97/08/21 公衆衛生審議会精神保健福祉部会議事録 公衆衛生審議会精神保健福祉部会 議 事 録       厚生省大臣官房障害保健福祉部精神保健福祉課 公衆衛生審議会精神保健福祉部会議事次第   日 時 平成9年8月21日(木) 14:00〜16:08   場 所 厚生省特別第1会議室     1 開 会     2 議 事      ・ 大阪府大和川病院問題のその後の経過について(報告)      ・ 福岡県柳川市での警官刺殺事件について      ・ その他     3 閉 会   〔出席委員〕     部  会  長     大 熊 委 員  岡 上 委 員  河 崎 委 員  紀 内 委 員      北 川 委 員  吉 川 委 員  小 池 委 員  融   委 員      渡嘉敷 委 員  新 田 委 員  藤 原 委 員  古 谷 委 員     牧   委 員  三 浦 委 員  宮 坂 委 員  谷 中 委 員      渡 邉 委 員 ○部会長  定刻になりましたので、公衆衛生審議会精神保健福祉部会を開催させていただきま す。お暑いなか感謝いたします。  まず初めに本日の出欠状況につきまして、事務局から報告をお願いいたします。 ○事務局  本日は精神保健福祉部会委員22名中17名の委員に御出席していただいております。定 足数の過半数を満たしておりますので、部会の開催は成立しております。なお、大熊委 員が多少おくれているようですけれども、御出席いただけると思います。なお、本日欠 席される旨の御連絡をいただいている委員は、井上委員、窪田委員、比嘉委員、藤井委 員、町野委員の5名でございます。 ○部会長  ありがとうございました。  それでは、議事に先立ちまして、篠崎部長から一言御挨拶をお願いいたします。 ○篠崎障害保健福祉部長  本日お暑いのに、またお忙しいところを御参集いただきましてありがとうございま す。本日は新聞あるいはマスコミでかなり多く報道されておりますが、大和川病院のこ とについて中心に御報告をさせていただきたいと思っております。  大和川病院につきましては、8月5日に立入調査を行いました。その結果について後 ほど御報告をさせていただきます。この立ち入りの根拠になります精神保健福祉法上の 38条6の立入調査を根拠にいたしまして行った訳でございますが、御存じのように、昭 和62年の精神保健法改正のときに初めて国としての調査権限が明記されまして、それま で調査をする権限はすべて都道府県知事にございましたので、国みずから調査をする権 限がこの根拠に基づく訳ですが、これを使って調査をした訳でございます。これは厚生 大臣による調査でございますし、管理者に対して資料の提出の請求をしたり、あるいは 帳簿書類の検査をしたり、関係者への質問をしたりすることが出来る訳でございまし て、このことについて後ほど御報告をさせていただきます。  今回の調査の目的の大きなものは指定医の問題でございました。指定医につきまして は、改めて申し上げるまでもございませんが、精神障害者の人権の擁護に大変大きな役 割を果たす制度というふうに考えておりまして、都道府県に置かれております精神医療 審査会と並んで、患者さんの人権を守る両輪であるというような認識を持っておりま す。  私が10年前に精神保健課長を拝命して初めての精神保健指定医の第1回の講習会に出 たのが私の初仕事でございましたが、以来、現在まで約1万人の方が指定医になってい ただいております。精神医療の中でこの指定医の果たす役割は非常に大きなものがござ いますし、また、この制度そのものが我が国の精神医療への信頼を担保する大きな制度 になっておる訳でございますので、今回指定医の問題について調査をしたということは 初めてのことでございますが、重く受けとめておるところでございます。  それで、今回の大和川病院の問題につきまして、御報告した後いろいろ議論をしてい ただくことになっておりますが、さまざまな問題点があろうというふうに認識をいたし ております。個人の指定医の問題だけではなくて病院全体の問題もありましょうし、ま た平成11年度に予定をしております現在の精神保健福祉法の改正にもつなげていろいろ 議論しなければならない問題点もたくさんあろうかと思っております。  私どもとしては、今回の事件を1つの大きな教訓として考えなければいけないと思っ ておりまして、このことだけで終わりということでは決してよくないと思っておりま す。今、事務当局の方で考えていますのは2つございまして、1つは今回のことを教訓 にして、全国約1万人おられる指定医に直接通知なり連絡なりをして、今回のことを教 訓に改めて指定医としての役割を再認識していただくというようなことをしたらどうか ということを1つ考えています。  もう一つは、今回大阪という大都市で起きた事件でございますけれども、こういう大 都市における精神医療の在り方というものについても、これを教訓として検討すべき点 がたくさんあるのではないか。公立病院・国公的病院等の役割分担等検討すべき点が 多々あるのではないかということを考えておりまして、それについて、研究費を使って 検討会を設けたいと、このようなことを考えておるところでございます。  具体的なことは事務局からまた説明をさせていただきますが、いずれにしても、限ら れた時間ではありますけれども、どうか、忌憚のない御意見を賜りたいというふうに 思っておりますので、よろしくお願いいたします。 ○部会長  ありがとうございました。  それでは、本日の議事に入りたいと存じますが、その前に議事録公開の件についてお 諮りをいたします。今もお話がありましたが、まず第1議題、「大和川病院問題のその 後の経過について(報告)」の部分につきましては、特定の指定医の取り消しに関する 審議でございますとか、特定の患者さんから御報告をいただいたものなどが出てまいる はずでございますので、個人のプライバシーの問題及び特定の者に不当な不利益をもた らすおそれがあるという観点から、今年4月21日付当部会での公開についての決議に基 づきまして、部会長の決するところによりまして、議事要旨によって公開いたすという ことにさせていただきとうございます。  なお、今も部長のお話にございましたように、この事件から派生いたしますところの 一般的な論議につきましては、「その他」のところで扱うことにいたしますが、この方 は今までどおり議事録の公開でございます。それから、間に挟まりました「柳川市での 警官刺殺事件」につきましても、同じく議事録を公開するということにいたそうと存じ ますが、よろしゅうございましょうか。                (「はい」と声あり)  ありがとうございました。  それでは、その順序でまいらせていただきます。まず、配布資料の確認からまいりま す。お願いいたします。 ○事務局  それでは、配布資料の確認をさせていただきます。