97/09/24 年金審議会全員懇談会議事録 年金審議会全員懇談会議事録 日 時 : 平成9年9月24日(水) 午後2時00分〜4時20分 場 所 : 厚生省特別第1会議室 議事日程 1.開会の辞 2.委員出席状況報告 3.議 事 ・次期財政再計算に向けての検討について 4. 閉会の辞 〔出席委員〕   京 極 会 長   八 木 委 員   砂子田 委 員   岡 崎 委 員   木 原 委 員 久保田 委 員   神 代 委 員   福 岡 委 員   桝 本 委 員 山 田 委 員   山 根 委 員   吉 原 委 員   若 杉 委 員 渡 邊 委 員   船 後 委 員 ○会長 皆様、お忙しいところ、お集まりいただきありがとうございます。本日は、全員懇談 会でございますが、記者クラブの方から冒頭にカメラ撮りをしたいという申し出があり ましたので、議事に入りますまでの間、カメラ撮りを許可したいと存じますが、よろし ゅうございましょうか。 (「異議なし」の声あり) ○会長 それでは、どうぞ。 (報道機関入室) ○会長 ただいまから年金審議会全員懇談会を開催いたします。 まず、委員の出席状況について、事務局から御報告をお願いします。 ○事務局 その前に、事務局で異動がございましたので、二川企画官を紹介させていただきます ○企画官 二川でございます。 ○事務局 本日は、国広委員、古山委員、坂巻委員、高山委員、都村委員、貝塚委員、6人の委 員が御欠席の御連絡をいただいております。以上でございます。 ○会長 ありがとうございました。それでは、本日の議事に入りたいと存じます。 本日は、次期財政再計算に向けた検討項目のうち、主として給付関係について議論を お願いしたいと存じます。 スライド方式、高齢在職者・高所得者等に対する給付、支給開始年齢、総報酬制につ いて、事務局の方で資料を用意いたしておりますので、その御説明をお願いします。 ○事務局 それでは、資料について御説明申し上げます。資料1−1、分厚いもので恐縮でござ いますが、今回の議論の参考になりそうなもの、あるいは主な考え方を整理いたしまし た。時間の関係もございますので、現行制度であるとか歴史といった事実に関するもの は出来るだけ省略なり簡単に説明させていただきまして、ポイントで説明をさせていた だきたいと思います。 まず、1ページでございますが、このあたりはスライド制の方法について、特に物価 スライド、あるいは賃金スライドといったあり方を考える場合の資料でございます。ま ず、第1ページでありますが、これは既裁定の年金を以後、物価スライドのみとする、 賃金スライドをそこから先は行わないとした場合には、例えば65歳から年齢の経過とと もに、もし賃金がどんどん上がっていくならば、その上がり分だけは上昇しない訳です ので、いわば65歳の新規裁定の方からはだんだん乖離していくということになりますが それを幾つかのケースに分けて見たものであります。 一番左は現在の財政再計算で考えておりますベースに基づくものでありまして、標準 報酬が4%上がり、物価が2%上がる。要は、実質賃金が2%上がり続けるというケー スを想定いたしますと、65歳でもらった年金が100%としますと、例えば85歳まで20年 間もらい続けておれば、その2%の毎年の乖離が、結果として、例えば48.7万円あると ころが34.3万円になっているということで70%になる。しかし、実際、ここの数年間は 2%の乖離ということではございません。ですから、例えば実質賃金の上昇が1%と見 た場合、これは真ん中の場合でありますが、実際に標準報酬が3%アップし、物価が2 %であったとするならば、毎年毎年の上がり方の乖離の開きぐあいは、65歳の時点を 100%としますと、85歳、20年受給を続けた段階で86%のレベルになる。もっと賃金の 実質上昇が小さい右端のケースで 0.5%ぐらいしか物価と賃金の差がないということで あれば、これは、例えば65歳を100といたしますと、85歳、20年間受給を続けても、そ の乖離は100対94ぐらいになるということで、賃金スライドを既裁定以降止めた場合の 影響をご覧いただく資料でございます。 これに関しまして、次のページですが、実際に高齢者の消費動向がどうかということ を全国消費実態調査に基づいて見たものでございますが、2段目の網かけのところをご 覧いただきますとお分かりいただけると思うのですけれども、65歳から69歳の消費を 100とした場合には、70歳から74歳で95、75歳以上では81ということで、消費の全体の 額は下がっていく傾向にある。これにつきましては、その分、所得なり年金額も小さい から消費も小さくなるとか、いろいろな要素がある訳で、これですべての消費ニーズを 語っている訳ではありませんが、実際にはこういった消費動向になっておるということ でございます。 次の3ページの資料ですけれども、ざっとご覧いただきますと、これは各国の年金ス ライドのあり方を概観したものでありますが、幾つかポイントを御説明申し上げますと 各国とも基本的には、かつては賃金の動向も合わせて、あるいは賃金と物価の高い方を 使うとか、そういった時代があったものも多うございますけれども、現在のところでは 消費者物価の変動を基本に、イギリス、アメリカ、フランス、スウェーデン等、改定を しておるようであります。ですから、裁定するまでは賃金のアップは年金額に織り込み ますが、裁定後は基本的には物価を基本にして、いろいろな工夫がございますけれども スライドをしておるということ。 それから、後で申し上げることに関係いたしますが、ドイツのところをご覧いただき ますと、ドイツは今の日本のやり方と基本的には似ておりますけれども、ネット所得、 手取りの伸びに応じてスライドする訳でありますが、特に御注意いただきますのは、年 金の可処分所得、いわば老人の手取りについてもネットを反映しようということで、例 えば老人の手取りが減れば、それは年金額でその分リカバー出来るような方法を考えて いるということで、若い人もネット所得、それから老人の年金もネットでみるという形 をとっておるのがドイツの例でございます。 資料を先に急ぎまして、4ページは各国の物価なり賃金がどういう動向を示してきた かということでありまして、これもご覧のとおりですが、右端の最近の日本をご覧いた だきますと、物価と賃金の幅は、もう高度成長期みたいには差がありませんので、年に よってはほとんど変わらない年もありますけれども、それほど大きく開いておりません また、国によりましては、例えばカナダの最近あたりもそうでありますけれども、むし ろ物価の方が賃金よりも伸びたというケースもありますから、物価スライドのみにした ら、必ずしも年金制度において抑制的になるとは限らない訳でありますけれども、アメ リカ等もかなり長い時期、物価の方が賃金を上回っておりますから、実際には物価にス ライドしておれば、むしろ賃金よりも物価の方が上がっている訳でありますので、年金 額にとっては有利だったという時代もあります。これは今後、日本がどうなるかという 判断でございますけれども、日本は一貫して物価の方が賃金よりも低いということで変 動してきておるというデータでございます。 それから、5ページにまいります。これは、年金をスライドするときに間接税をどう 扱うかということでありまして、例えば我が国であれば、消費税が改定になって、消費 税が2%アップになった場合に、これが物価に 1.5%はね返ったといたしますと、我が 国の制度では、法律によりまして物価スライドということで、消費税アップが物価に影 響したものは全部年金額にはね返るという形になっておりますが、これについてはちょ っと違う考え方もございます。上の(1)は反映させるべきという現在の考え方でありま して、実際の年金の経済価値を維持するためには、そのはね返りは全部年金でみていく ということでありますが、下の方の(2)の考え方は、特に(2)の二つ目の「●」にはっき り出ておる訳でありますけれども、消費税を入れて直間比率を改めていくということに なりますと、それはある意味の目的としては、現役と若い人のバランスをとろうという 考え方であった訳でありますが、物価にはね返った分を全部年金でカバーしてまいりま すと、結局、消費税の伸びというものは若い人だけがみて、年金受給者は負わない仕組 みになる。これは、今後の若い人と老人との年金におけるバランスを考えていく場合に そういうことを続けていくことになるかどうか、そういった論点がございます。例えば スウェーデンの例で、さっきの大きな紙にも小さく書いてはある訳でありますが、スウ ェーデンでは過去に消費税等の変動について、年金額の改定にはその影響は含めないと ですから、消費税あるいは間接税の効果を現役も年金受給世代も公平に分かち合うとい うことをとっておった例があるということでございます。これも今後のスライドの考え 方の一つのポイントになろうかと思います。 それから、6ページにまいりますが、6ページは、さっきドイツの例で先に申し上げ たことでありますけれども、前回の年金法の改正で、若い現役世代の手取りベースの伸 びに合わせてスライドしていくということで、ネットスライドという考え方をとった訳 でありますが、実はそこにはもう1点、将来的な論点が残されておりまして、若い人も 手取りの伸びでみるならば、仮に老人の手取りも変化するということであれば、それも 反映して、老人もネットでみる、若い人もネットでみる、それをそれぞれ比較して伸ば していくという考え方がございます。 その(2)のところがドイツの例を紹介しておる訳でありまして、数式が細かい字で恐 縮でありますが、言ってみれば、若い人の可処分所得が少なくなれば年金額は少ない方 に動く訳でありますが、次の掛け算で年金の可処分所得が変動した場合に、年金の可処 分所得が下がれば、その分、年金額は上がるようにしますし、年金の可処分所得がもっ と上がっていけば、額は今度は下の方にシフトするということで調整するというやり方 でございます。 前回、平成6年の改正のときには、実はそこのところは、老人の方の可処分所得のネ ットは考慮しておりません。若い人の手取りの変化だけを考慮してスライドさせた訳で ありますけれども、もし前回の制度改正でも老人の手取りネットを勘案しておればどう なったかということが0.97という数字でありますが、実は0.99が前回の数字ですけれど も、年金額はもっと下がることになっていたという資料であります。 これはなぜかと申しますと、下の方の図をご覧いただきますと、「■」の推移があり ますが、昭和63年から平成5年までにかけましては、勤労者世帯の手取りは下がってお った訳でありますが、高齢無職世帯というデータで見ますと可処分所得は上がっておっ た。ですから、これを逆にネットで調整しておれば、もっと年金額は下がっていること もあったという訳でありますから、老人もネット、若人もネットで比べますと、必ずし も年金額が上がるという訳ではない。その時々の実態で動いていくということが分かる データでございます。これからネットスライドしていく場合にどういう方法をとるかと いうことについては、重要な論点が今後に残されているということでございます。 それから7ページは、過去の物価の上昇と、それについてどうスライドしてきたかと いう経緯でありまして、古いところは省略いたしますが、かつて5%というゾーンで改 正すると法律ではなっておりましたが、実際には毎年毎年、特例法で物価の変動をはね 返らせておった訳であります。それで、元年の改正で完全に自動物価スライドするとい うふうにしましたので、微小の変化も全部年金額には自動的に織り込むとした訳であり ますが、御記憶のとおり、平成7年の消費者物価が前年より 0.1下がりましたときに、 このときは消費者物価は下がったけれども、年金の額は下げないという判断をいたしま した。そして、それを年金審議会にお諮りした際に、こういう微小な変動の扱いについ ては今後検討するようにという宿題になっておりまして、実際には去年の場合も 0.1の 微小な上昇でありまして、これは前回 0.1下がった分を 0.1上げただけでありますので 額に影響はないということで前回も引き続き検討を残しておりまして、今後、微細な変 動について、例えば行政コストだけでも大きうございますので、0.1とか 0.2という変 動について、その都度改正をしていくかどうか。