97/10/21 年金審議会全員懇談会議事録 年金審議会全員懇談会議事録 日 時:平成9年10月21日(火) 14:00 〜17:00 場 所:厚生省特別第1会議室 ○ 全員懇談会 1 開会の辞 2 委員出席状況報告 3 議 事 ・次期財政再計算に向けての検討について 4 閉会の辞 〔出席委員〕   京 極 会 長   八 木 委 員   岡 崎 委 員   国 広 委 員   久保田 委 員 神 代 委 員   坂 巻 委 員   都 村 委 員   福 岡 委 員 桝 本 委 員   山 田 委 員   山 根 委 員   吉 原 委 員 若 杉 委 員   渡 邊 委 員   船 後 委 員 ○会長 時間になりましたので、ただいまから第8回年金審議会全員懇談会を開催します。 本日は全員懇談会ですが、テレビ局からカメラ撮りをしたいという御要望がございま すので、許可したいと存じます。よろしゅうございましょうか。それでは、カメラ撮り をお願いします。 カメラ撮りが終わりましたので、委員の出席状況について事務局から御報告をお願い します。 ○事務局 本日は、砂子田委員、木原委員、高山委員、富田委員、目黒委員、貝塚委員が御欠席 でございます。なお、吉原委員が少し遅れて来られる、山田委員が1時間ほど遅れられ るという御連絡がございます。 ○会長 本日の議事に入りたいと存じます。本日は、第3号被保険者等公的年金制度関係の残 された課題と年金現業業務について議論を行いたいと存じます。 また、前回審議会で申し上げましたとおり、本日は3時間にわたり審議を行いますの で、中ほどで休憩をはさみます。議事進行の御協力よろしくお願いします。 事務局で資料を用意しておりますので、ご説明をいただきます。 ○事務局 それでは、まず資料の1について御説明申し上げます。 今回、項目が多岐に分かれております。かいつまんで御説明を申し上げたいと思いま す。 まず、1ページ以下が基礎年金の仕組みということでございまして、2ページで基礎 年金の現在の制度について、かつての制度から今の制度に昭和60年に変わった訳であり ますが、どういうことで変わったかということを概括しております。特に、ここの関係 では本審議会でも資料の御要請があった訳でありますが、3ページのところについて御 説明を申し上げたいと思います。 これは、被用者年金における基礎年金拠出金と基礎年金の交付金の間に差があるで はないかということでありまして、その差がどのくらいの規模であって、どういう 理由によって発生しているかということについて説明をいたしております。 基礎年金は括弧に書いておりますとおり、全国民共通の給付を全体の被保 険者で公平に負担するという仕組みを取っております。これは、2つ目の括弧でありま すけれども、産業や就業構造の変化ということに対応してこういう制度に変わった訳で ありますが、それによりまして被用者の年金の拠出と被用者のOBの受け取っている交 付金の実質的な差額は0.3 兆円程度ございます。これについては、次の4ページの絵で ごらんいただいた方がお分かりいただけるかと思いますが、上の方は会計上の整理でご ざいまして4.6 兆円の差がありますが、これは3号の問題とか、それから、新しい制度 によって支給されているものを別にしておりますので、実質の違いは下の表をごらんい ただきたいと思います。 これを見ますと、特に旧法にかかる旧制度の年金につきまして、2号いわゆる被用者 が負担しております額と、それから、その被用者のOBが受け取っております年金の間 に差がある。3.9 兆円と3.7 兆円と書いておりますが、四捨五入の関係で0.3 兆円の差 が生じておるところでございます。これは、どういう理由から生じたのかということに ついて若干御説明申し上げますと、昭和60年改正前のそれぞれ被用者であるあるいは自 営業者である独立した制度で運営を続けておりました場合に、どうなったかという差に よる訳でありますので、旧制度のままで比較するということは、今全国民で分かち合う という考え方の基礎年金でありますから、そういう比較の仕方が適当であるかどうかに ついてはちょっと問題がある訳でありますけれども、仮に比較をするとしますと、この 0.3兆円の差が生じた理由は、いわゆる制度の成熟状況の違いによるものである。 例えば、親は自営業者でその子どもは都会でサラリーマンをして いるといった格好で人口が移動します。それから、その自営業者、被用者の区分が変わ ります。そうしますと、その区分ごとに現役と受給者世代のバランスが違ってくる訳で ございまして、そういった成熟度の違いがこういった0.3 兆円の差につながっておると いうことでございます。 ただ、これにつきましては、もう一つ説明がございます。もし、国民年金の未納者と いうものがいなければ、この0.3 兆円はどうなるのかということですが、未納者がもし いないということであれば、この0.3 兆円の差額は計算上半減されるということでござ います。これについて更に説明を申しますと、要するに未納者が納めなかったという額 というものは、1号、2号を含めて被保険者全体でカバーする形となっておるものであ ります。 それからまた、未納者については将来年金の給付は発生いたしません。という意味 で、中長期に考えますと、未納者の存在が1号ないし2号に対して付け回しのような形 でフリーライドが起きるのではないかということはありませんので、それについて御説 明を付言いたしたいと思います。 いずれにいたしましても、こういった未納者が存在するということでこの差額が大き くなっているということは、例えば、将来の無年金者が出るのではないかあるいは年金 の制度の信頼を損なうということでありますので、これは後ほど社会保険庁の方から御 説明申し上げますけれども、その業務の中で鋭意解消に努めているということでござい ます。 それから、先にまいりますが、5ページ以降これは第3号被保険者いわゆる被 用者の専業主婦を中心にしたグループでありますが、その保険料の負担についてであり ます。この制度は昭和60年の改正でこういうふうになった訳でありますけれども、最初 の1の(1) に書いておりますが、かつての年金制度は給付においても負担においても世 帯単位という考え方が取られておりました。その結果、下の(2)の○にありますけれど も、例えば、共働きの世帯で奥さんが国年に任意加入しているといった場合に過剰な給 付が発生するとか、あるいは老後の離婚といった場合に対して、妻の年金権が保障され ていないといった問題があった訳でございます。 そこで、6ページのように改正した訳でありますけれども、ちょっと7ページにお進 みいただきたいと思います。7ページをごらんいただきますと、それぞれの被保険者に ついての給付と負担の関係を横の長い四角の中に整理しておりますが、左から第3号の 被保険者につきましては、これは要するに、どちらかが働いている片働きのケースであ ります。給付は基礎年金から受ける。負担につきましては、例えば、サラリーマンの ケースであれば御主人の保険料の中から賄われるということでありますので、3号被保 険者の直接の負担はない。 一方、2号につきましては、これは共働きの場合もあれば独身のケースあるいは片働 きも含む訳でありますけれども、給付は基礎年金プラス厚生年金で負担は所得比例の負 担になって、保険料で負担していただくということになっておる。 右が第1号で基礎年金の給付、それから、定額の負担となっておる訳であります。3 号と2号の間に斜めの矢印が入っておりますが、共同負担という部分でありますけれど も、さっきも申しましたように、いわゆる2号全体で3号の方々の保険料を賄っている というところに、例えば、片働きの世帯あるいは共働きの奥さんといった立場の方か ら、サラリーマンの妻は保険料を納めないで年金を受給している、共働き世帯が3号の 年金負担を肩代わりしているのではないかという批判につながっている訳でございま す。 それから、下の四角の絵をごらんいただきたいと思うのですが、一方で、共働きの例 を取りますと、これは御主人も基礎年金プラス厚生年金の報酬比例部分を世帯分で受け 取る。それから、奥さんも自らの基礎年金に自らの報酬比例に基づいた世帯分の厚生年 金を受け取っているということになりますと、これは共働き世帯につきましても、1世 帯で厚生年金部分は世帯分2つ乗っかっている訳でありますから、言わば夫婦2人とい う標準で考えた年金額以上の受給になっているという面もございます。そういった意味 で、3号の負担の問題もございますが一方で、こういった共働きのケースについては過 剰な給付ではないかという指摘もある訳であります。 そこで、次の8ページでありますが、3号被保険者についての現状に対する批判が右 側、それから、現在の制度はよしとする考え方が左側に2つ大きく整理しておりまし て、それぞれ負担の公平についての議論、それから、就労に対する影響ということでの 生活スタイルへの影響、それから、実際に保険料徴収するということが技術的にどうな のかということについて整理をしておるところでございます。次にまいりますが、それ では9ページで諸外国ではこういった例についてどういう扱いがなされているかという ことを調べてみましたが、1の(1)例アメリカ、イギリスは、ほぼ日本と同様の考え方に 立った制度が取られております。被扶養配偶者に対して独自の年金を支給する。そし て、保険料は稼ぐ人が一人で納めている。それから、フランスはちょっと保険料の納め 方は違いますけれども、かなり類似的な形にはなります。 一方、保険料も徴収しないということで居住要件のみで給付を行うスウェーデンの例 がございますが、これは被扶養配偶者ということとは関係なく個人個人にそれぞれ基礎 年金として支給されておるということであります。 そこで、10ページは今度は配偶者が死亡したときあるいは離婚したときの制度を概観 しておりますけれども、真ん中が死亡時、右側が離婚時であります。死亡した場合には 奥さんに厚生年金がなければ奥さんの基礎年金プラス夫の厚生年金の4分の3、それか ら、下は奥様に厚生年金がある場合に幾つかの方法がございます。特に、(3)はその選択 が少なくて問題がございまして、前回の改正で付け加わったものでございます。 それから、離婚時につきましては、妻に厚生年金がないときは基礎年金のみ。それか ら、妻に厚生年金があるときには妻の基礎年金プラス妻の厚生年金という形で現状が整 理されております。 11ページはその数字でございますが、省略させていただきまして、12ページで配偶者 の死亡時や離婚時の年金をめぐる問題について整理をしております。 左側に問題点をずっと書いております。例えば、一番上であれば遺族年金の問題であ りますけれども、専業主婦に対して遺族年金を給付する費用を第2号被保険者、特に、 単身の女性や共働きの女性が共同負担している。これは、不公平ではないかといった考 えがありまして、その場合突き詰めて考えますと、それでは、遺族年金を廃止するのか あるいは付加保険料を取って付加的に行うのかといった形も改正案の議論としてはあり 得る。こういった形で、いろいろなケースについての意見を並べております。 例えば、離婚時に年金をどうするかということで二分割してはどうかという意見など もございます。これを取り得るかどうかについては、非常に難しい問題がございますけ れども、右端にそれぞれそういう制度を取った場合にどういう考え方になるかというこ とを手短に、学者の先生方の議論を整理してみました。 例えば、一番上のケース、賃金額が低くて厚生年金の加入期間が短いという女性就業 の現状において遺族年金を廃止して全くの個人単位の年金に仕組み変えることが出来る か、こういった議論等もございます。 あるいは、年金を夫婦で二分割するというということついても、我が国の国民意識に そういった考えがなじむかどうか。民法はまだそういう制度になっておりませんし、税 法でもそういう2分2乗といいますけれども、そういう二分割して考える扱いになって いない。さまざまな他の制度等もございますが、まだ、そういった社会常識には至って いないのではないか。 そういった中で、先ほどの3号から保険料を取ってみてはどうかという考え方やある いは遺族年金をやめてみてはどうかというような考え方は、どちらかといいますと年金 制度を給付も負担も個人単位に集約していこうといった考え方に立脚した整理であろう かと思います。しかし、年金を二分割するといった考え方はむしろ世帯で収入というも のを考えておいて、それを分割する訳でありますから、世帯がある程度配慮された考え 方になっております。こういった格好で、それぞれの考え方につきましても個人、世帯 についての考え方が完全に整理されていないようでございますし、あるいは社会保険と いうものの本来の在り方とか、それから、家族観といったことを整理して考えていきま すと、どういうふうに今後女性の年金を考えていけばいいか、なかなか難しい点がござ います。 以上が、この3号あるいは離別、死別等の問題でございます。 その後に遺族年金、それから、離婚時の外国の資料をおつけしておりますが、先に進 ませていただきまして、15ページ以下が少子化対策の関係であります。今の政府のエン ゼルプランでどういったことが政府全体では取り組まれているかということを紹介して おります。15ページ、16ページ、それから、17ページは各団体等からの年金制度で少子 化にどう取り組むべきかという意見ということでいただいておりますが、こういったも のを集約しましたものが18ページでまとめております。 18ページは大きく分けまして2つに分かれます。まず、年金制度で少子化対策を講じ るべきだという意見、それから、下の2で年金制度では少子化対策を講ずるべきではな いという意見、大きく分かれます。例えば、講ずるべきだという意見につきましても(1) と(2)がありまして、負担面で例えば、徴収のときに子どもの数に応じて減免するとか、 あるいは育児休業中の保険料免除を延長してはどうかといった負担面での配慮をするべ きという意見と、それから、給付のところで配慮するべきという意見に分かれます。あ と、下は講ずるべきでないという意見で、年金でそういうことを手当して出生率に本当 に効果があるのかという意見とか、それから、年金に対する基本的な考え方に基づく反 論であります。 各国の少子化対策の事例につきまして19ページで紹介しておりますが、給付や負担に おいていろいろ反映しておる例でございます。 20ページはパート労働者の厚生年金保険・国民年金の適用についてでございます。 パート労働者につきましての現行制度をかいつまんで説明しますと、まず、上の四角 でありますけれども、労働時間日数が常用雇用者の4分の3以上であるかないか、これ で分かれてまいります。4分の3以上であれば厚生年金の被保険者になります。時間が 4分の3に満たない場合に、年収で分かれまして130 万円以上と未満で1号になるケー スと国民年金の3号になるケースに分かれるということであります。健康保険につきま しても、下の方に例示しておりますが、同様の考え方を取っているところでございま す。 21ページではそういう短時間の雇用者というものが、特に女性を中心にシェアが増え てきておるということ、それから、22ページでは特に女性の30歳代、40歳代のところで こういった労働の形態が非常に多くなっているという実例を紹介しておりますが、23 ページでこれに対する意見を要約いたしております。 