97/10/03 第2回厚生科学審議会先端医療技術評価部会議事録        第2回厚生科学審議会先端医療技術評価部会議事録 1. 日  時:平成9年10月3日(金) 10:00〜12:00 2.場  所:厚生省共用第7会議室 3.議  事:(1)生殖医療問題について        (2)ヒトクローンの取扱いについて        (3)北海道大学遺伝子治療臨床研究の中間報告について         (4)がん遺伝子治療臨床研究作業委員会(仮称)の設置について 4.出席委員:高久史麿部会長       (委員:五十音順:敬称略)          軽部征夫 木村利人 寺田雅昭       (専門委員:五十音順:敬称略)          入村達郎 金城清子 廣井正彦 松田一郎 山崎修道 注)※は最終頁に簡単な解説があります ○事務局 それでは、定刻になりましたので、ただ今から第2回厚生科学審議会先端医療技術評 価部会を開催いたします。 本日は、柴田委員、曽野委員、森岡委員の3名の委員の方々が御欠席でございます。 また、所用で加藤委員、金城委員が少し遅れられているようでございます。 それでは、部会長よろしくお願いいたします。 ○高久部会長 それでは、本日の議題に入りたいと思います。 前回の御議論のときに、まず、この部会で生殖医療の問題について議論をしてはどう かという御意見が多かったと理解しております。従いまして、本日はまず、生殖医療の 問題について議論を進めていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。 この問題、非常に大きな問題がたくさんありますので、御期待どおりにいくかどうか 分かりませんが、一応、来年の夏頃までに意見のある程度の集約を図ってまいりたいと 考えていますので、委員の先生方よろしくお願いいたします。 生殖医療の問題と言いましても、非常に範囲が広いことは御存じのとおりでありまし て、お手元に「生殖医療を巡る論点について(案)」という資料を配布しますので、こ れを御参考にしながらどういう問題について論議していくか大まかな整理をしていきた いと思います。 それでは、事務局の方からこの(案)について、説明をよろしくお願いします。 ○事務局 今、部会長から御指摘のありましたとおり、生殖医療を巡る色々な論点あるいは、そ の課題というものにつきまして、非常に多岐にわたっておるということでございます。 お手元のものに掲げましたものも事務局等で論議をした結果、取りまとめたものでござ いますが、まだまだ不完全なものというふうに考えております。 そうは言いながら、現在、特に重要なもの、緊急を要するもの、あるいは、その是非 が非常に議論になっているものと考えられるものを中心に集めてみたという趣旨のもの でございます。 大きく分けまして、そこにありますとおり3つのポイント、すなわち出生前診断技 術、それから2番目、体外受精を中心とした人工受精技術、更に3番目、こういった生 殖医療の研究利用の在り方といった3つの区分があるのではなかろうかということで整 理をしてございます。また、それらに共通する案件といたしまして、4番目はその他と いうふうにしておりますが、いわゆるプライバシーの保護と情報公開、また、インフ ォームド・コンセントといったものの在り方等、国がどのようにこの問題に関与してい くべきかということを掲げさせていただいております。 まず、出生前診断技術、区分の1でございますが、本日もその状況等について別途事 務局から追加の説明を後程させていただくこととしておりますが、一部の疾病について は受精直後の段階からといいますか、受精後かなり早期の段階におきまして技術を駆使 することによって診断が可能となってきているというふうに伝えられております。 一方、その技術の現状と安全性を踏まえまして、出生前診断技術の意義あるいは目 的、それに照らしてどのような条件が整ったならばそういったことを実施することが妥 当か、あるいは、その限界はどこまでであるのかといったこと。すなわち、適用範囲な どを議論していただく必要があるのではなかろうかというふうに考えております。 また、そういった診断可能な疾病と診断された場合の、その後の対応対処につきまし て、特に、カウンセリング等について、あるいは、現在多くの問題がございますが、診 断は可能になったけれども治療法が確立していないといった問題における対応について も御議論いただければと思っております。 特に、古くからあります男女の産み分けにつながります性別の検査といったことも非 常に多岐な問題をはらんでいるのではなかろうかということで、特に掲げさせていただ いております。 また、第2の分野としまして、人工授精技術関係をまとめさせていただいております が、非常に技術が近年進歩しておりまして、特に精子だけではなく卵子の採取、すなわ ち女性の身体への影響の面につきましても、安全性との面でまだまだ改善の余地がある のではなかろうかという御意見があるかと思います。 ここで、その人工授精に絡みます現状と安全性、また、実験施設の状況等を踏まえま した上で人工授精技術、特に体外受精技術につきまして、その目的或るいは対象者、実 施要件等について御議論いただければと考えております。 特に、この中での精子、卵子といった配偶子、そして、それらの合体によります受精 卵、あるいは、その成長した段階としての胚の取扱いにつきまして、また、特にそれを 他人から提供を受ける或いは他者に提供するといったことにつきまして、具体的には例 えば代理母といった問題について、どのように取り扱っていくのか。 また、これらに共通する問題としまして、それらの提供に際して対価を受領する問題 について、或いはそのあっせんを行う、殊に業としてあっせんを行うといったような問 題について、言わば商業的利用に結びつく分野についてどのように考えていくのか。こ れは、非常に緊急な課題ではなかろうかと考えております。 また、現在の体外受精技術におきましては、その成功率を高めるために、どうしても 複数の受精卵を母体内に戻すということになっておりますが、結果として多胎妊娠とい うことで、逆に、今度は母性を保護するために減数手術といったことが出てきておりま す。この問題も非常に大きな課題ではないかと考えております。 更に、こういった技術そのものを進める上で、研究利用や体外受精技術等の開発、安 全性を確認する、確保するといったために、多数の研究が必要になってまいりますが、 そこにおける受精卵あるいは配偶子等の利用あるいは発生実験や更には他の医療技術へ の応用といたしまして、キメラ(遺伝子型の異なる2種類以上の組織が共存する状態の こと)・ハイブリッド(遺伝子形成の異なる個体間の交雑)等の利用といったことが海 外において話題になり、一部では規制という動きもあるかと思います。諸外国におきま しては、こういったような研究上の利用につきまして、一定の手続あるいは条件の整備 ということを要件として受精ないし発生後一定期間まで、その取扱いを許すという考え 方が明示されているところもあるようであります。しかし、人としての尊厳、或るい は、いつから人として取り扱うのかといった問題について、倫理面からも微妙な課題が あるかと思います。 それから、これらに共通する問題としまして、第4の分野として掲げましたように、 それらに関わる、例えば、疾病を持っているかもしれない方々、検査を受けられる患者 さん、あるいは受精卵の提供等を行われる方のプライバシーの保護といったものをどの ように図るかということとともに、こういった非常に微妙な問題についての情報公開を どう徹底していくか。また、きちんとした手続の下で治療研究を進めていくことは当然 必要でありますが、そのきちんとした手続、条件とはどのようなものであるべきか。ま た、こういったような治療あるいは研究の実施につきまして、国等の行政にはどのよう な役割があり、どのような関与をしていくべきかということについて是非、御議論いた だきたいと思っております。 このように、ここに掲げたものだけでも多岐にわたっておりますが、具体的な検討を 進めていくに従いまして、今後、追加あるいは並行しての論議ということが必要になる かと思います。しかしながら、もし、可能であれば本日お配りしたようなものの仮の順 序、出生前診断技術、人工授精技術、研究利用の在り方、その他といった形で適宜御議 論を進めていっていただくことが出来れば、事務局としては準備する上で非常にありが たいと思っております。 勿論、一通りこれを御議論いただいた後、更に共通する分野あるいは特定の方法につ いて重点的な検討を行うといったことも必要になってくるかと思っておりますので、こ の審議の手順あるいは順番につきましては、また途中、途中で御議論いただきながら進 めていければと考えております。 お手元に配りました机上配付資料「生殖医療を巡る論点について(案)」の事務局と しての考え方は以上でございます。 ○高久部会長 どうもありがとうございました。今、説明がありましたように、議論の中でもまた適 宜追加ということが起こってくるのではないかと思いますが、差しあたって今の事務局 からの論点の案について、御質問あるいは御意見があったら、よろしくお願いします。 ○木村委員 大変によくまとめていただいて、問題点が大分はっきりと浮かび上がってきているの ではないかと思うのですが、全体の厚生科学審議会の先端医療技術評価部会として、例 えば、議題を決める場合に、事務局の準備したものに沿って委員の中で討議して決める というような議題の決め方。それから、例えば、委員の1人が何かこういう問題がある ということで前もって提案しておくような在り方とか、或いは、国会で色々な問題にな って事務当局はそれを基にしてまとめるとか、或いは、団体の要望によるとか、色々な やり方があるかと思うのですが、この部会としては事務局の準備したものを中心にやる ということになるのでございますか。 ○伊藤審議官 申し訳ないのですが、今日、是非御議論いただきたいのは、この部会として何をテー マに議論していくかという観点で、そこを今日は御議論いただきたいと思います。今の 説明は若干、事務局の意識が出過ぎているということで、私は今非常に不満だったんで す。ですから、これにとらわれないで何を議論すべきかということを是非お願いしたい と思います。 ○高久部会長 前回の時に、さしあたって生殖医療の問題について議論しようではないかということ について多くの方々の御賛同を得たので、生殖医療について、今日、御議論願うことに 致しました。この机上配付資料は単に参考資料ということで、生殖医療を巡る問題とい うのはどういう問題があるかということを例示したものでありまして、勿論、この問題 について、或るいは、これ以外の問題でも御自由に御議論願いたいと思います。しかし ながら、出生前診断技術の問題、こういう問題は逆に言いますと、幾ら議論してもなか なか結論が出ない問題がたくさんありますので、議論を進めていく上で、この様に論点 を整理してもらった方がやりやすいのではないかということでありまして、何も事務局 主導ということではないと思います。 ○木村委員 どうもありがとうございました。今の部会長の説明で大変よく分かりました。それか ら、審議官の説明によりますと、我々も委員としてこの内容については、自由にこうい うことということを入れるということは全く差し支えないということですので、その点 御了解いただけたので、大変ありがたいと思います。 