97/08/25 第5回公衆衛生審議会臓器移植専門委員会議事録 第5回公衆衛生審議会成人病難病対策部会 臓器移植専門委員会議事録 平成9年8月25日(月) 「望星の間」(霞が関ビル33階) 出席者  ○黒川  清  井形 昭弘  大久保 通方 大島 伸一  大塚 敏文   小柳  仁 座間 幸子  谷川 久一  野本 亀久雄 藤村 重文   町野  朔  眞鍋 禮三 森岡 恭彦  矢崎 義雄     (○:委員長 順不同・敬称略) 議事次第 1 開会 2 議題 (1)臓器の移植に関する法律施行規則(厚生省試案)について (2)「臓器の移植に関する法律」の運用に関するガイドライン(厚生省試案)につ いて (3)その他 4 閉会 ○成瀬補佐  定刻になりましたので、ただいまより、「第5回公衆衛生審議会成人病難病対策部会 臓器移植専門委員会」を開催させていただきます。  本日は、お忙しい中、ご出席いただきまして、大変ありがとうございます。  最初に、本日の委員の出欠の状況でございます。桐野先生、山谷先生、田中先生が、 都合により欠席とのご連絡をいただいております。本日は、17名の委員のうち14名 の委員が出席していただくことをご報告いたします。  では、会議の始まる前に資料等の確認をさせていただきます。  最初に、議事次第でございます。中に名簿と座席表が入っております。続きまして、 委員会の会議資料の一覧表でございます。資料1といたしまして、臓器の移植に関する 法律施行規則(厚生省試案)でございます。資料2につきましては、脳死判定等に関す る書式例でございます。資料3でございますけれども、「脳死の判定に関する作業班」 報告及び関連資料でございます。資料4、「臓器の移植に関する法律」の運用に関する ガイドライン(厚生省試案)。資料5、日本集中治療医学会から寄せられた意見でござ います。資料6、臓器の移植に関する法律附則第11条第1項に基づき制定すべき政令 について(概要)でございます。それと、参考資料といたしまして、臓器の移植に関す る法律。もう1枚あるんでございますけれども、臓器の移植に関する法律の施行につい ての申入書が1枚入っていると思います。  何か漏れておる点がありましたら、事務局のほうにお申しつけいただきたいと思いま すけれども。  それでは、黒川委員長、よろしくお願いいたします。 ○黒川委員長  では、今日もよろしくお願いいたします。  早速議題に入りたいと思いますが、今日の議題は2つありまして、例の厚生省令です ね。その案についてのご検討と、それから、前々からお話をしてありますガイドライン について、さらにその後のご議論をいただきたいということが主な点であります。  それでは、厚生省令の案でございますが、お手元の資料、これは1ですね。資料に従 って、前回までの審議に基づいていろいろな加筆修正がありますので、それについて事 務方のほうからまたご説明していただきたいというふうに進めたいと思います。よろし くお願いします。 ○玉川補佐  それでは、ご説明させていただきます。  省令については、資料の1でございますけれども、これに伴いまして記録の書式例に ついても修正を行っておりますので、あわせて資料の2についてもご参照をいただけれ ば大変有り難く存じます。  まず、省令の第一条でございます。前回のご審議のとおり、臓器移植法の対象となる 臓器といたしまして、膵臓のほかに小腸を追加することといたしました。  それから省令の第二条でございます。第1項のところでは文言の修正で、「行って も」と従来なっていたのを、「行った場合であっても」としておるところでございま す。  第二条の2項につきましては、第三条で五を追加したことに伴います変更でございま す。  省令の三条でございます。柱書きについて、まず、「法第六条第五項の規定により」 ということで、法律の委任条項との関係を明確にしております。また、「書面には事項 を記載し、記名押印又は署名しなければならないといたしておりまして、記名押印又は 署名が書面にも含まれるという、その旨を明らかにするため、文言上の訂正をしており ます。  それから、今回新たに四号から六号を規定しているところでございます。これにつき ましては、前回の御審議において、第三条の判定が的確に行われたことを証する書面と いうのが、何を証する書面であるのか非常にわかりにくいというご指摘がありましたこ とを踏まえまして、第四号から第六号としまして、判定基準に基づく検査結果等を規定 するということで規定したものでございます。  これに伴いまして、資料の2の書式例のほうでございますが、その1ページにござい ます判定の的確実施の証明書、こちらにつきましても、書式の下半分にございますよう な記載について、今回新たに入れているところでございます。  「脳死の判定を受けた者は以下のいずれにも該当しません」ということで4項目ほ ど。それから、「脳死の判定に当たっては、以下の状態を確認し、少なくとも6時間を 経過した後に再度、以下の状態を確認しました」ということで6項目。それから、「脳 死の判定に当たっては、中枢神経抑制薬、筋弛緩薬その他の薬物が判定に影響していな いこと及び収縮期血圧が90水銀柱ミリメートル以上あることを確認しました。」この ような文言を書式例の中に入れているところでございます。  省令のほうに戻りまして、第五条でございますけれども、柱書きにつきましては、第 三条と同様、委任条項及び記録に記名押印又は署名が含まれているということを明確化 しているものでございます。  それから、第五条の1項の第十号と第十一号でございますけれども、前回まで、判定 に従う意思の書面による表示関係というのをここで記載していたわけでございますけれ ども、臓器移植法におきましては、脳死判定につきまして本人の臓器提供の意思とあわ せて判定に従う意思を書面により表示している場合に限るというのが規定されているこ とから、より表現の正確化を期すということで、「臓器を提供する意思及び」という形 でここに入れております。  2項につきましては、これに合わせた改正でございます。  書式のほうでございますけれども、これに伴いまして、判定関係の書式、資料2の2 ページからのところで、4ページのところになりますが、臓器提供の意思と脳死判定に 従う意思というのを両方書いております。  また、前回、「はい」「いいえ」で、二重否定等のためわかりづらい表現ではないか というところについても、今回修正を行っているところであります。  省令のほうに戻りまして、第六条でございます。柱書きについては、三条、五条と同 様の修正でございます。  摘出の記録に関してましては、第十三号を今回新たに設けておりまして、臓器の摘出 を行う前に、法六条五項による判定を的確に行ったことを証する旨の書面の交付を受け た旨というのを新たに規定することといたしました。法律上、臓器移植法の六条6項に おきまして、臓器摘出を行う医師は、あらかじめ、この書面を受けた上でないと摘出を してはならないということになっていることから、この項目についても記載することと したものでございます。  また、この書面につきましては、摘出医に対して交付されることとなっているところ でございますけれども、摘出記録の保存とこの書面の保持者が異なる可能性があること から、摘出記録に添付すべき書面としてその写しを追加することとしております。  これに伴いまして、摘出記録、資料2の6ページからでございますけれども、若干の 修正を行っているところでございます。8ページの真ん中ぐらいに、「臓器の摘出を行 う前に脳死の判定証明書の交付を受けた」という項を新たに加えているほか、二重否定 関係の他、免疫学的検査のHBs抗原等についても修正を行っているところでありま す。  第七条につきましても、柱書きの規定を省令三条等と同じように変更しているところ であります。  省令につきましては、その他これに伴う引用条項等の修正を行っているところでござ います。  一方、書式についてでございますけれども、資料2の20ページの臓器摘出承諾書に おきまして、前回、摘出を承諾する臓器の表現について、「その他」があるのは適正で はないのではないかというご指摘がありまして、今回、角膜というのを眼球という形で 改めるとともに、その他というのを省いております。  それから、記録の閲覧請求書の書式が21ページからございますが、これにつきまし ては、記録を閲覧できる範囲が記録を閲覧請求する主体によって異なっておりますの で、それぞれ、臓器を提供した遺族が請求する場合、移植を受けた者又はその家族が請 求する場合、臓器あっせん機関が請求する場合を、書式の(1)、(2)、(3)という形で、2 1ページ、22ページ、23ページと、それぞれについて分けて作成しております。  前回からの変更点等につきましては以上でございます。 ○黒川委員長  よろしいでしょうか。どうもありがとうございました。このような取扱いをいろいろ していただいたわけですが、これについて何かご質問その他ございますでしょうか。前 回、森岡委員と矢崎委員はご欠席だったわけですが、いろいろ議論をしまして、さら に、きょうはご欠席ですが、田中委員のほうから小腸移植についてのいろいろなデータ を更に詳細に説明していただいて、一応小腸を加えたということと、それから、いろい ろな書式についても一つひとつ議論をしていただきまして、いくつかの点を直していた だいたということになっております。  何かご質問その他ございません。  よろしいでしょうか。特にほかの委員の方からございません。  またありましたら伺うことに一応しまして、ここでは、それでは先に進ませていただ きたいと思います。よろしくお願いします。ありがとうございます。  それでは、前回、前々回でしたか、ここで、脳死の判定に関する作業班ということに ついて、脳死の判定のいろいろなやり方、手順についての専門的事項について検討をお 願いしたいということを、実は、この大塚委員にお願いいたしました。  そこで、大塚委員のほうでは、これを委員会を組織いたしまして一応まとめていただ きましたので、これについて大塚委員のほうからご報告をお願いできればと思います が、よろしいでしょうか。これは資料3ですね。 ○大塚委員  今、黒川委員長からお話しございましたように、たしか8月11日の第3回の委員会 だったと思いますけれども、委員長に寄せられた意見に対する本委員会としての見解、 また、ガイドラインに盛り込む無呼吸テストの留意点の内容について、私に専門分野の 先生方を集めて検討をせいというようなご指名を受けましたので、そのご報告をさせて いただきたいと思います。  検討は、先週8月21日に、資料3の2枚目にございます先生方にお集まりをいただ いて行ったわけでございます。  その検討結果の概況をお話し申し上げますと、まず、日本呼吸疾患学会肺生理専門委 員会から寄せられた意見でございますけれども、無呼吸テストに、二酸化炭素分圧の上 昇による刺激のみではなく、低酸素刺激や薬物、特にdoxapramのことを言っておられる ようでございますけれども、薬物による刺激を加えることの必要性について、これは確 かに生理学的あるいは理論的に考えられることでございますけれども、臨床的にどの程 度の意味があるものであるかについて十分な検証はされておりません。実際、こうした 刺激を加えなければ自発呼吸の不可逆的消失の診断を誤るという証拠はないという班員 の皆様のご意見でございました。  ただし、炭酸ガスではなく低酸素刺激によって呼吸中枢が刺激されているような重症 呼吸不全の患者に対しましては無呼吸テストの実施を見合わせる旨をガイドラインで明 記することが必要であるという見解をいただいております。  次は、もうひとつ瞳孔径の問題も寄せられておりましたけれども、脳死後であって も、瞳孔径は時間的経過とともに変化することが実際ございます。脳死判定基準とし て、「瞳孔固定」を挙げることの是非について意見を求められていたわけでございます けれども、従来の竹内基準で用いられてまいりました「瞳孔固定」の意味は、刺激に対 する反射の欠如でありまして、長時間観察を行った結果としての「固定」として捉えて はいないという見解でございました。  したがって、脳死判定時において、あらゆる中枢性刺激に対する反応が欠如しておれ ば、臓器の移植に関する厚生省令に規定されている「瞳孔が固定し」という形で取り扱 うことが適切であるというご意見をいただいております。  さらにガイドラインに盛り込む無呼吸テストを実施にするにあたっての留意事項につ いては、資料にお示ししたとおりでございます。  以上でございますけれども、今、私が申し上げました検討結果につきまして、事務局 で読み上げていただけますでしょうか。よろしくお願いいたします。