23ページをごらんいただきますと、やはりなるべく被用者保険の被保険者とするとい う基本的な方向で臨めという考え方、平成4年12月の検討会の報告書でございます。 また、具体的には130 万円のところで一時的に所得の逆転が起きるというようなこと もありまして、就労抑制になっているのではないかといった批判もあるところでござい ます。 続きまして、24ページ以下、今度は学生の適用についてでございます。学生につきま しては、平成3年度の改正で現在の強制適用にすることに変わった訳であります。それ までは、任意加入でございました。その理由として(1)、(2)と挙がっておりますが、障 害の状態になっても年金に加入していなければ障害無年金になってしまう。学生時代の 事故、スポーツ等の事故などが念頭にあった訳でございます。 それから、23歳とか24歳になって加入するということになりますと、60歳に退職した 場合に満額の基礎年金に到達しないということもあって、40年間の加入期間を得るよう にしてはどうかというようなこと。あるいは既に同年代でも働いている方々が多々ある といったことを勘案しまして、現行の制度に変わった訳であります。一方で、これはな かなか保険料を納めてもらうのは難しい実情がありまして、保険料の免除という制度も 3のところで紹介しておりますが、親元世帯の所得状況によりまして国公立、私立の区 別あるいは同居、別居の区別ごとに基準を設けて免除制度も講じておるところでありま す。 25ページが、その生活の実態でありますけれども、飛ばしまして26ページに学生の扱 いについての意見をまとめております。 上のものは学生時代は本人所得がないということから、将来就職してから追納すれば いいじゃないかという考え方あるいは保険料について免除扱いあるいは障害の問題があ るならば、障害年金分だけの保険料は取ってその分だけを納める、その他の分は納めな くてよいのではないかという意見。それから、任意加入にしますけれども、障害を負っ た場合には無拠出で基礎年金を支給してはどうかといったような意見が出されておると ころでございます。 それから、27ページにまいりますが、施設入所者に関する費用の問題でございます。 このページと次のページで説明しておりますが、よく言われますように、例えば、老人 病院等に長期入院しておりますと、その間に年金が多額にたまっているじゃないか、そ れは相続に回されるのではないかということで、1人の人に年金なり医療費なりあるい は福祉という国費がダブって流れ込んでおるといった意味で、年金の扱いを考えよとい うことでありまして、27ページがその老人ホームなり老人保健施設、病院におったとき の費用負担の関係。特に、介護保険が創設されました場合にはこうなるというものも27 ページの資料で表現しておる訳でありますが、28ページに考え方を整理しております。 28ページをごらんいただきたいと思います。 基本的には、これも大きく2つに分かれまして、年金で調整すべきか年金を制限する べきか、それとも受け取った年金で自己負担という形で調整すべきかと2つの考え方の 違いがございます。上半分は病院にいるとか施設にいるという理由で年金を制限すると いうのは、保険の原理にそぐわないのではないかという考え方。あるいは、そういうこ とで、年金を制限しました場合に、在宅に被扶養者がいた場合にどうなるのか、所得が なくなっていいのかという議論とかあるいは施設に入所したときの生活サービスは個人 の選択により個人が費用を負担すべきという意見、諸外国にも例がないあるいは実務的 にある人が今病院にいる、ある人は施設にいる、今家に帰った、これをずっと何千万人 をフォローしていくことが可能なのかといった問題がある。 一方で、年金の方で言わば蛇口のところで止めようという意見も2つ紹介されている ところであります。 ちなみに29ページで各国の例をお示ししておりますが、年金で支給調整するという形 は取っておらないというふうに承知しております。 それから、次が30ページは障害者の年金の関係でございます。 障害者につきましては、現在それぞれ3級、2級、1級で30ページの絵にあるような 給付の体系がつくられております。そこで、31ページで支給状況、人数や金額について 整理しておりますが、障害者につきましては32ページ以降で障害者プラン、平成7年の 12月に7か年戦略としてまとめられたものがありますので、それも併せて御紹介してお ります。その中で1点御説明を申し上げておきたいのは、障害者の生活保障のためにす べての無年金者に対しても救済するべきではないかという意見がありますが、年金は保 険という制度を取っておりますから、滞納等があった場合には障害年金は支給されない 訳であります。それについて、無年金が生じるのはおかしいのではないかといった御意 見があります。 これについては、障害者プランにおいても検討がされた訳でありますけれども、福祉 的措置による対応、要するに年金ではなくて福祉で対応するということも含めて、更に 検討するということで、これは検討課題とされているところでございます。これは併せ て御説明を申し上げます。 それから、34ページが障害者に対する各種手当の比較ということで、福祉関係の手当 を整理しております。 35ページ以下、これが最後になりますが、公的年金制度の一元化とこれまでの取り組 みということで、これは昭和59年以降の公的年金の一元化についての流れをざっと概括 しておるところでありますが、一元化を目指してこういったステップが取られておると ころでありまして、特に、最近の平成9年4月に厚生年金保険法等の一部を改正する法 律が施行されまして、次のページはちょっと飛ばしていただいて、37ページに出ており ますが、JR、JT、それから、NTTの年金につきまして厚生年金に統合されたとこ ろでございます。これは統合の方法でありまして、これはかつても本審議会で詳しく御 説明申し上げたところで省略いたしますが、38ページ以降が今後の大きな考え方を紹介 しております。 今後の進め方につきましては、まず38ページの2の(1)のところでありますが、日本鉄 道共済組合、日本たばこ産業共済組合、日本電信電話共済組合は平成9年度に統合。(2) のところで、国家公務員、地方公務員の共済については、それぞれ成熟化の状況等に応 じて検討して措置していく。 それから、次のページにまいりまして、(3)で農林漁業団体職員、私立学校教職員につ きましても、成熟化の進展等を踏まえて今後、検討していくことになっておるところで ございます。 以上、駆け足でございましたけれども、今回の資料1の説明とさせていただきます。 ○事務局 それでは、続きまして資料2、年金現業業務につきまして説明させていただきます。 まず、目次をごらんいただきたい訳でありますが、大きく3つの整理をしておりま す。1番目が年金業務の体制、2番目が国民年金の関係でありまして、3番目、その他 ということであります。 1枚めくっていただきまして1ページでありますけれども、年金、医療保険の2つの 図がありますが、私どもでは、年金は上の図でありますが、共済組合を除いたものを担 当いたしております。組織は下にありますように、都道府県及び社会保険事務所等であ りますが、県以下社会保険事務所等で働く職員、これが地方事務官と言われるものであ ります。 2ページであります。下にグラフをつけさせていただきましたけれども、近年、年金 等の業務の増高ということが起きております。受給者等も増えております。その関係を グラフにさせていただきました。 しばらくめくっていただきまして、6ページをごらんいただきたいと思います。国民 年金と厚生年金がありますけれども、まずここで国民年金を適用、それから、保険料・ 給付というふうに分けてそれぞれ一葉にしておりますが、国民年金でありますけれど も、この場合には市町村の御協力をいただいております。その関係で、適用につきまし ての被保険者からの届け出等は、まず市町村を経由するということになっております。 ただし下に注がありますが今年の9月に地方分権推進委員会第三次勧告というものがあ りましたけれども、その中では手帳の交付であるとか適用促進事務につきましては、保 険者である国でやりなさいという勧告をいただいております。 次の7ページであります。国民年金の保険料でありますけれども、御案内のように印 紙納付ということになっておりますが、これは市町村が国費を扱えないということで印 紙の仕組みになっておる訳でありますけれども、被保険者は市町村長に対しましていろ いろな形、口座振替等で保険料を納めるという形になっております。ただ、下半分をご らんいただきたい訳でありますが、当該年度に納められずに滞納になって翌年払うも の、翌年集めるものを社会保険事務所すなわち私どもの下部機関でありますが、ここが 直接に被保険者からいただくという形になっております。ここで参考でありますが、印 紙の関係につきましては廃止しなさいというのが勧告であります。 8ページであります。給付の関係でありますけれども、受給権者は市町村に年金の裁 定を求める場合と、事務所に求める場合がありますが、これは2号の期間が全くない人 は市町村にということでありまして、現在では大概の方はストレートに事務所にお出し いただくことになっております。年金の給付は御案内のように、業務センターから直接 に個人の口座にお送りいたしております。 9ページから厚生年金であります。厚生年金は、事業所に勤務をされておる方が被保 険者になりますので、事務所が真ん中にありまして左に事業所があります。事業所を経 由していろいろな届け出をしていただくということになっておる訳で、その分、事務は 簡便になっておる訳であります。 あと、保険料徴収等それぞれ図解しておりますので省略させていただきまして、12 ページであります。以前、事務費の推移、関係につきまして御説明いたしましたけれど も、これを特別会計ごとに分解したものであります。上が厚生保険特別会計、すなわち この中には健康保険も入る訳であります。下が国民年金の特別会計でありますが、業務 取扱費9年度1,682 億円となっておりますが、実はその内1,038億円は、これは先ほど申 し上げました市町村にいろいろな仕事をしていただくということで交付金等でお支払い をしておるものであります。以上が体制でありまして、次に13ページから国民年金の関 係に移らせていただきます。 国民年金の関係では適用の問題、それから、保険料納付の問題が大きなポイントであ ります。13ページでは、適用の関係でありまして、いわゆる未加入者がどのくらいいる のかということで、平成7年公的年金加入状況等調査の抜粋であります。下のグラフを ごらんいただきたい訳でありますが、3年前にも調査を行っておりまして平成4年には 未加入者が178万人ということでありましたけれども、7年調査では158万人ということ で、20万人ほどの適用が進んだと思っておる訳であります。 2枚めくっていただきまして、15ページであります。大変急ぎ足で恐縮であります。 未加入の方は、これは制度的には医療保険で申し上げますと国民健康保険の対象と考え られる訳でありますが、その国保への加入状況でありまして上のグラフをごらんいただ きますと、国民年金の未加入者のうち、国民健康保険に加入している方が7割というの が上のグラフであります。下でありますけれども、ここでは加入者と未加入者の所得の 状況の調査であります。線になっておりますのは所得の低い方から累積で出したもので ありますが、加入者と未加入者、有意な差はないのではないかと考えられます。 それから、また2枚めくっていただきまして17ページ、加入をしていない方の理由で あります。大きく2つになっておりますが、上の方は届け出の必要性や制度の仕組みを 知らなかった、忘れていたという方でありまして46%。それから、3分の1ぐらいのと ころに加入したくないというのが53.8%という回答になっております。この中いろいろ な理由が上げられておりますが、その3つ下ぐらいから貯蓄の方が有利であるとか年金 額が不満、年金制度の将来が不安といったような方が並んでおります。この3つぐらい 足すと大体14%ぐらいになります。すぐ下に経済的困難という理由を上げられている方 がやはり同じぐらいいらっしゃいます。そのほかの理由は下のとおりであります。 次の18ページであります。未加入者に今後加入をするかということを尋ねた訳であり ますが、年齢別に分類をしてありまして、上の方が若い方でありますけれども、加入意 思があるという方が多い。逆に加入意思がないという回答の方は年配になると多くな る。年金がつかないとあきらめられるのか、そのほかの理由があるのかは分かりませ ん。 19ページからは納付の状況でありまして、19ページは実績であります。いわゆる検認 率、市町村で集めていただいております保険料の率でありますけれども、昭和61年から の実績をグラフにしたのが上であります。それから、20ページであります。平成8年国 民年金被保険者実態調査とありますが、これは今回初めて公表するということで用意を したものであります。対外的な説明は今日が最初であります。ここで納付の状況を調べ たということでありますが、定義といたしましては、未納者という方はずっと納めてい ない。それ以外は納付者でありますが、ここでずっと納めている方を完納者、少し遅れ ておるという方を一部納付者ということで定義をしております。 次の21ページであります。全体の未納者の率、下の表をごらんいただきたいと思いま すが、全体で11%の方がずっと納めていない、これを解消していくということになる訳 でありますが、都市の規模別と被保険者の年齢別の相関でありまして、ごらんいただき ますと大都市で若い方が未納が多い、すなわちよくない。小都市で年配になると払う方 はちゃんとお払いいただいておるという傾向であります。次に22ページでありますが、 対象者の所得の調査であります。上の表をごらんいただきたいと思います。総数のとこ ろで納付者の所得の世帯でありますが、平均が560 万円、未納者が427万円とかなりの差 が出ておりますが、一番下のグラフをごらんいただきたい訳であります。所得の階層別 に納付者と未納者をそれぞれ示しております。有意な差はないのではないかと思う訳で ありますが、平均で大きな差が出ますのは一番左の「所得なし」であります。未納者の 方の中には、確かに所得がゼロという方が多いということであります。 それから、類似の資料でありますので飛ばしていただきまして25ページであります。 先ほど未納者と国民健康保険への未加入者の状況を申し上げました。今度は未納者、入 っているけれども保険料を納めていない方が国民健康保険の保険料をどうしておるかと いうことであります。下の表をごらんいただきたい訳ですが、右から2つ目未納者であ ります。左に国民健康保険納付状況を取っておりますが、2つ目に全月納付すなわち国 民健康保険の方はすべて納められているというのが62%。その次に国民健康保険の方も 多少滞納があるけれども、まあまあ納めているという方が18%で合わせて80%の方は、 国民健康保険の保険料は払っていらっしゃるということであります。 次に26ページであります。なかなか国民年金の保険料は高いので払いづらいという御 意見をいただく訳であります。ここで出しておりますのは、国民年金の1号の被保険者 が生命保険等にどういうふうに入っておられるだろうかということでありまして、加入 状況は一番上のグラフであります。