まず、お手元にある資料の「配布 資料一覧」となっているものについて御説明いたします。  資料1といたしまして「大和川病院に関するこれまでの経緯等について」。  資料2といたしまして「大和川病院への立入り調査の概要」。  資料3といたしまして「精神保健指定医の指定に関する法的性格等について」。  資料4といたしまして「福岡県柳川市の警察官刺殺事件について」を配布しておりま す。 また、それと別に、本日、日精協・河崎会長より御報告いただく「大和川病院を めぐる動き」についての資料。  国立精神・神経センター精神保健研究所の吉川先生より御報告いただく「問題提起の 一つとして−大和川病院問題における公的機関と私的機関の役割を考える−」。  最後に、「公衆衛生審議会精神保健福祉部会の日程調整について」という資料を配布 しております。  欠落しているもの等ございましたら、お申し出ください。 ○部会長  皆様よろしゅうございましょうか。  では、議事に入りたいと思います。最初に1、大阪府大和川病院問題のその後の経過 につきまして、御報告いただきとうございます。 【議 事 要 旨】  ・精神保健福祉課長より大阪府大和川病院問題のその後について説明  ・国立精神・神経センター国府台病院の浦田部長より大和川病院の立入調査結果につ いて報告  ・立入調査結果等についての質疑応答 ○部会長  それでは、ひとまずこの問題はここで終わらせていただきまして、議題の2へ入らせ ていただきます。  なお、先ほど申し上げましたように、ここまでは議事要旨での公開でございます。  議事の2へ入らせていただきますが、これは先日発生いたしました、残念なことでご ざいますが、福岡県柳川市での警官刺殺事件でございまして、これに対する報告をお願 いをいたします。これ以降の議論は議事録を公開いたしますので、そのおつもりでお願 いいたします。どうぞお願いいたします。 ○田中課長  「福岡県柳川市の警察官刺殺事件について」ということで、資料4を参考に御説明を 申し上げます。8月13日に福岡県の柳川市で駐在所の巡査長が男に出刃包丁に刺されて 死亡したという事件がございました。翌日の朝に同市内に住む無職の男性が殺人の疑い で逮捕されました。この方は福岡県内柳川市の精神病院に措置入院されていた患者さん であったということが分かった訳であります。  この病院は、2に書いてありますけれども、常勤の医師3人うち指定医が2人、看護 婦さん、准看護婦さん62名、計職員数 119名の 170病床の病院ということで、比較的人 的なスタッフは充実しているようにお見受けいたします。 この患者さんにつきましては、7月30日に山門保健所長名で8月13日から16日まで仮 退院の許可をしていたということでございます。この患者さんにつきましての事情聴取 の内容は3の下の方に書いてございます。  次のページに被疑者についての簡単なプロフィールがありますけれども、28歳の男性 で、病名は主病名が「精神病質」となっております。既往歴はかなり長くございまし て、この病院には平成3年からずっと入っていたということでございます。仮退院も過 去何回かされていたということで、その段、特に問題はなかったということでございま した。  なお、仮退院につきましては、その次のページに、措置入院と仮退院の数についての 経年的な変化についての統計がございますし、4ページには仮退院につきましての法 律、そして、それについての解釈が参考のために付してありますので申し添えます。  以上でございます。 ○部会長  ただいまの御説明に対しまして御質問、御意見をお願いいたします。 ○新田委員  こういう仮退院はこれで妥当だったという結論なんでしょうか。あるいは、その後の 服薬の徹底とか、外出散歩2人以上という条件が守られなかっただけだったのか、この 辺はどういうふうに御判断になっておりますでしょうか。 ○田中課長  詳細は今ここに書いてある程度のことしかまだ分かっておりませんので、もう少し別 の視点から、この患者さんなり何なりについて少し調べていただきたいと考えておりま す。詳細はまだ不明ということでございます。 ○牧委員  私、福岡県でございまして、この事件が起こりまして、早速K病院へ行って参りまし た。河崎会長の命を受けまして、すぐ飛んで行った訳でございます。ここに書いてある とおりでございまして、やっぱり精神発達遅滞、精神病質、シンナー依存ということ で、何回か仮退院歴があって、仮退院の手続その他はきちんと私が見た限りでは出来て おりました。一応カルテもきちんと書いてありましたし、その患者に会っておりません ので、どういう患者か十分分かりませんけれども、医者が、いわゆる指定医が問題行動 を起こすかどうかという判断をどこまで分かるかというのは非常に難しいかなという気 がいたしました。  それと、一番最後に「仮退院の規定」というのがございますね。仮退院の規定は一応 措置症状が、退院させる前に仮退院を申請していいということでございますが、外泊の ような形はいけないというような形に書かれておりまして、外泊はだめだと。外泊は家 族の不幸、「等」はなくて、不幸だけになっておりますので、しかし仮退院の申請はき ちんとなされておりまして、保健所からの印鑑はきちんとつかれてきておって、一応前 日もきちんと診ておるという状況ではありました。  その辺ぐらいしかちょっと分かりませんで、私と富松先生といって、福岡県の精神病 協会の副会長の人と2人でお伺いしてお聞きしてきたところでございます。報告書もも らっておりますけど、ちょっと長くなりますので、以上でございます。 ○宮坂委員  これを議題に上げたということは、精神病院に入院している方が殺人事件を起こした ということでそのまま出てきた訳ですけれども、ただ手続上がどうだということなの か。社会復帰ということが片方では騒がれ、片方ではこういう事件が起きるから出して はいけません、こういう事件が起きますので。一方では、「社会復帰、社会復帰」と 言っていたことをたたくということになる。こういう事件があったから、法律どおりに やらなければだめですよということになるのは非常に困るので、我々としては是非こう いうふうな問題が起こしてはいけないということは当然分かっておる訳ですから、これ をもとに社会復帰がおくれるようなことのないようにしてもらいたい。  一方、この方については、精神病院に入院しているから精神病者だということも勿論 ありますけれども、実際この事件が起こしたのは、精神病の症状でやったのか、そうで はなくて、健康な部分、精神病者が健康な部分でもって事件を起こしたのか。そういう ことがこれから議論されるのであろうと思います。ですから、この事件がどうであった かこうであったかではなくて、是非社会復帰を拒むようなことにならないようにしても らいたいということをお願いする訳です。 ○河崎委員  我々としてはこの問題を深刻に受けとめております。