97/11/05 年金審議会全員懇談会議事録                                      年金審議会全員懇談会議事録 日 時 平成9年11月5日(水) 14:00〜16:20 場 所 厚生省特別第一会議室  1 開 会の辞  2 委員出席状況報告  3 議 事   ・ 次期財政再計算に向けての検討について  4 閉 会の辞 〔出席委員〕   京 極 会 長   八 木 委 員  砂子田 委 員  木 原 委 員  神 代 委 員 坂 巻 委 員  富 田 委 員  桝 本 委 員  山 田 委 員 吉 原 委 員  若 杉 委 員 渡 邊 委 員  船 後 委 員 ○会長  時間になりました。ただいまから第9回年金審議会全員懇談会を開催します。  初めに委員の出席状況について、事務局から御説明をお願いします。 ○事務局  本日神代委員、桝本委員は御出席の予定でございますが、まだお見えでないようでご ざいます。岡崎委員、国広委員、久保田委員、高山委員、都村委員、福岡委員、目黒委 員、山根委員、貝塚委員が御欠席でございます。 ○会長  次に古山委員の御後任として、本年10月8日付で新たに委員に任命されました、 全国町村会理事、埼玉県横瀬町町長の富田孝さんが本日お見えでございます。御紹介し ます。 ○富田委員  このたび年金審議会委員といたしまして、全国町村会の理事という立場からお世話に なることになりました富田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○会長  本日の議事に入ります。  最初にお手元にありますような記事が朝日新聞に出た件につき、事務局の方から御説 明があります。 ○事務局  それでは、私の方から釈明とおわびをさせていただきたいと思います。11月1日土曜 日の朝日新聞の朝刊ですが、こういう記事が出まして非常にびっくりしたのですが、皆 さん方も非常に驚かれた方もいらっしゃるのではないかと思います。内部の調査をいた しましたところ、朝日新聞の記者に対しまして、年金審議会に提出した資料に基づきま して説明をしたと、こういう事実はございます。ただ、記事にございますように、「99 年制度改正へ厚生省案」と、厚生省案が固まったと記事にございますが、厚生省がこう いう案を軸に検討していく方針を固めたということは全くございませんので、一言審議 会の審議に先立ちまして釈明させていただきたいと思います。 ○会長  そういう次第でございます。  本日の議事に入ります。本日は、まず、厚生年金基金と国民年金基金、それから、国 際通算協定、この2つの事柄につき事務局から資料の説明をいただいて、議論を行いま す。  その後で、厚生省人口問題審議会が10月27日に取りまとめました「少子化に関する基 本的考え方について」の説明をいただき、質疑を行います。時間が限られておりますの で、議事運営の御協力をよろしくお願いします。  前段として、厚生年金基金、国民年金基金、国際通算協定などにつき、事務局で資料 を用意しておりますので、説明をお願いします。 ○事務局  私の方から資料1「厚生年金基金、国民年金基金に関する資料」の御説明をさせてい ただきます。全部で資料1は20ページのものでございますが、まず1ページから説明さ せていただきます。  最初の図は年金制度の体系、上乗せの企業年金などを含めた全体の図でございます。 これについては特に説明はありません。省略させていただきます。この厚生年金基金制 度については、昨年11月から3回ほどこの年金審議会において御審議をいただきました が、委員の交代がございましたので、基金制度がどういうものであるかという説明から 入らさせていただきます。  まず、目的・沿革でございますが、基金制度は昭和40年の年金改正に合わせて発足い たしました制度でございまして、老齢厚生年金、当時は定額部分と報酬比例部分に分か れておりましたが、その報酬比例部分を代行する、さらに基金独自でそれに上乗せ給付 を行うことを目的とする制度として発足いたしております。  設立形態は2)に書いてございますように、一企業が単独で基金をつくる形態は「単独 設立」となっております。また系列会社が集まって共同で1つの基金をつくる場合を 「連合設立」。同種同業の中小企業あるいは地域の卸商業団地などの企業が集まって設 立するような地域型がございますが、いわゆる中小企業が集まった「総合設立」と呼ば れる形態がございます。  基金は保険集団を組んで、老齢年金を代行していくということになりますので、ある 程度保険集団としての大きさが必要になるわけでございまして、それぞれ人数要件とし て、下に書いてございますような要件が定められております。  2ページにまいります。現状、どれぐらいの基金があるのか、あるいは加入員数がど れほどになっているのかという推移を書いたものでございます。9年4月1日現在の数 字でございますが、基金数にして1,888、加入員数1,237万人という現状になっておりま す。 資産の状況は、ことしの3月末、8年度末の数字でございますが、45兆円、これは運 用機関としては信託、生保、投資顧問という3つの業態で扱っておりますが、信託が大 体55%(24.7 兆円)、生保が35%(15.7兆円) 投資顧問は2年度から導入されておりま すが、現在総資産で1割(4.6兆円) こういう預かり残高になっております。 イ. の欄をごらんいただきたいと思いますが、設立形態別に基金数、加入員数がどう いうふうに分布しているかを、ことしの4月1日現在で見たものでございます。単独設 立が565 件で全体の30%。中小企業の集まった総合設立が 643件ございまして、よく基 金は大企業のものというようなことが言われておりますけれども、これをごらんいただ いてわかりますように、中小企業が集まった総合設立の形態が、全体の件数に対して3 分の1。加入員数にいたしますと、全体の 1,237万人のうちの約半分の 636万 6,000人 がこの総合設立の加入員になっているということであります。 それぞれの加入事業所はどういうものか、これは千差万別でございますけれども、 「1事業所当たり加入員数」という一番右端の欄をごらんいただきますと、単独の場合 には1事業所326人、これは括弧にくくっておりますが、1つの企業が全国で幾つも事業 所を持っている例でございますので、平均で1企業10事業所ぐらいの感じになるんです けれども、そういたしますと、単独設立の場合には1基金当たり 3,000人ぐらいの加入 員規模ということになります。総合設立の場合にはこれをごらんになっておわかりのと おり、1事業所36人ということでございまして、これはほぼ中小企業ですから、1事業 所はほぼ1企業であろうというふうに推定されますけれども、大体36人ということで、 中小企業がメインの設立形態だというのはよくおわかりいただけるかと思います。  それから一番下のウ.は、最近の厚生年金基金の新設・設立の状況を載せております バブル崩壊以降大分減っておりまして、今年度では5件ほどの設立の状況ということで ございます。更に申し上げますと、資料で脱落しておりますが、解散数を申し上げてお きます。過去、会社が倒産いたしまして、厚生年金基金が解散したというケースは、こ れまでにかなりありましたが、最近、財政の悪化、運用環境の悪化から財政的に苦しく なったので解散にやむを得ず至ったというケースが出てまいりまして、そういったケー スが6年度1件、7年度1件、8年度7件、今年度は、先日新聞に出ましたが5件とい うことになっております。  3ページにまいります。これは企業年金、適格年金と合わせた普及状況を概略見たも のでございますが、昨年の3月末現在厚生年金基金は 1,213万人が加入しています。適 格退職年金の方は加入員数で 1,077万6,000人という現状でございまして、合計2,290万 6,000人、これは厚生年金被保険者3,280万人に対して見ますと、大体7割ぐらいという ことでございます。一部1つの企業で基金、適格年金両方持っているケースがございま すので、推計では、基金、あるいは適年にカバーされているサラリーマンの方は、厚生 年金加入者の全体の半分ぐらいではないかというふうに言われております。適格年金は ことしの3月末の状況ももう一つ数字を載せておりますが、契約件数から見ますと、 1,200件ほどの減少というふうになっております。  4ページに進みます。4ページは厚生年金基金の「給付」についての御説明を申し上 げたいと思います。厚生年金基金は昭和48年のスライド制の導入により厚生年金の報酬 比例部分のうち、いわゆる名目部分といわれます再評価・スライド部分を除いた部分を 代行する。その上に独自の給付を上乗せするという仕組みになっておりますが、上乗せ 基準として代行部分3割を上回る給付をすることということで条件をつけております。  その図をごらんいただきますと、基金加入者の四角のところで上から2つ目が代行部 分になっておりますが、代行部分に対して上乗せの少し黒っぽくした分、これが3割以 上になるようにというお願いをしているところでございます。これは俗にプラスアルフ ァと呼んでおりますが、その分布を示したものが次の表でございます。大体全体で言い ますと、割と下の100%ぐらいのところに固まっているわけですが、1企業がそのまま基 金をつくった単独基金の場合ですと、大体代行部分とほぼ同じ厚さのものが上に乗っか っている100から 150%のプラスアルファのところが大体ピークになっております。 それに対しまして、中小企業が集まっている総合基金は多くの企業が集まって上乗せ を行いますので、そうそう分厚いものを上に乗せるというのも大変でございまして、上 乗せの厚さとしては大体40から50%が非常に多くて、全体の6割ぐらいというような現 状になっております。  給付の状況は一番下の欄に記載のとおりでございます。  5ページにまいります。現在の厚生年金基金の運営状況。これは財政と運用その2つ の面から説明させていただきます。まず財政状況につきまして、別途積立金、これはバ ランスシートとしてはプラスだということでございますし、繰越不足金、バランスシー トとしてはマイナスということでございますが、その基金数の分布をこの表でごらんい ただきますと、平成元年度以降、この辺からバブル崩壊ということになってくるわけで ございますが、過去ほとんどの基金がプラスであった状態でございますけれども、近年 ではプラスになっている基金は全体の47%という現状になっております。7年度末現在 をごらんいただきますと、プラスになっている基金が 885、プラマイゼロが 212、マイ ナスが 776であるということでございます。  7年度末の全体の貸借対照表、基金を全部合算いたしたものが下の参考についている 表でございます。借方と貸方の一番下のところに、基本金(繰越不足金)あるいは基本 金(別途積立金)となっておりますが、これは上の別途積立金のあった基金、繰越不足 金のあった基金の剰余・不足金を全部足し上げたものの数字でございます。全体として はまだ多少プラスであるということでございます。個別の基金としては現在 776の基金 がマイナスの状態になっているということでございます。 その要因は、運用環境が悪いということになってくるわけでございますけれども、6 ページにその状況を書いてございます。上の方は資産の残高規模と分布状況を示してご ざいますが、ポイントは下の方の運用利回りでございます。この運用利回りというのは 簿価の数字をここに載せておりますが、これは設立形態別にそれほど余り違いないもの でございますけれども、「全体」というところをごらんいただきますと、バブル崩壊以 降の平成4年度から予定利率 5.5を下回った状態がずっと続いているということでござ います。 これは先ほど申し上げましたように、厚生年金基金は信託と生保、投資顧問を使って おります。投資顧問はようやく資産残高が1割のシェアということでございまして、メ インは信託、生保でございますが、簿価のほかに信託、生保について時価ベースの利回 りを見たものが次のページ、7ページでございます。 これをごらんいただきますと、これは時価ベースということでございますので、市場 の変動がそのまま信託の場合出てくるという数字でございます。