97/11/17 第10回年金審議会全員懇談会議事録             第10回年金審議会全員懇談会議事録 日 時 平成9年11月17日(月) 10:00〜12:06 場 所 厚生省特別第一会議室  1 開 会の辞  2 委員出席状況報告  3 議 事   ・ 次期財政再計算に向けての検討について  4 閉 会 〔出席委員〕   京 極 会 長   八 木 委 員  砂子田 委 員  岡 崎 委 員  国 広 委 員   久保田 委 員  神 代 委 員  都 村 委 員  福 岡 委 員   目 黒 委 員  山 根 委 員  吉 原 委 員  若 杉 委 員   渡 邊 委 員  貝 塚 委 員  船 後 委 員 ○会長  ただいまから第10回年金審議会全員懇談会を開催いたします。  初めに委員の出席状況について、事務局から報告をお願いします。 ○事務局  本日は木原委員、坂巻委員、高山委員、富田委員、桝本委員、山田委員が御欠席でご ざいます。砂子田委員、神代委員、福岡委員は少々おくれてこられるようでございます ○会長  それでは、本日の議事に入ります。今年の5月27日以来、前回までに9回この審議会 を開催しまして、次期制度改正に向けて一通り審議を行ってきたところですが、本日か らはこれまでの審議を土台に、論点整理の作業に入ります。  本日は次期制度改正の論点となる項目全般についてみなさまのフリートーキングをお 願いします。最初に事務局から資料の説明をお願いします。 ○事務局  本日はお手元に、本日付の資料1、資料2、2つの資料のほかに「将来の年金を考え る」という年金局で作成をいたしましたパンフレットを席上配付をさせていただいてお ります。お開きをいただきまして、1ページ、2ページ、「年金制度の現状」につきま して、背景、年金額、保険料及び支給開始年齢につきまして記載をいたしております。  開いていただきまして、3ページから6ページまで「年金制度の将来を考える」とい うことで、これまで審議会におきまして御議論いただきましたポイントにつきまして、 「少子高齢化の進展」、「世代間の給付と負担」、「厚生年金保険料率の将来見通し」 「年金の給付水準をどう考えるか」、そして本審議会の検討項目などにつきまして、資 料をまとめておるところでございまして、こういったパンフレットを使いまして、これ から広く国民の方々に、この資料を使いまして御説明をさせていただきたい、こんなふ うに考えておるところでございます。  それでは、本日付の資料につきまして御説明を差し上げたいと思います。  まず、本日付の資料1「次期年金制度改正の論点となる項目(案)」ということで、 1枚目に資料をまとめておりますが、これは本審議会の5月の審議会におきまして御検 討いただきました検討項目につきまして再整理をしたものでございます。  2ページ、これまでの審議会の検討経緯につきまして、5月第1回から、前回第9回 の11月5日の審議会までの検討テーマにつきまして一覧表にまとめておるものでござい ます。  最後に、各検討項目と審議会の資料との関係ということで、審議会の席上に配付をさ せていただいておりますファイルに綴じられております審議会資料につきまして、各検 討日時と資料の項目につきまして整理をいたしてみたものでございまして、本日の御検 討の素材にしていただければという気持ちでございます。 ○事務局  続きまして、御説明をさせていただきます。  この資料につきましては、実は前回の6年改正におきまして、年金の額のスライドの 方法を、若い人の給料の伸びに合わせてスライドするのではなく、手取りに合わせて伸 ばしていこうということで、ネットスライドといいますか、可処分所得の伸びに応じて スライドすると切りかえたところでございます。そういたしますと、将来の年金の姿は 手取りに応じて伸びていくわけでありますから、要は額面の伸びにはついていかない。 そういう意味で、今まで額面に対する、いわゆるグロスに対する伸びで表現しておりま したものが変わっていく。そうなると最後の将来の姿がじわじわ下がっていくので見え にくいという御指摘がございました。  これにつきまして、7月30日に、一度御説明を申し上げたところでございますけれど も、P委員からも繰り返し御指摘いただいておりましたし、A委員からも事前に御指摘 がありましたので、再度最終の姿について御説明を申し上げたいと思います。これは3 ページの資料の特に一番下のところを御覧いただきたいのですが、AとBということで 2つのケースについて御説明を申し上げたところであります。これは将来の最終の保険 料率が29.8%になる。前回改正の前提でございますが、そのときに、そこまで保険料率 が上がったときに、若い人の手取りがその分下がるわけでありますから、年金額も今基 準にしております上の23万983円が、表示の上はどのぐらいの値打ちになるのかということをあらわしてみたわけでありますが、AとB、実は2つの考え方がございまして、従 来はむしろBに近い説明が多かったのではないか。といいますのは、保険料がどんどん 伸びていく。その保険料の伸びを引いたものが手取りの伸びになるわけでありますから お年寄りの年金にもそれが反映されるということで、それだけを考慮して、23万円に対 応する将来の姿を示してみると、21万7,058円という姿になる。これは従来の標準報酬 の額面に対して、右端のグロスで書いている64%になるわけでありますけれども、実際 にこれを、例えば年収、ボーナスも含めた年収での手取り、これは「ネット」と表現し ておりますが、手取りに対して、56%になるということは、以後この総報酬の56%に合 わせて推移していく、こういうことになるわけでございます。 ところがこれから若い人の手取りが減る原因というのは年金の保険料だけではない。 税とか医療保険もこれから負担が上がってくれば、その分、若い人の手取りが下がるで あろうと。それに応じて年金はもっと下がるのではないのか。こういうことからそれも 配慮した将来の年金額の表示ができないものかということで、これはAのケースとして 試しに計算してみたものであります。ただ、将来の姿としましても、税や医療保険の額 というものが一体幾らになるか。これは現時点でにわかに確定しがたい。医療保険制度 についても、今いろいろ改革を検討しておるところでございます。 従いまして、将来の国民負担率が50%になると仮定しまして、それぐらいに、医療、 税、年金保険料が上がったとするならば、若い人の手取りがどれぐらいになり、それが 年金額にはね返るかということで計算し直したものがAでございます。この場合は、確 かに若い人の手取りが医療や税の伸びによって減る分だけ年金額もそれを反映して下が りまして、21万100円ぐらいの水準になるのではないか。これを先ほど申しましたよう に、年収ベースの手取りに対してどうなるかといいますと、62%ぐらいになる。以後は ですから年収の手取りについて、62%でずっと固定的にスライドしていくことになるで あろう。右端のグロス62%と申しますのは、従来、額面の、それも月額の標準報酬に対 して表現しておったものということで、これは62%ということになるわけでございます かつては、若い人の給料に対する年金の比率は、標準報酬の、それも額面に対する率で 表現しておりまして、前回改正時では68%でありましたから、68%に対応するのは、こ のグロスの62とか64でございます。 しかし、ちょっと付言させていただきますと、この計算の方法は、今34万であるとい う給料の額面を1つの尺度にして固定して考えたわけでありますが、こういう方法をと りますと、実際には若い人の手取り、先ほど申しましたように、税や年金保険料の影響 で下がることになりますから、この計算は年々手取りが下がることを前提に計算したよ うになりまして、これからの実態には合わないのではないか、こういう問題点がありま すので、あくまで1つの尺度として、今の23万に固定して考えた場合の重さというふう にお考えいただきたい。将来の年金額が下がるということでは決してございません。 それから、ネットスライドを取り入れたことによって、将来の世代間のバランスがあ る程度図られるようになったはずだという御指摘もあったわけでありますが、これを取 り入れた結果が、今の例えば29.8%の最終保険料率であり、前回の人口推計を見直した 結果の将来最終保険料率34.3%になるということでありますので、ネットスライドを取 り入れたら、29.8%というものが下がるということではございません。この辺も繰り返 しでありますけれども、御説明をさせていただきます。 それから、次の点でございますが、若い人だけの手取りの変化に応じてスライドして いるではないか、お年寄りの場合も、例えば今後医療保険あるいは介護保険等強制的な いわば天引きというか、徴収されるものが入ってくれば手取りが下がるかもしれない。 