ただ、一番最初に部会長の発言にございましたように、あるいは事務局の方の話にご ざいましたように、何か我々にはデッドライン、締切りがありまして、来年の一定の時 期を目途に、何かガイドラインなり提案なり、決まった報告書を出すということになり ますと、これは今、部会長の言われたようにいつまでも討議するということよりも、一 定の何かコンセンサスといいますか、部会の報告を出さねばいけないということになる のですが、その日程は先程お伺いしたとおりなのですか、その具体的な内容について は、事務当局としてはお考えがあるのでしょうか。 ○事務局 目標といたしましたのは、一応無限に論議をさせられるのでは先生方もたまらぬとい うことだと思いまして、仮に今回の生殖医療については出来れば来年7月を目途に集中 的に論議をいただけないかということでございます。当然のことながら、内容につきま しても、これから御論議いただくものでありますので、事務局としてどういったものが 出てくるかというのは、来年までの御論議の結果というふうに考えております。 ただ、来年のものにつきまして、今、御説明したような広範なものについて、また、 非常に様々な意見等につきまして、この委員会において確定した決定的なものが出ると いうよりは、御議論の取りまとめというものが中間の報告として出てくるというような ことが、ありそうなことではないかというふうに考えております。 ○伊藤審議官 非常に重要なことで、こちら側がたくさん話すのは控えようというふうに私は心に誓 っていたのですが、一応、来年の7月、夏頃というふうに部会長の方からお話がありま したのは、一応そのころを目途に、色々なことを議論していただいたらどうだろうかと 思っております。やはり、今、審議会というものは何をする場所かということが色々政 府部内でも議論がありまして、必ずしも1つの結論という形にならなくても、複数の意 見を国民に考えるヒントを提示をしていくという形もありますし、この点についてはガ イドラインを示すべきだとか、それは国がやるべきだとか、それは学会がやるべきだと か、まとまるところはまとまるところで、ある程度まとまっていただければそれを基に 政府としての対応も考えていけるし、どうしても1つにまとまらない部分については、 そのことを逆に審議会の中間的なまとめという形で公表していくというやり方もあろう かと思います。その辺の審議会の論議の集約の時期を一応夏頃という形にさせていただ いて、その時点でどういうまとめなりを世間に出していくか、そのことも含めて御議論 の対象としていただければと思っております。 ○廣井委員 この論点の順序なのですけれども、今回、資料を用意していただいた2番目の方が、 私としては先にやった方がいいのではないかと思います。特に、出生前診断については 大変問題がございまして、先程の話にありましたように、障害者団体からも色々なこと を言ってきているそうです。それから、本日御出席の松田委員が出生前診断の厚生省班 会議で色々な調査をしておられるのが、来年3月ぐらいにある程度まとまるのではない かと思うのですけれども、そういうような資料を基にした方が参考になるのではないか と思いますので、私はこの提案をさせていただきたいと思います。 ○高久部会長 ありがとうございました。どうぞ、松田委員。 ○松田委員 先程、事務局の話を伺っていますと、はっきり言葉には出ませんでしたけれども、着 床前診断の問題も触れられたと思うんです。これは、出生前診断と人工授精と両方にま たがっている問題ですね。その非常に大事な問題で、人工授精の方を先にディスカッシ ョンしないで着床前診断をディスカッションすることは出来ないし、出生前診断の中に 今、着床前診断を入れてしまうというと、また、これは大きな問題になってくるしと考 えると、やはり今、廣井先生もおっしゃったように、順序としては、先に2の方をやっ ていたおいた方が、むしろ1に近づきやすいという判断を私はさせていただいたのです けれども。 ○高久部会長 おっしゃるとおり、人工授精があって、それから、出生前診断ということがプロセス としても順番になると思いますので、もし、御異論がなければお2人の委員がおっしゃ ったように、この(案)の2の方を先にして、すなわち人工授精技術を先に議論してい ただいて、次に出生前診断技術というふうに、御異論がなければ進めさせていただきた いと思います。勿論、1と2の問題は関係が深いので、随時、御議論願いたいと思いま すが、一応順番として人工授精技術を先にして、その次に出生前診断。この2つだけで 来年の7月迄で終わるかどうかも全然自信がないのですが、時間があれば研究利用の在 り方ということも論議したいと考えています。 ○木村委員 確かに、発生学的に言うと、人工授精があって出生前診断ということになるのかと思 われますが、バイオエシックス(生命倫理)の立場から非常に大事な問題として、この 出生前診断の問題が今、障害者の方とか或るいはヒトゲノムとの関連で色々なことも含 めて、特に今回のスウェーデンでの強制的な優生手術のニュースとか或るいは日本での ことも含めて色々な問題になっているので、倫理的に言うと出生前診断の方から始めた 方がタイミングがいいのではないかというふうに私は考えているのです。むしろ、私ど もの意見がそちらの先生の言われたところに影響を与えるというような姿勢の方が、大 胆でいいのではないかと思えます。この順序の方が、私としては、大変やりにくいかも しれないけれども、関心が高いのではないか。例えば人工授精と言いますと、これは不 妊症といわれる方々にとって非常に大問題でありますが、出生前診断というのはあらゆ るお母さんの問題なんです。ですから、国民の立場から考えますとその方がいいのでは ないかと。 ○高久部会長 他の方でどなたか御意見、どちらを先にいたしましょうか。 ○寺田委員 私は、やはり人工授精の方を先にやった方がいいという意見です。その理由は、今、 人工授精の問題の方が関心が高いと思います。関心があり非常に重要だと思うんです。 重要なところから入っていく、どちらが重要かということに関しては、2番目の方と思 います。今はもう熱がちょっと下がりましたけれども、クローン人間の問題と裏表の問 題なんです。あの時には、随分世間の関心がばっと上がりましたが、結局、今の日本で は元通りもやもやとなっています。先生も確かどこか私も同席した会議で言われたと思 うのですけれども、体細胞によるクローン動物作製の時アメリカではぱっと早く政府の 反応が出たのに、日本政府としての対応が物すごく遅い、ということがありました。や はり私は2番目の方からいっては如何かと思います。1番目の方は今いろんなところで DNA診断の問題があり、それが色々な学会で討議されておりまして、やがてそれも出 てくるというように思います。どちらかというと2番の方が目の前にあるような感じが しますので、2番が先でいいのではないかと思います。 ○高久部会長 他にどなたか。実際は両方ともやらなければならないものですし、どちらが先だとい うことは基本的にはそれほど重大な問題ではないと思います。木村委員は御反対ですけ れども、やはり人工授精を先にさせていただいては如何かと思います。  次に日本における生殖医療の現状と外国のことなどについて、ある程度まとめておら れるということですので、これについて説明をしていただけますか、どなたか。 ○金城委員 ちょっと質問なんですけれども、言葉なのですが人工授精というと他のことを思い浮 かべるんです。AID(非配偶者間人工授精)その他の。ですから、こういう言葉を使 うのだったら、そこら辺を検討しておかないと。 ○廣井委員 出来たら、日本語の正式なものはないのですけれども、アシステッド・リプロダクテ ィブ・テクノロジーという、(「生殖補助医療技術」ART)が正式の言葉になってい ます。 ○高久部会長 英語は使ってはいけないようでありますので、出来れば日本語で。 ○廣井委員 「生殖の補助医療技術」とした方が全部含まれますので。 ○高久部会長 金城委員、それでよろしいでしょうか。 ○金城委員 はい。そちらでしたら、問題はないと思います。 ○高久部会長 そういうふうな言葉を使わせていただきます。どうもありがとうございました。 それでは、資料について説明していただけますか。 ○事務局 それでは、「日本における生殖医療の現状」という資料をごらんいただきたいと思い ます。 資料の1ページをお願いいたします。まず、生殖医療と申しますと、最も一般的に実 施されておりますのは、いわゆる人工授精と言われておりますAIH(配偶者間人工授 精)・AIDでございますけれども、これらにつきましては、統計的に調べている資料 がございませんので、ここでは体外受精、胚移植等の臨床実施成績ということで日本産 科婦人科学会が毎年調べていただいているものを御説明申し上げます。 日本産科婦人科学会では、昭和61年3月以来、体外受精・胚移植等の生殖医療の臨床 実施に関しまして登録報告制を敷き、報告内容の集計と分析を行っていただいておりま す。これは、平成7年分、平成7年の1月1日から12月31日までの期間の臨床実施成績 の包括的調査を集計したものでございます。 注)がございますけれども、ここで若干、表の中に略語が出てまいりますので、簡単 に御説明申し上げます。 IVF−ETでございますが、体外受精−胚移植のことで、体外で精子と卵子を受精 させまして、この受精が成立し、細胞の分割が始まって胚の状態になってから子宮内に 戻すという技術でございます。一番一般的に行われている体外受精でございます。 また、GIFTは、精子と卵それぞれを受精の前の状態で卵管内に移植するものでご ざいます。 ZIFTでございますが、受精して分割した胚の状態になってから卵管内に移植する ものがZIFTでございます。 ICSI以下の3つでございますが、これは顕微授精という技術でございまして、主 として精子に運動障害や数が少ないなど授精障害の原因がある場合に用いられる技術で ございます。この中で、ICSI、卵細胞質内精子注入法は細いガラス針の中に精子を 1つ入れまして、そのガラス針を卵に突き刺して、卵細胞質の中に精子を送り込むとい う技術でございます。 また、囲卵腔内精子注入法、SUZIでございますが、これは細いガラス針に精子を 3つか4つ吸引いたしまして、これを卵細胞質とそれを取り巻く卵の透明帯の間の囲卵 腔というところに送り込むという技術でございます。 また、PZD、部分的卵透明帯開口術でございますが、細いガラス針で細胞質を取り 巻く卵の透明帯を突き刺しまして、この透明帯を一時除去して精子が通りやすくすると いう技術でございます。 それでは、表の御説明に入らせていただきます。表1でございますが、平成7年末現 在の登録実施施設数でございまして、登録数が348 、その内この調査に回答があった施 設が305。この305の施設の中で体外受精等が実施されている施設が257、回答施設の 84.3%でございます。 表2でございますが、妊娠・分娩例報告施設数でございまして、このIVF−ET、 GIFT、ZIFTの別に出ております。 IVF−ETでございますが、この新鮮胚を用いた治療では実施施設が256 、妊娠が 成功した施設数が216。 それから、凍結胚を用いた治療では実施施設数が65、妊娠施設数が39。 顕微授精を用いた治療でございますけれども、これを実施している施設はIVF−E Tで78、妊娠施設数が60という表でございます。 GIFT、ZIFTにつきましては、右にあるとおりでございます。 