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廃棄物焼却施設から排出されるばいじん等の処理基準及び
最終処分場の維持管理基準等の設定に関する意見の募集結果について

平成11年12月

厚生省生活衛生局水道環境部環境整備課

 生活環境審議会廃棄物処理部会ダイオキシン対策技術専門委員会(座長:永田勝也早稲田大学理工学部教授)においては、ダイオキシン類対策特別措置法に規定された、廃棄物焼却施設から排出されるばいじん等の処理基準及び最終処分場の維持管理基準等の設定について、本年12月8日に報告書を取りまとめました。
 当省では、この報告書の内容を踏まえて政令・省令の整備を図っていくこととしており、平成11年11月4日から12月3日までの1ヶ月間、本年11月に取りまとめられた専門委員会報告書(案)についてファックス、郵便又は電子メールにより、広く国民からの意見の募集(パブリックコメント手続)を行いました。
 このたび、寄せられましたご意見(のべ52件)及びそれに対する当省の考え方を別添のとおり取りまとめましたので、公表いたします。
 なお、寄せられましたご意見につきましては、取りまとめの便宜上、案件ごとに適宜集約させていただいております。また、水質、大気等環境全般に係るダイオキシン類対策については環境庁のホームページについてもご参照ください。
 今回、ご意見をお寄せいただきました方々の御協力に厚く御礼申し上げるとともに、今後とも、廃棄物行政の推進に御協力いただきますようお願い申し上げます。


廃棄物焼却施設から排出されるばいじん等の処理基準及び
最終処分場の維持管理基準等の設定に関する意見の募集結果について


○意見の提出者数
 ・封書又はファックスによるもの 11通
 ・電子メールによるもの 1通
 合 計 12通
○意見ののべ総数 52件

提出された意見の概要及び意見に対する考え方

1.ばいじん等の処理基準について

1)基準設定の考え方

(1) ばいじん等の埋立処分は一切してはならない。
(2) ばいじん等を埋立処分されることを通常であるとすべきではない。

【回答】

 ばいじん等については、溶融固化物の路盤材等への利用等の再生利用を積極的に進めていきますが、最終的に埋立処分しなければならないものが相当量発生することから、その適正な処理を図ることが重要と考えています。
 さらに、本年9月に政府が設定した廃棄物の減量化の目標量に基づき、平成22年度までに廃棄物の最終処分量を半減することを目指していきます。

(3) 焼却炉内作業者の健康被害の恐れを考慮して定めるべき。

【回答】

 廃棄物焼却施設における作業者の健康保護のための対策については、作業環境の測定、保護具等の使用等、別途、労働省において措置が講じられているところです。

(4) ダイオキシン類を含む環境ホルモンの作用解明の研究を行った上で、環境ホルモン作用の防止を考慮した基準とすべき。

【回答】

 ダイオキシン類の健康影響については、厚生省と環境庁の合同の専門家会合における最新の知見に基づく検討を踏まえて、一日耐容摂取量(TDI)を4pgTEQ/Kg/日と定められており、これをもとに各種基準の設定が行われているものです。なお、ダイオキシン類の人体影響については、今後とも内分泌かく乱作用も含め各種の調査研究を推進することが重要であり、今後の調査研究の進展やWHOの検討状況を踏まえながら、TDIについて改めて検討していくことが必要と考えます。

(5) 健康被害防止としての基準としては十分に厳しい基準であり、社会全体のリスクとダイオキシンのリスクを比較して、社会的対策経費が高くなる弊害についても考慮した基準を設定すべき。

【回答】

 今回のばいじん等の処理基準の設定については、ばいじん等に含まれるダイオキシン類の濃度の現状、ばいじん等の処理の現状等を踏まえ、ばいじん等が埋め立てられる最終処分場の長期的な安全性を向上するとともに、既存の施設の設置者に対しては、適切な経過措置を設けるなど、過度の負担とならないよう配慮しています。
 今後とも、ダイオキシン類を効果的かつ効率的に分解できる処理技術及びばいじん等を安全かつ有効に再生利用でいる技術等の開発・普及を図っていくこととしています。
 さらに、専門委員会報告に示されたダイオキシン類の挙動に関する調査研究の推進及び今回の規制の効果の的確な把握に努めてまいります。

