97/08/12 第3回厚生科学審議会研究企画部会            第3回厚生科学審議会研究企画部会 1.日  時:平成9年8月12日(火) 15:00〜17:00 2.場  所:厚生省特別第1会議室 3.議  事:(1)平成9年度厚生科学研究費補助金公募課題の採択について        (2)「ライフサイエンスに関する研究開発基本計画について」に           対する答申(科学技術会議)について  4.出席委員:矢崎義雄部会長       (委員:五十音順:敬称略)          大石道夫 柴田鐵治 寺田雅昭       (専門委員:五十音順:敬称略)          杉田秀夫 高久史麿 土屋喜一 寺尾允男 初山泰弘 眞柄泰基           真崎知生 宮本昭正 柳澤信夫 山崎修道 ○事務局 それでは、定刻になりましたので、第3回厚生科学審議会研究企画部会を始 めさせていただきたいと思います。それでは、部会長よろしくお願いいたします。 ○矢崎部会長 大変お暑い中お集まりいただきまして、ありがとうございました。本日 は、全委員の先生方が御出席いただける予定になっておりますが、柴田委員が少し遅れ るということで、会議の方は進めさせていただきたいと思います。 それでは、本日の議題に入りたいと思います。 まず、初めは、本日のメインポイントであります平成9年度の厚生科学研究費補助金 のうちの先端的厚生科学研究分野における採択予定課題につきまして、まず、事務局よ り報告をいただきました後、審査にあたられた各専門委員会の委員長の先生方から御説 明をお願いいたしたいと思います。御都合のつかない専門委員の先生方につきまして は、担当の課長からお願いしたいと存じます。 それでは、採択予定課題につきまして事務局より説明をお願いいたします。 ○事務局 まず、最初に資料の確認をさせていただきたいと思います。 まず、研究企画部会の議事次第がございます。 それから、資料1といたしまして「先端的厚生科学研究分野公募研究課題の採択予定 について」でございます。 それから、資料2といたしまして『「ライフサイエンスに関する研究開発基本計画に ついて」に対する答申(科学技術会議)について』でございます。 それから、資料3といたしまして、『「国の研究開発全般に共通する評価の実施方法 の在り方についての大綱的指針」に関する意見(科学技術会議)について』でございま す。 資料4といたしまして、「厚生科学研究に係る評価の実施の在り方について」の 諮問書。 それから、資料5といたしまして、「厚生科学研究に係る評価の実施の在り 方について(付議)」がございます。この他参考として資料を添付させていただいてお ります。 以上でございます。御確認をいただければと思います。 それでは、資料1につきまして簡単に御説明を申し上げます。 1枚めくっていただきまして「先端的厚生科学研究分野公募研究課題の採択予定につ いて」という全体のとりまとめの資料でございます。ちょっと右端の方に横になってお りますけれども、ページ1と書いてある資料でございます。「脳科学研究事業」から始 まりまして、「ヒトゲノム・遺伝子治療研究事業」「高度先端医療研究事業」「新興・ 再興感染症研究事業」「エイズ対策研究事業」「感覚器障害研究事業」「免疫・アレル ギー研究事業」、以上の7つの研究分野におきまして総応募件数が1,588件一番多かっ たのが一番上にあります「脳科学研究事業」の493件でございます。 この応募の総要望額を合計したものが、一番下のところ、左から2番目の計でござい ますが、411億3900万円余りの要望をいただいております。今回それぞれの委員会から 上がってきた採択予定件数が246件、交付予定額の合計が一番下の欄右端でございます が、55億7,475万円ということになっております。  この資料につきましては、評価小委員による事前評価に基づきまして、専門委員会で の御議論を踏まえて作成をしていただいたものでございます。基本といたしましては、 専門家による研究面からの評価を中心に行政的観点からの評価を勘案いたしまして、採 択候補案という形で各専門委員会で取りまとめていただいたものでございます。 簡単ですけれども、以上でございます。 ○矢崎部会長 どうもありがとうございました。それでは、個々の分野別に各専門委員 の先生方から採択の経過について御説明をお願いいたしたいと思います。 予定としましては、先生方に大体7分程度で説明いただいて、あと3分を質疑にあて たいと思います。すなわち、各分野で大体10分ぐらいのペースで進行させていただけれ ば幸いに存じます。 それでは、まず最初に、脳科学研究の専門委員会の杉田委員長より、よろしくお願い いたします。 ○杉田委員 脳科学研究事業に関しましては、9つの分野、それは痴呆、精神、神経、 筋、発達障害、中枢神経外傷、睡眠・リズム障害、ストレスマネージメント、脳内薬物 受容体、9つの分野につきまして公募を行いました。ただいま御指摘がありましたよう に、応募件数は493件でありまして、そのうちの特別重点研究課題が227、奨励研究課題 が266でございました。この委員会では、柳澤委員を委員長とする評価小委員会、これ には研究者の15名から成っておりますが、ここでダブルチェックを行いまして、書面審 査の上、特別重点研究課題につきましては227 から31ぐらいに絞り込みました。 その際、原則といたしまして、やはり研究者の評点の高い順、それから、行政的な評 価も勘案いたしまして専門委員会に上げるような課題を選定いたしました。 専門委員会は、やはり研究者としては9名から成っておりますが、7月31日、8月1 日の2日間にわたりましてヒアリングを行いました。各応募しておられる研究者に10分 プレゼンテーション、これは特にプロポーザルと3年後の達成目標をどの辺に置いてお られるかということを中心に発表していただき、その後、5分のディスカッションを行 いまして、24課題につきまして採択を行いました。 同時に評価小委員会におきましては、266課題の奨励研究課題につきましても評価を していただきました。研究費の総額が決まっておりますことなので、かなり特別重点研 究課題にウエートを置きましたので、奨励研究課題の方は勿論、これも原則といたしま しては研究者の評点の高い順、同時に行政的評価も勘案いたしまして8課題を採択予定 課題といたしました。 大体、内容的には痴呆関係が4、精神が2、神経疾患が5、筋肉が4、発達障害が 2、中枢神経の外傷が2、睡眠・リズム障害が3、ストレスマネージメントが1、脳内 薬物受容体が1、合計24課題でございます。こういうことで割合スムーズに最終的な選 択予定課題を決定することが出来ました。 何か御質問ありましたら、お答えしたいと思います。 ○矢崎部会長 どうもありがとうございました。この分野は大変御苦労をいただきまし て、一番多くの演題が集まり、かつ、また、最終決定にヒアリングを行っていただいた という、大変時間をかけて厳選していただいたというふうに私ども感じております。ど なたか先生方で御質問ございますでしょうか。 ○杉田委員 ちょっとよろしいですか。評価小委員会の柳澤委員長が見えていますの で、実は評価小委員会が一番苦労された訳で、何か御意見がございましたら承りたいと 思います。 ○柳澤委員 ただいま杉田委員から御報告をいただきました上に、特別に付け加えると ころはございません。ただ、先端的研究ということで痴呆疾患の克服に関する研究を例 にとってみますと、色々な領域のものが応募されましたけれども、どちらかというと研 究者の評点は、分子生物学的なアルツハイマー病の病因に関わる研究に高い点が集まっ たために、それらが選ばれたということがございました。 次年度以降、先端的研究の在り方という点では、むしろテーマだけではなくてその研 究領域につきましても、ある程度のガイドラインを提示する必要があるかもしれないと いうふうなことを少し感じましたが、本年度は既定の方針に従って選定をいたしました ので、特別困るといいますか難しい問題はなかったように理解しております。以上で す。 ○矢崎部会長 どうもありがとうございました。そのほか御議論ございますでしょう か。前回、だいぶ研究者評価と行政的な観点からのディスクレパンシーが生じたとき に、どう対応するかというのが随分時間をかけて議論されましたけれども、この脳科学 研究の領域では、余り大きな乖離みたいなものはなかったというふうに理解してよろし いでしょうか。 ○杉田委員 それは、やはり神経科学の非常に基礎的な面の非常にレベルの高い研究で も、行政的な点数が低いというような形で足切りをいたしましたので、残念ながら通ら なかったというのはございます。しかし、これは厚生省の研究費でありますから仕切り をするのは、私はやむを得ないと思います。 それから、ある程度の点数で足切りをしましたけれども、その前後でほんの僅かの差 で落ちてはいるけれども、サイエンティフィックな評価が非常に高い方はヒアリングに 来ていただきました。それで、行政の方にも聞いていただいて、本当に行政的な面で低 いのかどうかということを見ていただきまして、その方は実は当選しておりますので、 やはり我々は、かなりクリティカルなところは全部お呼びしたつもりでおります。 ○矢崎部会長 どうもありがとうございました。随分ヒアリングまで手を掛けて決定し ていただきまして、本当にありがとうございました。よろしいでしょうか。 それでは、次の課題の「ヒトゲノム・遺伝子治療研究専門委員会」の委員長の高久委 員から説明をいただけますでしょうか。 ○高久委員 御報告いたします。資料1に採択予定課題が載っております。この「ヒト ゲノム・遺伝子治療研究事業」分野の応募の総件数は179件でして、内容は、まず第1 に「ヒトゲノム解析研究分野」、2番目が「遺伝子治療基盤研究分野」、3番目が「研 究基盤高度化研究分野」、その3つの分野に分かれています。 最初の「ヒトゲノム解析研究分野」は、疾病の原因となる遺伝子の解析、それから遺 伝子診断等の研究が主体でして86件の応募がありました。 