97/07/30 年金審議会全員懇談会議事録               年金審議会全員懇談会議事録 日 時 平成9年7月30日(木) 14:00〜16:11 場 所 厚生省特別第一会議室  1 開 会の辞  2 委員出席状況報告  3 議 事   ・ 次期財政再計算に向けての検討について  4 閉 会 〔出席委員〕   京 極 会 長   八 木 委 員  砂子田 委 員  岡 崎 委 員  木 原 委 員   国 広 委 員  久保田 委 員  神 代 委 員  古 山 委 員   坂 巻 委 員  福 岡 委 員  桝 本 委 員  目 黒 委 員   山 田 委 員  山 根 委 員  吉 原 委 員  若 杉 委 員   渡 邊 委 員  船 後 委 員  ○会長 それでは、時間でございますので、ただいまから年金審議会の全員懇談会を開 会いたします。初めに委員の出席状況について事務局から御報告をお願いします。 ○事務局 本日は高山委員、都村委員、貝塚委員が御欠席で、そのほかの委員は御出席 でございます。 ○会長 それでは本日の議事に入りたいと存じます。本日はまず基本的事項を含めて、 給付水準及び負担水準について議論をお願いしたいと思います。時間が限られておりま すので、円滑な議事運営への御協力をよろしくお願いいたします。  それでは、まず基本的事項を含めまして、給付水準、負担水準について議論を始めた いと存じますが、事務局の方で資料を用意してございますので、御説明いただきたいと 思います。どうぞお願いします。 ○事務局 それでは、本日の資料1及び2につきまして、私から御説明をさせていただ きたいと思います。まず資料1でございますが、「公的年金の給付水準及び負担水準等 に関する資料」ということでまとめております。前半が給付水準に関する資料でござい まして、給付の状況、給付水準の考え方、などをまとめております。後半は負担水準に 関するものでございまして、保険料率の推移、負担水準に関する意見などをまとめてお ります。最後に各国の年金制度の概要を付けさせていただいています。以下、順次御説 明をさせていただきます。  1ページをお開きいただきたいと思います。1ページは、各年金の受給状況でござい まして、制度別に受給者数及び給付額をまとめたものでございます。  国民年金、厚生年金、企業年金それぞれにつきまして数字を挙げておりますが、厚生 年金につきましては下限、上限、平均という数字があるわけでございまして、それぞれ ごらんいただきたく存じます。  2ページをお開きいただきます。2ページが厚生年金の給付設計ということで、基礎 年金部分、報酬比例部分をあわせたいわゆる算式を示しています。基礎年金、夫、妻、 それぞれ6万 5,000円に報酬比例部分を足し上げていくわけでございますが、現在の仕 組みといたしましては、夫の標準報酬月額に賃金再評価を行いまして、標準報酬月額を 決めております。 それに前回の改正からネットスライドをするということで、可処分所得スライド率と いうのを掛けておりまして、これが0.99になっております。前回の改正におきまして、 現役の可処分所得の動向に応じるということで、家計調査をベースとし、昭和63年から 平成5年までの年収から税及び社会保険料率を引いた伸びを算定したわけですが、これ が0.99であったということを示しておるわけでございます。これに給付乗率、加入年数 を掛けまして、制度成熟時のモデル年金といたしまして、23万 983円が算定されるわけ でございます。 この年金の額につきまして、所得代替率ということで、それぞれ総報酬あるいは標準 報酬に対する割合を見たものがその下の所得代替率の四角の中の数字でございまして、 分子はいずれもこの年金額ですが、分母につきまして、総報酬では標準報酬に1.3 を掛 けています。また、可処分所得ということで、税及び社会保険料を除くということで、 0.849 を分母に乗じております。これがネットでございます。 このような形で数字をはじきますと、それぞれごらんいただきますように、総報酬 ベース、標準報酬ベースでそれぞれ一番右にございますように、62%から、それぞれ68 %までの数字があるわけでございまして、このうち68%、すなわちグロスの標準報酬 ベースの所得に対する割合を、前回改正におきまして表示をしてきたところでございま す。 この所得代替率につきましては、48年制度改正時にグロスの標準報酬ベースで60%を 目途としたということでございます。  また、その次のマルに書いておりますように、基礎年金導入後もその直前の数字68% と同額になるようにセットしたということで、現在の所得代替率は68%となっておると ころでございます。  次に、前回の審議会におきまして、委員の御指摘のございました点、すなわち今後年 金保険料率がこれまでの最終保険料率までに引き上げられていく状況において、どのよ うに給付水準が変わっていくかというのを見たのがその下の試算A、試算Bです。  試算Aは、年金保険料率は最終保険料率ですが、一方の医療保険、所得税につきまし ては、(2)に書いておりますように、国民負担率(50%)の範囲内で、年金保険料率の上 昇を控除した国民負担をこの医療保険、所得税等が占めるという仮定をいたしまして算 定したものです。  この結果といたしましては、所得代替率はネットの場合は、先ほどの62あるいは80と いう数字は変わりません。グロスはやはり下がっておるわけでありまして、総報酬ベー スで48、標準報酬ベースで62となっています。  試算Bは、年収から年金保険料率だけを引いて計算したものでして、ごらんいただき ますように、それぞれ総報酬ベース、標準報酬ベースで6ポイントから8ポイント数字 が下がっておる。こういうことになっています。  次に3ページですが、年金の給付水準を考える場合の枠組みということで、年金水準 について考える枠組みを1ページにまとめたものでして、4つの要素を挙げております 1つは平均の水準、2つ目が高額・低額の年金の水準、3つ目が年金以外の所得・資産 に対する考え方。4番目に地域差というのを挙げております。  平均水準につきましては、世帯類型を3つに分かちまして、それぞれの年金水準と、 消費水準のバランスをどう見ていくかということです。高齢者夫婦2人暮らしの水準に つきましては、12ページで詳しい数字を挙げておりますので、もう一度そこで見ていた だきたいと思いますが、課題といたしましては、現役の所得・消費と比較してどう考え るのか、先ほど申し上げた所得代替率をどの程度にするのかというのが課題だろうと思 います。  また、現在の基礎年金は1人暮らしを標準モデルといたしております。また、厚生年 金の報酬比例年金につきましては、妻が専用主婦を標準としているということで、この 在り方については課題だろうと考えるところです。  次に下の高額年金・低額年金ですが、標準報酬の上限をとりますと、高額年金は最高 31万円になります。低額の場合、下限ですと16万円ですが、前回の審議会でも御議論ご ざいましたように、高額年金ほど後世代に多く負担を転嫁するということにかんがみ、 年金の高額の水準をどう考えるかということがあろうかと思います。  それから所得・資産の問題ですが、簡単にまとめておりますが、現在の就業率あるい は年金以外の収入、貯蓄などの状況に応じた年金の支給制限についてどう考えるかとい うのが課題です。  また、後ほど資料でごらんいただきますが、高齢者2人世帯につきまして、基礎的な 消費部分につきましても、都道府県別で見ますと消費状況に差異があるわけでございま して、これに対しまして、現在全国一律になっております基礎年金の水準についてどう 考えるか、これが課題であろうというふうに考えるところでございます。  4ページが「給付水準の推移」でございまして、これまでの給付水準の考え方、それ に基づきます年金の算定方式を掲げております。  右から2番目の欄に、先ほどから出ております「所得代替率」の数字の推移を並べて おります。  5ページは「国民年金(基礎年金)の給付水準の推移」です。60年に基礎年金が導入 されまして、老後の生活の基礎的な部分を保障するという基本的な考え方で水準が算定 されておりまして、その後、2回の改正におきまして、備考にございますような、この 間の諸々の水準の変化を勘案して水準を決めてきておるところです。  6ページ以下が、実際の年金の支給状況でして、6ページが、「新規裁定年金額」の 63年度から平成7年度までの推移でございます。若干数字にぶれがございますが、これ につきましては注をごらんいただきたいと思います。  平成7年度は、受給権者が大幅に伸びておりますが、これは在職老齢年金の制度が変 わったことに伴うものです。  7ページ以降、この年金額につきまして、グラフにしたものでして、7ページ、8 ページは、新規裁定の年金額を年金月額階級別に見たものです。8ページは女子ですが 平均中央値よりも前半に最頻値帯があるということです。  9ページ、10ページ、11ページは、旧法及び新法20年以上の加入者につきまして年金 額を階級別に見たものです。ごらんいただきたいと思います。  次に12ページでございますが、先ほど申し上げました高齢者の現役の所得・消費に対 して、年金水準をどう考えるかということについてお考えいただくための資料でござい まして、一番上の表が高齢者世帯の平成6年全国消費実態調査におきます消費支出の状 況でございます。消費支出額23万 7,000円に対しまして、消費指数の内訳が書いてあり ます。 一番上の矢印部分が基礎的消費(11万 6,000円) 。一番下が交際費などを除きました 消費支出でして、17万 7,000円になっておるところでございます。真ん中が先ほど申し 上げました給付水準でして、所得代替率の数字を掲げ、右の方に参考といたしまして、 総報酬ベース、ネットの所得代替率を変化させた場合の年金額が具体的にどうなるかと いうのを試算しておるわけでして、現行の62%から以下10ポイントずつ下げまして、そ の場合の年金額を掲げております。 更にその場合の最終保険料率をここでは対グロス総報酬で試算をしておりまして、現 行26.4%、以下ごらんいただくとおりです。 これを対グロス標準報酬で見ますと、26.4%のところが34.3%、以下26%は33%。20 から21%が26から27%、16から17%のところが21から22%ということになります。 また、一番下に現役の方の可処分所得、消費支出の内訳を掲げております。ごらんい ただきたいと思います。 次に13ページですが、先ほど申し上げました世帯の類型、特に妻の就労状況によって 年金額が変わるわけでして、ここでは前回改正時の平均の姿を出しておりますが、昭和 9年生まれの夫婦で特別支給老齢厚生年金を受給されるという場合でして、モデルの年 金とは違うわけですが、その数字を以下、世帯の状況で見ているわけでして、一番上が 夫だけが働いているという場合でして、一番下が共働き、そして妻が夫と全く同じ条件 で厚生年金に加入してきた場合というのを数字として掲げています。  14ページは先ほど申し上げました基礎的消費支出の都道府県別の全国分布を見たもの です。先ほど申し上げましたように、網掛の一番右の部分ですが、一番低いのが沖縄県 で全国平均を 100といたしますと65という数字になっております。