よろしゅうござい ますか、先生。 ○黒川委員長  はい、ありがとうございます。 ○重藤補佐  それでは、私のほうから、作業班の結論を読み上げさせていただきます。資料の3の 3枚目に、資料3−1というのがございます。  呼吸刺激薬等を用いた無呼吸テストの実施についての意見に対する考え方でございま す。 (1)論点  無呼吸テストに、二酸化炭素分圧の上昇による刺激のみでなく、低酸素刺激や薬物 (doxapram)による刺激を加えることの必要性について意見があった。 (2)基本的考え方  呼吸の化学的調節には、呼吸中枢以外に頚動脈小体化学受容体を介する抹消性機序が ある。頚動脈小体は、動脈血酸素分圧の低下、二酸化炭素分圧の上昇、doxapramなどの 化学物質で刺激され、延髄呼吸中枢のニューロン活動に影響する。動脈血酸素分圧が高 い状態においては二酸化炭素分圧の上昇による中枢性換気量の増加が抑制されたり、動 脈血酸素分圧の低下による換気応答が二酸化炭素分圧が高いことにより増強されるな ど、酸素分圧と二酸化炭素分圧との換気量に及ぼす影響の相互関係は複雑である。  脳死判定の検査として無呼吸テストを行う場合、動脈血二酸化炭素分圧を上昇させる ことに加えて、動脈血酸素分圧を低下させること及びdoxapramなどの化学物質を投与す ることの意義については、生理学的また理論的には考えられるが、臨床的にどの程度の 意義があるものであるのかについて、十分には検証されていない。  実際、このような方法と二酸化炭素分圧の上昇のみを刺激とする方法とを比較して、 低酸素刺激等を加えなければ、自発呼吸の不可逆的消失の診断を誤るという証拠はな い。  また、諸外国において行われている無呼吸テストにおいても、把握している限りにお いて、これらの手順を加えている例はない。  いわゆる竹内基準が、理論的に検討をされただけではなく、数多くの実際の臨床例を つぶさに検証した結果として策定されたことを考慮すると、低酸素刺激及びdoxapramの 投与を行わなければ、判定を誤るという臨床的な報告がなされていない現段階で、無呼 吸テストにこれらの手順を加えることは適当ではないと考えられる。  なお、医学の進歩に即して、脳死判定基準を見直していく必要性が臨床的に現れた場 合には、見直しを行っていくことは当然のことであることを付け加えたい。 (3)慢性閉塞性呼吸器疾患の取扱い  先般、「いわゆる竹内基準によって脳死と判定した患者に対して、呼吸促進剤を投与 して改めて無呼吸テストを行ったところ、ごく弱いが自発的な呼吸をしていたことを確 認した。」との報道があった。しかし、この症例は基礎疾患として慢性閉塞性呼吸器疾 患があり、こうした症例に対する脳死判定の取扱いについては、竹内基準の補遺の「無 呼吸テストを行ってはならない症例」の項に、炭酸ガスでなく低酸素刺激によって呼吸 中枢が刺激されているような慢性閉塞性呼吸器疾患のような症例では、「脳死判定をす る臨床的意義は少ないので脳死判定を差し控えるべきである。」と記載されており、本 来、脳死判定を行わない症例であったと理解される。  したがって、この報道によって、全ての症例について、呼吸促進剤の投与を行わなけ れば無呼吸テストの判定ができないとすることは適切でなく、竹内基準の補遺に記載さ れている慢性閉塞性呼吸器疾患に対する取扱いについて注意を喚起することが適当であ ると考えられる。  以上より、「『臓器の移植に関する法律』の運用に関するガイドライン」の脳死判定 についての留意点の中に、炭酸ガスでなく低酸素刺激によって呼吸中枢が刺激されてい るような重症呼吸不全の患者に対しては無呼吸テストの実施を見合わせる旨を明記する ことが求められる。  以上が第1点目の無呼吸テストに低酸素刺激や薬物を使ってはどうかということに対 する見解でございました。  次に、瞳孔固定に対する見解でございます。次のページでございます。  「瞳孔固定」の考え方 (1)論点  脳死後であっても、瞳孔径は時間的経過とともに変化することがあるため、脳死判定 基準として、「瞳孔固定」を挙げることの是非について意見があった。 (2)基本的考え方  従来の竹内基準で用いられてきた「瞳孔固定」の意味は、刺激に対する反応の欠如で あり、長時間観察を行った結果としての「固定」として捉えていない。  したがって、脳死判定時において、あらゆる中枢性刺激に対する反応が欠如していれ ば、臓器の移植に関する法律施行規則第2条第2項第2号に規定されている「瞳孔が固 定し」として取扱うことが適切であると考えられる。  以上でございます。  次の紙に、ガイドラインに盛り込むべき無呼吸テストの留意事項についての意見でご ざいます。  自発呼吸の消失の確認は、無呼吸テストによって行うこととなるが、当該テストは、 動脈血二酸化炭素分圧が適切な値まで上昇するか否かが重要な点であって、呼吸器を外 す時間経過に必ずしもとらわれるものではない点に留意すること。具体的には、血液ガ ス分析を適時行い、無呼吸テスト開始前に二酸化炭素分圧がおおよそ基準値の範囲(3 5水銀柱ミリメートル以上45水銀柱ミリメートル以下)にあることを確かめた上で、 二酸化炭素分圧が60水銀柱ミリメートル以上(80水銀柱ミリメートル以下が望まし い)の上昇があることの確認を行うこと。  無呼吸テスト中は、血圧計、心電計、パルスオキシメーターにより循環動態の把握を 行い、低血圧、不整脈等の反応が表れた場合には適切な処置を採ることとし、当該テス トを継続することについての危険性があると判断された場合には、直ちに当該テストを 中止すること。  炭酸ガスでなく低酸素刺激によって呼吸中枢が刺激されているような重症呼吸不全の 患者に対しては無呼吸テストの実施を見合わせること。  なお、臓器提供施設においては、無呼吸テストの実施に当たって、呼吸管理に習熟し た専門医師が関与するよう努めること。  以上のご回答でございます。 ○黒川委員長  どうもありがとうございました。私のところに、この専門委員会あてということです が、その更に資料3−2というところに、前回もご説明しましたが、前々回ですが、北 海道大学の川上教授と自治医科大学の石黒教授から、この2つの点についてご意見と資 料が寄せられましたので、大塚先生のほうの委員会でこれについてこのようなご回答と いいますか、十分に検討した上でこのようなご意見をいただいたということでありま す。  これについて何かご意見その他ございますでしょうか。  これは実際はかなり竹内基準の補遺その他でカバーされている分野であるということ ですね。 ○大塚委員  もうほとんどカバーされております。 ○黒川委員長  石黒先生のほうは、実は、竹内先生のほうにもお話をされて補足されたことは認めて おられますが、どういう経過で補足されたというようなことは書いてないんですがとい う話がありますが、これはこれでよろしいですかね。 ○大塚委員  よろしいんじゃないかと思います。 ○黒川委員長  何かございますか。そうしますと、これでよろしいでしょうかね。これが、一応いろ いろなご意見を外の方からいただいたことに対する一応我々の対応と、その結果をご返 事したいと思いますが、発表されたときにはそういうふうに検討をして取り入れてある ということでございます。  いかがでしょうか。もしよろしいようでしたら、一応この厚生省令についての案です が、これについては大体質疑が出尽くしたというふうに認めてもよろしいですか。資料 1の厚生省令につきまして、それに付属する書式についてもご検討をいただいたわけ で、前回、かなりこの書式についてはいろいろな議論がありましたが、それも適切に直 されているというふうに思われます。  それから、いろいろな脳死の判定についての質疑が外から言われましたけれども、そ れについても一応委員会を作りまして適切に答えられていると。これで良いだろうとい うご判断というふうに考えさせていただいてよろしいでしょうか。どうぞ、ご遠慮な く、何かありましたら。  よろしいようでしたら、それでは、これについては、この厚生省令の案につきまして は、ほぼ議論が出尽くしたということで、この専門委員会としてはこの案でよろしいと いうふうにお認めいただきたい、認めたいというふうに思いますが、いかがでしょう か。  (「異議なし」の声) ○黒川委員長  それでは、よろしいですか。どうもありがとうございました。  それでは、この施行規則について、今後の予定、取扱いその他について、事務局のほ うからお願いします。 ○貝谷室長  この専門委員会でご審議いただきました案がまとまりましたので、この試案というも のを取りまして、一応厚生省の案として正式に私どものほうから、厚生省のほうから公 衆衛生審議会のほうに近々諮問をしたいというふうに思います。  形としては、今週の29日、金曜日でございますが、公衆衛生審議会の成人病難病対 策部会が開かれますので、そのときに正式に諮問ということにさせていただいた上で審 議をしていただきまして、9月に入りまして答申をいただく。そんな予定でおります。 ○黒川委員長  どうもありがとうございました。何かご質問ございますでしょうか。  よろしければ、それでは、きょうの議事次第にあります2番目に移りたいと思いま す。「臓器の移植に関する法律」の運用に関するガイドラインというのが行政当局の案 として出ておりますので、それについて、前回もご議論いただいたところですが、これ について、またご議論に基づいていくつかの字句の修正その他がございますので、それ について、まず事務局のほうから説明していただくと。資料の4、ガイドラインでござ います。 ○重藤補佐  それでは、「臓器の移植に関する法律」の運用に関するガイドライン(厚生省試案) の資料でございます。資料の4でございます。私から、前回から変更をしました点につ きましてご説明をさせていただきます。  最初の1ページでございます。下線部がすべて変更をした点でございます。  臓器の摘出の承諾に関して法に規定する「遺族」の範囲ということで、今回、「臓器 の摘出の承諾に関して法に規定する」という修飾語を加えました。これは、法に規定す る「遺族」の範囲といってもいろいろございますので、そこの点をはっきりと、どの 「遺族」ということをはっきりとさせるために「臓器の摘出の承諾に関して」という修 飾語を加えさせていただきました。  (2)の「家族」の範囲につきましても、同様な修飾語を加えさせていただきまし た。  2ページ目でございます。それの上から3分の1ほどのところでございますけれど も、日本脳神経外科学会の専門医訓練施設(A項)ということでございますが、A項と は一体何かということがございましたので、注として、「A項とは、専門医訓練施設の うち、指導に当たる医師、症例数等において特に充実した施設」ということで、A項と いうことの説明を入れさせていただきました。  次に3ページでございます。3ページの下より中ほど過ぎのところの「差し支えない こと」とございますが、これは「何ら差し支えない」ということでございまして、前 回、「何ら」というものは不必要であるとのご意見でございましたので、「何ら」を省 きました。  続きまして、最後から3行目、下から3行目のところでございますが、「(本人が眼 球又は腎臓を提供する意思がないことを表示している場合を除く。)」とございました けれども、これは、「法律上、本人が生存中に眼球又は腎臓を移植するために提供する 意思を書面により表示していない場合においても」ということで括弧内がなかったわけ でございますが、これでは少し厳密性を欠くのではないかということがございましたの で、表示がない場合、提供する意思を表示していない場合ということであっても、提供 しないと言っている場合については、これは提供いただけませんので、そこのところを 明確にしたということでございます。  次の4ページ目でございます。上から3行目、「5の一般の脳死判定に該当するもの であり」ということでございますが、これは、この表現はなかったんでございましたけ れども、法文的に中身を少しきちっとするということで、この表現を入れさせてもらい ました。  それから、次の「差し支えなく」というところも、この前に「何ら差し支えない」と いうのがございまして、これは「何ら」という文言を外させていただきました。  次に、4ページの真ん中へん以下のところの脳死判定の方法のところでございますけ れども、先ほど大塚作業班にご検討をいただきました内容を付け加えたものでございま す。従前、瞳孔の固定という項目はなかったんでございますけれども、今回検討をして いただきましたので、その成果として、脳死判定基準の中の脳死判定の方法について特 に留意することということとして、アとして瞳孔の固定を入れさせていただきました。 