次の「遺伝子治療基盤研究分野」は、主として遺伝子治療法の開発、遺伝子治療用の ベクターの開発あるいは安全性評価等の研究でして、79件の応募がありました。 3番目の「研究基盤高度化研究分野」は、ヒト由来の組織・細胞等の研究資源として の収集、確保、標準化、実験動物系の開発、あるいは研究資源情報のネットワーク化等 の研究基盤の高度化に関する研究でして、この分野は14件の応募がございました。 他の分野と同じように、研究評価小委員会委員による評価と、それから、先程からも 話題になっております行政側の評価委員による評価を行いました。私どもの分野では、 研究評価小委員会による評価と行政側の評価委員の評価とは非常によく一致しておりま して、特に片一方がよくて片一方が悪いために、悪い方に足を引っ張られたというよう なことはございませんでした。 7月28日にヒトゲノム・遺伝子治療研究専門委員会を開催いたしまして、各研究分野 ごとに採択候補課題を選定いたしました。なお、類似の研究事業との重複、調整、研究 費の予定交付額の調整については、委員長の私に一任されました。その結果として、最 終的に特別重点研究課題に関しましては、まず第1の「ヒトゲノム解析研究分野」につ いては7課題、「遺伝子治療基盤研究分野」については10課題、「研究基盤高度化研究 分野」については7課題の合計24課題を採択いたしました。奨励研究に関しましては、 研究評価小委員会の委員による評価を重視し、全分野から7課題を採択案としておりま す。  「ヒトゲノム解析研究分野」につきましては、従来から厚生科学研究費補助金の実績 がありまして、それに課題の重要性、発展性、実現性などから評価して、最高1億円の 研究費を配分することにいたしました。 次の遺伝子治療基盤研究分野については、従来の厚生科学補助金による配分の過去の 実績、臨床との関連、課題の発展性、実現性等から評価して、課題数を若干増やして10 課題といたしました。 それから、最後の「研究基盤高度化研究分野」は、ヒトゲノムの解析研究、遺伝子治 療研究、基盤研究に関して幅広い研究基盤の高度化を目的としたものでありまして、ヒ トゲノム研究のベースになる研究であるというふうに理解をいたしまして、応募件数は 少なかったのですが7件の採択をいたしました。  なお、応募課題の重複などにつきましては、それぞれ一本化することを前提として採 択しております。 以上、合計31課題を採択予定候補課題として、お手元の資料にありますような研究費 の交付予定額を作成いたしました。 以上であります。 ○矢崎部会長 どうもありがとうございました。ただいまの御説明に何かコメントはご ざいますでしょうか。 選定過程につきまして詳しく御説明をいただきましたけれども、先生、2番目の「遺 伝子治療基盤研究分野」では、特別重点研究課題にしては、研究費が比較的少額の先生 が第2の分野と第3の分野にいらっしゃいますけれども。 ○高久委員 実は、御自分たちが比較的少額を申請されてこられたものですから、強い て増やす必要はないのではないかと思いました。 それから、この1、2、3分野、特に第1分野と第2分野に関しましては、先生方御 覧になっておわかりのように、実績のある方がほとんどでございまして、今までの積み 重ねもあるということでこういう金額にしております。 ○矢崎部会長 いかがでしょうか。この分野は焦点が絞られているということと、比較 的成果がきっちり計算出来るというところもあって、そういう点ではそう大きな問題は ないかと思いますけれども、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。どうもありがと うございました。 続きまして、高度先端医療研究専門委員会の治療機器等開発研究分野につきまして は、健康政策局研究開発振興課の岩尾課長から、御説明よろしくお願いいたします。 ○研究開発振興課長 それでは、高度先端医療研究事業のうち医療機器関係の専門委員 会の選定過程について御説明申し上げます。 治療機器等の研究開発に関する分野といたしましては、人工臓器の開発に関する研 究、それから、マイクロマシンを利用した治療機器の開発に関する研究、画像支援下治 療システムの開発に関する研究、在宅医療機器の開発に関する研究、医療の効率化に資 する診療支援機器の開発に関する研究の5分野について公募が行われました。応募は全 部で110 課題でございました。 複数の評価小委員、総数16人でございますが、これによりまして書面審査を行いまし て、14課題に絞り込みました。その絞り込みにつきましては、原則として研究者の評点 を優先しつつ行政的評価も勘案し、専門委員会へ上げる課題を選定いたしました。 手続といたしましては、研究者の評点が20位以内かつ行政官の評点が20位以内に6課 題ございました。それ以外で研究者の評点が5位以内の3課題、それから、行政官の評 点が5位以内の3課題、それ以外で研究者評点と行政官の評点の合計が10位以内の2課 題ということで計14課題となっております。他の分野に比べまして、行政官の評点の5 位以内の3課題というのがございますが、御存じのとおり治療機器の中でも特に人工臓 器の開発ということが移植医療との関連でも重要視されているところでございます。そ のような観点から、行政として人工臓器の開発に最重点を置くということで、このよう な観点からの評価をさせていただきました。  この14課題につきまして、7月29日国立循環器病センターの菊池総長を委員長とする 10名の専門委員、それから4名の行政側委員からなる専門委員会を開催いたしました。 当日は2人御欠席でしたので12名の出席でございましたが審議を行いました。全体の説 明、それから、施設間・課題などの整合性などを審査いたしまして、最終的にそこにご ざいます5課題の採択となった訳でございます。人工臓器の関係が最初の3題、それか ら、マイクロマシン、画像支援下の治療システムで各1題という形になりました。以上 でございます。 ○矢崎部会長 どうもありがとうございました。この分野につきましては、研究者の評 価と行政的な評価をそれぞれ順位付けをはっきりさせて議論があり、2方向から検討さ れて、最終的にこういう採択に至ったという御説明ではないかと思います。何か御質問 ございますでしょうか。 この寺岡先生の490万円というのは、御自分の申請がそういう額であったということ ですか。 ○研究開発振興課長 はい。ハイブリッドものについては、最初の雨宮先生が肝臓、そ れから、寺岡先生が膵臓ということで出ておりましたが、金額が寺岡先生は確か3年計 画で1年目はこの額という要望でございましたので、そのまま採用させていただきまし た。 ○矢崎部会長 いかがでしょうか。ただいまの御説明でよろしゅうございますか。 ○土屋委員 今の寺岡先生のタイトルは、これでよろしいんでしょうか。「埋込型バイ オブリッド」という新しい言葉を使っておるんでしょうか。「ハイブリッド」ではない んですか。 ○研究開発振興課長 すみませんでした。研究計画書には「糖尿病に対する完全埋込型 バイオハイブリッド人工膵島による治療に関する研究」、「バイオ」と「ハイ」と両方 入っております。 ○土屋委員 そうですか。 ○矢崎部会長 詳しくは存じ上げませんけれども、コラーゲンで3次元の構造をつくっ て、そこにベータ細胞を入れて1つのチャンバーをつくって埋め込んでいるような研究 ではないかと思います。 ○土屋委員 人工物と生物とハイブリッドという意味ですね。 ○矢崎部会長 そういう意味ではないかと思います。ですから、完全な人工臓器ではな くてベータ細胞をとり出して、それを人工構築の中に長く生きられるような環境を作っ て、臓器ではなくて細胞移植で糖尿病の治療を完全に、しかも血糖値に応じてインシュ リンが分泌出来るような仕組みではないかと思います。 ○土屋委員 分かりました。そうすると、バイオハイブリッドですね。 ○矢崎部会長 それが正しい表現ではないかと思います。 どうも御指摘ありがとうございました。その他ございますでしょうか。 ○寺田委員 これでいいんだと思うんですけれども、同じような人工赤血球の開発に関 する研究が北畠さんと土田さんがありますが、内容的には同じようなものか、アプロー チが違うから別個に差し上げたのか、そういうことは考慮に入れなかったのか、どうい う判定をされたんでしょうか。 ○事務局 事務局からですけれども、これは次に説明をさせていただくことになってお りますので、よろしくお願いします。 ○寺田委員 失礼しました。 ○矢崎部会長 それでは、次に移らせていただきます。 次は、高度先端医療研究専門委員会の人工血液開発研究分野につきまして、寺尾委員 よりよろしくお願いします。 ○寺尾委員 それでは、人工血液開発研究分野につきまして御説明いたします。 この分野は人工赤血球、人工血小板、人工抗体の3つのジャンルにつきまして課題を 募集いたしました。全体で17課題という非常にコンパクトといいましょうか、ほかの分 野に比べますと、それほど応募課題数が多くはなかった訳であります。けれども、評価 小委員会で採点をいたし、あと行政上の必要性という意味でそちらの切り口からも採点 をしていただきました。専門委員会では、この評価小委員会の評点を参考にいたしまし て評価をいたしました。17課題と数が少ないものですので、大体上位10課題程度につ き、個々の課題につきましていろいろ御議論をいただきました。 この17課題の点の分布の仕方というのが、幸い非常に点の高いものから比較的低いも のまでクリアに分かれておりましたので議論は楽であったのですけれども、一応そうい う意味で上位10課題につきまして、今、申しましたように個々のものにつきまして評価 をして、ここにございますように5課題を採択候補として上げました。 この内訳は人工赤血球が2課題、人工血小板が1課題、人工抗体が2課題ということ でございまして、17課題の順位を見ますと、ここに入っております5課題がちょうど1 位から5位までという格好になっております。 