(6) はいじんと焼却灰その他の燃え殻を混合した場合、ばいじん中のダイオキシン類濃度は焼却灰その他の燃え殻のダイオキシン類濃度によって希釈されることなどが考えられるため、「ばいじん」と「焼却灰その他の燃え殻」はそれぞれに対して基準を適用すべき。

【回答】

 ご指摘の通り、「ばいじん」と「焼却灰その他の燃え殻」については、ダイオキシン類の含有量にかなりの相違があるため区別して扱うことが環境保全上適切と考えられます。このため、既に、廃棄物処理法に基づく基準において、焼却施設からのばいじんと焼却灰を分離して排出・貯留することが義務づけられており、はいじんと焼却灰が分離して排出される施設については、ダイオキシン類の測定も各々実施することが適当と考えています。

2)ばいじん等の処理基準の設定

(7) ばいじんのセメント固化等を行っても、ばいじんの処理物中の含有量は削減されていないため、セメント固化等を行う施設は改修すべき。
(8) 含有量の基準は、新設炉と既設炉で分けて基準を設定すべき。
(9) ばいじんについては、既存の焼却施設については含有量基準への適合は困難であることを考慮すべき。

【回答】

 既設の焼却炉については、排ガス対策の期限である平成14年11月末までは、ばいじん等の処理基準を適用しない等、適切な経過措置を設けることが必要であると考えています。
 また、既存の施設において広く行われているセメント固化等については、ばいじんの飛散防止に一定の効果を有すること、現状において最終処分場からの浸出液によるダイオキシン類の汚染防止が図られていることから、既存の焼却施設から排出されるばいじん等については含有量基準を満たしていなくても、セメント固化等の処理が行われていれば、従来通りの埋立処分ができることとすることが適当と考えています。

(10)この処理基準案は、生物濃縮を考慮しないで算出された水質の環境基準案、排水基準案を基礎に導かれたものであり、桁違いに厳しくするよう考えを改めるべき。

【回答】

 ばいじん等の処理基準については、水質環境基準等の検討状況も踏まえ、専門委員会で検討されたものであり、報告案に示されているとおり設定することが適当と考えます。

3)測定方法について

(11)測定結果については、誤差や主観が入らないようにすべき。
(12)測定方法は極めて簡単な方法とし、自治体が実施すべき。

【回答】

 ばいじん等に含まれるダイオキシン類の測定については、先般策定された日本工業規格による分析方法に出来るだけ準拠しながら、適切に行う必要があると考えています。
 さらに、データの信頼性の確保のため、関係省庁と連携して、精度管理体制の整備を図ってまいります。
 また、ダイオキシン類対策特別措置法において、特定施設である廃棄物焼却炉から排出されるばいじん等に含まれるダイオキシン類の測定は施設設置者が行うこととされています。
 なお、施設設置者が運転管理を行う際に有効な簡易測定法の開発も進めていきます。

(13)毒性等量の算出方法では、定量下限値以下は、ゼロではなく、同等若しくは1/2とすべき。

【回答】

 ばいじん等の測定は、処理基準に基づく規制に関連するものであり、定量下限値が規制基準に比べ十分低い値となっているため、日本工業規格に示されている方法のうち、定量下限値未満の値についてはゼロにする方法によることが適当と考えています。

(14)焼却炉内作業者の健康を保護する観点から、ばいじん等の測定は相当回数実施すべき。

【回答】

 廃棄物焼却施設における作業者の健康保護のための対策については、作業環境の測定、保護具等の使用等、別途、労働省において措置が講じられているところです。

4)その他の配慮事項

(15)溶融、加熱脱塩素処理等は実施設での実証が十分でなく、高温処理に伴う新たな熱分解生成物の有害性を指摘する向きがあることから、慎重に対応すべき。

【回答】

 溶融、加熱脱塩素処理については、国内において、ばいじん等の処理技術として、既に実施設において導入されている実績があり、その効果が確認されております。

2.ばいじん等の特別管理廃棄物への指定

(16)ばいじん等の含有量基準値を超えないばいじんについても特別管理廃棄物とすべき。
(17)指定の観点をダイオキシンを含めたものに変更することをもっと明確に規定すべき。
(18)重金属の場合と同様に、ダイオキシン類濃度に依らないで焼却灰そのものを指定すべき。

