97/07/25 第71回人口問題審議会総会議事録 第71回人口問題審議会総会議事録 平成9年7月25日(金) 14時00分〜16時00分 共用第9会議室 宮澤会長  本日はお暑いところ、またご多用のところご出席いただきまして、どうもありがとう ございます。ただいまから、第71回の人口問題審議会総会を開会いたしたいと思いま す。  まず出席状況のご報告ですが、欠席は麻生、木村治美、熊崎、河野洋太郎、坂元、清 家、袖井、千葉、水越、南各委員、並びに金子、河野稠果、山田専門員、それぞれご都 合によりご欠席でございます。また、先ほど坪井委員、並びに宮武委員からお電話がご ざいまして、ご都合によりご欠席ということになりました。その他の委員はご出席でご ざいます。  また、7月から新しく専門委員に任命されました奈良女子大学助教授の木村陽子専門 委員も今回から出席されております。  それでは、これから本日の議題に入らせていただきます。本日の議題の内容につきま しては、順序といたしまして、まず最初に去る7月7日に宮城県、それから7月10日に 大阪府で行われました『少子社会を考える市民会議』、これにつきましてコーディネー ターとしてご参加いただきました岩淵委員と宮武委員から、それぞれご報告をしていた だくことにしておりましたけれども、宮武委員がご欠席でございますので、大阪府につ きましては、恐縮でございますがパネラーとしてご参加された岡沢委員からお願いした いと思います。これが第1であります。  その次に、労働省並びに総理府の男女共同参画室より意見の陳述をお願いいたしま す。それが第2の議題。  最後に、前回に引き続きまして、少子化に関する論点、これについて討論するとい う、こういう手順で進めたいと思います。  それから、前回もお話が出ましたけれども、事前にいただいております各委員の方々 の意見の文書につきましては、参考資料として配布させていただきました。お手元にあ ると思います。ご参考にしていただければありがたいと思います。  それでは、限られた時間の中で議題が多数ございますので、皆様よろしくお願いいた します。まず仙台市で開催されました『少子社会を考える市民会議』につきまして、岩 淵委員よりご報告をお願いいたします。 岩淵委員  簡単にご報告申し上げます。7月7日、市民会議のトップを切って仙台駅前のホテル で開かれました。参加者は300人の予定だったんですが、50人ほど溢れて補助椅子を入れ る盛況でございました。福祉関係の専門学校に声を掛けたそうで、若い人が半分近くい ました。  最初に厚生省出身の浅野知事からご挨拶をいただきました。その中で、「晩婚化は価 値観の問題であり、子どもが少ないことが子ども自身にとってどうなのか皆さんでよく 考えていただきたい。地球的に見れば贅沢な悩みである」というような、どちらかとい うと少子化にある程度理解を示すようなご発言でした。私が拝察いたしますところ、知 事はなかなかユニークなお考えの持ち主でいらっしゃいますし、これは削除してもらっ たほうがいいかもしれませんが、これまで過密と競争の中で育ってこられた団塊の世代 でいらっしゃるんですね。ですから、過密ということに対する問題意識はかなりお持ち であるなという感じがいたしました。  それから、阿藤委員に基調講演をしていただきまして、少子化のプラス面とマイナス 面をきちんと仕分けして、わかりやすく説明していただきました。  続いてパネルディスカッションに入りまして、岡沢先生にお願いいたしまして、日本 の現状とスウェーデンの経緯を比較しながら、女性の社会参加と育児の両立支援のあり 方について詳しく熱心にお話をいただきました。  地元の方の意見を1〜2紹介いたしますと、女性の公立保育所長をなさっている方 は、一時保育を実践していらっしゃるんですが、全般に規則にがんじがらめにされてい て、需要に応じて弾力的に対応しきれないということで、そういう意味では民間保育所 のほうがやりやすいということでございました。とにかく、24時間困ったときに誰でも 来れるような保育所にしてほしい。それから、託児所と託老所を一緒につくってほし い。それから、働く母親は時間的、精神的にゆとりがないので、父親の役割分担が特に 大切である。それから、子育て支援のポイントは男性の意識改革であるというようなお 話でした。  それから、地元のデパートの人事部長がお見えで、その方のお話によりますと、社員 のほとんどが長男・長女で、ベビー服の売上が非常に低下しておると。再雇用制度があ るので、女性従業員の平均年齢が34歳になって、勤続年数も14年になってしまったとい うことで。なってしまったということじゃなくて、になったということです。有配偶率 が5割を超えまして、女性部長も1人誕生していると。男性も出産休暇5日を取れるよ うなシステムを昔から導入しているということでございました。 これは、出産に立ち 会ったり、妻を労ったりというようなことでございます。ということで、女性の産後休 暇も2ヶ月会社として与えているのに、育児休業の取得率は2割にすぎないと。1つに は所得保障の上乗せをしていないということがあり、もう一つは親が身近にいるからで はないかということで、今後の課題としては児童手当を増額してほしいという要望でご ざいました。  それから、会場からの質問では、パネラーの男性および女性の夫は、どれぐらい家事 をしているのか、一人ひとりお答えいただきたいという質問がございまして、岡沢先生 が「これは愚問ではある」とおっしゃいながら、スウェーデンの常識は身につけている ということをお答えいただきまして、面目をほどこした次第でございます。  それから、最後にまとめが難しかったんですけれども、出生率の問題についてはさま ざまな意見があるけれども、生みたい人が生める環境づくりに対しては異論はほとんど ないので、少なくとも子育ての障害をなくして、若い皆さんが結婚したいと思ったとき に思い悩まずに結婚できるような社会にしたいということを申し上げました。  仙台は、岡沢先生の熱弁のおかげで、予想以上に盛り上がった討議が行われたと自画 自賛しております。以上です。 宮澤会長  ありがとうございました。それでは引き続きまして、大阪府で開催されました『少子 社会を考える大阪府民会議』につきまして、岡沢委員よりご報告をお願いいたします。 岡沢委員  7月10日午後1時30分から5時まで、マッセおおさかという非常に新しい施設の素晴 らしいところで開かせていただきました。  参加者は200名弱で、仙台に比べるとやや小振りではございました。その分、会場とパ ネラー間の距離が非常に小さくありましたので、議論の熱気は仙台に劣らず高かったと 考えていいかと思います。 まず最初に厚生省児童家庭局育成環境課長、および大阪府知事からの主催者挨拶がご ざいまして、そのあと国立社会保障・人口問題研究所人口動向研究部長の高橋さんから 日本の動向について非常にきめ細かな分析が行われました。  それからシンポジウムが始まったわけなんですけれども。議論としては、どうしても 男も女も働いて、男も女も家事を、育児をして、そして男も女も地域社会に参画できる ような男女共同参画型の社会をつくっていく過程でしか、この問題は解決できないんじ ゃないか。その中の1つの切り口として、保育所の問題がやはり非常に重要な問題とし て提起されました。  つまり、時代が変わって男性と女性のライフスタイルが大幅に変わっているのに、保 育所のあり方そのものについてが時代の変化に対応できるようなかたちで規制緩和が行 われていないのではないか。もう少し自由に、また必要に応じて利用できるような保育 所の環境を整備していくということが、これは男性も女性も安心して働け、安心して地 域社会で活動でき、また安心して家庭活動をできるうえで不可欠の条件になっていくの ではないかと。  従来型のかたちとして、例えば職場保育所という考え方もあったんでしょうけれど も、これについては実は残念ながら地価の高騰によって職住接近が非常に不可能になっ たがために、これは時代としてはかえって難しくなってしまったと。それならば、それ の現代版としては、今度は駅の前に保育所があるとか、駅のステーションビルを中心に して保育所を設定することによって、時代の変化に即応するようなかたちの保育所展開 があっていいのではないかということが指摘されました。  それとともに保母さん、もしくは保父さんとしての資格を持っていながら、現在専業 主婦になられて眠っている資格というのがそうとうあるわけなんですね。それをもう少 し自由に活用できるような仕組みをつくっていいのではないか。つまり、居住地におい て少し広めの部屋で、また余っている部屋をお持ちの人で、しかもその周辺に保母さ ん、保父さんの資格を持っている人がいたら、近接保育所をもっとつくっていいのでは ないか。時代の状況に対応できるようなかたちの保育所体制がつくられることが望まし いと。  それとあと、そのときの議論なんですが、現在の保育所で働いている人たちの労働が 非常に、すでにそうとうハードになっている。そのへんをどうしていくのかということ を緊急に考えていく必要があるのではないか。それが議論としては突出していたように 思います。  個々のシンポジストの議論につきましては、お手元のペーパーのままでございます。 そして、一番最後がその次の朝の報道された紙面の報告でございます。以上です。 宮澤会長  ありがとうございました。お二方のご報告について、何かございますでしょうか。な お、お手元の資料の参考1に、市民会議のプログラム、全部で8カ所、前にお配りされ た資料を再度配っておりますが、これがございますので、併せてご参照いただければと 思います。  何かございましょうか。前々から予想していた感じと、実際に開いてみた感触と、こ ういう点が特徴的に感じたとか、予想どおりであったとか、そのへんはいかがでござい ましょうか。 岩淵委員  一番強く感じたのは、地域性ですね。やはり東京で考えていますと、延長保育、夜間 保育に私なんかはどうしても目が向きがちだったんですが、地元ですと、やはり両親と の同居が多いということで、あるいは近くにいるということで、そのあたりの感覚がち ょっと違うなという感じはいたしましたけれども。ただ、2人目を育てるということに なった場合には、やはり無理せずに親と同居したほうがいいというような意見が出てい たのが一番印象的でございました。 岡沢委員  私は2カ所参加したんですけれども、やっぱり会場が非常に熱っぽいんですね。だか ら、なぜ8カ所でなければいけないのかなと。全都道府県1つぐらい、そして政令都市 全部でやったらどうかなというぐらいの気持ちではいますね。  こういうのは広範な議論を巻き起こせば巻き起こすほど、国民的合意ができる問題な んですから。8カ所というと、どうしてもさまざまな会合が開かれる場所に限定されて いるんですよね。そうすると、この8カ所についてはさまざまな省から、また、さまざ まなイベントがあるんだけど、それ以外の都市だと、なかなかこういうチャンスがない ということがありますので、できればもう少し全国展開で会場を増やしてやったほうが いいのではないかという気はしましたね。最初、会場に出たときにそんなに盛り上がっ ていると思ってなくて行ったものですから、これだけ議論するんでしたら、全国でもっ と展開したほうがいいなというふうに感じました。 河野栄子委員  すみません、質問なんですけども。会場にお見えになっている方というのは、男女比 というのは、やはり圧倒的に女性なんでございましょうか。 岡沢委員  圧倒的というよりも、きっと女性が多いだろうなと思って行くと、予想外に男性が多 いという感じの比率です。 河野栄子委員  3:7ぐらいですか。 岡沢委員  そうでしょうかね。 岩淵委員  あるいは、もうちょっと男が多いかもしれません。 岡沢委員  多いかもしれません。だから、きっと女性が圧倒的だろうと思って行ったら、意外と 男性が多いというイメージで捉えていただければ。ただ、6:4かな、7:3だなとい う視点では見なかったです。 宮澤会長  大阪のほうの参加者の年齢構成はいかがですか。 