97/10/22 第8回血液行政の在り方に関する懇談会議事録 第8回血液行政の在り方に関する懇談会議事録   1.日  時  平成9年10月22日(水)14時00分〜16時00分   2.場  所  厚生省共用第6会議室   3.出席者     (委  員)            行天良雄  草刈 隆  坂巻 煕 清水鳩子            菅谷 忍  高久史麿  秀嶋 宏 藤田 仁            前田義章 三星 勲  湯浅晋治                 (専門委員)            小室勝利  中井一士  布施 晃  宮島 剛     (厚 生 省)            医薬安全局長            企画課長 安全対策課長 審査管理課長            血液対策課長  医薬品副作用被害対策室長 他   4.議事内容           (1)開  会           (2)議  事              (1) 血液行政の在り方について(報告書案の検討)             (2) その他           (3)閉  会 血液対策課長 本日はご多忙のところご出席いただきまして、ありがとうござい ます。ただいまから第8回の血液行政の在り方に関する懇談会を開催いたしま す。私は厚生省医薬安全局血液対策課長の外口でございます。  本日は井形委員、曽野委員、中谷委員、森島委員、渡辺委員、宮村専門委員が ご都合によりご欠席でございます。なお、神尾委員は先ほど緊急の手術が入った ために、急なご欠席という連絡が入っております。また、7月1日付で丸山前薬 務局長から中西医薬安全局長にかわりましたので、ここでご紹介いたします。 医薬安全局長 医薬安全局長の中西でございます。昨年10月来、本懇談会にお いて血液行政の在り方についてご審議いただいているところでございますが、本 日は起草委員会での報告書(案)がまとめられましたので、それを踏まえたご審 議をお願いするということでございます。  私どもといたしましては審議結果を十分尊重し、これを踏まえてきちんとした 取り組みを行ってまいりたいと考えておりますので、よろしくご審議のほどお願 いいたしたいと思います。どうもありがとうございました。 高久座長 それでは最初に、事務局の方から本日の資料の確認をよろしくお願い します。 血液対策課長 それでは本日の資料を確認させていただきます。お手元に資料と 参考資料が配布してございます。資料は「血液行政の在り方に関する懇談会報告 書(案)」であり、4回にわたる起草委員会の審議の結果、まとめていただいた ものであります。後ほど紹介させていただきます。  次に参考資料ですが、参考資料1は「血液行政の在り方に対するインターネッ ト等による国民の意見」であります。この厚い冊子であります。去る7月に前回 の懇談会でお示しした今後の血液行政の在り方に関する基本的考え方を参考に、 インターネットの厚生省ホームページにおいてご意見募集を行い、あわせて都道 府県からもご意見をいただきました。その結果をまとめたものがこの冊子であり ますが、延べ70件、305ページにわたる貴重なご意見であり、国内自給のた めの献血量の確保について、安全性の確保策について、医学教育の充実の必要性 について、輸血部門の整備について、役割と責任の明確化について、血液行政の 改革の必要性について、情報公開の必要性について、消費者代表参加の必要性に ついて等、具体的、専門的な指摘も含めて多数のご提言をいただいております。  お寄せいただいた意見の中には意見の分かれる問題もあり、例えば血液事業の 責任については、事業主体の責任であるという意見と国の責任であるという意見 があります。血液製剤の供給については、一元化が必要という意見と競争原理が 必要という意見があります。HIV検査の結果では、通知すべきであるという意 見と通知すべきではないという意見があります。  起草委員会では今までの議論や基本的考え方をベースにして、これらのご意見 も含めて審議していただきました。  参考資料2は三星委員よりご提出の「血液行政の在り方に関する懇談会への提 案」であります。「1000万人献血推進国民運動本部の設置(案)」、「献血 国民運動実施への隘路・障害の除去(案)」、「計画的に安全な献血へ向けての 献血奉仕活動への提案」、「ライオンズクラブ献血推進協議会 設立の主旨 (案)」についてご提案をいただいております。内容については後ほど報告書 (案)の審議の際に説明していただく予定です。  参考資料3は血液製剤調査機構がこのほどまとめました、「海外血液事業報告 書第3集」であります。欧州連合、欧州会議等の文書を掲載し、解説したもので あります。なお、この報告書につきましては517ページありまして、行政相談 室で閲覧できるようにいたしますので、大変恐縮ではございますが、傍聴席の方 は目次と解説編の部分のコピーでお許しいただきたいと思います。  参考資料4は大阪HIV訴訟原告団・同弁護団、血液事業法プロジェクト代表 の徳永信一氏よりご提出の「今後の血液事業の在り方に関する提言」であり、献 血自給、供給一元、責任一元、消費者主権を改革のキーワードとして、この参考 資料4の5ページから6ページに記載されておりますように、採血、製造、そし て輸入製剤を含む供給を一元的に担う血液事業団と、計画立案機構である血液事 業管理委員会を設置し、事業体制と責任の一元化を行うこと等についてのご提言 をいただいております。  参考資料5は、公的臍帯血バンクの足掛かりとなる東京臍帯血バンク設立東京 どまん中大集会参加者一同、並びに日本臍帯血バンク支援ボランティアの会より ご提出の造血幹細胞を血液事業の中に位置づけて検討すべきであるというご意見 と、「臍帯血を血液事業の中に位置づけた血液事業法の制定を急いでください」 という声明文であります。  このほかに、既に厚生省のホームページに掲載されておりますが、前回の議事 録を配布しております。以上でございます。 高久座長 どうもありがとうございました。皆さん方のお手元に資料は全部配布 されていると思います。それではお手元の資料にあります「血液行政の在り方に 関する懇談会報告書(案)」について、事務局の方から説明をよろしくお願いし ます。 血液対策課長 それではお手元の資料、「血液行政の在り方に関する懇談会報告 書(案)」をご参照願います。まず1ページでございますが、朗読させていただ きます。 I はじめに  ・ 我が国の血液事業は、昭和39年の閣議決定(「献血の推進について」) において献血推進の方針が決められて以来、国、地方公共団体、日本赤十字社の 三者が一体となった本格的な献血による血液事業の展開が図られてきた。  ・ その結果、輸血用血液製剤はそのすべてが、また血漿分画製剤のうち血液 凝固因子製剤については一部の特殊な製剤を除いて自給できるようになったが、 アルブミン製剤や免疫グロブリン製剤の自給率はまだ低く、かなりの部分を輸入 に依存している現状にある。さらに今後、高齢化の進展により血液製剤の使用を 必要とする者が増加する一方、献血が可能な年齢層の人口が減少することを考慮 すると、国内自給の推進のためには、血液事業の新たな展開が必要である。  ・ 今般の非加熱血液製剤の投与によるHIV感染問題の発生は、血液製剤の 安全確保対策等を含め血液事業の実施体制に関し広範な問題を提起している。血 液事業に携わる者はこの問題を真摯に受けとめ、このような甚大な被害が再び発 生することのないよう確固たる事業責任体制を確立していくべきである。  ・ 本懇談会は、これらの問題を念頭に置きながら、国、地方公共団体、日本 赤十字社を始めとする事業者、及び医療機関の役割と責務、国内自給の推進策、 安全性の確保策等について鋭意検討を行ってきた。  ・ 検討に際しては、懇談会における意見の聴取や日本赤十字社、製薬企業及 び地方公共団体に対して実施したアンケート調査、外国の血液行政に関する調査 のほか、議事や資料を公開し、インターネットを通じて頂いた各般の御意見も参 考とした。    本懇談会は、以下の提言が法制度の整備を含め今後の血液行政に反映さ れ、国民の期待にこたえる血液事業の新たな発展に向けて、国を挙げて取り組ま れることを強く望むものである。 II 血液製剤の特性を踏まえて    血液製剤は、人体の組織の一部である血液を原料としていること、またそ れが故にウイルス感染症等を伝達する可能性を有すること、さらに原料である血 液に国民の善意からなる献血が用いられていること等の特性を有し、一般の医薬 品とはその性格を異にするものである。したがって、こうした特性を踏まえ、血 液事業の展開がなされるべきである。  1 国内自給の推進  ・ 血液製剤は人体の組織の一部である血液を原料とすることから、倫理的な   見地から、できる限り国民の血液を用いた血液製剤を製造し、使用する体制   を築いていくべきである。また原料とする血液については、売血ではなく国   民の自発的意志による無償献血によるべきである。  ・ したがって、輸血用血液製剤については国内の献血血液により賄われてい   るものの、血漿分画製剤について輸入製剤及び輸入原料にかなりの部分を依   存している現状には問題がある。  ・ 我が国の方が感染率の高い疾患のあること、国外においても安全性の確保   に積極的に取り組まれていること等から、国内献血に由来する製剤が輸入製   剤より安全であると断定的に考えることはできないが、国内献血に由来する   製剤の場合は、未知のウイルス等による感染症が発生した際に感染源の特定   や回収等の迅速な対応が取りやすいという利点もある。  ・ 我が国においては、緊急時の輸入や国内で製造が困難な製剤の輸入等やむ   を得ない場合を除き、原則として血液製剤を海外からの輸入に頼らなくても   よいという方向を目指して国内自給を推進すべきである。  ・ 国内自給を推進するに当たっては、国が中期的な血液製剤の需給見通しを   示すとともに、それに基づいて関係者が計画的に取り組む等、実効ある対応   が必要である。  