そのときは若い人の手取りを反映するだけでなくて、老人の手取りが減した分は年金で はね返りを加算するという格好で、手取りのスライドをお年寄りにも導入するべきでは ないか、こういう御指摘がございました。 これにつきましては、4ページを御覧いただきたいと思いますが、これも9月24日に 御説明した資料で、再度の説明で恐縮でありますが、2つの考え方がございまして、年 金受給者の税や社会保険料負担の変化を年金額に反映させるべきだという意見とそうで ない意見が2通りあるわけです。例えば、ドイツの例ということで御紹介しております が、ドイツでは年金の可処分所得割合を配慮しようということで、これは逆数を掛ける 形になっておりまして、老人の手取りが下がれば、その分が分子に回りますから、逆に 年金額が増えるという計算式になるわけでございます。こういう方法をとれば、老人の 手取りが下がれば、それを割り返して年金額を増やすことは可能でございます。ただ、 過去に老人の手取りは逆に増えている時期もあったわけで、これを導入すれば、必ずお 年寄りの年金額が上がるということは決まったわけではありませんで、その時々の手取 りの変化によるところでございます。  そこで最初の2ページにお戻りいただきたいのですが、これは今回初めて、念のため に御説明するものでございますけれども、お年寄りも手取り、若い人もネット、ネット ネットという言い方もいたしますが、両方の手取りを勘案しながら年金額をスライドす るということを御指摘いただいておりまして、今後御審議いただかなければならないわ けであります。もし、受給者の手取りの変化というものも年金額に反映した場合に、そ の手取り額はどれぐらいになるのかという最後の姿が見えにくいという御指摘もいただ いておりましたので、あえて計算をしてみたわけでありますが、結論から申しますと、 1つの額で説明することはなかなか困難でございました。  上のAが、年金の保険料の変化だけを反映させるケースであります。  B、これは年金の保険料の伸び、税、医療、全部反映させるというケースであります  Cが、今申し上げました現役も受給者もその両方の可処分所得割合の変化を反映させ るというケースです。これを仮に採用した場合にどうなるかということで、数式は、B の形のものに今度は老人の変化を逆数で掛けるという形で計算するわけでございます。 ところが残念ながら、お年寄りの手取りがどうなるかということにつきましては、高齢 者に対する税がどう変化するか。例えば、現在の公的年金に対する控除が変化するかに ついては予断を持って論じるわけになかなかまいりませんし、医療保険とか介護の保険 料についても、今ここで幾ら幾らになると、数十年先の額を決めて確定するわけにまい りませんので試算は困難でございました。  しかし、これは一定の幅では説明できるのではないかということで、Cのケースとい う考え方です。Aは若い人の年金の保険料の負担の増大だけを見てやった場合。Bは若 い人の年金、医療、税全部を一応はね返りを見て年金額が下がっていったケースであり ますが、お年寄りも若い人と同じ程度に社会保険負担、税負担が高まっていくというふ うにした場合にはどうなるか。これは下にもなお書きで書いておりますが、若い人と同 じ程度に推移したのであれば、21万7,000円に近い額となる。しかし、お年寄りはそう いったものが変化なかったという場合であれば、下の額になりますので、いわゆるネッ トネットを採用した場合21万7,000円と21万のちょうど間に恐らくおさまるのであろうということが、推定できます。お年寄りの負担の方が若い人よりも高まっていくというこ とは余り想像しがたいところでありますので、恐らく年金受給者の負担は余り高まって いかないか、せいぜい若い人と同じぐらいの幅であろうということでいけば、AとBの 間ぐらいということになりますので、仮に老人のネット、若い人のネットという形をと りましても、将来の姿は、先ほどの3ページのベースでいきます21万7,000円と21万の 間ぐらいになるのではなかろうかということでございます。 そういうことで、将来の姿はおおむね推定がつくのではないかということを試算して みたところでございます。 ちょっとくどい説明で失礼いたしました。以上でございます。 ○会長 ありがとうございました。 それでは、次期年金制度改正の論点整理に向けてフリートーキングに移ります。先ほ どの資料1の1ページ目が、次期年金制度改正の論点となる項目、今まで個別に取り上 げてきた項目を整理したものです。初めは、第1の制度改正全般にわたる基本的な考え 方などについて御意見をお伺いしまして、その後で、各項目について御意見をお伺いす ることにいたします。  まず制度改正全般にわたる基本的な考え方などにつきまして、どなたからでも御自由 に御意見をお聞かせいただきたいと存じます。 ○A委員  本題に入る前に、御質問と、資料をもう一度お願いできないかということでございま す。水準を議論するときの大前提条件になると思いますので、今言われた日本の年金の 水準ということを国際比較、すなわち先進諸外国と水準という点で比較したときにどう なのか。とりわけ代替率をもう少し詳しくといいますか、既にいただいた資料で、受給 者平均とか、そういうことで代替率を表示されている表がございましたけれども、今言 ったようなモデルといいますか、前提を置いたときの、すなわちネットあるいはグロス それが総報酬との比較でしかできないのか、あるいは日本の標準報酬月額との比較も可 能なのか、できるだけ同じ物差しでの比較で代替率がどうなのかということについて、 資料を作成していただけるのかどうかについて御質問したいと思います。  なお、そのときに、65歳のモデルだけではなくて、できれば、60歳からの前倒し支給 といいますか、繰上げ支給の場合の水準はどうなのかということも含めて、代替率につ いての、もう少し詳しい資料というか、国際比較の表をできれば出していただきたいと 思います。 ○事務局  各国の年金の水準につきまして、これまでも7月30日の資料の中に入れさせていただ いておるわけでありますが、今、A委員御指摘の点を含め、私どもといたしまして、今 申し上げました我が国の水準と比較しうるものをできるだけ集めたいと思っております が、なかなか限界があるのも事実でございまして、御趣旨に沿うように今後も努力をさ せていただきたい、こんなふうに考えています。 ○G委員  2ページ、3ページの資料なんですが、A,B,Cの方式そのものの御説明はわかっ たのですが、これを出されたインプリケーションがよく理解しにくいのです。B方式と いうのは、現役世代の将来の広義の税負担が重くなって、可処分所得の割合が減少する から、それにスライドして年金の給付も上昇をある程度抑制すべきだと、こういうこと からいけば、B方式の方がごく常識的な考え方になると思うんですけれども。そのこと と年金生活者が今まで払ってなかった例えば医療費とか社会保障のコストをある程度シ ェアする、あるいは税制も老人だからと言って一律に軽減するということではなくて、 年金税制含めて、年金に対する課税と給与に対する課税を平等にするとか、そういうこ とによって年金の手取り額が減るということは全然別の次元の話です。つまりプリンシ プルとしてどっちをとるかという話であって、ドイツがやっているのがいかなる理由づ けによるものか、よく私理解できませんが、ドイツがやっているから、Bのような考え 方もあるけど、Cの方がいいのだという意味で出されたのか、もっと中立的にお出しに なったのかよくわかりませんけれども、将来の可処分所得スライド方式を若い世代の将 来的な負担を軽減するということでいけば、B方式しかあり得ないのではないかという ふうに私は理解していたのですが、その意味合いを御説明いただきたい。 ○事務局  まず意味合いでございますが、これは以前、P委員からも若い人のネットの変化だけ は反映しているけれども、老人のネットの変化は反映しなくていいのかという御指摘が 一方でございました。それで、その場合には最後の姿が見えないということも御指摘い ただいて、そのために仮にその方式をとったケースであれば、どれぐらいになるのかと いうことでお示したのがCでありまして、価値は交えておりません。 ○C委員  本日の資料について一言申し上げておきたいのですが、3ページの資料に、「所得代 替率」という用語を使っておられるのですけれども、これは非常に誤解を招きやすい概 念でございまして、給付水準をあらわす場合に、平均年金額と平均賃金というものとの 比較というものはあります。また、従前所得に対する引退後所得がどの程度の割合にな るかといったようなものもあります。もしも、これが英語のリプレースメントレートの 訳語であるとするならば、先ほどA委員が要求されました国際比較などする場合に、恐 らくアメリカあたりは従前所得に対する年金額の比率という表現の仕方をするはずでご ざいます。