97/08/11 第3回公衆衛生審議会臓器移植専門委員会議事録 第3回公衆衛生審議会成人病難病対策部会 臓器移植専門委員会議事録 平成9年8月11日(金) 10:00〜12:00 於:全社協第3〜5会議室 新霞が関ビル 5階 出席者  ○黒川  清  井形 昭弘  大久保 通方 大島 伸一  大塚 敏文   桐野 高明 小柳  仁  座間 幸子  田中 紘一  谷川 久一   野本 亀久雄 町野  朔 眞鍋 禮三  森岡 恭彦  矢崎 義雄   山谷 えり子  *武下  浩  (○:委員長 *:参考人 敬称略) 議事次第 1 開会 2 議題 (1)臓器の移植に関する法律施行規則(厚生省試案)について (2)その他 3 閉会 ○成瀬補佐  まだ、2、3人の先生がお見えになっていませんけれども、定刻になりましたので、 ただいまより、「第3回公衆衛生審議会成人病難病対策部会 臓器移植専門委員会」を 開催させていただきます。  本日は、お忙しい中、ご出席いただきまして、大変ありがとうございます。  最初に、本日の委員の出欠の状況でございますが、藤村委員が都合により欠席とのご 連絡がありましたので、本日は、17名の委員の中で16名の委員が出席いただく予定 でありますことを報告いたします。  なお、本日の会議にあたりまして、参考人として、武下浩、社会保険小倉記念病院名 誉院長にご出席を願っております。先生には後ほどご報告をお願いしたいと思います。  では、会議の始まる前に資料の確認をさせていただきたいと思います。  最初に、議事次第でございます。続きまして、名簿でございます。次が、配置図でご ざいます。続きまして、会議の資料一覧表でございます。続きまして、資料1、臓器の 移植に関する法律。資料2、臓器の移植に関する法律施行規則(厚生省試案)。資料 3、膵臓移植の現状。資料4、小腸移植の歴史と現況。資料5、脳死判定基準の覚書。 資料6、黒川委員長に寄せられた意見一覧。続きまして、資料6の追加分でございま す。次が、資料7、脳死判定等に関する書式例でございます。そのあとが、参考資料1 番と2番があります。  おそろいでございましょうか。また途中、不備等ございましたら、事務局のほうへお 申し出いただきたいと思います。  それでは、黒川委員長、よろしくお願いいたします。 ○黒川委員長  では、きょうは3回目ですが、先生方、お忙しいところ、ありがとうございます。  前回、この厚生省試案という施行規則ですが、これにつきましては前回、事務局から説 明をいただきまして、先生方のいろいろなご意見を伺ったところですが、本日は、この 施行規則そのものの条文ごとに、このあいだは読んでいただいていろいろのディスカッ ションがあったわけですが、条文ごとにもう一回議論を詰めて、先生方のご意見を受け ながら整理したいというふうに思ってございますので、よろしくお願いします。  そこで、資料2になりますが、臓器の移植に関する法律施行規則(厚生省試案)とい うのがありますので、これにつきまして、まず、前回も少し議論があったところです が、第一条というところから始めたいというふうに思いますが、よろしくお願いいたし たいと思います。  まず、そこで、この施行規則には、ここに「内臓は、膵臓とする」という一文があり ますが、ここにつきまして、まず検討をするということになりますが、これにつきまし て、まず、事務局から説明をしていただきまして、このあいだ議論がありました、小腸 はどうするんだというようないろんなことがありましたが、あとで、私のところに来た いろいろなお手紙も参考にさせていただきますが、それは後ほど議論することにいたし まして、第一条について、まず、厚生省のほうからお願いします。 ○貝谷室長  第一条の関係では、小腸と、それから膵臓の資料をご説明する予定にしておりました が、小腸のご説明をしていただくことになっていた田中委員が、ちょっと遅れていらっ しゃいますので。間もなくいらっしゃいますが。いかがしましょうか。膵臓を先にいく か。 ○黒川委員長  そうですね。それはいかがでしょうか。膵臓について、まず説明していただいて。 ○貝谷室長  あるいは、二条の次のテーマに先に入って、武下先生の脳死判定の。 ○黒川委員長  そうですね。それでは、その議論を田中先生に聞いていただくということにしまし て。 ○貝谷室長  膵臓と小腸は後ほどということで。 ○黒川委員長  わかりました。では、第二条にいきましょう。そうすると、第二条ということでよろ しいでしょうか。第二条は、いわゆる脳死のところですけれども、これにつきまして も、いろいろ議論があるところではあると思うんですが、ここのところで、きょうはわ ざわざ武下先生に来ていただいております。武下先生は、以前からの脳死に関する研究 班の一員で、竹内基準の策定にも関わっておられますので、武下先生に来ていただいた わけですが。  ここの第二条については、例えば六歳未満の者、第二項、急性薬物中毒により云々と いうところがありますが、この第二条の判定のところの問題ですが、これにつきまして 先生側に、判定の第二項、そこにありますけれども、「2 判定は云々」とありまし て、第五項というところにあって、第五項、次のページにいきますが、5ですね。「判 定に当たっては、聴性脳幹誘発反応の消失を確認するように努めるものとする」という ようなことが書いてあります。  それから、2の一、二、三、四、五、2ページ目にいって一番上の段にありますが、 自発呼吸の消失、このようなことがあるわけですが、このへんを武下先生にご説明いた だいて、それから検査の手順について、これはまた医学的な事項でありますので、省令 に定めるのがふさわしいかどうかというようなこともあります。そこでガイドラインな どで検査の実施上の特に留意すべき事項を示すというようなことも、現場としてはおそ らく必要なのではないだろうかというようなこともありますので、このへんを中心にし て武下先生にご意見を伺って、また先生方のご意見を伺うと。  そういうことで、検査の手順のうちで特に重要な留意事項については武下先生のご報 告を含めてガイドラインなどを示すこともより適切ではないかと思いますので、武下先 生にお忙しいところをおいでいただいたということでございますので、武下先生のほう から、そのへんにつきましてご説明いただければと思いますが、よろしくお願いいたし ます。 ○武下参考人  ご紹介にあずかりました武下でございます。  ただいまの私に対するご要望でございますけれども、その前にちょっと申し上げてお きたいことがございまして、私は、この委員会は専門の先生方ばかりでいらっしゃいま すから、このようなことを申し上げるのは大変失礼かと思いますけれども、私が脳死に 対して基本的に考えておることですが、このへんの背景がはっきりしておりませんと、 これからあと申し上げることも中途半端な問題になるのではないかと、十分ご理解いた だけないのではないかと思って最初に申し上げたいと思っております。  脳死は、ご承知のように脳幹を含む全脳機能の不可逆的喪失になっておりますけれど も、この全脳という意味を、全体としての脳と、そういうふうな意味にとらなければい けないということであります。これは、その当時、全脳という言葉を使いましたけれど も、世界中誰も、これが脳のすべての細胞が同時に死ぬんだなんていうのは考えて言っ た言葉ではないということです。  それから、その次は、脳死というのは臨床的な概念でありまして、臨床的な診断であ るということであります。これは、原因とか検査結果とか治療とか、治療に対する反応 でありますとか、その経過とか、ベッドサイドで見てわかるという意味であります。も ちろん、若干の機器は必要ではありますけれども、基本的にはベッドサイドの問題だと いうことであります。それだからこそ脳死がこれだけ問題になったと、私はそういうふ うに思っております。  それから、脳死判定基準の内容は、医師であれば誰もが十分に理解できること、願わ くは、一般の人にも十分理解できるものでなくてはならないということになります。  そして、もうひとつは、これは必要以上に複雑にしないことであります。これは、世 界の脳死判定基準を見ましても、根底に流れる思想はそこにあります。確実に安全に行 えればいいわけであって、必要以上に複雑にしないということは鉄則だと私は思ってお ります。  それから、もうひとつは、最後ですが、国際的に見ておかしくないということであり ます。医学の問題でありますから、国際的に見て当然共通点があるべきでありまして、 また、そのようになっております。ただ、国際的に見て、学会に持っていって、日本の 脳死判定基準がこんなんだと言いましたら、一体それはどういうことかと言われるよう なのでは困るということであります。国際的に見て妥当であるということであります。  これだけ、私、最初に申し上げておきたいことでありまして、その次です。今、ご質 問がございましたんですけれども、私が全部条文を追ってというのは難しいかもしれま せん、時間の関連もございましょうから。それで、今、脳死判定基準で何が問題かとい いますと、おそらくこれは日本だけではございません。世界的な傾向でありまして、無 呼吸テストと補助検査であります。無呼吸テストが、侵襲性があるのではないかという 意見があるからであります。それから、2番目の補助検査というのは、補助検査がどれ だけ有用であるかということであります。この2つが脳死判定基準では問題。次元が違 う話ですが、小児の脳死判定基準というのは、日本の場合は問題になるようで。これだ けであると思います。  それで、私ども最近、竹内基準覚書というものを作りまして、実は、お手元に入って いる資料の中に、近く日本医師会雑誌に発表されます竹内基準覚書の要約が入っており ますんです。それから、無呼吸テストの手順というのが入っておりますので、後ほど見 ていただけたら有り難いと思います。 ○重藤補佐  資料の5でございます。 ○武下参考人  これは、どの脳死判定基準を見る場合も共通して重要なことなんですけれども、やや もすると判定項目だけを見て議論が行われるんです。それは大変危険なんでありまし て、説明を十分読む必要がございます。そういう意味で我々は、厚生省研究班による判 定基準は、1985年でございましたけれども、91年に補遺というのを出しておりま すので、それもぜひともお目通しいただきたいと思います。それを受けまして、その後 の研究成果も勘案して、最近論議になっておりますことをまとめたものが竹内基準覚書 でありまして、これは近く、従来のものがすべて日本医師会雑誌に公表されております ので、多分、9月の日本医師会雑誌に公表されると思います。以上だけ最初に申し上げ ておきたいと思います。  そこで、先生、これは法律の順番を追っていくわけでございますか。そうじゃなくて もよろしいですね。二、三、気がつくことは、私、ありますけれども。  それでは、まず、無呼吸テストのことについて十分説明するようにとのお話がござい ましたので、無呼吸テストの話をいたします。  先ほど申しましたように、アメリカでも、無呼吸テストの血圧下降と不整脈などが問 題にされるようになってきたわけであります。しかし、それについては、今から私が十 分なご説明を申し上げたいと思います。  結論だけ先に申しておきますと、いわゆる竹内基準、厚生省研究班による判定基準の 中の文章、補遺を特にお読みいただくとわかるんですけれども、無呼吸テストの目的 は、PaCO2、動脈血中の炭酸ガス分圧を呼吸中枢の化学受容器を刺激するに足る十 分なレベルにまで上げるということが主目的であるとはっきり書いてありまして、10 分というのは、もちろん書いてございますけれども、およその時間の目安でありまし て、これが誤解されている向きがあるんです。  PaCO2がどうであろうと、10分間人工呼吸器を外しておかなければいけない と、こういうふうに理解されているようでありますので、覚書では10分間という記載 を取り除くことにしております。