97/09/10 第72回人口問題審議会総会議事録 第72回人口問題審議会総会議事録                 平成9年9月10日(水) 10時30分〜12時30分                         共用第9会議室 宮澤会長  本日は、ご多用のところをご出席いただきましてありがとうございます。ただ今から 第72回人口問題審議会総会を開会いたしたいと思います。 まず出席状況のご報告でございますが、都合によりご欠席は、井上、木村治美、熊 崎、河野栄子、河野洋太郎、坪井、南、宮武、網野各委員でございます。その他の委員 はご出席です。若干遅れていらっしゃる委員もいらっしゃるようです。 では、これから本日の議題に入らせていただきます。本日の議題の内容につきまして は、お手元の議事進行予定の通り、最初に少子社会を考える県民会議の報告につきまし て、初めに8月27日に香川県の高松市で、また昨日、愛知県名古屋市で行われました少 子社会を考える県民会議、ここにおきまして基調講演をいただきました阿藤委員と、 コーディネーターとして参加された岩淵委員からそれぞれご報告をいただきます。 続いて、事務局において作成していただきました論点整理メモ、それにかかわる少子 社会の姿に関する資料、これについて説明をしていただきまして、中間まとめに向けて 議論を行いたいと存じます。 では、高松市で開かれました少子社会を考える県民会議につきまして、阿藤委員より ご報告をお願いいたします。よろしくお願いいたします。 阿藤委員 本来ですと、このシンポジウムにコーディネーターとして参加されました宮武委員が ご報告をするはずでございましたが、きょうは所用で急遽、ピンチヒッターでまれたの ですが、なんせ私は講演したあと、もう自分の役目はすんだということでのんびり聞い ておりましたので、なんとも印象しか申し上げられませんが、その辺でお役目を果たさ せて頂きたい、と思っております。 資料がそこに1、2、3とございまして、最初の少子社会を考える県民会議の2ペー ジ目に特にパネラーの方のご紹介がございます。会議全体としては香川県知事のごあい さつがあり、厚生省の政策課の椋野室長ごあいさつ、そして私の基調講演、そのあと、 シンポジウムがあったわけですが、コーディネーターが宮武委員、パネラーが人口審の 大淵委員、あとは、そこにございますように高松市の近郊の国分寺町長さん、それか ら、会社の名前を言っていいのかどうか知らないですが、株式会社セシール、これは高 松に本拠を置く通販の結構大きな会社ですが、そこの労務課長さん、若い方でしたが。 それから連合香川の女性委員会の委員長さん、それから県民間保育所の振興会会長さん で、同時に保育園の園長さん、という非常に多彩な顔ぶれでシンポジウムが進められま した。  大淵先生は、ご著書にありますように、シンポジウムでも低出生率の人口への影響と いうことでマクロな観点からのお話でございました。  それから高松市の近郊といいますか、ちょっと離れたところの国分寺町の町長さん は、多くは高松市への通勤者世帯を抱えているところでございますが、非常に保育の問 題に力を入れているというお話がございました。  非常におもしろかったのは3番目のセシールの労務課長さんのお話で、この会社は三 千数百人といいましたか、そして常雇、パートも相当おりまして、女性と男性の比率が 6:4で女性のほうが多い、そういう会社です。  おもしろいのは、会社が9時に始まって5時に終わる。そして5時半にはもうだれも 会社にいない。最近の時短をまさに地でいったような会社だということでございます。 そして育児休業、介護休業も定着していて、必要があれば必ずみんな取るということで ございます。その労務課長さんはどこかからスカウトで来た方で、前の会社と大違い で、家に帰る時間が早すぎて時間が余ってしょうがない、しかたがないから家事を始め た、そう冗談まじりにおっしゃっていました。そこまで時間があれば、たしかに夫の家 事分担、育児分担もできるのかな、そのようなことでございました。  連合香川の女性委員長さんは、もちろん仕事と子育ての両立実践ということで、ご自 身もそうでございますが、そういうことに関する問題点をいろいろ指摘されたというこ とでございます。  保育所の、振興会の会長さんは、つい最近、厚生省で、保育所というものを、単に措 置で預かった子どもを面倒みるだけではなくて、もう少し地域の子育て相談センター、 そういうファンクションをもたせてはどうかという話がきているけれども、香川県では そんなことはずいぶん昔からやっているというふうに、かなり率先してそういう意味で の地域に根ざした保育所を目指してきたのだというお話があったように記憶しておりま す。  フロアからは、たしか一つぐらいしか質問もございませんで、わりとパネラーのあい だでのお話が盛り上がった会議だったと思います。  つけ加えますと、香川県の子育て支援計画という、三つ目の資料にその要約版がござ いますが、もう一つ分厚いのがつくってございまして、非常におもしろかったのは、一 つは、香川県も、全国水準とはやや低目ですが、この20年間にものすごい勢いで未婚率 が上がっているのです。 同時に、香川県で未婚者を対象にした調査をしておりまし て、その結果なども載っていたのですが、それを見ますと、たとえば結婚したくない理 由というので、自由が失われるとかそういうことが、特に男女の差が非常に大きい。女 性の側で大変それが高いパーセントを占めていたとか、あるいは男女の役割分担の考え 方についても、男女の考え方が非常に開いている。このような結果が出ておりまして、 東京でわれわれがいろいろ調査データを集めて、あるいは全国調査をやって感じている ことが、香川県という一県の中でもほとんど同じようにあらわれているということを強 く感じた次第でございます。  以上です。 宮澤会長  どうもありがとうござました。引き続きまして、名古屋市で開催されました少子社会 を考える県民会議につきまして、岩淵委員よりご報告をお願いいたします。 岩淵委員  お手元の資料の2−3をごらんいただきたいのですが、これはけさの中日新聞です。 では、簡単に申しあげます。  きのう午後、名古屋城近くのウイルあいちというところで開きました。 参加者は、 保母、児童館の指導員、子育て支援センターのお母さん、公募した一般の参加者、意外 に高齢者が多かったということです。 300人以上集まりました。会場は超満員で、ほぼ 女性が7割、30代から40代の方が多かったように思いました。 内容は、阿藤委員の基調講演と、岡沢先生の「男女共同参画論」、これには会場の皆 さんが何度も何度もうなづいて、聴衆を魅了したといってさしつかえないと思います。 シンポジウムの中では、過疎の村の村長さんの意見が圧巻でした。ここは、織田・徳 川連合軍が武田軍を破った茶臼山のふもとの津具村というところなのですが、高齢化率 が33%、2050年の日本とぴたり一致するところです。村長が子どものころは 100人以上 いた1学年が、今は10人以下の状況で、高齢化率が毎年2ポイントぐらいずつ上がって いくというところでして、村長は、将来を考えるとそらおそろしいということをおっし ゃっていらっしゃいました。過疎化、高齢化、少子化、この三点セットが急激に進んで いるということでございます。  ただ、ここの村では村長が頑張っていまして、出産祝い金が10万円から20万円、結婚 奨励金は11万円です。出産祝い金は多いのですが、結婚奨励金というのはなかなか珍し い。「奨励」というのはどうかなとちょっと思いましたが。それから延長保育。山奥で 延長保育をやっています。 というのは、若い人はみんな車で1時間ぐらのところへ通 勤しているということです。それから子育て広場、ちびっこの森、室内温水プール、中 学3年になるとアメリカ研修などというふうに、かなり子育ての支援をやっています。 その結果、どういうことになっているかといいますと、高齢者のほうから、そんな少な い子どものためにカネを使うより、屋根付きのゲートボール場をつくれと迫られて困っ ている、ということでございました。  女性の出席者の方からは、育児休業法で父親参加を義務づけてほしいという意見、企 業の子育て環境をきちんとチェックするシステムをつくってほしい、子育てを地域づく りの核にしようではないか、というような意見が出ました。  会場からは、放課後児童保育、学童保育ですが、それを小学校4年以降まで延長して ほしい。文部省と厚生省の連携がうまくいっていないので現場は大変苦労しているの で、ちゃんとやってほしいという要望がありまして、会場にいた椋野室長が急遽、答弁 に立ちまして、前向きの姿勢で解決していくという答弁をなさいまして、政府委員の資 質があるなと拝見いたしました。  私のほうからは、これは個人の意見として、愛知県は男性の家事時間が全国最低なの で、粗大ゴミ王国とか、動かざること山のごとし、などといわれています。これからは 女性も働かなければ家庭も地域も国も立ちゆかない時代になりますので、子どものころ から、家事をしない男は結婚できない、というようなことをきちんと教育してほしい と、やや過激にお願い申しあげておきました。  以上です。 宮澤会長  ありがとうございました。では、お二方のご報告につきまして、何かご質問等ござい ましたら、お願いいたします……。よろしゅうございましょうか。  それでは、引き続きまして第2の議題に入りまして、事務局から論点の整理メモ並び に少子社会の姿に関する資料につきましてご説明をお願いいたします。 椋野室長  それでは、事務局からご説明を申しあげます。お手元にあります資料3、論点整理メ モ、資料4、少子社会の姿に関する資料、参考資料の1、社会保障(現行制度)の給付 と負担の見通し(改定版)の概要、参考資料の2、今回試算と前回試算の入った1枚 紙、以上でご説明をさせていただきます。  まず、論点整理メモからご説明をさせていただきます。前回、フローチャートをお示 ししたわけでございますが、それに対していただきました意見も踏まえて、論点整理メ モとして流れを少し骨太に整理をしてみたものでございます。  1ページ目にメモの位置づけが書いてございますが、本論点整理メモは、当審議会に おいて少子化に関する中間とりまとめを行うにあたって、論議を効率的に進めるために 論点を整理したものでございます。なお、今後とりまとめられる中間とりまとめは、少 子化に関する国民的な合意を形成していくための出発点であり、国民的な議論を経た結 果、修正すべきは修正し、新たな見解を加えるべきは加えていくべき性格のものと考え ております。その中間とりまとめを行うにあたって、論議を効率的に進めるために、事 務局で今回、論点を整理したメモという位置づけでございます。  では、内容に入らせていただきます。2ページからでございます。   1として、少子化の現状と将来推計。近年の出生率は人口置換水準を大きく下回って おり、今後、出生率が相当程度向上するとしても、人口が減少し、高齢化が進行してい くこと(少子化)は確実。前回、こういう内容についてきちんとデータに基づいて議論 をすべきではないかというご意見をいただきましたので、それは少子社会の姿に関する 資料として、資料4につけております。まずは文章編をざっとご説明をさせていただき ます。人口についても資料編に数値は入れております。   2.少子化の影響への対応と少子社会の姿。まずここをきちんと議論して出生率に対 する政策的関与の是非を含め、そういう議論に入るべきだと。まずは少子社会の姿をき ちんとみるべきだというご意見がかなり強うございましたので、きょうは、データはこ こを中心にご提示しております。  まず少子化の影響。現行制度を変更せず、現在までの傾向が続く場合は、自然体でこ のままいったら、というのを1でまとめております。