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平成12年12月20日

「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針(案)」
に関する御意見の募集について


○ 文部省、厚生省、通商産業省及び科学技術庁共同で、「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」(以下「倫理指針」という。)の策定に取り組んでおりますが、関係審議会等の御意見を踏まえ、倫理指針(案)が確定し、その案に対して、広く一般からの御意見を募集いたしますので、お知らせいたします。

○ 御意見募集に関する説明文書は別添のとおりです。倫理指針(案)の概要は別紙1、倫理指針(案)の本文は別紙2、各省庁関係審議会等における主な意見は別紙3のとおりです。

○ 御意見の受付期間は、平成13年1月9日(火)から平成13年1月31日(水)(必着)までとし、提出方法は、Eメール(アドレス:www-admin@mhlw.go.jp)又は郵便で受け付けます。御意見の提出、記載方法等については「別添 3.御意見の提出要領」のとおりです。
 また、インターネットを使用できない環境にあって資料等を入手できない場合は、「別添 4.その他」に記載のとおり、郵便で資料請求を受け付けます。
 なお、御意見募集の御案内につきましては、別途厚生省ホームページ(http://www.mhw.go.jp)にも掲載いたします。1月6日(土)の省庁再編後においても、年度内は厚生省ホームページは存置されますが、新たに厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp)が設置され、同様の御案内が掲載されることになります。

※ 関係省庁においても同様に御意見の募集が行われています。御意見については、どの省庁に御提出いただいても可能ですが、事務の整理上、同じ御意見につきましては、いずれか一省庁のみに御提出をお願いいたします。

○ 平成13年1月31日(水)の締め切り後、御意見を集約し、関係審議会等に審議の参考として提出するとともに、併せて御意見の本体についても関係省庁において閲覧に供することにより公開いたします。
 いただいた御意見、審議会等での検討を踏まえ、今年度中には倫理指針を策定する予定です。
 なお、通常の御意見募集の場合と同様に、御意見に対して、個別に回答はいたしかねますことを申し添えます。


照会先:厚生省大臣官房厚生科学課
    研究企画官 中垣(内3803)
    課長補佐 野口(内3804)
(代表) [現在ご利用いただけません]
(直通) 03-3595-2171


平成12年12月20日

ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針(案)に関する
御意見の募集について

文部省
厚生省
通商産業省
科学技術庁

○ 文部省、厚生省、通商産業省及び科学技術庁(省庁再編後は、文部科学省、厚生労働省及び経済産業省)は、共同で、ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針(以下「倫理指針」という。)の策定作業を進めておりますが、このたび、関係審議会等の議論を踏まえ、倫理指針(案)がまとまりましたので、広く一般の方々に御意見をお願いし、今後の倫理指針の策定における参考とさせていただくことといたしました。

○ 倫理指針(案)策定の背景、御意見の提出要領等を以下にお示しいたしますので、御意見をいただきたく存じます。

○ 倫理指針(案)について、お寄せいただいたすべての御意見等は、関係審議会等に集約した概要を報告するとともに、原則としてそのすべてについて、関係省庁において閲覧に供することにより公開されます。

○ なお、御意見に対する個別の回答はいたしかねますのでご了承下さい。

○ また、特定の人を中傷したり、この倫理指針(案)に関係のない御意見等と判断されるものは受け付けません。


1.倫理指針策定の背景、倫理指針の位置付け等

 20世紀後半に開始されたヒトゲノム・遺伝子解析研究は、生命科学及び保健医療科学の進歩に大きく貢献し、人類の健康や福祉の発展、新しい産業の育成などに重要な役割を果たそうとしています。
 一方、ヒトゲノム・遺伝子解析研究は、個人を対象とした研究に大きく依存し、また、研究の過程で得られた遺伝情報は試料等提供者やその血縁者の遺伝的素因を明らかにし、その取扱いによっては様々な倫理的、法的、社会的問題を招く可能性があるという側面があります。
 そこで、人間の尊厳及び人権を尊重し、社会の理解と協力を得て、適正に研究を実施することが不可欠であり、そのためのルールづくりが求められています。
 この点に関しては、既に「ヒトゲノム研究に関する基本原則」(平成12年6月14日科学技術会議生命倫理委員会取りまとめ)及び「遺伝子解析研究に付随する倫理問題等に対応するための指針」(平成12年4月28日厚生科学審議会先端医療技術評価部会取りまとめ)が策定されてはおりますが、前者は、具体的な指針の前提となる基本的な考え方を示したものであり、後者の指針(いわゆるミレニアム指針)については、ミレニアム・プロジェクトという特定のヒトゲノム・遺伝子解析研究を対象としていることから、ヒトゲノム・遺伝子解析研究一般に関する具体的な指針の策定が望まれてきております。
 そこで、文部省、厚生省、通商産業省及び科学技術庁が共同して、ヒトゲノム・遺伝子解析研究一般に適用されるべき倫理指針の策定を目指すこととなりました。
 また、この倫理指針の位置付けについては、関係する国の研究機関において、又は国の補助金の交付を受けて実施されているヒトゲノム・遺伝子解析研究については、遵守を義務付けたいと考えておりますが、それ以外の民間の研究機関等で実施されるヒトゲノム・遺伝子解析研究についても、遵守されるよう周知に努めていきたいと考えております。
 今後の日程につきましては、今回の御意見募集によりいただいた御意見を参考に、関係審議会等での御議論も踏まえ、平成12年度内に倫理指針を策定し、平成13年度から施行したいと考えております。

2.倫理指針(案)の内容

 別紙1において倫理指針(案)の概要を、別紙2において倫理指針(案)の本文を、また、別紙3において各省庁関係審議会等における主な意見をお示ししております。

3.御意見の提出要領

(1) 提出方法

 下記の意見提出用紙の様式に従って御意見をまとめ、電子メール又は郵送にて提出して下さい。(電話及びファクシミリによる御意見は御遠慮下さい。)

(2) 意見の受付及び提出期限

 御意見の受付期間は平成13年1月9日(火)から平成13年1月31日(水)(必着)とします。
 (1月9日(火)より前に下記提出先に提出しても届かない場合がありますので、御留意下さい。)

【提出先】

(文部科学省)

○ 電子メールの場合 ethics@mext.go.jp(テキスト形式)
○ 郵送の場合
 〒100-8959
 文部科学省研究振興局生命倫理・安全対策室
 「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針(案)」御意見募集担当 宛

(厚生労働省)

○ 電子メールの場合 www-admin@mhlw.go.jp(テキスト形式)
○ 郵送の場合
 〒100-8916
 厚生労働省大臣官房厚生科学課
 「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針(案)」御意見募集担当 宛

(経済産業省)

○ 電子メールの場合 qfsc@meti.go.jp(テキスト形式)
○ 郵送の場合
 〒100-8901
 経済産業省製造産業局生物化学産業課
 「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針(案)」御意見募集担当 宛

※ 御意見につきましては、どの省庁に御提出いただいても可能ですが、事務の整理上、同じ御意見につきましては、いずれか一省庁のみに御提出をお願いいたします。

(3)記載方法等

【様式・枚数等】

○ 電子メールの場合
 テキスト形式で、全角文字、1行40文字、1頁40行程度とします。
○ 郵送の場合
 提出用紙はA4用紙に全角文字、1行40文字、1頁40行程度とし、できるだけ1枚以内でお願いいたします。

【記述について】

・ 以下にお示しする意見提出用紙中のI.の記載に際しては、様式項目の順番は変更しないで下さい。
・ 以下にお示しする意見提出用紙中のIII.の記載に際しては、1.総論について、2.各論について(倫理指針(案)の項番号を指定して)、記載例も参考に記述して下さい。

※ なお、御提出いただいた記載内容は、匿名化を希望する旨の記載がなき場合には、意見提出用紙I.7における住所、電話番号又はメールアドレスを除き、すべて公開される可能性があることを、あらかじめ御了承下さい。


意見提出用紙

ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針(案)に対する意見

I.お寄せいただいた方
 1 年齢:(「○歳代」でも結構です)
 2 性別:
 3 職業:
 4 氏名:
 5 所属団体:(特にない場合は「無し」で結構です)
 6 公開に際し上記3〜5の匿名化を希望:(希望する場合には「希望する」と記載下さい。)
 7 連絡先の住所・電話番号・又はメールアドレス

II.この問題に関する関わりについて

III.御意見

 1 総論について
  (記載例)
  全般的に記述が難解。

2 各論について
  (記載例)
 14(3):受精卵由来のヒトゲノム・遺伝子を解析する研究の定義が難解。

4.その他

 何らかの事情でインターネット上の各省庁ホームページを御覧になれない方は、資料の返送先の住所及び氏名を記載し、270円切手を貼った返信用封筒(A4サイズのコピー用紙50枚程度が入る角封筒)を同封の上、以下のいずれかまで請求して下さい。また、御意見提出及び資料請求に係る御照会につきましても以下の連絡先までお願いいたします。

【平成13年1月6日以降の資料請求先・照会先】

(文部科学省)

〒100-8959 東京都千代田区霞が関3−2−2
 文部科学省研究振興局生命倫理・安全対策室
 「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針(案)」御意見募集担当
 TEL 03(3509)1268(直通)

(厚生労働省)

〒100-8916 東京都千代田区霞が関1−2−2
 厚生労働省大臣官房厚生科学課
 「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針(案)」御意見募集担当
 TEL 03(3595)2171(直通)

(経済産業省)

〒100-8901 東京都千代田区霞が関1−3−1
 経済産業省製造産業局生物化学産業課
 「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針(案)」御意見募集担当
 TEL 03(3501)8625(直通)
【平成13年1月6日までの資料請求先・照会先】
○文部省
〒100-0013 東京都千代田区霞が関3−2−2
 文部省学術国際局研究助成課
 「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針(案)」御意見募集担当
 TEL 03(3581)0078(直通)

○厚生省
〒100-8045 東京都千代田区霞が関1−2−2
 厚生省大臣官房厚生科学課
 「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針(案)」御意見募集担当
 TEL 03(3595)2171(直通)

○ 通商産業省
〒100-8045 東京都千代田区霞が関1−3−1
 通商産業省基礎産業局生物化学産業課
 「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針(案)」御意見募集担当
 TEL 03(3501)8625(直通)

○ 科学技術庁
〒100-8966 東京都千代田区霞が関2−2−1
 科学技術庁研究開発局生命倫理・安全対策室
 「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針(案)」御意見募集担当
 TEL 03(3509)1268(直通)