おそらくこれは正解であろうと私は思っております。 一番のポイントはそこだと思うんですね。そこに十分ご注意いただければ、無呼吸テス トというものは、もちろん安全、確実に行いうるはずであります。  ただ、突然そんなことを申し上げても大変理解していただきにくい部分があるんじゃ ないかと思いますので、追加いたしますと、もともと無呼吸テストというのは、当初、 ハーバード基準が私は最初だと思うんです。3分間、外すということでありましたが、 1964年に私がアメリカで最初に、留学中に脳死の症例を見ましたときには、人工呼 吸に患者がつながっているということ。つまり、人工呼吸に依存しなければ生きていけ ないような状況で、深昏睡で脳幹反射がないような状態を無呼吸と言っていったんで す。ですから、人工呼吸につながざるを得ない状況。その次の判定基準は、ハーバード が最初にできたのが、やはり3分間外してみる。ミネソタが4分、その後、5分、10 分となってきまして、英国基準が10分、米国の大統領基準が10分であります。  ということで、何も時間を特定しようとしたというよりは、この時間でもって外して おけば、PaCO2、動脈血中炭酸ガス分圧が十分なレベルに上がるという予想の下に やっているわけです。竹内基準ができました1985年は、その当時調査しますと、血 液ガス分析をやっていた施設は30%以下です。その当時、米国で同様の報告がありま して、その当時の米国では23%なんですね。血液ガス分析の普及度ですね、機械。機 械の操作。この血液ガス分析、今でこそ大変楽になりましたが、当時、出始めは、大変 厄介な器具でありました。  そういうことでありまして、器具の普及とPaCO2の上昇の重要性というのが認識 されるようになって、このPaCO2に重点が置かれるようになったというのが全体の 経緯であります。ですから、そういう全体の経緯抜きにしては論じられないと思うんで すね。  それで、これが、そこにあります日本胸部疾患学会の質問書ですね。あとでいいんで すか。それでは、私が申し上げたいことだけ申し上げておきますが。  最近、私もあとで気がついたんですけれど、英国の脳幹死をやっているPallisの本 が、一昨年、改訂版が出まして、やはり10分という記載があるんです。しかし、ひょ っと見ますと、表のほうに、昔の初版は10分というのがあったのが、今回は落ちてい るんですね。やはり、これが唯一の例でございます、私が知っております。こういう時 間を落とすという方向に進んできておるわけです。  そして竹内基準は、1985年、既に血液ガス分析を必須としたわけですから、いか に当時としては、厳しいと申しますか、きちんとした基準を作ろうとしたかということ をご理解いただきたいと思います。もちろん、こういうことは補遺にも十分書いてござ います。  先ほどから申し上げました、炭酸ガスは呼吸の化学的調節の中で最も重要な中枢性の 基準ということは、私ども麻酔科医は、普通日常的に麻酔をしておりましたけれど、全 く呼吸をなくした状態で呼吸をしておりますから、手術が終わったら呼吸を出さなくち ゃいけないわけで、無呼吸の状態から自発呼吸を出す状態というのはよくわかっている はずでございまして、いかに炭酸ガスが臨床的に信頼の置ける呼吸中枢の刺激になるか ということは身を持って経験しておるわけです。  これは、そのもうひとつありますのは、末梢性の化学受容器、これ、頚動脈小体であ りますが、これは低酸素刺激で反応するようになっております。  ですから、相当昔の話ですが、アメリカでも無呼吸テストをやるときに、炭酸ガスだ けじゃなくて低酸素刺激というようなことをちょっと言った時期はあったんです。しか し、それは非常に危険だということでもありますし、特にドナーと結びつきますので、 これは、私、たったひとつその論文を、数行書いてあるのも知っているわけです。その あとは全くそういう話は出なくなりました。  末梢からの刺激というものがあるということでありますが、やはり私が思いますの は、炭酸ガスというのは、生理的に体内に存在しておる、体内でできるものでありまし て、そしてこれは、正常から80まで、非常に明確なドーズレスポンスリレーションシ ップがあるわけです。もう炭酸ガス分圧が増えれば、それだけ換気量がきちっと増えて いくというような状況になっておりますので、私は、もう炭酸ガスの刺激だけで十分で あろうと、こう思っておりますが、これがもちろん低酸素との関係でというのは、大変 複雑でありまして、特に脳死の場合は、結構最初に低酸素刺激、無呼吸テスト中に低酸 素になるのをおそれて酸素を十分やってあるわけです。非常に酸素をたくさんやった状 態で、障害された脳幹がどれだけのPaCO2に反応しうるかというのは大変難しい問 題です。これは検討の余地があると思いますが。  なぜなら、大変難しいと申しましたのは、こういう状況を人で研究するということは 非常に難しいからです。おそらく容易なことではないと思います。脳幹に障害があっ て、そして呼吸中枢を刺激するために十分な炭酸ガスの分圧はいくらかと言われまし て。そこで、世界的にやはり共通している考え方というのは、我々が今まで蓄積してき ている生理学的な知見、あるいは病態生理学的な知見から、いきなり数値を申し上げま すが、60でよかろう。こういうことでありまして、私は、この60という値は、新し い知見が加わらない限り変わらないと、そう思っております。もちろん、PaCO2の 値を、いろんな値を出していただきます、44でありますとか、55〜50とか、カナ ダがそうです。60というのが端的に広く使われている値だということであります。そ のようなことを申し上げておきたいと思います。  それから、あとで胸部疾患学会のお話はあとで出てくるそうですから、短くしまし て、無呼吸テストが循環系に及ぼす影響でありますけれども、これは1995年ぐらい です。アメリカでもやはりそういう、血圧が下がるというようなことを言ったのはです ね。これはある意味では論争でございまして。下がるという人がいて、それはやり方が おかしいというわけです。そういうやりとりがあるわけなんですけれども、私は、これ だけ広く脳死判定が行われておって、そのリスクというものを言っておる論文というの は少ないと思うんですね。全体的に見まして私は安全に行えると、こう思っています し、実践例からいいましても、私はそんなに血圧が下がって不整脈が出てやめにゃいか んというようなことは、長年やってまいりましたけれども経験しておりません。  これは、もちろん、脳死の状態というのは血圧が下がる状態であるわけです。循環中 枢も抑制されていますし、それから、そのほか脳の外傷でありましたら、利尿薬を使う とか、水分を制限しているとか、循環に及ぼす影響にしても、やはり減少するような傾 向にあるわけですから、下がりやすいですから、上がる工夫をしてないと下がるという のが私の考え方でありまして、これを十分注意してやればいいと。テストをやる前の状 況をきちんと押さえておく必要があるということと、それから、今回も入れてあります が、pulse oxymeterという非常に普及している簡単な酸素濃度を測定する機械がありま すので、必ず血圧、心電図以外にそれを付けてはどうかと、こういうようなことででき ると思います。  私がこのように、もちろん血圧が下がるところはあるわけです。しかしながら、全般 的に見て10分間ぐらい。例えば、PaCO2、70までは耐えられるというような論 文があります。これは、基本的にウエルコントロールの論文でありまして、血行動態か ら見て大丈夫。それから心エコーから見て、これは60から80ぐらいのあだいのPa CO2であれば問題がないとのことが報告されておりますので、そういうことを十分注 意して行えば、それでいい。私はそのように思っております。  もう時間もあまりとってはいかんと思うので、このぐらいで、あとは質問に答えさせ ていただく形でやらせていただきたいと思います。 ○黒川委員長  どうもありがとうございました。無呼吸テストの基準の根拠といいますか、そういう ようなことについて武下先生にお話を伺ったわけですが、この無呼吸テストについての 資料5というのもありますが、先生方、何かこれでちょっとご意見をいただきたいと思 いますので、よろしくお願いいたします。現場のほうから見て、大塚先生、何かコメン トございますか。 ○大塚委員  武下先生のおっしゃられたとおりでございまして、私どももかなり判定をやっており ますけれども、今おっしゃられたとおり、血圧が急激に下がってきて脳死判定ができな かったというような例は全くありませんで、PaCO2を逐一測っていますから、です から、そんなに私、危険があるとは実は思っておりません。同じでございます。 ○黒川委員長  ほかに。どうぞ、山谷さん。 ○山谷委員  私は医学的に素人なもので次元が違う質問かもしれないんですけれども、新聞などで 無呼吸テストが危険な場合もあるという、例えばぜんそくなどですね。そういう書き方 をしたほうが市民にはよくわかると思うんですけれども、そういう書き方というのはで きないものなんでしょうか。 ○武下参考人  覚書では多少そのへんはわかりやすいように書いたつもりでございます。ぜんそくの 話が出ましたけれども、ぜんそく、閉塞性の疾患といっても、これは程度は様々でござ いますので、重症な場合を想定しますと、やはりこれは私は、PaCO2が非常に下が っているような状況で、これをする必要はないと思っているんです。そういう総合的に 見て危険だと思うようなときには無呼吸テストをやらなければいい。なぜ強行しなけれ ばいけないかというようなことですね。そういうときはやめればいいと思います。 ○山谷委員  それはもう、お医者様方の共通認識としてあるわけですか。 ○武下参考人  私、そうだと思います。非常に重症の場合に、それの無呼吸テストをする人は、まず いないんじゃないか。また、やっても意味がないと私は思っています。 ○山谷委員  国民の中には様々な不安があって、やられちゃうんじゃないかということがあるの で、それをやっぱり国民に伝えて、そういうことはないんだというような。 ○武下参考人  しかし、現場におる者は、やはり、その場に咄嗟に行って見るわけではございません で、それなりの経過をずっと追ってきていて、その間、患者とのあいだの非常に成熟し た信頼関係を築きながらやりますからね。強引にやるとか、そんなことは私どもは考え られませんけれども。何か難しいように思いますですね、それは。 ○黒川委員長  やっぱり、あるひとつの時点で考えるとそういうふうに取り上げてしまいますけれど も、そこに行くまでのプロセスを現場の人が見ているわけですからね。  そのほかにございませんか。もう少し話題提供と言ってはおかしいんですが、無呼吸 テストですね。脳死の判定に関して、そのほかに、ちょっと私のところにいくつかの先 生方、あるいは学会から、これについての意見というのが資料6にありますが、資料の 6と、それについて資料の6追加分というのがありますけれども、そのうちでこれに関 係のあるところについて、ちょっと事務局から説明していただいたほうがいいんじゃな いでしょうかと思いますが、いかがでしょうか。 ○重藤補佐  事務局のほうから、資料6の説明をさせていただきます。 黒川委員長宛に4人の先生方から意見をいただいているのですが、そのうち無呼吸テス トの関連につきましては、資料6の4番目に書いてあります、北海道大学の川上先生か ら、「無呼吸テストにおける呼吸刺激剤の使用」についてというご意見が届いておりま すので、事務局より説明をさせていただきます。  資料6の22ページでございます。黒川先生あてに来た手紙の最初のかがみでござい ますけれども、ちょっと読まさせていただきます。  