次のページをごらんいただきたいと思います。 表3の新鮮胚(卵)を用いた治療成績でございますが、これもIVF−ET(体外受 精−胚移植)、それから、GIFT(精子、卵の卵管内移植)、ZIFT(胚の卵管内 移植)の別に出ております。合計の数字をごらんいただきますと、患者総数が 1万7,992。治療周期総数が2万6,648。この治療周期総数といいますのは、延べの治療 数というふうに考えていただくのがよいかと思います。月経周期で1周期というふうに 数えております。 採卵総回数が2万4,694。それから、移植の回数はそのうち1万8,905。妊娠数が 4,246。移植あたりの妊娠率が22.46%でございます。また、流産数が1,009。それか ら、多胎妊娠数が765、生産分娩数は3,060、出生児数は3,810でございます。 表4でございますが、凍結(卵)胚を用いた治療成績につきましても、同様の見方が 出来ますが、IVF−ETのみ報告されております。患者総数が1,531、出生児数は298 でございます。 次のページをごらんいただきたいと思います。 表5でございますけれども、顕微授精を用いた治療成績でございまして、患者総数が 6,940、出生児数が1,579でございます。 顕微授精は主として精子の方に受精障害の原因がある技術で、表6にはそれぞれ顕微 授精の手技別に数字をまとめたものでございますので、御参考までにお示しいたしまし た。 4ページでございます。表7でございますが、体外受精・胚移植治療周期数からみた 施設数の分布でございます。治療周期数が1から50というところが新鮮胚(卵)で 140。それから、51から100というところが45ということで、50以下の施設がかなり多く なっております。 また、表8でございますけれども、治療法別出生児数および累積出生児数でございま す。治療周期総数は新鮮胚(卵)を用いた治療が2万6,648、その内出生児数が3,810。 それから、累積出生児数と申しますのは、この日本産科婦人科学会の登録制度が開始い たしてからの累積数でございまして1万6,752でございます。 また、凍結胚(卵)を用いた治療、それから、顕微授精を用いた治療は、それぞれ出 ているとおりでございます。 次のページをお願いいたします。 次に胎児出生前診断に関する実態調査結果ということでございまして、平成5年度厚 生省心身障害研究班で実施したものでございます。 研究班名はこちらにあるとおりでございまして、主任研究者は鴨下重彦先生でござい ます。この中の「心身障害の胎児期における診断に関する研究」ということで藤本征一 郎先生が分担研究班を担当されております。 この調査では、対象施設を全国の大学病院80施設、医育機関のみを対象にしておりま す。調査期間は平成5年1月1日から12月31日まで。方法でございますけれども、アン ケートで実施していただいておりまして、59施設から回答と書いてございますが、実 は、事前調査で80施設から回答がありまして、実際に出生前診断を行っている59施設か ら本調査の御協力をいただいたというものでございます。 表9でございますが、年間の出生前診断実施件数別の施設数ですが、0から10が24施 設で、11から50が18施設ということで50以下の施設が71%を占めております。また、一 方、601から700という施設も1か所ございます。 それから、出生前診断実施件数、表10でございますけれども、※羊水穿刺が3,539、 それから、※臍帯穿刺が461 、絨毛採取が113と合計4,113になっております。 次のページをお願いいたします。 表11は、スクリーニング(ふるい分け検査、一次検診)を目的とした羊水穿刺の適応 ということで、主に高年妊娠の方のスクリーニングを目的にしたものでございまして、 その目的別の実施件数でございます。表12でございますが、出生前診断法別の胎児異常 診断数という表を載せております。羊水穿刺の1といいますのはスクリーニングを目的 としたもの、羊水穿刺の2は胎児に何らかの異常が認められた症例に対して行ったもの ということでの区分でございます。主に染色体分析という形で検査が行われておりま す。 また、生化学的検査と申しますのは、この培養細胞、例えば、羊水の細胞や絨毛の細 胞の中の酵素活性を測定して※ポンペ病ですとか、※メチルマロン酸尿症といったもの の酵素活性の異常を見つけるというような検査でございます。 表13でございますが、これは出生前診断施行後の異常ということで羊水穿刺について は流産が2、臍帯穿刺では緊急帝王切開が10、子宮内胎児死亡が1、絨毛採取では流産 が1となっておりますが、これらのほとんどは因果関係が不明でございまして、自然発 生で起こってくる率よりもかえって少ない値でございます。特に、この臍帯穿刺の子宮 内胎児死亡は穿刺後2週間を経ての死亡ということで因果関係は不明となっておりま す。 7ページをお願いいたします。 多胎妊娠と減数手術に関する調査結果でございます。これは、平成8年度厚生省心身 障害研究班調べでございまして、研究班名はここにあるとおりでございますが、この主 任研究者は昭和大学の矢内原先生、分担研究も矢内原先生が実施しております。 対象施設は、全国の医育機関等と生殖医療を実施している327施設。対象期間は平成 6年1月1日から平成8年12月31日まででございます。 方法はこれらの施設・期間における3胎以上の症例を対象にアンケート調査で行って おりまして、195施設から回答を得ております。回答率は59.6%でございます。 表14でございますけれども、3胎以上の妊娠経過でございます。3胎が合計445件、 4胎が51件、5胎が15件、6胎が3件、7胎が1件でございます。この内減数手術は合 計87例に実施されておりまして、それぞれの胎児数別の数がここにございます。 表15でございますが、施設別3胎以上の妊娠症例およびその背景ということで、年 齢、それから、経妊回数、経産回数を計上してございます。 次のページをお願いいたします。 表16は、分娩時胎児数における出生児の状況・予後でございまして、3胎の出生児 327 人でございますが、この分娩週数が32.5±3.4週という数字でございます。 3胎出生児のこのn=327は、妊娠の件数でございまして、子どもの数はこの児の体 重の欄にあります981人でございます。その下が※Apgar score 、それから、NICU (新生児集中治療室)への入院の有無でございます。 それから、死産は3胎の場合で14。それから、予後につきましては、こちらにあると おり、良好が777 件と全体の79.2%でございます。 また、4胎出生児件数は15で、人数が60。死産が1で、予後良好が47、78.3%でござ います。 また、3胎出生児の減数手術後という件数が5件でございまして、子どもの数が15、 そして、死産が0、予後は良好が13で86.7%となってございます。 次のページをごらんいただきたいと思います。 施設別3胎以上の妊娠症例数でございます。主に病院で出産がされております。診療 所、病院、医育機関の別はここにあるとおりでございます。最高が7胎ということでご ざいまして、これは病院での出産になっております。 次の図、表18となりますが、この減数手術を実施した施設における症例数でござい まして、診療所が45例、それから、病院が28例、それから、医育機関が14例。この内診 療所の自分のところで減数手術を実施した例が38。他院に頼んだのが5、それから、病 院では28例中自院が9、他院に頼んだのが19でございます。以上、日本の現状というこ とでそれぞれの数字をお示し申し上げました。 引き続きまして、生殖医療に関する各国比較について御説明を申し上げたいと思いま す。 この生殖医療に関する各国の状況につきましては、この資料の3ページにございます とおり文献及び学会の資料等を事務局の方で取りまとめたものでございますため、若 干、時点の古いものですとか、私どもの誤解のあるところがある可能性があることか ら、未定稿資料としてお示しを申し上げました。 まず、1ページ目をごらんいただきたいと思います。英国でございますけれども、規 制法規につきましては、ヒトの受精と胚研究に関する法律が1990年に公布され、本法制 定後にはその業務について法的な権限を持つ機関であるヒトの受精と胚研究に関する認 定機関、HFEAというふうに略されますが、この機関に実施させることになっており ます。 受療対象者でございますが、不妊治療を受けられる条件として法律ではカップルが法 的に結婚していることは条件にしておりません。不妊治療を求める人にはカウンセリン グの機会を与えることを義務づけております。 非配偶者間人工授精、AIDと言われるものでございますが、同一ドナーから生まれ る子の数は10人までに制限するということでございます。ちょっと文献上、10人なのか 10回なのかというところがまちまちになっており最終的な確認が出来ておりません。 また、このAIDを実施する上では公的機関のHFEAの許可が必要ということでご ざいます。 また、体外受精は提供精子、提供卵子、提供胚とも認められておりますが、これもH FEAの許可が必要でございます。 代理母でございますが、さきに述べたとおり商業ベースによるものは禁止されており ますが、それ以外は認められております。 凍結胚の保存期間ですが、最高10年間です。1996年の7月に5年以内から10年に延長 されました。 余剰胚の研究・実験でございますが、研究に対する許可は不妊治療の発展や先天性疾 患、流産、着床前の欠陥遺伝子、染色体の発見などの研究目的でHFEAが必要な研究 であると判断したときのみ許可の対象でございます。 許可の有効期限は3年ということで、原始線条(鳥類、哺乳類に生じる縦に伸張した 溝とその両側の隆起をいう)が出現以降、ほぼ受精後14日でございますけれども、これ 以降の胚の保存または使用は厳重に禁止されております。 実験目的の胚作成でございますが、同様に原始線条出現後は禁止ということでござい ます。 着床前診断についての規制はございません。また、出生前診断についても規制はござ いません。多胎減数手術でございますが、1990年にヒトの受精と胚研究に関する法律 と、それから、人工中絶法というものを改正いたしまして、双胎の1児が先天異常の場 合にその児の生命のみを中断して妊娠を継続させることや、品胎以上の多胎妊娠の減数 術を一定の要件の下で実施出来ることとしております。 次に、ドイツでございます。規制法規でございますが、1990年12月に胚保護法が成立 しております。また、それに先駆けまして、1989年に養子あっせん及び代理母あっせん 禁止に関する法律が公布されております。 法律以外の規制でございますが、ドイツにおいてはドイツ連邦医師会が法律に先立っ て生殖技術に関するガイドラインを自主的に制定しております。連邦政府及び議会は、 このガイドラインより更に強固な法的規制を成立させるという両者の拮抗関係があり、 かなり厳しいものになっております。医師会ガイドラインは、法律により凌駕されるこ とになりましたが、生殖技術を医師会が自主的に規制しているという姿勢は現在も失わ れていないそうでございます。 受療対象者は、医学的に不妊の婚姻者のみ。 非配偶者間人工授精は認められておりますが、裁判の判例で夫が事前にAIDに同意 していても、出生後AIDで生まれた子どもに対する嫡出否認権が認められたことや、 AIDの子ども自身にも嫡出否認権と精子提供者に対する扶養及び相続の請求権が認め られるというような判決があったことから、旧西ドイツの大病院や大学病院では実際に はAIDはほとんど行われなくなったということでございます。 