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医薬品に関連する医療事故防止対策(案)に寄せられた意見について

平成12年11月1日
厚生省医薬安全局安全対策課
審査管理課

 医薬品に関連する医療事故防止対策(案)について、平成12年8月11日から9月10日までインターネットのホームページ等を通じて御意見を募集したところ、23通の御意見をいただきました。
 お寄せいただいた御意見とそれらに対する当省の考え方につきまして以下のとおり御報告いたします。とりまとめの都合上、いただいた御意見は、適宜集約したものとしております。
 なお、いただいた御意見については平成12年12月末まで厚生省行政相談室で閲覧することができます。

1.全般事項についての質問

このような改善案の立案は、「まず現場を見る」ことが必要である。今回の意見募集要項には、立案プロセスについて触れられていない。

●今回の対策は、医師、看護婦、薬剤師、臨床工学技士のほか、心理学、人間工学、リスクマネジメントの専門家、さらには医薬品及び医療用具の関係業界の代表の方を委員とする「医薬品・医療用具等関連医療事故防止対策検討会」において議論し、必要な対策についてご提案いただいたものです。
 なお、この検討会は公開で行っておりますので、一般の方の傍聴も可能です。

今回の具体的な改善案の基礎となる考え方が示されていないが、例えば「バイアルの表示を工夫する」という対策は、補助的な対策の一つでしかないことを強く認識すべきである。

●今回の対策は、医薬品に関連した医療事故を防止するために、製品側から何らかの改良が図られないかということで検討を進めてきたものです。ご指摘のとおり、これらの対策は医療事故を防止するための対策の一つであり、これだけで完全に医療事故が防止できるものではなく、このほかには医療に携わる関係者の一人一人が、患者の命を預かっているとの認識を常に忘れずに、安全に配慮するとともに、医療従事者個人が誤りを犯した場合であってもそれを事故に発展させないよう組織的に取り組むこと等が重要であると考えています。

2.誤用を招きやすい剤型の医薬品の取扱いについての質問

(1)バイアル又はアンプル入り経口剤、外用剤

バイアルの表示部分がメーカー毎に様々な色使いをしており、「禁注射」の文字を赤地に白字で記載しても目立たないおそれがあるため、「禁注射」以外の色使いを抑えるようにすべきである。

●赤地に白地で記載する「禁注射」の文字は、ラベル上部1/3の中に、白地(無色透明を含む。)を地色として目立つように記載することとしており、この対策の趣旨を徹底していくこととしております。

バイアルの側面への表示のほか、蓋を外したアルミの部分にも「禁注射」の記載をすべきである。

●キャップ部分への統一記載については定めていませんが、製品には「禁注射」と記載した貼付可能なシールを添付することとしており、これの活用が望まれます。

アンプルについては、先端部の色を変えたり、シールを貼ったりすることにより用途を識別しやすくすべきである。

●今回は、誤用を防止するための統一した対策として、「禁注射」の文字のほか使用方法又は投与経路を表す文字を記載するよう規定いたしましたので、通常の注射剤との識別は容易になるものと考えます。

注射器への添付ラベルについては、注射器に一つ一つ貼るのは面倒なので、「禁注射」シートを作成し、必ずその上に外用注射器を置く方がよいのではないか。

●今回の対策は、医薬品の表示事項等の改善により事故防止の一助となるよう検討したものであり、医療機関において「禁注射」シートの活用等、各医療機関の業務の実際に応じたさらに効果的な事故防止対策が講じられることは望ましいことと考えます。
 なお、外用剤の薬液の採取に注射用の注射筒を使用すると、今回のようなラベルを貼ったりなど、事故防止対策のために医療関係者による作業が必要となりますので、既に通知した医療用具の医療事故防止対策(平成12年8月31日医薬発第888号)で規定した「注射筒型医薬品注入器」(輸液ラインや注射用の注射針には接続不可能)とそれに接続可能で人には容易に刺さらない薬液採取用の針を使用していただくことが根本的な対応となると思います。

