97/12/02 第9回血液行政の在り方に関する懇談会議事録 第9回血液行政の在り方に関する懇談会議事録   1.日  時  平成9年12月2日(火)10時00分〜12時00分   2.場  所  厚生省共用第23会議室   3.出席者     (委  員)            井形 昭弘 行天良雄  草刈 隆  清水鳩子            菅谷 忍  高久史麿  中谷 瑾子 秀嶋 宏            藤田 仁  前田義章 三星 勲  湯浅晋治            渡辺 俊介     (専門委員)            小室勝利  中井一士  布施 晃  宮島 剛     (厚生省)            医薬安全局長            企画課長 安全対策課長 審査管理課長            医薬品副作用被害対策室長 他   4.議事内容           (1)開  会           (2)議  事              1) 血液行政の在り方について(報告書案の検討)              2) その他           (3)閉  会 〇事務局  委員の皆様には本日はご多忙のところご出席いただきまして、どうもありがとうござ います。ただいまから第9回血液行政の在り方に関する懇談会を開催させていただきま す。本日は神尾委員、坂巻委員、曽野委員、森島委員、及び宮村専門委員がご都合によ りご欠席ということでございます。 〇高久座長  それでは今から始めさせていただきますが、最初に事務局の方から資料の確認をよろ しくお願いします。 〇事務局  それでは本日の資料を確認させていただきます。お手元に資料を配付してございま す。  まず、資料は「血液行政の在り方に関する懇談会報告書(案)」でございまして、前回 のご議論を踏まえ修正したものでございます。これにつきましては後ほどご説明させて いただきます。  それから参考資料1、これは大阪ヘモフィリア友の会会長屋鋪恭一氏はじめ各地のヘ モフィリア友の会から連名でご提出いただきました「血液及び血液製剤等の取扱いに関 する要望書」でございます。読み上げさせていただきます。  私達血友病患者(類縁疾患を含む)にとって、根治療法のない現在においては、血液凝 固因子製剤は治療薬としてなくてはならないものです。しかるに、血液凝固因子製剤 は、製造技術の革新を重ねてきたとはいえ、HIV、肝炎ウイルス、HTLVと新種の ウイルスに対し有効な対策が取られなかったために、血友病患者にウイルス感染が広が りました。そのために、多数の血友病患者が亡くなり、また現在も闘病生活を送ってい ます。そして今回HIV感染の悲惨な状況が改善されないうちに、クロイツフェルト・ ヤコブ病の病原因子であるプリオンについて、血液製剤に因る人への感染の可能性が完 全には否定できないということで一部の血液製剤が回収され、血友病患者は戦々恐々と しています。また、プリオン同様まだ問題になってはいませんが、パルボウイルス混入 も以前から指摘されてきたにもかかわらず、今もって血液製剤からそれを取り除く技術 は開発されておりません。要するに、これらの事実は、血液製剤が人の血液を原料とす る限り、未知の無数の危険性を否定し得ないという事を証明しています。また私達は、 HIV感染薬害から売買血の危険性を身をもって知ると同時に、血液製剤に因るウイル ス感染、事故、副作用等があったときの責任の所在があいまいである事を知らされまし た。  本来、血液は人の善意から集められるべき貴重な資源であり、利潤の対象とはかけ離 れた存在であるべきです。したがって、その価値の重大性を考えると必要な血液は自国 で賄い、国がその質・量ともに適正な使用を管理すべきでありますし、安全性において も国が自国の血液に責任を持って、血液及び血液製剤をユーザーに供給すべきです。是 非ともわが国においても、血液事業の根幹となる「血液事業法」を制定し、法を根拠と して、採血・血液製剤の技術開発・製造・品質管理、そして供給を一貫したシステムの 中に組み込んで、国が責任を持って管理して頂きたいと思います。  以上に述べた観点から、私達血友病患者会は、ユーザーの立場から、血液や血液製剤 の安全性を確保するには、国の責任を明確にした「血液事業法」の制定が必要であると 確信しております。その上で、法律の中に以下に述べる我々の要望を取り入れて頂きた く存じます。  血液事業については、既に各分野の専門の諸先生方からなる貴懇談会において骨子を ご検討のことと存じますが、私達ユーザーの意見を考慮の上、さらなるご検討を重ねて 頂きたいと存じます。 要 望 事 項 1.血液製剤の供給を一元化することにより、使用の適正化を図ること 2.血液凝固因子製剤をはじめとする血液製剤の原料血漿の完全国産化並びに献血に拠 る国内自給体制の確立 3.とりわけ、早急なインヒビター治療薬の国内製造及び供給体制実現  具体的には、海外企業のパテント購入により、国内での製造及び供給体制の確立 4.血液及び血液製剤に因る事故、副作用、病原因子への感染に対する補償制度の確立 5.血液製剤を必要とする患者・患者会及び現場医師への血液製剤に関する副作用情報 及び危険情報の速やかな公開を促すシステムの確立  上記情報に関する医師の説明義務の指導並びに周知徹底 6.血液事業を運営するための委員会を設け、委員会のメンバーに血友病患者会の代表 を加えること 7.血液製剤の代替品である遺伝子組換え型製剤(リコンビナント)について、上記1. 〜6.に掲げた血液由来の製剤に準ずる取扱い並びに体制の構築 8.遺伝子組換え型製剤や血液由来の凝固因子製剤に安定剤として添加されているアル ブミン及び製造工程で使用されるアルブミンの安全性の確認と追求  それから参考資料2でございます。これは東京HIV訴訟原告団及び東京HIV訴訟 原告弁護団団長の渡辺良夫氏からご提出いただきました、懇談会報告書(案)に対するご 意見と、去る11月11日に開催されました「わが国の血液事業の在り方」に関するシ ンポジウムの議事録でございます。読み上げさせていただきます。 1、懇談会報告書(案)について  貴懇談会のおかれましては、本年10月22日付で懇談会報告書(案)を発表されまし たが、同案は、抽象的には血液事業の新たな展開をうたいながら、具体的には現状の制 度追認にとどまるものと言わざるを得ません。さらには、輸入売血由来の血液製剤によ り約2000人の血友病患者がHIV感染被害を受けたという薬害エイズ被害の反省の もとで、平成元年に出された新血液事業推進検討委員会の第一次答申以来、厚生省が国 会においても確認していた「供給一元化」を、今回の同案では「供給の独占にともない 価格が高値で固定する恐れがある」などと、あたかも血液製剤が一般商品化され大量消 費されているわが国の現状を是認するかのような根拠をあげて、供給一元化を否定して いる等、むしろ同案は今後のわが国の血液事業の方向性を歪める恐れすらあるものと思 われます。よって、われわれは懇談会委員各位が同案について再考される事を切に希望 致します。 2、シンポジウム議事録について  つきましては、去る11月11日に開催致しました「わが国の血液事業の在り方」に 関するシンポジウム議事録を提出させて頂きます。同シンポジウムでは、わが国の血液 事業における日本赤十字社の役割の見直し、供給一元化、安全性・透明性確保のための 監視システムの必要性等を含む議論をしておりますので、宜しくご検討の程、御願い申 し上げます。  この後に全43ページにわたるシンポジウムの議事録が添付されております。あとこ のほかお手元には、前回の「第8回血液行政の在り方に関する懇談会議事録」がござい ます。これにつきましては既にインターネットに掲示してございます。資料については 以上でございます。 〇高久座長  どうもありがとうございました。今事務局から説明がありましたように、お手元に 「血液行政の在り方に関する懇談会報告書(案)」が出されています。ご案内のとおりこ の懇談会の報告書に関しましては10月22日の第8回の懇談会の際に、作業部会の案 に基づいていろいろご検討いただいた点を付け加え、あるいは修正したのがこの報告書 (案)です。 本日はこの修正された報告書(案)に基づいて、時間の許す限りご検討を願いたいと思 いますのでよろしくお願いいたします。前回と同じように逐一ご検討を願うということ になると思います。資料の中で線を引いたところが直した点ですが、事務局の方で一応 直した点だけ説明をしていただきます。では「I はじめに」をお願いします。 〇事務局  座長から今お話がございましたように、下線を付した部分が今回、前回の部分から変 わったところでございます。  それではまず「I はじめに」のところでございます。2番目の・でございますが、 前回三星委員の方から、国内自給及びそのための献血推進運動の展開は並大抵のことで は達成できない、関係者の深い認識が必要であるというご指摘がございました。これを 受けまして下線のとおり、「国を初め血液事業に携わる者は、今後、高齢化の進展によ り血液製剤の使用を必要とする者が増加する一方、献血が可能な年齢層の人口が減少す ることを考慮すれば、これまでの対応のままでは国内自給の達成は極めて困難であると いう事実を深く認識し、国内自給の推進のために血液事業の新たな展開を図っていくべ きある。」と修文してございます。  