【回答】

 一般廃棄物焼却施設からのばいじん、及び産業廃棄物焼却施設からのばいじん及び燃えがらのうち重金属等の溶出について定めた判定基準に適合しないものについては、既に特別管理廃棄物に指定されていますが、今回はこれに加えて、ダイオキシン対策の観点から、ばいじん等の含有量基準を超過し、処理が必要なばいじん及び燃え殻等を特別管理廃棄物として指定することが妥当と考えています。

3.最終処分場の維持管理基準の強化

(19)最終処分場の維持管理について、自治体の首長の責任を法令に明記するべき。

【回答】

 最終処分場を市町村が設置している場合には、廃棄物処理法上、当該市町村がその維持管理に責任を持っています。

(20)維持管理基準の要素として、労働者の安全確保を重要な要素として加えるべき。

【回答】

 今回の維持管理基準の設定は、生活環境の保全を目的としたものですが、埋立地でのばいじん等の飛散防止措置の強化を図ることとしており、これにより労働者の安全確保にも資するものと考えられます。

(21)ばいじん等の埋立は禁止し、飛散等が生じないようにした上で、厳重に保管することを義務づけるべき。
(22)保管措置を講じることにより、浸出水の発生を避けるべき。
(23)浸出水が発生する場合でも完全クローズド処理し、系外には一切放流禁止とすべき。

【回答】

 ばいじん等については、溶融固化物の路盤材等への利用等の再生利用を積極的に進めていきますが、最終的に埋立処分しなければならないものが相当量発生することから、その適正な処理を図ることが重要と考えています。
 さらに、本年9月に政府が設定した廃棄物の減量化の目標量に基づき、平成22年度までに廃棄物の最終処分量を半減することを目指していきます。

4.廃棄物焼却炉からの排出ガス中のダイオキシン類に係る基準について

(24)大型炉になるほど不均一な燃焼になり、燃焼温度分布もばらつき、制御も困難であり、ダイオキシン対策として十分な技術的レベルにない。

【回答】

 一般には、大型炉で24時間連続燃焼を行った方が、ダイオキシン類の削減対策は効果的に実施できるものと考えられます。

(25)広域化による集約化は、地域性があるので画一的に扱うべきでない。

【回答】

 ごみ処理の広域化については、ご指摘の通り、地域の地理的・社会的条件を踏まえ、実施することが適切と考えています。

(26)新設・既設の区分や規模の大小にかかわらず、最低基準を0.1ng-TEQ/Nm3とし、さらに排出ゼロに向けて達成可能な基準値を設定するべき。
(27)適用時期の猶予期間を前倒しにすべき。
【回答】

 廃棄物焼却炉からの排出ガス中のダイオキシン類の基準については、平成9年8月に設定された廃棄物処理法に基づく排出基準に対応して、現に個々の施設における対策が進められていることに留意すると、現行の廃棄物処理法に基づく排出基準と同等の水準及びスケジュールで設定することが適当と考えています。なお、廃棄物処理法の基準については、ダイオキシン類対策特別措置法の基準と同様に、コプラナーPCBを含める必要があると考えています。

5.未規制小型焼却炉対策について

(28)未規制の焼却炉を残さないことが重要である。
(29)規制内容には、技術開発を妨げないために、構造等に関する規制を設けるべきではない。
(30)ダイオキシン類対策特別措置法の特定施設以外の小型焼却炉であって排出基準値を達成できないものは使用禁止とすべき。

【回答】

 未規制小型焼却炉に係る対策については、ダイオキシン類対策特別措置法の規制対象として、1時間当たりの処理能力が200キログラム未満50キログラム以上のものまで含めることが提案されているところですが、今後、処理能力が50キログラム未満の施設に関する排出抑制対策も含めて、廃棄物処理法に基づく構造・維持管理基準のあり方について、検討していくこととしております。

