97/12/05 第12回年金審議会全員懇談会議事録            第12回年金審議会全員懇談会議事録  日 時 平成9年12月5日(金) 14:05〜16:35 場 所 厚生省特別第一会議室  1 開 会 の 辞  2 厚生大臣挨拶  3 委員出席状況報告  4 議 事    ・ 次期財政再計算に向けての検討について    ・ 給付と負担の組み合わせの選択肢について  5 閉 会 の 辞 〔出席委員〕   京 極 会 長   八 木 委 員  砂子田 委 員  岡 崎 委 員  木 原 委 員    国 広 委 員  久保田 委 員  神 代 委 員  坂 巻 委 員    都 村 委 員  富 田 委 員  福 岡 委 員  桝 本 委 員    目 黒 委 員  山 田 委 員  山 根 委 員  吉 原 委 員    若 杉 委 員  渡 邊 委 員  貝 塚 委 員  船 後 委 員                                          ○会長  ただいまから始めたいと存じます。お忙しいなかお集まりいただきありがとうござい ます。本日は冒頭に小泉厚生大臣が御出席なさいますので、一言御挨拶をいただきま す。また、本日は全員懇談会ですが、記者クラブから厚生大臣の御挨拶の間カメラ撮り をしたいという申し出がございました。これを許可したいと存じますが、よろしゅうご ざいましょうか。               (「異議なし」と声あり)  そのように扱わせていただきます。報道関係者に入場してもらってください。                (報道関係者入室)  厚生大臣がお見えになるまで、しばらくお待ちください。                (小泉厚生大臣入室) ○会長  ただいまから年金審議会全員懇談会を開会いたします。本日は小泉厚生大臣に御出席 をいただいておりますので、一言御挨拶をいただきたいと存じます。よろしくお願いし ます。 ○小泉厚生大臣  年金審議会全員懇談会の開催に当たりまして、一言御挨拶を申し上げます。  まず、委員の皆様には、本年5月以来、本日を含め12回にわたり、次期年金制度改正 へ向けて精力的に御審議をいただきまして、厚く御礼申し上げます。また、本日は、こ れまでの議論を踏まえ、様々な検討項目についての「論点整理」を取りまとめていただ くものと聞いておりまして、重ねて御礼を申し上げます。  公的年金制度は、今日、加入者が約 7,000万人、受給者が延べで約3,200万人、受給総 額が年間約32兆円となり、国民生活に欠くことのできない社会保障制度として重要な役 割を果たしております。 このため、年金制度改正に当たっては、さまざまな情報を開示し、国民の間で広く議 論が行われ、国民的な合意形成を図っていくことが必要と考えております。 このような観点から、今回、厚生省として、給付と負担の在り方に関する枠組みにつ いて5つの選択肢を提示することといたしました。  具体的内容は、後ほど事務局から説明いたしますが、今後、この選択肢が、次期改正 についての国民的な議論の素材となり、合意形成に資することを期待しております。  委員の皆様には、引き続き御検討いただくことになりますが、年金制度が21世紀の国 民生活の礎として、国民の安心と信頼を得てその役割を十分に果たしていけるよう、格 別の御支援と御協力を賜りますようお願い申し上げます。きょうは本当にありがとうご ざいます。よろしくお願いします。 ○会長  大臣は御公務がおありで、ここで御退席になります。どうもありがとうございました ○小泉厚生大臣  よろしくお願いいたします。                (小泉厚生大臣退室)                (報道関係者退室) ○会長  委員の出席状況について、事務局から御報告をお願いします。 ○事務局  本日は、高山委員が御欠席で、そのほかの委員は御出席でございます。国広委員は少 し遅れておられるようでございます。 ○会長  本日は、まず、前回御議論いただきました論点整理の御確認をいただき、その後、事 務局から、次期改正に向けて、給付と負担の組み合わせについて試算した選択肢の説明 を受けます。まず、当審議会として取りまとめる「論点整理(案)」の確認を行います ので、前回の審議などを基礎にした修正案を事務局から御説明をお願いします。       (修正案について事務局から説明) ○会長  ありがとうございました。ただいま御説明のありました案につき御意見がございまし たら、どなたからでも御自由にどうぞお願いします。 ○A委員  言葉の問題なんですけれども、あちらこちらに「サラリーマン」という言葉が出てい るのですが、これは差し支えないのでしょうか。と申しますのは、妻であるサラリーマ ンというような表現ございますけれども、「サラリーマン」と言った場合に女性は入る のか、入らないのか。「給与所得者」と言えば、それで済むのではないかと思うのです が。 ○事務局  従来「被用者」という言葉を制度として使ってきたわけでありますが、やや、国民的 になじみがないのではないかということで、「サラリーマン」という言葉で置き換えさ せていただいたらどうかということで整理をさせていただいたものでございます。 ○B委員  今、御説明がありました「論点整理」の一番最後のページの5の「年金積立金の運用 について」ですけれども、ここに書かれているこの書き方としてはこれでいいと私も思 うのでございますが、今後の議論のために意見を1点だけ述べさせていただきたいと思 います。年金改正を考える場合、これまでも次の世代に配慮する、そういう長期的な視 点を大変重要視してきたわけですね。次の世代、後世代の負担等を配慮するという場合 に、負担と給付だけではなくて、やはり生活のストック面での配慮も大事なのではない かというふうに思うわけです。  それで、年金積立金の自主運用の方向が出されているわけですけれども、年金積立金 の市場での運用とその一部を少子高齢社会に対応した社会資本整備、それに用いること が考えられてもいいのではないかと思うわけですね。すなわち介護の基盤を整備すると か、あるいは子育てを支援するための基盤を整備するとか、年金積立金の一部をそうい うところに活用するということを考えていく必要がこれからあるのではないかと思うわ けです。  それは3つの点で意義があると思います。第1点は、今、高齢者の社会的な入院が大 変問題になっているわけですが、そういう社会的入院とか介護費用といったような高齢 期の生活でどうしても出さなければいけない支出があるわけで、その支出を減らすこと につながってきて、年金の実質価値を高める。そういう点からすると年金積立金の有効 な活用方策であるというふうに考えられるのではないか。  第2点は、現役世代にとりましても、退職後の不安とか、病気とか障害とかになるこ とがあり得るので、そういうリスクに備えて、今までは日本の貯蓄率は高かったわけで すが、余儀なくされてきた貯蓄を消費に回すことができるようになりまして、年金保険 料上昇の負担感が軽減される、そういう点があるのではないかと思うわけです。また経 済的な機能としましても、今1,200兆円という膨大な貯蓄があるわけですが、その貯蓄の 一部が消費に回るということで、経済的にも活力をもたらすということで、それがまた 翻っては、年金財政にもプラスになってくると考えられます。  第3点目は、平成4年の調査によりますと、介護によって、仕事をしていた労働者が 約1年間に8万人くらい仕事をやめなければいけなかったというような実態がある。そ れから、女性の就労がM字型になるというのは、やはり子育てのときにやめなければい けないということがあったわけですが、そういう子育て支援、介護の支援によりまして 仕事と子育て、あるいは仕事と介護というのを両立できるというふうになるわけですね 雇用率が上がることによって、いろいろな人材の活用も強化できますし、何よりも男女 平等も促進できますし、それぞれの現役世代の生活の質も高めることができる。そうい う3点で意義があるのではないかというふうに思うわけです。  ですから年金積立金については、安全で確実な運用をするということとともに、将来 の現役世代を含む全国民のために有効な活用ということを考える必要があるのではない か。その場合にやはりストック面での整備、それを配慮して考えていく必要があるので はないかというふうに思います。  「論点整理」の書き方としましては、これでいいと思いますが、これから、また二巡 目の議論があるということで、ぜひ、そういう視点も考慮に入れていただきたいという ことで意見を少し述べさせていただきました。 ○C委員  関連した点について、私から意見を言いたいと思いますが、今、B委員から全面的な 形で問題の全体像を御提起いただいたと思います。私は御提起いただいた内容そのもの の重要性とまた視点という両面にわたって全面的に賛成でございます。  これまで年金積立金のストック形成面での寄与というものは、場合によってはかなり むだなところへ回ったものもありますし、そういうものは全面的に見直すべきだし、見 直すべきものの見直しは既に始まっていると思いますが、他方で、現役の被保険者に対 する還元措置としての融資制度は、これは現在もなおニーズがございます。それも恐ら くこれから住宅ストック一般というよりも、B委員御指摘のように、高齢化対応という ふうなことが大変大きな課題になってくるとすれば、例えば住宅1つとってみても、新 しい形の住宅ニーズが発生してくるだろうと思います。その点での厚生年金制度が、そ ういうシステムを、これは共済年金のシステムにならって、後からですが、つくってき たことの意味をもう一度やはり重視すべきではないだろうか、そのように思います。  また、今後のことを考えますと、積立金の運用の場合の安全確実ということと同時に なるべく有利なという両方を考えますと、例えば外国の債券など変動含みのものを市中 で購入したりということよりも、国内の勤労者のストック形成を基盤にした融資の方が はるかに安定性においても高い。そういう意味での積立金の安全かつ有利な運用という 面についても決してマイナスどころか、むしろプラスと、こういう側面を持ちうるので はないか。  そういうことで、当審議会の今後の議論の中で、この問題はどれだけ時間をさいて議 論できるのかわかりませんが、単に積立金の市中運用のポートフォリオをどうするとい ったような議論ではなくて、社会政策としての目的の中で必要な政策判断が加えられる ような議論をぜひ当審議会でも継続をしていただきたいし、厚生省の行政的な判断もま た、そういう射程で今後行われるように特に希望しておきたいと思います。 ○D委員  今の御指摘は御指摘としてわかりますが、今お聞きしている中に2種類あるのではな いか。例えば、先般年金福祉事業団を整理した際に、年金福祉事業団自身が年金本来の 目的よりやや外れたところに投資されているものは整理すべきだという意見が出たわけ ですが、そういう性格のものがふくらむことによって、財政的な問題にひびが入るとい う側面ももちろんあるわけであります。したがって、問題の提起のされ方としては、例 えば、今おっしゃった高齢者の問題、育児の問題。その原資というものがすべて年金資 金というようなものから出てこなければならないのか、まさにそういうのは税の世界か ら出てきて差し支えない性格もあるのではないかという問題もあります。  したがって、論点としての提起のされ方としては、つまり、年金積立金を使うことに よって、結果的に年金積立金の使い方が少なくて済む社会をつくれるじゃないかという ような問題、したがって、一挙両得の側面が出てくるのではないですかというお話と、 それからもう一つは、そういう御指摘もある反面、そういう世界は税金を入れてやるべ きであって、年金は年金として、むしろ純化した方がいいではないかという考え方と、 そういう両面から議論をしてみる必要があるという問題提起にしておいていただいた方 が議論としては広がりが出るのではないか。私はそういうふうに考えます。 ○E委員  今の論点ですが、私はどちらかというと、B委員、C委員がおっしゃる方に近いので すけれども、私が覚えている限りでは、どうも自主運用というのはお金がもうかる方向 に運用するという話が強かったと思いますので、被保険者の住宅に対する支援、教育と か、もう少し小さいものでもいいのですが、そういった点に年金の積立金を使うという ことは、やはり年金制度としては意味のあることであるというようなポイントを指摘し たいと思います。 ○会長  年金資金の運用の問題につきまして、ほかにどなたか御意見ございましょうか。 B委員、今の、9ページの5のところ、文章の書き直しというふうな案はございましょ うか。 ○B委員  ここに運用の基本的な在り方とか、仕組み等をどう考えるかという形で書かれており ますので、私は今回の「論点整理」はこれでよろしいのではないかと思います。それで 一巡目の議論を終えた段階の「論点整理」ということで、当然「年金積立金の運用につ いて」という大きな項目も入っておりますので、今度それで、来年からですか、二巡目 の議論では、ぜひ改正に向けての最後のまとめに至るまでの間、そういう視点からの議 論もぜひしていただきたいという意味で意見を申し上げたということですので、これは このままで結構でございます。 ○F委員  一番最初のA委員の件に戻って恐縮なんですが、やはり「妻が全くサラリーマン」と いうのは何かおかしいと思うので、御提案のように「給与所得者」というふうに直した 方がいいかなという気がします。その場合、例えばこの文章を直すとして、「平均的給 与所得者で、妻が給与所得期間がない」とか、適当に両方におかしくないように直され た方がいいと思います。  右側の例ですが、例も給与所得者の方に直して「妻が専業主婦の場合」というのもち ょっと統一性がないので、「ずっと無職の場合」というような言い方にした方がいいか と私は思います。その下の「妻も平均的」というのは、「も」というのも何か変なので せっかく直していただけるなら、「妻が平均的」というふうにした方がいいかなと思う んですけれども、細かいことのようですけれども。 ○C委員  「夫婦2人とも」ですね。 ○F委員  そうですね。「夫婦とも」でもいいですし、そういうふうに付属みたいに思われない 方が、実際に給与生活者である奥さんたちはいいんじゃないでしょうか。 ○会長  今の点はほかに御意見ございましょうか。サラリーマンを「給与所得者」に置き換え る。それに準じて、「妻も平均的サラリーマン」という部分も変える。 ○事務局  3ページのところでございますが、「サラリーマン」というのは4カ所ほどあります 「夫が40年間平均的給与所得者で」とか、あるいは「妻が全く給与所得者としての期間 がない」と。それから、今の御指摘、「妻が無職の場合」。「妻が平均的給与所得者 で」という表現ですね。そのような形にさせていただきます。 ○会長  今の問題点は、こういうことでよろしゅうございますか。 ○F委員  「専業主婦」という言葉もこのごろ総理府などの報告でも使われているんですけれど も、定義がどうもはっきりしないというか、つまり今専業主婦であるという場合と、過 去においてというのを区別がし切れないところがありますから、「ずっと無職」という ので構わないのではないかと思います。 ○事務局  7ページのところに「サラリーマン」という表現が1カ所ございますので、ここも 「給与所得者」というふうに変えさせていただきたいと思います。 ○会長  ほかにどなたでも御意見を御自由におっしゃってください。 ○C委員  パートタイマーの問題が7ページのところにございまして、「パート労働者等の取扱 い」というふうに入れていただいたところは、一文字にすぎませんが、大きな改善だろ うと私どもは考えます。先般会計検査院が社会保険料の未納ということで、検査に入り ましたのはパート労働者ではなくて派遣労働者でございました。現実に派遣業界におけ る当該関係労働者の社会保険適用というのは極めて劣悪な状態にあり、派遣業界の経営 者の中には、自分のところの内勤の常用社員は通常に社会保険、労働保険を適用してい ながら、派遣労働者に関してはそういうものを適用しなくてもよいのだと言ったことを 公然と語っている者や、あるいは無理に入りたいのだったら自分で全額保険料を払えと いうふうに言ってる者等があり、実際の募集賃金においても、社会保険を含んでいるの かいないのか、あいまいのまま広く行われている。これは非常に重要な改善を要すると ころだろうと思います。  ややもすれば、派遣労働者は多くのパート労働者がそうであるように、家庭の補助収 入目当ての就労のように考えられる場合がありますが、それ以外にも正規社員としての 就労機会に恵まれないために、やむを得ず派遣労働者という就労形態をとっている場合 あるいは、また、プロフェッショナルな能力を生かして積極的に派遣労働という就労形 態を選んでいる未来型の労働者の場合等々があって、これは数は少ないけれども、むし ろパート労働者よりも問題としては深刻なことなのではないだろうか。その点でここの 一文字つけ加えていただいたことについては、そういう理解の上に立って、前進という ふうに評価したいと思います。 ○B委員  言葉の問題で、私も今ちょっと気づいたのですが、例えば一番最後の9ページの上か ら3つ目の(2)の説明のところに「老後の所得保障機能」というのがあるのですけれ ども、前は「老人」と言っていたのが「高齢者」というふうにかなり変わってきました よね。それから、老後というのは、老いた後という形ですが、老後という言葉でなくて 「高齢期の」とかいうふうに使った方がきれいというか、自分がだんだん年齢が高くな ってきますと、老いた後というのがちょっと抵抗がありますので。1ページ目にもあり ますね。1ページ目の2つ目のところにも「老後生活」というのがあるのですが、「高 齢期の生活」とか、老人が「高齢者」に変わったように、余り「老後」という言葉を使 わない方がいいのではないか。単語の問題ですけれども。 ○会長  9ページの上から3つ目のマルのところ、今の案でよろしいですか。 ○C委員  たびたび申しわけありません。3ページの備考欄。備考欄ですから、余りこだわるよ うな問題でもないのだと思いますが、単身者を男性と女性について書き分けておられる のですが、これはいずれも「単身の平均的な場合」とこうありますが、これは加入年数 40年で計算されているのですか。それとも実態の平均加入年数なんですか。 ○事務局  40年です。 ○C委員  わかりました。実際の給付水準に開きが出てくるというのは、もとになっている標準 報酬月額の水準の違いと加入年数の違い、両方ですから、加入年数については、40年モ デルだとすれば、これは現役時代の賃金の格差ですね。実際には女性の場合の加入年数 というのはグループによって非常に大きな違いがあって、何となく正規分布しているの ではなくて、短期就労であとは反復型の就労に入るような場合と、つまり被保険者資格 を持てないような労働市場への参入形態をとる場合と、それから、フルタイム長期勤続 をするグループに大ざっぱに言うと大きく分かれてしまう。そういう中での平均像とい うのは非常に難しいものがあるように思いますので、ここはこれだけの数字が生で出る と、誤解を生じさせないかというのが16.6万円、12.5万円についてのちょっとした懸念 でございます。 もう一つ、質問なんですが、ポツの2番目、「妻が5年の」と書いてあるんですが、 この5年というのは、これは当然のことながら40年モデルではあり得ないのですが、実 態の平均加入年数ですか。 ○事務局  そのとおりでございます。 ○C委員  わかりました。 ○D委員  今の質問で気がついたのですが、「平成6年度価格」で40年というと、昭和29年から 勤め始めた女性と、こういう話になるわけですね。しかも6年度価格でとってあるわけ で、実際のとる数字はもっと前の数字をとっているわけですからね。さらに男性の場合 と比べて女性の場合の実数は非常に少ないのではないかという気がするので、こういう ふうに並べうるのですかという疑問があります。最後のところは、C委員の疑問に近い のだけれども、そういう意味で、余りにも母数の数が違い過ぎると誤解を招きませんか という感じですね。 ○会長  削った方がよろしゅうございますか。 ○D委員  という気がしますね。 ○F委員  でも、これは実際は、その前のポツの点の、妻も平均的給与所得者で40年加入の場合 の世帯の合計が29.1万円、これの内訳にすぎないわけですね。ですから母数は少ないか もしれませんが、要するに世帯単位で考えてしまうと、29.1万円となるけれども、それ を妻と夫というふうに書けば、こういうふうなことなのだよということにすぎない。 むしろ、それでしたら、実数的な、実際の現実に近い数を出すということもあり得るか とは思いますが、これを出すとおかしいのであれば、29.1万円というのも現実的ではな いということではないでしょうか。 ○G委員 私はそのまま数字を出しておいた方がいいと思います。要するに女性と男性で、平均 賃金が女性の方が全体的に低いというのは、管理職になるとかならないとか、いろんな 違いがあって、これは実体をそのまま話しているのですから、それをそのまま出してお いた方が正直でいいというのが私の意見です。 ○D委員 それは議論としては大いにいいんですけど、全体で「論点整理」という形で出ていく ときに、非常に母数の少ないところが、統計的な意味でどういうふうに判断されるか。 今おっしゃった趣旨は、私は大いに結構だと思うんですけれども、実際加入者の数が、 例えば何百万人というオーダー対何万人というような数になるのかどうか。昭和26〜27 年から40年間勤続された女性が何人おられるかよくわかりませんが、母数の数がどうか なと。オーダーが余りにも違って、統計的にどういう意味を持つのかなという気が少し しないでもないという意味です。我々の議論の中では多いに議論して結構だと思うし、 数字を出すことは少しもやぶさかでないのですけれども。 ○事務局 事務局として補足説明させていただきます。ここは考え方といたしまして、厚生年金 の支給単位をどのように考えていくかという御議論でございますので、右側の欄には、 モデル年金の給付水準というものを挙げさせていただいているわけでして、世帯単位、 個人単位ということで、その額が現在のモデルではどのようになっているかというのを ごらんいただくためでございまして、これが実態の現在の年金の平均支給額ではないと いうのは御指摘のとおりです。そういった観点で御議論いただけたらと思います。 ○H委員  今の補足説明ではっきりしたかと思いますが、いつも具体的な例となると、世帯単位 という数字が出てきますので、個人単位でということを考える立場から見ますと、やは りそういう具体的な数字も出ていた方が理解しやすいということで、こういうのを出し ていただくというのは私は非常に重要だと思います。  40年加入の女性が何%いるのかというのは非常に問題ではありますけれども、やはり システムとしてどうなっているかということをはっきりさせる意味では意味があると思 います。また、誤解を招かない意味で、上の、「夫が平均的なサラリーマンで40年加 入」とありますので、そのラインで読めますが、やはり単身の場合も、誤解が生じない ように「40年加入の場合」というのをもう一度入れておけば、より鮮明かなというふう に思います。 ○I委員  事務局の補足説明で大体了承なんですが、これは全部がモデル計算だと。つまり今ま で言われてきた妻が専業主婦の場合の23万1,000円と同じ系統の計算の仕方をほかの方に ついてもやったと、こういう意味でございましょう。 ○事務局 はい。 ○I委員 これは実態を無視しているわけではないけれども、モデル計算だということをはっき りしておかなければ、確かに誤解を招くと思うんです。 ○会長 わかりました。3ページの右側の備考欄は、上の方に、「平成6年全国消費実態調 査」とついていまして、一番下に、「平成6年度価格」とついていますから、モデルで あることをうたえばいいのではないでしょうか。 ○事務局  1つの御提案でございますが、確かに御指摘のとおり、この上は実態でございますが 下は急にモデルになっているところで、御指摘のような混乱が生じる可能性があるわけ でございまして、「夫が平均的……」というところの上に、括弧で「モデル的な年金 額」というのを括弧書きで、6年実態調査と同じような形でつけさせていただくという ことでいかがでございましょうか。それから、行間隔にはもちろん注意したいと思いま す。 ○会長  モデル計算の例という形でよろしゅうございますか。 ○I委員  ただ、単身も40年の計算のはずですから、夫が40年だけでなくて、妻も40年という計 算でしょう。女性12.5万円は、そういう計算でしょう。 ○事務局  はい。 ○I委員  40年は全部にかかっているという意味のことがはっきりわかるように。そして、しか も全部が平成6年度価格の計算なんだということですね。モデルであり、平成6年であ り、しかも40年だと。 ○会長  J委員、どうぞ。 ○J委員  男性が16万円で女性が12万円というのは、恐らく同じ40年でありながら、これだけ違 うというのは賃金の違いだと思うんですね。しかし、こういうことで将来の年金制度を 考えていいのか。男女の賃金格差というものを、現在の賃金格差を平均にして考えてい いのかというのは、私はちょっと気になる。あるいはこれでいいのかもしれませんけれ どもね。今のモデルは男性が16万円で、女性は40年加入しても12万円なんだというのは ちょっと制度の在り方を考える場合にはやや問題があるかなと。非常に難しい問題です けど、別にI委員のおっしゃったことはそのとおりなんですけど、多少そういう問題も あるなということを気がつきましたので申し上げたいと思います。  だから、こういうモデルの書き方というのは、数字自体で制度の在り方を考える場合 の基礎になりますから、やはり丁寧に親切にコメントといいますか、こういう前提でこ ういう数字なんだということをはっきり書いておいた方がいいように思いますね。 ○I委員  そうしますと、この男女の賃金格差は、これは恐らく実態の賃金格差をもってきてお られると思うんです。そうでしょう。 ○事務局  はい。 ○I委員  だから、その賃金格差をモデルに持ってきたと、こういう意味のことも書いておかな ければ、これはいけないわけです。 ○B委員  厚生省で前にいただいた資料では、実際の厚生年金受給者の平均は、男子がたしか20 万円強で、女子が10万8,000円ぐらいですね。大体女子の平均年金額は男子の54%ぐらい です。それは男女間の賃金格差と、介護や育児による拠出期間の短さと両方が影響を及 ぼしているために、過去ずっと何十年も大体53〜54%の数字となっている。外国でもそ うなんですね。そういう実態が反映されているわけで、やはり社会の中での男女平等と いうのか、それが促進されないと、年金は年金数理上は実態の賃金格差に基づいて給付 と負担を計算するわけですからそうなってしまうわけですね。だから、ある意味では年 金制度上というよりも、社会の中での働いている期間の実態が年金の運用上に反映して 男子の平均の、53ないし54%という女子の実態になっているわけです。  だから、これは拠出期間が「40年」というふうにそろえてあるので、まだ16.6万円と 12.5万円というのはもっと縮まっていますけれども、実態は前に、いただいた資料では ほとんど半分ぐらいに開いているということです。 ○会長  今の3ページの備考欄は、もう少し行き届いた説明をつけ加えて、無用の誤解が広が ることを防ぐ。その文章のつくり方は事務局に一任するということでよろしゅうござい ますか。 ○C委員  会長のおまとめで結構なんですが、それに関連して、上の消費実態調査の数字につい ても、若干の注意を払っておくべきではないかと思う点だけ御意見申し上げたいと思い ます。特に負債と貯蓄の額です。現役はこれは30代の夫婦、子供が2人弱というところ で、貯蓄額が六百四十万と負債が五百万なにがしと、こういうふうになっており、それ に対して、高齢者の方は、65歳以上ということで、一見したところ、とにかく高齢者世 帯というのは貯蓄がこんなにあるのかという印象だけが突出して出てくるような気がし てしようがないんです。統計上の、資料そのものがこういう数字なんでしょうが、例え ば、30代の夫婦というのは、子供ができたばかりぐらいのところだと貯金なんかしてい る余裕はほとんどないというところから出発し、そして住宅ローンをこれから抱えて、 一般的に言えば、労働生活からリタイアするときには、日本の場合にはかなり貯蓄を積 んで、今度はそれを取り崩していくと、こういう大体ライフスタイルになっているのだ と思います。 だからこの2つのグループの貯蓄額は高齢者は非常に貯蓄がたくさんあって潤沢で、若 いやつは、それに対してかわいそうだといったような、そういうエモーショナルな理解 を呼ばないような注意はやはり必要なのではないだろうか、そんな気がしております。 ○会長  G委員、今の問題について(注)をつけるとしたら、どういう(注)をつけ加えてお けば、誤解が減りますか。 ○G委員  前者はかなり難しいといいますか、ある意味で普通こうなっちゃうので、それはそう いうふうになると思います。若いとき賃金は高くなく、貯蓄は余りないと。要するに平 均な数字でして、ばらつきは高齢者になるほどひどいのです。そういうことを言い出す ときりがない。ですから少なくとも下のところは、今、I委員が言われたように、モデ ルとして計算したわけで、それが実際の中で、たくさんの人がここにいますよというこ とは意味してないということがはっきりすればいいのではないか。要するに年金計算上 今こういうふうな計算ができますよと。今の年金が一体どういうふうになっているかと いう制度の数値を入れてみるとこういうふうになっていますよというところが眼目でし て、それで制度が、なるほどこういうものになっていて、女性と男性について、こうい う違いが発生している。ということは、今の制度ではそうなっていることが結果的に出 てきているわけで、そういう例示みたいなものとして出ていると。こういうのは、お役 所が得意でしょうから。 ○I委員  これは恐らく年金額を計算する場合の基礎になっておる平均標準報酬月額ですね。23 万1,000円を計算した根拠。これと同じようなことを、男性と女性についておやりになっ たと。その結果がそれぞれの16.6万円なり12.5万円だと、こういうことでしょう。標準 報酬月額のところで平均をお求めになって、40年加入した人の年金はこれだと、こうい う計算でしょう。23万1,000円の計算と同じ計算方法でやったのだというのが一番簡単な 表現だろうと思います。それぞれについて、平均標準報酬月額を求めて、それを基礎に おいて、23万1,000円と同じ計算方法をしたと、こういうことではないかと思うんですが ○B委員 その上の貯蓄のところは、貯蓄は全くゼロの人から、何億とかあるという人まで並べ たときに、ちょうど真ん中に位置する、すなわちそれ以下の方が半数いる、それ以上の 人が半分いるという中位数を示したほうがよいです。高齢者で高額の貯蓄を持っている 人が含まれてくると、当然平均はそちらに引っ張られて上がるということがありますが 実態の中位数はもっと低いと思います。ですから貯蓄や負債のところは中位数で出すの も1つの方法だと思います。 ○会長  「全国消費実態調査」をやっている役所はどこですか。 ○事務局  総務庁です。 ○会長  所得分布など平均が不適当な場合はいろいろあります。しかし、別の役所の報告を引 用するときは、そのまま引用するほかありません。原票を借出して、こちらで計算し直 せば別ですが。 ○G委員  単身の場合は特に誤解を招きそうであれば、そのところに多少修飾をつけて、同じよ うな「モデル的に計算した場合の」というふうに入れておかれたら、誤解が発生しにく い。その種の修文が最小限どこかで必要ではないか。 ○E委員  もう一点、注意を要すると思うのは、この読み方ですが、高度成長期を通って非常に 豊かな時代に高齢者になった我々の世代はかなり貯蓄ができましたけど、これからのこ とを考えるとこうはいかないということを言っておかないと、この表を見せると、将来 の年金の議論が少しゆがんでくるのではないかと思うんです。今の高齢者は特別ですか ら、こんなに豊かなのは。 ○C委員  今のE委員の御発言の中で、今の高齢者が大変恵まれているということについては異 論がありませんが、将来はこんなに貯蓄できないということについては、むしろ貯蓄す る方に悪くするとふれるのではないかというのが我々の懸念なんですね。つまり、それ は余裕があるから貯蓄できるという意味ではなくて、公的年金水準についての不安度が 増せば、個人年金商品を買うなり生命保険なりに入るなりという形での貯蓄行為へ走る わけで、例えば家計調査ベースで見ましても、昭和60年の年金改正の前後から、この傾 向は確実に強まっていますし、各生命保険会社の企業行動を見ても、それ以後、個人年 金商品なんていうものの開発は大変盛んになってきて、私ども労働団体がつくっている 「全労災」なんていうのもそういうのをつくり出して、一時問題になったりしたことが ありますが、単産共済などでもそういう動きが確実にあります。ですから公的な年金水 準や、それに対する信頼度が低下することによって、こういうものが逆に嫌な意味で上 がってしまう。  外国の労働者は逆に、退職時にそんなに膨大な貯金などは持ってないんですよね。だ から、その意味で、ここは豊かさの指標というふうに言い切れない要素が、今後の動き を含めてあるのではないだろうかと思いますが。 ○K委員  6ページの基礎年金についてなんですが、ここの扱いについては、今回かなり整理さ れて出ておることは十分承知します。ただ、2つ目のマルの基礎年金の国庫負担率の引 上げについては、これ以上出せないよということを所与のものとして考えざるを得ない という議論で議論しだしますと、環境からしますと難しいということはよく承知しての 上でありますけれども、課題があるというふうに見ています。  ここの書きぶりですが、「基礎年金の国庫負担率の引上げについて、国の厳しい財政 事情からみてどう考えるか」ということですが、右側の備考欄に2つのことが書かれて おるわけです。そういう面で、真ん中に書いてある考え方と備考欄はどういう関係にあ るのか。比重の置き方は全く平等なものであるというふうに見ていいのか。それとも備 考は備考ですよというふうに考えるのかというのと、もう一つは、備考欄に、「前回の 改正法の附則等」と書いてありますね。前回の改正法の附則があって、多分この「等」 というのは、衆参両院の厚生委員会の附帯決議なんかかなという気もいたします。  その上で、新しい閣議決定で、「財政再建目標達成後改めて検討」というわけであり まして、極めて重要な閣議決定にいろいろ言うはずのものではありませんが、「財政再 建目標達成後」なんていうと、一体いつになるのかみたいなことがありまして、先の見 えない目標達成を前提に検討するのかみたいな話も言ってみたくなるわけであります。 国会の改正法の附則と衆参両院の厚生委員会の附帯決議と閣議決定というのは、それぞ れどっちが法制度的にも優先するといいますか、重いものなのかどうかという気もいた しますが、左側の方に、「引上げについて、平成6年の前回の改正法の附則において検 討を加えることとされているところであるが、国の厳しい財政事情からみてどう考える か」というふうに例えばしまして、右側の備考欄には、上の方の附則のところは、「衆 参両院の厚生委員会の附帯決議」を括弧書きで入れる。下は閣議決定がありますと。細 かいことまで申し上げますが、このように思ったりするわけです。  一番申し上げたいのは、この書きぶりだけから見ますと、要は平成6年の経緯はいろ いろあるけれども、ともかく厳しい財政事情なのだから、国庫負担の引上げはないよと いうふうに完全に言い切っちゃっていていいのかなという気が少しするものですから申 し上げたわけです。 ○会長  今の点について、どなたか御意見ございますか。 ○C委員  そもそも基礎年金の現行3分の1の国庫負担というのは何のためにあるのかというあ たりの議論は、従来はどういうふうに整理されてきたのでしょうか。私どもはこれを引 き上げることを強く主張してまいりましたが、別にそれは保険料率を抑えるためではな かったんですよね。むしろここで十分に踏み込まれていませんが、基礎年金の特に第1 号の未納者の拡大という状況から派生して、旧自営業者の方々で現在の国民年金受給者 の人たちの年金原資を補てんするのに、現在の第2号被保険者が第1号被保険者のかわ りに補填しなければならないようなことが現実に財政上は起きているはずであって、そ ういうものを補填するという意義をここに見いだしてきたのではないか。自分たちの保 険料率の見かけの上での負担の引下げを意図しているわけではないのですが、そもそも 基礎年金の国庫負担分はどういう意義づけだったのか。既に審議会としては歴史的な経 緯の中で整理されてきているという上であれば、あとは率をどう考えるとか、財政状況 がどうだからとか、こういう議論でいいと思うんですが、そこをちょっと教えていただ けますか。 ○事務局  基礎年金の国庫負担の考え方につきましては、審議会の資料でも一度提出申し上げた かと思いますが、もう一遍申し上げますと、事業主及び被保険者の拠出する保険料を主 たる財源とする、というのは社会保険の考え方ですが、この公的年金制度の運営につい て、国の責任の具体的表明として、給付水準の改善、保険料負担の軽減、制度の成熟化 の促進などの観点から費用の一部を負担していると。こういうことで資料も提出申し上 げたところでございます。一応参考までに。 ○C委員  ありがとうございます。 ○会長  今の点はいかがいたしましょうか。備考にあるのを本文の方につけ足しますか。 ○L委員  非常に難しい問題だから、こういう表現になったのだというふうに私は理解しており ますので、こういう書き方の方がいいのではないかと思います。 ○会長  今の点は原案のままということにしておいた方がいいような気もいたします。そのほ かの点につきましても、御意見が余りございませんでしたようですが、大体皆様方の御 了承いただいた、ということにしてよろしゅうございましょうか。 ○C委員  時間が押しているところ申しわけありません。今の基礎年金の上、「総報酬制」です が、本文の方の給付面についての配慮もというところについては適切な加筆だろうと思 いますが、右側のコメントの部分、「総報酬制を導入する場合……方式に改めることが 必要になる」。こういうコメントがついていますが、これはどういう意味でこういうこ とが書かれているのか、御説明だけいただけますか。 ○事務局  ここでの考え方は、特別保険料のように、何%かいただいて、それが給付に反映しな いということではないと、給付全体を算定する式にも反映させるということを示してい るくだりだと思います。 ○C委員  負担ベースを総報酬ベースに直すためには、月給と特別保険料について同率で適用し てみたって、それは同じく総報酬ベースにはなるわけですね、負担だけについて言えば 給付の問題をどうするかというのは、特別保険料であれば、それが給付に反映しないと いうふうに断定する必要も特段ないと思うんですが、今のような標準報酬月額と特別保 険料、こういう二重建てのことをやめて、年間総収入を何らかの形で把握して、それに 対して保険料率を掛ける、そういう方式にしなければならないという厚生省の御意思の 表明と受けとめておけばいいわけですか。 ○事務局  そこにつきましては、まだ具体的な計算式、あるいは徴収の方法がかたまっておりま せんので、明快には申し上げられませんが、ここでは年金額について算定すると申し上 げておりまして、今の特別保険料は年金額については算定しておりませんので、そこは 少なくとも変わるのだろうと思いますが、別建てかどうか含めて、その辺のやり方はい ましばらく検討の時間をいただきたいと思います。 ○C委員  給付への反映ということを言っているだけですか。 ○事務局  おっしゃるとおりです。 ○C委員  それならわかりました。 ○会長  C委員、よろしゅうございますか。もし、別に御意見がございませんでしたら、全員 懇談会で、先ほどから幾つか修正いたしましたが、それらを含めて訂正、公表するとい うことで、よろしゅうございましょうか。               (「異議なし」と声あり)  では、そのように扱います。  時間が少し超過いたしました。居残り残業になりそうですが、御都合のつく方にはお 残りいただければと存じます。  次は、次期改正に向けて厚生省の方で準備いたしました、給付と負担の組み合わせモ デルの計算例。「選択肢」という名前をつけておりますが、モデル計算といいますか、 計算例について事務局から説明をお願いします。 ○事務局  それでは選択肢について御説明を申し上げたいと思います。資料2−1、2−2、1 枚紙で2−3、この3者で一体でございます。中身に入ります前に、この提出の形につ いても一言御説明させていただきますと、この審議会でかなり早い段階でございました けれども、この選択肢につきましては、当審議会で整理していただくと、こう申し上げ たこともございましたが、ごらんいただきますように、こういう形で数字中心で試算を 内容とするこういう選択肢としてまとめました関係上、これは厚生省として責任を持っ て提出させていただくべきだという考え方に立ちましてこういう形になりましたことを 御説明申し上げます。  そこで内容に入りたいと思いますが、1冊目が選択肢の概要、2冊目の参考資料が、 その選択肢を実現するためにどういう手法がとられるかというさまざまな試算を掲げて おりまして、最後に全体の概要を1枚紙にしたものでございます。  まず1冊目をごらんいただきたいと思いますが、時間の関係で省略しますけれども、 最初の1ページのところで、年金のこれまでの現状、改革をしてきた経緯。2ページで しかしながら、今回環境の変化のために、年金改革の必要性が生まれたかということ。 3ページ目をごらんいただきますと、今回の選択肢は、特に年金の議論をする場合に、 もちろん3号被保険者の問題であるとか、パート、少子化、さまざまな重要なテーマが ございますけれども、まずは制度の長期的安定ということで、給付と負担の均衡という ことについて数字的に検討を進めようということで、こういう方法を選びましたという ことでございます。したがいまして、次回改正の、給付と負担のバランスについての選 択肢ということですから、このほかということで、3つ目のマルにも書いておりますが 女性の年金等、個別テーマについて、今後引き続き別途検討を進めていくということを 説明いたしております。  そこで4ページ、これが全体の概要でありますが、選択肢はAからE案までの5つを 掲げておりまして、「A案」、これは現行制度の給付設計を維持するということをもと にした案でございます。例えば、先ほどの23万円ぐらいのモデル年金、こういった形に なりますが、それは最終保険料率として、将来34.3%の保険料につながるということで ございます。  一方、飛びまして「D案」でありますが、これはむしろ保険料率を余り上げないとい うことでございまして、今、17.35%でありますが、あと1回の改正程度ということにな りましょうか、月収の20%程度にとどめるということです。こうなりますと、将来の支 出の総額、給付の額ではございません。1人1人がもらう年金額とは直結いたしません が、支出の総額が4割程度抑制されるというのがD案であります。  AとDの間に幾つかの考え方がございますが、「B案」は、厚生年金の保険料を最終 的に月収の30%以内にとどめるという案でして、前回の制度改正を行いますときに、将 来的にも3割を超えないということで、29.8%にとどめたわけですが、御承知のように 直近の人口推計で少子高齢化が進みました関係上、34.3%にまで最終保険料率が上がっ たということで、前回並みに保険料率を引き戻すような改正のイメージでございます。 これは2025年時点で支出額を1割程度抑制ということになります。  「C案」の考え方。これはこれまで月収に対して何割ということで負担の限界を示し ておりましたが、ここでは年収、ボーナスを含めたイメージで、特にヨーロッパの既に 高齢化の進んだ国の先例等を学びますと、年収で2割ぐらいのところで負担感の壁みた いになっているのではないかということから、年収で2割程度にとどめるという1つの 線を引いてみたわけであります。これは先ほどの月収に換算いたしますと、月収で26% 程度の保険料ということになるわけでして、これだと2025年時点で支出総額を2割程度 抑制する必要があります。  A、B、C、Dは、現行制度を前提にして調整していく形ですが、「E案」というの は、御承知のように、これは民営化というものにつながる案でありますが、公的年金の 守備範囲は縮小して、基礎年金の1階部分に限定すると。そうなりますと、2階部分は 積立方式による民間の企業年金あるいは個人年金に委ねると。そうなりますと厚生年金 は廃止ということでございます。そういう案であります。  その内容について、以下、1ページに1案ずつ続けております。ざっと説明申し上げ ますと、まず5ページが「A案」でありますが、御承知のとおり、保険料率は段階的に 5年に2.5%ずつ引き上がって34.3%に至ると。総額につきましては、右でありますが 11年度で約26兆円のものが平成37年度で、総額で約45兆円ぐらいに拡大するということ であります。 そのときモデルとしておる金額はどうなっているかということを示しましたものは括 弧の中の「参考」で、年金額で23万強。「所得代替率」は定義をここではこういう使い 方をしておりますが、手取り総報酬に対してどれぐらいかということで、62%という尺 度でございます。また問題点を掲げております。 次が6ページ、「B案」。  これは先ほどの階段が上の34.3%のところが30%におさまると。支出の総額が2025年 時点で1割程度抑制されると。  参考として、総額だけで書きますと、個人のイメージが非常にわかりにくいという御 指摘がございましたので、もし給付水準を直接1割ぐらい下げたらどうなるかというイ メージであります。実際にはいろんな方法を組み合わせますと、こんなに個人の年金額 が下がることはないと思いますが、一応1割カットしたらどうなるかということで、イ メージとしては20万 7,000円。それは手取りの総報酬の55%ということになろうかと思 います。 右の方のマルで幾つかの世帯のケースについても併せて示しております。  次が7ページ「C案」です。  これは先ほどの年収で見て最終保険料率を20%程度にとどめようという案ですが、保 険料率の階段がこのとおりでありまして、総額で2割程度の抑制と。これをあえて年金 の給付水準を2割抑制したというイメージに変えますと、年金額18万 6,000円。手取り 総報酬の50%というイメージになるところでございます。  8ページ「D案」でありますが、これは現在の保険料率程度にとどめようということ になりまして、17.35%が、かなり近い時期に20%になって、以後安定するということで あります。ですから、そこ以上の世代はほとんど同じ保険料になるわけですが、支出総 額で4割程度抑制される。このとき、直接給付水準を4割もしカットしたとするならば イメージが13万9,000円。手取り総報酬の37%ということでございます。 次、9ページ「E案」であります。「厚生年金の廃止(民営化)案」でありますが、 これにつきましては、こういう案が登場した背景を1.2.3.として書いております が、1つ目は、少子高齢化によって若い人が減り、お年寄りの数が増えた場合に、賦課 方式で運営しておりますと、将来世代の負担が過重になるという問題です。  2つ目でありますが、人口の増加率や賃金の上昇というものが余り高くなくて、むし ろ運用利回りの方が大きいという経済状況を前提にすると、積立のほうが有利ではない かという批判です。  