岡沢委員  若い人が少なかったです。 宮澤会長  こっちは若い人多い。 岩淵委員  仙台は若い人が半分ぐらいですかね。半分以上ですかね。 宮澤会長  ありがとうございます。他に、いかがでしょうか。 吉原会長代理  普通の日ですよね。どういう男性が。 岡沢委員  どういう男性かというのは、主催者とその分析を見ていただかないと、パネラーとし て出ている分には、ちょっとわからないかもしれないですね。 宮澤会長  他によろしゅうございましょうか。それでは、今後も引き続きそれぞれの地域のご報 告をいただけるものと思います。ありがとうございました。  続きまして、人口問題審議会の幹事のお二方から意見の陳述をお願いいたします。始 めに労働省の三沢孝総合政策課長よりお願いいたします。 三沢課長  労働省の三沢でございます。今日は私どもが前回、当審議会に提出させてい ただきました『少子化をめぐる前提認識と主要論点(案)討議資料』、本日の資料はNo. 3でございますけれども、それについてごく簡単に概略をご説明申し上げたいと思いま す。  この『討議資料』について、前回、私どもこういう書類を提出させていただきまし た。内容的には、今日お配りいただいております前回提出資料の資料No.2というものに 関する意見でございます。前回提出資料の討議資料の前提認識としては、3ページに書 いてございますけれども、「将来出生率が相当程度向上するとしても、今後少子化が進 み、人口が減少していく社会、年少人口より高齢人口が増加していく社会(少子社会) になることは避けられない」、こういう前提認識については、私ども共通の認識を持っ ているということであります。  そういう認識のもとに、この資料の6ページで、少子社会の姿、経済・労働の面での 想定でございますけれども、それについての見解を私ども述べさせていただいておりま す。  まず、労働力需給についての見解でございます。この前提認識に関する議論をいろい ろ拝見させていただいて、それをもとに見解を述べさせていただいているわけでござい ます。労働力供給、労働者の数ですけれども、それはどうなっていくかということであ ります。当然、人口が減少するということは事実でありますけれども、一方で労働力 率、これは若干増加が見込まれていると思っております。そういうものの差引勘定にな るわけでございますけれども、そういうことを踏まえると、労働力人口の伸びは鈍化 し、減少に向かうものと見込まれると見込んでおります。  私ども、厚生省が新しく今年1月に出しました新人口推計に基づきまして、将来の労 働力人口の推計を6月にやっております。その推計によりますと、労働力人口の減少 は、2005年、6,860万人をピークに減少していくだろうと思っております。したがって、 人口の減少が2007年からと、2007年ピークで減少していくということですから、それよ り2年間ほど早く労働力人口のほうは減少に向かうのではないかと、こういう認識を持 っております。  では労働力需要、企業サイドの状況はどうかということでございますけれども、ここ に書いてございますように、いずれにしても経済全体の成長率に大きく影響を受けるの ではないかということでございます。ただ、同じ成長率であっても労働時間の短縮と か、あるいはパートタイム労働者のウエイトの増加によって、1人当たりの労働時間が 減少すれば、当然でありますけれども、労働者数で見た労働需要の伸びは多くなるとい うことになります。  また産業の内側を見ると、産業ごとに労働生産性も異なるわけでございますから、産 業構造が変化するということによっても労働力の需要の伸びは大きく左右される。こう いういろいろな要因が絡まって、労働力需要が左右されるのではないかということであ ります。  こういうことを考えますと、少子化に伴って労働力不足が生じる可能性につきまし て、いろいろ議論するにあたっては、我が国の産業の国際競争力維持、強化のための生 産性の向上、そういうことが課題になっているということや、人口が減れば国内需要も 減少しますから、少子化のもたらす国内需要の減少、そういうことも考慮して労働力需 給については適切な見通しを持つ必要があると、こういうふうにいまの段階では思って おります。  仮に社会全体で量的に労働力不足になったといたしましても、少子化とか高齢化はど んどん進んでいくわけです。それから、女性の方々の社会進出も一層進んでいくと。あ るいは、労働者の意識も変化してくる。こういう労働力供給面に変化もあるわけです。 それからまた、労働力需要面でも、技術革新とか国際化とか、産業構造、就業構造の変 化があると、こういうことがありまして、そのいろいろな変化が労働力需要面、供給面 であるものですから、労働力需給でのミスマッチというものが存在することによって、 労働力不足下での失業の増大という可能性も否定できないのではないか。したがって、 そういうものを念頭に置いた政策展開というものをやっていかなければならないのでは ないかと、こういうふうに認識しております。  それから、「女性の労働力率と出生率の低下の関係」、これは前回の資料の6ページ に書いてございますけれども、これについてはここに書いてございますようなことであ りまして、女性の労働力率の上昇が直ちに出生率の低下につながるというふうな認識は 持っていないということであります。  次に2ページをご覧いただきたいと思います。「女性の労働力率と税制、社会保障制 度等との関係についての見解」。これは9ページ以下等に何か前提認識のほうでは議論 されているようでありますけれども、この問題につきましては、ここに書いてございま すように、そういうことでいろいろ問題があるということは十分私ども認識しておりま すけれども、その検討にあたっては、今日お見えになっています男女共同参画室のほう からもご説明があるかもしれませんけども、男女共同参画2000年プラン見解、ここに抜 粋しておりますけれども、こういう観点で検討をすることが適切ではないかと、こう思 っております。  続いて2ページの3の「少子化対策の考え方」でございます。これは前回配布資料の 11ページ以下に載っておりまして、少子社会への対応ということでございます。  少子社会への対応の基本的方向についての見解でございますけれども、先ほど申した ことと若干関係がありますけれども、労働力人口の減少が予想されているということ。 そうすると、労働力供給というものが経済発展のボトルネックとなる可能性、そういう 可能性は否定できないのではないかと思っております。  それからまた、現行のいろいろな社会保障制度システム、そういうものを前提にいた しますと、社会保障に係る負担が大幅に上昇するのではないかと。それと裏腹の関係 で、それを支える現役勤労者世代の減少、こういうことを勘案しますと、勤労者1人当 たりの負担が増加し、可処分所得の伸びが低下すると、こう予想されるのではないかと 思います。 そうなりますと、当然勤労意欲の低下という問題につながってくるのでは ないかと。それに伴う経済活力の低下とか、世代間の不公平の格差の拡大。こういうこ とによって、豊かな勤労者生活というものの実現が困難となる懸念があると思っており ます。  したがって、経済活力を維持しながら少子社会というものを乗り切っていくために は、働くすべての人々がその能力を高めつつ、その能力を最大限発揮しながら労働を通 じて社会に貢献する、こういうことが必要になってくるのではないかと思ってます。こ のために私どもとしては、すべての人が働きやすい環境を整備することが重要だと。そ ういう整備を通じて、労働によって社会を支える人が増加するのではないか。そのこと が結果的には、社会保障負担の軽減につながると、そういうふうに考えているというこ とであります。あと以下、能力発揮の見解とかテレワークについて述べております。  次に3ページでございます。これは基本認識の14ページ以下に、「外国人労働者につ いての見解」とございますので、それについて述べさせていただいております。  外国人労働者の受け入れの基本方針につきましては、平成7年の12月に閣議決定され ました第8次の雇用対策基本計画によりまして、ここに書いてありますように、いわゆ る単純労働者の受け入れについては、国民のコンセンサスを踏まえつつ、十分慎重に対 応すると、こういうこととされておりますので、こういう観点に立って十分に慎重に対 応する必要があるのではないかと、こう思っております。  続いて3ページの(2)の「2 出生率に関する対応」でございます。(2)のイ で、出生率を向上させる努力を行うことの必要性と施策を検討するにあたって配慮する べきことについての見解でございますけども、ここに書いてございますように、平均的 な理想子供数自体は2.64ということで、決して低い水準ではございません。したがっ て、そういうことから考えますと、仮に出生率を向上させる施策というものを講じる場 合には、子どもを生み育てやすい環境を整えて、実際の平均出生数と理想子供数の間の ギャップを埋めるという可能性を高めるということに重点を置くべきではないかと思っ ております  ロに出生率に結びつくことが期待される施策でございますけれども、これにつきまし ては、ここに書いてございますように、特に女性の方々が働きながら安心して子どもを 生むことができる環境を整備することが重要だと。ということで、4ページ以下に継続 就業のための環境整備について、労働省が講じている対策を(1)、(2)、(3)、(4)と、こ ういうふうに書いてございます。私どもは、こういう施策について、今後とも充実して いきたいと思っております。  あとは育児休業の代替要因とか、いろいろ書いてございますけれども、これは前回配 布された資料の27ページ以下に書いてあることに対する私どもの見解を述べているとい うことであります。  4ページの一番最後の「女性の就労に関する意識についての見解」、これは31ページ に書いてある見解があるわけでございますけれども、どうも多数の女性はできれば専業 主婦を望んでいるというような見解があるわけでございますけれども、この見解につい ては、95年に行われました『男女共同参画に関する世論調査』によりますと、専業主婦 を望む女子は22.3%、育児と仕事の両立を望む女性は72.3%ということであります。特 に子どもができてもずっと職業を続けるほうがよいとする女性は、1972年の11.5%から 95年の32.5%と大幅に増加していると、こういうふうな事実ではないかと思っておりま す。以上でございます。 宮澤会長  ありがとうございました。それでは引き続きまして、総理府の名取はにわ男女共同参 画室長よりお願いいたします。 名取室長  総理府の名取でございます。よろしくお願いいたします。  人口問題審議会におかれまして、少子化をめぐる前提認識と主要論点についてご審議 されるにあたり、意見を述べさせていただきます。  男女共同参画社会とは、男女が社会の対等な構成員として自らの意思によって社会の あらゆる分野における活動に参画する機会が確保され、もって男女が均等に政治的、経 済的、社会的、及び文化的利益を享受することができ、かつ、ともに責任を担うべき社 会をいいます。  去る6月16日、男女共同参画審議会設置法に基づく男女共同参画審議会が発足するに あたり、橋本内閣総理大臣は男女共同参画社会につきまして、「男女共同参画社会と は、女性と男性とが支え合い、喜びも責任も分かち合う社会であります。来るべき21世 紀に向けて、6つの改革によって私が目指す社会は、国民一人一人が将来に夢や目標を 抱き、創造性とチャレンジ精神を存分に発揮できる社会、世界の人々と分かち合える価 値を創り出すことができる社会ですが、この社会の姿を男女という観点からとらえたも のこそ、男女共同参画社会に他なりません。このような社会の実現は、少子・高齢化、 経済活動の成熟化・国際化など経済・社会環境の急速な変化に対応して、豊かで活力あ る社会を目指していく上で、まさに時代の要請であり、我が国の将来を決定する大きな 鍵となるものでございます。