それから次の・でございますが、三星委員の方から、1964年に閣議決定があって から34年間経過し、その後何回も検討会からの提言やWHOの決議等があったのに、 薬害エイズ問題が起きたことへの反省を明確化すべきであるというご指摘がございまし た。それを受けまして、「国を初め血液事業に携わる者はこの問題を真摯に受けとめ、 その反省の上に立って」と修文してございます。 〇高久座長  この「I はじめに」からやりましょうか。今回は前回の三星委員のご指摘を受けて このように直したわけですが、この「I はじめに」について何かご意見おありでしょ うか。三星委員、よろしいでしょうか。 〇三星委員  大変ありがとうございました。 〇高久座長  それでは次の「II 血液製剤の特性を踏まえて」というところで直した点について説 明してください。 〇事務局  では「II 血液製剤の特性を踏まえて」の部分の修正点をご説明いたします。まず最 初に「1 国内自給の推進」のところでございます。これは前回草刈委員の方から、献 血は善意のあらわれであって、また隣人愛、連帯意識のあらわれであるということを強 く表現すべきであるというご指摘がございました。それを受けまして最初の・のところ ですが、「国民の隣人愛から発する自発的意志に基づく善意の無償献血によるべきであ る」という形に修文してございます。  それから3番目の・でございますが、草刈委員の方から、国内献血による国内自給を 目指す理由は倫理的なものが第一であり、国内献血に由来する製剤の場合には、未知の ウイルス等による感染症が発生した場合に迅速な対応が取りやすいということは、献血 推進の主たる理由ではないということが明確になる表現をしてほしいというご指摘がご ざいました。そこでここのところは「なお、」という形で表現させていただいておりま す。  次の4番目の・でございますが、前田委員の方から、前回「原則として血液製剤を海 外からの輸入に頼らなくてもよいという方向を目指して」という言い方をしていたので ございますが、それは回りくどい表現であるというご指摘がございました。そこでこれ につきましては、「したがって…海外からの輸入に依存しなくても済むよう国内自給を 推進すべきである」という表現にしております。  それから「2 安全性確保」でございます。次のページの一番最後、上から4つ目 の・でございますが、「今後…遺伝子組換え製剤や人工血液の開発等を積極的に行い」 という形で前回書かれていたのでございますが、草刈委員の方から主体がはっきりしな いというご指摘がございました。そこの点につきましては、「今後、安全性を十分確認 しつつ遺伝子組換え製剤や人工血液の開発等が積極的に行われる必要があり、国もこれ を積極的に支援することにより」という形に改めてございます。  それから「3 適正使用」につきまして、前田委員の方から前回「第一選択薬」とい う形で書いてあったところについて、その「第一選択薬」という語感がよろしくないと いうご指摘がございました。そこで「第一選択の治療法」と改めてございます。  それから「4 有効利用」につきまして、草刈委員の方から前回、事業の最大限の効 率化、合理化を図る主体をちゃんと書く必要があるだろうというご指摘がございまし た。そこでここのところにつきましては、「日本赤十字社及び民間製造業者等は」とい うことで主語を明確化しております。  それから「5 透明性の確保」でございます。ここのところにつきましては、草刈委 員の方から懇談会の後にいただいたご意見でございますが、透明性を図るべきものは献 血血液だけではなくて、輸入製剤あるいは遺伝子組換え製剤などもございますので、国 内自給推進の観点をここで明らかにすべきであるだろうというご指摘をいただきまし た。これにつきましては、「血液製剤は国民の共有財産ともいうべき善意の献血血液を 原料とし、また、国内自給を推進する必要があることから」ということで明確化させて いただいております。 〇高久座長  どうもありがとうございました。この「II 血液製剤の特性を踏まえて」は2ページ と3ページ、一部4ページにわたって述べられておりますが、ここについて何かご意見 おありでしょうか。どうぞ、井形先生。 〇井形委員  「国内自給の推進」というのは、この報告書の骨子になると思うのです。それで私は 臓器移植のことにかかわっていましたが、あれも臓器摩擦というか、日本は自分のド ナーを出さずにオーガンばかり求めてくるということを批判されましてやっと今日があ るわけですが、この1行目の「倫理的な見地から」と書いてありますがもっと表現を、 みんながこの報告書を見てやはり献血した方がいいのだと、献血運動の推進にもなる し、使っているお医者さんもなぜ自給かということがわかりやすいような表現、大体書 かれてはいるのですが、「倫理的な見地から」という表現ではちょっと弱いような気が いたします。したがって、もっと倫理的な見地がどういうものかをもう一度ここに書い て強調する方がいいと思っております。 〇高久座長  具体的にはどう書けばよろしいのですか。 〇井形委員  先ほどからいろいろ修正されていますから、一つは前文にも書かれたようにエイズの 反省から生まれたものであると。それからこれが博愛から発する自発的意志に基づく善 意のものであって、血液製剤は普通の営利医薬品とは違うのだということや、あるい は…。 〇高久座長  それは書いてありますね。 〇井形委員  そのあたりをもうちょっとサマライズして、「倫理的な見地」という表現を変えてい ただきたいということです。 〇高久座長  何かうまい表現がありますかね。確かに何となく漠然とした表現で、倫理的という言 葉だけでは言い尽くされないような感じがするのですが、適切な表現があればぜひ入れ たいと思います。 〇井形委員  後でまたちょっと文書を作って提出いたします。 〇高久座長  ではよろしくお願いします。ほかにどなたか、どうぞ。 〇渡辺委員  この「2 安全性確保」の点に、もうちょっと何か付け加えた方がいいのではないか という気がする点がありますのでご報告いたします。ここに書いてある点については納 得できますが、一つは例えば薬害エイズのときの大きな問題点として挙げられたのが、 非加熱製剤の危険性が問題点になった後、いわゆるクリオへの転換、あるいは加熱製剤 の緊急輸入といったことが83年の時点でとれなかった。ああいうことによって危険な 非加熱製剤といったものを使い分けできなかったという重大な問題があったのです。  つまり従来ずっと使っていた非加熱が危険だとわかりながら代替の製剤というものを 使うすべがなかった。ああいう反省というか、あれがまた非常に被害を大きくした大き な原因だと認識しておりますので、そういった意味からいいますと、例えば今後とも未 知のウイルス、そういったものによって何が危険だかわからない部分があるのです。そ ういったときに何も代替がない、あるいは代替をするにもまた一々相当時間がかかって しまう。薬害エイズで2年以上もかかってしまうということが繰り返されてはならない と思うのです。  そういう意味では、ここにもリコンビナントのことも書いてはございますが、患者に とっての多様な選択といいましょうか、そういったものが得られるような状況というも の、これが安全性の確保につながると思いますので、そういう趣旨のことをこの「2  安全性確保」のところで入れておいていただかないと、ちょっと不十分だという気が私 はいたします。どのような表現にするかという問題は後にします。十分でない、足りな いところがありますが、要は多様な選択を直ちに行えるような体制でしょうか。そう いったことを要望します。 〇高久座長  どうもありがとうございました。どうぞ、清水委員。 〇清水委員  4ページの「5 透明性の確保」のところです。線を引いてございます「国内自給を 推進する必要があることから…審議の場を設け」ということが書いてあるので、これは このとおりで結構だと思うのですが、「消費者代表等」というところをやはり幅広く解 釈するという了解を取っていただきたいと思います。と申しますのは、献血者代表はあ るのですが患者の代表というのがないので、それを入れるのはなかなか文章上難しいか と思いますから、消費者代表の中には当然そういう人が入るということを前提にしてい ただきたいと思います。 〇高久座長  文章としてはどういう表現にすればよろしいですか。「幅広い消費者代表」とい う…。 〇清水委員  私はこれでよろしいと思うのですが、「等」というところの解釈には、やはりそうい う人も入るというふうに解釈をはっきりしておいていただければいいと思います。 〇高久座長  はい。ほかに何かご意見おありでしょうか。それではまたお伺いすることにして、 「III 血液事業の実施体制」ということで、これはかなり長くなりますので、途中 「2 地方公共団体」のところまでで一回ご議論をしていただいて、その後3、4と やっていただきましょうか。ではよろしくお願いします。 〇事務局  それでは「III 血液事業の実施体制」をご説明させていただきます。まず「1  国」でございます。「(1)国内自給の推進」のところで、これは字句的な修正でござ います。前回「作成」となっていたのを「策定」と改めております。  それから「(2)安全性確保」、これも字句の修正でございまして前回、「規制を行 う」という書き方をしていたのですが、「規制措置を講ずる」という書き方に改めさせ ていただいております。  その次のページにわたるところでございますが、前回小室委員の方から、安全技術の 評価を恒常的に行うため、国のしかるべき制度として位置づけるべきであるというご指 摘がございました。