左から2つ目をごらんいただきますと、納付者・未 納者の差は余りないのではないかと思われます。そこで、一番下でありますが、国民年 金の保険料は未納だけれども生命保険や個人年金には加入しているという方が、月々ど のくらいの個人年金等の保険料を払っていらっしゃるのかという調査でありますが、一 番下の表の右から2つ目をごらんいただきたいと思いますが、月額2万4,000円でありま す。国民年金2人分であります。それから、その次は省略をいたしまして、28ページで あります。国民年金保険料未納の理由でありますけれども、上の表でありますが、5つ 目ぐらいに保険料が高く、経済的に払うのが困難という方が55%。それから、1つ飛び まして国民年金をあてにしていないという方が20%になっております。その内訳として は制度の将来の問題、個人年金に入っているから、いろいろな理由が上げられておりま す。ただ、その年齢階級別の保険料の未納の理由が下のグラフであります。上から2つ 目が国民年金をあてにしていない方でありますが、この方々を年齢構成別に見ますと、 40歳代後半になりますと急激に減ってまいります。逆を見れば期待をするということか なと思う訳であります。 それから、30ページ。免除の関係であります。これは、所得が低い等の方の場合は免 除手続が出来ます。上の表をごらんいただきますと、免除者の総数が7年度330万人、内 訳は法定免除が87万人すなわち障害年金をもらっているような方であります。申請免 除、すなわち所得が低いような方が244 万人であります。 その推移でありますが、先ほど御説明がありましたように、平成3年からは学生に強 制適用しておりますので、グラフをごらんいただきますと免除率が上がっております。 学生の免除者が多い訳であります。学生を除いたのが点々でありまして、真ん中の申請 免除率を見ていただきますと7年度で9.9%、それにしても昨今は多少、経済状況等を反 映して上がりぎみということであります。以上が状況でありまして、32ページは対策 であります。ここでも未加入の対策と未納の対策を分けて記載をさせていただきま した。未加入者につきましては、まず、入口であります20歳、学生も適用になりまし たので20歳からすべて適用になります。そこで、20歳になった方をいろいろな形で把 握をして、場合によっては手帳を送ってでも適用してくださいということであります が、これは8年度にすべての市町村で実施していただきました。それから、(2)が国民健 康保険に入っている方は年金では国民年金ですよということで、これも同じようにやっ ていただくということでありまして、3か年計画でありますが、現在8割の市町村で実 施していただいておりまして、今年度中に完了予定であります。(3)でありますが、基礎 年金番号を今年から入れさせていただきました。これを使いまして、例えば、会社をお 辞めになると1号か3号かどちらかでありますので、届出が出るはずであります。これ が出てこない場合には、私どもから市町村に情報をお渡しして適用促進をしていただこ うという準備を現在進めております。 2番目は学生でありますが、学生も同じような対策をしておりまして、場合によって は親御さんにも勧奨をするということであります。 34ページから未納の対策であります。国民年金の保険料は翌月末日が納期であります が、これが払われない場合にそのままにしておきますと滞納となります。そこで、払わ ない方の場合には催告をするところから始まる訳でありますが、これはすべての方に対 して実施をしていただいております。その次に、(2)でありますけれども、更に個別の方 につきまして電話、個別訪問等によりきめ細かく実施の督励をするということでありま すが、こういったことを少しずつ強化をするという状況であります。そのほか、年金相 談と兼ねてお集まりいただいて保険料納付の御案内をする。あるいは4番目で、専任徴 収員の方を市町村に置きまして、昼間だけでなく夜間とか休日に個別訪問等をするとい うことを逐次強化をいたしております。 それから、次の35ページでありますが、そういうことをやっておる訳でありますけれ ども、やはり確実なのは被保険者に銀行等の口座で納めていただく、口座振替でありま す。これの状況が載っておりますが、下の電気、ガス、水道等に比べてまだまだ伸ばす 余地はあるのではないかということであります。これらも現在進めておるところであり ます。 36ページでありますが、先ほど申し上げましたように、大都市の方が成績が悪いとい うことで163の都市を対象に重点的に行っておりますけれども、下半分の3であります が、何といっても市長さんの理解であろうということで、私ども幹部がぐるぐる回って お話をして要請をするということでありますし、また、市の担当課長さんや専任徴収員 の研修等も開催させていただきました。 それから、37ページであります。ここでは一例だけということで、人口20万人以上の 市をピックアップしました。これはA、B、Cとなっておりますのが、Aというのが検 認率がまあまあ高い、Cというのが低いということでありますが、その対策でありまし て下にいろいろ載せております。例えば、Aの町では上から2つ目でありますけれど も、国民健康保険加入者につきましては、40歳以下の人については手帳を送付あるいは 40歳以上の方についても電話等によってどんどん加入を勧奨するというようなことを行 っていただいておりますし、また、一つ飛びまして、専任徴収員、能率給であるとかフ レックスタイムというようなことで、きめ細かく対応いただいております。これに比べ ましてCにいきますと、例えば、専任徴収員は置いていないという状況であります。 次の38ページであります。大変急ぎ足で恐縮でありますが、下の表をごらんいただき たいと思います。人口規模別に検認率というのを出します。下の表の平均というのが人 口規模別の平均でありますが、その左にそれぞれの範囲内の都市での一番いいところと 一番悪いところの数字を並べてみました。これほど格差があるということで、これを出 来るだけ一番右の方あるいはその右のものも更に上にということで、これからも指導 し、お願いをしたいということであります。次は39ページは飛ばします。40ページから その他の問題でありまして、まず、厚生年金の関係であります。40ページは厚生年金適 用拡大の状況でありますが、厚生年金は適用事業所単位で行いますけれども、これが現 在160万か所になっておるということであります。 41ページであります。しかしながら、機械化、コンピューター化の時代でありますの で、事業所の方で人事給与管理をコンピューターでやっていただきますと、それが私ど もの様式に合いますと、そのデータをそのまま届け出していただけるということになる 訳でありますが、その前提としての機械化の状況を数年前になりますが調べたものであ ります。 事業所規模別の機械化率が一番右にありますけれども、やはり従業員数が大きい事業 所は成績が高い訳でありますが、小さいところはまだまだ途上かなということでありま して、しかし事業所はこちらの方が圧倒的に多いということであります。 42ページであります。そういう中でコンピューター化が進みまして、私どもの様式に 合った形で資料を出せるという事業所につきましては、例えば、全国一遍に処理を済ま せましょうということで一括適用を行っておる訳でありますが、表にありますように現 在129事業所、123万人まできておる訳であります。 43ページ以降は、適用促進でありますが省略をさせていただきます。 46ページであります。横になっておりますが、厚生年金と雇用保険との関係で事務の やり方を表にしてみました。私どもの場合は、保険料の賦課ベースと給付の対象は基本 的に一致しておりますが、労働保険の場合には保険料の方は基本的にはボーナス等も含 めていただく。給付の方では給付基礎日額でありますとか、基本手当日額ということで ボーナスは入らない、あるいは上下限があるということのようであります。一番下の記 録でありますが、私どもの方では月ごとに各被保険者の標準報酬の記録をするという形 で行わせていただいております。 それから、47ページは業務の関係の数的なものであります。受給権者等が大変増えて きたということでありますが、これは時間の関係で省略をさせていただきます。 53ページですが、一人一年金が原則ということでありますので調整を行います。そう いった制度改正の結果いろいろ行っております調整の関係を並べたものであります。 それから、54ページであります。これも以前、若干御説明をいたしましたが、年6回 年金をお支払いするときに、今回のあなたの年金は幾らですよという通知を申し上げて おります。これは会計法令あるいは所得税法による義務でありますけれども、これを簡 便化しようということで、毎回ではなくて年に1回にするということで郵政省も含め関 係方面と調整をしております。ほぼ終了の段階に来ておりますが、初年度で50億円の節 約と申し上げたと思いますが、毎年度では80億円になる訳であります。この他、現況届 けの関係も若干の負担の軽減をしたいと思っております。 それから、55ページ以下はシステム、コンピューターのプログラムの開発であります が省略させていただきます。 58ページであります。今年から導入させていただきました基礎年金番号であります。 58ページの下の方、3の(1)ということで、とりあえず先ほど申し上げましたような1号 とか3号に入ったはずの方の届け出が出るように案内をしようということをいろいろ行 っております。システム開発途上のものもありますが、これは速やかに実施をする訳で あります。(2)で将来的には、それぞれの方の制度を超えたすべての記録を一元化してつ なぐという作業をこれから予定をいたしております。 61ページであります。先ほど冒頭に若干、地方分権推進委員会の勧告と申し上げまし たがその概要でありまして、大きく2点出来ております。 中ほどの2の(1)でありますが、地方事務官につきましては地方事務官制度を廃止し て、厚生事務官にしなさいというものです。2番目が先ほど来申し上げておりますよう な国民年金の市町村事務でありますが、基本的には市町村の事務軽減あるいはまた受給 者の負担軽減の観点から、保険者である国がやるべきものはちゃんとやりなさいという 指摘であります。 それから、62ページは年金通算でありますが、これは省略をさせていただきます。こ の準備を現在しております。 64ページ、最後であります。年金福祉施設でありますけれども、これについての方針 を御説明したいと思います。64ページの下半分に「基本方針」とありますけれども、(1) では、従来の方針を転換しまして計画進行中のもの、すなわち済んでおるものを除きま して、新たな設置計画はしないということにしたいと思っております。 2番目では、施設整備費を大幅に圧縮しまして半減ということであります。3番目で は関係者の御意見、参加。4番目では既存の施設につきましても、既存のものを大事に 使う訳でありますけれども、例えば、建て替えのときには必要性を判断する、あるいは 少しでも採算性を上げていただくというようなことで委託団体にもお願いをしたい。 以上であります。ありがとうございました。 ○会長 ありがとうございました。 まず最初に御説明のありました基礎年金、第3号被保険者等につきまして、御質問、 御意見などございましたら、どなたからでも御自由にお願いします。 ○A委員 3号被保険者の基礎年金負担保険料をめぐる論議ですけれども、ここでは生活スタイ ル選択への影響というような項目で書かれております。男性が働いて女性が被扶養者と いう世帯は95.5%ぐらいなので、一応女性が多いということを念頭に置きますと、就労 選択への影響がこれからの超高齢社会においては非常に重要だと思います。厚生白書で は高齢者の世紀というように書かれておりますように、まさにそういう世紀に向かって だんだん生産年齢人口も減少してくるし、当然労働力人口も将来的には減少する可能性 がある中で、年金をはじめ社会保障の財源を考える場合にも、やはり女性とか、それか ら、高齢者とか障害者で働きたいと思う方が働けるような社会にする必要があります。 これからは出来るだけ個人個人が一生の間に長い時間、出来るだけ大勢の方が就労の機 会を持つような社会になるように、公的政策を考えていくということがきわめて重要だ と思います。 そういう意味から言いますと、3号被保険者の問題は、雇用の問題とかいろいろある と思いますけれども、就労に抑制的に働いているという点をかなり重視すべきではない かと思います。これからはやはり経済の担い手としての高齢者もそうでしょうけれど も、特に女性の場合は全年齢にわたって大勢いる訳ですから、経済の担い手としての女 性に対する新しい視点というのが必要なのではないかということで、女性が経済に十分 に参加することを阻害するような要因は、年金に限りませんけれども、出来るだけ除い ていくことが望ましいと思います。 資料の8ページでは、右の方には年金の現行制度、それから、左の方には税制がとい うふうに書いてあります。一応確かに税制と社会保障あるいは年金制度というのは縦割 りなので所管する官庁も違うのですが、被扶養者の認定基準と税制とはかなりリンクし た形で上限が設定されております。税制の必要性の方が大きいというようなとらえ方を するのではなくて、年金の側から検討した結果を税制の方にボールを投げてもいい訳 で、税制および被扶養者認定基準という社会保険の基準の両方で、一見有利なような形 になっているのをやはり見直して、もっと働きたいと思う女性が十分就労出来るように すべきです。そのための負担については、標準報酬の下限を下げるとか、それから、低 所得者の特別控除を設けるとかいろいろな対応があると思います。それから、パートタ イマーの問題もかかわってきますけれども、どのような就労形態であれ、働く人につい ては自分の年金の個人としての受給資格が取れるようにすることが望ましいと思いま す。税制と社会保障をもっと就労に中立的な制度にするということが、非常に広い意味 でのこれからの高齢社会の在り方として大事なのではないかなというふうに思うので す。 現行制度につきまして、もし、この部分が改められたら厚生年金を例に取ってなので すけれども、保険料負担がどうなるか、平成6年末のデータを使って試算しますと、大 体厚生年金の保険料率が16.5%から11.7%へ約5%ポイント引き下げられるのです。も し、年金制度を世帯単位から個人単位に切りかえると、保険料率が5%ポイントぐらい 下がるのです。民間サラリーマンで扶養家族がない場合には、72%負担が減少するので す。扶養家族がある場合は70%負担が増加するのです。そういう結果になりますので、 所得再分配には確かに影響を及ぼすのですけれども、働きたいと思う女性とか高齢者と か障害者が出来るだけ社会参加あるいは経済活動に参加出来るように、これは年金に限 らないのですけれども、各制度が考えていくことがこれからの社会にとって重要なので はないかと思います。 ○B委員 A委員、ちょっと教えていただきたいのですが、今、通常の労働時間の4分の3のと ころが被保険者資格の線になっていますね。これは高齢者についても勿論引っ掛かる訳 ですけれども、パートタイマーのことなどを考えると、そこはどういうふうに考えてい るのか。