その意味で、男女共同参画社会の形成は、いわば社会改革 とでもいうべきものであり、社会のあらゆる分野における 「変革と創造」の大きな柱 となるものと私は信じています」と挨拶を述べられました。  また、昨年7月30日、旧男女共同参画審議会から答申である「男女共同参画ビジョ ン」が出されましたが、第1部の「男女共同参画社会への展望」の中の「男女共同参画 と経済・社会環境」に「男女共同参画社会の実現というのは、人権の確立という理念か ら要請される一方、環境や資源の制約が明らかに強まる21世紀を迎えるにあたって、実 現の取り組みを進めていくことが不可欠である」とございまして、その経済・社会、環 境に生ずる主要な変化の1つといたしまして、少子・高齢化の進展を挙げています。そ して、「少子・高齢化の進展により、我が国でも、北欧諸国のように女性の能力を十分 にいかしつつ、より少ない勤労者世代で経済・社会を効率的に運営しなければならない 状況に進む」ということを提言の中で述べられています。  この審議会の答申を踏まえまして、政府は昨年12月に男女共同参画2000年プランを策 定し、それに基づき総合的、体系的にこれらの課題に取り組んでおります。また、この プランの中では、先ほど三沢課長が述べられましたように、職場、家庭、地域における 男女共同参画の実現を4つの基本目標の1つとして掲げております。  本日は、若干基礎的なデータをご説明させていただきたいと思いまして、資料4を用 意いたしました。これは、去る7月1日に発表した第1回『男女共同参画の現状と施 策』、いわゆる男女共同参画白書の概要版でございます。  まず3ページをご覧いただければと思います。3ページの第2章ですが、「職場、家 庭、地域への男女の共同参画」として、その1に「男女の性別役割分業」を挙げており まして、「女性は天(社会)の半分を支えているか」ということがございます。図の3 を見ていただきますと、四角い図の中に水平線が1本ございますが、その上のところは 収入を伴う仕事を指しておりまして、それに係る総時間の35.1%を女性が担い、男性が 64.9%を担っております。それに対しまして、水平線の下の部分にございます労働IIと いうものが、いわゆる家事、介護・看護、育児等にかかる総時間でありますが、90%を 女性が、10%を男性が担っております。これらを合計いたしました全体について見ます と、52.5%を女性が、47.5%を男性が担っております。総体といたしますと、女性が社 会の半分以上を支えているということがわかります。  また、その支え方は男女のそれぞれの生活スタイルによって大きく異なっておりまし て、次の4ページをご覧いただければと思います。これを見ていただきますと、全体の 労働時間が最も長いのは女性有業者の9時間12分ですが、仕事と家事、育児等の双方を 担っています。次いで男性有業者の8時間27分ですが、このほとんどの時間を仕事が占 めております。すなわち、女性は家事、育児、介護等の、いわゆる家庭責任を中心とし た収入を伴わない仕事の大部分を担いつつ、有業女性にありましては、仕事と家庭とい う二重の役割をこなしていることがわかります。  さらに9ページをお開きください。9ページの一番下に図11がありますが、これは右 側が男性の国際比較になっております。我が国の男性は他の国の男性に比べまして、仕 事時間が長い一方、家事時間が少ないことが際立っております。  次の10ページを開けていただきまして、図12をご覧ください。家事時間も含めまして 夫の生活時間は、共働き家庭も専業主婦のいる家庭もほぼ等しく、夫は妻の働き方によ っては生活スタイルを変えないということがわかります。  このように我が国では、生活時間の意識の面から見た男女の支え方、すなわち社会の いろいろな分野への男女の参画状況が大きく異なっておりまして、性別役割分業の大き な社会となっております。  以上のようなことから少子化と男女共同参画社会の実現の関わりというのは大きいも のと思いますので、どうぞこの点につきましてご配慮いただければ幸いだと思いまし て、よろしくお願いいたします。以上でございます。 宮澤会長  どうもありがとうございました。それでは、ただいまのお二方のご意見につきまし て、何か質問、あるいはご意見ございましたら、どうぞお願いいたします。 阿藤委員  男女共同参画の審議会とかが確かあると思うんですけれども、そういうところでこの 少子化問題について、どういう議論がそもそもあるのかないのかよく存じませんけれど も、あるとすれば、どういうかたちの、あるいはどういうご意見が多いのか、そのへん をお伺いさせていただきたいと思うんですが。 名取室長  実は、男女共同参画社会についての総合的ビジョンを示すように言われましたのが、 旧男女共同参画審議会でありまして。平成6年に当時の村山総理から諮問を受けまし て、2年にわたりましてご審議されました。  その中で、第1部に、男女共同参画社会への展望ということで、まず基本的な考え方 や、男女共同参画社会の理念と目標というのを挙げられたあとに、男女共同参画と経 済・社会環境ということをご議論されました。1つは男女共同参画社会というのは、人 権という問題からもいかなる社会であっても実現を目指さなければいけないけれども、 特に現在、我が国の経済・社会環境が生じる主要な変化に伴って、これをより一層早く 実現しなければいけないということで、我が国の経済・社会環境に生じる主要な変化と しまして、少子・高齢化の進展、それから国内経済活動の成熟化と国際化、情報通信の 高度化、家族形態の多様化、地域社会の変化というようなことを挙げられました。  そして、これらの変化というものが、男女共同参画の実現の実は大きな促進要因にも なるのではないかというようなご議論を得たわけです。  しかしながら、このような経済・社会環境の変化がもたらすマイナス面というのも当 然あるわけですから、その面をできる限り抑制して、プラス面を生かしていくことによ って、男女共同参画社会の円滑な実現を促進することができると。そのためには、いろ いろと施策を進めなければならない。このための諸施策は、実は男性にも少なからぬメ リットをもたらすとともに、今後目指す活力ある社会、福祉社会の建設にも不可欠なも のであるというようなご議論がありました。  そこで、先ほど述べさせていただきましたように、少子・高齢化の進展によりまし て、我が国でも北欧諸国のように女性の能力を十分に生かしつつ、より少ない勤労者世 帯で経済・社会を効率的に運営しなければならない状況に進むのであろうということ。 いくつかの具体的な施策の提言もございまして、それを受け男女の職業生活と家庭、地 域社会の両立支援ということで、昨年の12月に男女共同参画2000年プランをつくったと いう状況でございます。 阿藤委員  いまのお話も先ほどのお話も、どちらかというと少子・高齢化が来るという前提でど う対応するかというご議論のようなんですけれども、むしろ少子化問題と男女共同参 画、裏返せば性別役割分業が根強い社会ということを結びつけたような議論、だからこ そもっと男女共同参画型社会に向けて、つまりあえて言えば少子化問題を克服するため にもそういう方向に向かっていかなければならないというふうな議論はなかったんでし ょうか。 名取室長  そういうご議論がありましたからこそ、このようなビジョンの答申をいただいており ます。これにつきましては、その当時の審議会に岡沢先生、木村先生、八代先生がメン バーでいらっしゃいまして、十分ご議論が出ております。 宮澤会長  他に。どうぞ。 木村専門委員  労働省が出してくださった資料の3の4ページについて質問させていただきます。  4ページの上のほうに、「継続就業のための環境整備についての見解」というのがあ りまして、(4)に「育児のために退職したものに対する再就職の支援」ということがあり ます。通常、保育所とかいろいろなことが考えられると思うんですが、私はこれからの 日本を考えるときに、少子社会の中で、高齢者の就労ということとも関係してくること で、年齢差別ということをどういうふうにして解消するかということが、女性の再就職 の支援では重要なファクターになるのではないのかなと考えています。  よく、年功序列賃金体系だから、募集のときに年齢差別があるんだという説明があり ますけれども、それは必ずしも当たっていないと思われます。と申しますのは、パート の募集のときにおいても、例えば「ウエイトレス35歳まで」ということで切られるわけ です。そういうことがありましたならば、中年期になって育児が終わったあとで再就職 したいと思いましても、保育所が仮に整ったとしても働き口の側で受け手がないという ことになりますと、なかなか施策が生かされないということになります。  労働省は年齢差別ということについては、現在時点でどういうふうに考えておられる のかということを教えていただけたら、ありがたいと思います。 三沢課長  それでは、私のほうからお答えしたいと思います。育児のために退職した人の再就職 の支援では、いま具体的にやっておりますのは、再雇用制度を導入した事業所に対する 助成金を支払うというような、経済的な面での援助をやっています。それがそういうこ となんですけれども、木村先生のご指摘も非常に我々も重要な問題じゃないかと思って います。  というのは、女性の方の労働力率を見るとM字型カーブになっておりますね。いま 我々としては、そのM字型の底を引き上げていこうという、こういう努力もやっており ますけれども、そういうことだけで果たして本当にいいのかと。要するに問題は、M字 型の右のほうの山ですかね。 Mで労働力率は上がるんですけれども、上がった方々の 就労の形態を見てみますと、パート労働のようなものが非常に多いわけですね。いま パート労働者は1,000万人を超えているというような状況で、その中の7割ぐらいが女性 の方なんですね。そうすると、M字型のMの右肩のほうの女性の労働率が上がったとこ ろは、そういう基幹的というか、正社員型じゃないパート的な労働だと。それは女性の 方が希望される方もおられると思いますけども、いろいろな調査をやってみますと、 パートの方でも正社員になりたいという希望が大変多いわけですね。では、そういう場 合、先生がおっしゃったように募集に年齢要因がありまして、それがネックになってい るというお話は、それは確かだと思います。  そこをどうするかというのは、これはなかなか我々としても難しい問題で、年齢差別 とかいうものを直ちに政策的に取り上げていくという段階には、まだ入っていません。 ただ、おっしゃるような問題があるものですから、M字型カーブの右のほうの退職後再 就職する女性の方が、育児を終わった方がほとんどパートのような非正規労働に就いて いるのは問題じゃないかと。やっぱりそこらへんの要因分析とか、これから本格的にや っていかなくてはいけないなと思っている段階で。まずそういう分析をやって、それか らどうやっていくかという段階で、まだ具体的な政策までいってないのが現状です。 木村専門委員  アメリカでは1960年代の後半でしたか、それぐらいですでに研究蓄積が積まれている というふうに聞いてますし、合理的でないような差別というのは、やっぱり男女差別と 一緒で、少子化社会の中では存在することはプラスにならないのではないかということ で、ぜひ早く労働省のほうで研究とかを進めていただきたいと思います。以上です。 福田委員  労働省の方にお伺いしたいんですが。拝見しました資料の3ページに、外国人労働者 についての見解が述べられております。この審議会でも外国人労働者の問題にまったく 触れなかったわけではございませんけれども、だいたい少子化に関心が集中する。これ は労働力の問題だからというので、あまり議論したことがない。そうであるだけに、労 働省のほうでどういうふうな研究をしてられるのか。もう少し立ち入って伺いたいとい う気持ちがございます。  何しろ閣議決定があるからというので、オウム返しに十分に慎重にという言葉だけで は具体的にはわからない。