内容については、先ほど申し上げましたとおりでございます。  それから、イの無呼吸テスト。前回は検討中ということでございまして、これは大塚 作業班に検討をしていただきましたので、こうした内容を入れるということにいたしま した。内容については、先ほど読み上げさせていただいたものと同様でございます。  次に5ページでございます。「簡便性や非侵襲性などの観点から」というところが真 ん中ほど、補助検査のところにございますけれども、これは「非侵襲性」ということを 加えさせていただきました。  それから、判定医のところでございますけれども、前回、掲示するというのがいささ か実際的にいかがなものかというご意見がございましたので、そこのところを、「判定 医について、あらかじめ倫理委員会等の委員会において選定を行うとともに、選定され た者の氏名、診療科目、専門医等の資格、経験年数等について、その情報の開示を求め られた場合には、提示できるようにするものとすること」ということで、提示といいま しょうか、掲示板等に張るという文面は落とさせていただきました。  それから次に、7ページでございますけれども、角膜移植につきましては、従前は、 「海外から提供された臓器(角膜を除く。)」というような表現で、角膜は除いた表現 にしておりましたけれども、やはり角膜移植はきちんとやっているということを明確に するために、「なお、角膜については、従来どおり、アイバンクを通じて角膜移植を行 うものとすること。」ということで、きちんと角膜移植も厳格にされているということ を明記をいたしました。  それから、(2)の我が国における合衆国軍隊基地からの臓器の提供についてでござ いますけれども、これは引き続き検討中ということで、今回まだお出しすることができ ませんでした。次回までには出すように努力したいというふうに考えております。  それから、次の8ページでございます。(6)の検視等のところでございますけれど も、ここについては、前回、検討中でございました。読まさせていただきます。  医師は、法第6条第2項に係る判定を行おうとする場合であって、当該判定の対象者 が確実に診断された内因性疾患により脳死状態にあることが明らかである者以外の者で あるときは、速やかに、その旨を所轄警察署長に連絡すること。  医師は、脳死した者の身体について刑事訴訟法第229条第1項の検視その他の犯罪 捜査に関する手続が行われるときは、捜査機関に対し、必要な協力をするものとするこ と。  医師は、当該手続が行われる場合には、その手続が終了した旨の連絡を捜査機関から 受けた後でなければ、臓器を摘出してはならないこと。  以上でございます。 ○黒川委員長  どうもありがとうございました。これの設問についていろいろご意見をいただきたい と思います。前回ご欠席の先生方には、一応読んではいただいているんじゃないかと思 いますが、このようにいろいろな論点、議論に基づいて直していただいたということで あります。何かございません。きょうは全くご発言がない。  その前に、それでは、もうちょっと時間をかけてみたいと思いますので、このガイド ラインに関して、実は集中治療学会から私あてに、資料5というところでありますが、 資料5にあるように意見書が寄せられております。その内容について事務局から説明を お願いして、また、このガイドラインについての、もう一回繰り返しになる部分があり ますので、それについてちょっといきましょう。  では、事務局のほうからお願いします。 ○重藤補佐  それでは、読み上げさせていただきます。   厚生省臓器移植専門委員会   委員長 黒川  清 先生           御侍史                           日本集中治療医学会                           会長 窪田達也 拝啓  盛夏の候、先生には益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。  今般、日本集中治療医学会は臓器移植法に関し、平成9年8月15日付で厚生大臣小 泉純一郎宛に「要望書」および「提言書」を提出いたしました。 ここにそのコピーを同封させていただきます。  また、失礼を省みず、御無礼のことと重々承知の上、下記の要望事項を書かせていた だきました。  要望書の要点は、下記の点であります。(1)無呼吸テストは脳死判定の最終テストであ り、安全に正確に行う必要があります。呼吸生理学・呼吸管理学に精通した集中治療専 門医は、この無呼吸テストを担当するのに適任であると考えます。 (2)集中治療専門医が常勤する専門医研修施設は、全国に151施設(大部分は大学附属 病院と重複します)あり、脳死判定施設に正式に加えていただきたいと考えておりま す。  次に、8月18日に審議された「臓器の移植に関する法律」の運用に関するガイドラ イン(厚生省試案)について、二三ご検討下さいますようお願いいたします。 (1)臓器提供施設  日本集中治療医学会が認定する専門医研修施設も高度医療を行っており、多数の脳死 者を扱っております。 (2)臓器移植コーディネーターの派遣の時期  将来はともかく、現時点では、法に規定する脳死判定終了後に臓器移植コーディネー ターが派遣されるべきではないでしょうか。  法に規定する脳死判定も、患者と医師の信頼関係の上にあり、治療の延長線上にある 診断の一つと考えます。厚生省試案では、脳死判定即、臓器移植という感じを受けま す。勿論、同意は得ていることとはいえ、移植のための脳死判定という感じが強くいた します。これでは脳死判定の公明正大さが疑われ、国民の信頼が得られないのではない でしょうか。 (3)脳死判定の密室性の排除と、信頼性の確保  患者家族が脳死判定結果にいささかの疑念も持つことのないよう、患者家族が希望す る場合は、脳死判定の現場に立ち会うことが出来るとすべきではないでしょうか。臨床 の現場では、家族から「本当に呼吸はないのですか」という素朴な疑問が繰り返し聞か れることがあります。  脳死判定の透明性の確保は、和田移植以来の疑念を完全に払拭する必要があります。 (4)脳死判定の実施は、その専門領域別に明記すべきではないでしょうか。  (a)深昏睡、脳幹反射の消失、脳波の平坦化の確認      神経内科専門医/脳外科専門医/救急指導医  (b)無呼吸テストの確認      集中治療専門医/麻酔指導医  ご多忙の中、ご専門の先生に稚拙な要望書を提出しましたこと、平にお許し下さいま すようお願いいたします。  という内容でございます。 ○黒川委員長  あと、小泉厚生大臣に出した同様の内容の要望書と、それから、これを実際に提言と してまとめて、やはり小泉厚生大臣への提言ですね。それがその次の5ページ、6ペー ジ、7ページというところがそこのところを書いているわけですが。それから8ペー ジ、9ページ、10ページ、11ページに、この先生、集中治療医学会で言っているそ こでの施設ですね。指定している施設のリストがある。大部分は確かに大学病院が多い わけですが、そういう資料をいただきました。  さて、そこで、これを一度にするのは大変ですから、ちょっとご意見を伺いたいので すが、まず、意見書の1の臓器の提供施設にということで、この1ページに戻りまし て、集中治療医学会が認定する専門医研修施設も高度医療を行っており、多数の脳死者 を扱っているということを書いておられますが、これについていかがかということであ ります。  そこで、これは大塚先生のほうでもしていただいたんですが、実は、このガイドライ ンの2ページ目に入ったところですね。1ページ目の一番下の3の臓器提供施設に関す る事項ということがありますが、そこのところの1、2、3という要件がありまして、 このガイドラインでは3に書いてあるように、大学附属病院、日本救急医学会の指導医 指定施設、それから日本脳神経外科学会の専門医訓練施設ということでありますし、さ らに救命救急センターとして認定された施設というふうに4つのカテゴリーが書いてあ ります。そこに限られているわけですが、これについていかがかということでありま す。  さらに、これで大部分のほうは実はだぶってオーバーラップしていると思うんです が、さらに集中治療医学会の専門医研修施設を救命救急センターのその下に5つ目のカ テゴリーとして入れるかということになりますが、これは、最初の数例が出るまでは現 在のまま続けたらどうかと私は感じるんですが、先生方のほうからご意見ありました ら、いただきたいと思います。 ○大塚委員  これは、ご覧になっていただきますとわかりますように、ご本人も言っておられます けれども、大学の病院とほぼだぶっておるんです。ですから、あえてこれを入れなくて も、大学附属病院という中で包括されてしまうんではないかなというふうに私は思って おります。ですから、入れなくても私はよろしいのではないかなというふうに思いま す。 ○黒川委員長  実質的には、おそらく最初のドナー情報が出る場合、実際の摘出まで至るかどうかと いうところに時間がかかるかもしれませんが、少なくとも最初の数例に関しては、ほと んど問題ないだろうということで、だぶっていますね。よろしいでしょうか。今のまま では、特にこれを変えるという必要も認めなくていいのではないかというふうに思って 私も思うんですが、よろしいですか。  一応それでは、そのようなことでさせていただきましょう。  それから2番目ですね。このご要望の第2番目。臓器移植コーディネーターの派遣の 時期ということがありますが、これについてはいかがですか。これは実際コーディネー ターをしておられる座間委員のほうから聞いてもらったほうがいいかもしれませんです が、いかがでしょうか。脳死判定終了後に臓器移植コーディネーターを呼ぶと。 ○座間委員  ご家族との接触を持つ時点で既に脳死判定が2回済んでいる状況を指しているわけで すね、この場合。そうしますと、この法律の流れでいきますと、その後またご家族の了 解を得た上で、再度2回の脳死判定を行わなければいけないというような状況が出てく るのではないかと思うんです。そうしますと、やはり救急の現場の先生方にとっては非 常に大きな負担になるんではないかなというふうに感じるんですが、そのへんはどうな んでしょうか。 ○黒川委員長  実際、ガイドラインでも。いかがでしょうか、ほかの委員。どうぞ、大島委員。 ○大島委員  法案の中で2つの死を規定したというのは、私の理解では、いわゆる臨床的に脳死、 臨床的に脳死という、ちょっとその表現も非常に難しいんですけれども、臨床的な脳死 と社会的な脳死、法案上の脳死と、どういう表現が適切かわかりませんけれども、臨床 的な脳死というものが治療の流れの中で行われるということは、これは従来どおりやら ざるを得ないと。それと脳死というものを法案で認めたと。これは臓器提供を前提とし ている。それを作らざるを得なかった、あるいは作らざるを得なかった背景というの は、臨床的な脳死というふうに判定されてから、家族、あるいは本人が生前にそういう ふうに希望されていた場合もあるかもわかりませんけれども、治療をそのまま、脳死状 態のまま治療を継続するのか、あるいはレスピレーターをオフするのか、それからもう 一つは、臓器提供という道をとるのか。この3つのオプションの中で、治療を継続した いという人を切ってはならないというのが一番大きな趣旨であるというふうに私は考え ているんですけれども。  そのことから考えれば、最初に臨床的に脳死と判断された時点でコーディネーターを 呼んでということに、それで意思を確認をするという作業があっても、何ら損をすると いうのか、害あるいは損失を受ける人はどこにもないというふうに私は思います。  それからもう一つは、コーディネーターの役割、それから救命救急医あるいは最終的 に提供側に立つ脳死判定をする医師の役割という問題については、これも非常に大きな 議論があったことだというふうに私は理解しているんですけれども、提供側の医者とい うのは、意思を確認するのは具合が悪いと、妥当ではないという議論がずっとありまし て、そういう意味ではコーディネーターが、コーディネーターというのは公平性、公正 性の移植医療の中における象徴というのか、担保のような形でありますので、どの時点 でいわゆる公平性を担保する象徴がコンタクトするのかというのは、これは非常に重要 な問題でもありますけれども、その公平性の担保のできる方が、多少早いとか遅いとか という言い方はあまり適切ではないかもわかりませんけれども、そこで接触するという ことは、これはもう、コーディネーターの役割そのものでありまして、決して具合の悪 いことではないというふうに考えております。  