7年間措置入院という形で入院 しておって、所定の手続を終えて病院から家族にお父さんが迎えに来て、そのお父さん にあらゆる注意もして、そして仮退院をしていただいて、家へ帰ってから、たとえこれ は2日、3日後のことではなしに、本当に2時間か3時間後にこういうことを起こした という極めてどうしたらいいのかという、院長自身が指定医であり、精神科医としては 立派な精神科医である。そして、あれだけの注意事項を口頭だけではなしに書面でもっ て、その家族に説明をして、そしてこの事件が起こった。仕方なかったんでは、我々と しては、家族に対して、また亡くなった警察官に対してまことに申し訳ないという気持 ちを持っておる訳なんですけれども。  もう一点、この影響は「精神障害者たちの行為」ということを、あれだけのテレビと 新聞で報道されて、やはり一般国民が何とかならないのかと。こういうことをもう一回 起こしてもらったら困るというようなことを願っておるのではないか。  そうしているうちに、また今日ですか、長野県でエレベーターの中でああいう事件も 新聞報道もされておる。ただ、今日いろいろなことを考えるこういう委員会において、 これで、はい、ちょんだというのではなしに、今、宮坂委員が言われたように、一体こ れで我々自身がどうするのかということを真剣に検討しなければ、また、こういうこと が起こってきた場合にますます精神科医療に対する国民の不信感が出るのではないかと いうことで強く、一体どうしたらいいのかということよりも、深刻に受けとめたいとい う1つの考えを持っております。 ○部会長  ありがとうございました。そのほかにございませんか。 ○大熊委員  分裂病の人だときっと新聞は割合病気をにおわさせないようにやっていましたけれど も、テレビが「精神病院、精神病院」と言っていましたから、これを見たら、精神病質 とシンナー依存と知的障害だというので意外な感じがすると同時に、ここで「服薬の徹 底」というようなことが書いてあって、精神病質とかシンナー依存を治す薬ってあった かなという感じもいたしまして、ここではどのような治療が、立派な先生とおっしゃる けれども、シンナー依存についてはどういうような治療がされていて、この犯行のとき にシンナーは吸っていたのかどうなのかとか、この方が退院していくときにどういうよ うなことを考えながらというのをもう少し詳しくいい報告がなされないと非常に不十分 なように思うのですが、何か追加することがあったら教えていただきたい。 ○牧委員  勿論、精神発達遅滞がIQどのくらいなのかということは、私きちんと見てきており ませんですが、シンナー依存についてはもう長い間入院しておりまして、シンナーは 吸っておりません。だから帰れば、すぐ吸うという状態ではなかったのではないかとい うふうに思っております。  それで、転院してきたときは精神発達遅滞とシンナー依存と、やっぱり措置入院にな るときに少し暴れたことがあって、それで措置になったようにカルテに書いてあったよ うに思うんですが、それで精神病質がつけられたのではなかろうかと思っております。  病名自体もなかなか分かりにくいところもありますし、幻聴があったりなんかした訳 でもないようでございます。何となく精神科医の無力感を感じないでもありませんが、 なかなか大変だなあという気がいたします。以上です。 ○田中課長  先ほども申し上げましたけど、まだ詳細は分かってない段階でございまして、なるべ く早くもう少し詳しいことを調べて、次回にでもまた御報告させていただきます。 ○北川委員  先ほども宮坂委員が御発言になっておられましたけれども、この件をこの委員会でど ういうスタンスで取り扱われるのかということがもうちょっと明確になって、それで今 後更に分析をされるんなら、その分析に当たってどういう点をポイントにして分析して いくのかということをもうちょっと整理をしていただいた方がいいのではないかという ふうに思うんでございますけれども。 ○部会長  ありがとうございました。私も座長としてお願いをいたしとうございますが、これが 議題になることは、私は実はいいことではないかと思っておるんです。というのも、牧 委員もおっしゃいましたように、指定医自身がどこまで防げるのか、 100%ということ は出来ない訳でございますが、しかし、またこれが及ぼす波紋は宮坂委員並びに河崎委 員のおっしゃったように非常に大きゅうございますので、何らかの形でこの問題はここ で取り上げていろいろ御意見を伺うのに、特に精神科医以外の皆さまの御意見を伺うの に大変この問題はいいのではないかと思っております。 渡嘉敷委員、どうぞ御追加を。 ○渡嘉敷委員 この事件そのものではなく、関連事項ですが、御承知のように、措置で入院するとき には2人以上の指定医の診察を要件としている訳です。しかし、措置解除と仮退院のと きは1人の指定医の診察でよいことになっています。指定医を信頼しないという訳では ないんですが、入るときは2人であるのに、その措置症状が消退したかどうかの判定を 1人だけでよろしいものかどうか。その辺は大変疑問に思いますので、いずれかの機会 に御検討いただければありがたいと存じます。 ○岡上委員  後で詳しい報告があるときに、こういうことが可能かどうか、プライバシーの問題も ありますでしょうし、権限の問題もあると思うんですけれども、御家族がこういうお気 持ちでいらしたかとか、こういう経過が把握されていたとかがもし分かるのでしたら、 そういうことも含めて詳細報告の中に入れていただければありがたいと思います。 ○渡邉委員  私も検討する視点として気にかかるのが病名ですね。素人知識ですが、若いときに一 定長期間シンナーに依存して吸ってしまったら、現在吸っているかどうかというのでは なくて、本当に精神遅滞というか、発達がとまってしまっていると。だから、そういう 意味では精神病院で治療をしようとしても、ある意味では治らないというようなお話を ある先生方からお聞きしたことがあります。  そうした場合に、この方は長期入院しているので、現在多分シンナー自体を、もう28 歳ですし、現在シンナ−依存はないかもしれないけど、それの後遺症として脳細胞が壊 れて発達がとまってしまっているということも考えられる。性格的なものがどうなのか というのは分かりませんけれども、そうすると果たしてこれが、精神病院で治療のため に入院が必要なのか。それとももっと別の形で療育・看護が必要な人だったのか、専門 的なレベルで厳密に分析していただかないと、入院患者一般の先ほど言いましたように 仮退院とか社会復帰への無用なブレーキになるのも怖いと思いますので、よろしくお願 いします。 ○部会長  どうぞ、大熊委員。 ○大熊委員  私もちょうど同じことを考えていたんですけれど、同じ九州の雲仙コロニーという、 これは知的障害の人たちの大変意欲的な施設があって、そこにはこういうような感じの 家じゅうがめちゃめちゃになるくらい暴れ回っている強度行動障害とか、そういう人た ちがたくさんいて、乗馬とかいろんなことで落ちつきを取り戻すというようなことをし ていますので、何かこの人が精神病院に入院したとか退院するところじゃなくて、入院 したところに、そういうものを何でも引き受けちゃうということが精神病院にとってい いことなのかということも含めて、たまたま部長さんは、障害保健福祉部長さんで、今 度は保健と福祉が統合される訳ですので、そのような視野で考えた方がいいような気が いたします。 ○三浦委員  先ほど大熊委員がおっしゃったんですが、精神病質や精神遅滞の服薬、これは治す薬 があるのかとおっしゃったんですが、精神科の場合は病気の原因そのものを治すという よりも、むしろ症状に対して使うことの方が多いものですから、この場合、まだ内容が 全然よく分かりませんので、だから、服薬といっても何に対して服薬させていたかが ちょっと分からないです。病名についても、今までの話だと、「従」と「主」が反対の ような気もするし、例えば、出てからシンナーやったか、あるいは覚醒剤かなんかやっ たかなと報道では感じたぐらいで、何かのきっかけからいわゆるキンドリングを起こし て、警官に対して被害妄想かなんかでやったかもしれない。ただ、これだけは何とも分 かりません。 ○部会長  重要な御指摘を多々いただきましたので、是非次回それらの点を踏まえて少し報告を 深くしていただきまして、また改めて御議論いただこうと存じます。  本日の主な議題が第3にございますものですから、この議題はこの程度で終わらせて いただきます。  それでは、先ほどから申し上げましたように、大和川病院問題を受けまして、一般的 な御議論をお願いいたそうと存じますが、最初に今回の事件に関連いたしまして、河 委員、吉川委員、小池委員から御意見を承ることが出来ることになっておりますので、 5ないし10分程度の範囲内でお三方のお話をまず承ろうと存じます。まず河先生お願 いいたします。 ○河委員  報告いたします。「大和川病院をめぐる動き」という今日の資料です。 ○河委員  時間の関係で、1ページ、2ページは読んでいただければ分かる訳なんで、3月10日 以降の大和川病院及びその関連の安田グループの2つの一般病院の問題も含めての経過 を書かせていただいています。  その中で、3ページの、大和川病院だけに話を絞っていきますと、上の方の、大和川 病院の約 500名もの入院患者がおって、その中で経過として、7月27日以降、それまで の分ということで、大精協(大阪精神病院協会)48病院で約1万 7,000ぐらいのベッド がある訳なんですけれども、その大精協加入病院に81名、中宮病院というのは大阪府立 の中宮病院に15名、他府県に16名、その他6名。この時点において、退院が85名、計 203名。 あと7月28日に安田氏が逮捕された。その時点で、実質3日ぐらいの間に大和川病院 の残っておった患者さん 228名を処理というのか、大阪の関係行政はチームを組んで当 該病院に出かけて、それまでに大精協の方で、あなたの病院は何名受け入れ態勢出来ま すかという態勢調査をしておりましたから、大体それに準じて大精協には 148名、府立 中宮病院に24名、他府県31名。他府県のうち奈良県に23名、兵庫で7名、京都1名、そ の他と。ここで退院が16名。  それの一番右の端を見ていただいて、 431名のうちで 101名が退院した。これも1つ の、いわゆる退院可能であった。現在この 101名の退院された方がその後どうなったの かということを我々の方でも、それぞれ人権問題があるんですけれども、どうなったの かということには関心を持ってしております。 もう一つ、大精協 229名の方を大精協の中で28名、29名、27名、20名以上の方を入院 していただいた病院が3病院。あと10名台の病院が4病院、そのほかが10名以下で、例 えば3名、5名。そのときの1つの大阪府の大精協との間の話として、超過入院も非常 事態なんだからやむを得ないということで、ある程度の超過入院をした病院もありま す。ここで8月5日現在で全部の患者が大和川病院から去っていった。これも実質3日 か4日のうちにそうしたということ。  その次の5ページ、この合計の今の 431名の第1回、第2回で入院患者がゼロとなっ た。  6ページが、平成9年の4、5、6月というもので調べたということで、平成8年の 4、5、6月。いわゆる平成9年の4月、5月、6月が実質大和川病院が入院を差し止 めをしたときからの4、5、6月、3カ月。それを1年前の8年の4、5、6月と比較 しまして、入院依頼件数というのは、大阪精神病協会の48のうちで28病院が救急を手挙 げ方式によって 365日24時間、その体制を順番制でとっている訳なんで、その病院に対 しての入院依頼というものを見てみると、いわゆる 1,248名と 993名、この差はやはり 大和川病院自身が入院をとめてからこうなったのではないかと。28病院に来たのではな いかというようなこと。 そして、通院、退院、そのほか診察の結果医療不要で、平成9年の4つ目の「入通院 出来なかった」という、これはいろいろ関係があるんですけれども、平成9年が 574名 で、平成8年の同じ月が 241名、574 名と 241名の差が大和川病院の入院を停止したそ の影響ではないか。  その下の「入院要請」というところを見ますと、大和川病院の入院をやめてからの平 成9年の4、5、6月の3カ月で 151名が警察から、そして、平成8年が83名。83名と 151名の救急隊から 499名と 431名。この差はやはり大和川病院自身が今まで入院させ ておった人が、そこを停止したから、これだけの者が来たのではないか。  7ページは、大阪の救急隊で、これは実態なので、平成9年1月から6月の末日まで の精神科の搬送人員は 1,938件。その内訳で、そのうちで1人の患者のために3時間以 上を費やしたのが33件ある。  その次に救急隊の、搬送先を確保するために1人の患者さんのために最高2時間40分 もかかったということがあると。それは保護室が独床でベッドが満床だということもあ るんだけれども、29条ではなしに、いわゆる処遇困難という、覚醒剤そのほか組関係の 方、あるいはいわゆる処遇困難といういろいろの例がある訳なんですけれども、そうい うために入院を断られる。1人の患者さんのために、5カ所、6カ所の医療機関を頼ん でも、どういう症状ですか、診察するのではなくて、意味は精神科の場合に連れてきて くださいと言って連れてきた。その方が自分のところの病院ではどうも対応出来ない 方、それが外科、内科、ほかの科だったら、すぐに市民病院とか府立病院とか大学病院 とかに後送システムがあるんだけれども、精神科の場合にはそれが一切出来ない。それ で、やはり入院さすときから、自分のところ自身に何とか出来るか出来ないかというこ とをしなければ、病院自身が大変なことになるというようなことからのことなので、そ の辺が公的がそのためにあるのではないかとか、いろいろな意見があるにしても、大阪 の場合に中宮病院だけで対応が出来ないと。