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「社会福祉法人会計基準」(案)に対する意見の募集結果について

平成12年2月25日

厚生省社会・援護局
施設人材課

 「社会福祉法人会計基準」については、その通知案について、平成12年2月1日から2月14日までインターネットのホームページ等を通じて御意見・情報を募集したところ、31件(手紙6件、メール25件)の御意見・情報をいただきました。お寄せいただいた御意見・情報とそれらに対する当省の考え方につきまして御報告いたします。なお、とりまとめの都合上、いただいた御意見・情報は、適宜集約したものとしております。
 ご意見をお寄せいただきました方々の御協力に厚く御礼申し上げます。

1.会計基準の考え方についての質問

(1)新しく会計基準を定める必要はないのではないか

 従来の経理規定準則は措置費支弁施設を運営する社会福祉法人をその対象とし、行政からの委託費等公的資金の収支を明らかにすることを目的としていましたが、平成12年4月以降は、運営財源が利用契約に基づく利用料を収入とする社会福祉法人が出てくることになるため、利用料を前提とした新しい会計基準を定める必要があります。

(2)減価償却の考え方は必要ないのではないか

 今まで社会福祉法人に対しては減価償却の考えを取り入れていませんでしたが、現在では公益的な主体であっても資産評価の適正化等のために減価償却制度を取り入れるのが一般的であり、学校法人や公益法人においても既に導入されています。

(3)損益計算の概念を導入する必要はないのではないか

 社会福祉法人は国や地方公共団体からの補助金、委託費、介護保険収入、国民一般からの寄付金など、主に公的な財源に基づき運営されており、提供するサービスの質の確保と同時に効率良いサービスの提供が求められます。そのため、今回事業活動収支計算書を新設し、社会福祉法人がどのような財源から収入を得たか、そしてそれらの資源をいかに効率良く使用したかが明示できるようにしました。したがって、事業活動収支計算書では、法人に帰属する収入をすべて計上・表示した上で、その使途を表示することとしています。
 なお、より高い収益を獲得するために資源を投入し利益を追求する企業会計の損益計算とは、根本的に異なるものとなります。また、損益計算の概念を導入したからといって、サービスの質に支障をきたすものとは考えていません。

2.会計基準の適用についての質問

(1)平成12年4月からの適用は準備期間が少ないのではないか

 介護保険制度の施行を平成12年4月に控えていますので、4月から本会計基準を適用する必要があります。
 しかし、ご意見を踏まえ、ある程度の準備期間を確保するために、移行する場合の平成12年度予算については、従来の経理規程準則で作成し、その後補正する扱いで構わないものとします。

(2)保育所だけを運営している社会福祉法人には適用されるのか

 全ての社会福祉法人に適用されることが原則ですが、保育所だけを運営している社会福祉法人には当分の間適用しなくても構わない扱いとしています。

(3)小規模な社会福祉法人は対応できないのではないか

 現行の経理規程準則との比較では事業活動収支計算書が追加されることになりますが、附属明細書を大幅に簡素化するなど、全体として大幅な負担増にならないよう配慮しています。従って、小規模な社会福祉法人についても対応が可能であると考えています。また、円滑な移行に向けて今後内容の周知等に取り組むこととしています。

3.会計基準の内容についての質問

(1)収益事業及び公益事業を独立した会計単位にする必要はないのではないか(2条)

 社会福祉法人は社会福祉事業を実施することを目的に設立された法人ですので、社会福祉事業と付帯的な公益事業や収益事業とは区分し、社会福祉事業とは独立した会計単位にする必要があります。(社会福祉事業法第25条第2項)

(2)資金収支計算書の作成は必要ないのではないか(6条)

 一般的に公益法人等非営利法人については、資金収支計算による予算管理が必要不可欠なものとされており、社会福祉法人についても従来通り資金収支計算書の作成が必要となります。

(3)資金概念が広すぎるのではないか(7条)

 資金概念については、学校法人会計基準の支払資金のように「現金及びいつでも引き出すことのできる預貯金」とすることも考えられますが、今回の会計基準においては、社会福祉法人の活動状況をできるだけわかりやすくすること、事業活動収支計算書と同じ収支科目の金額を同じ基準で計上し相互の関係を理解しやすくすること及び従来の経理規程準則での資金概念とほぼ同じとすることにより円滑な移行ができるよう、資金を正味運転資金としたものです。よって、短期借入金や仮払金等については支払資金の中に含まれることとなります。

(4)「支払資金」という用語は現金及び現金等価物を指すので不適切ではないか(7条)

 資金概念を正味運転資金としたことに伴い「支払資金」についても本会計基準においては正味運転資金を指すこととなります。

(5)勘定科目について、資金収支計算書と事業活動収支計算書では名称を区別するべきではないか(9,16条)

 資金概念を正味運転資金としたことで、資金収支計算書と事業活動計算書で同じ名称の勘定科目を用いても基本的にその金額に違いは生じないことから、本会計基準では同じ名称の勘定科目を設けることとしたものです。

