ及び生活の質の向上に配慮した施設療養等の提供

 ウ.適切な職員配置の確保及び職員処遇の充実
 ・職員配置基準の遵守
 ・職員研修の充実、勤務時間の短縮等職員処遇の改善

 エ.第二種社会福祉事業(無料又は低額老人保健施設利用事業)の適正な実施

 なお、中核市に指定された市及び今後指定される市を有する都道府県にあっては、当該中核市における実地指導事務が円滑に行われるよう、特段のご協力を願いたい。

(3)老人福祉施設等の指導監査

ア.老人福祉施設に対する指導監査
 高齢者のニーズの多様化とともに「生活の質」の向上が求められている今日、老人福祉施設がその設置目的に沿って、施設利用者の意向・希望を尊重し、適切な入所者処遇を行うとともに、ショートステイやデイサービス等施設機能を活用した在宅福祉の推進に積極的な役割を果たしていくためには、社会福祉に熱意・理解のある役職員の下で法人・施設が健全で安定した運営を確保していくことが不可欠であり、そのためには、都道府県等の指導監査の果たす役割は極めて重要である。
 なお、本年4月1日から社会福祉法人の認可権及び指導監査権が、指定都市及び中核市に移管されること及び本年4月から中核市に指定される市を有する都道府県にあっては、当該市が実施する指導監査事務が円滑に行われるよう、特段のご協力を願いたい。

(ア)指導監査体制の充実強化等
 法人・施設の運営状況をみると、施設運営費の不正流用など極めて憂慮すべき不祥事が依然として発生しており誠に遺憾である。
 今後、新ゴールドプランの推進等に伴う老人福祉施設の増加傾向を踏まえ、監査専管組織の設置等指導監査体制の充実強化を図るほか、法人・施設の幹部役職員の認識の欠如が不祥事の発生要因の一つとなっているので、研修等を通じ法人の公共性に対する認識の高揚に努めていくとともに、新設法人の認可に当たっては、役員構成及び資金計画等について厳正な審査をお願いする。
 また、問題を有する法人・施設に対しては、重点的かつ継続的に指導監査を実施し、指導監査結果の問題点については、当該法人・施設の幹部役職員に十分認識させるとともに、期限を付して改善を図るよう指導されたい。
 なお、是正改善が図られない法人・施設については、市町村に対して新規入所措置の停止等の措置をとるよう協力を求めるほか、社会福祉事業法に基づく改善命令をはじめ、業務の停止、役員の解職勧告といった処分を行うなど厳正に対処するとともに、施設運営費等の不正流用などの不祥事案については、必要に応じ、法的措置をとるよう法人・施設に対し指導願いたい。

(イ)入所者処遇に重点をおいた指導監査の実施
 施設運営の基本は、地域との緊密な連携の下に、適切な入所者処遇を確保することにあるので、指導監査に当たっては入所者の立場に立った施設運営が図られるよう、食事・入浴・排泄介護等の入所者処遇にも重点をおいて実施されたい。

(ウ)指導監査の主眼事項等
 平成9年度の指導監査に当たっては、次の事項に重点をおいて実施されたい。
(1)法人及び施設の適正な運営管理体制の確立
・法人の組織運営
・資産管理及び会計経理
・寄付金の取扱い
・施設の運営管理
・不祥事防止対策の確立
・防災対策の確立

(2)適切な入所者処遇の確保
・入所者の意向・希望を尊重した処遇
・生活環境の確保
・ゆとりある入所生活の確保
・適切な入所者預かり金等の取扱い
・個別処遇方針の樹立
・食事、入浴、排泄介護の充実
・褥瘡予防対策の推進
・寝たきり防止等離床対策の推進等

(3)適切な職員処遇の確保
・適正な給与水準等の確保
・労働時間の短縮等労働条件の改善
・職員研修等資質向上対策の推進
・福利厚生等の士気高揚策の充実

(4)在宅対策への積極的な取組み
・施設機能を活用したショートステイやデイサービス等在宅対策への積極的な取組み

イ.実施機関に対する指導監査
 実施機関に対する指導監査は、次の事項に重点をおいて実施されたい。
 なお、費用徴収事務については、依然として徴収誤りが見受けられるので、その適正を期すよう指導願いたい。
 (ア)実施体制の確保
 (イ)適正な入所措置の確保
 (ウ)適正な費用徴収事務の確保
 (エ)在宅対策への積極的な取組み



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