97/10/09 年金審議会全員懇談会議事録              年金審議会全員懇談会議事録     日 時 : 平成9年10月9日(木)  午前10時00分〜12時05分     場 所 : 厚生省特別第1会議室 議事日程  1.開会の辞  2.委員出席状況報告  3.議  事    ・次期財政再計算に向けての検討について 4. 閉会の辞 〔出席委員〕   京 極 会 長   砂子田 委 員   岡 崎 委 員   木 原 委 員   久保田 委 員   神 代 委 員   坂 巻 委 員   都 村 委 員   桝 本 委 員 目 黒 委 員   吉 原 委 員   渡 邊 委 員   貝 塚 委 員 船 後 委 員 ○ 会長 それでは、時間がまいりましたので、ただいまから年金審議会全員懇談会を開催いた します。 まず、委員の異動がございましたので御報告申し上げます。本年10月8日付で古山委 員が御退任になりまして、その御後任として、全国町村会理事で埼玉県横瀬町町長の富 田孝さんが新たに委員に任命されました。本日は御欠席でございますが、御報告いたし ます。  次に、委員の出席状況について、事務局の方から御報告をお願いします。 ○事務局  本日は、国広委員、高山委員、富田委員、福岡委員、八木委員、山田委員、山根委員 若杉委員が御欠席でございます。 ○会長  ありがとうございました。それでは、本日の議事に入りたいと存じます。  本日は、次期財政再計算に向けた検討項目のうち、主として負担関係について議論を 行いたいと思います。事務局の方で資料を用意してございますので、御説明をお願いい たします。 ○ 事務局  それでは、本日は資料1--1、資料1--2、資料2と3点の資料を配付させていただ いております。  資料1--1につきまして御説明をさせていただきたいと思います。今お話がございま したように、主として負担関係ということで資料をまとめております。目次を御覧いた だきたいと思います。厚生年金、国民年金、国庫負担などにつきまして、現状及び見通 しなどを整理いたしておりますが、厚生年金につきましては、負担の前提となる経済前 提、あるいは経済見通しなどにつきまして資料を作成しております。国民年金の方につ きましては、負担と給付の現状、それから将来見通し、あるいは国民年金の保険料の免 除、滞納、あるいは第1号被保険者としての未加入といったことにつきまして、現状の 資料を順次御説明させていただきたいというふうに考えております。  資料の1ページを御覧いただきたいと思います。資料の1ページは、これまでにも提 出させていただいたところでございますが、厚生年金の財政方式につきまして、制度創 設以来の財政方式の推移について掲げている訳でございまして、一番左に、その財政方 式を前提とした保険料率、あるいは平準保険料率を掲げております。現在は、昭和48年 以降、将来見通しに基づく段階保険料率ということできておりまして、いわゆる4条件 というのを設定いたしまして、段階保険料率の基本的な考え方を定めておるところでご ざいます。  その4条件が次の2ページでございまして、「財政再計算における4条件の推移」と いうことで、直近の3回の財政再計算につきまして4条件を掲げておる訳でございます 現在の考え方は、平成6年の財政再計算、一番上でございますけれども、それぞれの保 険料につきまして、現役と将来の現役世代の負担の公平を図る。併せて、積立金の運用 益を活用しまして、最終保険料率の軽減を図るという観点に立ちまして、保険料の段階 的な引き上げを行うということにしておる訳でございまして、その具体的な条件といた しまして、(1)、(2)、(3)、(4)、を挙げておる訳でございます。(1)本格的な高齢社会 におきまして、一定の保険料率、いわゆる最終保険料率で制度が安定的に運営出来るこ と、これが第1でございます。第2が、後代になるほど保険料の引き上げ幅が大きくな らないように配慮する、これが2番目でございます。それから、制度の成熟過程におき ましても、単年度収支が赤字にならないようにというのが3番目でございます。そして 4番目といたしまして、経済変動に対応するために一定の準備金を保有する。こういっ た4条件に基づきまして保険料率の段階的な引き上げ、段階保険料方式をとっておる訳 でございます。  次に3ページ。この最終保険料率、それから、その前提となります標準報酬、消費者 物価、運用利回りといったものにつきまして、48年以降の数字の推移を一表にまとめて 見ておるものでございます。一番右でございますけれども、平成9年、これまでの審議 会でお示しいたしました人口推計を見直しまして、その前提となる数字を掲げておると ころでございます。前回の財政再計算におきまして、標準報酬、消費者物価、運用利回 りにつきまして、4%、2%、 5.5%という数字を設定したところでございます。その 他人口の関係につきまして数字を挙げておりますが、説明は省略をさせていただきます 次に、これから先の見通しについてでございますが、現在の政府の経済計画を4ペー ジ以降に掲げておりまして、平成7年12月に策定をされました構造改革のための経済社 会計画ということでございまして、構造改革を進めるという前提で経済計画を策定いた しております。 5ページに具体的な数値見通しを挙げておりますが、それをまとめたものが6ページ でございまして、6ページの真ん中の表に「本計画における経済の姿」という形で平成 12年度を最終年度とする数字が掲げられております。実質経済成長率3%、名目3カ2 分の1%、消費者物価上昇率4分の3%というふうになっておるところでございます。 括弧書きは、(注)1にございますように、構造改革が進展しない場合ということで、 それより低い数字が掲げられております。  次に7ページ。こういった政府の公式の経済計画に対しまして、関係方面の最近の経 済見通しはどうなっているのかというのを1表にまとめておる訳でございます。 ちょっと計測時期が違いますので、計測期間というのは長短ございますけれども、御覧 いただきますように、標準ケースとか、あるいは楽観ケースなどという形、それから効 率化ケース、改革ケースというように大きく2つに分けまして、実質成長率、あるいは 生産性の向上というものの数字を見ておる訳でございます。標準ケースの場合、2%、 あるいは1%台、いろいろな数字が出ておりますけれども、改革ケースにつきましても 2%台から、長銀の(4)でございますと 0.1%という数字として非常に小さいものもご ざいますけれども、計測期間も長くなっておりますが、総じて先ほどの政府の経済計画 より数字としては低いということになっておるところでございます。  8ページは今申し上げましたこれまでの経済的要素の推移でございまして、57年以降 の数字を並べております。 9ページにまいります。関連しました見通しといたしまして、労働力人口の見通しを 挙げております。これは審議会でも一度御説明させていただいたところでございますが 労働省の推計によりまして、2010年の15歳以上の労働力人口につきましては、2000年よ り若干減少はいたしますけれども、 6,745万人という見通しになっておるところでござ います。 厚生年金の最後の10ページ。今申し上げました前提を置きまして、これまでお示しい たしました新人口推計に対応する試算をもう一度掲げておりまして、段階保険料率、あ るいは平準保険料、そして賦課方式によった場合の保険料率がどうなるかというものを 1つにまとめておるものでございます。 以上が厚生年金の関係でございまして、11ページ以下は国民年金の関係の現状の説明 に入ってまいります。 11ページが国民年金の被保険者の負担と給付の現状ということで、7年の調査等を ベースにいたしまして、2号被保険者までの数字も入れておる訳でございますが、第1 号被保険者1,781万人ということでございます。網かけによりまして、未加入、未納、 免除といった現状がどうなっているか、その概要を挙げておりますけれども、免除者に ついて見ますと、下の張り出しました四角の中に書いておりますけれども、7年度末現 在で法定免除の方、それから後ほど申し上げますけれども、申請免除という仕組みがご ざいまして、2つの方式で免除者が 330万人おられる訳でございます。 次に進ませていただきまして、12ページ、「基礎年金の仕組み」ということで、現在 の基礎年金は60年改正によりまして全国民共通の給付を行うという仕組みになっており まして、その費用につきましては、全制度の被保険者で公平に負担をする仕組みという ふうになっておる訳でございます。一番上にございますような国民年金、厚生年金、共 済組合と基礎年金勘定というもので、拠出金、交付金ということで費用のやりとりをす るという仕組みになっておるところでございます。基礎年金勘定の額が11兆円、ここか ら基礎年金給付4兆 2,000億円。そして、 (注) に書いておりますように、「みなし基 礎年金給付」ということで、旧法の関係の基礎年金相当部分につきまして6.8兆円各制 度へ交付金という形で出しておる訳でございます。 次に13ページでございますが、13ページは国民年金保険料の推移でございます。これ も御案内のところでございまして、9年4月からの額を掲げておりますけれども、毎年 500円ずつ上げるということになってございます。 14ページは、将来見通しでございます。 次に15ページ。先ほど申し上げました国民年金の保険料の免除の関係でございまして、 免除の基準につきまして挙げさせていただいております。先ほど申し上げましたように 市町村民税非課税は当然免除、所得税が課税されている場合は非免除という扱いでござ います。上の図にございますように、真ん中の部分につきまして、2番目の「○」に書 いておりますような判別指数というのを設けまして、本人や世帯の負担能力というもの を判定をいたしまして、最終的に免除に該当するかどうかを決定するというのが現行の 仕組みでございます。そして、この判別指数を数値化して判断をする訳でございまして 一番下の表にございますように、生活保護の級地というのを使いまして、大都市から町 村部で免除ライン、非免除ラインが違う訳でございまして、それぞれのラインの間につ きましては、さらに個別認定という形で現在、保険料の免除について決定をしておる、 こういう仕組みになっておる訳でございます。  次に16ページ。今申し上げましたような仕組みを前提といたしまして、現在の免除あ るいは滞納の状況につきまして、その推移を見ておる訳でございます。ここでは免除率 滞納率、それらを合わせたものの割合をパーセントで挙げておりますけれども、御覧い ただきますように、滞納率につきまして59年から61年に上昇いたしておりますが、これ につきましては、御案内のとおり、60年度に制度改正を行いまして、第3号被保険者と いう制度をつくった訳でございまして、滞納率算定の分母となります保険料拠出対象者 の数が減少したということで、滞納率が上昇したというふうに考えておるところでござ います。 近年、この率は若干上昇しておるということでございます。  