97/07/14 年金審議会全員懇談会議事録 年金審議会全員懇談会議事録 日 時 : 平成9年7月14日(月) 午後2時00分〜4時10分 場 所 : 厚生省特別第1会議室 議事日程 1.開会の辞 2.委員出席状況報告 3.幹部挨拶 4.議 事 ・次期財政再計算に向けての検討について 5. 閉会の辞 〔出席委員〕   京 極 会 長 八  木 委 員  砂子田 委 員  岡 崎 委 員  木 原 委 員 国 広 委 員  久保田 委 員  神 代 委 員  古 山 委 員 坂 巻 委 員  福 岡 委 員  桝 本 委 員  山 田 委 員 山 根 委 員  若 杉 委 員  渡 邊 委 員  船 後 委 員 ○会長 それでは、本日の議事に入りたいと存じます。 前回の審議に引き続きまして、次期財政再計算に向けての検討をいたしますが、そ の中で制度改正に関わる基本的事項について議論をお願いしたいと存じます。前回の 皆様方からの御要望に基づきまして、事務局の方で資料を用意いたしておりますので、 御説明をお願いします。 ○事務局 まず、資料1をご覧いただきたいと思います。この資料でございますが、 前回の審議に際しまして御要請のありましたものを中心にまとめたものでございます ページによって急ぎ説明してまいりたいと思いますが、1ページ、2ページ、3ペ ージ、これは公的年金の民営化について、前回は概括的な資料でお出ししたのでござ いますけれども、どこの団体がどういうポイントについてどのような主張をしている のか、もう少し明確にということで、各団体ごとに分けて説明をさせていただいてお ります。 それから4ページの、民営化の一つのきっかけをつくったと言われておりますが、 世銀の報告書について、社会保障関係の国際団体にも反論等いろいろな議論がありま すが、それを紹介するということで、手近に大蔵省の財政金融研究所が、つい先日で すけれども、「高齢社会における生活設計」という報告書を出しまして、その中に関 連の抜粋がございましたので、それを使わせていただいておりますが、最初の2ペー ジで、いわゆる世銀の年金民営化案を整理いたしておりまして、特に5ページに図が ございますけれども、いわゆる世銀のいうイメージが一番はっきり出ておりますのが この図でございます。1階部分でミーンズ・テストの伴う強制的な公的年金制度、そ れから2階部分に、これは強制ではありますけれども、管理は民営で行うということ で、企業年金または個人貯蓄に基づく2階部分。それから、3階に任意の個人貯蓄ま たは企業年金、こういう制度設計を提示いたしております。これについての考え方に つきましては、6ページの下に四角く囲っておりますけれども、これに対するILO 等の論調を簡単に要約しましたものがこの四角の中ですけれども、(1)から(2)、(3)、 (4)ということで、「二重の負担」の問題でありますとか、あるいは積立方式の不確実 性について等、幾つかの疑問点が提示されておる資料でございます。 それから、7ページにまいりますが、これは前回、民営化の影響、あるいは積立方 式に切り替えた場合にどうなるかということで、 350兆円ほどの過去債務があるとい う資料をお出ししたところでありますけれども、そういった過去債務が生じる理由と して、それぞれ世代間でどういったバランスになっているか、それが分からないと、 例えば 350兆円と言われても全体のイメージがわかないということでございまして、 そこを世代ごとに分かりやすく分けて図解してみたものがこの図でございます。 これについて突っ込んで御説明をさせていただきたいと思いますが、各世代を約20 歳ずつぐらいに切りまして、年金制度におけるどういう格差が各世代ごとにあるかと いうことを概括的に整理をしてみました。上から三つ目のコラムでありますが、「現 役世代50歳」と書いておりますが、これはちょうど団塊の世代の一番人数の多いとこ ろ、現在の現役世代の中核的な世代でございますけれども、ここを中心に御説明して みますと、この世代は、右側の年金制度から 6,200万円、これは生涯受け取ることが 想定されている給付額でございます。