97/09/11 年金審議会全員懇談会議事録             年金審議会全員懇談会議事録 日 時   平 成 9 年 9 月11 日 (木)  14:00〜16:48 場 所   全 国 都 市 会 館 第 2 会 議 室                           1 開 会の辞  2 委員出席状況報告  3 議 事   ・年金自主運用検討会報告書について   ・平成10年度厚生省予算概算要求の概要について  4 閉 会 〔出席委員〕   京 極 会 長   八 木 委 員  砂子田 委 員  岡 崎 委 員  木 原 委 員   国 広 委 員  久保田 委 員  坂 巻 委 員  都 村 委 員  福 岡 委 員  桝 本 委 員  山 根 委 員  吉 原 委 員   若 杉 委 員  渡 邊 委 員  船 後 委 員 ○会長 時間でございますので、ただいまから年金審議会全員懇談会を開催いたしたいと存じ ます。  まず委員の出席状況について事務局から御報告をお願いします。 ○事務局  本日は神代委員、古山委員、高山委員、目黒委員、山田委員、貝塚委員が御欠席でご ざいます。 ○会長  それでは本日の議事に入りたいと存じます。  本日は、まず年金自主運用検討会が9月1日に取りまとめた報告書について議論を行 いたいと存じます。次に、年金関係の平成10年度概算要求の概要について説明を受けた いと存じます。何分時間が限られておりますので、議事進行につきまして御協力をお願 いいたします。  それでは第1の年金自主運用検討会の報告書について論議を行いたいと存じます。ま ず事務局から「年金積立金の運用に関する資料」と、「年金自主運用検討会報告書」と の両方について御説明をいただきたいと存じます。それではお願いします。 ○事務局  年金自主運用検討会の報告書の御説明の前に、積立金運用の現状につきまして、まず 御説明を申し上げたいと思います。  資料1−1の1ページを見ていただきたいと思います。1ページの資料は、厚生年 金・国民年金の積立金の推移を見たものでございます。厚生年金・国民年金の積立金に つきましては、資金運用部資金法によりまして、全額を資金運用部に預託することが義 務づけられております。平成8年度末現在で厚生年金が 118兆円、国民年金が 7兆 8,000億円、合わせまして約 126兆円の積立金が資金運用部に預託されてございます。 平成8年度の運用利回り、すなわち預託金利でございますが、平均いたしますと、厚生 年金が4.99%、国民年金が4.56%となってございます。  次に2ページでございますが、年金積立金の資金運用部への預託の具体的な内容を書 いたものでございます。年金積立金につきましては、全額預託が義務づけられているわ けでございますが、その根拠となっておりますのが資金運用部資金法第2条第2項でご ざいます。国の資金の統合管理という原則から公的年金の積立金につきまして資金運用 部に全額預託が義務づけられているものでございます。  2番目に預託の金利の水準でありますけれども、経緯の1つ目のマルで書いておりま すけれども、かつては資金運用部資金法によりまして預託金利の下限が、これは6.05% でございますが、法定されておりましたが、昭和60年代以降、金利の低下あるいは金利 自由化の動きの中で現在は法定制ではなく政令で定められることになってございます。  その内容は次の3ページを見ていただきたいと思いますが、現在資金運用部資金法に よりまして預託金利につきましては、条文を掲げてございますが、国債の金利その他市 場金利を考慮するとともに、厚生年金保険事業及び国民年金事業の財政の安定に配慮し て政令で定める利率により利子を付するということになってございます。現在非常に金 利が低い状態でございますけれども、預託金利につきましては、国債表面利率に 0.2% の上乗せをした水準に設定されています。具体的には現在直近の発行されております10 年ものの国債の表面利率が 2.3%でございまして、これに 0.2%上乗せした 2.5%が預 託金利になってございます。ちなみにこれは史上最低の金利の状況でございます。  次、4ページでございますが、ここ数年の預託金利の推移を見たものでございます、 非常に低金利が続いているということでございます。  次に5ページを見ていただきたいと思いますが、財政投融資の仕組みということで、 平成9年度のフローの額等について記載をしたものでございます。財政投融資の資金と いたしまして、資金運用部資金、簡保資金、産業投資特別会計、政府保証債等の4つが あるわけですけれども、その中心は資金運用部資金でございます。平成9年度でいきま すと、その資金運用部資金のうち厚生年金等が7兆 3,000億円ということで、資金運用 部資金の原資のかなり大きな割合を年金の資金が占めていることがおわかりいただける かと思います。  次に6ページでありますが、財政投融資の仕組みをストック面から見たものでござい ます。平成7年度末の数字でありますが、資金運用部資金全体で 374兆円ございますが 郵貯が 212兆円、厚生年金等が 116兆円ということで、資金運用部資金の約3分の1が 年金資金になっているということでございます。  次に7ページでありますが、年金積立金の流れを取り出してみたものございます。平 成9年度予算で見ますと、厚生保険と国民年金特別会計、歳入が41.1兆円、歳出が33.7 兆円、その差、剰余7兆 3,000億円が大蔵省資金運用部に全額預託をされ、還元融資事 業等に活用されるという仕組みになっているわけでございます。  次に8ページでございます。年金積立金の流れをストックで見たものでございます。 数値は平成8年度末の数値でありまして、年金積立金が 126兆円、これが資金運用部を 通じまして年金福祉事業団の資金運用事業に24兆円、住宅融資等に10兆円、その他の各 財投機関を通じた社会資本等の整備にあてられておりますのが92兆円という現状になっ てございます。  次、9ページでありますが、これは年金積立金の使途につきまして、各年度ごとに使 途別分類表というものがつくられております。これは当該年度に新たに預託されました 年金積立金の大まかな使途を明らかにした表ということでございまして、年金資金につ きましては、住宅とか厚生福祉といった国民生活分野に主に充当されているということ になってございます。  次の10ページでありますが、年金福祉事業団の概要ということであります。年金福祉 事業団は昭和36年に還元融資の専門機関として設立されたものでございます。これは国 民年金が発足したときでございまして、このときも年金積立金の運用が大きな議論にな りまして、年金サイドからは郵貯とは区分して分離勘定で運用してほしいという要請を 大蔵省に対して行ったわけですが、結果的にはそれが実現しなかったことの代償といた しまして、還元融資の専門機関として年金福祉事業団が設立されたものでございます。  主な事業として3つの事業をやっております。1つが資金運用事業ということで、資 金運用部からいったん借りまして、それを市場で運用する事業を行っております。これ については後ほど詳細を御説明申し上げます。  それから融資事業ということで大きな柱は被保険者住宅資金貸付を昭和48年度から行 っております。ここ数年の実績を見ていただきますと、平成8年度で戸数で約23万戸、 金額で2兆円ということでかなりの被保険者の住宅ニーズに対応しているものでござい ます。  11ページでありますが、融資事業としてその他に社宅等の福祉施設、設備貸付。それか ら年金受給権を担保とした年金担保小口資金貸付あるいは年金教育資金の貸付のあっせ んなど行っております。  3番目の事業といたしまして大規模年金保養基地(グリーンピア)の設置及び運営を 行ってございます。全国11基地( 13カ所) 、1基地当たり100 万坪でございます。利用 者につきましては毎年 200万人を超える方々が利用している状況でございます。  次の12ページは現行の年金福祉事業団の組織でございます、5部15課 164名の体制で 業務を行っております。  次、13ページからは年金福祉事業団の各事業の概要を示したものでございます。まず 市場運用事業でありますけれども、積立金全額預託義務があるということでありまして 後ほどまた御説明いたしますが、他の公務員年金等のように直接市場で運用することが できない仕組みになっておりますので、一たん資金運用部に預託した資金を借りてきて 市場運用するということであります。本来の自主運用の形態にはなっていないという現 状にございます。 次の14ぺージでありますが、年金福祉事業団の資産の構成ということでありまして2 番にありますように、年金福祉事業団におきましては、長期的には高い収益をあげるこ とが期待できる株式を含めまして各種資産に分散投資をいたしまして、長期的観点から 債券だけの場合よりも高い収益をあげることを目標に運用を行っているところでありま す。  次、15ページでありますが、融資事業の仕組みということでございます。還元融資事 業につきましても、資金運用部に預託したものを借り入れまして年金福祉事業団が被保 険者等に貸し付けているということでございます。この中で特に住宅融資につきまして は、これまで被保険者に対する貸し付けの金利と資金運用部からの借入金利との間で逆 ざやがございまして、その逆ざやにつきまして、年金財政から利子補給として年金福祉 事業団に交付金が出されてきております。どの程度その額があったかは真ん中の表にあ りますように、政府交付金、例えば平成7年度ですと、426 億円、平成8年度が 451億 円、平成9年度が 784億円、累計で 5,617億円でございます。この部分が年金財政の負 担となっているわけでして、このことから一部の受益者のみ受益して他の方々の犠牲が あるという話や住宅融資について有利な運用になっていないという指摘につながってい るわけです。 次の16ページですが、大規模年金保養基地の状況でございます。11基地、13カ所全国 にございまして、55年以降開業をいたしております。実際の運営は年金保養協会あるい は設置されている県に委託をされておりまして、経営は独立採算で行われているところ でございます。  次の17ページが大規模年金保養基地の経営の状況でございまして、平成8年度で見て いただきますと、黒字の基地が4施設、赤字が9施設でございます。全体として赤字傾 向が見られているということが言えるのではないかと思います。なお、経営につきまし ては独立採算で行っておりますので経営の赤字は年金財政の負担にはなっておりません  次、18ページですが、これはグリーンピアにつきましてのこれまでの投資額を示した ものでございます。グリーンピアにつきましては、年金福祉事業団が財投からお金を借 りて建物・土地を建設し所有するという仕組みになっております。財投からの借入金に つきましては、元本償還金につきましては出資金という形で、利息については交付金と いう形でそれぞれ特別会計が負担をいたしているところございます。  これまでの投資額ですが、一番下の「事業規模」というところがありますが、土地に 関しましては 532億円、施設建設費は 1,361億円、総計 1,900億円の投資がなされてい るわけです。この投資額と利子を含めたものが最終的に年金財政がグリーンピアについ て負担すべき額ということです。 19ページは、年金積立金の管理運用に関しましてのこれまでの議論をまとめたもので す。まず厚生年金、共済年金等々年金積立金の運用の比較をしたものです。厚生年金・ 国民年金につきましては、資金運用部資金法によりまして 100%財投に預託することが 義務づけられておりますが、一方、国共済、地共済等々につきましては、それぞれの法 律で財投協力をすることが決められておりますが、100 %の預託ではないということで ございます。 他の年金制度では保険者として広く市場運用が認められているわけでありますけれども 国民年金、厚生年金についてはそれが認められてないのが現状であるということでござ います。  20ページでありますけれども、「年金積立金の管理運用に関する議論の経緯」という ことであります。これは非常に歴史的経緯のある議論であることがおわかりいただける と思いますが、まず昭和17年に労働者年金保険の名称で厚生年金制度が発足しておりま すが、その際にも厚生省サイドからは積立金の管理運用は厚生年金保険事業と密接不可 分の関係にあり、当然厚生省サイドで行うべきという主張をしたわけでありますが、財 政当局の方からは国家資金として一元的に管理すべきという意見が出され、最終的には 統合運用ということになり、その一部につきまして還元融資等で行うということで合意 がされたわけでございます。 それから、昭和35年に国民年金の創設が議論になりましたけれども、その際、反対の 1つの論拠として、積立金の使途と管理運用方法が不適切ということが大きく取り上げ られたところでございます。この国民年金の積立金の管理運用に関しましてはさまざま な意見が出されたところでありまして、次のページを見ていただきたいと思いますが、 21ページの(3)この年金審議会の前身に当たります国民年金審議会におきましては、 「国民年金の積立金は資金運用部に預託するが、他の年金の積立金と併せて『特別勘 定』を設け、郵便貯金等の預託金の勘定とは区別して管理運用する」との答申を出した ところでありますが、最終的には、次の「昭和36年」というところに書いておりますが 「年金資金は資金運用部に預託するが、使途別分類表を作成して使途を明確にした」、 「年金資金の使途については、国民生活の安定向上に直接役立つ分野を最重点に置くと いうこと」、それから、1つ飛ばしまして、エでありますけれども、「還元融資を専門 的に行う機関として、年金福祉事業団を設立した」ということで決着がおりたところで ございます。 その後の動きでありますが、次の22ページを見ていただきたいと思いますが、60年代 に入りまして、金利の低下や金利の自由化という大きな動きの中で、冒頭申し上げまし たけれども、預託金利についての法定最低制を改めまして、政令で定めるという動きが 出たわけでございます。その際にこの年金審議会からも緊急の意見を出していただいて おりまして、「積立金の自主運用という代償なく、保険料拠出者の一方的負担のみを強 いる預託金利引下げをこれ以上行うことは容認し難い」という趣旨の意見を出していた だいたところでありまして、法定制から政令制定制に移行する代償として現在の年金福 祉事業団の年金財源強化事業などの市場運用が導入されたわけでございます。しかし、 この際の市場運用というのは、資金運用部から借りて運用するものであり、本来の形の 市場運用ではなかったわけでございます。 次の23ページは、年金資金の運用の見直しの1つの契機ともなりました今年3月の小 泉厚生大臣と三塚大蔵大臣の確認でございます。両大臣間で、年金特別会計が直接自主 運用をする方式を含め年金資金の運用の在り方について、平成11年の次期財政再計算時 に間に合うよう、資金運用審議会懇談会において検討する旨の内容で、両大臣が確認し たところでございます。  次の24ページですが、もう一つの大きな行革の動きの中で、ことしの6月に特殊法人 等の整理合理化で、年金福祉事業団についての合理化案が決定をしております。