※ 平成13年1月6日以降は、文部科学省、厚生労働省及び経済産業省にそれぞれ再編されるため、新たに設置されるそれぞれの省庁のホームページにおいても、同様の御案内を掲載することとしております。

【参考資料】

参考資料 1
 
(http://www.miti.go.jp/kohosys/committee/summary/0001048/0001.html)

・ 「ヒトゲノム解析研究に関する共通指針(案)」検討委員会について
・ 「ヒトゲノム解析研究に関する共通指針(案)」検討委員会開催状況
・ ヒトゲノム解析研究に関する共通指針(案)検討委員会名簿
・ ヒトゲノム解析研究に関する共通指針(案)作業委員会名簿

参考資料 2
 (http://www.mhw.go.jp/shingi/kouseika.html#hitogenomu)

・ 検討委員会議事概要

参考資料 3
 (http://www.miti.go.jp/kohosys/committee/summary/0001048/0001.html)

・各省庁審議会等の審議日程


別紙1

ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針(案)の概要

平成12年12月20日

(目的)

 研究現場で遵守され、社会の理解と協力を得て、人間の尊厳及び人権が尊重され、ヒトゲノム・遺伝子解析研究が適正に推進されることを目的

(適用範囲)

 すべてのヒトゲノム・遺伝子解析研究を対象

※ ヒトゲノム・遺伝子解析研究とは、「主として人の疾患克服に関連して、試料等を用い、試料等提供者の個体を形成する細胞に共通し、試料等提供者からその子孫に受け継がれ得るヒトゲノム・遺伝子の構造又は機能を明らかにしようとする研究をいう。本研究に用いる試料等の提供のみが行われる場合も含まれる。」

(主な内容)

○インフォームド・コンセントを基本とすること

・文章による事前の十分な説明と自由意思による同意(インフォームド・コンセント)
・本人の意思を尊重して遺伝情報の開示、非開示の決定
・ 既に提供された試料等についての慎重な取扱い
○個人情報の保護を徹底すること
・試料等の原則匿名化による研究の実施
・ 個人識別情報管理者による保護の徹底
・ 守秘義務の徹底
・ 本人の意思を尊重した試料等の保存と匿名化した上での廃棄
○倫理審査委員会が適切に構成され運営されること
・研究機関の長の諮問機関として設置し、その意見を尊重
・公正、中立な審査のため、専門家・市民の立場の人(外部委員を含む)から成る適切な構成
・委員、議事内容の公開など透明性の確保

○研究の適正性を確保すること

・倫理審査委員会による研究計画の事前審査
・研究機関の長による研究計画の許可
・研究計画に従った研究の適正な実施
○ 研究の透明性を確保すること
・外部の有識者による実地調査
・研究結果の公表
・苦情窓口の設置
○遺伝性疾患に配慮すること
・遺伝性疾患の場合の遺伝カウンセリングの実施
・遺伝性疾患の場合の本人の利益保護のための配慮
(事務局作成資料)


ヒトゲノム・遺伝子解析研究の過程に沿った基本的な要点

研究の有益性等の判断

・実施しようとする研究が、社会的有益性があり、かつ、個人の人権の保障が優先されているかを判断

・実施しようとする研究が、本指針に定めるヒトゲノム・遺伝子解析研究に該当するかどうかを判断


研究計画書の作成

・ インフォームド・コンセントの方法、研究により予測される結果とその開示の考え方、匿名化の方法 を含む個人に関する情報の保護の方法、試料等の保存及び使用方法などを記載

・ 単一遺伝子疾患等の場合は、研究の必要性、本人の利益保護のための措置を慎重に判断し、解析結果が試料等提供者に開示される場合においては、遺伝カウンセリングを実施する体制を確保し、それらの考え方、方法等を研究計画書に記載

・ 研究実施前に提供された試料等を研究に利用する場合には、その必要性、インフォームド・コンセントの状況等を研究計画書に記載


倫理審査委員会における審査

研究計画書の倫理審査委員会における審査

研究実施機関の長の決定

研究計画書に対する倫理審査委員会の意見に基づき、研究実施機関の長が研究実施を許可するか否かを決定

研究の実施

・ 研究は、研究計画書に従って原則として匿名化された試料等を用いて実施

・ 実施状況については、研究実施機関の長に定期的に報告。また、外部の有識者による実地調査の実施


研究結果の公表

研究の進捗状況及びその結果を定期的に又は求めに応じて公表


ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針(案)の構成

前文

I.基本的考え方

1. 基本方針
2. 本指針の適用範囲
II.研究者等の責務
3. すべての研究者等の基本的な責務
4. 研究実施機関の長の責務
5. 研究責任者の責務
6. 個人識別情報管理者の責務
7. 倫理審査委員会の責務及び構成
III.試料等提供者に対する基本姿勢
8. 試料等提供者等のインフォームド・コンセント
9. 遺伝情報の試料等提供者等への開示
10.遺伝カウンセリング
IV.試料等の取扱い
11.研究実施前提供試料等の利用
12.試料等の保存及び廃棄の方法
V.見直し
13.見直し
VI.用語の定義
14.用語の定義


別紙2

ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針(案)



平成12年12月20日

文 部 省
厚 生 省
通商産業省
科学技術庁


目 次

前文

I.基本的考え方

1.基本方針
2.本指針の適用範囲

II.研究者等の責務

3. すべての研究者等の基本的な責務
4. 研究実施機関の長の責務
5. 研究責任者の責務
6. 個人識別情報管理者の責務
7. 倫理審査委員会の責務及び構成

III.試料等提供者に対する基本姿勢

8. 試料等提供者等のインフォームド・コンセント
9. 遺伝情報の試料等提供者等への開示
10.遺伝カウンセリング

IV.試料等の取扱い

11. 研究実施前提供試料等の利用
12. 試料等の保存及び廃棄の方法

V.見直し

13.見直し

VI.用語の定義

14.用語の定義

(1) 試料等
(2) 診療情報
(3) ヒトゲノム・遺伝子解析研究
(4) 遺伝情報
(5) 個人識別情報
(6) 匿名化
(7) 個人識別情報管理者
(8) インフォームド・コンセント
(9) 代諾者等
(10) 未成年者
(11) 研究実施機関
(12) 試料等の提供が行われる機関
(13) 共同研究機関
(14) 外部の機関
(15) 倫理審査委員会
(16) 研究者等
(17) 研究責任者
(18) 研究実施担当者
(19) 試料等提供者
(20) 遺伝カウンセリング
(21) 研究実施前提供試料等
(22) ヒト細胞・遺伝子・組織バンク


前文

 科学研究の推進は、人々が健やかで心豊かに生活できる社会を実現するための重要な課題である。その中で、20世紀後半に開始されたヒトゲノム・遺伝子解析研究は、我々の世代の遺伝情報や研究が次の世代への貴重な財産となる研究であって、生命科学及び保健医療科学の進歩に大きく貢献し、人類の健康や福祉の発展、新しい産業の育成などに重要な役割を果たそうとしている。

 一方、ヒトゲノム・遺伝子解析研究は、個人を対象とした研究に大きく依存し、また、研究の過程で得られた遺伝情報は試料等提供者やその血縁者の遺伝的素因を明らかにし、その取扱いによっては様々な倫理的、法的、社会的問題を招く可能性があるという側面がある。そこで、人間の尊厳及び人権を尊重し、社会の理解と協力を得て、適正に研究を実施することが不可欠である。そのため、医学研究における倫理規範等に基づき、試料等提供者個人の人権の保障が、科学的、社会的な利益に優先されなければならないことに加えて、この側面について、社会に十分な説明を行い、その理解に基づいて研究を実施することが求められる。しかしながら、ヒトゲノム・遺伝子解析研究一般に関して、上記のような要請にこたえることのできる規範は十分には確立されておらず、人間の尊厳が確保され、試料等提供者やその家族、血縁者の人権が保障され、研究が適正に実施されるための具体的な指針の策定が望まれてきた。

 本指針は、「ヒトゲノム研究に関する基本原則」(平成12年6月14日科学技術会議生命倫理委員会取りまとめ)に示された原則に基づき、また、「遺伝子解析研究に付随する倫理問題等に対応するための指針」(平成12年4月28日厚生科学審議会先端医療技術評価部会取りまとめ)を参考としつつ、ヒトゲノム・遺伝子解析研究一般に適用されるべき倫理指針として、文部科学省、厚生労働省及び経済産業省において共同で作成し、社会に提示するものである。
 ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関わるすべての関係者が、この指針を遵守することが求められる。

I.基本的考え方

1.基本方針

 本指針は、ヒトゲノム・遺伝子解析の特色を踏まえ、すべてのヒトゲノム・遺伝子解析研究に適用されるべき倫理指針として策定されたものであり、研究現場で遵守され、社会の理解と協力を得て、人間の尊厳及び人権が尊重され、その適正な研究の推進が図られることを目的とし、以下を基本方針としている。

(1) 人間の尊厳に対する十分な配慮

(2) 事前の十分な説明と自由意思による同意(インフォームド・コンセント)

(3) 個人に関する情報の保護の徹底

(4) 人類の知的基盤、健康、福祉へ貢献する社会的に有益な研究の実施

(5) 個人の人権の保障の科学的、社会的利益に対する優先

(6) 本指針に基づく研究計画の作成、遵守及び事前の倫理審査委員会の審査、承認による研究の適正性の確保

(7) 研究の実施状況の第三者による調査と研究結果の公表を通じた研究の透明性の確保

2.本指針の適用範囲

 本指針は、ヒトゲノム・遺伝子解析研究を対象とし、研究者等に遵守を求めるものである。

<本指針施行前の研究に関する細則>

 本指針施行前に既に着手され、現在実施中のヒトゲノム・遺伝子解析研究に対しては適用しないが、可能な限り、本指針に沿って適正に実施することが望まれる。

<海外との共同研究に関する細則>

1. 海外研究機関と共同研究を行う場合、海外研究の相手国においても試料等の提供の取扱い及びヒトゲノム・遺伝子解析研究の意義等に関して、本指針の定める考え方が遵守され、人間の尊厳及び人権が尊重されなければならない。

2. 海外研究の相手国で定める法、指針などを遵守しつつ、原則として本指針の基準に従って研究を行わなければならない。

3. 海外研究の相手国における基準が、本指針よりも厳格な場合には、その厳格な基準に合わせて研究を行わなければならない。

 なお、診療において実施され、解析結果が試料等提供者及びその家族の診療に直接生かされることが医学的に確立されている臨床検査及びそれに準ずるヒトゲノム・遺伝子解析などは、本指針の対象としない。ただし、これらのヒトゲノム・遺伝子解析についても、診療を行う医師の責任において、関係学会等において作成される指針等を参考に、本指針の趣旨を踏まえた適切な対応が望まれる。