例えば、そこを2分の1ぐらいにまで引き下げるといったような点についての 御検討はあるのでしょうか。 ○A委員 基本的にはパートタイマーで就労している方も、被用者保険に加入する、被保険者と なるようにすることが望まれます。 ○B委員 それはいいんですけれども、4分の3という労働時間の線引きです。 ちょっとよろしゅうございますか。私は、必ずしも今の御論議について詳しく勉強し てきた訳ではないので十分な判断は出来ないのですが、もし仮に、今の御論議を前提に いたしますと、短時間就労者についての保険制度上での扱いをもっと広げるという議論 が当然出てくると思うんです。その場合に、通常の労働時間の4分の3以上であれば被 保険者として扱うけれども、それを下回ればこれは被保険者資格がない。仮に、それを 2分の1なら2分の1というところに引き下げるという場合に、そのベースを広げると いうことであれば、それは十分な検討のテーマになるのではないか。その点について御 検討があるかどうかということを教えていただきたい訳です。 ○A委員 具体的にそこの部分を検討したという訳ではないのですけれども、おっしゃるように 4分の3というのはかなり高いかもしれないので、それを下げて広げるというのはよろ しいのではないでしょうか。 ○B委員 分かりました。 ○C委員 私は、A委員の御意見もよく分かるのですが、実際にサラリーマンの奥さんにどうい う形で払ってもらったらいいのかというのは実際問題として非常に難しいんですよね。 夫の方の保険料に追加して払ってもらうのか、あるいはその前の制度のように自ら払っ てもらうのか、実際の取り方と言っては悪いのですけれども、払ってもらう方法が難し いということがあって現行のような制度になっているのですが、考え方としては私は今 A委員のおっしゃったようなことをうまく出来れば考えるべきものではないかと思うの です。 ただ、ここにちょっともう一つ別な問題があって、結婚に中立的でないというのはど ういう意味ですか。そして、就労は抑制的に働くが結婚にも抑制的に働くという意味で すか、ここに書いてあるのは。結婚とどういう関係があるんですか。 ○事務局 主婦になった方が有利という人生観の選択をある程度誘導しているというか、これは 学説の整理でありますけれども、そういう考え方であろうと思います。 ○C委員 どうもよく分かりませんけれども、そうなのかな。そういうふうに言えるのかどう か。結婚を奨励ということであれば、むしろ少子化対策にはプラスというような議論も あるので、どうもここのところがどういう趣旨でお書きになっているのかよく分からな い。それだけです。 ○A委員 今おっしゃられたどうやって払ってもらうかというのは、納付方法のことなのか負担 能力のことなのかちょっと分からないのですけれども、負担能力につきましては、国税 庁の統計から民間サラリーマンが働いていて、それにその被扶養の配偶者がいるばあい を所得階層別に計算しますと、低所得世帯、大体400万円未満のところでは、被扶養配偶 者の割合が約20%以下でかなり低いのです。ですけれども、所得の増加とともに被扶養 配偶者の割合は右上がりになりまして、800万円前後になると60%ぐらいになって1,000 万円を超えるぐらいになると60〜70%になって、高所得の層で被扶養配偶者を持ってい る割合が高いので、私は負担能力はあるように思います。人事院のデータなどを見まし ても国家公務員の場合には被扶養配偶者の率が高いですね。子どもの数も多いです。割 と豊かというか生計が維持出来るという階層で被扶養配偶者となることを選択している というケースも多いので、負担能力はないことはないと思うのですけれども。 ○B委員 済みません、今のデータで伺いたいのですけれども、それは所得階層別というふうに おっしゃっいましたが、年齢別には調整されたものですか。 ○A委員 実数です。 ○B委員 つまり、世帯別の所得階層というのを見る場合に2つ軸があって、実際の社会層とし ての階層別という要素と、それから、日本のような年功型の賃金体系を取っている場合 の年齢別という要素とが両方あるので、これは調整しないと、所得階層別の議論には実 は使えないのだと思うんです。つまり、若いときは賃金が低いという問題と、それか ら、若いときには共稼ぎ率が高いという問題とは、これはある種の相関性を持って出て きますし、それから、年齢問題を調整してしまっていわゆる本当の所得階層別というこ とで見たら、昔から貧しい家庭は共稼ぎなんですよ。しかし、全体として専業主婦、中 産階級型の生活経済というのが戦後の言わばあこがれのパターンとしてつくられて、大 体それをやってきたけれども、途中からそれをやり切れないから、共稼ぎの言わば所得 下限みたいなものがだんだん上がってきている訳でしょう。特に、第一次石油危機後の 住宅ローンの負担みたいなものが、あれ以後に住宅取得をすることになった団塊の世代 の場合には完全に直撃していますから、その意味では歴史的な違いがあると思います が、いずれにしても、所得階層別の負担能力ということを議論する場合に、先ほど言っ た年齢の要素をどこかで調整しておかないと、純粋な階層別議論というのは難しいのか という、これは我々の事務局の中での議論の整理です。 別に御議論に反対する訳ではないです。 ○D委員 負担能力という問題は、そういうふうに調整をする必要があるかと思いますが、私は A委員のおっしゃった基本的なこれからの男女共同参画社会にしていく上で、やはり男 女がともに働き、ともに家庭生活を負担し合うという社会を考えたときに、それにもし 結婚に中立的かどうかちょっと疑問だと思うのですが、就労に中立的でない制度という のはすべての制度において、やはり税制も社会保障制度も見直すべきだと思うんです。 それに関しては、私はA委員のおっしゃったことに全面的に賛成なんです。 それともう一つ、負担の問題を考えますと、60年改正までは払っていた人が今第3号 と言われる人の7割というふうに伺っていますけれども、その人たちがその後に払わな くてもよくなりましたね。現実に負担出来ていたのに払わないでいるという人たちがた くさんいます。ところが、私がいろいろな地域で講演などがありまして逆に皆さんから 意見を伺うと、負担していると思っている人もかなりいるんです。つまり、自分がそれ までは直接窓口に行って払っていた、直接徴収されていたけれども、あれは払わなくな ったのではなくて、夫の収入から取られているのだというふうに私の話を聞くまでそう 思っていたという人もかなりいるんです。そのぐらい第3号被保険者というものの実態 と、それから第3号被保険者でいる人たちの意識の問題というのがはっきりとらえられ ていないというふうに思います。ですから、私は基本的には男女共同参画社会というの は両方が担うべきであり、責任を持つべきであり、意識もはっきり持ってもらいたいと いうふうに思いますので、負担能力のない人に対する手当はまた別だというふうに思い ます。 ○A委員 国年の任意加入についてですが、確かに当初は少なかったですけれども、だんだん加 入する方がいいというのでサラリーマンの妻の任意加入が増えていましたね。昭和61年 4月以降の1年間ぐらいに、かなり私保険への加入数が増えているのです。ですから、 保険料負担の必要がなくなったということがそういうところにも表れているかもしれま せんので、そういうデータからも今まで能力もあり負担した方がいいと思って負担して いた人が、3号被保険者になって届けるだけでよくなったということで、私保険の方に 加入したということもあるのではないかと思います。 ○B委員 それは、ほかの負担が増えたからでしょう。あの時期に一斉に増えているんです。男 もそうなんです。 ○E委員 3号被保険者問題というのは非常に難しい問題でして、私も3号被保険者も負担すべ きとする立場の主張は十分分かるのです。この方が公平だとも思うのですが、ただ問題 は、専業主婦には自らの所得がない。やはり、基本的には夫の所得しかない訳です。も し、ほかに不動産収入なり何なりがなければ、そういう所得のない人から社会保険料を 一体どういう名目で徴収し、どういう手段で取るのかという問題が一つある訳なんで す。 イギリスやアメリカの例もこれに出ている訳ですけれども、これらの国でもやはり夫 の拠出に基づいて妻の年金あるいは妻に対する加算というものの考え方になっておる訳 でありまして、あくまでも個別の専業主婦的な家庭は所得の唯一の源泉は夫である、妻 にはない。したがって、夫の拠出に基づくという立場に立っておる訳です。ただ、日本 と違うところは英米の場合には5割ないし6割という低い率になっている。もし10割が 欲しければ、自分で拠出しなさいという道も設けておる訳です。そこら辺りの関係を第 3号被保険者も負担すべきとする立場の方はどういうふうに割り切っておられるのか、 一度この機会に御意見を承りたいと思っております。 ○D委員 1つは、無収入の学生から取りますね。 ○E委員 それは別ですよ。それはまた、私は別の意見を持っていますから。 ○D委員 そうですか。今の制度で言いますと、無収入の学生から。 ○E委員 昔は取らなかった。 ○D委員 そうなんです。ですけれども取っていますね。そのこととの整合性というのを考える と。 ○E委員 それとのバランスは言わないでください。あれはつい最近出来た制度ですから。 ○D委員 ですから、なぜ無職、無収入の専業主婦から取れるかというのは、理屈のつけ方とい うのはたくさんあり得ると思います。つまり、世帯単位で考えている場合は、妻の専業 主婦としての労働がどれだけ貢献しているかという計算をして保険料を取るという意見 を持っている方もいらっしゃいます。これは、私は必ずしも賛成ではありません。です けれども、現在どういうふうな状態にあるから、つまり、無職の専業主婦がどれだけい て、その人たちが無収入だから取るべきではないという考えを取るべきか、あるいは今 の世代ですとずっと専業主婦という状態にはいない訳です。専業主婦でしかいられない ライフスタイルというのは、例えば子どもがいてそのケアをずっとしなければいけない 小さい子どもの時期とか、介護しなければいけない時期であって、選択は両方公平に出 来るような状態、つまり働くか働かないかは公平であるべきだという考えからみると、 夫の収入だけで十分生活がやっていけるというのは、それを選択しているのだという考 えに立てば、両方から取っていいということになるのではないかと思いますが。 ○E委員 経済的な説明と法律的な説明とは、ちょっと区別して言っていただきたいと思うんで す。経済的な説明ならば、例えば、専業主婦の家事労働はGNPに表現されていないの はおかしいじゃないかという議論も幾らでもある訳です。だから、帰属賃金的な思想で もって、それはカウントすることも可能です。また、私もカウントするのがいいのでは ないかと思いますが、そういう議論はさておいて、この場合は現実に収入があってそこ から保険料を納めるという仕組みに立っている訳です、社会保険というのは。それをど うして難関を突破するのかという妙案があったらお聞きしたい、これが私の意見です。 ○F委員 3号被保険者の問題もかねてからの大きな問題でして、これは日本の社会保険制度の 基本に触れる問題で、今までE委員も言われていたように、社会保険というのは収入が あるからそこを着目して保険料が取れるということで社会保険が成り立っている訳で す。その際に、妻の年金権をどうするかという問題が出てきて、結局出てきたのが基礎 年金で妻が年金を受けるという形ができた訳で、日本の社会保険制度がすべてそれでき ておるので、個人単位か世帯単位かという問題は年金だけではないんです。医療保険制 度も同じような考え方です。年金について妻が個人単位で考えるということになった場 合、医療保険についても同じように家族保険料あるいは子どもの問題というのをどう考 えるかという社会保険共通の問題として考える必要がある。3号被保険者の問題に関連 して医療保険についてどう考えているのかという点を事務局の方、何かその辺で御意見 が今出ているのかどうか、ちょっとお伺いしたいと思います。 ○A委員 3号被保険者が全員収入ゼロで、完全に配偶者に扶養されているというふうなイメー ジもあるのですけれども、必ずしもそうではなくて、被扶養者の認定基準があるので、 これは健保と年金と同じ基準ですけれども、年収が130万円未満であれば3号被保険者と なるのです。専業主婦の方で全く働いていなくて本当に収入がゼロの方もいらっしゃる でしょうけれども、私が最初に申し上げましたのは、130万円のところで11月、12月にな ると就業調整をしている方がかなり多いのです。それは、夫の税金にかかわるし自分の 税金にかかわるし、自分の社会保険の医療と年金の保険料の問題にもかなり大きく波及 するような形になっているので、本当はもっと年収130万円以上稼得できるように働きた いけれども、そこで就業調整をした方が有利ではないかというふうに判断しているグ ループがかなりあると思うのです。今は教育費もかかるとか住宅ローンがかかるという ことで完全な専業主婦ではなくて、就労しているグループもあると思います。1,200万人 の中には何人いるのかそういう実態調査があるのかどうか分かりませんけれども、かな りいらっしゃると思いますので、そういう人たちがもっともっと働きたいのであれば働 いて、2階部分の年金の受給資格を持てるようにすることが望まれます。保険料負担が 重くなるという点では、先ほど言いましたように、標準報酬の下限を下げるとかあるい は低所得者特別控除のようなものを導入すればいいと思うのです。それで保険料負担が 重くならないようにして、きちんと被保険者として位置づけるということが考えられて もいいのではないかと思います。 ○D委員 その数は、たしか前の資料でいただいたと思うのですが、1,200万人の第3号被保険者 のうち、たしか無職は800万人というふうに出ていたと思います。 それから、もう一つ、先ほどの御質問の件で、私もどう考えたらいいか分からないの ですが、第1号の中に無職の妻というのがかなりの数います。その人たちは無収入なん です。ですから、そことの整合性もちょっと。ですから、むしろ学生は除いてください とおっしゃいましたけれども、第1号の無職の専業主婦、それから、学生といった無収 入の人からも徴収しているという点との整合性は、今の制度ではどういうふうにとらえ ているのかということを質問したいと思うのですけれども。 ○G委員 非常に難しい問題で、8ページにつくってくださったかなりニュートラルな形の表現 だと結論がなかなか出しにくいので、もうちょっとどちらかの立場をきちんと選んだ上 での問題点をきちんと洗い出す議論をいずれはやらなければいけないだろうと思うので す。私は、ですからパーフェクトな答案は非常に書きにくいという前提で申し上げます が、原則としてはやはりあらゆる人が労働して報酬を得たら、それに応じて税金も保険 料も払うべきである。ただし、その場合に税金についても保険料についても基礎的な控 除というのは必要だろうと思います。現行の130万円とか103万円という水準は、少しそ ういう意味で高過ぎるので、半分ぐらいに減らしたらどうか。これは税調の方の問題が ありますけれども、多分半分ぐらいでいいのではないかと。国際的に見て多分高過ぎる と思いますから、そういう格好で原則として労働収入がある場合は基礎控除を超える分 については保険料も税金も払いなさいと。 