「(2) 年金福祉事業団、平成11年に行われる年金の財政再計算に合わせ、年金資金の運用の新 たな在り方につき結論を得て、廃止する。資金運用業務については、資金運用部との関 係を含め、担当機関の在り方を長期的かつ専門的見地に立って、別途検討する。大規模 保養基地業務からは撤退し、また、被保険者向け融資業務については、適切な経過措置 を講じた上、撤退する。」  という趣旨の閣議決定がなされたところであります。  なお、この閣議決定に先立ちまして、与党である自民党、さきがけ、社会民主党の間 におきまして、次のような申し合わせがなされております。資料は用意しておりません が、年金福祉事業団については、年金受給者等に影響が及ぶことがないよう十分に留意 するとともに、連立与党で融資事業を含む年金資金運用の新たな在り方につき、財政投 融資全体の在り方の検討を含め早急に結論を得る、という趣旨の申し合わせがなされて いるところであります。  次、25ページ以下は、「年金自主運用検討会の状況について」、これは後ほど御説明 を申し上げます。  引き続きまして、年金福祉事業団の市場運用の状況等について御説明を申し上げます ○事務局  私からは資料1−2に沿いまして、先ごろ出ました平成8年度の年金福祉事業団の資 金運用事業決算の状況と、後の議論につながりますが、資金運用事業の現状のポイント について少し御説明させていただきたいと存じます。  お手元にお配りさせていただいていますファイルの中に、前回参考資料として50ペー ジほどの分厚い資料が入っております。毎年決算が出ますと、年金福祉事業団と私ども におきまして、7月ごろ、できるだけ初めてごらんになる方にわかるように、資金運用 事業の概要と結果について御報告しているわけですが、きょうお配りしましたものはそ の資料のうち幾つか抜粋したものでございます。ということで、この薄い資料に基づき まして御説明させていただきたいと存じます。  まず1ページ、「資金運用事業の概要」でございますが、先ほど申し上げましたよう に、基本的には財政投融資制度の一環として仕組まれておりまして、年金積立金は、年 金特別会計から全額資金運用部に預託されて、そこで預託金利が確保されるわけであり ます。資金運用事業は、年金福祉事業団がその資金運用部からの積立金の一部を預託金 利と同率で借入れ、それを民間運用機関に委託して運用することになっています。  借入れの時期などは、基本的には資金運用部の資金繰りや特別会計の資金繰りに応じ て、最近では年1回ないし2回新規資金については借入れるというような状況になって いるわけであります。  民間運用機関としては、信託、生保、投資顧問へ委託ということですが、現在は55社 という数の機関と契約し委託運用をしております。  そこで運用するわけですが、借入金の利息については年2回、これは基本的には9月 末と3月末、8年度で言いますと、約1兆 2,000億円の借入利子を年2回返すわけです 元本につきましては、一定期間を経た後、資金運用部に償還をいたしますが、これは事 業によって異なります。例えば、資金確保事業でありますと、5年間据え置いた後、後 の5年間均等に払う、10年間でお返しする。あるいは財源強化事業でありますと、7年 後に一括償還するということで、基本的に全額ある時点で借りたものを返すというのは 一番短くても7年後になるということであります。その間運用して収益を上げて年金財 源に貢献する。 あるいは還元融資事業の資金を確保する。こういったことが目的になっているわけでご ざいます。  2ページ以下、8年度の運用の結果でございます。まず2ページは簿価ベースという ことで、特殊法人の会計が簿価ベースで行われる関係で、簿価ベースでの表示の結果を 出しております。下の図をごらんいただきますと、7年度末に 22. 2兆円の簿価ベース の資金がありました。それを真ん中の上の方ですが、この8年度に新しく資金約 7,000 億円を借りまして、資金運用事業を行うわけです。真ん中の箱でありますが、実現収益 と申しますのは、例えば債券の利息、あるいは株式の配当、資産売却の益ですが、それ で帳簿に乗る売却益でございますが、そうした収益が 8,000億円あったということです ただ、この年、過去からずっと借りてきた資金の借入金利息が約1兆 2,000億円ござ いまして、その結果利差損益として、当該年度は 4,000億円の赤字でございます。新聞 等で報道されております利差損の1兆4,000 億円というのは、平成7年度末の左の方の 下の箱に書いてありますように、当時までの累積差損益が1兆円ありましたものですか ら、8年度末には 1.4兆円になった、こういう数字になっております。 ただいまのは簿価ベースで見たわけですが、同様にそれを時価で見ると若干状況が改 善しておるわけでございますが、基本的な流れは同じようなものですが、真ん中の箱に 「総合収益」というものがございます。それが 9,000億円。先ほどは実現収益 8,000億 円となっていますが、この違いは実現収益プラス資産として持っている株あるいはその 他の資産に評価益が 1,000億円あるということで、時価ベースでは簿価ベースの結果よ りも 1,000億円よくなったということでございます。実質的にはこれが運用の成績です が、それでも、先ほど1兆 4,000億円ということでございましたが、時価ベースで見て も1兆 3,000億円弱の赤字が累積しているということでございます。 この背景は、6ページにございます投資環境、それから後ほど御説明申し上げますが 利払い、利子の高どまりということでございます。6ページに簡単に触れてございます が、8年度の投資環境は、例えば、債券ですと7年度末に比べて金利低下局面で1%弱 下がっている。年金福祉事業団の資産が次第に大きくなってまいりますので、市場銘柄 の 0.1%の上下で大体 500億円程度の資産の上下があるということで、この金利の低下 が非常にきいている。あるいは株式市場ですと、7年度末2万 1,400円であったのが、 8年度末1万 8,000円になった。 これは国内資産の状況ですが、一方、外貨建て資産の方は、むしろ収益の向上に資す るようになっています。例えば、米国(NYダウ)は 5,587ドルが 6,583ドル、為替も 106円から 124円ということで、こちらの方は収益に貢献するように働いております。 後ほどまた時間があればごらんいただきたいと思いますが、最後の方、9ページ、10 ページですが、資産の構成が載っています。国内資産が約9割弱ですので、国内資産の 収益の悪化が平成8年度の収益の悪化につながったということございます。  それとともに、7ページでございますが、いわゆる資金運用事業のコストであります 借入利息が高どまりをしているということでございます。ここに書いてございますよう に、平成9年3月末の財投金利 2.8あるいは直近では 2.5というふうに低下しておりま す。5ページをごらんいただきたいのですが、少し経年変化を見ております。その表の 真ん中の方から少し上の欄に「借入金利息の運用元本平均残高比」と、その下に参考と いたしまして、「新規財投預託金利」でございますが、平成2年、3年ぐらいの財投の 預託金利 6.8とか 6.24 、こうした資金が冒頭申し上げましたように、まだ償還期限に 来ていないということもあって、全体的に平均としては、平成8年度においては、7 ページにお戻りいただきますと、 5.2%とまだ高どまっている。一方で、その時点の市 場環境が、先ほど申しましたように平成7年度よりも悪化したということで、金利の高 どまりとちょうどその時点の市場環境の悪化で当該年度は実現ベースで 4,000億円、時 価ベースで 3,000億円弱の単年度赤字が生じたと、こういう状況になっているわけであ ります。 以上でございます。 ○事務局 次に年金自主運用検討会について御説明申し上げます。資料1−1の25ページに返っ ていただきまして、年金自主運用検討会の趣旨であります。これにつきましては、現在 年金積立金につきましては資金運用部に全額預託することが義務づけられているわけで ありますが、本来、加入者の利益のため、年金の保険者である厚生省が自主的に、確実 かつ有利に運用することが必要であるという観点から、年金積立金運用の基本的なあり 方を検討していただくために、厚生大臣が主催する私的な検討会として開催をしたもの でございます。  検討の内容は、「年金積立金の運用の基本的な考え方」あるいは「運用を実施するた めの仕組みのあり方」などでございます。  検討会のメンバーでありますが、次のページを見ていただきたいと思いますけれども 26ページにありますような方々に御参画をしていただいたところでございます。座長は 三宅淳一さんでありまして、日本総合研究所の副理事長をされている金融の専門家でご ざいますが、資金運用審議会懇談会の委員もされている方でございます。この年金審議 会からは、貝塚委員と船後委員に御参画をしていただいたところでございます。貝塚委 員につきましては、資金運用審議会懇談会の座長も兼ねておられるわけでございます。 そのほか、資金運用審議会懇談会からの委員あるいは保険料拠出者の代表の労使の方々 学識経験者に参加していただいて6回にわたりまして議論をいただきまして、去る9月 1日に報告が取りまとめられたところでございます。  報告の内容につきまして、資料2−1に沿いまして御説明をしたいと思います。資料 2−1の報告書の2ページであります。まず「はじめに」というところで、この検討会 の問題意識というか、設置の背景を書いてございます。2つの事項を挙げておりまして 第1は2つ目のパラグラフでありますが、少子・高齢化が急速に進む中で、将来の保険 料負担の増加を抑制するという観点から、年金積立金運用の重要性が一層高まってきて いるということを1つの背景に挙げております。  もう一つの背景は、4番目の段落でありますけれども、財政投融資制度につきまして さまざまな問題が指摘されているのを御承知のとおりと思いますけれども、その改革を 推進する観点から現在資金運用審議会懇談会において本格的な検討・研究が行われてい ることを挙げているわけでございます。  こうした状況の中で、年金積立金について、資金運用部との関係を抜本的に見直し、 保険料拠出者の利益のため最もふさわしい運用の在り方について検討するという趣旨で 設置されたものでございます。  次の3ページをお開き願いたいと思いますが、まず「年金積立金の意義と年金積立金 運用の基本的考え方」を明らかにしております。年金積立金の意義につきましては、ま ず、2つ目の段落でありますが、現行の年金制度の財政方式につきまして、「我が国の 年金は、世代間扶養の考え方を基本としつつも、世代間の負担の不公平を是正するため 年金積立金を保有し、その運用収入によって、将来の保険料負担の増加を抑制するとい う財政方式(修正積立方式)をとっている」と整理をした上で、最後の段落であります が、「年金積立金は、年金給付に充てるため強制徴収した保険料の集積であり、運用収 入の如何によって将来の保険料負担が影響を受けることを考えれば、年金積立金は専ら 保険料拠出者の利益のために運用しなければならない」と指摘をしているわけでござい ます。 次に、年金積立金運用の基本的考え方で、まず年金積立金の資金としての性格につき まして、長期性、安全性、有利性を指摘しております。 まず「長期の資金」につきましては、今後とも年金積立金は着実に増加することが見 込まれるということで、長期的な総合収益の確保を目指して運用することが求められて いる資金としてあります。 それから「安全性・確実性」につきましては、保険料拠出者の最大の関心は、将来に わたり年金給付を確実に受けるということでありますので、安全・確実な運用が求めら れている資金であるとしております。 最後に「有利性・効率性」につきましては、将来の保険料負担の増加を抑制するとい うことから、長期的に高い収益があがるよう効率的な運用が求められているとしている ところでございます。  4ページでありますが、「年金積立金運用の基本的考え方」として、まず年金財政と の整合性を確保して、運用の基本方針を策定することが不可欠であると指摘をしている ところでございます。ご承知のように、年金制度は5年ごとに長期的な収支見通しを作 成しているわけでありますが、年金制度を安定的に運営するためには、(1)で述べた長 期性・安全性・有利性などの年金積立金の性格を踏まえまして、年金財政の長期的な収 支見通しと整合性を持った年金積立金の運用を行う必要があるわけでございます。その ために、運用の目標でありますとか、政策的資産構成割合等を定めた年金積立金運用の 基本方針を策定することが不可欠であると指摘されているわけであります。  この基本方針につきましては、状況の変化に応じた見直しの必要性についても指摘が されているわけでございます。  次に、具体的な運用の在り方といたしましては、「長期的観点に立った分散投資」の 必要性を指摘しているわけでございます。資本市場におきましては、一般に安全性と有 利性を両立させることは難しいことでありますけれども、債券、株式等多様な資産に運 用対象を分散して、長期運営をすることによって資産全体の収益率のぶれを小さくし、 かつ債券だけで運用するよりも高い収益率を期待することができるわけでございます。  こういう立場から、3つ目のパラグラフでありますが、「年金積立金の運用に当たっ ては、安全性・確実性を重視しつつ適度な収益率のぶれを許容した上で、長期的な総合 収益の確保を目指し、各種資産への分散投資を行うことが適当である」としています。  しかし、ただし書きでありますけれども、リスク生産を含めて運用を行う場合には、 収益率の下方へのぶれが続いた場合には、資産残高が債券で運用した場合の水準を下回 ることがあるわけで、いわゆるショート・フォール・リスクと言われているものであり ますけれども、その点に留意する必要があるとしているわけでございます。  最後のパラグラフは結論でありますけれども、運用の基本方針ということが積立金運 用に当たりましては大変重要なものになるわけでありますが、「運用の基本方針の策定 に当たっては、年金積立金にどの程度のリスクが許容されるか慎重な検討を行い、市場 運用のリスクとリターンを明確にした上で、十分な議論を尽くして、保険料拠出者等関 係者の合意形成を図る必要がある」と指摘をしております。  次、5ページですが、「年金積立金の運用の現状と問題点」。  まず「資金運用部への預託義務」の問題点でありますが、「経緯と現状」につきまし ては、前半で説明した年金積立金運用と統合管理をめぐるさまざまな議論の経緯あるい は財投制度の情報開示の不十分さなどを指摘しているところでございます。  「問題点」といたしまして、資金運用部への預託が義務づけられていることによりま して、多様なさまざまな運用方法を選択することが認められていないということで、次 6ページでありますけれども、「年金積立金の性格や運用の基本的考え方を踏まえた運 用ができない仕組みとなっている」ということを結論として指摘をしているところでご ざいます。  2番目に「年金福祉事業団による市場運用」につきまして、「経緯と現状」につきま しては、先ほど運用指導課長が説明したような内容を触れております。  