II.研究者等の責務

3. すべての研究者等の基本的な責務

(1) すべての研究者等は、生命現象の解明、診断、治療、予防方法の改善、健康の増進などを目的として、ヒトゲノム・遺伝子解析研究を実施しなければならない。

(2) すべての研究者等は、ヒトゲノム・遺伝子解析研究の社会的有益性を確認するとともに、個人の人権の保障を科学的、社会的な利益に優先して配慮しなければならない。

(3) すべての研究者等は、試料等提供者等への事前の十分な説明とその自由意思による同意(インフォームド・コンセント)を受けて、ヒトゲノム・遺伝子解析研究を実施することを基本としなければならない。

(4) すべての研究者等は、職務上知り得た個人に関する情報を正当な理由なく漏らしてはならない。その職を辞した後も同様である。

(5) すべての研究者等は、個人に関する情報の保護を図るとともに、個人に関する情報の取扱いに関する苦情等に誠実に対応しなければならない。

(6) すべての研究者等は、個人に関する情報の予期せぬ漏洩等、試料等提供者等の人権の保障の観点から重大な懸念が生じた場合には、速やかに研究実施機関の長及び研究責任者に報告しなければならない。

(7) すべての研究者等は、倫理審査委員会の承認を得て、研究実施機関の長により許可された研究計画書に従って研究を実施するなど、本指針を遵守し、人間の尊厳及び人権の尊重に最大限配慮して、適正にヒトゲノム・遺伝子解析研究を実施しなければならない。

(8) すべての研究者等は、研究実施に当たっての適正な手続の確保、外部の有識者による調査、試料等提供者からの研究の進捗状況の問い合わせへの的確な対応、研究結果の公表など、研究の透明性の確保を図らなければならない。

(9) すべての研究者等は、試料等の提供が善意に基づくものであることに留意し、既に提供されている試料等を適切に活用することなどにより、人からの試料等の提供を必要最低限とするよう努めなければならない。

4.研究実施機関の長の責務

(1) 研究実施機関の長は、その機関におけるヒトゲノム・遺伝子解析研究の実施に関する最終的な責任を有し、研究責任者及び研究実施担当者が研究計画にしたがって適正に研究を実施するよう監督しなければならない。その際、研究実施機関の長は、試料等提供者等の人権を最大限保障すべきこと、この場合において、本指針や研究計画などに反した場合、懲戒処分など不利益処分等がなされ得ることをその機関の関係者に周知徹底しなければならない。

<研究実施機関の長の例示に関する細則>

 研究実施機関の長とは、例えば、以下のとおりである。

・ 病院の場合は、病院長
・ 保健所の場合は、保健所長
・ 大学医学部の場合は、医学部長
・ 企業等の研究所の場合は、研究所長

(2) 研究実施機関の長は、個人に関する情報の漏洩防止のための十分な措置を講じなければならない。

<個人情報保護のための措置に関する細則>

 個人に関する情報を厳重に管理する手続、設備、体制を整備し、例えば、コンピューターを利用する場合には、個人に関する情報を処理するコンピュータは、他の一切のコンピュータと切り離すなどの措置を講じなければならない。

(3) 試料等の提供が行われる機関等、匿名化されていない個人に関する情報を取り扱う研究実施機関の長は、ヒトゲノム・遺伝子解析研究において、個人に関する情報の保護を図るため、個人識別情報管理者を置かなければならない。また、必要に応じて、指揮命令系統を明確にした上で、分担管理者又は個人識別情報管理者の監督の下に実際の業務を行う補助者を置くことができる。

<個人識別情報管理者の要件に関する細則>

1. 個人識別情報管理者及び分担管理者は、刑法(明治40年法律第45号)、国家公務員法(昭和22年法律第120号)その他の法律により業務上知り得た秘密の漏洩を禁じられている医師、薬剤師等でなければならない。

2. 個人識別情報管理者及び分担管理者は、その提供する試料等を用いてヒトゲノム・遺伝子解析研究(試料等の提供を除く。)を行う研究責任者又は研究実施担当者を兼ねることはできない。

(4) 研究実施機関の長は、ヒトゲノム・遺伝子解析研究実施の可否などを審査するため、その諮問機関として、倫理審査委員会を設置しなければならない。ただし、試料等の提供が行われる機関が小規模であること等により、倫理審査委員会の設置が困難である場合には、共同研究機関、公益法人又は学会によって設置された倫理審査委員会をもってこれに代えることができる。

<倫理審査委員会の設置に関する細則>

 研究実施機関に既に設置されている類似の委員会を本指針に適合する倫理審査委員会に再編成すれば、名称の如何を問わない。

<共同研究の取扱いに関する細則>

 共同研究の場合には、研究計画についてそれぞれの研究実施機関において設置された倫理審査委員会の承認を得ることが原則であり、研究実施機関の長は、その審査に当たって、他の研究実施機関における研究計画の承認状況、インフォームド・コンセントの状況、匿名化の状況などの重要な情報を得て、当該倫理審査委員会にその情報を提供しなければならない。

(5) 研究実施機関の長は、すべての研究計画又はその変更について、倫理審査委員会の意見を尊重し、許可するか否かを決定しなければならない。この場合において、倫理審査委員会が不承認の意見を提出した研究については、その実施を許可してはならない。

(6) 研究実施機関の長は、研究責任者から研究の実施状況について1年に1回以上定期的な報告を受けるほか、外部の有識者による定期的な実地調査を1年に1回以上実施するなど、ヒトゲノム・遺伝子解析研究の実施状況を把握し、必要な場合には、その変更、中止を命じなければならない。

<外部の有識者による実地調査に関する細則>

1. 研究実施機関の長は、インフォームド・コンセントの実施状況及び個人に関する情報の保護の状況について、研究計画書に従って適正に実施されているか実地調査させるものとする。

2. 研究実施機関の長は、研究責任者及び研究実施担当者を、実地調査へ協力させなければならない。

3. 外部の調査担当者は、実地調査の中で知り得た個人に関する情報を正当な理由なく漏らしてはならない。
 その職を辞した後も同様である。

(7) 研究実施機関の長は、許可した研究計画書の写し及び研究の実施状況に関する定期的な報告書の写しを個人識別情報管理者に送付しなければならない。

(8) 研究実施機関の長は、試料等提供者等からの苦情等の窓口を設置するなど、試料等提供者等からの苦情等や問い合わせに適切に対応しなければならない。

(9) 試料等の提供が行われる機関の長は、原則として試料等を匿名化した上で、外部の機関(試料等の提供が行われる機関において、同時にヒトゲノム・遺伝子解析研究も行う場合は、その研究部門は外部の機関とみなす。)に提供しなければならない。

<匿名化せずに行う外部の機関への提供に関する細則>

 試料等提供者等が匿名化を行わずに外部の機関へ提供することに同意し、かつ、倫理審査委員会の承認を受け、研究実施機関の長が許可した研究計画書において匿名化を行わずに、外部の機関に提供することが認められている場合には、試料等の匿名化を行わないことができる。

(10) 試料等の提供が行われる機関の長は、必要に応じ、適切な遺伝カウンセリング体制の整備や遺伝カウンセリングについての説明及びその適切な施設の紹介など、試料等提供者等が遺伝カウンセリングを受けられるよう配慮しなければならない。

5.研究責任者の責務

(1) 研究責任者は、ヒトゲノム・遺伝子解析研究の実施に当たって、あらかじめ研究計画書を作成し、研究実施機関の長に許可を求めなければならない。研究計画書を変更しようとする場合も同様である。

(2) 研究責任者は、研究計画書の作成に当たり、実施しようとしているヒトゲノム・遺伝子解析研究に伴う、試料等提供者等に予想される様々な影響等を踏まえ、研究の必要性、試料等提供者等の不利益を防止するための研究方法等を十分考慮しなければならない。

<試料等提供者が精神・知的障害を伴う疾患の場合に関する細則>

 試料等提供者が、治療又は予防方法が確立していない単一遺伝子疾患であって、精神・知的障害を伴うものである場合には、研究の必要性、当該提供者に対する医学的・精神的影響及びそれらに配慮した研究方法の是非等について、研究責任者は特に慎重に検討し、また、倫理審査委員会は、特に慎重に審査しなければならない。

(3) 研究責任者は、ヒトゲノム・遺伝子解析研究の特殊性に十分配慮して研究計画書を作成しなければならない。特に、インフォームド・コンセントの手続及び方法、個人に関する情報の保護の方法、研究により予測される結果及びその開示の考え方、試料等の保存及び使用の方法並びに遺伝カウンセリングの考え方については、明確に記載しなければならない。

<研究計画書に記載すべき事項に関する細則>
 研究計画書に記載すべき事項は、一般的に以下のとおりとするが、研究内容に応じて変更できる。

・ 試料等提供者を選ぶ方針(合理的に選択していることがわかる具体的な方法、試料等提供者が疾病や薬剤反応性異常を有する場合等にあっては、病名又はそれに相当する状態像の告知方法等。)
・ 研究目的、方法(対象とする疾患、分析方法等。将来の追加、変更が予想される場合はその旨。単一遺伝子疾患等の場合には研究の必要性、不利益を防止するための措置等の特記事項等。)、期間、予測される成果及び危険、個人に関する情報の保護の方法(匿名化しない場合の取扱いを含む。)
・ 試料等の種類、量
・ 共同研究機関の名称
・ 研究責任者等の氏名
・ インフォームド・コンセントのための手続及び方法
・ インフォームド・コンセントを受けるための説明文書及び同意文書
・ 試料等提供者本人からインフォームド・コンセントを受けられない場合の研究の必要性、代諾者等を選定する考え方
・ 遺伝情報の開示に関する考え方
・ 研究実施前提供試料等を使用する場合の同意の有無、内容、提供時期、本指針への適合性
・ 他の研究実施機関から試料等又は遺伝情報の提供を受ける場合のインフォームド・コンセントの内容
・ 試料等又は遺伝情報を外部の機関に提供する場合や研究の一部を委託する場合の匿名化の方法等の事項(契約する場合には、その内容を含む。)
・ 試料等の保存方法及びその必要性(他の研究への利用の可能性と予測される研究内容を含む。)
・ ヒト細胞・遺伝子・組織バンクに試料等を提供する場合には、バンク名、匿名化の方法等
・ 試料等の廃棄方法及びその際の匿名化の方法
・ 遺伝カウンセリングの必要性及びその体制