「禁注射」シールの添付も意味のある手段であるが、以下のような品名も含むシールを添付することにより医療機関の管理が確実になると思われる。
(1)品名に加え、用途・ニーズに応じて、製造番号、警告・注意事項等を記載すること。
(2)バイアル毎に添付すること。
(3)医療機関での作業に支障を来すことのないよう、扱いやすいラベル材質とすること。

●注射筒に貼付可能なラベルの大きさには限度があることから、今回の対策では誤って注射することを防止するための最低限の対策として「禁注射」の文字を記載するよう規定しました。このほかに製品に関する情報を付すことは、逆に文字が小さくなり見にくくなるおそれもありますので、今回の対策では特に規定しておりません。
 また、意見聴取時にも示しましたが、本来であれば使用時に一度剥がしてそれをシリンジに貼付できるラベルをバイアルごとに貼付することが望ましいですが、技術的な問題もあることから、当面の対策として今回は製品パッケージごとに添付することとしております。

(2)錠剤、カプセル剤の外用剤

「のまないこと」の注意表示すべき剤型として錠剤、カプセル剤のみが選定されているが、他にも外用顆粒剤がなどが存在するが理由はなぜか。

●ご指摘のような製剤も存在しますので、錠剤、カプセル剤以外の製剤であっても誤用を招くおそれのあるものについては適用範囲といたしました。

「のまないこと」の文字を赤色にする必要がある。

●内袋によっては、遮光のため赤色に着色している場合もありますので、文字の色を指定する代わりに「目立つように記載」することとしております。

用途により形を変えるのが基本とすべきである。

●医薬品によっては、使用方法等から錠剤やカプセル剤にせざるを得ない場合もありますので、一律に剤型を変更するのではなく、誰にでもわかるような注意喚起表示を記載することといたしました。

包装をやや開けにくくして、使用者にちょっと見直す時間を与えるようにすべきではないか。

●高齢者における服用コンプライアンスを低下しないよう配慮しつつ、製剤技術上の対応策として今後関係業界での検討が望まれます。

(3)点眼剤に類似した容器の外用液剤

注意喚起の記載だけでは誤用が防止できないため、外用液剤については、スプレー式、ロール式等点眼形式以外の容器形態のものに変更するよう指導するべきである。

●現在、ご指摘の趣旨から「容器の形状の変更、点滴口の改良等点眼防止のための対策については各社において検討する」よう通知に明記しております。

1回使い切りの浣腸薬の容器は「点眼剤に類似した容器」に含まれるか。

●点眼されるおそれがあると考えられる容器であれば適用範囲に含まれますので、個々の企業で判断していただくようお願いします。

「目には入れない」旨の記載について、彫刻文字で記載している容器の場合、赤色を用いることは困難であるため、色の指定を除外していただきたい。

●点眼されるおそれがあると考えられる容器であるならば、点眼されることのないよう十分な注意喚起が行われることが必要であり、彫刻文字の記載の改善も含めて対策が実現できるような改善策を検討して下さい。

(4)その他((1)、(3)共通事項)

「禁注射」や「のまないこと」などの文字による記載に加え、イラストや絵文字による記載も併用したほうがよい。(注射器の絵に「×」をつけるなど)

●イラストや絵文字による注意喚起表示は、それが十分に認知されたものでない場合、誰もが理解しやすいものであるとは必ずしも言えないものと考えられるため、今回は、誤用を防止するために最低限必要な記載事項として、明確な文字による注意喚起表示を行うことといたしました。

3.PTPシートへの販売名、規格等の明記についての質問

和文販売名、規格・含量については、PTPシートの表面に記載するようにすべきである。

●PTPシートの表面の錠剤やカプセル剤が封入されている部分は記載できず、表示可能面積が限られているため、和文販売名、規格・含量については裏面に記載することとしたものです。

PTPシートへの販売名表示は、和文販売名表示に限定すべきである。英文販売名は過誤防止に役立たない。

●英文販売名の記載は、医師の処方が英文による場合であっても容易に確認ができるために規定したものです。
 なお、漢方薬等英文による処方が考えられない場合については、英文販売名の記載は不要といたしました。