ですからその点は注意していただきたい。  私、これは日本語ですから、別に所得代替率はこういうものだと定義されれば、それ でいいと思うんですが、やはり給付水準と所得代替率、これは本人が現役中にどの程度 の賃金を得ていたか、それが引退することによって、どの程度割合が下がるかというこ とをあらわす物差しだろうと私は理解しております。 ○I委員  資料1の1のところの最初のマルのところですが、「社会・経済状況、制度改正の基 本的考え方」というところについてですが、将来の年金制度、特に年金財政に大きな影 響を与える要因としては、経済的な要因と社会的な要因とあるわけです。それで、2の (5)で「経済前提等」というのが入ってきて、(6)のところで、例えば「少子化へ の対応」というようなことが書かれているわけですが、今、経済成長等が非常に将来の 年金に大きな影響を与えるのは当然ですが、家族、人口、就労の仕方、そういうのがか なり変化しているわけですね。社会的な要因、特に人口あるいは家族との関連で言えば 少子化は将来の年金制度に非常に大きな影響を及ぼす要因だと思いますし、労働の方で は、女性の就業者が非常に増えて、特に雇用者が増えて、その中でも6割から7割ぐら いが既婚者である、あるいは派遣労働者が非常に増えて、それもかなり女性が多いとい うことです。家族、人口、労働など、社会的な要因が将来の年金制度に及ぼす影響もかなり大きいわけです。例えば、その中での少子化を1つとっても、今年の1月の新人口 推計にもありますように、保険料率がかなり高くならざるを得ない、そういう影響が出 てくるわけです。少子化の影響を2のところの(1)から(7)までの年金制度全体で 見直していくのか。それとも少子化という問題に対して(6)の2)にありますように、 年金制度の中で具体的に、今回の改正か、その次になるかわからないのですけれども、 年金制度の中で給付とか負担の在り方の中で、具体的に少子化への対応をするのか。  その他の社会的な要因についても、それをこの1のところで書き込まれるのかどうか 2の全体をながめましたときに、2の中で(5)のところに「経済前提等」というのが 入っているのですが、そういうふうな社会的な大きな要因については、その他というよ うな形で(6)に入ってしまっているので、少しその辺がどうかなと思います。  会長が、2カ月ぐらい前ですか、新聞の論壇で、省庁再編に関連して日本社会の人間 にかかわる3つの困難が今あるということで、非常に子供が少なくなっているというこ とを挙げられて、女性が男性と同様の能力開発と自己実現を保障されるようなそういう 環境条件。また、各家庭が安心して子育てができるような、そういう環境条件。そうい うような条件の整備拡充を担当するような官庁が必要だということを提案されておりま して、私も大変共鳴しました。今社会面で変動している要因というのは、将来の日本の 経済社会に大きな影響を与えると思うのです。そのくらいの大きな問題だと思うのです けれども、年金の1のところの社会・経済状況、年金制度改正の基本的な考え方という ところにどのくらいそれが書き込まれる見通しなのか、その辺のところをお尋ねしたい と思います。 ○会長  今の点についてどなたからでも御意見がございましたら。 ○事務局  最終的に社会・経済状況についてどの程度書き込まれるかにつきましては、これから の御議論いかんだと思いますが、1点だけ、この項目についての補足説明を申し上げま すと、2の(5)のところに「経済前提等」と書いておりますのは、経済の一般的な状 況をここで議論するというよりも、財政再計算のときに使う、例えば標準報酬の伸びを 4%にするとか、物価の伸びが2%とか、金利の方では5.5%、こういう前提数字をど ういうふうに置くのが納得が得られるのかということの項目でございまして、経済前提 につきましては、むしろ全体の大きな1の中で議論いただこうと思っておりますので、 特に少子化とのバランスではそういう意味で御理解いただきたいと思います。 ○D委員  少子化その他の関連では、1つのポイントは、国際的に北欧とドイツ、フランス、イ タリー、日本、アメリカ、イギリス等の中で北欧はたしか出生率が最近また回復してい ます。その辺のシステムの違いがかなりあって、そのシステムの違いは恐らく年金だけ の話ではなくて、託児サービスをどの程度充実させるか、その社会保障の内容をサービ スでやるか、現金でやるか、そういう違いがやっぱり出生率にかなり影響を持っている 単純に言えば、イタリーとかフランスのケースで、社会保障はほとんど現金給付に近く てサービスがほとんどないというケースと、また、北欧のケースで多分現金給付も相当 あるのですが、要するに社会サービス、託児所のサービスが充実しているケース、いろ んなケースがあります。  私もそういうのを関心持ってやっていますが、女性の労働力率、働いている比率がも ともと相当違います。アメリカ、イギリスと例えばヨーロッパ大陸とは違いますし、北 欧はものすごく働いています。ですから、その辺の違いは相当程度ありまして、その中 で年金がどういう役割を持っているか。ですから社会によってそれぞれ違うはずでして やや難しい話になって恐縮ですが、日本は一体どの程度のところをどういうふうに選ぶ のかというのは非常な重要な分かれ目に来ています。家族の話とか、そういうこともい ろいろ入っているのですが、どういうつもりで設計して、今後大体どういう方向、ある 程度年金をどういうふうに仕組むかが問題となっているわけです。社会的バックグラウ ンドとしては、いろんな労働慣行があり、家族の稼ぎ手はだんなさんだけが主としてや っているのか、奥さんがどの程度とか、いろんな問題がありまして、日本は一体どうい う感じなのかというのが少しわかれば、国際比較は数量的でなくして、社会制度とかそ ういうものの違いも含めて、非常に難しい話ですが、その辺のところもある程度展望に 入れておかないといけないのではないか。話は複雑ですが、少子化の問題もその1つに なっているし、60歳以上の労働市場はどうなっているか。実は60を過ぎたときにどうい うふうな雇用条件にあるとか、そういうことも非常に違いがありますので、その辺の差 異もある程度考慮に入れないとえらく年金だけで話が進むというとまた困るというとこ ろもあるという多少の感想を述べさせていただきます。 ○J委員  私も基本的に今のD委員の御発言に賛成です。年金の在り方について議論がされると きに、今までにも私も折あるごとに発言したつもりなんですけれども、少数意見かもし れないのですが、基本的に今の日本がどういう社会的な状況にあるかというとらえ直し をする必要があると思います。まさに今までの御発言にあったように、今日本は大きな 基本的な変り目に来ていて、それをだれがどのぐらい払えるから、だれにどのぐらい給 付する、そういう数字だけの計算では、年金制度は考えられない。  どこまでの改革を今回するかどうかということは、それはいろんな状況を考慮しなけ ればならないと思うんですけれども、基本的に「制度改正に係る基本的事項」というと ころでは、私たちが考える日本の将来は、どういうふうな仕組みを理念とするかという 基本的な姿勢を、ある程度明確にすべきだと思います。そうしない限りは年金制度に対 する信頼は回復できないと思います。  細かいことはいろいろ発言したいのですが、例えば、個人単位になったといっても、 計算の仕方は個人単位であっても、明らかに考え方は生活の単位は家族である、夫婦で ある、この考え方は歴然としているわけです。これを前提にしたままで、給付の金額が 幾らだとかということを細かく計算したところで、結局は家族タイプ、形態というもの が多様化しているし、人々の働き方も多様化している。それから、今までのように人は 働き始めたら一貫して、体が続く限りは働くというふうな、そういうライフコースが可 能でなくなっているし、人々はそういうライフコースを選ぶとは限らなくなっている。 そういう生き方と働き方との関係も変わっている。ですから、その辺のところを十分に 考慮した上で、年金についての負担と給付を考えなければいけない。  それから、社会的状況・経済的状況というと、これがただちに少子化というところに 結びついてしまうという傾向は、私はこれは大変問題だと思っております。少子化とい ったら、ただちに、それじゃ、何で女は子供を産まなくなったんだ云々といくわけです が、子供を産むという行為は女ですが、女だけがかかわっていることではない。産んだ 後、育てるということがずっとつながっているわけですから、そういう全体の行為につ いて、今までの考え方から一度頭をふっ切ってとらえ直すことが必要だと思います。  