(6)勘定科目はなるべく経理規程準則に合わせるべきではないか(9,16,38条)

 本会計基準制定にあたって、なるべく経理規程準則での勘定科目に合わせるようにしましたが、事業活動計算書の導入や基本金の考え方の整理などの変更を行っており、勘定科目についてもある程度の変更は致し方ないものと考えています。

(7)資金収支計算書の財務活動による支出の「有価証券売却益」は収入の部に計上するのではないか(10条)

 有価証券売却損益については、有価証券も資金の範囲に含めていることから、資金自体の変動であり、資金収支計算上は例外的な資金異動にあたることから、流動資産評価減等による資金減少額として財務活動による支出に一括して計上する扱いとしたものです。

(8)資金収支計算書で借入金利息支出等が経常活動による収支の部にあるが財務活動ではないのか(10条)

 借入金利息に係る収支については、社会福祉法人の経常的な活動であるので、経常活動による収支の部に位置づけたものです。借入金元本の収支については、財務活動による収支に計上されることになります。

(9)収入は事務費と事業費に区分し、支出は人件費と事務費と事業費に区分しているのはなぜか(11,18条)

 収入と支出について必ず対応関係にあるとは限らないものです。なお、措置費収入については、事務費収入と事業費収入に区別できますが、利用料収入についてはその収入を区分していません。

(10)事業活動収支計算書にも予算概念を取り入れるべきではないか(14条)

 社会福祉法人については、資金収支計算による予算管理をしており、事務負担軽減の観点から事業活動収支計算書には特段必要ないものと考えます。

(11)事業活動収支計算書の名称は事業活動計算書のほうが望ましいのではないか(14条)

 社会福祉事業法上社会福祉法人が作成すべき財務諸表として位置づけるために収支計算書の一種と整理したものです。

(12)事業活動計算書上の区分で「収入」と「支出」という言葉は適切ではないのではないか(14条)

 非営利主体である社会福祉法人については、損益概念からくる「収益」や「費用」といった用語をそのまま使用することは適当ではないと判断し、「収入」「支出」という用語にしたものです。

(13)実現主義の原則の例外的適用を法人の判断に委ねるべきではない(15条)

 収入は原則として実現主義の原則による収入を計上することとなりますが、徴収不能になる可能性の高い収入を計上することは財務の健全性から好ましいことではありません。このような徴収不能となる収入の発生率は、事業の性格、施設の置かれている環境等により様々であると思われることから法人の判断によらざるを得ないと考えたものです。
 ただし、会計基準の第3条第4号に規定されているように、収入の会計処理の原則及び手続は毎期継続することを求めていますので、現金又は預貯金の入金時に収入を計上する方法を採用した収入項目については、その方法を継続的に適用する必要があります。

(14)勘定科目の配列に整合性が無いのではないか(18条)

 ご指摘を踏まえ、事業活動収支計算書の勘定科目の配列を変更しました。

(変更前)特別収支、支出欄: 国庫補助金特別積立金取崩額
固定資産売却損
(変更後)特別収支、支出欄: 固定資産売却損
国庫補助金特別積立金取崩額

(15)事業活動収支計算書の内訳書は必要ないのではないか(19条)

 事業活動収支計算書は、当該会計年度の事業活動の成果を明らかにするために作成するものであり、施設や事業毎にその内容を明らかにする必要があります。

(16)貸借対照表は各経理区分ごとに作成すべきではないか(21条)

 内部管理用に自主的に作成することは全く構いません。

(17)有価証券の評価方法は固定化すべきではないか(24条)

 今後資金運用方法の多様化が進み、社会福祉法人が保有可能な有価証券についても多様化していく可能性もあることから、現在一般に公正妥当な方法として認められている方法を選択可能なものとして示しました。

(18)「資産の時価が取得価額と比較して著しく低くなった場合」では表現があいまいではないか(25条)

 資産の時価が取得価額と比較して著しく低くなった場合については、実務上一般的に公正妥当な基準に基づき判断されるべきことであり、社会福祉法人の会計基準で一律に定めるべきではないと考えます。

(19)退職給与の引当特定預金が無い理由(28条)

 退職給与引当金相当額を特定預金として明確化したい場合は、○○積立預金に退職給与積立特定預金として計上して構いません。((27)参照)

(20)
・基本財産基金と基本金の考え方はどう違うのか(31条)
・基本金の取崩しが限定的なのは何故か
・基本金も国庫補助金等特別積立金の取り崩しと同様減価償却相当額を取り崩すべきではないか

 従来の経理規程準則に基づく基本財産基金は、貸借対照表上借方の基本財産の等価額を貸方表記したものでしたが、今回の会計基準に基づく基本金は、社会福祉法人の純資産の内訳として、社会福祉法人が維持すべき純資産の額を示すもので、基本財産の等価額とはならず、主に基本財産取得のための寄付金で構成されることになります。
 よって、基本金を取り崩すことは原則認められず、取り崩しは事業廃止など基本金の維持が不要になった場合に限定されることとなります。