ここは今回の財政再計算の御議論の中 で方針をお決めいただきたいポイントでございます。 それから、8ページにまいります。8ページ以下は、大きな項目でいけば高齢者の所 得や資産に係る支給制限をどう考えるかということに関する資料が続きます。 8ページですけれども、これは夫婦の年金以外の収入というものが年金受給と比べて どういう関係になっているかということでありますけれども、年金が多いから、その人 のその段階での手取り収入も多いかというと、必ずしもパラレルではない。むしろ年金 額の多い人は、その分働かなくてもよいということから、逆に年金以外の収入をコント ロールしている可能性も小さくないというようなことで傾向が出ておるものでございま す。 それから、9ページ、10ページはワンセットの資料でございますのでご覧いただきま すと、これも細かい資料ですけれども、年金以外にもどういった年間収入があるのか。 そして、それがどれぐらいのウエートを占めておるかということでありまして、最後の 10ページをご覧いただきますと、10ページの最後の網をかけたところが一番ポイントに なろうかと思いますが、結局、年金受給者でも、例えば土地があって家賃収入などがあ った場合には、すごく大きな年金以外の収入があるじゃないかと、こういったケースが ある訳でありますけれども、全体の構成割合ということで見ますと、例えば「家賃 夫」で 4.1というのがありますけれども、それほど大きなシェアをなしている訳ではな い。あるいは利子につきましても、 4.6ということでありまして、それほど所得の大宗 をなしているとは見えない。やはり年金受給しながら得ている賃金の割合が全体で見れ ば非常に大きいのではないかというふうに見える訳であります。ただ、個々の件で見ま すと、賃金、家賃を非常に多く得られている方とか、そういうのはある訳でありますが 全体で見ると、労働による賃金収入がやはり大きいという傾向がございます。 それから、11ページにつきましては、フローとストックのバランスについての資料で ございますけれども、上の囲みに書いてありますとおり、フローとストックは必ずしも パラレルではない。フローの多い方が資産が多いということでは必ずしもないというこ とでございます。 それから、12ページでありますが、例えば年金の高額所得者の議論の関係で高齢在職 者の議論がございます。60歳から64歳までは在職しておりますと、後でお示ししますが 在職老齢年金制度で年金額は逓減する形になりますが、実際に65歳以上の方の働いてお られる状況はどうかということを健康保険の被保険者を参考に調べてみたデータであり ます。 例えば一番上の行でありますが、65歳から69歳、総人口290万人のうち、実際に働いて おられる方の割合は、被保険者が57万人、19.7%。そういった方々の標準報酬、これは 医療保険における標準報酬の平均額でありますが、31万円。平均値で見ますと、健保の 被保険者であられる方については、現役の平均にも比肩するか、むしろそれより多いぐ らいの収入がある傾向が出ており、女性においても、女性の平均値と同じぐらいのもの が65歳以上の方々の収入でも出ておるということが分かる訳でございます。 そして、次はちょっと飛ばしまして14ページにまいりますと、高齢者の平均賃金額の 年次推移ということでありますが、どれぐらい世代ごとで平均の賃金があるのかという ことで見たものでありますけれども、これを見ますと、60歳から64歳の方の平均賃金は 30歳から34歳の方々とほぼ等しいということが一つ分かる訳であります。もう一つポイ ントを指摘しますならば、下の四角の「65歳以上在職者」のところでありますが、平均 賃金が26.8万円あって、また、65歳以上は在職老齢年金制度がございませんから、年金 額は満額で受け取れる形になりますので、そういう方であれば、26万円の賃金と平均年 金額20万円、合わせて47万円強の収入が現在の年金制度では出ることになっている。い わば、その世代はどこの世代よりもフローベースの収入は多い形になっていることにな るという資料でございます。 それから、15ページ、16ページは、いま私が申しました在職老齢年金制度の経緯とい うということで、昭和40年以降の推移をずっとたどっております。最初はもともとなか った制度でありますけれども、特に高齢の65歳以上の方に、賃金で暮らすといっても、 賃金だけでは非常に低いということで、年金も支給しようということで始まり、それが 60歳から65歳の方にも及び、以後、制度の改善を続けてまいりましたけれども、次の ページで昭和60年の大改正の際に、65歳以上の高年齢者の在職老齢年金制度は廃止をし た。65歳以上は保険料も払わない訳でありますし、年金額も、仮に勤労して賃金があっ ても満額出るという形になった訳であります。 一方、65歳未満の方は、前回の改正で、実はそれまで段階的に給与が増えるごとに年 金は下がる形をとっておりましたが、例えば給与と年金の合計が階段状になっておりま して、場合によっては一部逆転するようなでこぼこがあったものでありますから、そこ は制度を調整して、なだらかに賃金が増えるに従い年金額もある程度増え、トータルの 手取りは増えていくという現在の形に改めたのが前回の改正でありまして、17ページが それをグラフ化したものであります。45度のところにある賃金について、あとは年金が どういうふうに上積みされていくかという資料でございます。これについては説明は省 略して、先にいかせていただきます。 それから、18ページは年金に対する課税の仕組みでございます。これにつきましても 例えば高額所得者の年金を論じる前に、むしろ所得を全体で把握して、これは税で処理 するべきだといった御意見もございます。また、若い人の税と高齢者ではずいぶんバラ ンスを失しているんじゃないかという御指摘もあります。現在の制度についてざっと御 説明申し上げますと、今の年金に対する税制は、雑所得という所得区分で扱っておりま して、最低控除 140万円がありますけれども、定額で 100万円控除し、あとは額が増え るに応じて控除の率を決めていくということで、雑所得を計算し、その上でそもそも全 体の所得に係る人的控除がございます。こういったものを合わせますと、四つ目の 「○」のところですけれども、例えば公的年金だけでお暮らしの御夫妻であれば、65歳 以上のケースをとりますと、348万 8,000円までは税金がかからないという形になって いる訳であります。下に参考で現役世代の課税最低限ということになりますと、夫婦で 209万円 という形になっております。こういったことで、現在の年金に対する課税はそ れなりに優遇されているという形が数字でも出ております。 それから、19ページ以降からが支給開始年齢に関する資料であります。支給開始年齢 につきましては、これも一覧表で過去の歴史を昭和17年以来のものを掲げておりますが 平成6年の前回の改正におきまして現在の制度に改正されたところであります。60歳ま では基本的には賃金、60歳から64歳までは賃金と年金で暮らす。そして、65歳以上は年 金でというふうに整理をいたしまして、60歳から64歳というのは、次のページに出てま いりますが、「別個の給付」ということで報酬比例部分だけを支給するということにな りました。したがいまして、本格的な年金の支給開始年齢は原則65歳に繰下げられたと いうことでございますが、その考え方について、支給開始年齢を今後どう考えていくか 次の20ページをご覧いただきたいと思います。実際には支給開始年齢についてさらな る繰下げという考えもある訳でありますが、その場合に支給開始年齢をどう考えるか。 現在までとられていた考え方というのは右側のものに近いのではないか。就労能力喪失 そういう不確実性について年金で対応していく。ですから、退職が一つの要件になって 退職した後、それは年金がカバーしていくという考え方であったと思います。したがい まして、実際に働いている場合には、在職老齢年金のような格好で年金額を抑えるとい うこともあった訳でございます。 しかし、別の考え方がございまして、例えば寿命がどんどん延びてまいりますと、そ の分、支給年齢は一方的に増える訳でありますけれども、実際の年金の本来の役割は何 だったのかということになりますと、一つの考えは、長生きの不確実性に対応するもの であったのではないか。ですから、自分はどこまで長生きするか分からないから、それ をみんなでリスクプールして、そして長生きする人が早く逝った人からお金を回しても らう格好で老後を補っていくということであるならば、むしろ平均寿命までは誰もが自 分で準備していてもおかしくない。そこから先はリスクをみんなでプールするというこ とになりますと、むしろ平均余命が延びていけば、年金の支給開始の点というのはだん だん上がっていってもおかしくない。ですから、それは退職年齢とは特に関係なく、そ ういった寿命の延びに影響された支給開始の考え方があるのではないか、こういう考え 方も一方である訳でございまして、こういった二つの考え方にそれぞれ足場を置きます と、支給開始に対する考え方も違ってくるということであろうかと思います。こういっ た考え方を二つ御紹介いたしました。 それから、21ページは前回の改正で決まりました支給開始年齢の考え方の整理でござ いますが、省略させていただきます。 22ページでございます。前回改正で満額年金の支給開始年齢そのものは65歳に繰下が った訳でありますが、65歳までは報酬比例に関する部分で「別個の給付」というものが 出るということに決まった訳であります。その考え方については、2の「導入の経緯」 ということで書いておりますけれども、もともと大きく分けて二つの考え方がありまし て、繰上げ年金ということで減額した年金を早いうちに受け取っていけば、むしろ一生 の年金を受け取る額は公平だという考え方もございました。しかし、かなり早い時期に 繰上げで減額年金を受けますと、終生その額が続く訳でありますから、それは65歳以上 の生活には酷であるということで、そこまでは別の形で給付をして、65歳からはもとも との満額の年金を出すべきだと。この二つの考え方の整理の結果、現在の「別個の給 付」という形になった訳であります。 これにつきましては、3で書いてありますが、勿論、現在の制度でよいという賛成意 見もありますし、改正すべきであるという意見もあります。例えば部分年金というのは いわば60歳から65歳の仕事そのものが半端な仕事であって、賃金と足さないと一になら ないということで、そういうことでいいのかという考え方もございますし、本格的な就 業を促進することにはならないという指摘もあります。 また、財政効果という面から見れば、報酬比例部分が出続けることによって、支給開 始年齢は65歳に引き下がりましたが、財政効果は余り大きくないといったこともござい ます。 こういったことで、「別個の給付」についてどう考えるか、引き続き議論は残っている ということであろうかと思います。 次が23ページでありまして、先ほどの年金と長生きのリスクとの関係でありますが、 受給年数がどれぐらいかということの推移をみたトレンドであります。例えば「■」の 男子のケースでまいりますと、55歳から60歳ということで支給開始年齢が変動しており ますので、調整が続けられている訳でありますけれども、例えば現在の制度のベースに なりました昭和48年のところからご覧いただきますと、昭和48年の16.80というところ から一たん下がって、ずうっと上がってまいりまして、現在が右端の20.28になってお ります。 したがいまして、48年から現在でも男子の受給年数は3.48年延びているということであ ります。女子のケースでみますと、前回の制度改正からみますと、昭和63年で 27.58、 今は 27.10でありますので、63年以降はほぼ横ばいか若干の減ぐらいの形になっており ますが、こういった年金の受給年数をどうみていくか。ですから、先ほどの長生きのリ スクという考え方をとれば、どんどん受給年数が延びていくということについて議論の 余地がありますが、このあたりをどうみていくかということであります。