(4) 研究責任者は、許可された研究計画書に盛りこまれた事項を、すべての研究実施担当者に遵守させるなど、研究実施担当者が適正にヒトゲノム・遺伝子解析研究を実施するよう監督しなければならない。

(5) 研究責任者は、ヒトゲノム・遺伝子解析研究の実施状況について、研究実施機関の長に1年に1回以上、定期的に文書で報告しなければならない。

<報告事項に関する細則>

 研究責任者が研究実施機関の長に行う研究の実施状況の定期報告事項は、一般的に以下のとおりとするが、研究内容に応じて変更できる。

・ 提供された試料等の数
・ 外部の機関への試料等又は遺伝情報の提供数、提供理由
・ ヒトゲノム・遺伝子解析研究が行われた試料等の数
・ 研究結果、研究の進捗状況
・ 問題の発生の有無
・ 試料等の提供が行われる機関にあっては、上記のほか、匿名化を行った試料等の数

(6) 研究責任者は、原則として、匿名化された試料等又は遺伝情報を用いて、ヒトゲノム・遺伝子解析研究を実施しなければならない。

<匿名化を行わない研究に関する細則>

 試料等提供者等が同意し、かつ、倫理審査委員会の承認を受け、研究実施機関の長が許可した研究計画書において匿名化を行わないことが認められている場合には、試料等又は遺伝情報の匿名化を行わないことができる。

(7) 研究責任者は、匿名化されていない試料等又は遺伝情報を原則として外部の機関に提供してはならない。

<匿名化せずに行う外部の機関への提供に関する細則>

 試料等提供者等が匿名化を行わずに外部の機関へ提供することに同意し、かつ、倫理審査委員会の承認を受け、研究実施機関の長が許可した研究計画書において匿名化を行わないことが認められている場合には、匿名化されていない試料等又は遺伝情報の外部の機関への提供を行うことができる。

(8) 研究責任者は、ヒトゲノム・遺伝子解析研究の業務の一部を委託する場合には、受託者に対しては、試料等又は遺伝情報を原則として匿名化しなければならない。

<匿名化せずに行う委託に関する細則>

 試料等提供者等が同意し、かつ、倫理審査委員会の承認を受け、研究実施機関の長が許可した研究計画書において匿名化を行わないことが認められている場合には、試料等又は遺伝情報の匿名化を行わないことができる。

(9) 研究責任者は、試料等提供者等の人権の保障や知的財産権の保護に配慮しながら、ヒトゲノム・遺伝子解析研究の進捗状況及びその結果を、定期的に及び試料等提供者等の求めに応じて、分かりやすく説明又は公表しなければならない。

6.個人識別情報管理者の責務

(1) 個人識別情報管理者は、原則として研究責任者からの依頼に基づき、ヒトゲノム・遺伝子解析研究の実施前に試料等又は遺伝情報を匿名化しなければならない。ただし、研究実施担当者等において匿名化作業が行われる場合にあっては、それが適正に行われるよう、監督しなければならない。

<試料等の匿名化の例外に関する細則>
 試料等提供者等が同意し、かつ、倫理審査委員会の承認を受け、研究実施機関の長が許可した研究計画書において匿名化を行わないことが認められている場合には、試料等の匿名化を行わないことができる。

(2) 個人識別情報管理者は、匿名化の際に取り除かれた個人識別情報を、原則として外部の機関に提供してはならない。

<個人識別情報の外部の機関への提供に関する細則>

 試料等提供者が同意し、かつ、倫理審査委員会の承認を受け、研究実施機関の長が許可した研究計画書において匿名化を行わないことが認められている場合には、個人識別情報の外部の機関への提供を行うことができる。

(3) 個人識別情報管理者は、匿名化作業の実施のほか、匿名化されていない試料等を使用する研究実施担当者を適切に監督するなど、個人識別情報が含まれている情報が漏洩しないよう厳重に管理しなければならない。

7.倫理審査委員会の責務及び構成

(1) 倫理審査委員会は、本指針に基づき、研究計画の実施の適否等について、倫理的観点とともに科学的観点も含めて審査し、文書により意見を述べなければならない。

(2) 倫理審査委員会の委員は、職務上知り得た情報を正当な理由なく漏らしてはならない。その職を辞した後も同様である。

(3) 倫理審査委員会は、様々な立場からの委員によって公正かつ中立的な審査が行えるよう、適切に構成し運営されなければならない。

<倫理審査委員会の構成に関する細則>

・ 倫理・法律を含む人文・社会科学面の有識者、自然科学面の有識者、市民の立場の者から構成されなければならない。
・ 外部委員を半数以上置くことが望ましいが、その確保が困難な場合には、少なくとも複数名置かなけれ ばならない。
・ 外部委員の半数以上は、人文・社会科学面の有識者又は市民の立場の者でなければならない。
・ 女性委員が含まれることが望ましい。

<倫理審査委員会の運営に関する細則>

・ 審議または採決の際には、人文・社会科学面又は市民の立場の委員が1名以上出席していなければならない。
・ 研究実施機関の長、審査対象となる研究の研究責任者及び研究実施担当者は、その審議又は採決に参加してはならない。ただし、倫理審査委員会の求めに応じて、会議に出席し、説明を行うことはできる。

<運営規則に関する細則>

 以下の事項の運営規則が定められなければならない。

・ 委員長の選任方法
・ 会議の成立要件
・ 議決方法
・ 審査記録の保存期間
・ 公開に関する事項

(4) 倫理審査委員会は、その決定により、委員長があらかじめ指名した委員又はその下部組織による迅速審査手続を設けることができる。その結果については、迅速審査を行った委員以外の委員又は上部組織である倫理審査委員会に報告されなければならない。

<迅速審査手続に関する細則>

1. 迅速審査手続による審査に委ねることができる事項は、一般的に以下のとおりとする。

・ 研究計画の軽微な変更の審査
・ 既に倫理審査委員会において承認されている研究計画に準じて類型化されている研究計画の審査
・ 共同研究であって、既に主たる研究実施機関において倫理審査委員会の承認を受けた研究計画を他の分担研究実施機関が実施しようとする場合の研究計画の審査

2. 迅速審査の結果の報告を受けた委員は、委員長に対し、理由を付した上で、当該事項について、改めて倫理審査委員会における審査を求めることができる。この場合において、委員長は、相当の理由があると認めるときは、倫理審査委員会を速やかに開催し、当該事項について審査することとしなければならない。

(5) 倫理審査委員会については、その組織に関する事項や運営に関する規則が公開されるとともに、議事の内容についても原則として公開されなければならない。

<組織に関する事項の公開に関する細則>

 組織に関する公開すべき事項は、以下のとおりとする。

・ 倫理審査委員会の構成(下部組織を含む。)
・ 委員の氏名、所属及びその立場

<議事内容の公開に関する細則>

1. 議事の内容は、それが明らかとなるように具体的に公開されなければならない。

2. 試料等提供者等の人権、研究の独創性、知的財産権の保護に支障が生じる恐れのある部分は、倫理審査委員会の決定により非公開とすることができる。この場合、倫理審査委員会は、非公開とする理由を公開しなければならない。

III.試料等提供者に対する基本姿勢

8.試料等提供者等のインフォームド・コンセント

(1) 研究責任者(他の研究実施機関から試料等の提供を受けて研究を実施する者を除く。
 以下この8((4)及び(7)を除く。)において同じ。)は、試料等の提供の依頼を受ける人を、不合理、不当又は不公平な方法で選んではならない。

<試料等提供者が疾患等を有する場合の告知に関する細則>

 試料等の提供の依頼を受ける人が、疾病や薬剤反応性異常を有する場合及びそれらの可能性のある場合には、その人が病名又はそれに相当する状態像などの告知を受けていなければならない。

(2) 研究責任者は、試料等提供者に対して、事前に、その研究の目的、方法、予測される研究成果、試料等提供者が被る可能性のある不利益、試料等の保存及び使用方法等について十分な説明を行った上で、自由意思に基づく文書による同意(インフォームド・コンセント)を受けて、試料等の提供を受けなければならない。

(3) 研究責任者は、試料等提供者本人からインフォームド・コンセントを受けることが困難な場合であって、その人からの試料等の提供を受けないと実施しようとしている研究が成り立たないと倫理審査委員会が承認し、研究実施機関の長が許可した場合には、試料等提供者本人の代諾者等からインフォームド・コンセントを受けることができる。

<代諾者等からインフォームド・コンセントを受ける場合の取扱いに関する細則>

 試料等提供者本人からインフォームド・コンセントを受けることが困難であり、代諾者等からのインフォームド・コンセントによることができる場合及びその取扱いは、以下のとおりとし、いずれの場合も、研究責任者は、研究の必要性及び代諾者等を選定する考え方を研究計画書に記載し、当該研究計画書は倫理審査委員会により承認され、研究実施機関の長に許可されなければならない。

・ 試料等提供者が痴呆等により有効なインフォームド・コンセントを与えることができないと客観的に判断される場合
・ 試料等提供者が死者であって、その生前における明示的な意思に反していない場合
・ 未成年者の場合。ただし、この場合においても、研究責任者は、試料等提供者本人が理解できる言葉で十分な説明を行うよう努めなければならないとともに、試料等提供者が16歳以上の場合には、代諾者とともに、試料等提供者本人からもインフォームド・コンセントを受けなければならない。

<代諾者の選定の基本的考え方に関する細則>

 研究責任者は、代諾者について、一般的には、以下に定める人の中から、試料等提供者の家族構成や置かれている状況等を勘案して、試料等提供者の推測される意思や利益を代弁できると考えられる人が選定されることを基本として、研究計画書に代諾者を選定する考え方を記載しなければならない。

1. 任意後見人、親権者、後見人や保佐人が定まっているときはその人

2. 試料等提供者本人の配偶者、成人の子、父母、兄弟姉妹、孫、祖父母又は同居の親族、及びそれらの近親者に準ずると考えられる人

<遺族の選定の基本的な考え方に関する細則>

 研究責任者は、遺族について、一般的には、死亡した試料等提供者本人の配偶者、成人の子、父母、兄弟姉妹、孫、祖父母又は同居の親族、及びそれらの近親者に準ずると考えられる人の中から、死亡した試料等提供者の家族構成や置かれていた状況、慣習等を勘案して、試料等提供者の生前の推測される意思を代弁できると考えられる人が選定されることを基本として、研究計画書に遺族を選定する考え方を記載しなければならない。