情報と、それから商品については国境がまったくなくなる世 の中に、いったい労働力というものについて、十分慎重に何をやろうとしているのか。 片一方で単純労働力が望ましくないということは何となく伝わってきておりますけれど も、現実には単純労働力が入ってくるというのは、止めようのない闇の部分になってい る。もちろん片一方で、高度にインテリジェントな仕事、例えば弁護士の仕事というよ うなものは、これは国際化すれば不可避的に日本でやる外国人は増えていくだろうと思 いますけれども、ただ十分慎重にではなく、我々が伺ってもいいことがあれば、もう少 し補足をしていただきたいと、こういうことであります。 三沢課長  いまの福田先生からのお話でありますけれども、私ども率直に申しまして、この点に ついて十分な検討をやっておりません。と申しますのは、私どもの見解の1ページで、 「労働力需給についての見解」というのがありまして、少子化になったら労働力人口が 減ることは減るんですけれど、それだからといって直ちに労働供給がタイトになると か、それはなかなか必ずしも十分判断できないのではないかと思っています。というの は、経済成長の変動によって、労働力需要というのは変わってきますからですね。それ からあとは、ここに書いてありますような、労働力の人は減るけれども、減った分を補 うような技術革新みたいなのがあるかもしれない。それによって結果的に人は足りてい くかもしれない。足りてきて、かえって失業者が高まるのかもしれないと。そういう恐 れもあるものですから、そこらへんの労働力需給についての見通しがはっきりしない段 階で国際化ということだけでどんどん入れるのもどうかなというのが率直なところであ りまして。  福田先生、いろいろおっしゃられておりますけれども、基本的に何か研究していると いうわけではないと。ただし、現実問題として単純労働者がたくさん入っている。これ は認識しておりますけれども、それは個別対策でやっていくという段階で、政府全体と しての労働力政策としてどうこうするというような段階では、いまはないというのが現 状です。具体的に何か考えているというわけでもありません。お答えになっているかど うかわかりませんが。 宮澤会長  よろしいですか。 福田委員  お手元に何もないということでしたら、伺ってもしょうがないと。ただ、例えば、こ ういうことはこちら側で何を考えているかというだけで決まる問題ではない。1956年の ハンガリー事件のあとで、どのくらいヨーロッパの先進国の中にハンガリーの労働者が なだれ込んだか。例えば朝鮮の問題は、私はヨーロッパ人に聞かれますと、まずミリオ ンのオーダーのイミグレーション問題に直ちになる。30年前から私はそう言ってまいり ました。  そういう点からいえば、いろいろな場合に備えて考えるということの必要は、やっぱ り私はあるように思いますし、片一方で、つまり‥‥この間、緒方貞子さんのお話の中 で挙げられた数字でも、難民の受け入れの数字、アメリカは数千人、日本が1人という ようなかたちで出てくる。 そういうことでは国際的にいっても批判を受ける。それに 対して、何か応答していかなければならないというような場合も、またありうるわけで すね。  そういう点について、もちろん労働力の中で計画できるものだけについてやっている ということだったら、これはいたしかたないと思いますけども。何もやっておられない という前提に対して、若干の心配をしているということを申し上げて終わりたいと思い ます。 宮澤会長  ありがとうございます。若干ではなくて、かなり心配しておられるというように存じ ていると。いずれにいたしましても、労働力需給の見通しが大前提であって、そしてそ のうえで考えるという発想そのものについても、若干の疑問があるのではないかと、こ ういうことかと思いますので、またご検討いただければ。  どうぞ、お願いいたします。 岡崎専門委員  いまの労働省のご報告ですけど、私はやっぱり基本的には本当に労働力が不足になる のかどうか。少子化に伴ってですね。そこのところが十分に詰められてないと思いま す。  前に八代先生がおっしゃったけど、労働生産性が上がっていくということをかなり将 来の展望の中に含めて考えれば、むしろ日本はそんなにむちゃくちゃに働かなくてもい いんで、質のいい労働力が必要な職業、産業に就けば、あとは十分余る。そうすると、 何も女性まで引っぱり出して、子どもが生めないほど働いてもらう必要もないし、男性 もいまほど死ぬほど働かなくてもいいと。そういう社会が将来の少子化、かつ人口がだ んだん減ってくる日本の姿であるというビジョンがもし描ければ、そちらに合わせて議 論するほうがいいように思いますが。労働省の方は、何もそれはおっしゃらなかった。  僕は本当をいうと、将来のビジョンを描いたほうがいいと、前回のここの場でありま したけど、そこがちょっと詰めが足りないんじゃないかなと思いますね。 宮澤会長  ありがとうございました。どうぞ、お願いします。 吉原会長代理  いまの岡崎委員のこととも少し共通するんですけど。総理府、あるいは労働省の方に お伺いしたいんですが。あるいは、こういうご質問をすると、公式的にはそうじゃない というお答えになるんだろうと思うんですが。  感じからいいますと、男女共同参画という、その言葉自体、あるいは考え方自体は私 は大変けっこうだと思うんですが、おそらく理想としては、あらゆる分野で男女が共同 で参画するということだろうと思うんですが、実際にはやはり雇用とか職業生活の面で の女性の参加とか進出というものを、少なくともいままでは重点に置いてこられたんだ ろうという気がするんですね。それがまた少子化の1つの原因にもなっている。 しか しこれからの男女共同参画というのは、職業生活とか雇用生活を第一義的に考えるので はなく、あるいは育児と、あるいは家庭生活との両立ということもおっしゃってますけ ど、何と言ったって雇用とか職業とか、あるいは審議会の委員だとか政府の要職だとか に女性が少ないというようなことがよく言われますように、ややそっちの面に重点が置 かれすぎている感じがしないでもないんですけどね。  これからは、そうではなく、家庭生活とか育児とか、それに女ではなく男性のほうが 共同で参画をしていくという考え方のほうに、少し重点を移せないか、あるいはもうち ょっとそのへんの考え方をはっきり打ち出されたらどうかなという感じがしないでもな いんですけどね。  いやいや、それはそうじゃないというふうにお答えになるのかもしれませんが、実際 にはどういうふうなお感じを持っておられますか。 名取室長  先ほどご説明いたしました日本の役割分担、例えば家事を諸外国と比較見ましても、 日本の男性は非常に家事時間が少ないというのがかなり明らかになっております。本当 に先生のおっしゃるとおりだと思います。  男女共同参画社会の実現ですから、女性に働きかけるのはもちろんとても大事ですけ れども、男性のご理解も得ないとこの問題は進みません。 その意味では、やはり多く の男性の方々により一層ご認識いただければと思っております。今回の白書も、女性の データとともに男性のデータも入れてございます。よろしくお願いいたします。 宮澤会長  どうぞ、お願いいたします。 山本委員  1つ労働省のほうにお伺いしたいんですけれども。2ページ目の「少子社会への対応 の基本的方向についての見解」というところで、「社会保障に係る負担が大幅に上昇 し、世代間の不公平な格差の拡大などにつながる」というような主旨のことが書いてあ るんでございますが。公的年金を中心に考えましたときに、現役世代と年金世代の所得 といいますか、あるいは生活水準といいますか、これのバランスを合理的に維持すると いうことは、最もこれは大変大切なことだろうと思うんでございます。  したがいまして、可処分所得が低下するという状況下におきましては、やはり年金の 給付というものもそれにバランスをとって低下させるということは、これは当然必要に なってくるだろうと思うんでございます。 かつ、それはすでにこの前の年金の改正に おきまして、年金の再評価にあたりまして可処分所得スライド制というものが投入せら れまして、部分的にはすでにその方向に年金は進んでいるわけでございます。  それで伺いたいのは、「世代間の不公平な格差の拡大」と、こうい うふうに書いて ございますのは、現在の年金制度はすでに若干不公平なまでにレベルが上がりすぎてい ると、こういうようなお考えなのかどうか。そのへんのところが、この表現はちょっと 気になるものでございますので、ちょっとお伺いしたいんですが。 三沢課長  水準がどうかという点はさておき、昨年の経済白書で年金の受給額とそれを負担する 負担率といいますか、保険料ですかね。その割合の図なんか経済企画庁のほうで掲載し たのを出されていますけれども、それを見ると、いまの受給世代の方は、自分が払った 保険料の10倍とかそれぐらいの年金受給額になるわけですよね。ところが若い方は、自 分の払った保険料と、労使負担ですから、労使負担の保険料分ももらえないような状況 になっているという推計があるわけです。  そういうことを考えると、やはり若い世代の方の負担というのも、ますます少子化が 進んでいくと、年金に対する政策として、そこからお金を取るしかありませんから、そ れはいかがなものかなということを言っているので、具体的にではそれを解消する対策 として、いろいろな対策があると思いますけれども、水準の話もあるかもしれない。そ ういうものをいろいろ考えていかなくてはいけないなと。たまたま政府のほうでもいろ いろ、厚生省のほうでも考えておられますけれども、平成11年が年金の再計算の時期で すから、それをめぐっていろいろ厚生省のほうでもお考えになっているように聞いてお りますけど。 宮澤会長  どうぞ。 網野専門委員  労働省、総理府、お二方に、労働力率と出生率の関係で、ちょっと確かめさせていた だきたいんですが。  先ほど労働省のご説明で、労働力率が上昇するということと出生率が低下するという こととは必ずしも結びつかないのではないかという見解があったと思うんですが。これ も非常に複雑な要因が確かに絡んでいますから、もちろん明解にはその関連性というの は指摘できないと私も思います。  その中で、特に女性の労働力率が上昇することが未婚とか晩婚と関連するということ についての実際どうなのかとか、議論とかいう部分が1つと、それから結婚している女 性が果たして働いていることが出生数、つまり具体的に子どもを生む数と影響している のか。その2つがあるかと思うんですが。  後者のほうでいろいろ動向を見ていましても、いろいろな調査なり実態を見ても、む しろ働いている女性の子どもの数というのは、決して低くないと思うんですね。私たち のいろいろな面で調べても、同じか、あるいは調査の内容によっては共働き所帯のほう が多い場合も見られたりしまして。その一方、いまいよいよ児童福祉法が改正になり、 保育所のシステムも少しずつ変わってきていますが、それに合わせて幼稚園がどんど ん、どんどん保育園の機能に近づいているといってもいいんでしょうか、そういう部分 があって。午後も、夕方までもあずかりますよというふうな動きが全国的にかなり非常 に大きな動きが見られてきている。 これは幼稚園にお子さんをあずけているお母さん も働いてけっこうですといいますか、あるいは働いている場合でも大丈夫ですよという 動きをかなり見せていることかと思うんですね。  そうしますと、社会全般で女性といいますか、母親が働くということと出生、あるい は子育てということの関連で、やはりいままでと違ったさまざまな動きが見られてきて いると思うんですが。その点で先ほどお話のありました労働力率と出生率の関係につい て、もし具体的にどのように分析されておられるのか。今後の動向とかということで何 か参考になるお話がありましたらいただきたいということです。 三沢課長  労働力と出生率との話だけですけども、具体的に推計とか計算を労働省でやっている わけではありません。いろいろなものの本とか、諸外国の状況なんかを見ると、必ずし も関係がないというようなことで、必ずしも低下しないのではないかという認識だけで ですね。