体外受精でございますが、卵の提供は禁止、胚提供も原則として禁止でございます。 代理母も禁止、また、凍結胚の保存は容認されておりますが、保存胚の提供は原則と して禁止されております。 胚を研究に使用することを禁止し、胎児の実験利用も原則的に禁止されております。 着床前診断でございますが、胚保護法では禁止されているとの見解が有力でございま すが、法解釈が分かれており、現在検討中ということでございます。 多胎減数手術の可否は調べた中にはございませんでしたので、不明でございます。但 し、1ヶ月経周期内に3個を超える胚を移植することは禁止されているということでご ざいます。 次にフランスでございます。規制法規は、1994年7月に公布されました生命倫理法と 総称される法律群でございまして、これは人体の尊重に関する法律と、それから、人体 の要素と産物の提供と利用、生殖介助医療及び出生前診断に関する法律、それから、保 健研究における記名データの扱いに関する法律という3つの法律から成っております。 受療対象者は生殖年齢にある生きた男女に限られ、独身者、同性愛者、閉経後の女性 は利用を禁止しております。カップルの安定度の基準といたしまして、結婚している か、2年以上の共同生活を証明出来る者としております。 医学的条件として不妊が医学的に確定しているか、重篤な病気を移す恐れのあるも の、生殖介助を受けようとするカップルには医療従事者によるカウンセリングを義務づ けております。 非配偶者間人工授精は認められておりますが、同一提供者から生まれる子の数は5人 に制限しております。 体外受精は提供精子、卵子ともに認められておりますが、配偶子の提供者は既に子を 成したカップルの片方でなければならず、提供の同意は書面でカップルの両方から必要 でございます。 体外受精させる配偶子の少なくとも片方は、カップルのどちらかのものでなければな らないとされておりますが、保存胚で元のカップルが使わないことが確定した胚は、よ そのカップルに引き取ってもらうことが出来るとされております。但し、胚を引き取れ るのは、カップル内の生殖介助を試みて子が出来なかったカップルに限るなど、厳重な 手続の下に行われております。 凍結胚の保存期間は1年ごとにカップルの意志を確認した上で、最高5年間保存出来 ます。 胚の研究利用ですが、これは原則として禁止しておりますが、例外として医学目的で 胚を傷つけない観察研究のみ、カップルの書面による同意と国家委員会の許可の下に認 められております。 実験目的の胚の作成は禁止しています。 着床前診断は、親になるカップルの1人に診断時点では治療不能の特別重大な遺伝病 の原因となる異常が事前に特定されており、カップルの双方の同意がある場合に、特別 の許可を受けた施設で実施出来ることになっております。 多胎減数手術については不明でございます。 次に、オーストラリアでございますが、この国では各州が独自に法律を制定するの で、州ごとに対応が異なっております。最も早いうちから生殖医療技術を規制する法律 を設けていたビクトリア州の例を示しております。 規制法規は1984年に不妊法が制定されましたが、用語の定義が不十分なために混乱を 引き起し、1987年に改正されております。 受療対象者は、結婚しているか確実に同棲しているカップルのみ。治療前にカウンセ リングを受けることが義務づけられております。1人の医師が体外受精が適切な治療で あると認めた後も、他の方法による妊娠の可能性を持たせるため、12ヶ月経過しないと 体外受精の治療を受けられないというような規定がございます。 非配偶者間人工授精は認められております。 体外受精は、ドナーの精子を用いることは認められておりますが、父親の異なる胚を 同時に子宮内に移植することは禁じられております。 卵子、胚の提供も認められております。 代理母は、商業的なものは禁止でございます。 凍結胚の保存期間は不明でございます。 凍結胚の提供は認められております。 余剰胚の研究・実験は、受精後14日までは認められております。 研究目的の胚作成は禁止されております。 着床前診断、それから、多胎減数手術については不明でございます。 次のページをごらんいただきたいと思います。 アメリカ合衆国でございますが、規制法規等は1973年に統一親子関係法が制定され、 夫の同意を得てAID、非配偶者間の人工授精によりまして、妻が妊娠した子どもは夫 婦間に生まれた子どもと同様に扱われるものと規定されましたが、これ以外には生殖医 療や肺研究に関する連邦法はございません。州によりまして、生殖医療に関する法律を つくっているところもあるようでございます。 法律以外の規制といたしましては、American Society for Reproductive Medicineの 倫理委員会が詳細なガイドラインを設けて国内外の委員に通知しておりますが、公的な 規制機関はないようです。 米国では、人が子どもを持つ権利はすべてに優先するという思想が強いとも言われて おります。 以下の項目につきましては、連邦法としては規制はございませんけれども、州によっ て対応が異なるものでございまして、また、各事例ごとにその都度、裁判により決定さ れる傾向がございます。 次に、スウェーデンでございますが、規制法規につきましては、1984年公布の人工授 精法と1989年1月施行の体外受精法がございます。 受療対象者として体外受精を受けられるのは、婚姻夫婦か2年以上同棲しているカッ プルと規定し、ある一定期間の同棲または同居を要件にしているものでございます。 非配偶者間人工授精につきましては、婚姻夫婦か長期間継続しているカップルのみ で、父親となる男性の同意が必要でございます。子どもがドナーを知る権利を保障した ことから、この非配偶者間人工授精は減少しているとのことでございます。 体外受精は、この第3者の配偶子を使用してはならないということになっておりまし て、余剰胚の提供も認められておりません。 代理母は認められておりません。 凍結胚の保存期間はカップルの同意があれば、1年間でございます。 それから、保存胚の提供は認められておりません。 余剰胚の研究・実験は、カップルの同意により受精後2週間以内の胚の研究は許され ますが、体外受精技術の進歩を目的とする研究に限られ、倫理委員会の許可が必要でご ざいます。 卵子の遺伝子操作は許されておりません。 それから、実験目的の胚作成については、未定ということでございます。 それから、着床前診断は規制はございません。 出生前診断は認められております。 多胎減数手術については不明でございました。 スイスでございますが、各州により規制法規・内容が異なっております。1992年5月 に国民投票が行われておりまして、そこで採択された憲法の補足条項に基づきまして、 連邦が生殖技術及び遺伝子技術に関する法的規制を定めることを義務づけられました が、連邦はいまだ結論を出しておりません。 法律以外の規制でございますが、スイスアカデミーは各医療施設が生殖医療実施に際 してスイスアカデミーのガイドラインに従うことを義務づけ、実施状況を把握するため に中央委員会を組織しております。 以下、このガイドラインによる規制を示しております。 受療対象者は、子どもの養育義務を負う意志のある婚姻者ないし準婚姻カップル。 非配偶者間人工授精、それから、体外受精につきましては、精子提供、卵子提供のい ずれかが認められておりますが、提供者のスクリーニング、提供者の匿名が前提となっ ております。 胚提供は禁止されております。 代理母は禁止でございます。 それから、胚の保存期間は不明でございます。 保存胚の提供は禁止されております。 余剰胚の研究・実験、それから、実験目的の胚作成といった胚を用いた研究は認めら れておりません。 それから、着床前診断についての規制はございません。 出生前診断も認められております。 多胎減数手術に関しては不明でございます。 以上が諸外国の状況でございまして、3枚目が我が国の状況でございます。 我が国におきましては、規制法規等はございません。法律以外の規制といたしまし て、日本産科婦人科学会の会告が出ております。これは以下、会告に示されたものでご ざいますが、この「非配偶者間人工授精と精子提供」に関する見解以降、7つこの本件 に関連のある会告をお示ししております。 この受療対象者以下の項目では、会告に示されたものをここに列挙しております。受 療対象者は、体外受精−胚移植に関する見解の中で示されておりまして、婚姻男女のみ でこれ以外の医療行為によって妊娠成立の見込みがないと判断されるもの等を対象と し、夫婦から承諾書を取ることになっております。 非配偶者間人工授精でございますが、これは非配偶者間人工授精と精子提供に関する 見解で認められておりまして、但し、この方法以外の医療行為によって妊娠成立の見込 みがないと判断され、しかも、この方法によって享受を希望するものを対象としており ます。 体外受精につきましては、会告では触れられていないものと思われます。 また、代理母についても示されたものはございません。 凍結胚の保存期間でございますが、これはヒト胚及び卵の凍結保存と移植に関する見 解によりまして、被実施者夫婦の婚姻継続期間内、かつ、当該婦人の生殖年齢を超えな い期間でございます。 それから、保存胚の提供は禁止されております。 余剰胚の研究・実験、それから、実験目的の胚作成でございますが、これはヒト精 子、卵子、受精卵を取り扱う研究に関する研究ということで会告が出されておりまし て、受精後14日まで認められております。但し、基礎研究や不妊治療研究にのみに限る ということでございます。 着床前診断につきましては、触れられておりません。 多胎減数手術につきましては、多胎妊娠に関する見解というものが出されております が、結論が得られておらず検討中ということでございます。 この会告につきましては、日本産科婦人科学会員の廣井委員も御出席でございますの で、言葉の足りないところ、また、訂正等があればよろしくお願い申し上げたいと思い ます。 以上でございます。 ○高久部会長 どうもありがとうございました。今、日本における生殖医療の現状と日本を含めた各 国の生殖医療に関する法律などの比較を説明していただいた訳ですが、何でも結構です から今の説明に対して御質問あるいは御意見がありましたら、どうぞ御自由にお願いし たいと思います。 これは質問なんですが、ZIFTの場合の卵管内に移植される胚は体外受精をした胚 なのですか? それとは限らない? ○廣井委員 これは体外受精をした胚なんです。 ○高久部会長 そうですね。分かりました。 ○廣井委員 ですから、外で受精されて培養して2つ、4つに分かれたものです。 ○高久部会長 それから、もう一つ廣井先生にお伺いしたいのですが、IVF−ETの中で新鮮胚、 保存凍結胚とあります。表の2で顕微授精を用いたIVF−ETと書いてありますが、 IVF−ETは基本的には顕微鏡下操作を使ってはないですね。わざわざIVF−ET の中に顕微鏡を用いた治療が78と分けているのはどういう意味があるのですか。 ○廣井委員 これは恐らく顕微授精そのもののほとんどが精子が非常に悪い、あるいは、ほとんど が精子の運動能力がないために、先程ありました人工的な操作で受精をさせるというI CSI・SUZI−PZDという方法を取りますので、後の方に述べておりましたほと んどが新鮮胚を用いて入れているんです。