人口が減りますので、労働力人口 が減少する、高齢化に伴って貯蓄率が低下する。  2番目としまして、高齢化の伸展による若年世代の負担が増大する。  この1と2によりまして、経済成長が低下する。特に勤労者1人当たりの手取り所得 が世代の進行とともに減少するうような経済状況になる。この経済成長の低下とはどう いう意味かというご質問が前回ございました。これも後ほど、数値のほうでご説明をさ せていただきます。  4番目、過疎・超高齢化地域(自治体)が増大する。  5番目として、子どもの社会性が低下する。  現行制度を変更せず、現在までの傾向が続く場合は、こういう影響が少子化によって 生ずるというのを1にまとめております。  この少子化の影響について、当然いろいろな対応をいたします。今いわれているよう な改革を実行するわけでございますが、その柱を6本にまとめております。  まず一つ目、労働力人口が減少するということについては、これを緩和するために、 女性や高齢者や障害者の就労を促進するという対応があると思います。  2番目としては、労働力人口が減るとしても、1人当たりの労働生産性を上昇する対 応がございます。高付加価値型新規産業の創出ですとか技術革新、あるいは雇用の不適 合の解消というようなものがございます。  三つ目として、企業の高費用構造の是正。柔軟な雇用制度や会社経営を可能とする規 制緩和ですとか、物流や情報通信など、構造改革型社会資本の整備というのが内容とし てございます。  四つ目として、世代間の負担の公平の確立でございます。  まずは年金制度における給付と負担の適正化でございます。カッコで(子育て世代へ の配慮を含む)と入っていますが、これはミスで、この段階では落とす整理をさせてい ただいております。  二つ目として、医療保険制度でも今、老人医療の問題がずいぶんいわれております。 医療保険制度におきましても、世代間の負担の公平の確立という観点からの給付と負担 の適正化の対応が必要と考えられます。  5番目として、地域構造の再編。過疎・超高齢化地域・自治体の増大に対するものと しては、地方への人口分散ですとか、基礎的な住民サービス提供主体としての地方行政 単位の再編,たとえば市町村合併等がこれにあたるわけですが、こういう対応を進め る。  6番目として、子どもの社会性の低下に対応するものとしては、創造力や生きる力を 育成するために、子どもの体験的活動機会を増加させたり、個に応じた教育をするとい う対応となってまいります。  このような少子化の影響への対応、改革を実行した場合、少子社会がどういう姿にな るか。少子社会とは、一応少子化が進行した社会というふうに説明をさせていただいて おりますが、その姿として、少子化への対応のため、各般の改革を確実に実行しなけれ ばならないが、実行したとしても、従来のような高い経済成長は期待しがたく、少子社 会の姿は楽観できない。ただし、仮にゼロ成長またはそれに近い経済成長となるとして も、安定した社会の姿として望ましいとの意見もある。このあたりについては、後ほど データに基づいてご議論をいただきたいと存じます。一応、前回のご意見を踏まえて、 こんな形でメモはつくらせていただきました。  4ページ以降は、ここから少子社会の姿が楽観できないとすれば、出生率に関する政 策的関与をどうするかということについて整理に入っていくという流れにさせていただ いております。  まず1番目に、出生率に関する政策的関与についての考え方の整理をしております。 少子社会についての見通しが厳しいとすれば、出生率に関する政策について正面からの 議論を避けて通るわけにはいかない。 出生率に関する政策的関与についてはさまざま な考え方があり、以下の通り。  まず一つ目、出生率に政策的に関与すべきでないとする考え方。これにはいくつかの 理由がございまして、1番目には、結婚する・しない、産む・産まないは個人の問題で あるから、政策的に関与すべきでないとする考え方。  2番目として、世界人口の増加を考えると日本の少子化はむしろ望ましいのだから、 関与すべきでない。  三つ目として、結婚や出産については政策効果はあまり期待できない。 だから関与 すべきでない。  同じ関与すべきでないとしても、理由としてはいくつかの考え方があるということで 整理をいたしました。  2)として、逆に出生率に政策的に関与すべきとする考え方、それから、関与すべきだ としても、その場合の留意事項としてア、イ、ウをまとめております。  関与すべきとする考え方、これも、著しい少子社会になることは避けるべきとの判断 に立って関与すべきとの考え方でございますが、一つ目は、産む、産まないは個人が決 めるべき問題ですが、個人が望む子どもの出産を妨げる要因が現に存在しているわけで すから、それを取り除く政策は個人にとっても望ましいし、また、著しい少子社会にな ることを避けるという意味で、社会にとっても望ましいという考え方が一つ。  二つ目として、もう少し積極的に子どもをもつことを私的な責任としてだけでとらえ るのではなく、子どもを公共財として考え、社会的に扶養するべきであるという意味 で、政策的に関与すべきとする考え方がございます。  イとしてまとめておりますのは、積極的に関与すべき理由というよりも、むしろ1)で 述べられています関与すべきでないとする考え方に対する反論を整理しております。世 界人口の増加を考えると、日本の少子化はむしろ望ましいということに対しては、世界 人口は増加していても、日本が人口の増加を目指すというのではなく、著しい少子社会 になることを避けようとすることは、現在の主権国家を前提とする以上、批判されるべ きことではない。  二つ目としては、政策効果はあまり期待できないということに対しては、先進諸国の 状況をみても、現在の日本の出生率は低すぎる。制度の変更等による効果は一定程度期 待できるのではないかという反論でございます。  ウとしてまとめておりますのは、出生率に政策的に関与する場合であっても留意すべ き事項でございます。  妊娠・出産に関する女性の自己決定を制約してはならないことはもとより、個人の生 き方の多様性を損ねるような政策はとられるべきでない。 また、下記のような指摘が あるとして、5ページに、有識者ヒアリング等で出された指摘を整理しております。  ジェンダー(文化的、社会的性差)についての正確な認識に立ち、政策にジェンダー による偏向が生じないようにすること。たとえば、女性は当然家庭にいるべきもの、と いった認識に立たないこと。  二つ目、民族など、文化的、社会的要素に着目して人口を論じてはならないこと。  三つ目、一部の社会階層だけによって人口を論じてはならないこと。  四つ目、人口増大により、地球規模での環境影響が起こらないようにしなければなら ないこと。  以上のような指摘が、政策的に関与する場合としても留意事項としてございました。  次に2として、外国人の受け入れについての意見を整理しております。 出生率に関 する政策的関与の是非を論ずるにあたっては、労働力人口の減少と少子化の影響への対 応としての外国人の受け入れの是非についての方針をまず明確化すべきではないかとす る意見がある。しかしながら、少子化の影響への対応として外国人の受入を考慮すると しても、出生率の低下を補完できるほど急速かつ大規模な外国人の受け入れは現実的で はなく、その方針のいかんにかかわらず、出生率に関する政策的関与の是非について議 論を進めていく必要がある。  というような形で、外国人の受け入れについての方針が決まらないと、出生率に関す る政策的関与の議論に入れないということはない、というような整理をさせていただい ております。  6ページ、出生率向上に関する政策のあり方について。このあたりについては、次 回、データをお示ししてまたご議論をいただこうと思っておりますので、説明は簡単に させていただきます。  まず、少子化の要因と原因の分析。出生率向上に関する政策のあり方を検討する前提 として、少子化の要因とその原因を分析する必要がある。 少子化の要因としては、未 婚率の上昇と平均出生児数と平均理想子ども数の格差、これは増えているわけではあり ませんが、格差があるまま、横ばい。その他として、欧米諸国との比較でみた婚外子数 が非常に少なく、これも増えていない。この三つの要因が掛け合わさって少子化が出来 上がっている。  そのいちばんの要因の未婚率の上昇の原因と考えられることというのを、以下、いろ いろと整理をさせていただいております。時間の関係で細かくご説明は省略をさせてい ただきますが、女性の選択肢が広がって、結婚しなくてもよくなったということと、よ くなった場合に、結婚がなかなか負担が大きくて、未婚率の上昇につながっている、そ ういうものをもう少し細かく整理をさせていただいております。  7ページ、3)として、平均出生児数と平均理想子ども数の格差の原因と考えられるこ と。これも細かい説明は省略させていただきます。性別役割分業観と滅私奉公企業型風 土のもとで、仕事と育児との両立が非常に女性にとって負担になっており、また、機会 費用を上昇させているという、前々回、かなり議論になったようなことを整理をさせて いただいております。  その他として、婚外子の数が欧米に比較して非常に少ないという理由がございました が、それに対する原因としては、同棲や婚外子に対する社会的許容度が低いことではな いかという整理をさせていただいております。  こういう少子化の要因と原因の分析を踏まえて、では、出生率向上に関する政策のあ り方について、出生率の低下は、女性の社会進出が進み、多様な生き方が是とされてき たにもかかわらず、実際の結婚生活においては女性が家事・育児を担うという性別役割 分業観が根強く、企業においては滅私奉公型の働き方が要求されていため、結婚、出産 が女性にとって個人の自由を束縛し、多様な生き方を阻むものとしてたちあらわれてき ていることに負うところが大きいのではないか。したがって、男女がその自由な意思で 仕事や家庭に共に参画することを妨げるような不合理な性別役割分業観及び滅私奉公型 企業風土を是正することが、各種施策の基本的前提となるのではないか。  そういう前提のもとに、このため、性別役割分業観や滅私奉公型企業風土に対応する 制度・慣行の是正を行うとともに、性別役割分業観や滅私奉公型企業風土そのものを改 める国民の意識改革が必要ではないか。  三つ目、子どもに手をかけ、お金をかけること自体が意味をもつようになっているこ と。子育てにかかる機会費用が上昇していることを考慮すると、子育てに関する直接的 費用の補填よりも、仕事と育児を両立させるための支援方策の効果的な推進をはかるこ とが肝要ではないか。  こうした観点から、現行の施策の効果の分析と検討が必要と いうことで、参考として、現行の子育て支援のための重点施策をそこに七つ、挙げてお ります。これは、エンゼルプランの中で重点施策として挙げられているものでございま す。  仕事と育児の両立のための雇用環境の整備ですとか、多様な保育サービスの充実。あ るいは安心して子どもを産み育てることができる母子保健医療体制の充実。住居及び生 活環境の整備。それから教育関係。子育てに伴う経済的負担の軽減。7番目、子育て支 援のための基盤整備というのはちょっとわかりづらいかと思いますが、子育てのための 相談にあたるような地域保育センターの整備等がこれにあたるわけでございます。 そ ういう現行の重点施策をもう一度効果を分析し、どういう施策を推進することが必要か ということを考えるべきではないかという整理にさせていただいております。  いろいろ今までも細かい施策についてご意見いただいておりますが、ここに入ってい ないものを、最終的な中間的なとりまとめに落ちる落ちないというのはこれからの議論 でございまして、今回、論点整理メモとして骨太に書かせていただいております。  