生命保険の場合にはこ のグラフの注の3をごらんいただきたいと存じますが、注3に書いてございますように 7年度末において、基金の資産のうちの生保資産、これは大体4割弱でございますけれ ども、その4割弱の生保資産の98%、ほとんどすべては元利保証、元本及び利率の保証 のある一般勘定に投資されておりまして、一般勘定の保証利率は5年度までは 5.5%、 6、7年度は 4.5%、昨年度から 2.5%に下がっております。 これは上のグラフで見ますと、元年度以降信託、生保がかなり大幅に乖離しておりま すけれども、生保の方は保証利率のウエートが著しく高かったために、マーケットの変 動は、運用機関側が全部被っていたという状況であったわけですが、生命保険会社も過 去の含み益が大分底をついてまいりまして、8年度から保証利率 2.5%ということでか なり厳しい状況になってきているということでございます。今年度に入って、さらに一 層厳しくなって、1社破産ということが現実にあったことは皆さん御承知のとおりでご ざいます。  この時価で見ますと、基金全体としてどうなるかということが問題になるわけでござ いますが、先ほど申し上げましたように、信託、生保大体6対4でございますので、信 託、生保の利回りを6対4で振り分けまして計算いたしますと、やはり元年度以降は 5.5%を上回ったのは7年度1回だけでございます。あとの年は全部 5.5%以下でござい ます。 こういう環境でございまして、基金制度として、これまで一律に予定利率を使う、あ るいは給付設計に関してかなり厳しい制限をかけてきたわけでございますが、そういっ た現状を踏まえて、今後どうするかということで、昨年の6月に厚生年金基金制度研究 会から御報告いただき、本審議会で御検討願った事項が8ページにございます。  8ページの基金の検討項目は、これは昨年の本審議会にも提出させていただいたもの でございますが、縦の欄をごらんいただきますと、9年度実施事項と10年度以降の検討 事項でございます。これは9年度実施事項は、政令あるいは省令で当面着手できるもの から着手ということで、御検討願ったものでございまして、代行制度、給付設計、資産 運用、基金の財政運営、基金財政のチェック体制、支払保証制度、これらについてそれ ぞれここに書いてある御検討いただいた事項につきましては、ことしの3月、4月にす べて実行をしております。  10年度以降の検討事項につきましては、まず代行制度関係は、免除保険料率の完全個 別化と免除保険料率の算定方法の見直し、この辺が今後の大きい課題であると、私ども としては考えております。  給付設計は加算部分の設計の弾力化あるいは拠出建ての給付設計の導入、遺族、障害 給付の導入、この辺は1つテーマになると思います。  資産運用に関しましては、5 ・3・3・2規制の撤廃を挙げておりますが、一応これ は3月の閣議決定で10年度中に撤廃の予定になっております。  財政運営、基金のチェック体制、その他課題がございまして、あと支払保証制度では 保証範囲、制度の位置づけ等の見直しということが1つ大きなテーマであろうというふ うに考えております。  5月に本審議会で、各方面の意見として厚生年金基金関係についても各方面の意見を 挙げさせていただいておりますが、代行制度についてどう考えるか。ここに書いてござ います代行制度の免除保険料率関係、拠出建ての導入、支払保証制度の充実、こういっ た点について、各方面の御意見をいただいておりまして、以下、その点に沿って説明を させていただきます。  まず代行制度について申し上げます。9ページです。  ちょっと沿革から多少説き起こしての資料になっておりますが、代行制度の沿革は、 昭和40年度厚生年金の大幅な給付改善、これは1万円年金と言われておりましたけれど も、この改正に際しまして、事業主側から企業年金の最近の実情あるいは適格年金制度 の実施等に鑑みまして、企業年金と厚生年金との競合を合理化するために両制度の調整 措置を考えるべきではないか、こういう御意見が出ました。  これに対しまして、被保険者側から、社会保障制度確立の見地から名実ともに基本的 な被用者年金制度として改善することが重要なんだと。企業年金との調整については、 これに逆行するということで反対がございまして、これはまた特別な、たしか懇談会だ ったか、研究会だったかと思いますが、また会合を持ちまして、そこで調整をやった結 果、現在の関係の考え方に落ちついたところでございます。  この代行制度導入の考え方、これはマル2つで書いてございますが、これは当時の法 律の提案理由説明から抜粋したものですが、要は1万円年金への引き上げに際して民間 の退職金制度あるいは企業年金制度と厚生年金との調整を行うということで、民間側が 企業年金を設立する場合には報酬比例部分よりも高いレベルの給付を行うということで その一部を代行していただこうと、こういうような仕組みになってこの制度はスタート したわけでございます。  役割・機能は下に書いてあるとおりでございまして、代行部分をベースとすることに よって、終身の年金給付という形で企業年金の普及に大きな役割を果たしたということ であろうと考えております。例えば、中小企業の場合、現在でも退職金制度をお持ちに なっていらっしゃらない企業もあるわけでございますけれども、そういうところが集ま って厚生年金基金制度をつくって、新たに企業として退職給付制度を始められるという ケースもあるわけでございまして、こういった代行ベースに新しくそういった企業とし ての老後所得保障制度を始められたというケースも多々あるというふうに聞いておりま す。  免除保険料率の考え方についてでございますが、この辺が今後の検討事項と絡んでく る点でございますけれども、免除保険料率の考え方について御説明申し上げます。これ は厚生年金の給付の一部を代行して給付を行うものですので、代行するためには当然コ ストがかかりますから、コスト見合いの保険料率を、本体ではなくて基金に企業が納付 するという形になっております。これを免除保険料率と呼んでおりますが、これは過去 どういう推移であったかと申しますと、真ん中の表にございますように、昭和41年改正 以降、本体の料率の改正のたびに見直しを行いまして、前回の改正では、全体としては 3.5%ということになっております。これは、今までは一律の免除保険料率に設定してお りましたが、平成6年の年金改正によりまして、昨年の4月から免除保険料率の設定方 法が改正になっております。その改正の前は、今申し上げましたように、一律でござい まして、厚生年金の被保険者全体で基金を設立した場合にどれぐらいのコストになるの かということを計算いたしまして、それを免除保険料率ということで、一律に設定して いたわけでございますが、前回の6年改正におきまして、各基金ごとに代行コストの違 いがございますので、それぞれの代行コストに見合うように、1000分の32から1000分の 38の間の範囲で基金ごとに決定するという形に変更いたしております。 現在の分布は次の11ページのグラフをごらんいただきたいと思います。下の方でござ います。これは各基金ごとの代行部分を運営していくためのコストの分布でございまし て、1000分の35がこれまでの全体で基金を仮につくった場合に算定されるコストだった わけですが、そこを中心にして、大体左右対象のような格好で分布をしております。こ れは各基金ごとの分布でございまして、これがイコール免除保険料率になっておりませ ん。先ほど申し上げましたように、このグラフで申しますと、1000分の32と1000分の38 のところを上下限にいたしまして、その32と38の間が各基金ごとということになるわけ ですが、32未満、あるいは38を超えてというところは上限に張りついているという状況 に現在なっております。  その状況は上の方の表に書いてございまして、320/00以下の基金、全体で2割弱 (18.3%)の基金がこの320/00の免除保険料率になっている。あるいは380/00以上の基 金が 417、全体の22.1%ということでございまして、大体上と下のたまりはほぼ似たよ うに割合になっているというのが現状でございます。 これは前回の改正では一応11ページのグラフにあるような、それぞれの基金の代行コ ストに見合った形で設定するのが本筋であろうということで改正されておりますけれど も、ただ激変緩和ということで、32から38の範囲で上下限をつけた、当面はそういうこ とでやっているということですが、これは前回の改正の趣旨としては、企業年金のこれ までの普及状況に鑑みまして、本体との財政的な中立性、あるいは負担の公平という観 点から、今後個別化の方向ということで一歩踏み出したわけでございますが、さらにこ の完全個別化によって、本体との財政的な中立性の確保ということを進めていくべきで はないかというのが厚生年金基金制度研究会の報告の趣旨でございます。 もう一つ、代行料率に関しまして、先ほどの横長の8ページの免除保険料率の算定方 法の見直しということが書いてございますが、10ページの注の欄をごらんいただきたい と思います。これは現在の代行料率の算定方法の考え方、どういう要素が影響するのか というものを書いてございます。10ページの表の下でございますが、代行給付、これは 今後将来に向けて発生する代行部分の給付、これは毎年毎年発生するのですが、毎年の 給付の流れを現在の一時金に換算して幾らか、その負債額をはじくわけです。将来の給 付額に影響する要素は、何人この企業集団に入ってくるか、もちろん現在の状況がある わけでございますけれども、現状に何人入ってくるか、これは将来加入員の見込みでご ざいます。あるいは何人出ていくのか、これは脱退率でございます。あるいは給付は給 与に比例しますので、給与はどのぐらいのレートで上がっていくのか、これは昇給率で す。  また、その集団の中でどれぐらい亡くなっていくのか、これは加入者、受給者両方で ありますが、それは死亡率が影響する。あるいは現時点の価格に直すために、将来の給 付を現時点に割り引いているわけでございますけれども、予定利率と申しております。 こういったファクターが代行保険料率に影響するということでございます。  脱退率、昇給率、加入員の見込みについては、これは各基金の実績に基づいて算定し ておりますが、死亡率の方は、国の生命表の改定のたびに厚年本体生命表を用いて見直 しを行っております。予定利率は基金設立の昭和41年以来 5.5%という利率を用いてお りまして、この 5.5%という水準が現実の運用管理あるいは今後の日本経済、こういう ものから見てどうなのだろうかということは今疑問をもたれているところでございます 現状の運用関係で推移いたすとすれば、これは何らかの対応が必要であろうというこ とは基金制度研究会でも言われておるところでございます。 次は、先ほど横表の欄でいきますと、支払保証で1つのテーマというふうに申し上げ ましたが、既に御説明加えさせていただいた支払保証でございます。これは、ある基金 が母体企業の倒産などによって立ち行かなくなった。そうすると解散せざるを得ないけ れども、不幸にしてまだ資産が負債に対して十分でなかった。そういった場合に、約束 された年金が十分受け取れない、こういった事態が生ずるわけでございまして、そのた めに支払保証事業を平成元年度から開始したものでございます。 どういうものかといいますと、1)に書いてございますように、昭和63年の厚年法の改 正によりまして、厚生年金基金連合会の任意事業として創設されております。制度発足 当初から、全基金参加の共済事業ということでございまして、具体的な内容は2)の段に 書いてございますが、先ほど申し上げましたように、解散をした基金、解散というのは 設立事業者の倒産あるいは業績悪化いろんな理由がありますが、やむを得ず解散した場 合基金加入員に支給する年金給付につきまして、一定額は確保されるように基金から拠 出金を集めて支払うという仕組みであります。 どこまでを保証、カバーするのかということでございますが、これは上乗せ給付につ いて、代行給付相当分の3割、これが原則でございます。当然残余財産があるわけでご ざいますから、代行給付相当分の3割から残余財産を除いた積み立てが十分でなかった これは「未積立債務」という言葉を用いておりますが、未積立債務の部分が保証の対象 になる。 要は簡単に言えば、資産が負債に足りなかった部分を保証しますと。ただし、代行給付 相当分の3割までということでございます。  ただし、ウに書いてございますように、拠出金が未納の場合、基金の事業の管理ある いは執行が不適正だ、こういったために減額があり得るということでございます。