凍結をしていないでかなりの数が受精すれば そのまま用いているというのが多いので、ここでは体外で受精させ、ある程度培養して 新鮮胚で強制的に受精させて体外で培養して、2細胞または4細胞になってから戻して いるということでIVF−ETの項目の中に入れている訳です。だから、普通のIVF −ETは自然の受精ですけれども、これは自然ではないものです。 ○高久部会長 どうもありがとうございました。 他にどなたか御質問あるいは御意見おありでしょうか。 ○山崎委員 この余剰胚の研究・実験というのは、そして、それが受精後14日まではいいというふ うなことでありますけれども、実際どんな胚の状態をどういう研究まで認められている のかということをちょっと教えていただきたいのですが。 ○廣井委員 これは、※ウォーノック・レポートがイギリスの方から出てまいりましたもので、大 体受精後14日まではまだ人間らしい状況になっていないということで、いわゆる他の動 物とほとんど変わりないということで、受精後14日までは実験に用いているというこ とになるのですけれども、その実験がどういう実験かとなるとなかなか難しいのです が、例えば、顕微授精などをして、その後の発育の状況あるいはDNAないし染色体分 析、それで異常がないかどうかというのを見たりするような研究がほとんどだと思いま す。 ○山崎委員 余剰胚という言葉の定義がちょっと分からないのですが。 ○廣井委員 それは、多胎妊娠が非常に多いということで、先程説明がありましたように、昔は体 外受精で得られた受精卵を子宮の中に戻しても着床が20%ないし30%、かなりのものが 流産してしまうので、たくさん戻す訳です。ところが、場合によっては5個、10個と戻 して7胎、8胎ということになることが多いので、最近学会では3個までを戻そうとい うことにしています。3胎では、ほとんどが全員助かるのですけれども、4胎になると かなり厳しい。特に、日本の場合には減数手術というのを認めていないものですから、 3胎までにしようということにしてあるのです。そうすると、受精卵がたくさん出来る とそれは凍結保存して取っておくか、或るいは、そういうシステムがないところでは余 っているということで実験に使うという形になっております。 ○山崎委員 どうもありがとうございました。 ○高久部会長 アメリカの場合ですが、確か余剰胚の研究・実験については、NIHでアドホック・ コミティーが出来て、ガイドラインを作り、委員会で認めたプロトコール(手順)なら 実験に使ってもよいという答申を出していましたが、その後クリントン大統領が実験目 的の胚作成は禁止するというふうにしたのではなかったですか。実験目的の胚作成に、 規制がないということではなかったと思います。 ○木村委員 アメリカの場合は、規制の法律とか法律以外の規制等というところに一切触れられて いないので、ちょっと今、部会長の方からも御指摘があった訳ですけれども、連邦政府 が受精卵の研究に伴う生殖医療関連のリサーチのファンドを一定の条件を満たさない限 り出さないということにしているんです。その規定が大変厳しくて、例えばアメリカの ノーフォークの人工授精クリニックとか、プライベートなところでやっている場合には いいのだけれども、連邦政府が出さないということになると研究が推進しないというの は、非常に昔から問題になっているのですけれども、一応、受精卵については7日をも って1つのメルクマール(判断基準)とする。大体7日というのは着床でございます か。 ○廣井委員 大体そうですね。 ○木村委員 ですから、アメリカの場合にはそういうふうな非常にはっきりした連邦政府による規 制があるということは、恐らくどこかに入れておく必要があるのではないかというふう に今、高久部会長の御説明にあったとおりでございます。 それから、もう一つ、せっかくこれは大変にすばらしく色々御調査していただきまし たので、国際機関での対応はどうなっているかということも、例えば、カウンシル・オ ブ・ヨーロッパ(欧州評議会)では日本の科学技術庁の代表の方も部分的に参加して、 ※ヒューマンライツ・アンド・バイオメディシンという国際規約が出来ました。これは 各国が批准して署名したりしている訳で、これはイギリスは反対して署名していません けれども、そういう状況も出来ればお入れいただければ大変ありがたいというふうに思 います。 ○高久部会長 それは是非、御存じだったら事務局の方にお示し下さい。 ○木村委員 分かりました。 ○事務局 この資料は、先にお答えしましたとおり、まさに未定稿資料でございますので、今の ような御指摘の点も踏まえまして、今後の議論に非常に重要な資料になろうかと思いま すので正確を期し、また、拡充をいたしたいと思います。 また、私どもだけではなかなか知見が不十分でございますので、委員の皆様方の方か らこれはこうなっているはずだという御指摘等がございますれば、事務局にお寄せいた だきまして是非きちんとした資料にして、また、次回以降、再配付するようにいたした いと思います。どうかよろしくお願いいたします。 ○高久部会長 どうもよろしくお願いします。 それでは、寺田先生。 ○寺田委員 今、部会長と木村委員が答えてくださったようなことを質問しようと考えておりまし た。1つだけ、日本の場合で、例えば、ここで会告というのがございます。これはどの 程度の拘束力を持った話になっている訳でしょうか。 ○廣井委員 これは、学会員は原則として会告に従うということになっているのですけれども、万 が一そういうことがあっても、今まで除名された例がないんです。ですから、自主規制 という格好でございます。 ○高久部会長 減数手術などやっておられますね。これは、学会員の方がやっておられるのですか。 ○廣井委員 減数手術に関しては、例えば、多胎妊娠に関する見解というのを学会で出しているの ですけれども、原則としては認めていないような方向に来ているんです。ですから、は っきりだめだというようなことは、なるべくその前に、多胎を起こさないように努力す べきだというようなことにしているものですから、初めは1ヶ所ないし2ヶ所、長野の 某先生がやっておられたということになって、ところが、この間の先程の調査ですか、 何ヶ所かやっているようですね。厚生省の資料を読みますと。絶対だめだという、むし ろ我々、日本受精着床学会という学会があるのですけれども、これをシンポジウムに取 り上げて、中谷先生などに出ていただいて、お話しして頂いたものも聞いていたのです けれども、結果的には、むしろ認めるべきだという方が大半なんです。ジャーナリスト も出ていたり。優生保護法が成立した時期には、まだ、一部の受精卵を排除するという 技術がなかったんです。おろすかオール・オア・ノンであると。例えば、5胎で全部お ろせば法律的に問題はない。だけれども、そのうちの2つか3つを中絶することによっ て、ほかの2つを助けるということの技術は当時なかった訳で、優生保護法違反だとい う意見もあったのですけれども、当時は技術的に問題があるということで、優生保護法 の場合には今の母体保護法、これは胎児より胎児付属物を母体外に排出するのが人工妊 娠中絶だということなのですけれども、中絶の排除する時期を明確にしていない。どう せ出産の時に全部出てきてしまう訳ですから、そういう面から言うと、5胎すべてをお ろすのが法律的に問題がなくて、2人ないし3人を助けることの方がかえって問題であ るということは問題じゃないかということで、ジャーナリストや法律学者の先生方は、 母体保護法から見ても余り問題ではないのではないかという御指摘がございまして、学 会ではまだ、必ずしもはっきりとした見解が出ていないというのが現状だろうと思いま す。 ○金城委員 ですから、去年、母体保護法に改正になりましたね。そのときに、それはきちっと対 応するべきだったんです。今のところは法律の解釈について争いがあって、ですから検 察庁は、どうしてもこれは問題とするということになれば、有罪の判決を受ける可能性 がある訳です。しかし、今、廣井先生がおっしゃったように、技術が発展してきて新し いことが出来るようになったのですから、それに対応するように法律を改正するなり、 そういうことをしなければいけないのにしていないものですから、非常に問題が起こっ ているということで、これはやはりきちんと改正の提案なり何なりをしていく必要があ るのではないかと思います。 それから、質問なんですけれども、これは日本における生殖医療の現状の中の6ペー ジなのですけれども、出生前診断をした後、胎児異常が幾つか出てきている訳です。こ の結果、異常が出た場合にどういう措置を取ったかということについての御調査はあり ますでしょうか。 ○事務局 6ページ目の表13でございますでしょうか。 ○金城委員 表12です。異常が幾つも出てきている訳ですね。 ○事務局 異常についてのフォローアップにつきましては、調査しておりません。 ○金城委員 是非、それがすごくこれから考えるときに必要だと思いますので、出来ればそんなこ ともしていただきたいと思います。 ○高久部会長 これは廣井先生の方の御関係だと思うのですがあえてしなかったのですか。 ○廣井委員 私も、このメンバーではないのですけれども、藤本先生が中心に調べられたというこ となのですが、恐らく色々な問題点があるので、実際は調べてあって報告していないの か、その辺はちょっと分かりません。 ○木村委員 診断の結果、中絶したということの報告は統計上出てきていないけれども、厚生省に は優生保護統計というのがあって、それに一応色々な事由については記載が詳しくごく 最近までされていましたね。この優生保護統計というのは、名前が恐らく変わったのか どうか、そこら辺のところを含めますと、意外と優生上の事由によるという中に含まれ ている可能性がある場合もあるのではないかというふうに私は読んでいたのですが、そ こら辺のところは事務局としては、例えばどういうふうに把握しておられるのかちょっ とお伺いしておきたいですね。 ○高久部会長 どうでしょうか。 ○事務局 昨年、優生保護法が母体保護法に変わりまして、現在は母体保護統計ということで統 計を取っております。この法律で、過去には優生手術を行う理由がいくつかございまし たので、法律の条項ごとにどういった理由で不妊手術または人工妊娠中絶が実施された かという統計につきまして取っております。 ○高久部会長 その理由は、どういう内容か教えていただければ。 ○事務局 人工妊娠中絶件数ということでございまして、これは当事者の遺伝、近親遺伝、ハン セン病、母体の健康、暴行脅迫というように分けて数字を取っております。 ○高久部会長 大体のパーセンテージがもし分かれば。大まかで結構ですけれども。 ○事務局 現在までの統計で年次ごとの件数が出ておりますけれども、パーセンテージを出した ものがございませんので、ちょっとお時間をいただいて、いい表がございましたら配付 させていただきたいと思います。 ○金城委員 ただ、日本の場合は胎児条項がないですので、多分この結果を推定出来るような数字 は出てこないのではないかと思います。 ○高久部会長 そうでしょうね。 ○廣井委員 ほとんどが経済的な理由だと思います。 ○高久部会長 他にどなたか、今の調査について。 一応、御報告いただいた訳でありますが、特に外国のことなどについては、今、御議 論がありましたように、まだ、付け加えることがたくさんあると思います。