(4) 試料等提供者又はその代諾者等は、自らが与えたインフォームド・コンセントについて、いつでも不利益を受けることなく撤回することができる。

(5) 研究責任者は、試料等提供者又はその代諾者等からインフォームド・コンセントの撤回があった場合には、原則として、当該試料等提供者に係る試料等及び研究結果を匿名化して廃棄しなければならない。

<廃棄の例外に関する細則>

1. 試料等及び研究結果の廃棄をしなくても差し支えない場合は、以下のとおりとする。

・ 当該試料等が連結不可能匿名化されている場合
・ 廃棄しないことにより個人識別情報が含まれている情報が明らかになるおそれが極めて小さく、かつ廃棄作業が極めて過大である場合等やむを得ない場合
2. 既に研究結果が公表されている場合は、研究結果については、廃棄しなくても差し支えない。

(6) 研究責任者は、試料等提供者等からのインフォームド・コンセントを受ける手続においては、試料等提供者又は代諾者等に対し、十分な理解が得られるよう、必要な事項を記載した文書を用いて説明を行わなければならない。試料等提供者が単一遺伝子疾患等の場合には、遺伝カウンセリングの利用に関する情報を含めて説明を行うとともに、必要に応じて遺伝カウンセリングを実施しなければならない。

<説明文書の記載に関する細則>

 試料等提供者又は代諾者等に対する説明文書に記載すべき事項は、一般的に以下のとおりとするが、研究内容に応じて変更できる。

・ 試料等の提供は任意であること
・ 試料等の提供の依頼を受けた人は、提供に同意しないことにより不利益な対応を受けないこと
・ 試料等提供者又はその代諾者等は、自らが与えたインフォームド・コンセントについて、いつでも不利益を受けることなく撤回することができること
・ 試料等提供者又はその代諾者等により同意が撤回された場合には、当該撤回に係る試料等及び研究結果が連結不可能匿名化されている場合等を除き、廃棄されること
・ 試料等提供者として選ばれた理由
・ 研究の目的及び方法(対象とする疾患、分析方法等。将来の追加、変更が予想される場合はその旨。
 単一遺伝子疾患等の場合には研究の必要性、不利益を防止するための措置等の特記事項等。)、期間
・ 研究責任者の氏名及び職名
・ 予測される研究結果及び試料等提供者等に対して予測される危険や不利益(社会的な差別等社会生活上の不利益も含む。)
・ 試料等提供者等の希望により、他の試料等提供者等の個人に関する情報の保護や研究の独創性の確保に支障が生じない範囲内で研究計画及び研究方法についての資料を入手又は閲覧することができること
・ 提供を受けた試料等又はそれから得られた遺伝情報についての連結可能匿名化又は連結不可能匿名化の別及び匿名化の具体的方法。匿名化できない場合にあっては、その旨及び理由
・ 試料等又はそれから得られた遺伝情報を他の機関へ提供する可能性及びその場合は、倫理審査委員会により、個人識別情報が含まれている情報の取扱い、提供先の機関名、提供先における利用目的が妥当であることについて、審査されていること
・ 遺伝情報の開示に関する事項
・ 将来、研究の成果が特許権など知的財産権を生み出す可能性があること。特許権などの知的財産権を生み出した場合の想定される帰属先
・ 試料等から得られた遺伝情報は、匿名化された上、学会等に公表され得ること
・ 試料等の保存及び使用方法
・ 研究終了後の試料等の保存、使用又は廃棄の方法(他の研究への利用の可能性と予測される研究内容を含む。)
・ 試料等をヒト細胞・遺伝子・組織バンクに提供し、一般的に研究用資源として分譲することがあり得る場合には、バンクの学術的意義、当該バンクが運営されている機関の名称、提供される試料等の匿名化の方法及びバンクの責任者の氏名
・ 遺伝カウンセリングの利用に係る情報(単一遺伝子疾患等の場合には、遺伝カウンセリングが利用可能であること等)
・ 試料等の提供は無償であること
・ 問い合わせ、苦情等の窓口

(7) 他の研究実施機関から試料等又は遺伝情報の提供を受ける研究責任者は、当該試料等又は遺伝情報に関するインフォームド・コンセントの内容を当該他の研究実施機関からの文書等によって確認しなければならない。

(8) 研究責任者は、ヒトゲノム・遺伝子解析研究の実施前に、ヒトゲノム・遺伝子解析研究又は関連する医学研究に使用することを想定して、試料等提供者等からインフォームド・コンセントを受ける場合には、その時点において予想される具体的研究目的を明らかにするとともに、個人に関する情報が、匿名化の可能性を含めて、どのように管理され、かつ、保護されるかを説明し、理解を得なければならない。

9.遺伝情報の試料等提供者等への開示

(1) 研究責任者は、個々の試料等提供者の遺伝情報が明らかとなるヒトゲノム・遺伝子解析研究に関して、試料等提供者が、自らの遺伝情報の開示を希望している場合には、原則として開示しなければならない。ただし、遺伝情報がそれを提供する十分な意義がなく、開示しないことについて試料等提供者のインフォームド・コンセントを受けている場合には、この限りでない。

<遺伝情報の開示に関する細則>

1. 研究責任者は、試料等提供のインフォームド・コンセントに際し、開示をしないことにつき同意が得られているにもかかわらず、当該試料等提供者が事後に開示を希望した場合は、以下の場合を除き、当該試料等提供者の遺伝情報を開示しなければならない。開示しない場合には、当該試料等提供者に遺伝情報を開示しない理由を分かりやすく説明しなければならない。

・ 多数の人又は遺伝子の遺伝情報を相互に比較することにより、ある疾患と遺伝子の関連やある遺伝子の機能を明らかにしようとするヒトゲノム・遺伝子解析研究などであって、当該情報がその人の健康状態等を評価するための情報としての精度や確実性に欠けており、提供者個人に知らせるには十分な意義がない研究であることにつき、研究計画書に記載され、当該研究計画書が倫理審査委員会の承認を受け、研究実施機関の長により許可された場合

2. 研究責任者は、試料等提供者が未成年者の場合に、その未成年者が自らの遺伝情報の開示を希望している場合には、開示した場合の精神的な影響等を十分考慮した上でその未成年者に開示することができる。
 ただし、その未成年者が16歳未満の場合には、当該未成年者の代諾者の意向を確認し、これを尊重しなければならない。また、研究責任者は、未成年者の遺伝情報を開示することによって、差別、養育拒否、治療への悪影響が心配される場合には、研究実施機関の長に報告をしなければならない。研究実施機関の長は、開示の前に、必要に応じ、開示に係る倫理審査委員会の意見や未成年者とその未成年者の代諾者の話し合いを求めるようにしなければならない。

(2) 研究責任者は、個々の試料等提供者の遺伝情報が明らかとなるヒトゲノム・遺伝子解析研究に関して、試料等提供者が、自らの遺伝情報の開示を希望していない場合には、開示してはならない。

<遺伝情報の非開示に関する細則>

 研究責任者は、試料等提供者が自らの遺伝情報の開示を希望していない場合であっても、その遺伝情報が試料等提供者等の生命に重大な影響を与えることが判明し、かつ、有効な対処方法があるときは、研究実施機関の長に報告しなければならない。研究実施機関の長は、特に下記事項について考慮した開示に関する倫理審査委員会の意見を求め、それに基づき、研究責任者、試料等提供者の診療を担当する医師及びその医師が所属する医療機関の長と協議しなければならない。その結果を踏まえ、研究責任者は試料等提供者に対し、十分な説明を行った上で、当該試料等提供者の意向を確認し、なお開示を希望しない場合には、開示してはならない。

・ 試料等提供者等の生命に及ぼす影響
・ 有効な治療法の有無と試料等提供者の健康状態
・ 血縁者が同一疾患等に罹患している可能性
・ インフォームド・コンセントに際しての研究結果の開示に関する説明内容

(3) 研究責任者は、試料等提供者の遺伝情報を、試料等提供者本人以外の人から求めがあっても、試料等提供者本人の同意がない場合は、原則として開示してはならない。

<試料等提供者以外の人に対する開示に関する細則>

1. 試料等提供者の代諾者等(未成年者に対して代諾した人を除く。)が試料等提供者本人の遺伝情報の開示を希望する場合には、その代諾者等が開示を求める理由又は必要性を倫理審査委員会に諮った上で、当該委員会の意見に基づき研究実施機関の長が対応を決定しなければならない。

2. 研究責任者は、試料等提供者が未成年者の場合に、その未成年者の代諾者から当該未成年者の遺伝情報の開示の求めがあった場合には、当該代諾者にこれを開示することができる。ただし、その未成年者が16歳以上の場合には、当該未成年者の意向を確認し、これを尊重しなければならない。また、研究責任者は、未成年者の遺伝情報を開示することによって、差別、養育拒否、治療への悪影響が心配される場合には、研究実施機関の長に報告しなければならない。研究実施機関の長は、開示の前に、必要に応じ、開示に係る倫理審査委員会の意見や未成年者とその未成年者の代諾者の話し合いを求めるようにしなければならない。

3. 研究責任者は、試料等提供者の血縁者から求めがあった場合、試料等提供者が自らの遺伝情報の血縁者への開示を希望していない場合であっても、その遺伝情報が試料等提供者の血縁者の生命に重大な影響を与える可能性が高いことが判明し、かつ、有効な対処方法があるときは、研究実施機関の長に報告しなければならない。研究実施機関の長は、特に下記事項について考慮した開示に関する倫理審査委員会の意見を求め、それに基づき、研究責任者と協議しなければならない。
 その結果を踏まえ、研究責任者は、改めて、試料等提供者の理解を求め、承諾を得られるよう努めなければならない。その上で、試料等提供者が血縁者への開示を希望しない場合であっても、試料等提供者の血縁者に対し、十分な説明を行った上で、当該試料等提供者の血縁者の意向を確認し、

開示を希望する場合には、開示することができる。

・ 血縁者が同一疾患等に罹患している可能性
・ 血縁者の生命に及ぼす影響
・ 有効な治療法の有無と血縁者の健康状態
・ インフォームド・コンセントに際しての研究結果の開示に関する説明内容

(4) 研究責任者は、単一遺伝子疾患等に関する遺伝情報を開示しようとする場合には、医学的又は精神的な影響等を十分考慮し、診療を担当する医師を通じて開示を行うこととするほか、必要に応じ、遺伝カウンセリングを実施しなければならない。