それからまた草刈委員の方からも、安全性追求の目標を策定する場 というのが必要であるというご指摘がございました。そういったご指摘を踏まえまして ここにつきましては、「国は、日本赤十字社及び民間製造業者等が血液製剤の安全性を 確保するために講じている技術を定期的に評価する体制を整備する等」という形に改め てございます。  それから「(3)適正使用」でございます。前回前田委員の方から、国は使用基準の見 直しを行うのみならず、それが定着しているか、実効が上がっているかについての評価 を行う必要があるというご指摘がございました。その意見を踏まえまして、「国は、医 療機関における適正使用の促進を図るため、使用基準の見直しとその定着、推進及び評 価を行うべきである。」と改めてございます。  それからちょっと飛びまして「(6)指導監督」でございます。前回ここのところに 「採血及び供血あつせん業取締法の適正化という観点」と書かれていたのですが、湯浅 委員の方から採血業の取締法につきましては、これはもう今後なくすような法律である ので、それをここで肯定的に引用することは不適切であるというご指摘をいただきまし た。そこでここにつきましては、「国は、これまでの薬事法等に基づく指導監督権限の 行使にとどまらずに」という形で変えております。  それから次の・で国営化の話でございますが、前回藤田委員から、国営化は適切では ないとあるが、国の責任が何かが明確ではなく民間への責任転嫁に見えるというご指摘 がございました。また坂巻委員の方から国営化イコール非能率で、安価で有益な血液製 剤の提供が行われないと決めつけるのではなくて、国営化の考え方の利点と問題点を記 して説明することが必要であるというご指摘がございました。  それと後半の方にかかりますが、前田委員の方から、前回「行政関与の仕方の工夫」 ということで書いてあったのですが、そこのところはちょっと意味が不明瞭であるとい うご指摘がございましたので、この・ついては書き直してございます。読み上げさせて いただきます。 ・ 血液事業については、その公共性を理由に国営化し、事業の立案から運営まで国 が一貫して担うことにより、事業責任を果たすのが適当であるとの考え方もあるが、 国営化には、事業の効率化を図り、できるだけ良質で安全な製品を消費者に安価に提 供していこうとする誘因が働きにくく、また、技術開発の停滞を招くおそれがある。 血液事業は有限かつ貴重な献血血液を介して成り立っており、事業の最大限の効率 化、合理化が求められることに加え、より安全な製剤の開発等常に技術革新が必要で あることから、日本赤十字社や民間製造業者等が現実に取り組んできている事業活動 を国営に切り替えようとすることは、不適切である。   むしろ、事業主体の役割と責務を明確にした上で、組織運営の自主性を高めると ともに、血液事業の特殊性を踏まえ、事業主体の活動に対する必要な規制や事業の評 価、情報公開の推進等の措置を講ずることにより国民が信頼できる事業体制を確立し ていくべきである。  それから「2 地方公共団体」のところでございます。2番目の・につきまして、こ こにつきましては前回「地域間で献血率に大きな差が生じている」という書き方をして いたのでございますが、前田委員から献血率による評価よりも献血の量と質の評価が重 要であるというご指摘がございました。これを踏まえまして、「地方公共団体は、過去 の献血実績をみると、地域間でかなりの差が生じている実態を踏まえ」と修文してござ います。以上でございます。 〇高久座長  どうもありがとうございました。今のIIIの1の(1)と2について下線を引いたとこ ろを説明していただきましたが、これについて何かご意見おありでしょうか。よろしい でしょうか。どうぞ。 〇菅谷委員  前回なかなかよくできていると私は思ったことを申し上げたのですが、もう一遍読み 直してみるといろいろ目につくところが出てまいります。  一つはいろいろなことを挙げている中で、同じことの繰り返しが多々見られるという こと。この辺はもう少し整理できないかどうかということがあると思います。項目別に 並べているので当然同じことを述べられるということはわかりますが、もう少し何か すっきりした形にならないかというのが一つの印象であります。  ここのところにある「適正使用」、これもしょっちゅう出てまいります。それから 「使用基準の見直し」ということもたくさん出てまいります。現在いかにも適正使用が できていないと言わんばかりの内容にもなっているわけで、確かに適正使用ということ は非常に大事なことであるし、当然それは実行されなければならない問題であります が、そこはもう少し表現の仕方があるのではないか。それから「使用基準の見直し」、 これも今の使用基準が本当に悪いのかどうか、そういう検討も何もなされていない中 で、ただ見直し見直しということはいかがなものかという感じを受けるわけでありま す。少なくとも必要に応じて見直すということでなければならないのではないかと思う ので、その辺を考慮していただけたらと思います。 〇高久座長  どうもありがとうございました。ほかにどなたか。それでは次の6ページから8ペー ジ、「3 血液事業者」から「(4)血液製剤の供給」までについて説明していただけま すか。 〇事務局  「3 血液事業者」のところを説明させていただきます。「(1)献血」でございま す。まず最初の・につきまして前回、「昭和39年の閣議決定を踏まえ」という文を入れ ていたのでございますが、余りにも言及している箇所が多いという秀嶋委員のご指摘が ございましたので、ここでは削除しております。  それから2番目の・でございます。草刈委員の方から、献血といいますと主体は国民 であって関係各主体が協力して献血を推進しなければならないと、そういう姿勢を示す べきであるというご指摘がございました。また日赤が実施するというその背景について も示してほしいというご意見がございましたので、ここにつきましては、「献血の推進 については、国、地方公共団体、日本赤十字社等が協力して取り組むこととし、献血に 係る事業は、日本赤十字社のこれまでの取組に対する国民の信頼や、人道博愛を理念と する日本赤十字社の期待にかんがみれば、日本赤十字社が責任をもって実施することが 適切である。」という表現に改めてございます。  それから3番目の・でございます。これは草刈委員の方から、日本赤十字社が献血に 係る事業を実施するに当たっては、国、地方公共団体等との連携、協力が必要であると いうご指摘がございました。それを踏まえまして、「国、地方公共団体等と連携を図り ながら」という文言を入れてございます。  次に「(2)輸血用血液製剤の製造」でございます。ここのところにつきましても3番 目の・のところで前回、「昭和39年の閣議決定以来」と入れておりましたが、そこのと ころを取ってございます。  それから「(3)血漿分画製剤の製造」でございます。2番目の・で前回、「安価、安 全かつ優良な製剤の確保の観点」と言っていたのでございますが、藤田委員の方から安 価が果たしていいのか、安価と安全性は矛盾することがあるというご指摘がございまし た。それからまた安全な製剤という場合には、有効性の概念を含めて考えるべきである というご指摘がございましたので、「有効かつ安全な製剤」という言い方に改めてござ います。  それからまた草刈委員の方から後ほどございましたご意見ですが、日赤と民間製造業 者に共通するのは研究開発の部分であるというご指摘がございました。それを踏まえま して、「それぞれの責任の下で競ってその研究開発力を最大限に発揮し」と改めてござ います。  それから次のページの〔輸入の取り扱い〕のところでございます。ここのところにつ きましては前回、「今後、国内献血由来の血液製剤の増加を図っても、国内自給の観点 からその増加が医療機関の需要に十分結びつかないといった事態が生じるとすれば問題 であり」という表現を入れていたのでございますが、座長の方からこれについてなかな か意味がわかりにくいというご指摘がございました。それからまた藤田委員の方からも 文脈の流れとして、「患者の治療に支障を来すことがないよう十分配慮するとともに、 国際的な規定にかなった方策とする必要がある」と書いてあった部分について、それは 当然であるというご指摘がございました。そういったご指摘を踏まえまして2番目の・ につきましては、「今後、国内自給を推進する観点から国内献血由来の血液製剤の増加 を図るに当たっては、患者の治療に支障を来すことがないよう十分配慮しつつ、国際的 な規定にのっとって、その増加に応じて輸入量を減らしていく方策を講ずる等輸入につ いて必要な措置を採ることも検討すべきである」と改めてございます。  それから次に3番目の・でございます。前回輸入製剤における安全性のところにつき まして、「安定的な供給」というだけで書かれていたのでございますが、秀嶋委員の方 から、輸入製剤につきましても安全性というところがやはり重要であろうというご指摘 がございましたので、「安全かつ」という文言を入れてございます。  それから「(4)血液製剤の供給」のところでございます。1番目の・でございます が、前回草刈委員の方から「輸血用血液製剤の特性に適した搬送能力を有する者を介し て」というふうになるのは、地域医療の実情によるというご指摘がございました。それ を踏まえまして、「地域医療の実情に応じ」ということをここで入れてございます。