(31)家庭用簡易焼却炉は全面的に禁止すべき。

【回答】

 家庭用簡易焼却炉はダイオキシン類の発生抑制が困難であることから、ごみは基準に適合した焼却施設で市町村が適切に処理するよう指導してきているところであり、今後とも指導に努めてまいります。

(32)木屑のみを焼却する小型焼却炉は規制の対象とすべきではない。

【回答】

 廃棄物中の塩素分を完全に無くすことは困難であること、廃棄物焼却に伴うダイオキシン類の発生については、焼却する廃棄物の性状よりも燃焼状態や排ガス処理の状況が大きな影響を及ぼすことから、焼却廃棄物に関わらず一定規模以上の廃棄物焼却施設を規制対象としているところです。

(33)ダイオキシン類濃度の測定は低料金で公的機関が行うべき。

【回答】

 ダイオキシン類濃度の測定については、極微量のダイオキシン類の信頼性の高い測定が可能な技術を有する民間ないし公的な分析機関において、適正な料金で実施されることが必要であると考えています。

(34)規制だけではなく、適切な指導及び財政的支援を行うべき。

【回答】

 厚生省としては、廃棄物焼却施設からのダイオキシン類の排出抑制のための種々の対策技術や焼却以外の処理技術等に関する調査研究及び情報提供等の技術的支援、市町村が設置する廃棄物焼却施設への財政的支援等に努めていくこととしております。

6.今後の課題

(35)「焼却技術の改善等、基本的技術の確立」を加えるべき。

【回答】

 厚生省としては、廃棄物焼却施設からのダイオキシン類の排出抑制のための種々の対策技術や焼却以外の処理技術等に関する調査研究を推進しています。

(36)塩ビ製品等の使用抑制及び焼却禁止措置を講じることを義務づけるべき。

【回答】

 廃棄物処理法の基準に合致した適切な廃棄物焼却炉で焼却すれば、塩ビ等の塩素源を含有していてもダイオキシン類の削減が可能であること、廃棄物の中には塩ビ以外の塩素源も通常含まれていることから、ダイオキシン類の発生抑制の観点からは、適切な廃棄物焼却施設による処理を確保することが重要であると考えております。
 なお、循環型社会の構築に向けて、塩ビ製品も含めた様々な製品のリサイクルの推進方策の検討が必要と考えております。

7.その他の事項

(37)焼却施設より発生するばいじん及び燃えがらについての適正処理は、現行の規定では、担保されていない。中間処理(焼却)業者が排出事業者となって発行する管理票(マニフェスト)をもって、適正処理が的確に機能しているとは考え難い。新たな制度の導入を検討すべきではないか。

【回答】

 焼却施設から発生するばいじん及び燃えがらについては、これまでの廃棄物処理法の基準によって主として重金属による汚染防止の観点から適正処理が図られてきましたが、今回のダイオキシン類に係る基準の設定により、ダイオキシン類による汚染防止の観点からも一層の対策の強化が図られるものと考えています。なお、マニフェスト制度の強化については、生活環境審議会廃棄物処理部会において検討を行っているところです。

(38)国民全体がごみの削減に協力できる環境を作るべき。

【回答】

 廃棄物の排出抑制やリサイクルの推進によるごみの削減については、国民全体の理解と協力が不可欠であり、ダイオキシン対策基本指針にも述べられている通り、国民への的確な情報提供と情報公開に努めていきます。

(39)焼却を完全に行うことにより、灰の発生量を減らすべき。

【回答】

 廃棄物焼却施設における完全燃焼等の対策によりダイオキシン類の発生を抑制しつつ、ごみの排出抑制、リサイクルの推進により、焼却量の抑制に努めてまいります。

(40)社会全体のリスクの中にダイオキシン類のリスクを位置付け、それに基づきダイオキシン問題を評価できるような情報を流すべき。

【回答】

 政府においては、引き続き、ダイオキシン類に関する国民への的確な情報提供及び情報公開に努めてまいります。


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