2 安全性確保  ・ 血液製剤は、人体由来の血液を原料とするため、現在の最高水準の科学技   術をもってしても、ウイルス等の感染や、免疫反応等による副作用の危険性   を絶えずはらんでいる。  ・ したがって、採血から血液製剤の製造に際して、日本赤十字社、民間製造   業者等は、献血時の問診による献血者のスクリーニング、肝炎ウイルス、H   IV等の各種ウイルスの検査、製造工程におけるウイルス等の不活化・除去   等、可能な限りの安全対策を講ずる等、安全性の確保に関し不断の努力を行   う必要がある。  ・ 医師は、輸血用血液製剤等を投与する際には、血液製剤が絶えず危険性を   はらんでいるということを十分認識した上で、患者に対し安全性、必要性等   に関する十分な説明をし、同意を得て投与する必要がある。  ・ ウイルス等の感染や免疫反応等による副作用の危険性を排除し得ないこと   から、国、日本赤十字社、民間製造業者等は、危険に応じて緊急的な措置が   的確に講じられるよう、情報の把握、評価、提供を行う体制を整備する等危   機管理体制の充実が必要である。  ・ また、血液製剤の安全性向上を図るため、日本赤十字社、民間製造業者等   は常に最新の技術を競って取り入れていく必要がある。  ・ 現在の状況では、人由来の血液製剤を使用せざるを得ないが、今後、安全   性を十分確認しつつ遺伝子組換え製剤や人工血液の開発等を積極的に行い、   将来的には人の血液にできるだけ依存しないような医療を目指すべきである  3 適正使用  ・ 血液製剤は、医療上欠くことのできないものであるが、ウイルス感染等の   危険性を絶えずはらんでいることに加え、献血者の善意に支えられた有限で   貴重な資源であるという特性を有する。  ・ したがって、医療現場で血液製剤を使用するに当たっては、医療上は有効   であっても安易に第一選択薬として用いるべきではなく、他に代替的な手段   がなく真に必要な場合に、必要量に限って使用されるべきである。  4 有効利用  ・ 血液製剤の原料となる献血血液は有限かつ貴重なものであることから、有   効に利用する必要がある。  ・ 献血血液を有効に利用し、治療上の必要に応じて過不足なく安定的な供給   を確保するためには、採血から製造及び供給に至るすべての段階において、   事業の最大限の効率化、合理化が必要である。  ・ また、今後献血血液を確保するため献血の受け入れ体制を整備するととも   に更なる安全確保対策を講じていくことに伴い、採血、製造にはさらに経費   が掛かることが予想され、血液製剤の価格の上昇につながる可能性がある。   したがって、そうした観点からも一層の事業の効率化、合理化が必要である  5 透明性の確保  ・ 血液製剤は国民の共有財産ともいうべき善意の献血血液を原料とすること   から、その公共性にかんがみ、広く学識経験者、献血者代表、消費者代表等   が参画する審議の場を設け、日本赤十字社や民間製造業者等の事業の実施・   運営状況の報告を求めるとともに、血液事業に係る重要事項について調査審   議することとし、情報公開を行うことにより血液事業の透明化を図るべきで   ある。 III 血液事業を支える体制  1 国    国は、血液事業の推進を図る見地から、以下の措置を講じていくとともに   進展状況を的確に把握し、必要な施策を適宜適切に展開していくことにより   国としての責務を果たしていくべきである。  (1) 国内自給の推進   ・ 国は、国内自給の達成に向けた将来の展望と目標を明らかにするととも    に、中期的な血液製剤の需給の見通し、献血を始めとする血液事業の方向    に関する基本的な指針を作成すべきである。  (2)安全性確保   ・ 国は、血液製剤の特性を踏まえ、関係事業者に対する監視指導体制を強    化するとともに、薬事法に基づく一般の医薬品の規制にとどまらず、遡及    調査等の義務を関係者に課する等必要な規制を行うべきである。   ・ 国は、日本赤十字社及び民間製造業者等が血液製剤の安全性を確保する    ために講じている技術を定期的に評価する等、日本赤十字社及び民間製造    業者等が絶えず安全性確保のための技術革新に努めるよう指導すべきであ    る。   ・ 国は、有効で安全な人工血液の開発とその実用化に向け今後取り組むこ    とが望まれる。  (3)適正使用   ・ 国は、医療機関における適正使用の促進を図るため、使用基準の見直し    等を行うべきである。  (4)有効利用   ・ 国は、善意の献血に由来する国民の共有財産ともいうべき原料血漿を有    効に活用していくという見地から、原料血漿について日本赤十字社及び民    間製造業者に適正な配分がなされるよう管理すべきである。  (5)透明性の確保   ・ 国は、広く学識経験者、献血者代表、消費者代表等が参画する審議の場    を設け、血液事業に係る重要事項について調査審議することとし、情報公    開を行うことにより血液事業の透明化を図るべきである。  (6)指導監督   ・ 国は、採血及び供血あつせん業取締法による採血業の適正化という観点    薬事法による医薬品の安全性等を確保する観点にとどまらずに、国内自給    の推進及び適正な事業運営を確保する観点から、採血、血液製剤の製造、    供給、使用の全過程を通じて、関係主体に対する指導監督を的確に行う責    務を担うべきである。   ・ 血液事業については、その公共性を理由に国営化すべきとの意見もある    が、国営化には、事業の効率化を図り、できるだけ安価で良質な製品を消    費者に提供していこうとする誘因が働きにくく、技術開発の停滞を招くお    それも常に存在する。したがって、日本赤十字社や民間製造業者等が現実    に取り組んできている事業活動を国営に切り替えようとすることは、不適    当である。     むしろ、事業主体の役割と責務を明確にした上で、組織運営の自主性を    高めるとともに、血液事業の特殊性を踏まえ、事業主体の活動に対する必    要な規制や事業の評価、情報公開の推進を含め行政関与の仕方を工夫する    ことにより、国民が信頼できる事業体制を確立していくべきである。  2 地方公共団体   ・ 地方公共団体は、献血推進協議会を活用しつつ、国及び日本赤十字社と    連携を図りながら、地域の実情に応じた献血の推進計画を策定すべきであ    る。   ・ 地方公共団体は、過去の献血率をみると、地域間で献血率に大きな差が    生ている実態を踏まえ、その計画を円滑に実施するために地域住民の理解    と協力を得るよう努めるとともに、献血が円滑に行われるように献血場所    を提供する等その環境の整備を行うべきである。   ・ 地方公共団体は、血液製剤の使用量が各地域によって大きく異なること    等を踏まえ、地域における適切な医療を確保する立場から、使用基準の普    及等当該地域での医療機関における適正使用を推進すべきである。  3 血液事業者  (1)献血   ・ 献血に係る事業は、これまで日本赤十字社が昭和39年の閣議決定を踏 まえ、採血及び供血あつせん業取締法による採血業の許可を得て実施して きた。   ・ 献血に係る事業は、日本赤十字社のこれまでの取組に対する国民の信頼    にかんがみ、日本赤十字社が責任をもって実施することが適切である。    ・ 日本赤十字社は献血に係る事業を実施するに当たっては、国内自給を達    成するために、輸血用血液製剤のみならず、血漿分画製剤に用いるために    必要な量についても確保するよう努めるべきである。   ・ 日本赤十字社は、国内自給達成を目指して、地方公共団体等の協力を得    ながら、きめ細かく献血できる体制を整備し、採血量を確保していく必要    がある。  (2)輸血用血液製剤の製造   ・ 輸血用血液製剤はこれまで日本赤十字社が各血液センターにおいて事実 上独占的に製造してきている。   ・ 輸血用血液製剤の製造は献血の際の採血段階から既に始まっていること    輸血用血液製剤は有効期間が短く、献血による採血と輸血用血液製剤の製 造は一体的に行うことが効率的であることから、輸血用血液製剤の製造は 日本赤十字社が責任をもって行うことが適切である。   ・ 日本赤十字社は、輸血用血液製剤の安全性、有効性の向上を不断に図っ ていくため、事実上の独占によって技術開発の停滞が生じないよう、常に 新たな技術の導入、技術革新に努めるべきである。また、効率化の観点か ら血液センター相互の連携を強化するとともに、必要に応じ技術力のあ る者に協力を求める等多様な方策も検討すべきである。   ・ 日本赤十字社は、昭和39年の閣議決定以来、本社、各都道府県支部、 本社又は各都道府県支部に属する各血液センターといった組織により血液 事業を実施してきたが、事業を実施する上で高い技術水準を確保するとと もに、安全性を確保するための迅速かつ責任ある対応を一層図るためには、 各センター間の連携を一層強化するとともに、センター間の格差を是正し、 より柔軟な事業の展開と事業の透明化を図れるよう積極的に組織体制を見 直していくことが望まれる。  (3)血漿分画製剤の製造   ・ 現在、献血由来の原料血漿を用いた血漿分画製剤の製造は、日本赤十字 社の血漿分画センター及び各民間製造業者において行われている。   ・ 血漿分画製剤については、ウイルス等の不活化・除去の技術開発力の維 持向上、効率的な体制の構築、安価、安全かつ優良な製剤の確保の観点か ら、日本赤十字社及び民間製造業者が、それぞれの責任の下で競争原理を 通じて、その研究開発力を最大限に発揮し、安全な製剤を効率的に製造す ることが適切である。   ・ 日本赤十字社及び民間製造業者は、社会的使命と責任をもって献血由来 の原料血漿を用いて血漿分画製剤を製造し、安定的に供給すべきである。  〔輸入の取り扱い〕  ・ 現在、アルブミン製剤や免疫グロブリン製剤については、かなりの部分を   輸入に依存している。  ・ 今後、国内献血由来の血液製剤の増加を図っても、国内自給の観点からそ   の増加が医療機関の需要に十分結び付かないといった事態が生じるとすれば   問題であり、この場合、その原因を詳細に分析するとともに、国内献血由来   の血液製剤の増加に応じて輸入量を減らしていく方策を講ずる等輸入につい   て必要な措置をとることも検討すべきである。ただしその前提として、患者   の治療に支障を来すことがないよう十分配慮するとともに、国際的な規定に   かなった方策とする必要がある。  ・ 輸入原料血漿を用いる民間製造業者や海外で製造された製剤を輸入する民   間輸入業者は、国内自給を推進するという基本方針の下で、国内自給達成ま   での間、我が国において必要となる製剤の安定的な供給に協力することが期   待される。  (4)血液製剤の供給  ・ 輸血用血液製剤は、有効期間が短く、医療における緊急性が高いものであ   ることから、引き続き日本赤十字社が直接又は輸血用血液製剤の特性に適し   た搬送能力を有する者を介して医療機関に対して供給すべきである。  ・ 血漿分画製剤については、搬送に当たって特別な取り扱いを必ずしも必要   とはしないことから、医療機関の需要に柔軟にこたえるためには、引き続き   卸売販売業者を通じて提供することが適切である。  ・ 日本赤十字社及び民間製造業者等は、医薬情報担当者(MR)を通じて、 血液製剤の有効性、安全性、適正な使用等に関する情報を医療機関に的確に 提供する等により、血液製剤の安全性の確保、適正使用の推進に努めるべき である。  ・ いきすぎた販売競争を抑えるために、血液製剤の供給を一元的に行うべき   という意見もあるが、薬価差についてはこれを解消する方向で新しい制度が   検討されていることや医療機関における血液製剤の適正使用を推進すること   等により、販売競争による不要な需要の創出の問題については対応できると   考えられる。他方、供給の一元化は、医療現場の需要に必ずしも柔軟に対応   できるものとはいえないこと、新たな流通体制を構築するには新たな費用を   生み出すおそれがあること、供給の独占に伴い価格が高値で固定されるおそ   れがあること等から、適切であるとは考えられない。  4 医療機関  ・ 医療機関は、ウイルス等の感染や、免疫反応等による副作用の危険性を絶   えずはらんでいるという血液製剤の特性を十分理解した上で、他に代替的な   手段がなく真に必要な場合に、必要量に限って用いるよう適正使用に努める   べきである。  ・ 医療機関は、安全性の確保と適正使用を進めるため、血液製剤の保管管理   適正使用等を推進する院内体制を確立すべきである。 IV 国内自給推進の具体策  1 現状と課題  ・ 輸血用血液製剤、一部の特殊な製剤を除く血液凝固因子製剤については、   国内自給が達成されているが、アルブミン製剤及び免疫グロブリン製剤につ   いては、自給率は上昇傾向にはあるものの、平成8年現在それぞれ25%、   48%であり、米国を始めとした海外からの原料血漿又は製品の輸入に相当   量を依存している。  ・ 献血者数については、平成8年には年間延べ約600万人であり、その献 血量は年間約190万Lである。我が国においては、血液の安全性の確保及 び有効利用の観点から、400ml献血及び成分献血を推進しているが、現 状では、400ml献血の伸びの鈍化、成分献血の近年の伸び悩み、青年層 の献血者の割合の減少といった課題がある(参考1、2)。  ・ 今後さらに、高齢化の進展により血液製剤の使用を必要とする者が増加す   る一方、献血が可能な年齢層の人口が減少することを考慮すると強力な献血   推進策が必要である。  ・ 他方、我が国のアルブミン製剤の一人当たりの使用量は諸外国よりも多く   また国内においても地域間で格差が大きいといった問題点があり、今後強力   に適正使用の推進を図る必要がある。  2 将来推計  ・ 輸血用血液の使用量については、高齢化に伴い徐々に増加することが予測   され、これを賄うためには献血量の増加が必要である(参考3)。  ・ アルブミン製剤については、使用の適正化を図り、現在のドイツや米国並   みの使用量に抑えていくこととすれば使用量が今後5年間に3割減少し、さ   らに21世紀の初頭には75万L量相当の遺伝子組換え製剤が供給されると 仮定すると、高齢化を考慮しても、国内で原料血漿として、10年後の 2008年において150万Lを確保すれば、ほぼ国内自給が達成される   (参考4)。  ・ 免疫グロブリン製剤については、重症感染症等に対して効果があることが   判明しているため将来需要が増大する可能性があり、また、これに代替する   遺伝子組換え製剤の開発が困難であるが、使用適正化を進め現在の使用量の   水準で使用量を維持できれば、21世紀の初頭には国内自給の達成が可能で   ある。  ・ 血液製剤の大幅な使用適正化、遺伝子組換え製剤等の代替製剤の開発を前   提として、アルブミン製剤及び免疫グロブリン製剤の国内自給を達成するた   めに必要な原料血漿を確保するとともに、今後における輸血用血液製剤の増   加分も自給で賄うためには、年間延べ約1千万人分の献血血液が必要である   現在の年間献血者数が延べ約600万人に過ぎないことを考慮すると、1千   万人の献血者を確保することは容易なことではない。しかし、国内自給を達   成するためには、今後10年間に年間延べ1千万人の献血者数を目標として   国、地方公共団体、日本赤十字社の三者がそれぞれの役割を明確にして可能   な限りの推進策を講ずるべきである。  3 具体的推進方策  (1)計画の策定   ・ 国は、計画的に血液製剤の国内自給を進めていくために、血液製剤の種    類ごとの需給分析を行い、製剤ごとの国内自給の見通し等を示した基本指    針を策定すべきである。   ・ 地方公共団体は、国及び日本赤十字社と連携を図りながら、地域の実情    に応じた献血の推進計画を策定すべきである。   ・ 日本赤十字社は、国及び地方公共団体が策定した計画に即して献血量を    確保すべきである。  (2) 献血量の確保   ・ 献血量を確保するためには、何よりもまず、患者の治療に血液製剤が必    要であり、これは健康人からの善意の献血によって支えられなければなら    ないことにつき国民の理解を求めていくことが必要である。   ・ 青年層の献血を推進する観点から献血の重要性について学校教育の内容    に盛り込むことや、インターネットの利用等により広く国民が情報を得る    機会を設けることも重要である。   ・ 献血量を効率的に確保するとともに、安全性をより高めるためには、    400ml献血、成分献血を原則とすべきである。また血漿分画製剤の国    内自給を推進するためには、多くの血漿を必要とするが、赤血球を無駄に    しないためにも、成分献血の一層の普及を図る必要がある。   ・ 献血の受け入れ体制を整備する観点からは、身近な地域で成分献血等を    行うことができるように献血ルームの増設等を推進していくことが必要で    ある。   ・ 定期的に安全な血液を一定量確保できるとともに、献血者の利便性の観    点からも献血者登録制度の一層の推進が必要である。   ・ 献血にはそれ相当の時間を要し、特に、血漿採取のための成分献血には    約1時間を要すること等から、献血をボランティア活動に対する休暇措置    の対象とする等、企業、官公庁等の社会全体による配慮が必要である。   ・ 献血者の個人情報の厳格な保護を図るとともに、採血時の安全性の確保    採血時における万が一の事故への対応等献血者が安心して献血できる環境    を一層整備する必要がある。  (3) 献血血液の有効利用   ・ 日本赤十字社及び民間製造業者は、献血血液を無駄なく有効に活用する    ため、収率の向上や原料血漿の更なる有効活用等に努めるとともに、国は    科学的知見を踏まえて血液製剤の有効期間の延長についても検討を進める    べきである。  (4) 医療現場における適正使用の推進   ・ 国は関係学会と連携しつつ、アルブミン製剤や新鮮凍結血漿について使    用基準の見直しや再評価等の具体策を講ずるべきである。また、免疫グロ    ブリン製剤に関しても、血液製剤が有限な資源であるという観点を踏まえ    重症感染症等に対する適正な使用の在り方が検討されるべきである。   ・ 血液製剤の適正使用に関する医師の卒前・卒後の教育を強化することが    必要である。   ・ 日本赤十字社及び民間製造業者等は、血液製剤の適正な使用に関する情    報を的確に医療機関に提供するため、MRの教育・訓練を強化する等、M    R活動の充実を図る必要がある。   ・ 医療機関において、使用基準に基づいた適正使用の指導等を行うための    輸血療法委員会を設置するとともに、血液製剤の保管管理や輸血管理を行    う輸血部門等の整備を図ることは適正使用のみならず安全性確保の面から    も有効な方策である。また、第三者による医療機関の機能評価に際して、    これらの院内体制の整備を評価対象項目に取り入れることも併せて検討す    べきである。 V 安全性確保の具体策  1 ウインドウ・ピリオドの危険性の軽減  ・ 献血血液のHIV等の感染の有無は、現在抗体検査等により実施している   が、例えばHIVの場合は抗体の出現には6〜8週間を要するため、この期   間は感染を確認できない。検査によって感染を確認できないこの期間をウイ   ンドウ・ピリオドという。ウインドウ・ピリオドの危険をできる限り排除す   るためには、献血時における問診を強化するとともに、ウインドウ・ピリオ   ドをできる限り短くするための新たな検査技術の開発、輸血用血液製剤のウ   イルス等の不活化・除去技術の開発等を進めるべきである。  2 新たな技術等の開発とその利用  ・ 日本赤十字社及び民間製造業者等は、ウイルス等の不活化・除去技術の向   上、より高感度かつ高精度の検査方法の開発、遺伝子組換え製剤や人工血液   等を含めたより安全性の高い製剤の開発等に努め、常に最高の技術水準で安   全性の確保に努めるべきである。  ・ ウイルス等の不活化・除去技術等は、原料血漿の検査技術とともに血漿分   画製剤の安全性確保の根幹をなすものであることから、製造業者等は複数の   不活化・除去技術の組み合わせを行い、その評価試験を実施し、その効果を   確認することにより安全性の向上に努めるべきである。  3 情報の把握、評価、提供及び対応  ・ 血液製剤による感染症や免疫反応の危険性に関する情報は、感染症等の伝   播を防止する上で非常に重要である。このため、国、日本赤十字社、民間製   造業者等は可能な限り速やかに安全性に関する情報を把握し、また、得られ   た情報について適切に評価する体制を整える必要がある。こうした情報は、   当初は不確実なものであると考えられるが、そのような段階であっても危険   性の評価を行い、適切な手段を講じるとともに、多様な手段を用いて迅速に   情報を国民や医療機関等に対して提供、公開していくべきである。    なお、不確実性を伴う情報に基づいて安全対策の決定を行った際には、そ   の決定の前提となった安全性情報や、決定に当たって考慮した要因、制限条   件等も併せて情報提供を行い、その後明らかになった事実についても情報提   供していく必要がある。  4 遡及調査の実施、記録の保管管理  ・ 献血者がHIV等に感染しているにもかかわらず、献血した時期がウイン   ドウ・ピリオドである場合は、HIV等に汚染されている可能性のある血液   製剤が存在することになる。また、患者がHIV等に感染し、その原因が輸   血された血液製剤である可能性がある場合には、その献血血液からつくられ   た別の血液製剤も同様に感染の可能性を有していることになる。これらの感   染に関係している可能性のある血液製剤を探し出すとともに、その受血者又   は供血者についてHIV等の感染の有無を確認していくことを遡及調査とい   う。  ・ 遡及調査については既に実施されてきているが、円滑に実施されるよう、   一定の手順をあらかじめ定め、これを医療機関等の関係者に対してさらに周   知する必要がある。  ・ 遡及調査を円滑に実施するためには、血液製剤に係る各種の記録が保管さ   れていることが必要である。日本赤十字社は、献血者に関する記録を全国統   一的に管理する体制を構築するとともに、その記録の保管管理の期間を延長   していくべきである。また、日本赤十字社及び民間製造業者等は、血液製剤   の製造販売に関する記録の保管管理の期間を延長していくべきである。医療   機関においては、血液製剤を投与された患者の氏名等に関する記録や患者に   投与された血液製剤の製造番号等に関する記録の保管管理体制を整備してい   くべきである。  ・ 献血された血液の一部を保管することは、製剤の投与に伴い感染症等が発   生した場合の原因の解明等に有用であると考えられることから、日本赤十字   社は保管管理の期間を延長していくべきである。  5 献血者の啓発、検査結果の通知  ・ 検査結果を得ることを目的とした献血は、ウインドウ・ピリオドの存在等   の理由から、献血により救うことができる人をウイルス感染等の危険性にさ   らす可能性があるため、国、地方公共団体、日本赤十字社等の関係者は検査   目的で献血をすることがないよう献血者に対する啓発に努めるべきである。  ・ 献血者に対するHIV等の検査結果の通知については、これまで検査その   ものを目的とした献血を可能な限り排除するため、検査結果を通知しないこ   ととしてきた。しかし、感染症の早期治療、二次感染防止等の重要性にかん   がみ、今後は個人情報の保護に十分留意しつつ、陽性者には原則として通知   を行うべきである。    なお、通知に際しては、献血者自身が通知を希望していることをあらかじ   め確認することが必要である。  ・ HIV等の検査結果を通知することにより、検査目的の献血が増え、輸血   による感染症等の危険性が増すとの意見もあるが、献血者に対する普及啓発   問診の強化、保健所におけるHIV検査の勧奨、保健所の検査環境の整備等   により検査目的の献血を排除していくべきである。  6 自己血輸血の推進  ・ 自己血輸血とは、手術が予定されている患者から手術前に血液を採取して   おいたり、又は手術中に出血した血液を回収するなどして、自己の血液を輸   血に用いる方法であり、輸血によるウイルス感染や、免疫反応等による副作   用を防止できる利点がある。したがって、緊急を要しない、あらかじめ輸血   の予定が立てられる待機的な手術等の場合には、自己血輸血を一層推進すべ   きである。 VI 法制度の整備  ・ 我が国の血液事業に関する行政上の対応は、昭和39年の閣議決定の考え   方を基調とし、採血業の許可、献血者の保護等については採血及び供血あつ   せん業取締法に基づき、また、血液製剤の安全性の確保等については、薬事   法により行われてきている。    しかし、採血及び供血あつせん業取締法は、血液製剤の供給を図る上で国   や採血業者の役割が不明確であること、また今日では有償採血業者や供血あ   っせん業者が存在していないこと等、これをそのまま維持することは不適当   である。また、血液製剤の安全確保を図るため、薬事法に基づく一般の医薬   品の規制にとどまらず、遡及調査等の義務を関係者に課する等必要な規制を   行うべきである。さらに、血液事業における国、地方公共団体、日本赤十字   社、民間製造業者等の役割と責務を法的にも明確にする必要もある。    今後は、21世紀に向けた血液事業の一段の飛躍を期すため、これまでの   血液事業の反省を踏まえ、本報告書において提言されている内容について関   係者が責任を持ってそれを実施するとともに、時代の要請にこたえた新たな   法制度の整備が必要である。  なお、参考1は献血者及び献血量の推移、参考2は血液製剤の自給率の推移、 参考3は高齢化に伴う輸血用血液の使用量の粗い推計、参考4はアルブミン製剤 の需給に関する粗い推計でございます。以上でございます。 高久座長 どうもありがとうございました。これは先ほど説明がありましたよう に、4回にわたりまして起草委員会で検討してできた案でございます。この委員 会において、この案に対するご忌憚のないご意見をお伺いしたいと思いますが、 いかがいたしましょうか。どのところでも結構でございますから、随時ご意見を 伺いたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。時間が1時間でご ざいますので、ご意見のある方はどうぞ積極的に…。どうぞ、草刈委員。 草刈委員 起草委員の方々の大変なご努力を高く評価いたします。ご苦労様でご ざいました。  私が一番最初に気がついたことで申し上げますと、2ページの「I 国内自給の 推進」というところでございます。1行目の「倫理的な見地」ということ、それ から「国民の自発的意志による無償献血」ということは非常によくわかるのでご ざいますが、それから3つ目の・でございますが、「国内献血に由来する製剤が 輸入製剤より安全であると断定的に考えることはできないが」ということは、ほ ぼ同じくらいだとおっしゃっているように思います。メリットとしては「感染源 の特定や回収等の迅速な対応が取りやすいという利点もある」ので献血による理 由、国内献血によるというのでは、献血者の方々はがっくりくるのではないかま た礼を失してはいないかという気がいたします。  少なくとも医療に供される血液は人が体内で産生した血液に由来するもの以外 に存在しないということ。したがって献血者が血液を提供する動機は、他人の健 康や命を救いたいという全くの奉仕、隣人愛、連帯意識のあらわれであるという こと。それであるからこそ利益を得るための売買は生命倫理の立場から肯定でき ないというような表現が必要であると思います。これは三星委員が言うことだと 思いますが、失礼しました。 高久座長 私も起草委員の一員でしたが、課長さんが読んでおられるのを聞きま して、今草刈委員がご指摘された2ページの「I 国内自給の推進」の3番目の・ に関しては、今読み直してみてやはり少し抵抗を感じまして、これは検討させて いただきたいと思います。 草刈委員 お願いいたします。 高久座長 ほかにどなたか。どうぞ、三星委員。 三星委員 同じところの問題でございますが、「I はじめに」のところにはいろ いろと細かいことまで書いてございますが、何といっても閣議決定があった 1964年から34年も経過しているわけです。その間に3回にわたる委員会の 答申だとか、WHOの決議、こういうものを無視したということがまた薬害エイ ズを起こしたということでございますから、もっと「反省」という言葉を入れて ほしいと思います。過去にやったが今回は本当に反省して、それで血液事業法を 制定して全献血による国内自給の達成を努力するというようなことをパタッと謳 ってほしいと思うのです。  また実際問題、このおしまいの方にも書いてございましたが、献血者あっての 血液事業ということを強くやはり入れておいてほしいし、献血思想の普及、これ がこれからの1千万人に向けての献血推進運動というのは並み大抵ではないとこ こにも書いてあります。そのとおりだと思いますが、我々は何としても国が方針 を決めたら、それに沿って努力しようという覚悟は決めているわけでございます ので、その辺のところ、献血思想の普及、献血推進の運動というようなことをも うちょっと大きく謳っていただいて、実際いろいろな問題は出てきますが、ただ 幾らかこの自給に対して、言葉は悪いですが余り軽い文章ではないかなと思いま すので、この辺も少し訂正していただくとありがたい。以上です。 高久座長 わかりました。そのことにつきましては起草委員会においても、強調 すべきであるという意見が随分出ましてかなり入れたつもりでしたが、まだ入れ 足りないようですので、今の三星委員の意見を十分に尊重してもう少し強調した いと思います。 