以 上でございます。 〇高久座長  どうもありがとうございました。今、「(1)献血」、「(2)輸血用血液製剤の製 造」、「(3)血漿分画製剤の製造」、「(4)血液製剤の供給」ということで医療機関の 説明をしていただきましたが、何かこれについてご意見いかがでしょうか。  7ページの4番目の・のところで「日本赤十字社は、本社、各都道府県支部」云々と いうことが書かれていますが、草刈委員、この表現でよろしいですか。 〇草刈委員  委員会としていただいたご意見として、本当にこの趣旨に対して全力を挙げて適切な 事業をしなければならないというのを感じております。 〇高久座長  よろしくお願いします。どうぞ、清水委員。 〇清水委員  日本赤十字社の部分ですが、私もこういう分野については非常に経験がないのです が、日赤法というのは随分古い法律だというふうに伺ったので、今の時代に果たしてそ れが合っているのかどうかと、私は中身について逐条ここで言う見識を持っていないの ですが、やはり法律というのは相当長くなっていったら、今の時代に適応できるように 見直すということが必要ではないかと思います。  もう一つは、4ページの「5 透明性の確保」というところで日本赤十字社の部分に ついても触れておりますが、ここの日本赤十字社の事業運営の透明性を図るという観点 から、何という会議なのか存じませんがその運営の会議に外部の、それこそ消費者代表 とか患者代表とかそういうものを入れるということが、むしろ幾ら内々で国民のために しっかりやっていると言うよりも、やはり外の人間を入れること自体が、運営が透明だ というふうに社会は評価すると思いますので、そういう運営について消費者、患者また は学識経験者ですか、そういう人を入れるということを加えていただけたらと思うので す。以上2点です。 〇高久座長  赤十字社さんの中の事情は私もよく知らないものですから、この中には「事業の展開 と透明化を図れるよう積極的に組織体制を見直していくことが望まれる」という表現に なっているのですが、いかがなものでしょうか。どうぞ、中谷委員。 〇中谷委員  私も清水委員のご発言のときに同じような意見を申し上げようと思っていたのです が、日本赤十字社法、日本赤十字社定款、あるいは血液事業に関する日本赤十字社血液 センター規則、これが最後は昭和62年10月です。ですからどうしてもこれは見直し ていただかないといけないのではないか。だからその点について、国としても何かいろ いろと指導監督をなさるのかどうかということを確認させていただきたいと思います。 〇高久座長  「見直す必要がある」という言葉を…。 〇中谷委員  ええ、必要があるということは確かです。ですからより具体的にこういうことだとい うことで、ご認識いただければと思います。 〇高久座長  それでは草刈委員、前田委員、見直す必要があるということは、よろしいですね。 〇草刈委員  はい。日赤全体としては社会・援護局の所管でございますし、血液事業に関しては医 薬安全局の方の所管だということがございますが、その中でやはり適切な血液事業を推 進するためのあるべき姿というのをご指導いただきながら、我々も意見を言いながら やってまいりたいと存じています。 〇高久座長  わかりました。では今清水委員、中谷委員のおっしゃったようなことを踏まえた言葉 を事務局で付け加えさせていただきたいと思います。ほかに何かご意見を…、どうぞ。 〇菅谷委員  この6ページの一番下の段落、7ページの最初に続いてですが、「日本赤十字社は」 云々とあって、7ページの最初に「献血できる体制を整備し」となっていますね。これ でいいのか。体制を整備するのはむしろ国や自治体ではないかという気がするのです が、この解釈はどうなのですか。 〇高久座長  体制の整備はどちらになるのですか。両方でしょうけれども、草刈委員、日赤の責任 でやる…。 〇草刈委員  いえ、やはりその辺が不明確です。この中で地方自治体は何をするとか国が何をする とかが10ページの最後にはございますので、そこまでちょっと今のご意見はペンディ ングしてはいかがかと思います。 〇高久座長  わかりました。では最後の方でもう一回議論をしていただきたいと思います。ほかに 何か…、それでは次に移らせていただきます。  次は9ページの「IV 国内自給推進の具体策」ということになりますが、これについ てまたいろいろ後でご議論願う点だと思いますので、9ページから12ページの途中ま で、IVのところを説明していただけますか。 〇事務局  それでは「IV 国内自給推進の具体策」をご説明させていただきます。「2 将来推 計」でございます。10ページ、上から4つ目の・でございますが、年間献血者数につ きまして前回、「600万人に過ぎない」という表現をさせていただいておりました。 ここのところにつきまして、草刈委員の方から日赤としてはかなり頑張っているという ところで、現在献血者数が600万人に過ぎないという表現ではちょっと引っかかるもの があるというご指摘がございました。そこでここにつきましては「600万人である」 という表現をさせていただいております。  それから1千万人献血ということが書いてございますが、このことにつきまして草刈 委員の方から、1千万人献血は数字のみがひとり歩きするということがあっては困ると いうご指摘がございました。ご指摘を踏まえましてなお書きということで後ろの方に書 かせていただいております。「なお、この目標は、現段階の粗い推計に基づくものであ り、血液製剤の需給動向を踏まえつつ定期的に見直しを図るべきである。」ということ にしてございます。  それから「3 具体的推進方策」の「(2)献血量の確保」のところでございます。次 のページの1番目の・のところでございます。三星委員の方から献血の推進の観点でご 指摘がございまして、献血の推進のためには厚生省のみならず政府全体の取り組みが必 要であると。また地方公共団体や日赤の取り組みも必要であり、そして何よりも国民の 献血に対する理解を得ることが重要であるというご指摘がございました。また特に若年 層への働きかけが重要であるということをご指摘いただいてございます。そういったご 指摘を踏まえまして、1つ目と2つ目の・のところを書き換えさせていただいておりま す。「献血量を確保するためには、何よりもまず、患者の治療に血液製剤が必要であ り、これは健康人からの善意の献血によって支えられなければならないことにつき国民 の理解を求めていくことが重要である。そうした観点から関係省庁、地方公共団体、日 本赤十字社が一致協力し、献血思想の普及や積極的な献血推進運動の展開がなされる必 要がある。」、「今後、献血可能人口が減少することを考慮すれば、高校生等の若年層 の献血を一層推進するとともに、学校教育の中でも献血思想の普及を行っていくことが 必要である。また、インターネットの利用等により広く国民が情報を得る機会を設ける ことも重要である」。  それから上から3番目の・でございます。前回ここのところにつきまして、成分献血 の必要性について、「赤血球を無駄にしないためにも」ということを言っていたのでご ざいますが、藤田委員の方から、赤血球の無駄という話は専門的でわかりにくいという ご指摘がございました。そこのところを直してございます。「IV 国内自給推進の具体 策」の修正点は以上でございます。 〇高久座長  どうもありがとうございました。今のIVのところで、先ほど菅谷委員からご意見があ りました日赤だけのことになっているのではないかという点については、11ページの 方に「関係省庁、地方公共団体、日本赤十字社が一致協力し」云々と書いてありますか ら、それでよろしいのではないでしょうか。ほかに何かご意見…、どうぞ。 〇菅谷委員  一つは、10ページの上のところにある「アルブミン製剤については」云々のところ ですが、確かにアルブミン製剤を使い過ぎだという批判もあることはあります。しかし ながら、それによって医療というか治療の効果が上がってきているという事実も見逃せ ないことであるわけでありまして、ここのところは必ずしも使用を制限すれば、それで 目的は達するのだという考え方では決して医療はうまく行かないということを、はっき りと認識しておいていただかないといけないだろうと思いますので、申し上げておきた いと思います。  それからその次の免疫グロブリンのところの、これは文章の問題ですが、2行目に 「将来需要が増大する可能性があり」と書いてあります。その1行下には「現在の使用 量の水準で使用量を維持できれば…可能である」と書いてあるのですが、将来増大する 可能性があるという認識をしておきながら、現在の使用量を維持すればという、何か矛 盾的な記載の仕方になっているのではないかと思います。  それからついでに申し上げますと、もう一つ下の・の「血液製剤の大幅な使用適正 化」、大幅な使用適正化とは一体何だということなのですが、少しこの文言も検討して いただきたいという気がいたします。 〇高久座長  どうもありがとうございました。免疫グロブリンの場合に重症感染症に対して効果が あるということが比較的最近明らかになって、外国でも使い始めたということで需要が 増大する可能性はあると思います。そしてまた遺伝子組換グロブリン製剤の開発が困難 であることも入れてありますから、一応将来増大するから使用適正化を進めて、増大す るのをなるべく抑えたいというような気持ちがあるのではないかと思いますが、確かに おっしゃるように矛盾している点はあるのですが、国内自給を目指すとなると、やはり 適正化ということを考えざるを得ないのではないか。