それから今、寺田委員の御質問の人工血液の2課題につきまして内容が非常に近いの ではないかということでありますけれども、一番点が高かったのは4番目に書いてあり ます土田先生の人工赤血球の創製ということでありまして、これはセル型、それから、 アセル型の人工赤血球を創製していこうということであります。もう一つの北畠先生の 人工赤血球は、むしろ人工赤血球を使うと副作用が出る、血圧が上がるということがあ るのですが、その原因が血管内皮細胞あるいは血小板の中から一酸化窒素が出てきてし まってヘムにくっついてしまうということがあるので、初めから人工赤血球の方にSニ トロシル化をしておけば、それが抑えられるのではないかという発想で人工赤血球をつ くるということですから、視点が大分違うということになっております。 以上でございます。 ○矢崎部会長 どうもありがとうございました。寺田委員、今の御説明でよろしいです か。 ○寺田委員 どうも先走った質問をしまして申し訳ありません。よく分かりました。 ○矢崎部会長 その他何かございますでしょうか。 ○高久委員 ちょっと教えていただきたいのですが、人工免疫グロブリンの課題が2 つ、1つは人工抗体ですが、今、血液事業の方で免疫グロブリンの国内需給が半分以下 なものですから、何とか人工的に出来ないかということが議論になっております。提案 されたテーマはご覧になってかなり実現性があると考えてもよろしいんでしょうか。 ○寺尾委員 では内容をちょっと申し上げますと、黒澤先生のものは抗体のライブラ リーを作ろうということであります。ですから、すべての抗原に対してうまくフィット するような抗体の方のライブラリーをつくるということで、これを公開していくという ことであります。 それから、5番目に松浦先生が書いてございますけれども、これはC型肝炎の患者さ んの中で自然治癒をする方がいる。その患者さんの抗体を調べてみると、C型肝炎ウィ ルスがリンパ球に結合するところを特異的に抑える抗体があるんだということが分かり まして、これを基にしまして、人工的にC型肝炎ウィルスの治療用の抗体が出来るので はないかということでやるということであります。ですから、今、先生がおっしゃいま した内容といいましょうか、人工抗体云々という話とお答えになっているかどうか分か りませんけれども、内容はそういうことでございます。 ○高久委員 どうもありがとうございました。 ○矢崎部会長 よろしいでしょうか。この分野は厚生省としても大変重要な領域であり ます。従いまして、評価委員会の評価と行政的な評価が一致するかどうかということ と、今、高久委員から御質問のあった実現性はいかがなものかという、この2点がポイ ントではないかと私も思ったんですけれども、今、お話をお聞きしますと、テーマその ものがすごく絞られて血小板あるいはグロブリンというテーマでありますので、恐らく 評価委員会の評価と行政的な評価が一致したというのは、比較的テーマが各個別に絞ら れていたということではないかと思います。 また、実現性につきましては、今、御説明いただいたということで、すぐの実現とい うのはなかなか難しいかもしれませんけれども、1つ1つ解決するということで非常に 重要な分野の研究になるかと思います。恐らく、これは後で問題になりますように、今 後、研究の振興の評価で、実際に厚生省の希望どおりに研究が進んでいるかどうかとい う評価をきっちりしなければならない分野でもあるのではないかというふうに感じてい ます。 その他にいかがでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、どうもありがとうござ いました。 続きましては、新興・再興感染症研究委員会の委員長の山崎委員から、よろしくお願 いします。 ○山崎委員 新興・再興感染症研究事業の候補者選定結果を御報告申し上げます。 この事業は、予算総額は15億円でありますけれども、研究事業を円滑に推進するため の推進事業費というのを別に取らなくてはいけなくて、15億円のうち4億円はそういう ことで今回の公募に対する配分額から除いております。それから、感染症は昨年のO15 7感染症のような突発的な事態に備えた緊急事態に対応する研究費の予備がどうしても必 要ということで、これに対して1億5,000万円を予備費として保留するということで、 結局15億円から4億円と1億5,000万円を取って、9億5,000万円に対して公募が行われ た訳であります。 他の研究事業と同じく5月23日の官報に載せ6月23日で締め切られた訳ですが、その 結果、平成9年度の応募総数は365件。これには特別重点研究課題と奨励研究課題Aと 奨励研究課題Bに分かれますが、特別重点研究課題が127件、奨励研究課題Aが132件、 奨励研究課題Bが106件応募されました。 研究評価のやり方ですが、国立感染症研究所エイズ研究センターの吉倉センター長が 評価小委員会の委員長で、12名の評価委員がおるのですが1人1人が全部365件を見る 訳にはいかないので分担して、研究者評価は1課題について2名、それから、行政的緊 急性評価は3名があたるというようなことで、科学的評価の方は2名の研究者の平均 値、それから、行政的評価の方は3名の研究者の平均値ということになります。7月16 日までに評価小委員会のピア・レビューによる書面評価が行われまして、つい先日8月 7日に専門委員会において評価小委員会の評価に基づき採択候補の選定を行いました。 研究者による評価基準は5項目ありまして、科学的重要性、厚生科学的発展性、研究 の独創性・新規性、研究者・施設の資質、研究目標の実現性と、この5項目について各 項目5点満点。したがって、5×5の25点満点というのが科学的評価。それが、さっき 言ったように2名の研究者の平均値を評点として行った訳です。 行政評価の方は行政的課題との関連性とか行政的重要性、行政的緊急性の3項目につ いて各項目5点満点。したがって、合計15点満点というのを先ほど言いました3名の研 究者の平均値として出しております。 実際に評価を行うにあたっては特別重点研究課題、奨励研究課題A、Bともにお手元 の資料にございますように(1) 「O157 感染症」、(2) 「インフルエンザ」、(3) 「薬 剤耐性菌」というふうに14項目に分類して行いました。 この研究評価小委員会で行われました研究評価を基に専門委員会が8月7日に開かれ た訳でありますが、専門委員会ではこの評価結果を尊重いたしまして、それを基に平成 9年度の新興・再興感染症研究のまず採択方針案というものについて議論した訳であり ます。 まず、特別重点研究課題につきましては、今言いましたように14研究分野がある訳で すが、まず採択数をどうするか。これは先程言いました9億5,000万円を分けるという 中に特別重点研究課題は大体8億6,000万円ぐらいになるんですが、これに対して応募 数その他評点ということから加味して、必然的に研究費枠によって限定されてくる採択 数というのが大体決まってくる訳です。当然、研究課題については研究分野の重要性に 配慮しながら、なるべく一つの分野に偏らないように14研究分野の研究課題の選択を行 いました。勿論、ある分野によっては非常に応募者が少なくて、ほとんど単独で通過し たものもございます。 それから、選択の順位の決め方ですが、これは評価小委員会の評点の高い順から勿論 採択した訳でありますが、特別重点研究課題につきましては22点以上、先程申し上げま した2人の研究者の平均値として出された研究評価25点満点、これの25点を最高値とす る場合に、22点以上というものを取りました。従って、このときには行政的評価は考慮 に入れない。順位を決める場合は、研究評価でやるということで22点以上で選びまし た。 しかし、専門委員会ではこれを機械的にやるのではなくて、その厚生行政上の必要性 にも十分配慮して、それをもう一度書面で見直すということをやりまして、かなり時間 がかかってしまいました。 配分額としては、この特別重点研究課題は1課題当たり約3,000万円を上限といたし ます。実際は節約分その他がありまして、これより多少下回ります。 それから、奨励研究課題の方は、採択数は奨励研究課題のAとBそれぞれについて大 体30件程度を目安にやった訳でありますが、採択の順位としては、先ほどの特別重点研 究課題が22点以上であったのに対して、まず奨励研究課題Aの方は満点を取ったものは なかったものですから20点以上。それから、奨励研究課題Bの方は17.5点以上を一応合 格ラインとして選びました。予算配分額としては1課題につき奨励研究課題Aの方は 200万円、奨励研究課題Bについては100万円ということになっております。 その結果、この資料にありますように、特別重点研究課題が37課題選ばれておりまし て、奨励研究課題Aが26課題、奨励研究課題Bが36課題という選択候補リストが作成さ れました。先程言いましたけれども、昨年のO157 感染症の集団発生のような緊急事態 に対応するために1億5,000万円を保留しております。 それから、交付予定額につきましては、奨励研究課題Aの200万円と奨励研究課題B の100万円は採択方針で決まった訳ですけれども、特別重点研究課題、先程言いました 1課題当たり3,000万円の査定につきましては、厚生行政における重要度の観点から交 付要望額から査定を行っていく訳であります。 今年度は余りにも一般応募の課題が多かったものですから、なるべく多数の研究課題 を採択したいという基本的な考え方がございまして、どうしてもやむを得なかった訳で すが、1課題あたりの研究費の額が多少少ない班も出来ました。 以上でございますが、この研究部会で専門委員会によってまとめられました採択候補 リストの研究課題により、最終的な御採択をお願いしたいと思います。 以上です。 ○矢崎部会長 どうもありがとうございました。脳科学研究に次ぐ多数の応募件数で、 しかも14分野という多方面にわたったテーマで御検討いただきましたけれども、ただい まの御説明でいかがでしょうか。 ○大石委員 非常にたくさんの課題で御苦労だったと思うのですけれども、1つ一般的 に見まして、例えばO157の場合、この大腸菌を抗生物質等で叩いた場合に、どうして ベロ毒素が出てくるかというメカニズムは非常に大事なポイントだと思います。ここの 4題を見ましても、そういう基礎的な、いわゆる今の分子生物学的なテクニックあるい は知識からいいますと、やさしいとは言いませんけれども、やれば色々なことが分かっ てくるのではないかと思います。そして、それが将来の治療、あるいは予防につながる のではないかという見解を私はいつも持っています。そういうようなテーマがここに採 択されなかったというのは、もともとそういう提案がなかったのか、あるいは他の理由 で、そういうことよりもむしろここに書かれているようなものに重点を置くという方針 だったのか、その辺をちょっと御説明いただけますでしょうか。 ○山崎委員 専門委員会では、そのような議論は実はなかったんですが、評価委員会で はあったかもしれません。多分、この特別重点研究課題に勿論それが上がってきていれ ば可能性は非常にあったと私は思うんですが、奨励研究課題ではそういうのが2〜3あ ったと思います。特別重点研究課題では、やはり厚生省としてトキソイドワクチンの開 発を急ぐということで、この課題が選定されたというふうに思っております。当然、ト キソイドワクチンの開発をやるためには、基礎研究としてベロ毒素産生のメカニズムが 分からないといけないと思いますので、当然その研究計画も含まれていると思います。 ○宮本委員 他の分野に比べるとかなり採択数が多く、その中のかなりのものが国立感 染症研究所のテーマですが、この辺りについては何か採択のときに問題になったとか、 特別配慮されたということはございますでしょうか。 ○山崎委員 ありました。もし、これを問題にするならば、私はこの厚生科学研究費の やり方を基本的な問題から考え直さなければいけないのではないかと個人的には思って おります、後で申し上げますが。 今回も敷かれたレールの上で特別重点研究課題まで含めて全部一般公募としてやって しまった以上は、客観的な評価委員会の数値に頼るしかないんじゃないかというのが専 門委員会の意見でございまして、これはそこで変えたものは1つもなくて、さっき言い ました25点満点で最上位から機械的に選びました。その結果が、こういう感染症研究所 が多くなってしまったということでございます。 ○矢崎部会長 いかがでしょうか。今なかなか感染症に真っ正面に取り組んで研究を進 めるというところが少なくて、東京大学も伝染病研究所が医科学研究所になってしまい ましたし、国立感染症研究所がこれから本当のよりどころになるし、これからも国民の 期待も大きいと思います。今のお話では評価で厳正にやった結果として、こういう結果 になったということでございますので、よろしいでしょうか。 それでは、次に移らせていただきます。次は、エイズ対策研究専門委員会でありま す。保健医療局エイズ疾病対策課長中谷課長より、よろしくお願いいたします。 ○エイズ疾病対策課長 本日は、吉倉専門委員会委員長がこの場に参りまして御報告す るのが本意でございますけれども、公務出張中でございますので、代わりまして御報告 を申し上げます。 専門委員会は、8月7日に開催されまして栗村大阪大学名誉教授を除く全委員が御出 席でございました。採択をすることが適当と認められました方につきましては、資料1 に載ってございます。その過程について御説明を申し上げます。 公募を行いました4分野につきまして、総数で93件の応募がございました。その内訳 でございますが、公募課題第1のHIV感染症に関する臨床研究、特別重点研究課題が 9、奨励研究課題が18。 第2の公募の分野でございますHIV感染症の医療体制に関する研究、特別重点研究 課題5、奨励研究課題3。第3の分野でございますHIV感染症の疫学研究、特別重点 研究課題が3、奨励研究課題が7。 第4の分野、HIV感染症に関する基礎研究、特別重点研究課題14、奨励研究課題が 34。 計、特別重点研究課題でいいますと31、奨励研究課題でいいますと62、合計いたしま して93件の応募があった訳でございます。 これらにつきまして、16名の委員から成る評価小委員会がそれぞれの課題につきまし て書面審査をいたしまして、研究者委員は科学的重要性、厚生科学的発展性、研究の独 創性、研究者・施設の資質、研究目標の実現性、これら5点の観点から。行政委員は行 政的重要性、行政的緊急性、行政的課題関連性、この3点の観点から採点をいたしまし て、その採点を参考に8月7日に行われました専門委員会で論議を行ったところでござ います。 その結果、評価小委員会の採点結果に基づいて、概ね採択されておりまして、各分野 におきます研究課題の案というものがつくられた訳でございます。 公募課題1のHIV感染症に関する臨床研究につきましては特別重点研究課題2、奨 励研究課題2。第2のHIV感染症の医療体制に関する研究、特別重点研究課題2、奨 励研究課題2。 HIV感染症の疫学研究、特別重点研究課題1、奨励研究課題2。 HIV感染症に関する基礎研究、特別重点研究課題2、奨励研究課題15。 計、特別重点研究課題でいいますと7課題、奨励研究課題でいいますと21課題が採択 するに適当と認められたところでございます。 なお、エイズに関する基礎研究のうち第2番目にリストアップしてございます「HI V感染発症阻止方法開発のためのウイルス増殖と細胞反応の分子機構に関する基礎研 究」、これにつきましては、他の大型研究に採用される見込みのある研究者の方が応募 されておりましたために、研究テーマは極めて重要だということで研究テーマをまず承 認をし、主任研究者は研究班員の中から選考するのが適当とされまして、委員長に一任 されたところでございます。その結果、国立感染症研究所エイズ研究センター第一室長 の武部先生に主任研究者を変更して、この場に御提出した経緯がございます。 また、研究費の額につきましては、委員長一任とされました。エイズ研究を集中的か つ緊急に進捗させることが行政上も重要であると、このような観点から募集要綱の中で 特別重点研究課題にあっては年間5,000万円から2億円程度と、このような額を想定し ておりました結果、非常に超大型の研究費を認めるというような分野がある訳でござい ます。これを起用したいと思っております。 それから、専門委員会におきまして、今年度は初年度であることもありやむを得ない が、今後の課題として研究企画部会に報告をすべきとされた主な意見3点ございました ので報告をいたします。 第1が各研究事業において同一の選考方法にすべきではないか。例えば、脳科学研究 事業ではヒアリングを行ったのに、エイズのパネルはヒアリングを行わなかった。この ようなパネルごとの手続というものを標準化すべきではないかというような意見がござ いました。 第2に、他省庁及び厚生省の他の研究費との重複申請、この調査につきまして事前に より調査を詳細にし、調整を行ってほしいというような意見がございました。 第3が、行政的重要性が大きい研究につきましては、指定研究の形を取る方が好まし いのではないか、このような3点の指摘をこの研究企画部会に報告をするようにという ような意見でございました。 以上でございます。 ○矢崎部会長 どうもありがとうございました。ただいまの御説明で、ほかの分野と大 分金額その他が違っておりますけれども、何か御質問、コメントございますでしょう か。 エイズ研究というのは、厚生省が一番重要な課題として取り組んでおられる訳ですけ れども、金額が極めて大きいということは、代表者がその領域の研究をとりまとめて進 めるということで、他の分野の研究とその点少しニュアンスが違っておる訳です。そう しますと、2億円という金額でも、ある特定の施設に集中的に行くのではなくて、先程 のお話にありました指定研究にある程度近い形になっている訳でしょうか。 ○エイズ疾病対策課長 ただいまの御質問にお答えをいたします。 例えば、一例を申し上げますと、エイズに関する臨床研究の福武班は1億円でござい ますけれども、これは血友病の患者さんたちのフォローアップという形で、全国の先生 方に御協力を得ながら行っていきますので、大変多くの関係者の方が参加をすると、こ のような研究事業でございます。その他につきましても、やはり様々な経緯上、多くの 研究者の方々の協力を得ながら進めていこうということで、結果的に大きな額となって おります。 ○矢崎部会長 よろしいでしょうか。 ○高久委員 今の課長さんがおっしゃった2番目の問題ですね。同じ人が主任研究者と なって多額の研究費を他から貰っている場合にどうするかという問題は、他の省庁の研 究費の配分のときにも問題になっています。同じ研究者が同じテーマで複数の省庁の研 究費を貰うということはなるべく避ける。この事については調査がなかなか難しい場合 もありますが、基本原則をはっきりしておく必要があるのではないかと思います。テー マが違えばまた別だと思いますが。 ○矢崎部会長 先生のおっしゃるとおりだと思います。その点については、ある程度調 査は進まれてます。今回の場合は。 ○事務局 各申請者の先生方には関連するテーマの研究費等申請状況、あるいは研究費 の受領状況について付記をしていただいております。評価にあたって御参考にしていた だいたということがございます。 それから、申請中のものにつきましては、行政ベースでの事務局同士での情報交換、 また厚生省でも他の並行して募集しておりました大型研究、医薬品機構によるいわゆる 1億円プロジェクトとの重複の排除等につきましては、配慮させていただいておりま す。 また、医薬品機構と同様な仕組みで、他の6省庁が所管しております同様の研究プロ ジェクトにつきましても、機構を通じまして、調整・情報交換を行ったところでござい ます。 ○矢崎部会長 どうもありがとうございます。