最後に9ページ、その他として、個別の論点整理ではなく、全体にかかわることを改 めてもう一度書かせていただいております。わが国における出生率の低下は、家庭にお ける固定的な男女の役割分担や、それを前提とする企業活動のもとで、物質的な生産と 消費の拡大を志向してきた社会の状況に深く関連していることから、わが国社会全体の 構造にもかかわる問題として対応の検討が必要。小手先の施策よりも社会全体の構造に かかわることとして考えるべきだというご意見がかなり出ておりましたので、こんな形 で整理をさせていただきました。  出生率の向上は、基本的にはわれわれが21世紀にどのような社会や家族を目指すのか を明らかにし、現在の社会や家族のあり方を見直すこと、とりわけ性別役割分業や滅私 奉公型企業風土を是正し、未婚率の上昇への対応を進めるとともに、個の自立と男女の 共同参画、次世代育成への社会的連帯をはかるなかで実現すべきものではないか。  少子社会を経済状況からみた場合、相当厳しい状況が予測されるが、上述のような変 革を目指すなかで、自己実現と他者への貢献が両立する新しい形の家族が生まれるよう な、うるおいのある心豊かな社会を実現することができれば、決して悲観するものでは ないのではないか。  なお、外国人の受け入れについて、なし崩し的に行われることにより、わが国経済社 会に大きな問題が生じることが懸念されることから、そのあり方について関係の場で正 面から十分な議論を行うべきではないか。  そういうことを踏まえて、出生率に関する方策は効果があらわれるまでに長期間を要 する。これもかなりご意見が出たところでございます。 国民的論議を経てすみやかに 将来を見据えた方策を明らかにして、対応を講ずることが必要。  全体にかかわるものとして出ていましたご意見は、こういう形で「その他」としてま とめさせていただきました。  次に、データのほうに入らせていただきます。資料4として「少子社会の姿に関する 資料」でございます。今の論点整理メモの 1、少子化の現状と将来推計に少子化の影響 への対応と少子社会の姿に対応する部分の資料でございます。  1ページは、わが国の総人口の見通しでございます。人口的な影響をもっと強調すべ きではないかと、前回もご意見をいただいておりましたので、それを入れております。  わが国の総人口は、2050年には1億人と、現在の1億2600万人より2割減となり、そ の後もさらに減少するものと予想される。これは中位推計でございます。出生率が回復 しない場合の低位推計をみますと、総人口は2050年には9200万人、2100年には5000万人 まで減少するものと見込まれる。5000万人といいますと、今の半分以下、4割程度にな ってしまう。回復しない場合にはこういう姿になるというのをきちんと書き込む必要が あるということで、データとして入れました。  この低位推計の前提ですが、1月にご説明したことの確認ですが、回復しないという 意味は、1.42そのままというのではないですが、1.42が2005年に1.28にまで落ち込み、 その1.28よりは若干上がりますが、2025年から2050年ぐらいにかけて、1.38というとこ ろで推移する。つまり、1.42よりも上に回復することはないという意味での出生率が回 復しない場合の推計でございます。 次に少子化の影響と少子社会の姿として、2ページ、労働力・経済の見通しでござい ます。労働力・経済の見通しにつきましてはさまざまな試算がございます。しかし、現 状のまま推移した場合には、労働力人口の減少、貯蓄率の低下、社会保障費など、公的 負担の上昇などにより、経済成長率の低下が見込まれており、勤労者1人当たり手取り 所得が減少に転じるなど、概して悲観的。  経済、社会保障などについて思い切った改革を行ったとしても、経済成長率の低下、 国民負担率の上昇は避けられない見通し。  さまざまな試算の1番目として、労働力人口の見通しでございます。 労働省職業安 定局による労働力人口の見通し。3ページにつけております。労働力人口は、そこにグ ラフがございますが、左から2番目の1996年、6711万人でございますが、これが2005年 に6870万人でピークを迎え、そのあと、下がっていきまして、いちばん端の2025年です と6260万人に減少する。ということで、1996年の水準よりは1割弱減少する。  ちなみに、労働力人口の構成も大きく変化しまして、1996年に13.2%であった60歳以 上の労働者の割合、グラフですと上の真っ白とその下の黒いところを足したのが60歳以 上になりますが、それがだんだん増えていきまして、2025年には21.2%に達する。労働 力の減少と高齢化という状況が労働力人口に訪れるというものでございます。 4ページに、産業構造審議会総合部会基本問題小委員会で行われました試算をつけて おります。現状のまま推移した場合の粗い試算でございます。これは、平成8年11月に 出ておりますので、人口推計は新しい推計ではございません。平成4年 9月推計です が、ただし中位推計ではなく低位推計を用いておりますので、今回の新しい中位推計よ り若干低い、ほぼ今回の新しい中位推計と同じぐらいの人口推計を用いたものでござい ます。 労働力率等は、これまでの統計により推計したものを活用しておりますが、2000年以 降、労働力人口は減少するという見込み等の前提を置きますと、経済成長率は、1995年 度の 2.3から、 2000 年に 2.6とちょっと上がりますが、 1.8、 0.8とだんだん低下を し続けるという状況でございまして、国民負担率も上がり続けます。 勤労者1人当たりの手取り所得の伸び率が 1.5、2000年度で 1.9になりますが、その あと 1.0、2025年ではマイナスの 0.3となりますので、働いても生活水準が向上しな い。勤労者1人当たり手取り所得がマイナスということで、そういう状況になるという ことでございます。 思い切った経済構造改革及び財政社会保障改革を実施した場合というのが、下のほう にございます。主な思い切った改革の内容としては、技術進歩、労働力供給は2010年以 降減少しないという前提、それから年金報酬比例部分の撤廃、医療費の削減、政府支出 の削減、公共投資抑制など、かなり思い切った改革をすることを前提にしますと、経済 成長率は 2.3、 3.0、 2.3、 2.2で堅調に推移しております。国民負担率も2025年度で 45.6%で、50%の中でとどまっております。 勤労者1人当たり手取り所得の伸びですが、 1.5、そのあと 2.5に上がったあと、 2.0、 1.7と低下し続けていますが、マイナスではございませんので、一応堅調に推移 しているという形になっております。  5ページは、経済審議会の構造改革推進部会財政社会保障問題ワーキンググループの 試算を出しております。ここの前提として、人口は先ほどのものと同じように、前回、 平成4年9月の低位推計を使用しております。技術進歩の伸びについては、1995年の 1. 5%から2025年までに 0.     5%まで低下すると想定して、現行のままだとどう か、社会保障制度改革ケース、政府支出抑制ケース、両方の改革を併用したケースにつ いてシミュレーションを行っておりますが、その下には、現行制度と思い切った改革を 併用してやった場合の二つのケースだけの数字を入れさせていただいております。 現行ケース1)でいきますと、GDP成長率は 2.8、 1.9、 1.1と下がり続ける。2)と 3)、思い切った改革からなにから全部やるとしても、 2.8、 1.9、 1.2と低下はし続け ているという数字になっております。これをどのように評価するかということになろう かと思います。 6ページは、次に社会保障の給付と負担の見通しをつけております。 これは平成8 年11月に厚生省として出しておりましたものを、今回、改訂して、この場で初めてお示 しをさせていただくものでございます。 前回の試算と今回で変わった部分でございま すが、まず前回の試算は人口推計が平成4年9月の中位推計を使っておりましたので、 これを新しいことしの1月の中位推計に変更しました。それから、国民所得等について 直近の数値に変更しました。それから、介護保険制度の創設に加えまして、平成9年の 医療保険制度改革の実施を織り込みました。  こういう変更をいたしましたが、試算の結果としては、人口がさらに少子化が進むと いう推計になっておりましたが、年金については負担が増加しますが、それを今回新た に織り込んだ医療保険制度改革の実施日が相当程度相殺するということで、結果的には あまり大きく前回試算と変わらない形になっています。国民所得比で 0.5%程度負担が 高まったという程度の結果になっております。 それが前回の試算との違いでございますが、見通しそのものをご説明させていただき ます。6ページでございます。試算の前提として置いておりますのは、名目国民所得の 伸び率を、A、B、Cの3ケース、2000年度まで 3.5%、2001年度以降 3.0%というA のケース。Bのケース、2000年まで1.75、そのあと 2.0。Cのケース、1.75から 1.5に 下がる、という三つのケースを置いて試算をしております。人口は、今申しあげました ことしの1月の中位推計でございます。 制度として織り込んでおりますのは、医療保険制度改革は入れておりますが、さらに 介護保険制度も創設されるものとして算定をしております。それでみますと、わが国の 社会保障給付費は年々増大しまして、1995年度の65兆円から、いちばん右のグラフ、 2025年度には 216兆から 274兆円となる見通しでございます。これはA、B、Cのケー スに応じて試算をしておりますので幅が出ておりますが、 216から 274兆円になる見通 しで、国民所得に対する負担の率でございますが、下に書いております国民所得に対す る負担の率でございますが、1995年の18.5%から、2025年度では29.5から35.5%にまで 増大するという見通しになります。 若干の説明を7ページにつけております。留意点の2)、人口の高齢化等に伴いまし て、社会保障にかかる負担は着実に上昇する。そして、前提となる三つのケースを置い ているわけですが、国民所得の伸び率が下がった場合に負担の割合が大きくなる分野は 医療でございます。一方介護の負担の割合は、対国民所得比 2.5%程度で将来とも相対 的に小さいものと予測される。 仮に社会保障以外の支出にかかる公費負担の対国民所得比が現在の水準、約20%から 変化しないものとしますと、本試算においては、現行制度のままの場合の将来の国民負 担率、一般政府財政赤字を含めない場合は50%から56%程度となる。一般政府財政赤字 を含まない場合でございますが、一般政府財政赤字は、平成7年度で国民所得比約 8.8 %となっております。 以上のようなことを踏まえますと、4)でございますが、仮に社会保障の見直しのみで 国民負担率を将来とも50%以下にとどめようとするならば、将来の経済成長率いかんに よりますが、現行制度のままとした場合に比べ、今後、中長期的に2割以上の給付の効 率化、適正化が必要となる。上のところにありますように50%から56%ですから、中長 期的に2割以上の給付の効率化、適正化が必要となることもあり得る。このため、介護 保険制度の創設に続き、医療及び年金を中心に将来に向けて給付の効率化、適正化を行 うことが必要、ということになります。  以上が社会保障の給付と負担の見通し、新しくお示しするものでございましたので、 ちょっとお時間をとりましたが、詳しく説明させていただきました。  8ページに地域の過疎、超高齢化地域自治体の増大についての数字でございます。都 道府県別の人口の将来推計をもとにつくっております。 現在でも最も高齢化の進んだ 町では、47.4%が65歳以上でございます。 