いずれにせよ 寿命が延びれば受給年数が増え、財政的には負担が重くなっておるところでございます それから、24ページでございます。これは、それぞれ年金の受給状況と就業率との関 係をみたものでありまして、ご覧のとおりで省略させていただきまして、次の就業率も 日本の高齢者の就業率は比較的高いところで推移しておりますが、若干下がりぎみだと いうデータであります。説明は省略させていただきます。 次が26ページ、定年制に関する実施状況ということで、かなりの割合で60歳定年とい うものが定着してきておりますけれども、その辺の動向を概観した資料であります。 それから、27ページでございます。これもその流れでありますけれども、実際に退職 した人がどういう形で定年前あるいは定年後に退職しておられるかという実情でござい ます。 それから、急ぎまして、28ページが各国の老齢年金の支給開始年齢を概観したもので あります。フランスは60歳でありますが、ドイツが現在、65歳に向けて改正しておる最 中であります。そして日本という形で、アメリカは2027年に向けて67歳に引き上げる計 画にある。しかし、我が国の場合には、さっき申しましたように、60歳から報酬比例部 分の年金が出るという形でありますので、この辺も横並びとは若干違う面はございます それから、繰上げと繰下げということを書いておりますけれども、各国とも繰上げ支給 なり繰下げ支給についての率の変化等をさせておる例がございます。我が国の場合には 基礎年金について、60歳から受給可能でありますが、受給開始年齢に応じて、減額率を 適用しております。また、繰下げについても、各国でいろいろ制度がある訳であります が、我が国は基礎年金、厚生年金ともに、受給開始を遅らせれば、その分、額が増える という増額の率を設定している訳でございます。 それから、29ページ。これは、我が国の高齢者が労働している率が各国から比べると高 いというデータをあらわしたものでありますが、そこで関係の資料を併せてご覧いただ きたいと思いますが、資料1−2というものが別冊で用意されております。ちょっとご 覧いただきたいと思いますが、「65歳現役社会の政策ビジョン」でございます。これは 労働省の職業安定局長の私的諮問機関ということで、平成8年の10月から10回ほど議論 を続けられて、この6月にまとめられた政策ビジョンでありますけれども、65歳の現役 の社会を志向して、いろいろな制度改正なり制度的な取り組みをしていこうという考え 方のようでございます。その中にも、現在の60歳定年で65歳まで雇用継続というのがい いのか、65歳まで定年を引き延ばすのがいいのか、それとも、全く定年というものを決 めないでエージレスで考えるのがいいのか、三つぐらいのシナリオを用意しながら今後 のあり方を模索していくというペーパーでありまして、65歳現役を目指す。いわば年金 の支給開始年齢とある意味で連動した検討が行われておるという資料でございます。 それから、30ページ以降にまいりますが、30ページ以降は総報酬に関係する資料でござ います。30ページのグラフをご覧いただきますと、これは何を表現しておるかと申しま すと、年金の保険料の負担がボーナスとか月収を全部合わせた総現金支給額に対してど れぐらいの割合になっているかというのが縦軸であります。右側の軸は、ボーナスでは ない、毎月決まって支給される給与の額というものを横軸にとった表でございます。そ して、右下がりにほぼ直線的に傾向が出ておりますが、この相関は何をあらわしている かと申しますと、右の網かけのところに書いておりますけれども、月給の額が多いとこ ろほど年金保険料が年収に占める割合は低くなっている。なぜかと申しますと、月給の 多いところは、やはりボーナスの支給の割合が非常に多いということで、ボーナスの方 は現在、年金特別保険料以外徴収しておりません。したがいまして、いわば月給の多い 会社ほど年収に占める年金保険料は軽くなっているということがこれで分かる訳でござ います。こういった傾向が現在の保険料の仕組みでは明らかに相関が出ておるというこ とであります。 そこで、31ページでありますけれども、これは、ボーナスも含めて総報酬で保険料を 徴収するという考え方をとった場合に、ボーナスというものはそもそも景気変動等の影 響を相当受けて、課税ベースとするには若干変動し過ぎる不安定なものじゃないかとい う御指摘もあった訳でありますが、それに対する傾向を調べてみたものでございます。 これを見ますと、一番上の「○」が年収に対する月収の割合の推移で、一番下の「■」 の流れがボーナスの年収に対する前年度の伸びをみたものでありまして、真ん中がいわ ば景気変動であります。そうしますと、景気の変動は真ん中の二つで、それなりにGN P等、大きな変動をしておりますけれども、一番下のトレンドですが、ボーナスの年収 に占める割合は結果的にかなり安定しておりまして、特に近年は非常に安定しているの ではないかということで、景気変動でボーナスが揺れ過ぎて、課税ベースとするには不 適当だということではないのではないか。我が国の報酬の決め方の中で、ある程度安定 的な推移をしているのではないかということで、そういう傾向を見たものでございます それから、32ページでございますが、年俸制をとる企業が増えてくると、総報酬でみ るべきだということにも議論がつながる訳でありますが、その年俸制をとっている企業 の中身をみたものでございます。実際には、年俸制を導入している企業は 4.3%と少な い訳でありますが、その中でも大半が月給部分と賞与部分に分けて取っているようであ ります。 したがいまして、保険料を徴収しない、特別保険料しか取らないボーナス部分というも のが年俸制の企業でも多くのものには存在しているというのも実態でありますが、年俸 制といいましても、こういった実態があるということは非常にわかりにくい。ですから 今のボーナス保険料と標準報酬月額を分けるやり方は、年俸制の企業に当てはめる場合 には非常にわかりにくいことになりはしないかということで、そういった傾向をご覧い ただきたいと思って出した資料でございます。 そして、33ページにまいります。33ページは、仮に総報酬を導入いたしました場合に どういった給付のはね返りといいますか、算式になっていくのかということを考えてみ たものでございます。これは、現在のやり方にそのままボーナスを保険料として取りま して、それを全部給付にはね返らせますと、ボーナスの分だけ年金全体の支給額が上が るということになりますが、それはそういう考え方ではないだろう。 そして、下の四角の中の「変更の考え方」の一つ目でありますけれども、月給にボー ナスを加えたものを全体の給付の算定ベースにして考える。 そして、二つ目になりますけれども、その場合に、そのまま全部給付にはね返らせた ら総給付額が上がりますから、その全体として増えた分については給付乗率を下げて、 給付の総額そのものには影響しないようにしていくことがいいのではないかということ であります。しかし、単純にそれを行った場合に、例えば現在であれば、ボーナスの年 収に占める割合は 0.3ぐらいでありますから、1+ 0.3で 1.3で割り返して、これは月 収だというふうにしてしまいますと、実は業間格差というものがありまして、現在、 ボーナスにウエートを置いておられる企業の場合には月収は小さく出過ぎる。逆に、現 在、ボーナスが非常に小さい業種であれば、1.3で割り返しますと、一月当たりの報酬 は実際にもらっているよりもずいぶん高い報酬をもらっていた形になってしまう。こう いったことで、業間の格差が出てしまいますので、仮に乗率を引き下げるとしても、一 本の乗率で各業界全部に当てはめるのがいいのか。そういった現在のボーナス支給の実 態に応じた乗率の調整があるべきか、こういったことう検討する必要があるということ を3で書いている訳であります。 また、そういった算定ベースをつくってまいります場合にも、現行のやり方のように 月給を基本として、ボーナスについては別立てで計算していくというようなこともある のではないか。特に事務的な便宜からまいりますと、そういった方は簡便な作業で徴収 なり、後々の裁定が出来る訳でありますが、その辺についても、事務的な要素を加味し ながらやり方を考えていく必要があるのではないかということを4で述べているところ でございます。 続きまして、34ページでありますが、総報酬を導入いたしました場合に、例えばボー ナスの多いところはそのままたくさん給料がある訳ですから年金額も高くなるというこ とであれば、恐らく所得再分配といいますか、現役で所得の多かった人の年金はもっと 多くなるということで、現役時代の格差をより反映するような形になりはしないかとい うことがある訳でありまして、そういったことについて、例えばアメリカの老齢年金額 の算定方式がある程度参考になりはしないかということで、これを掲げております。 アメリカの老齢年金の基本年金額の算定の仕方の数式を書いておりますけれども、平 均賃金月額の 426ドルまで、低い部分については 0.9で反映させていく。そこを超えた 2,567ドルまでのところは0.32に評価して、そのまま直線で伸ばしていきはしない。 それから、 2,567ドルを超えたあたりはもっと傾斜を付けまして折っていくということ で、 日本は一直線に伸ばしている訳でありますけれども、このグラフの傾きを変えて いって、賃金の高い部分については年金に反映させる割合を下げていくという、「ベン ド・ポイント」と申しますが、そういう形をとっている例がございます。今後、総報酬 制を導入して、非常に賃金の高いような方についてそのまま当てはめていくのか、そこ は所得再分配的な考え方を強めるか。これについても、アメリカの例などを参考に検討 してみる必要があるのではないかという資料であります。 以上が各論点ごとに集めましたデータとか考え方でございますけれども、最後の35 ページで、それぞれの項目について指摘されている主な意見ということで並べておりま す。 「スライド制」につきましては、まず一つ目でありますけれども、購買力の維持とい う観点で、裁定後は賃金スライドは行わない。物価スライドのみとすべきではないかと いう意見がございます。それから、二つ目の「○」でありますが、小幅な物価変動につ いて、これは物価スライドしない。ある一定の幅を超えたときに物価スライドするとい うことでいいのではないかという考え方。それから、三つ目の「○」でありますが、消 費税率の上昇に伴います物価上昇は、物価スライドの対象から除外するべきではないか 世代間バランスの見知から、そういう指摘がございます。 それから、次の2「所得・資産に応じた年金の支給制限」の関係でありますが、一つ 目のところは、65歳以上の在職者についても、現在、60歳から64歳で取っておりますよ うな、保険料も取りますが年金の支給も制限する、こういったやり方を当てはめるべき ではないか。それから、高額所得者、高額資産者に対して年金支給を制限すべきではな いかという意見。それから、むしろそういった方々について支給制限するよりも、所得 として総合課税した方がより公平ではないか、こういった意見がございます。 それから、三つ目の「支給開始年齢」でありますけれども、現在のスケジュールは 2001年から2013年にかけまして12年間で65歳へ引き上げていくということでありますけ れども、この12年掛けることがいいのかどうか。前倒しという意見がございます。それ から、一 応65歳で改正された訳でありますけれども、さらなる引き上げが必要ではな いかという意見。それから、60歳から64歳まで支給されております部分年金、「別個の 給付」であり ますが、これを廃止すべきではないかという考え方。それとは逆に、年 金というのは退職後の所得保障の柱だということで、年金開始年齢と退職年齢の接続と いうことについてはちゃんと図っていくべきだという考え方等を紹介してございます。 最後に「総報酬制」でありますけれども、負担の公平という観点から、ボーナスを含め ました総報酬を負担のベースにするということ。それから、給付についても総報酬では ね返らせていくという考え方、こういったものが紹介されておるところでございます。 以上、はしょりましたけれども、資料についての説明を終わらせていただきます。 ○会長 ありがとうございました。ただいま御説明のありました事柄につきまして、御質問、 御意見などございましたら、どなたからでも御自由にお願いいたします。 ○A委員 最後に御説明がありました総報酬制につきましてコメントさせていただいてよ ろしいでしょうか。 ○会長 どうぞ。 ○A委員 先ほどの資料の31ページで、全体的には総報酬に占めるそれぞれ月例賃金との割合が 日本全体で安定しているというお話がありましたけれども、バブル崩壊以降、これはか なり動きがございまして、日本全体の平均をとった場合は確かにそういうことが言える かもしれませんが、個々の産業のばらつきはかなり大きくなっているのではないかと考 えられます。そういたしまして、賞与は景気変動により上下するということは変わらな い訳でございますので、そういう意味では、月例賃金に比べて、総報酬を基礎とするも のは考え方としてはなかなかなじめないので、もしこの辺の検討をするのであれば、十 分に慎重に考える必要があるのではないかと思います。 それから、年俸制ということがございましたけれども、先ほど4.3%ということでご ざいますが、現在の企業の実態では、年俸制というのは極めて例外的でございますし、 また、仮に年俸制という名前をとっていましても、御指摘のように、一定部分は賞与と しているのではないか。そういう意味では、今、年俸制について議論するのは若干早過 ぎるのではなかろうかと思われます。そうしますと、月収のみがベースになることによ る負担と給付の不公平性の是正といいますけれども、保険の性格からみまして、基本に は負担と給付というのは常にバランスがとれているということがないと、なかなか世間 の納得は得られないんじゃないかと思います。その意味から、もし見かけの負担率を下 げるために、総報酬制として実質負担が一部上がるということであれば、これは企業の 立場からも、あるいは給料生活者からも受け入れられないんじゃないかというふうに思 われます。 そういう意味ではなくて、高額所得者について、給付のレベルはどうかということを 検討していくのであれば、総報酬制も考えられなくはない訳ですけれども、その場合で も、高額な所得者ほど、あるいは高額な月例賃金をもらっている人ほど、世間では賞与 も大きい傾向があるのではないかというふうに思われます。そういうときに、高額の年 金受給者の給付額そのものを下げようという検討事項があろうかと思いますが、それと の兼ね合いで、高額の年金を抑制する、給付を抑制することに加えて、総報酬制の中で 高額所得者に対して負担のみ増加させるというのはなかなか納得しがたい点があるので はなかろうか。 その辺は、いろいろなケースが資料に出ておりますけれども、十分慎重に御検討いただ かないと、なかなか納得が得られないだろうというふうに思います。以上です。 ○会長 ほかにどなたか。B委員、何かございませんか。 ○ B委員 先ほどの事務局の御説明の中で、スライド制に関わるところで、消費税が上がった分 を物価に反映させてしまうということが世代間の不公平につながるというお話だったん ですが、そうかなとも思うんですけれども、いま一つピンとこないので、消費税そのも のは消費行動に対してかかる訳ですから、これ自体は現役であろうと高齢者であろうと 同じように消費税は負担している訳ですね。その消費税負担というのは物価上昇にはね 返ってくることについても、これは世代的な区別は別にないはずで、年金のスライド率 に物価を考えるときに、そこで年金のスライド率だけ物価上昇分から消費税の寄与分を 除く方が公平というのは、どういうロジックスなのか、もう一度御説明いただけますか ○事務局 年金受給者の年金額だけに限定しての議論でありますけれども、例えば今年、消費税 が2%上がりまして、それが物価に 1.5%はね返ったといたします。それで、年金額を 1.5%上げてしまいますと、翌年度からその物価影響分は全部年金額でみたことになり ますから、老人は物価上昇分を負担していないことになる。そして、その財源の多くが 一般財源から出されているということであるならば、若い人と老人のバランスからみた ら消費税の負担が老人は年金でカバーされ、若い人だけが負担をしたという形になりは しないか。特に、それが5ページの2の(2)の二つ目の「●」でありますけれども、い わゆる所得税の減税との見合いでつくられた場合であれば、なおそういうことになりは しないかということで、物価のはね返りを年金で全部みることは世代間で公平かという 議論があるということであります。 ○B委員 経済学者の方々に御説明いただいた方がいいと思うんですが、物価上昇分というのは 賃上げを考えますときに一番基本的な問題でございまして、いかに状況が悪くても、実 質賃金というか、賃金の実質価値は少なくとも低下させないということで、大まかに労 使の合意が出来上がっているのが我が国の賃金決定機構の一つの筋目だと思います。そ の意味で言いますと、物価上昇分だけ年金に反映させるということは、高齢者が消費税 の負担をかぶらないことになる、現役だけがかぶるというふうに言えるのでしょうか。 ○事務局 現役労働者が完全に賃上げでカバーされていれば、両者のバランス関係はもとに近づ くと思うのでありますが、国民全部が賃金労働者という訳ではありませんから、やはり トータルのシェアとしては、老人よりも若者に消費税の負担がいったということは、額 は影響は小さくなるかもしれませんけれども、言えるのではないかと思います。 ○B委員 これはほかの項目の議論にも関わるのですが、我が国の公的年金制度は勿論、皆年金 ですから、すべての被保険者ないしは受給者が労働者ないしは元労働者であるというふ うに言うつもりはありませんが、数から言えば圧倒的に労働者ですし、そもそも歴史的 な経緯から言っても、これは労働者の年金として始まってきた歴史的経緯があるので、 労働者以外の人間もいるからということであれば、それは、今の御説明の中では、少な くともウエートとしては小さいことのように思われます。 あるいはまた、それでは自営業者の所得なるものが物価を反映しないのかといえば、 実際に商っている物の価格そのものが、通常は購入資材、あるいは人件費等々をコスト として反映して価格設定されるのが通常でありますので、その意味でも、ある意味での 物価スライドというのは我が国の経済システムの中で効いているというふうに判断しな いと、自営業者はどんどん生活水準が下がっているということになってしまう。そんな ことは事実とは違うんじゃないでしょうか。 ○C委員 今の議論の参考になるかどうか分かりませんが、厚生省の説明も、高齢者が全部年金 で生活しているとすれば、生活費全額を年金で賄っているとすれば、あるいはそういう 負担の不公平の問題も議論としてはあり得るかもしれませんけれども、必ずしもそうで ないのにどうかなという疑問を一つ感じます。 それからもう一つは、消費税を上げた場合に物価が上がる、それを年金に反映させるの はおかしいということであれば、消費税を上げたことによる物価上昇というのは、今ち ょっとお話に出ましたけれども、いずれは賃金にも反映してくるんじゃないか、きてい るんじゃないか。それは、年金に対する反映が少し早いかもしれませんけれども、その 辺はどういうふうに考えたらいいのかということをちょっとお伺いしたいと思います。 ○D委員 今、C委員が言われたことについてですが、企業内労使で賃金引き上げをするときに 物価の上昇分を、これは消費税引き上げ分による物価上昇分というふうに色分けして考 えるというのは極めて難しいのではないかというように私は思います。そういう受けと め方がそんなにすっきりくっきり受けとめられる土壌があるのかなと思います。先般、 今、申し上げましたようなことについて議論をする場がありまして、何の原因であれ、 やはり物価の上昇は物価の上昇じゃないか。上がったということについての事実は事実 として、例えば賃金引き上げをどう考えるかという背景論として考えるべきではないか という理屈と、今の年金額と間接税引き上げ分云々の話、消費者物価上昇分というよう なものとの結びつきを考えますと、給付と負担という点で高年齢層の人と若年世代と棲 み分けをして考える。それほどのことをしなければコンセンサスが得られないのか。ま た、そうしなければならないのか、私は少し疑問に思います。以上です。 ○E委員 私もそこのところがよく分からなくなっているんですけど、ヨーロッパみたいに消費 税が20%とか25%という国がたくさんある訳ですが、仮に非常に単純化して考えまして 物価上昇率と賃上げ率が同じだという仮定を置いた場合に、例えば20%という消費税率 で、これは実際にスウェーデンがそういうことをやっている話ですが、要するに1年遅 れというか、1回遅れという形で追いかけていっているということなのか。それとも、 本当に20%というようなことでスウェーデン以外は調整していないということになると 消費税というのは全部現役世代がかぶるということに結果としてはなるのかどうか。そ このところをどうやってのみ込めばいいのか。本当にこれは単純な算術の問題だと思う けれども、どうもよくのみ込めないんですが、いかがでございますか。そこがよく分か らないんです。 ○事務局 御指摘をいただいておるとおりでございます。スウェーデンの場合も、純粋にそれだ けでは割り切れていなくて、後で手当で調整したり、いろいろなカバーをしている面が ありますので、ここの考え方は、はね返りを全部みたことについての影響を説明して いる訳でありますが、特にその議論が出てくる根底には、5ページの(2)の一番最後の 「●」のところがスタートラインなのかもしれませんけれども、世代間のバランスを考 えて、仮に年金の給付水準が高いとして、それを引き下げることが前提であるならば、 こういう考え方もとり得るという要素ではあるかと思いますが、これだけで出てくる議 論ではないように思います。そういうことで、これはそういったやり方なり考え方を紹 介した訳で、これを今回とりたいということで明快に主張している訳ではありませんの で、その範囲で御理解いただきたいと思います。 ○B委員 追いかけるようで申し訳ないんですけど、要するに、年金水準の引き下げ調整のため の一つのテクニックとしてはこういうのがあるということですね。反対ですけど、そう いうことならよく分かります。 ○会長 今の問題はそれでよろしゅうございますか。F委員、何か経済学的なご説明を……。 ○F委員 非常に単純に、消費税が上がったことだけによって物価が上昇した説明としては、こ の資料のとおりだと思うんです。ただ、租税の転嫁の問題や何かがありますから、実際 のことはよく分からないということになるだろうと思いますけれども、私、それとの関 連でちょっと質問したいのは、賃金スライドと言っている場合は、忘れちゃったんです けど、スライドの基準は標準報酬の平均か何かでやっているんでしたか。 ○事務局 賃金の関係は、5年に1回の財政再計算時に、その間の標準報酬の伸びを反映させて 変えていっている訳であります。 ○F委員 標準報酬の上限が抑えられている問題とか、あるいは労働力構成の変化がそれには入 っている訳ですね。ですから、賃金スライドというのは、多分、各国そういうやり方で やっているだろうと思うので余り議論してもしようがないんですが、細かい議論をし出 すと、何が賃金の上昇率なのかということも入ってくるので、余り細かいことを今議論 してもしようがないのかなと思うんです。 ○G委員 スウェーデンの問題ですが、私もどうも記憶がはっきりしないんですが、たしかこれ は1回きりだという話だと記憶しているんです。確かに、スウェーデン政府が高くなり 過ぎた年金水準を何とか抑え込む一つの理屈にこれを持ち出したと。しかし、理論的 には、仮に物価上昇の中でこのときには消費税を増税したんですね。増税の分がはっき りと分離できる。そのことについて何人も異存がない。こういうことが可能ならば理屈 は通るだろうと思うんですが、実際はそういうことはあり得ない訳でして、その点、ス ウェーデンでどうであったかということをここでは余り議論しないということならばそ れでいいんですけれども、もし将来、これをさらに議論するならば、スウェーデンの例 をもう少し具体的に教えていただいた方がいいんじゃないかと思うんです。 ○E委員 今初めて伺った話ですが、やはりきっちり分かっておく必要があるような気がします ね。 ○G委員 スウェーデンではどういうふうにされたかという、はっきりした数字もあると思うん です。 ○会長 それでは、問題を移しまして、別の点につきまして、E委員、どうぞ。 ○E委員 総報酬制の問題が、少なくとも議論のたたき台として今日初めて出てきた訳ですけれ ども、これが例えば29.8とか34.3という見かけの保険料率を下げるために総報酬制にも っていこうということであるならば、そんなに意味のある話ではないと思うし、そうい うことで総報酬制ということではないとすれば、何か別途の意図があるのかという問題 に実はなってくる訳ですね。 ところが、そうなると、一つは、先ほど年俸制の話なども出ましたけれども、これは F委員が非常に詳しいんですけれども、日本で年俸制といっても、掛け声はありますけ れども、ここで見ているように、まだ4.3%であるし、それから日本の賃金というのが 私はいつも微分値管理ということを言うのですが、要するに前の賃金に幾ら足すか。優 秀な人はよけい足すし、優秀でない人は少し足す。しかし、絶対額そのものは根っこは 動かさないというのが日本の賃金の基本的なものの考え方でずうっときている訳ですね したがって、そんなに簡単に賃金カーブというのは変わらない。毎日、新聞を見れば、 どこどこの賃金を能力主義に変えたと。能力主義というのは、40年前から能力主義と言 っている訳ですが、実際は賃金カーブというのはほとんど変わらない。 なぜ変わらないかというと、ドーンと下げるということはやらないですから、どうし ても微分値の中で調整しようと。新しい会社で新しい年俸制を入れていくというところ ではもっと大胆なやり方をしていますけれども、それにしても、例えばアメリカで見ら れるような5倍とか10倍という話じゃなくて、せいぜい2割とか3割という話ですから そもそもそういう意味では、前にF委員も御指摘されていますけれども、掛け声ほどに は日本の賃金カーブというのは変わっていないんです。また、現実に変わらないだろう という気がします。 ところが、それを前提にいろいろなものを考えていく仕組みの中では、やはり大きく 掛けた人は大きくもらうという社会保険の基本がないと、これを一遍に、大きく掛けた けれども、もらうときは一緒という話であるとすれば、これはまさに税そのものですか ら、むしろ思い切って税金でやっていただいた方がいいということになる訳ですね。し たがって、全体をそういうことで大胆にかえようとするのであれば、むしろこれは勤労 者の場合も、企業の側からいっても、そこまでやっていただくなら税金でやってくださ いという話になりかねない。なるだろうと思うんです。 そういう意味で、私は、この議論と基礎年金部分を少し手厚くして、むしろそれは税 金だけで割り切ってしまって、報酬比例部分は一切別に考えるという議論も一方である 私はそれに初めから賛成だというのでは決してございませんけれども、それも一方で視 野に入れながらこの問題を議論しておかないと、単につぶせばいいじゃないか、なくせ ばいいじゃないかという話にはならないというところがどうもあるような気がしますも のですから、これを是非御指摘しておきたいと思います。 それから、もっと極端なことを言いますと、これは本当に極端ですが、ストックオプ ションとか、そういう話が入ってきますね。これも、後々考えますと、日本的ストック オプションというのが出てくる可能性が十分あると私は見ている訳です。むしろ私個人 としては、日本的ストックオプションというのはもっと導入したい。それは、諸外国で 言うようなストックオプションというよりも、どちらかといえば、従業員参加型のスト ックオプションで、極端に言えば、賞与というものからそういう日本型ストックオプシ ョンに転換していくということも大いに考えていいんじゃないかと実は個人的には思っ ている訳です。 全く個人的ですが。 そうなると、賞与までベースの中に入れてしまうという議論と、日本型ストックオプ ションと、これは私が仮に言っている話ですから、組織で考えている話でも何でもない んですが、しかし、全員参加型の経営というものを考えていく中では、そういうものが 日本的にはなじむんじゃないかという気持ちがあるものですから、特にベンチャーなど の場合、全員ストックオプション型をねらってやるということは大いにあり得るし、そ れが広がってくる可能性もある。そうすると、そこは賞与と競合してくる世界になって くる。そういうことまで含めて考えると、果して総報酬制というものを考えたとき、ま さかストックオプションまで入れるということはあり得ないですから。入れてしまった ら、ドスンと引っ繰り返ったときにえらいことになりますから。また、賃金という性格 とは丸っきり違う性格のものがだんだん賞与と競合関係に入ってくるということを考え ますと、そういう意味からも総報酬制というのは、勤労者から見ても、企業から見ても そう簡単にはいかない性格じゃないかということだけ申し上げておきたいと思います。 ○事務局 今、総報酬制導入というのは見かけの保険料を下げるためかという御意見も出ました ので、総報酬制導入について、いろいろなところから御意見がある訳ですけれども、そ れについて若干コメントさせていただきたいと思います。 見かけの保険料率を下げるためという意見は全くない訳でして、おっしゃるように、 そういうことであれば意味がない訳ですから、そういう御意見はございません。それで お手元の資料を見ていただきたいんですけれども、7月30日の資料の22ページに「年金 保険料負担についての総報酬制導入と検討課題」ということで、「総報酬制導入の必要 性に関する意見」というのが一番上に出ていますけれども、ここで言われているような ことが総報酬制導入の必要性ということで、いろいろな方から御指摘を受けている訳で す。 つまり、ボーナスが多く、負担能力のある者が負担を免れて、負担能力の低い者ほど 負担が重くなっている。これは同一世代間の不公平ではないか。不公平を是正する必要 があるということが第1点でございます。 それから、ボーナスは臨時特例的なものでなく、賃金の一部として定着しているんじ ゃないか。先ほどバブル崩壊後の状況等で御意見がございましたけれども、全体的には 定着しているんじゃないか。 それから、例の60歳から64歳までの在職老齢年金につきましては、ボーナスを増やし て月給を抑えることによって年金の支給停止を免れる、こういうことがどんどん増えて いる。これはやはりおかしいんじゃないかと。 それから、その下のような御意見、一部の企業ではボーナスを高くして月給を抑制す るということが起きて、負担の不公平がみられるんじゃないか。こういうことから総報 酬制導入ということが言われている訳でございますし、ここの下にございますように、 総報酬制を導入するということが先般、閣議決定された訳で、近々、臨時国会が始まり ますと財政構造改革法案が提出されると思いますけれども、こういった問題についても 法案の中で規定される見通しじゃないかということでございます。そういうことで、政 府としましては、総報酬制導入というのが一つの方向として政府部内の議論としては固 まっているということが言えるかと思います。 それから、実質的な負担が上がるのは困るというA委員のお話がございましたけれど も、少子化がどんどん進みますと、将来の負担が増えてくるということは避けられない 訳ですけれども、特に総報酬制導入によって実質的な負担を上げようという議論は、そ ういうことを主張されている方はいらっしゃらないんじゃないかと思います。 ○B委員 一つ意見と、一つ質問をさせてください。現在の標準報酬制と一時金に対する特別保 険料というやり方は、健保と年金と共通でございますね。総報酬制といったときに、 健保と年金で非常に大きく違うのは、健保の場合には、どういうふうにとろうと給付に 反映する訳ではないのですが、年金の場合に、現在の程度であればともかく、一時金に 対する保険料を引き上げていこうということになれば、先ほど事務局から御説明があっ たように、何らかの形で給付への反映を考慮せざるを得ない。ここが医療と年金とで非 常に大きく違う点だろうと思うんですが、例えばの話ですが、医療では総報酬制、年金 では現行システムと、二つについて扱いを変えるということは現行制度で可能ですね。 まず、そこの点から質問です。 ○事務局 これは制度の仕組み方の問題でございますので、その二つが併存することはあり得る ことではあります。 ○事務局 ちょっと補足させていただきますけれども、社会保険事務所では、御案内のとおり、 健保も年金も保険料を一括して徴収しております。したがいまして、理屈の上では、健 保は総報酬、年金は従来どおりという選択も頭の中では考えられます。理論的には考え られますけれども、現実問題としては、そういうことは通らないんじゃないか。既にほ かの雇用保険等につきましても総報酬制になっておりますし、これからの方向といたし ましては、健保も年金も総報酬という流れは否定出来ないんじゃないかと思います。 ○G委員 総報酬制の話は、私は事務局の説明は全部了承いたします。これは今から30年以上も 昔からあった話でございまして、なかなか踏み切れなかったんです。一番頑固に抵抗さ れたのは年金局だったんです。むしろ労働省関係の方がこれについてはわりかし理解が あった。健保の方も理解があった。しかし、年金局がなかなか踏み切られなかった。 その年金局がこの方向で検討してみようじゃないかというのは、公平という観点からす ると、非常な進歩だと私は思っております。 現在のように、先ほどE委員がストックオプションをおっしゃいましたが、現物給付 的なものは基礎には入ってこないのは当然でありまして、すべての報酬が負担と給付の 対象になるということはあり得ないと思うんですが、少なくとも現金給付でやって、し かも定例的に決まって支給する方向にだんだんなってきた。日本で言えば、ちょうど ボーナスがそれだと思うんですが、そういうのは給付と負担の対象に含めるのがより公 平だと思います。今までいろいろな理屈はあったんですけれども、その方向で一つお考 え願いたい。 なお、これについては、上限をどう考えるかという問題は、やはり厚生省の方でもそ のうちに案をお示しになるだろうと思うんです。報酬の全部という訳にはまいりません から。 それからもう一つは、先ほどアメリカの話がありましたように、ベンド・ポイントの 話とも関連してくるのですけれども、所得再配分という年金制度の本来の目的に照らし て、すべての報酬を押えることはどういう意味を持つのかということは、もう少し詰め て考えてみる必要があるんじゃないか。特に日本の場合には自営業者が定額の保険料し か負担しない訳で、しかも、基礎年金の財政を通じて、実はかなり所得再配分的な被用 者グループが、これにも財源を提供しているという問題は、いよいよ被用者グループに ついて報酬の範囲を広げていくと、自営者グループの方は、どんな金持ちでも定額しか 負担しないというシステムとの関連を一体どう考えていくのか。そこいらはワンセット で今後御議論願いたい、かように思っております。 ○D委員 私も、今、G委員がおっしゃった意見で、財政構造改革会議の内容を御説明をいただ いたとき、私も、ここだけは大変すばらしいことを出していただいたなというふうに思 っていまして、労働界では少し意見が違うかもしれませんが、総報酬制度というのは踏 み込むべきだと思いますし、標準報酬月額の表のあり方も含めて考えるべきだと思いま す。 それから、G委員が最後におっしゃいましたことに関係しますが租税をどういうふう に負担していくかという税負担の問題も、公平・公正という大変重要なキーワードで、 制度全体を見直すということだと思います。あらゆる面で構造改革が求められている訳 ですから。国民全体が考えてみて、少なくとも公平・公正だなというようなシステムに 抜本的に見直していただくということを前提に、少なくとも私は総報酬制については賛 同したいというように思っています。 ○H委員 私は、G委員のおっしゃったことに賛成です。