具体的に何か数量的に調査したということはありません。 網野専門委員  いまのことと関連して、総理府のご説明で、確かに3ページの図3とか10ページの図 12ということで、先ほど吉原会長代理がご質問されたことと関連すると思うんですが。 結局、男女の性別役割分業をいろいろ考えていくということは、具体的にいえば女性、 母親が働いている場合でも、彼女たちだけに大変な負担とか余裕のなさとか、そういう ものを解消していくということが必要ではないかということを暗に示唆しているかと思 うんですね。  そのあたりで、総理府での男女共同参画の審議会とか、あるいは総理府自体の行政政 策、施策の中で、男性が1つはやっぱり労働過重といいますか、それを余裕を持つ部 分、これは労働省とも関係するかと思うんですが、そういう方向と、もう一つはやぱり シャドーワークとか、最近はアンペイドワークといわれますが、その部分についての男 女不平等ということについて、何か具体的な意識変革とか、政策、施策で展開する必要 性、具体的な内容ですね。もしありましたら教えていただきたいんですが。 名取室長  いまのお話は、まさに暗にお示しさせていただいているとおりであります。特に仕事 を持っている女性の方々の家事と労働の負担というのは大きいというのは4ページでお 示ししたとおりです。このあたりが実は1つの結婚難というのですか、女性があまり結 婚したがらない理由の1つであろうと考えています。  そのために、アンペイドワークの関係につきまして、先ほどご紹介いたしました2000 年プランでも入れております。「男女共同参画の視点に立った社会制度・慣行の見直 し、意識の改革」「男女共同参画に関わる情報の収集・整備提供」の中で、無償労働の 数量的把握の推進を取り上げております。そして、その中で無償労働、いま先生からご 指摘いただきましたように、家事、育児、介護は大変な労働ですけれども、その数量的 な把握の方策につきましても調査研究を行うというようなことで、すでに経済企画庁等 で始められているのでございますので、一応、ご報告をさせていただきます。 井上委員  非常に技術的な小さな質問で恐縮なんですが、労働省さんからのご報告の中で、6月 に新しい労働力の推計をなさったということがございました。その一方、ここの文章を 拝見いたしますと、すべての人が働きやすい環境を整備することを政策的な目的に掲げ ていらっしゃいます。  私の質問は、労働力率の見通しなんですけれども、2点ございまして。1つは女性の 労働力のM型という表現がございましたけれども、M型の中心の下がった谷の部分です ね。これが将来上がっていくというふうに見込まれているのかどうか。それからもう一 つは、高齢者の労働力率ですけれども、これも各界の国勢調査を見てますと、だんだん 下がってきているように見えますが、これが将来上がっていくようなお見通しをお持ち かどうか。それと併せて定年制の問題。これをどのように考えておられるか教えていた だきたいと思っております。 三沢課長  まず、女性の労働力率でございますけれども。私ども、2025年まで新人口推計に基づ いて新しい労働力率を推計しましたけれども、これによりますと、徐々にやはり労働力 率が上がっていくという感じに出ています。いま30〜34歳のところが一番底ですけど、 それが1990年の労働力率が30〜34歳が50%ぐらいですか。それが、一番最終ですと2025 年ぐらいになるんですか、そうすると60%ぐらいまで上がっていくということを推計し ています。  男女計で見ると、1996年が男女計の労働力率が63.5%なんですけども、それが例えば 2010年になると62%になって、2020年になると60%になって、2050年ぐらいになると58. 4%と、こういう感じです。これはいずれにしても、高齢者が増えてきますから、それこ そ労働力率が全体的には下がっていくというような推計になっています。  それから最後の定年制ですけれども、定年制のお話につきましては、私どもとしては 年金の支給開始年齢というのが一番重要だと思ってまして。現行の計画ですと、2013年 に65歳支給開始になるわけでありますので、それまでの間には65歳までは働こうと思っ ている人は、すべて働ける。65歳現役社会といってますけれども、そういうものをつく っていかなければいけないかなと思っています。  そのための手段としては、いろいろな手段がありますけれども、定年制の導入という のも1つの有力な政策手段ではないかと、こう思っております。以上であります。 八代委員  いままでのご議論にも出てきたわけなんですが、いま労働省のほうからご説明があっ た、女性とか高齢者の就業率がどうなるかというのも、実は単一の予測というよりも、 どういう条件のもとならどうなるかという条件付予測が必要になるわけです。特に女 性、あるいは男性高齢者の就業率というのは、労働需給の逼迫度に非常に影響されるわ けです。  高齢者につきますと、先ほど傾向的に高齢者の就業率が下がってきたというご指摘が あったんですが。これは先進国に共通した現象なんですが、日本はその例外でありまし て、実は87年から92年に関して逆に高齢者の就業率は上昇した局面があります。最近は 不況にもかかわらず、それが高止まりしている。主として原因は何かと申しますと、年 金制度の充実というのは、むしろ高齢者の労働力率を引き下げる要因ですから、この上 がる要因というのは、もっぱら需給の逼迫によるものだというふうに理解できるのでは ないか。ですから、将来の労働市場が需給が逼迫するかどうかというのは、まさにそこ が鍵になるわけですね。  先ほどいくつかのご意見があって、それはどうなるかわからないということですが、 まったくわからないかというとそうでもないわけで、大雑把なことは言えるのではない か。つまり、労働力供給のほうは、ある程度女性とか高齢者の就業率が高まったとして も、人口自体が減少に向かいますから、労働省の雇用政策研究会の報告等を見ても、 2000年からは減少に向かうだろう。しかし、経済成長のほうは少なくとも今後10年位 はマイナスにはならないわけですね。3%は無理でも2%、あるいは1.何%。過去の経 験からすれば、成長率が1%上がれば労働需要というのは少なくともその4分の1ぐら いは増えていたわけです。  一方で労働供給が減り、他方でいくら低いとはいえプラスの経済成長があれば、これ は労働力需給は原則として逼迫するというのが当然であって、これをわからないという のは、あまりにもやや自信がなさすぎるというか。どの程度逼迫するかわからないけ ど、逼迫する方向にいくことは間違いないわけですね。それを考えて政策を打たなけれ ば、何も言えないわけです。  もちろん生産性も上がるし、それから空洞化の問題もありますけども、そういう要素 を入れたとしても、基本的には労働需給は逼迫傾向にあるという方向で考える必要があ るのではないか。そこがまた少子化にも大きな影響を与えるということです。やはり、 わからないなりにも基本的な大雑把な方向だけは共通認識を持っておく必要があるので はないか。 少なくとも失業者がどんどん増えるような状況は、少なくとも2000年以降 はありえないと思います。ミスマッチは別にしてですね。 それが第1点。  それから第2点に、男女の共同参画で、職場の場だけではなくて家庭でもということ なんですが、具体的にどういう政策があるか。男性の意識を法律で変えるわけにはいか ないわけです。もちろん、啓蒙運動も必要でありますけど、私は基本的に政府のできる ことを中心に議論したほうがいいのではないかと思います。これはこの審議会で繰り返 し議論されています。  何ができるかというと、男性が家庭に共同参画するためには、まずいまの労働時間の 長さというのは、最大の桎梏になっているわけですから、これは労働省でも力を入れて おられますが、労働時間の短縮というのは、まず第1の条件である。  それからもう一つは、職場における弾力的な働き方です。いまの日本的雇用慣行とい うのは、男性にはフルタイム以上の仕事を強制するわけで、それが逆にいうと、女性に パートタイム労働、あるいは専業主婦という、男女の役割分担を固定化する元凶がこの 日本的雇用慣行にあるわけです。労働省でも雇用の流動化ということに、いま徐々にシ フトされておりますけれども、まだまだ及び腰の面もある。  ですから、男性の意識改革という抽象的な話ではなくて、基本的にこれは雇用の流動 化というものをもう少し積極的に捉える。それによって、労働者の家庭と職場との間の 時間配分の自由が拡大する。雇用の流動化が失業を増やすか、あるいは労働者の自由を 増やすほうに働くかということも、またもとに戻りますが、労働力需給がどうなるかと いうことにも依存するわけです。まさに労働力需給が将来どうなるかという見通しを政 府の中で合意するということが、私は間接的には少子化の問題を考えるうえでも絶対に 必要なことです。これは雇用政策研究会等でも、ある程度の結論は出ているわけですか ら、ぜひこういう場でももう少し積極的に取り上げる必要があるのではないかと思いま す。以上でございます。 宮澤会長  それではこれで質問を締めさせていただきまして、次の議題に進みたいと思います。 どうもありがとうございました。  続きまして、前回に引き続きまして少子化に関する論点などについて、討議、あるい は意見交換を行いたいと思います。時間がやや短くなりましたが、よろしくお願いいた します。事務局には前回までのご議論を踏まえまして、横長の資料5にあるように、少 子化をめぐる全体像を1つの表に整理していただきました。まず事務局から、これにつ いてのご説明をお願いいたします。 椋野企画官  それではご説明をさせていただきます。資料5、横長の紙に沿いましてご説明をさせ ていただきます。  表の左の上のほうに付けておりますけども、これはあくまで今後の論点の整理のため の素材でございまして、いろいろ出てました論点が相互にどういう関係にあるのか、ど ういうふうに議論を進めていけばいいのかというようなことを整理をしてみたものでご ざいます。ですから、四角の中に例示でいくつかポツが挙がったりしてますけれども、 それはあくまで、その項目がどういうことを意味しているかというイメージのために入 れているものでございまして、これはもちろんさらに詳細な検討が必要なものでござい ます。全体の関係を議論していただくための素材というふうに考えていただきたいと存 じます。  前回お配りしました資料も参考に今回もお配りしておりますけれども、前回は<少子 化の原因分析>、下のほうのやや左寄りのところと、それから右のほうの<出生率向上 についての様々な立場>というところに焦点を当てて少しご議論いただいたわけですけ れども。その中で出てきました意見としまして、いきなり少子化の原因分析ですとか出 生率向上の立場を論ずる前に、少子社会の姿、いろいろな影響が出るけれども、それに 対応して、なお調整ができないのか。まずは人口は与件として考えてみて、なおその調 整ができないということになって、初めて人口をどう動かすかというような話になるん だろうというようなご意見がございましたので、それを上のほうの左から右への流れと して整理をしてみました。  それからもう一つ、ご意見が大きくございましたのは、<少子化の原因分析>として そこに挙げている、左の下のほうですけど、結婚をめぐる意識とか出産育児の障害とか いう3つほどを前回挙げさせていただいたんですが、表層的にはそれが原因だとして も、その背景にある社会状況というようなことをまずきちんと押さえるべきだろうとい うふうなご意見がございましたので、その背景となる要素として、もう少し社会状況全 般をもう一つ左のほうに整理をさせていただきました。  全体の関係は、そういうような図になっております。それでは、もうちょっとお時間 をいただきましてご説明をさせていただきます。  一番上に、<今後の人口についての現状認識>とございます。これは、いままでも異 論のないところでございましたので、改めて書いております。  <少子化の現状>として、合計特殊出生率が低下し、それが生産年齢人口の減少、高 齢化の進展に現在でもつながっていると。さらに今後どうなるかということで、少子化 の影響として右に矢印をしております。 <少子社会の姿>の四角の中の、少子化の影 響。あくまでその中は例示ですが、正の影響と負の影響をきちんと整理すべきだという ご意見をいただきましたが、残念ながら正の影響はいままで有識者の方々の意見、ある いはここの審議会で出ていた意見でも、あまりたくさんございませんで、教育の面で質 の高い教育が可能になるというようなご意見がございました。他には、あまりプラスだ というご意見はなかったように思います。  負の影響のほうは、いろいろございましたが、代表的なものをいくつかイメージして いただくために入れております。こういう負の影響が出て、しかし社会はそのまま放っ ておくわけではないので、さまざまな対応をします。労働力の不足については、産業の 高度化ですとか労働生産性の向上、あるいは女性高齢者の労働力の活用。地域の問題に ついても、地方振興による人口の地方分散。あるいは社会保障の若年世代の負担の増大 については、給付の適正化等々を行って、さらに右の矢印ですが、その対応も含めた全 体の姿を見て負の影響は生じないと評価するか、それでもなお負の影響は避けられな い、あるいは負の影響のおそれが大きいという評価があって、ここまでは人口を与件と して考えてきているわけですが、ここで初めて人口に介入するというか、人口に政策的 に何かを行うかどうかという立場を論ずるところに入るだろうということで、矢印で右 側にきております。  人口を論ずる場合に、2つ要素がありまして、1つはいままでご議論いただいた出生 率向上についての介入すべき、介入すべきでない立場、それぞれございますが、そうい う問題と、一番下に入れました、今日少しご議論いただきましたけども、少子社会対応 として外国人の導入の是非を決めるべきとする立場というもの。少子社会の対応という よりは、人口与件としてやってみて、その次に出てくるものだろうということで、この 右下に整理をさせていただきました。  出生率向上についてのさまざまな立場で、一番上は政策的に関与すべきでないとする 立場。これは負の影響は生じないとすれば、大半ここにくるんだろうと思いますが、負 の影響は避けられないとしても、なお関与すべきでないとする立場ももちろんありえる んだろうと思います。それで考え方の例をいくつか入れてますが、世界人口の増加を考 えると、日本の少子化は望ましいとか、あるいは生む・生まないは個人の問題なので、 少子化社会になってもいいんだとか、あるいは政策の効果が明らかでないのだから、政 策は関与しないほうがいいと。あるいは、出生率や人口は外部変数であって、個人の自 立や社会的公平、公正を目指す施策だけを国家としては講ずるべきであるというよう な、いろいろな考え方があり。  次に、出生率向上を結果として期待して政策を推進する立場。考え方の例として、安 定した人口構造の社会を目指して、個人の自由意思に制約を加えない範囲内で政策を推 進すべきだと。その代表例が、男女共同参画社会をつくることによって、結果として出 生率が向上するということを期待するというようなものがありまして、それ以外にもさ まざまな考え方があるだろうと思います。  一応四角を上のものとわけて区切ってますが、いろいろな考え方は幅がありますの で、もちろんこれは連続的につながっていて、あえてわかりやすく分けているだけのも のでございます。  それから一番下に、出生率向上を直接の目的とする施策も推進する立場。もちろん結 果としてつながるものもやるし、直接の目的とする施策もやるという立場で。この考え 方の例としては、子供を公共財として捉えて、社会として出生を支援するというような ものですが、これも上の四角と必ずしも切れているものではなくて、連続的につながっ ているものだろうと思います。  それから一番下の、外国人の導入の是非をやはり少子社会対応として決めるべきだと する立場で、出生率の上昇に限度があるので、外国人の導入について正面から論ずるべ きであると、こういう考え方も例として入れております。  以上が少子社会を評価して人口、出生率と外国人含めてについて政策的にどうするか という立場を整理した流れでございまして。一方下のほう、左からまた1つの流れをつ くっておりますが。  現在の社会状況として、少子化の背景となる要素、変化してきたものと、変化せずに 根強く残っているもの。変化と不変化と、これもわかりやすく2つに分けておりますけ れども、不変化といってもまったく変化していないわけではなく、変化の仕方が少ない という程度にお取りいただきたいと思います。  前回の議論でも出ておりました、女性の社会進出をまずもっとキチッと位置づけるべ きだということでございまして、変化してきたものとして、女性の高学歴化、男女の賃 金格差の縮小、女性の就業率の上昇というのは女性の社会進出。それから労働力の被用 者化、サラリーマン化の問題。それから都市化。年金制度の充実。あるいは性の自由 化。競争の激化、ストレスの増大。若者文化の隆盛。もちろんこれは価値的にどうこう というのではなく、こういう変化してきたものがあると。  一方で、変化の遅いもの、根強く残っているものとして、性別役割分業観及びそれに 伴う制度・慣行ですとか、滅私奉公型の企業風土。あるいは年功序列型の賃金。ニーズ に対応しきれない保育所制度。少ない婚外子数。それから女性主導の避妊法が確立しな いままで変化せずにきていると。  こういうような社会状況が背景となって、前回ご議論いただきましたような少子化の 原因になっているのではないかと。結婚をめぐる意識、出産育児の障害、個人にとって 子供の持つ意味の変化、前回ご説明したもので省略いたしますが、若干表現ぶりはご意 見を踏まえて調整しておりますけれども。それから前回出ておりましたその他の要因と して、過激な競争によるストレスの増大ですとか、性の自由化に伴ってリビドーが低下 しているのではないかとか、離家年齢が高い、つまり子供に甘い社会というようなこと も要因にあるのではないか。あるいは感性に潤いのない社会というのも要因にあるので はないか。  これらの原因があり、晩婚化・非婚化が進行し、それから夫婦の理想子供数と実際の 子供数の差があるままで、これは横這いしているというような状況がございます。  その次の右の四角でございますけれども、こういう原因について何らかの対策を取っ た場合に効果があるかどうか。<出生率向上策の効果についての評価>を次の右の四角 に入れております。  効果を期待する見方として2つ分けておりまして、出生率向上を結果として期待する 方策、それから直接的な方策と、2つ分けております。 この中にポツで入れておりま すのは、こういう整理がいいのかどうか、まだだいぶ議論のあるところだとは思いま す。  結果として期待する方策としては、性別役割分業観及びそれに伴う制度・慣行を是正 するとか、滅私奉公型企業風土を是正する、年功序列型賃金を平準化する。つまり少子 化の原因分析で背景としてあったものを是正していくというような考え方。それから狭 義の子育て支援策を効果的に推進していく。それから前回いろいろ出ておりました、不 妊の治療・予防の話ですとか、結婚制度の位置づけの見直し。あるいは感性を重視した 潤いのある社会づくり。これらをやることによって、結果として出生率も上がるのでは ないかという方策でございます。  それからその下が、もう少し直接的な出生率向上そのものを目的とした方策として、 出産キャンペーンですとか、多子家庭の優遇策ですとか、出産のご褒美みたいな報奨金 ですとかを一応入れておりますけれども。もちろん多子家庭優遇策は、多子家庭が経済 的に苦しいというようなことを社会的公平の観点から是正するという立場もありますの で、多子家庭優遇策であっても別の意味付けも可能だと思いますが、とりあえずたくさ ん生むことを奨励するという意味で、ここに整理をしてみました。 もちろん、ご議論 のあるところだと思います。  それから、出生率向上策の効果に否定的な見方としましては、諸外国の例等から見 て、施策の効果は明らかではないというような見方。それから、その下のポツからは、 効果を全面的に否定するわけではありませんが、その施策の一部については効果を否定 する見方で。まず結婚に関する施策の効果については疑問が多いと。それから、子育て 支援の効果は、未婚者には限定的で、つまり結婚させるというふうにはならないだろう ということで、これは結婚支援策の効果は否定的で、むしろ理想子供数に現実を近づけ ることに重点を置いて子育て支援を行うことが妥当という考え方になりますし。  それから、親は自らの判断で子供の価値を高めるために費用をかけていると。消費財 の比重が高まったというようなことがあって。とすれば、子育て支援のために、その費 用を補填することによる効果は疑問だと。この考え方は、むしろ機会費用の増大による 影響が多いので、機会費用のほうの施策、つまり直接的な費用補填以外の施策に重点を 置くべきであるというような流れになります。  それから、ややまた違う見方としては、性別役割分業、特に専業主婦というものを支 えているのは、家庭内で主婦が経済力を握れるという日本的慣習であるので、男女共同 参画を通じて出生率向上を期待するというのは、やや効果に疑問があるのではないかと いうような見方も、いただいたご意見の中にございました。  出生率向上策、効果がある、ない。あるいは一部にはないけれども、他のやり方だっ たらあるというような、こういう評価を踏まえて、右のほうのどの立場にいくかという ことになるでしょうし、あるいは右のどの立場に立つかによって、どういう策を取るか というのにも、またここへフィードバックしてくると思いますけれども。そういう意味 で、あまり厳密な矢印とお考えいただくよりも、全体としてだいたいの関係を整理して みたものでございます。 宮澤会長  どうも、大変ありがとうございました。これはいろいろ例示と書いてあるということ で、控えめなご発言でございましたけれども。ご苦労していただきました。ひとつ、ご 意見をいただきたいと思います。各委員がこれまでに出されてまいりました意見、見解 が何らかのかたちでこの中に盛り込まれているか、それからもう一つ全体のフレームと して、これはこれとして1つのスタイルですが、視点として別の四角とすれば、どうい うものをこれにプラスしたらよろしいか。あるいは、この表そのものの表現の仕方にも ご意見があるかと思います。どうそ、ご自由にお願いいたします。  非常に目がチラチラする表で、ご意見をと言われてもあれかもしれませんけれども、 いかがでございましょうか。  一番右側の立場の説明でございますが、これは一番上の、あまり政策的に関与すべき でないとする立場、考え方の例が出ておりますが、要するに結婚とか出産は、これは個 人の選択に属するものであって、これに公的な介入というものは本来あるべきでないと いう立場。先ほどの言葉でいえば、そういうことですね。一番下のが、逆に直接目的の 施策とする立場と。これは先ほど、公共財と書いてございます。真ん中は、両要素があ ると。そのバランスを取れということであろうかと思います。  しかし、こういう判断を下すうえでのフレームとして、少子化の現状、姿、原因分 析、評価と。もう少しこれは、ある意味で列挙的に書かれておりますが、例えば制度的 な要因はどれかとか、経済的な要因はどれか、あるいは社会的な要因はどれか、心理的 な要因はどれかというようなかたちで体系化したり、あるいはウエイトづけの評価の四 角として、何を加えるべきであるか。表をいろいろ見ておりますと、ご意見が出てくる のではないかと思いますが。いかがでございましょうか。  はい、どうぞ。お願いします。 福田委員  あれだけ多様なご意見をこういうかたちにおまとめになった、しかも短い時間の間に まとめていだいたことについては、大変私も感心してこのテーブルを拝見しておりま す。  