菅谷先生がおっしゃるとおり、医 療の現場と矛盾するところがありますが、有限であるということを考えざるを得ないの ではないかと思っていました。  それから血液製剤の使用、これはおっしゃるように「適正化」ということが何回も何 回も出てきますが、「使用適正化」で良いのではないでしょうか。今までは「使用適正 化」と言いながら最後になって急に「大幅な」というのも矛盾していますので、そこの ところは「血液製剤の使用適正化」に改めて最初に書けばいいのではないかと思いま す。 〇秀嶋委員  ただいまの重症感染症に対しての効果が出てきたというようなことで、これは少し拡 大していることは事実だと思います。現場の医者はやはり菌の同定をしない、要するに 敗血症であるということを確認しないでも使いたいというような気持ちがある。そして 後で菌が陰性であっても使ったものは認めようではないか、こういうものが根っこに なって保険の適応がちょっと狭められるというようなことがあってもいけませんので、 その辺はやはりある程度の重症感染症、だれが見ても重症感染症と思われるものには 使っていくというような感じにしていただきたい。ですから必ずしも需要がかなり大幅 に増えるというのではなくして、その辺あたりを適正のインディケーションとしていた だきたいという気持ちが私はいたします。 〇高久座長  そうですね。特にガンマグロブリンの場合には、相対的な適応の問題としてしか考え ざるを得ないと思います。抗生物質と一緒に免疫グロブリンを使ったらいいことはわ かってはいるのですが、しかしすべての患者さんに使いましたら、当然供給が追いつか なくなるし医療経済ももたない。使用の基準を学会なりで決めざるを得ないのではない かと思います。  ですから全てにベストということはなかなか難しい、ベターという基準でやらざるを 得ない。それが現状だと思います。ご存じのように重症感染症でも菌が同定できない場 合が非常に多い。恐らく重症感染症の半数くらいは菌が同定できなくてそのまま終わっ ていると思うのですが、その場合でも抗生物質を無制限に使って良いかといったらそれ も問題が非常にあります。同じようにガンマグロブリンを無制限に使うわけにはいきま せん。確かに医療の現場では難しいことがたくさんあると思うのですが、基準を設けて 適正に使用するということしかやりようがないのではないかと思っております。どう ぞ、菅谷委員。 〇菅谷委員  座長のおっしゃることはよくわかるのですが、確かに将来需要が増えるということは 間違いないと思うのです。これはちょうど医療費と一緒なのです。医療費も幾ら抑えよ うとしても確実に増える。この増えるということをやはり皆認識しなければいけない。 その上でどういう対策がとれるかというのは基本的な問題で、姑息的にただ抑えればい いという問題では決してないわけです。医療を適正に維持するというためには、当然医 療費は増える。同じように適正な医療をしていくためにはガンマグロブリンの使用は当 然また増えてくる。これは世の中の進歩につれて、人口の構造からいっても当然そうな ります。そこのところをやはり認めた上で、それではどういう対策がとれるのかという ことがきちんと整理されないといけないのではないかと思うわけです。 〇高久座長  どうもありがとうございました。ほかにどうぞ…、前田委員。 〇前田委員  この資料に出ているのはアルブミンだけですが、やはりこういう医療の効果の上がり 方、評価が難しいものは地域差が極端に出てくるような気がいたします。そういう意味 では、使用の適正というところに地域差の是正ということも考えていかないと、将来と もできないかという気がいたしております。ちょっとほかのあれに比べても血液は地域 差が激しくなるというのが実感です。 〇高久座長  そうですね。どうぞ。 〇菅谷委員  今の地域差の問題ですが、確かにかなり開きがあるということは事実ですが、ただな ぜそういう差が出ているかということが現在突きとめられていない。ですからそこはや はりもう少し検討した上で、そういう差がなぜどこで出てくるのか。いろいろファク ターがあるのだろうと思いますが、そこがまだ一切解明されていないわけですから、そ このところの解明がやはり先決で、その上で議論というのを進めていく必要があるので はないかと思います。 〇高久座長  どうもありがとうございました。それでは次の「V 安全性確保の具体策」、12 ページから始まりますが、これは最後までいってもう一回議論しましょうか。このVの ところをやってください。どうぞ。 〇事務局  「V 安全性確保の具体策」の修正点をご説明させていただきます。まず「1 ウイ ンドウ・ピリオドの危険性の軽減」のところでございます。これは草刈委員の方から後 日ご意見のございました点ですが、前回問診の強化を図るという言い方をしていたので ございますが、「強化」というと何か高圧的な感じがして余り適切ではないというご指 摘がございました。それを踏まえまして、「問診の充実を図る」という表現に改めてご ざいます。  それから「2 新たな技術等の開発とその利用」のところでございます。1番目の・ につきまして、前回草刈委員の方から、「遺伝子組換え製剤や人工血液等を含めたより 安全性の高い製剤の開発等に努め」という表現のところにつきまして、血液由来の製剤 よりも遺伝子組換え製剤や人工血液の方がより安全であるようにも読めてしまうという ご指摘がございました。それを踏まえまして、「より安全性の高い遺伝子組換え製剤や 人工血液等を含む製剤の開発等に努め」という形に改めてございます。  その次の・でございますが、前回小室委員の方から、ウイルス等の不活化・除去技術 について製造業者が評価試験を実施し、その効果を確認するだけでなく、国も評価を行 うことが必要であるというご指摘がございました。それを踏まえまして、「その評価試 験を実施することによりその効果を確認する一方、国はこの結果を評価する体制を整備 することにより安全性の向上に努めるべきである」と改めてございます。  それからちょっと飛びまして「4 遡及調査の実施、記録の保管管理」につきまして 2番目の・でございますが、前田委員の方から、遡及調査についての手順の決定と周知 につきまして、その主語がないというご指摘がございました。ここにつきましては、 「国は一定の手順をあらかじめ定め」ということで、国がこの手順の決定と周知を行う ということを明らかにしてございます。  それから「5 検査目的の献血の排除及びHIV検査結果の通知」のところでござい ます。これは清水委員の方から後ほどご意見がございましたところですが、献血によっ てHIV陽性であることがわかった人に対して結果を通知する必要性や、その通知して いる事実を国民に隠すということは望ましくないということは理解できると。ただ一 方、結果を通知することを明らかにすることで検査目的の献血が増え、血液製剤の安全 性が下がることもまた大きな問題であるというご指摘がございました。そのためここの ところの表現につきましては、検査目的の献血の排除を明確にした上で、検査結果の通 知が行われることを明確にした記述にすべきであるというご指摘がございまして、改め ているものでございます。  それから後ほど草刈委員の方から、仮に陽性であることを通知するとしましても、そ もそも検査方法や通知の方法などについても検討する必要があるだろうというご指摘が ございました。そういったご意見を踏まえまして、ここのところは全文を改めてござい ます。読み上げさせていただきます。 ・ HIV等の検査結果を得ることを目的とした献血は、ウインドウ・ピリオドの存 在等の理由から、献血により救うことができる人をウイルス感染等の危険にさらす可 能性があるため、国、地方公共団体、日本赤十字社等の関係者は検査目的で献血をす ることがないよう献血者に対する啓発に努めるべきである。 ・ また、献血者に対する啓発と併せて、献血者登録制度の推進、献血時における問 診の充実を図るとともに、保健所におけるHIV検査の勧奨、保健所の検査環境の整 備等を進めることにより検査目的の献血を排除していくべきである。 ・ 献血者に対するHIV等の検査結果の通知については、これまで検査そのものを 目的とした献血を可能な限り排除するため、通知しないこととしてきたが、今後上述 したように検査目的の献血の排除に努める一方、陽性者の早期治療、二次感染防止等 の重要性にかんがみ、個人情報の保護に十分留意しながら、陽性者には原則として検 査結果を通知することとし、具体的な検査や通知の方法について検討する必要があ る。   なお、通知に際しては、献血者自身が通知を希望していることをあらかじめ確認 することが必要である。  あと「VI 法制度の整備」のところでございます。前回湯浅委員の方から、血液事業 における各主体の役割と責務を法的にも明確にする必要もあるという記述の中に、医療 機関も明記すべきであるというご意見がございました。それを踏まえまして、「血液事 業における国、地方公共団体、日本赤十字社、民間製造業者、医療機関等の役割と責務 を法的にも明確にする必要もある」という表現に改めてございます。以上でございま す。 〇高久座長  どうもありがとうございました。実は私の方で早く進み過ぎまして、前のところで少 しご議論をお願いしたいところがあります。それは8ページの一番下の・であります が、血液製剤の供給の一元化ということについて述べられています。