財政 悪化から基金が解散したのは平成6年度が最初というふうに申し上げましたが、平成6 年度の最初の解散のときから、この事業が実際に適用になりまして、それを実際に運営 してみるといろんな問題が出てきたということでございまして、保証範囲がいいかどう か、あるいは財源は本当に大丈夫なのかどうか、こういった問題が出てきたわけでござ います。  基金制度研究会でもそういった議論が出まして、さきのこの本審議会でも、今後の検 討課題というふうに申し上げましたが、厚生年金基金連合会あるいは基金でこの事業の 見直しを昨年の秋から鋭意検討されまして、13ページにございますように、財源基盤の 強化をまずやるということになりました。  これまで支払保証の財源、その表をごらんいただきたいのですが、支払保証事業の財 源は、各基金の加入員数に応じた拠出金、つまり、頭割りで金を出してもらっていたと いうことですが、今年度以降加入員数、これに受給者数も加えておりますが、こういっ た頭割りのほかに、どれぐらい保証対象になるのか、支払保証限度額に応じた拠出金と いうことになっております。もう一つは、未積立債務額に応じた拠出金、こういった部 分に応じて拠出金を出していただくということになります。支払保証限度額に応じた拠 出金は、実際に倒れたときに制度から受けられるメリットの範囲ということでございま す。また、未積立債務額とは、これは現在資産が負債に足りない部分でございます。積 み立てが十分でないということは、これは支払保証制度の対象になりやすいということ ですから、そこはきちんと積み立てを促進してくれということで、逆に未積立部分につ いて引き出す拠出金を設けたということでして、財源強化の1つの促進材料ということ で考えられているわけでございます。  実績はどういうふうになったかと申し上げますと、一番下のマルに書いてございます ように、8年度は8億 6,500万円の拠出金でございましたが、9年度は37億円というこ とになりまして、4倍以上の拠出ということになっております。これで財源基盤の強化 は大分なされたのではないかというふうに考えています。  今後のあり方について御議論いただいたわけでございますが、基金あるいは有識者の 間でもこの制度についてはいろいろ賛否両論分かれていることでございまして、例えば プラスアルファ(上乗せ部分)が非常に厚いところはなかなかこの制度の対象になりに くいので、仕組みとしてはどうなのか。あるいはもっと一般的な観点からでございます が、人から助けてもらえるという機会を得るのは、やはり基金の運営上モラルハザード を引き起こすのではないか。そういう意味ではどうなのか。あるいは年金として保証を 強化すべきではないかというような御意見がございまして、現在賛否両論の制度である ということでございます。  14ページにまいります。あと10年度以降検討事項の中で、かなり多方面から御意見い ただいておりますのは、確定拠出型年金の導入についてでございます。現在の年金は基 金も、適格年金もそうでございますが、ある一定の年齢に達したら、幾ら幾らの年金を もらえるという約束が先行するものでございまして、これは給付が確定しているという 意味で「確定給付型」と呼んでいますが、そういう年金ではなくて、掛金を決める、あ とは幾らもらえるかは運用次第というタイプが「確定拠出型(掛金建て)」と呼ばれる 年金でございます。  これにつきまして、15ページから御説明を先にさせていただきますが、今、15ページ の2)アの概要あたりから簡単に御説明しましたけれども、実際今ある確定給付型と確定 拠出型とでは何が違うのかということです。確定給付型はもらえる額を約束する。これ は負債と資産でいいますと、負債が先に決まるということです。それに対しまして確定 拠出は掛金を決めて、あとは運用次第ということになります。資産が先行する。負債と いう概念はそもそも存在しませんけれども、そのメリット、デメリット、これは立場に よっていろいろメリット、デメリットが変わりますが、一般的に言われているメリット デメリットが真ん中から下に書いてございます。例えば、確定拠出型年金のメリットが 最初に書いてございますが、掛金は決まっても給付の方は約束はしておりませんで、事 後的に運用次第で決まるということですから、母体企業にとっては後発の負担が生じな いということ、掛金を出したらそれでおしまいという関係になるわけです。  これは従業員側からみると、1つデメリットになりやすいということですが、デメリ ットの最初の2つがすべてでございまして、例えば投資リスク、投資が必ずしも予定利 回りで回らないと不足金が発生する。そういった事態に対して、確定拠出型の場合には こういった投資リスクを加入員がすべて負う形になる。給付額が事前に確定しませんの で、老後の生活設計が不確定になりやすい。こういった問題が指摘をされているところ でございます。  一方、メリットとしては、メリットの最後に書いてございますが、加入員が運用方法 を選択するのも自由。あるいは転職に際して、自分のもらえる額が自分のある意味では 運用の資産残高でありますから、やめたときに、別の企業に移るときはそれを持ってく るのは可能になりやすいということで、その辺はメリットだということも言われていま す。  こういったタイプについて、政府としても研究をしてみろということになっていまし て、14ページでございますが、ことしの3月の規制緩和推進計画におきまして、今年度 から確定拠出型年金について、公的年金制度全体についての位置づけを検討するという ことになっています。一応11年度末までに結論ということになっていまして、11年度末 までといいますと、次期改正よりは1年後になります。  次にテーマが変わりますが、16ページの企業年金基本法関係でございます。今まで8 ページの今後の検討課題のうち主なものについて御説明をさせていただきましたが、こ の企業年金基本法の関係は1月までの年金審、この審議会におきます基金関係の検討の 後、新しい形として加わったものでございます。これは昨年、おととしあたりから、各 方面から企業年金全体について、何か検討すべきではないかと。老後の所得保障という ことで補完補完と言わずに、具体的にどうなのかということを指摘をされておりまして この3月の閣議決定で、企業年金の範囲が必ずしも明確にはなっておりませんが、企業 年金に関する包括的な基本法の制定を検討するということで、現在、大蔵、厚生、労働 3省でこのテーマについて検討を進めております。  その検討事項を現段階において、テーマとしてはこんなところかなというものをまと めたものが17ページでございます。これは大蔵、厚生、労働3省で、これまで6月から 実は検討してまいったものでございますが、ここに書いてあります検討事項の性格につ いて少し説明させていただきますと、一応老後の所得保障との関係から、何かしら企業 年金に関して共通ルールの設定が必要ではないかということで、一応3省として、今現 在こんなところが今後のテーマであろうということで、テーマとしてこんなものがある ということを世に問うということで、このような検討事項をまとめております。タイト ルが「企業年金に関する包括的な基本法」と書いてございますが、これをそのまま特定 の法律にするということではございませんで、法律にするにしてもいろんな形態がござ いますので、共通ルールとしてこんなところかなというところでまとめたものでありま す。  それぞれの事項について、これから必要性も含めて、今後高齢化社会における企業年 金で、こういうものを実際ルール化するかどうかは今後検討していくということでござ います。まず柱から申し上げますと(1)、(2)、(3)、(4)が大きい柱でござ います。 (1)が最大のテーマであろうかと思われますが、受給権保護が、(2)には受託者責 任、(3)には情報開示が主な柱として書かれてございます。受給権保護は、さらに細 かく、1)、2)、3)と書いてございますが、1)には受給権の付与というものが書いてござ います。 これは現在は年金の受給権は、退職あるいは支給開始年齢の到達で初めて権利が確定す るというのがございますが、企業年金におきましては、諸外国の立法例がありますけれ ども、加入段階から勤務期間に応じて年金の受給権を付与することもみられることでご ざいまして、今後これをどう考えるかということでございます。また、受給資格期間、 これは日本の場合には厚生年金基金は20年未満、適格年金の場合は20年以上の受給資格 期間を要件としておりますが、雇用の流動化の実態から長い期間でいいのかどうかとい う問題。  2)は財政基準でございます。これは特に御説明加えませんが、厚生年金基金は既にや っておりますが、財政検証、継続基準あるいは非継続基準から資産の積み立ての義務づ けをどう考えるかという点でございます。  3)は支払保証でございます。  大きな柱としては(2)が受託者責任で、(3)が情報開示、(4)がチェック体制 でございます。  次のページは、企業年金基本法に関しまして、検討する事項として、あとその他、 ポータビリティ(通算措置)をどう考えるか。あるいは今度は基金のみならず企業年金 全体としての確定拠出型の導入についてどう考えるか。あるいは長期勤続優遇の給付設 計。これはすべての企業年金はこういうことでございませんけれども、こういうものも あるということでございますが、こういった長期勤続優遇の体系について今後どう考え るべきか。あるいは一時金と年金の選択のあり方についてどう考えるか。また、税制そ の他の仕組みの公平性についてどう考えるか。  この辺を今後3省として検討していくということでございまして、基金にもかかわる わけでございますから、本審議会でも御議論をいただきたいと考えています。一応3省 としては、来年の3月をめどに事務的な検討を進めていきたいという腹づもりでおりま す。  19ページから国民年金基金に関しての説明をさせていただきます。  国民年金基金は平成元年の改正で設けられた制度でございますが、発足は平成3年か らでございます。1ページの年金制度の体系の図をごらんいただきますと、1号被保険 者の方々については、もともとは基礎年金しかないわけでございまして、3階部分はお ろか、2階の報酬比例部分もないという関係になっておりますが、その辺の保障のない ところをこの制度で埋めようという考え方に基づいて発足をしたものでございます。細 かい点は除きまして、現状どうかと申し上げますと、20ページに参りますが、現在加入 員数が91万。これは対象者全体では1号被保険者 1,910万人でございますから、まだま だということでございますが、今後ともさらに普及に努めていくというのが課題でござ います。 年齢分布が一番下に書いてございますが、やはり40代以降が非常に多うございまして 40代以上で加入者全体の7割となっております。やはり老後のことを考え始めるのはど うしても40過ぎになるようでございますが、最終的には60歳前までの加入でございまし て、やはり40ぐらいで入ってからの方々ですと、掛ける期間が短いというようなことも ございまして、60歳台前半の場合には本体である国民年金の任意加入の制度がございま すので、その辺、少し加入年齢あるいは掛ける期間を延ばしてくれないかというような 要望も現場から聞いているということでございます。  以上でございます。 ○事務局  それでは引き続きまして、私の方から、国際年金通算につきまして簡単に御説明を申 し上げます。  長年ドイツとの間で年金通算の話し合いを進めてきております。現在進行形ではござ いますが、交渉が詰めの段階に参っておりまして、次の通常国会に協定案と国内法の手 当につきまして上程をしたいということで作業を進めております。本審議会には、年が 明けまして、国内法の手当につきまして、正式にお諮りをしたいというふうに思ってお るところでございますが、本日はそれに先立ちまして、途中経過の報告をさせていただ きたいと思います。  まず二国間で年金の協定をする必要性でございますが、お手元の資料2のところでご ざいます。経済のグローバル化ということで、非常に人的な交流が増えているという中 で、例えば、我が国から外国に派遣されるサラリーマンの方を考えてみますと、住んで 働く国の年金制度に入るということから、例えば日本とドイツで考えますと、日本から ドイツに派遣されるサラリーマンの方は、日本の厚生年金とドイツの年金制度の両方入 らなくてはならないということで、制度が両方適用されて、保険料を二重払いしなくて はならないという問題があるわけでございます。  