その下に 1,500万円、 1,500万円と書いてあり ますが、これが保険料負担でございまして、上の方が本人が負担する部分、下の 1,500 万円が企業負担部分ということで、合計 3,000万円でございます。特に右の括弧に 1,300万円と小さく書いておりますが、これは今の税制上、社会保険料控除で本人負担 分については若干の配慮がなされておりますので、それを差し引くと実際の負担額と しては 1,300万円程度ということであります。概略で申しますと、この世代は 6,200 万円の年金給付に対して、企業負担も合わせれば3,000円の負担をしているという世 代でございます。 その一つ上を見ますと70歳の世代がある訳でありますが、この世代は、数字で見ま すと、6,100万円の給付に対して、本人、事業主合わせて 800万円の負担ということ で、下の世代と比べればバランスが違う。しかし、ここについて批判がある訳であり ますけれども、実際に年金制度は扶養というものを公的に仕組み直したものだという ふうに考えますと、私的扶養がどうであったかということについてもちょっと考えて みまして、その70歳世代の一世代上の世代は本格的に年金制度がまだ適用されていな かった世代でありますから、恐らく70代の方々は、平均であればかなりの私的扶養い わば仕送りであるとか、同居であるとか、そういった形で、年金の負担額は 800万円 であるかもしれませんが、私的扶養のところでかなり負担があったのではないかとい うことが想像出来る訳でございます。そういうことで、これは単に年金の受給、負担 だけでは全体を読み切ることが出来ないという一つの例でございます。 今度は下にまいりまして、30歳のところと50歳のところを比べますと、30歳のと ころの給付が 5,800万円ということで若干下がっておりますが、これは支給開始年齢 が65歳になったことの影響による若干の減額がある訳であります。この50歳は62歳 で支給開始でありますけれども、30歳の世代は65歳でありますから、その分の影響 が受給額には若干出ておりますが、一方、負担をご覧いただきますと、30歳世代は合 計で 5,200万円の負担ということで、50歳世代から比べれば、かなり大きな負担にな っております。例えば、この2世代を比較いたしますと、私的扶養という面で見れば、 いわゆる50歳の団塊の世代は、その親の世代がかなり年金受給世代に入っております から、私的扶養は比較的小さい。その小さいことにおいては30歳世代は50歳世代と ほとんど変わらない。しかし、保険料負担のところがかなり違うということで、この あたりがこれからの世代間の年金におけるバランスを見るときに重要な視点の一つで はなかろうか。  そして、一番最後の方までまいりますと、−10歳 まだ生まれていない世代であ りますが、現役世代、社会人になった時に一番高い保険料を適用される世代であると すれば、非常に大きな負担ということになってまいります。こういったことから、世 代間負担の議論があるというふうにみております。 ただ、一方で、扶養の問題を単に私的扶養あるいは年金だけで論じるのは不十分で あ りまして、養育とか遺産という形で、今度は親の世代から子に逆に流れていく流れ がございます。これは右の下向きに矢印してあります。この大きさについては統計的 にはっ きりしたものがございませんので何とも言えない訳でありますけれども、恐ら く子ども の数が多ければ多いほど、1人当たりの相続等は小さかろうということが憶 測される訳 でありますけれども、そこのところは矢印の太さは同じということで書か せていただい ております。こういった図によりまして、各世代における年金の世界で の収支バランス というものを説明いたしております。 次にまいりますが、8ページがそれぞれの世帯類型に応じた収支、9 ページは収入 の 分布、10ページは貯蓄の状況ということでございまして、やはり共働き世帯が経 済的に は非常に安定しているということが描かれております。 それから11ページでございますが、これは健康状態の自己評価を年齢別に見たもの でございます。高齢者世帯でも、かなり健康のレベルは意識的にも維持されていると いうことが分かる訳であります。 次にまいりまして、12ページでございます。