一番高いのが真ん中 あたりにありますが、 119ということで、平成6年では石川県になっております。  以上が給付水準の関係の資料でして、15ページ以下、負担水準に関する資料を整理い たしているものです。  15ページが保険料率の推移。そして、それの前提となります財政方式についてまとめ たものです。これまでの審議会にも御説明さし上げたところですが、積立方式から将来 の見通しに基づく段階保険料をとるということで現在来ておるわけでして、一番下の保 険料率及び将来見通しに基づく最終保険料率になっているところでございます。  16ページが「負担水準に関する主な意見」ということで、大くくりで整理をしてみた ものです。6つほどありますが、年金保険料だけの負担ではなくて、医療保険、税の負 担を含めた水準を考える必要があるのではないか。  国民負担率で50%を上回らないようにする必要があるのではないか。  給付と負担の対応関係、バランスを考える必要があるのではないか。  最終保険料率につきまして、前回の財政再計算におきましては、標準報酬で見て、30 %程度というふうにしたわけですが、この水準の妥当性につきまして、保険料率は総報 酬で見て20%が限度ではないかという考え方もあろうかと思います。  一方で、ある程度の経済成長があれば、前回再計算の負担水準は十分負担可能ではな いか、こういう御意見もあるところです。  17ページ、18ページは、国民負担率について、50%を超えないことにする意義や政府 の考え方を整理したものをお出ししているものでして、17ページが、昨年11月にまとめ られました社会保障関係審議会会長会議の中間まとめの答申です。  18ページは、政府の財政構造改革会議におきます、財政構造改革五原則ですが、 (5)におきまして、国民負担率が50%を超えないという考え方のもとに財政運営を行 なうというふうにされているところです。  19ページ以下が、負担水準につきまして、これまでどういう調査がなされてきたかと いうことを3つ並べておりまして、19ページが前回の改正時におきまして、有識者調査 におきます負担水準についての考え方をピックアップしたものでして、真ん中のグラフ にありますように、30%程度までを限界と考える有識者の方が一番多かったということ です。 20ページが、東京商工会議所がこの5月に会員企業に対しまして、ファックス によるアンケート調査を行ったものでございまして、30%が負担の限界という意見や現 在の保険料率について、既に限界という見方がありますが、どう考えますかということ で尋ねたものでして、この調査では20%が限界というのが一番多かった。以下、25、30 というふうになっております。  21ページ、生命保険文化センターが、昨年の8月から9月にかけまして、成人 2,400 人に対する負担の許容度を聞いたものでして、半ばが、既に限度を超えておる、現在の 負担が限度であるということになっているわけですが、将来的に見て、所得の何%ぐら いまでやむを得ないと思いますかという質問に対しての答えでして、結論としては平均 で15.3%であったというふうにまとめられております。 22ページから、総報酬制を導入する場合の考え方とか意見などを整理したものでして まず意見といたしましては、ボーナスが多くて負担能力のある者が負担を免れているの ではないか。いわゆる公平、不公平論です。 また、真ん中の表にありますように、ボーナスが臨時、特例的なものではなくて、賃 金の一部として定着しているのではないかという考え方があります。 それから、60歳から64歳までの在職者につきまして、いわゆるボーナスを増やして月 給を抑えるということで、年金の支給停止を免れる例が見られる。こういった意味から も総報酬をベースにすべきではないかという考え方があります。 更に一部の企業では、ボーナスを高くし、月給を抑制するというようなこともあるの で、総報酬制にすべきという考え方です。 なお、この6月の財政構造改革会議におきましては、世代内の負担の公平化の観点か ら総報酬制を導入し、この制度にふさわしい料率に改めるというふうにされているとこ ろです。  2には、先ほど申し上げましたボーナスの支給状況を見ているわけでして、夏季、年 末ともに、事業所数あるいは労働者数の割合を見ましてもボーナスの支給は定着してき ておるということが言えるのではないかと思います。  3に、検討課題といたしまして、導入するという場合にどういう課題があるかという ことで、給付設計上の課題ということが1つあろうかと思います。総報酬制を導入する 場合には、負担の上限をどうするか、ボーナスを給付に反映させるのかどうかという課 題があると思います。  また、報酬比例部分の現行の算定方式ですが、34万円のところに網掛がかかっている 算式、これは標準報酬月額(月給)をベースにしたこの算式の取り扱いということにつ きましても、何らかの対応が必要になってくるというふうに考えるところです。  事務処理上の課題といたしまして、現行の記録管理や給付設計方式の変更が必要にな りますので、事務処理上の問題があるというふうに認識をいたしているところです。  23ページがボーナスの支給実態を1枚にまとめたものでして、全産業平均で29.2%の ボーナスが支給されるということです。業種別などについても掲げてございます。  最後が、各国の年金制度の概要ですが、先ほど来、申し上げております所得代替率に ついて何らかの資料ということで整理をしておるものですが、平均年金額の取り方、あ るいは平均賃金の取り方につきまして、もう少しやはり精緻にやる必要があるかと思っ ておりまして、私ども現在、在外公館を通じてこの数字について精査をいたしていると ころですが、先進国におきましては真ん中の欄にありますような平均賃金に対する老齢 年金の割合になっているというふうに整理いたしたところです。  以上が資料1でございます。  資料2は、前回の審議会におきまして、世代間の扶養などについて御議論いただきま して、これにつきまして数字の資料がないかということなど見たものでして、1ページ が建設白書におきます社会資本の整備の状況を見たものです。  2ページが、東京大学の宮島先生が、親から子世代への「逆補助金」ということで、 年金保険料の拠出に見合う形で、逆補助金という形で、遺産の相続や学資の移転が行わ れているというようなことを述べておられますが、この資料につきましては、一番下の (注)にございますような点について御議論いただきたいというふうに先生からお話が あったところです。   3ページ、4ページは、厚生年金基金のいわゆる財投部分を除いた負担の厚生年金基 金財政見通しを見たものが3ページです。  4ページは前々回の審議会におきましてお示ししたところの資料です。  5ページが第3号被保険者の状況につきまして、男女別、年齢構成割合で見た資料で す。  6ページ以下が、国民負担率50%ということについて、L委員からいろいろ御指摘あ ったわけでございまして、政府の経済審議会構造推進部会におきまして、宮島先生が ワーキンググループの座長となってまとめられました資料に国民負担率の意義とか、こ れに対する考え方がよくまとめられておりますので、13ページにかけまして資料という 形で挙げさせていただいたところです。  14ページが、「高齢化の経済分析」ということで、同じくL委員からの御示唆により まして御紹介をさせていただくものでございまして、14ページの真ん中にございますよ うに、前回改正に加えて、部分年金の廃止、第3号被保険者からの保険料徴収、賃金ス ライドを物価スライドに置き換えるなどの改革によって、高齢化のピークでも年金保険 料の負担率を20%以下の水準に維持することが出来ると総括しておるのがこの分析です  15ページがこの分析におきます「マクロの経済のパフォーマンス」。  16ページが年金保険料の「最終保険料率」、いろいろな条件を出しまして、どういう ふうになるかというのを試算したものをまとめたものです。  17ページ、社会保障負担増加と雇用の関係につきまして、これも委員の御指摘により 紹介をさせていただくものです。  最後に18ページですが、前回御議論がありました年金制度における世代間の公平をめ ぐる考え方につきまして、世代間あるいは同世代内の再分配ということで、公平の基準 をどこに置くか。その場合のメリット、デメリットといったものを1ページに整理した ものでございます。  以上、前回の御要望ございました資料等について、出させていただきました。 ○会長 どうも御苦労さまでした。  それでは、ただいま御説明のありました2つの資料を素材にいたしまして、皆様方か ら御意見、御質問など御自由に御発言願いたいと存じます。どなたからでもどうぞ。 ○A委員 非常にマイナーな問題で恐縮ですが、ちょっと質問させてください。資料2 の一番最後のページ「年金制度における世代間の公平をめぐる2つの考え方」というと ころの左側、「現役の可処分所得の一定割合を年金受給者に再配分することが公平だと する考え方」の下に「メリット」と「デメリット」があって、その「デメリット」とい うところに2つマルがあるんですが、2つ目のマル、つまり一番下のところで言えば、 「世代間で消費内容がアンバランスになる」ということなんですが、これは不公平とい うことと何か関係があるのでしょうか。つまり世代によって消費構造が変わるというの は、例えば子供がいない年代では育児などにお金を使うはずもないし、子供が学校へ行 けば、子供の教育費に金を使うのは当たり前だし、子供が学校を出てしまえば、そんな 金はまた使わなくなるという意味で、世代が違えば消費内容が違うというのは、ライフ サイクルの諸段階に応じて消費内容が変わるということを言い換えているにすぎないの で、これを世代間の不公平のように考えるのはよく分かりません。ここのところについ てコメントをお願いします。 ○事務局 今、御指摘のように「不公平」という言葉がここの全体を通じて適当かどう かは議論の余地があると思うんですが、例えば資料1の12ページと突合してごらんいた だければ、よりこの趣旨が分かりやすくなるのではないかと思うんですけれども、例え ば高齢者の生活実態と年金額を合わせてみますと、12ページの資料で上の四角になりま すが、23万ぐらいの消費支出のうちのどういった項目が今の年金でも賄われているかと いうふうに見てまいりまして、例えば、今23万まで年金がモデルで出ているとすれば、 交際費6万弱、この水準もほとんどが組み込まれている水準になっていくと。この額は 今後スライドして伸びていくわけでございます。  一方で、下の現役の世帯の方を見ますと、それなりにいろいろ負担の重い場所が違う ということで、これを比較してみて、年金の給付がどういうところに主に使われている かということを見る上での材料にはなるのではないか。  そのぐらいの表現でございまして、確かに不公平かどうかという言葉はあえて使って もおらないと思うのですが、「アンバランス」という表現を使わせていただきました。 ○A委員 非常にマイナーな話かと思って始めたら、そうでもないようなので、ほかの ことが全部一定だったとしても、人間のライフサイクルに応じて消費生活の中身が変わ っていく。