これは山口県の東和町でございまして、上 のほうに人口ピラミッドといいうかグラフをつけているものでございます。 少子化の進行により、2025年にはほとんどの都道府県で65歳以上人口が3割前後とな る見通しで、地域に深刻な影響が出ると予想されます。 日本地図が二つありますが、 左側のものが1995年でございまして、ほとんど白でございます。白というのは、老年人 口が20%未満のものでございまして、20から25%というのが横線の入った2件あるだけ でございますが、これが2025年になりますと、真っ黒のところが30%以上、グレーのよ うに見えていますのが25から30%でございますので、そういう意味でほとんどが3割前 後となる見通しになっております。 あと、参考資料としてつけておりますのは、今回新しくお示しすることとしました社 会保障の給付と負担の見通しのやや詳しいもの、参考資料の2は、今回試算と前回試算 を比べたものでございます。 説明は以上で終わらせていただきます。 宮澤会長  ありがとうございました。論点の整理と資料の整理をしていただきました。どうも大 変ご苦労さまでございました。それではご意見をお願いしたいと思います。 論点が多岐にわたっておりますので、本日は論点整理メモのうち、特に資料の整理、 用意ができております 1の少子化の現状と将来推計、 2の少子化の影響への対策と少子 社会の姿、 3の出生率に関する政策的関与等について、これを中心にご議論をいただき まして、次回、9 月18日に 4の出生率向上に関する政策のあり方、 5のその他、まとめ 的なところですが、これについてデータをさらに用意していただいて、ご議論をいただ くというようにしてはどうかと思います。ただ、もちろん前半は 1、 2、 3を中心にと 申しましても、そのベースとして、 4、 5にございましたように各種施策の基本的前提 として、性別役割分業観とか、企業風土の是正というような社会全般の構造にかかわる 対応をベースに置くべきであるという話が後半にございますが、前半につきましても、 そのような背景を念頭に置きながらご議論いただければと思います。どうぞよろしくお 願いいたします。 八代委員 論点メモは非常によくまとめられていると思います。4点ほどご質問とコメントをさ せていただきたいと思います。  一つは、少子化への対応という全体の考え方でありますが、基本的に私は、ここでも まとめられていますように、少子化というのはなんらかの現在の社会のひずみというも のからあらわれているものだとすれば、そのひずみを是正することによって間接的に少 子化を防ぐことは望ましいけれども、いうまでもなく強制的にそれを対処することは望 ましくないという立場であります。  その点につきますと、地方への人口分散というのがややひっかかるわけであります。 これは、もちろん地方を住みよくしていくということであろうかと思いますが、その点 は少し注意をする必要があるかと思います。もう一つは、論点メモの3ページでありま すが、少子化への対応というときに、もちろん出生率の回復ということも大事でありま すが、それがうまくいかいないときには、少子化の影響そのものをできるだけ小さくす るということも少子化対策ではないかと思います。これはたしか宮島先生が昔、この審 議会でも言われた点だと思います。  3ページに「ただし仮にゼロ成長またはそれに近い経済成長になるとしても、安定し た社会の姿として望ましいような少子化社会を考えるべきだ」と書いてありますが、私 はここにもう一つ、経済成長だけではなくて「少子化が仮にさらに進行した場合におい ても」というようなことをつけ加える必要があるのではないか。先ほど、県民会議のご 報告の中で、地方の出生率もどんどん東京の状況に近づいているというご説明がありま したが、それが今度の新しい人口推計での低位推計の考え方であるわけでして、今の中 位推計が実現する保証はない。仮に低位推計、あるいはそれ以上ひどい状態になって も、その影響を最小限にとどめるような制度をつくっていくことが、少子化対策の重要 な柱ではないか。具体的にいえば年金制度のあり方、賦課方式か積立方式かという議論 にもつながるわけでありますが、そういう点を一つ強調したいと思います。  2番目で、今ご説明になった中で気になったのは、滅私奉公型ということが繰り返し 出てきましたが、これは何を意味するのか。つまり非常に意地悪く解釈しますと、これ は個人の意識を変えれば、あるいは企業の意識を変えれば良いじゃないかという意味に とれかねない。しかしそれだけだろうか。滅私奉公という意識の背景には、現在の固定 的な雇用関係がある。つまり特定の企業と雇用者が結びついていて、そこから離れると 非常に不利益を被る。固定的な雇用慣行のもとでは、雇用は保障されますが、その代償 として、家族をもっている人が頻繁な転勤をしたり、長時間労働があったり、男女間格 差があったりというさまざまな仕組みがある。そういう具体的な制度ということを意識 しないで、単に滅私奉公というような、あいまいな用語を使うことはかなり危険であっ て、これは今後、もう少し考えていく必要があるのではないかと思います。  3番目は、現在の制度をどう変えればいいかということにこの議論はつながらなけれ ばいけない。少子化の原因として、たとえば子離れが進まないとか、リビドーがという 問題も指摘されたわけでありま、しかしそれは政策的な対応にはなり得ないわけ で、そこをあまり強調すると、それは国民に対するお説教になってしまう。そうではな くて、そういうことは重要な原因かもしれませんが、政府としてできることで対処する のではないか。  そのときに大事なのは、現行の各省のやっている制度をどう変えるかということであ ります。人口問題審議会というのは、たしか最初のご説明では、各省庁の政策に直接提 言するということが役割であるとすれば、具体的にいえば労働省であるとか、税制であ れは大蔵省であるとか、あるいは厚生省自身の福祉政策をやっておられる原局に対して なんらかの具体的な制度改革の提言に結びつかなければ、単なる絵そらごとになってし まうということで、これはきょうの分野の議論ではないかもしれませんが、必ず具体的 な制度改革に結びつけるような提言にしなければ意味がないと思います。  最後に4番目で、今ご説明があった社会保障の給付と負担ですが、ちょっと私の理解 が足りなかったかもしれませんが、きょう示していただいた指標は、新しい人口推計の 見直しと今回の医療保険改革の結果を合わせるとこういうことになるということなので すが、なるべくどんぶり勘定ではなくて、人口推計の見直しでどうなって、医療保険改 革でどうなったという、できるだけ透明的な試算をぜひお示しいただきたいと思いま す。  以上でございます。 宮澤会長  ありがとうございました。事務局のほうで何かありますか。 辻課長  資料はまた追って整理させていただきたいと思います。 その他につきまして、私どもは審議の進行のために提出させていただきましたので、な にとぞご審議のうえ、と思っております。 清家委員  今の八代委員に関連して申しあげたいのですが、私も八代委員のおっしゃったことを サポートしたいと思います。ぜひそういう方向で進めていっていただきたい。  繰り返しになるかもしれませんが、特に2ページの少子化への対応の柱の中で一つ大 切なのは、企業とか労働生産性を上げるとか、高コスト構造という点はその通りだと思 うのですが、これは八代委員もおっしゃった点ですが、少子化への対応という観点で大 切なのは、公的な仕組みをできるだけ人口構造の変化の影響を受けないような形にして いくということだと思うのです。  きょうは木村委員もみえていますが、たとえば年金制度についていえば、付加方式と いうのは明らかに人口構造の影響を受けるわけですから、これは八田先生とか木村さん などの研究で明らかになっているわけですが、これはできるだけ積立方式に変えていく ことが具体的には大切なわけで、たとえば年金制度における給付と負担の適正化という のは、これは相変わらず付加方式のもとでの適正化という観点があると思いますが、こ のところはもうちょっと抜本的に、できるだけ年齢構成の変化の影響を受けないような 形に変えていくというところまで踏み込まないと、少子化への対応というには不十分だ と思います。 もう一つは、これはもう八代委員が指摘されたことですが、私は地域への人口分散と いうのは経済の進んでいく方向に逆行すると思うのです。 つまり産業構造が脱工業化 していくということは、工業というのは基本的に立地の自由度が高いですから、地方に 工場をつくってそいうところでものをつくっていくということが可能ですが、非製造業 のウエイトが高くなっていく、あるいは高付加価値競争をしていくということは、基本 的には都市のようなところで仕事をしていかないと競争に勝ち残っていけないという傾 向を強くもってくるわけなのです。  そういう面からいうと、産業のあり方としても地方への分散というのはなかなか難し いし、それから高齢者は地方に住めばいいという考え方が一部にあるように思います が、高齢者というのはもともと、医療サービスとか介護サービスとか、濃密なそういう サービスのニーズの高い種類の人びとですから、そういう人たちはむしろ、そういう サービスが容易に、あるいは選択肢が多く利用できるような都市部に住んでいたほうが いいわけでありまして、そういう観点からいうと地方への人口分散というのは、これか らの経済の進んでいく方向とは必ずしも整合的ではないと思います。  三つ目に、八代委員が言われたことで非常に大切だと思うのは、私もこの論点メモの 中で繰り返し出てくる「意識の変換」とか「意識を変える」というのはすごく気になる ことでして、意識を政策で変えるというのは、ひと言でいえばよけいなお世話というこ とだと思うのです。変えなければいけないのは、個人の意識が、あるいは個人の多様な 意識が実現できないような制度をいかに変えていくか。したがって、政策的にやらなけ ればいけないことは必要な制度を変えるということで、意識を変えるというのは決して 政策の仕事ではないと思います。  以上です。 袖井委員  今の続きになるかもしれませんが、地方への人口分散ということにつきまして、ちょ っと申しあげたいと思うのです。今、東京一極集中はとまっていまして、地方の中核都 市への集中が進んでいるわけです。ですから、そこら辺はもうちょっと慎重に書かない といけないのではないか。 そして特に市町村合併につきましては、合併すればいいと いうものではないので、地域の、あるいは地方の地域構造の再編ということをもうちょ っと具体的に、地域をもっと住みやすくするとか活性化とか、あるいは、これはどのく らい効果があるかわかりませんが、今はテレワークとかいろいろ新しい働き方、そうい うことも提唱されていますので、そういう地域自体を活性化するということを考えるべ きではないか。  だから、市町村合併というところまでここではいわないほうがいいのではないか。も し合併するとしても、それぞれの自治体の自主的な判断によって合併を推進すべきでは ないかなと思っております。  もう一つお聞きしたかったのは資料4の7ページのところの、お役所的な表現でよく わからなかったのですが、4)の「現行制度のままとした場合に比べ、今後、中長期的に 2割以上の給付の効率化、適正化が必要となることもあり得る」、これは何をっている のだかよくわからないので、要するに厳しくなるということなのだろうと思うのです が、もうちょっと具体的に説明していただけないでしょうか。 辻課長  資料の点につきましてご説明申しあげます。  この資料の数字のところをごらんいただきまして、2025年にA、B、C、三つのケー スで社会保障にかかる負担がいくらになるかという推計が載っています。Aは名目成長 率3%の場合でございますが、291/2 、Cで351/2 ということでございます。