もう一つ、どこの国も年金制度につきましては、それなりの加入期間を要件としてい ることから、せっかくドイツの制度に短期間入って保険料を払っても、ドイツの給付に 結びつかないという保険料の掛け捨ての問題がございます。  こういう問題を解決するために、諸外国におきましては二国間で協定を結んで問題の 解決を図るという対応がなされております。我が国も現在交渉中のドイツを初めといた しまして、順次諸外国との間でこういう協定を締結していきたいと考えております。  交渉の状況でございますが、1昨年の秋に政府間での交渉を開始いたしまして、都合 6回の政府間交渉をいたしております。本年5月の交渉で主要な論点について大筋の合 意ができ、それを受けまして、現在双方、政府の部内で検討を進めておりますが、まだ 若干の両国間の調整を図る必要があるという状況でございます。  現在進行形ということでございますので、協定の中身につきましては、確定的なこと は申し上げにくいわけでございますが、協定の骨格について、まず資料2の2ページを お開きいただきたいと思います。  まず1つは、日本とドイツの両国の制度の二重適用を回避をしようということでござ います。日本からドイツに一時的に派遣されるようなサラリーマンの方、こういう方は 日本にいずれ帰ってくるのが確実に見込まれるということでございますので、一定期間 現在5年をめどということで検討を進めておりますが、5年程度は引き続き日本の厚生 年金の制度だけの適用ということで、ドイツの制度は免除することを考えております。 これは相互主義でやるということでございますので、逆にドイツの企業から日本に派遣 されるサラリーマンの方については、逆に一定期間は日本の制度を免除するということ を考えております。 これが先ほど申し上げた保険料の二重払いの問題の解決ということでございますけれど 次に2)のところでございますが、これは保険料の掛け捨ての問題を解決するというとこ ろでございます。例えば、例のところに書いておりますが、現在日本の厚生年金で見ま すと、老齢厚生年金加入期間は原則25年ということで、例えば日本の厚生年金に18年、 ドイツの制度に7年入ったという人の場合は、現在では日本の厚生年金の受給資格はな いわけでございますけれど、この協定ができますと、ドイツの期間の7年を足し合わせ まして、日本の受給資格の有無を判定するということでございます。  この結果、3)のところを見ていただきますと、それぞれの年金制度から支給する年金 の額は、それぞれの制度に加入した期間に応じて決めていくということでございます。 先ほど申し上げました日本の期間の18年、ドイツの期間の7年に対応し、日本の制度か らは18年分の老齢年金を支払う。ドイツの制度からは7年分の老齢年金が支払われると いうことになるわけでございます。  もう一つ、2)の例2のところに書いてございますけれど、現在日本の制度におきまし ては、障害年金は日本の制度に加入した、制度加入中の事故でなければ、日本の障害年 金は出ないという仕組みになっておるわけでございますけれど、この協定によりまして 基本的に日本の制度とドイツの制度と同等に見なすという考え方に立ちまして、ドイツ の年金制度の加入中の事故につきましても、日本の制度加入中の事故と見なして、支給 要件が満たされたものという取り扱いをしていこうということで検討を進めております  最後に、今後の対応でございますけれど、冒頭申し上げましたように、現在外務省、 共済各省の御協力をいただきまして、次の通常国会に協定案と国内法案を上程すべく作 業を進めている状況でございます。  3枚目以降はその資料をつけております。3ページ目は各国との人的交流の実態とい うことでございまして、日本から外国に行っておられる在留邦人数については、定住者 を除いた3カ月以上の長期滞在者数で見てみますと、左側がございますけれど、アメリ カが圧倒的に多く、ドイツはアメリカ、イギリス、シンガポールに次ぎまして4番目、 大体2万1,000人の在留邦人の方が長期滞在をしておられるという状況でございます。  4ページ、5ページ目はドイツの年金制度の概要を資料でまとめさせていただいてお りますが、時間の関係もございますので説明は省略させていただきます。以上でござい ます。 ○会長  ありがとうございました。企業年金、国民年金についての話、国際年金通算協定の説 明が終わりました。御質問、御意見など、どなたからでも御自由に御発言ください。 ○A委員  まず企業年金基本法の制定についてですけれども、一応対象範囲は厚年基金、適年、 さらに退職一時金、財形年金等々が考えられますが、それらはおのおの性格も異なる制 度であります。こういう基本法といった包括的な法律の制定が適切であるかどうか、 非常に問題多いと思います。そこで3省の検討段階では、既に基本法は制定するという ことで検討しておるのか。それとも制定そのものも含めて検討対象なのか、念のために お伺いしたいと思います。これが第1点で、1つ1つお答えをいただきましょうか。 ○事務局  先ほど申し上げました基本法というタイトルで今確かにやっておりますけれども、こ のままでやるとは何も決まっておりません。ただ、何らかの共通ルール、あるいは今後 の高齢化社会において企業年金に関してはどういう姿でやっていったらいいのか、その 辺の方針は明確にしておいた方がいいのではないか。それは法律の形態に結びついてい くのか、あるいはだめなのか、その辺はこれからの御議論であるというふうに考えてい ます。 ○A委員  第2点ですが、適年に対する特別法人税が今かかっておるわけですが、これは年金財 政を悪化させ、企業負担を増大させております。かねてから、これの廃止については関 係者諸団体要望しているところですけれども、これは基本法制定とは別にすぐにでも撤 廃すべきと考えておりますが、今度の3省の検討の場では、それはどういうふうにお考 えでしょうか。 ○事務局  18ページの2の(5)でございますが、確かに違いがございまして、例えば厚生年金 基金でございますと、事実上ほとんど特別法人税は課税されていません。適年は資産に ついて1%の課税がありますけれども、こういった問題を基本法とは別に考えていくの か。その辺も1つ議論にはなっているということでございます。それはこれからの税制 の問題の検討の1つというふうに考えております。 ○A委員  第3に、確定拠出型年金の導入につきましては、今日いただいた資料の2(2)で触 れておりますけれども、最近の労働力の流動化あるいはベンチャー企業などが資金負担 能力がないことなどを考えますと、そういう企業でも採用しやすいということから、非 常に企業、勤労者ともにニーズがある制度であります。企業年金基本法の検討とは別に 確定拠出型年金制度の導入についても、早急に検討すべきではないか、年金審議会とし ても検討したらどうかというふうに考えますが、いかがでしょうか。 ○事務局  基本法にからめての議論で現在確定拠出を検討していますけれども、もともと政府全 体として、確定拠出型の年金をどうするかというのは課題でございます。この資料では 14ページで閣議決定の概略を載せていますが、基本法とはまた別に一般の企業年金、こ れは大蔵と厚生が担当省庁になっておりますので、一応基金、適年がとりあえず念頭に あるということでございますけれども、そういったものの中で、確定拠出型のものを入 れるかどうかについては、基本法の議論とはまた別途検討は進めさせていただいておる ということでございます。 ○B委員  統一的企業年金法の検討事項の中に、資料の18ページの中に2の(4)で、一時金と 年金の選択のあり方というふうに書いてありますが、統一的企業年金法なるものを検討 される際に、退職一時金そのものはどういうふうに考えておられるのかがちょっとよく わかりにくいんですが、例えば受給権ということをいう場合に、年金基金や適格年金に 比べて、退職一時金は非常に不安定な状況にありますけれども、そういう状況は、これ は枠の外なのか、退職一時金についても受給権なんかを強化するということを考えてや ってらっしゃるのか、あるいはその辺はこれから線引きをするのか、その辺をちょっと 伺いたいのですが。 ○事務局  企業年金に関する包括的な基本法ということでございまして、具体的にどういう制度 を対象にするかはこれから議論になるということでございます。これからということで ございます。 ○C委員  A委員に重ねてですけれども、適格年金制度における特別法人税の撤廃ですね。 これにつきましては、企業年金基本法の議論とは別にぜひとも早急に実現をしていただ きたい。特に厚生省にお願いしますと、これは大蔵省と言われるわけですね。大蔵省に 言うと、税金を取るのはやめたくないとこういうことになるわけですが、そのときに言 われることは、厚生年金基金と適格年金の違いについて、終身年金かどうかと、こうい うことをよく言われるわけですけれども、これは終身かどうかにつきましては、各社の 労使が労働条件の設定の仕方という中で決めていることでありまして、老後の所得保障 を目的に外部拠出を行って財産の保全を行うと、こういうことについては、年金基金も 適格年金も同じでありますので、そういう意味では、税制面で差別的取り扱いがないよ うにということをぜひ御理解いただきたいと思います。  そういうことに関連してですが、企業年金基本法についても閣議決定により、検討が はじまったということですが、これは企業のサイドで幾つかの経済団体が企業年金基本 法の検討をということを言っているんですが、閣議決定された裏に、そういう産業界の 声も含めて入っているのだとすると、若干パーセプションギャップがあるように感じら れるので、確認をしたいのですけれども、1つは資料の14ページのところの閣議決定の 「確定拠出型年金について、公的年金制度全体の下での位置付け等を検討する」、こう ありますけれども、これは公的年金制度全体の検討をしていく中で、企業年金としての 確定拠出型年金を検討しようというのか、公的年金の一部についても確定拠出型年金を していいのか、この辺の提案が非常に微妙なことになっておるわけですね。これが1点 あります。  別途の資料の参考資料に、経済団体の経団連あるいは経済同友会の資料が一部ありま すけれども、これは企業年金に関するところだけ出ているわけですが、経団連及び経済 同友会のレポートは、現在の公的年金制度の大部分を確定拠出型に変えて、そして、そ れを民営化すると、そういう大前提の中で企業年金について見直すとこう言っているわ けです。公的年金制度の確定拠出型への転換なり、民営化ということが議論されない中 で、企業年金だけを議論するとちょっと経済団体が要望していることとは少し違う形に なってきているわけです。  これはどれがいい悪いではなくて、パーセプションギャップがちょっとあるのかなと 何かもし解釈が違っていれば、お教えいただきたい。 ○事務局  閣議決定のごく一部の抜粋だけでございますけれども、載っているパートが14ページ の4行目でございますが、確定拠出型年金の検討については、3月末の規制緩和推進計 画の金融・証券・保険関係の金融のところに実は載っておりまして、確かに言葉ははっ きりしないのですけれども、金融という場所もいいかどうかは別なんですが、ここでは 企業年金のことを言ったものと政府としては考えています。 ○C委員  政府としては考えている。 ○事務局  はい。 ○C委員  同じように、資料の16ページに、今度は「企業年金に関する包括的な基本法の制定を 検討する」と書いてあるわけですね。これが閣議決定になった、なぜですか。産業界と しては、公的年金について、特に報酬比例部分についてですが、確定拠出型への転換な り、民営化ということを前提として、企業年金に関する基本法を制定したい。企業年金 だけについて基本法を制定してほしいという経済団体はないんじゃなかろうかと思うん ですが、そうすると、閣議決定はどこからこれが出てきたのか、非常に理解に苦しむと ころであります。 ○事務局  これは私の理解ですけれども、公的年金自体について、確定拠出型の導入を検討した らどうかという議論は、厚生年金の民営化ということで、そういう議論があるわけです から、これはこれでこれまで年金審でも資料もお出ししましたし、これはこれで大いに 御議論をお願いしたいということです。