これはごく当たり前のことだということは確認出来ることだと思うんですね そのこと事態は、ですからこういうところで「メリット」、「デメリット」といってデ メリットにカウントするような話とは全く性質が違うのではないだろうかと思います。  御指摘いただいた資料1の12ページですが、恐らく特にこういう資料から方針めいた ことを言おうとすれば、上の60代の夫婦の生活の中で教養娯楽や交際費その他が、交際 費だけで6万円もあるのか、こんなの多いじゃないか、こんなところまで年金でカバー する必要があるのか、こういった議論になっていって、こういうものが下の矢印の範囲 設定であれば、一番下のところの範囲設定は広過ぎると、こういったような議論になっ ていくのかと思うんです。しかし、幾つか考えておかなければいけないのは、ここは年 代ではなくて世代の問題として同じ60代前半であっても、時代によって、このあたりの ところは非常に変わってくるという問題を1つは押さえておく必要があるかと思うんで す。特に60代の交際費、これは6万というのは通常我々の感覚でいっても決して安くな いんですが、かなりの部分が冠婚葬祭料、特に葬祭料で占められていて、葬祭関係の出 費というのは、これは一般的な物価上昇率よりもかなり高くなっているという妙なこと があるので、本人の楽しみのために使われているというふうには必ずしも言えない問題 を含んでいる。  現役の交際費その他というところで、この数字で言うと、5万3000幾らとありますが 実は現役というのは自分で払わなくても済むやつが結構あるのだということも併せて考 慮をしておく必要があるのではあるまいか。  したがって、今の議論から、特に資料2の一番最後にあるような、デメリットという ところへカウントされていることの含意が、この資料1の12ページの一番上のところに ある矢印で示された範囲の最後のところはなくてもよろしいという議論に安易に導かれ ないようにお願いをしておきたい。 ○B委員 今のと多少関係あるのですが、12ページの給付水準につきましては、老後の 安定した生活を最低の生活保障ではなくて、経済の成長に応じて文化的な生活をしうる ということでこのレベルはどうかと、こういうことで決まるのだろうと思いますが、か たや今回負担の水準等たくさん資料を出していただいたんですけれども、あくまでも負 担と給付が均衡する中においてどうか。  そうすると今度は負担の方の資料が出ておりますが、そのパーセンテージがいろんな アンケートが出ているわけですが、もらう側からする議論と負担する側の議論は当然あ ろうかと思いますけれども、例えば企業の場合でしたら、本人の賃金からと事業主から の負担と、いずれにしても労務費の一部として払うということでは、労務費のコストと いうことで企業の競争力に関係あるわけですが、個人の観点からでも、若い人の意識も 負担の水準としては、今よりもそれほど高くなってほしくない。  その場合に、先ほどの給付の水準との相対関係で、負担の数字がどういう場合にどの 程度の給付になるのかという相関を、これはよく見ると分かると思いますが、示してい ただけると分かりやすいのでないかと思います。 ○事務局 今、御指摘のありました負担と給付のバランスということでありますと、12 ページの資料に若干書かれておりまして、真ん中の欄の網掛をした部分、最終保険料率 が一番端的に表現したものかなと。例えば、一番上のケースでありますと、今の23万と いう水準を維持するということであれば、総報酬において最終的には26%の水準までい き、標準報酬で見ると34%、こういったバランス等をご覧いただきたいと思います。 ○B委員 分かりました。 ○C委員 12ページの今のところの一番上の方ですが、消費支出の内訳の保健医療1万 2, 333円というのは保険料のことですか、それとも直接の自己負担分のことですか。 ○事務局 保健医療に関しましては自己負担分です。あとは自分で買う薬とかそういっ たものが含まれています。 ○C委員 そうすると、私自身の感じでは、国民医療保険料というのはかなり高いんで すね。年間50万近く払います。 ○D委員 それは上限ですね。 ○C委員 上限に近いですね、私の場合ですと。だから非常に重いものがありますので 消費支出だけ見たのでは、高齢者の消費生活はよく分からないという点が1つと、しか し年金で全部生活費をもらうというのも考え方がおかしいので、肝心なところは、公的 年金というのは、高齢者が必要とする生活費のどのぐらいまでを保障するものと理解す るのか。それをはっきりしていただければ、老後のために、ある程度自分で貯金をした り民間保険に掛けるという構えが出来ますので、今のところは非常に不透明な状況で議 論がなされていますけど、出来れば、将来公的年金というのは、高齢者の生活費の50% ぐらいは保障します。あとは自分でやってください、こういうふうな説明がつくといい かなと私自身は思います。 ○事務局 保険料とかそういったものは消費支出の外側で、消費支出は自分で消費した ものだけ入っていますので、実際のこれは収入の中から、税とか保険料を差し引いた残 りの消費支出をここで描いておりますから、そういうふうに御理解いただきたい。 ○D委員 もう一つの御質問は収入モデルについてです。そちらは前提はどうなってい るのでしょうか。今の御質問で、高齢者の生活費の何割くらいまで年金で面倒を見るか そういう考え方があるのかないのか。あるいは、そっちからは考えたことがない。保険 料を納入した分に対応して年金が出るだけなのか。そういう御質問と思います。 ○事務局 公的年金の水準、守備範囲はどこまでかというのは、実は先ほど4ページの 資料にありましたが、昭和48年当時、年金審議会では標準報酬ベースで見て60%がいい のではないかという御意見がまとまったわけです。ところが昭和60年改正のときに、既 に68%まで来ておりまして、今もらっている年金をカットするわけにはいかないという ことで、68%がこれ以上増えないようにということで、給付乗率を下げたり、定額の単 価を下げたりして調整するようになったということで、実は公的年金の水準としてどう あるべきかというのは確たるものは今はないわけです。 今回の年金審議会では是非公的年金の給付水準はどうあるべきかということについて 御意見をいただきたいと思っております。 ○C委員 それは私まさに言いたかったことで、68%ではちょっと高過ぎるのではない かという実感を持ってまして、半分、50%ぐらいは見てもらえる。あとの半分は自分た ちで考えなさいと、そういうことが言えればはっきりしていいのではないかと思います だから半分というのはでたらめに言ったわけですが、何を考えているかというと、現役 の世代の人が子育てをしながら必要経費を賄っておるということを一方にらんで、そち らの負担が重くなりすぎないように、高齢者としては自分の生活を公的年金で半分。あ との半分は若いときからの準備で民間の保険でもいいし、貯蓄でもいいと。そういうも のでやりなさいということを言えるといいなと思っています。 ○A委員 たびたび恐縮です。今のC委員の御発言の中で、半分かどうかという数字の 問題ですが、それは私の誤解でなければ、必要生計費のうちの何割を賄うかという意味 でおっしゃっているのか。先ほどの68とか60とかというのは現役の賃金との比較で言わ れた年金の総体水準の数字だったかと思います。ここのところでは代替率をきちんと抑 えて議論をすることがいいのではないだろうか。  また、その場合に、前回改正で導入された可処分所得スライドという考え方を基本的 には大事にしていくべきではないだろうか。そういうふうに考えております。その場合 の代替率ということを可処分所得ベースで考えますと、現役の場合には税、社会保険料 いわゆる公租公課を差し引いたものということになりますが、年金生活者の場合も、ま た先ほどC委員から国民健康保険の保険料のお話が出ましたように、100 %年金が可処 分所得であるわけではなくて、そこから一定の公的負担が求められるわけですし、そし て、今後それは増えるんだと思うんです。例えば、2000年導入予定と言われている公的 介護保険ではその負担のことが既に予定をされております。 勿論自己負担分につきましても、医療費の場合に、今の70歳以上の方々の定額負担か ら定率負担の導入というのは恐らく全体の流れでありましょうし、他方で医療費の医療 保険に関する保険料の負担というのも当然のことながら所得に応じて適正なものをお払 いいただくというふうになっていくと思いますから、現役の収入についても、これは可 処分所得でもって見るのであるとすれば、年金受給者についても年金から公租公課を差 し引いたいわば可処分所得ベースでの年金。この間での代替率をどのように将来考えて いくべきか。議論としては、出来ればそういうふうな整理をしていただけると私などに は分かりやすいなと、こんなふうに思っております。 ○E委員 給付水準のことなんですが、これは前々回かなにかにそんなこと申し上げた ような感じがするんですけれども、私は前から厚生年金保険の給水水準というのは、こ れは別に理屈も何もないのですけれども、大学卒の初任給と余り変わらないと。現実に 変わらなかった。それがこの4ページの表でいきますと、給付水準の推移がございます が、昭和51年9万円になっております。この辺から初任給と逆転するようになってきて 年金の方が高いということになってきた。  例えば、昭和52年の初任給がようやく9万 2,000円、51年は8万 7,000円ぐらいだっ た。昭和55年になりますと、この辺は余り賃上げがなかったせいもありまして、まだ初 任給が10万円ちょっとということで、年金額の方がはるかに大きくなってしまった。現 在は、私どもの業界での初任給が17万 4,000円から 5,000円ぐらいです。それで23万円 というのが標準的な年金の給付水準だとすると、いかにも高いという感じがします。 この間、申し上げましたように、私も年金もらうようになって、私の場合は1000分の 7.5ではなくて1000分の9.31ですか、ですから仮に23万円のレベルでも 7.5でなくて9.31 で計算いたしますと、25万超えます。そして年額で 300万超えるという非常に年金額と しては大きなものになってしまっている。やはり水準としてはいかにも高いのではない か。事務局がおっしゃいましたようにいつの間にか68%になっている。これはやはりも う少し下げることを考えるべきではないかと思っております。 ○F委員 今議論になっている部分の前段のところはA委員がおっしゃった意見に私も 同感です。考え方はそういうところに置くべきではないかと思います。 もう一つは、今E委員がおっしゃいましたけれども、確かに現役の世代の人たちから 見ると、年金受給者の支給水準・生活は、例えば、おっしゃったように大卒として、入 社してきた直後の人の生活実態との対比から見て、少し違和感が現実にあるのも確かだ というふうに思います。 1つ考えておいた方がいいなと思うのは、資料1の4ページにあります給付水準の推 移がございますけれども、過去を振り返ってみると、年金の給付水準は、政治家という より政党間の政争の具にされてきた歴史が、結果として織り込まれていると思うんです  したがって、今度の見直しにあたっては、全体が満場一致に近い合意形成をするとい う前提に立つような思いで水準を見直していかないといけないと思います。