これは国 民負担率50%というのは、財政構造改革で正式に取り上げられ、大きな政府の課題とな っており、これを社会保障だけで論じることは難しいことでございますが、あえてある 程度議論するうえで整理いたしますと、これ以外の租税負担いくらかということでござ いますが、現時点でざっくり申しまして、社会保障にふり向けられているものを除いた 租税の負担は20%でございます。この20%というものをどう考えるかということは別途 ありますが、目安として、高齢化というものの影響がこの中にもあるかもしれません が、20というのを固定して考えるとすれば、これを足せば、厳密にいいますと491/2 な いしは551/2 、すなわち約50ないしは56%ということになる。 ただこれにつきましては、一般政府の財政赤字は含まれておりません。今回の財政構 造改革では国民負担率という場合に、一般政府の財政赤字は含んだ概念であるという整 理がされておりますので、それらを全部勘案いたしますと、たとえば成長率が低い場合 に、約56%になるわけですが、56を一般財政赤字を含めないでたとえば50にするという ようなことを考えました場合に、年金・医療が足して30%ぐらいでございますので、年 金・医療を2025年の段階で現行制度のままとするのに比べて2割ぐらい適正化ができれ ば50はそのまま。ただ、一般財政赤字の問題が別途ございますので、したがって2割以 上の適正化が必要。こういう意味で、経済成長いかんによるが、ということで、今言い ましたようなことから2割以上の適正化が必要になることもあり得るということを書い たわけでございます。  ただこれは、今後、数字がどうなることという意味が、社会保障の今後の改革につい て、国民負担率50%の関係でいえば、適正化とか効率化というときにどの程度のスケー ルで関係するのかということを、少しでも議論の素材として出す。決して2割やらなく てはいけないということをPRするとか、そのことを訴えるというのではなくて、むし ろどんな場合にはどの程度の関係があるのかということを論議していただくという意味 で、参考として書かせていただいたものでございます。それ以上に政策的な含意をもっ たものではございません。 宮澤会長  よろしゅうございましょうか。数字の点について先ほどご質問がございましたが、二 つお願いしたいと思います。今の7ページの2割以上のところに関して、国民負担率に ついては指標として適当であるかどうかという、議論がいろいろございますが、一般政 府赤字が、5ページに経済審議会構造改革推進部会の数字がございまして、潜在的国民 負担率、これは赤字を含めた場合ですね。ですから後世代に税負担を先送りするわけで すが、それをどの程度にとどめるか、それによって非常に状況が違ってくる。ですから 含めた場合はどう、含めない場合はどうという、急に含めるような格好で政府のお話が 出てまいりましたが、その辺はどの程度まで各担当機関で詰めておるのか、整合性があ るのかどうか、その辺をもう少しデータを揃える必要があると思いますし、改訂版をつ くる場合にも、厚生省としてもその辺はどういう整理をするかということが必要ではな いか。それが一つ。  もう一つは、参考資料の2に今回の試算と前回の試算の比較表がございます。先ほど 委員からご指摘がございましたように、医療改革をやった場合にどこにどう影響が出る のか、それから人口推計が変わったときに、それがどこに影響が出るのかということが 具体的にわかる必要があるということで、これは概括表というわけでしょうが、これよ りもっと詳しい表が必要なのであろうかと、八代委員、これをごらんになってどういう 感じがなさいますでしょうか。こんなことでは、どこがどうなっているかわからんとい うことなのでしょうが、もう少し資料としてこういう側面が出ないかというようなご注 文がございますでしょうか。 八代委員  それは私が先ほど申しあげたことで、この資料をつくられた人の意図は、人口推計が 変わったので将来負担が増えるだろう。しかし今回、医療保険を改革したから、ほとん ど結果的には変わりませんから安心してください、そういうような意図でつくられたと 思うのです。こちらはそれを疑うわけではありませんが、人口推計の変化だけでどれだ けになったのか、それは結局さらに出生率がさらに低下したらまたどれだけ増えるのか という資料にもなるわけです。それから、医療保険改革でどれだけ減るのか、それはさ らにどれくらい今後改革しなければいけないかということと結びつくわけですから、結 果だけではなくて、そういう作業をされた途中経過もできるだけ詳しく教えてほしい。 そのための参考になる資料を出してほしい、そういう意図であります。 辻課長   その点につきましては、先ほど申しあげました通り訂正させていただきます。なにせ 30年ぐらい先のことについて機械的な計算をしましたので、たとえば1/2 という形で 0. 1%オーダーのものはあまり細かく書くのではないとかいうような感じの資料でございま すのでこうしておりますが、いずれにしろ、私どもの試算でそれぞれがどういう要因に なっているかということは、当然それがあって出た数字でございますので、別途ご報告 をいたします。 財政赤字との関係が、私ども、今の閣議決定ベースでの構造改革については、GDP 比で3%まで財政赤字を落とすという前提で今の財政構造改革を進めるということにな り、かつ、将来についてさらにということになると思いますが、単純な今の毎年度にお ける一般財政赤字分がどのように国民負担率を論じるときに影響するのかというのは、 将来の財政赤字をどのようなプログラムで解消していくのかということに関係いたしま す。  その点については、これは別途、財政構造改革でさらに詰められていくことですの で、私どもは一刀両断に論じられないということも含めて、ここの書き方もやや腰が引 けているというか、詰まらない書き方で、現在の財政赤字、NI比で 8.8であるという ことを書いて、いずれにしろこのことを考えれば2割以上ということはいえるなと。だ けど2割以上のいくらということにつきましては、私どもが今、得ている情報では言い 切れませんので、この記述に関しましてはそこまででとどめさせていただきましたが、 財政構造改革そのものが現時点ではどのような位置づけになっているかにつきまして は、次回、ご報告申しあげたいと思います。 宮澤会長  ありがとうございました。それでは、ほかの点についてどうぞお願いいたします。 麻生委員  これを読ませていただきまして、たとえば2ページなのですが、教育の問題で、先ほ どから、政策は制度を変えて意識を変えるものではないというお考えがあったのです が、教育というのは意識を変えるということを商売にしておりまして、私、教育のほう を少しここへきてやれということで、新参でまいったのでございますが、いくつか感じ たことを述べます。  2ページの子どもの社会性の低下というのがございますが、これはちょっと、どう低 下したのかわからないですね。この辺に出てくるものは、計量的になにかつかまえられ るような指標が載っていたほうがいいのではないか。だから社会性の低下ならば、それ がもう少し一体的にイメージできるような形で書いていただきたい。  それから、これは調査のミスもあると思うのですが、いちばん文部省の調査で驚いて いるのは、子どもの急激な体力の低下です。これが社会性の低下みたいなものと関係が あると思うので、このあいだも申しましたように、たとえば地方にいくと学校がどんど ん統合されてきて、みんな子どもたちが歩いてこないのです。車に乗って親に送っても らって、そして車で帰る。だからどんどん子どもの運動能力も落ちてくる。昔は歩いて きた。逆に都会の中高一貫制の私学などへ行っている子は、電車に乗って行ったり来た りして体力がつくという、それは冗談ですが、そういう面が出てきて、そういうとらえ られるものをなるべく出していただきたい。  それから社会性の場合も、いろいろな調査などがありますので、これも少しコンセプ トをはっきりして出していただきたいと思います。  それと対応が次のページで、創造力、生きる力の育成とあるのですが、これも必ずし も社会性の育成とコレスポンドしていないのではないか。 これは中教審などでいって いるのですが、結局、少子化した社会においていちばん大事なことは、プラスになる点 は、非常に密度の濃い教育ができるということですね。今は学校へいっても、だんだん 教員と生徒の比率は変わってきまして、教員が子どもの心がつかまえられるようなサイ ズの学級というのはいっぱい出てきた。それからだんだん高学歴化しまして、高等教育 の普遍化というものも必ず実現してくる。そこで、教育によって付加価値がつく。その 場合、消費社会というのは、ある面では明るいきざしもみられるのではないか、そんな こともいっていただきたい。  つまり、厚生省と文部省はもう少し問題を詰めてやっていただきたい。 特にこのほ かにも母親の教育だとか家庭教育だとか、そういう面でも一緒に協力してやっていただ きたいと感じます。特に教育の5)が、1)、2)、3)、4)がみんなある意味では計量的につ かまえられているものなのですが、このコンセプトとそのコンセプトの対応としての6 のところを、もうちょっと文部省のサイドの方と詰めて、ちょっと書き直していただき たいという気が私はいたします。  次に、これもこのあいだ、私は参考人のときに申したのですが、未婚の母の問題なの です。未婚の母の問題はここで要因として挙がっているのですが、対応が何も書いてい ないのです。6ページ、1)少子化の要因の 3その他というのに、婚外子数の問題、これ は日本は1%を切っているのですが、この問題が挙がっているのですが、対応について は「その他許容度が低いことが」ということが書いてあるだけで、何もスタンスがな い。これは私は実態というものがはっきりつかまえられていないと思うのです。  この前も申しましたが、私は今、放送大学におりまして、社会人がいっぱい入ってく るのですが、婚外出産で育てていらっしゃる方がわりに多いのです。そういう方がたが どういう形で子どもを産んで育てていらっしゃるか、その実態があまりよくわかってい ないという感じではないか。だから、その他の対策として「社会的許容度が低いことが 少なくさせている」という1行で終わっているのですが、その辺も、どういうスタンス で望むかというのは難しいと思うのです。 こういう子どもたちが、たとえばある国みたいに50%、40%になってくると、家族制 度というのは相当揺らぐ。社会の価値とか規範というものが変わる。だからそういうも のはむしろ抑え込んだほうがいい、そういうポリシーと、そうではなくてもっといろい ろな生き方ができるほうが成熟した社会なので、子どもが産みたいときは、夫がいなく ても産めばいいではないか、いい子ができるのではないかとか、そういう面でパミッシ ブにみてみるか、その辺のポリシーを考えていく。それには実態の把握が大事でして、 それを私も少し考えているのですが、どこかデータが、人口問題研究所でもやっていら っゃると思うのですが、ワカバヤシさんなどは少しやっていらっしゃる……、その辺の 実態がほしいと思います。  3番目は、これは繰り返しになるのですが、少子化社会のデメリットもありますが、 少子化社会をカバーしていくいちばんのポイントは、私は少なくなった子どもをどう教 育していくか、その教育がうまくいかなかったら大変なことになるのですが、うまくい った場合には、ある程度、少子化社会のデメリットはカバーしていって、たとえば高等 教育が普遍化したそのことが、国民の少子化した子どもたちの半数以上が高等教育にい くわけですから、そういう人びとのいろいろな意味での生産性とか付加価値が上がって いったらどうなるのか、教育によって少子化社会の対策に少し明るい見通しが入ったら いいのではないかということを考えております。  