そうしますと、高久委員が言われました 同一研究者が同一テーマで応募されるということは、今後もそういうことがないように 十分配慮していくということで、ここでまた確認させていただきたいと思います。よろ しくお願いいたします。 その他、ございますでしょうか。よろしいでしょうか。 それでは、次の感覚器障害研究専門委員会の初山委員から、よろしくお願いします。 ○初山委員 それでは、御報告申し上げます。 感覚器障害研究事業133題の応募がございました。評価委員の先生方は11名でござい ますけれども、事前に評価委員会を開く余裕がございませんでしたので、専門委員の先 生方の御意見を伺いながら評価委員の先生に、次の点を注意していただき評価をしてい ただきました。 第1は、聴覚言語障害系と視覚障害系、それから両障害にまたがるものと3群に分け ていただきました。 それから、第2には、これは抵触するかもしれませんけれども、少なくとも2〜3年 前まで同一の教室においでになった先生、例えば前教授であるとか、あるいは前部長で あるという先生方は同一の研究テーマの評価には加わらない。当然、御自分で出された テーマについても評価に加わらないことといたしました。 その結果、1つの研究テーマについて、2名から4名ぐらいの先生方に評価をお願い することになりました。1人の評価委員あたり、最も少ない先生が23題、最も多い先生 が40題ぐらいになりまして、大変申し訳なかったのですがお願いいたしました。 評価の点数は、先ほど御紹介がありましたけれども、研究者の評価点数が25点、行政 の評価点数が15点。最初の評価の結果、研究者の評価が15点以下、行政の評価点が7.5 点以下の研究テーマにつきましては、第一次の選考で切り捨てといたしました。 それから、3,000万円前後のものを特別重点研究課題とし、大体500万円以下のものを 奨励研究課題とし特別重点研究項目が21課題残りました。最終的に1テーマ平均5,000 万円としますと、8テーマぐらい選ぶことになりますので、大体倍としますと15〜16題 ぐらい、これをヒアリングの対象にし、なるべくたくさんの先生方にヒアリングの機会 をお与えしようということで21課題をヒアリングの対象にいたしました。 奨励研究課題も高得点の順に、37題が二次選考に残りました。 実は、官報で募集しました分野について7分野ございますが、専門委員会の先生にお 願いする場合に、分野ごとに分けてヒアリングをお願いしようということで試みたので ありますけれども、非常に成績のいい課題の分野と、成績が悪い課題の分野がございま して、せっかく高得点を取ってもヒアリングで採用されないおそれがありましたので、 最終的には聴覚障害系の10題、視覚障害系の10題、それから、視聴覚両方にまたがる1 題の計21題をヒアリング対象といたしました。 ヒアリングでは10名の専門委員の先生の中で御二人欠席されましたので8名でござい ました。それから、行政側の委員が5名、全員出席でございました。 聴覚障害系の中から4題、それから、視覚障害から4題、合計8題。もし、視聴覚障 害系をヒアリングの結果、これを採用する場合にはどちらか視覚障害か聴覚障害を落と すということで、お一人の専門委員の先生に8題丸を付けていただくということにいた しました。このヒアリングでも直接関係のある機関、あるいは先ほど申しました同一の 教室で前教授、前々教授という方の中で、数年前まで同じところで仕事をされていた先 生方は棄権をしていただくということで同意されました。ですから8題のところを7題 の先生もございますし、一番少ない先生は6題丸を付けていただきました。 その結果、行政側と研究者の専門委員の先生で丸の数の多いものから採用いたしまし た。聴覚障害系、視覚障害系おのおの上位3位ぐらいまでは問題なかったのであります けれども、最後のどれを取るかということで幾らか問題がございました。 1つは、行政の方の丸と研究の方の丸が一致しなかったものがございます。基本とし て研究の評価が1つも入らなかったのは落とすことにいたしました。 あと、もう一つは、視覚障害で新家先生と小口先生が同一の研究テーマに入りました けれども、応募されましたのは別々で、別々にヒアリングいたしましたので、これを同 一の班に入れるかどうかということを委員長にお任せをいただいて厚生省と相談いたし ました。最終的な結果が、こういう8題となった訳であります。 それから、奨励研究は先ほど申し上げましたような37題で、大体、上位の方から20題 取ろうということでございましたけれども、結果的にはいろいろ検討した結果17題が採 用になった訳でございます。 ○矢崎部会長 どうもありがとうございました。この分野もヒアリングを行っていただ いたということで大変ありがとうございました。ただいまの御説明でいかがでしょう か。 新家先生は、最終的には一本化ということでよろしいですか。 ○初山委員 両先生にお願いしまして、結構ですという御了解をいただきました。 ○矢崎部会長 よろしいでしょうか。それでは、どうもありがとうございました。 最後の課題になります。免疫・アレルギー研究専門委員会で、本日は工藤先生。 ○工藤専門委員 それでは、免疫・アレルギー等研究事業の専門委員会からの御報告を 申し上げます。 免疫・アレルギー等研究事業につきまして公募がございましたが、6分野について総 数198件の応募がございました。 内訳は6つの分野があるのでございますが、免疫・アレルギー性疾患に関する分野で は、第1の症状発現及び増悪に関する研究につきまして、特別重点研究課題が28、それ から奨励研究課題が51ございました。 第2の分野でございます効果的治療法の開発に関する研究につきましては、特別重点 研究課題が14課題、奨励研究課題が18課題ございました。 第3の分野でございます予防等に関する研究でございますが、特別重点研究課題が7 題、奨励研究課題が9題でございました。 それから、臓器移植の問題でございますが、第4の分野、免疫寛容を中心とした基礎 研究につきましては、特別重点研究課題が9題、奨励研究課題が18題でございました。 5番目の分野でございます基盤整備に関する臨床研究でございますが、特別重点研究 課題が9題、奨励研究課題が14題でございました。 6番目の分野でございます社会資源整備に向けての研究につきましては、特別重点研 究課題が5題、奨励研究課題が2題ということでございます。 それから、その他の分野で14題の奨励研究課題がございました。 それで、評価小委員会がそれぞれの研究課題につきまして書面審査をいたしました。 これは先程来述べられておりますように、決められた方法によりまして評価採点を行っ た訳でございます。その評点を参考にいたしまして、7月30日に専門委員会を行いまし て、採択について議論致しました。 その結果、ほぼ評価小委員会の採点結果の順位に基づいて、各分野における研究課題 が選定された訳でございます。 なお、72例もの多くの特別重点研究課題の応募がございましたために、研究費配分に つきましては先端的厚生科学研究の重点化という趣旨を踏まえながら、1課題につきま しては多少減らさざるを得ないということになりまして、免疫・アレルギーについては 1課題3,000万円、それから、臓器移植については1課題6,000万円に研究評点を加味し まして多少増減をするということといたしました。 選択課題の内訳は資料1にあるとおりでございまして、免疫・アレルギー性疾患につ きましては、第1の分野であります症状発現及び増悪に関する研究につきましては、特 別重点研究課題が4、奨励研究課題が5ということになります。 第2の分野であります効果的治療法の開発に関する研究につきましては、特別重点研 究課題が2、奨励研究課題が0となっています。 第3分野の予防に関する研究につきましては、特別重点研究課題が1、奨励研究課題 が0ということになりまして、免疫・アレルギー等疾患につきましては、特別重点研究 課題が7ということになりました。 それから、臓器移植につきましては、4番目の分野でございます、免疫寛容を中心と した基礎研究では特別重点研究課題が1、奨励研究課題が3。 第5番目の分野でございます、基盤整備に関する臨床的研究につきましては、特別重 点研究課題が2、奨励研究課題が2ということになりました。 6番目の分野でございます、社会資源整備に向けての研究につきましては、特別重点 研究課題が1、奨励課題が0。従いまして、臓器移植につきましては特別重点研究課題 が4ということになりました。その他の分野では、特別重点研究課題あるいは奨励研究 課題はございませんでした。 以上でございます。 ○矢崎部会長 どうもありがとうございました。ただいまの御説明のとおり免疫・アレ ルギー等研究事業では、当面の課題であります臓器移植に関するテーマに関しては、少 し研究費の基本のベースを厚めに配分をされたという御配慮の説明だったかと存じます が、どなたか。 ○宮本委員 この研究は、原則として3年間と理解しておりますが、実はアレルギーに 関しましては長期慢性疾患のアレルギーの総合研究班がございまして、来年が2期目の 2年目でもともと3年の予定のところが、免疫・アレルギー等の研究事業が発足したた め2年で打ち切られ、しり切れトンボというような点がございます。西間先生、牧野先 生の研究班についてはある程度配慮していただいたという点がございます。先日の選考 委員会では3年ではあるけれども一応1年、すなわち、2期目の3年を完成していただ くという意味で1年ということにし、改めてまた次年度に申請してもらい、新たに選考 すべきであろうという意見でした。この点につき御討議いただきたいと思います。 ○矢崎部会長 どうもありがとうございました。ただ今のは、今まで厚生省の総合研究 の流れをくんだ研究班があって、それが今度、審査ということで、3年計画でやってお られる先生で今回入らない先生もいらしたんですか。 ○宮本委員 評価点数が低かったり、申請されなかったりした場合は論外です。一応、 申請されて評価も高く、しかも従来の3年の計画の下での研究という場合には、一応1 年ということで採択したらということでした。