ただ、義務教育までの子どもを持っている場合とか、障害者や高齢者の介護ないし扶 養をしている場合には払わなくていい、これは人口政策も考慮すべきだと思いますが、 そういう格好で今の3号被保険者の中でそういう育児や介護、扶養等をしているのは、 これは社会的な労働をしている訳ですから、そういう扱いをして保険料も税金もある限 度で免除した方がいいのではないか。 それで、昭和60年以前になかったのですから、応能負担論というのはちょっとある意 味では牽強附会なところもあって、夫だけ働いている場合と共稼ぎの場合で収入が同じ だったら応能負担で同じ負担で同じ給付だというのですけれども、夫の収入が同じでそ の上に奥さんが働いているのと働いていないのでは全然違ってくる訳です。ですから、 ちょっと応能負担論というのも、そのままそうですかという訳にもいかないのではない かなと。 E委員がちょっとおっしゃったことと多分関係しているのだと思いますが、仮に純粋 に今の負担を免れている3号被保険者から保険料を取るとした場合に、では、夫から2 倍取っていいかという問題がどうしても出てきますね。ですから、その場合は私はやは り2倍まるまる何度も取らなくても、その辺は半分とか3分の2とか軽減した保険料を 働いていない専業主婦を持っているサラリーマンは払いなさいというような折衷論なの かもしれないけれども、何かそんなやり方がいいのではないかと思いました。 ○E委員 今、G委員が折衷論のようなことをおっしゃいましたので、ついでにコメントしてお きますと、イギリスとアメリカの制度はその折衷論なんです。こちらの方は拠出サイド で妥協しているのではなくて、給付サイドで5割とか6割という形にして自ら拠出して おる妻と差をつけるという意味の妥協をイギリス、アメリカの制度はしておる。 結局これは、専業主婦家庭が一番スタンダードな家庭と考えるのかあるいは共働きを 一番スタンダードの家庭と考えるのか、どっちかにはっきり軍配が上がれば我々も度胸 を決めてどっちかによってそれに沿ったような制度をつくれるのですが、恐らく今日本 の現状では何とも言いかねる。これは恐らく日本だけではなくて、どうやらイギリスも アメリカも似たような社会状況らしいし、あのスウェーデンですらやはりどっちかに軍 配を上げかねている。とすれば、私はやはりすっぱりした解決ということは非常に難し くて、どこかでまあまあという解決を探るほかないのではないかというふうな気がいた します。 いきなりこんな妥協論を申し上げてあれなのですが、G委員がおっしゃいましたので 引き続いて申し上げました。 ○B委員 ちょっと済みません、事務局でデータがあったら教えてもらいたいのですが、第3号 被保険者の数というのは制度発足以後2号、3号全部合わせたところの中での割合とい うのは絶対数よりも比率の方が重要だと思うのですが、この比率はどういうふうな時系 列的な変化をたどっているのでしょうか。 私は、現在の第3号被保険者という制度の出発点の議論というのは、いわゆる国民皆 年金制度というものを前提にして、だれに対してもいわゆる無年金者というものが制度 上発生しないようにしようということが、恐らく60年改正のときの最大の眼目だったと 思います。まず、この前提をどう考えるかということが一つの制度論としては論点なの ではないかというふうに思います。 それから、実態として現在の第3号被保険者1,200万人、そのうちで何らかの収入があ る人が約3分の1というのが、先ほどのD委員の御紹介いただいたデータだったと思い ますが、そこの中で年末期における就労調整等々というのが行われて、全体として就労 に対してどちらかというと抑制的な機能を果たしているというお話で、そこから浮かび 上がってくる現在の非正規、ついでに言えば低所得の女子労働者の姿というものは、極 めて歴史的に言って過渡的なものなのではないかと思うんです。この第3号被保険者の 中で一定の収入があるグループというのは、恐らく数としては相対的に増えており、第 3号被保険者というのは相対的に減りつつあるのかなと。これは女子の労働力率の変動 と重ね合わせての私の推定でございますが、そういう存在を言わば過渡的なものとして 考えれば、E委員もおっしゃったように、何らかの形である種まあまあといったような 解決そのものも当面の一定の中期的な対応ぐらいしか考えられないのであって、ここを 原理的に割り切るということが非常に難しい存在なのではないだろうか。私はD委員が 冒頭おっしゃったように、男も女もきちんと働きたければ働ける、そして、世の中を全 体で支えていくという社会を目指すことについては原則論として大賛成でございます。 ただ、実際にはそこの中で、例えば、女子の就労というのは就業率が上がっておりま すが、単位時間当たりの賃金率みたいなものを考えれば明らかに低賃金労働層を形成し ている訳ですし、そのことと対応した現在の税制の扶養控除のような措置と相まって、 ある点以上に収入が増えたところでは世帯収入としては逆転現象が起こる。それを言わ ば埋め合わせるためには、かなりのところまでもう一度上がって初めて世帯としての所 得水準を回復することが出来るという、このメカニズム全体が言わば就労に対して抑制 的なのであって、3号被保険者という年金制度だけを取り出して、それが就労抑制的か どうかということを就労動向の判断として議論するのはやや部分的に過ぎるのかなと。 そして、実際の就労ということがもう少し言えば、例えば、先ほどのお話でもちょっと ありましたように、育児であるとか介護であるといったような、現在家庭内で行われて いる労働の社会的な有用性に対する評価というのをどうするのかということもまた併せ て一定の評価内容に入ってこなければ、これまた、言わば賃金収入がある労働だけを労 働とみなすということになっていきはしないだろうか。これは、そういういろいろな要 件を勘案した3号被保険者問題に関しては、ある程度のいろいろな要素を勘案した中間 的な措置しか構想出来そうもないような気がいたします。 ただ、この議論の背景にありますのは、恐らく社会保険制度というのを家計単位で判 断するのか、あるいは個人単位で制度設計すべきかというかなり哲学的な議論がもう一 方ある訳で、O委員がいらっしゃったらもう少しラジカルなことを御発言なさるのかな と思うのですが、この問題自体は3号被保険者の制度的な措置をどうするかということ とはちょっと別に、独立したテーマとして一度第1ラウンドでも議論をしておく必要も あり、また価値もあるような気がいたしますので、若干、議論を整理していただければ ありがたいと思います。 ○H委員 先ほどからの議論について、私なりの考え方ですが、今日本ではいろいろな社会構造 改革というかシステムの変革というのが起こっています。そのなかで、私たちの生活・ 家庭はアメリカナイズされたりヨーロッパナイズされたりしているかもしれません。ど ちらもいろいろあるのかもしれません。しかし、日本は日本らしくという思いが底流に いるし、日本の文化みたいなものがいるのではないかと思うのです。そういうときに年 金の改革というものを絡めて考えると、やはり日本の社会全体が今個の確立というのが あり、我々中高年のところから見ると、大変スピードが早まっているという感じが実感 としてある訳です。そんな時に年金権というような問題もやはり男と女というものを ベースにして考えざるを得ないというように思うのです。日本の社会の変化にいかにう まく整合性を持たせていくかということを考えると、第3号被保険者問題というのは、 やはり家庭単位で考えるのか、男と女というように考えるのかという問題があるように 思います。働き方も大変多様化をしてくるのはこの先やむを得ないし、むしろそれが日 常当然の姿になってくる可能性が高い社会になることが、ある程度予測をされておりま す。 それから、日本列島をずっと見ても、県単位で比較すると、家計収入の低い県と大変 高い県とが混在一体になっていますけれども、例えば、低い県と思われている山形県の ようなところの家計収入というのは意外に高い訳です。それはやはり先ほどから話題に なっていますように、130万円であれ103万円であれいずれにしても、夫婦が働いて家計 を維持しているという構図になっているのだろうと思うんです。したがって、負担の仕 方はいろいろあるかもしれませんし、また給付の仕方もいろいろ工夫するとしても、や はりトータルな原資が社会全体で膨らむ形、要するに給付と負担の関係でいきますと、 拠出する方の全体量が増す形の改革の方向へ持っていかざるを得ないのではないかとい うように私は思っています。そういう面でも是非大いなる検討が必要だと思います。 そして、この第3号被保険者というのはそうでない人の立場から見ますと、大変不公 平ではないかという見方もある訳ですから、そこのところにしっかり目線を置いて、こ の際、しっかり議論して今回思い切って10年、20年をタームにした新しい展望を見いだ しておくべきではないかと思います。 ○C委員 実は、この問題は大変国民年金をつくるときから物すごい議論があったことなのです けれども、年金というのは結局、理論的には正しくても実際に出来るかどうかというこ とも考えなくてはいけませんので、これは実際に出来ても先ほどのように収入のない被 保険者にどうやって保険料を払ってもらえるんだということは理屈として当然基本にあ る訳で、その辺でやや制度の経過から見ましても、先ほど説明がありましたように、実 際には36年以来からの経過を見ますと揺れている訳です。揺れた結果、今のようなこと になっているのですが、昭和61年の改正でやった途端にむしろ女性の方から大変反発が 出てきたんです。しかも、女性といっても働く女性の方から、今ちょっとお話がありま したように、私どもはちゃんと保険料を払っているのに、家庭にいる普通の主婦は払わ ないで基礎年金をもらえるのはおかしいじゃないかという、当時感じましたのは非常に 感情的な予想もしないような反発が働く女性の方から出てきたものですから、やや意外 だったのですけれども。今の時点で私の気持ちは、若干、理論的には問題はあっても、 もし国民の半分以上、それから、年金制度を支える女性の方が本当に皆さんがそうおっ しゃる、それから、家庭にいる奥さんも自分には収入はないけれども払ってもいいよ と、それはへそくりか何か知りません、夫の給料とか自分の貯蓄の中から自ら基礎年金 分ぐらいは払ってもいいよというお気持ちの方が多いのであれば、私は被保険者になっ てもらって払ってもらうということも考えてもいいのではないかという気はするんで す。余り理屈っぽい議論ではないかもしれませんが。 ○事務局 先ほど、お尋ねの公的年金加入者のうちに占める第3号被保険者の割合でございます けれども、昭和61年におきましては17.3%、それから、平成2年におきまして今から5 年前でございますが18.0%、それから、平成7年度におきまして17.4%という状況にな っております。 ○B委員 それは、公的年金の被保険者オールですね。 ○事務局 はい。1号、2号、3号の中に占める3号の割合という意味でございます。 ○B委員 1号を除いてしまったらどうなりますか。 ○事務局 それはちょっと今手元にございませんが。 ○会長 議論を始めて約1時間40分くらいになります。この辺でそろそろ10分間ぐらい休憩を お願いしてはと思っております。御議論の中で、国民年金財政全体として基礎年金の収 入なり財源を増やしては、という観点からのお話が只今H委員からありました。それか ら、第3号保険者の方々が皆喜んで進んでお払いになるかどうか、という別の観点もあ るという2つ目のお話も出ました。この辺で10分ほど休憩をいかがでしょうか。 (「異議なし」と声あり) ○会長 では、10分ほど休憩いたします。 (休 憩) ○会長 10分の休憩のあと、審議を再開します。初めにご説明いただいた資料の中で、第3号 被保険者問題でかなり白熱したご議論をいただきました。しかし、メディアでも問題に なり、今朝の新聞にも出ておりました少子化への対応の問題、あるいは、やはり前から メディアで出ております施設入所者の取扱いの問題、あるいは、学生の取扱いの問題な どまだ残っております。国民年金も未加入の問題、未納の問題などいろいろ問題が残っ ております。もしよろしければ、第3号被保険者問題をとりあえずここで一段落いたし まして、今申し上げたような、少子化の問題、学生の取扱いなどいろいろ御議論いただ ければと思います。 ○B委員 前回もちょっと発言させていただきましたが、現在の公的年金制度の中で一番構造的 な危機というふうに大げさに申し上げていいかと思うのは、やはり基礎年金の問題でな いかというふうに思います。 前回の大改正すなわち昭和61年の新年金法の最大の目玉は、やはり何といってもこの 基礎年金制度の導入と、そして、それが公的年金の一元化への第一段階というふうに説 明をされて今日に至っている訳ですが、問題なのはいわゆる現行制度における第1号被 保険者の中でいわゆる未加入者、それから、加入しても未払いという部分が無視出来な い数に拡大している。通常空洞化というふうに呼ばれますが、そのことと、それから、 前回の財政再計算で出されました将来の保険料の引き上げの予定ということを重ね合わ せてみますと、第2号の方は保険料率の引き上げでございますので、一応低収入であれ ば低収入なりのという説明がつきますが、1号のところは定額保険料でございまして、 それがピーク時には大体倍額に引き上がるという予測であって、現状のままで推移すれ ば恐らく当局の皆様方の必死の御努力は多とする訳ですが、多分この未納という部分は 未加入も含めて拡大をするのではないかという危惧を大変強く抱く訳でございます。 現在の国民年金の受給者層が農民を中心にした数十年前の自営業者であり、その子弟 がいわゆるサラリーマンであり工場労働者でありというところの2号被保険者である ケースが多々ありますから、全体として国民全体でこの給付を支えること自体について は特段異論を差し挟むものではありませんが、現実の現役の構造から見れば、現役の方 の1号被保険者の中がかなり実際には払うべくして払っていない人が無視出来ない量あ り、他方、2号被保険者の方は強制天引きをされている。結果として、旧法、新法含め て元自営業者である年金受給者の給付を本来支えるべきところから1号の部分のかなり が脱落する、逆に言えば、2号被保険者の方からの財政調整が結果として行われる。こ れが拡大していくようなことに関しては、制度として非常に大きな問題ではないだろう かというふうに考えております。 私どもは、基礎年金を税方式に切り換えることには原則反対の立場でありますが、し かし、そういう状況の一定の保障措置として現状3分の1にとどまっている国庫負担の 引き上げを歴史的に要求してまいりました。今回の財政構造改革に伴って、それは凍結 をされる。一旦は国会の付帯決議でも、その問題について引き続き検討するというふう に国政の場で重要なテーマとして確認されていながら、凍結措置ということになって大 変遺憾な訳ですが、この問題についてどういうふうに考えるべきなのかということで、 少し皆様方の御意見をいただきたいというふうに思います。 資料1の4ページのところで年金局の皆さん大変苦労したデータを頂戴しております が、実際のそういった私どもが危惧しておりますような財政調整のようなものは、たか だか3,000億円程度であろうというデータでございます。