以上です。 阿藤委員  八代委員と清家委員から、意識改革ということはあまり前面に出さないほうがいいと いうお話があったのですが、べつに反論するわけではないのですが、ある程度、理念と いうものを先に出して、それを踏まえたうえでの制度改革ということを順序としていか ないと、技術論的なことになってしまいわしないかということをやや懸念するものです から、ちょっと発言をさせてもらいます。  基本的認識はそんなに変わらないと思うのです。要するに経済社会のあり方が変わっ てきて、価値観も変わり、現在の制度がいろいろそういう変化と齟齬をきたしている。 そのことが少子化を生んでいるのではないかと。ですから制度を変えろということにな るのですが、その場合に、たとえば家族のあり方とかそういうものをとっても、今、日 本は非常に世論調査などの結果をみるとフィフティ・フィフティの感じなのですね。  たとえば夫は仕事、妻は家庭というのは、70年代には、一般世論調査では80%が賛成だ ったのです。それが80年代から変わってきて、今は大体50%です。たとえば離婚を認め るかどうか、これもフィフティ・フィフティ。大体家族や女性の社会的な役割といった ものにかかわる調査結果というものが国民世論に二分しているのですね。そういう非常 に難しい時期であるわけです。 ただその場合に、先般の夫婦同姓から夫婦別姓へという問題でも、結局、これをどち らの方向にもっていくのかということについては、未来の社会といいますか、21世紀の 社会はどうあるべきかという基本的なスタンスがありませんと、それは古きよき日本の 家族を守るという形の議論が強くなるということが、このあいだの国会でも示されたわ けです。 ある海外の例を挙げますと、ドイツなどで育児休業制度が非常に充実している。たし か、子どもの生後3年間とれるわけです。ところが、そのかわりに公的保育サービスは 3歳未満はほとんどない。これは基本的に古きよきドイツの家族を守る、母親が3歳ま では子どもを育てるという一種の価値観を制度に反映しているわけです。そのことが結 局ドイツでは、いろいろやってもあまり出生率の上昇にはね返らないということにつな がっているのではないかと私は考えているのです。  そういうことを考えますと、この審議会なりで、21世紀の社会はどうあるべきかとい うことを、どこまでコンセンサスが得られるかは別にしましても議論し、それを踏まえ たうえで制度変革を考えていきませんと、あれもありこれもありという話になってしま うことを懸念するのであります。 清家委員  今の阿藤さんのおっしゃることはその通りだと思うのですが、先ほど私が申しあげた ことに誤解があるといけないので、念のために補足しておきますが、たとえばきょうの 範囲の、先ほど宮澤先生がおっしゃったところのあとのほうにずれてしまうかもしませ んけれども……。 宮澤会長  結構ですよ。 清家委員  あとのほうに、今、阿藤委員がおっしゃった性別役割分業の話がありますね。夫は仕 事で妻は家庭、これは意識の問題だというわけですが、私は、夫は仕事で妻は家庭とい うふうに考える人がいてもいっこうにかまわないと思うのです。ただ問題は、たとえば 今の年金制度のもとで3号被保険者の制度があって、つまり夫と妻のあいだで「私は外 で稼いでくる。そのかわり君は家で働いてくれ」「私もそのほうがいいわ」、それは全 然問題ないわけですが、ところがその場合には、夫はそのコストを負担するべきだと思 うのです。専業主婦というのを家に置いておく、あるいは専業主婦は専業主婦をやって いるコストを負担すべき。ところが制度的に、たとえば年金保険料のコストは負担しな くていい、それは非常に問題なわけです。  だから、性的な役割分業をどういう形でやるかというのはそれぞれのカップルが決め ることなのだけれども、そういうある種の選択をした人たちが特に有利になるような制 度というのは非常に困る、それを言いたかったのです。  もう一つは、滅私奉公的な、先ほど八代さんが言われた働き方、それは滅私奉公的と いうのはちょっとあれかもしれませんが、自分はとにかく仕事だけに熱中したいのだ、 あるいは自分はこの会社以外は、ほかの会社に移りたくないのだというような人がいる のは、いっこうにかまわないと思うのです。  あるいは、労使のあいだで企業間の移動を妨げるような制度をつくって、そしてうち の会社は長期雇用がいいのだ、途中で辞めてもらっては困る、あるいは、私も途中で辞 めたくない、それは労使のあいだで合意が成立すれば、外からとやかくいうべきもので はないと思うのです。しかし、たとえば定年でもらう退職金の税控除額が、現在の税法 だと勤続年数が長いほど多額の控除が認められるような仕組みになっているわけです。 そうすると、これは制度が長期勤続という選択する人に有利になっている、こういうの は非常に困るということなのです。  だから、どういう家族をつくるかとか、どういう働き方をするかというのは、これは 個人が、あるいはそれぞれのパーティがというのですか、当事者がそれでいいというこ とについて、外からこうしろとか、こちらがこれからの姿だとかいうのは全くのよけい なお世話なのだけども、しかしある種の選択をする人に特に有利な外からの制度、これ はできるだけ中立的に改めなければいけないということを申しあげたかったわけです。 河野専門委員  大変よくできていると思います。まず細かいところがら申しあげますと、用語なので すが、たとえば機会費用とかそういう言葉が出ておりますが、これを実際に読まれる人 は必ずしもよくわからないので、もう少し用語をやさしくされたほうがあれではないか と思います。  それから、全体的に少子化というのは非常に悲観的である、非常にマイナスであると いうトーンで、確かにそうだと思いますが、いくらかプラスの面もあるわけで、多少プ ラス・マイナスということもあれではないかと思います。  それから将来、2020年とか25年あたりで出生率が仮に 2.1に上がったとしても、人口 というのはなかなか回復しないわけで、そうなってくると、今の人口の7割とか8割社 会というのですかね、8000万とか9000万とか、そういう社会を考えて、そこでどうやっ たらいいかということを考えることがあれかなと思います。 あとはここで思ったのは、やはり日本の社会は非常に家族の呪縛といいますか家族の コントロールが西欧社会に比べて多い。その辺が出生率の低下ということに逆に関係し ているように思いますが、その辺の観点があればよかった……、あるかとも思うのです が、直接なかったように思いました。 以上です。 木村専門委員 2ページの 2の少子化の影響への対応の柱の立て方が、もうひと工夫要るのではない のかなという印象を受けます。と申しますのは、1番の1)から5)までのものに対応する ということで、それにあまりにも縛られているのではないのかなという気がします。八 代先生とか清家先生がおっしゃったように、高齢化社会では多様化した選択を支援する ような形でできるだけ制度設計をしていくのだという視点を共通のものとして、労働力 人口の減少はこれはその通りなのですから、それに対する対応を就労促進とか労働生産 性の上昇とか、そういったものでどうするかというのが一つ立てられます。  あと、3番目の企業の高費用構造の是正というのは・が二つありますが、下のほう は、社会資本の整備というので一つまとめられるのではないのかなという気がしていま す。  貯蓄率の低下に関するものにしましても、これも個人の、たとえば老後貯蓄を支援す るのだという形で、税制あるいは社会保障、企業福祉まで変えていくというところも入 れたほうがいいのではないのかなと思います。  負担の公平の問題は、べつに世代間の問題だけではなくて、少子化社会では同じ世代 内のことも公平の確立というのは重要になってきますので、そういったことも、年金と か医療保険だけに縛られずに明記したほうがいいのではないのかという気がします。  地域構造の再編というのは、これは非常に難しい問題をはらんでいるなと思います。 確かに地方への人口分散というのは、これはなかなかどの国も政策的に今までうまくい っていないのではないかという気がしますし、対応策としてもあまりいいものはないと いう気がしています。  子どもの社会性の低下、5番目のことに関しては、6番目に創造力、生きる力の育成 とかありますが、これはちょっとうまく言えないのですが、たとえば地域構造の再編の 中にかかわるものもありますし、女性の就労促進のところでかかわるものもあって、子 どもの社会性の低下に関しては、創造力、生きる力の育成だけではくくりきれないので はないかなと思います。たとえば3世代交流を地域ではかっていくような仕掛けが少子 社会では必要だと思うのですが、それは地域構造の再編とかそういうことにもなるのか なと、これは自分で印象をもっています。  私が言いたかったことは、2番目の少子化への影響の対応のところ、改革の実行の柱 をあまり1)から5)に縛られずに、もうちょっと組み立て直すほうがいいのではないのか という気がいたしました。 岡崎委員  少子化のいちばん大きな原因が未婚化、晩婚化にあるということはしばしば言ってい るのですが、このポイントは私の専門を外れますが、晩婚化、未婚化というのは、好ん で晩婚化しているのではなしに、ほんとうは結婚したいのだけれども、いろいろな障害 があって結婚できないというふうなことをいう人口問題研究所の調査結果があるので す。そうすると、もう少しそこのところで何か対策を打つことによって、今では時代遅 れですが、昔のお見合い制度とか仲人制度とか、それのもっと近代化した方法をつくっ て、結婚したいけれど結婚相手がうまくみつからないという人をサポートするというこ とも考えるべきだと。  もう一つ、最近、ある人からもらった本で、高齢出産というのはいろいろと問題があ ると。これは私は専門家ではないからわかりませんが、晩婚化、晩産化ということが少 子化の一つの原因だとすると、それのもたらす悪い影響があるということは明らかにし てもいいのではないか。 つまり、遅く結婚するななどと言うことはちょっとおかしい ですけれども、その影響については触れておく必要があるのではないかなと私は思いま す。  全体としてこの報告は非常によくまとまっておりますが、わりと未婚化、晩婚化のほ うの説明がなかったので、そういうふうな意見を申しあげたいと思います。 山田専門委員  少子化の影響の対策と少子化の姿のところで、世代間の不公平の問題が強調されてい たと思うのですが、どうも日本では、木村先生もおっしゃいましたが、世代間不公平が 世代内、特に若者の不公平に移転しているのではないか。つまり高齢の方がお金をもっ ていても、そのお金は子どもに使われてしまう。私は親子の愛情というものを専門にし ているのですが、どうも親の愛情の強さというのは、今の時代において若者の不公平に なって、若者がやる気をなくしているのではないかという感触をもちます。  たとえば相続の問題は大きく出てきて、子どもの数がいちばん大きく効くのは相続の 場面で、子どもが1人の場合と何人もの場合だと、子どもに相続させてよい生活をさせ たいという親心というのがありますから、そして今の社会はみんな小金持ちになってし まいまして、ある調査でも、相続経験のある子ども世代とない世代とでの生活水準が非 常に違っているという調査もあります。  あと、私は学生を就職させる現場にいますので、最近、あまりこれは公にはできない のでしょうけれども、さまざまなところで「コネがないと」という話をいろいろ聞きま す。たぶん子どもの数が多くてたくさん就職していた時代には、少々のコネというのは 許容できたのだと思いますが、子どもの数が少なくなってしまって門が狭まってくる と、そういう話を非常によく耳にするようになりました。  