自分自身が中宮病院さんにお願いするにし ても、中宮病院の自分が院長であってでも、大阪のこういう地区を抱えた大阪特有の処 遇困難者というものに対してはとても対応が出来ない。何とかその対応策を考えなけれ ばというようなことを今度の大和川病院のことから我々は感じているということ。  今それぞれの二百何十名の患者さんが、これはすぐ退院出来るんじゃないかという患 者さんも確かにおりますし、四百何名のうち 100名は退院したんですから、そのあとの 三百何名のうちでもすぐ退院出来るんじゃないかという方もおりますし、やっぱりこれ は大変だという方もいろいろと混じっておられる。  あと、我々の方で、民間病院に来た方々の今後の経過を現在調査中であり、何とかま とめてみたいというようなところで中間報告みたいなことですけれども、報告いたしま す。 ○部会長  ありがとうございました。  では吉川先生お願いいたします。 ○吉川委員  私がこれから申し上げようとすることは本当にメモでございまして、今回の大和川病 院事件を契機にして少し自分の頭の中を整理したものでございますのでお聞きいただき たいと思います。  私は今回のこの問題から考えましたことは、やはり長い間問われてきた公的機関と私 的機関の役割分担、あるいは棲み分けといってもいいのでしょうか、そういうことをも う少し真剣になって論じなければいけないんじゃないかということでございます。その もとに立ち戻って、そしてこの中に書いてありますように、少し踏み込んだ問題提起を したということでございます。  第1のところに「公的機関の役割」として大原則を立ててあります。これには反対の 方は勿論おられると思いますし、いろんな御意見があると思いますけれども、とりあえ ずお聞きください。措置該当の精神症状を持つような精神障害者の医療は、原則として 公的医療機関がこれを受け持ったらいいのではないか。こういう考え方であります。欧 米諸国では、ある意味では当然として受け取られておりますし、精神障害の一時救急も 含めて、公的医療機関がほぼそれを全うしておりますので、私はこれが妥当かなと思っ ております。現在、在院する措置患者は 5,000人から大体 6,000人ぐらいずっと平均的 に移動しておりますので、実態的にもこれが可能かなと思っている訳です。 公的医療機関が実際に受け入れなければいけない、あるいは受け入れるようなケース はどんなものかというのが、ここに1)、2)、3)、4)とその下にところに書いて あるものでございまして、先ほどから「処遇困難」というお話が出ましたが、処遇困難 という名称で調査をいたしました厚生科学研究の中でも、結果的には処遇困難というこ とではなくて、「重症精神障害」というような表現に変えられていたように思います。 そうしたものが最低限度見積もっても大体全国に 700人ぐらいだろう。少々多く見積 もっても 2,000、大体それぐらいではないだろうか、こう言われておりますので、これ を頭に入れております。 それから、依存性精神障害の受け入れに関しましても、これは公的医療機関としては かなり責任を持つべきなのかなとこう思っています。全国でほぼ2万人ぐらい現に入院 しておりますけれども、アルコール依存がそのうちの8割ぐらいを占めますので、アル コール依存はかなり治療的にも手順がついてきましたので、現在のところ触法薬物依存 というものを含めた依存性精神障害、その辺のところが担当になるのかということで す。  それから、先ほど福岡の件の話がありましたが、クリミナルなケース、犯罪にかか わったようなケースに関して、私的病院でそれをお受けいただくのは国の福祉行政の上 からいっても必ずしも妥当ではないのではないかと考えまして、改めて公的機関の責任 としてそれを考えたい、こんなふうに思っております。これに関してもかなり議論がお ありになるかもしれません。  そのほか、今救急の問題がたくさん問われておりますが、せめて一時的な救急の部分 はやはり公的機関かなという気がします。ただし、これは地域によってかなりばらつき がありますから、一時救急を全部公的機関で担うとなると、これは搬送の問題が猛烈に 大きくなりますので、勿論これは現状を考慮しなければいけませんけれども、あくまで も私の考え方としての基本でございますので、そんな提案をさせていただきます。  それから、2枚目にまいりますが、今回の大和川病院の問題とも直接関係ある指定病 院制度の問題でございますけれども、この指定病院制度の問題としては、私は歴史的な 意味では指定病院という考え方は役割を終えたのではないか、こういうふうに思ってお ります。指定病院は御存じのとおり精神病者監護法あるいは精神病院法というものが あったその時代の歴史的な産物でありまして、精神衛生法がそれを引き継いだというこ とから今日の精神保健福祉法までそれが連綿と続いてきた訳でございますけれども、現 段階ではそろそろそのことの見直しがあってもいいんじゃないだろうか、こう思ってお ります。ただ、そうは言っても、すべて公的病院。その公的病院という意味は、都道府 県立あるいは国立だけではなくて、市町村立やその他の公的医療機関も含めて考えます けれども、こうした公的病院だけでどうしても対応出来ないということもあるでしょう から、この指定病院制度全部を今いきなりやめるということではなくても、一度は指定 病院の返上というようなことが民間病院の方で考えられてもいいかなという気がいたし ます。  そうした上で、改めて措置入院を引き受けていただけるような精神病院に関しまして は、それぞれ指定医制度とも絡みまして、改めてお願いをするという、そうした国から のお願いがあってもいいのかもしれないと思います。いずれにいたしましても、こうし た措置入院患者、現在指定病院が抱えております措置入院患者に不利益なことがないよ うに配慮しなければいけないとは考えています。  そして3番目に、今度の問題とも絡みますが、私は精神保健指定医制度に関して、前 回のこの精神保健福祉部会でも発言いたしましたように、やはりオール・オア・ナッシ ング、一刀両断にこの指定医取り消しという形でしかない今の指定医の問題は少々問題 があると考えています。医療審議会などでも医師免許証に関しても停止ということが あって、それぞれの内容によって停止の期間も違う訳でございますし、そうしたペナル ティーの示し方がもう少し細かくなければいけないのではないかという気がしておりま して、このことについても触れさせていただきました。細かいところは少し中を省きま したけれども、今回私がこの機会に御提案申し上げることです。 ○部会長  ありがとうございました。  では最後に小池委員お願いいたします。 ○小池委員  まとまった準備はしておりませんが、大和川病院問題に関連して申しますと、社会的 入院の問題が一番大きな問題だと思うんです。