本日は、faxをお送りいただき有り難うございました。  取り急ぎfaxにて資料をお送り致しましたが、今少し私どもの意とするところを以 下に記しまして、委員会諸先生のご理解を賜りたいと存じます。 脳死(脳幹死)の判 定基準の1つにいわゆる「無呼吸テスト」が取り入れられたことは、誠に適切な判断と 思います。ただし、呼吸調節の専門的な見地からすると、炭酸ガス(二酸化炭素)によ る刺激だけでは不十分です。その理由は、日本胸部疾患学会(現日本呼吸器学会)の肺 生理専門委員会報告にも書かれているように、低酸素刺激、薬物刺激も呼吸中枢や末梢 化学受容器も刺激になるので、炭酸ガス刺激で呼吸が再開しないからといって直ちに脳 幹死と判断するのは早計だという趣旨です。  実際上、脳死判定の現場では人工呼吸器をいったんはずして内因性(代謝性)炭酸ガ スが上昇してこれが刺激になるのを待つ訳ですが、炭酸ガスに対する感受性は非常に大 きな個体差があります(この大部分は遺伝的に決定されています)し、病態たとえば肺 気腫など炭酸ガス蓄積を来す疾患ではそれによって呼吸中枢の炭酸ガスに対する感受性 を鈍麻させますので、炭酸ガス刺激のみで呼吸が再開しない場合、直ちに呼吸中枢が無 反応と断定できないわけです。これを補うために、低酸素刺激あるいは/および薬物 (Doxapramが一般的です)刺激をも加えるべきとするのが、胸部疾患学会報告の趣旨で す。  低酸素刺激が摘出予定の臓器に悪影響を与えることは非常に考えづらいことです。何 故かというと、低酸素刺激は短時間例えば数十秒というオーダーで末梢化学受容器に刺 激を与えるはずですから、テストはたかだか数分で終了できます。もし、それでも低酸 素の危険性を云々するのであれば、これを省略し薬物刺激だけを行うのが、科学的、合 理的な態度だと思います。  新聞記事に載った例は、共同通信の取材によるもので、確かに一時期とはいえ Doxapramにより呼吸が再開したとのことです。このような例が現に存在する以上、炭酸 ガス刺激のみで無呼吸テストを終えるのは問題でしょう。  この学会報告を纏めた時点で厚生省臓器移植掛には別刷りを送りましたので、ファイ ルには存在するはずです。移植学会にも送っております。  私は、脳死臓器移植に反対する者ではありません。しかし、行う以上は「1点の曇り もない移植」であって欲しいと願う者です。この観点から、脳死判定の基本として無呼 吸テストが「1点の曇りもない」条件下で行われるよう願っています。  上の次第ですので、よろしくお取りはからい下さいますようお願い申しあげます。  という文章が参っておりまして、24ページから、日本胸部疾患学会肺生理専門委員会 の報告書が出ております。  それから、28ページ、一番最後でございますが、先生のお手紙にもありました、脳 死判定後に自発呼吸という新聞記事でございます。これは、ぜんそくや肺気腫などの呼 吸不全の患者では、血中の二酸化炭素分量が多い状態でこういうことをやる、呼吸促進 剤を注射して呼吸中枢を刺激してからするという改良案を提案しているという新聞記事 でございます。以上でございます。 ○黒川委員長  どうもありがとうございました。これも加えて、これですと少し問題があるのかなと いう気もしなくもないので、これについてちょっとご討議いただければと思います。 ○武下参考人  ちょっと新聞記事なんですけれども、私、今のこの新聞記事は読みました。ただ、今 までのこの種の報告というのはたくさんございまして、Doxapramに限らず、竹内基準に 対しては、こういう新聞報道というのはなされてきたわけです。  実際、私は現場にいませんでしたのでわかりません。それから、正確な資料が欲しい ですね。これに対する、反論するためには。ただ、そのときに学会に出席した人の話で は、これは、脳死判定、このDoxapramでというのは、どうもおかしいと。この報告はお かしいと。また、著者もそうは言ってないということを私は聞かされております。しか し、これは間接的なものですからわかりません。  ですから、もし、これに徹底的に議論するんだったら、この書類を全部見せていただ いて議論させていただくようになると、こう思っております。  それから、この文面のほうでございますけれども、私、先ほど少しは触れました。低 酸素刺激。確かに、重症の閉塞性の肺疾患なんかでありますと、低酸素の刺激を加えた ほうがいいと、低酸素刺激で呼吸が維持されている場合があるからというのが趣旨でご ざいますけれども、これはやっぱりPaCO2、酸素のほうだと50ぐらいですね、下 げるとしますと。筆者はここで、これは、我々普通日常的に集中治療の中で全身管理を やっている者にとりましては、大変困った値です。50だなんていうのはですね。と思 います。  それで、低酸素刺激を加えたかったら、そういう刺激も。これは短時間でやるとおっ しゃいますけれども、私はこれは、炭酸ガスの高いのは辛抱できても、酸素の低いとい う場合は割と。それで、少なくとも肺移植を除いては、私が理解しているのは、移植の 場合、やはり酸素濃度にして95ぐらいを維持しているほうが望ましいとは皆思ってい ますから、そうしますと、絶対必要だという証拠がない限り、私はこれは必要がない と。このDoxapramを、低酸素刺激を加えなくちゃいかんというのであれば、ぜひともそ の証拠が必要である。炭酸ガスだけではだめだという証拠が私は欲しいと、こう思いま す。Doxapramのほうは、これは注射でありますし、これはどの程度の量、いろいろこの あとで量も書いてございますから、ですけれども、これも我々はときどきは使っている 薬なんです。呼吸中枢を刺激する。これはもちろん末梢を介して刺激する薬ですけれど も、これが従来のものと比べていいというのは、これはわかっておりますけれども、こ れで、これが必要であるということも、これは証拠はないと思いますですね。  そうすると、やっぱり私としては、できるだけ単純な形に置いておきたいというのが 趣旨であります。Doxapramを別にやって悪いことはないと思いますけれども、そういう 必要がないと私は思います。  ですから、科学的にいろんな項目を次々に挙げていきますと、一体どこで区切りをつ けるかということが非常に問題だと思うんですね。そういうことを言っていけば、この 呼吸だって、これは胸部疾患だったらそうおっしゃいます。おそらく筋電図の学会に行 って言ったら、肋間筋の筋電図でもとりなさいと。次々にいろんなことが出てくるんだ ろうと思うんですね。私は、臨床というのはそういうものではないと思っています。だ から、最初に申し上げたような判定基準に対する基本的な姿勢が大事でありまして、今 の世界の判定基準を見ましても、低酸素刺激を加えるとか、Doxapramをやるだなんてい うのはどこにもないです。そのへんが臨床の知といいますか、知性の知、そういうふう に、話は大げさですけれども、考えていただかないと、これは際限ないものです。  これは、こういう発想というのは今まででもありましたですね。脳の血流を測定す る。血管サーチです。今度アイソトープで測ったら、また血流が出てくる。これは私 は、いくら科学的に積み上げたって、この脳死判定基準、これは正確に生物、医学的な 知識に立脚してなきゃいかんけれども、それを最終的に受け入れるかどうかというの は、やはり臨床の問題だと、そう思っております。 ○黒川委員長  どうもありがとうございました。そのほかに何かございませんか。なかなか、どこま でそういうのは書き込んでということが問題になってくるかと思いますけれども。  ちょっとこれについて、無呼吸テスト、いかがでしょうかね。これ、確かに何かの、 一応施行するに当たっては、一応何かガイドラインみたいな、やり方ということの手順 なり、あるものを作っておいたほうがわかりやすいのではないかという気はします。も ちろん、大塚先生その他のご努力で、ある程度の実際のドナーになりうるという患者さ んが出た場合には、そういうことはきちんとされると思いますけれども、今の腎臓の移 植のネットワークをやっていてもそうなんですけれどもね。現場では皆、たくさんの症 例を扱って慣れているというわけでは必ずしもないですし、現場にそういう患者さんが 出た場合に、どういうプロセスでいくのかというのは、ガイドラインみたいなものがあ ったほうが多分わかりやすいんじゃないかなという気はしますけれども。 ○大島委員  無呼吸テストという言葉から一般の方が受けるイメージというのは、CO2濃度を上 げるというようなことは全く考えてなくて、酸素がなくなっちゃうというイメージだと 思うんですね。その説明が全くよく理解できていないというのが一般の感じじゃないで しょうか。要するに、酸素を止めちゃうと。だから悪くなるというイメージがむしろ一 般には広がっているんじゃないかなという感じがいたしますけれども。 ○大久保委員  今、私も全然この無呼吸テストを聞いていて、あまり理解はできないんですけれど も、ほとんど一般の方もそうだと思うので。先日ちょっと、厚生省の貝谷室長のほうに はちょっとお話をしたんですけれども、もう少しこういった脳死に関する検査手順と か、それから脳死自体に、もう少しわかりやすい、一般の方がわかるような説明の文章 等があれば、もう少し実際に脳死にあった家族がその場で、お医者さんの話をざっと聞 いたところでも、おそらくわからないと思うので、目で読んで確認できるような書類と いうか、そういったような説明書みたいなものがあると、もう少し理解しやすいのでは ないか。今、先生がおっしゃったように、無呼吸テストというのは、私もあまりよく理 解できないものですから、そういったことを一つずつの検査、それだけじゃなくてほか の検査に関しても、これはこういった形で、こういう目的で、こういう形で検査をする んであると。それによって、こういったことはない、今、先生がおっしゃったように、 低酸素によって患者に対してダメージを受けることがないとか、そういったこともきち っと説明したような文章があると、もう少し一般の方には理解しやすいんじゃないかと 思うんですが。 ○黒川委員長  いかがでしょうか。山谷委員、どうぞ。 ○山谷委員  それに関して、例えば六歳未満の者を除外するというのも、これは各国違いますよ ね。日本はなぜ六歳未満にしたのかとか、あるいは、脳低温療法で蘇生限界点が少し動 いたというようなことがあるわけで、脳低温療法と脳死とは違うわけですが、やっぱり 一般の人で誤解している人というのはたくさんいると思いますので、そのへんもわかり やすく、脳低温療法の普及はもちろんサポートするけれども、それは脳死とは別である とか、そこらへんのことを書き込んでいただくことと、あと、1回目の確認テストから 少なくとも6時間を経過したあとで2回目をということがありますが、これは具体的に 時間を決めなくてもいいのか、それはなぜなのかみたいなことが、素朴な疑問としてご ざいます。 ○武下参考人  私がきょう来た理由で関係するところだけお答えさせていただくようにします。  六歳というのは、当初、竹内基準で症例を検討しましたときに、六歳未満の子どもの 小児の症例が非常に少なかったんです。現在のいわゆる竹内基準の骨格というのは、そ の当時の全国調査から出てきたものでありまして、判断するだけの資料がなかったとい うのが理由であります。  ですから、もしやろうとするのならば、別にそういう組織を作って、新しく小児判定 基準を作る必要があると、私はそういうふうに思います。  それから、これも脳死判定基準と関係がありますから、今のご発言は、脳低温療法は 十分ご理解の上でご発言いただいたと思って有り難く思っていますけれども。脳死から よみがえるだなんていうふうに思ってらっしゃる方もいるわけですから、これは、判定 基準は、現在行いうる適切な治療をもってしても回復不可能と思ったときに脳死を判定 するんですから、脳低温療法をやるんだと、そうは思ってないわけですから、脳死の判 定には至らないはずでございます。