政争の具に 使われて、あとで歴史的なねじれや行き過ぎた部分となってしまうことはさけなければ ならないと思います。恐らく今回はそれを是正する部分も入っているように思います。 政治家も国会の方もそういうことについて適切な判断をしてほしいと思います。国民的 な課題だと思いますから、政争の具にされない水準の見直しを是非考えたいと思います  それから事務局が言われました水準の在り方については、ナショナル・ミニマムみた いなものをつくりまして、それにどういう付加的な部分を乗せて全体の水準を考えてい くのか、そういう発想も是非検討してみる価値があるのではないかと、平素仕事をしな がら考えています。何等かの思惑とか思いだけでこういうものをやられますと、国家財 政と大変大きな関係があるだけに、政治家もそのことについて身をただしてやってもら いたく思います。私は水準問題に関してはこのように考えています。いま申し上げまし た発想に立って全体を見直していくということが、大事なのではないかということを御 意見として申し上げておきます。 ○G委員 資料1の3ページにあります真ん中のところの「課題」の「夫婦共働き世帯 の増加」というところで、「専業主婦を標準モデルとする」ことについて考え直す必要 があるかという指摘がありますが、これは今までのものから考えますと一歩前進だと思 います。大いに議論するべきところだと思います。  また、その上にあります「高齢者夫婦2人暮らし世帯の増加」とありますが、2人暮 らし世帯の増加がありますけれども、やはりこれで1人暮らしを標準モデルとすること を考え直すということになりますとちょっと問題ではないかと思います。というのは、 やはり高齢者でも1人暮らしというのは非常に多いわけでして、全体の統計を見まして も単身者の世帯は全体に大きく増えているわけですし、特に男女の平均余命の違いが歴 然としておりまして、高齢者になるほど1人暮らしは女性が圧倒的に多いということが あります。そういうわけで、明らかに夫婦を単位とするような方向に持っていくという ことは逆方向に行くというふうに思います。  その右側にあります数字ですが、「高齢者夫婦2人暮らし世帯の年間収入シェア」と いうところで、夫と妻という形で男女の差が出ております。これを夫と妻というとらえ 方ではなくて、女1人だけの年金というふうに見ますとどんな数字が出るかと思いまし た。つまり現状ですと、今までの男女の就業キャリアの差が非常に大きいわけですから 女1人の年金ですとかなりこのシェアは男性1人のものから比較すると少なくなるだろ うと考えます。ですから、こういう数字はあくまで夫婦が単位になっている数字ですの で、ここももう一歩前進していただいて、個人単位で数字を出していただけると議論の 資料になるかと思います。  それから資料2の5ページも同じようなテーマなんですけれども、「第3号被保険者 の年齢構成」という数字が出ております。こういう数字を出していただきましたことを 私は初めてこういうデータに接しまして、前から要請はしておりましたけれども、あり がたいと思います。  ただ、第3号被保険者というのは、左側のグラフにもありますように圧倒的に女性が 多いということで、これはほぼ女性の数字だということは考えられますが、公的年金加 入者のところで男女一緒になっている数字ですね。そうしますとそこで男女比がどのぐ らいになっているかということをもう一歩知りたいところでございます。  同時に年齢階層別だけでなくて、夫の職業階層別のデータがあれば、どういう人が第 3号被保険者になっているかというところがありまして、これは第3号被保険者約 1,200万人から年金の負担をしてもらうかどうかという議論が非常に盛んなわけですの で、これを十把ひとからげでとられるということが大変に問題だと常々思っております ので、どういう階層の人々なのか。そして市場労働に参加している人々がどういう形で 今後も参加していくかという将来を考えたときに、一体これがどういう数字の変化が見 られるかということを見ましても大変重要なデータだと思います。  そういうわけで、第3号被保険者を十把ひとからげで議論することの危険性が大変あ ると思いますので、この関連のデータをより詳しく出していただけると大変ありがたい と思います。 ○H委員 資料1の3ページの高額年金と低額年金の給付水準の違いなんですが、高額 年金というのは、標準報酬59万円が40年続くという計算なんですか。それから低額年金 というのは、標準報酬 9.2万円という最低が40年続くという、そういう計算でしょうか ○事務局 その通りです。 ○H委員 実際にはそういうことはないので、余りこれで高額と低額の年金をこんなに 差があるというのはちょっとどうか。その場合ですと、40年ということは考えられない ですね。ちょっとこれは誤解のないようにされた方がいいように思います。 ○I委員 私も3ページのところの関連ですが、「年金以外の所得・資産」というふう に書いてございまして、年金以外の所得という場合は上の方に就業率とありますから、 多分社会的に参画して所得を得ておられるということでありますし、下の方の年金以外 の年間収入ということになりまして、その 247万円というのは、多分所得に該当するの か、それとも下にもありますように、利子等々に該当するのかということでありますが 課題にありますように、「資産に応じた年金の支給制限」といった場合に、資産をここ に書いてありますから貯蓄ということだけで見たわけでありますけれども、貯蓄と考え ていいのか。その点は簡単に「所得・資産に応じた年金の支給制限」というふうにある わけですが、資産というものをどんなふうに見ていくかということと、もう一つは、資 産を生み出した源泉というのがさまざまなあるわけで、多様な理由があるわけでありま すし、またその資産を評価することになりますと、それこそ下にありますが地域差はも のすごくあるわけでありまして、まだ所得についてはかなり分かるような気がしますが 資産についての支給制限というのはどういう形で考えるのか気になります。 ○事務局 資産はたまたま貯蓄で例示しておりますが、勿論不動産等資産があるという ことです。議論として年金はフローにのみ着目して考えられているけれども、実際に高 齢者を見る場合には資産全体を見るべきだという御意見もあるということで1つの類型 として整理をしているところでございます。ただ、実務の問題上はさまざまな問題が生 じるということも、今後議論する過程では出てまいると思います。 ○A委員 課題ということで「所得・資産に応じた年金の支給制限」と非常に小さく書 いてあるんですが、これは高所得高齢者に対する年金給付の制限の問題というのは、今 回再開された審議会の初期に事務局から出された1つのテーマでもありましたし、また 政策的に与党サイドから聞こえてきた1つの選択でもあった。それについての審議会の 議論は余り深められていないのですが、是非ともこの問題は、1つ独立したテーマとし て当審議会での検討を用意していただきたい、これは要望です。 特に税制との関連でこれをどういうふうに考えるのかということがかなり枠組みとし て整理されないと非常に混乱した議論になってくると思いますが、しかし、これはどう しても2年後という時間の中で、我が国の税制が理想的な形での改革というふうなこと が余り現実的に望めないとすれば、次善の策として年金サイドで何が出来るのか、こう いうことも含めて是非ともきちんと検討すべきテーマではないか、そんなふうに思いま す。 ○J委員 私はこれはどういうふうに考えていいかよく分からないところでもあるので すが、先ほど年金が今23万円で、初任給が17万 5,000円というお話出ましたね。初任給 というのは1人の所得ですよね。そして年金は夫婦2人の単位になっていますよね。そ して、今1人暮らしを標準モデルとするかどうかという議論もありますね。年金の方を 23万というふうな額で考えるときはこれは個人ではなくて夫婦だということをやっぱり 念頭に置いて、もし初任給が男女平等で男性も女性も同じように働く続けることになる 前提の社会を想定すれば35万円になるわけですね。 ○E委員 さっきも申し上げましたように、何か確固たるものを持っていて申し上げて いるのではなくて、昭和40年代をずっと見ておりまして、大体厚生年金保険の平均的な 給付と初任給がどちらかというと初任給の方が若干高いぐらいでずっと推移していまし たので、こんなものかなというふうにずっと考えておったわけです。それが昭和50年ぐ らいから逆転するようになったので。 ○J委員 そのことは分かるんですけれども、そういうことを考えていくときに、今ま では夫婦単位の2人暮らしの老夫婦という形での生活を考えて、そして年金で暮らして いくということを考えているわけですね。一方、初任給というのはあくまでも個人単位 そこの考え方ですよね。これから、どういう人々が働き暮らしていくかという代表モデ ルのようなものを多様に考えていくときに、そういう考え方で、初任給と年金というふ うなことを対比することがそもそもいいのかどうかが、少し私はよく分からないという 質問なんです。 ○E委員 それはおっしゃるとおりかもしれませんけれども、例えば所得代替率が何% がいいとかということも、どちらかというと、50%がいいのではないかとかその程度の 議論だから、私もあえて初任給というのを出したということです。 ○A委員 少し関連して申し上げますと、今の議論は非常にファジーなところがあるわ けでございますが、1つだけ余計なことをコメントさせていただきますと、年金には ボーナスはないんです。大卒初任給といえどもボーナスは当然のことながらついて回る というのが日本の今の賃金構造の常識ですから、このことは総報酬ベースで考えるのか 標準報酬ベースで考えるのかという議論にもなるし、場合によっては保険料の徴収ベー スをどうとるのかという議論にも当然つながることです。ここはもう一つ、年間総収入 ベースで比較することも必要ではないかと思います。  2つ目は、これはもっと重要なんですが、E委員の御念頭にある感覚を昭和40年代基 準で先ほどから御説明でございますが、我が国の公的年金の歴史を考えた場合に昭和48 年のいわゆる福祉元年と言われたときの制度改正が非常に大きな転機です。おっしゃっ たように、大学初任給水準をどんどん超えていったのではないかという出発点はやはり 48年改正だと思うんです。特に夫婦2万円年金なんていうのが44年で、48年に5万円年 金になっていますね。つまりまともな年金と言えるふうに呼べるものはむしろ48年から 出発したのではないか。  ただし、ある意味でのオーバーシュートがあったとすれば、オーバーシュートの是正 はあっていいと思うんですが、48年改正の前と後で、公的年金として、いわゆる老後の 基本的なところを支えるという意味でどちらがまともなのかといったらやはり48年以後 なのではないか。そんなふうに考えています。 ○E委員 最初の話ですが、17万 4,000円か 5,000円というのは、これはボーナス込み で考えても23万円あるいは私が申し上げました計算し直して25万 5,000円ですか、それ の12カ月分よりもかなり小さい数字になるかと思います。 