工藤先生のお話に追加させていただきま した。 ○矢崎部会長 今の御説明でございますけれども、一応そういう先生方は1年で、もう 一度新たに申請し直していただくと。 ○宮本委員 そういうことです。 ○矢崎部会長 御了承いただけますでしょうか。そのほかの点で何か御質問、コメント ございませんでしょうか。 ○山崎委員 全体的なことでもよろしゅうございますか。 先ほど、分野によっては指定研究というようなお話がございましたけれども、私も今 回の専門委員会についての議論を色々聞いたり、課題選定で色々皆さん苦労したのを見 ていまして、やはり厚生省でやらなければならない研究分野というのは、必ずしも一律 の評価とか一律の採択方式で統一的に出来るものではないんじゃないかなという気がす るんです。 例えば、脳とか神経なんかは比較的学問的な厳しい評価だけでも出来るのかもしれま せんけれども、エイズとか新興感染症というものは、いわゆる厚生省の危機管理に結び 付いた行政ニーズの高い研究というのが当然ある訳で、それをやはりきちっとやるため に、こういう厚生科学研究費を与える。少なくとも感染症分野においてはそういう解釈 が成り立つのではないかというふうに思うんです。 ですから、それをあくまでも公募形式で特別重点研究課題まで全部やろうとします と、実際はどういうことが行われるかというと、結局、厚生省の事務局でかなりの事前 努力をやらなければ国に役立つ研究課題は一般公募では出てこないと私は思うんです。 だから、実際はそういう苦労をなさったんだと思うんですけれども、それを余りやり過 ぎますと、また外から厚生省は色々非難を受けるということにもなりかねない。 ですから、非常に難しいのかもしれませんけれども、私は厚生科学研究費の課題選定 には少なくとも2種類は初めに大別して、分野によっては採択方式が全く指定なら指定 でいくということをはっきり公言してしまえば、非難を受けることもないのではないか というふうに思いますが、そういう可能性についていかがでしょうか。大変これは評価 される人も苦労しますが、最終的に専門委員会で決めなければならないという時に、や はり大事なものが落ちていることだってある訳で、それは公募形式を取る以上はしよう がないと思うんです。公募形式でやると学問的に価値の高いものしか拾われません。そ れは、必ずしも厚生省にとって本当に正しいことかどうかということに、私は非常に疑 問を感じます。非常に泥くさい研究でもやらなければならないことというのはある訳 で、それをあえて公募にするというのは下手にやるとかえって非難を受けるのではない かという気がいたします。 ○矢崎部会長 ただいまの御発言は、来年に向けての御発言だと思いますので、とりあ えず本日のこの公募予定の課題の御承認については、今の御説明で御承認いただけます でしょうか。 ○初山委員 1つだけ訂正がございますが、17ページの特別重点研究課題の視覚障害の ところで、金澤先生が自治医科大学附属大宮医療センターの講師になっておりましたけ れども、センター長の間違いだそうです。大変失礼いたしました。御訂正お願いしま す。 ○矢崎部会長 どうもありがとうございました。御訂正よろしくお願いいたします。 今の山崎委員の御発言は、ちょっとこの後で議論させていただきたいと思いますけれ ども、一応、平成9年度の研究課題の採択について、この部会で御承認いただけますで しょうか。よろしいでしょうか。 (「異議なし」と声あり) ○矢崎部会長 どうもありがとうございました。お陰様で膨大な公募研究の中から今、 各分野ごとに御説明いただきましたように、大変研究的な側面、そして議論のありまし た行政的な側面から非常に的確に評価をいただいたということで、大変ありがたく存じ ます。 それでは、ここで伊藤審議官から先生方に多大な御苦労をお掛けしましたの で、一言御礼を述べたいとおっしゃっておられますので、よろしくお願いいたします。 ○伊藤審議官 平成9年度の先端的厚生科学研究分野におきます公募研究課題の採択に つきまして、部会の委員の先生方、評価小委員会、専門委員会及びその他たくさんの方 に大変御協力いただき、本日このようにおまとめいただきましたことに対して、まず御 礼を申し上げたいと思います。 本年度につきましては、公募方式による先端的厚生科学研究分野が創設されまして初 年度であったということ、また、4月に厚生科学審議会が発足したばかりだということ もございまして、非常に短時間で作業を進める必要があったということから、関係者の 皆様方には大変御迷惑をお掛けいたしたと思います。 そして、この色々な評価小委員会・各専門委員会の過程におきましても、委員の皆様 方から、2つの委員会の役割とはそもそも何かということでございますとか、評価の手 続でございますとか基準等に関しまして、色々審査を進めながら、その途中の段階で 様々な御意見をいただいているということで報告を受けている訳でございます。 今回、御議論の中でも、今、山崎委員を始め、例えば、そういう公募課題だけでいい のかというような御意見でございますとか、政策的に指定というようなことも検討して はどうかというような御意見もございました。 従いまして、来年度以降につきましては、本年度の手続を十分検討させていただきま して、審議会でひとつそのこと自体を課題の選定の基本的な考え方というものを含めて いろいろ御審議をいただき、仮に指定というようなものを取り入れる場合には、何故そ れを指定にしたかという議論の経過なり、そして、いろいろ部会の意見が外に見えるよ うにするといいますか、そういうことも配慮しながらやっていくというようなことが必 要でございますので、今年度につきましては、今、部会で御決定いただいたものを事務 的に迅速に各研究者に研究費が交付されるよう、私どもとしても事務的に迅速に手続を 進めさせていただきますが、本年度以降といいますか、今後のことにつきましては、当 審議会の部会で十分御審議をいただきまして、来年度以降の在り方について御検討して いただくことをお願い申し上げたいと思います。 どうも色々大変ありがとうございました。 ○矢崎部会長 どうもありがとうございました。私の方からも委員の先生方には、御多 用のところを多大なお時間を費やして、厳正に公平に御審議を進めていただきましたこ と、心から御礼申し上げます。 本件につきましては、後日、厚生科学審議会の総会において私の方から報告をするこ とになるかと存じますので、何とぞ御了承のほどお願い申し上げます。 先ほどの山崎委員からの御提案でございますが、たしか2回目の部会のときに寺田委 員からもそのような趣旨の御発言がございましたので、今、伊藤審議官からの御説明に ございましたように、今年はそういう経過でこのように決めさせていただきましたけれ ども、来年度は十分に透明性を保つ上で、指定研究の在り方をどうしたらいいかという ことを議論を進めて具体化していきたいというふうに存じておりますので、また、御議 論のほどをよろしくお願い申し上げます。 本日の議題は、その他に科学技術会議からの案件がありますので、残された時間を少 し御説明とお願いをさせていただきたいと思います。 それは、去る7月28日に開催されました科学技術会議におきまして、総理大臣に対し 資料にございます『「ライフサイエンスに関する研究開発基本計画について」に対する 答申』と「国の研究開発全般に共通する評価の実施方法の在り方についての大綱的指針 に関する意見」という意見具申が行われておりますので、これにつきまして、まず、事 務局から説明いただけますでしょうか。 ○事務局 お手元の資料2の方をごらんいただきたいと思います。これは、今、部会長 から御指摘にありました科学技術会議におきまして答申として出されました、「ライフ サイエンスに関する研究開発基本計画」の概要のみをここに資料として添付しておりま す。なお、答申全文につきましては、お手元の参考資料の方に用意させていただいてお ります。 大部のものですので概要の方を用いまして御説明させていただきたいと思いますが、 本日御出席の大石委員、寺田委員は科学技術会議ライフサイエンス部会の委員として、 この作成に御苦労されておりますので、非常にその先生方を前にして御説明するのは口 幅ったいのですが、役目でございますのでお許しを願います。 まず、この位置付けでございますが、昨年策定されました、科学技術基本計画に基づ き、それの具体的な分野ごとのものというふうに御理解いただきたいと思います。特 に、厚生省では生命と健康という問題で、このライフサイエンスに関する基本計画で係 わりの深い省庁ということになってまいります。 まず、この意義といたしましては、人間のための生命に関する科学と技術ということ で、単なる科学的な現象を追い求めているだけではなくて、人間のためのというところ の視点を強調しておられるというところが非常に重要な点かと思います。 従来の研究は、ミクロな分野に向かってどんどん進んで参りました。生命というもの について細胞からそのまた中、更には分子学的な解明というふうに進んでまいりました けれども、今回の計画ではマクロとして人あるいは生物の群あるいは生態系というもの について着目をしていくという、マクロで見るという視野がもう一つ導入されておりま す。ミクロに突き進んでいくということとともにマクロでとらえていく。そして、こう いったものが最終的には新医療技術あるいは環境保全、食料生産、新産業創出といった 人間が健康で明るく生き抜いていくための色々な技術に反映していくんだということを 掲げております。 一方、世の中を見てみますと、国際競争の激化とか、あるいはこういった研究を進め る上での装置を含めました大型化というものが背景に存在して居ります。それを今後ど のように我が国として進めていくか、これは政府としての取り組みの計画でございます ので、国として何をするべきかということが次に大きく掲げられております。 