それから3つ目として、私は、ちょっと今のお話を聞いていて思ったんですけれど も、心臓、肝臓の場合と腎臓の場合と、そうすると、腎臓の場合には最初のときでよく て、心・肝の場合には2度の脳死判定を行ってからやるのかというような、これは現実 的な現場の問題から考えると非常に大きな混乱を起こす可能性があると思います。  そういったようなことを考えますと、現実的には、座間委員がおっしゃられましたよ うに、最初の脳死判定という時点でコーディネーターが接触するということは決してお かしなことではないというふうに。私も腎臓ですけれども移植医の片割れなんで、移植 医の片割れがこういうことを言うと、また、自分たちに都合のいいことをというふうに 解釈されるかもわかりませんけれども、そんなふうに考えます。 ○黒川委員長  そのほかのご意見。どうぞ、大久保委員。 ○大久保委員  その部分と、後でちょっと出てくるから、後でちょっとお話をしようかなと思ってい たのは、主治医が提供者の意思を確認をするということで、ガイドラインでいいますと 4番の4で、主治医等が臨床的に脳死と判断した場合という項のところなんですけれど も、その中で、国会議員の方々から何か、ドナーカード所持の有無について確認を行え ば足りるというような、これは後でお話が出るのではないかということで、それまで待 とうかなと思ったんですけれども、その件とリンクするんで、ちょっとお話を私はした いなと思っているんですけれども。  この前もちょっと、前回でもお話をしたんですが、主治医の義務として、臨床的に脳 死になっただろうと、まだ脳死判定はせずに脳死になっただろうと判断した場合、家族 の脳死についての理解の状況を踏まえて、臓器提供に関しては本人が何らかの意思表示 を行っていたかについて把握するよう努めること。家族等から、その意思の存在が告げ られた場合、又はその意思の存在の可能性が考えられた場合には、主治医は、臓器提供 の機会があること、及び承諾に関する手続に際しては主治医以外の者による説明がある ことを、口頭又は書面によって告げることと書いてありましたので。  実はだから、この場合も、確かに脳死の段階で、脳死で心臓とか肝臓、臓器を提供す るのであれば、これもいいのかなという考えはあるんですけれども、実際にじゃあ、心 停止後の腎臓の提供に関しては、またちょっと違う、この前もいいましたが違うんじゃ ないかと。  だから、もう少しコーディネーターというものを積極的に使っていただいて、いわゆ る臨床的に脳死と判断した場合は、主治医は臓器提供の機会があるということ、それは いろんな意味ですね。脳死の段階でもあるし、心停止後であっても臓器は提供できるの で、それは本人の意思が明確にわかっている場合でなくても心停止後の場合は腎臓もし くは眼球が提供できるわけですから、そういったことも踏まえて、そういった説明自体 をコーディネーターのほうに委ねたほうがいいのではないかと。  ですから、まず臓器提供の機会があるということを、まず主治医が家族に話をする と。それで家族が話を聞きたいといえば初めてコーディネーターが来る。その段階で、 臓器提供に関して本人の意思がはっきりしている書面があるのであれば、当然脳死判定 というほうに、提供の意思もあり家族も反対しないのであれば脳死判定というほうに移 行するであろうし、もしくは、そういうものがなくて、家族が、心停止後であって腎臓 もしくは眼球を提供したいというのであれば、そちらのほうに行くであろうから、ある 程度この事項をもう少し柔軟に書き換えたほうが私はいいのではないかと思うんです が。その時点も考えて、もう少しコーディネーターの来る時間、ある意味では、これよ り反対に、もっと早くコーディネーターというのが出てくるべきだと思うんです。 ○黒川委員長  今の大久保委員のことは、このガイドラインの2ページ目の4のところをもうちょっ と書き直したほうがいいということですか。 ○大久保委員  はい。 ○黒川委員長  そのほかに。座間委員の言ったように、実際は今の腎臓の移植のネットワークをやっ ていてもそうだし、将来的にこれが法制化されたときに、実際にどういうシークエンス で物が流れるかということを考えると、やはりこのガイドラインに書いてあるように、 臨床的に脳死の可能性が非常に高いような場合には、脳死についての理解の状況等を踏 まえて、臓器提供に関して本人が何らかの意思表示を行っていたかというような話を聞 くというのはいいと思いますし、家族から多分そんなことをしていたようですよと。そ れがドナーカードなのか遺書なのか、いろんな格好があると思うんですが、そのような 可能性があるときには臓器提供の機会等があるという話を、家族は非常に心も動揺して いますし、大変だとは思いますが、そのへんを、非常につらいけれどもそういう話を切 り出していくという話があるんじゃないかなと思いますが。  もちろん、救急のお医者さんにしても、実際そういう現場にそのご本人が立ち会うと いう可能性は非常に少ないというか、多いかもしれませんが、なかなか難しい状況で、 腎臓の移植ネットワークをやっていても、そういう可能性のある人の情報が出たとき は、やはりコーディネーターはもうそれが仕事ですから、コーディネーターがやってい るほうが確かにいろんなことを知っていて、家族とのそういう説明や何かについても、 その手続に際しては主治医以外の者、臓器移植ネットワーク等のコーディネーターが主 だと思いますが、による説明がありますがという話をやって、コーディネーターがいろ いろ説明をすると。それで納得したら初めて脳死の判定というプロセスに入るんじゃな いかなというふうに思いますが。それは厚生省のガイドラインはそういう趣旨だと思い ますが、もしそうでないと、お医者さんのほうで2回脳死の判定をしてしまって、それ からコーディネーターを呼んで、また説明があっていろんなことがあると、もしかした ら4回脳死判定をしなくちゃならないということは確かにあるかもしれない。  文章はともかく、実際の自然の流れからいうと多分、可能性があるときには、もう コーディネーターがかなり早い時期には行って、患者さんの家族、いろんなところでい ろんな面のサポートをするというのは非常に大事なんじゃないかと私は思うんですが。 そういうプロセスまでいちいち文章に書くというのが、こういうのは適切なのか、それ はむしろ医療の現場としてはそのほうが常識だと思いますけれども。実際、このガイド ラインはそういう趣旨で書かれていると思うんですけれどもね。  どうでしょうか。どうぞ、小柳委員。 ○小柳委員  6月16日以降に、私どものワーキングでドナー作業部会というのがございまして、 私どもというのは日本移植学会ですが。移植学会のワーキングは解散したわけではござ いませんで、必要なことはやっておりますが。  ドナー作業部会の第1回をやりましたときに、救命救急の先生を4人お呼びして、そ れから関東のブロックセンターのコーディネーターも参加して、いつコーディネーター が登場するかという討論をしたんですね。そのときに、非常にアクティビティの高い私 立医科大学の救命救急の先生がお2人とも、脳死判定が終了してから登場してくれとい うふうにおっしゃったんですね。それは議事録に残っておりまして、それは大変な隘路 になるんじゃないかと私も感じておりました。  今のお話そのものでありまして、ここのところは文章にも書けませんし何もできない と思いますけれども、これからの事態でコーディネーターが登場するタイミングがいつ になるかということが非常に流動的で、それが、黒川委員長がおっしゃったように、早 めにコーディネーションが始められるというようなタイミングに登場できるとよろしい んですが、現場の救命救急の先生がそうおっしゃるとしますと、実際には難しいことに なるかと思っておりまして。まだ1回しか開いておりませんので。ですが、ガードは固 いなという印象はございました。  おそらく、救命救急の臨床の現場と脳死判定の現場というのは、おそらくそういう雰 囲気で、コーディネーターが登場しにくいような雰囲気なんではないかというふうに思 いますけれども、そこは、こういうところで討論できることなのか、それとも、文字に はできないことでもあるかと思いますけれども。 ○黒川委員長  おそらくこれは、法令化されて省令が出ると、多分ネットワークがやる仕事じゃない かと私は思うんですが。  大塚先生、どうですかね。やっぱりそうかな。救急の現場では、今、これに書いてあ るような臓器提供の意思があって家族も承諾した上で行う脳死判定のことを言っている わけではなくて、脳死判定の予備的な何かをすると思うんですよ。無呼吸とかそういう ことはやらなくてもですね。どうもやっぱりこれは、見ただけの感じで言っているわけ じゃなくて、簡単な侵襲のないテストは一応やってみて、やっぱりこれはかなりの確率 で脳死だと。正式にやるわけではないんだけれどもかなり、というところから呼び始め るんじゃないかという気はしますけれどもね。 ○大塚委員  臨床的に脳死であるかどうかということは、我々しょっちゅう脳死の患者をみている 者にとってはわかる、これはもう脳死だと。で、検査をしていきますと、当然のことな がらやっぱり脳死だということになるわけで、ここに書いてございますように、臨床的 に脳死と判断した場合というのは、そんなに難しいことでは実はないんです。  ですから私は、今、小柳委員がおっしゃった救急の先生方とちょっと考え方が違うん ですけれども、これを判定するときには患者自身も承諾をしておるし、家族も承諾して いるという状況で、しかも提供を前提として脳死を判定をしていくわけですから、私 は、もうこの段階でコーディネーターの人が入ってきてくださったほうが事はやりやす いと思うんですがね。2回目もやってからということでは、ちょっとタイミングが遅い のかなという実は感じは持っているんですが、一番問題は、救急医が自ら、コーディ ネーターの来る前、ある程度臓器を提供してくれということを言い出さざるを得ないん ですね、これは現実問題として。 ○黒川委員長  まあ、そうでしょうね。 ○大塚委員  今度の法律は特にそうなんですけれども、臨床的に脳死と判断できた段階で、これか ら検査をしますけれども、もし脳死ということになりましたら臓器を提供してください ということを言わざるを得ないわけですね。 ○黒川委員長  ということは、臓器を提供していただく意思があるのでしょうかという家族の承諾を 得るわけですよね。 ○大塚委員  そうです。家族は「いいですよ」とおっしゃるし、ドナーカードも持っておられると いうことになれば、当然もう提供するということは大前提になるわけでございますの で。 ○黒川委員長  しかも、その判定に従うという条件がありますね。 ○大塚委員  そうです。ですから、コーディネーターはその段階で、もう既に、少なくとも1回目 の脳死判定で脳死というふうに診断された段階で介入されたほうが事は進みやすいと私 は思うんですけれども、個人的には。もっとも、救急医学会の中でも私のような考え方 を持っているのは少数派でございまして、ほとんどの方が、なるべく避けて通りたいと いう感じを持っておられるので、そういうようなことになるのかもしれませんけれど も、ちょっと私の考えと小柳委員のおっしゃった救急医との考えは少しズレがあるよう に思います。 ○黒川委員長  今、避けて通りたいと大部分の救急の人は思っているというのは、脳死による臓器提 供に関わることを避けて通りたいという意味ですか。あるいは、コーディネーターがい るところでやるのを避けて通りたいんですか。 ○大塚委員  いいえ、そうじゃございません。大部分の、8,000人メンバーがおりますけれど も、その8割ぐらいまでは、臓器移植という医療については皆さん賛成でございます。 大変結構だと。だけど、我々救急医をその場に引きずり込まないでくれというのが本心 だと私は思っています。 ○黒川委員長  どうぞ、大島委員。 ○大島委員  そうすると、大塚先生、小柳先生の会議のときに救急医が多く言われたというのは、 いま出た法案の解釈をそういうふうに解釈をされて、その解釈でいくと、下手をすると 訴訟や何かに巻き込まれる可能性があるのではないかということで発言をされたという 可能性については。今、大塚先生が言われたような考え方がきちんと浸透をして、そう いった考え方でいこうじゃないかというふうになったら、その先生方の考え方というの は、そういう保証が得られるんだったら、それはそれでいいじゃないかということにな るというようなお話ですか。 ○大塚委員  さて、そのへんのことに関しましては、私、ここではっきりと「そうなるであろう」 とか「そうならない」という、どちらも返答できかねるんですが、おそらく救急医の大 部分は、提供をして、しかも訴えられるのでは我々は全く何なんだ、ということではな いかなと私は思っております。  