世帯類型別に見た生活意識別世帯数の 構 成割合ということで、現在の暮らし向きをそれぞれの世帯においてどのように自己 認識 しておられるかということを示したものでございます。それぞれ高齢者世帯、そ の他の 世帯ということでありますけれども、「普通」、あるいは「やや苦しい」、 「大変苦しい」がこういったバランスで、その他世帯と高齢者世帯でそれほど大きな開 きはないよ うにみてとれるところでございます。 それから最後になりますが、13ページ、諸外国の基礎年金制度につきましては、こ れは前回出した資料の若干の修正でございますけれども、※を付けました(注1)の ところの説明が原典の紹介において十分でなかったので若干書き直しをしているとこ ろでありますけれども、これは基礎年金制度をとっておる国におきまして、※の国と いうのは、いわゆるUniversal Pension ということで、普遍的に年金が支給されてお る訳でありますけれども、徴収のやり方としては、これは事業主負担も求めて、社会 保険の方式をもって徴収をして、居住の要件に応じて分配している、こういう形をと った国でありまして、ちょっと説明を補ったところでございます。中身においては、 本体の表は変わっておりません。以上でございます。 ○会長 ありがとうございました。それでは、ただいま御説明をいただきました事柄 また、前回の審議会の会合で時間などの関係から余り御意見をいただけませんでした 事柄、公的年金の機能と基本的仕組み、それから次期制度改正の基本的方向、そうい った事柄につきまして、皆様方から御自由に御意見をいただきたいと存じます。どな たからでも御自由に御発言をお願いします。 ○A委員 前回の資料でございますと、22ページに積立方式と賦課方式の比較という 表がございますが、それを見てちょっと感じたことですけれども、年金の財政方式と いうと、積立方式と賦課方式しかないように皆さんとっておられるのではないかとい う気がするのですけれども、積立方式と賦課方式というのを非常に対立する概念とし て取り上げて、そして二つ並べて、どちらがいい、どちらが悪いというような議論が されているような気がするのですけれども、私は、これは決してそうではないのでは なかろうかと。例えば積立方式をとってみましても、考え方はいろいろ違う訳でござ いまして、特に公的年金の場合の積み立てと私的年金の場合の積み立てと両方比較し て非常に違う部分がある。 現在の厚生年金保険につきましては、いわゆる段階保険料というのを取っている訳 でございまして、私は、これは決して賦課方式と積立方式の折衷案というふうに考え ない方がいいのではないかというふうに思っております。 昔、厚生省の方といろいろ研究させていただいたときにもそんなことを書いたよう な 気がするのですけれども、段階方式というのは、世代間の負担を出来るだけスムー ズに行えるようにというふうに考えたものということで、半ば積み立てるという考え 方ではなくて、出来るだけスムーズに保険料を上げていくことが出来る方式というふ うに考えるべきではないかというふうに思っております。 それで、いろいろ資料などを拝見しておりまして、今、御説明のありました資料を 見ましても、現役世代と既に年金をもらっている世代、それから現役世代といっても 50歳の世代と、さらにそれより若い世代と、保険料に非常に差があるということがあ る訳です。この両方の負担差を、少なくとも保険料に限って負担差を出来るだけ解消 するような方向ということになりますと、段階の傾斜を、手前に高くて、そして緩や かに上がるようにするということ以外ない訳でございます。この結果、積立金が増加 して将来の給付への備えになっていく訳でございますけれども、どちらかというと、 段階保険料というのは積立金をつくるのが目的というよりも、保険料をスムーズに変 えていく、スムーズに上げていくということからとられている方式というふうに考え るべきじゃないか、 そのように思っております。 ○会長 ほかにどなたか……。 ○B委員 先ほどの資料は私が要求させていただいたもので、ありがとうございまし た。この7ページの資料の説明に追加で質問させていただきたいのですけれども、− 10歳のとき、保険料負担は、事業主と本人を合わせまして 7,200万円ということであ りますけれども、左側に「以降の世代も同水準」とありますが、大ざっぱに言うと、 シミュレーションではどの程度までこれが続くのでしょうか。