国としては、やはり基礎科学研究に重点を置いた支援を行っていくことはもとよりで ありますけれども、それとともに統合システムとしての生物に関する研究開発、具体的 には発生あるいは脳、がん、あるいは先ほどマクロと申しました生態系、生物圏の研 究、こういったものに国としての力点を置くということを示しております。 それとともにゲノムなど基礎的生体分子に関する研究開発、いわゆるゲノムの解析等 につきましても、従来、配列解析はおよそ西暦2005年ぐらいには目途が立つということ になってまいりましたけれども、機能解析まで含めた形でのゲノム等に着目した研究の 推進ということが、ここに述べられております。 こういったような研究の推進とともに、人間・社会・自然、特に人間と自然といった 二元論ではなく、そこに社会といったものを入れた形での調和といったことが指摘され ております。 次でございますけれども、こういったようなことを進める上で研究開発に際しまし て、情報の公開と国民の理解・支持の確保ということが強くうたわれております。国民 のライフサイエンスに関する関心の高まりの一方では、関心はあるけれども、よく分か らないといったものに対して、研究開発に携わる研究者の方々からの自発的な社会に対 する情報の公開、国民に説明をする努力というところが強く呼び掛けられております。 それに基づいて国民の理解と支持があって、初めて国の資金を投入した研究の推進が図 られるという考え方になっておるかと思います。 そして、その中でもライフサイエンスの推進の中におきまして、人間の尊厳や倫理等 の問題を抜きに、このライフサイエンスの進展は図れない、ということが繰り返し述べ られておりまして、研究者における不断の省察と自発的対応の呼び掛けが出ておりま す。 また、特にこの審議の途中で大いに話題になりましたヒトのクローニング、あるいは 動物等のクローニングにつきましても、特に文章を割いておりまして、畜産動物と動物 のクローン個体の作製等につきましては、情報の公開を行いながら適宜推進ということ がきちんと述べられておりますとともに、ヒトのクローン個体の作製につきましては、 社会的な受容がないということ等を指摘しつつ、当面これを実施しないということも明 確に述べられております。 こういったようなことについて、更にまた、科学研究の推進に当たりまして、それに 伴います安全の確保あるいは安全性評価システムの一層の充実、いわゆるレギュラト リー・サイエンスについても並行して推進が必要であるということが述べられておるか と思います。 最後に章立ていたしまして「今後10年程度を見据えたライフサイエンスの重要領域と 課題」ということで、非常に多様なものを取り上げておりますが、基礎研究の領域、そ れから社会的、経済的ニーズに対応するものといたしまして、そこにありますような生 活者のニーズに対応する、いわゆる安全の確保、ここでは疾病の克服と健康の維持・増 進ということで、ライフサイエンスにおきます「がん」、循環器病をはじめとした各種 の疾患に対する取り組み。また、それに対応する遺伝子診断とか体細胞を対象とした遺 伝子治療といった、新たな治療法の開発といった点が指摘されております。 また、人口の少子高齢化に伴いまして、とりわけ高齢化に伴います疾病の増大や、あ るいは高齢に伴います体力の老化、衰えといったものに対する取り組みといったことが 指摘されております。 そして、先程もありましたように人間・社会・自然との共存といった形で、自然環境 の解明とその保全といったことが重要な課題として取り上げられておりますとともに、 食料の持続的生産、まず、衣食足りて礼節を知るといいますか、そういった点での食料 の持続的生産ということについても科学技術の適用ということが求められております。 また、経済フロンティアの拡大と新産業創出といった点で、これらの技術開発が新産 業創出の基礎となるといった点についても、特に、先程、脳機能の解明を始めといたし ました非常に基礎的と思われる取り組みが新産業創出に結び付くという点についても注 意を喚起しております。 特に、こういったものを推進する上で、研究開発基盤につきましては、研究用材料の 開発、保存、供給体制の整備充実、特に実験用の動植物、それから、ゲノムを初めとし ます生物遺伝子資源の確保といった点に呼び掛けがなされておりまして、こういったも のを知的情報交流の拡大とデーターベースの整備ということが求められております。 また、研究を推進する上で産学官の連携、特に知的財産権の1つのキーワードといた しました連携、また安全性評価システムの確保と供給といったことが求められておりま す。 国際協力につきましても、お付き合いとしての国際協力ではなく我が国が指導 的、主体的な国際協力を進めるということ。それから、先進国同士の仲良しクラブでは なく、開発途上国との協力を進めるということ、ここも指摘されております。 また、研究者及び研究支援者の養成と確保ということに章を割いておりまして、若手 研究者の養成と確保、研究支援者、単なるお手伝いさんではなく特別な研究技能を持つ 研究者を支える特殊技能者の養成と確保といったことが特に文章として述べられており ます。 最終的に研究開発投資につきまして、我が国としても政府が引き続き民間と協 力をして投資を進めていくということが求められていますが、具体的な金額等について は特にここでは求められておりません。 こういったようなことが、約100 ページ余りの答申として出ておりますので、答申全 文につきましては後ほどお時間の空いたときに是非お読みいただいて、今後のこの部会 での御議論のベースとしていただければありがたいと思っております。 もし差し支えがなければ、引き続き資料3、大綱的指針の件についても御説明させて いただければと存じますが。 ○矢崎部会長 よろしくお願いいたします。 ○事務局 それでは、資料の3をお願いいたします。 こちらは同じ7月28日の科学技術会議におきまして、それまで検討されておりました 「国の研究開発全般に共通する評価の実施方法の在り方についての大綱的指針に関する 意見」ということで意見具申されたものでございます。 これにつきましては、科学技術基本計画の策定と推進に伴いまして、従来になく大型 の研究投資が各省庁を通じて行われるようになってまいりましたが、こういったものを 実施する上で、単に投入すれば足りるということではなく、それを効果的に実施する上 で、評価ということが欠かせないということで、科学技術会議として、その大綱的指針 を出したものでございます。 ここでは、評価実施主体、すなわち各省庁を始めといたします研究を推進するとこ ろ、あるいは研究を自ら実施いたします国立大学、国立試験研究機関等の研究機関ある いは国から資金を受けて研究実施いたします民間グループあるいは民間機関等を含め、 とにかく国の資金を用いて研究を行うものすべてに通用する大綱的指針ということでご ざいます。 基本的には、重点的・効率的配分を行う。また、柔軟かつ競争的で開かれた研究開発 環境を整備する。そして、国民の理解と支持を得るということが、この大綱的指針の目 標とするところであります。 評価実施主体におきましては、この評価を実施するための具体的な仕組みの整備を行 うとともに、自ら評価を実施し、定期的な情報提供を国民各位に対して行っていく。ま た、研究者は、この評価の重要性を認識して積極的に協力をいただく。評価者は単なる 評価だけではなく、研究者に対して助言と励ましを与えるという観点からの評価を実施 いただくといった構想で出来ております。 基本的な考えといたしまして、まず評価基準を明確に定め、透明性のある評価の実施 を確保する。また、出来る限り第三者を評価者とする外部評価の導入に努める。また、 国民に評価結果等を定期的に公開するなどの開かれた評価の確保を進める。最終的に は、評価結果を研究開発資源の適切な配分に生かすといったような評価のしっぱなしで はなく、それがはね返るといったものが求められております。 このような形での評価につきまして、特に研究開発課題の評価を行うに際しまして は、原則として事前、事後、それとともに今回、御議論いただきましたような3年から 5年といった大型研究につきましては、例えば5年以上の期間を有するにものについて は、3年を1つの目安といたしまして定期的な中間評価を実施する。また、研究開発期 間そのものにつきましても、3年から5年程度を1つの目安として、機関としての定期 的な自主点検評価あるいは外部評価を行うといったことが示されております。 評価結果の取扱いにつきましては、先ほど申し上げましたような透明性、公開性とい ったこと。それから、当然のことながら、評価を受けた者に対します評価結果の開示と いったことが明示されております。 当然のことながら、こういった大変な作業でありますので、同じ意見具申の中には評 価実施体制の充実ということで実施主体におきます規定等の整備とともに、参考資料、 データベースの構築あるいは研究者への支援措置、要員や予算の確保といった点につい ても言及がございます。 留意すべき事項としまして繰り返しのような形になっておりますけれども、評価に伴 う過重な負担の回避、特に研究者の本来の研究開発活動に支障となるようなことのない ように配慮をすることが求められております。 また、研究開発の性格等においては適切な配慮、特に国立試験研究機関等におきます 各種の研究というよりも試験的な作業、行政的なニーズに対応した業務といったものに 対する配慮、標準品の作成配付といった基礎となるような各種の活動に対する配慮とい ったことが求められています。また、国立大学につきましても、その特性に着目すると いうことで1章を割かれております。 また、数値的指標の活用ということが示されておりますが、ここにおきましても単に 数値にこだわることなく総合的な評価ということも大事であるということが、併せて述 べられておるかと思います。 また、試験調査や短期間では業績を上げにくい研究開発、特に計画的な調査等短期で はなかなか成果の出ないものにつきましても、定期的な3年から5年ごとの評価といっ た単位で、それでもなおかつ評価がしにくいものといったものについての配慮といった ことが指摘されております。 