3つ目として、官民の役割分担の見直しの中で、年金制度についても公的な守備範囲 をもっと縮小して、個人がもっと選択できるようにするというような考え方、こういっ たことから民営化あるいは厚生年金の廃止という案が出てきておりまして、考え方とし ては、さっき申しましたとおり1階建てにして、公的年金は基礎年金のみにすると。た だし、この場合も現行の13万円レベルでは低過ぎるという意見から、基礎年金水準をあ る程度引き上げるという考え方も出ておるところであります。2階部分は民営化であり ます。 この問題点につきましても、この審議会の場で何回か御議論なり、御説明申し上げたと ころでありますが、繰り返し書いております。 ア.中小零細企業等のサラリーマンは、企業年金にも入ってないケースが半数以上の方 がそうである。そうなると、そういうサラリーマンは1階だけでいいのかという議論。  イでありますが、「インフレ等への対応」としまして、20歳で会社に入って、80歳ぐ らいで年金受給を終えるまでの約60年間、想定できないインフレとか経済変動がないと いう前提で積立方式一本でいいかどうか、そういった問題。  ウ.切替時の二重負担の問題。この問題は、以前、350兆円という図でお示ししたとこ ろでありますけれども、積立方式に切り替えますと、自分の保険料は自分の将来のため に積んでいくと。そうしますと、そのときのお年寄りなどにつきまして、別にもう一度 保険料を払って、あるいは税などで補てんしないと年金が払えないということで、現役 世代は自分のための積立とその時点での年金受給などに対して別途負担しなければいけ ない、二重の負担が生じる。これが350兆円であります。 ただ、これにつきまして、処理が難しい問題でありますけれども、(2)で、どうや ってこれが解消できるか、いろいろな議論がございますので紹介をしております。 (2)の1)、2)でありますが、1)は保険料で何とかそういった過去の二重負担分に当た る350兆円を解消する。ア、イで、2つ方法を示しておりますが、一定期間保険料を引き 上げて対応する。30年間で2階部分の債務を解消するならば、ずっと別途11%の保険料 率を負担いただくことになる。あるいは段階的に2階部分を小さくしていって、その間 に現役がその分だけ保険料を払い続けてもらうというやり方もあるわけであります。  2)であれば、税とか国債とか、保険料でないところで御負担いただくというやり方に なります。これはいずれのケースであっても、移行期の世代の保険料負担で二重負担の 問題を解決するという場合は、負担する方々の合意が得られるかという問題があります し、あるいは新たな国債や税で巨額の負担が現実的に可能かといった議論があります。  また1階部分を手厚くしようという案もあるわけですが、これは現在でも国民年金の 保険料は将来2万4,300円というふうになって、これでも重いのではないかという議論が あります。さらに重くすることになりますが、その財源についてどう考えるかというこ ともございます。これが民営化についての考え方であります。 それから、11ページでありますが、これまでの説明だけでまいりますと、2階部分、 1階部分を一体的にずっと取り扱ってきており、厚生年金の改革の選択肢のような印象 をお受けになるかもしれませんが、ここでは特に基礎年金について取り上げて項建てを しております。現在の基礎年金については、給付は6万5,458円、保険料が1万 2,800円 ということで、将来この保険料が上がっていくということでありますが、(1)で、こ の基礎年金の給付水準の維持・拡大か、あるいは負担を考えると抑制かという考えを示 しています。  (2)で、この保険料負担をどう考えていくか。  (3)で、ただいま御議論いただきましたが、国庫負担をどう考えるか。  (4)で、厚生年金の例えば23万という水準を下げるとか、そういう議論をしました 場合に、2階部分だけを縮めて、1階部分は固定するのであれば、これは相対的に2階 部分がだんだん小さくなっていくわけでありますが、そういうことがいいのか、それと も23万を少し抑えた場合には、1階、2階を同じ割合で下げるという考え方もございま す。いずれにせよ厚生年金全体の議論とこれは密接に関係するということでございます 次の12ページでは参考までに、高齢者の生活実態の参考資料をお示ししております。こ れは既に当審議会にもお示ししたものの一部抜粋でございますが、その2つ下のマルの ところで、これは機械的試算をいたしましたが、今の平成6年度価格で6万5,000円の額 の最終保険料が2万4,300円になるとすれば、仮に給付水準を5,000円ずつ落としてみた 場合には最終保険料率は計算上どうなるかということで、それぞれ6万円から5,000円ず つ落として、右側では2万1,600円、1万9,100円、こういうふうに将来の負担は軽くな る。 ただし、(注)で書いておりますが、給付水準を下げる場合にも、今もらっている人 の年金額が、制度改正で直ちに下がるということではなくて、これは経過措置を置いて 従前額は維持していこうということでありますので、名目の額が下がる人はいない。そ れから、新しくもらう方も、これはちょっと経過措置を置きながら調整していきますか ら、来年からもらう人は直ちに下がると、こういうことではなくて、従前額を維持しな がら、新しく決まった年金額が伸びてくるまで丈比べをして、従前額を支給するという 形になりますので、今期待されている額が目に見えて減ることはないような経過措置は 考えられているところでございます。  それ以下は、参考資料でありますが、13ページをお願いいたします。13ページの下、 6のところで、これは人口推計の扱いを書いておりますが、従来、年金の数字につきま しては中位推計一本で説明してきたことが多うございまして、これが人口推計を変える ごとに、むしろ低位にふれるということで、中位推計一本で信頼性に足るかという御議 論をいただきました。そのため、ここでは、もし今回もさらに低位推計ということにな った場合には、今の数字は実際にどうなるかということでして、A案は、中位推計なら 将来最終保険料が34.3%になるわけでありますが、低位になった場合には37.6%まで上 がるということでございます。 その場合、B案で標準報酬で30%程度に保険料を抑えたとしても、低位推計の方に世 の中の実態がふれますと、それは33%程度までいくと。 同じように、C案、D案とそれぞれ低位に推移した場合にはどういう結果になるかと いうことをお示ししておるところでございます。 それから、14ページは国民負担率に対する影響でございますが、省略させていただき ます。あとは関連の数字を並べておりまして、最後18ページのところでは、特に今回の 制度改正につきまして、世代間の均衡の問題もございますが、例えばそれぞれの年齢ご とに、過去に納めてきた保険料の率が違う。特に一番上の太い数字の平成6年時点での 5歳の方をあてはめてみますと、30歳ぐらいのところから34.3%の保険料になり、終生 60歳まで続くということになるわけで、こういった世代に対して現世代が保険料負担を 期待して、年金をもらい続けていっていいのか。あるいは25歳、45歳もそれなりにそう いうことにならないように制度を調整していくのがいいのか、こういったことになるか と思われます。それが1冊目の概要でございます。  それから、2冊目にまいりますが、2冊目は「参考資料」と表紙に書いておりますが 今申しましたような、例えば総額で1割抑制するとか、総額で2割抑制するとかという ことを考える場合に、どうやれば、それが達成できるかということがやはり数字的に必 要でして、その機械的な試算でございます。  目次をごらんいただきますと、これまでここでも御議論いただきましたさまざまな手 法を掲げておりまして、例えば給付水準であれば、水準そのものを抑える方法とか、後 ほどいろいろ説明してまいりますが、スライド制を調整する、支給開始年齢で調整する 高齢者の在職老齢年金で調整する、高額取得者の関係、保険料の負担の見直し、いろん な形がございます。  次の1ページをごらんいただきたいと思います。ここでちょっと詳しくいろんなこと が書いておりますが、最初の4行でも、例えば「手法とそれが保険料に及ぼす影響につ いて一定の仮定を置いて機械的に試算した」というふうに入念的に書かせていただいて おります。「留意事項」の1)でありますが、これは次期年金制度改正の具体的な内容で はございません。  2)、先ほど経過措置を少し申しましたけれども、水準を抑えるといいますと、お年寄 りが突然自分の目の前で年金額が減るというように思われて、非常に抵抗感を持たれる わけでありますが、経過措置を使いますと、抑制されるのは伸びでありまして、目の前 で額が下がるというような形の計算ではございません。  経済の要素とか、前提の置き方や経過措置が変われば、保険料への影響も変わります ので、それは(注)にある前提でごらんいただきたいと思います。  以下、内容にまいりますが、多々ございます。まず2ページ、これは給付水準という ことで、年金の計算式を直接変えまして、今もらっている年金額の水準を落とすという 一番直接的な方法であります。この見方でありますが、四角の中で現行水準が下にあっ て、ケース1、2、3とございますが、現行の水準は手取りの総報酬ということで換算 いたしますと62%でありまして、これが今のレベルであります。これを例えば62%を55 %に減らす、あるいは50%、45%と機械的に減らしてみた場合には年金額はどうなるか と。右にある20万 7,000円、18万8,000円、16万9,000円とこういった額になってまいり ます。 その中の基礎年金と厚生年金は、ここでは全く同じ比率で下がっていくという仮定で 計算しております。ですから20万7,000円になった場合には6万5,000円の基礎年金は5 万8,000円、厚生年金は9万円とこういう仮定で計算をしております。   その下に現行の消費支出から見て、20万円なり18万円という額がどういうレベルかと いうことをごらんいただきたいと思います。下の「影響」は、ケース1では、▲5%対 標準報酬と立てておりますが、これはどういうことかといいますと、34.3%まで最終的 に上がるはずのものが、5%は抑えられるということでありますから、29%台にとまる ということであります。ケース2では、34.3%から81/2%低く、この保険料が将来 的には抑えることができると、こういうふうに見るわけであります。  右側の国民年金最終保険料も基礎年金が上のような変化をいたしますと、2万4,300円 が、こういった額で下がっていくという計算でございます。ただ、この計算式の前提は 前回改正時の標準報酬上昇率が4%、消費者物価の上昇率が2%、こういったことを用 いております。これが一番正面からやるやり方でありますが、以下はいろんな工夫です  例えば3ページ2)ですが、妻の平均的な厚生年金加入年数、現在の場合は平均的に5 年という数字、これはゼロの方も全部含めての平均が5年であります。例えば、これを 標準として考えた場合に、世帯の設計のモデルが、さっきの資料のとおり、専業主婦の 場合で23万円であったわけでありますが、夫と妻合計で23万円ですと生計を維持できる ということであるならば、これは1人当たりの計算の乗率と申しますが、1000分の7.5と いう数字が変わってまいりまして、専業主婦世帯では22万3,000円になるというのが参考 1の姿であります。こういった考え方をとれば、世帯のモデルを変えますと、最終の保 険料率に対しては2%の抑制の効果がある。これは1つの試算でございます。  4ページは、年金額を先ほどやりましたように下げるということでも、全員一律では なくて、例えば賃金の高い人の方から、多めに下げさせていただくというやり方をとる ここでは平均賃金を超えた方について、その分について乗率の1000分の7.5を1000分の5 にしてみようということであります。そういうやり方をいたしますと、この棒グラフの とおり、賃金の多い方ほど年金額の伸びが小さくなっております。