「問題点」としまして、3つ指摘しておりまして、第1段落は、現在の年金福祉事業 団の市場運用が、「長期的視点に立った年金積立金本来の運用になっていない」という ことを指摘しております。  2点目に、現在の年金福祉事業団の市場運用は、「市場環境が悪化し、利払いに見合 う実現収益を確保できない場合には決算上赤字が生ずる」という点を指摘しております  3点目に、現在の年金福祉事業団の運用につきまして、年々は改善はされてきている ものの、「更なる専門性の向上を求められているほか、これまでの運用実績の十分な分 析評価、一層の情報開示などが必要である」ことを指摘しております。  「以上のことから、年金福祉事業団が資金運用部から資金を借りた上で運用する仕組 みについては問題が多く、抜本的に見直すことが必要である」と結論づけているわけで ございます。  7ページの3.「資金運用部への預託義務の廃止と自主運用の確立」。  この部分が、いわばこの検討会のこれからの基本的方向を示した結論部分に当たるわ けでございます。  まず「預託義務の廃止」ということで、第2段落で自主運用を定義いたしております 「年金積立金は、年金の制度運営全般について権限と責任を有する保険者(厚生大臣) がその判断により、保険料拠出者の利益のため、年金積立金に最もふさわしい方法で運 用すべきである」。これが自主運用であると定義をしているわけでございます。現在の 少子・高齢化による、運用の重要性の一層の高まりとか、さまざまな状況のもとで、も はや年金積立金に預託義務を課すことは適当でなく、「年金積立金については、本来の 趣旨に立ち返り、預託義務を廃止して、保険料拠出者の利益のため、年金積立金に最も ふさわしい方法で運用することができる仕組みに再構築すべきである」と指摘をしてお ります。  2番目に、「自主運用の確立と責任体制の明確化」ということでありまして、自主運 用の確立あるいは自主運用に当たりましては、責任体制の明確化を図る必要があるとし ております。具体的には第2パラグラフでありますけれども、「年金制度の運営に最終 的な権限と責任を有する保険者(厚生大臣)を初め、運用に携わる全ての者について権 限と責任を明確にした上で、受託者責任(忠実義務、注意義務)を課すとともに、情報 開示を徹底することが必要である」としております。   また、「責任体制の明確化のためには、保険料拠出者による監視機能や関係機関に よる監査機能の充実」についても触れられているところであります。  3番目に「預託義務廃止後の財政投融資との関係」でありますが、これについては、 本日の新聞でも出ましたように、現在大蔵省の資金運用審議会懇談会で議論がされてお りますが、預託義務が廃止された後の在り方につきましては、任意の預託や財投債・政 府保証のない財投機関債の購入が考えられるわけであります。「公的年金としては、保 険料拠出者の利益になると判断される場合に、主体的に、預託又は財投債・財投機関債 の購入をする」ということでございまして、今後は市場を通じて財政投融資とのかかわ りを持つということが明らかにされているわけでございます。  8ページでありますが、4.「年金積立金運用の新たな仕組み」で、具体的な仕組み について、7つの留意点を提言しています。  まず第1が、「年金積立金の運用の基本方針の策定」ということでありまして、保険 者(厚生大臣)が、年金財政の長期的見通しや年金積立金運用の基本的考え方を踏まえ た運用を行うために、運用の基本方針を策定する必要があるということを指摘をしてお るところでございます。  2番目の柱が「保険料拠出者の代表等からなる運用委員会の設置」を提言しておりま す。 積立金の運用というのは、最終的には保険料水準にも影響を与える問題でもございます したがいまして、運用基本方針の策定等運用の重要事項の決定に当たりましては、保険 料拠出者や金融・経済の専門家の意見を反映すること、あるいはこれらの者が運用全般 について監視する仕組みを作ることが必要であるといたしております。  これらの観点から、保険料拠出者の代表や金融・経済の専門家が参加する「運用委員 会」を設けることを提言をいたしております。具体的な運用委員会の役割といたしまし ては、1つは、年金積立金の運用全般について厚生大臣の諮問に応ずること、あるいは 厚生大臣に対して意見具申や建議を行うこと。2つ目は、運用管理機関の指導監督の状 況を含めまして、年金積立金の運用状況の監視をすることが考えられています。  最後のパラグラフで、この運用委員会の具体的な在り方については別途検討する必要 がありますが、年金積立金運用と年金財政・制度設計との整合性を図るため、この年金 審議会との十分な連携の確保の必要性が指摘をされているところでございます。  9ページですが、新たな仕組みの3つ目の柱といたしまして、「民間運用機関による 市場運用の実施」ということでありまして、実際の運用というのは、基本的には運用の 専門家である民間運用機関に委託して実施することが書かれてございます。積立金につ きましては、資金が巨額であること。危険分散の必要性、運用機関相互の競争を促進す るという観点から、「海外を含む多くの運用機関に委託することが必要である」として いるところでございます。  4番目の柱が、「運用管理機関による民間運用機関の管理」ということで、「運用管 理業務の必要性」ということでございます。多くの民間運用機関に運用を委託するわけ ですが、この場合には政策的な資産構成割合の維持、効率的な運用を図る観点から、例 えば、中短期の資産配分比率の決定、運用機関の選定、運用機関の指導、運用機関の評 価等々の運用管理業務が不可欠になるわけでございます。  この運用管理を行う組織の具体的な在り方につきましては、行革との関連に留意する 必要があるわけでありますが、検討会ではこういう組織が満たすべき4つの要件を挙げ てございます。  10ページを見ていただきたいと思いますが、4つの要件の第1が「専門性の確保」と いうことでありまして、「資産運用に関する専門的知識を有する人材を確保するという 観点から、職員の採用や処遇については、組織の判断で柔軟に対応できるようにする」 必要が書かれてございます。  2つ目の要件が「民間活力の活用」ということです。この組織につきましては、年金 積立金という公的資金の管理を行う以上、公的性格を有する組織であることが必要なわ けでありますけれども、投資判断等について広く裁量性をもたせるような観点から、 「組織の最高責任者は民間人を公募するなど、民間活力を活用した組織とする」ことを 挙げております。  組織の3つ目の要件として「責任体制の明確化」ということでありまして、権限と責 任の所在を明確化して、注意義務あるいは忠実義務に違反した場合、速やかに責任をと る体制を構築する必要性が書かれてございます。 最後の要件が、「公平・公正、透明性の確保」、「情報開示の徹底」でございます。 この運用管理を行う組織の性格でありますが、これにつきましては、国みずから行うこ とも考えられるわけですが、これにつきましては、専門的知識を有する人材の確保の困 難さ、行政の肥大化につながるおそれがあること。国による企業支配につながる等の理 由で、国とは別の運用管理機関を設けて行うことが現実的であるといたしております。  公的資金の管理を行う以上、何らかの公的性格を有する組織であることが必要である わけでありますけれども、民間活力を最大限発揮させるようなことの必要性も書かれて いるところでございます。  次の11ページでありますが、運用管理機関の「内部組織の在り方」として、運用管理 業務は、高度の専門性、中立性あるいは権限と責任を明確にするというようなことがご ざいますので、運用管理機関の中に数名の専門家からなる「投資委員会」を設置しては どうかということも提言されているところでございます。  5番目の柱が「保険者等の忠実義務及び注意義務」でありまして、自主運用に当たっ て、責任体制を明確化することが指摘されているわけでありますが、公的年金資金運用 につきましても、企業年金において適用されております受託者責任の精神をできるだけ 取り入れることが指摘されておりまして、「運用に携わる全ての者につきまして、具体 的に果たすべき義務を法令により明確化することが必要である」としているところでご ざいます。  具体的な義務の内容は第2パラグラフで書いておりますように、1つは、運用関係者 は、保険料拠出者の利益のため忠実に職務を遂行しなければならないこと。2つ目が、 運用関係者は、それぞれ専門的な立場に立って、年金財政や金融の状況に配慮しつつ、 十分な注意を払って職務を遂行しなければならないということを挙げてございます。  この場合、運用関係者がいろんな義務を果たしたとしても、市場変動の結果、期待し た運用利回りが得られないということもあるわけであります。こうした場合、市場変動 による運用の結果については、関係者は責任を負うことはない、と言えるわけですけれ ども、「注意義務等に違反した場合には罷免、懲戒処分、賠償等の責任を問われること になる」としているところでございます。  次の12ページでありますが、6番目の柱が「情報開示の徹底」ということで、「情報 開示の必要性」といたしまして、「運用の如何が保険料水準に影響を与えることなど保 険料拠出者の利害に直結するので、保険者(厚生大臣)は保険料拠出者に対して、運用 の方針、運用状況等を説明する責任を有する」としております。  さらに保険料拠出者等が、運用管理の関係者を監視するためにも十分な情報が開示さ れる必要があるとしているところでございます。  「情報開示の内容」については、定期的にわかりやすく行うことが必要であるという ことで、運用の基本方針、基本方針策定の考え方、時価での収益率、資産残高、資産構 成割合、運用委託機関の名称・運用額、運用実績など、できるだけ詳細に行うことが必 要だとしております。  また、3つ目の段落が書いておりますが、年金積立金の運用結果が、年金財政に影響 を与え、最終的には保険料率に反映されるわけでございまして、「年金積立金の運用結 果と年金財政との関係、例えば、財政再計算時に想定した運用見通しと実績の乖離、運 用結果が年金財政や保険料率に及ぼす影響等について、情報開示すべきである」と指摘 をしております。  7番目が「その他」ということでありまして、国による民間企業の支配等を避けると いう観点から、株主議決権の行使等につきまして、何らかの制限を検討することの必要 性が書かれているところでございます。  13ページ、最後「自主運用への移行」ということでありまして、まず「実施の時期」 でありますが、積立金運用の重要性が一層高まっていることから、できるだけ早期に実 施することが必要であるということで、「平成11年の次期財政再計算に合わせて制度改 正を行い、実施に移していくことが必要である」としております。  2番目に「自主運用への円滑な移行」ということで、「市場の混乱を小さくするため に、その規模については、徐々に増加させていくことが現実的である」としております  最後に「年金福祉事業団の市場運用事業の円滑な承継」ということでございます。年 金福祉事業団につきましては、ことし6月の閣議決定によりまして、年金資金の新たな 運用の在り方につき結論を得て、廃止することが閣議決定されているわけでございます この閣議決定の趣旨に従って、年金福祉事業団を廃止するに際しまして、「市場に混乱 を生じさせないよう、年金事業団の資産及び負債の円滑な引継ぎが必要である」として おります。  14ページは「運用の基本方針と運用管理業務」の内容をまとめたものでございます。 運用の基本方針というのは「年金債務の把握」、「長期的な政策的資産構成割合の策 定」ということでありますが、運用管理業務は中短期での資産配分比率の方針の決定と か、運用機関の選定とか、運用機関に対する管理、運用機関の評価、そういったものが 運用管理業務になると整理しております。  15ページが年金積立金運用の新たな仕組みを試案として全体をまとめたものでござい ます。現在、厚生大臣は年金制度の保険者といたしまして、制度設計、財政再計算、保 険料徴収、年金給付等の事務を行っていますが、年金積立金の運用につきましても、保 険者としての機能を果たすべきことが求められているわけでございます。  具体的な役割として、運用の基本方針の策定あるいは運用管理機関の指導監督が挙げ られているわけでございます。  運用の基本方針の策定等に当たりましては、左にありますような運用委員会すなわち 保険料拠出者の代表者のほか金融・経済の専門家で構成する運用委員会の意見に基づい て策定することが求められているわけでございます。  実際の運用は一番下にありますような民間運用機関が市場で行うわけでありますけれ ども、全体を運用管理する機関が必要になるわけですが、その運用管理を行う機関につ いては、専門性の確保、民間活力の活用、責任体制の明確化、公平・公正、透明性の確 保が求められているわけでございます。  それと財政投融資との関係につきましては、右の方にありますように、財投債、財投 機関債等、市場を通じた資金提供という関係になるわけでございます。  以上が報告書の内容でございます。  それから、関連の資料について簡単にご説明いたしますが、資料2−3が6回にわた ります検討会の議事要旨でございます。先ほど御説明いたしました検討会の報告書につ きましては、満場一致で採択をされたわけでありますが、最後の報告書をまとめる段、 第6回の際にいろんな意見が出ております。その意見を1〜2御紹介させていただきた いと思います。一番最後のページを見ていただきたいと思います。  第6回の自主運用検討会の議事要旨の中でありますが、報告書案につきまして、例え ば、1番目のマルでありますけれども、「運用委員会は、無責任となるおそれがあり」 形骸化するという趣旨だと思いますが、「できるだけ委員会というものに依存すべきで はないと思う。厚生大臣が自己の責任において決定すべきであろう」という御意見もご ざいました。  それから、自主運用の難しさといいましょうか、適正規模を超えた場合に大変難しい 問題が起きるのではないかということで、資金運用という面からも、「国が行う年金は 最小限にとどめるべきであろう」という御意見がございました。  これに対しましては、次の2ページを見ていただきたいと思いますが、2ページの一 番上のマルですけれども、「自主運用は難しいものであるから、年金の規模は小さくあ るべきというのは視点が違うような気がする。本末転倒ではないか」という御意見もあ ったところでございます。  実に多様な御意見、活発な議論をしていただきまして、それは後ほど見ていただけれ ばいいと思いますけれども、報告書については、全員の了解、全会一致で採択されたも のでございます。  資料2−4は、この検討会の議論に際しまして用いました各種のデータとか資料でご ざいますので、後ほどお目通しをいただければと思います。  最後に、資金運用審議会懇談会との関係について御報告を申し上げますが、資金運用 審議会懇談会では、財投改革の論議を進めているところでございます。本日の各紙朝刊 にも昨日の資金運用審議会懇談会での議論、財投債あるいは財投機関債の是非の議論が あったわけですが、年金の自主運用問題については、今月の26日に開かれる資金運用審 議会懇談会におきまして、先ほど御説明いたしました自主運用検討会の報告書も含めま して、資金運用審議会懇談会では議論をしたいということでございます。  