前田委員 同じところで恐縮ですが、「輸入に頼らなくてもよいという方向を目 指して」という非常に回りくどい表現ですので、もう少し簡単でわかりやすい表 現でズバッと言っていただくほうが、献血を推進するときにはいいと思います。 高久座長 ほかにどなたか。どうぞ、秀嶋委員。 秀嶋委員 8ページの一番上の・でございますが、「輸入原料血漿を用いる民間 製造業者や海外で製造された製剤を輸入する民間輸入業者は、国内自給を推進す るという基本方針の下で、国内自給達成までの間、我が国において必要となる製 剤の安定的な」というところ、これは私ちょっと抵抗がありますのは、ここに 「安全かつ」ということを入れた方が無難ではないかと思っております。 高久座長 わかりました。ほかにどなたか。 小室委員 今安全という言葉が出てまいりましたので、安全の方を担当しており ます専門委員として一言お願いしたいのですが、今までの文を読みまして安全に 関するところを見ますと、2ページの一番下に「不断の努力」とございます。そ れから3ページの2番目の・に「評価、提供を行う体制を整備する」とありま す。それから4ページの「(2)安全性確保」の最初の・に「必要な規制を行う べきである」、あるいは「技術を定期的に評価する」という表現がございます。 以下ずっと見てまいりますと、非常に体制を評価する、あるいは自己を評価をす るというような表現がかなり強く出ているようでございます。やはりこれにつき ましては外国の例にならいまして、しかるべき必要なガイドラインの作成とか、 あるいは評価を行う委員会の設置とか、そういう具体的な制度化は考えられない ものでしょうか。と申しますのは、外国で既にそういう制度が発生しております し、あるいは時たま緊急を要するさまざまな事態が生ずることでございますの で、しかるべく委員会でさらにそれを対処して、直ちに国はこういう方針で実施 をするというようなことが早急に達成できるような体制ができると、非常にあり がたいと思っております。 高久座長 3ページの上から2つ目の・には「体制を整備する等危機管理体制の 充実」という表現にしておりますが、もう少し具体的にということですか。 小室委員 はい。例えば原料血漿から最後まで、分画の場合ですと安全性を評価 するという場合に、各社がそれぞれ独自にやっておられるものではございます が、それを全体的に評価をする委員会の設置であるとか、具体化する場面が比較 的少ないのでございまして、そういう点が施策を実行するに当たって、極めて不 便な点を来しているのではないかというふうに私ども想像するものですから。 高久座長 その点に関してはガイドライン、それから安全性に関する委員会をつ くるということですが。どうぞ、草刈委員。 草刈委員 いろいろなところに「安全」があるのですが、今専門委員のおっしゃ ったように全体をまとめるという立場もあるのでしょうが、いろいろ先生方は上 手に書き分けています。ですから、「安全」ということで各ページに議論が飛ぶ とちょっとついていけない人が、私もそうですが、あるので、もしよければペー ジで追っていただいて議論を進めた方がありがたいと思っているのですが、どう でしょう。 高久座長 各ページごとに。そうですね。そうしましょうか。それでは時間の問 題もありますので、「I はじめに」については、先ほど三星委員が「HIV感染 問題などに対する反省の上に立って」という、もう少し「反省」という言葉が出 るべきではないかというご意見がありまして、それはそのとおりだと思います。 ほかに何か「I はじめに」について1ページでご意見のある方、どうぞ。 高久座長 もしご意見がなければ2ページの方の「II 血液製剤の特性を踏まえ て」で、2ページに関しましては「1 国内自給の推進」のところの3番目の・ について先ほど草刈委員からご意見がありましたが、ほかに何かご意見はおあり でしょうか。ここには「2 安全性確保」ということで云々という、これは副作 用の危険性が常にあるということを強調しているのが、今回の報告書の一つの特 徴だと思います。それに対して「安全性の確保に関し不断の努力を行う必要があ る」。3ページ目の半分までが安全性の問題について述べられておりまして、そ の後「3 適正使用」、「4 有効利用」となっておりますが、3ページについ ては何か。 草刈委員 「2 安全性確保」の中で最後の・ですが、「現在の状況では」と書 いてございます。3ページのところでもそうなのですが、「遺伝子組換え製剤や 人工血液の開発等を積極的に行い」と、これは非常にすばらしいことですが、主 語がないのです。ですから「依存しないような医療を国及び関係者は目指すべき である」と、こうやっていただくとありがたいと思います。 高久座長 わかりました。それは入れさせていただきたいと思います。ほかにど なたか。それでは4ページについて…、どうぞ。 前田委員 「3 適正使用」のところですが、「医療上は有効であっても安易に 第一選択薬」と書いてありますが、輸血のときの「輸血薬」というのは余り語感 としてはよくないと思うのですが。 高久座長 わかりました。「第一選択の治療法」ですね。 前田委員 「治療法」ですね。 高久座長 そうさせていただきます。 草刈委員 すみません、また3ページでございますが、「4 有効利用」のとこ ろで2番目の・です。「献血血液を有効に利用し」から2行目に入りますが、 「安定的な供給を確保するためには」と、これは本当は適正使用の指導、適正使 用の実施があるはずなので、「国及び関係者は」とやはりここは主語を入れてい ただければありがたい。 高久座長 わかりました。それも入れさせていただきます。では4ページに移り まして、三星委員どうぞ。 三星委員 4ページにも5ページにも載っているのですが、「5 透明性の確 保」のところに、「広く学識経験者、献血者代表、消費者代表等が参画する審議 の場を設け」と書いてありますが、ボランティアといいますか、献血協力者のこ とが抜けていますが、これは参加しなくてもいいということなのですか。 高久座長 献血者代表の中に含まれるかなというふうに理解していたのですが。 そうですね。 三星委員 そういう広い意味でね。 高久座長 はい。 三星委員 わかりました。 藤田委員 この消費者というのは患者さんをいうのですか。治療する医者は消費 者に入るのですか。 高久座長 例えばこの委員会に清水先生が入っておられるように、一般の方と理 解したのですが、そうではないのですか。 血液対策課長 一般に消費者という意味は、患者を含めた消費者というふうに理 解しております。 藤田委員 ドクターは消費者には入らないのですか。 血液対策課長 いろいろな解釈があろうかと思いますが、エンドユーザーという 意味にとる方が一般的かと思います。もちろんこういった会議の場合には、実際 に処方されるドクターの方も当然のように入るのではないかと思います。学識経 験者という欄もございますので。 藤田委員 学識経験者は別にしましても、消費者というのは患者さんが消費者な のか、処方する医者が消費者なのか、そこら辺の区別はどうなるのですか。 血液対策課長 消費者を患者さんなのか医者なのかと言われた場合には、患者さ んという意味合いの方が一般的にはとられているのではないかと理解しておりま す。 高久座長 確かに藤田委員がおっしゃったように、現場のドクターの意見も重要 だと思いますから、この場合には広い意味で両方入れるというように、実際には 学識経験者というと現場から離れている人が結構多いのではないかと思いますの で、やはり現場の人の声が…。どうぞ。 小室委員 順番にということでございますので、4ページの下から4行目の「技 術を定期的に評価する等」のところです。例えば「定期的に評価する制度等」と いうか、実際に具体化できないものでしょうか。 高久座長 これは「評価する」ではなくて…、評価することは制度になるのです か。評価するということは、国が評価することは制度をつくることではないので すか。そうですね。行動だと思います。ほかに、どうぞ。 草刈委員 「III 血液事業の実施体制」の「1 国」と書いてございますが、こ れはできれば献血というのは政府全体がかかわらなければならない、厚生省だけ でできる問題ではないと思いますので、そういう献血推進は政府全体、つまり学 校教育の中でもということの記述もありますので、後で出てまいりますが、そう いうニュアンスで「国」というふうに解釈はしていきたいと思っているのです が、よろしゅうございますか。 高久座長 作業部会でもそういう意見が出ました。それでは5ページに移らせて いただきます。どうぞ、草刈委員。 草刈委員 今の安全性確保の中で小室先生がおっしゃったことですが、私も安全 性追求の目標というか、社会規範を策定することは絶対に必要だと思っておりま す。ですからそのような考え方をどこかでお考えいただくような機会が欲しい し、またそのような概念の構成が必要だと思っております。実務する人間として です。 高久座長 そうすると、具体的にはどういうところで、どういうように…。 草刈委員 ですから先ほどの体制の中で策定の検討をしていただきたい。 高久座長 わかりました。それでは5ページに移らせていただきます。どなたか ご意見ございますか。 前田委員 「3 適正使用」のところで、使用基準の見直しだけにとどまらず に、それで実効が上がったかどうかを確認するところまでやらないと、基準は何 回見直してもなかなか効果が上がらなかったのが今まででしたので…。 高久座長 適正使用の使用基準の見直しと、その実施の推進ですね。推進だけで いいですか。推進でしょうね。草刈委員、どうぞ。 草刈委員 私も言おうとしていたところです。 高久座長 わかりました。ほかに5ページで何かございますか。どうぞ。 湯浅委員 最後の15ページの結論のところで、採血及び供血あつせん業取締法 は現在ではそのまま維持するのは不適当だと述べています。にも拘わらずここで はその取締法の適正化を述べておりますが、この法律を明記してよろしいのでし ょうか。 高久座長 5ページですか。 湯浅委員 ええ、5ページの「指導監督」のところです。 高久座長 「指導監督」、わかりました。 