10.遺伝カウンセリング

(1) 目的

 ヒトゲノム・遺伝子解析研究における遺伝カウンセリングは、対話を通じて、試料等提供者及びその家族、血縁者に正確な情報を提供し、疑問に適切に応え、その人たちの遺伝性疾患等に関する理解を深め、ヒトゲノム・遺伝子解析研究や遺伝性疾患等をめぐる不安、さらに悩みにこたえることによって、今後の生活に向けて自らの意思で選択し、行動できるように支援、援助することを目的とする。

(2) 実施方法

 遺伝カウンセリングは、遺伝医学に関する十分な知識を有し、遺伝カウンセリングに習熟した医師、医療従事者等の協力により実施されなければならない。

<遺伝カウンセリングに代わる情報の提供に関する細則>

 遺伝カウンセリング体制が整備されていない試料等の提供が行われる機関は、試料等提供者又はその家族、血縁者から遺伝カウンセリングの求めがあった場合には、適切な施設を紹介しなければならない。

IV.試料等の取扱い

11.研究実施前提供試料等の利用

(1) 研究実施機関において、ヒトゲノム・遺伝子解析研究の実施前に提供され、保存されている試料等の利用の可否は、試料等の提供者等の同意の有無又は内容及び試料等が提供された時期を踏まえ、以下の(2)から(4)までに定めるところにより、倫理審査委員会の承認を得た上で、研究実施機関の長が決定する。

(2) 本指針施行後に提供された研究実施前提供試料等については、本指針の理念を踏まえて、研究実施機関の長及び研究責任者は、その利用について慎重に判断し、また、倫理審査委員会は、研究における利用の可否を慎重に審査しなければならない。

(3) 試料等の提供時に、ヒトゲノム・遺伝子解析研究における利用を含む同意が与えられているA群試料等については、その同意の範囲内でヒトゲノム・遺伝子解析研究に利用することができる。

(4) 試料等の提供時に、ヒトゲノム・遺伝子解析研究における利用が明示されていない研究についての同意のみが与えられているB群試料等及び研究に利用することの同意が与えられていないC群試料等については、原則として、本指針において定める方法等に従って、新たに同意を得ない限りヒトゲノム・遺伝子解析研究に利用してはならない。

<本指針施行後に提供されたA群試料等の利用に関する細則>

 研究実施機関の長及び研究責任者は、A群試料等が提供された時点における同意が、他のヒトゲノム・遺伝子解析研究への利用に関し、そのヒトゲノム・遺伝子解析研究の意義、研究目的又は匿名化等の方法などに、どの程度言及された同意であったか、また、同意が得られた時期などにも配慮して、その利用の取扱いを判断し、また、倫理審査委員会も、同様の観点から上記を配慮して、その利用の取扱いを審査しなければならない。

<本指針施行前に提供されたB群試料等の利用に関する細則>

 本指針施行前に提供されたB群試料等については、以下のいずれかの要件を満たす場合として、倫理審査委員会でその利用を承認し、研究実施機関の長により許可された場合に限り、ヒトゲノム・遺伝子解析研究に利用することができる。

1) 連結不可能匿名化されていることにより、試料等の提供者等に危険や不利益が及ぶ可能性がない場合
2) 連結可能匿名化されている場合においては、ヒトゲノム・遺伝子解析研究により試料等の提供者等に危険や不利益が及ぶ可能性が極めて少なく、研究に高度の有用性が認められ、他の方法では実際上研究の実施が不可能又は極めて困難であること

<本指針施行後に提供されたB群試料等の利用に関する細則>

 本指針施行後に提供されたB群試料等については、「本指針施行前に提供されたB群試料等の利用に関する細則」に記載された要件に加えて、試料等の利用を拒否する機会が保障されており、特に連結可能匿名化の上で実施される研究については、B群試料等が提供された時点における同意が、他の研究への利用に関し、研究目的や匿名化等の方法などにどの程度言及された同意であったか、また、同意が得られた時期などにも配慮して、倫理審査委員会がヒトゲノム・遺伝子解析研究への利用を承認し、研究実施機関の長により許可された場合に限り、ヒトゲノム・遺伝子解析研究に利用することができる。

<本指針施行前に提供されたC群試料等の利用に関する細則>

 本指針施行前に提供されたC群試料等については、以下のいずれかの要件を満たす場合として、倫理審査委員会がその利用を承認し、研究実施機関の長により許可された場合に限り、ヒトゲノム・遺伝子解析研究に利用することができる。

1) 連結不可能匿名化されていることにより、試料等の提供者等に危険や不利益が及ぶ可能性がない場合
2) 連結可能匿名化されており、かつ、次のすべての要件を満たしている場合
a ヒトゲノム・遺伝子解析研究により試料等の提供者等に危険や不利益が及ぶ可能性が極めて少ないこと
b その試料等を用いたヒトゲノム・遺伝子解析研究が、社会の利益に大きく貢献する研究であること
c 他の方法では実際上、ヒトゲノム・遺伝子解析研究の実施が不可能であること
d ヒトゲノム・遺伝子解析研究の実施状況について情報の公開を図り、併せて試料等の提供者等に問い合わせ及び試料等の研究への利用を拒否する機会を保障するための措置が講じられていること

<本指針施行後に提供されたC群試料等の利用に関する細則>

 本指針施行後に提供されたC群試料等については、「本指針施行前に提供されたC群試料等の利用に関する細則」に記載された要件に加えて、特に連結可能匿名化の上で実施される研究については、症例数が限られており、かつ、緊急に研究を実施する必要がある場合など、倫理審査委員会が真にやむを得ないとその利用を承認し、研究実施機関の長により許可された場合に限り、ヒトゲノム・遺伝子解析研究に利用することができる。

12.試料等の保存及び廃棄の方法

(1) 保存の一般原則

 研究責任者は、研究実施機関内で試料等を保存する場合には、試料等提供者等の同意事項を遵守し、研究計画書に定められた方法に従わなければならない。

(2) ヒト細胞・遺伝子・組織バンクへの提供

 研究責任者は、試料等をヒト細胞・遺伝子・組織バンクに提供する場合には、当該バンクが試料等を一般的な研究用試料等として分譲するに当たり、連結不可能匿名化がなされることを確認するとともに、バンクに提供することについて同意を得られているなどの、試料等提供者等との同意事項を遵守しなければならない。

(3) 試料等の廃棄

 研究責任者は、研究計画書に従い自ら保存する場合及びヒト細胞・遺伝子・組織バンクに提供する場合を除き、試料等の保存期間が研究計画書に定めた期間を過ぎた場合には、試料等提供者等の同意事項を遵守し、匿名化して廃棄しなければならない。

V.見直し

13.見直し

 この指針は、必要に応じて、又は施行後5年を目途としてその全般に関して検討を加えた上で、見直しを行うものとする。

VI.用語の定義

14.用語の定義

(1) 試料等

 ヒトゲノム・遺伝子解析研究に用いようとする血液、組織、細胞、体液及び排泄物やこれらから抽出したDNAなど人の体の一部及び試料等提供者の診療情報(死者から提供された試料等を含む。)をいう。ただし、学術的な価値が定まり、研究実績として十分に認められ、研究用に広く一般に利用され、さらに一般に入手可能な組織、細胞、体液及び排泄物並びにこれらから抽出したDNAなどは含まれない。

<注>
 臓器の移植に関する法律(平成9年法律第104号)に基づいて脳死と判定された人からの試料等の提供は想定していない。

(2) 診療情報

 診断及び治療を通じて得られた疾病名、投薬名、検査結果等の情報をいう。

(3) ヒトゲノム・遺伝子解析研究

 主として人の疾患克服に関連して、試料等を用い、試料等提供者の個体を形成する細胞に共通し、試料等提供者からその子孫に受け継がれ得るヒトゲノム・遺伝子の構造又は機能を明らかにしようとする研究をいう。本研究に用いる試料等の提供のみが行われる場合も含まれる。

<注>

1) 主たる内容がヒトゲノム・遺伝子解析研究ではないが、一部ヒトゲノム・遺伝子解析研究が実施される研究を含む。

2) 診療において得られた試料等又は遺伝情報を二次的に利用する研究を含む。

3) ここでいうヒトゲノム・遺伝子解析研究は、試料等提供者の個体を形成する細胞に共通し、試料等提供者からその子孫に受け継がれ得るヒトゲノムや遺伝子の情報を取り扱う研究(受精卵由来のヒトゲノム・遺伝子を解析する研究)を想定している。なお、ある疾患において、病変部位にのみ後天的に出現し、次世代には受け継がれないヒトゲノムや遺伝子の変異を対象とする研究(病変に局在するヒトゲノム・遺伝子変異を解析する研究)、ヒト遺伝子の発現に関する研究及び単にたんぱく質の構造又は機能に関する情報を取り扱う研究については、受精卵由来のヒトゲノムや遺伝子の情報を明らかにする研究を除き、本指針の対象とはしない。ただし、病変に局在するヒトゲノム・遺伝子変異を解析する研究にあっても、本指針の趣旨を踏まえた適切な対応が望まれる。

a. 受精卵由来のヒトゲノム・遺伝子を解析する研究
 受精卵から試料等提供者の個体が形成され、生命を維持する過程で働くヒトゲノムや遺伝子の情報を取り扱う研究をいう。これらの情報は、試料等提供者の個体を形成する細胞に共通して存在し、試料等提供者の生殖細胞を介してその子孫に受け継がれ得る。疾病あるいは疾病に関わる体質が遺伝する場合、受精卵由来のヒトゲノム・遺伝子変異が関与する。本研究は、基本的に試料等提供者の生殖細胞と同一のヒトゲノムを持つと考えられる末梢血リンパ球など、正常な組織を対象として実施され、DNAまたはmRNAから作られた相補DNAの塩基配列等の構造が解析される。なお、本指針では、「受精卵由来のヒトゲノム・遺伝子変異」を「ヒトゲノム・遺伝子の生殖細胞系列変異(germline mutation)」と同義に用いている。
b. 病変に局在するヒトゲノム・遺伝子変異を解析する研究
 がんなどの疾病において、後天的に生じた、病変部に局在するヒトゲノム・遺伝子変異を解析し、その疾病の発生・進展に関わる遺伝子変異などを明らかにする研究をいう。この変異は、試料等提供者の個体を形成する細胞には存在せず、生殖細胞にも受け継がれないので、次世代に遺伝することはない。本研究は、主として、病的変化を来している細胞を対象に、DNAあるいはmRNAから作られた相補DNAの塩基配列等の構造を解析することによって実施される。
 なお、本指針では、「病変に局在するヒトゲノム・遺伝子変異」を「ヒトゲノム・遺伝子の体細胞変異(somatic mutation)」と同義に用いている。
4) 薬事法(昭和35年法律第145号)第14条第3項に基づき実施される医薬品の臨床試験については、同法に基づき、既に医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(平成9年厚生省令第28号)により規制されており、ここでいうヒトゲノム・遺伝子解析研究には含まない。薬事法の規定による医療用具の製造、輸入承認申請のために実施される臨床試験についても同様である。