次に17ページでございますが、今申し上げました免除者及び付加保険料の納付者につ きまして数字で挙げておるところでございまして、平成7年度末現在、免除者数は先ほ ど申し上げました 330万人ということでございます。(注)2に書いておりますように 学生につきましては、新規加入者73万人に対しまして、申請免除者64万 6,000万人とい うふうになっておるところでございます。 次に、未加入という状況につきまして、これは前回の審議会で調査の概要全体につい てお示しをいたしましたが、その中からかいつまんで現状を見ていただくということで 資料を何点か入れておる訳でございます。18ページでございますが、未加入率につきま して、市町村の規模別あるいは世代別に見たものが上の表でございまして、これを図で 示したものが下でございますが、御覧いただきますように、人口規模の多いところに住 む20歳代の未加入率が一番高い。平均いたしますと 8.2%というふうになっておるとこ ろでございます。 次に19ページ。未加入者と被保険者全体の所得分布を見たものでございまして、 100 万円刻みで挙げておりますけれども、被保険者全体と未加入者の所得分布に大きな差は ないんじゃないか、こんな感じがするところでございます。 次に、この未加入者につきまして、私的な生命保険、個人年金の加入状況を20ページ で図で示しておりますけれども、御覧いただきますように、被保険者全体で73.4%の方 が生保あるいは個人年金のいずれかに加入しておられるということであります。未加入 と言われる方でも、いずれかに加入しておる方が56.7%を占めるというのが現状でござ います。 この未加入の方につきまして、その理由を尋ねたものが21ページ、国民年金の現状の 最後の資料でございまして、制度を知らなかったという方が46.2%、制度を知っている けれども加入したくないという方が53.8%でございまして、さらにその主な理由を聞い たものがその後でございます。経済的に困難と言われる方が14.7%、年金制度の将来が 不安という方が 8.1%、貯蓄や個人年金の方が得という方が 4.9%というような状況に なっておるところでございまして、今後の未加入対策などにこういった現状を踏まえて 対応していく必要があるというふうに考えておるところでございます。 次に、22ページ以下は、国庫負担につきまして資料を入れておるところでございま す。まず、国庫負担の考え方でございますが、我が国は社会保険方式をとっておる訳で ございますけれども、費用の一部につきまして国庫負担を行っているところでございま す。 現在、原則として基礎年金の3分の1につきまして国庫負担を行うという御案内の仕組 みでございます。  23ページ、これも既にお示ししたところでございますけれども、現在3分の1となっ ております国庫負担を引き上げた場合、基礎年金の国庫負担額がどうなるかというのを 2025年にかけて見たものでございます。 最後に24ページでございますが、国庫負担につきまして、この6月の閣議決定におき ましては、アンダーラインを引いておりますけれども、(3)基礎年金国庫負担の引き上 げにつきまして、6年改正の国会の附帯決議におきまして所要財源を確保しつつ検討す ることとされておりますが、現下の厳しい財政事情に鑑み、財政再建目標達成後、改め て検討を行う、こういうふうに閣議決定されておるところでございます。  最後の25ページは、今申し上げました年金の負担及び経済前提などにつきまして、こ れまで出されました主な意見を整理したものでございます。負担水準に関するものにつ きましては、7月30日に整理をいたしましたのでそれを除いておりますが、1つは、段 階保険料方式につきまして、保険料の引き上げスケジュールを早めてはどうかという意 見であります。それから、基礎年金の保険料につきまして、複数の保険料を設定する、 あるいは段階的な免除保険料を設定するなど、そのあり方について検討が必要ではない かというのが2番目であります。  それから、国庫負担につきましては、先ほど申し上げました閣議決定を挙げておりま す。  3番目に、経済前提につきまして、年金の経済的要素の前提というのは長期にわたり ますので、過去の傾向や、今申し上げましたような政府の見通し、あるいは民間の推計 などを参考にして複数設定してはどうかというものが1つ。それから、人口推計につき まして、中位推計に加えて、参考として低位・高位推計に基づいた見通しも作成すべき ではないかというような意見があるところでございます。  以上が資料1--1でございます。  資料1--2の方は、前回までの審議会におきまして御依頼がございました資料につき まして、整理が出来たものを資料1--2という形で付けさせていただいております。1 ページが共済の厚生年金の在職老齢年金制度に類した制度はどうなっているのかという 現状を整理しております。1と2と挙げておりますけれども、2は、公務員がいわゆる 厚生年金などに入る場合でありますけれども、表1にございますように、前年の所得控 除後の給与所得が 120万円を超える場合に、その給与所得の額に応じて、表1の停止率 にございますように、20%、50%、80%と、最高90%まで職域加算及び加給年金を除き まして支給停止をするというのが現在の共済の仕組みでございます。 それから2ページ以降、前回、支給開始年齢の御議論がございまして、5ページに各 国の制度の実態をお示ししたところでございますが、実際に繰上支給を含めた各国の支 給の実態はどうなっているかということで支給開始年齢の実態を国際比較したものでご ざいまして、日本、フランス、スウェーデン、アメリカ、カナダの状況につきまして数 字が手に入りましたので整理をいたしましております。  最後に6ページ、これも御依頼があった資料でございますが、50歳代後半、あるいは 60歳代の就業理由についてでございます。男女で分けておりますけれども、御覧いただ きますように、55歳代以降では、男女ともに経済上の理由が多い訳でございますが、60 歳代後半になれば、それ以外の健康上の理由とか、生きがいとか、こういったことが就 業の理由になるという方が比較的多くなっているという現状でございます。 以上が資料1--2でございます。  最後に、資料2で、今開かれております臨時国会に政府として提出いたしております いわゆる財政構造改革法の社会保障のうちの年金制度に関する関係部分の抜粋を付けさ せていただいております。  10条におきまして「年金制度改革に関する検討」ということで、集中改革期間中にお いて行われる財政再計算におきまして、第1項が主として給付の関係、2項が高額所得 者の関係、それから3項が負担の関係で、いずれも所要の検討を加え、その結果に基づ いて必要な措置を講ずるものとするという、いわゆる検討規定が入っておる訳でござい ます。  それから、11条が9月の審議会で御議論いただきました事務費の関係の規定でござい ます。  そして、この法律の附則におきまして国民年金法、特別会計法の関係規定を改正する こういう形になっておるところでございます。  以上でございます。 ○会長  どうもありがとうございました。それでは、ただいま御説明をいただきました事項に つきまして、皆様から御自由に御質問、御意見などをお願いしたいと存じます。 それから、A委員から、前回の審議会に引き続いて給付の問題に関して意見を交換した いというお話もございますので、その点につきましても、併せて御自由に御意見、御質 問などをお願いしたいと存じます。どなたからでもどうぞ。 ○A委員  会長の運営に関する御配慮、ありがとうございます。お礼申し上げます。  前回の論議に関連することについては、ごく手短に言い残したことを申し上げたいと 思っておりましたが、追加資料をいただきましたので大変ありがたく思いました。前回 資料の方の35ページの一番最後のところに例によって「主な意見」というサマリーがご ざいますので、これに即して、本来であれば前回の論議に属するところの意見をまず簡 単に申し上げ、関連して、今回追加された資料についてちょっと触れたいと思います。 まず、スライド制の問題でございますけれども、私どもは前回改正で導入された可処 分所得スライドというものが大変大きな意義を持っているというふうに考えます。ただ 算定基礎になります現役労働者の賃金の上昇率を可処分所得ベースで見るというのと併 せて、給付される年金の側につきましても、例えば国民健康保険のように、年金生活者 自身が公的な負担を現在でもしておりますし、あるいは介護保険が導入されるというこ とになれば、そういう部分は強まってまいりますので、現役の賃金に関しては可処分所 得、年金に関しては総額というのではなくて、可処分所得賃金の伸び率を可処分所得で 見た年金に反映をさせる、こういう形が一番合理的ではないだろうかというふうに考え ております。 これは、代替率という数字が出ていないということが前回からしばしば話題になりま すが、大変難しい問題であることを承知しつつ、あえて申し上げたいと思いますが、現 役の可処分所得賃金と受給者の可処分所得ベースで見た年金水準、この間にコンスタン トな比率を設定するということが世代間の一番了解し得る点ではないだろうかというふ うに考えます。また、人口構造の変動に伴う財政の問題も、このようにすれば、現役の 場合には既に負担額が差し引かれたところがベースになっておりますので、それに対す る問題もこの中にビルトインされてくるというふうに理解をしているところでございま す。 それから、支給制限の問題がございました。これについては、先ほどの共済年金の場 合の支給制限、いわゆる厚年の在老に対応するものが御紹介されましたが、こういった 在老という形での制限のあり方を見直すことも含めて、高額所得者に対する支給制限を 考えるべきではないだろうかというふうに思います。その場合の前提は、年金というも のが何であるかという性格認識による訳で、私どもは、加齢に伴って所得を喪失する、 これに対する補てん措置ということで、単に長生きをするリスクに対する補てんとは違 うのではないだろうか。つまり、公的年金というのはあくまでも労働者保険から出発を したという歴史的な経緯がありまして、その意味では労働者年金ということを性格の軸 に据えて考えるのがオーソドックスであろう、そのように考えております。  3番目の支給開始年齢でございます。これについては、65歳からさらに引き上げると いうことについては私どもは反対でございます。ただ、これまでのように、60歳一律定 年制ということをバックにして、年金は60歳支給開始と。何か国民全体のライフスタイ ルをこういう制度であるべきモデルケースを決めてしまうのがいいのかどうかというの は別の問題であって、60歳から65歳の間については、それぞれの労働者が自分の体調と か、その他の条件に合わせて、引退年齢というものを自分で選択を出来るような、そう いう柔軟性は全体としては確保すべきだというふうに思います。  