ただ、いま会長がおっしゃいましたように、どれもいろいろな立場が並記されている ということがございますので、これはこの審議会として最後にどういう方針を出すの か。そこへいくプロセスをどういうふうに絞っていくかという、これから先の作業の予 定との関連でこれをどう生かしていくか、どう収斂させていくか。あるいは収斂させる 必要がないのかということが決まっていくんだろうと思うんです。  そういう点で、一番簡単なやり方は、言えるだけのことをみんな言ったうえで、最後 は会長一任と。これは会長もそうとう困られるとは思うんですけれども、そういうこと も片一方にはありうる。しかし片一方には、これだけ豊富に出されている問題点という ものの中にまとまりをつけながら、何らかの方向を示すということをある程度やらなけ ればならないのか。そのへんのところで、最終的に何が期待されているのかということ をもう少し見えるようにしていただけると、これは取捨選択、あるいは議論の方向を見 いだしていくのに意味があるかと思います。 宮澤会長  どうぞ、他にございませんでしょうか。 大淵委員  いま福田委員がおっしゃったように、非常に多様な意見を非常によくまとめられたも のと感心していますけれども。  この中で、やはりポイントは、少子化の影響というところだろうと思うんですね。正 の影響もあることはあるけれども、これはあまり出なかった。負の影響についての議論 が多かった。負の影響がなければ、つまり問題がなければこんなことを論ずる必要がな いわけで、やはり少子化というものがさまざまなマイナスの影響を今後の日本の経済・ 社会に与えるということが、これだけ多くの議論を呼んでいる原因ですから。やはり基 本的に負の影響があるんだという前提で、さまざまな議論が進んでいくのではなかろう かというふうに思うわけで。  問題がなければ、これは対策の必要もなければ、政策的に関与する必要もないという ことになりますから、やはり問題がどんなところにどういうことがあるかと。これをさ らに明確にするということが、まず第1に重要だろうと思います。 その原因を探っていくことで、その原因を取り除くと。これが対策になり、あるいは 政策として具体化されていくんだろうと思いますので、やはりこの影響のところをさら に詳細に分析してくということが、今後のこの審議会なり、多方面の部署の責任になる んだろうと、こんなふうに思います。 小林委員  <少子化の原因分析>の一番下の、感性の潤いのない社会って、私のご意見をまず取 り入れていただきまして、大変ありがとうございます。  私は、論理の情報をもとに、どんな政策をつくっても、どんなに制度をよくしても、 人間は生き物ですから、生き物としての生活の場ということを考えなければ、私は立ち 直っていかないような気がするんですね。 ですから、まずもちろん日本国土の問題も ありますし、自然を大切にするとか、あるいは住宅ですね。私は公務員の大学教員を長 いことやりましたから公務員宿舎に住んでましたけど、子どもをつくろうなんて意欲が 出てくるような住宅環境ではなかったと思うんですね。ですから日本は、まず住宅を外 国のように豊かにするということも、私は重要だと思いますし。  それから、男の子が家事をともに分かち合うとすれば、それは教育の問題でもある し。それから、ジャーナリズムといいますか、そういうものが社会の情報環境、感性の 豊かな社会環境を整えるというような役割を果たすべく、そういうインフラを整備した うえでの制度だとか、そういうものに手を入れないと、私はいくらやってもハードな情 報をいかせないのではないかなという気がするんですね。  結婚して、これからの人生を生きていこうというような若い夫婦たちが、狭いところ に狭い貧困な住宅環境では、子どもをつくろうという気にも僕はならないのではないか と思うんですね。  ですから、この中に書いてあるものは僕はみんな要因がお互いに絡み合っているもの だと思いますので、この中で絞り込むというよりは、むしろ大局的に大きく広くまとめ たうえで、その中でどれをというのならば、私はそれはそれでいいと思うんですね。  私は、ここに書いていただけなかった意見の1つとして、ノルウェーみたいに児童家 庭省みたいなものをつくってですね、この際思い切って女性向きの社会をつくってしま ったらどうだろうかと思うんですね。  男女平等と言う前に、そのくらい思い切って 徹底的な、各省庁にまたがって何となくお互いに連絡、連絡がないといっては大変申し 訳ないですけど。お互いの連絡をひとつの組織のもとでとって、向こう10年間なり20年 間なり、ピシッと女性を中心として子どもたちが楽しく生きていけるような国をつくっ てしまうということを、この際取り上げていただいたらどうだろうかという気がいたし ます。  シアトルに私の親しい小児科の医者がおりまして、それがシアトルの街の行政官僚の 人と組んで、キッズシティープロジェクト(kid city project)というのをやっている んですね。それは子どものための都市というわけで、都市全体を子どもたちが生きがい を持って生活できるようにしようともう15年か20年ぐらい前にやっているんですね。で すから、そういうような動き方も私は非常に意味があるのではないかなというふうな気 がいたします。  ともかく、社会のインフラの整備をしたうえで、制度だとかその他のハードウェアを 考えていく必要があるのではないかというい気がいたします。 木村専門委員  まず少子社会がなぜ問題かというときは、先ほどありましたように、労働力が逼迫し て、それが経済成長のボトルネックになる可能性が大きいということが、マクロ的に考 えられます。しかし仮にそういった問題がなくても、こういうことは問題にはなるので はないかと思います。  どういうことかと申しますと、理想の子供数と現実の子供数との乖離に関係があるん ですけれども、個々人はこれだけの子どもがほしいのに、状況のために自分で考える適 性な出生ができない。ということは、意思決定が社会的な要因によって歪みがもたらさ れているということで、本当に歪みがもたらされているのかどうかということを私はこ この論点の大きなこととして取り上げていただきたいということがあります。  さっき岡崎先生でしたか、女性まで引っぱり出して働かせるというふうな発言をなさ いましたけど、もしそうだったら強制労働の社会で。私たちはそんなことは全然望んで いないと思います。働きたいという個々人の意思決定に制度が歪みをもたらせている場 合は、これは問題とすべきではないかということで、ミクロ的には論点となっていく。 それがまた、日本全体で見ると、少子社会の中では、必ず是正しなければならないもの であるということになれば、マクロの面でもっと問題になっていくということで。  要点に戻りますと、私は<少子化の原因分析>の中で、個々人の意思決定に現実の制 度が、住宅とかいろいろ出てきましたけど、本当にどの程度問題になっているのかとい うのは、これは感覚的な問題ではなくて、データとしても詰めていくような議論をした ほうがいいというふうに考えるということでございます。 大石委員  いろいろ問題があると思いますが、1つ。できるだけ議論は定量的な議論をやっぱり すべきであって、感じを定性的に羅列するだけでは、これはやっぱりコンビンシングで ないということを私は非常に思います。  それから、いろいろ問題点はありますけれども、1つだけ。私、大変いま拝見してお りまして気にかかったところを申しますと、少子化の影響、フラストレーションという ところの負の影響の、経済・労働が「労働力の減少等による成長率の低下」、これはい ったいどういうことを意味しているのか。成長率が低下することは好ましくないという インプリケーションが、そういう価値判断が最初にあるということを前提していいの か。  それから、実はこの成長率の低下ということで何が意味されているかということは、 はなはだ問題でありまして。これは、例えば仮に5%が4%になり、4%が3%になり 等々ということが好ましくないと考えているのか。先ほどどなたかが、成長率は依然と して正の成長率は維持できるだろうというようにおっしゃったわけですけれど、例えば 私、これは話が少し違いますけれども、21世紀のある時点になりますと、人口も非常に 静止的な人口になるだろうし、経済全体の活動の規模も、非常にステーショナリーステ イト的なものになるということは、これはもう否定し難い歴史的必然ということは言い 過ぎかもしれないけれども、そうだと思うんですね。その場合、そういうことを念頭に おきながら、成長率の低下といっていることで、何を意味しているのか。成長率そのも のを時間の減少関数として捉えて、それはまずいといっているのか、やっぱり例えば ズーッと3%の成長率が続くのと、ズーッと2%の成長率が続くのとでは、あとのほう がまずいといっているのか。これはお書きになった方、あるいはどなたかの発言をバッ クにしてこういうことをお書きになったと思うんですが、そこはどうなんですか。 宮澤会長  お願いします。 椋野企画官  お手元に前回提出資料として、『少子化をめぐる前提認識と主要論点(案)討議資 料』というものをお配りしておりますが、これは論点に関連した有識者の意見なり、あ るいはホームページに寄せられた意見なり、各省幹事の意見を整理したものでございま す。  この経済・労働の影響のところは6ページに、「少子社会としてどのような社会を想 定するか<経済・労働>」ということで有識者意見を、ずっと関連の意見を整理してお りますけれども、その中にこういう経済成長率が、「労働力人口の減少、貯蓄率の低 下、社会保障負担の増大に伴う企業投資の減少などにより経済成長率が低下する」とい うのがございまして、簡単にいまご指摘のあったような表現にしたわけです。 大石委員  ここでこの意見を述べられた方ですね。あるいは、それを整理された事務当局とされ ては、経済成長率の低下というようなことで、何を意味されているわけですか。 椋野企画官  そのときの議事録をあとで確認しますが、記憶しているところでは、あまり厳密な、 おっしゃるように3%持続が2%持続になるのが問題なのか、それとも3、2、1、0 とどんどん下がっていくのが問題なのかというようなところまで厳密にわかるようなか たちでのご発言ではなかったように思いますけれども。後ほどまた議事録にあたって確 認をさせていただこうと思います。 大石委員  僕は経済屋としては、そういうところは非常に重大な問題のような気がするんですけ れども。それで将来の日本社会のあるべき姿というのをどいうように考えているかとい うことが、非常にはっきりわかってくるわけです。  どうも私の感じでいいますと、極端なことを言いますと、ある時期になりますと成長 率0%のステーショナリーステイトというようなものが実現する可能性さえあるし、そ こまでいかなくても、例えば1%、例えば2%というような成長率を、かろうじてとい うことはちょっと言い過ぎかもしれませんけれども続けるというような場合もあれば、 それはむしろ、一番実現の可能性がある社会として好ましい姿ではないかとさえ僕は思 うんですけれども。  そのへんの議論がやっぱり非常に大事なことでね。そういうことを議論しないで、少 子化、少子化というようなことを言ったって、僕はしょうがないような気がするんです けれども。それが私の考えでございます。以上です。 宮澤会長  ありがとうございました。どうぞ、井上委員。 井上委員  いま、大石先生のほうから成長率が大変な問題であるというお話がございましたけれ ども。私は経済成長率が少子化の背景としても何か重大な関連を持っているのではない かという感じを持っております。  一番左の<少子化の背景となる要素>の中に変化というのがございますけれども、こ この中に、戦後の日本の経済成長率の大きな変化、70年代当初までの高度成長、それか らの4%前後の成長、それから90年代に入りましてからの非常な低成長、こういうもの があって、これが何らかのかたちで少子化に結びついているのではないかという感じを 持っているわけですけれども。そういう意味では、ここに例示とございますけれども、 ここでもう一つ足していただいてもいいのではないかという点が第1点。  