それから後半の点についてはおっしゃるとおり、昭和48年が福祉元年ということで、 それからいろいろなことが起きてきたわけですけれども、いろいろ起きてきたことがこ こへ来ていろいろ問題になっているのだというふうに考えれば、その1つの考えの基準 として大学の初任給を眺めてみるというのもあり得るのでないか、そのように考えます ○K委員 今のE委員のお話に関連してですが、大学の初任給は需給で決まる話であり ますので、先生自身もそんなにとらわれて言っておられるのではないと私は解釈してい ますので議論を深める意味は余りないのではないか。 それよりも御自分でもらっておられた実感でおっしゃっているのかどうか。とにかく 高過ぎると、何とかしなければいけないということは私も非常に賛成なんですが、既に もらっている、権利のある人も含めて下げなさいと、こうおっしゃっているのかどうか そこをちょっと確認しておきたい。 ○E委員 私は個人的にはそう考えております。 ○K委員 分かりました。それから1つ大事なことなんですが、さっきF委員がおっし ゃったいわゆるナショナル・ミニマムという問題。これはどうしても検討しなければい けない課題ではないでしょうか。というのは絶対値でものを考えるということは非常に 大事なことだと思いますので、まして国民の福祉を預かってきた厚生省ですから蓄積も 十分あるだろうと思うので、もともとナショナル・ミニマムとはそもそも何だというこ とについて、今までの報告が、我々も何となく分かったような分からないような、また 生活保護を受けている人がナショナル・ミニマムなのかどうなのか非常にぼやっとした 考え方で実は来ているわけですが、ナショナル・ミニマムという問題は年金とは非常に 深い関係にあるというふうに考えるべきではないかという気がするので、先ほどのF委 員の御指摘は非常に大事だと思います。 ○L委員 2つ伺いますが、1つは資料1の最後のページ、主要国の被用者年金制度の 比較をした資料ですが、こんな数字だとは思っていたんですが、改めて一覧表にしてい ただくと大変ショックを受けているのですけれども、例えばアメリカと比較してみた場 合でも為替レートの問題勿論ありますけれども、日本の年金水準が今の為替レートで換 算しても相当の差があるわけです。  ただ、問題は、さっきから代替率の問題とかナショナル・ミニマムとかいろいろ出て おりますけれども、数字そのものもさることながら、どうしてこういう数字になったの か、理由のところをもうちょっと教えてほしいんです。私の記憶がもし間違っていなけ れば、例えばアメリカも正確な名称は難しくて忘れてしまいましたが、一種の賃金スラ イドをやっていますね。また、物価スライドもやっていますね。高齢者の一種の日本の 在老みたいな年金の減額制も70歳まではとっていますね。  そういう基本的な制度のところでも、日本と違うところもあるし、似ているところも いろいろあると思うんですけれども、アメリカの場合、保険料が随分低い感じがします けれども、多分各国で給付水準を決めるときにやはり今議論されているような問題を大 なり小なり、あるいは明示的にか暗黙にかいろいろ検討して決めた結果の数字がここに 出ているのだろうと思うんですね。ですから結果的に年金の水準格差がこんなに出てき たのかということをもう少し論理的に制度比較的に説明出来るデータが、私も勉強不足 で申しわけないですが、そういうアプローチで説明していただけないかということが1 つです。  資料2の5ページで、先ほどG委員から話題に出た3号被保険者の問題なんですが、 これは既存の統計にはないのだろうと思うんですが、私も3号被保険者については、特 にどういう属性の人がここにいるのか。特にこの中には私は相当育児で苦労している人 と、あるいは介護の必要なおじいちゃん、おばあちゃん等を抱えて、あるいは身体障害 者等を抱えて、高齢者等の扶養に相当従事せざるを得ない立場の人が入っているだろう と思うんですね。ただ、そういうものはゴルフ場で遊んでいる専業主婦とは全然社会的 な機能が違うので、そういう人たちがどれくらいいるのかということを今まで調査があ ったのかどうか、私は全然知らないんですけれども、もう少し3号被保険者の内容が分 かるようなデータがあるのかないのか。もしないのだったら、今回の議論をする際には 緊急にどこかで調査をしてみる必要があるのではないか。  ただ、働く女性の中にも育児をしながら働いている人もいるし、高齢者を扶養しなが らやっている人も勿論いるわけなので、3号被保険者だけ調べるというわけにも勿論い かないと思うのですが、3号被保険者問題を議論するのだったら是非その辺ももうちょ っと検討していただけないか。 ○事務局 書いているのは外国の資料でございますが、先ほどの説明でも申し上げまし たけれども、御指摘のとおり、年金額の取り方、あるいはその前提となる標準報酬の考 え方など国によって違いますし、また制度自体も違うわけでございまして、私どもこう いう単純に数字を出すこと自体、識者の先生方からいろいろまた別の御指摘もございま して、議論があるところでございますが、私どもといたしましても、出来る限り勉強い たしまして、こういった所得代替率などの御議論に資する資料に努めていきたいとこの ように考える意味で、今回出させていただいたものでございまして、更に努力をさせて いただきます。  第2点目の、第3号被保険者の資料についてでございますが、残念ながら先ほどJ委 員からも夫の方の業種別などの御指摘もございましたが、今のところ、これ以上のもの をただちに提出出来る状況にはないと思っておりますけれども、私どもどのようなこと が出来るか、更に勉強してみたい、こんなふうに考えます。 ○M委員 諸外国の年金の比較との表で、もう一つお願いしたいと思いますが、これに よりますと、例えばドイツと日本を比べると、平均賃金の月額で日本はドイツの50%ア ップということになっておりますが、平均的な人が日本の場合にドイツよりも5割も高 い水準の生活をしているというふうにも思いませんが、これはやはり購買力平価で修正 しないと実質的な価値は出てこないのではないか。年金も同様ですが、日本の年金はド イツの倍以上だと。これも実際にそうなのかということはやはり実質の購買力で比較し ないとよく分からないわけですけれども、こういう点で実質的な賃金といいますか、購 買力平価で換算した比較も出していただけるとありがたいと思います。 ○A委員 私からも是非お願いしたい。 ○B委員 それに関連しまして、今度逆の観点になるわけですけれども、両方の視点が 必要だと思います。今のM委員の言われるように、絶対的な生活水準ということから購 買力平価は大事だと思いますが、もう一点、24ページの平均賃金額ですけれども、日本 の多くの製造業は国際競争に国内においても海外においてもさらされている中で、実際 には競争している国々というのはここにない韓国、台湾、アジアの発展途上国で、この 平均賃金額は、これは恐らく韓国であれば、日本の3分の1から4分の1。中国の場合 には製造業で25分の1から50分の1です。  こういった国々と今後10年、20年、21世紀は日本の産業は競争にさらされていくとい うことが現実の世界にありまして、そういうことからしますと賃金を下げていくことは 勿論難しいわけですが、どんどん名目賃金を上げていくということはかなり難しい状況 に置かれるのだろうというふうに思います。  ですから、そういう意味で、為替レートは今後長期的にどうなるか非常に大事なんで すが、もう一点、それに関連しまして22ページの資料にございます4番目のマルの「一 部の企業では社会保険料負担を逃れるため、ボーナスを高くし、月給を抑制する例がみ られる」とありますが、そういう観点から現実には社会保険料の負担を免れるのではな くて、固定的な月例賃金はなるべく抑制したいというのが企業の側のスタンスにならざ るを得ない。その場合、企業の業績がよければ、それは賞与で払いましょう。これが企 業の経営側のスタンスにどうしてもなる。  そうしますと、よい年と悪い年ではボーナスの額が違ってくると、こういうことにな らざるを得ない。そのことが22ページの一番最後に「事務処理上の問題」ということで 意識されているのであれば、そういう意味では年によって非常に総報酬は変動しますの で、それをどういうふうに調整するのかというのはかなり難しい問題ではないかと思い ます。もし、お考えだったら。 ○事務局 今の後段の総報酬の関係についてお答えをしたいと思いますが、私どもの方 も年度によって相当変動があるということで、過去の例も各業種ごとに統計で調べてみ たわけでございまして、確かにバブルのときであるとか景気で変動があるのは事実であ りますけれども、賃金に占めるボーナスの割合がかなり固定的に最近推移してきている のではないか。勿論変動はありますけれども、大きな動きの幅から見れば、もう落ちつ いてきているのではないかということも一方で統計でにらんでおりますので、また改め て御相談させていただきたいと思います。 ○B委員 直近の状況では年によって増えるのと、産業間の格差が広がるとか、産業の 中でも企業格差が広がるとか、そういう問題で平均的な推移だけで本当に見ていいかど うかもちょっとどうかなというところがありますので、これは注意していただきたい。 ○C委員 プリミティブな質問ですが、資料1の2ページのところの給付の設計の表が ありますね。これは標準報酬月額というのが基準になるわけですね。34万という数字で すね。これは各人によって標準報酬は違うわけですね。これは仮に34万という数字が出 ていますが、それぞれ個人別に違うのでしょう。保険料を計算するときもこれが使われ るわけですね。だから、保険料がこれで計算されているから、今度は給付のときにもこ れがきいてくると、こういうことですね。  そうすると、私質問したいのは、高額の老齢年金をカットするという話があったとき に、これがあれば、理屈をよほどつけないとカットできないけれども、しかし給付に上 限をつけるということはできないのでしょうか。この計算だけで出てくるとすれば、ど うにもならないけれど、保険料だけはこの計算でいただきますけれど、年金の給付の際 は上限をつけるというふうなことがもしできるとすれば、もろに高齢者に高いカットを かけるというのではなしに、給付の全体の枠の中で、給付水準が余り高いところは頭天 井に打ちますよという計算をすれば、保険料はたくさん取れるけれど、給付は抑えるこ とが出来ると、そういう行き方になるのでしょうね。今はそうはならないのでしょう。 今はたくさん保険料を出して人はこの計算で行くから給付水準は高くなると。 ○事務局 現行制度でも標準報酬の上限がありますので、その標準報酬の上限が給付の 計算上の上限になるわけですが、あとは例えば総報酬などの関係にもつながってまいり ますけれども、その辺の取る方法が変わってきた場合には、果たして上限を置くか置か ないか、これは政策的な判断になってくると思います。 ○C委員 先ほどから余り高額の年金をもらうようになってしまう高齢者からは少し抑 えた方がいいという説がありましたけど、余り露骨に抑えるのは賛成しないです。むし ろ総所得の累進課税で税金を取るというのが一番自然だというのがいろんな財政学者の 説明でありまして、そういうことを考えると、この年金の支給の、この枠の中でも、私 が言いましたように、保険料はこの方式でたくさんもらうけれども、支給のときには上 限があるという制度をつくったらわりと穏やかに抑えることが出来るのではないか。