今回いただきました資料1--2の2ページ目に付けていただいている「支給開始年齢 の実態(国際比較)」というところで、実際の制度上のフル年金支給の開始年齢と実際 に労働者が引退して年金生活に入る年齢との違いがこれでよく分かる訳で、スウェーデ ンの場合はちょっと粗いのでうまく説明出来ませんが、2ページ目のアメリカにしろ、 その上にありますフランスにしろ、あるいはカナダのケースにしろ、フル年金が受け取 れる65歳まで働き続ける人がいる一方、60歳を過ぎて直後に引退して年金を受け取ると いう人もかなりいる訳でありまして、我が国の場合には、むしろこの状況を日本の労働 者の健康状態あるいは雇用情勢と勘案して、そういう条件を確保するということが支給 開始年齢にかかる、つまり雇用と年金との接続という観点でこのことを重視すべきだろ う。そういう意味から言えば、65歳をさらに引き上げるといったような議論は暴論にす ぎないというふうに思うところでございます。 なお、最後の総報酬制につきましては、前回、労使各側から賛成意見と慎重論、ある いは極めて強い慎重論と両方出されているところでございます。私どもも、また内部で これについては検討をもっと深めなければいけない。単に総報酬制にすれば公平性が増 すという問題だけで単純に割り切れることではないのではないだろうか。特に年金の場 合は、医療と違いまして、保険料の徴収ベースというのは給付に関わることを免れない 訳ですから、特別保険料であれば無視してしまってもいいのかもしれませんが、総報酬 制になれば、給付について相当慎重な検討を要するだろう、このように考えております  なお、今日いただいた1--2の資料の一番最後に、労働省の高年齢者就業実態調査が 付いておりますが、就業する理由として、経済上の理由というものが非常に大きな割合 を占めているということは是非御留意いただきたいと思います。これは、別に現在の年 金水準が不十分だということを必ずしも言いたいのではありませんが、この実態と、そ れから60歳代の前半層・後半層いずれにとっても、我が国の、特に男子の場合に、海外 と比較したときに、その就業率が際立って高いということと、このデータとは併せて理 解をされるべきものではあるまいか、そのように考えます。どうもありがとうございま した。 ○B委員  1点、前回議論が済んだところですが、総報酬制の件でもう一度お願いでありますけ れども、私は使用者側としても総報酬制については非常に慎重にお願いをしたい。 特に表現につきまして、例えば保険料をごまかすために賞与の部分を上げている、こう いうような表現がありましたけれども、私どもの会社はそういうことはありませんし、 恐らくそういうことをしている一部の会社はあるかもしれませんが、現在の賞与と月例 賃金の比率というのは、必ずしも大手の製造業、いろいろな会社を含めまして、そうい う観点から賞与の比率を上げているところは少ないのではないかと思います。したがい まして、表現については、公平といっても気をつけなければいけないと思います。  ちなみに、総報酬制にしますと、私どもの会社だけでも1社で10億円の会社としての 持ち出しになります。したがいまして、恐らく日本の産業界でも会社として相当な持ち 出しになりますし、その分の個人の負担も今までに比べてかなり増えるということがあ りますので、そういう意味では、結論がどうあれ、表現については慎重にお願いしたい というふうに思います。以上です。 ○C委員 私はA委員とはちょっと意見が違いまして、支給開始年齢の問題というのはそう暴論 ではないんじゃないかというふうな気がしているんです。御承知のとおり、日本の平均 寿命は世界で一番長くなっているし、これからも延びると言われている。支給開始年齢 は先進国の中では現時点では一番低い訳ですね。やっと2001年から13年にかけて65歳に 上げていこうと。こんな国が将来、年金の財政がもつ訳ないと思うんです。しかも、少 子化が一番進んで、生産年齢人口が少なくなるのですから、65歳に上げるスケジュール が決まっただけで、まだ現に60歳である。そのスケジュールも、いろいろ経過がありま して、私もこの問題の難しさはよく知っていますけれども、端的に言って、少しテンポ を速くする必要があるのではないかという気がしております。私は、何もすぐにこれを 65歳とか、あるいは67歳ということは無理だと思いますけれども、少なくとも今のまま でいいということは絶対に言えないんじゃないか。やはりテンポを速くするということ は最低限考えなくてはいけないし、アメリカでも67歳にしようとしている計画をもう決 めている訳ですから、日本の場合はアメリカよりはるかに早く高齢化が進むので、これ は、せめて67歳ぐらいに引き上げるということを視野に入れるべきじゃないか。場合に よっては既に70歳という議論も出ているようですけれども、私は、70歳でもそれほど暴 論じゃない、将来は老齢化がピークになる2025年とか30年とか、そのぐらいは場合によ っては70歳ということも考えておく必要があるんじゃないかというふうに思いまして、 これは恐らく今度の審議会の中で、どこまで出来るかは別にして、一番議論を深めるべ き問題だというふうに思います。 ○A委員 幾つか御理解をいただきたいと思う問題がございます。いずれもかなり長期にわたる テーマということになりますが、一つは、日本人の寿命が非常に速いテンポで延びてき た。そして、現在は世界トップにある。これは事実でございますけれども、元気で働け る年齢、いわゆる健康年齢というものが延びているかというと、必ずしもそうではない ので、これは専門家によっていろいろな説がありますが、最近ではむしろ逆に健康寿命 というものが短くなる兆しさえある、このように言われております。これは、あくまで も雇用労働者を前提にいたしますれば、問題は、先ほど言いましたように、私どもの年 金に対する認識は、加齢に伴って労働能力を喪失し、あるいは所得を喪失することに対 する補てんという位置づけでございますので、心臓が停止するまでの時期が問題ではな くて、元気で働ける期間が我が国の労働者にとって平均的にどのようになっているかと いうことがまず前提だろうと思います。そうでないと、病身に鞭打って働かざるを得な いという悲惨な将来像、これは我が国の望ましい将来像だとはとても思えないでいる訳 でございます。 それからもう1つ、アメリカの例をお出しでございますが、雇用慣行における日米の 違いの問題について私どもは大変関心を持っております。我が国の場合は、御案内のと おり、多くの企業が一律定年制を導入しております。この一律定年制が55歳から60歳へ かなり長い期間をかけて大方引き上げられたのは、つい数年前と言うと大げさですが、 極めて近年のことでございますし、法律上、60歳未満の一律定年制が違法であるという 措置がようやくとられる段階になったばかりのところで、これに対してアメリカの場合 には、御案内のとおり、年齢差別禁止法という考え方で、年齢のみを理由にした解雇と いうのは認められていない。もちろん、逆に言うと、ほかの解雇要件というのは日本よ りもハードな面が多々ございますけれども、少なくとも、現在ここで話題にしている年 齢に関して言えば、その意味で本人の働く能力と意思があれば、年齢だけをもって一律 に排除することは出来ないシステムでございます。そしてまた、現実にアメリカの労働 者は、現在の65歳の制度のもとでも、60歳をわずかに超えた程度のところで、特にブ ルーカラーの場合には多くが年金生活に移行している。このことを御勘案いただくよう にお願いをしたいというふうに思います。以上です。 ○D委員 ちょっとコメント的な話になるのですが、追加資料の支給開始年齢の国際比較の棒グ ラフがありますが、非常に興味のある比較ですけれども、ただ、これは人数だけを取り 出しておられて、若年支給による年金額の減額という要素はこの表にはあらわれていな い。例えばアメリカでございますが、65歳が標準の支給開始年齢で、それよりも3歳若 い62歳から確かに受給可能でございます。ただ、62歳を選択しますと20%減額される。 1年につき6.67%の減額があるということはこの表には出ていない。 ○事務局  5ページの方に出ております。 ○D委員  後ろの方へ出ているんですね。  それから、フランスの場合の見方は、このほかに拠出期間の要件がございますが、こ れも確かに5ページに出ていますね。37.5ヵ年という条件だったのが、大分財政が苦し くなったものだから、これをたしか40年に引き上げたといったようなことをしておりま して、支給開始年齢の問題と年金財政が苦しくなったからどうするかという問題とは非 常に密接な関係があるということだけは1つ申し上げておきたいと思います。 ○事務局 先ほどB委員の方から総報酬制を導入しますと10億円持ち出しになるというお話がご ざいましたけれども、総報酬制というのは、あくまで現行制度に対する中立性というの が基本にある訳でして、つまり総報酬制を導入いたしますと、負担につきましては負担 のベースが広がる訳ですので、当然、保険料率を引き下げる、こういう措置を併せて当 然講じる訳です。したがいまして、総報酬制になったから負担が急に増えるということ は総報酬制の導入論者も誰もそんなことは考えていない訳でして、そういう御懸念は当 たらないんじゃないか。 それから、総報酬制を導入いたしまして保険料を取られるだけということだと、これ また非常にけしからんということになる訳ですけれども、これは給付にもちゃんと反映 させましょうという議論が多い訳ですので、どういうぐあいに反映させるかというのは 慎重な検討が必要ですけれども、給付と負担両方に反映させようということで、総報酬 制の導入が言われている訳です。 それから、前回、ボーナスというのは業績によって非常に不安定じゃないかという御 議論もございましたけれども、ボーナスが減ると、それに応じて保険料負担も減る。そ れからまた、給付に反映される度合いもそれだけ減るということで、ボーナスが増えた り減ったりするというのは、今の給料が増えたり減ったりするのと全く同じことでござ いまして、ボーナスが不安定だから総報酬制の導入はおかしいという議論にはならない んじゃないかということでございます。そのあたりは、制度を大幅に変える訳ですので 当然慎重な検討が必要な訳ですけれども、現行制度に比べて総報酬制を導入した場合に は、現行制度に対してあくまでも中立的な仕組みとして導入する必要がある訳でござい まして、そういう点からいたしますと、いろいろ出ている御懸念は工夫次第で十二分に 解消出来る訳ですので、そういった心配は当たらないんじゃないかという気がいたしま す。 ○E委員 今の総報酬制の話ですけれども、現実に総報酬制で何か技術的に本当に公平な決め方 というのはあるのだろうかと私は私なりにいろいろ考えてみたんですけれども、なかな かうまくいかないんです。ですから、やはり賞与というのは、産業界全体で仮に安定し ているとしても、個々の企業で非常にばらつきがあるし、さらに個人になると、そのば らつきが一層大きくなる訳です。 例えば、これは私の会社の例でございますけれども、55歳を過ぎると賞与が急激に減 る。 会社の仕組みがそういうふうになっておりまして、55歳を過ぎると部長の賞与が課長よ りずっと低くなるというような格好になっております。比率で見ると、ものすごく大き く減る訳でございます。