これはちょっと私どもの能力で は、これを実際に検証することが出来ないのでありますが、少なくともこの数字はとり あえず、いわゆる未加入者は除かれている数字だろうと思いますので、その点で若干の 疑義がございますし、先ほど事務局から御説明ありました未納者・未加入者に関しては 将来の年金がないのだから、そこのところではバランスが取れるではないかというお話 でございますが、現行の制度は賦課方式を持っておりますので、現状の未納者たちが年 金受給の年齢に達したときには、これは公平性が担保されるという論議だけでは到底納 得し得るものとは言いがたいというのが率直な感想です。 もし、この問題を解決しようとすれば、1つは、国民皆年金という立場をどこまでも 貫徹しようということであれば、徴収面だけについて言えば税方式への転換というのは 一つの技術的な回答かもしれない。我が組織の中でもこのことをかなり前から提案して いる組織もある訳で、原則反対だと申しましたのは、今の組織内議論の中で私がそうい う立場を取っているということにすぎません。 それから、もう一つは、いわゆる皆年金制度というものは理念としてはあったけれど も、一度も実現していないのであって、むしろ1号被保険者の部分が先ほどのデータに ありましたように、所得階層には余り関係なく何らかの民間年金商品を購入しておる。 また、その方が得であるというような意識での選択行動が行われているのだとすれば、 そこはむしろ公的年金制度からの離脱、そして、私的年金制度への選択というものを認 めてしまうということも一つの措置であろう。ただし、その場合には、単なる自由離脱 ではなくて、一定の限定を付した民間年金商品による自らの年金保障というものを、国 家との間で契約をする。強制という言葉を使うのが妥当かどうかは知りませんが、その ことによって公的年金に関する請求権を放棄するということを、もう一方のスキームと して検討することが出来るのではないだろうかというふうに思います。 勿論、先ほど事務局から御報告があったように、社会保険庁及び市町村で徴収のため の更なる努力をしていただく、その決意表明も含めて伺いましたし、御努力、御決意は 多とするものですが、結果そのことによって、徴収コストそのものが引き上がっていく のであれば、年金財政全体の問題としてもあるいは年金制度の運用上からも、やはり引 き続き問題なのではないだろうか。常識的に私どもが聞いておりますのは、徴収コスト というのはたかだか1%程度までが許容範囲だというふうに聞いておりますが、現実の 1号被保険者部分の徴収コストは既に10%前後というふうに聞いておるところでござい まして、その点での改善を見込めるのかどうかについて、私どもはどうも余り明るい気 持ちになれておりません。大体そういう基礎年金全体の枠組みの中で、3号の問題等も 改めて議論の位置を明確にしていくことがいいのではないだろうかと、そんなふうに考 えます。 以上です。 ○G委員 実は、さっきの3号被保険者の問題にちょっと関連があって恐縮なのですけれども、 20ページの図が正しいのかどうかちょっとよく分からないので先に質問をさせていただ きたいのですが、学校を卒業して結婚もしないで100万円程度の所得しか稼いでいない パートの女の子だけではないけれども、主として若い女性が非常に増えていますね。そ ういう人は、現行の制度では国民年金に入らなければいけないのでしょう。 ○事務局 第1号の被保険者になっております。 ○G委員 第1号ですね。この20ページの図だとそうなっていないのではないですか。これは配 偶者だけを念頭に置いて書いた図になっていて、130 万円未満で未婚の若いパートの女 性たちは、1号の方に入っているんでしょう、そうですね。 ○事務局 この図も時間でまず分けまして、4分の3以上の時間のある方はもともと厚生年金の 被保険者になりますが、そうでないケースでまず整理されます。そして、所得が130 万 円以上であれば国民年金の第1号というふうになっています。 ○G委員 でも、奥さんではなくて子どもですよ。130 万円未満でも3号にはならないですね。 ちょっとこの図は不完全ですね。そういう考え方が正しいなら、そこで質問なのですけ れども、個人的な経験で非常に恐縮なのですが、私が家内を亡くしたとき半年自分で家 事をやったのですけれども、どうしようもなくなって働いていた娘を辞めさせて、家事 をある程度やってもらって私が小遣いを払ったのですけれども、そうしたら、娘の分の 国民年金も私が払わされた訳です。私が辞めさせたのだから、私が払わなければいけな いということで払ったんです。そうすると、まさにこれはダブルパンチなんですよ。家 事は多少娘がやってくれるけれども家内としてのサービスは勿論ない訳ですからね。そ れで保険料は払わなければいかぬ。そうすると、さっきの応能負担の話をするときには 配偶者のことばかり考えていて、そういうケースを余り考えていないんです。ですか ら、逆に言うと私は自分がちゃんとした共済年金の保険料を払いながら、娘の国民年金 まで払うのはえらいこっちゃという実感を持ったんです。だから、専業主婦がいる人に 対して2倍の保険料を取るのは、いかにも残酷だという感じが余計したのです。ですか ら、昭和60年以前の国民年金を任意ではなくて強制加入とするという選択肢も選択肢と してはあり得ると思うんです。専業主婦とかそういう未婚の子どもとか。余りその選択 肢が出ていないようなので、いい選択肢かどうかはよく検討しなくてはいけないけれど も、ちょっとエアポケットになっていて、結構50歳を過ぎてから女房に死なれる人はた くさんいるんですよ。ですから、そのこともちょっと念頭に置いて。 ○D委員 今のに追加しますと、この図は極めて不正確でして、夫が自営の場合は130万円未満で あっても1号になるんですね。これは130万円未満で、結婚しているしていないの分岐も ありますけれども、結婚していても夫がサラリーマンか自営かあるいは夫が無職かとい うようなことがある訳です。そうすると、50歳で奥さんが亡くなられる方もいるでしょ うけれども、離婚する女性もいますね、あるいは夫がリストラに遭うとか失業すると か、そういう人は収入がなくても今だと1号になる訳ですね。ですから、応能負担とい うのはかなり無理があるのは、そういうことからも言える。この図はそういうことも言 えると思います。 ○I委員 この問題とも絡んで基本的な感じになるのですが、高齢者の方が子どもの数より多い という時点で純粋な社会保険の理論というのは成り立たない時代に来るのではないかと 思っているんです。そうしますと、やはり基礎年金の部分というのは、例えば、全額税 方式にすれば、この3号の問題も一気に解決しますし、障害者の問題も解決する訳で、 全国民は税で平等に基礎年金は保障する。その上で所得に応じた部分を上積みしていく というようなシステムに変えていけば、こういう問題は一気に解決してしまうのではな いかと個人的には思っている訳です。それは、もう国が方針としてやらないのだから、 この審議会も国の方針に従って税負担は一切触れないんだと、2分の1も我慢して3分 の1のままでいこうという方針を取るならば、この審議会というものの中立性といいま しょうか、審議会が行政の方針に従うということにもなり得ると思いますので、やはり 私は個人的には基礎年金部分というのは税負担でやった方がいいというふうに考えてい るということ、やはりもう少し税負担をどうするかというところで議論をされてもいい のではないかなという気が一ついたします。 それから、第2の策ですけれども、3号被保険者をどうするか個人にするのか、世帯 単位にするのかというふうな議論が先ほどから出ておりますが、やはり学生とか1号被 保険者でも、さっきD委員が言われたように所得のない方もいる訳ですから、そういう 方には強制加入にしておいて、サラリーマンの妻だけに保険料は一銭も払わないで給付 をするというのは、やはり不公平になるだろうというふうに思っています。 その意味で、やはり60年改正のときに今まで任意加入でもって保険料を納めていた人 が納めなくてもいいんだよという改正をしたところに問題の根源があるのではないかな と思っておりますが。そんなところです。 ○J委員 私が1つお伺いしたいのは、基礎年金と生活保護のレベルとの比較で、基礎年金のレ ベルをどこへ設定するかということが一つの大きな問題で、税方式にしたらいいという のは生活保護と全く同じような考え方につながりますが、私はそれとは別に、やはり拠 出をした分が少しは上積みになる、つまり生活保護よりは少し高いレベルという、年金 がもらえるということでないと筋が通らない。それはやはり保険料を取る以上はそうし なければいけないというふうに思います。 ただ、現在の基礎年金のレベルというのは、生活保護のレベルのちょっとだけ上ぐら いでしょうか。その辺のところをちょっと議論をしてから、いろいろ考えなければなら ぬと思います。 それから、もう一つ別のことは、先ほど少子化問題との関係をどうするかとおっしゃ ったのですけれども、これは今、ちょうど同じ時間に人口問題審議会をやっておると思 うのですが、私は意見としては大変面白い提案ではありますが、年金制度と少子化対策 をくっつけると、これまた非常に複雑な反論も出てくるし、そういうものでなぜそうす るかという説明をする必要があるし、子どもを産みたくない人に対する差別ではないか というふうな意見も出てくるので、これは子どもというものがどういう性格の国民資産 になるのかという結論がはっきり出てから、判断をした方がいいのではないかと思いま す。 ただ、老齢年金の給付の面での話のときに問題が出てくるので、要するに、老人に給 付する年金額が現役の人が子どもを育てることのために費やしている費用を差っ引い た、そういう意味での可処分所得とイコールになると。そのようなレベルがいいのでは ないか。つまり、現在の給付水準が少し高過ぎるのではないかと。今の標準のレベルで すと、現役の人が子どもを育てて頑張っている水準と余り違わないぐらいではないかな と思います。その辺のところが給付の問題として考えたらいいので、少子化対策として 議論するのはちょっとまだ早いと思います。 ○K委員 基礎年金に関する問題なのですけれども、今さっき委員がおっしゃった基礎年金とい うものは税なのか社会保険なのかということで、基礎年金は全く払う方ともらう方とが イコールなのですから、間接税で割り切るというふうなものの考え方が出てくれば一つ 検討の可能性がある問題だというふうに思います。 しかし、今のところ間接税で割り切るということがなかなか国民的合意が得られるか どうかという問題が一つありますので、今の流れの中で考えなければ仕方がない訳です が、そこで問題なのは、どうして保険料を払うのがいやなのか。というのは、例えば、 さっきの話で民間の保険だったら4万円払っている。だけれども、これには2万円払う のもいやだと。どうしてそういうことになるのかということなんです。 それともう一つ、権利というものを、これは前の年金審のときにも申し上げたことが あるような気もしますけれども、要するに、元利合計で面積が一定になれば権利を与え ていいじゃないかというふうに割り切ると、学生の期間から取らなくても例えば、25歳 ぐらいから取り始めて、その代わり少し高い額を取っていって元利合計で満額の保険料 を納めれば、40年相当の権利を与えればいいじゃないかというふうに割り切ればいいの であって、そもそも今の学生というのは、親掛かりで学校に行くこと自体が問題と思っ ている上に、年金まで、年金というのは親が死んだ後の自分のもののために掛けるもの を、ある所得以上の人は年金まで面倒見ろというのはだれが考えたのか、これはとんで もない仕組みをつくってくれたものだという気がいたします。 結局、掛けられるところから掛けていってというのは、これは元利合計、面積一定と いうふうに論理的に割り切れば、勿論時期によってちょっと違ってきますけれども、そ ういうふうに割り切ればどこからスタートしてもいいじゃないかというふうに考えてい けば、問題は解決し得るのではないか。 それから、もう一つ言うと、そのための例えば奨学金みたいなファンドをつくっても いいと思うんです。それで自分で払う。とにかく自分で払うということが一番大事なこ とだし、収入がなくてしかも今学校に行っている最中の学生に保険料を払わせるという のは、そういう意味ではちょっと無理なところがありますから、素直な制度にしたらど うかというのが私の意見です。これは個人意見ということでございます。 ○H委員 基礎年金の部分についての意見ですが、先ほどB委員が組織の中でも意見がいろいろ あるというようにおっしゃったのですが、私は年金というのは日本そのものだと思うん です。そういう面で国家というか、そういうもの以外の何者でもないというように思っ ています。そこに脱落者がいるということは基本的には間違いだと思うんです。それを 是正する手段がないのであれば、また考えられないのであれば、大変大きなハードルと 合意形成のためにエネルギーが要りますが、やはり税方式できちんとフォローするとい うのが基本ではないかなというように思うんです。 もう一つは、税方式に変えるに当たっては、これは労働側にもいろいろな意見がある と思うのですが、少なくとも今の税の徴収の仕方、使われ方、使い方みたいなことにつ いて、基本的な点で意識改革というものが、必要ではないかというように思っていま す。 それから、もう一つは、基礎年金の水準というのをどういうものにするのかというと ころにもかかわるのですが、その税の使い方とも勿論関係しますが、最近マスコミ報道 にいろいろ登場してまいりますけれども、山村の風景を残しておいた方が人間の生活に とってより豊かではないかと思われるところに、大変な高速道路を走らせて環境を破壊 するというようなハード面の投資をするのではなしに、やはり人間の生活を原点にした ソフト面の社会資本の整備、年金生活者の裏打ちをするような社会資本の整備をするこ とが必要です。その前提で、税率の改正というか消費税絡みのことになるのだろうと思 います。そういうことをやっていくべきではないだろうかというように思うんです。そ のことがされないと、未納者問題あるいは基礎年金部分の水準をどうとらえるかという ような問題はいつまで経っても解決しないのではないかと思うんです。基本的に思いま す。 それともう一つは、税に対して使い方、使われ方のところにまた戻るのですが、その ことに対する不信感が大変強いものですから、税率の改善に対して我々内部でも猛烈な エネルギーが要るわけです。私はやはりこの問題は避けて通れないし、どこかで踏ん切 りをつけて一定の方向性を見いだして将来に道をつくるという発想になるべきではない かというように思っています。 以上です。 ○L委員 私も今、H委員からもお話がありましたが、同様な意見でありますけれども、基礎年 金はいずれにしろ制度の意義は大変大きいというふうに大きく評価しております。今回 いろいろな意味での改正検討がある訳ですが、この部分の安定性を確保するということ は、年金全体についての信頼性の確保という面から非常に大事だというふうに思ってお ります。その意味では、年金財政が大変困難だということは十分承知している訳であり ますけれども、出来るだけこの部分についての安定性の確保を基本にした制度改正でな くてはいかぬし、この部分は財政の観点からも改悪だよというふうに見えるような話は 大変まずいのではないかというふうに思っております。 