よろしゅうございますか。  それから時間ですけれども、6時間。これこそ病態によって違うと思うんですね。最 低、特に二次性病変なんかは長く置けとかいいます。これは、このへんが一般の方に は、やはりおっしゃっているように一般の方がわかるように書かなくちゃいかんという のは、私、よくわかるんですが、6時間といいましても、7時間、8時間置くとき、も ちろんあるわけです。やっぱり、おそらく、こういうことを言うと誤解されると困るん ですけれども、ちょうど6時間が来たからといって真夜中に集中治療部で脳死の判定を するでしょうか。私はしないと思います。きちんと、朝、夜が明けるのを待って、スタ ッフが揃って、十分な態勢を整えてやると思いますね。ですから、それ以上という意味 です。  そういうふうなことで、もちろん病態以外に診療体制も大いに関係があることだと私 は思っています。そういうことを言ったら、何で脳死の判定みたいな重要なことに夜中 でもスタッフを揃えておかないのかといって、あるシンポジウムで作家の方から言われ たことがありますけれども、それは臨床の現場ではないんですね。そのようにご理解い ただきたい。十分な時間をとって再度検査をすると、こういうことであります。 ○黒川委員長  どうもありがとうございました。いかがでしょうか。 ○大久保委員  私も先ほどの小児の問題は、なぜこの竹内基準ができてから今までのあいだ小児の症 例の研究がされていなかったのか、非常に不満には思っておるんですけれども、実際の ところ症例を全然集めてなくて、できなくて、そのあともずっと研究がされてないとい うことなんで、他の国では小児の移植はきちっと行われていますので、ぜひ早急に対策 を厚生省の方にお願いをしたいと思います。  それ以外に、判定の時間の問題ですけれども、前回の会議のときに、一応6時間を基 準としてというお話があって、それ以外に、延ばすということは伺ったんですけれど も、今回は、死亡時刻を第2回目の判定ということになっておりますので、できれば、 延ばすのも、12時間とか24時間以内とか、ある程度後ろのほうも決めておいたほう がいいのではないかと私は思うんですが。 ○黒川委員長  これはちょっと別の議論になりますかね。ちょっとこの脳死判定とは、ちょっとまた あとで伺うことにしましょう。  この脳死判定の個々の手技については、専門的な、医学的な立場のことが基本になり ますから、今、大久保委員あるいは山谷委員がおっしゃったような、皆さんへのご理解 を得るというような部分も確かに必要だというふうに思います。そこで、医学的な部分 については、この委員会で議論するのもいいんですが、一応ガイドラインを専門の立場 から作っていただいたほうが僕はいいんじゃないかというふうに、実は思っております が、いかがでしょうかね。  私どもの考えでは、ここにちょうど委員におられる大塚先生に少し。またお忙しいの に余分なことをお願いしちゃって誠に申し訳ないんですが。それから、脳外科の専門家 の桐野委員と、武下先生もこれをずっとやっておられますので、大塚先生に委員長をし ていただいて、アドホックなんですが、このガイドラインの作成、脳死判定をするのに どういうふうにやっていくかという、今の皆さんのご意見も踏まえて、今までのいろい ろな知見の集積ということで、そのほかに何人かの専門の委員を大塚先生のほうでお願 いして。一番大事なのは、やはり大塚先生のほうが現場の、やはりどういうふうに思わ れて、どういうふうにやっていくかだと思いますので、そのような委員会を作っていた だいて、次回あるいは次々回、非常にお忙しくて大変だと思うんですが、そのへんの今 のご意見、それから、この呼吸器学会その他の意見も踏まえて作っていただく。それに ついてまた、これはこういうことなんですよというような話の説明ができるような格好 にするということをしていただいたらどうかと思うんですが、いかがでしょうか。 ○大塚委員  先生のおっしゃった手順というのは、具体的に何を指しておられるんですか。例え ば、今、話題になっている無呼吸テストのやり方などを作るんですか。 ○黒川委員長  無呼吸テストをするとなると、やり方について、こういうステップ。 ○大塚委員  それは、かなりもう公表されて。 ○黒川委員長  いますよね。ですけれども、それを一応アプルーブするような格好で。いろんな疑問 がまた出てきますから、それについても一応コメントなり何かあるような格好が一番い いのではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。 ○大塚委員  わかりました。 ○黒川委員長  委員の先生については、また大塚先生にちょっと考えていただいて、多分あと数人ぐ らいの委員がおられたほうが多分いいのではないかと思いますので、それで、私と、そ れでは厚生省のほうで、当局のほうで、その委員について認めていただくというか、ア プルーブさせていただくという格好で、先生方のほうにあとでご通知するということで よろしいでしょうか。もしよろしければ、そのような格好で小委員会を作って、次回あ るいは次々回のこの委員会に、このような案でいくという話を持ってきていただくとい うのが一番いいんじゃないかと思いますが、よろしいでしょうか。  それからもうひとつ、行政当局としては、今、大久保委員あるいは山谷委員のおっし ゃったような、そういうのを作成する必要があるかどうかはまた別にして、それもちょ っと考えていただく。一般の人が、移植のネットワークをやっていてもそうなんです が、現場ですっと出たときに、やはり遺族の方、あるいは家族の方が、そんな文章を渡 されてもなかなか理解できないというか、気も動転していることのほうが多いわけなの で、それにしても一般の理解を常に求めるようなことをしておくということが非常に大 事じゃないかと思いますので、そのほうはぜひ考えていただきたいと思います。よろし いでしょうか。  それでは、もうひとつ、この資料6に、瞳孔径の固定についてというのがあります が、これについてもちょっと説明しておいていただけます。このガイドラインに、ここ のところも入ってくると思いますので。 ○重藤補佐  資料の6に戻らせていただきまして、資料の6に、4人の方から意見を頂戴をしてお りますけれども、まず、組織移植、骨移植の問題につきまして、北里大学の糸満先生、 それから、愛知県軟部組織移植振興財団、岩田先生。それから、資料にはちょっととじ 込んではございませんけれども、資料6追加分として別に1枚紙で渡っているかと思い ますけれども、日本整形外科学会、整形外科移植問題等検討委員会から、骨と関節の移 植の要望書が黒川先生あてに届いております。  代表いたしまして、糸満先生のお手紙を読まさせていただきます。2ページでござい ます。  ご多忙のところ恐縮に存じますが、緊急にお願い申し上げたきことがございまして、 書面にて失礼させていただきます。  私は北里大学医学部で整形外科講座を担当しています糸満盛憲と申すもので、移植学 会の関連組織である「日本骨・関節・軟部組織移植研究会」の事務局を運営し、日本整 形外科学会の「整形外科移植問題等検討委員会」の委員長を勤めているものです。同封 の資料をご一読いただければご理解いただけるものと存じますが、古くから骨移植は整 形外科手術の基本的な手技の一つとして確立されており、最近では緩んだ人工関節の再 置換術や脊椎手術における同種骨の需要が高まってきています。私共、北里大学でも死 体骨を採取して移植に利用しています。  ところが昨今の新聞によりますと、貴委員会では「移植できる臓器・組織」のなかに 骨は含まれず、「移植に供されない部分は焼却する」方向で審議が進められるという記 事が多く見られ、長年同種骨移植を手がけてきた私共としては、審議の行方に暗雲を見 る思いで案じております。 いかに人工骨の開発が進んでいるとは言いましても、人の 骨にまさるものではありません。法的なバックアップがないために、多くの整形外科医 が同種骨を用いることができず、やむなく人工骨で代用している現状は決して好ましい 状況ではございません。以上の現状をご賢察の上、同種骨移植の道を開いていただきた くお願いを申し上げる次第です。  改めてよろしくお願いを申し上げ、要件のみにて失礼いたします。吉報をお待ち申し 上げます。  他に、資料がございます。  それから、5ページからが、愛知県軟部組織移植振興財団、岩田先生からの資料。  それから別刷り、資料の6の追加分の日本整形外科学会、整形外科移植問題等検討委 員会から、同趣旨でございます。 ○黒川委員長  これは、その次の瞳孔の話も。 ○重藤補佐   次に、瞳孔径固定問題について、自治医科大学の石黒先生よりご意見をいただいてお ります。資料の9ページでございます。 ○黒川委員長  これもちょっと読んでいただけません。お手紙だけでも。 ○重藤補佐  それではお読みします。  「私は、脳死者からの臓器移植には賛成いたしておりますが、脳死の判定基準(竹内 基準)の不備を訂正して下さるよう、お願いする者であります。  問題の箇所は竹内基準の第3項の瞳孔固定です。瞳孔径は末梢神経である交感・副交 感神経の支配によっており、脳が機能を停止しても、瞳孔が自律的に動きうるのは明白 です。  私はSPECTで脳の血流の途絶を確認した2症例で、瞳孔が生けるが如く動いてい るのを観察しました。  この事について、私は竹内先生をはじめ厚生省の脳死に関する研究班の方々に訂正を お願いしましたが、「先生の主張はよく理解でき、もっともだが、判定基準を訂正すれ ば日本はまた混乱する」というお答えでした。  研究班は判定基準を訂正するかわりに、脳死判定基準補遺を出された際に、「瞳孔に ついては対光反射の消失ということが重要で、瞳孔径の変化にはあまり気をとられる必 要はない」と補足されました。この文は脳死者でも瞳孔径が変化することがあることを 認めたものと思われますが、このように見解を変えるに至った経緯については何の説明 もなく、前後の脈絡もなくこの文章のみが述べられております。「瞳孔径固定」につい ては、判定基準と補遺の記述は正反対ですが、補遺と判定基準の整合性がどうなってい るのか、臨床の現場は混乱すると思われます。  臓器移植法が成立した今、判定基準の不備を訂正して頂きたく思います。私が書きま した論文の別刷を同封しますので、お読み頂ければ幸いです。  なお、小論を発表したあと、何人かの先生から、同じ経験をもっているとのご連絡が あったことを、付け加えさせて頂きます。」  10ページでございますけれども、先生の指摘されている部分の抜粋でございます。 10ページの左半分が、昭和60年、厚生省研究班、いわゆる竹内基準の中の脳死の判 定方法、瞳孔というところの記述でございます。それの真ん中付近に、「室内の通常の 明るさの下で瞳孔径を測定する。今回の調査によれば、脳死では左右共4mm以上のも のが多い」というような記載がございます。  そして、その判定基準では、判定基準(3)瞳孔、「瞳孔固定し、瞳孔径は左右とも 4mm以上」という記載になっております。  それから、右半分が、平成3年に竹内基準の補遺で、竹内基準の説明の足りなかった 部分を補うという形で出されたものでございます。そこの瞳孔というところでございま すけれども、その真ん中付近から、「したがって、脳および脊髄の障害状況により、瞳 孔径は微妙に影響される。このことは前回報告にも記載したが、散瞳は脳死の判定上必 須の条件ではない。瞳孔径の測定は、室内の通常の明るさの下で瞳孔径を測定する。形 が不整の場合は、最小径が4mm以上なければならない。心停止後でさえ瞳孔径はしば しば変化することがある」という記載となってございます。これが事実関係でございま す。  あと、11ページから以降が、石黒先生の論文になってございます。