そうすると、総報酬を基準にして何か決めるということが非常 に多いと思うので、実際に出来ないんじゃないかというふうに思っております。技術的 に解決されるめどがない限りは総報酬制というのは無理じゃないかというふうに私は考 えております。以上でございます。 ○B委員 この前、M委員も申されましたけれども、私、総報酬制について議論をされることは やむを得ないというふうに思っております。ただ、先ほど申しましたのは、誤解もある かもしれませんけれども、総報酬制の公平についての表現は誤解を生まないようにひと つ気をつけていただきたいということ。それから技術的にも、今、E委員がおっしゃい ましたように、私どもの会社としては、年金保険の負担をどうするということとは関係 なく、賞与のウエートをむしろばらつきを大きくしようという人事給与制度をとろうと しています。これは、産業界でかなり大きくの企業がそういうことをとろうとしており ますので、その意味で、その辺の実務的な手法についても慎重に御検討願えればという ことです。 ○F委員 議論の仕方についてでございますが、一応、この全員懇談会の中でとりあえず全体を なめて、全体のいろいろな意見を出すというところが今、中心の議題ではないかと思っ ております。そういう中で、総報酬制の取り扱いについてはちょっと異質に、一歩前に 出た意思統一みたいなものに受け取れる面もありますので、ワン・オブ・ゼムの問題と して、前回の議論もありまして、前半は慎重論があり、後段は少し積極論というような ことで前回も終わっている訳ですが、組合でも、組合員に向けて、総報酬制とは一体何 だ、どこがどう違うのか、何が意味があるのか、勉強不足もありましてピンとこないと いうところがまだまだあります。見方によっては単なる数字を低くするとか、あるいは 負担を多く取る法律じゃないかみたいな議論も出てきますので、組合としても、少し慎 重にしっかり勉強もしながら、みんなにしっかり理解をしてもらう中で、どういった判 断をするのか。 そして、いろいろなパーツの問題がありまして、トータルの設計をこれからどうするの か。 いよいよ判断の議論を来年以降行っていくだろうと思いますけれども、その中で慎重に この問題も一緒に取り扱っていただきたいというふうに思っております。 ○G委員 A委員の方から最初にお話があった点で、ちょっと質問をさせていただきたいんです が、4点ほど最初にお述べになりましたが、2点目で在老制度を見直す中で高額所得者 への支給制限を考えるということをたしかおっしゃったと思います。これは、私も前回 そういうふうに申し上げたので賛成なんですが、そのことと3点目でおっしゃった65歳 以上への引き上げはまかりならんということとの関係が私にはちょっと理解しにくいん です。労働組合というものの立場上、現在の組合員の意見というものが最大限反映され なければいかんという御事情は十分分かるんですけれども、年金の問題というのは、現 在の組合員だけに関わる問題ではなくて、日本の将来の働く者全体に関わる問題で、言 ってみれば、将来の組合員と現在の組合員との間の利害の調整をどうするかという、こ れは非常に難しい問題なので、現に組合費を取っている人の意見を6割方反映しなけれ ばいかんという事情は十分に分かる訳ですが、それがかえって将来の組合への加入率を 下げたり、組合への社会的な信頼を損なったりすることも十分にあり得る訳なので、是 非その辺の将来の勤労世代とのバランスということをもう少し考慮に入れていただく必 要があるのではないか。  ですから、可処分所得スライドについてのお話は、それはそれなりに分かりますが、 私は、ほかの国の給付水準との比較等も含めて、物価スライドは当然続けるべきだと思 いますが、賃金スライドを可処分所得スライドでやるという方式が果して持続可能なの か。出来れば望ましいに決まっている訳ですが、それが世代間の負担の不平等を著しく 拡大し、将来の勤労意欲に非常に大きな影響を与える。年金制度そのものにも危険を及 ぼす可能性が大きいということになれば、やはり別の考え方もせざるを得ないのではな いか。これは私の感想です。  それから、総報酬制の問題ですが、いろいろ御指摘がありましたし、既に議論もされ ていますが、やはり日本のボーナスの比重が非常に大きい。大企業では年収の3分の1 ぐらいになっている。6ヵ月以上出しているところもあるというような状況の中で、や はり保険料率の負担の逆進性という不公正さが問題の出発点だと思うんです。負担の大 きさの問題じゃなくて、逆進性を是正しないと、世代間の不公正も問題ですけれども、 世代内においても、日本は税はずいぶん公平な国だとは思います。いろいろな問題はあ るにしても、負担の公平はいろいろな面でいい方だとは思いますが、やはりボーナスの 逆進性というのは非常に問題が多いところだし、それから、保険料率の水準を議論して いるときに、国際比較をする際に、今の34.3%というのはボーナスを除いた保険料率で 言っているから非常に大きく出る訳ですね。ですから、ほかの国は13ヵ月目の手当があ る国もあるけれども、日本のように大きな比重でやっている訳ではない訳ですから、や はりほかの国との負担を考えるベースとしても、総額報酬制は少なくとも議論の際には きちんと念頭に置いてやるべきではないか。 ボーナスは確かに景気変動による変動が大きいし、能力給、査定による変動幅も大き くなっていることはそのとおりだと思いますけれども、われわれがいろいろ数量的に分 析してみると、そういう景気変動や利潤の変動に対応して変動する部分に比べて、生活 補給金的な沿革から言って、固定的な部分が非常に大きいんです。これは計算しようと 思えば計算出来るので、全部を入れることに無理があるなら、そんな計算でもしてみて 6割ぐらいは固定的部分であるというなら、とりあえず半額とか何かを繰り入れるとか 折衷的な考え方もあり得るのではないか。  それともう1つですが、健康寿命という大変重要な御指摘がA委員からありましたが 私も最近、お医者さんの書いた本を見たらそういう言葉が出ていて非常に面白いと思っ たんですが、確かにその本では健康寿命が下がっているように数字が出ております。た だ、私、健康寿命というのは正確にどうやって計算するのかよく分からないので、もし 厚生省の方でそういうデータが取れるなら、60歳以上の1歳刻みの生存確率と併せて、 健康寿命なるもののもう少し正確なデータをお示しいただければありがたいと思います ○D委員  総報酬制について、これはデータのお願いですけれども、支給開始年齢の方では制度 及び実態について国際比較のお示しがあったんですが、年金給付と負担の基礎になる給 与がどういう仕組みで出来上がっているかという国際比較は、これは制度的な面の方で 結構だと思うんですが、ひとつ分かる限りのことをまとめて出していただきたい。  特に、私の記憶に誤りがなければ、日本のとっている標準報酬制度は、むしろ世界的 に見て非常に稀なケースでございまして、かつて発展途上国ではそういうところがある というふうな話を聞いたことがありますが、最近のコンピュータの発達によって、ああ いう仕組みでなくても、もとの給与指標を直ちに年金の方の拠出と給付の基礎に使える こういうことが可能になっているはずですから、世界中でどういう仕組みがあるのか。 特に日本と同じような等級でくくるような仕組みをとっている国があるのかないのか、 これをひとつお願いいたしたいと思います。 ○H委員  今、若い人たちが年金の将来について、もらえなくなるんじゃないか、あるいは崩壊 してしまうんじゃないかということを大変心配をしているようです。私は、そういう点 は余り悲観的な報道はしないようにしてもらいたいと思っておりますが、1つは、制度 をどういうふうにみんなから信頼されるようにしていくのか。その制度の継続性をどう やって安定しておくかというのは、極めて大事なことだと思っております。そういう点 を踏まえながら、負担を増加させるとか、給付の制限をするというのは、その範囲の中 でやられるべきものであって、余りそれ以外のことについて突然大幅な改正を加えると いうようなことはしない方がいいというふうに思っております。  そういう点で、先ほどC委員からお話がありましたように、例えば支給開始年齢を少 し前倒しにしてしまおう、2013年まで待たなくてもいいじゃないかというような御意見 は、その制度の中で考えてしかるべきことだから、私はC委員がおっしゃることについ ては賛成をしたいと思っております。ただ、どちらにいたしましても、この年金制度を 保つためには、財政を全く無視する訳にはいきませんから、そういう点も考慮しながら 考えていくべきじゃないかというふうに思っております。 ○I委員 私は、総報酬制について、これは非常に小さい点ですが、要するに日本の企業がなぜ ボーナスのウエートを高くするかといいますと、私の経験的なことで言えば、日本の業 種別にかなり違うんですね。要するに、大学の卒業生が一時期どこへ就職したかという と、ほとんど金融機関です。私は、そのとき冗談で学生にも言ったんですが、「金融機 関はそのうちおかしくなるから」と。そのときに金融機関はどういうふうにしているか というと、ボーナスの比重がものすごく高いんです。確かに証券会社などは業績が非常 に変動しますから、ある時期すごく儲かったときに、ものすごいボーナスを出すという のは分からない訳でもないですが、やはり賃金の差をどこで修正しようとしているかと いうのは、結果的には、かなり待遇のいい会社が従来は金融機関に集中していたと思う んですけれども、そこがボーナスをものすごく出すんです。そういうことがあって、 メーカーさんは事情がかなり違うというふうに私は思いますけれども、その辺の微妙な ことがあって、ボーナスというのは、私は金融の専門ですが金融機関にそれほど好意的 でもないんですが、やはり護送船団方式の中でうんと儲かるところがあって、そこは猛 烈にボーナスが出ている。 だけど、エコノミストとしては、その状況がいいかどうかというのは、今、事態は変わ りつつありますから、それは簡単ではないですが、そういう側面がある。ですから、そ ういう意味では、年金というのは賃金の水準に対してそれぞれある一定の比率で支払う べきであるということであれば、そこの部分は基本的には少しおかしいんじゃないかと いうふうに思っていることは確かであります。  あとは、定年制の話も非常に微妙な話で、どこかで引用いただいておりますが、大蔵 省の財政金融研究所というところで雇用の話と高齢化の話を少しやりましたときに、い ろいろ話を伺いましたが、この問題は相当複雑で、そのときは、どちらかというと大企 業のホワイトカラーを中心に議論をしておりました。そうしますと、今の大企業という のは、65歳定年でも、とにかく基本的には55歳定年ぐらいのつもりで雇用の管理をして いまして、ホワイトカラーの人はどんどん早く出向してほしいと。出向のケースもいろ いろありますけれども。それから、実を言うと、退職年金とか、あるいは年金の設計も いろいろ具体的なケースを聞きましたけれども、単純に言えば、労務担当者の御意見は 会社にいてほしくない人だけが残ってくると。