湯浅委員 「採血及び供血あつせん業取締法」は、最後の結論のところでは、法 律自体が不適当であるということを言っているわけですが、ここでは逆に生きて いる感じがします。 高久座長 そうですね。法制度の整備が出てきているので、それはもう入れてし まった方がいいのではないですか。ちょっと矛盾しますね。ですから最後の14 ページの「IV 法制度の整備」の内容を、法制度の整備を行って国内自給の推 進、適切な需要云々というふうにした方が…。わかりました。新たな法制度の整 備という…。 前田委員 そういう法制度の整備という提言もありますが、(6)指導監督のと ころで、5ページの下から2行目に「行政関与の仕方を工夫する」と書いてあり ますが、具体的なイメージが浮かばないのですが。「行政関与の仕方を工夫」と いうことと、「法制度の整備」ということとの関連がどうなるのかわからない。 ここではすぐに出来ないと思いますので、この関連が一貫する形にして頂きた い。 高久座長 わかりました。 藤田委員 下の方の国営化をしたらあかんというよりも、効率が悪いとか、技術 開発の停滞を招くとか、私たち病院は結局厚生省の下で、かなり厚生省を評価し ながら仕事をしているのに、国がこんな責任のないような文章はいかがなものか という感じはします。 高久座長 厚生省は指導監督で実際に営業はしていない。営業という活動を国が やるというのは、非効率化とかという問題があって、むしろ国営からいろいろな ものを外そうという意見が多いというふうに私は理解していました。外せるもの があれば、現在の国営化しているものでも外す方がいいのではないかという意見 がないわけでもない。現実に幾つかの事業が国営から民間に移ってむしろ効率も 上がって、受益者も恩恵をこうむったという事実を見ておりますので、今さら国 営化というのは逆行するのかなというのが起草委員会での何人かの方のご意見だ ったと私は理解しております。私自身もそういうふうに考えております。 藤田委員 結局厚生省は何にも自信がなくて、民間に責任を転嫁しようというよ うな発言に見えるわけです。 高久座長 いや、最初に責任を云々ということがはっきり出ていたと思うのです が。 藤田委員 だから国がやれば非常におかしくなるのだというような形で、民間に やらせるべきだという意見が非常に、血液は国民のものであると言いながら、こ ういう表現はいかがなものかと思って発言したのです。 高久座長 その前に、公共性を理由に国営化すべきであるというご意見がこの委 員会にも寄せられました。それからインターネットの中にもそういうご意見があ ったものですから、あえてこういう表現で国営化することは必ずしも適当ではな いのではないかということを書きました。本当は…、ということです。 藤田委員 書かなかった方がいいのではないですか。 坂巻委員 確かにご苦労はわかるのですが、このまま読みますと国営イコール非 能率であって、安価で有益な製造を提供するような発想にはならないというふう に決めつけるようになるので、もしお書きになるなら、国営化のメリットとデメ リットをお書きになって、やはり今の状況を考えれば民間の方でやった方がいい のではないかぐらい説明されませんと、何かちょっと国営化はオールだめだとい うと、国立病院もだめだなというふうにもなりかねないので、その辺を…、この 辺の表現がちょっとひっかかるものですから。 高久座長 わかりました。この表現は少し検討してみたいと思います。どうもあ りがとうございました。それでは6ページに移りまして、何かご意見ございます か。 前田委員 献血の現場の話ですが、今さら献血率の高低で、血液確保がどうだと いう時代ではありません。献血率ではなく質を踏まえた量の時代ですので、地域 の献血率を比べるような観点からの発想はしないでください。 高久座長 わかりました。2段目ですね。この言葉はやめましょう。 前田委員 2つ目と3つ目の・間に入れるべきものに、末端である県レベルです と献血者募集も県薬務課の仕事なのです。薬務課が市町村に対して献血者確保の 実務をするのは場違いな感じがしないでもない。県側からみる地方自治体にはむ しろ他の課のほうが普段の関連が密であるように思います。薬務課だけが献血の 窓口であっていいのかということです。一方、血液の適正使用の推進も薬務課の 仕事になっています。病院については薬務課が医療の中身について立ち入るとい うことで腰が引けているようで、如何にも弱いと感じます。献血者確保のことも 適正使用のことも薬務課でやるには少し馴染みにくい感じで、ためらいや戸惑い があるようです。以前から薬務課がやってきたから、今後も続けて貰うというこ とではなく、実態に合わせたやり方を工夫して欲しい。血液センターがなにかを 行うときにも窓口は薬務課だけというのは困ることもあります。後でも話がでる かと思いますが、地方で献血推進を行う際の役割分担が明確でないこと、それに 財政〜予算もはっきりしていない。すくなくとも県によっても、市町村によって も違いがあることが、ますます薬務課に仕事をやりにくいものにしていると思い ます。                高久座長 わかりました。 藤田委員 地方によれば、薬務課はほとんどなくなってきてしまっている。県の 中で。昔は薬務課長とか医務薬務課長とかがいましたが、薬務課長はほとんどい なくなってきているのが現状だと思います。 高久座長 それはこの中に具体的に書き込めますかね。 前田委員 地方公共団体という言葉で括ってありますが、この中には県と市町村 という関係ははっきりしてますが、政令市のことが欠落しがちです。県と政令市 はうまく行かない場合もあるようです。県から市町村には連絡がスムーズにいくが 政令市は漏れてしまう可能性があります。国と県、国と政令市、県と市町村という 具合に一々書くことが必要です。 高久座長 わかりました。それは事務的に少し検討したいと思います。ほかに、 どうぞ。 草刈委員 「3 血液事業者」のところで「(1) 献血」とございます。献血 という行為の主語は国民または献血者でございますので、これはむしろ日本赤十 字社のことを書いてありますので、「献血の受け入れ」というようなことの方が いいのではないかと思います。  それで1つ目と2つ目の・はいいですが、3つ目の・は、確かに「献血に係る 事業」となっておりますので、ここはできれば「日本赤十字社は、国、地方公共 団体と力を合わせて」というふうにしていただければいいと思います。 高久座長 わかりました。その次の段に「日本赤十字社は、…地方公共団体等の 協力を得ながら」と書いていますが。 草刈委員 「このために」というのをまたここに入れていただくとつながるので す。お願いします。 高久座長 わかりました。それでは7ページに移らせていただきますが、何かご ざいますでしょうか…。8ページは何かございますか。 藤田委員 すみません、7ページで。(3)の2つ目の・に「安価、安全」とあ りますが、この「安価」というのはどういう意味でしょうか。安ければいいとい う意味ですか。 高久座長 安い方がいいのでしょうね、同じものならば。これは無理に「安価」 と入れなくてもいいですか。 草刈委員 安価と安全というのはしばしばぶつかることがありますね。 高久座長 逆になりますね。 藤田委員 だから、これは「有効」ぐらいの字に直してもらえないか。「有効、 安全」というような。 高久座長 例えば「安全、かつ有効な製剤の確保」というふうにしましょうか。 わかりました。それでは8ページで何かご意見ございますか。 草刈委員 「血液製剤の供給」ということは、これは医療への対応でございま す。そうすると2行目に「日本赤十字社が直接又は」と書いてありますが、「又 は」のところに「地域医療の実情によっては」と。それから同じく「僻地・離島 など遠隔の地には救急医療の中で」ということをもし起草委員として入れていた だくならありがたいと思います。これは起草委員会に対する要望の中で、イン ターネット冊子の86ページに前田委員と私の名前でお願いしているところがも し採用されればありがたいと思います。 高久座長 それは検討いたしましょう。 藤田委員 8ページの上から2行目です。「ただしその前提として、患者の治療 に支障を来すことがないよう十分配慮するとともに、国際的な規定にかなった方 策とする必要がある」と。前の文章でこういうことを前提として必要な措置をと っているのではないですか。これは2行無駄な文章と違いますか。 高久座長 わかりました。もう一回詰めさせていただきます。7ページの一番下 の・の3行と、8ページの上の3行はちょっとわかりにくい表現になっています ね。私も先ほど読まれているのを聞いていてわかりにくいかなという気がしたの です。この言葉は今の藤田委員のご意見を参考にして検討させていただきたいと 思います。  それでは8ページで何かご意見ございますか。血液製剤の供給ということがあ りますが、もしなければ9ページに。8ページの終わりに「医療機関」とありま すが、それに続いて9ページは主に「国内自給推進の具体策」ということで、 「現状と課題」「将来推計」というのがございます。それから10ページにいき ますと「具体的推進方策」ということで「計画の策定」「献血量の確保」という 言葉がございます。どうぞ。 草刈委員 10ページの2つ目の・でございますが、その4行目に「現在の年間 献血者数が延べ約600万人に過ぎない…」と、「過ぎない」というのはどうも 抵抗があるのです。もう一生懸命やっていて、本当に600万人の方々が協力し てくださっているのに「過ぎない」と言われると、三星さんも余りおもしろくな いと思うのですが。 高久座長 「600万人であること」ですね。 草刈委員 そうなのです。 高久座長 おっしゃるとおりだと思います。 草刈委員 その次ですが、「国内自給を達成するためには」とございます。でき れば適正使用の推進状況や成分、400cc献血の推進状況を踏まえて、おおよ そ何年間ごとに計画を見直しながら、現時点では今後10年間一千万人が目標で はなくて、150万Lまたは国内自給が目標なのですから「150万L」と書く べきではないかと思います。 