つまり、ここに世代間の不公平というのが書かれていますが、実はそれは親の経済力 によって、子どもというか、正確には成人した子どもの不公平、格差というものに結び ついているのではないか。それが、子どもの数が少ないほうが有利だとか、あと、親の 経済力が低い若者のやる気をなくしているのではないかというような感触をもちますの で、世代間不公平だけではなくて、世代内、特に若者のあいだの不公平ということも併 せてお考えいただきたいと思います。 水越委員  負担の公平、不公平というところなのですが、これは世代間だけではなくて世代内に もあると思います。今いわれた若者のあいだ以外にも働くシングルや共働きと専業主婦 のあいだでも、公的年金や医療保険の負担では不公平がありますし、給付の負担の適正 化のところをもう少しいろいろな角度で検討すべきだと思います。 大石委員  最初にぼくは質問をちょっとしたいのですが、たとえば産業構造審議会の総合部会の 基本問題小委員会で試算をしていますね。これは、わが厚生省人口問題研究所の低位推 計を使用して、これは一つ議論として、インターテンポラリーに決まったということを 前提にしてしまってやっているわけなのでしょうね、おそらく。これは実にのんきな話 で、そんなことだと、そういう経済活動と人口との関係を全く一方的というか、非常に オーバーシンプリファイして議論していることになって、どこまで信用していいか、ほ んとうにまゆつばだという気がぼくはするので、あまり参考にならないのだろうと思う のです。  ぼくは、せっかく人口問題研究所のほうでは高位推計とか中位推計とかやっているわ けですから、多少はパラメトリックに、こういう場合、ああいう場合というようなこと をやる必要が産構審のほうではあったのだろうと。こんな数字が出てきますと、いかに ももっともらしい数字で、特にマスコミなどはこれがそのまま留保条件なしに報道され たりしますから、これはずいぶん罪つくりをしているという気がするのです。  ということの教訓は、われわれの会としては、人口とそういう経済構造、経済活動、 あるいは経済活動の規模といってもいいのですが、そういうものの相互的なかかわり合 いを、難しい話であることは間違いないのですが、できるだけ良心的に考慮に入れた議 論をすべきだろうと思います。  一つ、細かい点を言ったらきりがないので、ぼくは言いませんが、きょうの最初のご 説明を聞いていていちばん気になったのは、メモの3ページ目の3の改革を実行した場 合の少子社会の姿というところで、経済成長を取り上げているわけですが、はなはだど ういうことがわれわれの議論の基盤になっているのかさっぱりわからないわけです。  これはファイナルレポートまでに、われわれはどういう成長を前提にしてこういう議 論をするのか、あるいはどういう成長が好ましいということを前提にして今こういう議 論をしたのだ、ということをやるのか、その辺をぼやかしておくのか、好意的に読む と、ある程度の経済成長は好ましいというのがアンダートーンというかライトモチーフ というか、そんなもののような気がするのですが、その辺は、私はどうでもいいような 気がしているのですが、ほかの委員の諸君、いいのか、ということをぼくは言いたいの ですね。その辺をはっきりしないで細かなことをいってもしょうがないだろうというの が、これを読んだときの率直な疑問です。  「従来のような高い経済成長は期待しがたく」などというのは、官僚の作文では成立 するけれども、従来といっても、いつの従来なのか、いつの従来といっては日本語とし ておかしいですが、何%ぐらいの経済成長は期待しがたいということで、ずいぶんこれ はあいまいな言い方で、このまま通るのではないのだろうと思いますが、ゼロ成長が好 ましいとか、そういう意見さえもある。これは少数意見でつけて、ゼロ成長の場合には 少子化社会に対するダーテンポリティークとしての厚生省の政策としてもこういう政策 とか、そんなオルタナティブなものが出るのかどうなのか、その辺はどうなのですか。 辻課長   事務局から、論点整理をさせていただいた立場からご説明させていただきたいと思い ます。  まず資料のほうで、産構審と経済審議会の試算を入れさせていただきましたが、これ は実は低位推計というのは、厚生省の新人口推計が出る前に作業をされましたので、お そらく新人口推計の中位推計がほぼこうなるのではないかと、選択の方法がないもので すから、そのような意味で低位推計を用いた。実際問題として新人口推計は、旧人口推 計の低位推計より少し上といいますか、もう少し人口は減らない、ないしは高齢化は進 まないということで推計結果が出ましたが、ほぼこういうマクロの計算をする場合に は、新人口推計の中位に相当するものということで用いられた資料として使わせていた だいてよろしいと。また、新人口推計の中位推計でもう一度計算し直すほどの必要性は ないというのが両省のご見解ですので、出させていただいたということで、決して好ん で悲観的な計算をされたということではありません。 大石委員  ぼくは、悲観的であるとかないとかいうことではなくて、そういうコンスタントな値 だけでやる態度が非常におかしいのではないかと。だからそれはパラメトリックコンス タントにおいて、こういう場合、こういう場合というようなことをやる必要があるので はないか。これは、ある意味では人口問題研究所を大変尊重して、あそこでやることは 間違いないだろうということで、これでパラメトリックに動かす必要はないということ なのか、それだったらいいのですが、ぼくは、これが少ないからいかんとか、もっと大 きく考えなくてはいかんということではなくて、結局、どういうように経済が動いて も、2025年までは厚生省が人口問題研究所が推定したこの数値一本は変わりありませ ん、ということでやっているわけでしょう。 辻課長   はい。試算のスタンダードとして中位推計を、ひと言でいえば厚生省の中位推計を用 いるという考え方で試算をされたというふうにこの試算をみております。 大石委員 だから、その限りで非常に留保条件がありますよと、つまりこれを受け取る国民のほ うも、絶対的なものなどとはとうてい考えないで、まゆにつばをつけながら見てくださ い、ということになるわけだよね、これは。 辻課長   それは、もう少しよろしいでしょうか。 大石委員 今の言い方は少しあれかもしれないが。 辻課長   この当時、厚生省が人口推計が出ていなかったので、おそらく新しい中位推計であろ うという気持ちで低位推計を用いざるを得なかったという意味でも、低位推計だという こと。 それともう一つ、基本的な先生の問題の指摘の関係だと思うのですが、たとえば産構 審の資料では、仮に、これは一応コストが上がるとか負担が上がるということが経済の 成長に、逆にポジティブにどういう影響を及ぼすかという、私は専門ではございません が、いわゆるダイナミックモデルというのでしょうか、そういうモデルで試算されてお ると承知しております。その算式までは私どもはわかりませんが。そういうことで、現 在の……。 大石委員 それにもかかわらず、そういうようなリーパーカッションを考えても、厚生省の2025 年かなにかまでの人口にはあまり有為の、スグニヒカントな影響はありません、という 見解なのだね。 辻課長   人口についてでございましょうか。 大石委員 そうそう。 辻課長   人口については、私どもは、両省とお話しさせていただきましたが、新中位推計と旧 低位推計と比較して、わざわざ新中位推計に置き換えなくても……。 大石委員 ちょっとあなたはぼくの言っていることを、ぼくの言い方がへたなのかもしれないけ ど、こちらの推計がいいとか、こちらのほうが若干正確だという言い方でなくて、つま り一生懸命推計されたある時期までの数値が、これが議論の過程で変わらない、全くの ダーテンとして与えられているということですね、この推計は。リーパーカッションで いろいろ人口が変わったりなにか、その他いろいろな要因で、それのほうが変わってく るということはない。 辻課長   少なくとも人口との関係はそのように。 大石委員 そういうことですね。それは、ないものねだりになるとこれはあれですが、ずいぶん 問題だろうと思います。 清家委員 先生のおっしゃっているのは、人口も内生化するようなモデルのほうがいいのではな いかということですね。 大石委員 そうそう。われわれがこれだけ一生懸命少子化がどうこうという議論をして、人口を もうちょっと減るのを回避しようとかなんとかいっているわけでしょう。 清家委員 先生のおっしゃりたいポイントは、人口まで内生化したモデルのほうがいいのではな いか、そういうことですよね。 大石委員 そうそう。内生化といっても、非常に一般均衡的な議論ではなくて、リーパーカッシ ョン的なあれだけは考えないとね、ということです。 八代委員 通産省と企画庁の両方の試算に携わった者として、今、大石先生のおっしゃったのは 全くその通りだと思います。ただ、この試算自体は、人口よりもむしろ労働力が経済成 長に影響にするわけでして、ただちに今、仮に厚生省の政策が効をなして出生率が上が ったとしても、子どもが労働力になるまでには平均20年かかるわけですから、その意味 で2025年までの姿というのは、たとえこのモデルで人口が内生化されても、それほど大 きな影響はない、そういうふうに考えていいのではないか。 大石委員 ぼくはそういう議論を伺いたかったので、今のは、清家先生の言葉で言うと、人口と いう変数を内生化しても、この数字には経済成長率その他には影響がないといっていい のですよね。 八代委員 25年までのあいだではね。 大石委員 そうそう、もちろんそういうことです。 辻課長   もう少し補完的な説明を、むしろ非常に重要な論点と私ども自身も承知しております ので、ご説明させていただきますと、そのような意味での人口そのものは内生的に計算 されていないわけですが、その他の要因というのは相当因果関係がどうにかできるもの は、ダイナミックなシステムで計算をしていますが、いずれにしろ、現行のトレンドだ けでいけば、経済成長率は、資料の4ページでごらんいただきましたように2025年レベ ルまでどんどん下がっていく。その対応として、勤労者1人当たりの手取り所得がマイ ナスをしていく、このような状況を、今のまま何もしないとすれば相当楽観視できない 状況だと評価している。そして、では思い切った経済改革をしたとして、経済成長率は 2025年で大体 2.2%ぐらい。そしてそのときの勤労者1人当たりの手取り所得の伸びは 1.7%ぐらいだという推計があって、先生のおっしゃいます、私どももまさしくご審議い ただきたいということで整理させていただいたのですが、このような状況をどのように 国民生活のありようとして評価するのかというのは、成長率は従来ほど期待しがたく、 楽観視できないという姿の資料としては、このようなものを書いているわけでございま す。  私の承知している限りでは、バブルの崩壊というのでしょうか、あれでバーンと成長 率がダウンするまで、過去20年の平均をしますと、たしか実質で5%に近い4%台であ ったはずでございます。そういうことからみても、従来という意味では相当低いという のがこの言い方。  もう一つ、5ページの経企庁の試算でございますが、経企庁の試算というのは、改革 をする・しない、いろいろなケースで書いておられますが、実質GDPの成長率が、経 企庁の試算では2025年ごろ、高齢化が相当進んだころでございますが、 1.1ないしは 1. 2という成長率を示しておられる。このときの勤労者1人当たりの手取り所得の伸び率は 相当低いものと想像されますが、そのような状態をこのような論点としてあら わさせていただきました。 ただ、この点については議論のあるところだと私どもも考えておりますので、なにし ろご審議を賜りたいと思います。 