そ うしてわりと納得がいくのではないかという感じがします。そういうことが可能かどう か分かりませんが。  もう一つ別の、資料2の14ページに、「高齢化の経済分析」というのがありまして、 さっきおっしゃった、「例えば、1994年度改正に加え」と。理屈はこのことをやれば、 そんな無理な改正はしなくてもうまくおさまるのではないかという文章が書いてありま すね。だから、もし、これが本当であるとすれば、余り深刻に考えなくても今の制度の ままでも行くと思うんですけど、例えば第3号保険者からの保険料の徴収もたびたび問 題にされたことがあると思いますが、私もバスの中で聞いた話を前に紹介したことがあ りますが、健康保険料は直接問題があるから納まるけど、年金の方は納めないんだと、 若い人が言っていたんですが、そうなると社会保険料を込みにして取る。  つまり、私も給料もらっておったときに、短期の掛け金と長期の掛け金があって、何 だといったら短期は健康保険で長期は年金だと言われたわけです。サラリーマンという のはそうやって天引きされていますから、3号保険者に当たる人も健康保険料と同時に 年金保険料を取るという仕組みにすれば、簡単に取れるのではないかと思うのですが、 その他の部分も、この文章のように組んであるとすれば、余り深刻に考えなくてもよく なるという感じにとっていいのでしょうか。 ○事務局 経済企画庁の経済分析ですが、例えば「賃金スライドを物価スライドに置き 換えて」というふうに書いてあるわけですが、その場合保険料を20%以下の水準に出来 るというような記述があるわけですが、公表された資料からどういうふうに試算してい るかという詳細は必ずしも明らかではないわけですが、少なくとも例えば基礎年金で言 いますと、賃金の上昇があるにもかかわらず、今後ずっと物価スライドだけで改定して いくということですので、実際の制度として、今後ずっと賃金の上昇を反映させないで 物価だけでやっていけばかなり水準としては低いものになると、そういう前提であれば かなり低い保険料になるということです。  外国などで、年金受給者の既裁定の物価スライドと言われているものは、年金が裁定 されるまでは賃金でスライドして、その後、年金受給者になってから物価スライドだけ でやると、そういったものとはかなり内容が違うということで、ある意味ではなかなか 現実には難しいというふうに考えています。 ○N委員 C委員の初めの方の御質問の問題ですが、資料の2ページの一番上の算式を 見てもよくお分かりになりますように、基礎年金の方はこれは御本人の標準報酬月額の いかんにかかわらず40年間の加入期間があれば、もし夫婦2人ならば13万いくわけです ね。ですから、もしも夫の標準報酬が17万円だと、これは半分だというような人がおる とすれば、これは17万円でもって13万円プラス5万円ですから18万。ですから所得代替 率は 100%超えるようなこともあり得るわけです。それほど被用者年金制度の中だけで 見ますと、日本の年金制度というのは、拠出と給付の方の構造はかなり所得再分配にな っておるわけです。 逆に言えば、報酬月額の上限は約60万円でしたか。 (「はい」と声あり) ○N委員 そういう方は、やはり基礎年金部分は同じく13万ですし、仮に最高が60万と しますと、これは今は30%だから18万にしかならないわけですね。ですから最高が31万 ですか、というふうに被用者年金制度の中では、私は世界の年金制度の中でかなり所得 再分配をやっていると思うんですよ。 ただ、問題は1号被保険者、3号被保険者問題がありますように、今度は国民年金グ ループだけで見ますと、金持ちも貧しい人も定額の保険料を出しているわけです、1万 何千円という。専業主婦は出さないと、いろんな拠出と給付に関する問題は出てくると ですから十把ひとからげにこれを議論をするのは難しいのではないかというのが1点で す。  もう一点、ついでに申しておきますと、日本の場合は68%という給付水準、これはこ のごろ所得代替率というふうに言っておられるんですが、私は少し疑問があります。所 得代替率というのは、恐らく英語のリプレースメントレートの訳語だろうと思いますが リプレースメントレートというのは、従前所得に対する年金の割合だろうと思うんです 従前所得というのはILOの条約にありますような従前所得でして、これはやめる寸前 の所得を言うのか、現役期間中の全平均あるいは一定期間の賃金を言うのかはっきりは してないんですけれども、いずれにしても現役のときの賃金に対する年金の割合がリプ レースメントレートになってくるわけですね。  ところが日本の68%というのは、これはかなりモデル的な、これは厚生省から御説明 願った方がいいのですが、モデル的な所得代替率なんですね。要するに34万円というの は、現実にある時点の全被保険者の標準報酬の平均である。これは確かなんですね。と ころが一方、それに見合う年金額を計算する際は、ちょうど全期間の再評価された標準 報酬月額が34万になるような人の年金額を年金算定式によってはじいたら、それが23万 になると。現実にそういう人がおるのかおらないのか、これは私は分からないと思いま す。  ですから所得代替率という観念で何もかも見る。この資料1の24に出てくるものは平 均賃金分の老齢年金ということで各国の比較をしておられるわけですが、これも所得代 替率と非常に似たような概念なんですけれども、これも別々のデータなんですね。平均 賃金は平均賃金のデータだし、それから平均年金額は平均年金額のデータですので、結 びついているのか、結びついてないのかよく分からない。  ですからこういう数字は非常に用心深く見なければ、結論は出てこないのではないか これが私の感想でございます。 ○C委員 それではなぜ高額年金をもらう人は事務局がおっしゃった冒頭の発言が問題 になるのでしょうか。それはどういう意味なのでしょうか。 ○事務局 私が申し上げたのは、これまで厚生年金の給付水準はかくあるべしという基 準がこれまでなかったと。ただ、歴史的にどんどん増えていき、平均標準報酬に対する 比率として68%までいつの間にかなってしまったと。これ以上増えないようにしましょ うということで、60年改正で歯どめをしたけれども、本来どうあるべきかという確たる しっかりした基準がないので、今回是非そういった御議論をお願いしたいということを 申し上げました。それが1つ。  もう一つはまた別の問題として、財政構造改革会議の議論の中で、高額所得者につい ては、年金をそんなにたくさん出す必要はないのではないかと。ちゃんと収入があって 生活出来るのだから年金をあげる必要ないと。そういう人は年金をカットしろと、こう いう議論が出まして、それについて前の年金審でも少し御意見伺ったりいたしまして、 これは非常に本質的な問題だと。だから、これは次期改正の中で御検討いただきたいと いうのが2つ目でございます。  もう一つ、高額年金ということにつきましては、きょうの資料にもございますように 30万以上の年金を受給されている方が約2%ほどいらっしゃいます。これは資料1の10 ページ、男子の場合で見るといいのですが、これは年金額を階級別に見たものですが、 30万以上の方が8万 7,000人(2.0 %)いらっしゃる。25万から30万の方が86万 1,000 人(19.7 %) 。何をもって高額年金かというのはいろんな御意見があって一律には言え ませんけれども、30万とか、25万から30万の中でも30万に近いような年金額は高過ぎる のではないか。これは今の算定方式も見直す必要があるのではないか。こういう方は若 い人の保険料負担で年金いただいているわけですから、こういった高い年金の方につい ては、そういう年金額にならないような仕組みにすべきではないか。こういう御議論が 一方であるということで、これにつきましては、先ほど年金給付水準を考える枠組みと いうことで算定時に左の下の方の「検討課題」ということで高額年金の問題をどう考え るかということも、今度の年金審の1つの検討課題になっているのではないかというこ とで、先ほど御説明をしたということでございます。 ○H委員 多少今の事務局の話、私必ずしもそうではないのだということを申し上げた いのですが、年金の給付水準がどうあるべきかということは、この審議会でも何十年と 議論をしてきたのです。確たる議論がなかったというのではなしに、確たる議論をして きて、それでこういう結果になっているので、考え方としてはあくまでも標準報酬の60 %というのが1つの基本的な考え方になっているのです。 ただ、現実にもう68になっているから、それを引き下げるわけにはいかないのだろう ということで、将来に向けて、それはそれ以上上がらないようにしていこうということ で、すごい議論の上、今のような給付水準が決まっているので、給付水準についての議 論は全くなかったというのは、そうじゃないということは、私は皆さんに御理解いただ きたいということと、今、給付水準が問題になっているのは、将来の負担との関係で問 題になっているのだということで、負担が今までの議論ですと25%とか30%が限界では ないか。それが更にもっと30%を超えるというところに、今の給付水準等の在り方で議 論が出てきているので、むしろ給付水準の在り方を全然白紙から議論すると大変難しい 問題がある。しかも年金の給付水準が基礎年金と報酬比例部分に分かれておりますから 基礎年金の水準の在り方と報酬比例年金の水準の在り方というものを分けて考えなくて はいけないということになりますと、勿論いろいろ最初から議論していいんですけれど も、そういう経過があることだけは委員の先生方にも御理解いただきたい。 ○事務局 言葉が正確でなかったので補足いたしますけれども、議論はさんざん行って きたというとおりでございまして、ただ、本来給付水準はどうあるべきかというのはき ちんとした基準が確立されてないと、こういうことが結論として言えるのではないか。 つまり68%まで行ってしまって、これ以上増えないように応急的な措置は講じたわけ ですが、本来給付水準はどうあるべきかというのは、60年改正のときにも、これは将来 の検討課題だということで課題として残されているということでございまして、やはり 今回は課題に真正面から是非答えを出していただきたいということでございます。 ○会長 もしよろしければ、少し負担水準関係の御議論をいただければと思いますが、 いかがでしょうか。今手をお挙げになった方、どうぞ御質問続けていただいて結構です が、どうぞ、G委員。 ○G委員 負担水準のところに限定しない話なのですが、基本的なところでやはり基礎 年金と報酬比例のこの組み合わせがいろんな原理原則をあいまいにしているというふう に常々感じるわけです。基本的には年金の保険料は個人単位で払うと。給付に関しては 生活給みたいな感じで世帯単位で考えられていると。この辺のところが最もあいまいな ところで、多くの人々が納得がいかないというのも、こういうところから不公正感とい うのが出てきているのではないかというふうに考えます。  