以後ずうっとこれでい くということでしょうか。あるいは、30年ぐらい過ぎたら、またあるバランスのとこ ろに……。どうなるんでしょうか。 ○事務局 この計算の前提ですが、右の方の(注1)にございますが、平成6年の財 政再計算に基づき、最終的な保険料は29.8%というふうに書いてございますが、今の 6年の財形再計算の結果ですと、平成37年度以降、保険料率は29.8%でずっと推移す るということになっておりますので、−10歳といいますか、平成16年に生まれた以 降、保険料率はずっと29.8%という前提でございますので、30年先といいますか、50 年先まで制度が変わらない限り、こういった額になるということでございます。 ○B委員 ずうっとですか。 ○事務局 はい。 ○B委員 後でよく考えてみます。 ○C委員 7ページのことでちょっと伺いたいのですが、いつも世代間の公平という ときに、負担ばかり言って、養育・遺産という部分が余りカウントされていなかった ので、その部分がここに入っているのは大変うれしく思うのですが、これを数量化す ることは全く不可能なんでしょうか。例えば養育ですと、平均的な養育費と子どもの 数みたいなものを掛けていくとか、あるいは遺産の場合でしたら、税の中の相続税の 部分がどのぐらいの比率で変わってくるかというような、そういった形で少し数理化 していただくと非常にありがたいと思うのですが、その点はいかがでございましょう か。 ○事務局 私どもも実は出来ればそれを試みたかった訳でありますけれども、幾つか の研究の中では、例えば養育とか今の相続の状況を見て、現状を分析された研究は若 干はあるのですけれども、では、世代に切って20年ごとにどうなるかというところま ではなかなか見通せませんで、子ども数の増減で割り返すぐらいしか今のところ出来 ないということで限界はございますが、現状をある程度研究したものはございます。 ○D委員 同じく7ページの資料について、ちょっと感想めいたことを申し上げたい と思います。まず、こういうものをつくっていただいた事務局の御努力には感謝した いと思います。 まさに、この全体像、つまり公的負担のほかの私的扶養の負担がどのぐらいかかっ て いるかという問題と、先行世代から後の世代に対して、いわば伝承といいますか、 移譲されるものということと併せて年金の問題を考えるべきだというのは、全くその とおり だと思うんです。そこで、感想ですが、まず私的扶養のところで、先ほど事務 局の御説明では、今の50歳を中心にする現役世代から、現在の70歳を中心にする年 金受給世代に対する私的扶養というのは、ここは年金制度がかなり充実してきたので 相当小さくなっているのではないかというお話でございましたが、ここについては、 民間産業の場合 に、実は現在の受給者の中には大変短い年金加入期間の人がかなりい る訳です。例の中 高年特例が適用されている人たちが相当数おられます。これは、特 に産業構造の変動が 非常に大きくて、かなり後まで農業をやっていて、農業から民間 企業へ勤めるように生 活が変わっていった人たちがかなり多い訳で、その点では個人 差は非常にあるし、制度 的には確かに御指摘のとおりですが、その制度によって十分 な老齢年金を受けられるだ けの加入期間を持っている層と、そうでない層との開きが ここについては非常に大きい ということは是非とも注目をしておいていただきたい というのが感想の一つです。 それから、先ほどからの話題でございます養育・遺産に関してですが、ここでは実 は実感として一番負担が大きいのは現在の団塊の世代を中心にしたところではないか というふうに思います。生活資産として、いわゆるキャピタルゲインが出てくるとい うような意味の資産ではなくて、生活のユーティリティーとしての資産の中で飛び抜 けて大きいのは住宅です。この住宅を自分で手当てするといった場合に、現在の年金 受給世代の人たちの多くは第1次石油危機以前に手当てをしている人が多い訳です。 