公的年金についての確定拠出型については、閣 議決定のところには何も出てきませんけれども、これはこの審議会で十分御議論をお願 いしたいと思います。  それから、閣議決定に出てまいりますのは、確定拠出型年金について、公的年金制度 全体のもとでの位置づけ等を検討すると書いてありますけれども、これは中身としまし ては、企業年金に限った話でございまして、公的年金をどうこうするということは一切 含まれてない。ただ、おっしゃるような御議論というのは、公的年金であろうと企業年 金であろうとあるわけですから、それはこの場で自由に御議論お願いしたいと思います ○C委員  わかりました。そうしますと、経済団体のレポートの中で、企業年金に関する包括的 な基本法を検討すべし、と書いてあるレポートが経団連も経済同友会も出しているわけ ですが、その前提には、公的年金というのは相当大幅な仕組みの変更があるという中の 一部として出ていますので、そういう意味では産業界とお役所の間には若干パーセプシ ョンギャップがあるのではなかろうか。 ○D委員  いただいた資料の1の1ページ目でございます。先ほど事務局は冒頭の絵についてよ く使われる例だと、こういう御説明でございますが、確かによくこういう絵を見るわけ ですが、この絵そのものが極めてミスリーディングな絵であって、こういう表現形態は ぜひ今後当審議会の資料としては使わないようにしていただきたいと思います。  なぜかといいますと、ここにある厚生年金基金や適格退職年金というのは、今はいろ いろな種類のものがあるとしても、当初は退職一時金の分割払いといいますか、支払い 形態の変更であって、これは退職一時金と全く無関係にこういうものがぼんと登場した わけではない。したがって、共済年金における職域部分とは全く性質が違うんですね。 それがあたかも同じであるかのように、こういうふうに図示されることは、現在の社会 保障制度の枠組みにおける官民のそれこそギャップの問題、なかんづく公的年金の一元 化というものが議論として長い間行われている歴史を踏まえて、なおかつそれは現在共 通のテーマとして確認をされてきた経過からして、極めてこれは不適切であるというふ うに私は考えます。このことについて、ぜひ本日を機会に共通の御確認をいただければ ありがたいというふうに思います。  それと関連いたしまして、やや制度論的なことについて、私どもの見解を少しこの機 会に整理をして述べさせていただきたいと思いますが、まず企業年金そもそもの発足は 日本の労働慣行の特徴であります退職一時金制度というものの支払形態の変更というと ころから始まったものであり、現在いわゆる適年はその性格をかなり純粋に保持してい るわけですね。しかし、今確定拠出の論議がございましたが、この退職金そのものは個 別労使の交渉を通じて協約化され、1人1人の労働者の退職時における属人的な要素に よって1円の桁までが決まる性質のものであります。そういうふうな性格のものが、い わゆる確定拠出、つまり逆に言えば変動給付といったものにすりかえられていくという ことはこれは労使の間で協定されている協約そのものをいわばスポンジ状にしていくも のだろうというふうに考えますし、私どもはそれに合意することはとてもできません。  ですから現在の基金制度の給付の中に、確定拠出の要素を入れること自体は一般論と して反対しませんが、少なくともその支払い原資が労働協約に基づく退職一時金である 部分、ここの外にある、いわば第2付加給付と申しますか、そういうところについては これは当該労使の自由設計として行われればいいことですが、退職金に根拠を置く部分 については、そうした確定拠出型のものを導入することについて反対でございます。  先ほどから御議論がございました、この閣議決定に至るこの確定拠出の議論がもっぱ ら規制緩和小委員会の舞台から始まって、金融政策との関連で議論されてきたことにつ いて、私どもは非常に強い違和感を覚えておることをもう一つ申し上げておきたいと思 います。本来、今のような性格を持った企業年金はあくまでも労働条件の一部ですから この問題が金融政策の中で議論されること自体が、議論の軸として非常にねじ曲がって いるのではないでしょうか。また、その受給権の保護ということが理由にされて、企業 年金基本法とか企業年金法とか議論されていますが、これもそういう文脈の中から始ま ったことで、当然のことながら、これはやるのだったらば、労働省がやるべきことが、 労働省は後から加わった形で現在の議論が進められている。これについても話の筋が非 常に違うと思います。  私どものまとめてきたものにつきましては、付属資料の中で、短いものでございます が、集録をしていただいているので御参照をいただければありがたいと思いますが、参 考資料の29ページ、後ろの方でございます。この中で、最後に(7)といたしまして、 「企業年金の受給権保全のため、法制面の整備をはかる」ということを挙げてございま す。これはすかしてみると企業年金法の制定を要求しているかに読めるかもしれません が、あくまでも趣旨は受給権保護にございます。  というのは、先ほどの事務局の御報告で固有名詞こそ挙げられておりませんが、事実 バブル崩壊後の中で企業の倒産と基金の解散という陰惨な事例がございまして、これは どういう意味で陰惨かというと、企業年金が崩壊したというだけではなくて、本来この 基金制度なかりせば、あるいは安全だったかもしれない本人の退職金そのものが支払わ れないという事例でございましたので、私どもとしては非常に「陰惨」という形容詞を 使うところでございます。当然のことながら、ここでは国のつくった制度、そして国が 積極的にそれを進めてきた制度、そのもとでそういう陰惨な事例が起こったわけであっ て、我々としては二度とそういうことが起こらないような保証を少なくとも望みたい。 そのために当該労働者の受給権だけは何としても保全されるような措置というものをこ の企業年金制度の中に求めるというつもりでこの一文を書いたわけでございます。しか し、それは先ほどのような意味で、現在までに至る確定拠出型の導入も含めた企業年金 法の議論の脈絡とは大分違うものだというふうに感じざるを得ないことを申し上げてお きたいと思います。  それから、もちろん退職金制度そのものが、いつまでもこれまでのような在り方であ るかどうかはわからないわけで、そのこと自体は変わっていくと思いますが、しばしば 確定拠出型のメリットとして、ポータビリティが保証されるという議論がございます。 しかし、ポータビリティを完全に保証しているのはまさに公的年金そのものだというの が私たちの理解です。したがって、もし企業が、倒産かどうかは別にいたまして、いろ いろな事情で基金の解散ということを選択するのであれば、それに係るポータビリティ の保証というのはその代行として個別基金にプールされていた積立金を連合会よりもむ しろ公的年金本体に戻すのが筋ではないだろうか。このように考えております。以上で す。 ○C委員  私どもはD委員と解釈が合っている部分と徹底的に合わないところが当然あるわけで すけれども、企業年金というのが厚生年金基金であれ、適格年金であれ、退職一時金を 前提にしているという考えについては、全くD委員と同じです。そうしますと退職一時 金なるものが今後どうなるか。退職一時金を企業が払わなければいけないという法律は ないわけですね。今後退職金を払わなくなるかもしれないと、わからないんですが。 ○C委員  退職金は個別労使の問題でありますから退職金を払うとしたときにどういう規制をさ れるか。退職金を払うよといって約束したものを年金にしたために財政が悪くなって払 わないと、これは民事上問題なわけですね。したがって、そういうことがないように財 産の保全をきちんと行うと、これはよろしいわけですが、運用の詳細につきまして、個 別労使の領海を越えて、国が規制するというのは規制緩和の趣旨に反するというふうに 我々は考えざるを得ない。そう言いますと企業年金基本法なるものが一体何を議論する のかなと。  現在の厚生年金基金と適格年金のそれぞれの制度の経緯とよさがあるわけですから、 それぞれのよさをきちんと認めることが先にあって、先に企業年金基本法ありきという 形で議論されるのは、どうしてそういう議論を最初にするのか、疑問を感じます。 ○D委員  2〜3補足をさせていただきたいと思います。何といっても我が国における企業年金 の大きな2つの柱は適年と基金ですから、もし企業年金基本法というふうなものが考え られるのであれば、少なくともこの2つの制度は包括的に扱うものでなければ、独立し た法としての意味がないだろうと思います。ただ、その際現在の適年と基金の間にある さまざまな不均衡あるいは不平等な扱いについてはこれを是正することが前提になるだ ろう、そのように考えております。  先ほどの参考資料の29ページのところにもその問題について幾つか書いてございます が、例えば(6)の2)につきまして少しコメントをさせていただければ、現在適格年金 としてつくられたものはそのままのファンドを持って厚生年金基金へ移行することがで きます。しかし、現在厚生年金基金というスタイルをとってしまったものについては、 これを諸般の事情でやめようという選択をする場合であっても、これをそのまま適格退 職年金の方へ移行することはできません。一たん解散し全部払い戻してもう一度ファン ドをつくり直す。当然そこでは所得というものが発生いたしますから、ここは課税対象 にならざるを得ないわけですね。税制面から見たときの不均衡の一番大きいのは、先ほ どから御指摘の特別法人税の問題にも増して、いわば不可逆的な2つの制度の間の関係 であろうというふうに考えます。2つの形態の移行について、一方的ではなくて双方向 的なシステムを用意するというのがまず第1の前提ではないだろうか。  それから、特別法人税の面の扱いについても、私どもも撤廃も含めて、少なくとも税 制上の扱いを平等にすべきなのではないだろうか、少なくともこの要件が満たされない と、この2つを包含する統一的な企業年金法などとは余りにも難しいのであるまいか、 そのように考えます。 ○事務局  後で補足してもらうことにいたしまして、今、D委員、C委員の御意見に対しまして 若干反論させていただきたいと思います。  最初、1ページの図が非常に不適切だというお話があったんですけれども、これは確 かに基金にしろ適年にしろ、上乗せ部分につきましては、退職金が原資になったという ことはおっしゃるとおりでございます。ただ、基金にしろ適年にしろ、それぞれ拠出段 階、給付段階あるいは途中段階で、これは退職金とは明らかに税制上の取り扱いも別で ございますし、また給付設計、いろんな規制や恩典、これは全く退職金とは別のシステ ムとして構築されておるわけでございます。ただ単に原資が退職金だからすべて退職金 扱いでと言うのは適切でない。企業年金は退職金とは全く別の制度として仕組まれてい る以上、これは退職金とは別のものとして取り扱うのが当然ではないかということでご ざいまして、この図自体については、私はこれは不適切ではないと思っております。  それから、確定拠出型につきましては、退職金につきましての労使協約を覆すことに なるのではないかというお話ですが、これは実は基金制度研究会のときにもそういう議 論が随分あったわけですが、基金につきまして、給付をどうするかという問題につきま しては、あくまでもこれは労使合意が前提になっておるわけでございまして、労使協定 を破って、基金が確定拠出型を導入するということはあり得ないわけです。労使が合意 して、それで基金につきましては、役員会とか代議員会とかいろいろございますが、そ ういったところできっちり了承を受けて初めて申請書が上がってくるわけでございまし て、労使の合意というのを最大限尊重するということでやっておるわけでございますか ら、今おっしゃったようなことは、私はそういう批判というのは当たらないのではない かと思っております。  それからもう一つ、C委員の御意見の中で、適年にしろ基金にしろ労使合意を尊重す べきであって、何か基本法みたいなのをつくって規制するのはおかしいというのがあり ましたが、そういうふうに受けとめたわけですけれども、これはどこの国でも、特にア メリカなどが典型的でございますけれども、企業年金につきましては、日本以上に厳し い規制があるわけです。これはなぜかといいますと、やはり税の恩典を与えておるから です。