以上で説明を終わらせていただきます。 ○会長  どうもありがとうございました。ただいま御説明のありました2つの事柄につきまし て、御意見などございましたら、皆様御自由に御発言ください。 ○A委員  事務局の方で非常に要領よく御説明がありましたので、特につけ加えることもござい ませんが、ちょっと二、三コメントらしいものを申し上げますと、やはり最後の第6回 目の議事要旨に載っております問題でございまして、年金積立金の規模というものは一 体どの程度が一番いいのかというのは最後まで非常にもめたわけでございますが、これ は自主運用検討会の検討事項ではないと。これは年金審議会マターであると、こういう ことで御了承はいただいたと思っております。  ただ、この年金審議会としても、一体積立金の規模をどう考えていくかというのは非 常に重要な問題でございます。特にこのように積立金の持っている意味が年金財政に非 常に大きくなってまいりますと、アメリカでことし1月に出ました大統領諮問委員会の 答申が3つの意見に分かれましたのも、やはりこの積立金の運用というものをどうする かと。1カ所でまとめて運営するのがいいのか、あるいはもっと分散して運用するのが いいのか。 分散するということは結局民営化につながっていくわけでありますが、そういうことで 分かれているわけでございまして、これが審議会が自主運用検討会から受け継いだ一番 大きな問題になるかと思います。  それから、この自主運用検討会でやはり運用委員会と年金審議会との関係というのが これも先ほど説明ございましたし、議事要旨でも繰り返し繰り返しこの問題が出てくる わけでありますが、結論はやはり別の組織にすべきであると。行革へ持っていったらど ういうふうに言うかはわからないけれども、それは行革の意見であって、やはり自主運 用検討会としては筋を通して、本来年金審議会の守備範囲と運用委員会の守備範囲とは 重なるところもございますが、基本的にはずれるわけでございますから、別の組織でや るべきだと。 しかし、両者は非常に密接な関係をとってやっていく必要があると、こういう御意見で ございました。以上でございます。 ○会長  それでは、どうぞ、どなたからでも2つの御説明につきまして御意見、御議論御自由 に御発言をお願いいたします。 ○B委員  歴史的な経過を余り承知してないもので、初歩的な質問になるのかもしれませんが、 ちょっと教えてください。先ほどの各種年金集団の中で、なぜ厚生年金だけは100 %資 金運用部への資金の預託が義務づけられて、いわゆる共済等々のグループはなぜそうで ないのか。これは歴史的な経緯があるのだろうと思うんですが、先ほどからの年金積立 金の自主運用ということの趣旨から考えると非常に大きな乖離を感ずるわけでございま す。 ○事務局 ただいまの御質問でありますけれども、国の資金についてはすべて大蔵省の資金運用 部において統合管理すべきという考え方に基づいて、厚生年金・国民年金の積立金は預 託義務が課されているわけでございます。これらのお金は一たん国の特別会計に入ると いうことで、国庫に入ったお金についてはすべて財政当局が統合管理すべきという考え 方に基づいて厚生年金・国民年金の積立金につきましては預託が義務づけられているも のと思われます。国共済、地共済等につきましては、厳密な意味で国庫に入るお金でな いということで、この預託義務からは除外されているのではないかと思われます。 この年金審議会においては、従来から少なくとも他の共済並みの運用の裁量性は持つ べきだということを何度にもわたりまして提言をいただいているところでありまして、 それが諸般の事情でこれまで実現しなかったものと考えております。 ○B委員 従来から公的年金の一元化ということが非常に大きなテーマになっていろいろ難しい 問題で今日まで来ているということは承知しておりますが、これは前回改正でも話題に なったところかと思います。また、その第1段階ということで現在の基礎年金制度とい うものができているのだと承知しておりますが、従来の公的年金の一元化という議論の 中に、積立金問題をどういうふうに扱われてきたのでしょうか。 ○事務局  積立金の運用については、基本的には厚生年金・国民年金も他の共済並みの運用の形 態を目指すべきという大きな方向で議論がされてきたことは先ほど申し上げたとおりで ございまして、一元化の論議の中で積立金運用をどうするかという議論は特になかった のではないかと承知しております。 ○B委員  つまり一元化の議論の中には積立金の扱い、あるいはスキームとか、こういうことは とりあえず除外されたところで一元化が議論されてきた、こういうふうに理解していい んですか。 ○事務局  一元化のときには、制度全体の一元化ということで議論が行われておりまして、積立 金だけを取り上げて、これだけでも一元化しろと、そういう議論はこれまでは一切なか ったということです。あくまで制度の一元化ということで議論が行われてきたというこ とでございます。 ○B委員  私の伺いたい趣旨は制度全体の一元化という議論の中に、積立金問題も入っていたか どうかということなんです。 ○A委員  事務局がお答えになったとおりでございまして、私も一元化はずっと関係してきたわ けなんですけれども、一元化の議論は、年金制度そのものをどうするかという視点から の議論で、積立金の話は直接には関係はなかった。ただ、我々は制度が一本になれば、 例えば厚生年金に一本になれば、当然積立金は厚生年金の積立金と同じような形でそれ 以後取り扱われるであろう、大体こういう了承のもとで話は進めた、こう思っておりま す。 ○B委員  すいません、くどいようで恐縮でございますが、そうすると年金制度全体の一元化と いう議論の中に、積立金の扱いそのものが明示的な形で取り上げられたことはないけれ ども、将来制度が一本化されれば、積立金の扱いも統一的な扱いになるだろうと、こう いうふうに想定をされていたと、こういう理解でよろしゅうございますね。 ○A委員  議論はしなかったですが、当時のみんなの理解の仕方では、一元化しても積立金だけ は別だというような理解の仕方は皆してなかったように思うんですね。 ○C委員  私はその問題にずっと関係してきているんですけれども、認識としてはあったんです 積立金の問題も。ただ、積立金の一元化の問題よりも、先に制度全体そのものの一元化 すなわち、厚年、各共済全部を合わせることが先であるというようなことで、議論は全 然別に進められてきたわけですね。しかし全然頭の中になかったわけでありませんで、 そういう問題も十分あって、まず制度を一元化して、その後で積立金の問題もやろうじ ゃないかということで今日に至っているわけですけれど、積立金の問題も折々に、例え ば国民年金ができるとき、また、それ以後のしかるべきときにいろいろ大蔵省とやって いたんですが、やはり事柄が制度の一元化と別なものですから、制度の一元化の方は先 にできましたけれども、積立金の問題はそのままになって今日に至っていると、財投と の関係もございますのでね。  ですから、事柄が全然別だということではなしに、初めから全然別だという認識では なしに、問題意識としては持っていたけれども、問題の処理が時間的なずれが出てきた ということだと思います。 ○B委員  ありがとうございました。 ○A委員  もう少し正確に言いますと、ちょうど国鉄の処理でもおわかりのように、ある一時期 から以後は国鉄共済の制度を、例えば厚年と一緒にすると。その時期後の給付は厚年と いう形で出るわけですから、当然それに見合う積立金は国鉄から厚年の方へ移管しなけ ればならない。しかし、他方、一元化する以前の期間にかかわる分は、従来どおり国鉄 共済というところから出るならば、それに見合う積立金は国鉄共済に残していくと。大 体こういう認識だったと思うんですね。 ○D委員  関連質問で一言だけで結構なんですが、共済年金の積立金は資金運用部に入っている んですか、入ってないんですか。 ○B委員  一部入っています。厚年だけが 100%。 ○D委員  一部しか入ってないの。 ○B委員 ええ、そうなんです。 ○D委員 あとはどこへ行っているんですか。 ○B委員 あとは自主運用になっています。 ○D委員 自主運用というのはだれが自主運用しているんですか。自主運用というのは、 具体的に一言で結構ですが、どういうふうに運用しているんですか。 ○事務局 資料の19ページで、国共済で言えば、財投協力で34.4%入っておりますが、 残りの資金については、国共済連合会において、民間金融機関を通じて市場運用したり 一部貸付をしたりとしております。 ○C委員 1つ質問させていただきたいんですが、15ページの「年金積立金運用の新たな仕組 み」の中に、運用管理機関が一部自家運用するように書いてありますが、本文に自家運 用の話が何も書いてないような気がしますが、これは自家運用するという考え方なんで すか、それともそれはどういう考え方なんですか。 ○事務局  自家運用につきましては、この検討会でも議論が出まして、自家運用の場合は手数料 を安くできるとか、自家運用をやることによっていろんな情報が入ってきて、それが民 間運用機関の管理にも非常に役立つとか、短期で運用しなければいけない資金ができた りしまして、例えば運用機関の入れかえをするときに、短期でとりあえず運用しなけれ ばいけない、こういうケースもございますので、そういった場合は自家運用でやるとい うことが非常に現実的だということで、自家運用は結構じゃないか、こういう議論もあ ったわけです。  そういうことで、9ページの(3)の8行目に、「自家運用については、手数料の節 減等の長所が指摘されており、一部の資金を次の(4)の運用管理機関が自家運用する ことも、検討に値する」ということで、自家運用をやるのだと、そういう方向で検討す べきじゃないか、こういう提言になったわけです。 ○C委員  恐らくこの運用管理機関に、今事務局がお話になりましたような、短期の運用だけじ ゃなしに、本格的にある程度自家運用させるかどうか、させないかというのは、運用管 理機関の性質を決める上で割合重要な事項だと思うんですね。例外的に一部だけやると いうことか、それともある程度相当のシェアを直接やるかというのは、これは実際にこ の運用機関をおつくりになる場合に、よほど私は御検討された方がいいんじゃないかと 思うんですね。やるとすれば、どの程度やるのか、また、やらせない方がいいのか。こ れは一時的なやつは別ですよ。短期の資金の運用なんかの場合は別ですけれども、それ でもって、この運用管理機関の性格とか組織の在り方そのものも非常に関係してきます ので、その点は実際におつくりになるときによくお考えになった方がいいんじゃないか と思います。 ○E委員  先ほどの検討の第6回のところの中に出てきますけれども、自主運用の金額規模すな わち120兆円ただちに全部自主運用するのかどうかについていろんな議論をされている ようですが、それについてはどういう結論といいますか、どういうことだったのでしょ うか。 ○事務局 これは13ページの「自主運用への移行」というところの(2)でございますけれども 「年金積立金を市場運用に移行させる場合、市場の混乱を小さくするために、その規模 については、徐々に増加させていくことが現実的である」と、こういう指摘になったわ けです。  もう少し背景につきまして御説明いたしますと、現在 126兆円という年金積立金がご ざいますけれども、これを財投制度を通じて、例えば住宅金融公庫などを通じて、国民 が20年とか30年の期間で借りているわけですね。したがって、 120兆円というようなの をただちに引き上げるというようなことは現実的に無理でございまして、これは引き続 き財投機関において、これが利用できる道を開いておかないと大混乱が起きるというこ とでございます。 それで、新規の積立金が、毎年現在6兆とか7兆ぐらいございまし て、したがいまして、この一部を市場運用に回すと。それによって、現在年金福祉事業 団の市場運用の規模、これは財投から借りてきているということで本来の自主運用じゃ ないんですけれども、これが24兆円ほどございまして、この規模を徐々に増加させてい くと、そういうことが現実的ではないかと。これは日本の株式市場とか債券市場、マー ケットからしましても、一挙に巨額な資金がマーケットに流れ込みますと大変な混乱、 消化不良を起こすわけでございますので、そういったいろんな点から考えてみましても 市場運用の規模を徐々に増加させていくと、これが現実的ではないかと、こういうこと になったわけでございます。 ○F委員  1つだけお聞きしておきたいんですが、一番最後のところに、株主議決権の行使につ いて制限を行うと書いてあるんですが、どういう制限を考えておられるんですか。 ○事務局  いろんなやり方があるかと思いますが、1つは厳しいやり方では法律で議決権を放棄 すると書くことを含めてさまざまなやり方がある。今後の検討課題の1つだと思ってお ります。 ○F委員  後でまた、法律をつくるとき議論になるでしょうから。どういうことをお考えになっ て、ここにお書きになったかだけお聞きしておけばよろしいです。 ○事務局  いろんな方法があろうかと思いますけど、経営者側の考え方に常に賛成をするとかと いうことで異議を唱えないとか、幾つかのいろんな方法が考えられるのではないかと思 います。 ○F委員  そうすると一般の株主の売買と違う方法になるわけですね。自分の権利を放棄するとい うことにするわけですか、株主として。 ○事務局  売買自体と議決権の行使は分けて考えております。市場で売買するということと、年 に1回の株主総会での議決事項がありますが、それ自体を放棄するというのはちょっと 違ったものとして考えています。実行上やるのか、制度上それをあらかじめ放棄してお くのか、それはいろんなやり方があるとは思います。現に基金では実行上はやっていな いということもあり、そういうやり方をとるか、制度上やるか、今後の検討課題だとい うことでございます。 ○B委員  15ページにあります別紙2の「年金積立金運用の新たな仕組み」ということでござい ますが、これまで厚生年金・国民年金の場合には 100%財投への預託が義務づけられて いた。そうでない共済関係のところは既に自主運用されてきているわけですね。共済な どの場合の自主運用のスキームというのはどのようにされているか。これは今日でなく ていいんですが、ぜひ教えていただきたいと思います。 それから、その自主運用の実 績ですね。今までの資金運用部から借り出して運用するという、これまでのものが既に 累積で1兆 4,000億程度の赤字を生み出してきたという中に、恐らく2つの要因が先ほ ど説明されてきたと思うんですが、1つはあくまでも借り入れているわけだから、利払 いをしなければいけない。それと市中金利とのいわばギャップが利差損という格好でき ているでしょうし、それから、市中金利そのものが予想したようには高くなっていない ということ自体が直接の運用収益自体の低下ということをもたらしてきているのだろう と思います。 前者の問題は自主運用であればなくなるでしょうけど、後者の分につい ては、これはだれがやろうと市場が1つである以上は一緒のはずであって、そこでの運 用実績というのは、それぞれの共済については実績として確証できるはずですね。