この財政効果は1% でございますから、34.3%になるものが1%ほどは下がるということです。  次が5ページで「スライド制」です。  これもこの場で再三御議論いただいたところでありますが、これは裁定した後の年金 のスライドは物価のみとするということで、購買力は維持してまいりますけれども、そ れ以後現役世代の賃金上昇、実質の生活向上分は年金に反映しないという形をとった場 合には、どういう効果があるかという試算です。これも前提の置き方で随分数字が変わ ってまいります。前回改正のようなベースで、賃金上昇が4%で物価上昇が2%、こう いうことで、毎年実質2%賃金が伸び続けるという前提であるならば、これはこの分の 開きが抑えられるわけでありますから、財政効果は非常に大きく、6%というふうな財 政効果が見込めるわけでありますが、例えばケース3の方に行きまして、賃金の伸びが 2.5%、物価が2%と、0.5%ぐらいしか実質の賃金が伸びないというような事態であれ ば、これは賃金スライドをやめても大きな効果は出ません。結果的には1 1/2%ぐらいの 財政効果にとどまる。こういうことで、この制度一本では経済変動によって非常に弾力 性が大きいということでございます。  6ページは「支給開始年齢」の関係ですが、これも機械的試算であります。2013年ま でに段階的に65歳まで支給開始年齢を引き上げていくわけでありますが、さらにその時 点から、同じペースで、3年に1歳ずつ67歳まで支給開始年齢を引き上げればどうなる かということでして、これの最終保険料率に対する影響が11/2%でございます。 次のページ、これは2001年から2013年まで12年かけて、3年に1歳ずつ引き上げて いく現在の計画でありますが、これを2年に1歳ずつということで、前倒しで達成いた しますと、最終保険料率にどういう効果があるか。これにつきましては、最終保険料率 に対して0.1%の効果ということでございます。 それから、8ページ、これは前回改正のときに定額部分は65歳に段階的に引き上げる こととしましたが、報酬比例部分につきましては、60歳から65歳まで満額出る。例えば 23万円がモデルの方であれば、10万円は60歳から出続けるわけでありますが、これを定 額部分と同じように65歳まで引き上げると最終保険料率につきましては3%の影響があ リ、34.3%がその分下がるということであります。  9ページ、これは在職老齢年金であります。御承知のとおり、現在の制度では65歳ま ででありますので、65歳以上の方々は、例えば会社でお勤めであっても保険料も納めま せんし、年金は満額受給できるという形であります。例えば、これを70歳までの間は、 保険料は納めていただく。また、賃金に応じて年金額を抑制するという形をとりますと 1階部分は支給いたしますが、2階部分でそういう60歳台前半と同じ調整をいたします と、1%程度の財政効果があるということであります。  次が「一定以上の収入等のある者の支給制限」ということでございまして、考え方と して、ここには「一定以上の収入等のある者は稼得能力の喪失という保険事故は発生し ていないとも考えられること」と、以下考え方を書いております。これにつきましては 我々は従来から老齢と障害と死亡と、保険事故につきましては、そういうものを保険事 故と考えてきておったわけでありまして、そういう立場をとってきたところではござい ません。そういう考えが一方であるということで、紹介させていただいております。  しかし、「留意点」と書いておりますが、なかなか問題が多く、例えば社会保険方式 ということですから、所得にかかわらず保険料拠出に対応して給付を行うという年金制 度の根幹にかかわるのではないかということ。また、高齢期にも一定の所得があると自 分で予想しておられる方は、そのころになって年金がなくなる、カットされるというこ とであれば、加入意欲を失うのではないか。そうしますと、国民皆年金の崩壊につなが らないかということであります。  また、ひとたびこういう一定の基準を設けて払わないという制度を開始いたしますと 国家財政の状況いかんで基準がだんだん下がってくるということで、歯どめの問題がど うなるかなということがございます。  あと、こういった問題については、総合課税で対応すべきではないか、こういった意 見もありますし、また2つ目のマルですが、所得の捕捉や支給制限等、大変な事務処理 になりますが、そういったことについても検討をしておるところであります。こんなこ とから、ここについては試算を付しておらないところであります。  11ページでありますが、今までは給付の関係で説明してまいりましたが、保険料の負 担の見直しであります。現行の5年間に2.5%ずつ上げていくというやり方について、特 に世代間で相当先送りがあってアンバランスだという指摘があるわけで、もっと前倒し で、現行世代ももっとたくさん保険料を納めていく、例えば3.5%に1ポイントピッチを 速めるということになりますと、最終保険料率では11/2%の効果と。世代間の不公平の 改善と別に財政効果もこういう形であらわれるわけであります。  12ページが「その他」でありますが、これも先ほど少し御議論がございました総報酬 についての記述でございます。ここも2つ目の太い字で書いておりますが、「現行制度 に対し財政的に中立なものとするための留意点」ということで、増収対策だとかそうい うことのないように取り組むことがまず前提として書いております。ただし、3つ目の マルで、完全に中立にした場合にボーナス、年収の多い方が年金額も非常に多くなる場 合にここをどうするかということについては別途議論の必要があるということを書いて おります。  次の「国庫負担」の関係は先ほどと同じであります。  そこで13ページですが、今まで御説明しましたいろんな指標を一覧表にしてまとめま して、厚生年金の対標準報酬、年収ベースの最終保険料率、国民年金の最終保険料にそ れぞれにどういう影響があるかということを一覧にしております。そこでもう一回最初 に戻っての御説明になりますが、例えば給付総額を1割抑制するということは、一般に は年金の23万円が1割下がるというふうにすぐ受け取られがちなのですが、これはそう ではありません。例えば1割下げるために保険料を4ポイント強下げればいいわけであ りますから、ケース1のように、給付水準を下げるということでやる方法もありますが そこを使わないでほかの方法を使っていけば、23万円という給付水準には手つかずでも やれる方法はあるわけであります。例えば支給開始年齢と組み合わせれば、給付の23万 円の1割を抑えなくてもそれは達成できるということでありますから、給付総額で1割 2割あるいは4割下がるということと、23万円が直接1割、2割、3割下がることとは 違う組み合わせによってそれはいろいろと緩和することができるということです。  3枚目は今申しました内容を1枚紙に要約した程度のものでございますので、説明は 省略させていただきます。  非常に急ぎで申しわけございませんでしたが、これが選択肢の内容でございます。 ○会長  ただいまの御説明につきまして、御質問などございましたら、どなたからでも御 自由に。どうぞ、C委員。 ○C委員  大変多岐にわたるさまざまなケース、さまざまな要因を分類されたもので、この作業 に当たられた皆さんの御苦労は本当に多としたいと思います。私どもが、ここでこれか ら議論していく上でもこの内容自体は、少なくとも給付と負担、すなわち先ほどの「論 点整理」の3の(1)の項にかかわる1つの材料として大変有効な内容が多々あろうか というふうに思います。  ただ、この作業ないしは内容に対する評価は評価といたしまして、この段階で、こう いった具体的な金額を含んだものが「5つの選択肢」という形で、社会的に公表される ことが、当審議会の論議の成熟段階に合わせて一体どういうことを意味するのだろうか とか、むしろそのことが気になるので、私どもは現在の段階で、こういう内容のものが 「選択肢」と銘打たれて社会的に公表されることに対して残念ながら賛成いたしかねる ということをまず冒頭申し上げておきたいと思います。  ここには2つの点で齟齬があったのかもしれません。1つは5月の段階から本審議会 で公的年金の議論が始められたときに、大まかな検討項目とあわせてスケジュールの議 論がございました。このスケジュールの議論の中で、第1年目は総括的な議論をして、 選択肢という形での整理を中間的に試みようと。第2年目には、それの上に立って、さ らに広い意見を聞きながら審議会としての意見の取りまとめを行おうと、こういうとこ ろから出発したところが大変印象的だったわけで、中間段階で幾つかの選択肢を示すこ と、そして、それによって国民的な議論を呼ぶことについては、私どもも基本的に賛成 でございました。  ただ、齟齬と申しましたのは、それは審議会の責任においてなされるものというふう に、私どもはその段階で了解し、そのままの観念でつい先だってまで来たところでござ います。これは私などの認識自体がぼけていたというところの御指摘は甘んじて受けま すが、正直言いますと、12月1日の日本経済新聞の一面の記事を見るまで、そもそも 「選択肢」というものが、「選択肢」という言葉は繰り返し語られてまいりましたが、 どういうイメージ、どういう内容のものかも全く承知をしておりませんでした。  他方、審議会では、先ほど合意をみたような論点の整理を、いわば綿密な議論を含め て取りまとめてきたところで、本来選択肢というものが国民に示されるとしたならば、 あの論点整理の上に立って、それをさらにかみ砕いた上で、大まかな基本的な方向とし て幾つかの方向が考えられるが、さらにそれに数字をはめてみれば、こういう試算が出 ると、こういう順序で示されるのが筋なのではないだろうか。  今回、そういった中間段階がなく、いきなり数字で出された。しかも、これが計算例 とか試算例とかというものではなくて、「21世紀の年金を選択する」と言って、「選択 肢」という形で示されることに対しては、私どもの組織なりに大変強い違和感が高まっ ているところでございます。「選択肢」というのはその中から選べということを通常は 意味する日本語であろうかというふうに思います。したがって、こういう形での発表に 至った経緯も含めて、私どもの認識がいささか正確さを欠いていたかもしれない点の御 批判は甘んじて受けますけれども、今日の段階でこういう形で公表されることについて 大変同意できないということを申し上げておきたいと思います。  内容について幾つか伺いたい点も、実は内容だけ取り出せばあるのですが、きょうは それはあきらめるつもりでおります。 ○ 会長  今のC委員の御意見について、事務局から何か御発言ありますか。 ○事務局  それでは、私からこの選択肢を厚生省の責任で出すに至った経緯について御説明申し 上げたいと思います。  確かに今おっしゃられましたように、この審議会が始まった早い段階で、論点整理と 選択肢の関係というものの位置づけがあいまいでございまして、この選択肢も年金審で お願いすると、そういう趣旨のお話を事務局からしたということがございまして、それ は非常に申しわけなかったと思います。その後、私どもとして、この選択肢を出す場合 には具体的な数字がないと、いくら選択肢をお示ししても議論が深まらないだろうと。 選択肢を出すということは、これは国民的な議論をやっていただくと、そういう中で将 来の年金について、国民1人1人よく考えていただいて、理解・納得していただくと。 国民的な合意形成が不可欠だろうと、こういうことで選択肢というものを考えたわけで す。  そういうことで、その後、この選択肢の議論をやっていく段階で、これまで年金の保 険者として企画・立案を一貫してやってきまして、いろんなデータもそろっている。あ るいはそういう人もいるということで、厚生省以外にこういったものを出すのも不可能 に近いのではないかということで、これは厚生省の責任で出そうとこういう考え方に 徐々になったわけでございまして、そういった問題につきましては、この年金審の場で も、私から厚生省の責任で、数字入りの選択肢をお出ししますということを何回か申し 上げたかと思います。  