もう一点は、今も御議論出ていましたが、学生の保険料負担でありますけれども、こ れも大変個人的なことになって恐縮ですが、学生2人を抱えておりますけれども2年、 3年と言いましてもこの部分の負担はなかなか金額が大きくて、先ほど来世帯で見るか 個人で見るかという議論も多々ある訳でありますけれども、今の家庭の責任もあるので しょうが、子どもを見ておりまして家族生活の面からも、これは家庭を意識して世帯を 意識して親の扶養などを将来考えているかというと、全く子どもはそういう雰囲気はあ りませんでして、今は我々も親の社会的費用負担なのかなというふうに思いながら、そ れはそれでいいだろうというふうに思っておりますけれども、何となく不合理だという ことは感じておる訳です。子ども自身の社会的存在としての責任の自覚という面からし ましても、例えば、日本育英会などがそうでありますけれども、就職後一定年限を経た 後、きちんと払い込みますので、そういう手だてもあるのではないかと思ったりしてお りますので、よろしくお願いします。 ○G委員 先ほどJ委員から年金制度と人口政策を絡めるのは問題を複雑にするから反対だとい う趣旨の御発言がありましたが、今朝、新聞にもちょっとそういうことが書いてありま したが、人口論の権威のJ委員がおっしゃるので多分非常に深い問題があるのだろうと は推察はいたしますけれども、そういう議論をしていくのだったら、年金制度を積立方 式にするか、公的年金を否定して私的年金でやるかしか両立しようがないのではないか と思うんです。ですから、そういう議論をなさるのだったら、その責任をきちんと取っ てもらわないと困る。現行では実質賦課方式に近い年金制度をとっておるし、あるいは 医療保険の恩恵も受けている訳です。だから、私は子どもを産まない自由を何も否定す るつもりはないけれども、社会保障制度成立を危うくするような選択をするのだった ら、そのペナルティーは当然払うべきではないかという気がしますけれども。 ○J委員 せっかく私の名前を挙げて御質問をいただいたので、ちょっと説明が足りませんでし たが、私が言ったのはそこまで深刻に人口問題と年金制度の関係を考えた上での発言で はなかったのですが、冒頭に私が言いましたとおり、やはり出生率が下がったというこ とが、この年金審議会でこれほど議論をしなければならない原因だということは認める 訳です。つまり、人口の年齢構成がもっと安定しておればこういう深刻な問題を議論す る必要はなかったので、今、G委員がおっしゃったように、人口論として無責任ではな いかとおっしゃることはよく分かったのですけれども、いわゆる人口政策というものに は極めて微妙な問題がありまして、これは今日本の中で恐らくかなりの方が反論をして くると思うんです。結局、女性の方が結婚するかしないか、あるいは子どもを産むか産 まないかというのは自分たちの個人的な判断であって、社会的視野からあるいは国の立 場から議論を立てるべきでないという意見が非常に強い。 ただ、G委員はそうではなくて、逆にマクロの観点から立てるべきだとおっしゃって いるのですが、私が言うのは、年金の中でそれをやっても余り効果がないだろう、児童 手当をやっても恐らく効果はないだろう。つまり、もっと社会全体の構成が子どもを産 みやすい、育てやすいというふうな社会にならないと、子どもを産む気はないんだと。 今の非常に個人主義的な若い人たちの考え方の中で、余りに慌ててこの話を持ち出すよ りは産みたい方には産んでいただけるような社会をつくるんだということで、そちらの 方にまず最大の努力をして、その中に年金制度も当然入っている訳です。私は、人口年 齢構成が安定静止人口になって、日本の人口が多分6,000 万人ぐらいで安定すれば老人 の割合が20%、生産年齢人口60%、子ども人口20%、20、60、20ということで安定しま すから、こうなってしまえば積立方式にしても賦課方式にしても経済が変わる分だけ調 整は要りますけれども、何の問題もない。だから、そこまで先に行くということが問題 で、余り急いで話をすると混乱を起こすだろうと私は言ったので、私は人口問題の権威 でも何でもないし、もうリタイアした年金生活者の一人ですから、余り私の発言を評価 していただかない方がいいと思います。 ○F委員 基礎年金の空洞化の問題ですけれども、今回の社会保険庁の方からいろいろな資料を 出していただきまして、未加入がかなり解決したというようなこと、それから、実態把 握もかなり出来たという点で非常に努力されているのは分かるのですけれども、基本的 に未加入は減ったかもしれないけれども納めない人は増えているあるいは免除は増えて いく、それが年々上がっている。基本は、やはり保険料が高くなっているというのが実 態だと思うんです。実際には、民間の生命保険にも入っているじゃないかとか、あるい は所得分布によっても余り所得に関係ない数字というのが出ていますけれども、今回出 てきた保険料の未納者の理由の中で、やはり55%以上が保険料が高いから入っていない んだということで、一つの大きな要因になっている訳です。  前回の改正の際も申し上げのですけれども、保険料が当初100円、200円でスタート した国民年金が今や1万円札を超えるという段階になれば、かなり家庭にとっては負担 であり、ましてや今1万2,000円、それから、今度の新しい人口推計ですと、最終保険料 は2万4,000円です。これは現在の価格ですから、将来価格で考えた場合や2人分の保険 料を考えた場合、更に学生まで入れれば相当な負担になるということで、しかも保険料 の検認率がどんどん下がってきている、免除は増えている、ということは保険料の負担 というのをもう1度考える必要があるのではないか。 そこで、前回も出てきたのが、国庫負担問題あるいは税議論というのがありますけれ ども、これはやはりこの審議会でいずれ議論しなければいかぬ問題でしょうけれども、 少なくとも次の再計算の際に、国庫負担問題凍結あるいは消費税の問題に手をつけられ ないという時期ですから、これはいずれは考えなければいかぬ問題でしょうけれども、 次の改正にその問題は取れないという中で、一つ言えるのは、今の保険料実際には1万 2,000円、夫婦で2万4,000円、これが払えなくても1万円札以下の、例えば1万円以下 だったら何とか払えるという世帯もあるのではないか。その範囲内でこれは年金権の面 から見ますと問題があるかもしれないけれども、払える範囲内で段階的な保険料を場合 によっては認めてもいいのではないかと。そうすると、少なくとも国庫負担の3分の1 はあるし、それから、今の1万2,000円以下のもっと低い保険料でも納める人は認めると いうことになれば、年金権には少なくとも結びつく。それから、年金額フル・ペンショ ンではないけれども、若干低い年金額でも今よりはいいのではないかという問題を考え る必要があるのではないかという点を申し上げておきます。 ○B委員 せっかくのF委員の御発言にうまく接続しない議論で申し訳ありません。先ほどK委 員の方から出された学生問題に関しては、原則的に私たちも似たような感じを持ってお ります。現在の基礎年金制度というのは、加入期間40年ということを決定するだけでは なくて、始まりと終わりの年齢もフィックスしてあるんです。これは、言わば二重規定 のようなものでありまして、むしろ加入期間40年ということをフルだとするのであれ ば、始まりの年齢と終わりの年齢に関して言わばフローティングのようなことであって なぜいけないのだろうかという感じを持ちます。 そして、現に現在の高卒者の半数以上が大学へ行っていない訳で、いろいろな形で就 職をしているケースが多い訳で、その人たちは18歳から現行の厚生年金法に基づいた年 金保険料を払っておる訳ですから、その最初の2年間が基礎年金の受給資格形成に結び つかないということは明らかに不合理なので、18歳就労者は18歳の時点で基礎年金の方 での被保険者資格をきちんと持つ。大学を卒業してから給料を取る人はその時点からと いうことの選択肢もあれば、その期間に関して収入がないから保険料免除で後から在職 して給料をもらうようになってから、遡及して払うというふうな幾つかの選択肢を考慮 する。 そういうふうに基礎年金のまず初めと終わりのところに関しては、一定の範囲でこれ を変動型にしてしまうということは十分な考慮に値するのではないか。この辺について 従来どのような御検討があったのか、もし、E委員に教えていただければと思います。 ○E委員 実は、私さっきもちょっと手を挙げたのは、今、B委員がおっしゃった問題について メンションしたかったからなんです。 まず、外国の制度で申しますと、イギリスが日本と同じような基礎年金制度を持って いて、しかも、これは日本で言えばちょうど中学卒業程度辺りから被保険者にして、65 歳から支給する訳なので、だから拠出すべき期間はたしか長い訳で、50年近い期間ある 訳です。そして、一方フルペンション、満額年金を出す期間は、たしか44年だったです か。要するに、アローワンスを見ている訳です。拠出可能な期間と、それから、満額年 金の期間というものを。日本で言えば、ちょうど20歳から60歳の40年間と満額ペンショ ンの40年間とが一致しておる訳です。これをずらす訳です。イギリス式で言えば、例え ば、拠出すべき期間は18歳から64歳までと決めて、その中で、そうしたら46年間ござい ますね。その中で例えば40年間納めれば満額と一緒になる。そうすれば、現在のところ 財政的には全く一緒なんです。 ただ、非常にフレキシブルになってかなり選択の余地が広がる訳です。そういうこと をお考えになったらいいのではないかということを私はしょっちゅう言ってきたのです が、残念ながら御採択にならなかったということでございます。 ○事務局 先ほどのフレキシブルにしたらどうかということでありますが、制度的にはフルペン ションになっていない方については、60歳から65歳までは任意に入れるようになってお りまして、それでフォロー出来るようになっております。 それから、その前に幾らか私どもの資料につきまして御質問、御提言いただきまし た。何が何でも入りたくない人をどうするのかというような御発言もありましたけれど も、今回初めての調査の公表でありますけれども、これを分析しまして今後更に強力な やり方を工夫しようと思っている訳でありますが、例えば、未納の理由で先ほど私から も若干申し上げましたけれども、国民年金をあてにしていないという方も年齢がかなり いきますと、その比率が下がってくるというようなこともあります。だからといって全 部払っていただけるという訳ではないかもしれません。これからどういうふうにこうい った調査を使いながら実績を上げていくかということで、努力をさせていただきたいと 思います。 それから、徴収コストの話がありましたけれども、最初に御説明いたしましたように 厚生年金は確かに効率的な仕組みになっております。国民年金は個人相手ですので、な かなか能率が悪いということになっておりますが、分けて比率を出しますと、委員から 御指摘があったようなことだと思いますけれども、厚生年金、国民年金合わせて事務費 の率を出しますと、御案内のような比率1%ぐらいではないか、と計算しておりません が直観で思います。これは、適用が厚生年金の方がどんどん増えれば解決する訳であり ますが、そうはいってもそうならない人がいる、これが1号ということでありますの で、これを合わせて考えていただきたいと思う訳であります。 ○会長 先ほどちょっと申し上げました、施設入所者の取扱いの問題について、メディアなど にも出ております。御意見ございましたらどうぞ。 ○B委員 簡単に申し上げますが、そういう意味での支給の調整に関しては原則反対でございま す。現実に、年金受給者で長期入院というケースは、実は長期入院生活というのはお金 が掛からないじゃないかというのはとんでもない話でありまして、家を引き払って病院 に住んでいるなら別ですけれども、そういうことはあり得ませんし、そして、入院家族 を抱えている家族の負担というのは想像以上に大きいんです。家族側には現在の状況の 中で本人の病気でない以上は、医療保険等々は一切ありませんから、あるいは仕事の合 間を見てそこへタクシーで駆けつけたりなんかしながら入院家族を養っているという意 味での家計全体としてのコストを考えてみれば、本人の当該の入院患者そのものの生計 費だけと年金を比較するような議論というのは極めて不当な扱いではあるまいかと、反 対です。 ○I委員 ただ、現実に老人ホームなどの入所者を見ますと、年金収入ですと自己負担がほとん ど掛からないということでまるまる残ってしまうケースが結構あるんです。そうします と、お亡くなりになったときに個人名義の年金の積立金が1,000万円を超えているような ケースがままありまして、それが遺族の方にそっくりいくという形になっている部分が 現実に起こっている訳です。そういう意味では年金をカットするのではなくて、年金は 支給するけれども、そこから負担を払ってもらうみたいなシステムをきちんとすべきで あって、そっちの方が私は大事であろうと思うんです。ただ、現実にそういう事実があ ることは問題だというふうに思っております。 ○K委員 今の点は、私もI委員がおっしゃったように、私自身も特別養護老人ホームの見学な どに行ったときにクレームがつくのはその問題なんです。やはり、高い年金をもらって いる方で、それが大部分貯金に残ってしまっているというのはおかしいじゃないかと。 一方で、特養という非常に大きな社会的なフェイバーを受けている訳ですから、その 分を差引きしないのはおかしいじゃないかというのは、クレームとして施設の管理者あ るいは周りの方からそういう声は聞きます。ですから、これはやはり社会福祉はいろい ろな局面で受ける、勿論出す方も出しますが、受けるのも医療という形で受けたり、福 祉という形で受けたり、いろいろな形で受ける訳ですから、全然矛盾しないことは出来 ないでしょうけれども、なるべく公平になるような形は考えるべきじゃないかというふ うに思いますけれども。 ○B委員 その点は賛成です。 ○事務局 ただいま特別養護老人ホームの例が出た訳でございますけれども、ちょっとこの27 ページの資料の上段をごらんいただきますと、現在の費用徴収の基準では、本人最高24 万円まで徴収するような形になってきておりまして、かつては議論があったように思う のでありますけれども、最近の例を調べたものを見ますと、入っているうちに年金がた まったのではなくて、どうも最初の段階から結構通帳をお持ちで、それが枕元で争われ たというような事例はありますけれども、入院中に年金がぞくぞくたまったということ ではなかったという調査を見たことがありますので、念のために申し上げます。 ○E委員 ちょっと話題を変えてもよろしゅうございますか。 実は、10ページに離婚時の年金給付の問題が出ておって、どなたも指摘されなかった のですが、現状でいいと言えばそれまでなのですけれども、妻に厚生年金がないとき に、離婚時の妻の年金はまさに妻の基礎年金だけになる訳なのですが、最近のように非 常に離婚が増えてきて、しかも、熟年離婚が増えておるといったような現状の中で、こ ういう問題は放っておいていいのかどうか。 