ただ、33ページの表の一番上に「月給 のみが賦課のベースとなっていることによる負担の不公平の是正」という書き方をして ありますけれども、余りにも「不公平」という文字が大き過ぎて、非常にちぐはぐな感 じがいたしますし、E委員、B委員のいろいろな御指摘の中にも、「不公平」という書 き方に問題があるのではないかというふうに思います。 現に、標準報酬制というのをとっていて、頭打ちにしてやっている訳ですから100万 円以上の月収があっても59万円で頭打ちと。それはなぜかというと、保険料はそれで取 るけれども、そのかわり、それで給付が決まる。そういう意味では、保険料と年金給付 とはちゃんとバランスがとれた形で決まっている訳です。そういった意味で、ここで 「不公平」と言われると非常にギラつくような感じがいたします。以上です。 ○B委員 ただいまの問題については、われわれももう少し検討していかなければいけないテー マですが、少なくとも、先ほどG委員から最後に御指摘があった、現行制度がもってい る所得再配分機能というものがこれによって後退することがないようにというのが一つ のメルクマールだろうと思います。つまり現役の賃金格差というのは、仕事によって違 う訳で、当然のことながら、いい会社に入ったかどうかということもありますけれども いろいろな意味でこれは実際の労働の反映というふうに評価出来ると思いますが、年金 というのは労働生活から引退した後の所得保障だと考えれば、現役の賃金格差がそのま ま持ち越されるということは、ある部分、かなり圧縮されるべきものだろうと思います ですから、総報酬制が保険料負担における不公平ということだけに注目するのは、給付 に反映する年金の性格から言うと、その点だけで公平性を語るというのは一面的ではな いかと思います。 それから、先ほどの資料の御説明で、前々回の資料の中で、いわゆる在職老齢年金の 対象になっている人たちの場合、一時金の比重がやたらに多いケースがあると。これは 御指摘のとおりですが、これは現在の在職老齢年金というシステムがもたらした結果で あって、そのことを不問に付して、その結果だけから不公平性を強調する材料にするの は決して適当ではないのではないか。むしろ現在の在職老齢年金という制度のあり方を 今回出されている所得資産に応じた年金の支給制限という項目の中に繰り入れてきちん と議論すべきだろうというふうに思います。 それから、自営業者との兼ね合いの御指摘が同じくG委員からございました。この点 われわれは非常に注目をしたい議論でございまして、水準の問題とは別個に、制度のあ り方として、現在の基礎年金というものがもっている内容について、これは税方式かど うかという前に、現行制度がはらんでいる問題というのは一度きちんとえぐり出す議論 をどこかで時間を取ってやっていただくようにお願いをしたいと思います。それがない と、税方式かどうかという議論自体も非常に一面的な議論に陥る可能性があることを危 惧しております。 それから、しばしば労働保険が例に出されますが、労働保険の場合には一時金も全部 負担の対象にはなっておりますけれども、給付には全然反映していないですね。これは 59年か60年の雇用保険法の改正のときにそういうふうにしたのであって、全体としてあ そこは規模も小さいし、勘定の仕方もあいまいといえばあいまいですし、少なくとも、 現在の厚生省が持っておられる社会保険制度を議論するときの一つの参照モデルのよう に労働保険を扱うというのは決して適切ではない。むしろ向こうの方がこちらを参照例 として扱うべきものではないか。以上、総報酬制に関しては意見を申し上げておきたい と思います。 それから、最後の35ページのところで出されている問題というのは、今日の検討テー マ自体の整理に図らずもなっておられると思いますが、2番目の「所得・資産に応じた 年金の支給制限」という問題と、「支給開始年齢」の問題とは、両方を議論する前提と して、一体、公的年金というのはどういう役割を持っているものなのかということにつ いて、まず当審議会でのコンセンサスが可能な限り得られておく必要があるのではない だろうか。 つまり、これはあくまでも被用者保険でございますが、被用者の年金というのは、年齢 を理由にして労働生活から引退せざるを得ない。自営業者とは違って、その時点で所得 を喪失する。その稼得所得を喪失したことに対する所得保障だというふうに考えるのか どうか。 先ほど出されたその関連での表で、二つの考え方を課長の方からお示しをいただきま した。20ページです。これは二つのリスクの考え方ということだと思いますが、私は、 右側にあります就労能力喪失の不確実性といいますか、それに伴う所得喪失のリスクに 対する保険というふうに考えるべきだと思います。というのは、長生きの不確実性への 対応という場合には、下から2番目にありますように、就労との連続性は考慮していな い訳です。 これを考慮しなくて済むのは一般的に言えば自営業者の方々で、自営業者といっても、 現在の統計上の自営業者ではなくて、実際に自分の生産手段を持っている、そういう自 営業の方々についてはここを自由に選択することが出来ますが、現在の雇用労働者は、 例えば一律定年制といったような雇用慣行を含めて、自らの意思で選択出来る幅という のは極めて制約されている訳であります。この制約は少なくした方がいいと思いますが それにしても、原理的に取り除けるものではない。その意味では、所得能力の喪失に対 する所得補填ということを公的年金の基本的な役割と考えるべきではないか。 そういたしますと、一つは支給開始年齢について、現在以上に引き上げるということ は現実的ではありませんし、また、高額所得に対する制限というものも、これに照らし て検討されるべきで、当審議会再開の初期に事務局の方からお出しになった問題は、1 年延ばして11年度の中で考えるということでございますけれども、高額所得者について の考え方を整理すべきだと思います。 一部では、約束したものを支払うということが基本的な保険原理だというお話がござ いました。原則論としてはそのとおりだと思いますが、そういう点で言いますと、あの ときに話題になった1,000万円どころか、ほんのわずかな収入があっても、在職老齢年 金というのはまず2割カットから始まっている訳でございます。したがって、現在の在 職老齢年金制度そのものの見直しを含めて、高額所得者問題を検討していただくように お願いしたいと思います。以上です。 ○ E委員 さっきG委員が最後におっしゃった、いわゆる所得の捕捉の問題は非常に重大な問題 でして、実は年金の一本化という大原則でいろいろ検討してまいっている訳です。  一本化、一本化ということで一生懸命やってきていますが、ただ、ここまで話がくる のであれば、徹頭徹尾、所得の捕捉という問題について本格的にメスを入れた考え方を 取らないと、これは公平・公正という問題の根本に関わる問題で、もっと言えば、高齢 者の課税の問題も同じ問題が出てくると思うんです。そういうことまで入れてものを考 えないと、ここの狭い土俵の中でだけ割り切り過ぎますと、かえって極めて不公平なも のをまたつくり出す危険性がありはしないかということで、もしそこまで本当に考える なら、税の徴収の問題、それから捕捉の問題、そこを徹頭徹尾明らかにして、もちろん われわれは賛成ですが、例えばはっきり納税者の背番号制を入れるとか、要するに所得 の内容というものを一切合財オープンにした形の中で制度の立案を考えていくというこ とでないと、非常に危険をはらんでいるという意味で、簡単には乗れないということを 申し上げておきたいと思います。 ○G委員 資料のお願いも含めて、二つばかり申し上げたいと思います。一つは、E委員のお話 の続きですけれども、やはりこれは根本は所得の捕捉がどの程度まで現実問題として可 能かということだと思うんです。この点については、アメリカのシステム、イギリスの システム、これはいずれもインターナル・レビニューとか、はっきり言ってしまえば、 日本でいえば国税庁ですが、そういうところが関係しておる訳です。そういうことで初 めてアメリカの場合にはOASDIという年金制度が被用者も自営業者も全く一視同仁 に扱えるということになっておりますし、イギリスの場合には、インランド・レビニ ューが関与しておりますので、やはり自営業者の方の所得もちゃんとつかんでいる。つ かんでいるからこそ、イギリスは自営業者の方には給付にはね返らない保険料を取って いる訳ですね。 いろいろなことがやれる訳です。そういうことをやるためには、ともかく捕捉能力がな ければだめなんです。その点を今後、日本ではどう考えていくのか。これは、私も非常 に言いにくい話で、いままで言うのを遠慮していたのですけれども、皆さんがそうおっ しゃいますなら、ひとつ真剣にこの問題を取り上げた方がいいんじゃないか。これが1 点でございます。今、私、イギリスとアメリカしか知りませんので、スウェーデンあた りは一体どうやっているのか、そういったことがわかりますれば、ひとつお調べ願いた い。 それからもう1点、これはちょっと違うんですけれども、そういうふうにして捕捉す ると、その負担能力に応じて拠出をしてもらう。そうすると、その拠出と給付がどうい う関係にあるのか。年金制度では絶対無関係ではあり得ない訳ですが、どの程度まで拠 出が給付に反映するシステムをつくるのがいいのか、こういうことになってくるだろう と思うんです。この点は、外国では、やはり拠出はさせるけれども給付には反映させな いといったような保険料の取り方が数多くある訳です。そういったことの例もわかれば お調べ願いたいと思います。 それからもう一つ、これは日本の話ですが、先ほどアメリカのOASDIの15%から 90%に分かれる給付乗率の違うベンド・ポイントのシステムの説明があったんですけれ ども、これはかなり所得再分配的です。日本の場合も、被用者年金の約70%と言われて おる給付水準のうちの40%は定額給付で、残りの30%は所得比例給付だというふうに考 えますと、日本の被用者の年金もかなり所得再分配的ですね。そうしますと、それをベ ンド・ポイントに直すと一体どういうカーブになるのだろうかということは、実は私は かねがね興味を持っていた問題ですけれども、もしそういうことが出来るならば、これ は自営業者と被用者、被用者の中でも専業主婦のいる典型的な家庭と独身の家庭では大 分違うだろうと思うのですが、そこいらが一体どういう関係になるのか。私、自分でや ってみたらいいんですが、もし御賛同を得られるならば、当局の方でおつくり願いたい と思います。以上でございます。 ○F委員 資料の最後の35ページに出されている意見についての感想ですが、最初の賃金スライ ドについては、八代さんなどの作業を見ますと、賃金スライドぐらいはやめないとどう しようもないという感じがするんですけれども、ただ、現実的に実現可能性ということ を考え合わせた場合に、賃金スライドは完全に廃止しなければどうしようもない状況と 考えるべきなのか。あるいは、これは5年ごとにやるのをやめるということですから、 仮に10年やめた場合に、10年間で現役の方は成長が多少とも続けば少しずつ上がってい きますね。仮に5%ぐらいは累積で超えた場合に、それでもずっと放っておくのか。あ るいは、5%超したら再考しようというふうに閾値(スレッシュホールド)をどこかに 置いて考えるのか。あるいは、100%のスライドはしないけれども、3分の1ぐらいは 当面スライドさせようとか、そういう折衷的な考え方もあり得るのではないかと思うん です。これは結果がどうなるかによると思いますけれども、もしその辺を検討されてい たら教えていただきたい。 それから、物価スライドについては、物価変動がある一定の幅を超えた場合となって いますが、一定の幅というのが何%なのか必ずしもよく分かりませんが、多分、行政経 費からいくと、昔、社会保障制度審議会で議論したときに、0.幾つというふうな数字を 聞いたことがあります。何%だったか忘れましたが、1とか2とか3とか5という、多 分、あるリーズナブルな数字が出てくるだろうと思いますが、ギリギリ行政経費とのバ ランスでいくと何%ぐらいが適当というふうに考えるべきなのか。 それと、2の高所得者の年金の支給制限の最初の「○」のところで出ている、65歳以 上に在老制度を延長する選択肢ですが、共済年金はそうなっているんじゃないかと思い ますが、違いますか。