現在の団塊の世代を中心にしたところは圧倒的にその後でございまして、狂乱的とい うふうに一時期言われましたが、ここで土地・住宅の価格上昇がありますし、そして 同時にインフレが70年代中期以後、鎮静してまいりました結果、インフレ期待といっ たものを含んでいた住宅ローンもこれまた非常に負担が大きくなって、それを反映し て、例えばそれまで専業主婦だった人がパートへ出るというふうな傾向が一斉に広が りますし、 それから「ローン地獄」といったような言葉もその時期に出現している訳 です。 ですから、ここのところの相続される物件の評価というよりも、その物件を手当て す るために当該世代が引き受けた負担の大きさということから言えば、下に向かう矢 印の 中で住宅を中心にして考えれば、現在の50歳を中心にした世代が負ってきた負 担というのは非常に大きい。住宅ローンというと、かつては返済期間20年というのが 常識でございましたが、以後、30年になり、35年になり、人によっては80歳近くま で返済するようなローンを組んでいるのが現状でございます。そのあたりは非常に難 しい問題が大きいと思います。 それからもう一つ、養育・遺産で、親の世代が子どもに対して負っている負担の中 で、住宅と並んで非常に大きいのは御案内のとおり教育費であります。この教育費負 担とい うのは、子どもの頭数だけで同じように考えることが出来ないぐらい、過去30 年ぐらいで膨張しておりました。それは、例えば60年代の後半に高校進学率が急激に 上がり、70年を前後する時期から大学への進学率がこれまた急激に上がる。その結果 として、大学を卒業したということによる労働市場での価値というのは相対的には下 落をし、いわゆるダブルスクールといったような現象で、大学へ行きながら同時にコ ンピュータ学校へ行ったり、英会話学校へ行ったり、そういった費用まで含めて負担 させられている。そんなものまで負担するのが親の行動として合理的かどうかは別で すが、しかし、そういう意味でのコストは非常に膨張している。こういう点は十分に 御勘案をいただく必要があるのではないか。その意味で、C委員が御指摘になったこ この点での数量化というのは、非常に努力する価値がある問題だとは思いますが、定 性的なレベルで相当幅広の検討を要するテーマではないだろうか、そんなふうに考え ております。 A委員から御指摘があった点については、またちょっとテーマが別かもしれません ので、別に御意見を申し上げさせていただきます。 ○A委員 今の7ページのところでちょっと質問させていただきたいんですが、そも そもこれは年金給付ですから老齢年金の給付ですね。生涯に 5,800万円受け取る。そ れで、保険料の方は 7,200万円である。そうすると、年金が約8割になっているので すが 、老齢年金に要する費用が保険料の大体8割ということですね。そういうふうに 見てよろしいんでしょうか。 ○事務局 これは、老齢年金のみならず、障害年金とか遺族年金も含めた額を平成6 年度価格に直して表示したものです。段階的に保険料を引き上げていることによりま して、保険料の水準は 3,600万円プラス 3,600万円で 7,200万円ということで、老齢 年金、障害年金、遺族年金を含めた受け取る給付に対して、保険料拠出がどのぐらい の水準にあるのかということを示したものでございます。 ○A委員 ですから、老齢年金はトータルの約8割というふうに考えてよろしい訳で すね。 ○事務局 5,800万円が老齢年金、遺族年金、障害年金を含めたものでありますので 老齢年金のウエートは8割ぐらいですので、 5,800万円のうちの8割ぐらいが老齢年 金であるということでございます。 ○D委員 将来の年金給付額がこうやって算出されていますが、前回改正でスライド がネットスライドに変わっておりますね。これは、それを前提にした推計ですね。 ○事務局 そうでございます。 ○D委員 ということは、将来の税社会保険料負担の割合というものがどうなってい くかということを、これは仮定を置いて推計された訳ですね。 ○事務局 6年の再計算におきましては、税とか、ほかの医療とか、そういったものの 負担が将来どのぐらい増えているかということは分かりませんので、年金の保険料が 上がるということを前提にしてネットスライドの試算をしております。