要するに、評判のいい人はどんどん先に どこかへ行ってしまうし、子会社でも「是非来てください」と。だから、そういう非常 に微妙な問題があるということが1点です。  それから、もう1つの問題は、中小企業というのはどうなっているかというと、中小 企業は定年制はあるといえばあるのですが、結局、ある部分は大企業から出た人が、中 小企業が受け皿になっていまして、そこの部分は、はっきり定年制があるかないか知り ませんけれども、恐らくその部分の人々の問題というのはある意味では非常に重要で、 60歳以上で大企業で雇われている人はある意味では極めて例外的である。残りの人は、 実を言うと、ほかの会社へ移っている訳で、ほかの会社でどういう待遇を受けて、年金 の計算が、多分そこで給与は下がるでしょうから、その辺のところをどうするかという 話がかなりありまして、要するに退職のところと年金の関係というのは、やはりホワイ トカラーであるか、ブルーカラーであるかどうかというのがある程度関係します。それ から、今言ったように、実質的に本当はどうなっているのかというのは、それも大企業 と中小企業では相当違っている。その辺の実情は、別に年金がそういうことまで言う必 要はないということはそうなんですが、背後に退職の年齢の話はそういう問題が相当あ りまして、余り変なことにならないように仕組まないと、それこそ年金は全体の年金で すので、そういうことをちょっと考えています。ですから、わりあいと複雑な問題があ って、労働者一般をパッと切って、全体がこうなのでこうしますという平均像はここの ところは適用しにくいといいますか、平均像でやると、多分いろいろ違いがある人がず いぶんいて、どうしますかという話になってくるんじゃないかという気がして、その辺 は留意点として必要な点じゃないかと思います。 ○D委員 I委員のお話で思い出したんですけれども、実はこの総報酬制の問題は、私も前回も 申し上げたように公平という観点から議論すべきであって、これによって負担が増える とか減るとか、あるいは年金財政が助かるとか助からないとか、それは二の次の話だろ うと思うんです。そこで、一番大切なのは、総報酬制にしても、やはり報酬上限という 観念は残る訳でして、現金給与はすべて対象にするというふうにしても、やはり上限と いうものが要るわけですね。その上限を一体どのあたりで設定するのかということが、 先ほどB委員のお話がございましたけれども、それと大きく関係してくる訳でございま す。そこで、各国とも大抵、平均賃金の何倍とか、あるいは最低賃金の何倍というのを 報酬上限にしておる訳ですが、先ほどの資料のついでに、上限がどういう考え方で設定 されているのかというのも付け加えていただきたいと思います。  それからもう1つ、これはB委員の御心配と関連する問題ですが、国によっては企業 負担の方は総人件費という形でもって対象にする。本人の方は上限で切るといったよう な国もある訳でございますね。こういうところは、確かに総報酬制にして、かつ事業主 負担の方は上限なしということにいたしますと、これはいろいろインパクトが出てくる 訳でございます。いいインパクトか悪いインパクトか、これは判断によってさまざまだ ろうと思うんですけれども、そういう点も明らかになるような資料を出来ればお願いい たしたいと思います。 ○B委員 G委員、I委員、D委員、皆さん、いろいろ微妙な難しさをお分かりの上で御意見を 言っていただいているので、そういう点をいろいろ配慮して、説明の仕方及び制度の設 計のところはきめ細かに配慮していただければ納得がいくんじゃないか。そうでないと 逆に、原則は非常に公平だということがあっても、誤解されるおそれがあるということ じゃないかと思いますので、先生方の御意見は私はもっともな御意見だと思います。 ○A委員 総報酬制の問題について簡単に現段階の意見だけ申し上げて、具体的な検討はこの後 深めていただくようにお願いしたいと思うんですが、現在の標準報酬月額制でも上限は ある訳ですよね。かつ一時金は給付のベースからは除かれている。この結果として、在 職中の年間総賃金に対する年金の受給段階での格差というのは、相当程度圧縮されてい る訳でございまして、この圧縮の役割というのを年金制度上どのように評価するのか。 私どもは、働いている時期の賃金と仕事を離れたところでの年金との間には当然、格差 の圧縮が働くべきだと思いますし、この圧縮の仕方について、総報酬制を導入した場合 に、その圧縮機能というのは大きくなるのか小さくなるのかということをもう一つの判 断軸として入れての検討をすべきではないだろうか、そのように思います。 その意味では、年金に関して総報酬制をとる場合、これは給付に反映するということ が医療の場合と非常に大きく違うところでございまして、場合によっては、現在の制度 から言うと大変煩雑になるかもしれませんが、同じく社会保険といっても、医療と年金 とは切り分けて議論をすることも念頭に置くべきではないだろうか、そのように思って おります。 ただ、実際の技術的な煩雑さは私どもなどが言うことではありませんが、作業をやる方 のことを考えますと、毎月毎月、実額で放り込むというふうなことをやったときのイン プットの回数は多分ものすごく増えるだろう。今の標準報酬月額制というのは、一回決 めてしまえばそれは1年間通用する訳ですので、そこでの事務量はやはり増える可能性 はあるかもしれない、このような点を考えております。ただ、医療に関しては、この テーマではありませんが、私どもは総報酬制にかなり傾いております。年金に関しては かなり疑問でございます。  それから、先ほどG委員の方から幾つか私の発言について御疑念が出されてございま す。直接お答えすることになるかどうかよく分からないんですが、私どもは全体の財政 の問題は非常に重要な問題だと考えております。この点については、H委員がおっしゃ ったように、現在の若い世代が、自分たちが受給年代になったときに確実に受給出来る のかどうか、この信頼感を損なわず、むしろ強化する議論が当審議会にはまず求められ ているのではないだろうか。何か最近の年金をめぐる議論というのは、60年改正の前後 からそうですが、要するに公的年金は将来は危ないぞといったようなある種の危機を煽 るがごとき言説が余りにも多くて、当審議会の審議内容が新聞で報道される場合でも、 しばしばそういうオリエンテーションの中で活字が躍る。このことを非常に注意をする ということは当審議会委員として私自身が非常に注意しなければいけないと思いますし 全体の責任でもあろうかというふうに思います。 そういう観点で言いますれば、財政問題を無視してこのことを議論する訳にはとても まいりません。その財政の問題から言った場合に、私どもは一つのトレードオフ関係を 考えました。これは支給開始年齢の問題ないしは全体の給付水準の問題と、それから高 額所得者に対する給付制限の問題でございます。公的年金ですから、少なくとも必要な 人に必要な水準が確保されるということがまず共通に押さえられるべき出発点ではない だろうか。その意味で言えば、御本人の努力も含め、あるいはさまざまな幸運も含めて 公的年金の支給が全額なくても暮らしに困らない方々と、他方では、60歳を過ぎてかな り過酷な労働の結果として、実際には働きたくても働けない条件に置かれてくるような 人たち等を仮に考えるとすれば、それはやはり後者を優先した制度設計がなされるべき だろう。その意味で、現在の在職老齢年金について言えば、わずかでも収入があれば直 ちに2割カットで、そこからかなり厳しい制約が課せられる。65歳を過ぎれば一切お構 いなし。これは、1つの厚生年金自体についての問題でありますし、先ほど御報告があ りました共済で、つまり公務員として支給開始年齢まで働いてきた方が、その後、民間 の職場へ移られたときの制約については、1年前の、しかも、これは収入ではなくて所 得ベースですから、その意味では、時期的にも、また制約もかなり違います。あるいは また、企業の役員とか、ほかの資産収入とか、こういう方々についてはほとんどノーカ ットというのは明らかに不合理であって、その意味では私どもは、先ほどの総報酬制と は違いますが、総収入を念頭に置いた収入に対して、公的年金に関しては前職が、官の 職場であろうが、民の職場であろうが区別なく、それから65歳を挟んで年齢の区別もな く、一律の給付制限を課すことによって財政対策を図り、そのことを必要な労働者にと って60歳代の前半から必要な年金が給付されるようにすべきである、このように考えて おります。以上です。 ○J委員 前回欠席しておりましたので不十分なところがあろうかと思いますが、今、A委員が おっしゃった高額所得者に対する年金の制限は私は基本的には反対をしたいと思います 高額所得者は当然それまでにも税金を払っている訳ですし、あるいはまた、社会保険料 も高い負担をしている訳でありますから、年金と公的扶助とは性格が違う訳で、年金の 場合、所得の再分配という機能はそれほど強くなくてもいいのではないかというふうに 私は考えております。高額所得者に問題があるとするならば、それは税制できっちりと 税金の部分で取ればいいのであって、年金をカットするということになる場合は、高い 年金の保険料を払いながら、なおかつ高額所得者だったがために年金がもらえなくなる というのは、ちょっと抵抗がある方がいるんじゃないかという感じがいたします。  それから、総報酬制ですが、高齢者で働いている人などの事情を聞きますと、月給が 高いと年金がもらえないということで、高齢者の方から給料を低くしてもらって、その かわりボーナスで色を付けてくれというような形での働き方をしている方も現実に何人 か知っております。そういう意味では、やはり総報酬制を導入するということは当然の ことではないかというふうに私は考えております。  それから、支給開始年齢を前倒しにするというのも財政上必要というC委員の御意見 ですが、前倒しをした場合に、財政効果が一体どのぐらい出るのだろうかという試算と いいましょうか、そういうめどが何か数字で出てくれば、より説得力があるのではない かと思いますので、その辺の資料があれば教えていただきたいと思います。  それから、最近、経済審議会のパンフレットを見たんですが、「破局のシナリオ」と いうようなタイトルで、現状のままでいくと日本はパンクをするという、まさに年金・ 社会保障制度が日本をだめにするという視点でのパンフレットが出されているんです。 確かにそういう見方も一方であるにしても、どなたかおっしゃいましたけれども、日本 の年金制度が直ちに現状のままでパンクをして、医療保険も払えない、年金も払えない そういう状況になるというのは余りにも極端な議論でありまして、まさに国民に対する 不信感を煽るだけでありますから、そういった意味でも、やはり慎重な意見を年金審議 会ではすべきではないかというふうに思います。以上です。 ○E委員  前回からずっと伺っておりますと、当然、給付が中心だった訳ですけれども、今回も 給付をめぐっていろいろ意見が多い訳です。今日のテーマは主として負担についてとい うことで、負担ということになりますと、資料1--1の10ページにグラフが載っており ますけれども、これに端的に内容が示されている訳でございます。