それは、かく申し上げる私も、提供をする、その結果訴えられる、殺人罪なのか何か 知りませんけれども、そういうことを、最終的には不起訴になることはわかっておりま すけれども、それまでが非常に煩わしいですね。本来の医療がかなり妨げられる可能性 がありますから、できるならば避けて通りたいなというのが一般の救急医の考え方では ないかと私は思っています。 ○黒川委員長  これの集中治療医学会のこの2というところを見てみると、私が間違っているのかも しれませんが、現時点では法に規定する脳死判定終了ですね。脳死判定、法に規定する 脳死判定終了後に臓器コーディネーターが派遣されるべきではないか。これは、脳死判 定終了後というのは、1回目の話をしているのか、2回ともやっちゃった後の話をして いるのか、それはちょっとクリアではないんですが、多分、脳死ということからいう と、2度目もして死んだということを言っているのかなという気もしないでもないです が。  さて、法に規定する脳死判定も、患者と医師の信頼関係の上にあり、治療の延長線上 にある診断の一つと考えると。厚生省試案では、脳死判定即、臓器移植という感じを受 けますと。勿論、同意は得ていることとはいえ、移植のための脳死判定という感じが強 くいたしますと。これでは脳死判定の公明正大さが疑われ、国民の信頼が得られないの ではないかといいますが、この厚生省のガイドラインは、あくまでも本人が脳死になっ た場合は移植をしてもいいよと。家族も同意をしているんだと。 ○大塚委員  これは、臓器移植のための脳死判定だと私は思っていますよ。 ○黒川委員長  ですよね。そのガイドラインを作っているわけだから。 ○大塚委員  当然これはもう、臓器移植を前提とした脳死判定というふうに私は理解しておりま す。 ○黒川委員長  そうですよね。そのほかの脳死判定というのは、あり得るわけですよね。例えば、腎 臓のような心停止でやるような移植を前提として一応脳死判定をしてみるというのもあ るし、通常の医療行為の中で脳死判定をするという場合もあるわけで、このガイドライ ンはあくまでも移植のための条件が揃っているときに行われる脳死判定をやっているわ けですから、ちょっと誤解しているんじゃないかなという気がしますよね。  そうすると、誤解しているのであれば、これはガイドラインはこのままでいいのでは ないかという気がしますが。だから、あくまでも移植のためじゃない脳死判定というの は通常行われるわけですから、それについて規定しているわけではないので。どうです かね。座間委員、まだありますか。どうぞ。コーディネーターをいつ派遣していただく かというネットワークへの連絡の時期。 ○座間委員  コーディネーターが介入する時期というのは、できるだけ早いほうが私たちとしても 動く中で非常にやりやすいということは事実だと思います。ただ、ある意味では、今の 腎臓の提供のご協力をいただくときにお話しする場合、可能性がないということ、脳死 判定が済んでいて可能性がないということを前提に、ご家族にこういう方法があるとい うことをお話しする場合が多いわけです。 ○黒川委員長  もう一回言って。 ○座間委員  2回の脳死判定が、もう既に済んだ状態で、ご家族に可能性がない。 ○黒川委員長  何の可能性がないんですか。 ○座間委員  生に対しての可能性ですね。ですから、その時点で臓器提供という方法があることを お話しして、ご家族にはご判断をいただくというような形で今まではやっていたのが大 半だと思います。もちろん、ご家族から申し出があった場合はそれの限りではありませ んけれど、こちらからお話をする場合は、そういうパターンでやっていたことが多いと 思います。ですけれど、今回はこの法律でもって臓器提供の意思確認ということが脳死 判定の前に主治医によって行われるのであれば、そこで臓器提供に対しての意思がはっ きりするわけですから、脳死判定前にご家族に接触を持つことができるようになるので はないかというふうに考えているんですが。 ○黒川委員長  遺族にしては、やっぱりコーディネーターと言われているニュートラルな人のご意見 を聞いたほうが、お医者さんも忙しくてわさわさしているのに、話はしてきたんだけれ どいろいろ聞けないということがあるわけで、私もネットワークをやっていて一番感じ るのは、やはりコーディネーターがなるべく早く行って、それがうまくいくいかないは 全然別として、家族側に立っていろいろ説明する人がいたほうが本当はいいんじゃない かとは思うんですが、何かご意見。矢崎委員、どうぞ。 ○矢崎委員  窪田先生がちょっと誤解されている可能性はないんでしょうか。 ○黒川委員長  そうですね。あると思います。 ○矢崎委員  法に規定する脳死というものはどういうことかということを翻って考えれば、これは やはり移植を前提とした脳死判定ですので、その前にはやはりそういうプロセスが当然 起こってないわけですので、もしかすると、先ほど小柳先生の言われた集中治療の先生 の考えと、またちょっと違った、法に規定する脳死判定ということをちょっと誤解され ている可能性があるんではないかと思うので、もし誤解があれば、それをきちっと説明 されないと、誤解の上での議論だとなかなか決着つかないんじゃないかなと思いますの で。 ○黒川委員長  ありがとうございます。私も、この文章に、窪田先生の文章はそうだと思いますし、 このガイドラインはあくまでも移植のための脳死判定のことを言っているわけなので、 ちょっと違うなと思いますが、ついでにガイドラインの2ページの4のところが、いつ コーディネーターが実際の現場に行くかという話は、ここからどう読み取れるかという 議論にまでちょっと発展しているのでご意見を伺っているわけですが。  実際は何も書いてませんが、移植のネットワークができて、それがかなり実際に対応 はするようになると思うので、ガイドラインあるいはこういうことで書かなくても、実 際は、なるべく可能性があるときは早いうちから、おそらく行っていたほうが、家族の ためにも非常にいいんじゃないかというふうに思いますが。この2ページの4のところ は、そのように読めるんじゃないかというふうに思います。  この窪田先生の話については、このガイドラインのとおりということで、ちょっと誤 解があるというご返事をさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。  それでは、3の、脳死判定の密室性の排除と、信頼性の確保についてということもあ るんですが、これはいかがでしょうか。患者の家族が希望して、脳死判定の現場に立ち 会いたいというのは当然のことだと思いますので、それを別にしちゃいけないよなんて 言っているわけではないと思いますし。これは何も書いてないんですが、どうでしょう か。それはむしろガイドラインに書くような問題ではなくて、お医者さんとして当たり 前の話じゃないかなというふうに思いますけれども。 ○井形委員  普通やっておるんじゃないですかね。 ○黒川委員長  そうでしょうね。と思いますが、何かコメントございます。 ○井形委員  これは特にやってはいけないという今までの決めがあるわけではありませんし、私ど もはやっぱり見せていますからね。別にこれは特にガイドラインに書かなくてもいい。 ○黒川委員長  そうですね。脳死判定を今からするから、みんな家族の人に出てくださいなんて、あ まり聞いたことないですね。  これはよろしいですかね。大塚先生のほうから何かコメント。 ○大塚委員  これは家族が希望するならば当然立ち会っていただいて結構だと思います。 ○黒川委員長  そうですよね。何かこれで問題があるかな。そうですねなんてみんな思っているけれ ど、そうじゃない、とんでもない人がいるのかしら。 ○大塚委員  ただ、こういうことだと思うんですよ。私のところもそうなんですけれども、この窪 田先生がやっておられる集中というICUというところは、家族を入れさせてないんで すね。1日のうちに一定時間、例えば3時から4時の1時間とか、そういうような形で しか面会させてないんですよ。ですから、全く家族のいないところで医療をやっておる ものですから、当然のことながら脳死判定も家族のいないところでやられてしまう可能 性があるわけなんです。ですから、それではまずいよということをおっしゃっておられ るんじゃないかなというふうに私は思うんですけれども。 ○黒川委員長  そうすると、このガイドラインには、確かにそういうことをわざわざ書いてはいない んですが、家族に十分にインフォームして、家族の立ち会いの希望があるときはそのよ うにしなさいとか、そういう話は、の配慮をするとか、何かそのへんをガイドラインに 一言書いていただいたほうがいいかなと思うんですけれども。 ○重藤補佐  受けとめまして、それなりの趣旨を盛り込むようにさせていただきます。 ○黒川委員長  わかりました。確かに普通の救急と、またICUというのは、集中治療、ちょっと違 うかもしれませんね、先生のおっしゃるとおり現場はね。わかりました。では、そのよ うにさせていただきます。  それから、脳死判定の実施、専門領域別に別々であるという。ですが、これはどうで すか。 ○大塚委員  これは、これをやりますとなかなか脳死の判定が進んでいかない。あるところまでは 何科の先生、あるところは何科の先生ということをやりますと、これはもう、全く全部 フルに脳死判定ができなくなってしまう可能性があるんですね。ですから、これはちょ っと、私から言わせていただきますと、論外ではないかなというふうに思います。 ○黒川委員長  実際、脳死を判定する施設では、どういう人が判定に関わるか、どういう資格がある かということをちゃんと、提出を求められたときにきちんと整理しておきなさいという のがありますから、そのように全く知識も何もなくてやるわけもないと思いますが。し かも複数の先生がやるわけですので、ちょっと実際的ではないと思いますね。  では、そのようなことでよろしいでしょうか。もしよろしければ、それでは、そのよ うに窪田先生にはご返事をさせていただきたいと思いますし、一部これに対して対応を したいというふうに思います。  それでは、これに関わって、今、大久保委員からちょっと話がありましたが、お手元 にあるきょうの資料で、5人の衆議院議員の方から、臓器の移植に関する法律の施行に ついての申し入れがあります。これについて、それでは読んでいただいて、これについ てまた議論いたしましょう。 ○重藤補佐  それでは、読ませていただきます。  臓器の移植に関する法律の施行について(申し入れ)  臓器の移植に関する法律の施行に向けて、検討が現在進められているガイドラインに ついて、少なくとも以下のような問題点があり、これらの点についてより一層慎重に審 議を進められるよう、強く要望致します。 1.ガイドライン案では、臨床的に脳死となったと思われる患者に対して、臓器提供の 意思を有しているかどうかを、脳死判定前に確認するとしている。しかし、法文に従っ て解釈すると「ドナーカードの所持の有無について確認」を行えば足り、「何らかの意 思表示を行っていたかどうかを把握するように努める」という内容は、法の予定してい た内容を逸脱していると言わざるを得ない。修正を求める。 2.ガイドライン案の4−(1)(3)において、突然の事故等で動転している家族の 心情を十分考慮しながら、ガイドラインの適正な運用を行うことは、移植コーディネー ターの資質と能力に依存する部分が大きいと考えるが、法律公布後に行なわれる最初の 研修会のカリキュラムを見ても、インフォームド・コンセントや家族との対応などの項 目については、十分とは到底言い難い内容になっている。  したがって、このガイドラインの内容の遵守と、適正で国民の理解を得られる移植医 療の実施のため、移植コーディネーターの資質の一層の向上を図るとともに、移植医側 に立ったコーディネーターの逸脱行為等について、何らかの歯止めの策を講ずるべきで ある。 3.組織移植の取り扱いについては、法の規定外であることは確かであるが、これまで の何ら規制のない状況からは、「社会的見地等から相当」とはとても言えない事例が多 く存在することは、昨今の質問主意書への答弁書等から明らかである。  従って、「医療上の行為として行われ、取り扱いは今後も変わらない」となっている ガイドライン案の内容では明らかに不十分であり、法とは別の承諾体系のもとで実施さ れるものであっても、家族感情への十分な配慮とインフォームド・コンセントの徹底を はかるべく、法的規制を含めて、しかるべき措置を早急に講ずるべきである。 以 上 ○黒川委員長  ありがとうございました。