非常に貴重 な参考資料となりますので、是非、委員の先生方からも色々御教授願いたいと思いま す。よろしくお願いします。 木村先生どうぞ。 ○木村委員 今の御発言に関連してなのですが、私どもの先端医療技術評価部会というのは、バイ オメディカル上の非常に詳しいデータのみならず、倫理的、社会的、法的な様々な課題 を含む、国民にとって一番関心のある事柄をとりあげるのだと思う訳です。従いまし て、出来ればそれに関連する資料、特に、バイオメディカルな資料につきましては御専 門の先生方がここにいらっしゃる訳ですから、内容的にこうやってデータで出てくれば 一目瞭然になる訳ですが、日本のところで書かれている、これは必ずしも長いものでは なくて、非配偶者間人工授精と精子提供に関する見解みたいな短いもの、会告で恐らく 1ページぐらいで出ている訳です、確か。ですから、そういうものについては出来れば 参考資料として御配付いただければ大変にありがたいというふうに思っている訳です。 関連して申し上げますれば、例えば新聞記事などによりますと、日本人類遺伝学会で も現状の法のあいまいな適用を憂えて、むしろ胎児条項を入れた法案の改正を会として 取りまとめるというようなこともある訳ですので、そういうことの資料も含めまして、 配付資料の中に是非入れていただきたいというふうに思います。 ○高久部会長 おっしゃるとおりだと思いますので、よろしくお願いいたします。 ○事務局 今、御指摘のありましたような資料につきましては、今後、参考資料として極力収集 いたしまして配付いたしたいと思っておりますが、この後、実は今後のこの部会の進め 方につきまして御相談申し上げる際に、色々な関係団体等から広くヒアリングを行いた いというふうに考えておりまして、そういった中で更に詳しい資料の提出や御説明もい ただけるのでないかというふうに実は期待しておるところでございます。 ○高久部会長 その関係団体のヒアリングのことについての少し御意見をお伺いしたいと思いますの で、(案)を配っていただけますか。 では、この(案)について説明していただけますか。 ○事務局 初めにお断りしておきたい訳でございますが、ここに掲げてある団体すべてをヒアリ ングするとか、あるいはここに書いていないところからヒアリングしないということで はございません。今、私どもの方で把握しております生殖医療の関係団体等あるいは私 どもが議論を進めていきたいということを表明してから、色々と関係団体等から御要望 等が相次いでおりますので、そういったものを現時点でとりあえずまとめた資料という ことで、まず、この資料の性格につきましては御理解いただきたいと思います。 実は、生殖医療の問題につきましては問題が多岐にわたりますし、倫理的な問題、人 権の問題といったような色々な複雑な問題も含まれておりますし、また、国民の関心も 非常に高いというような問題である訳でございまして、関係団体とか専門家を含めまし て幅広く意見をお伺いすることが重要であるというふうに考えられますので、そういっ た方々のヒアリングなどをして資料提供などをお願いしつつ、先程の論点等を参考にし ながら並行して議論を進めるという格好がよろしいのではないかというふうに事務局と しては一つの提案をいたしている訳でございます。 その場合に、とりあえず、医療関係団体或るいは遺伝学会等の関係団体、それから法 曹関係等人権に係わるような団体、それから、障害者団体を始めといたしまして、これ まで厚生省に対して色々な申出があった団体というような、一応の分類をしたのがこの 資料でございます。 実際に、ヒアリング等を実施するにあたりましては、ある程度数も多うございますの で、効率的にやる必要があろうかということで、関連するグループごとに数団体ずつヒ アリングというような格好になろうかと思います。 また、その前に意見陳述に際して、その要旨等を事前に資料として御提出いただくと いうような工夫をいたしまして、なるべく効率よくやっていきたいと思っております。 ただ、団体によりましては、例えばでございますが、日本産科婦人科学会等が会告等を 色々出しておられる経緯もございますので、ある程度時間をというようなこともあろう かと思いますので、そういった日程につきましては弾力的に十分配慮していきたいとい うふうに考えております。 ただ、このような格好で色々とヒアリング等を行うといたしましても、ある程度時間 の制約もございまして、すべての団体或いは一般の国民からの意見というのは、なかな かヒアリングの機会というのは難しい場合もございます。そういった場合には、文書で 事務局の方に御意見をお寄せいただきまして、それを適宜参考資料として配付いたしま して、委員の皆様の御検討の参考にしていただきたいと思っておる訳でございます。 実は、今日、参考資料ということで既に配付したものがございます。これは、大阪の 『優生思想を問うネットワーク』という団体の方から、この委員会の主に進め方につい ての御要望でございますが、委員のメンバーに加えてほしいとか、或るいは、障害者・ 女性などの意見陳述を認めてほしい、或るいは、なるべく資料などは公開してほしいと いうような要望が来ております。実は、この他にも他の団体等から同様な意見も来たり しておりまして、そういったような要望等、こういうふうなものをいただきましたら、 必ずこの委員会の方に提出するようにいたしたいと思っております。 なお、この要望書自体につきましては、回答が欲しいということも来ておりますので 別途、会長、部会長とも御相談いたしまして、事務局の方から回答させていただきたい というふうに考えております。 それから、ある意味で今後のスケジュールもこういったヒアリングを組んでいくにあ たりまして、大変必要になる訳でございますけれども、本当に厳しい日程でございます ので、このとおりいくかどうかは分かりませんが、部会長からも御指摘ありましたよう に、平成10年の7月ぐらいを目途に、ある程度の検討結果の中間的な取りまとめを目指 せないかということを考えております。そういった関係から当面、一ヶ月あるいは一ヶ 月半に一回程度部会を開催いたしまして、その中でまず前半に関係団体のヒアリングを 実施し、その質疑応答をした上で関係団体の方にはそこで退席をしていただきまして、 それらを踏まえながら検討項目等に従って御議論を進めていただければと。そして、大 体平成10年5月ぐらいまでに一通りのヒアリングを終えまして、平成10年6月、7月で 何とかある程度のものがまとめられないかと。 ただ、これにつきましては先程も申し上げましたように、決して最終的なものではな く、意見の対立等があれば当然両論併記ということで、言わばこれまでの論議の経過を 踏まえて、更に広く国民的な論議につなげていくためのものという中間的なものを目指 せればということでございまして、そういったものを出した後も、なお、ヒアリング等 を行いながら、更に審議を進めていくというふうな格好になるのではないかと思いま す。 いずれにしましても、スケジュール調整のお願いをしておりますが、非常に日程的に 厳しいものもございますので、状況によりまして日程等の変更というようなことも十分 ある訳でございまして、それらを踏まえて今後、弾力的に審議をしていただければと思 う次第でございます。 以上でございます。 ○高久部会長 これは何回ぐらいやる予定なのですか。ある程度の予定を決めていただかないと、団 体も絞れないものですから。 ○事務局 今のところ、ヒアリングにつきましては4回から5回何とか盛り込めるのではないか と。それから、その後、更に2〜3回の割合でヒアリングではなくて本格審議が出来な いかというふうに考えております。 ○高久部会長 1回のヒアリングでどれぐらいの団体の方から聞く訳ですか。 ○事務局 関連によりますが、3団体ないし5団体ぐらい出来ればということでございますが、 なかなかやはり厳しいものがございますので、数的にはやはり1〜2団体になるような ケースも多々あるのではないかと思っております。 ○高久部会長 分かりました。 勿論これは案でありますが、これについて、例えば、この団体を加えるべきだという 御意見など、今ここでお伺いいたします。もし、お気づきの団体があれば。 ○事務局 特に、この団体は重要なので是非これは入れてほしいという御意見等がございますれ ば、是非お願いしたいと思っております。 ○寺田委員 やはり遺伝というのは、がんが割合おもてに出て、色々なところに出ていますし、家 族性腫瘍研究会というのがガイドラインを作って今オープンに色々なところで検討して もらっていますので、参考になるのではないかと思います。これは生殖医療という枠で はなくて、遺伝子診断ということでありますけれども、家族性腫瘍研究会というのが正 式の名前で、是非入れて頂きたいと思います。 ○金城委員 これは外国の例と比較をいたしますと、やはり宗教団体というのは外国の場合非常に 大きな問題を持つ訳です。日本の場合はどうかということですけれども、脳死の場合も やはりそういう方々も入っていましたから、生命の始まりについても宗教団体、仏教関 係者でも何でも結構ですけれども、御参加を願った方がよろしいのではないかと思いま す。 ○高久部会長 宗教というと非常に数が多いけれども、仏教とキリスト教ぐらいですかね。 あと、 他にどなたか御意見おありでしょうか。 ○松田委員 今スケジュールを伺ったのですけれども、かなりタイトだと思いますし、それから、 一番心配するのは、十分に議論が尽くされただろうかということが必ず後から出てくる と思うんです。先程の話だと4団体、5団体の話を聞くというのは、聞かされている方 も大変なエネルギーでして、5団体を1日に朝から晩まで聞かされてまとめろと言われ ても、かなりきついのではないかと思うんです。だから、余りそうタイトなスケジュー ルを最初からお考えになられると。それから、全員が集まれるとは限りませんし、何か ちょっと不安な気がしますので、スケジュールが大事なことは勿論分かっています、分 かっていますけれども、ちょっとその辺のところを、もう少し余裕を持った考え方も是 非していただきたいというふうに思います。 それから、先程がんのお話が出ましたけれども、大変大事な問題でして、これは生殖 医療となっていますが、当然、出生前診断、将来、それから、保因者診断。保因者診断 は当然またそれぞれにかかってくる訳ですから、当然遺伝子診断というものも色々な意 味で大きな視野に入る訳です。ですから、是非ともそういう大きな考え方の中での生殖 医療というふうに考えないと、この問題は解決出来ないと思いますので、是非、入れて いただくのがいいのではないかと思います。 以上です。 ○高久部会長 今の金城委員から宗教団体のお話もありましたし、医療団体、遺伝学会、法曹関係、 申入れのあった団体、宗教団体の5つですと、例えば、その5つに分類した中から2つ ずつ聞いても10になりますね。それぐらいは覚悟しなければならないかもしれないです ね。法曹関係ですと、法律の関係の方は弁護士連合会だけで良いのですか。 ○金城委員 そうですね。この問題について連合会それから、各弁護士会がありますけれども、日 弁連で全部まとめて。 ○高久部会長 そうですね、それで代表して頂いて、1つでいいですね。宗教はキリスト教と仏教は どうしても2つにしないと一緒には出来ないでしょうが、遺伝学会関係も日本人類遺伝 学会が一番いいのではないでしょうか。あと、医療関係団体からは2つか3つはどうし ても聞かざるを得ないかなとは思っていますが。 ○木村委員 民間団体ではどうしても入れてほしいと思うのは、日本家族計画連盟です。あそこは 遺伝子スクリーニングのセンターもございますし、色々な御関心を持っている理事の 方々も多いので、是非、これは入る必要があります。 それからあと、ここには厚生省に関する申入れがあった団体というふうになっており ますが、そのカテゴリーに入るかどうか、ここには名前が出ていませんけれども、女性 団体、母親の体を守る会とか一般的な女性の団体がここでは名前が挙がっていないよう で、代表的な女性の団体が何かということは私は今は分かりませんけれども、是非、女 性団体を入れないと男女平等の建前から言っても非常におかしくなるというふうに思い ます。 それから、先程の事務当局からのお話に関連して御質問させていただきますが、文書 でこうやって事務当局へ色々な申入れがあって、私もスウェーデンにおりましてもアメ リカにいましても、厚生省のネットワークのインターネットのホームページが大変きれ いで、議事録も勿論出てきますので拝見させていただいている訳ですが、これはイン ターネットで事務局にこういう文書を出しているのですか、それとも、FAXで来てい るのでしょうか、手紙で来ているのでしょうか。今迄のところはいかがでしょうか。 ○事務局 今までのところは郵送で送られてくるものが多いようでございます。まだ、インター ネット等を通じて意見を公募という格好を取っておりませんものですから、インターネ ットでの意見の提出というのは今のところございません。 ○木村委員 これは是非、こういう時代ですので、例えば、アメリカにいても、この間もメリーラ ンド州で障害者の女性問題を巡る会がございまして、そこでも日本の母体保護法の改正 が話題になったりして、日本からの代表が色々な資料を配付したりした訳です。世界の どこにいても意見を述べられるような形で、今後の課題として是非インターネットでも Eメールのナンバーを押せば、せっかくすばらしいシステムが出来上がっている訳です ので、公式にそれを受け止めるという形にしてやっていくことが大変いいのではないか と思います。特に、一般の国民の世論をそういう形で非常に容易に、言わばコミュニ ケート出来るんだということが公開ということの原則にもつながってくる訳ですので、 その点については、今後、部会長是非、御配慮していただいて、この部会としての対応 を決めていただきたいというふうに思います。 ○事務局 部会の方で、そういうふうなことが必要だということで御指示ございますれば、例え ば、厚生省におきましても少子問題につきまして、これは私ども大臣官房政策課の方が インターネット上で意見を募集するということをやりまして、それを取りまとめたりし ておりますが、そのようなことは十分可能でございますので、検討いたしたいと思って おります。 ○高久部会長 私が座長をしております血液問題については、中間報告についてインターネット上で 意見を求めまして、非常にたくさんの御意見を一般の方、それから、血液の専門の方々 からいただきました。こういう形で意見を述べる事が出来て非常にありがたいという御 意見が随分ありましたので、是非、インターネットで意見を求められればいいと思いま す。事務局の方は意見が殺到して大変でしょうけれども、そこのところは御苦労様でも せっかくいいシステムがありますので利用していただければと思います。もし、これ以 外に是非というのがありましたら、事務局の方に申し出ていただきたいと思います。 それから、どの団体からどういう順序でヒアリングを実施するかについては、事務局 の方と私の方で相談して決めさせていただきたいと思いますが、もし御意見がおありで したら、どうぞこの場でも、或るいは後で事務局の方に御連絡いただきたいと思いま す。順番と言っても、なかなかどこからしていいか、少し事務局の方と相談させていた だきたいと思います。 次に、前回議論になりましてまとめられなかった問題として、ヒトのクローンの問題 があります。ヒトのクローン研究については既に科学技術庁、それから、文部省でも議 論というか、研究についての提案が出ておりますが、お手元に配られた「ヒトクローン 研究について」ということで案が出ておりますので、残りの時間を使って少し討論して いただきまして、最後に北海道大学の遺伝子治療研究の中間報告と作業委員会について の報告をさせていただきますので、よろしくお願いします。 ヒトクローンの研究につきましては、前回のこの部会におきましても色々御議論があ りました。御意見を参考にして、今一つの案として「ヒトクローン研究について」 (案)ということで机上に配付しています。この案につきまして御意見をいただきたい と思いますので、よろしくお願いします。 ○事務局 お手元に配付いたしましたものは、前回、御議論いただいたものが非常に文章的にこ なれていないというような御指摘で、多数の御意見をいただいたものがありましたの で、それに基づきまして事務局において再度修正を行ったものでございます。 基本的には、まず、個人の複製を用いましたヒトクローン、これは社会的に受容が全 くないということで、これは当然行うべきではないというのが第1節でございます。 しかしながら、クローン技術そのものを見た場合には、長期的には課題となっており ます人の健康と福祉を脅かすさまざまな事由に対して、何らかの解決の手段となる可能 性を持っているということから、この研究についてこれを止めるというよりは慎重に推 進すべきであるというのが第2節でございます。 第3節は同じ趣旨でございますけれども、人の遺伝子や細胞レベル、すなわち個体複 製は厳に禁止されているけれども、技術の研さんにつきましては、各国とも一生懸命取 り組んでおる、ここに十分注意すべきではないかという事です。 それから、4番目は当然のことながら、社会的な受容の形成という点からも、こうい った研究を進めるにあたっては適切な情報の公開ということを心掛けていかなければな らないと、ここを明示するという4点から構成されているものでございます。 大体、前回御指示いただきました色々な文章の不明な点を等を出来るだけ明確にする よう努めたつもりでございます。 ○高久部会長 この(案)につきまして御意見がおありでしたら、どうぞよろしくお願いいたしま す。 ○木村委員 前回の議事録を拝見させていただきました。大変に色々な意見が出ていて色々教えら れました。 私は、やはり具体的な提案から先にいきますと、第2項のところなのですが「引き続 き慎重に推進すべきであり、そのためのガイドライン作成を行う」というところまで書 いていいのではないかというふうに思うんです。もし、この部会が決意すれば、やはり 慎重なガイドラインをつくる必要があるのではないかというふうに思っているというこ とです。 それから、3番のところは、既に各国で広範かつ強力に推進されていることは間違い ないことで、これは私も同意ですが、一応、各国では慎重な配慮に基づいて広範かつ強 力に推進されているということも、これまた間違いないところですので、社会的な倫理 的な問題を踏まえ、慎重な配慮に基づいて行われているということは入れておきません と、各国で非常に自由勝手気ままにやっているという印象を与えるのではないかという ふうに思った訳です。 それから、4番目は適切に情報公開をすることは不可欠である訳ですが、それについ て不可欠であるのですけれども、それをどうしようかということですね。私ども部会と しては、従って、そのために積極的に言わば部会を公開にすることを決めているという ことを明言した方がいいのではないか。その3点について、ちょっと今、配付されたば かりで恐縮ですが、感じましたことを申し上げました。 ○高久部会長 どうもありがとうございました。確かに、ガイドラインが必要になってくると思いま す。 それから、3番目のことについても各国でもやっておりますが、おっしゃるように慎 重にしておりますので、その御意見を是非入れたいと思っています。 4番目については「公開することが不可欠」ではなくて、「公開する」とした方がい いのかもしれませんね。同じようなものですが。 ほかにどなたか御意見ございますか。 ○山崎委員 これは、一番を除いては2、3、4というのは既に古い歴史を持っておるin vitro (生物個体の中で行われている反応を試験管内など個体外に取り出して行わせること) でのヒト細胞を使った、あるいは、遺伝子を使った実験・研究すべてを含むように思う んです。殊更ここでこういうことを言わなければならない理由というのが、あまり明確 でないと思うんです。 それから、もう一つは、頭に「ヒトクローン研究について」ということになっていま すが、むしろヒトクローン研究の、別のある意味でヒトではない動物のレベルのクロー ン研究を日本はどんどん進めていくかどうかということについては、一切にここに触れ ていないような気がするのですが、そこをちょっと。 ○高久部会長 これは、4番目でクローン技術と言ったときには当然、動物も入っているのではない かと思ったのですが。 ほかにどなたか御意見ございますか。 余談になりますけれども、無精子症の御主人を持った奥さんが、どうしても自分の御 主人の子どもを産みたいと非常に強く希望したときにはどうするのだろうという議論が ある所でありました。今の1に該当するクローン技術を使わないと御主人の子どもは産 まれない訳です。将来、動物で確率が非常に高くなって今の体外受精ぐらいの頻度で成 功するようになったときに、無精子症の御主人の子どもを奥さんがどうしても産みたい と言ったときに、どうなるのだろうということです。そういう意味で1の「当面」とい う言葉が生きている。確か、アメリカのも「当面」という言葉が入っていましたね。 それでは、今色々御意見いただきましたが、この(案)について基本的に。どうぞ。 ○金城委員 日本の場合には、受精卵に対する研究について、その内容をどこかに審査を求めて、 そして、内容について許可を得てから実験をするということになっていない訳ですね。 あくまでも目的が不妊治療その他基礎研究ということなんです。そういう目的に果たし て合っているかとか、それから、本当に作ったとしてガイドラインに合うかとか、そう いうことまでも含めて、これは受精卵実験の問題と共通することになると思うのですけ れども、具体的に人の胚が対象である場合には、やはりどこかで実験の内容をきちんと 検討してやっていいかどうかということをするようなことも含めて、検討していただき たいという感じがいたします。 ○高久部会長 それは、この生殖医療全体に関わる問題ですので、今後この部会の中で出来れば来年 7月ぐらいまでには、そういう提案をまとめられる範囲でまとめたい。おっしゃるとお りだと思います。 時間の都合もありますので、それでは、次に事務局の方から北海道大学遺伝子治療臨 床研究の中間報告と、作業委員会の設置についての報告、よろしくお願いいたします。 ○事務局 それでは、事務局より遺伝子治療関係2件御報告申し上げます。 まず、北海道大学遺伝子治療臨床研究の中間報告についてですが、本日は資料はござ いません。口頭で御報告申し上げます。 本件につきましては、前回部会におきまして御報告したところでございますが、平成 9年8月12日付で北海道大学より遺伝子治療臨床研究について当課あて、その後の経過 報告がございましたので御報告申し上げます。 