5) 教育目的で実施される生物実習など、構造や機能が既知の遺伝子領域について実施される遺伝子構造解析実習で、実習目的以外には試料等や解析結果の利用が行われないものについては、ヒトゲノム・遺伝子解析研究には含まない。

(4) 遺伝情報

 試料等を用いて行われるヒトゲノム・遺伝子解析研究の過程を通じて得られ、又は既に試料等に付随している個人の遺伝的特徴や体質を示す情報をいう。

(5) 個人識別情報

 個人の氏名、身元など、その人を特定する情報(それだけでは人を特定できない情報であっても、各種の名簿など他で入手できる情報と組み合わせることによりその人を特定できる場合を含む。)をいう。

<注1>
 死者について、その識別情報が法律上どのような理由に基づいて保護されるべきか議論がある。本指針においては、死者の人としての尊厳や遺族の感情及び遺伝情報が血縁者と共通していることを踏まえ、死者の識別情報も個人識別情報として保護すべきと考えた。

<注2>
 代表的な個人識別情報には、人の氏名、生年月日、住所、電話番号のほか、患者1人1人に付された診療録番号等の符号などがある。

(6) 匿名化

 ある人の個人識別情報が含まれている情報が法令、本指針又は研究計画に反して外部に漏洩しないように、その人に関する情報から個人識別情報の全部又は一部を取り除き、代わりにその人と関わりのない符号又は番号を付すことをいう。試料等に付随する情報のうち、ある情報だけでは特定の人を識別できない情報であっても、各種の名簿など他で入手できる情報と組み合わせることによりその人を識別できる場合には、組合せに必要な情報の全部又は一部を取り除いて、その人が識別できないようにすることをいう。
 匿名化には、次の種類がある。

a 連結可能匿名化: 個人識別情報に結びつけられるように、その人と新たに付された符号又は番号の対応表を残す方法による匿名化
b 連結不可能匿名化: 個人識別情報に結びつけられないように、そのような対応表を残さない方法による匿名化

(7) 個人識別情報管理者

 試料等の提供が行われる機関を含め、匿名化されていない個人に関する情報を取り扱う研究実施機関において、研究実施機関の長の指示を受け、試料等提供者等の個人識別情報が含まれている情報がその機関の外部に漏洩しないように個人識別情報を含む情報を管理し、匿名化する責任者をいう。

(8) インフォームド・コンセント

 試料等の提供を求められた人が、研究責任者からヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する十分な説明を受け、その研究の目的、方法、予測される成果や不利益等を理解し、自由意思に基づいてする試料等の提供及び試料等の取扱いに関する同意をいう。

(9) 代諾者等

 試料等の提供を求められた本人が、インフォームド・コンセントを与える能力がない場合に、その人の代わりにインフォームド・コンセントを与える人をいう。試料等提供者本人が死者の場合には遺族をいう。なお、遺族を含めずに使用する場合は、「代諾者」という。

<注>
 代諾者等は、あくまでも試料等提供者の人権を守る観点から、その人の代わりに同意するかどうかを決める人であり、代諾者等自身の遺伝的問題については、別途の対応の考慮が必要である。

(10) 未成年者

 婚姻をしていない満20歳未満の人をいう。

(11) 研究実施機関

 ヒトゲノム・遺伝子解析研究を実施する機関(試料等の提供が行われる機関も含む。)をいう。

(12) 試料等の提供が行われる機関

 研究実施機関のうち、医療機関や保健所のように、人々から試料等の提供が行われる機関をいう。

(13) 共同研究機関

 研究計画書に記載されたヒトゲノム・遺伝子解析研究を共同して行う国公立又は民間の研究実施機関(大学を含む。)をいう。ある研究実施機関が、ヒトゲノム・遺伝子解析研究の対象となる試料等をその機関以外の試料等の提供が行われる機関から提供を受ける場合には、その試料等の提供が行われる機関も含む。

(14) 外部の機関

 所属する研究実施機関以外の研究実施機関等をいう。試料等の提供を行う機関が試料等の提供を受けると同時にその機関においてヒトゲノム・遺伝子解析研究も行う場合には、その試料等を用いてヒトゲノム・遺伝子解析研究を行う部門は、外部の機関とみなす。

(15) 倫理審査委員会

 ヒトゲノム・遺伝子解析研究の実施の適否その他の事項について、試料等提供者等の人権の保障等の倫理的観点とともに科学的観点を含めて調査審議するため、研究実施機関の長の諮問機関として置かれた合議制の機関をいう。

(16) 研究者等

 研究実施機関において、研究責任者・研究実施担当者(試料等の提供を受ける業務を 行う者を含む。)、遺伝カウンセリングを行う者、個人に関する情報保護の業務を行う者、研究実施機関の長等、ヒトゲノム・遺伝子解析研究に携わる関係者をいう。

(17) 研究責任者

 個々の研究実施機関において、ヒトゲノム・遺伝子解析研究を遂行するとともに、その研究に係る業務を統括する者であって、ヒトゲノム・遺伝子解析研究の有用性と限界及び生命倫理について十分な知識を有する研究者をいう。

(18) 研究実施担当者

 研究責任者の指示や委託に従ってヒトゲノム・遺伝子解析研究を実施する者であって、業務の内容に応じて必要な知識と技能を持つ研究者、医師、薬剤師、看護婦(士)、臨床検査技師等をいう。

(19) 試料等提供者

 ヒトゲノム・遺伝子解析研究のための試料等を提供する人をいう。

(20) 遺伝カウンセリング

 遺伝医学に関する知識及びカウンセリングの技法を用いて、対話と情報提供を繰り返しながら、遺伝性疾患をめぐり生じ得る医学的又は心理的諸問題の解消又は緩和を目指し、援助や支援をすることをいう。

(21) 研究実施前提供試料等

 研究実施機関において、ヒトゲノム・遺伝子解析研究の実施前に提供され、保存されている試料等をいう。試料等の提供時における同意の状況に応じて、以下に分かれる。

a. A群試料等 試料等の提供時に、ヒトゲノム・遺伝子解析研究における利用を含む同意が与えられている試料等をいう。
b. B群試料等 試料等の提供時に、「医学的研究に用いることに同意する」などのように、ヒトゲノム・遺伝子解析研究における利用が明示されていない研究についての同意のみが与えられている試料等をいう。
c. C群試料等 試料等の提供時に、研究に利用することの同意が与えられていない試料等をいう。

(22) ヒト細胞・遺伝子・組織バンク

 提供されたヒトの細胞・遺伝子・組織などを、研究用資源として品質管理を実施して、不特定多数の研究者に分譲する非営利的事業をいう。


別紙3

各省庁関係審議会等における主な意見

●文部省

 11月24日(金)開催学術審議会バイオサイエンス部会・がん研究部会における主な意見(事務局まとめ)

○科学技術会議「基本原則」を基本としつつも、ミレニアム指針との一本化が必要でないか。
○診療と研究の境界は必ずしも明確ではない場合があり、あるいは体細胞研究により生殖細胞の遺伝子情報が明らかになるなど、実際に適用する際には問題になるケースが生じるのではないか。
○用語(3)注3) bについて、体細胞変異や発現に関する情報は、いまやがんの診断や治療感受性等の診療活動においても重要となりつつある。したがって、がんの悪性度診断や抗がん剤の治療感受性を例として、注に記載したほうがよいのではないか。
○抽象的でわかりにくい表現は、具体的な例示が必要ではないか。

●厚生省

第27回厚生科学審議会先端医療技術評価部会における
「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針(原案)」をめぐる主な意見(事務局メモ)

開催日時:平成12年10月13日(月)14:00−16:00
会議室:中央合同庁舎第5号館(7階)特別第1会議室

○は委員

1.遺伝カウンセリングについて

○「重篤な疾患等の場合に実施する」という「重篤な」の表現が適切ではない。遺伝カウンセリングは重篤でない場合も行われるものであるはず。限定されてしまう。
○むしろ「重篤な」場合に行うと書いてあるのだから、あってもよい。

2.インフォームド・コンセントについて

○「すべての研究者等の責務」の中で、インフォームド・コンセントをとらなければならないという断定的な言いぶりになっている。ICをとることは原則だが、絶対とらなければいけないというのは、非常に困るのではないか。

3.前文及び基本方針について

○「人権の保障」という表現は良い表現である。
○「人権と研究の両立」という表現は不適切である。
○ 「研究現場で守られるべき指針である」という表現について「研究、臨床の場面で…」という表現の方がふさわしくないか。
○「国民の理解を得る」という表現は重要である。
○研究の透明性の確保について、「研究成果の公開」という言葉を入れるべき。
○「研究実施の留意点」について、「この流れ」を「過程」とした方がよいのではないか。

4.「研究計画書」について

○ 「研究の協力、非協力の決定」という表現があるが、「協力」ではなく「参加」という言葉がよいのではないか。

5.指針の適用範囲について

○ 「ヒトゲノム解析研究」に限定された指針であるということをもう少しわかりやすくしたほうがよいのではないか。

6.倫理審査委員会について

○外部委員を半数入れるべきではないか。
○ 倫理審査委員会を審査する公的な機関が必要ではないか。


第28回厚生科学審議会先端医療技術評価部会における
「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針(原案)」をめぐる主な意見(事務局メモ)

開催日時:平成12年11月24日(金)16:00−18:00
会議室:中央合同庁舎第5号館(7階)特別第1会議室

○は委員、参考人の意見。

1.本指針の適用範囲について

(1)研究と医療について

○「研究」と「臨床」について、研究自体が臨床との関わりでなされていることが極めて多い可能性のある分野であることから「臨床」について関係学会の指針を参考というだけでは律しきれないのではないか。
○臨床検査に近い形で、診療の現場で行われている実態も相当あり、現場で動きがとれなくなってしまう。6学会で年内にガイドラインをまとめようとしている動きもふまえて、このようなまとめになった。
○「研究」と「臨床」を分けていただいたことは非常に評価できる。
○ 「本指針の趣旨を踏まえた適切な対応」については、曖昧な表現であるが、本指針の趣旨に沿わず、違反した場合には警告ができるというシステムを作るべき。
○今の段階では、そこまではいえないと思う。
○6学会の指針により、方針をしっかり出せば余り乱れることはないと考える。