年金だけでなくていろんな標準モデルというのが出るたびに、夫婦と子供2人という ふうな標準世帯というのが常に出てきているわけですけれど、現在の日本で統計を見て そういう標準世帯が何%かあるかといったら決して代表的な典型的なものでなくなって きているわけです。そうしますと高齢者になって夫婦が2人で暮らしているという形態 が増えているにしろ、必ずしもそれは一生を通して同じパートナーといるという保証は 全くないわけです。ですから基本的な考え方としては、個人単位ですべてを考えた上で いろんな組み合わせは個人の選択によってやると。結果として、2人組み合わさった方 が生活が楽だということでそういうことを選ぶ人もいるだろうし、そうでない方もいる だろうし、年金制度が2人暮らしが基準になっているから、そうした方がいろんな意味 で得だから、無理やり2人暮らしをするというふうになるのは、これは決して個人が選 択によって生きるライフスタイルではないと思われるわけですので、そういう点からも 給付にしろ負担にしろ、個人を単位にして考えるかどうかということは、それはある程 度の線を出すべきではないかと思います。  それで1つの合意が得られないだろうと思いますけれども、そういう場合には幾つか のモデルを設定して考えるというふうなことをこの審議会としてやった方がいいのでは ないかと思います。あくまでも1つの典型的モデルという話はこれからは通用しないと 考えます。 ○O委員 先ほどH委員やN委員がおっしゃったとおりだと私は思うのですが、例えば 資料1の10ページにありますように、給付が非常に低い人と高い人とがあるように見え ますけれども、60年の改正後というのは大体水準が同じになってしまいまして、実務的 に言えば例えば給料の高額な役職員の人は勤務期間が短いし、割合にそうでない人は勤 務期間が長い上に掛金の上限が定められているから給付の額から言うと大体同じになっ てしまっているのですね。だから、この表のうちの20万から25万というところにみんな 入っているのだと思うのです。  それ以外の人は、例えば公務員で言えば、恩給をもらっている人があって、そういう 人たちの中に非常に高い人がいるというのであって、今の計算をすれば、およそ大部分 の人はこの辺に落ち着くのだろうと思うのです。そんなに給付水準は変わっていないの だと思うのですね。だから、それを前提にして議論をしないと、非常に高い人がいて、 それはけしからんということになってしまうので、この間の改正でそれは是正されてし まった。  先ほどN委員がおっしゃったように、そこのところは議論しても、実務的に言えば、 余り問題ではないのではないか。要するに先ほど言いましたように、負担をどうするか ということが問題になるのではないかと思うのです。そういうことであって、非常に高 低差があり過ぎる。そういうことではないだろうという気がします。 ○A委員 負担の問題でございます。ここではあくまでも保険料負担が保険料率として 見たときに30%というのは1つの壁というふうに多くの場合に意識されて いるのだろうと思いますが、これをここの資料1の15ペ−ジで、過去の経緯で見てみま すと、先ほど少し話題になりました「福祉元年」と言われた昭和48年の時点でも、男女 差はありますが、男子で見れば 7.6%、現在の半分以下です。当時恐らく現状のような 保険料率が議論されたときには、これは常軌を逸した数字だということで扱われたに違 いないわけですが、現状それほど常軌を逸したという意識はないわけです。この点につ いてはかなりその時どきでの社会保障の現状と将来に対する国民的な感覚がかなり変動 してきたということを踏まえて、将来についても余り現状を固定的に考えるということ ではない議論をする必要があるのではないか。現状我々が議論しているのは、何せ30年 後とかそういうことを念頭に置いた議論なわけで、その点ははっきりと頭をやわらかく しておきたいなということが1つです。  もう1つは、国民負担率50%ということを前提にした議論が多いわけですが、個人の 生活上の必要性というのは、公的な制度が変わったから必ずしもそれに応じて変わるな んていうことはないのであって、年金に関して言えば、公的な給付が下がれば、それは その分だけ私的に負担しなければなりません。つまり経済統計上の国民負担率というこ とにはあらわれてこないものが、私的な負担の領域へ移転するわけです。 現実に我が国の生命保険商品などを見ましても、昭和60年の年金改正以後、公的年金 は危ないとかつぶれるとか、年金はそのうちもらえなくなるぞといった一部の極めてア ジタティブな、最近も強まっているようですが、それと併せて個人年金商品がいろいろ 開発されてきて現状に至っておるわけです。家計における貯蓄率というものも、従来の 預貯金ではない生命保険関係の分がシェアを拡大をさせてきているということは家計調 査などでもトレ−ス出来るところであります。  その意味で言いますと、私ども生活をする側から考えた場合には、公的負担であろう が私的負担であろうが負担には違いないのであって、それが公的な負担は苦しくて私的 な負担だったら苦しくないということでもありませんし、私的な負担だから、これは余 裕があるということでも必ずしも言えないわけです。その意味ではそこの合理的な判断 というものをきちんとやっていくことが先ほど話題に出たナショナル・ミニマムとも関 連して非常に大事なことになるのではないでしょうか。公的な負担だけが負担であるよ うな、ややもすれば、制度論をやるときにそういう議論に傾きがちでございますので、 その点をあえて申し上げたいと思います。  例えば、資料1の3ページのところで、「年金以外の所得・資産」というところで、 2つ目のマルで「高齢者夫婦2人暮らし世帯の年金以外の年間収入」というところがあ り、そこに貯蓄の 1,956万円というふうな数字がございますが、現在は実際は退職時点 で一定の、これは退職金を一時金で受け取った場合も含めてかなりの高額の貯蓄を用意 をして、その後、退職後の生活はそれを取り崩しながらいっているというのが多くの高 齢世帯でありまして、これは世界的に見るとかなり特異な現象だと思います。 退職時点での通常の労働者家計がこういった巨額の貯蓄を老後のために用意をすると いったようなことは他の先進国では、アメリカなどは少し違うと思いますが、ヨーロッ パではこんな極端な形では見られていないと思います。それは逆に言えば在職中の生活 の支出を削って、そういうものを蓄積してきているわけで、そういったものが果たして これ以上そういう傾向が強まっていいのかどうか。私はどうも余りそうは思いませんし 逆に言えば、そういうものの必要性がなくなれば、名目賃金なんていうのはそんなに上 がらなくてもいいのだという議論にもあるいはつながるのかもしれません。 ○P委員 負担の問題と直接かかわりないのかもしれませんが質問を1つしたいと思い ます。給付の水準の問題ですが、結局現役との関係における代替率といいますか、それ はH委員からもありましたし事務局からもありましたが、基本的な議論の中では60%と いう議論なり水準をイメージをしながら、しかし現実には68という水準になったという 御説明があって、過去のことは少し不勉強で申しわけないのですが、それは4ページ目 の、いわゆる「福祉元年」と言われた48年の数字でも所得代替率は62%なんですが、6 割という基本的な設定をイメージしながらも68になってしまった理由はどういうふうに 分析をされているのか。経過と、なぜそうなった最大の要因はどう分析されているのか これについて御質問をさせていただきたいと思います。 ○N委員 加入期間が延びたからです。 ○Q委員 H委員も言われたように、過去労使でかなり議論し関係者も議論し、60%と いうのは1つの議論を集約したところだったわけです。ただ、日本の年金制度の歴史が 非常に短いということから、加入期間がまだそこまで行ってないということで、現実に 40年というのはまだ出来てないですから、しかし現実の受給者にある程度60%に近いも のをしようということで非常に有利になってきた。  したがって、これだけ期間が経過して、40年の受給者がどんどん出てくるということ になると、今のレベルが高いのではないかということで、経過的にはそういうことだと 思います。 ○N委員 今の説明に私から補足しますと、先ほどO委員がおっしゃいましたように、 公務員の年金の方は歴史が古いものですから、満額年金ももらう人がこのころ存在して おったんです。ですから公務員の場合は、40年間という加入期間を前提に制度設計をし たわけです。現実にそういう人は出ておったわけです。ところが厚生年金の方は20年間 ぐらいなんです。そのギャップが公務員年金が高過ぎるという問題の根底にある問題だ と思います。 ○C委員 私もう一つ言いたいのは人口構成が変わってきた、これが非常に大きいので これから先をお考えになるときに、子供の数が減ってますから。 ○N委員 それとは違うんです、これは。これは給付水準ですから。負担水準の方は少 子化と関係します。 ○C委員 そうですか。負担水準の話になってくれば、子供の数が減ってますから、こ れは大変に大きな問題で、このことを考えないと次の話にならない。だから逆に言うと 負担を今のままで終わらせたいとすれば、年金の原資はこれしかないということから、 高齢者に差し上げられる分はこうなりますよという、逆に高齢者の数増えていますから 1人当たりで割ったら少なくなるという論理を展開しないと、今ここで最大の問題が解 決しないのではないでしょうか。今までお約束したものは仕方がないので払うことにし たけれど、これから先の設計は変えて、負担する人口が少ないですから、その人口から 取り上げた保険料でお払いするのですから、そんなにたくさんはあげられませんよとい う話にしなければ、負担と給付がバランスしないでしょうね。 ○L委員 先ほどのA委員の御意見は一見というか一聞というのかもっともに聞こえる んですが、実はそれほど話が簡単ではないから苦労しているのではないかという気がし まして、私的な年金で幾ら払うか、消費の自由で、公的な年金で強制的に保険料取られ るのとは全く性質が違うんですね。結果、保険の目的は同じかもしれないけれども、特 に日本の場合は先ほどから出ているリプレースメントレート、N委員がおっしゃった正 確な意味でのリプレースメントで考えると、稼動期間中の高額所得の人のリプレースメ ントレートは、国際的に見てかなり私は低い方ではないかと大体の勘で想像しています したがって今後公的な年金の給付水準が相対的に抑えられていければ、それは働いてい たときにたくさん稼いでいた人は私的な年金をいろんな形で買うのは当たり前なんです よね。  片方でそういうニーズは当然あるんですが、だけど、それはあくまで個人の選択、ど ういう財を買うかという組み合わせの選択の問題であって、国家の権力によって強制さ れて所得再分配のために保険料を取られる問題とは全然違うわけです。だから反対の議 論がいろいろ出てきているのであって、両方合わせれば同じではないかという話では私 はないと思うんです。ですからもう少しそこはきちんとやらないと、その程度の議論で はとてもこれはクリア出来ない。ちょっと余計なことかもしれません。 ○K委員 今のL委員の意見に全く賛成だということをまず1つ申し上げておきたい。 