諸外国では、やはりこういう場合には先ほどの3号被保険者の問題とも実は絡む問題 なのですけれども、夫の厚生年金の中にもともと妻の貢献分といういうものが入ってお るはずなのだから、したがって、離婚の場合には2階部分の年金を分割する規定を設け るべきかどうかですが、これは日本の厚生年金もそうですし、諸外国の年金もそうなの ですが、年金というのは一身専属であって、本人が生きている限りは絶対に分割不可能 だという法理論があるものですから、なかなか外国でもこの問題をどういうふうに解決 するのか手こずっておるようなんですね。分割もいけないし、勿論、放棄もいけない し、譲渡もいけないし担保にも供せない。非常に年金権の保護が手厚い訳です。そうい うことがネックになって、今まで離婚時の妻の年金分というものが手がつけられなかっ たが、最近特別立法でもって分割し得る例が、諸外国で見受けられる。それも本人たち の協議だけではだめで、やはり今の日本で言えば家庭裁判所という裁判官の権限によっ て分割ということも可能だというような問題があるようでございます。 これと似た話でちょっと違う話なのですが、私、今、さる共済組合の不服審査に関係 しておりますが、ここに出てくる案件でいわゆる重婚的内縁関係というのがある訳なん です。日本の年金は、配偶者の定義の中に事実上婚姻関係にある者を含むという非常に 社会立法としては進歩的な制度を取っておった。これ自体は非常にいいのですけれど も、実は、法律上の妻がありながら事実上またもう一人内縁の妻がいるという重婚関 係、これが実は問題になっている。そして、最高裁の判例は皆さん御承知のとおり、ど ちらかの婚姻が形骸化しておった場合は、事実上婚姻が継続している方に軍配を上げる ということになっておる訳なのです。ところが、実際に審査会で審査いたしますと、人 間というのはそうはっきり割り切れるものではないんですね。結局、今の最高裁判例を そのまま適用いたしますと、非常に冷酷無残な男で一回元の法律上の妻と分かれた以上 は見向きもしないと、子どもがおっても全然仕送りもしないという者の場合だったら、 死んだ場合は内縁関係にある妻の方に一切の遺族年金がいく。 ところが、人間というのはそう割り切れるものではありませんから、やはり高等学校 に入ったというのでお祝いを持っていく、ときどき学資が要るので子どもに仕送りす る、これをやっているとだめなんです。そうすると、世間にはちゃんと内縁関係で妻と 認められておる方には一切何もいかない。 だから、我々一番いいと感じるのは、やはり分割という制度があって、そして、これ はなかなか難しいのですが、裁判所の権限で調停でもいいのですが、分割可能ならば円 満に話し合いがつくのではないか。最近のように、年金が20万円を超えて、遺族年金に しても10万円超えてしまう訳ですから、半分にしても5万円以上。これと妻の基礎年金 と合わせれば、合わせて10万円以上ということになってくれば何とかやっていける。2 つに割ったっていいのではないかという気もするのですが、そういう問題をなかなか実 はお取り上げにならない。皆さんにひとつ御批判を願いたいと思います。 ○B委員 スウェーデンでは似たような制度がございますね。 ○E委員 はい。スウェーデンの新しい立法で、そういうことをいたしました。 ○B委員 実は、私どもの中でその議論をちょっと部内で幾つか意見交換をいたしました。私も 大変関心を持っております。なぜ関心を持ったかなんていうことは置いておきますが、 その場合、委員二分割というふうにおっしゃいましたが。 ○E委員 二分割ではありません。 ○B委員 スウェーデンの場合に、単純な二分割ではなくて、生計費の場合には一緒に生活して いれば共同コストなどもありますので、分割した場合には総量が増えるのではなかった でしょうか。 ○E委員 それは増えるとも思わなかったですが。総量は一緒で、あとは夫婦の合意によってど ういうふうに割り振るかを決めると。 ○B委員 シェアの割合を決めるだけですか。 ○E委員 はい、シェアを。しかし、10のものが11になったり12になったりはしない。 ○B委員 そうですか。 ○M委員 公的年金制度の一元化の問題ですが、一番最後の説にありますけれども、国鉄の問題 でも破綻をしてどうしようもなくなって厚生年金に統合を求めてきたというケースがあ りまして、その後、三公社は統合しましたけれども、あと農林漁業とか私学が残ってお る訳でして、特に農林漁業というのは、いずれは国鉄あるいは専売公社と同じような道 をたどるのではないかということで、破綻してどうしようもないというところで持ち込 まれても困る、少し余力のあるうちに統合をするようなことを考えるべきだという意見 もありましたが、このところ公的年金制度一元化の議論は余りないようですけれども、 いろいろな数字を見てみますと、やはり農林漁業の方はかなり余裕がなくなっていると いうふうに思われます。私学の方は多少、今の時点では余裕があるようですけれども、 いずれはこういうものは財政規模を拡大して安定化を図るというのが筋でありまして、 閣議の決定でもそういうふうなことが言われておる訳ですから、この問題もなるべく早 く取り上げるべきじゃないかと思います。 以上です。 ○K委員 今の年金一元化との関連なのですけれども、これは度々その話は出ている訳ですが、 やはり情報の開示を共済年金の方にも。ちょうど厚生年金がかなり情報が開示されてき ました。同じピッチで共済年金の方も情報を開示してもらうということは非常に大切だ と思うので、是非、その方法で進んで同じベースで議論出来るような情報を極力開示し ていただくように是非、お願いしたいと思います。 ○J委員 いつか年金白書とか何か分かりやすい本を出すとおっしゃったのですが、いつごろ出 るのかと思うのですけれども。それは、年金は破綻するというような話が随分盛んなも のですから、これをやはり国民に周知する方法が必要なので、それはいつごろ出来るも のなのでしょうか。 ○事務局 ただいま年金審議会でいろいろ御議論いただいております。この御議論を踏まえ、更 には、関係団体の御意見などもいただきまして、それを出来れば私ども早ければ年内に 年金白書という形でまとめさせていただきたいと、このようなことでまた御相談をさせ ていただきたいと思います。 ○会長 N委員、何か御発言ございませんか。 ○N委員 なかなか幅広い問題なので発言を躊躇しておりましたけれども、まず、基礎年金の問 題については、今回の改正の中の基本的な問題の一つだという認識は持っております。 ただ、中長期的にはさまざまな議論がございますし、先ほどちょっとありましたけれど も、個人的な意見からすれば中長期的には税方式ということを本気で考えるべきではな いかというような意見も持っております。ただ、現在の財政の状況、それから、国の在 り方としても、今どちらかといえば行政改革等の手を緩めて増税路線の方に入るという ような状況については、もっと課題が多いのではないかというふうに考えておりますの で、当面の問題と中長期的な基礎年金の在り方ということについては少し分けて、しか し、中長期的な問題はそらさずに考えていかなければ、先ほどL委員さんの方からもあ りましたけれども、基本の骨格をなす問題ではないかというふうに思いますので、そう いうふうに考えています。 あと、女性に絡む問題は非常に苦慮する問題でございますし、どちらかといえば働い ている女性の方々からの声は大きい訳でございますが、しっかりこの辺はさまざまな立 場の議論というのがありますし、十分な情報開示とそれから、いろいろな解決のための 手段ということをいろいろ提示をしながら、一体どういう方向がいいのかということを しっかり議論していくことが必要ではないかと思います。 ただ、直観的に言えば、高齢者もそして女性も出来るだけこういう人口構成の傾向の 中では、一人でも多く働いて税金と保険料を払う側に回るという方向で、どういうふう にそういう社会をつくっていくのかという方向性については、やはりそちらの方に世界 的にも向かっているし、日本でもそういう方向について基本的には考えていく時代に入 っているのではないかというふうには感じております。 以上です。 ○J委員 ちょっとさっきのG委員のお答えのとき言い忘れたのですけれども、老齢年金制度と いうものは若い世代、現役世代が高齢世代を助けるという意識ではなしに、これからは 高齢世代も相互に助け合うという考え方でやらないと、確かにG委員がおっしゃるとお り、現役世代が少ないからどうにもならぬのですが、私はやはり社会保障制度の一環だ とすれば、豊かな高齢者、余裕のある高齢者が困った高齢者を助けるというふうな発想 も盛り込まれるべきではないかと思います。そうでないと、おっしゃるとおり人口構造 が悪いですから破綻します。 ○I委員 確かに、豊かな高齢者がという意見はあると思いますが、それはしかし、本来税制の 中できちんと豊かな高齢者はそれなりにとらえている訳ですし、保険の中だけでそれを 考えるというのはちょっと問題があるのではないか。むしろ、もっと大きな税制との絡 みの中で考えるべきことではないかと私は思うのですけれども。 ○B委員 その問題は、当審議会を再立ち上げしたときの当初の議論に立ち返るかもしれません が、原則は私はI先生の御意見に全く賛成なんです。ただ、そのための税制の側が現在 の所得捕捉に関して極めて大きな問題を残していて、これが例えば、納税者番号制プラ ス総合収入課税というふうになれば、かなりの程度それで保障出来ると思います。問題 は、税制上のそういう不公平というか不備が当面改善する見込みがない中で、次善の策 として年金制度の方で何か出来るのか出来ないのか、議論の枠はそこなのではないでし ょうか。 そのように考えるときに、2年後の年金制度改正の中で税制上の改善が抜本的には見 られない中で、あくまでも次善の策として年金制度として何らかの対応を、やはり私は 取るべきである。そのように考えることを当審議会の課題としては是非とも御確認をい ただきたいなと。これは税制上での公正さが担保される状況になれば、その問題をもう 一度元へ戻すなり見直すなりということの確認の上で、そういう措置を共同で検討して いく条件が与えられたいというふうに思います。 ○G委員 J委員から大変お気遣いをいただいた意見をいただいたので、私もちょっと補足しま すが、私が申し上げたのは3号被保険者問題をどうするかという問題に絡んで、さっき 子どもを持っている場合の控除ということを申し上げたので、J委員おっしゃるよう に、では、年金でそういう手当をしたり児童手当を豊かにしたら子どもが増えるかと、 そんなことは多分そう簡単にはいかないという御趣旨のことは全く賛成ですから、誤解 のないようにしていただきたいと思います。 ○D委員 先ほどの離婚時の年金の分割の問題なのですけれども、これも先ほどの第3号被保険 者とか世帯単位か個人単位かというところと深く絡んでくる問題だと思います。12ペー ジの資料に賃金分割や年金分割が国民意識になじむかというところの国民意識というの が何を指しているか、世帯単位ということや個人単位ということなのかどうかというの は、ちょっとこの資料だけでは分からないのですけれども、先ほどからいろいろな方も おっしゃっていますように、もし男性も女性も働いてそれぞれが厚生年金なり自分の年 金を働きに応じて持つというようなことになれば、今のような形で離婚のときに夫の年 金の半分を妻がもらわなければいけない事態は解消するはずなんですけれども、そうな っていない現状では、やはりこれだけ熟年離婚とかいろいろな家族形態自体がすごく多 様になって、それから、1人の人が何回も結婚したり離婚したりということをするよう な事態の中では、やはり私は何らかのそういったことは経過措置として考える必要があ るというふうに思います。 ただ、そのときにどういう理屈をつけるかといいますか、そこが議論すべきところだ と思います。 ○E委員 少しは興味をお持ちのようでございますので、もう少し続けて申しますと、先ほどB 委員がおっしゃっていましたように、スウェーデンはたしかこの前の制度改正で、ちょ うど妻に厚生年金がないときに離婚した場合、これは夫婦合意で妻は家庭で専業主婦を やらせたのだから、夫は当然自分の年金権を幾つかは分けなければならないというもの の考え方の下に年金分割の規定は下りたんです。この問題がイギリスでもグード委員会 で実際議論になりまして、これは大議論を呼んだんです。といいますのは、話は分かる のですけれども、今、D委員がおっしゃったように一生のうちに何回も離婚する人もい ますし、それから、ちょうど年金権が形成されてから離婚すればいいのですが、途中で しますと一体どうして計算するのかと非常に難しい問題がありまして、とてもグード委 員会では手がつけられないということで、やはり専門家である民法の法律学者と数理の 人たちのコミッティーに任せようということになったいきさつもあるんです。そういう ことで、これは非常に難しいので、ちょっとやそっとでは私は解決するとは思いませ ん。技術的にも難しい問題があります。 しかし、最近日本でも夫婦の財産の中で一番大きいのが住宅で、2番目に大きいのが 年金ということになりつつあるようでございますから、不幸にして離婚という事態が起 これば、やはり円満にクリーンブレークという意味だそうですが、円満に別れるために はやはりそこら辺りに手をつけなければならないのではないかというふうに思っており ます。 ○会長 御発言を一通りいただきましたようです。時間もそろそろまいりますので、今日の御 議論はこの辺で終わりにしてよろしゅうございましょうか。本日の資料はこれをすべて 公開することにして、よろしゅうございましょうか。皆様のお机に皆様あてのダイレク トメールのはがきをおいてございます。これについて事務局から。 ○事務局 お手元に次期財政再計算に向けまして、各委員あての御要望がはがきの形で寄せられ ております。主な御要望の内容につきましては、お手元の資料に書いてあるとおりでご ざいまして、本日はそのはがきの一部を机の上に置かせていただきましたので御高覧い ただきたいと思います。 以上でございます。 ○会長 今後の日程につき事務局から御確認をお願いします。 ○事務局 次回は第9回でございますが、11月5日水曜日でございますが、午後2時から本会議 室におきましてお願いをいたしたいと思います。 なお、テーマといたしまして事務局といたしましては、厚生年金基金あるいは日独年 金通算協定の関係につきまして御審議をお願いしたいと考えております。 ○会長 次回は11月5日水曜日、午後2時から、場所はここです。 ○B委員 今後の論議の予定でございますが、基金問題、昨年大変時間を掛けて議論したことで すが、今年の審議日程の中では企業年金というか基金問題は次回だけになりそうです か、それとも後また何度か議論する時間がありそうですか。 ○事務局 とりあえず現状、経緯などについて御説明させていただき、また御議論いただきたい と考えておりまして、その後はまた御相談をさせていただきたいと思います。 ○I委員 例えば、税か保険料かという議論は、もうこれで終わりなのでございますか、もっと 基本的な問題を議論しなければならないことはさかのぼればいっぱいあると思うのです けれども、もうそういう議論は一切やめでいくのでしょうか。 ○事務局 今後の審議会の御審議の進め方につきましては、検討項目を一応一巡していただいた 段階で、また御相談をさせていただきたいと思います。 ○ 会長 これで閉会してよろしゅうございますか。長時間御苦労様でした。      問い合わせ先 年金局企画課 須田(3316)