(21)次期繰越活動収支差額を使って基本財産を取得した場合は、4号基本金に該当するのか(31条)

 該当することとなります。

(22)4号基本金は組み入れなくても良いのか(31条)

 定款の規定により、基本財産に組み入れた場合は必ず組み入れる扱いとなります。

(23)「基本財産」と「その他固定資産」にそれぞれ「土地」「建物」とあるがどう違うのか(31条)

 「その他固定資産」にある「土地」「建物」の科目は、基本財産とされない「土地」「建物」がある場合に使用されることとなります。

(24)「基本財産等」は国庫補助金等特別積立金との整合性上固定資産に限られるべきではないか(31条)

 ご意見を踏まえ、「基本財産等(固定資産に限る)」の表現に修正しました。

(25)貸借対照表の「国庫補助金等特別積立金」の区分は大区分か(33条)

 大区分となります。中区分として国庫補助のほか、都道府県単独の補助や民間補助などが区分されることになると考えています。

(26)国庫補助金等特別積立金はなぜ維持しなくていいのか(34条)

 施設改築時には再び施設整備補助が出ることから、国庫補助金等特別積立額については社会福祉法人として維持する必要はありません。

(27)○○積立金の特定預金科目は必要ないのではないか(35条)

 利用契約施設については、積立金を積むこと自体は法人の任意ですし、それを特定預金化するかどうかも法人の任意となります。
 ○○積立金を持った場合には、当該積立金が資産(現金預金)としてきちんと存在していることを法人として明確化する方法として特定預金化することが考えられます。

(28)貸借対照表の次期繰越収支差額の部に前期収支差額が無いのは何故か(39条)

 貸借対照表の次期繰越収支差額は、事業活動収支計算書の繰越活動収支差額の部において前期繰越活動収支差額に基本金の組入れや取崩し、各種積立金の積立てや取崩しを加減算した結果になります。したがって、貸借対照表には次期繰越収支差額のみが表示されます。

(29)流動負債に何故○○引当金があるのか(39条)

 流動負債に属する引当金として賞与引当金が考えられるので規定したものです。使用するかどうかは法人の任意です。

4.経理処理方法についての質問

(1)施設に係る借入金は各施設経理区分に計上するのか

 利用契約施設については、各施設経理区分に計上することとなります。移行時には、本部会計から施設経理区分へ振り替えることとなります。
 措置施設については、本部経理区分に計上することになります。

(2)従来の本部会計繰入は経理区分間繰入金収入支出になるのか

 その通りです。

(3)基本財産たる土地建物や基本金は各施設の経理区分になるのか

 利用契約施設については、各施設の経理区分になります。
 措置施設については、基本財産たる土地建物に関係するものは本部経理区分で処理することになりますが、事業活動収支計算書における減価償却費や国庫補助金等特別積立金取崩額などは、施設経理区分に属すべき経費なので、施設経理区分に計上することとなります。

(4)複式簿記による帳簿は、資金収支計算書が前提か、事業活動収支計算書が前提か

 必ずしもどちらかに決まっているものではありません。日常的な収支の予算管理を考慮する場合は、資金収支計算書を前提とした方が良いでしょうし、事業活動収支計算書と貸借対照表を組み合わせた総勘定元帳方式によることも考えられます。

5.移行時の取扱いについての質問

(1)過年度償却分はどのように経理処理されるのか

 過年度償却分は、償却資産の取得価額から残存価額を控除した額を耐用年数で除した額に経過年数を乗じた額になります。なお、その経過年数が不明のものについては、推定して得た年数を用いることができます。

(2)従来認められていた3引当金(人件費・修繕・備品等購入等)の取扱いはどうなるのか

 上記3引当金は、措置施設については、それぞれ人件費積立金、修繕積立金、備品購入等積立金とし、見合いの現金預金は、資産の部で措置施設繰越特定預金となります。

6.その他

(1)引当金の目的外使用や繰越金の取り崩し使用時に事前協議は必要なのか

 利用契約施設については必要ありません。措置施設については従来通り事前協議が必要です。

(2)各会計単位間の資金の繰り替えについて年度内精算が必要なのか

 従来通り必要となります。措置施設については、本部経理区分と施設経理区分間での資金の繰り替えについても年度内の精算が必要になります。

(3)減価償却相当額に措置費を充当しても良いのか

 措置費の取扱いは従来通りですので、原則充当することはできません。

(4)所轄庁に対する提出書類は何になるのか

 会計書類としては、本会計基準で定める財産目録、貸借対照表、資金収支計算書、事業活動計算書になります。

(5)運用財産とは何か

 運用財産は、基本財産、公益事業用財産及び収益事業用財産以外のすべての財産です。(昭和39年1月10日社発第15号厚生省社会局長児童局長連名通知「社会福祉法人の認可について」)


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