です から、運用スキームの問題と既に行われてきた自主運用の規模及び実績というものは、 少なくとも我々が厚生年金について、これからのことを議論する場合に重要な参考資料 であるはずだと思います。 併せて、一元化問題というのはかねてからの議論でありま すが、積立金の問題がこのように具体的に浮かび上がってきている以上は、制度一元化 という場合には、私は当然のことながら積立金も年金制度のうちに入るんだろうと思っ ていたんですが、それが従来、結果としては取り除けられた形の議論であったとすれば 今後の一元化議論の中に、ぜひ積立金問題そのものを射程に入れた議論の枠組みを厚生 省側で検討の御用意を願いたいと思います。 ○E委員  保険料拠出者の利益を守るため最も効率よく安全だという観点から、現在の財投の仕 組みの中で、資金運用部に預託するということはよくないと、これをやめようと、この 趣旨はよくわかりました。  自主運用したいということは当然よくわかることでありますが、また保険拠出者の利 益を守るという観点から厚生大臣、厚生省が責任と権限を持ってここにかかわりを持つ ということも当然理解できるわけですけれども、問題は民間運用機関、海外の金融機関 も入れましたプロフェッショナルな集団を管理する管理機構と厚生大臣の、特にこの絵 の中の「運用の基本方針策定」並びに「運用管理機関の指導監督」と、ここのところは 一般の企業財務の関係者からこの仕組みが十分に支持されるには、もう少しいろんな形 の検討がないと難しいのかなという感じがあります。何となく厚生省が本当に監督でき るのかという感じがどうしてもあるということが1つあります。 2点目は、先ほどの 120兆円、将来それほど多くなりませんが、それの金融資本市場に与えるインパクトの 大きさと、これは先ほど徐々に移行すればというふうにおっしゃったんですけれども、 これは徐々に移行した場合でも、総金額の大きさは相当なインパクトを持っているわけ ですね。そういう資金運用結果が資本金融市場にもたらす影響についてどうなのか。 もう一点は、最近では特にアメリカのペンションファンド等が日本の株主総会に対して いろんな要求を出していますけれども、そういう問題についてはどうなのか。これもか かわり合いがあるのではなかろうかというふうに企業の財務関係者は懸念を持つ可能性 があるのではないか、そういう意味では、財政投融資改革の方向なり金融改革の方向な り、日本の金融市場なり、それと企業財務がどうなっているかという中でこの支持が得 られなければならないだろうと。 そうしますと、先ほど出ました資金運用審議会懇談 会の中で、これがどういうふうに議論され支持されるかということは非常に大事なこと ではないかということで、そういう観点も十分お踏まえになっていただきたいと思いま す。その辺、何かもし御意見あればお聞かせ願いたいと思います。 ○事務局  最初の厚生省は本当にこういう仕組みでやれるのかと。特に運用管理機関の指導監督 はできるのかという点については、それは随分この検討会でも議論になりまして、ある いはほかのところでもいろいろそういった観点からの御批判があるわけですけれども、 この問題につきましては、1つは、この検討会の最終報告の中で、この問題につきまし て、1つの回答としましては、関係者の権限と責任を法律上明確にし、受託者責任を義 務づけるということで、責任体制をきちんとしたものにするということが1つです。そ のためには、当然情報開示を徹底してやるということになったわけです。  もう一つは、質的な面につきましては、これは厚生省として本格的にそういう人材の 育成をやらなければいけない。これにつきましては、これまで年金福祉事業団の10年間 の実績があるわけです。これは試行錯誤がありましたけれども、10年間いろいろ頑張っ てきて、ある程度の評価を受けるに至っている。 それから、また厚生年金基金ですと か国民年金基金におきましても、資産運用業務が非常に重要だということで、これにつ きましても十数年前から人材の養成・育成に取り組んでおりまして、徐々に厚生省の人 材も育ってきているのではないか、こういった面ではさらなる努力を我々としてやって いかなければいけない、こう思っておるわけでございます。 それから、2つ目の市場 のインパクトの問題でございますけれども、これについては非常に現実的な悩ましい問 題だと思いますけれども、これだけの規模ですから、好むと好まざるとにかかわらず、 そういう市場に対するインパクトを持つわけでございまして、こういった問題はある程 度避けようがない問題じゃないかと思います。ただ、最後におっしゃいました株主行使 権の問題につきましては、現在コーポレート・ガバナンスというようなことがいろいろ 言われておりますけれども、公的年金の資金につきましては、そういう株主行使権につ いて制限を設けるということでございますので、これについて企業経営の方々の御懸念 は解消できるのではないかとこう思っております。 そういうことで、年金積立金の新 たな運用の仕組みをつくることについてはいろいろな批判とか御心配とかあるわけです けれども、そうかといって、今の財投制度を前提として預託しておったらどういうこと になるか。この報告書はもっぱら年金サイドからのアプローチでございまして、今の財 投の問題点については余り触れてないんですけれども、国鉄清算事業団の問題とか林野 特会の問題とか、実質的な不良債権じゃないか。そういうところに年金のお金がどんど ん回っていって、本当に返ってくるのだろうか。こういう大変な問題があるわけですか ら、これはやはり預託義務を廃止して、年金サイドとしてしっかり運用する、これしか 現実的な選択肢としてあり得ないのではないかということで、こういう報告書に取りま とめられた、こういうことでございます。 ○G委員  責任体制の明確化というのは大変大事なところだと思うんですけれども、責任をとる 体制を構築する。具体的にどこまで責任がとれるのかということを伺いたいんですね。 例えば民間企業でしたらば、投資に失敗して大赤字を出したらば、当然賃金カットをは じめとしてボーナスの返上だとか退職金を出さないとか、そういう形でもって責任をと るわけですけれども、例えば、年金福祉事業団が1兆 4,000億ですか、累積の赤字を出 したときに、年金福祉事業団がそういうような態勢をとったのかどうか。とらないとす れば、また、これは無責任な話ではないかというふうに思うんですけれども、そういっ た民間企業並みの責任体制というものまでも求めるのかどうかということですね、運用 管理機関に対しまして、その点についてちょっと伺いたいと思います。 ○事務局 これも実は検討会で随分議論されまして、非常に現状は無責任じゃないかと。あるい は無責任体制に結局なるんじゃないかということで随分議論されたところです。これに つきましては、先ほどのような受託者責任を法的に義務づけるとか、情報開示を徹底す るとか、そういう枠組みをつくる。それから、また、保険料拠出者などの代表からなる 運用委員会をつくって、そこで重要事項は決定していただくし、ここが監視役を果たす ということです。そういう制度的な枠組みとしては考えられるものはすべて取り入れよ うということになっているわけですけれども、さらにこれを動かす場合に、やはり人次 第というところが多分にあるわけでございますので、そういった問題につきましても、 いろいろ御議論がありました。 結局、この問題につきましては、保険料拠出者の参加 を得て、そこで運用方針なりを徹底して議論していただく。それから、絶えず運用状況 をチェックして、基本方針についても見直しをしますし、絶えず臨機応変に対応する。 そういうことで、保険料拠出者の合意を得ながら、絶えず情報開示をしていって、納得 を得ながらやっていく。こういうことをやることによって、初めて責任という問題が果 たされるのではないかということでございます。したがって、制度的な枠組みを考えら れるものはすべて取り入れるということと、あとは実際の運用面におきまして、絶えず 保険料拠出者の合意、納得を得て運用を進める。こういうことを徹底してやることによ って、この責任問題というのが果たせるのではないかということになったわけです。  これ以外にもっといい考え方があれば、ぜひお教えいただきたいと思いますけれども 検討会を通じまして、預託義務を解除するのはいいし、年金が自主運用するのはいい。 ただ、本当に厚生省がやれるのかということが最大の問題になったし、そこでそういう 議論が交わされて、こういう報告書にまとめられたということでございます。 ○E委員  事務局の御説明で御意向はよくわかりましたけれども、この審議会で議論をすること にとどまらず広い場で国民と、特に企業もファイナンスの関係者に十分な理解を得られ ないと難しいなと。そういう意味では、先ほど言いました資金運用審議会懇談会と十分 なすり合わせをしていただきたいと思います。 ○会長  D委員、ファイナンス方面の御専門の方々の間の、これについての御意見などをおつ いでの折にお集めいただければと思いますが、いかがでしょうか。 ○D委員  今出ている議論は非常に大切な議論が全部出ていると思うんですね。1つ、今おっし ゃったように、ファイナンスの専門家の人たちの話もぜひ聞いてみたいと思いますし、 少なくとも、これはさっきB委員から出た話ですけれども、共済年金については自主運 用を随分やってきたわけですから実績持っているわけですね。その実績を公開してもら って、どういうことがあったのかということを勉強させてもらいたいと。  それからもう一つ、アメリカでこういう大きな年金ファンドを動かしているわけです が、そういう年金ファンドの担保なり、そういうものはだれがどういうふうに担保して いるのか。そういうことは徹底的に研究し尽くすべきだと。先人がやっていることです から、そういったことを徹底的に勉強し、方向として自主運用に持っていくことは私は 非常に大事だと思うし、また、今御指摘のように、どんな形をとるかはいろいろ考えな ければいかんですが、ファイナンスの専門家の意見をぜひ反映するべきだと思います。  それから、もう一つは、「運用管理機関」というところの「投資委員会」というのは これは会社でいうと取締役会なのか。その上に「運用委員会」というのがありますけれ ども、また、なるたけ国民の意見を聞いてというような話がありましたけれども、極め て専門分野に属するものは、公開という問題とプロフェッショナルという問題をどうい うふうに考えるのか。 今までみたいな資金運用部に持っていくことはやめたというこ と、これは非常に正しい選択だと思うんですが、反面、例えば、アメリカの年金という ものをもう少し徹底してファンドの運営を勉強してみれば、多少ハイリスク、ハイリ ターンというものが入っているのかもしれない。しかし、スタビライザー機構がどこま で入っているのかという問題はあるかもしれない。そういったことを本当に専門的に勉 強してみないといけない。日本にも専門家がおられますけれども、しかし、日本の専門 家でいらっしゃいますから。世界規模で見た時の大きなファンドを扱ってきた中で、で きるだけ高いリターンを求めて、お金はぐるぐる世界じゅうを回っているんでしょうが 同時に、しかし落ち込むときもあるはずなんで、そのときの最低のスタビライザーをど ういうふうに考えておるのか。国外の、特にアメリカ、これを徹底的に勉強する必要が あるのではないかという気がして仕方がないんです。そうしないとこの運用の絵だけつ くってみてもどうしようもない話で、結局1兆 4,000億、今度はそれを10倍の規模とか 20倍の規模で考えますと、20兆、30兆損しましたと。もらう方の人にとってみれば、自 分の生活がかかっているわけですから、そういう仕組みを本当にこれからやるんですね ということについては、もうちょっと外国の専門家集団に学ぶ必要があるのではないか それから、ぜひ、共済組のやってきた実績を全部出してもらい、学ぶべきものは徹底 的に学ばなければいかんだろうという気がするんですね。その上でこの機構をどう考え るかということで、絵をかいたらそれで話が終わるのならいいんですけど、とんでもな い話になりそうな気がしますし、今事務局もおっしゃったですけど、そういうことで担 保されるものでないと思うんです。これを実質的に本当に担保するものは何なのか。あ る意味で一種の岩盤みたいなところに我々自身が自信が持てないと、とても国民に、こ ういう選択をいたしましたということを言えるのかという気がいたして仕方がないもの ですから。 ○C委員 今の話に関係したことなんですけど、私こういうふうに思うんですね。方向としては やはりこういうことだろうと。しかし、今こういう方向で進むことについては、E委員 あるいはD委員が思っておられるような不安や懸念はないわけでない。非常にあるとい うふうに言っても間違いないとは思うんですけれども、ただ、基本的な方向がこういう ことであれば、徐々に時間をかけてそういうふうに持っていくべきではないかと。 一 方で、今受け皿になっている財投制度というものについて、これだけ大きな批判があっ て、おかしいじゃないかと。あの財投制度自体はもう廃止すべきじゃないかという意見 が出ておりますし、新聞にちょっと出ておりましたけれども、もう近いうちに財投制度 は廃止をすべきであると。資金運用部も廃止というような大変ドラスチックな改革案み たいなものをある委員が出して説明をしておられましたけれども、恐らくそういったこ とが、あの懇談会でどういう結論になるのかわかりません。まだ、これから議論するこ となんですけれども、全体としては非常に今の財投制度に批判的な考え方が強いですね 今のような規模の財投は要らないだろうと。あるいは縮小すべきであろうということ については、恐らく大蔵省自身もそう思っているんです。資金運用を、今までは郵貯と 年金、その他の金を全部集めて国が一元的に同一運用をするのが一番いいのだという考 え方だったですけれども、やはり必ずしもそうではないんじゃないかというふうに全体 として雰囲気はなってきているような気がいたします。 資金調達の手段も、今までのように国が法律でもって集めた金というだけではなしに つまり郵貯や年金だけじゃなしに、もっと財投機関に財投機関債を発行させるとか、あ るいは財投債というものを発行して、それでもって必要な資金を供給していくというよ うな資金調達の多様化というものを考えるべきではないかという議論が出ていまして、 機能は主として財投債と財投機関債のどちらがいいか。それぞれメリットとデメリット があるんですけれども、そういう議論が今行われているわけなので、この年金のお金を どうするかについては、恐らく今度の懇談会でひとつ議題にしようということになって います。 ですから、そちらの方の検討といいますか、審議の経過も見なくてはいけな いんですけれども、全体の雰囲気といいますか、大きな多数的な意見の趨勢は今申し上 げたようなことです。 もう一つ、こういう方向に持っていくについて考えなければい けないのは、金融改革がどれだけ進むかということなんですね。今おっしゃったように 厚生省がやるについて、一体できるのかという率直な御意見ございましたけれども、私 は厚生省とか何とかということじゃなしに、今の金融機関がこれだけのものを市場で扱 って本当にできるのかという問題も実はあるわけですね。