結局、今のような給 付を続けるということになると、これは賦課方式による保険料になる訳ですけれども、 最終的には平成67年度には39.8%。所得の40%が保険料負担になる、という極端な数字 が出ている訳です。それで、34.3%という今回出ている数字ですけれども、これでいく と、少なくともそこの差額の 5.5%だけは積立金から出る利息で賄えるという数字にな っている訳ですね。 もう1つ、今、一挙に平準保険料に上げてしまったらどうなるかというのがその下の 30.4%。それでも30.4%ということになる訳で、どうしても今の水準の年金を給付して いくんだと。額についても、年齢についても、その他もろもろ現在の水準を保つという ことになりますと、どうしてもこの30.4%と、上げていくとしても34.3%、さらには、 もっと賦課方式に近づくということになると39.8%という保険料を将来の世代が負担し なければいけないということになる訳です。この34.3%というのも、考えてみると、大 変な保険料だと思うんですけれども、20万円の給料をもらうと、3万円以上が年金保険 料で消えていく。 30万円の人は8万円ぐらいになってしまうというようなことで、これは、そのときの世 代が負担し切れない、負担するのは嫌だということになってくるのではないかという気 がいたします。  だから、やはり給付の水準を現状でということでいくならば、段階保険料には四つの 条件がございましたけれども、これはたしか 2.5%ずつ引き上げていくという形になっ ていると思いますが、この引き上げ幅をもっと大きくして手前で大きく上げる。そして 34.3%よりは低くなるように保険料を設定するということがどうしても必要になってく るだろうというふうに考えております。ですから、その負担がもし非常に過酷で大変だ ということならば、どうしても何かの方法で給付を引き下げることを具体的に考えてい かなければいけない、そういうことになるだろうと思います。以上でございます。 ○K委員 年金の支給開始年齢に関してですけれども、老齢年金の支給開始年齢65歳における 平均余命を1947年と1995年と比較しますと、男子は 10.16年から 16.48年に 6.3年延び ている訳です。1960年と1995年との比較では、男子4.9年、女子6.8年延びています。女 子の方は、12.22年から 20.94年に 8.7年も延びている訳です。このことは、法律上の 給付と拠出を前提としますと、年金財政の収支をバランスさせることの出来る均衡退職 年齢というものを考えた場合に、それの引き上げを意味すると思うのです。これは、既 に前回の改正で織り込み済みというふうにとらえてもいいかもしれません。65歳を越え てということになるとまた議論があるかもしれませんけれども、老齢年金支給開始年齢 における平均余命が女子では 8.7年も長くなっているというのは、先ほど健康寿命とい うお話もございましたように、確かに元気で働ける年齢はどうかということになると、 またそこは検討する必要があるかもしれませんけれども、年金支給開始年齢における平 均余命が延びているということは考慮する必要があるのではないかと思います。 それから、最初に御説明がございました国民年金の負担についてでございますけれど も、未加入者、未納者、未届け者が多いということで、具体的な数字は挙げられません でしたけれども、社会保険庁の調査によると、前回調査よりは未加入者とか未届け者が かなり大幅に減少したということで、これは国年担当のスタッフの方たちの御努力によ るものだろうと評価出来ると思います。20歳を越えた大学生とか専門学校の学生等の未 加入率ですけれども、これはかなり改善されたとか、あるいは免除の届けをしている者 が多いということでございましたが、私も大学で社会保障を担当しておりまして、いつ も年金のところでは、20歳から加入しなければいけないということを話して、「この中 で入っている方はどのぐらいですか」と先週も聞いたのですけれども、 100人ぐらいの クラスで手を挙げる人は2人なのです。地元の実家の親が免除届を出しているとか、あ るいは黙って加入しているということもあるかもしれません。文科系なので年金のこと はある程度理解していると思うのですけれども、3〜4年生ですから当然もう20歳を越 えている訳です。 100人ぐらいで2人しか手を挙げないのに、この調査では学生の未加 入率がかなり減って、11.5%になったという結果が出ているのですけれども、それを見 て、実態はどうかなというふうにちょっと思ったということがある訳です。  それから、3号被保険者の未届け者も、かなり減っているということです。しかし、 何百万人も未加入、未納、未届け者がいる訳ですね。特に派遣労働者では、年金に半数 しか入っていないということですね。派遣労働者の場合は、確かに無職者になったりサ ラリーマンになったりと行き来をしているので、届けが厄介だからということもあるし 世帯主の被扶養者になった形になっていれば保険料を出さなくてもいいということがあ って、 1,200万人の3号被保険者のところに入っているケースもあると思います。それ から、パートタイマーも就業調整をしている訳ですね。被扶養者認定基準の中で働こう という人もいるということです。私は大学生に教えていて、もっと高校あるいは中学ぐ らいからの福祉教育の必要性をつくづく感じます。年金の機能であるとか、役割である とか、将来の生活上のリスクに対して、こういう手厚い保障が行われるというようなこ とをもう少し認識させる必要があると思います。60年改正までは年金が世帯単位だった 訳ですけれども、60年改正以降は、一応、給付の面では個人単位になって、女性も年金 権が与えられて、これは大変な改善だったと思うのですけれども、ただ、拠出の方で、 保険料を掛けなくてもいい仕組みになっています。やはりこれはもう一歩進んで、拠出 面についても、完全に年金のシステムを世帯単位ではなくて、個人単位に組み替えて、 先ほど言いましたように、年金制度の意義などをきちんとそれぞれに認識させて、要件 を満たしている人はすべて年金制度に加入する仕組みにした方がいいと思います。  それからもう1つは、公平の視点から、派遣労働者とかパートタイマーも実際には就 労している訳で、そういう人たちの就労を抑制するような形の制度の仕組みを見直して いくべきだと思います。この会議でも、世帯単位から完全な個人単位の年金システムに という検討を付け加えていただけたらというふうに思います。 ○事務局  今の問題は、実は次回に3号の問題などを御検討いただこうと思っておりまして、そ のときに詳しく資料を提出いたしますし、御議論いただきたいと思います。 ○G委員  高齢者の年金の給付の制限の問題との関係で、出来たら資料をお願い出来ないかと思 うんですけれども、ほかの国については、私はわりにリプレースメントレートの統計を 見たことがあるのですが、日本のオフィシャルなリプレースメントレートの統計という のはほとんど見たことがない。多少見たことはありますが、本当に正しいのかどうかよ く分からない。それで、これは今まで計算がしにくかったのか、公表しにくいのかよく 分かりませんが、コンピュータ化が進んでいるから、サンプリングでもすれば出せない ことはないんじゃないかと想像しているんですけれども、やはりリプレースメントレー トの国際比較をある程度やらないと、私の不完全な知識の印象では、日本の高額所得層 というか、平均以上の所得層のリプレースメントレートは非常に低いという印象を受け ているんですが、間違っているかもしれません。  そうだとすると、A委員がおっしゃったように、これは標準報酬制の影響もあるのか もしれませんが、そこのデータをきちんとチェックした上でないと議論が非常に不完全 になるのではないかと思いますので、出来ればお願いしたい。 ○I委員  御議論を伺っていますと、公的年金の役割というのはどの程度にすべきかという基本 的な問題が隠されておりまして、ですから、年金審議会で将来像というものを描くとき に、それはどういうことかというと、多分、私的な年金とのバランスといいますか、要 するに個人年金、企業年金がある訳ですが、とにかく公的年金を充足して、全体の生活 保障を相当程度やるか、あるいはある程度にするか、その辺の選択がかなり重要である ということは、逆に言うと、公的年金以外のいろいろなやり方がある訳で、そこのとこ ろは高額所得者とか、そういう人をどういうふうに考えるかというのは、ドライに考え て、所得がたくさんの人は個人年金とか、そういうものを活用してやったらどうですか と。公的年金は大体ここまでの程度は何とかしますとやや役割を限定した方がよい。そ うしないと、先ほど来の保険料の話とか、いろいろな問題と関わり合いがあって、大変 なことになる。公的年金以外にほかの生活保障の手段、個人年金とか、そういうことに ついても政策的にやるとか充実する必要があると思います。全体のバランスを少し動か した方が、将来像としては、余り悲観的な将来像にならないんじゃないかという気がす るということを申し上げておきたいと思います。 ○A委員  今、K委員の方から主として基礎年金部分に関わるお話が出まして、私どももこれは 非常に重要な問題だと思っております。次回のテーマということですので、今日は余り 深入りするつもりはございませんが、二、三御意見を申し上げたいと思います。  その前に、E委員から給付の水準の問題で、現在の水準の給付を続けるのだとすれば というお話がございました。この現在の水準というものをまず押さえることをきちんと しておくことが、すべての議論の出発点だというふうに私どもは繰り返し申し上げてき ました。現在の水準というのは現行制度が約束している水準ということで、これは昭和 60年以降、新年金制度に切りかわってから、今、着実な下方修正が進んでいるところで ございますし、前回、賃金スライド制から可処分所得スライドに切りかわったという問 題。それから、特別給付の中の定額部分の給付開始を65歳に引き上げるという問題等々 も含めた全体の現行制度が完成する時点、着地点は2013年というふうに今言われている わけですね。 したがって、現行制度のもとでの水準というのはあくまでも2013年水準であって、現 在の新規受給者がもらっている年金の水準ではない。これが、しばしば世俗的には誤解 をされる訳でございます。まず、現行制度の着地点での水準というものを、絶対額もさ ることながら、在職中の現役労働者の平均賃金に対してどのぐらいの比率なのか。いわ ゆる代替率のレベルでどのぐらいなのか。これも、先ほど言いましたように、両方とも 公租公課を除いた可処分所得ベースでどのぐらいなのか。このことをまずはっきりと数 字上、共通認識として押さえるところから水準そのものについての議論をすべきではな いだろうか、このように思っております。 それ以前に、現行で高過ぎるという議論がされる場合に、多くの場合には水準そのも のではなくて、財政バランスの問題で議論されていると思います。何か財政バランスの 問題だけが先行して議論されて、実際の給付水準そのものの議論が明示的にされないの は非常に危険な議論だと思いますので、その点、ひとつぜひよろしくお願いしたいと思 います。 