販売名に「○○カプセル100」のような含量が記載されたものをPTPシートに記載する場合には、規格・含量の記載は省略可能とすべきである。

●このような場合には、和文販売名の規格・含量を表す数字等を省略できることにしております。

PTPシートからの取り出し方法のイラスト表示よりも、むしろ用途についてのイラスト表示を優先すべきである。

●取り出し方法のイラスト(いわゆるケアマーク)は、PTPシートのまま服用されてしまうという誤飲防止のための対策として記載事項に加えたもので、このほか用途の情報等の事項を追加記載しても差し支えありません。ただし、これらの情報をイラスト表示とする場合については一般の方に間違いなく理解してもらう必要があるため、混乱を招かないことが必要であると考えます。

薬剤識別コードは任意表示ではなく、必ず表示するようにしてほしい。また、錠剤、カプセル剤等の本体にも記載してほしい。

●販売名が記載されていれば医薬品の確認は可能なので、識別コードは必須項目とはしておりません。また、今回はPTPシートへの記載事項の取扱いを定めたものであります。

薬剤識別コードの記載を統一してほしい。

●販売名により識別可能であれば、識別コードは補助的な手段であるため、各企業で適切に付与していただくものと考えております。

基本的にPTPシートには、1錠単位に必要な事項を記載すべきである。

●1錠単位で記載すると文字の大きさが小さくなり、逆に確認が困難になる場合も考えられるため、おおむね2錠に1カ所記載することとしております。

耳部の記載がなくならないよう、耳部のスリットは廃止すべきである。

●医薬品の識別に際し基本となる和文販売名及び規格・含量の情報については本体部に記載することを求めることとし、耳部については補助的な情報であるため、スリットの廃止については対策上必須のものとは考えておりません。

抗ガン薬や精神病薬のPTPシートには、あえて商品名は記載せず、識別コードのみの記載としているが、これらの薬剤についても本取扱いに従い記載すべきなのか。

●特定の薬効群のみを適用除外することは、記載のない医薬品についての誤解を生じるおそれもあり、また医薬品の確認を容易にする趣旨から適当ではないと考えます。

本取扱いのようにPTPシートの記載を統一することにより、多くの薬剤が近似するため紛らわしくなるのではないか。

●医薬品の確認を容易にするための取扱いとして、記載項目を統一しておりますが、記載内容は各製品によって異なるため、紛らわしくなることはないと考えます。むしろ何も記載していないPTPシートが混在する方が紛らわしいと思います。

海外で一括して製造・包装したものについても本取扱いの対象となるのか。

●今回の取扱いは、国内製造品に限らず海外製造品にも適用されます。

リサイクル法による記載事項もPTPシートに記載すべきか。その場合、同時にPTPシートへの記載を見直した方が効率的である。そのことも考慮に入れ、猶予期間は3年は必要であると思われる。

●他法令で規定される記載事項は、他法令の取扱いに従って下さい。今回の取扱いの猶予期間は具体的年数は特に規定いたしませんが、PTPシートの改版や次回印刷時等の機会をとらえてできる限り速やかに実施していただくようお願いします。

調剤ミスで目立つのは、同一銘柄の規格違いの製品であることから、下記のいずれかにすることが望ましい。
(1)PTPシートには、販売名の前に規格を記載する。
(2)処方と別規格の投薬をしないように、存在規格を含め表示する。(当該規格のみを濃く(大きく)記載し、別規格は薄く(小さく)記載)
(3)メーカーを問わず、最低限同種同一の薬効群では、同一規格のPTPシートの色を統一する。(5mgは銀色、10mgは金色など)
(4)ウィークリーシート、10錠シートの混在を慢性薬、急性薬の分類でいずれかに一本化し、シート単位での投薬を多くする。(慢性期薬はウィークリー、急性期薬は2〜3日分のシートか10錠シート)

●調剤ミスを防止するための対策としては、ご提案のほか様々な対策が考えられますが、表示面積や現時点の実施可能性等を踏まえ今回の対策を検討したものであり、PTPシートに規格を統一的に記載していくことが適当と考えています。