実際に 100名以上すぐ退院した訳です が、入院の必要のない人が、中宮の院長の概算で言いますと、4分の1が最初から入院 の必要のない人。4分の1が1週間以内の入院で十分な人。つまり半分の人がすぐに退 院出来るか入院する必要がなかったということになります。  ですから、こういう社会的入院の問題は、精神病院だけが引き受けるという考えがそ もそも間違っておる訳でして、福祉施設であるとか労働政策であるとか、そういった問 題との絡みの多い問題です。実際に大和川病院に行ったのは救急システムに載ってない 緊急鑑定にも載ってないのが行っているんです。しかも釜ケ崎というどや街がある訳で すから、アル中が、あしたからの飯代がなくなるようなときには、ここなら入れてくれ るという病院が幾つかある訳で、その前で寝ころぶ訳です。それをまた入れるというこ とで、精神病院が成り立つという歴史的な側面もあった訳ですから、社会的入院の問題 を精神医療だけで扱うという考えをやはり考え直さんといかんと、この問題が一番大き いと思います。  ですから、それを国公立が入れないからだと(という意見があるが)、そういうよう なことは問題にならん訳で、河崎先生も認めておられる訳ですが、社会的入院をどう考 えるかというのが一番大きいですね。  それからもう一つは、司法ケースとして扱うべきであるケースが安易に病院に流れ込 むという問題がある訳です。処遇困難の中には司法ケースでやったらうまくいくケース もあります。その問題が整理されてない。  それから、救急隊から運んでくるのが全部精神科の患者か、医療の対象かというとそ うではない訳でして、タクシーがわりに救急車を使っている人がある。これは救急隊は よく知っている訳で、そういうケースが余りある場合は、場合によったら断るなり、病 院と協力して患者を説得するなりということも我々はやっている訳ですが、そういうも のをただ患者だからといって入れてしまうというのも問題で、これは社会的入院をどう 考えるかという大きな問題だと思います。  もう一つは、公立病院の問題ですが、これは国の政策であるとか住民の要望であると か議会の決議によって出来た訳で、それぞれ成立経過が違う訳ですので、一律にこれを 公的でやれとか国立でやれというふうに言えない訳です。これは実態を私ども厚生科学 研究班で調査いたしましたが非常に多様でして、都会と地方で大違い。過密地域と過疎 地域でも非常に違います。実態上機能が非常に違っておる訳です。しかも措置の運営が 県によって43倍の差があるというくらい格差が大きい。ですから措置の運営方法、診断 基準、扱い方、全部違う。こういう問題もやはり議論しておく必要があるのではない か。  最近ここ10年くらい、特に数年来は国公立に措置、特に公立ですが、措置が集中して おりまして、措置でも新規措置、新しい措置が集中しておりまして、ベッド占有率の 3.5倍、(全国平均)も動いている。あるいはその県の新しく1年間に措置になった ケースを平均すると20%を自治体病院が受けている。ところがこれも県によって差が あって、ゼロに近いところから 100%その県立病院が受けているところがある。県によ る違いが非常に大きいという実態がありますから、公立の問題を一律に論ずるのは無理 だと思います。 以上で終わらせてもらいます。 ○部会長 ありがとうございました。  あと20分時間が残りましたので、どうぞ御議論をお願いいたします。 ○藤原委員 この前にもちょっとお願いいたしておいたと思うんですが、精神障害者といっても、 今処遇困難とか言われていますが、重症精神障害になるのか分かりませんが、アルコー ル中毒とか薬物依存だとか性格異常だとか、こういうもの非常に困るんですよね。私は 保健所におりますので、警察が今捕まえているから立ち会えということがありまして、 一応立ち会いに行きますね。そしたら指定医の先生方は今診たら何ともないから、こん なのは措置不要となったときに警察が怒るんですよね。放したら、すぐまた事件起こす のが分かっているのにどうして措置してくれないのか。間に挟まって保健所は非常につ らいというかやりにくいところがございます。  それから、あと仮退院の問題もありましたけれども、通知だけしていただいても、社 会復帰の第一段階として仮退院がある訳なんで、その間地域で面倒見てと言われても、 24時間、今出ましたよでついて歩く訳にもいかないし、そういうことで社会復帰活動と しては、いろんな作業所だとか展開しておりますけれども、仮退院の間どういう処遇す るか。保健所の方の責任ということにもなってきたら、社会復帰はしていただかなけれ ばいけないし、面倒見切れないという問題もございますので、指定医の先生、指定医取 り消したらいいのだというようなことでなく、指定医の先生方は非常に責任は持ってい ただいておりますし信頼しておりますので、もっと権威を持たせていただきたいと思い ます。私たちは指定医の先生を頼りに、先生のおっしゃったように処遇したりお願いし たりしている訳なんです。  そういうことを十分議論していただきたいと思いますのと、もう一つ、今話がござい ましたけれども、結核も一緒なんですけれども、今錯乱しているとか、排菌とアルコー ル中毒と合併しているのがたくさんあるんですよね。排菌しているから結核病棟だと いっても、結核はこのごろ一般医療になりまして病床が減っておりまして、公的機関も 非常に減っておりますので処遇してくれない。精神病院も結核病棟を持ってない。そん なので責任をたらい回しされて、行くところがないというのもある訳で、地域では処遇 に非常に困る人がございます。  そんな面も含めて議論をしていただきたい、是非お願いいたします。 ○部会長  保健所のお立場からのお悩みでしたが、宮坂先生どうぞ。 ○宮坂委員  全然別な話です。 ○部会長  一寸おまちいただいて、今のお話でどうでしょうか。 ○河委員  例えば、今度の大和川病院の何人か別途民間病院へ来た訳なんですけれども、あの病 院はひどかった。しかし、ほかの病院で全然入院させてくれなかった、うちの覚醒剤の 子供を入院させてくれたから若干助かったんだというようなこともある訳で、今度の場 合でも、あそこが閉鎖になってから大阪でもあいりん地区(西成地区)から南と北とで 全然違う訳なんです、大阪自身でも。南の方にそういう方がずっと来る訳で、北の方で はほとんど行かないんですよね。  そうすると南で20ぐらいの病院が全部それを引き受けてきておる。極端な話、我々も 心が痛むんですけれども、18人入院させたんだけれども、その病院は14名を入院をお断 りしたと、この10日間の間に。あるいは夜間2名入院したんだけど、12名お断りした。 これはやはり自分のところでそれを一たん入院させたら、自分のところで最後まで診な ければいけない。でもやっぱり覚醒剤などは、病院によってはどうも診ることが出来な い。