以上でございま す。 ○黒川委員長  ありがとうございました。これについて何かご意見ございますか。このような資料が 来ていますというか、ご意見が来ています。武下先生のほうから。 ○武下参考人  作った経緯がございますので。どうも、このお手紙の内容の、世の中が混乱する云々 とかいうのは、どうかよく知りませんけれども、私は。ただ、瞳孔というのは、ほかの 検査項目と比べてちょっと特殊な面があるんですね。 それで、当初は、いわゆる竹内基準ができましたときには、脳死、そのほかの条件が 皆満たされたときに瞳孔がどうかというようなことで条件が入っておりまして、歴史的 にいいますと、ハーバードが散大になっておりますですね。それから、西ドイツとか中 東が散大で、それから、連合国は固定というような言葉を使っておりますが、これは、 径が動かないというように使われるときと、それから、瞳孔が刺激に対して反応しない というふうに使われるというのと、私はどうも二通りあるように思うんです。ですか ら、そこが混乱のもとでありまして、今回の「瞳孔が固定し」というのは、これは私、 竹内先生ともご相談した上でありますが、瞳孔径に関する反射が2つ入っているんで す。  これは、ひとつは対光反射と、ひとつは毛様反射というのが、いかに刺激を加えて瞳 孔径がどうなるかというのが入っております。ですから、竹内基準の中に入っている脳 幹反射の7つのうちの2つは瞳孔径に関するもので、その2つと重複していると、そう いうふうにご理解いただいたらいいと思いますし、それから、この瞳孔径に関しては、 当時、竹内基準が作られたときの、慶応大学の名誉教授をしておられる後藤文男先生が この項は分担されましたので、その論文に非常に詳しく書かれておりますので、それも 見ていただきたいと思います。  それで、瞳孔の径は動くことはありうるということは、私が最初に知ったのは197 0年代のラテンアメリカのニューロサージャリーの学会が、やはり瞳孔の径は動くとい うことをはっきり書いてありまして、別に今に始まったわけではないんですね。  ただ、4mm以上というのは、竹内基準で4mm以上と出しましたが、不思議に、そ のあと出た、一昨年に出たアメリカンアカデミー・オブ・ニューロロジーが、やはり4 ないし6mmという書き方でございます。非常に4mmというあたりが適切な値であっ たということと、もうひとつは、次元が違いますけれど、これは専門の桐野先生なんか にお伺いしたほうが私はいいかと思いますけれども、対光反射を見るのに、3mm、4 mm、3mmぐらいに、2〜3mmで見れるんでしょうか。対光反射を見るのには、や っぱりある程度の大きさがないと私はわからないと思う。ですから、4mmというのは いい線ではないかと、こう思っております。そういう背景をご理解いただきたい。 ○桐野委員  先生のおっしゃったとおりだと思いますが、僕自身は、フィクストピューピルの訳だ というふうに思っておりまして、瞳孔固定というのは対光反射がないことだというふう に理解しておりましたので、この議論があったので、「ああ、そういう見方もあるの か」というふうに思いました。  それから、先生がおっしゃったとおりで、最も薬物か何かで縮んで最小になったのが 2mmというふうに言われていますね。もうその状態では対光反射は見られませんね。 ○黒川委員長  ありがとうございました。そのほかに。このへんも含めて、やっぱり脳死判定の手順 といいますか、それからいろいろなご意見はあると思うんですが、それに対する見解と いいますか、その説明も、適切であれば作っていただくというようなことでお願いして はいかがでしょうか。 それでは、大塚先生、大変恐れ入りますが、よろしくお願いし たいと思います。  事務局から、どうぞ。 ○貝谷室長  今の寄せられた意見の中で、組織の移植に関しまして二、三、ご要望なりご意見が出 されおりますので、この点についてご説明を申し上げます。  これは、前回のこの委員会でもお話がございましたように、この法律の体系では、骨 とか、それから血管などの組織は対象とされておりません。したがいまして、先ほどご 紹介いたしましたご意見は、若干ご心配されている向きもございますが、この今回の臓 器移植法の制定によって従来行われている外科の整形の先生方が行っているそういった 組織の移植、それを何か制限するとか、できなくなると、そういう趣旨では全くないと いうふうに私も理解していますし、そういうご心配があるならば、私ども、何らかの形 で、ガイドラインになるのか何かわかりませんが、そこは従来どおりの扱いでいいと。 もちろんそれは、適切な家族の、あるいはご本人の承諾をとるという上でございますけ れども、そういう趣旨であれば従来どおりで結構だと、こういうことをはっきり示して いくことが混乱のない上では必要かなと、こんなように思っております。 ○黒川委員長  それはそうすると、行政的に対応しなくてはならないということになると、この手紙 ですよね。手紙にもそれなりのことを一応書いて返事をしなくちゃならないということ になりますね。多分、返事をしてもらったほうがいいんじゃないかなと思いますけれど も、どうですか。 ○貝谷室長  はい。そういうことで行政的に、混乱のない形でやっていきたいと思っています。 ○黒川委員長  それについてはよろしいですか。小柳委員。 ○小柳委員  前回、大島委員が腎臓のことに関して、焼却のことでご発言があったと思いますが、 主として病理学検査のことだったと思うんですが、私、そのときお話しいたしましたの は、心臓、血管については、マージナルドナー、ぎりぎり、これは使えるかどうかとい う、摘出寸前に血圧が変動したとか、あるいは、摘出チームが到着したときに既に心停 止であったというような方から、しかし要件を満たしているので頂戴できる心臓、血管 の部分などが、今日では扱われて実際にはアメリカではいるわけで、コマーシャリーア ベイラブルとありますけれども、わが国でもそういう芽はございますので、ぜひ整理を していただいて、将来に芽を残していただければというふうに思っております。  というのは、実際に提供の現場で、到着したけれども遅かったというようなことがあ ると思いますけれども、そのときに、しかしご家族は臓器提供のお気持ちがあるという ときに、マージナルなそういうドナーの意思を生かすような道を、ぜひ残しておいてい ただきますと、いま言ったような、生体組織の利用ということについて将来の芽をふさ がないということになりますので、ぜひガイドラインで整理をしていただければという ふうに思います。 ○黒川委員長  これについてはいかがでしょうか。行政あるいはほかの委員の先生からも、どうぞ。 ○貝谷室長  事務局から、小柳先生のほうにご質問ですが、今、先生がおっしゃっているのは、心 臓と一体として、心臓の移植のために当初摘出された、一体となった血管なり、その他 の組織について、心臓そのものの移植には結果としては結びつかなかったけれども、そ れに付随したというか、一体的な組織については、移植といいますか、そういう道も考 えるべきではないかと、それは認めるべきじゃないかというご趣旨というふうに理解し てよろしいでしょうか。 ○小柳委員  さようです。虚血になりましても、心筋を除きます大動脈弁、血管の部分は、心停止 後でも利用可能でありまして、実際には、これ以上の材料は人工的にもないわけで、そ ういう道を、この法でふさいでいるとは思えませんけれども、もしそういう不安が現場 であるようでございましたら、ガイドラインで整理をしていただければと思います。 ○貝谷室長  この点は、大変医学の発展と、あるいは提供されたご本人の意思なり、あるいは法律 のいろんな趣旨との非常に難しい点だと思いますが、前回、少しご議論のあった際にも お話ししましたが、やはり、ご家族なりご本人の意思は臓器の提供ということでなされ た、あくまでもその前提だとするならば、結果として臓器が移植されなかったときのそ の付随する組織というものは、この法律の体系の中ではなかなか難しいと思いますし、 全く最初から分けてと、別の、全く手続を別にしたものであれば可能性の議論はあると 思いますが、この法体系で、今、小柳先生がおっしゃったような、途中で臓器の移植で はなくて組織の移植のほうに使っていくというのは大変難しい問題があるのではないか と、私どもはそう思っております。 ○黒川委員長  それから、もうひとつ、このあいだ、大島委員のお話では、臨床的にこれは使えない んじゃないかという判定をすることはありますよね。例えば、色を見てとか、腎臓の場 合はどうもそういうことは、ウォーム・イズケミク・タイムの問題とか、運ぶ途中の問 題とか、それから、ドナーの最後の状況、いろんなことがあって、使えないか使えるか という判断は、最終的には移植の現場で行われることが結構ありますよね。そのとき に、これはやっぱりまずいかなというときには、それをどうするかという話があったわ けですね。そのときに、それを将来的なことのために使わせてもらえないかという意見 だったと思うんですが、さて、それはどういう、これではどうなのかということだった んですよ。それについてはどうですかね。 ○田中委員  黒川委員長のその話のとおりだと思うんですが、肝臓移植で、ひとつ欧米でも誤解を 招いたのは、使えない臓器をいろいろな組織研究とか薬剤研究に使ったという、そうい うことがございますので、少なくともきちんとできるまでは、やはりこの組織は使わな いということで、焼却ということで私はいいんじゃないかと思っています。 ○大久保委員  質問ですけれども、今、先ほどの貝谷さんのお話だと、到着したときに心停止してい るとしますね。摘出する前ですよ。心臓移植で臓器提供しますと、ご本人が全部承諾さ れていて、家族も承諾されていて、それで、摘出チームが行きますよね。そのときに、 着いたときにちょうど、寸前に心停止をしたとしますよね。そうすると、その段階で は、いわゆる心停止後になりますから、そのときに、その家族が、心臓は提供できない けれども組織は提供しますというお話になったらできるんですか。 ○貝谷室長  それは、今の話は、先ほどの小柳先生の話とまたちょっと違った趣旨かと思います。 今、大久保委員のおっしゃった点であれば、個別に組織の移植ということでのご遺族の 了解といいますか、承諾があるということでございますので、そこは先ほどのお話とは 少し違うんだろうと思います。 ○黒川委員長  それは脳死ではないわけですよね。心停止で。 ○大久保委員  着いたときに止まっているとおっしゃったものだから、それじゃあ、止まっていると きに摘出するわけはないなと思ったものですから。 ○黒川委員長  それは小柳委員の発言が誤解を招くといけないから、ちょっと。 ○小柳委員  実際には、心臓と肝臓に関しては、心・肝を摘出するチームは、おそらく移植病院か ら出ると現状では思っております。これは、世界のレベルでそうでございまして、この 臓器が移植に使えるかどうかという判断は、その臓器を扱う当該分野の担当チームから 摘出チームが出ると思います。  そういたしますと、マージナルドナー、ぎりぎりの虚血時間の臓器を使うかどうかと いうことは大変な問題でございまして、心停止をして、心マッサージをしながら摘出を することもあるかと思いますけれども、その臓器を使うかどうかということは移植チー ムに任されることだと思うんですね。そのときに、これは、この臓器はギブアップしよ うという判断に至りましたときに、しかし、家族の申し出で、非常に条件が悪くても組 織としてでも使ってほしいという要望があったときに、現在、世界でやられております ホモグラフトの利用に倣いまして、同種の組織片として使用する道をなるべくふさがな い方法でやっていただきたいということを申し上げたのでございます。 ○貝谷室長  正確を期すために、もう一回、今、大久保委員のこのお話。心停止後に摘出を行う と。