自分がこれからもらうんですけど、細かいところは分からないん ですが、いずれにしても、私は現実的に、一つのやり方としては、多分、アメリカもこ れに近いことをやっていたと思いますが、65歳以上70歳ぐらいまでの層について、現行 の在老でやっているような制度を延長するというのは一つの選択肢で考えざるを得ない のかなと思います。ただ、その場合に、支給開始年齢との関係で、現行の在老を残した ままで70歳まで延長するのか。あるいは、連合に怒られるけれども、現行の在老は廃止 をした上で、新たに65歳から70歳のところで在老制度を設けるというやり方にするのか その辺はどちらがいいのかまだよくわかりませんが、多分、必要なのかという感じがし ます。 最後に、先ほどB委員から御指摘があった20ページのことですけれども、就労能力の 喪失に対して何らかの格好で所得保障しなければいけないというのはむしろ当たり前の 話で、どの程度かということは問題になりますけれども、今、議論しなければいけない のは、長生きのリスクが非常に大きくなってきていて、予想以上に寿命が延びて、後ろ の方に資料がありましたが、男でも20年、女で27年とか、気の遠くなるような長い期間 働く世代におんぶして老後を送るという、そのこと自身の国民経済的な負担といいます か、それを議論しているんですから、そっちの問題への対応策を外してしまったら議論 している意味がなくなってしまうのではないかという感想です。 ○C委員 いろいろ御意見が出ていますが、所得の捕捉の問題とか、所得再配分の問題とか、い ろいろ出ましたけれども、全体を通じて自助努力ということも言われていますし、拠出 と給付というものを、水準は別にして、出来るだけ対応のとれたものに制度をもってい くのかどうか。それとも、従来言われているように、やはり公的年金だから所得再配分 というものを重視した制度に、より傾斜をしていくのがいいのか。その辺で各論の考え 方がずいぶん分かれてくるだろうと思うんです。それで、いまの社会あるいは経済全体 の考え方から言うと、特に社会保障以外の一般の人、経済界とか、あるいは経済学者の 人たちの考え方というのは、所得再配分よりも、むしろ自助努力、つまり自分で努力し て、自分でその努力が報われるような社会あるいは制度にしなさいという考え方が強い そういたしますと、私は、これからの年金制度を考える場合に、民間の私的年金はむ ろんですが、公的年金も取れるところだけ取って給付は出来るだけ減らすという考え方 をとるというのは、方向としてどうかなと。それでいいんだろうかという感じがするん です。 確かに今、これからの社会保障は大変だということで、給付も減らそう、負担も減らそ うと。それはよく分かりますけれども、だからといって取れるところだけ取って、給付 は出来るだけ抑えるというので、少なくとも公的年金として果していいのだろうかとい うことを考えますと、今出ているいろいろな改正案が、一つ一つ見れば、それぞれ合理 的な説明も出来るかもしれませんが、全体としてバランスがとれているかどうかという のは、いろいろ難しいことになりはしないか。 特に、ボーナスというと相当高給の賃金なり報酬のある人から取って、それが仮に、 例えば高額所得者に給付制限するとすれば、実際にもらうときには制限をしますよ、場 合によっては出しませんよというようなことになるので、果してそういうことにしてい いのかどうか。これは私もよく分かりませんけれども、その辺は大変大きな問題じゃな いかという気がいたします。 それから、それに関連して、所得の把握ということは、私も、今のような自営業者と サラリーマンの場合に非常にアンバランスがあるということはもう何十年も前から言わ れていることですけれども、問題意識としては持っていても、実際問題として正確なバ ランスのとれた把握というのは難しいことは確かですね。それは今後とも難しいだろう と思うんですけれども、そのときに年金制度の要件の中に、従来は退職、それから年齢 という二つの要素があった訳ですけれども、その上にさらに所得とか資産という要素を 今入れていいのかどうかということは大変大きな問題じゃないか。これは、財政問題を 離れて、制度の本質に関わることなので、その辺はよほどよくこの審議会でも御議論な り検討をする必要があるのではないかというふうに思います。 私は、どちらかというと、今までの制度の仕組みから言うと、正面から所得とか資産 の要素を入れることについては、少なくとも単なる保険原理とか何とかということより も、税金でやっているなら別ですけれども、制度そのものの本質を変えてしまう結果に なるので、仮にやるにしても、その点は慎重なやり方をしていただきたいというふうに 思います。 ○E委員 今のお話と関連してきますが、私は税の問題と保険の問題というものが、保険という のは再配分機能を持つにしても、やはり出したことと受け取ることの間にある相関があ るということでないと区別がつかなくなってしまうということで、出す気が起こらなく なってしまう、払う気が起こらなくなってしまう。それで、それは永続性を持たせなけ ればならないという大前提で考えておくというのが一つ大きな問題であるので、そこの ところをどの範囲で考えるかということには慎重であってほしいということが一つです それからもう一つは、これは八代先生などがおっしゃっていることですけれども、か つてはインフレがいろいろな問題を考える場合のリスクであった。ところが 、いまや 人口構成がリスクだと。その人口構成がリスクになってきた世の中で、同じことを続け 得るのかという問題提起が一方でなされている訳ですね。これは確かに大きな問題提起 でありまして、これもまた税と社会保険、それから私的年金の関係というのが提起され ている。そういう大きな条件というものを頭に置いてものを考えておかないと、冒頭申 し上げましたけれども、過去の流れの延長線上でだけ議論は出来ない条件に今きている んじゃないかということを念のためにもう一回申し上げておきたいと思います。以上で ございます。 ○G委員 C委員の話ですが、最近言われている高額所得者の所得制限というような、年金を支 給する際にミーンズテストを条件にして支給するという意味の所得捕捉ならば、これは 非常に問題が多い。私が言っておりますのは、拠出をするためには負担能力がなければ ならない訳でして、拠出の前提としての負担能力が当局が一体どの程度捕捉出来るのか 捕捉出来ないから全部一律にしか拠出はお願い出来ないということでいいのかという問 題ですから、その点は誤解のないようにお願いしておきたいんです。 ○I委員 私は余り言うこともないんですけれども、公的年金制度というものの性格が重要だと いうお話がありましたけれども、これは非常に重要で、すべて税で賄ったら話は済むと いう簡単なものではないと思います。つまり、高齢者の生活を社会的に支えるための制 度ですから、安全ネットから落ちてしまうような人は総額税でやるもので基礎年金で支 えるけれども、それよりちょっと上のレベル、私自身が年金生活者ですけれども、その 実感から申しますと、ある程度の生活をしたいと思っている人間が、公的年金に入って いて保険料を納めているので、一定の法律で決められた年金がもらえる、こういう見込 みがある訳ですね。だから非常にうまくいっている訳ですが、これは保険原理が働いて いるので、自分の拠出と自分がもらう給付とは完全に一致する必要はない。極端な場合 火災保険がそうですけれども、非常に安い保険料で、もし火事になった場合はものすご く金がもらえるけれども、ならなかったら「助かった。ありがたい」というふうになる 訳です。だから、今、極端な例を言いましてお話がうまく通じないかと思いますけれど も、新聞とか雑誌による年金制度は破綻するので、これからの若い人は掛けた分は返っ てこないということを言いますが、それは非常に間違った考え方だと思います。 ですから、やはりバランスが必要ですから、年金保険料を幾らにするかということと それをためておいて、その時点における高齢者に若い人の負担も交えて払うという、バ ランスのいい払い方をすべきで、完全に拠出と給付が一致する必要はない。しかし、全 体として、最低水準をちょっと上回る程度の老後の生活が出来るという保障をしてもら うには公的年金しかない。民間保険ではそれは保障されないだろうと私は思います。 ○B委員 もう時間がきておりますので、今後の進行について、提案というか、お願いでござい ますが、今、一連皆様方の御発言を伺っていて、特に2と3に関わる部分については、 次回、議論を続行していただくことはできないでしょうか。今日伺った御意見は、それ ぞれ大変大事なところの御指摘もありますし、私どもとしても、この点については少し きちんとまとまった形で御意見を出させていただいて、御批判を受けたいというふうに 思っております。 ○D委員 今の意見に直接は関係ないんですが、35ページの3番目の「支給開始年齢」に 関わることで、少し御意見なり考え方を意見として申し上げたいと思います。2013年ま で65歳支給ということでいま進めているんですから、支給開始年齢については、少なく ともそこの段階までたどり着いて、全体の見通しがつくまでさわるべきではないのでは ないかという意見を申し上げたいと思います。 それと関連する訳ですけれども、企業における60歳定年が今日データでお示しいただ いた状況にやっとたどり着いてきた訳です。26ページに昭和51年からのデータが出てい ますが、20年以上かけてやっと60歳ということになっている訳です。2013年の65歳とい う問題と関連させて考えてみますと、60歳定年の現状と65歳支給との間の乖離という問 題は、われわれ勤労者にとっては大変大きな問題でありまして、それをどう埋めるのか ということについての一定の見通しというか、安定感というか、安心感のようなものが 醸し出されていくことが大変重要ではないかというふうに思っています。 したがって、今までの60歳定年というのは、企業の自主性、労使間の協議によって一 つの社会的な要件をつくり出してきたという状況にあります。むしろ年金というような 側面から見ますと、さらなる定年年齢の延長についても相当時間をかけてということが 前提となります。しかし、これからは社会的な規制に向けてソフトランディングして、 ある種の規制を持たせながら一定の年齢まで到達するようなシステムにしていかないと 今まで60歳定年にむけてやってきたような、要するに「皆さんの企業の中でしっかりや ってください」というようなやり方では非常に不安定なものを残して、年金制度そのも のにいろいろな問題を起こしはしないかなというふうに私は思っています。 ただし、定年年齢にしても、年金支給にしても、画一的に一つの軸足を65歳に置くと しても、画一的でなければならないというふうには思っていません。各人で定年そのも のもフレキシブルでいいし、それから年金を受給する年齢も65歳でなければいけないと いうふうに画一的にやる必要はない。軸(65歳)を双方が重ね合わせた上で、選択肢 をもってシステムそのものにはフレキシブルに対応出来るようにしていくことが受給世 代も含めて、今後、負担をする世代についても安心感を与えるのではないかというふう に思います。そういうことをこれからの考え方の整理の中で、していくべきではないか ということを申し上げておきたいと思います。以上です。 ○J委員 35ページで同じく御意見だけ一つ申し上げたいんですが、スライド制に関連してでご ざいます。冒頭のやりとりの中でいみじくも出たと思うんですが、スライド制の、とり わけ賃金スライドをやめるか、やめないかという議論がある訳ですが、その趣旨を、い わゆる給付水準を引き下げるための方策として何かこういうことを位置づけるのか。私 は反対なんですが、そうではなくて、負担と給付の問題は慎重にやらなければなりませ んが、それはそれでどうあるべきなのか議論をし、そして、それを変更するなら変更す るのにどういう方策があるのかということでやればいいんですが、ただ、一番の基本は 現役世代と受給世代の水準というのをこれからどういうふうに考えていけば一番公平で あり、しかも、お互いが納得出来るのかということが一番大事なところではないかと思 います。 しかも、年金制度というのは非常に長いサイクルで回っていくものですから、バブル崩 壊後、確かに低迷はしていますし、物価上昇も低い。