転院先自身を考えてもらえば、全部は一たんは入院させて、そして何かそのときの 処置をして、そして次転院をというようなシステムをつくってもらえばというのが、特 に大阪のうちでも南の方の意見です。  これがやはり今の所長さん言われた「地域でどうしていくのか」ということも考えて いただきたいと思います。 ○部会長  地域ということについての、先生の御指摘に関連して申し上げますと、精神保健指定 医というのは、「人権擁護」という問題を高く掲げておりますが、同時にもう一方に、 社会的な不幸な事件を起こさないために出来るだけの努力をするという要請もございま す。この2つのかみ合わせがなかなか難しい。こういう仕事をしている医者はほかにな く、また同じ精神科医の中でもこれほど矛盾した仕事をしないで、もう少し軽いところ の病人さんのみを扱う人もおりますのですが、いずれにいたしましても、精神保健指定 医という仕事が持っておる深い矛盾に御理解を賜りまして、今後ともどうぞよろしくお 願いいたします。  この件はこれまでで次の議題に移らせていたたきます。お待たせしました。宮坂委 員、どうぞお願いいたします。 ○宮坂委員  大和川病院の事件からこういうふうな話が出て非常に我々も反省しなければならない ということは分かってはいるのですが、大和川病院がこういうふうにいろいろの指導を 受けながらこのままずっと続いてきた。患者さんにしてみれば、内容を知らず入院した 人もいる。  一方、今救急車で運ばれた人はいないようなお話でありましたけれども、あそこへ行 けば何か入院させてもらえるんだというようなうわさなり状況があって、困ったらあそ こへ、言葉を悪く言えば放り込んでおけるので助かるよというようなことで利用したと ころもあるのであろうと思います。  それが非常にひどい病院であった訳です。大和川で引き受けてもらわなければ困ると いう患者さんがいる訳ですので、そういう患者さんを今後どういうようにして処遇をし ていくかということの議論をしていかないといけないのではないか。大和川病院が担っ ていた役目といいましょうか、役割といいますか、あれを大和川病院ではなくて一般の 病院、またどこの病院に担わせるかという議論をしていかないと、これが教訓にならな いのではないかと思いますので、吉川先生が1つ提案がございましたように、本当に 「処遇困難」という言葉がいいかどうか分かりませんけれども、そういう人たちをどう いうふうにして、これから治療に乗っけていくか。受け入れる側も大変ですけれども、 それを抱えている社会も大変ですし、その窓口である保健所も大変だろうと思いますの で、保健所も仕事がやりいいように、社会の住民もそういう人たちが出たときには、そ こに預けて早く治療することを考えていかなければいけないのではないかと思います。  このまま大和川病院のように、何でも引き受けてくれますよということではなくて、 是非救急のシステムをつくっていきたい。特に今困るのは、先ほど河委員からもあり ましたように、処遇困難な患者だろうと思います。救急隊が3時間40分もかかった。そ れでも入院させれたからまだよかったようなものですが、入院出来ないということだっ てあろうと思いますので、そのような救急システムというものもつくっていくこと。そ ういう患者を受け入れる病院には、何か手厚い措置をしてほしい。そして受け入れるよ うにする。それで、ある程度よくなれば、一般救急で言うならば、3次救急医療から、 2次病院へというようなこともあろうかと思います。そして、そこから社会復帰をさせ るというようなことを考えていかなければならないだろうと思います。是非そういうよ うなことをどうやればいいか、研究を早くしていただきたいと思います。 ○大熊委員  今の宮坂先生の考える基礎として、大和川病院にいた患者さんは、なぜ大和川病院に いたかというのの内訳を伺いたいんですけれども、例えば覚醒剤だからほかが引き取っ てくれなかったとか、痴呆で引き取ってくれなかったとか、何か本当は司法で扱うべき なんだけれどもとか、御飯食べるために入っているとか、その内訳はどんなぐあいでご ざいましょう。処遇困難のイメージが人によってすごく違っているんじゃないか。 ○田中課長  一応大和川病院に入院されている患者さんの病名分類がございまして、精神分裂病が 48%、躁うつ病が3%、器質性の精神疾患が9%、中毒性の精神疾患が26%、その他が 11%、精神遅滞は2%、てんかんは2%、こんな感じになっております。平成8年6月 30日現在の数字でございます。 ○大熊委員  中毒性とその他の内訳は、これ以上分かりませんか。 ○田中課長  中毒性の内訳は、アルコール依存症が19%、覚醒剤が5%、その他3%ということに なっています。その他の精神病の内訳はございません。 ○部会長  大熊先生いかがですか。 ○大熊委員  これだけで見ると、覚醒剤のところは確かにここでは診られないのに抱え込んでいた んでしょうけど、ほかのところについては、これがそのままであるならば、別に大和川 病院にお願いしなくても大丈夫なような感じでありますが、それともう一つの、覚醒剤 とかアルコール以外の中毒性のものについては、どういう仕組みをつくれば、ちゃんと うまく治療が出来るのかというのは、精神医療の方では確立されていないとしても、近 づいているとしたら、今どういう水準にあるのか、どなたかに教えていただきたい。 ○部会長  どなたかいらっしゃいますでしょうか。先生、次回回しにお願い出来ませんか。あと 5分しかないものですから、あしからずお許しください。 ○大熊委員  はい。 ○渡嘉敷委員  2点なんですけど、1点は小池委員がおっしゃった司法ケースが安易に病院に回され てくるというようなこと。小池委員がおっしゃっていることと、私がこれから言わんと するところが同じかどうか分かりませんけれども、要するに25条通報でくる簡易司法鑑 定で不起訴処分にするというふうに判断する医者は別に指定医でなくてもいい訳です ね。規定が何もないのだろうと思うんです。その辺は確かに都道府県の中で警察あるい は検察の方と詰めていく問題かとも思いますけれども、法体制上も不起訴処分にする簡 易鑑定をどういうドクターがどういうシステムでやるのか、もう少し詰めていただきた いと思います。  現実的に私どものところで25条通報で回されてきましたけれども、とてもこれは精神 医療の対象じゃないよということで措置不要にしたことがございます。そういうことも ありまして、もうちょっと簡易鑑定をしっかりしていただきたい。そのシステムを精神 保健福祉法上も何とか考えていただきたいというのが1点でございます。  それからもう一つは、先ほども大和川病院の事件の問題で、この病名から、これを精 神病院が引き受けるべきかどうかという御意見もあったように思うんですけれども、や はりこれは精神障害者の定義の問題にかかわってくることでしょうし、先般の法改正、 精神保健法から精神保健福祉法に変わったときだと思いますけれども、社会防衛的機能 から脱却するということは厚生省おっしゃったと思うんです。