先ほど事務局の方 で読み上げた参考資料1あるいは2の要望書の中で、血液製剤の供給の一元化を図るべ きであるという要望が出されていましたので、その問題についてもう一度この懇談会で ご議論をお願いしたいと思います。もとに戻らせていただきますが、8ページの一番下 の方の一元化について何かご意見おありでしょうか。どうぞ。 〇菅谷委員  これについては私、前回申し上げたかと思うのですが、一つは血液製剤の使用の適正 化ということに関しては、これはやはり関連した学会等の連携のもとに使用基準という ものは必要に応じて検討して見直す。医療現場における適正な使用というのはどういう ものかということを、十分検討することが必要であるということが第一点。  もう一つは供給の一元化ということに関しては、これはやはり供給のサービスの柔軟 性や多様性という観点から考えると一元化というのは好ましくない。また、医療機関が やはりそれなりの選択ができる体制ということも必要なことであるし、また一元化する と、供給者側のある意味では一方的な意向でどのようにもコントロールできるというこ ともあり得るわけで、これは医療現場にとっては非常に問題の多いことであるので、さ らに言えば一元化するためにはどこかそういうものをつくらなければいけない。これは 言ってみれば公営というか国営、そういうことにもつながってくるわけです。そうなる と現在の規制緩和の流れから全く逆行する問題であり、国営などというのは非効率の最 たるものであるので、こういうものを今さら進めるということはナンセンスだと言わざ るを得ないわけであります。法律をつくり、一元化してそこに責任を持たせればうまく いくと考えるのは早計でありまして、問題はそれを実施する人たちの認識の問題、そし てそれを受ける国民の理解の問題、そこが大事なのであって、法をつくればそれで済 む、あるいはどこかに責任を押しつければそれで済むという問題では決してないという ことをわかっていただきたいと思います。 〇高久座長  ほかにどなたかご意見おありでしょうか。どうぞ、清水委員。 〇清水委員  私、何回目だかちょっと覚えていないのですが、この会が始まってまだ新しいころ に、ちょっとここの部分で申し上げたことがあるのです。この間の弁護士会のシンポジ ウムの議事録を今ちょっと拝見したので十分読んではおりませんが、私も一元化すると いうことが今の社会のシステムの中で、オンブズマン制度とか情報公開法とかそういう 法的な担保がないと、やはり一元化というのはどうしても秘密的で内に情報が隠され る、外へ出ないということと、商品のような競争をここへ入れようとは思いませんが、 いろいろなところがいろいろな目でいろいろな責任のとり方を明確にしていくことの方 が、むしろ結果的には私たちから見たらいいのではないかと思いまして、そのような発 言をした記憶がありますので、またそのときの記録を読んでいただきたいと思います。 〇高久座長  わかりました。それからもう一つ抜けたところがありまして、11ページの「(2)献 血量の確保」、これは非常に重要なことで、先ほどもご議論をいただいたわけですが、 この中には「献血思想の普及や積極的な献血推進運動の展開がなされる必要がある」。 その中に具体的な方法として、「学校教育の中でも献血思想の普及を行っていくことが 必要である。また、インターネットの利用等により広く国民が情報を得る機会を設ける ことも重要である」と書いてありますが、これはほかに何か具体的な方法がありました ら、教えていただきたいと思います。作業部会でもこういう話が出たのですが…、どう ぞ三星委員。 〇三星委員  この学校教育の中、この文章でもよろしいのですが、もうちょっとやはり献血の重要 性の理解というようなことを入れていただくといいのですが。「学校教育の中でも」の 「も」を外してもらって、絶対にやるのだという、推進のために「学校教育の中で献血 の重要性の理解と献血思想の普及」というような形にしていただければ、なお一層明確 になるのではないかと思います。 〇高久座長  わかりました。ほかにどなたか。どうぞ、秀嶋委員。 〇秀嶋委員  これはまたインターネットのことで絡むようでございますが、インターネットだけで はなくして、普通の一般テレビでもPRできるのではないかと。国民のためにはその方 が…。 〇高久座長  そうですね。いろいろなメディアを積極的に利用して…。 〇秀嶋委員  いろいろなメディアを使った方がいいのではないかということでございます。 〇高久座長  わかりました。先の方にいったん進みます…、どうぞ清水委員。 〇清水委員  今どきこんなご質問をして恥ずかしいのですが、「高校生等の」とありますが、特に ここへ高校生と入れたのはどういう理由でしたか。 〇高久座長  あれは年齢が…。 〇清水委員  今は何歳ですか。 〇前田委員  16歳です。 〇清水委員  そうすると高校生というのは何歳…、それ以下ということですか。 〇草刈委員  それ以下の学年もある。 〇清水委員  そうすると高校生もということは、現在の16歳をもうちょっと下げるという意味で すか。 〇前田委員  高校1年は16才ですので献血は可能です。しかし現実には高校献血を実施している ところは、高校2年から始めています。400ml献血は3年になってからですが、校 内献血では400mlはごくわずかで200mlが圧倒的に多い。 〇清水委員  その年齢を下げるという前提で高校生という言葉が入ったのでしたか。 〇前田委員  そこは採血基準との絡みがありまして、単なる年齢だけの話ではいかないと思いま す。 〇清水委員  そうするとこれでよろしいわけですか。 〇高久座長  そうすると若年層というふうにした方が…、ただ学校教育ということを強調すると、 やはり高校生。 〇前田委員  ただ、高校生に限った話で学校教育という捉え方をしていいのかという点が気になり ます。少なくなったとはいうものの高校に行っていない人たちもいますので。 〇清水委員  だから教育などというのはもっと別に、それこそ小学校だって幼稚園だってできるわ けですからね。ちょっとそれはわからないのですが。それで私は学校の中にああすべき こうすべきということを外部から余り言うというのがいいことかどうかよくわからない のですが、「学校教育の中でも…図りながら若年層の献血を一層推進する」というふう に、文部省、学校教育の現場に「すべきである」と外部が言うことについてはいかがな のですか。実質的にはそれでいいと思うのです。  前に私申し上げたように、献血思想というのは本当に子供のときからした方がいいと 思うのです。別に学校じゃなくてもやらなければいけない、社会全体がやらなければい けないというふうなことを思いますので、「教育の現場でも」というふうに、学校です かね、小学校からといえば。そこは余りこだわりませんが、何か学校がこうすべきであ るというふうなことをこの文章で言うよりも、もう少しそういうことを前提にして若年 層の理解を深めるというふうにこの後と前を入れ替えた方がいいのではなかと、今読ん でいて思いました。 〇高久座長  わかりました。そこのところは少し直します…。 〇三星委員  今の子供たちは非常に社会的にはちょっと問題が多いものですから、ぜひ教育の場で ガチンとやってもらいたいのが私たちの気持ちですね。 〇草刈委員  よろしいですか。小学校、中学校に壁新聞として張っていただくようにやってもなか なかそれがうまくいかない。我々の努力不足もあるかもしれません。それから献血のビ デオなども学校の学園祭、あるいは保健体育の中に上映していただくようにも今までお 願いしてございますが、我々の作品のできばえもよくなかったかもしれませんが、今年 になって初めて文部省の監修をやっと得られたということがございますので、これから もそういう教育の中で素直に受けていただくような、お互い助け合うような思想の中で の献血という切り口で努力してまいりたいと思っていますが、なかなか壁は厚いです。 〇草刈委員  どうぞ、中谷委員。 〇中谷委員  16歳からということですが、それはどういう基準でお決めになったのでしょうか。 〇草刈委員  採血基準というのがございまして、お国が決めているのです。 〇中谷委員  そうですか。この間の臓器移植法だと15歳ですよね。 〇草刈委員  それは湯浅先生が専門でございますが、やはり生きている人から、生活している人か らいただきますので、その人の血液の再生産を考えて、あるいはその人の健康に影響を 与えない大体の年齢ということでつくられているというふうに、私は理解しておりま す。湯浅先生、如何ですか。 〇湯浅委員  採血基準を決めるときに、成長期の者に対する採血の影響、赤血球の回復なども考慮 しながら、16歳というふうに決まっています。採血は200ccあるいは400cc などということもございますが、将来的には200ccの献血は、感染あるいは免疫反 応といったことを考えてなるべく400ccに持っていきたいということを考慮します と、やはりこのくらいの年令が一応の基準になるのではないかと思っております。 〇高久座長  井形委員と渡辺委員が11時半に出られますので、この14ページの「5 検査目的 の献血の排除及びHIV検査結果の通知」を、先ほど事務局の方から読んでいただきま したが、これについて何かご意見おありでしょうか。こういう表現で…、どうぞ渡辺委 員。 〇渡辺委員  結果としてこういう表現でやむを得ないという気がいたすのですが、私がちょっと疑 問に感じているのは、要するに逆に言うとなぜ日赤の献血の場で検査目的を行うかとい う素朴な疑問です。