最終的に、ここでも先ほどのライフサイエンスの基本計画と同様、人間の生活・社会 及び自然との調和といったことが留意点として述べられております。 研究開発課題の評価につきまして、特に競争的資金、このような公募型のものにつき ましては、事前の評価はもとより中間及び事後の評価を充実するようにということが求 められておりまして、特に大規模なものにつきましては、その事業自体について全体の 在り方を定期的に評価するようにという求めが出ております。 また、国を挙げて実施いたします非常に広い範囲をカバーするメガサイエンスにつき ましては、これを主体から独立した組織、即ち第三者評価を中心としたものにより、か つ広く国民の意見を反映するような工夫を凝らすようにというような形での中間評価の 実施が求められております。特にこういったメガサイエンスにつきましては、科学技術 会議が関与するようなことも考慮するということが併せて述べられておるかと思いま す。 こういったような形で、大規模な大綱的指針が示されたところでございまして、我が 厚生省におきましても、これに対応した形で厚生省の各種のこういった研究について、 どのように評価を実施していくか、是非、御検討をお願いしたいということでございま す。 実は、資料の4と5に於きまして本件をベースにいたしまして、厚生大臣から厚生科 学審議会に対しまして諮問が出、審議会会長の豊島先生から矢崎部会長に対しまして、 この部会で審議をしていただきたいという付議が出されております。申し添えさせてい ただきます。 ○矢崎部会長 大部の資料を大変分かりやすく御説明いただきまして、どうもありがと うございました。 ただいまの説明にございましたように、国の研究開発全般に共通する評価の実施方法 の大綱的指針ということでございました。関連して今、お話のあったとおり厚生大臣か ら厚生科学審議会に対して、厚生科学研究にかかわる評価の実施方法の在り方について の諮問が行われ、会長から私どもの方に付議されておりますので、私どもで今後、審議 を進めていきたいというふうに存じております。 今、御説明ございました答申の中では、厚生科学の推進の将来の在り方、指針につい て大分詳しく、ほとんどその中に含まれているというふうに考えてもいいような大変立 派な答申が出されておる訳ですが、今、お話ですと寺田委員と大石委員がこれにかかわ っているということで、寺田委員何か厚生科学という切り口から御意見、御説明が更に いただければというふうに思いますけれども、いかがでしょう。 ○寺田委員 今の事務局が説明されたので十分よく説明されていると思いますし、特別 付け加えるようなことはありません。これとは別に本当のことを言いますと、厚生科学 とは何ぞやと定義のところからちょっといろいろとやる必要があろうかと思っておりま すけれども、科学技術会議の説明に関しましては、非常に要領よく分かりやすく説明さ れたと思います。 ○矢崎部会長 大石委員、何かございますか。 ○大石委員 特にございません。 ○矢崎部会長 どうもありがとうございました。 そうしますと、先ほど山崎委員からの御発言がありましたけれども、厚生科学研究の 在り方といいますか、そのものについてを含めて評価の問題を中心に据えて今後、この 研究企画部会で審議を進めさせていただきたいと思います。これを具体的にどう進める かは、例えば具体的にはワーキンググループをつくって審議を詰める、その他のことが 考えられますけれども、それについては、今後、更に検討を加えさせていただきたいと 思います。今日はこの御説明をいただいて、また、先生方にこれについてお考えをまと められていただければ大変ありがたく存じます。今の御説明あるいは本年度の研究課題 を振り返って、先ほど山崎委員の御発言のような趣旨も含めて何か御意見をいただけれ ば、今後の企画部会の進め方で大変ありがたく存じます。委員の先生方で何か追加の御 意見はございますでしょうか。 ○寺田委員 よろしいですか。今日の議題に入っているのかも分かりませんけれども、 途中経過の評価をどの辺でやるのかということに関しては一応コンセンサスが早い時期 にあった方がいいかと思いますが、そのように理解していいですね。 ○矢崎部会長 評価は非常に大事でありますし、それを確実にフィードバックするシス テムをつくらなければいけないと思いますので、私個人的には比較的早い時期に評価を 進めていった方がいいと思います。ただ今年は始まったばかりですので、来年すぐ厳密 な評価をするかどうかは別にしまして、評価の進め方の具体的なプロセスをこの部会で 決めさせていただきたいというふうに思っておりますので、また今後ともよろしくお願 いいたします。 ○寺尾委員 先ほどの山崎委員の御発言にも関係すると思うんですけれども、今回、7 つの分野につきまして課題を募集していますが、厚生省がやるべき研究というのは7つ で全てではないと思うんです。非常に重要な部分が残っているのではないかという気が いたしますので、来年またこれを考えるときに、更に追加する分野があるかどうかとい うことを一度よく御議論いただければ非常にありがたいんですけれども。 ○矢崎部会長 全く同感でありまして、今後テーマにつきましても来年度詰めさせてい ただいて、ただ、来年度の予算はどうなんでしょうか。新しい分野を増やせるほどの余 裕があるかどうかということも1つのポイントかと思いますけれども。 ○伊藤審議官 厚生科学課長の方がいいのかも分かりませんが、現在、閣議で決められ ました平成10年度予算の基本方針というのがございまして、その中で科学技術につきま しては、科学技術関連経費全てではございませんが、厚生省の科学技術関連計画全体で 950 億円余りですが、そのうち科学技術振興費は700 億ちょっとですが、その部分につ いては5%増まで要求していいとされております。要求していいということですから最 終的に認められるかどうかは断定出来ませんけれども、そういう扱いになっておりまし て、今、一応私どもの方では昨年以降、それから、当審議会では余り十分に御議論いた だかなかったんですが、既存の700 億余りの研究費を点検をして、そして、どういう形 で柱立てをしていったらいいかという作業を行い、それから、今、非常に世間で問題に なっております化学物質、具体的にダイオキシンなどの化学物質の問題でございますと か幾つかのテーマにつきまして、10年度からの重点課題という形で要求をさせていただ くという方針で今、作業を進めております。 それから、一方、自民党の政務調査会の中で科学技術創造立国推進調査会というのが ございまして、これは科学技術基本計画に対応する自民党の部会でございますが、そこ では昨年来いろいろ各省庁の研究テーマなり研究体制の在り方につきまして、非常に精 力的に議論してきておりまして、今、1つのテーマがゲノム関連の省庁横断的な研究体 制を構築していくべきだということで、私どもとしてはその辺の議論を踏まえまして、 平成10年度に少し事務的に対応させていただいているということでございます。 いずれにいたしましても、多少事後追認的な面があろうかと思いますが、全体の評価 につきましては、今後、厚生科学研究分野の評価の在り方を、部会にお願いすることに なると思いますので、その中で一度どういう形で今、予算要求させていただいている か、更に年末なり来年度実施段階に向けて具体的にどうしたらいいかということについ て、ひとつ御審議をいただきたいと思います。 ○矢崎部会長 どうもありがとうございました。来年の公募その他に関しましては、官 報で来年度は2月ぐらいに広報する予定でございますね。ですから、余り来年度につい ても時間がございませんので、また、先生方に御足労をお願いするかと存じます。来年 度の公募の柱立てに関しましても、この部会である程度考えていかなければいけない、 その際には、先ほど寺田委員もおっしゃられました厚生科学とは何ぞや、指定研究とは どういうふうなものを指定研究にするかという理由づけなどについても、十分に御議論 をしていただかなければいけない課題がたくさんございますので、全部評価の問題と片 づけられるかどうか分かりませんけれども、先生方によろしく御指導あるいは御意見を 賜れば大変ありがたく存じます。 まだ、本日は御説明だけでございますけれども、今後、具体的に話を詰めさせていた だきたいと思います。随時、先生方に連絡を取りながら御意見を賜っていきたいと思い ますので、今後ともよろしくお願いいたします。 事務局から何かございますでしょうか。 ○事務局 事務局から2点お願いがございます。次回以降の日程につきましては、事務 局の方で調整をさせていただきます。今日、各委員のお手元に9月の御日程を確認させ ていただく趣旨で表をお配りいたしておりますので、申し訳ありませんが、記入してい ただきまして、事務局に御提出をお願いしたいと思います。 それから、先ほど資料1につきまして2点ほど修正ということになりましたので、急 ぎ事務局で最終版を確定をしたいと思っておりますので、今、お手元にお配りをしてい る資料1が2か所ほど間違っているということは十分御承知おきいただきまして、扱い についてはよろしくお願いしたいというふうに思います。 以上2点でございます。 ○矢崎部会長 どうもありがとうございました。本日の配付資料は、後ほど公表いたし ますので、その点につきましては御承知のほどをよろしくお願いいたします。 審議官の方から何かございますでしょうか。 ○伊藤審議官 今日は、どうもありがとうございました。 ○矢崎部会長 それでは、大変厳しい暑さの中、この審議を進めていただきまして、ま た、御多用のところをお集まりいただきまして大変ありがとうございました。それで は、本日の研究企画部会をこれで終了させていただきます。 どうもありがとうございました。 問い合わせ先 厚生省大臣官房厚生科学課    担 当 岡本(内3806)    電 話 (代)03-3503-1711        (直)03-3595-2171