また、企業年金は労働者の老後生活にとって非常に重要な役割を果たしているわ けでございますので、そういったいろいろな観点から規制を行っている。日本は私は世 界的に見れば、まだ甘い部類に属すると思っております。今あらゆる面で“グローバル スタンダード”ということが、言われておるわけでございまして、そういう観点から見 ましても、基本法をつくって規制するのはおかしいという御批判は当たらないのではな いか。 それから、基金制度の上であくまで労使合意を最大限尊重するということは、 これはこれまでも私どもはそういう考え方でやってきたわけですし、そういう考え方は これからも尊重しなければいけないと思いますけれども、企業年金につきまして、まだ まだ不安感を持たれたり、体制の整備ということではいろいろ足りないところがあるわ けですから、そういった点を補っていくというのは当然のことではないか、こう思って おります。 ○D委員  誤解があるといけないので、一言だけ言わせていただきたいのですが、これは共済の 職域部分というものとの対応で申し上げているんです。共済の職域部分というのは、こ れは公務員の退職金には一糸も触れずにこれはつくられているんですね。民間の方のも のは退職金を原資にして、ただ、それの分割払いというところを出発点につくったもの であって、それを同列のものであるかのように、このように図を書くのは不適切ではな いか、こういうふうに申し上げたのであって、ぜひ誤解のないようにお願いいたします ○E委員  ちょっと質問、基礎的なところで恐縮なんですが、代行部分にプラス3割を上回る年 金給付をしろというふうになっていますけれども、これは何か利率がどんどん下がって くれば、これが難しくなるのは目に見えているわけですけど、3割という根拠はどこか ら出ているのかということが1点でございます。  もう一つは、D委員もおっしゃっていたけど、代行部分を抱えているために倒産した 場合に非常にガタガタするわけですが、なぜこの基金が代行部分を抱えていかなければ いけないのか、その2点について教えていただきたいと思います。 ○事務局  3割は当初からそういうことでやってきたわけですが、なぜ3割か。代行部分に上乗 せするわけですから、最低限どれぐらいがいいのかということで3割以上お願いしたい ということでございます。何で5割じゃないか、何で 100%でないのか、いろいろ議論 がありますが、3割ぐらいが最低限としてはいいところかなということで設定をいたし たということでございます。  それから、代行部分はなぜあるかということですが、基金制度はもともと沿革から御 説明申し上げましたように、昭和40年改正のときに、1万円年金に引き上げる際に、保 険料負担が大変なので、厚生年金本体との調整をやるという前提で始めたということで ございまして、調整を行う、代行するという形で基金が出発したと、そういうことでご ざいます。  それから、企業年金基本法について、なぜ規制緩和計画の金融の中でとりあげられて いるのか、これは金融には書いてございますが、金融政策の話をしているのではござい ません。ですから正直申し上げれば、私ども規制緩和計画の金融の中でこの話が入って いるのは、確かに奇妙だなというふうには思っております。流れとしては自民党の方か ら、最初こういう企業年金法のようなものを検討してみろという話が出て、そのとき自 民党では、アメリカのERISA法のような法律を考えてみろと。ERISA法という のは何かと言えば、これは17、18ページに書いてあるようなものでアメリカのERIS A法です。  ですから日本の実情に合うのか。基金はかなりやることはやってきたというふうには 考えておりますけれども、適格年金はどの程度やれるのか。あるいはもしやれないとす れば、適格年金は改めてどういうものなのか、また1つ基金とは違うのかなという問題 も出るかもしれません。  あくまでも私ども政府のスタンスは、この基本法の検討は、受給権保護が核心である と、かように考えております。 ○F委員  厚生年金基金制度が発足した当時の関係者のひとりとして、3割等の問題が出ました ので申し上げたいと思いますけど、当時「1万円年金の実現」という際に財界等から退 職金との調整がどうしても必要である。それがなければ、厚生年金の給付の引き上げと いうのは到底無理だと。しかも当時の給付水準というのは 3,500円ぐらいだったわけで す。それをまともな年金、1万円年金にするためには財界等との要請から、厚生年金制 度との調整が必要であるということで、基金制度でありますけど、当時一般的には「調 整年金」と言われたわけですね。  しかし、そういう調整をする以上は、少なくともこれは財源は退職金であっても、年 金制度の性格としてはあくまでも公的年金である。法律構成も公的年金であるという構 成をとる。そのためにやはり「代行」という考え方がどうしても必要であるというよう なことで代行制度という考え方が出たのが1つ。  もう一つ、なぜ3割になったか。実はこの制度を創設する際に関係者でかなり議論が あったわけですね。法律はできたんですけど、1年間設立基準をどうするか。あるいは 給付の厚みをどうするか、これは社会保険審議会の中に厚生年金部会があって、その厚 生年金部会で1年間大もめにもめて議論した話です。  そこで3割というのは、労使の合意で、最低この程度は上のせし、公的年金制度とし ての厚生年金基金制度というためには必要であるというようなことで3割が出たという ことで申し上げたいと思います。 ○ 会長  時間も大分たちました。人口問題審議会の報告書について、事務局から説明をいただ きたいと思います。よろしゅうございましょうか。では、お願いします。 ○事務局  お手元の資料3ということで、「少子化に関する基本的考え方について」と題しまし て、人口問題審議会から10月27日に報告が出されております。この背景としましては、 「少子化」という問題、人口が減っていくという問題について、きちんと小委員会で議 論すべきだということで、2月から人口問題審議会の審議が始まりまして、各界の有識 者あるいは少子化を考える市民会議、県民会議といった形で、全国8ブロックで少子化 問題、主に厚生省主催あるいは担当県共催で議論いただきまして、そこにも人口問題審 議会の委員に参画をいただきまして、そういうような議論を踏まえまして取りまとめら れたものでございます。  位置づけでございますが、これから内容を御説明いたしますが、大変幅広いものとな っておりまして、少子社会をどう見るかという予測から、そして少子化というものにど う対応するかという問題。内容的にも労働、社会保険、税制と、こういった非常に幅広 いことにも触れられておりまして、これはあくまでも国民的議論の出発点である、こう いう位置づけになっておりまして、厚生大臣初め関係21省庁の大臣に報告され、これで 検討してほしいとこういった位置づけになっております。  以下簡単に説明申し上げます。 ○事務局  私の方から、内容を御説明させていただきます。  資料3がお手元にあるかと思いますけれども、概要で簡単に御説明し、ポイントの部 分は本文をごらんいただきたいと思います。全体の構成でございますが、「はじめに」 で、なぜ少子化の審議を始めたかと。少子化は我が国社会への警鐘としてとらえ、これ を国民全体の問題としてどう対応していくか、明らかにすることが、未来の世代に対す る責務ではないかと、こういう観点から審議に入っております。  「少子化の現状の将来の見通し」、改めて人口の将来見通しをここで確認しておりま す。現在、合計特殊出生率1.42で、これは人口を維持するのに必要な2.08を大きく下回 っております。こうした低い出生率水準の下で子供が減るという少子化が進行し、これ によって、生産年齢人口は1995年を頂点に既に減少しております。引き続き総人口も 2007年を頂点に減少に転じ、その後も減少していく人口減少社会になる。人口の将来推 計は、高位推計をとっても人口が減少していく社会になることは避けられないというこ とをまず確認をいたしまして、その影響の分析に入っております。  「少子化の影響」、IIIのところですけれども、これは現行の諸制度を改革しないで 現在までの傾向が続いたとした場合の見通しでございます。 大きく「経済面の影響」と「社会面の影響」に分けております。経済面の影響では、 生産年齢人口が減少しますので、これが労働力人口の減少につながり、経済成長に影響 を与える。  マクロの経済成長に影響を与えますけれども、国民1人1人の生活水準で見るべきだ という議論がございまして、(2)のところで経済成長の低下と高齢化の進展に伴う現 役世代の負担の増大が相まって、現役世代の手取り所得が低迷するというような影響が 生じるというふうに分析をしております。現役世代にとって働くことが生活水準の向上 に結びつかないような社会というのは非常に深刻な状況になる可能性があるというのが 経済面の分析でございます。  次に社会面でございます。社会面では、単身者や子どものいない世帯が増加するなど 家族が大きく変わる。子どもへの影響もある。また、地域社会も過疎化・高齢化が一層 進行し、市町村によっては住民への基礎的サービスの提供が困難になるような影響が出 る。こういう経済面、社会面の影響をあわせまして、家族の変容については、これはプ ラスととるか、マイナスととるか、意見が分かれるところでございましたが、それ以外 については若干プラス面の影響を、住宅土地問題、環境問題と指摘する意見もありまし たけれども、それはあくまで短期的な影響であるという反論もまたあり、「概ねマイナ ス」というふうに評価をしております。  次に、少子化の要因と背景の分析に入っております。2ページ目を見ていただきたい のですが、「少子化の要因」としては、今1.42の合計特殊出生率を生んでいるものは未 婚率の上昇が一番大きな原因でございます。未婚率の上昇を分けると結婚がおくれてい るという晩婚化の進行とそのまま結婚しないという生涯未婚率の上昇があるわけですが なぜ、この未婚率が上昇しているかの要因ですが、結婚はこの後、子どもをつくり育て るということにつながっていくと考えられておりますので、育児に対する負担感、仕事 と両立させる場合、両立に対する負担感が結婚を先延ばしするということにつながって いるのではないか。  2つ目としては、必ずしも結婚しなくてもいい生き方が認められてきているというよ うな個人の結婚観、価値観の変化というものもある。  3つ目として、親と同居している場合は非常に快適な生活を送っているので、親から 自立して結婚生活にためらいというようなものもあるのではないか。  大きくその3つに分析をしております。  (2)ですが、今の出生率低下の原因ではございませんが、出生率回復を議論する場 合に、やはり夫婦の平均出生児数は現在 2.2人であるのに対して、理想はと問いますと 2.6人というふうにお答えになりました。これは昭和50年代からずっとこの数字は変わら ないわけですが、理想の2.6 人と実際の 2.2人の開きがなぜあるかということをやはり 出生率回復を議論する上で分析をしております。 これは当然未婚率上昇の原因にもある育児の負担感、仕事との両立に対する負担感が あるわけですが、そのほか、経済学者の言う、子どもが投資財から消費財的な意味が大 きくなってきたということから、子どもに手をかけ、お金をかけること自体に意味を見 いだすというような、子育てに関する直接費用がそれによって増加したことも原因であ ります。  さらに女性が子育てをすることによって、仕事をやめる場合、男性の8割から9割ぐ らいの賃金になっていますので、その賃金を失うということによる機会費用が大きいと いうようなことも原因として挙がっております。  それから、子どもによりよい生活をさせたいと思うと、少ない子どもによりお金をか けるというようなことで、そういう子どものよりよい生活への願い。その他、不妊等の 問題もあるのではないか。  少子化のこういう要因を分析してみまして、少子化は我が国社会全体の状況に深く関 連しているのではないかということで、背景となる社会の分析もしております。  2の(1)の結婚観、価値観の変化の背景にあるものとしては、社会の成熟化に伴う 個人の多様な生き方のあらわれがあります。  (2)としては、女性の社会進出とそれを阻む固定的な男女の役割分業意識と雇用慣 行、それを支える企業風土の存在が育児に対する負担感、仕事との両立に対する負担感 を生んでいるのではないかということで、ここで少子化は「男性中心型の終身雇用、年 功序列型賃金体系などの古典的な雇用慣行のあり方そのものの見直しを問いかけてい る」のではないかというふうに受けとめております。  3ページになりまして、(3)でそのほか、快適な生活の下での自立に対するためら いですとか、(4)では現在、そして将来の社会に対する不安感のようなものも子ども を持つことをためらわせているのではないかというふうに、背景となる社会状況を分析 し、それではこういう少子化がもたらす人口減少社会へどういう対応したらいいのかと いうことで、Vで、大きく「少子化の影響への対応」と「少子化の要因への対応」、2つ に分けて対応のあり方を述べております。  恐れ入りますが12ページ、本文の方をごらんいただきたいんですが、Vで「少子化が もたらす人口減少社会への対応のあり方」、少子化の影響を分析しておりまして、もち ろんそういう予測については一定の仮定を置いて行ったものであることに留意する必要 がありますけれども、2025年時点における社会の見通しは、現在取り組んでいる各般の 構造改革を相当思い切って実行したとしても、楽観視できるものでない。まして、2050 年、21世紀半ばまで少子化と高齢化が進行すると見込まれていますので、21世紀半ばに は相当深刻な状況となることが予想される。こういう前提をおきますと、やはり人口減 少社会への対応が急がれるのではないかということで、影響への対応に入っていきます  13ページでございます。経済面の影響を生んでいる一番のものは、生産年齢人口が減 少し労働力人口が減少するということでございましたので、その緩和のために「就労意 欲を持つあらゆる者が就業できる雇用環境の整備」ということで、高齢者、障害者、女 性の就業環境の整備。特に年齢や性別による垣根を取り払う雇用環境の整備。ここで特 に女性の就業環境の整備に際しては、女性の就業が一層の出生率の低下につながること のないよう、仕事と育児の両立を可能とする支援策の充実を図ることが特に重要である というような、出生率の観点からも「雇用環境の整備」ということを述べております。  次に特に、人口の高齢化を考えると、とりわけ高齢者雇用のあり方が極めて重要な課 題ですけれども、高齢者の就労意欲は高まってきているのにもかかわらず、終身雇用制 度・年功序列型賃金体系と一体となった採用時の年齢制限や定年制が結果として高齢者 の就業を阻んできている。このような多様な就業形態を認めない固定的な雇用慣行のあ り方を見直すべき時期に来ている。  経済面の影響への対応は、「就労意欲を持つあらゆる方が就業できる雇用環境の整 備」というのが一番大きく挙がっております。そのほか、「企業の活力・競争力、個人 の活力の維持」ですとか、14ページに行きまして、「公平かつ安定的な社会保障制度の 確立」というようなものが並んでおります。  この「公平かつ安定的な社会保障制度の確立」、3)の1のところ、年金制度について は、人口構成の変化により、将来世代の負担が過重にならない安定的なものとする視点 が重要であると。こういう「将来に向けて、介護や年金についての国民の不安を解消す ることは、次の世代を安心して産み育てられるようにするという観点からも重要なこと である」というようなコメントもついております。  次に15ページ、「社会面の影響への対応」としては、市町村合併等の地方行政体制の 整備ですとか、地域の活性化、教育内容の改善等が並んでおります。  15ページの下のところに「(関係審議会等における検討)」という括弧書きのところ がございますが、人口問題審議会では、少子化の影響への対応という観点から、以上の ようなことを述べているわけでございまして、今後各専門の関係審議会等において「少 子化の影響への対応」という視点を踏まえながら、さらに検討が進められ、その検討結 果に基づく適切な対応がなされるべきであるということで、人口問題審議会としては、 各専門審議会でのさらなる検討を期待しているというような位置づけの述べ方になって おります。  今のは「少子化の影響への対応」でございましたが、次に大きく「少子化の要因への 対応」に入ります。16ページでございます。少子化の要因への対応については、これま で子育て支援は取り組んできましたけれども、いわゆる政府関係の審議会として、少子 化の要因対応に正面から取り組むということを出したことはございませんでした。今回 初めて人口問題審議会としてそれを打ち出しました。それに当たっては、審議会では随 分慎重な議論をし、対応はすべきではないとする考え方、1つ1つについて議論を重ね 結論としては、17ページの上のところにありますけれども、「少子化の影響への対応を 相当思い切ってするとしても、なお21世紀半ばまでを視野に入れると、人口減少社会の 姿は相当深刻な状況となることが予想される。個人が望む結婚や出産を妨げる要因を取 り除くことができれば、それは個人にとっては当然望ましいし、その結果、著しい人口 減少社会になることを避けることが期待されるという意味で社会にとっても望ましい。  このような観点から、少子化の影響への対応とともに、少子化の要因への対応につい ても行っていくべきである、というのが当審議会の基本的な考え方である」。ここで基 本的に少子化の要因対応も行うということを審議会として確認をし、ただ、その下に基 本的な前提として、「戦前・戦中の人口増加政策を意図するものでは毛頭なく、妊娠、 出産に関する個人の自己決定権を制約してはならないことはもとより、男女を問わず個 人の生き方の多様性を損ねるような対応はとられるべきではない」と基本的な前提を置 きながら、少子化の要因対応を行うということを、人口問題審議会として基本的に打ち 出しております。  この関係で、「子どもを育てることについての社会的責任」についての議論がござい ました。高齢者の扶養が公的年金制度により社会化され、介護についても社会的な支援 を深めようとしている状況を考慮すると、子どもを育てることを私的な責任としてだけ とらえるのではなく、社会的な責任である、との考え方をより深めるべきである。  こういう考え方については、一方それは子育ては親の責任であるという基本をゆるが せることにつながる、という意見も審議会の中でございまして、いずれにせよ、我が国 社会として、今後「子どもを育てること」に対して、どれだけ社会的に支援し、公的に 関与していくべきかの判断にも関わる。経済学的にいう、公共財としてどれだけ子ども を見るかということにも関わりますし、また家族観にも関わる重要な問題であり、これ は今後国民的な議論を更に深める、ということで、はっきりした方向の打ち出しにはな っておりません。  それから、少子化の要因への対応に当たっての、当然子どもを持つ意志のない者、あ るいは産みたくても産めない者を追い詰めてならないというようなことが並んでおりま す。  具体的に「少子化の要因への対応のあり方」、18ページに入っていきますが、1)で、 結婚や出産の妨げとなっている要因への対応としては、「固定的な男女の役割分業や仕 事優先の固定的な雇用慣行の是正」、それが育児、結婚を負担と思わせてしまっている ということがございますので、この「固定的な男女の役割分業や仕事優先の固定的な雇 用慣行の是正」というように、そういう制度を見直すとともに、国民の意識や企業風土 の見直しも大きく打ち出しております。  具体的な検討課題として、19ページに、2のア)から「仕事優先に関わるもの」、 イ)「女性の就業に関わるもの」、ウ)「就業形態の多様化に関わるもの」、エ)で 「いわゆる正社員と短時間労働者(パートタイマー)、非就業者(専業主婦)との公平 性、中立性に関わるもの」として、「企業における配偶者手当のあり方」、「所得税に おける配偶者控除制度のあり方」と並びまして、「年金制度及び医療保険制度における 被扶養配偶者の位置付けのあり方」も検討すべき課題としては挙げられております。  以上が、男女の役割分業、固定的な雇用慣行の見直しのための検討課題でございまし て、次にもう一つ大きな柱として、「子育てを支援するための諸政策の総合的かつ効果 的な推進」がございます。これは「エンゼルプラン」を現在推進しているわけでござい ますが、そのエンゼルプランを推進するに当たって20ページに記述がございます。  「少子化の要因への対応という観点からみた留意事項」をまとめております。まず、 子育てにかかる機会費用が上昇しているということが、かなり審議会の中でも議論の中 で強く言われたことでございまして、「女性の社会進出が進行し、女性の平均賃金が上 昇する中で、子育てを選択することによって継続就業を断念した結果、失うこととなる 利益が上昇していることを考慮すると、仕事と育児の両立のために、雇用環境を改善す ると同時に多様な保育サービス等を確保することが特に重要である」。仕事と育児の両 立のための雇用環境改善と多様な保育サービスがまず重要だというのを確認をしており ます。  次に「仕事と育児の両立支援」を進める上で、これは今のところ一部の継続就業志向 のキャリアウーマンに限られるのではないかというような議論がよくございますが、そ れについては、各種の意識調査で、継続就業を望ましいと考える女性の割合は着実に増 加している。また、制度が整っておれば、継続就業を望むという女性がさらに増加する ということが見られますので、それと一方、少子化の影響への対応として、女性の就労 の拡大は時代の要請となるということも考えあわせると、この両立支援方策はやはり着 実に推進していかなければならない。  ウ)では「核家族化、都市化の進展への対応」を扱っております。  エ)では「子育てのための経済的負担軽減措置」、これもかなり議論がございました アンケート調査等では、「子育てに伴う養育費や教育費などの経済的負担の大きさが理 想の子ども数を持たない理由の一つ」として挙がってきております。このことから、 「子育てを社会全体として支援するとともに、子どもの有無や数に応じた公平性を図る という観点から児童手当の充実や租税負担の軽減など子育て世代の経済的負担軽減措置 について検討する必要がある」という意見もございました。  また、出生率回復への効果という面では、「経済的負担軽減措置」よりも、「両立支 援方策」の方がはるかに有効である、という意見もございました。  こういう両方の意見がございましたので、「それぞれの方策の持つ意義、公平性ある いは出生率回復への効果というような、それぞれの持つ意義や現実的な可能性効果を総 合的、多面的に考慮し、検討する必要がある。」ということで、これも両論というよう な形になっております。  その後、「乳幼児期における女性の就労支援方策」、子どもの健全な発達という観点 から、疑問視する声もあるけれども、状況を見ると否定されるべきものではないだろう というような確認をしておりまして、22ページ「今後検討すべき課題」でございますが 子育て支援という観点から検討すべき課題として、育児休業制度等のア)「雇用環境の 改善に関わるもの」と、イ)「子育て支援に関わるもの」の検討課題が並んでおります  子育て支援に関わるものの一番下に、「年金制度における対応のあり方」というもの も検討課題として挙げられております。  さらに議論がされるべき課題として、「多様な形態の家族のあり方」等も整理し「お わりに」、23ページのところから24ページにかけてですけれども、「少子化の要因への 政策的対応は、労働、福祉、保健、医療、社会保険、教育、住宅、税制その他多岐にわ たるが、中核となるのは、固定的な男女の役割分業や雇用慣行の是正と、育児と仕事の 両立に向けた子育て支援である。これらを着実に推進しつつ、それを基点としてその他 の関連施策全般に展開していくことが求められている」というようなまとめがございま して、一番最後25ページに本報告書の性格としては、議論の出発点であると。国民的な 議論の出発点として、今後あらゆる方面で大いに議論がされ、国民的合意が形成されて 取組が進むことを望むと。人口問題審議会としては、1つの方向等を出しておりますけ れども、あくまで議論の出発点としての素材の提供であるというふうな位置づけになっ ております。  その後に、審議会の委員の名簿がついております。  最後2枚ついておりますのは、有識者ヒアリングですとか、全国8カ所でも少子社会 を考える市民会議あるいはホームページに寄せられた国民からの意見等を参考でまとめ たものでございまして、その中で特に年金に関係のあるような部分のところだけ抜粋で つけさせていただいております。  