私、前々回はタッチしてませんから知りませんが、前回のときは、65歳年金支給を明確 にきっちりするということが1つありまして、また、68%は現実の問題そこまで来てい るからカット出来ないということ。  また、一方で再計算の結果ぎりぎり29.8%というのは私は大反対だったんですけれど も、私が出した案は、別途の給付はやらないということで、65歳で固定して年金額を決 めて、面積一定で、60歳からもらいたい人は60歳からもらえるようにして、67歳からも らいたい人は67歳からもらえばいいのではないかという面積一定論でいきますと大体最 終保険料は27%だったんです。それでも高いなと思いながらも、結局29%になったんで すけれども、29%という負担は後々払う時期になるととても負担出来ない。だからそう いうことは到底あり得ないということで、いつかは25か、24か、あるいは22か、20%ぐ らいまでに落としていかないと、せめてドイツが一生懸命20%で死守する努力をしてい ると同じようなことをしないと国民的コンセンサスは絶対得られないという確信を持っ ていたのです。一遍に何もかにも出来ませんから、前回はそういうことで行ったという のが私個人はいきさつだと思っています。  ですから、この負担の問題は、先ほど御指摘ありましたように、人口構成の問題とも 強烈に相関して、しかも毎回毎回再計算のたびに人口構成の問題は悪い方に4〜5%ず つ必ず変わってきているわけでありまして、このままで行くと、次の再計算では多分39 %だとか、そんな話になる性格のものです。というのは、それは几帳面にそうなってい るんです。この前、資料見てびっくりしたのですが、几帳面にそうなっていますから、 逆に言うと、今回いわば受け取る方の1つの在り方論をもう一回基本のところから見直 してみるという意味でナショナル・ミニマム論も勉強しなければいけないですねという こと。  また、負担の方もとてもそんなものに、企業といえ個人といえ耐えられるものではな い。かつ、また自由度のないお金をそんなに取られて、これが国の個人の活力になるは ずがない。ですから、そういう意味で、よほどベースのところから真剣にやらないと。 ということは、逆に言うと賦課方式がだめなのかもしれないと。むしろ積立方式に移行 しなければならないかもしれないという大前提で議論すべきだということを申し上げて おきたいと思います。以上です。 ○F委員 今の負担に関して少し総論的に申し上げたいのですが、我々が是非考えてお かなければいけないのは、将来の年金生活者というものをとらえたときに、どんな生活 の姿を想定していくのかというのが是非大切な視点ではないかと思っています。  資料2の1ページに、「住宅・社会資本整備の推移」というのが出ております。これ を見る限りどちらかというとハードの部分だけでありまして、人生80年時代になって、 本当にハードだけ整えば、心豊かに生活出来るのかというとなかなかそうではないので はないか。私はまだその年齢域に達していませんからよく分かりません。そういうこと を想定して考えてから、年金生活者の将来を考えたときに、やはりもっともっとソフト 面でのケアをして生活を支える部分、要するに広い意味での社会資本整備というものが 大変重要なのではないか。  そういうことが形として目に見えるようになる。その前提に立って、皆さんに負担を 幾ばくかしてください。あるいはハードにプラスしてソフト面でバックアップ出来たの だから、今度は水準の問題についても少し考えさせてくださいというように、ある種の 相関関係が見える形になっていくことが大変重要なのではないかと思うのです。したが って負担する側や給付側の水準論を考える時も、社会全体のモラルという意味でも大変 大きく影響してくると思いますから、余り財政上の在り方論だけでこういう問題を牛耳 ってはならないのではないかということを申し上げておきたいと思います。  もう一つは、負担と給付の問題とも大いに関係あることですが、前回改正のときに労 働省から、時期的には急遽という感じではなかったかと思いますが、高年齢の人たちへ の継続雇用給付のシステム、ある意味では年金のサブシステムなんでしょうけれども。 このことについて労働省の方にお聞きしたら、96年実績というふうにお聞きしましたが 7万 5,000人ぐらいしか使われていない。実質対象者は60万人ぐらいはおられるはずだ とおっしゃっていたように記憶しています。したがって、そういうサブシステムについ てのハードが、受給者あるいは受給直前の世代の人たちに感じられるようなシステムで あることが大切です。そして2つのシステムが車の両輪みたいな形で補強・補完しなが ら、前へ進んでいくことが大変重要なのではないかということが2点目です。  もう一つは、65歳の年金給付にむけて徐々に給付年齢の引き下げがなされる直前まで 来ているわけです。そういうことを考えますと、企業の中で長い年月かけてやっと60歳 定年に到達し、義務化の段階まで来たということなんです。60歳定年と65歳定年の間は やはり先ほど申し上げましたサブシステムも含めて、給付を受ける側も負担をする側双 方に不安定材料として存在をし続けているのだと思うんです。だから、その点について かなり微に入り細に入りケアのシステムを見直してみる必要があります。現行の定年年 齢と年金支給年齢65を軸にして、社会全体のシステムとしてどのように企業間労使も含 めて社会全体で考えていくのかというようなことを基本に据えて、給付と負担という問 題をきちんと考え整理していくべきではないか。どうも定年と年金の軸足が不安定なた めに、今回も皆さんからいろいろ疑問を呈されるのではないかということを感じていま す。そういう視点で発言させてもらいました。 ○B委員 私、負担のことをずっと関心持って言ったつもりなんですけれども、先ほど のK委員の29.8%。先ほどA委員の、7.6 %から 17.35%。企業の側から言わせると、 17.35 %ですら問題のところに29.8%ということで非常に企業の関係者は意識が高くな ったですね。それが更に30%を超えるとはとんでもない。こういう感覚をお分かりいた だきたいと思います。  特に、先ほど言いましたように、今後の国際競争力という観点を考えますと、何も年 金だけではなくて健康保険の負担もそうであります。また、税につきましても、これは 当然政府は財政改革の観点から課税範囲を見直すというようなことから、これに対して は法人税の国際間の比較で減税をお願いする。そういう形でやるにしても、いずれにし ても企業の法的な強制負担が減るという見通しはほとんどない。そういう中で増えてい くということは、非常にシリアスに意識をしているということを是非御理解いただきた い。 それから、10年、20年とかけて日本の産業構造が変化していくときに、今の税の制度 は経済成長前提にすべて出来ていますので、シュリンクしていく産業なり変わっていく 産業に対しては非常に厳しい税制になっておりまして、そういう全体の中で我々として は年金問題、負担の側からは非常にシリアスに意識している。特に大手の将来自信があ る産業は別ですけれども、中小企業については、それが特にありまして、そういう意味 で、先ほどの東商のアンケートは如実に、そういう中小企業の経営者の将来に対する不 安というのが出ているのではないか、こういうふうに思います。 ○R委員 今の高齢者と10年、20年、30年先の高齢者とは全然質が違ってくると私は思 っているんですね。これだけ高齢化社会の問題が言われているときに、老後の蓄えを全 部年金だけに頼るというような高齢者というのは、恐らく20年、30年先はいないという ふうに私は思っています。その意味で、所得代替率60%が正しいのかどうか。12ページ の試算でいろいろと30%から62%まで出ていますけれども、それなりに所得代替率を計 算しての負担。負担というのはどうしても給付とのバランスでもって考えなければなら ないテーマですから、そういった幾つかの選択肢をきちんと人口構成の変化も踏まえて 計算をしていただければ大変参考になるのではないかと私は思っています。 ○O委員 負担の話になりまして、こういうことを申し上げるのは大変恐縮ですが、年 金というのは、私から申し上げるまでもなく所得保障というか、老後の生活保障という か、そういうものだと思うわけです。ですから今の公的年金のシステムはやっぱり守っ ていかなければいけないだろう。年金をもらっている方もありますし、これからもらう 人もありますし、掛金を負担している方もあるわけですから、それはお互い守ってやら なければいけないだろうと思いますが、そこでこの間の統計にもありましたように、年 少者の人口を老齢人口が追い越したということになってきますと、給付水準を抑制する にしてもある程度受給者の方にも負担をしてもらわなければいかんのではないのだろう か。要するに受給者の人もある程度年金をもらっていると税を納めているということに なるわけですが、受給者の方も自分の年金の何%かは、拠出をしてもらうということを 少し考えなければいけないのではないか。 要するに年金は世代間扶養を前提に成り立っているけれども、親が子供にいろいろや ってきたじゃないかというのも確かですけれども、全部親が子供に面倒かけるというこ ともいかがかという感じもありますから、親も年金をもらっているなら、少しはやはり 負担をしてやるというシステムを考えるべきではないか。相互にそこでも扶助している という感覚が少しあった方がいいのではないか。そうすれば、もらう方もある程度、今 まで負担をしてきたから給付を受けるのは当然であるという感覚にならないでしょうか ら。そういう形の中で、どの程度の額を貰っている年金受給者にするかは議論して頂い て年金の停止なり拠出をしてもらうというシステムを私はつくっていったらいいのだろ うという気がします。そして、今の公的年金のシステムを守っていくという方がむしろ 素直ではないかという気がいたします。 ○会長 年金積立金の運用につきましては、年金自主運用検討会で検討が行われており まして、9月の初めにはその報告がまとまる様子です。9月の年金審議会で御議論をお 願いしたいという計画です。その際は、今日のように行き届いていろいろ御議論いただ くことにしたいと思います。  本日予定されておりました議事は終わりましたが、資料1と2につきましては、公開 をすることでよろしゅうございましょうか。 (「はい」と声あり)  今後の日程につきまして、事務局から御確認をお願いをします。 ○事務局 それでは前回の審議会までに各委員の御都合をお伺いいたしましたので、9 月の年金審議会の御予定につきまして申し上げたいと思います。9月は第1回目が9月 11日(木)午後2時から、第2回目は24日(水)同じく午後2時から、会場はいずれも この特別第一会議室でございます。また、改めて御連絡申し上げます。  10月以降につきましては、また各委員の御都合をお伺いいたしまして、なるべく早く 決めたいと考えております。 ○会長 ということでございます。だんだん回数も増えてまいりますし、いろいろ御議 論をお願いしなければならないことも多くなると存じますが、本日はこれで閉会したい と存じます。  どうも長時間ありがとうございました。 問い合わせ先 厚生省年金局企画課    担 当 須田(内3316)    電 話 (代)03-3503-1711