こういう3つの項目について申し入れがありますので、こ れについてちょっと議論をしてみたいと思います。ガイドラインですが。  まず1の、今、ドナーカードの、今のところですね。臨床的に脳死となったと思われ る患者に対して、臓器提供の意思を有しているかどうかを、脳死判定前に確認すると。 しかし、法文に従って解釈すると、ドナーカードの所持の有無によって行えば足るんだ というようなことが書いてありまして、「何らかの意思表示を行っていたかどうかを把 握するように努める」という内容は、法の予定した内容を逸脱していると言わざるを得 ない。修正を求める。ということですが、いかがでしょうか。どうぞ。 ○貝谷室長  今の申し入れの1番の趣旨をちょっと事務局のほうから補足いたしますと、趣旨は、 今のガイドラインの試案の文言を読みますと、今のガイドラインの2ページの4の (1)ですね。(1)主治医等が、というところの項目で、ここの項目の4行目から5 行目。臨床的に脳死が確認された場合以後において、家族等の脳死についての理解の状 況等を踏まえ、臓器提供に関して本人が何らかの意思表示を行っていたかについて把握 するよう努めるという、ここの文章が、読んだ感じとして大変家族の側に過大な負担を かけることになっては問題を残すので、そこは、一番最初のきっかけの際の説明として は、ちょっと強いようなニュアンスがあると。もう少し、この申入書に沿っていきます と、ドナーカードの所持、そういったことを中心に家族にまず聞いてみると。そのぐら いのほうがいいじゃないかという趣旨のことだということでございます。 ○黒川委員長  わかりました。そういう趣旨なんですか、本当に。この文章は。 ○貝谷室長  私どもはできるだけ、最初の第一段階でございますので、できるだけ過大な負担をか けないような趣旨で書いたつもりでございますが、確かに読み方によっては、何らかの 意思表示ということで、非常に家族にとっては、どこまで調べればいいのか、確かにち ょっと不明確なので、表現が少し不適切な面があるかもしれません。 ○黒川委員長  ちょっとそれでは文章について検討をしていただくと。例えば、これ、「ドナーカー ドの所持の有無などによる意思表示を行っていたかについて把握する」とか何とか書く んですかね。確かに法文に従って解釈するとなんていうけれど、法文を読んでみるとド ナーカードなんていう言葉はずっと本文には全然出てこないんですよね。附則かどこか のところに初めて出てくるんじゃないか。附帯決議ですかね。どこかで。附則ですね。 附則で初めてドナーカードの普及及びネットワークの整備なんていうことが出てきます から、法文に従って解釈すると「ドナーカードの所持の有無についての確認」というの がいいのかなと、ちょっとわかりません。  では、これは、その文言の書き方が悪いというご指摘ですね。 ○貝谷室長  そういう趣旨を酌んで表現を少し工夫したいと思います。 ○黒川委員長  わかりました。それでは検討してください。今のでよろしいですか。  では、ガイドラインの4−(1)(3)。これは、当然のことですが、今のところで すね。突然の事故等で動転している家族の心情を十分考慮しながら、ガイドラインの適 正な運用を行うことは、移植コーディネーターの資質と能力に依存する部分が大きい。 法律公布後に行われる最初の研修会のカリキュラムを見ても、ちょっとこれは見てませ んが、インフォームド・コンセントや家族との対応などの項目については、十分とは言 い難い内容だと。したがって、このガイドラインの内容の遵守と、適正で国民の理解を 得られる移植医療の実施のためには、移植コーディネーターの資質の一層の向上を図る とともに、移植医側に立ったコーディネーターの逸脱行為等について、何らかの歯止め の策を講ずるべきであろうと。それは確かにそうだと思うんですが。これについて、カ リキュラムその他からいうと、いかがでしょうか。  実際、腎移植ネットワークをやっている今の立場からいうと、私もやっているのでご 説明しますと、ある程度準備段階ということで、今年に入りましてから、コーディネー ターはかなりアメリカのほうにずっと研修に行ってもらっておりまして、1人大体2週 間行って、実際に腎臓以外の移植の現場についてかなり皆さん見ていただいているとい うことをしています。ですけれど、ネットワーク側として、もっとこれはやりたいんで すが、予算が非常に少ないと。お金がないというのが。実は、みんなから寄付金なぞを もらわなくちゃいけないかなという状況もあるので、ぜひこれはやりたいんですが、予 算を付けてくれというのが本音かなという気もしますね。  実際に最初の1、2年は数例しか行われないのにコーディネーターのほうはがっちり 用意しておけなんて言われると、そのお金はどこから出るのということを、ちょっとこ ちらは言いたくなってしまうんですが。この議員の先生たちが付けてくれるかもしれな いと。  そのほかに、事務局からどうぞ。 ○貝谷室長  この趣旨、2番の趣旨、何らかの歯止め策を講ずるべきということで、ガイドライン で直接書くかどうかは別にして、この趣旨は、コーディネーターの方が多少逸脱した行 為をしたときに、ペナルティというのでしょうか、普通のクローズなあれでしたら少し 除名をするとか、そういうような仕組みも何か検討をすべきではないかというような趣 旨でございますが、そこは、このガイドラインでどうのこうのということよりも、むし ろ実態上の話として、例えば、今、コーディネーターの方々の組織がございますので、 そこでの例えばそういう行動規範とか、そういった点での工夫ということはあるんだろ うなと思います。 ○黒川委員長  どうぞ、座間委員。 ○座間委員  コーディネーターの活動の中で、ここに出ているようなインフォームド・コンセント ですとか家族への対応というような項目に関しては、コーディネーターのネットワーク で実施しています研修会というのは、今年は8月に実際に行われるものに関しては、多 臓器ということを中心にやるカリキュラムなんですね。ですから、基本的なインフォー ムド・コンセントですとか家族への対応というような内容については、11月に行われ る初心者に対してのカリキュラムの中には十分入っていて、ロールプレーですとか、そ れから事例検討だとかというような内容も盛り込まれています。  それから、その講義の内容としましても、宗教家ですとか法律家ですとかという、そ ういうような方々の講義や何かも含まれておりますので、ここに書いてあるように不十 分というのは、ちょっと意味が、カリキュラムの内容をどちらをご覧になったのだかわ かりませんが、ちょっと外れているのではないかなというような気がします。  それともう一つ、コーディネーターの活動に関しましては全部記録を残して、それを 各ブロック単位での評価委員会にも評価してもらう。それから、さらにそれを、問題が あれば中央の評価委員会に上げるというような形。さらにその中で問題が起きれば、審 査委員会というような形でもっての評価のあれはかなり厳しい状況に置かれておりま す。 ○黒川委員長  そのほかにご意見。どうぞ、大島委員。 ○大島委員  私も、ジャトコ(JATCO)の諮問委員というのをさせていただいておりまして、 諮問委員のほうから何か言ったわけではないんですけれども、自発的に倫理規定を昨 年、一昨年でしたか。 ○座間委員  去年の9月です。 ○大島委員  昨年、倫理規定を作られまして、それについては意見を求められて、私も随分その中 に書き込んで、いろんなことを書き込んで倫理規定を作られた経緯があります。罰則規 定とかそんなところまでは、ちょっとあったのかどうかは覚えていませんけれども。具 体的にかなり社会的に公正、公平をやらなきゃいけないということで、コーディネー ター自らが非常に今のところは自律的に規制しているという感じはいたします。 ○黒川委員長  そのほかに。どうぞ、井形委員。 ○井形委員  これに対するお答えは、カリキュラムが十分でないということはクレームのあれです から、いま言われたような内容をカリキュラムを改定しますと、充実したものにします と。それから、歯止めは中央評価委員会でコーディネーターの行動についても十分評価 いたしますと。そういうことで十分だろうと思うんですけれどもね。 ○黒川委員長  これはネットワークの役割になってくるんじゃないかという気がします。実際に腎臓 のネットワークでもそういうことはしょっちゅうやっていますし、一つひとつの情報が あるたびにそれを評価して、どういうプロセスで何が起こったと全部記録をとっていま して、後で評価していまして、全体にも上げていますから、私どもも、ネットワークが できてからは、移植医の側に立ったコーディネーターでという誤解を絶対に受けないよ うにということは非常に神経質になっていますから、そういうことは一例一例の評価の 問題かなと思っていますが。どうですか、座間委員。そうだと思うんですけれども。よ ろしいでしょうか。小柳委員、何か。よろしいですか。  では、そういうことで、これについても、それでは返事をいたしましょう。  それから、最後ですね。組織移植の取り扱いについては、法の規定外であることは確 かなんだけれども、これまでの何らの規制のない状況から、ここのガイドラインの8 ページ、一番最後ですね、7ですが、「社会的見地等から相当」とはとても言えない事 例が多く存在することは、昨今の質問主意書への答弁等からも明らかだと。  したがって、この文にあるように、「医療上の行為として行われ、取り扱いは今後も 変わらない」となっているガイドライン案の内容では明らかに不十分で、法とは別の承 諾体系のもとで実施されるものであったとしても、家族感情への十分な配慮とインフ ォームド・コンセントの徹底をはかるべく、法的規制を含めて、しかるべき措置を早急 に講ずるべきである。  確かに、これ、組織移植の取扱い、最後に書いてありますが、このガイドライン、こ の法律は、あくまでも臓器の移植だということで、臓器は、最初に書いてあったような 臓器であって、皮膚とか血管、心臓弁、骨等は組織として扱っているので、この対象で はないと。じゃあ、この対象ではなくて、この組織と言われる臓器でない移植のための 特段の法令はないと。で、通常本人又は遺族の承諾を得た上で医療上の行為として行わ れ、医療的見地、社会的見地等から相当と認められる場合には許容されるものであっ て、かかる取扱いについては今後も変わらない。というのだけれども、これは何となく 不十分じゃないのという質問状だと思います。  これについてご質問、ご討議、いかがでしょうか。どうぞ、大島委員。 ○大島委員  私もそう思います。組織移植に関して、少なくとも今度の法案とは、法案の中でどう 取り扱うというのは非常に難しいので、この表現が適切かどうかは必ずしもガイドライ ンの内容で行かざるを得ないとは思うんですけれども、じゃあ、組織を野放しにしてお いていいかどうかという話になると、これはちょっと具合が悪いんじゃないかなという ふうに思っていますし、何らかの対応はこれからは絶対に必要だろうというふうに思い ます。  現時点でいくつかの批判が今までにいっぱい出ていますし、それじゃあ、どうするの かということを具体的に何かやろうといっても、これは大変な作業に多分なるかとは思 うんですけれども、当面、最低の、最低のこともこれは、どれぐらいが最低かわかりま せんけれども、少なくともお互いに提供する側と摘出する側との間のきちんとした了解 事項ではあるにしても、書面とか何かで最低の項目の確認だけは、例えば使用の目的だ とか、それから使用の範囲とかいうぐらいのことは記録として残しておくということは 必要なんじゃないかなというふうに思います。 ○貝谷室長  組織移植につきましては、国会でも議論がございましたし、今の大島先生のようなお 話もございます。実際には、内容的にはこのガイドライン案に沿ったような内容かもし れませんが、今お話しございましたように、政策的には、従来どおりという表現では必 ずしも誤解を生みかねないと思います。  今、各地域で、研究者ベースでいろいろネットワークづくりで組織の移植がされてお りますが、もう少し日本全体といいますか、あるいは行政が入ってもよろしいかと思い ますけれども、法律的な規制ということではいきなりなくて、もう少し実態的な状況を 把握した上で一定のルールづくり、各地区各地区ではなくて一定のルールづくり、共通 したルールづくりを、移植学会を中心とした関係学会の主導といいますか、あるいは行 政的なあれでも入っても結構だと思いますけれども、まずはそういった学会でのそうい った取組みというところをまずきちっとやっていただいて、そういう趣旨では、「従来 どおり」という言い方は若干語弊があるようでございますので、よりいい形での組織移 植につながるようにやっていくべきだろうというふうに考えております。 ○黒川委員長  そうですね。私もそう思いますし、やっぱりこれは、相当と認められている場合には 許容されるなんて言うけれども、何が相当かというのは全然よくわかっていなくて、皮 膚というのはどのぐらい、皮膚、血管、心臓弁、骨などはいいんですが、「等」なんて 書いてあるけれど、この「等」は何かというと、多分、指とか手とか足とか、いろんな ことがそのうちなりかねない。いや、そうだと思うので、それは移植学会のほうで、こ れはやっぱりもっと検討事項として、今、国際的にも国内でもどのくらいの件数がされ て、どういう成績があってというような話を、もっともっとデータの公開と学会のほう からのリコメンデーションといいますか、そういうことをそれぞれについて、それから 将来の方向についても出していただくというのが、僕は一番適切じゃないかなと思いま すが、どうでしょうか。どうぞ。関節とかそういうのもありますからね。野本委員。 ○野本委員  法で決められたもの、その次には省令で決められたものがありますね。省令で決めら れたものも、膵臓と小腸は今、移植学会が原案づくりを引き受けてやっておるわけです から、今度は、その他の組織に関しては、もうワングレード学問に近いレベルで検討を させていただくと。基本的には、法、省令、ガイドラインの精神に沿った形のやはりや り方をいたしたいというのでないと、本当の心臓、肝臓にまでマイナスの影響が起こる ようなシステムができると大変ですので、そういうことを少し検討をいたしたいと。学 会として検討をして、ここへ上げてきて、またどのレベルで扱うかを検討していただき たいというのが一番よろしいんじゃないでしょうか。 ○黒川委員長  そうですね。どうぞ、眞鍋委員。 ○眞鍋委員  この臓器摘出承諾書のところで角膜とあったのを眼球というのに直していただいて、 どうもありがとうございます。  といいますのは、眼球は確かにオルガンですけれども、角膜となると、やっぱりこれ は組織です。角膜だけをいただいたのでは角膜移植はできないから、結局提供はすべて 眼球の提供とか眼球の斡旋とかいうふうに、又、アイバンクという名前が示すように眼 球として取り扱っておるために臓器移植法案の中に含まれたんだろうと思うんですが、 角膜そのものは、どっちかといいますと組織と考えてもいいようなものでありますの で、ちょっとほかの臓器と違う扱いがあると思います。  実をいいますと、最近、意思表示カードをいただいたんですが、これの中がやはり角 膜になっておるんですね。「腎臓、膵臓、肺、角膜、その他」というふうになっておる んですが、これもぜひ眼球に直していただきたいのです。そうしないと、ここに組織が 入っておりますと、組織もこの法律の中に含まれるような感じがしてしまいますので、 眼球というふうに直していただきたいと思います。 ○黒川委員長  この間の先生のお話では、最近はしかし技術が進歩したので、眼球をとらなくて角膜 だけでいいんだというお話がありましたよね。 ○眞鍋委員  それは、角強膜といいまして、角膜だけをとったのではだめなんです。 ○黒川委員長  角強膜をとるわけですね。 ○眞鍋委員  角強膜をとればいいということです。 ○黒川委員長  そうすると、患者さんの遺族、あるいは患者さんとしては、どっちを希望されますか ね。両方をオファーされたときに。 ○眞鍋委員  それは、角強膜をとってほしいというほうが多いでしょうね。 ○黒川委員長  そのときは、そういうふうにしていますか。 ○眞鍋委員  できません。今の日本の技術ではできません。角膜移植医であれば可能ですが、摘出 医は移植医ではなく、所によっては眼科医でない場合もあるからです。 ○黒川委員長  技術でできないだけの話で、法律じゃないんですね。技術がまだ進まない。そうする と、技術が進めば、多分そういうふうになってきますね。 ○眞鍋委員  そうなるだろうと思いますけれどもね。 ○黒川委員長  小柳委員、どうぞ。 ○小柳委員  今の組織のことですが、現在の法と省令で10月16日にスタートするといたしまし てもインボルブされる組織がございますので、学会に振っていただいて、私ども、ほと んど原案はできておりますけれども、それを早く取り扱っていただくような何かがあり ませんと困るかなとは思っているんですね。  例えば、ダイレクトクロスマッチに使うリンパ腺とか、そういったことが多少問題に なりますので、法、省令、もっと簡単なものでお許しいただかないと問題を起こすんじ ゃないかと思いますが。ぜひ何かコンビニエントな方法がないかなと思っております。 ○眞鍋委員  眼科では、白目に相当する強膜の移植というのを、非常に以前には組織移植としてや っておったんですが、今でもリューマチなどで強膜が溶けて、そのために失明する人が だいぶおりますが、眼球をいただいて、その強膜をそれに使うと非常にいいんです。  角膜移植に関する法律ができたおかげで、角膜移植に使うものでなかったらほかのも のに使ってはならないと。使わないものは全部焼却しろというふうになっておりますの で、現在は使えないんです。それで、やむを得ず、硬膜移植といいますが、脳の硬膜 を、強膜を移植する代わりに代用しておったんです。ところが最近、それをやりますと 狂牛病といいますか、クロイツフェルト・ヤコブ病になるからそれはだめだということ になりまして、現在、非常に困った状態が起こっております。もし心臓は臓器移植とし て、心臓弁は組織移植として認められるのでしたら、角膜のほうは臓器移植法のほうで 規定されておりますけれども、強膜のほうは組織移植として取り上げていただけたら有 り難いと思います。 ○黒川委員長  むしろそれは、やっておられる方のほうから、そういうニーズがあって、どういうふ うになっていてというのをどんどん出さないと、誰も知らないんじゃないかと思うんで すが、いかがでしょうか。 ○眞鍋委員  それは、そういうことで出しますと、厚生省のほうから、それはだめですと言われた んです。 ○黒川委員長  頭からですか。それはちょっと。 ○眞鍋委員  なぜだめかということを聞きますと、厚生省としては認めるけれども、もし誰かが訴 えたら、それは対応できませんよと言われたのです。だから、角膜を移植するために眼 球をとるのはいいけれども、角膜以外のものに使うんだったらだめだと。法律ではそう いうふうになっていると説明されました。 ○黒川委員長  法律ではそうですけれども、だから学会とか、何かそっちのほうからのガイドライン や何かをどんどん出さないと。行政当局にこの際、局長さんにお答えいただかないとい かんかな。そういうことを頭からだめだと言う人がいたなんていう話は。 ○小林局長  要は、角膜移植のために眼球をとる。そして、角膜は使ったけれど残りの部分をどう するかということで、それをほかの治療に使うと。ですけれども、現法規ではそれはで きないと。それはおっしゃるとおりできないと思います。  ですから、それをもし使うようにするなら、これは法律で書いていますから、法改正 をして、別途使えるように考えなくちゃいけないと思います。  今回、事務局のこの組織の取扱いについては、今、大島委員は、組織についていろい ろ問題があるとお答えになられたんだけれど、厚生省としては、我々、残念ながら国立 の医療機関、循環器病センターでああいう事件が一つは起きまして、結局遺族の了解が きちっととれないまま組織をいただいてしまったという事例があったんですけれども、 我々のほうにはそういう悪い事件のことは記録がございません。それから、そういう話 は、不勉強なのでしょうか、私ども、組織移植について、実際は行われているのは知っ ているけれども、そういう悪い事例というのはほとんどないと、こう承知をしていた。 したがって、ここでは、お医者さんにお任せしておけば、ここはもちろんご遺族のご了 解はとられてやられているわけですから、そういう意味では、いちいち法律が出張って まで規制することなく、医療の世界できちっと当然倫理的にも大丈夫なようにしてやっ ていかれればいいのではないかと、こういう解釈をしていたわけでありまして、そうい う国会答弁をいたしております。  ただ、先生方が、組織移植についても何らかの規制をしろと、そういう声が先生方か らも出、それから国民の皆さんからも出、国会議員の皆さんからもいろいろそういう意 見が出れば、それはやっぱり国民の合意としてそういうことをやっていくということも 必要でしょうけれども、これは組織移植の場合は、皆さん亡くなられたあと、ご遺族の 了解をとっていただいているわけですから、私は、今回のような臓器移植、心臓と肝臓 の臓器移植とは全然違う問題だと思っております。  しがたって、ここに組織移植の取扱いについてと、こう書いてありますけれども、本 当は何も書かないというのも、局長のガイドラインとしては、そのほうがより適切なの かもしれない。または、そうではなくても、これは皆さんも公開でやっているわけで、 そこまで書いてあるなら、もう少し書くとすれば、ここのところの最後のところを、も う少しインフォームド・コンセントだとか、遺族の了解をもっときちっとやれというこ とをもう少しわかりやすく、本来皆さん方が普通やられていることをきちっとお書きす ることが適切ではないかなと、こんなふうに、今、悩んでいるところですけれども。き ょう、皆さん方のご議論を聞かせていただきまして、あとで事務局で考えて。これは最 終的には厚生省の保健医療局長の責任ということになりますので、私のほうで最終的に は、いま言ったように何らかの形で、削除ではなくて、できるだけ本来あるべき姿でき ちっと行われるような、指導的な形で、こういうふうにしていただきたいということを お書きするのが適切ではないかなと、今のところは思っておるところでございます。 ○黒川委員長  ありがとうございました。確かに、心臓死の後とはいえ、皮膚から弁から関節から指 から足から手から、なんていうことは、ない可能性じゃないわけなので、そのへんはや っぱり移植学会なり、実際にそれに関わっているお医者さんのほうできちんとしたガイ ドラインか何かを自発的にどんどん出していくと。成績はこういうふうになっていま す、というような話をやっぱり出さないと、いくら心臓死だといっても、患者さんの遺 族にしてみれば、突然、膝を全部くれとか、足を全部くれなんていったら、やっぱりこ れはかなり衝撃的な発言じゃないかというふうに思います。皮膚ぐらいならどうってい うことないかもしれないけれども。 ○小林局長  実際に今、そのような事例があるんですか。 ○黒川委員長  膝なんかどうですか。関節。 ○小林局長  そういう、ある患者さんが亡くなられたと。組織をくださいということで、組織の場 所をはっきりさせずにご遺族が了解されてしまったと。 ○黒川委員長  それはないと思いますね、多分。 ○小林局長  そうしたために、皮膚から眼球、ありとあらゆるものがとられてしまうというような 実態が世の中にあるんですか。私は、日本のお医者さんがいろいろ悪く言われている事 例もあるけれども、そんな方は本当はいないので、ほんの少しをいただかれるというこ とで実態は進んでいるのではないかなと、そういうふうに私は思っております。 ○黒川委員長  そうですね。実際には、承諾したから、ずっと皮膚も思ったよりとられちゃったなん ていう事例がなかったわけじゃないから、そのへんはきちんとした、我々医者のほうの 問題かもしらんなと思うので。野本先生のほうから少しお願いしたいと思いますが、よ ろしいでしょうか。  それでは、そのほかに、このガイドラインについて。どうぞ、大久保委員。 ○大久保委員  ガイドラインに載っていないので、ちょっとお話をしたいと思うんですけれども。  法案のときの附帯決議でドナーカードの問題が書かれているんですけれども、今回、 ネットワークからのに対する答申というのですか、は出ていたんですけれども、実際、 ガイドラインには全くドナーカードということが書かれていませんので、少しこの中で もお話はしたいなと思っています。  意思表示カードの普及に関することが、実際、今回のこの臓器移植ができるかどうか の成否を握っていると思っております。  まず、ドナーカードの普及に関しては、当然、法律の中で、国及び地方自治体が普及 に努めなければいけないということになっていますので、当然、その方面で厚生省と、 それから各都道府県単位のお話し合いをされたということを伺っていますので、私たち は前、厚生省の貝谷さんともお話をしましたけれど、基本的に各戸に、本当に一戸当た り各家一軒一軒にドナーカードが配られるような方策は、ぜひやっていただきたいとは 思っています。  