今、市場原理だとか、あるい は民営化ということが非常に言われていますけれども、果たして民間に全部やらせて大 丈夫なのかということが非常にあるわけですね。そういう面からも、今の“ビッグバン ”と言われている金融制度の改革がどういうふうに進むか、どのテンポで進かと、それ に合わせて年金の運用もこういうふうに徐々に持っていくということを考えるべきなの で、今の市場のままで、全部 120兆どかんとやったら、それは大変なことになる可能性 がありますので、そういうことを見て、時間をかけてこういう方向に持っていくべきじ ゃないかというふうに私自身は思っております。 ○F委員 先ほどから共済の話が出ておりまして、A委員も資金の運用がどうなっているかとい うのはおわかりだと思いますから、そこをお聞きになるといいと思いますが、共済組合 というのは御存じのとおり、年金の仕事ばかりやっているわけではございませんで、民 間で言う健保組合のような仕事を併せ持ってやっているわけですから、資金の使い方は 資料1−1の19ページに28兆という額が出ていますが、どういうふうに調べて出てきた か、私はわかりませんが。 連合会だけの話をすれば、10兆円という積立金のうちの9割を国債と地方債で運用し ています。あと1割が要するに自主運用をしているというだけでして、それほど厚生省 の指導の下でやっている年金福祉事業団と変わったやり方をしているわけでは何もあり ませんで、ここから新しいものを見いだそうといっても大変無理だなという感じはいた しております。 ○H委員  ちょっと話を戻して恐縮ですが、今、お話のあった件と関連があるんですが、先ほど B委員もおっしゃいました年金の一元化という側面で言いますと、制度の一元化と財源 の一元化の問題はセットでないとおかしいと思うんです。そういう側面で今後展開をし ていく必要があるということを申し上げておきたいと思います。 もう一つは、資料2 −1の15ページの話ですけれども、責任体制についていろいろ出てまいりましたけれど も、徹底した情報公開がない限り、参加をしている企業あるいは被保険者の理解、納得 というのはなかなか難しいのではないか。今の透明度以上のものをどれだけ出せるかが 1つの鍵ではないかなと御説明聞きながら感じています。 それと、先ほどから時間を かけて市場に年金財源を流していけば、一定の落着点に行くのではないかというお話ご ざいましたけれども、一方で考えなければならないのは、自主運用したら、やっぱりハ イリスク、ハイリターンになることもある、また逆の場合もあるということを考えなが らやらなければならないのではないか。それだけの腹構えが要るのではないかと思いま す。 それから、ファイナンスの責任者の意見を聞いたらいいのではないかという御意 見がございましたけれども、私も同感です。この問題の対処結果によっては企業内の労 使関係あるいは産業、企業の基盤を損なうおそれも持っていると思います。専門家の意 見を十分聞いて施策を進める立場の人の納得、理解が進んだ上で、これを展開していく ということが大変大事なのではないかというふうに思います。 それから、前の段階で お話がございました責任体制の問題ですけれども、我々国民、労働界の一員というよう な立場で見ますと、例えば、証券の不祥事があっても、一体監督責任というのは、だれ がどういうように考えたのかほとんどクリアー、クリーンにならないで、ふたをされた というか、よく見えない状態で進んでいる。こういうことは、我々のような年代には、 世の中はそういうものだよというふうな納得ができるんでしょうけれども、若い人から 見たら、そういうものに対してきちんとしたものが世の中に出てこないというのは、モ ラルとしても大変芳しくない。 そういう責任体制の感覚で、この責任体制の明確化が もし俎上にのぼっているとしたら、私はもっともっとシビアなものとしてこの問題はと らえておく必要があるというように思うんです。 と申し上げますのは、企業の中でバ ブル期にファイナンスに失敗して、たくさんの人が職責を追われていっているわけです 例えば取締役会で決まった内容を、やったとかやらないとかというレベルの問題はもち ろんございますけど、先ほどG委員がおっしゃいましたけれど、民間企業の中ではそう いう大変シビアな責任のとらされ方をした例もあるわけです。 一方で、今、前段申し 上げました行政サイドにおける監督責任というのは一体どういうことなのか我々の方で はよく見えない。そのようなセンスでこの責任の明確化ということがもし書かれている としたら、私はとんでもないことではないかと思います。あえて厳しく申し上げると、 説明のあった責任の明確化程度のものでは、私は参加する人も納得できないのではない かということを申し上げておきたいと思います。 ○I委員  今までいろいろ皆さんのお話ですべて尽くされているような気がするんですけれども 特にD委員、今、H委員がおっしゃったようなことに私は非常に共感を持ております。  投資委員会というのは一体何だろうか。取締役会というよりは常務会に近い性格だろ うと思います。 私、見ているうちにだんだんわからなくなってきたのは、この運用委 員会というのが、ここにいろいろ保険料拠出者の代表者とかいろいろ書いてございます けれども、一体どんなものになってしまうのだろうか。この検討会の第6回のところに 書いてありますように、「運用委員会は、無責任となるおそれがあり」というくだりで すね。運用委員会というのは形骸化してしまう可能性が強いのではないかという感じが いたします。これはどんなに責任体制ということを議論しても、ここで書かれているよ うな運用委員会というのは責任の持ちようがないわけです。投資委員会の方は確かに責 任体制ということがはっきりするような気がするんですけれども、運用委員会というの は極めて無責任になる危険性があるのではないかと、そのように思います。 ○J委員  年金積立金の運用につきましては、これは加入者にとっては大変貴重な財産ですから ハイリスク、ハイリターンをねらうのではなくて、ローリスク、ローリターンをねらう べきではないかと。重点をどちらかにすればですね。ローリスク、ハイリターンが一番 いいんですけれども、そう世の中うまくいきませんから。そうなりますと、運用に当た って、例えば、先ほどからいろいろ御意見も出ておりますけれども、市場変動による運 用の結果について責任を負うものではないということで書いてありますけれども、もし 注意義務に違反した場合には罷免・懲戒処分、損害賠償等の責任を問われるということ ですけれども、実際問題として損害賠償の責任を問うて、ハイリスクを全部カバーする ことはできないわけでして、実際に会社でもそうですけれども、損害賠償の限度という のは、極めて低いレベルでありまして、実際の損害を償うということは到底できないわ けです。 そうなりますと、やはりこれはリスクをいかに抑えていくかということに最 大限の注意を払うべきでありまして、その点、これまで資金運用部預託という点ではリ スクは年金としてはなかったわけですけれども、今回は年金自体がそれを負うことにな る。こういう少子高齢化社会を控えてですから、なるべくハイリターンで運用したいと いう気持ちが強いと思いますけれども、私はハイリターンがハイリスクを伴うものであ れば、これは非常に危険でありまして、むしろローリスク、ローリターンでもやむを得 ないと、そういうふうな考え方で運用に当たるべきではないかと思います。 ○K委員  先ほど御説明がありましたけれども、自主運用の歴史というのはすごく長くて、厚生 省が自主運用するという方向に向かってきたというのは本当に遅すぎたというような感 じもするくらいに受けとめているわけでございますけれども、自主運用検討会報告書の 15ページの民間運用機関が運用するというところに関連しまして、先ほども御説明があ りましたように、年金積立金の性格としてはやはり有利性が求められるというところも 私は大きいと思うんですね。 先ほど事務局から御説明がありましたように、やっぱり 外国と比べて近年の投資環境というか、収益の状況が余りにも日本との差が大きいので そこの部分に民間運用機関に任せて、果たしてどのような有利性というのが求められる のかというところに不安を感じるというところがございまして、先ほどD委員がおっし ゃられましたように、やはり外国で高い収益に貢献するように働いているような、そう いう実態についての、どこを学ぶことができるのかとか、そういうことについて学習を したいなという気がいたします。 ○L委員  今、選択としてあるのは、今までの財投の形とこの形しか選択肢がないわけですけれ ども、被保険者・国民にとっては、これから民営化という1つの選択肢が今いろんなと ころから出ていますよね。どちらがいいか、どちらが自分で責任を負えるシステムであ り、納得がいくシステムであるかということを考えなければいけないと思うんです。で すから、この在り方、今まで皆さんが議論してくださったように、今までのシステムよ りはよりよいものだと私も思うんですけれども、責任をだれが負うか、納得してその危 険を負うかということですよね、自分の年金について。 そのときに、民営化というよ うな議論がまだされてないと思うんですよね。それはこれから年金審議会でもう一つ別 の議論としてあるとは思うんですけど、それとのいろんな差がちょっと見えないので、 もしわかったら教えていただきたいと思います。 ○M委員  私もずっといろいろ伺って大変興味のある議論だったと思いますが、結論として、自 主運用の方に向かうというのは私賛成なんですけれども、しかし、さっきJ委員が言わ れたように、ちょっと舞い上がりすぎて、ハイリスク、ハイリターンの方で年金の資金 を回すというのは危険で、できれば落ちついて、ローリスクとは言いませんけど、ちょ うど中間ぐらいのリターンで、中間ぐらいのリスクというふうにしませんと、私は日本 の経済の先行きは暗いと見てますから、そんなに高い利回りがもらえるというのは、要 するに危ないということだということを考えて運営されることを希望します。 ○会長  議事進行で御相談がございます。きょうはもう一つ、平成10年度の概算要求の御説明 が入っております。皆さま一通り漏れなく御発言いただきましたので、この辺で年金自 主運用検討会報告書の件につきまして、年金自主運用検討会の報告書の自主運用の方向 で、資金運用審議会懇談会に報告してもよい、と御了承いただければと思いますが、い かがでしょうか。  この年金審議会全員懇談会として御了承いただきますならば、そのような扱いとして 平成10年度概算要求の説明ということに移りたいと存じますが、よろしゅうございまし ょうか。どうぞ。 ○B委員  会長のお求めに賛成でございます。ただ、この問題は今後当審議会ではどういうふう な時期にどういうふうに扱うのか、ごく大ざっぱなところでもありましたら教えていた だきたいと思います。 ○事務局  平成11年の財政再計算に合わせまして、運用の新たな仕組みをつくりたいということ で、11年の通常国会には関係法案を出したいという方針でございますので、引き続き当 審議会で御議論をお願いしたいと思います。 ○D委員  先ほど会長の方から、ファイナンスの関係についてお話しがありまして、簡単に何と かしましょうと言いましたけれども、これは取り消します。率直に言って自信がありま せん。一言で言いますと、私は何がなんでもアメリカを勉強していただきたいというこ とと、もう一つ企業のファイナンスをやっている人とファイナンス会社でファイナンス やっている人と両方あるわけでして、それはそれぞれによって受けとめが大分違うだろ うと。先ほど御指摘ございましたように、一方で金融の自由化というものの進捗とこの 問題をどうリンクして考えていくかという重大問題もあるわけでありまして、そういう ことを考え合わせて、どういう方からどういう勉強をするのが一番適当なのかというこ とを事務局の方でもぜひお考えいただきまして、私安受け合いしましたが、とっても自 信ございませんので、それはお返しいたします。  ただ、私の問題意識はそこにございますので、それに合わせたことをお願いします。 ○事務局  今、D委員から外国の例がどうなっているのか、徹底して勉強すべきだという御意見 でございますけれども、これは私どもも同じ認識をしておりまして、実は検討会でも外 国の例はいろいろ調べたわけです。 ただ、公的年金で積立金をある程度持っていると いうのは、アメリカとスイス、スウェーデンぐらいでございまして、これも日本と比べ るとごくごく小額でございますし、アメリカなんかは全額国債を買っているということ で、余り公的年金は参考にならないということで、州の年金とか企業年金とか、こうい ったものを勉強して参考にさせていただいて、先ほどのような考え方を取りまとめたと いうことでございます。 ○D委員  まだ遠慮しているような感じがどうしてもぬぐえないんですね。もうちょっとえぐっ たような、これはなかなか難しいんでしょうが、ただ、よくレポートで、アメリカでは こうなっています、どこではこうなっていますというレポートが来ますけど、そういう ことではこれはちょっと済まないような気が、もうちょっと血の出るところまでえぐっ てみないと、靴の上からでは困るような気がするものですから、難しいんですが、した がって、私は引き受けられないんですけれども、ぜひ御検討いただきたいということで お願いします。 ○会長  それでは資料をよろしくお願いします。  それでは、先へまいりまして、年金関係の平成10年度概算要求の概要につきまして、 事務局の方で資料を用意いたしておりますので、御説明をお願いしたいと思います。 ○事務局  お手元の資料の3をごらんいただきたいと思います。  先月末に取りまとめられました厚生省の10年度の概算要求のうち年金関係の部分につ いて説明させていただきますけれども、全体の中での位置づけを理解していただく必要 があるかと思いますので、まず厚生省予算全体をまず説明させていただきまして、その 中で年金関係部分について説明申し上げます。お手元の資料の1ページは厚生省の予算 の全体像を計数的に書いたものでございますが、まず2ページをごらんいただきたいと 思います。 今回の概算要求につきましては、ことし6月の財政構造改革会議の決定に 基づいた新しい方式のものでございまして、基本的には国の予算の一般歳出を今年度の 予算より下回るという方針のもとに、従来の各省庁別のシーリング方式ではなくて、い わゆる主要経費ごとに上限といいますか、キャップをかぶした、そういった方式でなっ ておりまして、具体的には、例えば社会保障関係費でございますが、この(1)のところ でございますけれども、8,000 億を超える当然増につきまして 5,000億円を上回る削減 を行うことによって増加額を大幅に抑制するということで、 3,000億以下の増に抑える と。例外的に増が認められた分野でございますけれども、増加額については 3,000億以 内と。 公共投資関係につきましては7%の削減をする。あるいはODAにつきまして も10%の削減。  (5)でありますけれども、補助金、委託費等も入るわけでありますが、これにつきま しても1割をカットする。