(2)その他

○ 遺伝子解析でない方法でも遺伝情報を得ることができるが、その場合は対象とならないようだが、それでよいのか。
○ 検討委員会としては、この点は議論していない。遺伝子解析ではない、遺伝情報に結びつくものをどうするかは、この先端医療技術評価部会として、別途検討すべき。

2.ヒト細胞・遺伝子・組織バンクについて

○ 大学の研究室等で蓄積されている試料等を共同研究で利用する場合もあるが、バンクとは質的に異なることから、バンクの定義としては「不特定多数」とすべき。

3.匿名化について

○匿名化せずに提供先の同意を得て名前や病歴を付けて使用することは可能か。
○細則に匿名化しない場合もうたっている。

4.個人識別情報管理者について

○研究実施担当者は個人識別情報管理者を兼任できないとあるが、研究を進めていく中で、関係せざるを得ない状況になったときは例えば職を辞するのか、その後の立場をどのようにしたらよいのか。
○ 個人識別情報管理者と、その下に複数名の分担管理者を配置して個人識別情報管理者がその研究に関与する場合には担当から外れる整理である。

5.倫理審査委員会について

○ 委員の構成のうち、「女性委員が含まれることが望ましい」と記載されているが、むしろ「半数又は複数含む」等でないとあまり意味がないのではないか。
○ 検討委員会の下の作業委員会での議論の中で、外国の規制等の例も入れて、女性委員の記述をすべきとの意見をふまえたものである。

6.用語の定義について

○未成年者の定義について、「婚姻をしていない」と限定した理由如何。
 法律上婚姻をすると成年になるが、遺伝子解析研究等を行う際、あえていれる必要はないのではないか。
(事務局発言)婚姻をした場合には、民法上市民社会において一人前の存在になることから、代諾等の面を含めて一人前として扱ったらよいという議論の結果である。
○ ヒトゲノム・遺伝子解析研究について、変異部分と比較するために正常部分を解析することも対象となるのか。がん細胞といっても、正常細胞も必ず入ってしまうが、対象となるのか。
○対象外である。ただし、正常部分について、解析をつきつめていって、遺伝子解析が主体になる場合は対象となる。


●通商産業省

 通商産業省化学品審議会個人遺伝情報保護部会において出された主な意見

 化学品審議会個人遺伝情報保護部会では、ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針(原案)(以下「倫理指針」という。)について、

(1)生命倫理の観点から、国際的な議論との整合性も踏まえつつ、現在の我が国において社会的に受容されうる指針となっているか
(2)将来の実用化に向けて有望な研究が、適切に実施されうるような指針となっているか
(3)大学、公的研究機関、民間研究機関等のすべての研究者、研究機関等が対応可能な一般的な指針となっているか
(4)規定内容がわかりやすく明確であり、研究現場において混乱なく実効性を担保することが可能な指針となっているか
等の観点から検討を行ったところ、以下の事項について倫理指針に反映させるべきであるとの結論を得たので、関係4省庁においてその対応を検討されたい。

1.「I.基本的考え方」について

(1)「1.基本方針」は手続き規定のみで研究計画を審査するための倫理的な基準が示されていないこと、科学技術会議生命倫理委員会の「ヒトゲノム研究に関する基本原則」や厚生科学審議会先端医療技術評価部会の「遺伝子解析研究に付随する倫理問題等に対応するための指針」など複数の指針等が存在してその適用関係等が不明確であること、各々の指針等について規定する内容が不一致の事項があることから、「ヒトゲノム研究に関する基本原則」の必要な部分を倫理指針の「基本的考え方」に取り入れた上で、関連する指針等をすみやかに一本化すべきである。
(2)P1の「1.基本方針」の総論において、「人の尊厳及び人権の尊重」と「適正な研究の推進」の「両立を図る」とされているが、これら二つは全く異なるレベルの問題であるため、「両立を図る」という表現は不適切であり、「人の尊厳及び人権の尊重」を重視した表現とすべきである
(3)P2の「2.本指針の適用範囲」の<海外との共同研究に関する細則>について、国際的な動向を踏まえ日本がこの分野の研究で生命倫理問題等に対してどのような姿勢を示すのかを明確にし、それを反映したより詳細なルールとすべきである。
(4)P2の「2.本指針の適用範囲」において、「なお、診療において実施され、解析結果が〜臨床検査及びそれに準ずるヒトゲノム・遺伝子解析などは本指針の対象としない。」としているが、今後早急に診断、治療等におけるヒトゲノム解析に関する行政指針の作成に向けた議論を開始すべきである。
2.「II.研究者等の責務」について
(1)P5(10)の遺伝カウンセリングに関する規定、P6(6)の試料等又は遺伝情報を用いたヒトゲノム解析研究の実施に当たっては原則匿名化しなければならないことに関する規定、P11の「9.遺伝情報の試料等提供者への開示」の規定等については、研究が個人を対象とする臨床研究の場合とそれ以外の研究の場合で区別して概念を明確にし、それぞれの研究について、必要な事項、必ずしも必要とされない事項等を整理して規定すべきである。
(2)「7.倫理審査委員会の責務及び構成」について、倫理指針において倫理審査委員会の役割は極めて大きいため、以下の点について考慮する必要がある。
・倫理審査委員会の研究実施機関内における位置付け、権限、責任を明確にする。
・倫理審査員会の組織に関する事項、運営規則、議事要旨等の行政への届出、第三者による倫理審査委員会の審査状況の調査等倫理審査委員会に対するチェック体制を整える。
・倫理審査委員会の委員への研修やマニュアルの作成、倫理審査委員会間の情報交換の促進等倫理審査委員会の運営をバックアップする体制を整える。
(3)インフォームド・コンセントを受けるべき試料等であって適切なインフォームド・コンセントを受けていないことが判明したものや、倫理審査委員会の審査の結果使用が不適切であるとされたもの等倫理指針の規定に反する研究試料等については、当該ヒトゲノム・遺伝子解析研究に使用してはならない旨の規定が必要である。

3.「III.試料等提供者に対する基本姿勢」について

(1)P10(6)のインフォームド・コンセントの際の説明文書に記載する事項について、インフォームド・コンセントを撤回する場合や苦情等の申立て窓口を加える必要がある。

4.「IV.試料等の取扱い」について

(1)C群試料の扱いについては倫理審査委員会の判断で使用することが可能となるが、C群は特に慎重な扱いが求められるため、このような方法で問題無いか検討すべき。

4.「IV.用語の定義」について

(1)P16(9)の代諾者の定義について、代諾者の選定について個別の判断に委ねると研究者にとって承諾を得やすい親族の一人が選ばれる可能性があるため、代諾者の選定の明確な基準を設けるべきである。また、死者については、既に人でないため代諾の概念は使用できないため、生前の本人の意思や民法に定める相続人の規定や代諾者の定義等を踏まえて別途規定すべきである。その際選定の明確な基準を設けるべきであることは、代諾者の場合と同様である。


●科学技術会議

第7回科学技術会議生命倫理委員会ヒトゲノム研究小委員会におけるご意見の概要

日時;平成12年11月20日(月) 14:00〜16:00
場所;科学技術庁永田町第3会議室

1 II研究者等の責務−4研究実施機関の長の責務−(6)

 「外部の有識者による定期的な実地調査」について、ミレニアム指針に準じて(インフォームド・コンセントのための手続きの実施状況および個人識別情報の保護の状況など)調査の具体的内容がわかるよう記述すべき。

【理由】
 実際の研究実施件数はかなりの数に上ると予想される中、現状の記述では、研究責任者による報告と同様に、個々の研究の実施状況を外部有識者がつぶさに調べるように読めるため。

2 II研究者等の責務−7倫理審査委員会の責務及び構成

 「倫理的観点を中心に、科学的観点も含めて」との記述について、研究の科学的観点からの検討の重要性をもう少し前面に出した表現としてはどうか。

【理由】
 非科学的な研究ほど非倫理的なものはないとの考え方もあり、倫理的観点が中心であることは当然であるが科学的観点からの検討も重要であることが伝わる表現が望ましいため。

3 II研究者等の責務−7倫理審査委員会の責務及び構成

 「厳格に審査」の「厳格に」は不要であり、削除すべき。

【理由】
 厳格さの程度は、それを示す尺度がなく判断する人によって異なることになるため。

4 VI用語の定義−14用語の定義−(3)ヒトゲノム・遺伝子解析研究

 「生殖細胞系列ゲノム・遺伝子解析研究」「体細胞ゲノム・遺伝子解析研究」の用語と解説をわかりやすくなるよう見直してはどうか。

【理由】
 現状の解説があっても正確に理解されない危惧が強いため。

5 VI用語の定義−14用語の定義

 用語の定義は、ミレニアム指針や基本原則における定義と基本的には同じであるべき。

【理由】
 指針によって同じ用語に対する定義が異なると遵守する側の混乱を招くため。


第8回科学技術会議生命倫理委員会ヒトゲノム研究小委員会におけるご意見の概要

日時;平成12年12月11日(月) 18:30〜20:30
場所;科学技術庁永田町第3会議室

1 I.基本的考え方−2.本指針の適用範囲−<海外との共同研究に関する細則>−

 「原則として本指針の基準を下回らない方法」との記述について、「原則として本指針の基準に従った方法」という記述に変更すべき。

【理由】
 この部分の記載は、海外研究の相手国、とくに発展途上国等において、指針がないか、あってもその基準がかなり緩い場合に、それらの国でたとえば不充分なインフォームド・コンセントの下で非倫理的に採取された試料等がわが国に持ち込まれて、ヒトゲノム・遺伝子解析研究に用いられるのを防ぐことが主たる目的であり、それに対しては、「原則として本指針の基準に従った方法」とした方が適切な表現であると考えられるため。

2 VI.用語の定義−14.用語の定義−(3)ヒトゲノム・遺伝子解析研究−<注>3)b

 「病変に局在するヒトゲノム・遺伝子変位を解析する研究」において、コントロールとして正常細胞のヒトゲノム・遺伝子を解析することは、本指針の対象とならないが、このことが明確にわかるような記載に改めるべき。

【理由】
 原案の記載では、その意味が伝わらず研究者が誤解する可能性があるため。


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