「ラシックス」(利尿薬)には20mgと40mgの規格が市販されているが、PTPシートが赤色であり酷似しており、最近までは特に規格の明確な表示もなかった。このような機会に、PTPシートの色調の変更、規格の明示をすべきである。

●販売名、規格等、PTPシートへの記載事項については今回示したとおりです。また、色調については、遮光が必要な製品のPTPシートは赤色となってしまうため、一律に色調を変更することは困難であると考えます。

PTPシートに発売メーカーのロゴマークの記載を追加してほしい。調剤時には、商品名とともにロゴマークが識別のキーとなっている。

●今回の対策は表示面積を考慮し、最低必要事項の表示を統一したものであり、この取扱いで示した記載事項が適切に記載されていれば、ロゴマーク等他の事項を記載しても差し支えありません。

本対策のような記載事項の変更に加え、医療機関において投薬記録等を容易にチェックできるよう、医薬品の容器や包装にバーコードを印刷するようにすべきである。

●今後の対策を検討する上で参考にさせていただきます。

同一薬品名で同一の薬剤を2社のメーカーがそれぞれPTPシートの色調や表示を変えて発売しているため、現場の薬剤師や看護婦に戸惑いを生じさせている。このような場合には、異なる商品名にするかPTPシートを同一にすることを提案する。

●今後の対策を検討する上で参考にさせていただきます。

4.誤認されやすい販売名の改善についての質問

一般原則の(3)「販売名の一部が省略された場合に、他に該当する製剤が存在しないこと。」は、具体的にはどのようなものか。

●例えば、10mg製剤の「○○○錠10mg」と50mg製剤の「○○○錠」が流通しており、10mg製剤を投与しようとして「10mg」を省略すると、この名称の50mg製剤が存在するため、間違ってしまうおそれがあります。

「本質に誤解を与えるようなブランド名」とはどのような名称なのか。

●2つ以上の有効成分を含有する製剤で、一部の成分の名称のみを用いた販売名などです。

「・・・付記してもよい」との表現は、「付記した方がよい」のか「付記しない方がよい」のか。

●誤認による医療事故防止の観点から個別に判断できるようこのような記載にしております。

医療用医薬品の販売名について、正式な含量が「mg(力価)」である場合、この単位は省略して差し支えないか。

●他の医薬品と混乱しないことが明らかな場合にあっては、単位名は省略しても差し支えありません。

医療用医薬品については、カタカナの「シ」「ツ」「ミ」など、読み間違えた場合にその販売名があることを避けるべきである。

●今回の取扱いは、規格違いの製品や異なる剤型の製品を誤って投与することがないように、販売名の構成を「ブランド名+剤型+含量(又は濃度)」とするよう規定したものです。医薬品の誤投与を防止するためには、ご指摘のような読み間違えのほか、口頭での聞き間違え等も避けることが必要であるため、ご意見につきましては、今後の対策を検討する上で参考にさせていただきます。

5.その他

医薬品の包装に赤色を使用しているものが結構多いが、赤色のものは注意するようにするため、赤色は劇薬以外の医薬品には使用禁止にしてはどうか。

●赤色の包装は、遮光の目的で使用しているため、これを使用禁止にすることは安定性の問題から困難です。

医薬品の使用期限の記載方法も統一してほしい。

●今回の対策に対する直接のご意見ではありませんが、今後の対策を検討する上で参考にさせていただきます。

「タキソテール注」と「タキソール注」は過誤になる可能性が大きいため、いずれかの販売名を変更すべきである。

●今回の対策に対する直接のご意見ではありませんが、今後の対策を検討する上で参考にさせていただきます。

既存の医薬品における類似名称については、迅速に名称変更等の改善をすべきである。

●今回の対策に対する直接のご意見ではありませんが、今後の対策を検討する上で参考にさせていただきます。

少なくとも国立病院や大学附属病院、公立病院等の公的病院については、適正な処方せんの書き方等について周知徹底を図るべきである。

●今回の対策に対する直接のご意見ではありませんが、今後の対策を検討する上で参考にさせていただきます。

薬剤の類似リストの情報提供(2件)

●今回の対策に対する直接のご意見ではありませんが、今後の対策を検討する上で参考にさせていただきます。

以上


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