それから2つ目に、高額所得者の給付制限の問題は私どもは一番いい策だとは思って おりません。J委員がおっしゃったように、あくまでも、これは本来は税制で担保され るべきものだということは、今年の初め、再開時点でその問題が御提起あったときにも 私どもは申し述べました。ただ、2年後の年金制度改正に当たって、現在の所得税制が 例えば総額課税であるとか、納税者番号制度であるとか、こういった公平性が担保され るような抜本的な税制改革がとても望めない段階で、次善の策としては年金側から一定 の対応行動というのがあってしかるべきではないだろうか、このように考えているとこ ろでございます。  そして、公的年金の役割ということについて、I委員から御言及がございまして、私 どもも全く同意見でございます。ただ、問題意識が若干違うかと思いますのは、ここで 平均像で議論することは非常に危険だと思います。むしろ、例えば企業年金を持ってい る労働者と、いない労働者、あるいは年金収入以外の収入の道を持たない多くの労働者 あるいは再就職の意思があっても現実の労働市場の動きの中でまともな就職の道がない 普通の労働者、こういう人たちを基準にして、いわば通常の市民生活を支えるための基 本的な部分は公的年金で支える。その場合の財政措置というものを積極的に工夫すべき だという問題意識であることをお断りしておきたいというふうに思います。  さて、基礎年金の問題につきましては、3号の問題がしばしば独立して取り出される 傾向があるというふうに懸念いたしますけれども、実は基礎年金制度そのものが60年制 度改正によって導入された当初の目的と、現在、実際にそれがどういう機能を果してい るのかという問題との対象から、基礎年金制度全体にわたる検討を是非とも次回出来る ような御配慮を年金局の皆さんにはお願いをしたいと思っております。現在のいわゆる 1号被保険者の実際の保険料納入状態というのは極めて危機的だと思いますが、むしろ 将来予測を見たときの定額保険料の引上額を見ますと、これは厚生年金における負担上 昇は率でございますが、こちらは額でございます。この額で大よそ倍になるという、こ の方が将来はるかに負担拒否を招く大きな要因ではないだろうか。そうなりますと、現 在、徴収の実践に当たっておられる方々の御努力にもかかわらず、将来については、い わゆる脱落というものが拡大していく懸念は非常に多い訳でございまして、そうなる場 合には、実際の受給者と拠出側といいますか、保険料を払っている側から申しますと、 いわゆる自営業者のOB、元自営業者の方々の受給者に対する受給内容を、実際にはサ ラリーマン側で一部というか、かなり負担をするという構造にならざるを得ない。  これは、産業構造の大きな変動に従って、親が農業その他であって、息子がサラリー マンというケースは現在非常に多い訳ですから、そのこと一般を否定しませんが、現役 の1号被保険者のところで脱落が非常に目立つ中で、2号の方の保険料によって1号の OBが支えられるということになれば、これは明らかに階層間の非常な不公平感を招く ことになりかねませんし、そのことが、ひいては2号の側での制度に対する不信感をも 誘発することになるというふうに考えます。一番大きい問題はここにあるように思いま す。3号の問題というのは、もともとは1号にあった任意加入のグループをこちらへ取 り込んだ、そして2号の中での再配分というふうに繰り込んだものですから、その意味 では、女性の年金権の確立という非常に大きな問題が一方にありましたけれども、併せ て現在の基礎年金のあり方全体をめぐって議論すべきで、制度についてはここでは税方 式への切替えという主張が一部ではかなり強くされているところでございます。社会保 険方式なのか、税方式なのかという問題もここに登場してまいります。その意味では、 制度の仕組み方をめぐる現在の議論は、社会保険としての公的年金に関する本質的な問 題を突いていると思いますので、是非そういう射程での御論議をお願いをしたいし、私 どもも加わらせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○D委員  先ほどの高額所得者に対する給付制限の問題のI委員のお話は私も全く賛成ですが、 それは理論的に言えることでございまして、日本の現状はどうかといいますと、例えば 高額所得者が個人年金なり、あるいは企業年金で自分の老後のことを考えるといたしま しても、税制の方ではそれに対しては何の措置もしていないというのが日本の状況でご ざいます。よく例に出されるアメリカでございますが、あそこは確かに公的年金のウ エートは低い。そのかわり、税制の方で 401Kとか、あるいはIRAとか、そういった 方面で、企業年金はもとより、個人年金ないしは拠出建ての年金で奨励している。そう いうことをやらなければ議論のバランスを欠くと私は思うんです。  それに関連して、1つ、これだけお聞きしたいんですけれども、今日お見せ願った財 政構造改革の特別措置法の第10条第2項でございますけれども、一定額以上の収入等を 有する受給権者に対する給付の額のあり方についての検討、これはこれとして結構だと 思うんです。ただ、この審議会で一番初めの頃に見せていただいたこの問題の中には、 もう1つの選択肢として税制等のあり方についても考えるというのがあったはずですけ れども、その方は消えてしまったんでしょうか。それとも、それはそれでまたおやりに なるんでしょうか。これを1つお聞きしておきます。 ○事務局  根本には税の問題があることは関係者は皆承知していることですけれども、これは財 政構造改革法案の年金部門ということなので、税の問題というのは直接的にはここには 出てきていないんですけれども、検討を加えて必要な措置を講ずるということですから その検討の中には当然、税の問題も入ってくるという理解をしておりまして、11年の制 度改正全体の中でこの問題を是非御議論いただいて方向を出していただきたいと思って おります。 ○D委員 消えたのでないということが分かれば安心いたしましたが、そういう了解でよろしゅ うございますか。 ○C委員  今のお話とも関連するのですが、私はI先生の言われた公的年金、あるいは社会保障 の公的責任部分を出来るだけ縮小して、自己責任なり、あるいは個人なり民間で出来る ものは、そっちの方向に委ねていったらどうだという、その考え方には基本的には賛成 です。ただ、これはよほど慎重に考えないと、給付のときに高額収入とか高額所得とか あるいは高額の資産がある人は外すという給付の面だけで考えては絶対いけないので、 必ず適用の方から考えるなら、それは一つの考え方だと思うんです。初めから適用は外 しますよと。それから、年金についてだけじゃなしに、医療保険についても同じような 議論というのは、実は国民皆保険、皆年金にするときから、所得の高い人の扱いはどう するんだということは大変な議論になりまして、所得が高いといっても、そのとき高く ても、ずうっと一生高い訳じゃないので、一応みんなに適用しようということで、しか も、それは税金でやるのじゃなしに、保険料をいただくのですから、給付の要件を満た したときには、そのときに収入なり所得が高くても給付しようじゃないかということで 日本の社会保障というのは長い間きている訳ですね。こんなことでこういうことを申し 上げるのは何ですが。 それを、今、1つのきっかけは国の財政が大変だということで高額所得者に対する年 金をカットしようという話が出ているようですが、そんな国の財政という観点だけで年 金についての給付の制限をしたりカットをするというのは、それは本質的に筋違いで、 やはりやるなら社会保障全体を一体どういう考え方で再構成し直すんだと。年金にこう いうことをやるとすれば、当然、医療保険にも必ず影響が出てくる。それがいいかどう か。 全体として社会保障なり公的な役割を縮小するというのは分かりますけれども、高額 所得者は今必要ないから、それは遠慮してもらおうじゃないかと。今は要らないから将 来、年金をもらうのは少し先にしていいよと自分が選択をされるなら、あるいはそれを 奨励するならよく分かりますけれども、初めから所得があるから要らないんじゃないか もっと困っている人はたくさんいるから、そちらの方へ回そうじゃないかという単純な ことで考えますと、先ほどH委員が言われたように、制度全体に対する信頼とか、この 制度に入っても自分はもらえないかもしれないなと。努力して収入があってももらえな いから、ほどほどにしておかないといけないんじゃないかというような気持ちというか 心理が出てきたら、この制度はもたなくなるんじゃないかということを私は心配してお ります。 ○L委員 ただいまのC委員の御意見に全く賛成です。基本的な考え方として、年金というもの がどういう性格のものかということが、いろいろなものをごった煮にしたあいまいな形 で、不満があるけれども八方満足になるような形できたというところが、やはり今のい ろいろな議論の多様化を招いていることだと思うんです。 ですから、給付をする原理が何であるか。それが、高齢期における生活を公的にある 程度保障するということに徹するのかどうか。そうすると、今度は働いてきた人々が長 い間にコントリビュートしたものについての権利がどうなるか。その辺のところがごち ゃごちゃになっているからだと思うんです。ですから、制度に対する信頼を回復するた めには、こういうふうな貢献をした場合にはこういう権利があるという部分と、社会的 な貢献は一人ひとりそれぞれの立場で違うけれども、高齢期になった場合に社会的な保 障がこういう範囲であるということがはっきりするということ。そういうことによって 国民はある程度の信頼をこの制度に持てると思うんです。ですから、全く異なる性格の ものが一つの年金という制度の中に入っているということが、いろいろな問題を起こし 続けていて、議論が平行線になっているということじゃないかと思います。 だから、理屈ではそう言えるけれども、では今何が出来るかということになろうかと 思いますが、やはり私たちの任務というのも期限付きですので、余り複雑にしないで今 回はこの辺でというようなことがまた続いていくかもしれないですけれども、少なくと も、いろいろな専門の方々が集まっているこの審議会が、そういうことは常に問題提起 し続けるということは最低出来ることじゃないかと思います。 ただ、かなりいろいろな方々がはっきりとこれには賛成とか反対ということをおっし ゃっていて、後ろに組織が付いている方も、そうでない方もいる訳ですけれども、それ ぞれの立場で賛否をはっきりおっしゃっている訳ですから、何となくあいまいで濁して しまうんじゃなくて、異なる意見を明確にするということですね。そういうことだけは はっきりこの審議会ではやっておくべきではないかというふうに思います。 給付というものの原理が何であって、そのためにどのぐらいの金額を設定するかとい うこと。まずそれがあって、その資金をどう捻出するか、そういう論理と、資金が何と か賄えるから、幾らぐらい、誰に給付しようという発想。