そういう観点から言いま すと、先ほど来大和川病院の役割ということを言われていますけれども、それは本当に 治療に対象にならない人を、治療出来ない人を何かはきだめと言っては語弊があるかも しれませんけれども、それを精神医療機関が担わなければいけないという役割からも精 神医療も脱却していいんじゃないのかと思う訳です。そこは突き詰めていくと、結局精 神障害者という定義のところに、従来から議論になっていますような精神病質あるいは それに類似したものをどうするのか、もう一度原点へ返って議論していただくことが必 要かと感じます。  でないと、これは25条通報にも関係してきまして、その関連から不起訴という形に なっていることも多いように感じますので、意見として述べさせていただきました。 ○部会長  ありがとうございました。どうぞ、牧委員。 ○牧委員  これは方向が違うのですが、安田病院がいいということは決して言っておる訳ではご ざいませんで、医療法人の存立の問題ですが、今回安田病院関連の3つの病院つぶされ た訳でございます。これは歴史始まって以来のことではないかと思うんです。先日大阪 で河崎会長のもとで常務理事会が開かれた訳でございますが、やはり指定を受ける人に も弁護士はついて一応弁護を受けることが出来る訳です。安田病院、それは悪いことし ました。いわゆる改善命令が出されました。看護婦に匹敵する患者を下げた。医者が少 ない。それに匹敵する患者を下げた。そして、病院の悪いところは改善した。こういう ふうにしましたという改善命令を守った。そして、それを県に提出した。その段階では とまらないで、これはつぶしてしまうんだということが、厚生省の権力で出来るのだろ うか。それが1点。  普通のこれは会社の場合、例えば勧業銀行、野村證券、我々の預けた金を総会屋に やってしまう。それこそ大変悪いことをしておる。これは上だけをかえて残しておる訳 です。安田もそれはきちんとすれば、上だけかえて医療法人は残していいということは 成り立たないのか。渡邉先生弁護士でおられるのであれなんですけど、その辺、私も非 常に素人で、全く分からんばかが言っている訳でございますけれども、その辺ちょっと ごちゃごちゃになって分かりませんので。 ○部会長  先生のおっしゃることよく分かりましたがどういたしましょう。次回回しでよろしい ですか。もう一方、時間がなくなりましたが、谷中先生のお手が挙がっておりましたの で、伺いまして、本日を閉めさせていただきとう存じますが、お願いいたします。 ○谷中委員  私はUCLAのハーバー校に行ったときに、緊急医療システムの最近のことをちょっ と聞きまして、今のことは日本の精神医療、今回の問題もまた浮き彫りにされたなとい う感じなんです。ちょっと参考までに申し上げますと、緊急医療システムの中で、病院 に連れてこられた方にまず血液検査をいたします。そして、アルコール反応、薬物反応 があったら警察に措置させるそうです。そして、分裂病の方は次に急性期と慢性期とに 分けまして、急性期の方は72時間でしかるべきところに措置出来るような形をとり、そ して、どうしてもそれが出来ない方の場合には後方病院に14日間といいましたか、そう いうシステムを持っております。  これがいいか悪いはちょっと問題がありますが、さて、我々の問題を考えてみます と、私も現場にいまして一番困るのが、これは警察なのか病院なのかという判断のとこ ろ。大体が病院にお願いせざるを得ないというこの辺のシステムは1つ大きな問題だと 思います。と同時に緊急を要するときになかなか一般精神科病院が引き受けてくれない という問題。これも大変大きな問題で、先ほど来出ています緊急医療システムを早急に 整備すべきものだと思いますし、出来得れば、公的病院があるベッドをあけて、いつで も門戸を開いてくれるということがないと、地域におけるケアシステムも非常に不安定 なものになると思います。  もう一つ、今回一番私にとって浮き彫りにされたのは、社会的入院の方の数が多いと いうことです。これはこのケースだけではなくて各民間病院も同じような状態ではなか ろうか。とするならば、3分の1、どの程度か分かりませんが、その方々が地域で暮ら すことが出来るようなシステムを早急につくっていくことも同時に進めていかなければ いけないのではないか。従来から言われていた日本における精神科医療の問題点が今回 も何か大きく浮き彫りにされたような気がしてなりません。長期入院の方々の処遇に関 しましても、また大変処遇上難しい方々に対しましても、これは病院でなくて警察では ないかと言われる方々に対しましても、少し医療と福祉と司法ともう少し分離しなが ら、このことをどういうふうに振り向けていくかということを検討すべきときが来てい るのかなという感じがいたしました。 ○部会長  ありがとうございました。最後、先生、簡単にお願いいたします。 ○大熊委員  今度のときは浦田先生がいらっしゃらないと思って、浦田先生がいらっしゃるときに 伺いたいのですが、先ほど非常に明快な御報告だったのですけれども、こういうものは 司法が介入したり詐欺が明らかにならない前にだって出来るはずで、先生のような方が 見れば、もっと前にこういうことがきちんと出来たはずです。  それから、今まだ決着がついてない長野の病院などについても、あそこはドーベルマ ンかなんかの犬がいて、さっきの保安係のおじさんみたいに中に人が入れないというよ うな状況にあるようでして、そういうところにはある程度一定の権限を持った人が入る 仕組みが既にあるのに、今まで機能していなったことについての御意見を承りたい。 ○部会長  先生、承っておくということでお許しをいただけませんでしょうか。6分を超過いた しまして恐れ入ります。このあたりで討議を終了させていただきまして、あと連絡事項 を課長から承って終わろうと存じます。お願いいたします。 ○田中課長  次回の部会の開催予定でございますが、先ほども御説明申し上げましたように、精神 保健指定医の指定及び取り消し処分について御審議をいただくという予定がございまし て、このために、お手元に日程調整表をお配りしてございますが、それに御予定を記入 していただきまして、本日もし御予定が分からないようでしたら後日ファックスで送っ ていただいても結構ですけれども、それで次の開催日を決定させていただきたいと考え ております。10月の中旬をめどに開催をしたいと考えておりますのでよろしくお願いし ます。 ○部会長  それでは、これで終わらせていただきますが、最後の方に皆さまいろいろ御質問が出 ましたのに途中で切り上げましてまことに恐れ入りますが、また、今後の部会で更なる 御議論を賜りますことをお願いいたします。  大変今日はお忙しい中をお集まりいただきましてありがとうございました。これで終 了いたします。 担当 障害保健福祉部精神保健福祉課  医療第一係  齋 藤 (内線3057)