こういったようなことで、主要経費別に上限が設定された新 しい方式での概算要求になったわけでございますが、1ページにお戻りいただきまして こうした方式のもとで取りまとめられました厚生省の概算要求額でございますが、総額 で15兆72億でございまして9年度予算に比べまして 2,905億の増になっているわけでご ざいます。括弧書きで、社会保障関係費につきましては、3,065 億となっておりますが 厚生省予算の大半は社会保障関係費であるわけでございますけれども、厚生省以外の省 庁にも社会保障関係費がございまして、他省庁の社会保障関係費では65億ほど減るとい うことでございますので、厚生省関係の社会保障関係費は 3,065億でございますが、一 方、厚生省予算の中にも公共投資関係の部分がございます。これにつきましては、先ほ ど申し上げましたように、7%の削減ということがかかってございますので、そういう ことの差し引きの結果でございますが、増加額としては 2,905億になっているわけでご ざいます。 ちなみに昨年度の比較でございますが、下の方の括弧書きに書いてありま すが、昨年は夏の概算要求段階におきましては、前年度予算に比べまして、 8,581億の 増要求が可能だったわけでございます。これに比べまして、 5,000億以上の縮小になっ ているわけでございます。 さらに年末の査定後の予算セット段階におきましても、昨 年は 3,390億ということでございまして、これに比べましても今回の概算要求段階で 500億近く規模が小さくなっているわけでございます。 こういう基本的な枠組みの中で厚生省予算の取りまとめが行われたわけでございます が、厚生省全体としては取りまとめに苦慮したわけでございますが、取りまとめに当た っての基本的な方針が2ページの下の方から3ページにかけて書いてございます。基本 的にあらゆる縮減方策を検討してまとめるということでございまして、具体的内容につ きましては、お手元の次の4ページでポイントを説明したいと思います。 まず年金関 係でございますが、実は先ほどごらんいただきました 8,000億を超える厚生省予算の当 然増の大まかな内訳といたしまして、年金関係は 1,500億、医療関係が 5,500億、その 他、 1,000億、こういうような見立てであったわけでありますが、今回の概算要求に当 たりまして、年金関係につきましては、備考欄に書いてありますように、直近の基礎係 数等の見直しによりまして、さらに前回の年金改正で導入されることになりまして、平 成10年4月から実施となっております雇用保険との調整による効果を今回見込みまして 1,189億の増ということでございます。 それから、医療でございますが、4月の時点では自然増として 5,500億の増と見込ん でいたわけでありますけれども、その後の健保法の修正で約 500億ほど増ということで 6,000億の増が見込まれますが、今回の概算要求で確保いたしました額が 1,800億でご ざいまして、これは備考欄にありますように、仮置きのものとして、この 6,000億と 1,800億との差、 4,200億の減につきましては、今後の予算編成過程で検討ということ でございますので、要求としては袋詰めの要求ということでございます。 それから、 3番、4番、5番関係がいわゆる3プラン関係でございますが、これにつきましては、 昨年度の増加額の半分程度になりますが、3つ合わせまして、 762億の増ということで ございます。 以上、ここまでで、実はトータルいたしますと、 3,700億以上の金額になってしまう わけでございまして、このほかにもいろいろと政策的な必要性からの増があるわけでご ざいまして、これにつきまして、1ページでごらんいただいたような厚生省予算全体と しての上限 2,905億、これにおさめるためには、その他の分野におきましていろいろと 縮減する必要があるということでございまして、いろいろな分野で経費の縮減方策が検 討されたわけでございますが、それの主なものが6以下で書いてございます。  6番の社会保険事務費につきましては、9年度予算で 2,876億でございますが、これ につきまして、2割強の縮減ということで 626億の減。その他、国立病院の繰り入れ、 施設整備費、補助金、地方公共団体向けのもの、公益法人等民間団体向けのものとござ いますが、補助金の削減。それから、厚生省予算にあります公共事業費関係につきまし て、7%の削減等々の縮減措置によりまして、トータルで 2,900億余の枠の中にようや くおさめたということでございます。 このうち、1番と6番が年金に関係する分野で ございますので、次のページで御説明したいと思います。先ほどの1番の年金部分は一 般会計部分だけでございますので、特会全体で御説明したいと思います。  まず年金給付費でございますが、厚生年金・国民年金の基礎年金、旧法国民年金、福 祉年金合わせまして、約28兆 8,000億弱の金額でございます。この給付を賄うための財 源でございますが、保険料につきましては、厚生年金・国民年金合わせまして、約24兆 2,000億ぐらいでございますが、それから、国庫負担でございます。3つを合わせまし てトータルでは書いてございませんが、4兆 2,705億になるのですが、前年度に比べま して 1,189億の増。先ほどの数字がそれでございます。そのほか運用収入等がございま して、財源全体としては、約34兆 3,000億ぐらいでございます。先ほどの給付費との差 額が5兆 5,000億ぐらいあるわけですが、これが剰余ということで積立金になるわけで ございます。 それから、6番の関係の社会保険事務費の関係ですが、ここで言う「社会保険事務 費」と申し上げますのは、政府が管掌しております社会保険である厚生年金・国民年金 医療の分野でありますが、政管健保、船員保険、これらの国が保険者になっている保険 の事務費でございます。  それで、社会保険事務費につきましては、先ほど申し上げましたような厚生省予算の 取りまとめに当たりましてのやり繰りといいますか、財政上の理由のほかに、この6 ページの一番下の「参考」に書いてございますように、本年6月の財政構造改革会議の 決定、それを受けたまた閣議決定があるわけでございますが、そこにおきまして「社会 保険の事務に要する費用について、一層の節減・合理化等を行うなど、その在り方につ いて見直す」と。さらに6月17日のものにおきましては、「社会保険の事務に要する費 用負担の在り方について見直しを行うものとする」と、こういうようなことになってお るわけでございまして、財政上の理由とこの点も踏まえまして、10年度の概算要求に当 たりましては、ここに記載してございますように、 2,250億、前年度予算に比べて2割 強、 626億の減の要求にとどめたわけでございます。なお、この 2,250億でございます けれども、社会保険事務費のうちの、職員給与等に見合うものとしての額でございます これまで基本的には事務費につきましては、事務費の全額に見合う国庫負担を予算上 確保してきたわけですが、今回こうした考え方で人件費相当分の国庫負担ということに なりますと、事務費の財源に不足が生ずるわけでございますが、これによって事務執行 に支障を来してはならないわけでございますので、いろいろと節減をやるわけでござい ますけれども、節減をやってもなお不足する部分につきましては、特別会計の財源、具 体的には保険料収入あるいは積立金の運用収入等ですが、これらを充当するための臨時 措置を講ずるということでございますが、一方で、平成10年度の予算要求に当たりまし て、この本体の給付事業とは別に事務費を初めとして福祉事業など各保険者がやってい る事業があるわけですが、これらを本体事業と区分経理している業務勘定というのがあ るわけでありますけれども、この業務勘定の支出におきまして、従来から保険料財源と いいますか、特別会計の財源の一部を用いてやってきた事業関係の経費につきまして、 大幅に見直して総額を縮減する予定にしております。その結果、業務勘定に繰り入れな ければならない保険料の総額は増加してないわけでございまして、その意味におきまし て、実質的に保険料の引き上げに今回の措置がつながらないような配慮をしているわけ でございます。 具体的には数字で、7ページの業務勘定全体の歳入、歳出の状況でご らんいただきたいと思います。上が歳入、下が歳出の状況でございますが、歳入面にお きまして、一番上の欄の国庫負担の受入額が 626億ほど減るわけですが、他勘定からの 繰り入れ、これが他の会計から保険料財源等でございますが、これにつきましては、 4,586 億から 4,577億ということで、今回の事務費の不足財源を保険料で充当すること にいたしましても増加してないわけでございます。 これがどうしてこういうふうにな るかという点につきましては、歳出欄をごらんいただきたいとわけでありますけれども 先ほど申し上げましたように、この歳出、特に保健・福祉事業費の分野におきまして、 事業の見直しによる縮減。具体的には年金の支払い通知の年1回化によって郵送料等の 節減を図るというようなことのほかに、福祉施設事業を見直したり、あるいは公益法人 に対する委託事業などもこの中でやっているものがあるわけでありますが、これらを見 直したりいたしまして、歳出規模を 7,708億から 7,053億に縮小しておりまして、そう いうことで今回の措置が保険料の引き上げということにつながらないような配慮をして いるということでございます。  6ページにお戻りいたしまして、次のマルでございますが、今回のこのような措置に つきましては、財政上の理由に基づく臨時の措置として行うわけですが、臨時の措置で ありましても、特別会計法、具体的には厚生保険特別会計法、国民年金特別会計法、国 民年金法の規定の一部について臨時措置でありましても改正が必要になってくるわけで ありまして、この処理につきましてはここに書いてあるとおりでございます。  臨時措置後の在り方につきましては、この参考欄に書いておるような課題があるわけ でございますので、臨時措置期間中に検討するということでございます。 最後にここ に書いてございませんが、一言つけ加えさせていただきますと、この財政構造改革会議 の決定等の文書からいたしますと、事務費そのものの節減・合理化施策の検討が必要で あるわけでございまして、この点につきましては、私ども社会保険の事務量というのは 年金受給者等の増加等に伴って業務量そのものは増大する傾向にあるわけですが、そう した中にあって、どのようにして事務費そのものの節減合理化を図っていくかという難 しい課題を考えていかなくてはいけないわけですが、これまでも事務の効率化のための 方策、オンライン化や基礎年金番号の導入等もそういう趣旨もあったわけですが、そう いうことでの引き続き計画的に効率化を進めていくだけでなくて、事務の在り方そのも のについて、場合によっては制度的な検討も含めてやっていく必要があると考えており まして、そういうものにつきまして、次期改正に向けて検討していきたいと考えており ます。以上でございます。 ○会長  どうもありがとうございました。  それでは、ただいま御説明いただきました、平成10年度概算要求の概要につきまして 御質問などございましたら、どなたからでも御自由にどうぞ。 ○B委員  財政事情の中での予算編成が大変厚生省にとって厳しいというか、かなり無理を重ね ないとできない事情にあるということについての御事情はよくわかりますし、私どもは 今回の財政構造改革会議がいわば押しつけてきたキャップの中身というのは、ある意味 では非常に無理があって、あれ自体を前提にすることについても基本的には反対という 立場でございます。  ただ、ここに提出された問題は大変制度上重要な問題があるような気がします。つま り従来一般会計でその財源を手当てしてきた公的保険の運営制度の中に、その事務費の 部分の一部を特別会計の側から充当する。これは臨時措置という御説明なので、それ自 体が必ずしも制度の本来の趣旨ではないということを踏まえての御提起かと思いますが それにしても公的年金の財政上の運営システムから言えば、重大な変更というふうに言 うべきだろうと思います。  かつ、臨時措置の後では、6ページの「参考」の2つ目のポツにある「社会保険の事 務に要する費用負担の在り方について見直しを行う」と。このことは当面の間臨時措置 として導入されたものが、改めて恒久的な措置へ引き継がれるというふうにも読もうと 思えば読めるわけで、基本的にそういうような方向性を当審議会として今後の公的年金 制度の在り方として容認しうるのかどうか。この問題がまず検討されるべきではないか  私どもは少なくとも事務費については一般会計で充当するという従来のシステムを変 更することについては原理的には反対でございます。なおかつ、そういう変更はしない という前提の上で、このことが臨時措置として検討されるのか。あるいはそういう変更 を射程に置いて、とりあえずの間、そのことが決まるまでの間は臨時措置としてまずや るのだとすれば、それは制度変更の前倒し実施ですね。これはどちらなんでしょうか。 ○事務局  臨時期間経過後の事務費国庫負担の在り方について、この審議会でも御検討いただい て、その結論で措置していくということでございまして、あらかじめ次の段階はこうだ というようなことを決めているわけではございません。 ○B委員  それは後で、決めることだというお話は、お話としてはここに書いてあるのでよくわ かりますけれども、現実にまずこの臨時措置期間というのは、財政構造改革の臨時措置 期間ということですね。向こう3年間ということですね。 ○事務局  平成15年までと書いてありますので、6年間の措置ということでございますが、これ は財政構造改革特別措置法におきまして、基本方針といいますか、骨格が2003年度まで に、いわゆる赤字公債の発行をゼロにする。あるいは2003年までに公債発行額のGDP 比を3%以内にする。そういったような財政再建の目標のとりあえずのターゲットの年 次として平成15年が書かれておりまして、また、この法律の中で、さらに今おっしゃっ たように、その中でも特に10年から12年までの3年間を集中改革期間というような位置 づけもしてございますけれども、平成15年というのはそういう意味でございます。 ○B委員  そうすると、今後6年間この臨時措置を継続し、その後については改めて検討すると いうことですか、時間的には。 ○事務局  はい。 ○ B委員  この問題は国民年金の問題について言われてございますから、これは被保険者につい て言えば、1号被保険者の世界の話とこういうふうに理解していいわけですね。 ○事務局  ここの範囲は、社会保険事務費の範囲ですが、厚生年金・国民年金、政府管掌健康保 険合わせた範囲でございまして、考え方は皆共通でございます。国民年金だけのもので はございません。 ○B委員  そうなると事は一層重大でして、一般的な事務費の増大というのは、これは例えば受 給者が増えたから事務費がふくれる。これはよくわかるんです。しかし、この間問題に なっているのは、特に1号被保険者にかかわる徴収コストが非常に上昇しているという 問題がありますね。その1号被保険者にかかわる徴収コストが非常に増大しているとい う問題は、私どもに言わせれば、現在の基礎年金制度そのものの欠陥だと思うんですが それはともかくとして、次々と未加入の人、加入はしていても保険料を払わない人。