ここで有識者意見で年金関係にいろいろ御意見をくださいましたのは、宮島洋先生、 島田晴雄先生、山崎泰彦先生が中心でございました。「年金制度における対応のあり 方」というような一言しか報告書には書いていませんが、どういう御意見があったかと いうことは有識者の意見で、審議会の中での議論はございませんが、参考までにつけて おります。 ○会長  ありがとうございました。今の説明につきまして、御質問、御意見など御自由に御発 言ください。 ○G委員  私は女性じゃないから気持ちがよくわからないんですが、私が知っている独身女性の 話では、この中にも少し触れていますが、人生観にも少し関係があるのかもしれません けれども、女性というのは子どもは産みたいものなのだと。常に産みたいんだと。特に 40を過ぎるととても子どもが欲しくなってどうしようもないという女性が随分おられま すね。  そういう人が産みやすくする社会というのはどういうふうにするということなのでし ょうか。あるいはそういう問題というのは、この中で議論になったのでしょうか。これ は人生観に関する問題ですから、余りお答えになるのが難しいのかもしれませんが、そ ういう議論もあったのでしょうか。 ○事務局  30代あるいは40過ぎぐらいでしょうか、現にお子様を育て中の女性からヒアリングも されました。その中で、独身でいるんだけれども、まさしくおっしゃるとおりでござい まして、30後半ないし40ぐらいになると子どもだけは欲しいと、こういう意識があると いうような、そういうお話がございました。  そういうような議論も経た上でまとめられたわけですが、この中に入っておりますよ うに、個人の人生観、価値観にかかわる部分が相当大きいと。そういうところに少し ページがさかれております。例えば、女性の心境というものもいろいろあると思います が、随分いろんなヒアリングをなさってくださいましたのは、親子同居で親が非常に経 済力をお持ちになっているという場合、非常に快適ですので、賃金がすべて、楽しい生 活につながる、こういう状況で非常に独立といいますか、そういうことへのためらいと いうのがあるんじゃないかと。これは本当に個人の生き方の問題でございますから、こ ういうことに公がとやかく言うことはできない。  そうなったところの議論は一回りございまして、個人の人生観にかかわるところはコ ミットすべきでないので、結局共通して言えることは、今の40歳の、例えば事例の方、 就労の関係はわかりませんけれども、一般的には就労への参入意欲は非常に高まってき ている。これは学歴等の関係もございますが、そういう中で、これを妨げている、就労 したいという意欲と結婚したい、あるいは子どもを産むということとの関係で、そこが 大変今のさまざまな制度、慣行が大きなバリアになっている。ここを除くということに よって、いわば結婚しやすくする。この部分は公がコミットしてもいいんじゃないかと こういった形で対策としてはそこだけが触れられた。だけという変ですけど、そこを中 心に触れられたと、こんないきさつでございます。 ○E委員  ドイツなど世界の中には日本よりも少子化が進んでいる国があるというふうに聞いて おりますけれども、例えばドイツですと、人口減少に海外からの労働力などかなり入れ てやっているわけですね。それがいろんな問題があることは知っていますけれども、18 ページに外国人の受け入れの是非ということで、この問題を余り考えるのは適当でない というふうに書いてございますけれども、21世紀の国際化とか、国と国との人口の流動 を考えますと、外国人労働者を受け入れるということを国としても少し考えてもいい時 代が来るのではないかと思いますが、その辺について何かありませんか。 ○事務局  それにつきまして議論が随分なされました。外国人の問題については大変多くの意見 がございました。そういう中で、まず18ページに触れられている趣旨は、そもそも外国 人労働力の参入を大きくすれば、出生率にかかわるような議論はしなくていいんじゃな いかと、こういう方がございます。そうであれば、議論はおしまいで、何も少子化の要 因に対しての議論をする必要はないんじゃないかとこうなりますので、ここのところに ついての整理が当然行われておりまして、これから非常に減っていく、いわば生産年齢 人口の減少ということから見て、少々という言い方はよくないんですが、外国人労働力 の参入だけで対応できるような人口の減少ではないと。そういうことで、仮に外国人労 働力の参入で対応するとしても、出生率の回復について論じないでよいということには ならないと、まずそのことが確認されました。もし導入するとしてもとても間に合うも のでない。  そういう状況のもとで、じゃあ、どうするのだということについて随分議論がありま して、特に関係省庁でヒアリングを行っておりますが、いわゆる単純労働力というんで しょうか、そういう意味での労働力参入については非常にコンセンサスが得にくいので 極めて慎重に運ぶべきだと、こういったような労働省の意見がございました。  その結果、25ページの一番最後のページでございますが、「本報告書の性格」という 上のパラグラフで、読み上げさせていただきますと、「外国人の受入れについては、我 が国経済社会に大きな問題が生じることも懸念されることから、安易な考え方に立って なしくずし的に行われることのないよう、その是非や方法について、関係の場で正面か ら十分議論すべきである」ということで、ここで結論を出すというのでなくて、ただ、 これはなしくずし的に行うのではなくて、きちんと議論してほしいということです。 ○会長  ほかにどなたか、御質問、御発言ございませんか。D委員どうそ。 ○D委員  非常に感想めいたことで恐縮なんですけれども、本文12ページのところで、いわば現 在の少子化のいろいろな原因の最後に、現在から将来の社会に対する漠然たる不安感と いうふうなことがわずかに記述されているんですが、ここはここの指摘だけにとどまっ ているようですけれども、イメージ的に数え上げられるいろいろな要件ということより も、むしろこのことは非常に重要な気がするんですね。  というのは、我が国の出生率のこの低下傾向は、やはり非常に異常なことのように思 いますし、一般的に経済水準が上がったり、所得水準が上がったりすると、子供をたく さん産むということはなくなるというのはわかるんですが、それとはちょっと性質が違 うのではないか、特にスピードにおいて。その意味では、むしろ具体的な対策に直接は 結びつかないかもしれないけれども、もう少しここのあたりの議論がどこかで深められ たらばいいなというのは、私の個人的な希望でございます。  それから、全体を見てみると、女性の「就労」ということと「子育て」ということを いかにして両立させるかというところに大変心を砕いたレポートだと思うんですが、子 どもを産むのも産まないのも自由であるのと同時に、結婚するのもしないのも自由だし 逆に言えば、働かないのも自由なんですね。  その意味で、第三号被保険者問題や税法上の問題もありますし、扶養家族認定の問題 もあるし、そういうことで、いわゆる俗に言う専業主婦優遇策みたいなものに対する批 判があちこちで散見されますが、しかし、それ自体は、それが就労を妨げている要因と いうのではなくて、労働市場への押し出し力に対してマイナスの力だというのはわかり ますけれども、そこのところで人生の選択についての個人の自由ということを言われる のであれば、何かそれは筋違いの議論のような気がするんですね。理想なのはみんなフ ルタイムで働いて、みんな子どもを産んでと、こういうのが理想像である。それはここ で画一的なものを避けると言いながら、えらく画一的な気がするんですが、いかがです か。 ○事務局  その点も大分議論ありました。この文章の中で細かく説明いたしますが、10ページの 「少子化の要因の背景」という上側に「継続就労型の女性が多数派ではない現状」とい うことでなお書きが入っておりますが、要するに就労のことばっかり述べているけれど も、実際は継続でずっと働き続けたいという女性は少ないじゃないか。あるいは「おし ゃもじ権」と言われるそうですけれども、家政の財政権を握れる主婦という立場で、専 業主婦の希望も強いよ、こういう現状もあるんだよということがやはり議論されました ただ、その中で、結局は大きな流れとしては、確実に女性が就労するという傾向が見え るし、これから日本の経済フレームから見ても、女性の参入は間違いない。  そういう状況のもとで、何もしなければ、お子さんが産まれないという結論が残ると いうことになったら、これは大変なことだというようなことで、就労に焦点をあててい るというくだりになっているということですが、その場合に、経済学者を中心として大 変強い議論が出ましたのは、今の税制とか、今の被扶養配偶者の位置づけは、むしろ働 かないで家庭にいる方を優遇するように傾いている。むしろ、そういうものがないとい うような、働く、働かないということに対してニュートラルな状態を作り出さなければ いけない、こういう認識でございました。  したがって、むしろ働けということではなくて、働く、働かないに対して中立的とい う観点から見れば、今の税制や被扶養者制度というのは、むしろ働かない方に傾いてい るのではないか、こういうような認識の議論であったように思います。ただ、これは断 定的に言うのではなくて、そこのところをまさしく議論してほしいということで、結論 ではなくて、そこのところを議論してほしいという書き方になっております。 ○H委員  社会の活力を維持するために非常に重要な問題だと思うのでありますが、11ページで すか、「快適な生活の下での自立に対するためらい」というのがあるんですけれども、 つまり快適な生活の中にあるわけですから、対応といっても大変難しいと思うのであり ますが、それにつきまして、何か具体的なメスを入れたような論議があったでしょうか ○事務局  これは大変議論のあるところでございました。欧米は18ないしは成人すると当然自立 するというのが基本であるのに、日本はこういう状況というのはいかがであろうかとい う非常に基本論に触れるような議論もございました。それから、有識者ヒアリングの中 で大変ドラスチックな提案といいましょうか、学者の先生ですけれども、一定年齢にな っているのに親と同居してメリットを受け取ることに対して、独身税というか、贈与税 相当みたいなものをかけるべきじゃないかと。これは恐らくモノの考え方で申したので あって、現実の政策提言でないと思いますけれども、そのようなアイディアをあえてお っしゃるというような御意見もございました。  ただ、基本的には、ここの整理に載っておりますように、これは本当の個人の、むし ろ、そういう状況で自分の結婚年齢というものを自分でチョイスして、自由な生き方が 増えたという見方もできるのであって、ここのところは制度の、あるいは公的なモノの 考え方で左右するということではないということで、甲論、乙論がございまして、政策 面ではこれについては触れてないということになっています。 ○会長  ほかに御意見、御質問がございませんでしたら、少し時間を超過いたしましたが、今 日はこれで終わりにして、よろしゅうございましょうか。  もう1つ、本日の資料を公開することでよろしゅうございましょうか。               (「異議なし」と声あり)  公開をいたします。  今後の日程を事務局から御確認お願いします。 ○事務局  次回は11月17日午前10時からということでお願いをいたしております。次々会は11月 27日午後2時から。それから恐縮でございますが、12月に入りまして、まだ御議論尽く されてない部分もございますので、12月10日午後2時から審議会をお願いをいたしたい と今考えております。5月にお決めいただきました主要検討項目につきまして、一応一 通りの御議論をいただきましたので、当初のスケジュールでございます論点整理となっ ておりますが、次回はフリーディスカッションをお願いしたいと、こんなふうに考えて おります。 ○ 会長  そういうことでございます。本日は少し時間を超過しましたが、これで閉会します。 どうもありがとうございました。                                年金局企画課                                須田(3316)