なおかつ、それは臓器の摘出ということではなくて、最初から組織の移植を目的に ご家族に、ご遺族に説明をし、ご了解を得て摘出を行っていく。これはいわゆる組織移 植ということで、従来から行っておりますので、その限りでは、これも今後とも同様な 手続であれば可能だということでございます。先ほど小柳先生がおっしゃったのは、脳 死段階で取り出したあと、摘出したあと、結果的に移植に使われなかったけれども、心 臓弁があるじゃないか、血管があるじゃないかというところの、それがほかの組織移植 に使えるかどうかというご議論だったように思いますので。 ○小柳委員  少し整理ができたように思いますので。ネットワークを通って脳死ドナーから摘出さ れた臓器が、その後の判断で移植に使われなかった場合には、ホモグラフトとしての利 用というのは、そういう使い方はしないという判断で、初めから摘出前に組織の利用と いう判断で摘出されたものについては問題がないと、こういうことでよろしゅうござい ましょうか。明瞭になりました。 ○黒川委員長  よろしいでしょうか。どうぞ、町野委員。 ○町野委員  確認したいんですけれども、結局、法律の9条の問題ですね。これは結局ね。そし て、9条の問題として、あとの例えば研究だとか、いろんな事後的なフォローのために 組織の一部でも取っておくことは許されないという解釈があると。それはしようがない のかもしれないという感じはしますし、さらに、先ほどの田中委員の発言にもありまし たとおり、もうちょっとこれからこの問題は検討しなきゃいけないということは、それ はわかります。  もうひとつ、小柳先生が言われていた問題で、移植用の臓器の提供を受けたと。しか し、臓器としては移植されないけれども、そのうちの組織を使うことはできないのか、 それも許されないのかということについては、私は、今、室長の言われたような解釈は 必然だという具合には思われないので、まだ検討していただけないかという具合に思い ます。  つまり、心臓といいますか、心臓あるいはその周辺一体となっているものについて、 移植についてはOKが一応出ている以上、そのうちの一部についてもその意思が及んで いないということは僕は言えないだろうという具合に思います。もちろん、いろいろ倫 理上の問題として、このような使い方をするということを、もう一回あとから遺族のほ うに断る必要があるということはあるかもしれません。しかし、一律に9条の範囲外だ としてしまうのは、まだちょっと早いように思います。 ○大島委員  前回のときに私が言ったのは、ちょっと田中先生がその点で誤解を招くおそれがある というふうに言われましたけれども、あくまで使われなかった原因を究明するために使 用するという目的に私は限ってお話をしたつもりなんですけれども。ほかの目的で臓器 を使うとか、ほかの研究目的でやるという意味で話したわけではありません。 ○貝谷室長  今、町野先生がおっしゃいましたような点は、非常に微妙な問題を含んでおりますん ですが、個別に承諾を得るということで、どこまで臓器提供の当初の意思が組織移植も 含んだ意思とみなせるかどうか、そこは少し検討の余地があると思いますが、十分ここ は慎重に私ども事務局のほうで検討したいと思っています。 ○黒川委員長  それから、今の大島委員のこともそうですけれども、これは多分使えないというの は、やはり何となく見た感じでするわけですよね、それまでの経過のデータとか。そう すると、そのときに、移植の先生の判断というのは一体何だったのかということが必ず ありますから、腎臓なんかの場合は、そこでバイオプシーをして、それをあとで調べる ということはありますよね。そのぐらいも許されないとなると一体どうなるのかという 話もひとつ、大島委員の意味じゃないかと思うんですよね。多分だから、その組織の一 部を、あとでそういう検討をするために使わせてもらいたいということだと思うんです が。ただ、全体の、例えば心臓とか肝臓とか腎臓の全体を、例えばマグネティックレゾ ナンスみたいなのでATPや何かを見ようかなんていうところは、ちょっとなじまない かもしれないですよね。だけど、組織を取っておいてどうなのか。バイオプシーの組織 とか、切片ぐらいはどうかなという、それも許されないで燃しちゃうのかという話にな っちゃう、それを言ってるんじゃないかという気がするんですけれど、それはどうでし ょうか。つまり、医学的に、その次に、自分の臨床判断がどうだったのかという蓄積が あるわけですけれども、それはどうでしょうかね。もちろん家族の同意は取るとしてで すよ。 ○貝谷室長  それは、その移植のために、移植に適するかどうかを判断するために、一部細胞なり 組織を検査するということ。 ○黒川委員長  ええ、そうです。 ○貝谷室長  それは、その移植のためということでございますので、それが医学的に必要なもので あるということであれば、それは許されるんだろうと思います。 ○黒川委員長  使えなかったということを、ある程度医学的に証明したいというようなことに限って いるということですね。難しいかな。要するに、臨床的な判断で、これは多分使えない だろうという判断をしてやめるわけですよ。そのときに、一応組織を一部とっておい て、やっぱりこれはひどかったとか、いろんな話が出てくるんじゃないかと思うんです けれど。 ○貝谷室長  今の点、検討させていただきたいと思います。 ○矢崎委員  脳死の臓器移植というのは、今が非常に大変な状況にあるということは変わってない と思うんですね。ですから、今、小柳先生のお話で、大変お気持ちはわかるんですけれ ども、そういう血管とか弁の場合には、心停止したあとの死体からも取れるということ もありますので、当分はそういうところに力を注いでいただいて、やはり、ここで言う 臓器移植という本来の目的に限って、先ほどありましたけれども、脳死の判定について も一点の曇りもないというのは、サイエンティフィックに、医者仲間でいろいろクレー ムがあったら、一般の方はもっといろんな意見があると思いますので、できるだけサイ エンティフィックに、根拠を明らかにして、わかりやすい言葉で、脳死判定は別に、法 令と違った文章でやはり一般の方々にも、一点の曇りもないといいますか、全部わかる というようなことをしないと、なかなか実施するのは難しいのではないかと思うんで す。  したがいまして、先ほど骨のこととかいろいろありますけれども、できれば、できる だけクリアカットにわかりやすく、いろいろ議論が呼ばないように、まず最初はやって いただきたいということで、ぜひその点、お願いしたいと思うんですけれども。 ○黒川委員長  矢崎委員、先回も同様なご発言がありまして、私もそのとおりだと思うんですね。や はり今回の法律、省令では、やはり一般の人たちに、ある程度目的がはっきりしている わけですので、そこでの実績、それから社会からの認知、そのようなことが非常に大事 なんじゃないかなというふうには思います。 ○小柳委員  そういうことは大変よく承知しておりまして、純粋な形で脳死移植は行われるべきと は思っておりますので、先ほどの貝谷さんのご説明で私も理解したつもりでおります。  ひとつ、可能性をつぶしてほしくないと申し上げた理由のひとつは、例えば、スキン とかボーンとか、それから、いま言った心臓血管とか、そういう心停止後の組織の提供 といいますか、そういったものは、ドネーションのいい啓発、普及のチャンスでも逆に ありますので、そういう意味では、芽をつぶしてほしくないというふうに思っておりま す。こんなことでも役に立てるんだという一般の方の意識が非常にプラスになることも ありますので、心停止後の可能性については、ぜひ残しておいていただく、何か整理を していただく必要があるかなと思っております。 ○小林局長  今の組織の移植に関することに関しましては、国会でもご質問がありました。政府と しては、政府答弁をもって、従来の心臓停止後、ご家族の了解を得て組織をいただい た。そして、それをほかの人に使うという、いわゆる組織移植というものについては法 律を作るべきではないかということに関しては、それについては、そのこと自体は許さ れるし、法律を作る考えは政府にはございませんと。適正に行われているものと判断を しているということでお答えをいたしております。したがって、今の段階では、組織移 植に関しては法律がなくても、お医者さん方の倫理できちっと行われているものと判断 をしているということでございます。 ○黒川委員長  ありがとうございました。そういうわけですから、矢崎委員のご意見も踏まえると、 やはり組織の、脳死ではなくて、心死以後で行われているのは適切に行われているとい うことで、今回のことの範疇には入らないということでよろしいですね。よろしいでし ょうか。  それでは、実際の脳死判定の基準のガイドラインですかね、実際の施行に当たっての ガイドラインを大塚先生にお願いするといたしまして、田中委員がお着きになりました ので、第一条というところについて、ちょっとご議論をいただきたいと思います。内臓 の範囲ということについて書いてあるわけですが、これについてどのように進めましょ うか。この「厚生省令で定める内臓は、膵臓とする」ということであります。  そこで、このあいだ、田中委員から、小腸についてはどうかという話がありましたの で、それにつきまして、田中委員からご報告をいただきたいというふうに思います。よ ろしいでしょうか。はい、どうぞ。 ○重藤補佐  膵臓のほうも資料を用意しておりましたので、小腸と膵臓、膵臓のほうは最初に案と して載せておりますが、その状況等について事務局から先にご報告をさせていただきま して、そのあと、小腸を田中委員に。小腸と膵臓の感じがわかろうかと思います。 ○黒川委員長  それでは、膵臓について、それでは事務局のほうから。 ○重藤補佐  資料の3でございます。膵臓移植の現状という紙を、事務局でいろいろ資料を調べま して用意させていただきました。  まず、膵臓移植につきまして、まず適応でございます。主としてインスリン依存型糖 尿病(IDDM)であり、インスリンによる血糖管理が困難な症例、高度の不安定患 者、糖尿病性合併症が進行する症例に行われております。  通常は糖尿病性腎症が腎不全に進行した時点で腎と同時、あるいは腎移植後に移植さ れるが、腎不全が進展する以前に膵単独で移植される場合があるということで、今現 在、そういう適応でやられております。  膵移植の現状でございますけれども、国際的、International Pancreas Transplant Registryの調査によりますと、1995年度末現在までに、7,505件が行われてお ります。真ん中へんに図がございますけれども、各年度ごとの移植件数でございます。 1980年代半ば以降より急速に件数が増えてございます。大体94年、95年は90 0件以上が行われております。  こうした7,505件、これまで報告された事例につきまして、どういうような状況 で移植されたかということがわかった4,438件につきまして、内訳を表にしており ます。それは、1987年以降の膵移植のうち解析可能な記録のある4,438件の内 訳ということで、膵腎同時移植は、このうち3,812件で、全体の85.9%。腎移 植後の膵移植が330件、7.4%。膵単独移植、221件で5%。その他で75件と いうことでございます。  日本ではこれまでに15件行われておりましたが、腎臓移植ネットワークが立ち上が ってからは、今のところ行われていないというのが日本の現状でございます。  2ページでございます。これまでに行われてきた膵臓移植の成績でございます。患者 1年生存率の表が一番最初に出ております。膵腎同時移植の1年生存率は91%、腎移 植後の膵移植・膵単独移植の1年後は92%ということでございます。  移植膵の1年生着率。