例えば「少子化対策にかかわる主な提言」という資料を前にいただきましたけれども 3つありますが、どれを見ましても何らかの形で子供を増やさないといけないと。だか ら保険料が、子供を産み育てる人々には軽減されるようなインセンティブ型のシステム を導入するという意味合いのことがどこにも入っているわけです。こういうふうな発想 自体、明らかに女は子供を産む性であって男は働く性であると。この両方が1つのユニ ットになって生き続けていくのだという大前提が全然揺らいでないわけです。  果たしてこういう大前提をもとにして、この年金審議会がさまざまなことを将来に向 けて考えていいものかどうかということについて、私はぜひこの審議会に関するスタン スを、多様ではあっても明確にすべきではないかというふうに思います。  個人的な考えを申しますと、世代間扶養といいながら、いかにも世帯単位の考え方が 前提になっている。それから、子供の出生というのは、さまざまな生物学的な条件と社 会的な条件が相まって結果されるものですから、機械的な作業ではないわけです。です から、単に子供を産むのが前提である、そういう生き方を我々が念頭に置いているのか ということについては再考する必要があると思います。  それから、もう一つ、ここで少しつけ加えますならば、世界人口会議でも、これは国 際的な了解事項になりました概念として、リプロダクティブ・ヘルス・ライツという概 念がありますが、これについては日本政府も一応コミットメントは示しているわけです はっきり言いますと、厚生省の理解はこれに関してはなかなかスローでありましたけれ ども、これを理解しなければならない状態にあるという御理解はあるというふうに理解 しております。  ともかくこういう概念からみますと、子供を産むということが、年金制度とのかかわ りで、また社会保障とのかかわりで考えるということは、この概念に反することであり まして、ですから、そういう観点も考慮しながら、全体の仕組みを我々がどう考えるか というスタンスを明確にする必要はあると思います。  長くなりましたけれども、基本的な考え方です。 ○K委員  今の少子化の話とは違いますが、「上記以外の項目」というところに「学生への適 用」というのが書いてあるのですが、この中には前にもこの審議会で議論になったよう ですが、未加入者の問題なり、滞納者の問題なりというのが大変大きい問題だと思って おりますので、これに対してどういうふうな対応をしていくのか、この中に入っている というならそれはよいのですが、もしなかったとすれば、未加入者の問題なり、滞納者 の問題なり、あるいは免除者の問題に対する今のやり方でいいのかどうかという議論は やはりしておく必要があるのではないかと思います。  それから、これはあえて申し上げたいと思いますが、ここの(3)の「負担の仕組 み」の「国庫負担等」というところに係る問題なのかもしれませんが、今年のたしか10 月だと思いますが、ドイツで年金の負担率が非常に高くなるということが問題になりま して、福祉税を増税するということによって、負担率の軽減を図ったということが新聞 等に出ておりましたが、ちょうど思い起こしますと、10年前ぐらいに、厚生省の研究会 で福祉税の創設をするということが1回議論になったことがございました。  私はこの際、年金、医療、介護等でありますとか、こういう社会保障に係る問題につ きまして、もう少し全体としてとらえる必要がある。要するに年金だけの問題ではなく て、これらの問題を全体として見る必要があるという観点から見ますと、10年前の厚生 省がやっていました福祉税といいますか、そういう目的税の創設をすることによって、 これをカバーする方法を考えたらどうなのだろうかという感じがいたしております。も し、できるならば、本当は今の消費税を目的税に切りかえてしまうというのが私は一番 よいのだと思いますが、それは賛成得られるかどうかは別といたしまして、これからの いろいろな社会保障制度を考える場合に、やはりそういう新しいことを、税の創設でも 考えておかないと、なかなか若い人が希望を持てるような制度への仕組みは難しくなる と思いますし、社会保障全体をどのように調整をしてゆくかを検討してゆくためにもや はりそういう必要があると思いますから、選択肢の1つとして議論せよというなら、目 的税の創設ということを題材として、選択肢の1つとして考えていただきたいものだと 思っております。 ○L委員  論点となる項目の全体像のところを御意見として申し上げたいのですが、実はこの審 議会の中身を外に向けて、どんなことになっているのかというのを第三者にお話をした ところ、印象としてこの制度改革が、少し経済整合性みたいなものに、やや、とらわれ すぎではないかという御意見を第三者からいただきました。私も全体感としてはそうい うことかなというように思っているということが1つであります。  それから、先ほどから諸先生方より御意見が出ておりますけれども、どう考えてみて も、改定のスタンスというのか、根っこにある経済整合性のところだけではなしに、将 来を見つめ、世の中の変化はやっぱり抑えておく必要があるのではないかというように 思います。  その1つは、先ほどから先生方から出ていますように、我々の立場で言えば、働くこ とについても大変多様な働き方をせざるを得ないし、それを容認せざるを得ないという 世の中に恐らくどんどん変わっていくのだろうと思います。また、一方でひとりの人間 として考えたときに生きることの多様化みたいなこともそれにつながっているだろうし それから、我々が少し発想を変えなければいけないのは、均質であるとか均一であると いうようなことを求めて、長い期間やってきたわけです。しかし、社会の変化の中で個 というものを主張する人たちがいるわけです。私たちの組織の中でも個の主張があって その間のあつれきももちろんあるわけです。そういう個を大切にするというようなこと からいきますと、それもやっぱり無視できない。  また、一方で、個の主張ということで言いたい放題言ってもらっても困るので、どこ かでまとめねばなりません。そういうことになると、自己責任という問題ももちろん出 てくるだろうと思います。そんなことを考えていくと、日本の社会全体にまだそういう ことをつらつらと受け入れるだけの社会風土がないという問題と、この年金制度改革と いうのは、ある意味で板ばさみになっているのかなというようにも思えるわけです。そ ういうことをさまざまにとらえて、財政構造改革会議で出された論調とか基調の経済整 合性だけが背景にあって、年金制度改革をやるということではなしに、さまざまな課題 を示し、改革と多様な選択肢を国民の1人1人に見せるような改革が必要なのではない かというように、私は全体の印象としてこれまでの論議の中で感じております。とりわ け論点となる項目の1のところが大変重要だと。5月段階でも、申し上げたのですが、 どうもそんな考えがいまだにしております。ということだけ申し上げておきたいと思い ます。 ○A委員  少し似たようなことかもしれませんが、私も3つの点について少し御意見申し上げた いと思います。第1点は理念はやっぱり大事だというふうに思います。負担、給付、数 字的にどうするか、現実問題としてありますから、その議論をしなければなりませんが しかし、若い人たちを含めて、この国をどうするのか。この国で生まれて育って、誇り が持てて、信頼感が持てる国というのは、社会保障の柱だと思っておりますので、そう いう点ではどうなのかということについていろんな議論がありますけれども、そういう ものを一遍徹底して議論した上で、やはりこうではないかということを足して2で割る ようなことではなくて、やはり理念として前に打ち出すことが非常に重要ではないかと 思います。  2つ目にとりわけ若い人たちの問題は負担の問題だけではないと思います。次の将来 に対する信頼といいますか、自分たちが年金の受給年齢に近づいたときにその制度を持 っているのか。逃げ水のようにまたころころ変わっていくのではないかという不安感で はないかと思いますから、やはりビジョンを示して、不安感を除去するといいますか、 あるいはもう一度信頼ができる制度にすると。そういう意味では、もう二度とこの改正 がないようにするみたいな改正ができるかどうかはこれほど社会も経済も激変をしてい ますから、とてもそんなことは言えないとは思いますが、できるだけ問題先送り型にせ ずに、次の改正期にまた変わっていかざるを得ないみたいな、芯棒が揺らぐようなこと ではない一定の結論を、考え方、理念の問題まで含めて出すべきではないかというふう に思います。  3点目に、具体的なことになりますが、項目の中の書き方として、(2)の給付の仕 組みの2)、「高齢在職者、高所得者等に対する給付」ということで、何となく高所得者 に対する給付とくくられて、「高齢在職者」という表現でされていることについて少し 問題意識を感じます。