ただ、それだけでドナーカードが普及するとは思っていませんので、当然、国会答弁 の中で運転免許証、これはアメリカとか諸外国でかなり多く普及しておりますので、運 転免許証とか、私たちは前から、健康保険証にぜひ意思表示カードを入れていただきた いということをお話をしていまして、実際、こういった脳死が起こる現場においてで も、日本は皆保険ですから当然健康保険証を全員持っているわけで、病院には必ず健康 保険証を持っていくわけですから、そういう意味では健康保険証に意思表示カードを付 けるということは非常に一番いい方法ではないかなと思っていまして、当然これも厚生 省の中の、縦割り行政でなかなか横で難しいのかもしれませんけれども、当然その中で 健康保険証にドナーカードを付けるという方策もぜひ検討をしていただきたいと思って おります。  ガイドラインには書かれていませんけれども、何らかの形で、この意思表示に関して もこの委員会の中で検討はしていただきたいなと思っております。 ○貝谷室長  今の大久保委員のお話でございますが、前回の専門委員会の際に配布いたしまして、 ご説明いたしましたネットワーク準備委員会、井形委員長のもとでずっと議論をされて おりまして、今の点も議論がございました。  実際に私ども、ドナーカードはやはり、今までと違って本人の意思が前提ですので、 国民すべてが持てるようなことを目指して今後はやっていきたい。中でも、今、話があ りましたように、国、地方公共団体ともども、今度は行政の系列を使ってきちっとやっ ていきたいと思っています。  それとはまた別に、今お話ありましたような運転免許証なり保険証という点も、これ も国会の中で出ておりますし、私ども厚生省としても引き続きそこの点は重要な検討点 だと思っておりますので、関係部局、省庁と、非常に前向きにといいますか、相談をさ せていただいておりますので、今どうなるということは言えませんが、引き続き検討を させていただきたいと思っております。 ○黒川委員長  ありがとうございます。どうぞ、藤村先生。 ○藤村委員  意思表示カードの普及についてのことなんですけれども、今、宮城県で、一応目標が 30万枚ということで普及活動を開始したところでございます。  それで問題になったのは、町内会その他を使って、すべて配布しようということを今 やっているのですが、そのとき、意思表示カードを配布されたら必ずそれにサインをし なくちゃならないのかということを、一般の方は思うこともあるのです。だから、必ず しもそれを書かなくてもいいということも、理解していただかないと、やはり普及とい うことは非常に難しいということを認識したほうがいいと思います。  したがって、免許証その他に書く場合も、これは自分で印を付けなくても、そのまま を所持していてもいいんだということもお話ししてあげないといけないのかなという気 がいたします。 ○貝谷室長  この今回の法律が成立しました後に、どういう形でドナーカード、意思表示カードを 作れば法律の要件を満たせるかということを一応検討いたしました。関係の委員会にも お示ししまして、公表していたところ、若干意見が来ましたけれども、一応厚生省もこ れでいいという、関係方面もこれなら大丈夫だというようなことでやっております。  その中のいくつかの選択肢として、提供しますという選択肢と、それから、私は臓器 は提供しませんという、両方の選択ができるようにやっておりまして、その趣旨が、 今、先生がおっしゃったような趣旨がきちっと伝わるように、何か強制的なニュアンス ということで受けとめられることのないように、普及の際には注意していかなきゃなら ないと、こういうふうに思っております。 ○黒川委員長  返事はしなくてもいいということですね。持っていなくてもいいということも言わな いと、ついつい全体主義になっちゃうと困るなと。イエスかノーかなんて言われても困 りますから。  ほかに。  それから、ガイドラインの1ページ目を見ていただきたいんですが、私もこのあいだ ちょっと引っかかって、頭の中にどうも引っかかっていたんですが、上から3行目、書 面による意思表示ができる年齢ですが、法の運用に当たっては、民法上の遺言可能年齢 等を参考として、法の運用に当たっては、15歳以上を目安としてというのは非常に困 るんじゃないかと思って、これは満15歳とか差し当たり言っておかないと、15歳以 上を目安というのは一体何だね、ということについてはいかがでしょうか。 ○大久保委員  私は、15歳以上ということでわかるとは私は思ったんですが。もう一つ、新聞報道 等で、15歳以上を目安として判断するという、これが出て、要するに15歳未満は全 くだめだというような報道のされ方をしているので、これは目安として判断するという ことは、私は、ある程度個人によって、必ずしも15歳ということが決められているわ けではないというふうにこの文面から私は判断したんですけれども。  要するに、反対に16歳でもだめな場合もあるだろうし、それから14歳の場合でも 可能な場合もあるという、一つの目安としてというふうに書かれていると思って判断し たんですけれども。新聞報道に関しては、ほとんど未満はだめという報道の仕方なの で、そのへんをもう少しはっきりしていただきたいなと思います。 ○黒川委員長  15歳以上で自分でカードを書いていなければ、それはだめなんですよ。15歳以上 であれば自分のカードで、自分はもし脳死になったらしてもいいよという話をしている わけですから、15歳以上でもだめな人はだめと。だから、そうすると、14歳で私は してもいいよと言った人はいいのかというと、これは非常に厳しいんじゃないかという のをはっきりさせておいたほうがいいのではないかというのが、私の質問の理由なんで すけれども。いかがでしょうか。  それから、このあいだ井形先生のほうから、移植ネットワークの準備委員会のほうか ら、例えば心臓の病気の子どもさんがいて、5歳、6歳、10歳ですね。そういう人は 全然可能性がないじゃないかと。そうすると、15歳以下の人についてもぜひ考えてく れという話がありましたので、それもなるべく早急に対応するべきだと思いますが、例 えば15歳未満であれば両親の承諾が要るとか、何かいろんな可能性がありますから、 今回は、それほどまだ議論を詰めないで次回に持ち越して構わないと思うんですが、こ の目安というのは一体何だというのは、ちょっと私にはわからないです。 ○大久保委員  わからないんです、これが。 ○黒川委員長  だから、わからないことはまずいんじゃないかと思っていますけれども。どうぞ、町 野先生。 ○町野委員  今、座長のほうから、15歳未満のときは両親等の。 ○黒川委員長  それは全然別の話です。 ○町野委員  別の話ですけれども、現在のこの法律は、それを排除しているわけでしょうね、も う。 ○黒川委員長  そうです。書面による意思表示というのは、一体誰ができるかということです。 ○町野委員  本人のものじゃなきゃだめなので、15歳未満の者が何かをやったとしても、それは 法律を改正しない以上は難しいということでしょうね。確認だけです。 ○黒川委員長  それはだからやらなくちゃいけないんじゃないかと思っているんですが。  14歳のときにこれをサインしてもだめなんじゃないですかね、そうすると。脳死に なったのは15歳でなったとしても。15歳元服の日をもってカードを提示する。 ○町野委員  15歳が正しいかどうかも、それもわかりませんけれどもね。 ○黒川委員長  その意見、どこかに何かを書いておかないとまずいですよね。民法上の遺言可能年齢 等を参考としてというのだから、2回目のミーティングにありましたけれど、それはど うですか。民法上の意思表示。 ○貝谷室長  今の座長のあれで、要するに、今のご質問は、意思表示の際に所要の年齢に達してい ないと難しいということだろうと思うんですね。 ○黒川委員長  じゃないのかなと思うんですけれども。 ○貝谷室長  そういう意味では、15歳以上での意思表示、サインをするということが必要になっ てくるというふうに我々は考えて運用したいと思っています。  ここで目安というのが、若干上下、場合によっては14歳でも可能なような趣旨で読 まれかねないとしたら、目安というのは、やや不適切なことなので、私ども事務局の考 え方は、15歳以上ということで、そういうふうに考えておりますので、15歳未満を 多少含むようなニュアンスがあるとすれば、そこははっきりさせておくことが必要だろ うと。 ○黒川委員長  そうすると、そのように書き直したほうがいいかなと思うんですがね。よろしいでし ょうか。 ○小林局長  わかりました。 ○黒川委員長  よろしくお願いします。そのほかに何かございますか。全体としてもいかがでしょう か。いろいろなご意見を外からも伺いました。  それでは、もしなければ、時間も参りましたので一応と思いますが、この資料6、こ れについてちょっと説明していただきたいと思います。 ○玉川補佐  では、資料6、政令の関係につきまして概要をご説明させていただきます。  臓器の移植に関する法律におきましては、現在ご審議をいただいております厚生省令 のほかに、政令に委任されている事項がございます。臓器の移植に関する法律附則第1 1条第1項の関係でございまして、第11条第1項の内容といたしましては、脳死した 者の身体に対し、医療給付関係各法の規定に基づく医療の給付、これには医療に要しま す費用の支給に関係します当該医療というものを含んでおります。これを継続して処置 が行われた場合には、当分の間、その処置というのは、もともとの医療給付関係各法の 規定に基づく医療の給付としてなされたものとみなすということにしているところでご ざいます。  政令で定めることとしておりますのは、この医療給付関係各法の中身ということにな っておりまして、法律の中では、健康保険法、それから国民健康保険法「その他政令で 定める法律」として委任されているところでございます。  現在、その政令の中身といたしましては、次のような各制度ということを考えている ところでございまして、一つは、一般的な医療給付制度として各種の共済の制度、それ から老人保健法等の一般的な医療給付制度というのを考えております。  それから2番目のグループといたしましては、公費負担医療として、各種の公費負担 医療あるわけでございますけれども、可能性としてあり得るものについては一応全部規 定するということで、結核予防法等各種の公費負担医療というものを書くこととしてお ります。  それから、災害補償の関係でございまして、労働者災害補償保険法等の災害補償に基 づきます医療給付関係というものを定めることとしております。  それから、その他若干ございまして、公害健康被害の補償等に関する法律等の医療に 関する給付の法を考えているところでございます。  これらの医療給付関係各法の範囲につきましては、現在、各省庁と連絡を取り合いな がら協力いたしまして、政令制定の準備を進めているところでございまして、現在ご審 議いただいている厚生省令と併せまして、10月16日の施行までに定めることとして いるところでございます。  以上でございます。 ○黒川委員長  どうもありがとうございました。そういうことでございます。  さて、そこで、きょうはこれで一応終了させていただきたいと思いますが、前に先生 方にご案内いたしましたように、次回、9月の5日、金曜日、午前10時から12時ま でということで、会場その他については、またご案内いただけますか。予定に入れてい ただいておると思いますが、事務局のほうからは、もう一回、先ほど紙をお回ししまし たが、9月24日から10月4日までの間で、予備的に予定を入れさせていただきたい ということで、皆様のご都合を伺ったところ、一番いいのが、9月の29日、月曜日、 4時から6時ということの時間を一応予備的に入れておいていただきたいと思います。 このときにだめだとバツを付けられた方もおられるんですが、ぜひ都合をしていただい て出てきていただければ。一応予備的ですので、またご連絡はしますが、一応予備とし て入れていただきたい。それから、欠席の先生方には、そのことをもう一回、事務局の ほうからお願いしたいと思います。よろしいでしょうか。  29日、月曜日、4時から6時。よろしいですか。  それでは、そういうことで、私のほうからは、この議事を終わらせていただきたいと 思いますが、最後に事務局のほうから、どうぞ。 ○貝谷室長  特にございません。 ○黒川委員長  ありません。では、よろしいでしょうか。(以下、日程連絡)  それでは、きょうはこれで終わらせていただきます。どうもありがとうございまし た。 問い合わせ先 厚生省保健医療局エイズ疾病対策課臓器移植対策室    担 当 重藤(内2361)、眞鍋(内2364)    電 話 (代)03-3503-1711