高久座長 上の方に「600万人」あるいは「一千万人分」と書いてあるもので すから、ここに「1千万人」と入れたのです。 草刈委員 一人歩きしてしまうのです。150万Lを集めても、あるいは適正使 用でその使用量が減ってきて、必要量が減ってきても、一千万人集めなければな らないというふうに頭の中にインプットされてきてしまう、そういう危険がある のではないかという気がしたわけです。 高久座長 これはどういたしましょうか。どういう表現が…。9ページの下には 「150万L」と書いていて、10ページでは「一千万人」になって、起草委員 会では具体的に人の数を出した方がインパクトが大きいだろうと。「万L」とい うのでは一般の方にはピンとこないのではないかというので数を出したのです。 草刈委員 それはわかります。 行天委員 これはキャンペーン効果の問題でして、細かいリットルで言ってもな かなかピンとこないのです。特一千万人というのは非常にわかりやすい数字で、 非常に大変なのだよという献血推進に関する大キャンペーンの一連なのですが。 草刈委員 おっしゃることはよくわかります。それはおまかせいたしますが、一 千万人というのが目標になってくると困るのです。そうではないので、国内自給 が目標です。それだけです。 高久座長 そうですね。「一千万人の献血者を確保することは容易なことでは ない」というふうに書いていますので、草刈委員も余り気にされないで…、非常 に大変であるということはもう皆さんご存じのとおりで、それであえて一千万人 という言葉を出させていただいたというのが現状であります。ほかに何かこの ページに関してございますか。 草刈委員 「計画の策定」は非常によく具体的推進方策を書いていただきまして ありがとうございます。3つ目の・ですが、全力を傾注するのは日本赤十字社の 基本的なスタンスですが、国及び地方公共団体が策定した計画を定められた役割 と責任に即して頑張ると、そこははっきりしていただくとありがたいです。 高久座長 わかりました。それでは11ページ、何かご意見ございますか。 藤田委員 上から3行目に突然「赤血球」が出てきたわけですが、これは非常に わかりにくいという感じがいたします。 高久座長 そうですね。専門家はわかりますが、確かに一般の方にはちょっとわ かりにくいかもしれませんね。ですから「多くの血漿を必要とするので、成分献 血の一層の普及を図る必要がある。」というふうにさせていただきます。  それでは12ページでございます。これはウインドウ・ピリオドということを 少し説明しております。非常に専門的な言葉ですから、懇談会の報告書としては 少し説明を入れさせていただいたということでございます。 草刈委員 「2 新たな技術等の開発とその利用」のところでございますが、3 ページの記述と違いまして、遺伝子組換え製剤や人工血液が何となく血漿由来よ り安全性が高いというふうにとれますので、3ページの記述で、「遺伝子組換え 製剤や人工血液等の安全性を高める等に努める」というのが本当かなと。 高久座長 おっしゃるとおりだと思います。この表現は直しましょう。ですから 「安全性の高い遺伝子組換え製剤や人工血液等の開発に努める」ということでよ ろしいではないでしょうか。 草刈委員 私もこの間ある患者さんに説明してわかったのですが、バイアル(ガ ラス瓶)の中に見える白い粉は殆どがアルブミンなのです。リコンビナントにせ よ、血漿由来の凝固因子にせよ。それは一緒なのです、献血であれ、売血であれ 血漿由来のアルブミンが白い粉として見えているのです。だから遺伝子組換え製 剤になっても同じような危険性があるということです。 高久座長 遺伝子組換え技術のアルブミンを使えばいいのだと。 草刈委員 それでも他種動物とか酵母の病原体は入るわけでございますから、リ コビナント凝固因子もリコビナントアルブミンも不活化・除去が血液製剤と同じ レベルのものがあるかどうかの確認は必要だと思います。 高久座長 そうですね。どうぞ。 小室委員 一言だけ申し上げたいのですが、「2 新たな技術等の開発とその利 用」の2つ目の・の3行目、「評価試験を実施し、その効果を確認する…」とい うところの「確認」に当たりまして、しかるべく委員会の設置を考慮した確認と 考えてよろしいですか。これは各自開発者が独自で確認するものなのか、それと もしかるべく専門家による確認になるのかという点ですが。 高久座長 この文章のとおりですと、製造業者等はということになっていると思 います。ですから業者、これは日本赤十字社も入ると思いますが、自分で確認を するということになっているのだと思います。 小室委員 できればその統一が現在なされていないものですから、しかるべく専 門家の委員会がある方がいいのかなというふうに私は思ったものですから。 高久座長 どうですかね。恐らく開発をしたときには中央薬事審議会にかかるの だと思います。そのときのデータをそこでチェックすると思います。 坂巻委員 ちょっと素人なのですが、新たな技術のところで、遺伝子組換え製剤 とすらっと書いているのですが、遺伝子操作というのは非常に倫理の面でいろい ろ問題があるのですが、こういうものは全然問題ない技術なのですか。 高久座長 今インスリンは100%遺伝子組換えのものになっています。 坂巻委員 ではそういう倫理の面では問題ないのですか。 高久座長 それは人によっていろいろ考えがあります。しかし、現実に医療の現 場では既に非常に広範に遺伝子組換え産物が使われていまして、もちろんこれは ナチュラルなものを遺伝子組換え産物に換えたわけです。その換えたための副作 用というか特別な問題は起こっておりません。  もちろんナチュラルなものでも、遺伝子組換え技術によるものでも副作用はイ ンターフェロンなどで起こっていますが、組換え技術そのものによる副作用では ありません。先ほど草刈委員がご指摘されたように、大腸菌を使ったものは構わ ないが、培養細胞の場合にアルブミン添加をするのでどうかという問題はありま す。  しかし、実際には既に培養細胞を使った組換え、エリスロポエチンを今人工透 析を受けている方の中の、非常にたくさんの方が恐らく5年、或いはもっと長く なるでしょうが、ずっと継続的に使っていまして、そのための副作用は起こって おりません。今の専門家たちの間の考えでは安全だと考えられています。しか し、草刈委員がおっしゃったように「安全性の高い遺伝子組換え製剤や人工血液 等」とした方が適切だと思いました。ほかに…。  では13ページに移らせていただきます。ここには先ほどと同じように「遡及 調査」という非常に専門的な言葉が出てきているものですから、遡及調査という ことについての説明をさせていただいて、その後遡及調査の云々ということは触 れておりますが、どなたかご意見ございますか。 前田委員 「これを医療機関等の関係者に対してさらに周知する必要がある」と 書いてありますが、どこが周知を徹底させるのかという主語をはっきりしていた だいた方がいいと思います。遡及調査の説明が終わった次の・です。 高久座長 確かにそうですね。わかりました。 秀嶋委員 13ページの下から2つ目の・ですが、「医療機関においては、血液 製剤を投与された患者の氏名等に関する記録は患者に投与された血液製剤の」 云々とございますが、これは保管をして、我々もルックバックをしなければいか んというような意味に解釈するのですか。 高久座長 どうでしたかね。これは、だけど普通病歴に書いていますね。 藤田委員 これは新しい法律ができまして、いわゆるカルテとは別に保管すると いう形が出ています。 秀嶋委員 ですから、そういう意味合いでこれをやるのかということで疑問にな ったのです。 高久座長 保管をして遡及調査に積極的にもちろん協力していただきたいと思う のですが、特に事故のあった場合に。 藤田委員 だからこれは何年置くのか。 高久座長 今の新しい法律で決まっていないのですか、10年ですか。 血液対策課長 血液製剤の保管管理の場合は法律というより通知で、この6月に 通知を出させていただきまして、9月から開始しているところであります。期間 は10年です。 藤田委員 カルテは5年でしょう。 血液対策課長 カルテは5年ですが、5年以上必要な場合も多いので。 藤田委員 カルテが5年で、10年残っても意味がない。 血液対策課長 諸外国では40年間保管という例もございますので、将来に向け てできるだけ…。 藤田委員 だからカルテの保管もこれから先厚生省は10年をお考えなのか、そ の辺です。 血液対策課長 それはこちらではちょっと答えがたいのでございますが。 藤田委員 だからこれだけをなぜ10年になさったのか。 高久座長 通知で10年になると現場では困るのですね。私は通知の期間を正確 に知りませんでしたが、輸血をした患者さんの病歴だけを振り分けて保存しなけ ればならないということになって、それが遡及調査を云々といったときに…。こ の点に関しては何かご意見はおありでしょうか。 秀嶋委員 ともかく医療機関に使用するときはすべてもういろいろな検査をクリ アしてきたものだと思うのですが、そうするとちょっと意味合いがよくわからな い。 高久座長 いや、これは患者さんの記録ですね。 藤田委員 患者さんに対する…。 高久座長 そうです。 湯浅委員 将来新しいウイルスなどが見つかった場合には、その10年間の保管 簿から投与を受けた患者さんの名前と住所を見つけて、追跡調査をするというこ とですよね。 高久座長 そうですね。私も通知の詳しいことは知らず不勉強で申しわけないの ですが、それを徹底しようとするならば、輸血患者については別の台帳をつくら なければ…。 血液対策課長 現在の通知では別の台帳をお願いしております。それから10年 といっておりますが、10年以内に見直しをしてさらに延長することも含んでお りますので、よろしくお願いいたします。 高久座長 ということでありますので、それは考慮せざるを得ないかもしれませ ん。  それでは14ページは何かございますか。これは非常に細かいことですが、上 から2行目の「危険性にさらす」は「危険にさらす」ですね。言葉だけです。  