つまり保健所は検査してくれるということはわかっているはずなの に、献血で検査してもらいたい。こういった事情を考えなければいけないのかという気 がするのです。  そういった意味からいいますと、ここに「保健所の検査環境の整備等を進める」と書 いてあるからこれも一つの方策ですが、日赤の献血を行った段階で、例えばこれはもう 検査目的だということをはっきりさせるようなことができないのかどうか。つまりそう いうことをやるとかえってこの点はかなりすっきりすると思うのです。  非常に言葉が悪いですがざっくばらんに言えば、献血しに来たけれども実際は本人の 内心としては検査目的だというのが実情だとするならば、そこのところで献血して、そ れでウインドウ・ピリオドの問題が出てくるということがあるので、そういったことが もし献血の現場、あるいは日赤の体制でできればかなり解消できるのではないかという 気もするので、素人考えかもしれませんが、それは一つ日赤の献血のやり方の問題に よって解消できる部分はあるのではないか。そこは専門家の意見も聞きながら、改めら れるのだったら改めてほしいというふうに思っております。 〇高久座長  いかがでしょうか。どうぞ、行天委員。 〇行天委員  今の問題の具体的な一つということで申し上げますと、私は結果を知らせてほしいか どうかというときに、知らせてほしいということを最初に明記した方は保健所の方に 行ってもらうという選択、選別をやはりやらざるを得ないだろうと思うのです。これが 一番実際の効果が上がっている。今ご指摘のとおり本人が正直言って保健所を余り信用 していない面があるのです。日赤の血液体制に関しては非常に信頼度が高いけれども、 保健所ではというのがやはり内心にあるので、それは今ここにあるように保健所の環境 整備や何かを徐々に進めていくということで、同時並行でやるのはこれ以外にないので はないかなという気はいたします。 〇渡辺委員  今行天先生がおっしゃったことはわかるのですが、日赤に対する信頼度が強くて保健 所でやると信頼度がそれほどでないということだけではないという気がするのです。草 刈先生の前で悪いけれども、日赤に対する信頼感が低いという意味ではなくて言ってい るのですが、それ以上にはっきり言うと保健所には入りにくいという心理的な面。とこ ろが献血だったら献血という格好で検査ができるという、入りやすいという心理面があ ると思うのです。そういう意味で献血を検査の場に使うと。言葉は悪いかもしれません が、検査目的にするという実態は私は否定できないと思うのです。  そういう意味で先ほど申し上げたように日赤の献血の場で、そういったことを区分し というか、適当な言葉が見つかりませんが、吸収できるような形にすればこの検査結果 云々の問題もかなり解決できる。あるいはウインドウ・ピリオドの問題もより少なくす る可能性ができるというような気がするので、それはもう確かに保健所の改善も当然必 要だし、同時に日赤の中の改善も必要なのではないかという趣旨で申し上げておりま す。 〇高久座長  そうですね。一般の人は保健所が何をしているかよくわからない、そう言ったら怒ら れますけれども。 〇行天委員  実際問題として見ますと、確かにおっしゃられるように献血という非常にいいコン ディションの中で、ついでに検査もしてもらいたいという気持ちは一番強いと思うので す。ただ、その方たちにもし検査の結果を知らせるのであれば保健所の方に行ってくだ さいということになると、相当数献血の足を遠のけることになる危険はあると思うので す。  しかし、今後ずっと抱えていくウインドウ・ピリオドそのほかの関連があれば、ここ でやはりきちんと断ち切って、献血者の数が減ろうが方向性が多少変わろうがこれ以外 にはないような気が、私自身は献血の現場を見ていると思うのです。問診そのほかいろ いろとやってそれなりの努力はあるのですが、個人差もあるし、それから目的をそうい うふうに持ってきている方に関しては抑える方法はないと思うのです。  ですから現実論という意味で、ちょっとご検討いただく以外にないのではないか。こ れは草刈先生の方に本来…。 〇中谷委員  行天先生が言われたように、京都ではそういうふうにやっていると伺いましたけれど も。検査結果を全て知らせてほしいと最初に書いた人は保健所で検査はしていますから そちらへ行ってください、献血はしないでというふうな処理をしてそれで一切問題がな いと伺いましたが、それは草刈委員、ご存じですか。 〇草刈委員  そのようなセンターからも、問診者がそのように感じたときにはそのようにお願いし ています。献血をお断りしている。ですからきちんとやっておりますが、今行天先生が おっしゃったように、余りこういう場では申し上げない方がいいと思いますが、600 万人の中にはやはりそういう方もおられて、幾つかのセンターというか採血場所で学習 なさる方もおられる。私たちは決して排除するのではなくて、私たちがいただいた血液 を必要として、また血液がなければ命がもたない方が感染することを絶対に防がなけれ ばならないという立場からやっているわけでございますので、絶対にそれは誤解してい ただきたくないと思います。  ウインドウ・ピリオドで、こういうふうにお伝えすることによってウインドウ・ピリ オドによる感染がないとは言えないと思います。渡辺委員もわかっていると思います。 そのときの責任はだれにあるのか。本当に高い倫理を求めて、三星委員たちと協力して やらせていただいておりまして、今まで幸運にも出なかったというのがあるかもしれま せんが、ウインドウ・ピリオドとわかったのはたった一つだった。そのほかにあっては ならないことの中でいろいろあるのです。これは我々のミスによって本当に申しわけな いと思っておりますが、起こってしまったことがございます。これは責任は明確です。  ただ、そのウインドウ・ピリオド、これだけ核酸を検出するのを開発したメーカーと 一緒になって、小室専門委員のお力も借りながら、日本が世界に先駆けてやりたいと。 我々はトップレベルでいたいと。しかも衛研も感染研も一緒になってこの問題に取り組 みたいというときに、我々が一方、保健所よりいい検査法を取り入れたら、検査のため に来られるのは避けられないと思います。  いずれにせよ、ここにございますように具体的な検査や通知の方法について検討する 必要があると書いてございますので、いろいろな方と本当に知恵を絞りながら、血液に 頼っている方がHIVに感染しないようにするだけの努力は本当にしてまいりたいと存 じます。しかもその中には、決して不信ではなくて信頼関係の中でわかっていただくと いう非常に難しい問診の技術がございます。 〇高久座長  行天委員の提案されたこと、あるいは中谷委員のおっしゃられた京都のことなどは、 具体的に日本赤十字社の方で検討していただくことになると思いますので、表現として はこういう表現でよろしいのではないかと思いますが。 〇中井委員  今の問題についてコメントさせていただきたいのですが、この問題はやはりどこの国 も大きな問題だろうと思うのです。それでこの問題について私の知っている限りでは、 今年に入っても世界的にかなり大きな報告書が出ています。具体的に言うと3月にアメ リカのGAOという報告が出ています。それから2、3日前ですがカナダもこの問題に ついて報告書を出しています。  そこで今議論されているところでひとつ視点を変えたいのですが、HIVの陽性の結 果が出た人が、少なくとも次に検査目的だというような観点から評価することについて は、やはりもう少し客観的にいろいろなデータを考えたらどうかというような感じがし ます。と言いますのは、GAOの報告書も先ほどカナダのクレーバー委員の報告書も、 本人に通知することが、今後自分がなぜ献血の適格者としてふさわしくないのかという ことを本人が知らないとすれば、むしろ通知しない方が血液の安全性について問題では ないかというような趣旨のことを言っているのですが、そこはちょっと皆さんで検討し ていただける問題ではないかというふうに、私は思います。 〇高久座長  この問題は作業部会でもかなり議論になりまして、通知しないことの利点と欠点の両 方あるのでなかなか結論は難しいと思います。しかし日本でもHIVの患者さんが増え てきております。しかも意識しないで感染している人もいるわけですから、そういう人 に献血をしたときに陽性に出たら、通知をしないということもまた非常に問題があると 思います。行天委員がおっしゃったように検査結果を知りたいという人は保健所に行っ てもらうということをするとかなり減るとは思いますが、それでもウインドウ・ピリオ ドの人は避けられない。難しい問題ですが、一応この表現でやむを得ないのかと思いま すが。渡辺委員、いかがですか。 〇渡辺委員  私自身は先ほどここでちょっと申し上げたようにこの表現、つまり通知をするという ことは結果として確かにやむを得ないというか、それはいいけれどもという前提で、先 ほど申し上げたほかの保健所及び日赤のそういった環境整備をお願いしたいということ を申し上げたのです。 〇高久座長  どうもありがとうございました。どうぞ、中谷委員。 〇中谷委員  今のところ、5の最後の・ですが、表現として「検査目的の献血の排除」というのは 「排除」でよろしいのでしょうか。 〇高久座長  ほかに何かいい言葉がありますかね。 〇草刈委員  「阻止」という言葉はございますが、難しいですね。 