そういうことで選択肢を出すに至った趣旨、背景、目的は今申し上げたとおりでござ いますけれども、私どもとしましては、この選択肢についても、年金審を初めいろんな ところで御議論をお願いしたいと思っております。何しろ前回の制度改正につきまして も、これも前回の経緯を申し上げますと、有識者調査、こういったものを踏まえまして 最終の厚生年金の保険料は標準報酬でみますと30%が限界ではないかと、これが多数意 見であったわけで、これに基づきまして、その範囲内におさまるように給付を見直した と、こういう経緯がございます。  年金制度は言うまでもないことですが、長期的に給付と負担のバランスをいかに図っ ていくか、これが基本でございますし、そこのところの基本哲学といいますか、考え方 が整理されてないと個別事項について中身に入った議論はなかなか難しいわけでござい ます。  したがいまして、この選択肢につきまして、先ほどこの中から選べと、こういう御発 言もあったわけでございますけれども、私どもとしては、この中から選んでくださいと いうことで1人1人上から押しつけるような形で、踏み絵を踏ませるというような、そ んなことを考えているわけではございませんで、これを素材にして御議論をお願いした いと。それで次期制度改正についての基本的な考え方を取りまとめていただきたい。基 本的な考え方について大方のコンセンサスがないと、これは言うまでもないことですが 個々の問題に入るわけにはいかないわけですから、まず給付と負担の大枠についてぜひ 御議論を深めていただきたいというのが私どものお願いでございます。 ○会長  この点で私の理解を申し上げますと、「選択肢」という言葉は必ずしも適切でないと 考えます。A,B,C,D,E,5通りの中で、どれか1つを選べ、さあさあ、と事務 局が審議会に迫っているという、そういう「選択肢」とは思いません。議論の目安を数 字であらわすことが必要であり、便利でもあろう。そういう説明なり理解のための計算 例である。数字の世界の話として、数字を入れたモデル計算の例を5つ出してお目にか けた、という感じで受け取っています。 ○C委員  私は決して事務局の皆さんがこの中から選べというふうに審議会に対して突きつけて いるというふうに受け取っているわけではありません。この点はぜひ誤解のないように お願いします。  ただ「選択肢」という日本語は、通常、例えば大学の入学試験などの場合もそうであ りますが、次の5つの中からどれかを選べと。これはアンケート調査なども同様であり まして、そういうものを「選択肢」と普通は日本語では表現するのではあるまいかと。 したがって、この内容とその意図に照らして、このタイトルがまずインパクトはもちろ ん大変強うございますが、非常に不適切だというふうに考えます。  そういうインパクトを持ったものがこの時点において、我が審議会の先ほどまでの論 点整理の議論とはかなりギャップのある形で社会的に公表されることの影響いかんとい うことは、厚生省の皆さんがどういうふうに意図されたかということとは、これは別な 意味を持つわけで、12月1日の日本経済新聞がそうであるように、その中のどれが一番 いいと思うかと。これはこの間、ジャーナリズムからの取材を受けた経験から言います と、一様にそういう聞き方であります。恐らくあすの新聞の本体記事の後には、各方面 の人間に対して、そういうふうなインタビューをやったやつが並ぶのでございましょう そのこと自体が、今後の国民的な議論ということを考えたときに、議論の枠組みに対し て極めて制約的に働き、そのことの制約というのは、我が審議会も自由ではあり得ない という意味で、間接的には当審議会の議論もまた制約を被ってくることになるのではな いか。それは本当の意味での国民的な合意形成とは別な、むしろ逆な方向づけというこ とになる危険性について、我々は大変強く危惧をしている。そういう立場から、こうい う形での公表は決してふさわしくないだろうと、こういう考えを持っているということ でございますので、内容がどうとか、それに対して厚生省の皆さんがどういう意図でこ れを用意されたかということについての認識だとか、そういうところで申し上げている のではございません。 ○M委員  先ほどからC委員がおっしゃっていることは、基調は、私も全く同感であります。つ け加えて申し上げますと、やや選択肢を出すタイミングが、拙速ではなかったのかなと いうことをあえて申し上げたいと思います。というのは、どういう前提要件で選択肢を つくるかということは少なくとも審議会の場に諮られた方がよかったのではないか、そ れが1つ。  「5つの選択肢」でなければいけなかったかどうかという選択肢の数の問題も含めま して、審議会に一度諮ってからでも決して遅くなかったのではないかということを申し 上げたい。  それから、前回改正のとき若干関係した立場で申し上げますと、マスコミも含めて厚 生省サイドで、情報管理の問題をもう少し慎重にいろいろ対応された方がいいのではな いかと思います。また、逆に言えば、たくみにマスコミを通じて世論操作というのか、 世論誘導されているというふうにもとれなくはないわけです。大変うまくやられている なと私も一面思いつつも、やっぱり今C委員がおっしゃったように、年金だけにかかわ らず、大変いろんなものがある種の混乱だとか閉塞状態にある中でひとつの選択を迫る ということでありますから、その部分はより慎重でなければいけないのではないかとい うことです。そういう面での情報管理というものに懸念を持っているということを申し 上げておきます。 ○J委員  今のお二人の委員の先生方の御意見、私もわかることはわかるのですけれども、確か に「選択肢」という名前のつけ方、出すタイミング、出し方については、そういった御 意見もわからないではないのですが、ただ、今までの議論を深めていくためには、ある 程度、こうした場合にはこうなるという試算といいますか、数字がないと議論がこれか ら深まっていかないのではないかというふうに私自身は思っておりまして、そろそろそ ういう試算を出して、それを見ながら議論を深めていく時期ではないかなというふうに は私は思っておりましたので、それほど違和感はないのですが、今、お二人の御意見を 伺っていますと、今の時期にこういう形で公表するのは問題だという御意見なんですけ れども、どうなんでしょうか。  繰り返しになりますが、名前とかについて問題があるにしても、やはりこういったも のを1つの試算として受けとめて、審議会として自主的にこれから議論を深めていくと いうようなことではいけないのではないでしょうか。私はそういうふうに受け取らせて いただきました。 ○N委員  今まで論点整理をずっとやってきていろんな問題が出てきているわけですが、この選 択肢はただ単に保険料を何%取ったら幾らの負担になる、それだけで数字が出てしまっ ているわけですね。そうしますと、やっぱり第3号被保険者をどうするかとか、支給開 始年齢をどうするかということによってもこの数字は変わってくるのではないかと思う のですが、ただ、単に何%にしたら支出や総額はこうなりますよということだけが先走 ったのでは、何のために論点整理をしていたのかわからないような気がいたしますので 私もやっぱり選択肢というのはうまくないのではないかなというふうに個人的には思い ます。 ○O委員  私も12月1日の新聞を見たときには非常にびっくりしたひとりでございまして、年金 審議会の中で、果たしてこういう具体的な議論があったかなということで、大変やる気 をなくしたということでございます。  今、御説明を聞きまして、特に記者会見をしたわけでも何でもないというように思い ますが、趣旨からしますと、恐らくこれからの議論において、これをこう動かせば、こ ういう影響が出ると、ユニット的な意味での、あくまで試算、こういう道具については こういう影響が出るということなんだろうというふうに思います。  それからすると、やっぱり題名のつけ方の「年金改革・5つの選択肢」、「21世紀の 年金を選択する」ということで出すことについては相当中身のギャップと、きょう最終 的に行った論点整理をこれから年明け以降になるのでしょうか、この審議会でどういう 角度で、どういうスケジューリングでどうやっていくのかということと、これとどう組 み合わせて理解したらいいのかについて少し疑問を感じます。  3つ目に、12月1日の日経新聞の新聞報道でも、結局最大の見直しは、「給付月額を 最大9万円減」もというようなことで、大きな見出しでやりますと、たまたまこれは給 付と負担の関係がこういう関係にありますよということだけであって、これから日本の 年金をこうするという5つの選択肢なりシナリオを審議会なり我々が相当議論した中で 出したものとは全く違う、極めて技術論的な性格のものということだとしても、やはり 題名のつけ方、打ち出し方について、相当ギャップがあるし、また、それを新聞で読ん だ一般の国民層は相当誤解を受けないかなと。それから、年金審議会として何をやって いるのかなというふうに、我々にも返ってこないかなという心配を私自身は少しします ○事務局  いろいろな御迷惑をおかけしたという点につきましては反省しておりますけれども、 あと2〜3説明させていただきたいわけです。タイミングにつきましては、むしろ年金 審議会で議論が一巡いたしまして、論点整理がまとまる、こういう機会こそ厚生省とし て選択肢をお示しする一番いい機会ではないか。つまり一巡目が終わりまして、これか ら具体的に中身を詰めていく。そのときに具体的な数字といいますか、そういった素材 がありますとより議論を深めていただけるのではないか。これが一番タイミングとして はいいのではないかと思ったわけです。  そういうことで、この論点整理は年金審でおまとめいただく。選択肢は厚生省の責任 で出させていただくわけですけれども、最終的な目標は同じなわけですから、こういっ た一巡目が終わって、論点整理がまとまった時点でお示しするのがこれからの審議をよ り深めていくためにお役に立つのではないか、こういうことを考えたわけでございます  それから、もう一つ日経の記事につきましては、少し釈明させていただきますと、一 切我が方としてはデータも出していませんし、我々もこれは非常に漏れたら大変だとい うことで、ものすごく注意したわけでして、したがいまして、日経の記事を読んでいた だければ、私どもの選択肢とは随分違ったもので、向こうとしても正確な情報はつかん でなかった、こういうことではないかと、私どもは思っております。  それから、もう一つ、3号の問題とかいろいろございます。これはこの選択肢にも書 いてありますように、女性の年金をどうするか、3号をどうするか、少子化対策をどう するかとかいっぱいあるわけでございますけれども、こういった問題については、今後 とも議論を深めていかなければいけないのは当然です。ただ、将来の年金をどうするか これから20年、30年後、給付と負担をどうやってバランスをとっていくかということが 年金にとっては一番大事なことではないかということで、そういう長期的な給付と負担 のバランス、そういう観点からこの選択肢というものを考えてみたわけでして、今、御 指摘のあったような問題は、これはこれで非常に重要な問題ですから、引き続き御審議 をお願いしたいと思うわけです。 ○D委員  私もいささかびっくりしたのですが、率直に言って、「選択肢」というのは、たしか 私が一番最初に使ったような気がするんだけれども、私がイメージしていたのはこうい う形というよりも、ある意味でマトリックスみたいな形になる。そのマトリックスの中 から幾つかをある程度年金審で絞り込んで、その上で国民にまたさらに絞り込んでもら う。それで次の議論に発展すると、こういうふうなイメージを描いていたものですから これは厚生省の責任において、これを出されたので、年金審議会の責任ということでは ないのですが、「21世紀の年金を選択する年金改革・5つの選択肢」とこうなっている んですが、21世紀の年金を選択する負担と給付に関する5つの選択肢」ということなら 何の数字の根拠もなしに出すというわけにいきませんから、それは非常に結構ですし、 かつ、また負担と給付の問題がある意味で年金の問題のウエートとして非常に大きなウ エートを持つという意味で、こういうものを出されたという意味は、私も今後の審議を 進める上で役に立つし、大事なことだというのは当然と思うんです。  