清家委員 私も、大石先生がおっしゃった3ページの 3の経済成長とか、あるいは成長率とか、 要するにわれわれがここで最終的に目標にすべき政策件数を決めることは、意識の問題 とは別に、政策をきちっと整合的に行うためには大切だと思いまして、大石先生のご指 摘は非常に重要だと思います。  その際、私は何が大切かといえば、それは1人当たりの国民所得だと思うのです。つ まり人口1人当たりの国民所得、その水準がどうあるべきかというのは別として、仮に トータルのGDPとかGNPが減少しても、1人当たりのGDPとかGNPが減少しな ければいいという考え方は当然あるわけで、その際のターゲットは、国民1人当たりの ウエルフェアの水準をあらわす1人当たりGDPないしGNPということになるのでは ないかと思います。 大石委員 メモの2ページの 2の1の1)で「労働力人口の減少が貯蓄率の低下」と書いてあるで しょう。それだって、労働力人口が減少すると貯蓄率が低下するのかなとほんとうに思 うので、大変基本的だけれども、われわれがマクロ経済みたいな貯蓄率というのは人口 がアグメントになっているわけですね。それが労働力人口になってこういうあれがこう なるのかと。  それから、ある時期のエコノミカルリサーチでは、貯蓄率、あるいは裏からいって消 費率というのは、所得に関して完全にニリアだといわれたのですから、こんなのをあま り簡単に考えてはいかんのではないかという気がして、あるいは一度ちゃんと、なぜ労 働力人口が減少すると貯蓄率が低下するのだという論理の筋道を伺いたいような気がす るのです。  ぼくは、全体としてももちろんパッショナブルだと思っていますが、細かなところは ずいぶん神経を使う必要があるだろうというのが、私の偽らざる感想です。 宮澤会長  この二つを因果関係としてここに書いてあるのか、必ずしもそうでないのか、読み方 が多様になってしまうのですね。 辻課長   私どもの論点整理の書き込み方が不十分なものですから、申し訳ありません。この点 は、労働力人口が減少するからではなくて、私どもは不勉強でございますが、高齢化が 進めばいわゆるライフサイクル仮説というのがわりと用いられているということでござ いますが、貯蓄率が低下するという説があって、むしろ高齢化が進むことに伴って貯蓄 率が低下する。そのような意味で、そういう説を用いて書かせていただきました。 大石委員 ですから1)は「労働力人口の減少アンド貯蓄率の低下」ということなのですね。 辻課長   そういう意味でございます。失礼いたしました。 宮澤会長  いろいろご議論いただきましたが、そろそろ時間もまいりました。今いただいたご議 論に従って、きょうは主として 1と 2と 3をご議論いただきましたが、 2の「少子化の 影響への対応と少子社会の姿」、ここはもう少し個々の項目についてのご注意と、全体 の柱の組み方などについて工夫が必要だろう。特に全体としての共通の背景として、少 子化と多様化の筋道というようなベースも考えながら書いたらどうかということ。 特 に3ページの3につきましては、人口とゼロ成長の関係についてはもう少し慎重な書き 方が必要。われわれがベースにすべきものは、経済成長よりも、むしろ人口1人当たり の所得レベル、いわゆる生産性の向上ということが背後にありましょうけれども、そう いう点をもう少し強調した書き方のほうが適切ではないかというご意見があったように 思います。  それから4ページの 3につきましては、直接ここをめぐってのご意見はございません ようでしたが、出生率を政策的に関与すべきでないとする考え方、関与すべきとする考 え方、2)の関与すべきとする考え方の留意事項として、アの 1、 2で、一つは個人が望 む出産を妨げるというそういう要因が存在するのではないか。公共財という側面をどう 考えるか、二つ要因が挙げてあります。それからそのほか、留意事項(ウ)のところで も女性の自己決定権、妊娠、出産、あるいは個人の生き方の多様性ということ、その他 が書いてございますが、ここについては特別ご意見はございませんでしたが、何か、こ こはどうだというのがありましたら。 坂元委員  医師の立場から、ちょっとここのところはつけ加えておきたいと思います。  一つは、女性が自分のファミリーサイズであるとかそういったものを自由にコント ロールできるということは非常に大事なことなのですが、今、いちばん確実に避妊から 何からできるものの認可が、厚生省においてなぜこれだけ遅れているのかが、私は全く わかりません。北朝鮮も認めましたから、世界の文明国の中でピルを許可していないの は日本だけで、しょっちゅう恥をかいておりますが、こういったことがほんとうにコン トロールできれば、逆に私は産むと思います。  実際に現在、妊娠関係で、特にアボーションで死んでいるのは、去年の統計では20万 人おります。約20万のアボーションで死んでいるわけです。その99%は未開発国です。 アン・インダストリアル・カントリーで起こっておる。あとの1%が文明国で起こって いるのですが、そこのところはみんなピルを使っているわけです。われわれの国だけは 使っていない。 しかも、大体世界の統計でみても、アンウォンテッド・プレグランシーと称せられる ものが60%から70%あります。日本の場合はどうか。コンドームでいくのだという形で いって、実際、日本で聞いても、約半分はアンウォンテッドのプレグランシー、これは 大変なことだと思います。 やはり望まれた子どもが、しかも先ほど教育の問題もある といわれましたが、ファイトをもって仕事をしてくれるならば、ファイトのない子ども がいっぱいいてもしょうがないわけですが、そういった子どもがちゃんと育ってくる、 しかもきちっとほとんど 100%近くコントロールができるならば、安心してみんな産ん でくれると思うのです。その意味で、アンウォンテッドのプレグランシーを増やすこと は絶対よないと思います。 今度はある人は、では、それを許可したら人口が減るのではないかといいますが、毎 日新聞の統計でみますと、もしも許可されたならば、使いたいといっている人は13.6% であります。だから、そういっていますが、使ったり使わなかったりしますから、私は 少なくとも日本でならば、リプロダクティブエイジの10%ぐらいが使うにすぎないだろ うと思います。ニューヨークでいちばん使っているところで 24.何%。あと平均します と13%ぐらいですから、大体いいですね。大体どの国をみても、そういったところでき ちっとしているところはそれなりの成功をしておりますので、むしろこういった具体的 なことを中でも提案する必要がある。 それから、先ほど教育の問題、特に晩婚になったり晩産になったら困るよとか、こう いった問題は、医師の世界ではインフォームド・コンセントというのが非常にやかまし くいわれております。それだったら、国も国民に対してのインフォームド・コンセント というものをきちっとやるべきであろう。みんなその場、その場で間に合わせておると いうことを今後改めないと、この状況は少しも変わらないであろうと思います。 それから医療制度のことがここに書いてありますが、今後こういったものをどうもっ ていくか。これは私は経済のことはわかりませんからあれですが、国民のいろいろな負 担率の問題で、年金と医療があまりにも並行して上がりすぎている。これはあと、福祉 の話題がえらく少ないですね。この辺のバランスをとっていくのはどこでやるのか。医 療費を下げるということは、おそらく想像ですが、今はそういわれておりませんが、 ヨーロッパでやるような総枠制でこられる可能性があるなと私どもは思っております が、それはそれでいいのですが、たとえばドイツでやって、いかに医師がやる気を失っ ているか、これは大変なものであります。 したがって、単に数字合わせではなくて、もっと自分の健康は自分で守るという教育 をし、そして、私は医療界も薬業界もそれを全部コントロールすると、全部が泣かなけ ればしょうがない時代に入ったと思っていますので、そういったことを、先ほどの理念 として出していただける。 おそらくみんなが我慢するところはするであろう、方法が 変わってくるであろう、それを私は期待したいと思います。 そして実際に医療費をみると、1995年度でもう27兆になっていますが、これは明らか に2000年の数字がもうきてしまっている。そうなると、ここで抜本的というところで、 あまりにもあわてて、やる気を失わせるようなことだけはしてほしくないという感じが いたします。 それから、これは偶然なのですが、つい先日、コペンハーゲンへ行っていろいろな話 を聞いていたときに、税金の負担が大体50%だと。それから、年金を積み立ててなくて も、年寄りになると全部が面倒をみてくれる。だから、ほとんど貯金をしない。しかし 面倒をみてくれる。どうやってそれができるのか私はわかりまんせんが、今の政府のや り方に反対かどうか、国民投票みたいなものをやったところが、賛成だというのが出た のだそうであります。ですから、あの国は実際には工業国でない、農業国であって、や っとコンピュータあたりを普及させてカバーしているようなところですが、そういった 国で税金はとってほとんど貯蓄しないで、みんな国が面倒をみているというのはいった いどうしたらできるのか、ほんとうにそう思います。 それから、これは18になるとみんな子どもは外へ出てしまいますが、町の中心には老 年者が住んで病院にかかっております。実際、先ほど言われたように若い人は外に出て しまう。まさに先ほど出たお話の通りになっていますが、これはいったいどういうこと なのか。私は、ノルディックカントリーが進んでいるともなんとも考えたくありません が、もしそういったことがみんなにわかるように説明していただければ、大変ありがた いと思います。 宮澤会長  まだご議論があろうかと思いますか、いずれにいたしましても一つ争点になりました 大きな点は、このペーパーのつくり方で意識の面あるいは理念の面を重視すべきである ということと、制度のひずみ、制度改革のほうをもっと前面に出すべきであるという二 つのご意見がそれぞれございまして、その位置づけをどう書くかということが残された 課題かと思います。個別的な行動単位のところでのご議論では、特に一つは教育の位置 づけ方、もう少しこれはきちっとすべきである。それから地域の扱い方も慎重さを要す る。もちろん家族形態のあり方と企業のあり方、先ほど来ありました滅私奉公型企業風 土というような表現でずっと通してよいものかどうか、むしろ雇用慣行、終身雇用制度 とか長時間労働とか、そういう制度改革のほうとコンビさせながらこういう書き方をす る必要もあろうかと思います。これは、この次にさらにこの後半を中心にご議論してい ただきたいと思います。 そういうことで、事務局にはもう一度データの補完を含めてお願いをしたいと思いま す。 本日はこれで終わりまして、引き続き次回でまた皆さまのご意見を伺いたいと思いま すが、中間まとめをとりまとめるにあたりましては、みんなで議論しておりましてもな かなか収れんしないので、無理にでもこれは収れんさせる必要がございますのでしょう ね。だから起草委員をお願いをして、そして素案をつくるということにしたらどうかと 考えております。ご異論がなければ、メンバーそれぞれの代表ということで、事務局と 相談いたしまして、次回の総会にはそういうものを発足させてはと考えておりますが、 よろしゅうござましょうか……。 それでは、そういう方向で進めさせていただきたいと思います。 次回総会は、9月18日15時から開催いたしますので、よろしくお願いいたします。  本日は、ご多用のところをどうもありがとうございました。 問い合わせ先 厚生省大臣官房政策課    担 当 山内(内2250)、齋藤(内2931)    電 話 (代)03-3503-1711    (直)03-3595-2159