これまでもP委員を初めとして言ってきたことの中に、とりわけ 労働組合として非常に重要な事項として考えておりますのは、雇用と年金の接続の在り 方ということでございます。基本的にはできるだけ支えられる側から支える側に1人で も多くの人が元気なうちは回るということがこれから非常に重要なことだとは思います けれども、ただ、そのことを強制をしたり、こうあるべきということではなくて、多様 な選択肢といいますか、現実に1人1人の労働者や勤労者が現実の問題として大企業か ら中小零細企業まで含めて、働くかどうかという問題があるわけでございますので、そ ういう中での老後の生活ということを考えますと、もう一度在職老齢年金の在り方等々 まで含めて、雇用と年金との接続の在り方等々が一体どうなのか。画一的に65歳という 年齢によってということではなくて、少し幅を広げて検討をするというようなスタンス に立つべきではないか。  そういう意味では、論点整理の項目の1項目として、もう少し重点を置いた記述の仕 方にしていただけないかと思います。もちろんその中には繰上げ支給の水準等々のこと も含めて、一度さまざまな角度から議論をしてみることが必要ではないかと思っており ます。 ○G委員  1の基本的事項の2つ目のマルなんですが、「賦課方式と積立方式等」というところ は、ここに書いてあるのは、これから本格的に議論するという意味で既に終わったとい う意味ではないと思うんですが、たしか第2回の資料の2に出ていたと思いますが、人 口増加率と賃金上昇率の和よりも金利の方が高くなるような状況であれば、理論的に言 えば、積立方式の方がリーズナブルな制度だということは資料には入っているわけです ね。  多分審議会の議論の方向はそうはいうけれども、二重の負担問題などがあって、それ は現実的でないので、賦課方式を前提にした中でのかなり抜本的な手直しをするべきだ という方向に進んでいると思うのですが、エコノミストの中の議論は、どちらかという と積立方式に戻すべきではないかという意見が圧倒的に強いわけですね。もし賦課方式 の手直しという方向で基本的に審議を詰めていくことになるなら、積立方式を主張して いる人たちの論点をもう少しわかりやすく整理をして、それに対する反論ができるなら 反論をきちんとした上でやらないと、専門に年金の勉強をしているエコノミストはたく さんいますから、そういう人たちから非難を受けることはできるだけ避けた方がいいと 思います。  私は余り専門でないから、彼らの議論を私なりに簡単に整理すると、八代さんなどは 既にいろんな研究を出していますが、1つは、賃金スライドはやめるべきだと。将来世 代の負担のことを考えるとやめざるを得ない。物価スライドは、今の経済の仕組みの中 では、昭和48年当時とは全然枠組みが違っているので、金利が物価に連動するシステム になっているのだから、特別に物価スライドそのものを考慮する必要はないではないか もう一つは、二重の負担というのは、確かに計算上は確かに出てくるけれども、一挙に それを全部現在働いている世代に負担させる必要はないので、徐々に負担を修正してい くやり方はあるだろう。多分そんなことが主な論点になっていると思うんですね。  そういう主な主張点について、そうはいうけれども、現実的な方向ではないのだとい う主張をするならば、そういう議論に対してどういうふうに答えるのかということを、 もう少し明確にしておかないとまずいと。何か自分が勉強するのを怠って、厚生省に責 任を押しつけるようで申しわけないんですけれども、そういう感じです。 ○F委員  別に好むと好まざるとにかかわらずという問題ですが、諸外国、アメリカ、イギリス ヨーロッパのフィールドワーク、また日本の現状を見たときに、経済体質が明らかに大 きく変わっていることは否めないと思うんですね。少なくともオイルショック前までの 高度成長期というもの、オイルショックからバブル、それから、その後はほとんどゼロ 成長に近い状態。要するに先進国が歩いたと同じように、低成長、高失業、財政赤字と いうことが、今現実に来ている。これは決してうれしいとか、うれしくないとか、ある いはあるべきでないとか、あるべきであるとかいう問題、主観的な問題ではなくて、客 観的な問題として、そういう経済体質が明らかに大きく変わっていると。端的に言うと ユークリッド幾何学的な発想で平面だと思っていたところが実は球体だったというよう な大きな経済体質の変革期に今あるという認識はやはり大前提として私は持たなければ いけないのではないかと思います。その中でどうするのだというふうに考えるべきだと 思います。  もう一つ、大きな問題として少子化の問題があるわけで、今さっきからお話があるよ うに、少子化の問題は、(6)の2)に置くような位置づけではなく、もっと根本のとこ ろに置くべきだと思うんですが、ただ、少子化問題は私どもも、例えば女性経営者の会 だとかいろんなところで勉強させていただいていますが、勉強すればするほど日本社会 の、もっと言えば、日本の男性社会が築いてきた矛盾というんですか、そういうものが たくさん出てきて、男性は、みんな自己反省しなければいかんという、こういう話にな るわけです。  私もそれはそのとおりだと思うんですが、だから、すぐ直るかというと、これは簡単 になかなか直らない。にもかかわらず、いろんな方々の努力で少しずつはよくなってき ているんです、かつ、また今回の議論の中でそこを少しでも前進させるような努力をし なければならないことも、これもまた事実だと思うんですね。いずれにしても、それは そういうことで、1つの議論であり、かつ1つのある方向性というものを出していく努 力をしなければいかんということはあるんです。ただ、ここ10年、20年というもの、端 的に言うと、産んでくださいと言ったから産めるという性格のものでは毛頭ないわけで ありまして、そのこと自体、今の予測が出している1つの事実関係というものは、これ はこれで希望的に、本来は幾らに上がるべきだなんて言ったって上がるわけがないわけ でして、やっぱり客観的な事実は客観的な事実として認識して、それから、しかし主体 的な行動として何を起こすかということは次の問題ですが、これには当然20年なら20年 という1つの長い経過期間があるわけでありまして、そう簡単に直るわけではない。  したがって、ある意味で、今回考えておかなければならないのは、経済体質が大きく 変化したということ。もう一つは、少子化の現状というものが1つの前提として置かれ るということ。それから、先ほど来いろんな議論が出ていますように、いろんなものの 考え方、社会の物の考え方が極めて多様化してきているということ。そういう多様化し たものにどこまで適用ができるのか、対応できるのかということを検討しなければなら ないということ。 ○B委員  私も今までいろんな方々がおっしゃったのとそう大きな違いはないのですが、この資 料を見てまして、これで国民の一般の人にも年金制度の将来を考えてほしいということ だと思うのですが、今までと経済も人口も全然これから違ってくると。そういう前提で 年金制度をどう考えるか、そういうことがこれにも出てない。今までの制度の枠組みの 中で世代間の給付と負担をならすとか、将来こんなに上がる保険料を下げなくちゃいか んとか、そういう制度の枠組みとか基本的な思想とか、そういうものについて考えさせ るようなことが少し足りないのではないかという気がするんです。 ○E委員 私もいろんな先生のお話を伺って異論はないのですが、私は制度改正に関する基本的 事項の中では、前にもいろんな方がおっしゃっていたように、公的年金制度というもの はどういうものかということをはっきり国民に説明する必要があるということを私は思 います。 その中で、最近言われている民営化がいいとか、いろんな話に対する反論をしなけれ ばならないから、私としては国民が全部老人になった者だけでなしに、若い人もいずれ 老人になるわけですから、その人たちが自分たちのために、老後のためにいろんな計画 を立てると思うんです。その中で公的年金というものがかなりの位置を占めるというこ とを説明すべきではないかと思うのです。そんなことは勝手じゃないかという人が出て きても、実はそうではなくて、公的年金があれば、自分が欲しいと思っている所得の半 分は見てもらえると。ただし、全額は見ないというようなことをやっぱり説明する。 それではそのあと半分どうするかというと、それは働けるように雇用の方で考える。 また、私的年金の方も有利な展開になるのだということで、老後の設計の中で半分を公 的に確保できる。その半分の公的年金は、いつかも言ったとおり、生活保護よりも高い とにかく暮らせる分であって、豊かな社会で自分たちとしては、もう少し所得が欲しい という人は公的年金と同じぐらいを稼げるようにする。こういうふうな設計を示す必要 があるのではないかと私は基本的に思うわけです。 