生着した、ここが一番重要かと思いますけれども、膵腎同時移 植の場合に膵臓が生着する1年間の率が78%、それから、腎移植後の膵移植が56 %、膵単独移植が55%でございます。  それから、3番目の表でございますが、患者1年生存率の推移ということでございま す。膵腎同時移植が、1987年〜89年、75%が、1994年〜95年、81%。 それから、真ん中の腎移植後の膵移植が、1987年〜1989年が51%でございま したが、1994年〜1995年には79%ということでございます。それから、膵単 独移植が、1987年〜1989年には44%のものが、1992年〜1993年が5 7%ということでございます。  下の図は、これらのものの年次推移をわかりやすく表にまとめたものでございます。 患者生存率が真ん中左側。それから、右側が生着率でございます。生着率が問題になろ うかと思いますけれども、「○」印が膵腎同時移植、「◇」が腎移植後の膵移植。それ から、「△」が単独膵移植でございます。それの生着率の生着の経時変化が描かれてお ります。  それから、一番下の図が、それぞれの、膵腎同時移植、それから腎移植後の膵移植、 それから膵単独移植のそれぞれにつきまして、94年〜95年が「□」、「○」が92 〜93、それから「◇」が90年〜91年、「△」が87年〜89年というようなこと で、各年次ごとで、0カ月から36カ月のあいだの生着率の推移というものが図に示さ れております。  以上が膵移植の現状でございます。 ○黒川委員長  ありがとうございました。何かご質問、コメント等がございますか。膵移植はこのぐ らいの数行われていて、IDDMの患者さんで、特に腎不全を併発している人が多いわ けでしょうけれども、このような実績があって、このぐらいの数が行われているという ことであります。かなり十分なフォローアップの現在の成績も得られているということ になるかと思います。  何かご質問ございますか。こういうのに基づいて省令のほうでは一応膵臓も足してあ るということだと思います。よろしいでしょうか。  では、もしよろしければ、それでは、田中先生のほうから、小腸についての現状につ いてお願いをいたします。 ○田中委員  それでは、小腸の現況を報告させていただきます。資料の4のほうに4ページにわた って用意いたしましたが。  最初、「小腸不全とは」の定義も書いています。こういうところはご参考にしていた だきたいと思います。 小腸不全に対する対策ですが、ご存じのように60年代から は、完全非経腸静脈栄養という手技が発達して、本邦でも小腸不全に対して、こういう 手技で多くの人が恩恵を被っているわけですが、これが長期に及びますと、脂肪肝にな ったり、あるいは、その脂肪肝が高じて肝不全になったりするというひとつの流れと、 もうひとつは、この経腸静脈栄養そのものが何らかの理由、主には入れるルートが全部 閉塞してしまう、あるいは、何回やっても感染を起こして生死に関わり合いがあるよう な感染症に陥る。こういうことから、このTPNの継続が不可能に陥る状況が予想され るわけです。こういう予想される症例が小腸移植の対象になっていると一般的に言われ ています。  小腸移植は、このへんは次のページですが、どういう形でやられたか。大変ほかの実 質臓器と比較して極めて成績が悪い状況で進んでまりました。ご存じのように、この小 腸移植は拒絶が非常に強いという事実と、小腸の中には腸内細菌がありますので、拒絶 が起こりますと、その腸内細菌の影響をもろに受けるという結果で、60年代、70年 代、数も少なく、その成績も悪いと。  いろいろなことがわかってまいりまして、1980年代になって、免疫抑制剤の開発 と同時に、それが試みられるようになりましたが、それでも遅々として数も少ないとい う状況でございます。  しかしながら、少しずつ成功例が報告されるようになりまして、1990年になりま して、本邦で開発されたタクロリムスが導入されまして一段と成績が向上して、次第に 臨床的に確立されるに至りつつある移植でございます。  現況はどうかと申しますと、レジストレーションが世界で始まりまして、カナダのト ロントにセンターがあるんですが、その報告が1996年、Lancetに載りました。フォ ローの期間は1985年から1995年の成績で、患者さんが170人。年齢構成と か、そこに示したとおりですが、小腸移植が180件あり、小腸単独が69例。それか ら、先ほど申しましたように、肝臓が悪くなったために肝臓も同時に移植しなければい けないという症例が83件でありました。多臓器を含めて移植した症例が28例。この ようになっております。  適応疾患に関しては、腸が大変短い、あるいは運動障害という、消化管の神経学的な 問題、その他の原因で腸が全く動かないという病気があるんですが、いずれにしまして も、TPNの継続が不可能になった状態、こういう状況であります。したがって、絶対 適応は、経静脈栄養で、主には家庭で静脈栄養投与を受けていると思うんですが、こう いう継続が不可能になった状態が絶対適応になっています。  免疫抑制剤の種類は、そこに記載したとおりであります。 3ページ目。生存率。こ れも先ほどの、生着率が重要なんですが、と申しますのは、小腸が生着しなくても、そ の小腸をとって患者さんをまた生存させるということは可能なんですが、小腸は、先ほ ど申しましたように、膵移植と少し違うところは、手術の前の適応が既に経静脈栄養で サポートできないという状況でありますので、生着率、生存率もそれほど大きくは変わ らないという状況でございます。  生着率を見ていただきますと、サイクロスポリンでは、小腸単独で1年で11%あっ たのが、タクロリムスを投与することによって60%まで上がったということで、免疫 抑制剤と深く関わり合いがある成績でございます。  死因については、肺血症、その他、そこに記載するとおりでございます。  じゃあ、移植したあとにどうなるのか。つまり、移植をしてうまくいきますと、経静 脈栄養が不要になった、全く自分の口から普通の食事をとって生活できるという状況 が、おおよそ78%に。一部吸収はしているんですけれど、経静脈栄養のサポートが要 るというのが12%でございます。移植小腸を何らかの理由のために取ってしまった症 例が10%と。以上のようなことです。  わが国における小腸移植の適応についてですが、1985年に、在宅の静脈栄養法が 保健適応を受けたという実績がございまして、1986年に、日本在宅静脈研究会が設 立されます。1991年から、この研究会による登録推進委員会による全国状況の調査 が開始されまして、1992年に調査結果が報告されています。  登録数が、1994年9月現在で299。良性疾患が158。このうち短小腸が71 人。悪性腫瘍が141人、そのうち短小腸が12人。悪性腫瘍は、移植の適応から多く は外れるわけですから、150人余りが現時点で小腸移植の適応になります。しかし、 家庭内の在宅の静脈栄養でいけている症例が多くですから、本邦においては、それを差 し引きますと50人程度が年間の移植ということが予測されます。 次の最後のページ ですが、これは、世界のレジストリーによります年次別の症例数ですが、一 番右のほうの、括弧枠の右のほうを見ていただいておわかりのように、年々、徐々にで はありますが、少しずつこの症例数が増えて、免疫抑制剤、いろいろな工夫がなされま して、次第に成績が上がって、1995年で31例。本年の、つい先月、ロンドンで世 界の小腸移植研究会があったんですが、年間50例から60例が世界で移植を受けてい るという状況でございます。  先ほど、生着率と、もうひとつ、わかりやすくグラフにしましたのが図1でございま す。小腸単独移植、肝小腸同時移植、多臓器移植ということで、1年生着率、2年生着 率、3年生着率、4年生着率というふうに、少しずつ何らかの合併症で落ちてはくるん ですが、40%の生着率を得て、そのうちの80%が、先ほど申しましたように、家庭 の在宅の静脈栄養が全くなしに経口で普通の生活ができるという状況です。  これを見ていただくとおわかりと思いますが、先ほどの膵移植の生着率とそれほど変 わりない。膵移植の生着率でも、36カ月を見ていただきますと、PAK、PTAで も。事実、小腸移植の成績は次第に向上しているわけでして、もし、今回の省令で小腸 が外されますと、おそらく、また再び小腸を入れるという時点におきますと、この小腸 不全を持っている人たちは恩恵を被ることができないという事態が予測されますし、じ ゃあ、実際、小腸をその時点で入れようということになりますと、また大変な努力と月 日を要するという状況が考えられますので、小腸移植についても症例のなかにぜひ入れ ていただきたいというのが私の説明でございます。以上でございます。 ○黒川委員長  どうもありがとうございました。何かご意見その他ございますか。どうぞ。 ○井形委員  小腸の場合は、死体からは絶対不可能というか、そのことがひとつと、それから、も うひとつは、摘出してから移植までのできる時間ですね。非常に長いか非常に短いか。 そのあたりのデータがあったら教えていただきたいのですが。 ○田中委員  小腸の場合は、死体からの摘出の移植では、これは不可能です。移植にどれぐらいま でもつかといわれますと、肝臓よりもやっぱり短いようでして、それでも8時間は。 ○大島委員  ちょっと細かいところで申し訳ないんですけれども、結果の項で、生存率よりも生着 率のほうがよくなっているんですよね。これはちょっと間違いじゃないかと思います が。 ○黒川委員長  サイクロスポリンのやつでしょ。 ○田中委員  サイクロスポリンで、生存率のほうが生着率よりもいいということでしょうか。 ○大島委員  いや、悪い。タクロリムス群で、生存率のほうが生着率よりも。 ○黒川委員長  悪い。10%悪い。58と47です。 ○田中委員  そうですね。ちょっとこれは、生データをもう一度確認させてもらいますが。 ○黒川委員長  3分の1年て、4カ月ということですか。 ○田中委員  いえ。これは、1年と、それから3年と。1は1年。バーの上が1年で、3年生着率 が、生存が、その下の分母のほうにきているという。 ○黒川委員長  そうすると、タクロリムスは、これは1年のことなのかね。下が。生着率は。そのへ んがはっきりしないですね。 ○田中委員  これは、出典ちょとありますので、あとで。 ○黒川委員長  それはともかくとして、いかがでしょうか。何とも言えないですね、これは。 ○井形委員  僕の印象ですけれども、臓器移植はやっとの思いでここまで来て、命が迫っている人 のために皆さんご理解をいただきたいといって来たわけでありますから、ここでまた小 腸もということを入れることというのは、若干抵抗があるんじゃないかと思います。で も、いま言われたように、これが省令でいったん決まったら、見直すのが非常に厳しい ということを心配されておりますから、これは、この委員会で小腸については、臓器移 植が定着したら、新しい移植に係る臓器については随時検討すると、そういうふうな報 告を、希望を述べさせていただければいいんじゃないかと思いますがね。どうでしょう か。 ○黒川委員長  この省令は、また見直しはできるわけですよね。ただ、その見直しする背景は、やは り、世界中での実績とか、どの程度それがエスタブリッシュされているかということ が、ひとつ大事な要件ではないかと思うんですが、いかがですか。 ○貝谷室長  省令の規定、今おっしゃったとおり、随時見直しということで差し支えないかと思い ます。また、もちろん世界の動向、それから、もちろんわが国の移植実績というものも 当然念頭に置きながら、この専門委員会で、それは当然随時議論していくべき問題だろ うと思っています。 ○黒川委員長  多分、小腸の場合は、そうすると2つ可能性があって、この法律と省令が出て2、3 年したときに、世界的な趨勢で、小腸の移植がかなりエスタブリッシュされて、年間数 千やられていると。