物価と賃上げとの関係も落ちつい た関係ということになっていますが、いつ何時インフレが起こるかわからない。逆に、 長い目で見たときに、医療保険やいろいろなことも含めると、現役世代の可処分所得が 上がらない。場合によっては、マイナスにもなりかねないというような状況の中で、そ の場合は高齢者の方もマイナスにしていく必要があるんじゃないかというふうに思いま す。要は、現役と高齢者の問題のあり方としては、前回改正でやりました可処分所得ス ライドという考え方は非常に的を射たものではないか。労働組合の中でもいろいろ議論 している中では、この制度は非常にいい制度を前回改正のときには導入したのではない かというふうに考えておりまして、そういう意味では、安易に水準の問題、あるいは、 それをどう引き下げるのかみたいなことと、簡単に賃金スライ ドはもうやめていいん じゃないかということに直結するべきではないんじゃないか。あくまで現役と受給世代 のどうあるべきかということの中で、賃金スライドが果たすべき役割というのはどうな のかということを慎重に議論した上で、結論を出していくべきではないかというふうに 思いますので、よろしくお願いしたいと思います。 ○F委員 D委員の御意見との関連でちょっと気になったんですけれども、60歳から65歳の間の 年金と就労のつなぎとの関係で、事務局でよく調べていただけないかと思うんですけれ ども、私の理解では、欧米の企業年金というのは、大体、公的年金より早く辞める人の 間のいわゆるつなぎの生活資金を、特に労働組合が団体交渉で取ってきたのがそもそも の出発点だったんじゃないかと理解しているのですが、日本の場合は、どうも公的年金 に乗せる部分として企業年金をもっぱら考えて議論している傾向が強いと思うんです。 それが現に出来るところはいいんですが、実際はまさに公的年金より以前に辞めたい人 が非常に増えてきて、その間を企業年金でつなごうというのが本来の姿だったんじゃな いかと思うんです。日本の場合は、その辺は退職一時金との関係がありますからどうも はっきりしないんですけれども、私も調べますが、その辺が分かったら調べていただけ ればと思います。 ○K委員 総報酬制の問題で、先ほど厚生省の方から、厚生年金の方は総報酬制、健康保険の方 は現状どおりということも制度上はあり得るというふうなお話がありましたけれども、 社会保障の双璧である健康保険と厚生年金保険が拠出の制度がそういうふうにバラバラ で現実的に問題はないのかどうか。やはり社会保障制度全体の整合性ということから考 えても、バラバラというのはおかしいのではないか。 そう思いますのは、実は今年の4月に衆議院の厚生委員会で私と鷲尾さんも一緒に参 考人で呼ばれたときに、健康保険料の負担のベースとして総報酬制をとるべきじゃない かという質問が国会議員の方からありまして、鷲尾さんも私も、公平という見地から言 えばそういうことも検討課題になり得るという話をしたことがあります。安定性とか、 そういう面から言うと、ボーナスというのは多少振れますので、財政面から言ってやや 問題があるかもしれませんけれども、全体の公平・公正感から言って、検討課題という ことは連合としても、私どもとしても同じ意見だった訳です。 健康保険の場合には、拠出は給付と関係ないといいますか、給付は一定というふうな 考えもありますが、傷病手当金につきましては、標準報酬の額がスライドする訳でして そういう意味から言っても、確かに厚生年金と健康保険は性格が違いますが、共通する ところも多い訳でして、総報酬制を片一方はとり、片一方はとらないということは現実 的にいかがなものかと、そういう意見を持っておりますので申し上げます。以上です。 ○B委員 議論は次回に引き継いでいただけるということを前提にいたしまして、資料のところ についてだけ若干の希望を申し上げておきたいと思います。 まず、2ページに高齢者の支出状況のデータが出されておりますが、これはかなりよ く分からない点があるんです。例えば保健医療のところで、年齢が上になるとだんだん 下がっておるのですけれども、これは70歳以上については、現在の老人保健制度が前提 になっていることなので、この制度に対して、今度の改正のような変更があった場合に は、当然ここは変わってくるだろうというふうに思います。 また、事務局も説明の中でちょっと触れてくださったのですが、支出というのは現実 の収入があった上での支出ですので、収入が低ければ支出も低い訳だし、支出水準が下 がれば、その構成比も変わってくる。その意味では、ここで5歳刻みで出されておりま すが、実際の現金収入のレベルでは、年金の成熟度の違いも反映して、年齢間の開きと いうのがかなりあるんだろうというふうに思います。その点を意見として申し上げてお きたいと思います。 それから、3ページ目の大きい表でスライドの問題が出ておりまして、スライドの議 論はかなりされたのですが、支給開始年齢の方は28ページのところで例えば65歳支給開 始というところが多くなっておりますが、実際の引退年齢というのは実態としてどうな のかということを併せてデータをいただきたいと思います。これは、先ほどのF委員の 御指摘のように、公的年金の給付の前に引退したい人たちのために企業年金が機能して いるんじゃないかというお話とも併せて、私どもの理解ではそのことを別に置いても、 前倒し受給の条件が付いておりますので、それによって前倒しの減額年金の受給という ことで実際には引退していっているのかなと。事実がよく分かりませんので、その辺に ついて次回でも少し補足をしていただけたらありがたいと思います。 それから、労働力率の問題については、日本に関しては29ページに労働力調査のデー タがありますが、別に健康保険ベースでの被保険者のベースのデータが別に付いており ますけれども、これは労働力調査をベースにして議論するのが妥当なのかなと。という のは、高年齢者で就労している人たちで、実際には社会保険の適用を除外されている人 がかなりおる訳です。例えば労働時間の4分の3を下回れば被保険者資格がありません し、当然のことながら、65歳を超えると年金の場合には被保険者資格がない。こういう ふうな状況がありますので、そこは労働力率そのものの判断は労働力調査にベースを置 くのがよろしいのではないだろうか、そんなふうに思います。 あと、定年制のデータは26ページですが、これは労働省がつくった資料で、厚生省さ んのせいではないんですが、9年までの時系列があって、その先に決定を含むとか、改 定が決定及び予定を含むというのが先延ばしになっていますけれども、これは実にトリ ッキーなもので、これはすべて9年のデータですね。9年で実施しているところ、改定 を決定しているところ、それから予定をしているところも含めたらこうなると。これは 本当は3本カーブが引かれるところを、9年でとって、あたかもそれが時間的に先であ るかのように言われているので、錯覚を呼び起こしかねないところについてはお互いに 注意をしなければいけないのではないかと思います。 それから、高齢者の就業実態調査のデータが27ページに付いていますけれども、就労 するかしないかについての、就労したいという希望の理由をとったデータがあったと思 うんです。その最大の理由は、私の記憶するところによれば、経済的理由ということに なっていたと記憶いたします。そのデータも次回、補足していただければありがたいと 思います。 以上です。 ○会長 4時終了という予定の時間が10分ほど過ぎておりますが、L委員、何か御発言ござい ませんか。 ○L委員 4点にわたりまして論点が整理されておりますので、それぞれについて、先ほどから も意見が出ておりますけれども、個別にこれをどうこう評価するというのはそれぞれ議 論がありまして、そういう面では、全体としてとらえていく必要があるだろうというふ うに思っております。 そんな中でも、スライド制の観点につきましては、物価スライドという観点でとらえ ていくという部分についてもよく了承出来る訳でありますし、2番目にあります「所 得・資産に応じた年金の支給制限」という部分については、とりわけ「資産に応じた」 という部分につきましては、この資料の11ページに若干それに関連した分析がある訳で ありますけれども、この分析によりましても、必ずしも資産の把握が十分にいかないと いう難しい問題を抱えているんじゃないかというふうに思っております。勿論、下の項 目の○印に所得として総合課税した方が公平ではないかという議論もある訳であります から、それらを全部ひっくるめて整理していくことになるのかなというふうに思ってお ります。 ○会長 B委員の御希望はたいへんご尤もですが、充実した議論をいたしますと、月に何回か 回数も増やさなければならないかもしれませんし、1回の時間も2時間を3時間に延ば すとか、いろいろ模様がえが必要になります。そういたしますと、厚生省の陪席してい る方々のお仕事のお邪魔になる面もない訳ではございません。その辺につきましてはな かなか簡単にいかないかとも思います。話がだんだんルートに乗ってまいりましたので 事務局のほうによろしくお願いをしたいと思います。 特にこの審議会は、社会保険制度としての厚生年金保険、あるいは国民年金保険とい う保険の制度の審議会でございます。掛け金と受け取るものとの間のある程度の対応関 係を前提にした制度の議論であることは、皆様、共通の御了解と存じます。この制度自 体をやめてしまえという御議論をなさる方はないと思います。先ほどからの御議論で総 報酬制というものについて肯定的な御感触が多かったことが一つの結論と思っておりま す。 一番初めのころ、I委員から、子どもの数が少なくなり、次の世代の人口が減ってき て、GDP自体が減ってくる。原資全体が減ってくる中での年金制度という問題がある そういうお話がありました。そのあたりへだんだん話が進んでまいりますので、その方 向でも皆様に御議論いただきたいと思います。 今日はこれで終わりにしたいと思いますが、その前に事務局の方から何か御説明があ るようです。 ○事務局 今日は議論になりませんでしたが、資料2と資料3を提出させていただいております 資料2は、大臣官房の方で、年金を含む社会保障全体の給付と負担につきまして、経 済指標の仮定を置きまして試算をしたものでございます。年金の関係につきましては、 2ページの2の(2)の(1)に書いておりますように、これまでの試算を前提といたして おりまして、9年1月の人口推計の影響を織り込んで算定をしておるということで、御 参考までにごらんをいただきたいと思います。 もう1点、資料3「平成7年の公的年金加入状況等調査」ということで、本日も御議 論がございました第1号、あるいは第3号の未加入者、未届者の状況につきまして、及 びそれぞれの制度の周知度などもまとめたものでございます。これにつきましては、ま た後日の審議会におきまして関連して御議論いただくことになろうかと思います。 以上でございます。 ○会長 ありがとうございました。それから、本日の資料については、すべて公開することと したいと存じますが、よろしゅうございましょうか。 (「異議なし」の声あり) ○事務局 まことに恐縮でございますが、本日の資料1−1の2ページの表題の下の囲み書きで ございますが、数字が間違っておりまして、一番最後の方、75歳以上は「88」でござい ます。申し訳ございませんが、訂正をさせていただきます。 ○会長 それから、今後の日程について、事務局の方から御確認をお願いします。 ○事務局 次回は10月9日、木曜日でございますが、午前10時からこの場所で開催をさせていた だきたいと思います。昼食を準備させていただいております。その次、第8回は、10月 21日、火曜日でございます。午後2時からということで、同じくこの場所でございます なお、今後のご審議につきまして、先ほど会長の御発言を受けまして、事務局としても 検討させていただきまして、審議時間につきまして改めてお願いをしたいと思います。 以上でございます。 ○会長 それでは、本日はこれで閉会いたしたいと存じます。どうもありがとうございました 問い合わせ先 年金局企画課    担 当 須田(内3316)    電 話 (代)03−3503−1711