先ほどの賦課方式をやめて積立方式の方がいいという議論は、私はG委員よりももっ と素人なのでよくわかりませんけれど、賦課方式、積立方式にしても、結局同じことに なりはせぬかという感じがするわけでなんです。先ほど言ったような考え方にすれば。 ただ、今、資料2の3ページですか、前からこの式はなかなかおもしろいし、問題だ と思っているんですが、この式というのは、保険料を徴収するときの式であると同時に 給付を決めるときの式になっている。私はこれは分離してしまったらどうかと。保険料 だけはこの式で取り上げるけれど、給付の方は別の考えで出すというふうなことも、今 すぐではないけど、考えられはしないか。どういうふうに給付の額を決めるのかという と、これはその時点における国民の平均生活を見てレベルを決めるのであって、過去に その人が保険料を納めたときの月額所得とは無関係だと。だから、そのときに非常に日 本経済が豊かになっていれば、過去の保険料よりもたくさんもらえるかもしれない。し かし、日本経済が衰えていれは、もっと下がってくるというふうな、非常に弾力性のあ る考え方にして、保険料をとるときの式と保険給付をするときの考え方を分離してしま うというのが1つの考え方ではないかと私は思います。  最後に、先ほど出ておった少子化問題は、私はもっぱらそれをしくじったのでこうい うことになったと前にもしかられたことがあるので、余り言いたくないのですけれども やっぱり多くの方が認めておられるとおり、こういうふうになってしまったのだからし ようがないという感じは私はいたしまして、この間、G委員の発言で、もっとしっかり 人口政策の方をやれとおっしゃったんですけど、これは先ほどJ委員が言われるとおり なかなかやりにくい話でありまして、これは余り年金制度の方で何かしない方がいいと 私は思っております。最終的には公的年金というものがどれだけの意義のあるものかと いうことを国民に宣伝・啓蒙されることが一番基本的に重要ではないかと思います。 ○O委員  先ほどこれまでの議論が経済的整合性に傾きすぎるのではないかというL委員からの お話がございました。大変もっともだと思うのですが、やはり年金制度は給付と負担の 水準をどう決めるかというところにすべてが最後はかかるわけですから、どうしても経 済的な整合性ということを議論しないで年金制度は考えることはできないのではないか このように考えております。  それから、賦課方式と積立方式ということでございますが、これにつきましては、何 回か前の審議会で長々と話をしたような記憶があるのですが、賦課方式がいいとか、積 立方式がいいとか、絶対的な基準はないのだろうと私は今でも考えております。世代間 の負担の公平性ということから考えると問題があるということになると、少しでも公平 性を維持できるような形はないのだろうか。それは何だろうかと考えると、現在の修正 積立方式と呼ばれておりますが、その修正積立方式を少しでも引き上げていく階段を手 前に来るようにする、具体的には、近い将来年金を受給する世代も少しでも多くの保険 料を負担する形になると。将来の世代は当然トータルでその恩恵を受ける形になるわけ でございまして、そういったふうに考えれば、結果的には現在の修正積立の度合いが、 さらに積立が厚くなるということで、賦課方式から少しでも積立方式に近づいていくと いう形にはなるのではないかと考えております。 ○N委員  先ほどE委員が言われましたように、公的年金の位置づけ、役割が中心になるのでは ないか。特にこれからの社会保障の体系を考える場合に、今年金以外に介護保険で新た な介護保険料の老齢者の負担の問題、あるい医療保険におきます新たな負担増の問題、 さらに今議論されている高齢者の医療保険制度の際に高齢者も保険料を負担するという ことになりますと、今の厚生省がいろいろ考えている社会保険改革の方向が、高齢者に ついては一定の所得のレベルを今の年金制度で見ているということ。  それから、一般のいろんな考え方も今の年金制度はかなりのレベル行っているのでは ないかということ。さらに今の現実の老齢者、これから老齢になる年金受給者に近い予 備軍にとっても、老後の生活設計の中でやはり年金というものをかなり中心に考えてい るということになると、これから非常にいろんな条件が厳しい中でも、年金の給付水準 をどう考えているかということになると、そう簡単な見直しはなかなか難しいのではな いかということでいろいろ議論しなければいけない問題があると思います。特に基礎年 金の場合は、今の6万 5,000円の水準を切り下げるのはそう簡単な話ではないと思いま す。また、厚生年金の場合も所得比例部分について、公的年金の中で従来は定額部分と 報酬比例部分合わせて公的年金といっているので、公的年金という以上は定額部分、今 度は基礎年金になっていますが、基礎年金プラス報酬比例部分として年金を一体化と考 えるということになると民営化とか、民営化というのは制度の運営を民営化するという 話はわかりますけれども、公的年金として考えない、自由にするということになれば、 これは公的年金の枠外に入るわけですから、この報酬比例部分の位置づけをどうするか ということになります。やはり公的年金の一部と考えるということになると、簡単な自 由化という点はあると思いますが、本当の民営化が考えられるかどうかという議論があ ると思いますが、そういう面で、公的年金の位置づけをどう考えるかということで考え ていかなければならないと思います。 それから、改正のスタンスですが、各先生方からいろいろ御議論あったように、社会 状況・経済状況は変わっておりますし、そういうような諸般の事情を考えた上でやはり 見直すことは必要だと思いますが、おのずから見直しには限度があると思います。今ま で年金制度の改革についても、大体過去の歴史を見ますと、大きな年金制度の改革は10 年に一遍ぐらいの間隔できているわけです。そういう面で言いますと、前回の改正は、 21世紀をにらんだ改正ということで、支給開始年齢の引き上げ、賃金スライドの見直し 等をやったわけですが、その支給開始年齢もまだ現実に動いていないという中で、年齢 の問題等にそう簡単には取り組めないのではないかと。67歳とかという議論もあります が、そういうようなことで、今回の改正ですべての問題が解決するというのは、そう簡 単な問題ではないので、やはりコンセンサスができたところから取り上げていくと。全 体を議論するのは必要だと思いますが、そういう面でおのずからだんだん絞られてくる と思いますが、そういう中で重点的な問題に取り組むことが大事ではないかという点を 申し上げたいと思います。 ○H委員 大きな異論ではないのですが、少子高齢化社会であるとか、経済の変革期であるとか 労働やライフスタイルや家族形成が大きく変化していき、生き方が変化している中で、 ある特定のライフスタイルやある形態の働き方の人たちが安心して老後を迎えられると いうようなパターン化した年金制度では対応し切れなくなっているということは皆さん がおっしゃったとおりだと思うのです。 そういう中で、今どういうライフスタイルの、あるいはどういう人たちが安心した老 後を迎えられないでいるかということを考えたときに、今の年金の受給している統計な どをいろいろいただいた中で検討しても、大きく男性と女性というふうに比べれば、女 性の年金が個人で見た場合は非常に低いということは厚生年金などのことではっきりし ていると思うんです。 それから、女性が長生きしているのは統計的に事実だと思うのですが、そういう1人 1人が豊かな老後を迎えているかというと、特に先ほど申し上げたシングルの女性であ るとか、離婚した女性であるとか、そういったような方は厚生年金も低いわけですし、 非常に厳しい状況の中で、しかも長生きしなければいけないというふうになっていると いうことはしっかり申し上げたいと思います。  長生きしている人が決して不安にならない、その長生きしている人が今たまたま女性 であるということであって、長生きする男性も女性も安心して暮らせるような年金であ ることにはだれも反対はないと思うんですね。そういうふうに考えますと「社会・経済 状況、制度改正の基本的考え方」という中に、先ほどのいろんな委員の方が御指摘なさ ったような、もっと基本的な社会状況の変化というのを入れていただきたいのと同時 に、それがそうでないとすれば、(6)の「上記以外の項目」というところの1)の「第 3号被保険者等女性の年金」という位置づけになっておりますけれども、これは第3号 被保険者には男性も女性もいるわけで、これからももしかしたらそういう男性は出てく るかもしれないということで、イコールではなくて、女性の年金ということに関して、 もっと全体的に位置づけて、総合的に考えるようなふうにしていただきたい。