〇中谷委員  そうですか。「排除」でなければだめですか。 〇高久座長  「除く」という言葉の方がやわらかい。「排除」よりはですが。 〇草刈委員  私たちはご遠慮いただいている。 〇高久座長  「避ける」とか「除く」という言葉の方が表現としてはやわらかい。 〇中谷委員  表現としては何か、「排除」というのはちょっと…。 〇高久座長  「排」という言葉があると、排斥とか何か強くなりますから。それから、井形委員が お帰りになる前にもう一回ご議論願いたいのは、2ページの「倫理的な見地から」とい うこの表現でいいのか、私も先ほどからちょっと気になっていまして、「国際社会に対 する責任」とか、あるいは何かもう少し具体的な表現を加えた方が良いのではないで しょうか。 〇井形委員  この報告書はどうせ公開されるのですし、これを読んだ人がやはり献血が必要だとい うことがわかるようなことを、かなり格調高い言葉で挿入していただかないと、「倫理 的な見地から」ではやはりわからない。 〇高久座長  たしかにわかりにくいですね。おっしゃるとおりです。ちょっと考えてみましょう。 それから先ほど学校教育のことが問題になった時に思い出したのですが、適正使用に関 しては医学生の卒前・卒後の教育が非常に重要ですね。それはどこかに書かれていまし たか。 〇井形委員  それはぜひ取り入れていただいた方がいいと思います。諸外国とわが国との使用量の 差とか、そういうことは意識した上で初めてこれが価値があるかどうかということは、 やはりはたから教育で教えないといけないだろうと思います。 〇高久座長  湯浅委員も前にそういうことをおっしゃったのですが。卒前・卒後医学生の教育です ね。どこかに書いた方が良いですね。 〇湯浅委員  12ページの2つ目の・のところに述べてあります。 〇高久座長  ここに書いてありますね。うっかりしていました。井形先生、書いていました。12 ページの上から6行目ですか。 〇井形委員  どうもすみません。ここに書いてありますね。 〇高久座長  どうぞ、秀嶋委員。 〇秀嶋委員  すぐ下でございますが、「1 ウインドウ・ピリオドの危険性の軽減」というところ に、「ウインドウ・ピリオドをできる限り短くするための新たな検査技術の開発」、 せっかくPCRがあるのでございますから、それをどこかに入れておいた方が何もない ようで非常に心細いと思うのですが、いかがでしょうか。PCR法があるということ を…。 〇草刈委員  PCRだけではないのです。他にTMAというのもありますし。だから一つだけでは ない。 〇秀嶋委員  だから何か2つ3ついると…。 〇草刈委員  国際的には核酸検出法といっています。NATというのですか。 〇高久座長  PCRは非常に良いのですが、パテント料が高いので業者さんは別な方法を一生懸命 開発しようとして努力され、なるべくPCRは使わないでという方向にありますので、 この表現でいいのではないでしょうか。ほかに全般について…、どうぞ井形委員。 〇井形委員  すみません、ちょっと中座させていただきますので。まだ印象で申しわけないのです が、13ページの「3 情報の把握、評価、提供及び対応」というところの「可能な限 り」という表現が、やはりこの報告書は、情報については今後どうぞご安心ください、 そういう体制を築きますという趣旨をここに書かなければいけない。「可能な限り」と いう表現では非常に弱いと思うのです。例えば「責任を持って」とかあるいは「リアル タイム」…。「3 情報の把握、評価、提供及び対応」の2行目、「可能限り」という とやってもいいしやらなくてもいいという…。 〇高久座長  そうですね。「可能な限り」は除きましょう。 〇井形委員  ぜひ、今新しい情報システムを構築するとか、そんなようなことでもうちょっと具体 性、かつ積極性のある表現がいいと思います。 〇高久座長  おっしゃるとおりだと思います。ほかに何かお気づきのところ、どうぞ。 〇清水委員  渡辺さんのご発言にまた戻ってしまうような感じなのですが、問診票というのをこの 間また改めて読んだのですが、あそこに例えば妊娠しているかしていないかとか家族に こういうのがいるかいないかと、私も自分の身に降りかかって、「はい」か「いいえ」 かとつけようと思うときにすごく迷う部分があるのです。いい加減というといけません けれども、わからないところは自分の判断で「はい」とか「いいえ」のどちらかに丸を つけるということを前提としていくのかもしれないのですが、あそこのはっきり回答で きない人、それから回答に迷いがあって不安な人について質問事項を追加して、今回は 検査だけにして献血はしないという項目を入れるというのは難しいのですか。 〇高久座長  それは前田委員、草刈委員…。 〇前田委員  悪くすると、検査だけを目的にして、そこだけを利用し献血には協力しない人たちが 増えることもあり得ます。勿論、実際にはソフトの部分が非常に大事だと思います。個 人的な感想を述べますと、今まで原則として通知しないということでやって来た事を、 今度は通知を前提とした場合のソフトにどう切り替えるかが大変である。この懇談会で 決まってしまったから、やらなくてはならないという前に、今までと違った切り口での 対応というものを模索してみることが欠かせないと感じています。多分、いろいろな選 択肢はありそうに思います。ここで申し上げることは出来ないのですが、もっと現場の 人達の意見を具体的に聴取して、通知することを念頭においた今後の対応をいろんな角 度から検討してみることが大事と思います。私自身、すこし現場を離れすぎたかな?と 感じていますので。 〇草刈委員  清水先生がおっしゃったようにどう書いていいかというのはフランクに聞いて下さっ ています。どう書いていいですかと問診のところにいる看護婦さんかお医者さんに聞い てくれますので。 〇清水委員  献血者が行って。 〇草刈委員  ええ、そういう会話の中から問診の充実が図られるのです。 〇高久座長  ほかにどなたか、これで一通り終わりましたので全般について何かご意見、何でも結 構ですが。この案の復習をさせていただきますと、一つは2ページの「倫理的な見地か ら」というのをもう少し一般の人にわかりやすい表現に変えてはどうかというご意見が ありました。私もそう思いますので少し表現を工夫したいと思います。  それから4ページの「5 透明性の確保」で、清水委員から「消費者代表等」という のの中に献血者、患者さんの代表も頭の中に入れておいていただきたいというご発言が ありました。それから7ページですが日本赤十字社に関しては、日本赤十字社法が大分 古くなったので、その見直しも含めた組織体制の見直しを行うことが望まれると。文章 にするかどうかはまた検討させていただくにしても、そういご議論がありました。それ らが主な点で、あとは幾つか言葉の表現を適切にし、言い過ぎたところあるいは言い足 りないところも指摘していただきましたが、委員の皆さん方のご指摘に沿って、逐次事 務局の方で訂正をしたいと考えております。ほかに何か特別にご意見おありでしょう か。  今回が第9回ということであります。この血液行政の在り方に関する懇談会が始まっ たのが昨年10月でした。その間一部の委員の方々には起草委員会にお加わりいただき まして、この懇談会報告書の原案の作成にご協力いただきました。ありがとうございま した。  血液行政の在り方に関する懇談会の座長を務めさせていただき、委員の方々からいろ いろ教えていただきました。また同時に、いかにこの問題が、難しい問題であるかとい うことも身にしみてわかった次第であります。一応今回の懇談会で血液行政の在り方に 関する懇談会は終了させていただきたいと思います。委員の皆さん方にはお忙しいとこ ろ、頻繁にお集まりいただきましてありがとうございました。  報告書の案につきましては、本日もいろいろなご意見をいただきましたので、そのご 意見に基づいて修正をさせていただきたいと思います。事務局の方と相談して、この文 言につきましては座長預かりとさせていただきたいと思います。今日のご意見をお伺い しまして修正したものを、改めて委員の皆さん方にお送りいたしましてご了解いただい た上で、この懇談会の報告書として提出したいと考えていますが、よろしいでしょう か。もしご異論がなければ、そのようにさせていただきたいと思います。 〇菅谷委員  結構だと思うのですが、最後にちょっと申し上げておきたいのは、何度も申し上げま すが、どこかに責任を持たせればそれで済むというふうな印象を与えるようなことでは いけない。やはり実際にはそれぞれの役割をそれぞれが明確にして、それをそれぞれが 誠実に実行するということでなければならないということが最も大事だという観点か ら、おまとめいただきたいというふうに思います。 〇高久座長  それでは最後に医薬安全局長から。 〇医薬安全局長  それでは最後に一言御礼を申し上げたいと思います。昨年10月から長きにわたり真 剣なご議論をいただきまして、誠にありがとうございました。この中身には最後のとこ ろで、「時代の要請にこたえた新たな法制度の整備」というご提言があるわけでござい まして、私ども十分それを視野に入れて血液行政の充実、新たな展開に向かって尽力い たしたいと考えております。誠に長時間にわたりまして、真剣にご議論いただきありが とうございました。 〇高久座長  どうもありがとうございました。それでは本日の懇談会を終わらせていただきます。 (了) 照会先  厚生省医薬安全局血液対策課 菊池(内線2903)