北海道大学医学部附属病院小児科におきましては、既に前回御報告しましたとおり、 一昨年の8月から今年の3月まで11回にわたりまして、アデノシンデアミナーゼ欠損症 の患者さんの末梢血のリンパ球に対する遺伝子の導入と、そのリンパ球の投与を行って きましたが、期待された効果が見られる一方、重篤な副作用、殊にベクター由来の増殖 性ウイルスの産生につきましては、ウイルスの遺伝子や酵素の働きを見る方法では、11 回の投与とも陰性であったとのことでございます。 このようなことから、一連の投与を中断し、経過を深く観察することとしたというも のでございます。 しかしながら、本臨床研究は、寿命の限られた末梢血のリンパ球に対して行われるも のであることから、今後、遺伝子導入操作が必要となることも予測されます。北海道大 学では、その際、リンパ球を増やすときに用いる血清をこれまで用いてきたウシ胎児の ものから、より副作用の少ないと思われるヒト血清に変更して実施したいとのことでし た。 事務局では、このような報告の内容を高久部会長及び当時のADA遺伝子治療臨床研 究作業部会の主査であられました豊島先生に御相談申し上げました。その結果、今後、 治療の再開の際に血清を変更することにつきましては、軽微な変更として取り扱うこと といたしました。ただし、北海道大学に対し、ヒト血清についてはC型肝炎等のリスク が考えられるので、適切に対処するとともに、患者及び家族に対するインフォームド・ コンセントも十分行うよう指示いたしました。 また、最近北海道大学に確認しましたところ、9月末の時点で効果が持続していると いうことでございました。 引き続きまして、がん遺伝子治療臨床研究作業委員会(仮称)についての御報告でご ざいます。資料3でございます。 前回、本年7月10日に開催されました本部会におきまして、遺伝子治療臨床研究実施 計画の評価の手続について御議論いただきました。このうち、従来、中央評価会議の下 に設置されていました作業部会の業務につきまして、本部会の下に専門の委員会を設置 して業務を引き継ぐこととされましたので、その委員会に関する諸規程を整備いたしま した。 先に本部会に付議されております東京大学と岡山大学におけるがんの遺伝子治療臨床 研究実施計画の評価につきましては、引き続きがん遺伝子治療臨床研究作業委員会(仮 称)において、主として科学的事項の論点整理をいただくこととなります。 また、がん遺伝子治療臨床研究作業委員会に所属していただく委員につきましては、 従来の作業部会に所属されていた委員にお願いすることとしております。なお、委員 (案)一覧は資料3の1ページ目に記載してございます。 また、遺伝子治療臨床研究作業委員会規程につきましては、厚生科学審議会の諸規程 に基づき、2ページ目のように整備いたしました。なお、作業委員会につきましては、 被験者個人や家族等の秘密、関連企業の知的財産の侵害の防止等の観点から、従来の作 業部会の経緯も踏まえ非公開の扱いとし、また、資料も非公開の扱いとしております。 以上、簡単でございますが、遺伝子治療臨床研究作業委員会について経過を報告させ ていただきました。 なお、岡山大学に関しましては、従来の作業部会の指示事項に基づく回答書が当課に 寄せられていますことを併せ御報告申し上げます。 以上でございます。 ○高久部会長 どうもありがとうございました。今、北海道大学の遺伝子治療臨床研究の中間報告と 作業委員会についての事務局からの報告がありましたが、何か御質問あるいは御意見が あったら、よろしくお願いします。 ○木村委員 この作業委員会というのが出来まして、これは非公開となっていますが、先端医療技 術評価部会の委員とか厚生科学審議会の委員も、要するに、そこには参加出来ないとい うことですね、そういう委員は参加出来るのでしょうか。これは今までどうなのでしょ うか。 ○高久部会長 参加していましたね。実は、文部省と厚生省の両方に委員会がある。厚生省の方はこ の先端医療技術評価部会で、文部省の方は学術審議会の方でやっていまして、大学で行 う研究については、文部省の方の審査も受けなければならないということで、色々な問 題があるにしても一応そういう体制になっています。その当時は作業部会と呼んでいた のですが、せめて作業部会は共通の委員でプロトコールについての審査をしようではな いかということでまとまりました。ですから、ここで作業委員会と呼んでいるのは文部 省と厚生省共通のものです。ここにありますように、私も作業部会の委員になっており ますし、豊島先生もこの委員でもあります。それから、学術審議会の委員もバイオサイ エンス部会に入っておられます。ですから、今までは専門家ということで、この委員で あるないということは余り関係なく決めておりました。 ○木村委員 これは、前回の議事録などを読みましても遺伝子治療臨床研究中央評価会議は、確か 高久部会長が委員長でおられたんですね。その委員会は、公開でやってきた訳ですね。 そして今、この委員会がそれを引き継いだ訳ですね。これは引き継いだのではないので すか。 ○事務局 前回のときにも若干、御説明をいたしましたが、遺伝子治療臨床研究中央評価会議は 厚生大臣が設置する私的な会合という形で、厚生大臣が定めました臨床研究の評価基準 に対する形で設置し、運営されてまいりましたけれども、遺伝子治療臨床研究中央評価 会議そのものは議事並びに議事録の公開をずっと続けてきております。その取りまとめ は高久先生におやりいただいた訳ですが、その業務につきましては、現在の厚生科学審 議会先端医療技術評価部会の方に引き継いでいただいたというふうに理解しておりま す。 中央評価会議そのものは、大体年に1回程度の開催でございまして、個別の計画ごと に作業部会を設置いたしまして、こちらの方で詳細な論点整理を担当いただいたところ です。例えば、北海道大学のものにつきましては、当時、豊島先生が作業部会の主査を 務められたという経緯がございます。ただいまの事務局説明にありましたとおり、この 作業部会では患者さんのプライバシーにあたる事項もしくは関連して協力いたします企 業等のいわゆる企業秘密にかかわる事項等も含めて、論点整理の作業を進めます関係 上、議事並びに資料については非公開の扱いを続けてまいりました。 今回も、そこら辺の手順については変わらないところから、この作業を担当いたしま す作業委員会につきましては、非公開の扱いとさせていただきたいということが規程に 盛り込んでございます。 ただし、その結果出てまいりました論点整理の結果、この部会におきまして個々の臨 床治療研究の計画そのものを御審議いただくものについては、あらかじめ部会の各委員 の御意向を確認した上で必要に応じ、部会長並びに会長の判断において議事そのものを 公開するということも可能な形になっております。 ○伊藤審議官 ちょっと補足しますと、厚生科学審議会が始まる前に、遺伝子治療の臨床研究の申請 が北海道大学から上がってきました。そのときに、文部省と相談をしまして、どういう 形で国の審査をするかということがあった訳でございます。高久部会長から今、説明が ありましたように、文部省と共同でやろうということで、これはアメリカのNIHの例 も調べまして、中央評価会議というのは全部資料もディスカッションもオープンにしよ うということでやった訳でございます。 ただ、個別の患者さんの科学的な妥当性については専門家の方に、それぞれ症例ごと に検討していただこうと。そして、そこに非常に治療計画の詳細な、免疫学からベク ターの安全性でございますとか膨大な資料が出てまいりますので、それを本当に専門の 先生から科学的妥当性を中心に詳細に検討していただこうと。例えば、ベクターの安全 性なり有効性などについては、企業から出てくるものが多いんです。従って、そういう 情報まですべて公開することについては非常に問題があるのではないかということで、 患者さんへのプライバシーの配慮と企業秘密をいきなり公開するということについては 問題があるということで、これはアメリカも同様に、そこの部分は非公開にしている訳 でございます。そういう手順を踏みまして、科学的な妥当性なり医学的にどうかという 論点を整理をしまして、中央評価会議で更にそのことについての質疑と、それから、イ ンフォームド・コンセントなり社会的な適用というような問題も含めまして、医学の専 門家以外の方、法律の方という医学領域以外の専門家の方ももっと加えていただいて、 中央評価会議を開くという手順でやってまいりましたので、今回も審議会という新しい 形で発足した後は、その形を基本的には踏襲させていただきたいということでございま す。 ○高久部会長 ちょうど時間に、そろそろあと1〜2分ですので、最後にしてください。 ○事務局 先程のヒトクローン研究の問題につきまして、ただいま御指摘のありました点を直し たものを、今、配付いたしますので、御検討いただければと思います。 ○高久部会長 もう時間になったからお渡しして、もし御意見があれば文書で事務局の方にお申し出 ください。皆さん、御予定があると思いますので、時間どおりに終わりたいと思いま す。 ちょうど12時になりました。本日はお忙しいところをお集まりいただきありがとうご ざいました。ようやく始まったという感じで、これから大変だと思いますし、また、何 回もお集まり願うと思います。今後ともよろしく、かつ、お手柔らかにお願いしたいと 思います。よろしくお願いいたします。 《解説》 ※羊水穿刺:診断或いは治療のため、羊水腔に針を刺入することをいう。一般的には超       音波ガイド下に経復壁的に穿刺する。 ※ポンペ病:II型糖原病のこと。全身の諸臓器にグリコーゲン沈着が起こる疾患で、培       養羊水細胞を用いた、出生前診断も可能である。 ※メチルマロン酸尿症:血中及び尿中にメチルマロン酸の著名な増量がみられ、しばし            ば新生児から重症のアシドーシス、筋緊張低下、嘔吐などの症            状が周期的に現れ早期に死亡する疾患。 ※臍帯穿刺:超音波ガイド下で母胎腹壁から直接臍帯に針を刺し、胎児血を採取する方       法。 ※Apgar score:出生児における新生児の全身状態の評価法。10点満点がもっとも良 い状態を示す。 ※ウォーノック・レポート:1982年イギリスで設置された、生殖技術に関しての社会的              ・倫理的・法律的問題に対する諮問委員会の委員長ウォー              ノックの報告。 ※ヒューマンライフ・アンド・バイオメディシン:  人権と生命・医科学に関する規約;欧州人権条約(1953年発効)にならって、全ヨー                  ロッパに共通の「バイオエシックス規約」として                  97年4月4日に調印、発効。人間生命の尊厳と人権                  の保護を規定した総則と医療における同意の原                   則、健康に関する個人情報の保護、遺伝的事由に                  よる差別の禁止、男女産み分け技術の使用禁止                  (性染色体による重症遺伝欠陥の場合を除く)、医                  科学研究における被験者の人権と安全性の保障な                  ど具体的な条項を含む14章38条からなる。 (イミダス98年版 木村利人委員著より抜粋) (注) この解説は簡略なものであり、必ずしも正確なものとは限らないことを御了     承ください。 問い合わせ先 厚生省大臣官房厚生科学課    担 当 坂本(内3804)    電 話 (代)03−3503−1711