それからもう一つは、ここの変化の一番下に「若者文化の隆盛」ということがござい まして。これも大切な論点かと思いますけれども、これと関連してもっと広く情報化の 進展と申しましょうか。私は80年代のことはよく知らないんでございますけれども、最 近のテレビなどを見ておりますと、あるいは雑誌等を見ておりますと、情報の伝達、女 性に対する、あるいは青少年に対する情報の伝達というのは非常に多様化してきて、そ して速い。こういった面も少子化の背景として変わった部分ではないのかなという感じ がいたします。その2点でございます。 岡崎専門委員  私は人口の方面からいいますと、いまの将来推計人口だったら日本の人口はゼロにな るんですね。つまり、再生産できない状況で計算してますから。だから、本当をいえ ば、私としては極めて深刻な死に至る病に日本人口はかかっているということを本当は ここへ書くべきだと思うけれど、それをやりますとあまり強すぎるので、それは言わな いことにして、私としてはいつかの時期には人口再生産率が戻るということをやはり期 待したいんですけれどもね。だけど、それをいまここであまり言うと、かえって世論を 混乱させると思います。  そこで、ここに書かれた正の影響、負の影響というのがありますが、正・負というこ とをいわないで、単に影響と書いたほうがいいのではないかという感じがします。さっ き大石先生が言われたように、なぜ成長率が下がっては悪いかというご意見が出たりし ますけれど。影響として成長率は下がってきますよと。影響として云々というふうな書 き方をしておいて、それがいいか悪いかというのは読む人の判断に任せるというほうが いいのではないかなという気がしました。  しかし、僕はいま一番言いたかったのは第1点で、このままでは日本の人口はなくな りますよと。いつかの時点にこれが回復するという保証を国民としては持たなければな らないのではないかと。それでもいいですかという問いでもいいと思いますけれど。 大石委員  僕は成長率が下がることが悪いとは思ってはいないんですが、こういう人口問題の議 論をする場合に、やっぱり経済全体の状況との関わりを念頭に置かないと議論ができな いだろうと。その経済全体ということで、やっぱり一番重要なのは、国民所得の大きさ とか、それの変動率、すなわち成長率とかいうようなものとの引っかかりを考えないで 議論しても、これはまったく的が決められないのではないかというところを僕は言いた いので。それが結局、例えば人口と社会保障の問題とか、いろいろ問題のあれになって くるわけですから。そのところを僕はもうちょっと基本的な論点として押さえる必要が あるだろうということを僕は言いたい。  それから、岡崎さんの議論で、僕はこの間も何かで拝見したんですが。 お書きにな りましたね。やっぱり人口がそういうクリティカルな状況に陥っているとするならば、 岡崎さんのように非常に、よく言えばジェントルマンライクに、悪く言えば美論的な発 言でなくて、もっとやっぱり日本の人口状況は非常に危ないことになっているんだか ら、皆さん、その点をちゃんと認識しろということをやっぱり声を大にして言うのが僕 は人口学者としての、ダメなのは人口学者もありますけれども、やっぱり僕は岡崎さん の責務だろうと思いますけれども、どうでしょうか。 岡崎専門委員  ありがとうございます。よく考えてから、また。 八代委員  手短にさせていただきます。ご議論を拝見してますと、やはり基本認識がかなり違う という点が大事です。いま大石先生がおっしゃったような例に、人口が静止するという のなら何の問題もないわけであります。 しかし、人口が静止するためには出生率が2.1 まで回復しなければいけない。しかし現実は1.4で、しかも下がり続けているという点が 問題である。  それから成長率が別に5%でも、5%から3%に下がったり、3%から2%に下がっ てもいいんじゃないかということなんですが、現状はとてもそんな段階ではなくて、2 025年以降のいう水準になる可能性もある。このへんの試算は経済審議会とか、ある いは、産業審議会でもすでに出ておりますので、そういう資料等もぜひ資料としても参 考にしていただければいいかと思います。  それから、この論点については、これは私もペーパーを出さずに恐縮だったんです が、いままで何回も議論されていた出生率が下がることの最大の要素として就業と育児 の両立が困難になっている。ここでいえば家族の子育ての機会費用が上がってくるとい うことなんですが。それに対する対策としては、先ほど申し上げましたが労働時間の短 縮とか、働き方の弾力化と並んで、保育所の充実ということが非常に重要である。 そ の保育所の充実ということは、単に公立保育所を量的に増やせということではなくて、 公立保育所ではとても対応できないもっとより弾力的な保育ですね。ゼロ歳児の問題、 あるいは夜間保育の問題。そういうものを解決するために、やはり民間の保育産業がも っと育たなければいけない。そのためにどうするか。これはまさに厚生省自体の政策に 関わることです。この最も大きな点が事務局の直接的な方策の中に抜けているというの は、残念なことです。ここはぜひ保育所の量と質の充実ということが、最も効果的であ ると同時に、最も重要な政策ではないかと思っております。 宮澤会長  他にご意見。第一義的には、そういうことでしょうか。 そうしますと、事務局のほうにお願いしたいのは、3つの側面からまとめていただいた らどうだろうかと。1つは、このフローチャートそのものの個々の点についていろいろ ご意義、あるいは質問、修正意見がございました。このフローチャート自身を改善して いただくと。いまの成長率云々のところもそうですが、成長率に換えて、あるいは経済 活動の停滞化というようなぼんやりした言葉にしたほうがいいのか、それともプラスマ イナスを書かないほうがいいとか、いろいろございましょうし、いま出ました就業と育 児の両立、保育所問題、ウエイトづけとか、いろいろありますので、この図の中でひと つ改善をしていただいて、皆さんの意見が盛り込まれれば盛り込む。これが1つ。  それから、2番目は、この図に入りきらないようないろいろな四角。 これがいろい ろご指摘がございました。そういう四角をもう一度キチッと整理していただいて。例え ば社会全体の改革が必要だとすると、どうであるのかとか、あるいは人口減少社会に入 るか入らないかということの認識はどうであるとか、いろいろ枠の外に出るような理 念、定性的な側面、ソフト・ハード両方ございましたけれども。それを整理していただ く。  3番目は、先ほどお話がございましたけれども、できるだけ議論は可能な限り定量的 なかたちでなされることが望ましいと。定量できなところもありましょうけれども、定 量できるところは、なるべく定量的なかたちで資料を整理していただくことが必要では ないか。  だいたいそういう3つの点から、またまた事務局は大変でございますが、整理してい ただければと思いますが。事務局に整理をお願いするにあたっての注文とか四角とか、 他にございましたら、ちょっとご発言を。どうぞ、お願いします。 大石委員  僕は、こういう委員会の性質として、皆さんのご意見を全部まんべんなくすくい上げ て、オーバーオールな議論にしようというのは、非常に八方美人的で、視点が、論点が ぼける生産物になるような気がするので。やっぱりどんどん意見は葛藤して、はっきり したものにされるほうがむしろいいだろうと。その代わり、少数意見で、こういう少数 意見もあったということを、これは名前を出したい方は名前と同時に、あるいは名前を 出さない。こういう少数意見もあったということにしないと、はなはだ八方美人的な、 はなはだ水増し的な、いいことはいい、悪いことは悪いというというような議論だけに なってしまう心配が僕は非常にあるのでね。  これは私の少数意見かもしれませんけれども、あまり皆さんの意見を全部くみ上げ て、どなたの意見も入っているというようなことにしないほうが僕はね。その代わり少 数意見はきちんとアペンデックスに付けるというほうが僕はスッキリしたいいあれにな るのではないかと思いますので。これも1つの意見として申し述べさせていただきたい と思います。 宮澤会長  そうですね。ですから段階的に、まず先ほどのような整理をしていただいて、何らか のかたちでまとめるには、起草委員か何かのかたちでまとめざるをえないと思うんです けども。その場合には、いまのようなウエイトづけとか、それから意見の分布状況とか いうようなことをどう扱うかということが1つ大きな問題になってくると思いますの で。その段階で、またいろいろお知恵を拝借したいと思います。  他に何かございましょうか。はい、どうぞ。 大淵委員  先ほどの少子化の影響のところに関連しまして、1つどうしてもやはり付け加えてお いていただきたいのは、これは主に社会・経済に対する影響ということなんですが、人 口的な影響ですね。これがないということなんですが。  これは先ほどのご説明では、与件だというようなお話でしたけれど。 先ほど岡崎先 生も指摘された、あるいは強調された点ですけれども、いまの低い出生率が長期的に続 いた場合には、日本人がいなくなるほどだと。私の計算では、千年で日本人がほとんど いなくなる。200〜300人ぐらいになってしまうというほどの低出生率だという。そうい うことはもちろん計算上のことですから、ずっとそれが続くということはまずありえな いだろうと思いますけれども、現在の出生率がいかに低いのかということを、あるいは 強調しすぎることになるかもしれませんが、現状としてこうなんだと。そういうポテン シャルを持ったものなんだということは、やはりしっかり書いておくべきではないかな というふうに思います。 宮澤会長  はい、どうぞお願いします。 吉原会長代理  私、大石先生のおっしゃることもよくわかるんですけど、ただ、この人口問題といい ますか、少子化の問題というのは、私は定量的な議論だけではおそらくすまない‥‥で きない問題ではないかという気もするんですね。 大石委員  そんなこと言っているんじゃなくて、定量的にできるところで定量的な議論をしない のは、例えば学者としてはやっぱり恥ずかしいことだろうと。定性的な議論しかできな いところもたくさんあることは、そんなことはわかってます。 吉原会長代理  いえいえ、ですから、経済とか人口とかは数といいますか、定量的なあれですけど、 原因とか対策になりますと、なかなかそれだけではすまない面があるので、そのへんは よく考えたうえでの結論を出さないと、全部を定量的というのは、私はちょっと無理だ と。いや、もうこれ以上私は申しませんけど。 大石委員  全部定量的なんてことは言っていることは全然ないんで。私も多少知性の持ち主でご ざいますから、定性的な議論しかできないものがあるというようなことぐらいは私もわ かっております。 宮澤会長  この問題は、結局いつもそうでございますが、最終的には非常に意見が華やかに割れ ることが多いわけで。それだけ問題のつかみ方が、まだ我々として共通認識の部分が非 常に少ない。少ないままの問題なのか、それともその土俵がどこまで広げられるのかと いうことかと思います。  今日はもう時間がまいりましたので、事務局にはこれまでの議論を踏まえまして、い ろいろな意味でのデータの整理、資料作成をお願いしまして。夏休みに入りますが、夏 休み明けに精力的に中間とりまとめに向けて議論を始めたいと思います。  そこで委員の皆様も必要と思われるデータがございましたら、事務局のほうにお申し 出いただいて、ぜひこういうものは揃えてほしいということをどうぞご注文をお願いし たいと思います。ぜひ事務局のほうにご連絡くださいますように。  本日はどうも、ご多用のところをご出席ありがとうございました。これで閉会させて いただきます。ありがとうございました。 問い合わせ先 厚生省大臣官房政策課    担 当 山内(内2250)、齋藤(内2931)    電 話(代)03−3503−1711     (直)03−3595−2159