こ ういう人たちが現実に増加し、それについての徴収コストが非常にふくれ上がっている 聞くところによると 1,000円集めるのに 100円以上かかるといったような状態がそのグ ループに関しては極めて目立ってきている。 そういう問題が、1号被保険者の世界の中に限定されて処理されるのであっても、私 はそれでも問題だと思いますが、それが例えば年金に関して言えば、全体にかかわる問 題として、それが特別会計の側から補てんされるということは非常に大きな問題をはら むのではないでしょうか。 ○C委員  私、B委員のおっしゃる御意見といいますか、お気持ちはそのとおりだと思うんです ね。ですから、こういった措置をとるのは、こういった現在のような財政状態の中でや むを得ず取らざるを得ないんで、この期間が終わったら、後はどうなるか。そのときの ことだということじゃなしに、厚生省としては元に戻したいという気持ちでいるのだと いうことをはっきりさせていただかないと、やはりB委員のような御意見が出て、先の ことがわからんのじゃのめないよというのは私はよくわかる気がするんですね。  本来、社会保険の事務費は国が持つべきなので、ただ、国が持つべきなんだけれども 今持てないような深刻な財政状態だから持ってくれということでやむを得ずこの期間だ けは持つのだと。その後はぜひ戻したいというふうな考え方をはっきり私は厚生省なり 社会保険庁としては表明していただきたいと思います。 ○事務局  今、御説明したとおりでございまして、C委員の御意見もっともでございますし、私 どもも気持ちとしてはそういう気持ちは持っておりますが、先ほど6ページのところの 「参考」で、我々政府としては、一層の節減・合理化、それから費用負担の在り方につ いての見直しを行えと。これは私どもの業務そのものと一体というふうに私どもは考え ております。  そういう意味で、この年金審議会で、年金現業業務の分野について御議論をいただく チャンスがございますので、現状どうなっているか。それから、先ほどB委員が御指摘 になったような国民年金の分野についてどういう状況になっているか、そういうことも 含めまして御説明を申し上げて、そして御議論をいただきたいと。  ただ、もちろん公的医療保険制度も含めまして、これまで国営の医療保険制度、国営 の年金制度について、その事務の費用は一般会計が負担すると、これは大原則で来たと それはそのとおりでございますし、今回もそういう方針で、しかし現下の一般会計の厳 しい状況下において臨時的な措置をお願いをしたいということでございます。 ○B委員  原則はそうだけれども、当面の財政が非常にきついための財政措置であるというお言 葉であれば、それは臨時措置の期間が終わった後、特別会計の側へ返還をされるという のが趣旨だと思うんです。実際これは医療保険制度のときにさんざん議論されましたよ うに、本来、一般会計から払われるべきものの繰り延べという形で俗に「隠れ借金」と 言われているものが一時期 9,600億円ぐらいにふくれ上がった。 同じものが年金財政に関しても、これは年金財政の方は、特会の方がというか、年々 のその収支がプラスですから、年金の場合余り問題になっていないけれども、同じこと が行われてきたはずでございまして、それについて新しく同種のものがここで発生をす る。こういうふうに理解してよろしいのだと思うんですが、この理解間違っていますか ○事務局 今回の措置は、代替財源を保険料で充当させていただくということでありますので、 給付費の国庫負担の繰り延べのような意味で代替財源を手当てしてない状態とは異なっ た形の整理になるわけでございます。そういう意味では、給付費の場合とは違いがある ○B委員 財政状態の違いはわかります。しかし、特会と一般会計との関係であれば、一般会計 によって充当されるべきものについて臨時緊急避難措置として特別会計に一時期振り替 えると、こういうことであることについてはかわりはないかと思うんですが、そういう ふうな理解では違うんでしょうか。 ○事務局 ですから、臨時に振り替えて、一般会計はそれの返済の法的な責務を負うという点で は給付費の国庫負担の場合と今回の臨時措置の場合とは違ってくるわけです。 ○B委員 ですから私は臨時緊急避難措置が全く要らないと言っているのではなくて、現在の特 殊な財政状況に対応する臨時緊急避難措置として必要であるということであれば、返済 義務というものを法的にきちんと担保していただきたいとこう思います。 ○H委員 先ほどからB委員がおっしゃっていることには全く同感なんです。こういう提案をさ れるときに、6ページの「参考」というところに書いてある、例えば「社会保険の事務 に要する費用について、一層の節減・合理化等を行うなど、その在り方について見直 す」ということが書いてあるんですが、具体的に、例えばこういうような見直しをする というものとセットで御提案いただくと、今、B委員が最後におっしゃった緊急避難的 に云々ということについて留飲が下がるんだと思うんです。厚生年金の財源は我々から 見れば、どうも理解・納得しがたいようなことに使われているわけですから、一般的な 企業内でも、どのように節減をするんだということを明確にした上で、だから皆さんこ ういうようにしましょうとか、緊急避難ですとか、がまんをしましょうとか、というこ とでこのような発想につなげていただかないと、文章を書いて、それで何かよくわから ないけれども、並べて書いておき理解、納得するであろうということではなしに、より 具体的に示していただくことが厚生省サイドとして、必要なのではないかということを 御意見として申し上げておきます。 ○O委員  私も基本的には同じような受けとめ方をすべきではないかと思っているんですが、も ともとこの審議会の検討項目の1つに、当初の入り口の議論として、虎の子の年金をど のように活用し増やしたりするかということの中の1つには、業務の効率化をいかにや るかというのも大きなテーマだったと思います。したがいまして、理解の仕方としては この財政構造改革、その中での国家予算の在り方という非常に厳しい現実の問題の中で どういうふうに緊急避難措置をするか、これはある意味ではわかるんですが、しかし、 一方で何かこのことを皮切りに、何となくどさくさに紛れてといったらおかしいんです が、そんな印象になってはまずいので、やはり一方で現実に一層の削減合理化を血の出 るような思いでどこまで検討するか。あるいは実施するかということがある意味では問 われていると思いますので、それをこれからの議論の中でどういうふうにやっていくの か。 そういうことをやった結果が、この緊急避難措置を、やっぱり本来のもとの姿に 戻すような形にできるのかどうか。そこまで努力をすべきじゃないかと思いますけれど も、そういう基本的な方向で考えていくべきではないかと思います。 ○D委員  これは今の財政状況の中で非常に苦しい話ではあるんですが、これを削減しなければ ならんというのはいたし方ないことで、つらくてもやらなければいかんと。その場合に 本来はきちんと、先ほどの説明の資料にあります一般会計でここを減らすわけで、当然 のことながら、 2,250億に減らしているわけですから、これで行くべきであって、とい うことは、この中で人件費を減らさなければいかんのか、何を減らさないかんかという のがあるんですが、幸いなことに年金番号も入ったことだし、また、いろんなシステム 化も行われていることでありますし、ずばり一般会計そのものを合理化するということ で削減するのが基本線であるべきだと思うんですね。それをどうしてもやらなければい かん。ですから、こういうやり方というのは基本的にはやってはならんことなんですが ただ、逆に言って、どうして特別会計でこういうことが可能なのかというのはわかりに くい点が1つ。  先ほど6年間云々ということで話がありましたけど、3年間を重点的にやっていこう ということになっているわけですから、3年間で一般会計で落とせるような体質につく りかえるということをしっかり厚生省としては持つべきであって、こういうところから お金を持ってきてつじつまを合わせるというのでは合理化そのものをやらないというこ とになっちゃいますから、それは大間違いで真っ正面から合理化をすべきであるという こと。 逆に言って、特別会計の方でこれだけ落とせるのだったら落とし続けるべきだ ということだと思うんですね。何でこういうことが可能なのか。もし、これができるの なら、これは後に戻すというんじゃなく、これだって落とし続けることになるはずなの で、そんな器用なことが出てくるはずはないわけでして、そこのところは、これはなぜ 可能なのかというのをちょっと説明していただきたい。どうして 600億なんていう大き な金が特別会計から出てき得るのかというのがわかりにくい。 ○事務局 先ほど口頭で御説明しましたが、いろいろ業務勘定の歳出につきましては、今回の予 算編成ですべての項目について洗い直しをして縮減という立場から検討したわけであり ますが、大きな事項で申し上げますと、年金の受給者に対して「支払い通知書」を年6 回出しておりまして、そのハガキ代、郵送料、印刷、そういった経費がかかるわけです が、これにつきまして、年1回の通知で、年6回分の情報を盛り込むような形を通じて 業務勘定の歳出を縮減するわけです。 ○D委員  そうすると永遠に落とし続けるわけですね。 ○事務局  その部分はそうでございます。 ○D委員  それが 600億とか 700億ある。 ○事務局 それをひっくるめてそういう額になるということでございます。 ○D委員 そうすると、これは永遠に落とし得るわけですね。特別会計の方は合理化できると。 あとは問題は本来の一般会計の方をどこまで早く落とし得るかという問題ですね。この 財政構造改革どうしてもやらなければいかんという立場で私は疑問を残しているわけで すが、そうすると本来の一般会計でこれは当然落とさなければいけない。  もともとここの基本方針で出ていることは、何も特別会計から回しなさいという方針 が出ているわけでなくて、一般会計で削りなさいという方針が出ているわけですね。そ れは当然その方向でやるべきなんだけど、急に突然言われても、そんなことできません よということで、しかし、時間をかけて必ずやりますと言って、しばらく別の会計から 貸してくださいという話ですよね。  別の会計の方は、それは今言った、今まで何回か通知してたのを1回にするというこ とになると、これは完全な合理化ですから、それは今後も継続しうる合理化なわけです よね。絶対額が落ちる話。そういうことは今後もいろんな角度で一つずつやっていかな ければいかん。それは極端なサービス劣化ということになってはいけませんけれども、 サービスの近代化ということをやっていかなければいかんという話になるわけでしょう  と同時に、当然のことながら、一般会計の方の要員合理化もやりますということで、 ちょっと時間貸してくださいという話で、それを6年貸してくださいというのはちょっ とオーバーじゃないか。せめて3年間重点的にやるという3年間ちょっと時間貸してく ださいと。それで一般会計で必ず落としますから、両方落としたからといって、だれも サービスが劣化しない限り腹立つ人はいない。非常によくやったという話になるわけで すからね。 ○事務局  人件費の負担の関係が税であろうと保険料であろうと、事務費そのものについて、い かにして節減・合理化できるかということでございまして、先ほど申し上げましたよう に、年金受給者の増大ということで、私どもの業務量そのものは毎年非常に増えている わけでございまして、この10年だけで見ても年金受給者に関して言えば 1.7倍になって いると。それから、適用事業所を入れると 1.6倍と、こういう形で業務量が増えている こういう中にありまして、いかにして事務量を節減・合理化していくということになり ますと、これまでのような機械化などの効率化ということと併せまして、事務そのもの の在り方について検討していかなければならないなと。また、そういう観点から、財政 構造改革会議の側でもそういうことが触れられているのではないかというふうに理解し ております。それから、6年間そういう検討をやらないと、そういう趣旨ではございま せん。早急にそういう事務の在り方についての見直し、検討、それがおっしゃるような ことに、できるだけつながるような視点を持って検討していきたいということでござい ます。 ○D委員  ですから、申し上げたいのは、一般会計の方できちんと 600億を落とせるような体制 に6年じゃなくて3年間でやってくださいよと。最悪の場合は6年ということになっち ゃうのかもしれないけど、少なくとも6年間は何にもやらんでいいような印象になるの は非常に私は問題だと思います。やっぱり加速的にとにかくあらゆる機会をつかんで、 幸いなことに年金番号も確立したことだし、こういうことをきっかけにして、一般会計 の方で600 億を、少なくとも重点期間の3年間で落とすような努力をぜひやってもらう という、少なくとも意欲は見せていただかないと、6年間は何にもしませんということ だけではなかなか問題じゃないかという気がするわけですね。  反面、特別会計の方もサービスが劣化しない範囲でできるなら落とせばいいじゃない か。落とすべきだということだろうと思います。 ○I委員  これは10年度の予算についてだけ書かれているんですが、さっきのお話をお伺いする と、例えば6回の通知を1回で済ますというようなことを考えると、恒久的にその辺の 経費が削減できるということで考えると、6年間は年金財政に影響なしに、つまり保険 料の引き上げということに及ばない範囲でやっていけるということなんでしょうか。そ ういうふうに理解してよろしいんでしょうか。 ○事務局  そういう考え方でございます。この10年度だけ、先ほどの業務勘定の歳出を落として 11年度以降それがもとの水準に戻るということではございません。ございませんとい うか、そういう考え方であります。 ○会長  概算要求につきまして、ほかに何か御質問ございましょうか。概算要求の話もこれで 終わりにしたいと思いますが、よろしゅうございますか。                (「はい」と声あり)  それでは、本日予定されておりました議事が全部終わりになります。それから、本日 の資料につきましては、これをすべて公開するということにしたいと存じますが、よろ しゅうございましょうか。                (「はい」と声あり)  それではそういたします。  それから、今後の日程につきまして、事務局の方からお知らせがあるようでございま す。 ○事務局  今、お手元に、今後審議会の開催につきまして、各委員の御都合をお伺いいたしまし て、10月末までの日程につきましてとりあえず決めさせていただきました。まことに 恐縮ではございますが、御出席いただけない委員もいらっしゃるようではございますが 各委員の最大公約数の御出席をいただくということで日程案をお配りいたしましたので 何とぞよろしくお願い申し上げます。 ○会長  だんだん話が佳境に入りますので、なるべくお繰り合わせの上、御出席くださいます ようお願い申し上げます。 それでは、本日はこれで閉会したいと存じます。御苦労さまでございました。 問い合わせ先 年金局企画課    担 当 須田(内3316)    電 話 (代)03−3503−1711