「VI 法制度の整備」というのが14ページの下に書いておりますが、今日は 森島委員がご欠席ですが、これについて何かご意見ありますでしょうか。 湯浅委員 15ページの4行目に、「さらに、血液事業における国、地方公共団 体、日本赤十字社、民間製造業者等の役割と…」とございますが、一番前の目 次、「III 血液事業の実施体制」という中には「国」、「地方公共団体」、「血 液事業者」、「医療機関」の4つがあるわけです。やはりここにも「医療機関」 ということを入れていただいて役割を明確にする必要があります。今までの適正 使用が徹底しなかったのはそういう実効性の明記がなかったためだと思います。 高久座長 おっしゃるとおりで、「医療機関」というのをぜひ入れさせていただ きたいと思います。 秀嶋委員 つまらないことでよろしいですか。「昭和39年の閣議」というのが 方々に出てくるわけです。ちょっと目障りな感じがしますので、これはもういい のではないですか。 高久座長 1ヵ所でいいですか。ですが、これは日本の血液事業にとっては非常 に大きなイベントであったことは事実なのですが、ちょっと見直してみましょう  今度は全般で結構ですが、各ページのご討論のときに言い残されたこと、言い 忘れたことがございましたら、どうぞご遠慮なく…。 藤田委員 この会とはちょっとニュアンスが違うかと思いますが、厚生省が針刺 し事故の看護婦に関して、HIVらしいのには薬を飲みなさいという指示をお出 しになっております。それは有料で、大体薬は2時間ぐらいだというものが、ウ インドウ・ピリオドがこれだけあると。そうすると針刺した看護婦さんとか医者 は必ず飲まなければいけないものなのか。どういう意味でああいう文書が出たの かよくわからないので、厚生省の偉い人がおられるからお聞きしたいわけです。 高久座長 それはここで出したのですか。どうぞ。 血液対策課長 関係部局に問い合わせまして、改めて答えさせていただきます。 高久座長 そうですね、藤田先生に。恐らくエイズ疾病対策…、どうぞ三星委員 三星委員 今の報告書の案が終わったところで、私が今日提案していることがご ざいます。これは付属のようなことになるかもしれませんが、ちょっとお話をし たいと思います。  これは実は何といっても先ほどから申し上げたとおり1千万人というか、この 献血に対しては生半可なことではいかないわけでして、我々のライオンズクラ ブ、毎年日赤さんのご配慮で全国の関係者が集まって討議をいたしております。 その中で本年も私がここの委員としてのご報告を申し上げたわけですが、そのい ろいろな中から出てきていることでございますが、やはり1千万人の献血の推進 を本当におやりになるなら、国民運動の本部をつくってもらいたい。これが厚生 省だ、日赤だではちょっと無理だろう。やはりこれは国が、ということは内閣で す。内閣が本当に指導を持って、本部長は当然として内閣総理大臣がおやりにな って、各省の大臣が全部参画するという体制をぜひとってもらいたい。  その本部の下に献血の推進連絡会とか、いろいろなスタッフとしては厚生省の 役員の方、都道府県、市町村、それから日赤の職員、また我々ボランティア団体 のメンバーが委員として、やはり実質的なことをそこでまたやらせていただく。 またこういうことは必ずその都度のいろいろな毎年の動きによった報告というこ とも毎年行ってほしいということでございます。これについては当然お金のかか ることですが、それはぜひ国の方で出してもらおうということ。  それから現実に今、私たちが献血推進をしながら困っている問題がたくさんあ るわけです。ちょっとここへ挙げておきましたが、歩行者天国でやろうと思って も駐車の問題等で警察がなかなか許可をしない。また、これは特にひどいのです が、どうもJRさんが昔と同じような営利主義に走っておりますので、駅の構 内、駅前のJR用地ではなかなかPR活動を認めてくれない。我々が言ってもな かなかOKがとれないのです。こんなことは当然国がちゃんと本部があってやっ ていただくなら、内閣から運輸省にボカンと言っていただくとか。また、何回も これにも出ておりますが、文部省としては小・中・高校の教育課程で本当の献血 の尊さということを十分ひとつ教えてもらってほしいと思うのです。  ほかにも出てきますが、少子化、高齢化の中ですから、今の16歳献血を何と してももう1歳下げた15歳献血、この辺のご配慮を十分考えていただきたい。 今の若い者であれば当然それだけの体力は持っておりますので、問題はないと思 うのです。  そのほか通産省の担当でございましょうが、輸入に関する原料血漿、分画製剤 の輸入については、いろいろな規制というといろいろと困るでしょうが、やはり 国内献血を推進する意味である程度の規制はお考え願えないかと思います。  それから献血、特に先ほどからお話しの成分献血の場合は時間がかかるという ことでございますので、こういう点は労働省が主幹でございましょうか。献血時 の職免等の環境づくりという点もお考えいただきたい。  その他各省にわたるいろいろな問題があると思いますので、ぜひひとつその辺 のところをやはり下でやるのではなく、まず上でやっていただくというふうにお 願いをいたしたいと思います。  特に15歳ということに我々がこだわっているのは、昔からもう15歳という と元服でございます。準成人という形でございますから、こういう国を挙げての 献血運動などについては十分責任も持ってもらわなければいけない時代に突入す るわけですから、そこで献血なり献眼、献腎、成人病、エイズ等、また性教育な ども徹底して図ってもらうとともに、やはりその年になりましたら、その本人の 健康のためにも全部の健康診断をしてもらって、ほとんどの若い者は大丈夫だと 思いますが、もう悪いところがあればどんどん治療していただきます。それにつ いては国民健康カードというようなものを支給していただいて、これが将来その 人の一生の間に元気な間はどんどん献血をしてもらうし、また体の悪くなったと きにはそういう記録に基づいた治療ができるのではなかろうかと思うわけです。  これは諸外国が皆そうですが、自動車免許証取得の場合、特にアメリカなどは そうなっておりますので、そういう思想を図ってもらうとともに、やはり国民健 康カードと同じようなものに、自動車免許証の扱いを考えていただけたらなと思 っております。  そのほか最後にあるものは私たちのこの問題に対する心意気でございますの で、これはここでは必要ないと思いますが、我々ボランティアとしてもただ単に お手伝いをする程度ではなくて、本式に構えていく以上はやはり担当メンバーが 真剣に考えようということで、こんなことを現在協議をいたしております。とり あえず今そのような報告でございますのでよろしくご検討を願って、この報告書 のおしまいの方にでも付けていただければありがたいと思います。よろしくお願 いいたします。 高久座長 どうもありがとうございました。確かに1千万人の献血を実現しよう とするならば国民運動的なものが必要でございます。それには全省庁が関係する ことに当然なるわけでありまして、この国民運動本部の設置ということをこの報 告書に盛り込むかどうかはもう少し検討させていただきたいと思います。 菅谷委員 この報告書についての印象といいますか、今までの報告書と違って国 の責任だとか、それから日赤の責任というのも一応書いてあるということについ ては評価できるのではないかと思います。ただ、もちろん何をすべきかというこ とは大事なことですが、しかし、だれがどうするのかということもやはり必要な ことで、国民から見て、しっかり仕事をやっているということが見えるようにな らないといけないのではないかということが一つ言えるかと思います。  それから血液製剤というのはなるほど一般の医薬品とは違って、今の状況で国 内の自給推進ということは非常に大事だと。そのために献血の推進はもちろんで すが、適正使用という問題もあるわけですね。それで適正使用の見直しと当然な ってくるわけですが、そういう場合にはやはりそれぞれ輸血学会だとか外科学会 だとかという専門家の意見を十分取り入れて検討するということでないと、これ はえてして医療の現場を知らない、いわば役人が画一的なものをつくりたがる傾 向がありますので、そういうことはないようにやっていただかないといけないの ではないかと思います。  もう一つ、当然この献血から出てくる血液製剤については自給を高めるための 対策や採血コストの増加、そして安全性を高めるための技術コスト等により価格 はどうしても高くなる。ただ、そこはやはり現在の医療費財源の問題もあるわけ ですので、効率化を図ってそれぞれの場で、できるだけ高騰することのないよう な対策をぜひとってもらう必要がある。そこのところもきっちり把握しておかな いと、一番問題を残すことになるのではないかというふうに思いますので、ちょ っと申し上げておきたいと思います。 高久座長 どうもありがとうございました。今菅谷委員のおっしゃったことを、 この報告書の中にも盛り込まれていますが、十分にご意見を尊重してもう少しき っちりと盛り込むようにしたいと思っております。  ちょうど約束の4時になりましたので、いろいろまだご意見があるかと思いま すが、今日の委員会はこれで終わらせていただきます。次回はたしか12月2 日、これは皆さん方のご都合をお伺いしましたところ、12月2日の午前が一番 出席率がよいという結果になりました。アンケートの結果でございますので、も しもご都合の悪い方には誠に申しわけないのですが、一応12月2日の午前にさ せていただきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。  本日は、いろいろ積極的なご意見をいただきましてありがとうございました。 委員の皆さん方のご意見を踏まえて、この報告書の案をもう一回つくりかえまし て、また12月2日にご意見をお伺いしたいと思います。本日はどうもありがと うございました。 問い合わせ先 厚生省医薬安全局血液対策課    担 当 菊地(内2903)    電 話 (代)03−3503−1711