非常に成績がいいという状況になるか、あるいは、数は少ないんだ けれど、日本での脳死の臓器移植が非常によく定着して、極めてよく行われているから 小腸も加えてもいいと。両方の可能性があるんじゃないかと思いますが。はい、どう ぞ。 ○田中委員  臓器の提供のほうから申しますと、自分の臓器をどうぞ生かしていただきたいという ことでありますので、家族の中に小腸の病気を持った人たちがいる、そうすると、自分 が亡くなったときには小腸をどうぞ生かしてくださいという形になると思うんです。お そらく、これから移植をするのに、また肺も膵も、そういう意味では、この臓器移植と しての施設もいろいろ考えなければいけないので、ここで小腸を除くということ自体が 果たしてそれほどの説得力があるか。膵移植の成績と比べてですね。だから、むしろ、 臓器提供のところで、これを提供しますということで丸、それから、これは提供しませ んということで、個々の人の意思が入るわけですから、そういう意味では、小腸移植を 除くと、将来、3年後にもう一度見直すときには、既に大変、それからさらに5年先 と、10年先ということになりやしないかということをちょっと危惧するわけです。 ○森岡委員  やっぱり膵臓とか小腸だけ除くというのはおかしな感じがしますね。そもそも外国で やって成績がいいからやれるという、そういう発想というのも、どうなんですかね。私 は消化系の外科をやっていますけれども、現状では小腸の移植を入れることで何か悪い ことが起こりますか。あまり関係ないような気がします。むしろ、膵臓と小腸を除くと いうことは、非常に奇異な感じがするように思います。私の意見はそうです。 ○黒川委員長  まあ、しかし、これをするのに、やっぱり一般の社会が、小腸を死体からの移植とい うのがどのぐらいファミリアなのかということと、やっぱり世界的な成績でどのくらい されているのか。例えば膵臓はどうですかといったときに、毎年900ぐらいやられて いますよ、このぐらいです、というのと、今まで170でこのぐらいですよというので は、随分ニュアンスが違うと思いますけれどもね。もちろん、先生のお気持ちはよくわ かりますが。 ○森岡委員  本当に外国でやって成績がいいからそこで初めて日本でやるのかという、それもちょ とおかしな話なんですね。 ○黒川委員長  だけど、この全体の脳死の移植の背景というのは、そういうところにあるんじゃない ですか、という気がしますけれども。 ○森岡委員  ありますけれどもね。しかし、基本的に、どうして小腸だけを除く必要があるかとい うことですね。 ○黒川委員長  そうすると、どうして日本では脳死臓器移植ができなかったのかということに。 ○森岡委員  意味はわかりますけれども、肝臓と心臓と肺だけがよくて、何で膵臓と小腸が悪いの かという理由がないと思います。他の臓器と同じようなレベルの問題じゃないかという 気がするんですけれども。 ○大久保委員  前回のときにちょっとお話をして、私もちょっと誤解をしておりまして、小腸自体が 脳死からでしかできないということを私もちょっと存じ上げてなかったので不本意な発 言になったと思うんですけれども。実際に小腸が脳死からしか臓器移植ができないので あれば、やはり膵臓と同じように今回の中に入れるべきだと思います。本当に先ほどの 話じゃないですけれども、外す理由はひとつもないと思いますし、前回、生体で小腸移 植というのがかなり大きく新聞に取り上げられましたので、そういった移植があるとい うことも、今まではご存じなかった方も多いと思うんですけれども、それも少し知られ てきたんじゃないかと思いますので、提供するかしないかは、それはご本人の意思です ので、その中に入れることに関しては何の不都合もないんじゃないかと思います。 ○黒川委員長  ありがとうございました。そのほかにいかがですか。矢崎委員。 ○矢崎委員  先ほど申し上げましたように、脳死の移植を何とか定着させたいという気持ちでこの 法案をサポートしてきたわけですけれども。ですから、私は、脳死体からの臓器移植し かできないものを非常に限って法案の中に入れるのは、私はよろしいんじゃないかとい うふうに考えております。 ですから、小腸が脳死体からでなければ移植が不可能だと いうことを非常に強く認識していただくということが重要じゃないかと思うんですね。  逆にいいますと、腎臓と膵臓というのは、このあいだも心臓のレシピエントの適応基 準で、IDDMの患者さんといったときに、糖尿病の先生から、IDDM、インスリン の分泌がゼロでも普通の人と全く変わらずにインスリンでコントロールできるんだか ら、それを相対的な適応基準から除くのはいかがなものかとおっしゃられたように、腎 臓も透析ということもあるので、むしろ膵臓と腎臓が入るのであれば、脳死体からでな ければ絶対できないというほうが、私はむしろ優先するのではないか。  ただ、黒川委員長がおっしゃられたように、実績とか、皆さんの認識が非常に薄けれ ば、その点、何とか認識を高めていただくということではないかというふうに私は思い ます。ですから、小腸を入れられるということに対しては、私は、そういう前提条件で あれば認めてもよろしいのではないかという私の個人的な意見です。 ○黒川委員長  ありがとうございました。これは、小腸は生体じゃなくて死体からの移植というのは 今までもされていたんですかね。腎臓をやっている人も、なるべく脳死のほうがいいに 決まっているわけで、日本ではやむを得ずそういうふうになっているところがあるんで すけれどもね。だから、日本だけですよね、死体腎でやっているなんていうのは。その へんはちょっと議論は外れるかな。いろんな意見として言っているだけの話ですけれど も。  腎臓の場合は、確かに先生がおっしゃるように透析という手段があるから、死体腎で やってみるかという話で、まあまあいくかなというので結構うまくいくようになってい ったというのがあるわけですよね。実際、日本がどうやって死体腎でやっているのかと いう、勉強に来るという国もないわけではないようなところになってしまったんです ね。  さあ、それはどうでしょうかね。これは、ここの委員の先生方、皆さんがそういうふ うに感じられるかどうか。 ○小林局長  大体ご意見が出たようでございますので、少し考えさせてください。きょうのところ は、当局としても判断は致しかねます。 ○黒川委員長  そうですね。結構ではないでしょうか。またこれは引き続き議論のあるところかもし れませんので、ご意見を十分伺うことにいたしたいと思います。 ○小林局長  その前に、もう少しデータの細かいところを整理させていただきます。ご協力をお願 いいたします。 ○黒川委員長  そういうことになると、組織とか、脳死じゃなくてもいいんだよという話は別だとい う話が盛んに出ていますけれども、そうなると、残っている臓器というのは何かあるん ですか、まだ。変な言い方だけれども。この臓器と組織と違うと。これは臓器だという と、残っている臓器というのは何かあるんですかね。 ○貝谷室長  いわゆる法律では、臓器という定義が置かれていまして、内臓というのが臓器の前提 条件で法律は書かれております。内臓ということで残って、移植を今、世界的にやられ ているのは、おそらくあまりないんじゃないかと。小腸まで含めれば。 ○黒川委員長  食道とか、そういうのは。 ○貝谷室長  世界の状況は、ほぼこれで。いかがでしょうか。 ○黒川委員長  理屈からいうと、今みたいな議論になると、内臓で残っているのは全部大丈夫かね、 という話が出ないとも限らないと思うんですよ。それについてはある程度考えておいた ほうがいいんじゃないかと思ったんです。  そうすると、きょうは時間が来てしまいましたので、ちょっと私のほうの手際もよく なかったんじゃないかという気がしますが、もうちょっと、第三条以後もやらなくては いけないんですが、これは次回でもよろしいですか。ちょっと時間が足りないか。もっ と今やりたい。 ○貝谷室長  今の点は一条、二条が中心だったと思いますが、どのぐらいの先生方のご意見がある か。もし必要でしたら、ご意見がどの程度か。ほかの部分でどの程度のご意見があるか どうか、もし。深い議論はちょっと別にしまして、どの程度の御意見があるか、事務局 として少し把握しておければ有り難いなと思っています。 ○黒川委員長  三条以後は割合に事務的なところですから、比較的問題は少ない、今までのような問 題とは違った問題はあるかもしれませんので、次回に取り上げるとして、先生方のほ う、ちょっと目を通していただいて、何かありましたら事務局のほうに、これはどうな んだという話をちょっと言っといていただけると議論の進行が早くなるかもしれませ ん、ということでいかがでしょうか。  そうすると、もうちょっと、予定した回数よりもっと、もう一回ぐらい余分にやって おいたほうがいいんじゃないかという気がしますので、実は、法律の施行の日時と、こ の委員会の性格からいうと、この上の部会にいろいろ上げるというプロセスもあります ので、実をいうと、9月の第1週にもう一回、一応予備として入れておきたいと思って います。  私としては、私の都合で誠に申し訳ないんですが、実をいうと、成人病難病対策部会 との日程の都合がありますので、先生方、9月の5日、金曜日ですが、午前10時〜1 2時までということを一応リザーブしておきたいんですが、よろしいでしょうか。  よろしいでしょうか。一応リザーブで入れておいていただきたいと思いますので。手 帳に今、9月の5日の金曜日、10時から12時。場所については、また改めてご案内 いたしますが、一応リザーブさせていただきたいと思います。  そのほかの日程は、前にご案内いたしましたように、8月の18日、月曜日の10時 〜12時と、それから25日の月曜日の午後の2時〜4時ということであります。もう 一回リザーブとして、9月の5日、午前10時〜12時ということを入れさせていただ きたいというふうに思います。  そのほかに何かありますでしょうか。あとは事務局のほうから、そのほかありました ら、お願いいたしたいと思います。いかがでしょうか。 ○貝谷室長  前回、大久保委員のほうから、省令の項目に沿って具体的な様式があればということ で、きょうは参考までに、私どものほうで作ったもので、それも含めて何かございまし たら。 ○黒川委員長  そうですね。この様式も一応、また次回に資料を作っていただかなくちゃならなくな るんじゃないかという気はしますが、一応今回、お手元に見ていただいてということ で、よろしいですか。資料の7ですけれどもね。これもちょっと見ておいていただい て、次回ということでよろしいですか。 ○大久保委員  それと、家族に対するガイドラインも出していただければ。 ○黒川委員長  それはいつ。家族の定義ですね。 ○貝谷室長  省令が大体この範囲までだということになりますと、省令までに書いてないこと、運 用事項ですね。家族の範囲とか、先ほどの無呼吸テストの手順とか、そういったものを 含めまして、事務局で案を、次回の18日の日にガイドライン案をお出ししたいと思い ます。 ○黒川委員長  では、そのへんを中心にして、次回、ご検討をいただきたいということです。大塚先 生の委員会のほうは、もし間に合えば、そのときにもまたということになりますが。 ○貝谷室長  ちょっと時間的に難しいかと思います。次々回、25日に。 ○黒川委員長  そうですね。次々回ですね。いくらなんでもちょっと難しいかなと思います。  それでは、よろしいでしょうか。それでは、本当にきょうはいろいろありがとうござ いました。これで、この委員会を終わらせていただきたいと思います。ありがとうござ いました。 以上 問い合わせ先 厚生省保健医療局エイズ疾病対策課臓器移植対策室    担 当 重藤(内2361)、眞鍋(内2364)    電 話 (代)03-3503-1711