ただ、論点整理を終わる前に、マスコミから教えていただくような形で内容を知ると いうのは、極めて不愉快だというのは率直なところだろうというふうに思います。  それから、もう一つは、当然に負担と給付という選択肢もありますが、ほかの選択肢 も当然出てくるはずなんですね。今、事務局で言われましたけれども、もちろん負担と 給付の問題が突き詰めれば一番大きな問題で、そこにいろんな問題が包含されるし、数 字化しないと年金の議論は進まないというのはよくわかりますが、論点整理の中で議論 した問題については、やっぱりある程度数字的に明らかにしながら議論していかなけれ ばいかんということもこれはまた事実ですね。  これはある前提を置かなけれはいけない非常に難しい作業になることも事実なので、 簡単にはいかないと思いますが、そういう性格を持って出されたものだというふうに考 えなければ、今の段階では仕方がないのかなと、こういう感じで受け取っております。  それから、もう一つは、最後の13ページの表の並べ方でよくわからないところが1つ あるのですが、「スライド制」のところで、数字が逆なのではないかという気がせんで もないんですね。例えば、上から給付水準の問題はだんだん下に行くにつれて、要する に保険料率は下がりますよと。どれも1%保険料率が下がりますよ、2%下がりますよ という話になっているんですが、スライド制の場合は、今後予想される、例えば経済成 長率が鈍化する、したがって賃金水準も鈍化すると、そういった場合のケースを考えて いくとすると、こういうふうに上から見ていっていいのかなという感じがちょっとせん でもない。それは技術的な問題ですから、どっちでも構いませんがそういう感じで受け 取らせていただいていいのかなというふうに思います。 ○H委員  この選択肢に関するさまざまな数字ですけれども、資料としては大変に有益なものだ と思います。その上で、やはりいろんな方が述べられましたように、このタイトルとい うのがかなり看板に偽りがあるというふうに私も思います。それで、「給与と負担のバ ランスに関する」とついていれば、それはそれに関するということでまだ理解できます けれども、このタイトルですと、年金改革というシステム全体についての選択肢という ふうにだれでも受けとめると思うんです。ですから、それが最大の問題だと思います。  それで、現在誤解を少しでも少なくするために何かできないかというふうに思うわけ ですね。1つは、これは審議会は関係なく厚生省の出した独自の案だということが明確 になるということが1つ。もう一つ、この選択肢と称するものは、給与と負担のバラン スに関するものだというふうに特定すると。それが入るとかなり誤解の部分は少なくな るのではないかと思うんです。  ただ、マスコミ報道についてのやり方については、これからもっと改善の余地はある と思いますけれども、少なくともここまで来たということを前提にしますと、少しでも 誤解がないようにしていただく努力をしていただけないものかと思います。 ○L委員  私は12月1日はたしかフランスにおりましたので、月曜日に帰ってくるまで全然知ら なくて、帰ってきてから新聞の山を整理してたら出てきて、非常に驚いたんですけれど も、こういう議論は中身の問題がまず何といっても非常に大事ですから、そういう点で 専門的な知識を最も持っている事務局がこういう時点で、重要な論点を整理してくれた ことは、今まで各委員がおっしゃったように、私も非常に議論を整理してくれたという 今後の議論を進める上で非常に重要なステップになったと思うんですね。  書いてあることの中から、いずれにしても、どこかの選択をしなければいかんので、 我々にとっての1つの選択肢の参考になるという意味では大変重要なものですから、私 はそれは大いに評価します。  ただ、こういう審議会の議論は、内容もさることながら、進め方の公正さということ も非常に大事なので、特に厚生年金というのは、給与所得者にかかわる非常に重要な問 題ですから、労使の代表をびっくりさせるような進め方はもう少し慎重にやっていただ かないと、審議会としては非常に問題が残るのではないかという気がします。 ○E委員  私もいろんな先生がおっしゃることにはごもっともな点が非常に多いと思うんですけ ど、私は性格がぼんやりしているものですから、余り深刻には受け取らずに、人口推計 が大いに狂ったのをベースにし直すとどうなるかということをおやりになったのが一番 の功績というか、価値のあるポイントで、常々私が大いに困っておるところをさらに困 らせられると大変なことになったなと思いますし、どうも低い方の推計値を使うという 話まで出ておりまして、これはまたえらいことになるのではないかなと、大変陰気な気 持ちになりますが、私自身の年金額は減らないというふうになっていまして、何かあり がたいような気もいたしまして、いろいろ御意見があることはよくわかります。  私も実は12月1日の日経のことを事務局の人に聞いたら、いや、あれは全く向こうが 勝手に書いたものだとおっしゃった。私もそれは本当だろうと思います。ということは ほかの新聞は書いてないわけですから、いろいろ御意見の点は大変ごもっともですけど 余りそれを言ってもしようがない。どうせ、こういうことで、議論をしなければならな いので、あらかじめこういう資料をお示しいただいたということで、この「選択肢」と いう言葉はよくないですから、試算というふうなものだと、私は思いまして、いろんな 考え方でやってみるとこういうことになる、非常に深刻な状況になるということを示し ていただいたということと、私が一番関心を持っておりましたのは、民営化の方にいき はせんかと。 私は民営化というのに大反対でありまして、これはいろいろと十分に意見が詰まらなか ったと思いますが、積立方式か賦課方式かというふうな議論とか、ああいった点はもっ とこの審議会ではっきりと言っておくべきポイントだったので、そこまでは決してまだ 言っておられませんから、私は計算上の試算であるというふうに受け取ってよろしいの ではないか、こういう緩い考え方で、大変な御苦労を事務局はおやりになったことは感 謝したいと、こういうふうに感じます。 ○G委員  私はこの試算は、論点整理のある論点について、ある部分は答えている。それぞれに 対応している部分がかなりありまして、厚生省は、この選択肢のところのどこを選んだ 結果、それが要するに論点のどこに対応して、それを選んだから、こうなっているとい う部分がある程度あるわけですね。そこのところは対応関係がはっきりしていれば、論 点との関係がどうなっているかもある程度はわかるはずで、そこのところは、今後、年 金審議会の委員が厚生省に、これは一体どういうことなんだということを、問うていけ ばいいと思います。ですから、そういう点で、論点の整理と関係はかなりあるのですが そこのところの関係をもう少しはっきりさせて、ここはこういうことで、ある論点をと れば、こうなっていますという部分がかなりあって、それで、しかも選択肢で、数字が ある程度ついているという感じのものであります。  それから、ここの議論で抜けていることは、経済全体がどうなるかとか、そういう話 は全然なくて、これは非常に難しいのですけれども、だけど、その議論は必ずしなくて はいかんので、そういう話は、残された部分は相当多いですし、私はそういう印象を持 っています。確かに手続的には問題があるというか、新聞の場合は手続的にという話は 通用しませんので、いつもどこかに勝手に出ちゃうという可能性はありますので、それ はある意味でやむを得ないところもあると思いますが、そういう感想を持ちました。 ○I委員  確かに「5つの選択肢」という表紙はちょっとまずかったと思うんです。ただ、従来 ですと、この段階で論点整理だけがあって、それをもとにして議論を詰めていくわけな んですが、数字が全然なかったわけなんですね。それが従来からかなり問題があった点 だと思っていたのが、今回この段階で論点整理と同時に、全体の枠組みを数字でお出し になったと。それを横に置いて、今後各論を詰めていくわけなんですけれども、恐らく 今後作業を詰めていくについて、厚生省としては、こういう数字をお出しになった以上 は、それぞれの項目について、これをこうすれば、一体どの程度の数字になるのかとい うようなことはかなり注文に応じてお出しになる。その覚悟の上でこういう数字を出し ておられるのだと思いますから、私は初めての経験ですので、いろいろ行き違いもある し、またマスコミもいろいろ書くだろうというような気がするんですけれども、審議会 としては、これはこれとして受けとめて、ひとつ今後の議論は各論の論点をさらに詰め ながら、しかも数字的な問題も聞いていくということで進めていったらいいのではない か。 そうすれば、うちの審議も大体外国の審議会の進め方と似たようになっていくのではな いかなと、こういう気がいたしております。 つまり、日本の年金改正の進め方もアメリカの1983年のレベルにようやく達したかと思 っています。 ○ P委員  いつも厚生省がおやりになることだから、余り言ってもしようがないだろうと思いま すが、国民の側から見ますと、やはり「給付と負担」というのは一番大事な部分で、そ こをみんな見るわけですから、それを試算でやらないで選択肢で出すということは、相 当年金審議会が深くこれを議論したというふうに見られるし、この選択肢の中身につい ても、この審議会で随分議論があって、こういうものが出てくるのであって、突然これ が出てくるというのは、やはりある程度審議会を無視したということになるのではなか ろうかという気がいたします。 ○会長  今、I委員がおっしゃったとおり、厚生省年金局で発表の書類の表題ですが、「21世 紀の年金を選択する年金改革・5つの選択肢」ではなく、「年金改革・負担と給付・5 つの試算例」という表題でしたら、どなたもそうお叱りにならなかったと思います。ま た、メディアの人たちに対しては、もう少し親切に行き届いて説明をした方がいいので はないか、というご意見も大分ございました。今後気をつけていただいて、審議会のみ なさまと、事務局としての年金局との間でなるべく誤解のないようお願いします。事務 局としては、将来有識者調査もございますし、いろいろ計算例をお目にかけて、国民の 皆様にだんだんわかってもらいたい、という趣旨だと思います。  向こうはそれが職業ですから、新聞記者がスクープして書いてしまうことは避けられ ません。行き届いて、漏れなく、そつなく書いてくれるとは限らないことが、今後もい ろいろ起こりうると思います。その辺につきましては、ご了承をお願いします。  ほかに御発言ございませんでしたら、本日の審議を終わりにしたいと存じますが、よ ろしゅうございましょうか。  今後の日程につきまして、事務局から御確認をお願いします。 ○事務局  恐縮でございますが、先ほど御整理をいただきました「論点整理」、モデル年金額の 計算のところを含めまして修文をいたしましたので、お手元に配らせていただきたいと 思います。  次回の年金審につきまして、来年1月9日、時間を1時間おくらせまして、3時から この会場でお願いをいたしたいと思います。また、既に御案内をさせていただいており ますが、1月20日、21日と、大阪におきます審議会の開催をお願いいたしておりまして あわせてよろしくお願いを申し上げたいと思います。以上でございます。 ○ 会長  事務局から御説明がありましたとおり、今年の審議会はこれで終わりで、来年は1月 9日にお集まりをお願いします。長い時間御苦労さまでございました。                                年金局 企画課                                須田(3316)