少なくと も「等女性の年金」といって、女性の年金の問題を第3号被保険者の問題に閉じ込める ようなことはしない方がいいのではないかと思います。 ○F委員  1つ、この年金で、先ほども少し御指摘がありましたけれども、例えば少子高齢化の 影響で厚生年金の最終保険料率が34%になるという数字が出てきたことで、年金に対す る危機感が生まれたということですが、こういう34%という度外れた数字が出ますと、 恐怖感が出てきて危機感なんていうものではないと思うんですね。  先ほど来、成熟社会に入ってくる、非常に多様化してくる中で公的年金の役割をこの 際明確にする必要があるというふうに思いますし、確かにN委員がおっしゃったような 側面がある反面、逆に今企業にしても勤労者にしても、国際競争の中でいろんな角度で 問題を抱えておるわけであります。そういう中で、例えば非常に少ない付加価値部分を 勤労者あるいは先への投資への振り分けの問題よりも、むしろ高齢者への振り分けの方 にだんだんウエートが高まっていくというような、多様化する中で、それをどういうふ うに考えていけばいいかという問題も出てきているわけです。現実問題としては、例え ばドイツが20%ということで、どうしてもそこのところを超えないように一生懸命何回 も何回も努力していますけれども、私自身の実感としましても、これは企業側もそうで すし、勤労者の方もそうですが、20%を現実に超えるということはなかなか難しいと思 います。というのは医療保険もありますし、また、ほかの税金の問題もいろんな保険も あります。  したがって、そういうところを逆にどこまで企業なり勤労者が負担できるのかという 逆の側面からモノを見てみる必要、これはそれがすべてとは申しませんが、そっちから 見てみることもぜひこの中で検討していかないと、実際問題、制度はできたものの耐え られない。あるいはますます公的年金から人は逃げていくというようなことになりかね ない側面を持っているのではないかという気がしますので、そういう側面から見つめて みる必要が1つあるだろう。  それから、もう一つ、これもどういう角度から取り上げていいのか、私よくわからな いのですが、かつてはなべて老人は弱者だというようなとらえ方があったわけですが、 確かに弱者の老人もおられると思うので、それはきちんとした対応をしなければいかん と思うのですが、弱者でない老人も随分たくさんおられる。むしろ、勤労者よりも、豊 かかどうか知りませんが、そういう老人も随分おられるわけで、そういった側面で、資 産というものが少しずつ日本も形成されてきたわけでありますが、フローだけでこの年 金問題をずっと議論していくのかどうか。この資産という問題とフローの問題。フロー だけですと、これだけ成長がとまってしまいますと、これは議論がなかなかしにくい問 題になってくるわけでありまして、したがって、資産というものをかませた議論という のができるのかできないのか、私、実はわかりません。かつ、また世界でやっている国 があるかどうか、それも知りません。知らないのですが、今となってみると、そういう ことも1つある種の打開策として検討する必要があるのではないか。ある意味では公的 年金の役割というものをかなり絞り込んだ形で考えざるを得ないところに来ている。そ れを明確にして、国民皆年金を貫徹するということの方が大事な時期に来ているのでは ないかという気がいたしますので、これは少し感想だけの話になりますが、申し上げて おきたいと思います。 ○D委員  年金をめぐる問題も社会保障をめぐる問題も、恐らくここ半年か1年の間に日本の中 でも相当考え方が動いているし、この年金審議会は1年半ぐらいたった時点で、最終的 な報告書をまとめるわけですが、ある意味では予測しがたい、その辺のところは、私は 新聞社に異論はないんですが、世論は実際かなり動いているというのは私の印象です。 ですから、そこのところは十分客観情勢といいますか、日本の世論はかなり振れ過ぎる ところもありますので、それをある程度考慮に入れなければなりませんが、なおかつ相 当程度動いていることは間違いないと思います。  先ほど来の議論から申し上げれば、やはり公的年金はなぜ必要かということをきっち り議論すべきであって、多分それは非常に重要なことになって、しかし、それはもうち ょっと先、いろいろ中身として、社会保障として給付するときの水準の問題が最終的に ある程度絡むのですが、ある程度最低限ここだけは必要だという線をきっちり抑えてお いて、しかし、それは確実に保障する。まさにそういうものでないと非常に困るわけで す。  現在の日本の、これはややジャーナリスティックな話ですが、日本が非常に不透明に なっているということの1つの原因は、恐らくあと5年か10年たったときに、一体何を どこまで、単純に言えば、政府が保障しうるか。水準は仮にある程度低くても、確実に 保障がきっちりできるならば、それはそれなりに生活設計もできる。もともとその辺が もやもやしてしまい、どうにもよくわからないというのが今の非常に困る状況なんです が、その中で年金は非常に重要でして、年金でここまである程度はやれますよというと ころが示せて、逆に言うと、年金制度はそれなりに世の中できっちりとこういうもので あるし、それはそういうものとしてぜひとも必要であるということを言う必要がある。 それを言わないと、非常にある面で大変なことになる。やや、ジャーナリスティックな 表現をすれば、現状は危機的な状況にだんだん世の中は入りつつあることは間違いない です。その中できっちりとスタンスを示すということは、非常に重要だと思います。  それから先は財政負担の話とかいろいろなことがありますけれども、それも当然それ と連携はしておりますけれども、システムとして安定的にきちんとやるというところが 極めて重要な段階にきていると思います。その他の社会保障制度もみんなそういう状況 に来てまして、そこのところはそれなりにきちんと、俗に言えばPRですけれども、問 題の設定と出し方のところを工夫してやるべきときに、クールに言えば、相当大変な状 況になっているから、それなりに腹を決めてやる。  ここにございますけれども、民営化の議論は一応取り上げて、しかし、どこに問題が あるか。そのときにここに積立方式の話も同時に出ているわけですから、積立方式に移 行するというか、その辺の話も全部細かいところを込みに入れて、それで最終的にこう いうふうになるという、広くスタンスをとって、そこのところである程度きっちり防衛 線を敷いて、それであとしかるべきところに話を持っていくというふうにするのが多分 いいのではないかと私自身は思っています。 ○C委員  公的年金の給付水準をどう考えるかというのは非常に大きな問題だろうと思いますが その前に老後の生活水準というのは一体どう考えるのか。やはり現役中の生活レベルは 落としたくない、できるだけ維持したい、こういうのも1つの理想であり、目標だろう と思うのでありますが、しかし、老後の生活を支えるのはもちろん公的年金だけではな いので、私的年金もあれば、貯蓄もあると。そこで公的年金の役割、水準がある程度 引っ込まざるを得ない。こういうことになってきますと、あとの2つの方法をどう考え ていくかということも併せて考えていかなければならないと。  ここには厚生年金基金等ということで、そこの部分はお考えになっているのだろうと 思うのですが、もし公的年金の給付水準を切り下げれば、やはり政策的にはそれの代償 的な措置として企業年金なり個人年金なり、あるいはその他の貯蓄というものに対して どういうスタンスで望むのかと。日本の貯蓄率は今までは世界最高峰を誇っておったん ですが、どうやらヨーロッパにも抜かれそうな状況になりつつあるわけでして、このま ま行きますと、今の年寄りはいいんです。年寄りは公的年金の水準も高いし、財産も持 っていますし、貯蓄も持っております。しかし、若い人は負担だけを強いられて貯蓄も ほとんどないと。将来に余り望みがない、株は下がるばかりだと、こういう中におられ るわけでありますから、こういう人たちに安心感を与えるためには、やはり公的年金の 給付と負担の水準併せてこれを補完する企業年金なり個人年金について政策的にどう考 えていくのかというのが重要となっており、従来ある厚生年金基金とか国民年金基金と か、そういった枠組みの中ではちょっと狭すぎる。もう少し広くお考え願いたい。  何よりも一番これと関係があるのは税制でございます。日本の税制は残念ながら私的 年金には非常に冷たい。こういう税制の枠組みになっておりますので、もし公的年金の 給付水準、現行水準が維持できないと、どうしてもスリム化しなければならないと、こ うなれば、それにかわるべき私的年金あるいは個人貯蓄をどう考えていくのか。これを 併せてひとつ御議論願いたいと思っております。 ○B委員  私もC委員のおっしゃったことに全面的に賛成なんですが、細かい点で基金の話もも ちろんありましたが、「上記以外の項目」でいろんなことが書いてありますが、外国で 積立方式への移行に関連して、積立方式といっても外国の場合は全体を積立方式にする のと、もう一つ、個人勘定も設けて、公的年金の中ですら積立方式にしようという流れ がありますので、そういったことも、それはいろいろ問題がありますから、皆さんいい じゃないかということには簡単にはならない問題かもしれませんが、今までにないよう な、そういったタイプの年金も含めて、これは公であるか、私であるかは別にして、そ ういったこともこの中の検討事項として考えていいのではないかという気がいたします ○J委員  言葉の問題をまず1点。「世代間扶養」という言葉を使って、これをキーワードにし て年金制度を何とかPRしようという姿勢が非常に強いわけですけれども、果たして 「世代間扶養」かどうかということを疑問に感じます。これは世代間のサポートをし合 うという関係を示す意図があるのだろうと私はずっと思っていたのですけれども、サ ポートを扶養と考えるのはおかしいのではないか。ただ、日本語として支援をするとい うふうな、「支援」という言葉を使うとちょっとなじまないということもあって「扶 養」にしたのかわかりませんが、扶養というところまでは公的年金はいってないのでは ないか。これは公的年金の位置づけの問題ともかかわってくると思うんです。「扶養」 という言葉を使うことによって、子供を産まないカップルは、給付額を減らせとか、い ろんな議論もそこから来るように、家族の中の扶養というふうなニュアンスが非常に強 くなってくる。だから、これが世代間の支援であるということならば、もうちょっと世 代と世代の関係ということで理解は深まるのではないかと思います。  世代間のサポートばかりが強調されていますけれども、大きな問題として、世代内の 格差というのがあるわけでして、実は「上記以外の項目」で挙げられているのは、これ は世代内格差のことを取り上げているきらいがあると私は理解します。その中に女性の 年金が1項目独立して入るということは、これはいかに男性中心、そしてカップルが当 たり前であるという発想が強かったかということが浮かび上がっていると思いますけれ ども、これは世代内格差ということを正面から取り上げるということは、現実がいかに 多様化しているかということの反映でもありますので、そういうふうな理解、つまり世 代間サポートだけでなくて、世代内の格差をできるだけなくそうということを考えるの だと、この辺も少し強調するようなPRがあってもいいのではないかと思います。  それから、このパンフレットなんですけれども、幾つかの典型的なタイプとして数字 が挙げられておりますが、こういうのが本当に誤解を招くし、現実の反映になってない というふうにこういうものを見るたびに感じます。ですから、この次つくるときは、余 り典型的でなくなっているものだけを取り上げるということはくれぐれもしないように 限られたスペースで何とかという御努力は必要ですが、余り典型的でなくなっているも のについて、さも代表的であるかのような取り上げ方をするということは、やはり現実 から遊離した制度という印象を与えかねないと思います。 ○M委員  年金問題については、マスコミが正しい情報を国民に伝えることが大変重要だと思い ますが、最近一部の新聞では、当審議会で総報酬制の採用をほぼ決めたとか、そういう ふうな記事が出ておることもあります。この総報酬制の問題については、従来ボーナス は企業の業績によって大きく変動するので、こういう不安定なものを保険料収入の基盤 として考えるのは適切でないということで、保険料の対象としなかったと思いますが、 反面年収の相当部分を占めるボーナスを対象としなければ、公平を欠くという意見もあ りまして、総報酬制が検討課題となっておると思います。  ただ、総報酬制については、例えば厚生年金は負担と給付が原則としてリンクすると いう制度ですが、ボーナスを対象とした場合に適切なリンクとして具体的にどういう形 をとるか。あるいは給付の上限をどうするとか、まだ十分に議論されてない部分がある わけでして、マスコミへの正しい情報を流すという意味でも注意すべきことではないか と思いますので、あくまでも検討課題であるということを申し上げたいと思います。 ○L委員  論点となる項目の中の2ポツの(5)の「経済前提等」というふうに書いてあるので すが、この前提については、先ほどからいろいろお話があるように、今までの惰性とか 過去の延長線上ということではなしに、私は相当シビアなとらえ方をした上でどうする のか、そして、それがかなえられなかったら、具体的にどうするのかというような展開 が妥当なのではないかと思っております。  それから、先ほど経済的な整合性の話が主流になっていると申し上げたのですが、そ れは実は枕言葉でありまして、スタンスの方も大事ですという意味で申し上げたわけで 年金が全くそういうものではないというふうには考えていないということを改めて、せ っかくの機会ですから申し上げておこうと思います。  それから、お配りいただいた年金のパンフレットですが、いろいろ数値とか言葉があ るのですが、私は前回改正のときにも、当時の事務局に申し上げた経緯がございます。 我々は組織的なバックグラウンドを持っていると思っております。これをどういうよう に活用し、解説あるいは補強・補完しながら説明するか大切です。これはどこを対象に 今からどういうふうに活用されようとしているのか、それを少しお聞きしたいと思いま す。市町村段階で、生涯学習センターのようなところがたくさんあるわけでありますか ら、何かの機会をとらえて、一定期間に集中的にこういうものを活用されて、年金の将 来のためにしっかり畑を耕していただく。このことが今我々がやっている仕事の成果を より上げるために大変重要なことではないか。作った段階で来てとっていただいて、見 て読んでいただくということだけではなしに、具体的な形で行動を起こしていただいて 我々の作業の補強・補完をしていただけるとありがたいと思います。前段申し上げまし たことについて、御質問としてお答えをいただければと思います。 ○事務局  本日のパンフレットはとりあえず作成をしてみたものでございまして、これから審議 会の御意見、動向等を踏まえまして、私ども、今、L委員御指摘ございました今後のP Rの仕方につきましても十分考えさせていただきたい、こんなふうに考えております。 ○会長  時間は12時を過ぎ、委員の皆様方にも漏れなく御発言いただきました。今日のところ 年金制度改正の論点となり得る項目などについて、全般的に、また個別の項目について いろいろ御発言をいただきました。今日はこの辺で終わりにしてよろしゅうございまし ょうか。                (「はい」と声あり)  それでは、終わりにさせていただきたいと存じます。  事務局に、次期制度改正の論点整理の原案といいますか、事務局案を出したいという 考えがございます。次回はそれについて、あるいはそれに基づいて議論を行いたいと存 じますが、よろしゅうございましょうか。                (「はい」と声あり)  では、そのようにさせていただきます。  それから、本日の資料につきましても、これをすべて公開してよろしゅうございまし ょうか。では、そういたします。今後の日程につき、事務局から確認をお願いします。 ○事務局  次回は11月27日と御案内をさせていただいております。次々回につきまして、前審議 会におきまして、12月10日と申し上げたと思いますが、委員の御都合等改めて確認をさ せていただきますと、12月5日の方がよろしいということでございますので、12月5日 午後2時ということでよろしくお願いいたしたいと思います。  それから、まことに恐縮でございますが、お手元に年が変わりまして、1月20日の大 阪における審議会の開催につきまして御案内をさせていただいております。1月20日、 火曜日でございますが、大阪にお出向きをいただきまして、現地の学識経験者及び関係 団体からの意見聴取及びそれに対する質疑応答を20日の午後お願いをいたしたいという ふうに考えております。  なお、この1月20日の大阪の審議会につきまして、総会としマスコミ等へ公開すると いうことにつきまして、あらかじめ御了承得たいというふうに考えております。なお、 大阪への御視察につきましては、翌日21日につきまして、お時間の許す委員につきまし ては、京都府内の社会保険事務所、新しくできました事務所に御案内するなどの予定を 併せて組ませていただきたいと思っております。何とぞよろしくお願い申し上げます。 ○ 会長  それでは本日の年金審議会全員懇談会はこれで閉会とします。どうもありがとうござ いました。 問い合わせ先 年金局 企画課     須田 TEL:03-3503-1711(3316)