このどちらを取るかという問 題もかなり大きい問題だと思うんです。ですから、給付の原理原則が明確になっていれ ば、負担も厭わないという国民も大ぜいいると思うんです。その原理がはっきりしない から、何となく損した得したということにどうしても落ちついてしまうというところが あるのではないかというふうに思います。 それから、60年改正で給付が個人単位という形にはなったとしても、まだまだ給付の 原理というものは世帯単位の考え方が非常に強いというふうに私は感じております。で すから、そこを徹底すれば、負担に関しても、個人の単位で誰が負担すべきかというこ とももう少し論理的に設定出来るんじゃないかというふうに頭の中では考えますけれど も、論理立て、何がプライオリティーなのか、どこにプライオリティーを置くのかとい うこと、これは少なくとも議論はすべきだというふうに感じます。 ○I委員 ちょっと誤解がありまして、公的年金というのは皆年金でして、すべての国民の人が 何らかの意味で強制的に加入している。問題は、そこでどの程度を保障するかというこ とで、単純に申し上げれば、やはり基礎的な生活水準を保障するように仕組まれている べきだと。それ以上はどうするかというあたりが、先ほどのお話のように、多分、非常 に所得の高い人は給付はそれほど多くありませんから、その部分は自分で別の手段を練 っていきます。しかし、別の手段のところは日本でも必ずしもちゃんとやられている気 配がないので、そこはいろいろそれなりに政策的に促進するとか、そういうふうな形が いいんじゃないかということを申し上げた訳で、公的年金というのは元来、基本的に非 常に重要なもので、すべての人をカバーしているということは間違いなくそうですが、 あとは、どの水準かというあたりが非常に微妙なところで、その辺は従来より少し考え 方を変えた方がいいんじゃないかということを申し上げたということです。 ○B委員 負担について意見を述べさせてもらいたいと思います。その前に、本日の資料の10 ページですけれども、お尋ねしたいのは、これは6月23日の資料にもこれに類する資料 がありまして、今回は平成67年となっていますが、前回は平成57年となっておりました けれども、そのせいか若干パーセンテージが変わるのですが、これは前提条件が多少変 わっているのか、単に10年の差なんでしょうか。 ○事務局  前回お示ししたのは、人口推計が平成6年の再計算のときの前提で、人口推計が新し くなる前は平成57年がピークであったということでございます。 ○B委員 そうすると、29.8%が今回は34.3%、こういうふうに理解してよろしいということで すね。 ○事務局  そのとおりでございます。 ○B委員 1つ、こういう資料が出来るかどうかですが、あるべき給付水準というのは十分御議 論されていくだろうと思いますけれども、今日は主として負担ということなので、この 10ページの表ですけれども、それぞれ34.3%、30.4%、あるいは23%、こういう数字に 見合って、給付のレベルというのは一体どういうことになるのだろうか。それから、も う1つ前に、これは平成6年の計算を前提にしたのでしょうか。将来の保険料率の引き 上げにより賄われる部分として、 400兆円を超えるというような資料が出ておりますが そういう数字がどういうふうになるのかというような資料があると、給付と負担の均衡 というのはどうなるのかというのが非常に分かるんじゃないかと思いまして、出来れば そういう資料がないかなというふうにお願いしたいと思います。 それで、事業主からしますと、保険料というのは個人と事業主は1対1だという前提 で考えますと、当然、現在の 17.35%、こういうのから結局、事業主の負担も当然倍に なるということになる訳ですね。これは、10年後、20年後にどういうことになっている かということで、例えば現在の日本の産業の中で、素材産業のように非常にきついポジ ションにあるところにつきましては、国際競争が非常に厳しいということで、前に申し ましたように、韓国は日本の3分の1ないし4分の1の賃金、中国は日本の20分の1か 25分の1の賃金、そういうようなところに世界一高い日本の賃金で、国際マーケットは もちろん、国内においても国際競争を強いられている。そういう中で、前に申しました が、鉄鋼の場合には月例賃金でいきますと、この4年間、 1,000円アップ、ゼロ、こう いうようなケースが保障出来ていない。そういう中で、例えば保険料については毎年 500円ずつ上がっていく。それから健康保険につきましては、もっと大きな金額でそれ ぞれ企業別に上がっていく。こういう状況がありまして、これは給料をもらう人もそう ですが、事業主も法定福利費の総人件費に占める割合なり増加についてどうするかとい うことで、これが決まった途端に覚悟しなくてはいけないことですが、そういう観点か らすると、負担だけ言いますと、事業主から見れば負担というのは出来るだけ少ない方 がいい。 以前の資料で東商のアンケートがあったと思いますが、東商の中小企業が主になると 思いますけれども、事業主のレベルとしては、負担の観点からは20%程度という数字が あったと思います。現在、足元は 17.35%ですから、もしよろしければ、この10ページ の表で20%、23%、30.3%、34.3%という負担のときに、では給付というのはどういう ふうになるんだろうかという数字があるとよい。給付のあるべき水準を示して、負担を 上げるのか、それとも企業年金なり私的年金なりを、税制も含めて調整して、そちらで いくのか、経団連とか経済同友会は報酬比例分については民間化という議論を言ってい ます。先ほどの 400兆円とか、ああいう問題につきましても、賦課方式か積立方式、あ るいは確定給付から確定拠出に移行する場合にも、どうするかという議論が具体的にな されていない訳ですけれども、そういった議論に対して反論するにも、具体的な資料が あって、給付と負担の均衡ということを議論出来ればというので、そういう資料が出来 るでしょうか。 ○事務局 今、B委員の方から負担を20%で据え置いた場合に給付がどうなるか、そういうのを 示してほしいという御意見がございましたし、先ほどJ委員の方からも、支給開始年齢 引き上げスケジュールを前倒しした場合、どのぐらい財政的に節約出来るか、財政的な 影響はどうなのか、こういう御質問がございましたので、こういった問題について私ど もとして今考えていることを申し上げたいと思います。 当初、この年金審議会が次期財政再計算に向けて御議論をスタートされたときに、今 回の改正におきましては、選択肢を提示したいということを申し上げた訳ですけれども 今年の暮れまでには、これは厚生省の責任で選択肢を提示したいと考えております。こ れにつきましては、基本的な考え方としましては、こういった負担であれば、どのぐら いの給付水準になるのか。今おっしゃったような問題、あるいは現行の給付水準をこの ままずっと維持した場合には、最終的な負担はどうなるか。これについてはもう既にお 示ししてある訳ですけれども、こういった給付と負担との対応関係が、これは3つにな るのか4つになるのか今検討中でございますけれども、幾つかのそういった組み合わせ をお示しをして、どういった選択肢をこれから選ぶのかということについて、当審議会 でも御議論いただきたい。そういった資料を今年の暮れまでにはお示ししたいというこ とで今作業を進めておるところです。 ○ 会長 ほかにございませんようでしたら、これで終わりにしたいと存じますが、よろしゅう ございましょうか。               (「異議なし」の声あり) ○会長 本日の資料でございますが、これはすべて公開することとしたいと存じますが、よろ しゅうございましょうか。               (「異議なし」の声あり) ○会長 今後の日程でございますが、事務局の方から何かお話があるようです。 ○事務局 それでは、次回の審議会につきましてお願いを申し上げたいと思います。次回は、前 回お諮り申し上げましたように、10月21日、午後2時から当会場におきまして審議会を お願いいたしたいと思いますが、先ほどお話がございましたように、第3号被保険者な ど個別の検討項目、それから年金現業業務につきまして御審議をお願いしたいというふ うに考えておりまして、まことに恐縮でございますが、事務局といたしましては、いわ ゆる3時間コースをお願いしたいということで、午後2時から午後5時までお時間をあ らかじめ御都合をお願いしておきたい、こんなふうに考える次第でございまして、何と ぞよろしくお願いを申し上げたいと思います。 ○A委員  3号被保険者等個別問題というふうにおっしゃいましたが、私は3号被保険者の問題 は基礎年金制度全体の中できちんと位置づけた議論が必要だというふうに考えておった のですが、用意される議論の仕方は、そういうものではないということでございましょ うか。 ○事務局  当初、個別検討項目として幾つか挙げられているような学生の話も入りますけれども 現状とこれまでの考え方などを中心に整理をいたしまして、検討の方向といたしまして は、本日の審議会も踏まえて御検討いただくのではないか、こんなふうに考える次第で ございます。 ○A委員  分かりました。それから、恐縮でございます。これは別に無理な話ではないんですが 審議会というのは通常、第何回というのが付いているんですが、年金審は回数がないと いうのは何か特殊な事情がおありなんでしょうか。資料整理するときにちょっと不便な ので。 ○K委員  お願いですけれども、今日いただいた資料1--1の9ページで、将来の労働力人口が 2010年までしか出ていませんけれども、この推計は2010年までしかないということでし ょうか。15歳以上というふうにまとめてあるんですけれども、今、大学進学率と専門学 校等への進学率がすごく上がっていますよね。それで、15歳ではなくて、せめて22歳と か20歳とか、女性も男性も大体22〜23歳から労働力市場に入る者が多いと思うんです。 だから、21世紀に向けて実質的な22歳以上ぐらいがどのぐらい減っていくかという資料 がもしこの推計で出ているのであれば、それを見せていただきたいんですけれども。 ○事務局 下の(注) に書いておりますように、これは労働省の雇用政策研究会の資料でござい まして、精査をいたしますが、先生の御指摘に沿うものがあるかどうかもう一度確認し てみたいと思います。 それからもう1点、次回にお示しをしたいと思いますが、今回の制度改正の御検討を 始めていただいたということで、私ども事務局に審議会の各先生方あてに個別に御要望 という形ではがきがきておりまして、一度、審議会の各委員の先生方には御供覧をいた だきたいということで、次回、御報告をさせていただきたいと思います。あらかじめよ ろしくお願いいたします。 ○会長   それでは、本日はこれで閉会してよろしゅうございましょうか。何か御発言ございま せんか。                (「なし」の声あり) ○ 会長  それでは、閉会します。どうもありがとうございました。 問い合わせ先 年金局企画課    担 当 須田(内3316)    電 話 (代)03−3503−1711