ただ、医療と か税金がある程度上がっていくという前提に立ってネットスライドの試算をした場合 も、 年金保険料だけの引き上げでやった場合も、そんなに大きくは違わないというふ うに考えております。 ○D委員 例えば医療についての負担が秋から引き上がることは、われわれとしては 極めて不本意でありますが、既に決まってしまっておりますし、税に関しても、今後 高くなることはあっても安くなることはないような雰囲気で、全体としてそういうも のの負担が増加していくということについては、傾向的に言えば、うれしいかどうか はともかくとして、やむを得ないことについての大体の了解があるところだと思うの ですが、それが、年金以外のものをカウントしようがしまいが、つまり年金以外のも のをコンスタントに置いておられるということだと思いますが、余り差がないという のはよく分からないんですけれども……。 ○事務局 税とか医療保険の保険料が上がることが見込まれておりますが、では、ど れだけ税が上がっていくのか、また、医療保険がどれだけ上がっていくのかというこ とがなかなか見通せないこともありまして、年金の計算上はそういったものが増えて いかないという前提でやっておりますが、増えていった場合と余り違わないと申し上 げましたけれども、ある意味では計算の前提の置き方が難しいということで、現在は 年金の保険料だけで将来推計をさせていただいているということでございます。 ○D委員 将来については、給付水準を現行は維持出来ないとか、下げろという議論 がいろいろなところでなされている訳で、それはそれなりの理由も分かる訳ですが、 少なくとも当審議会で議論をしようとする場合には、現在、制度上、2013年までのと ころは制度として決定されている訳ですから、下げるということを議論するのであれ ば、どの水準からどの水準へ下げるのか、その「どの水準から」というのをきちんと 確定しないで水準を変更するという議論はそもそも出来るはずがないと私は考えます その場合の「どの水準」ということをどういうふうに推計するのかというのは、今日 の議論ではないかもしれないけれども、これはまず議論の出発点ですから、事務局の 皆さんは大変御苦労ですが、将来どのぐらい伸びるか分からないから伸び率ゼロにし ておくという乱暴な仮定ではなくて、合理的な仮定を置いた将来水準の推計をまず出 発点としてやっていただくことが必要ではないか。この点、特に要望しておきたいと 思います。 ○E委員 いつかの段階には、今、約束したほどの   今の人がもらっているのは いいんですけど、遠い将来の人については、ある程度給付水準を下げることを考えな いと、若い世代の負担がものすごく大きくなるということを私、人口の観点でいつも 言うんですが、これを何とか救いたいという気持ちがあるので、高齢者に給付する給 付水準をある程度下げてもいいのではないかという感じがします。しかし、それは今 すぐではなくて、かなり遠い将来……。ということは、ここに世代間のいろいろな収 支の状況がありますが、この中で高齢者というのは子どもの教育負担等は持っていな い訳です。だから、高齢者に出す給付水準というのは、子どもの養育負担とか、そう いうものを差し引いたその時点のネットの現役の生活水準と合う程度であればいいの であって、余り高いものは必要でない。そうしないと、若い世代の負担がひどく大き くなるんです。私、それは今申し上げておきたいと思うんです。 ○会長 報酬比例と申しますか、御自分の収入に比例して掛け金を払う社会保険とい う方法と、収入のある人が収入のない人の面倒をみる社会保障とか、生活保障に近い 考え方まで、この問題はまたがっています。それを整理しながら、議論を進めていっ てはいかがでしょうか。始まったばかりですから、余り枠に入れてしまわないで、い ろいろ考えていただいたら、よろしいのではないかと思います。 ○F委員 今日の資料の1ページのところで代表的な意見を整理していただいて大変 参考になるんですが、前回の全員懇談会の後で、経済企画庁の八代教授たちがやった 作 業が記事として出ておりまして、非常に面白いと思ったので、もとの資料ももらっ て見 てみたんです。大胆と言えば大胆ですが、かなり核心をついた一つの改革案を提 示され ているので、この場でもいずれきちんと検討されるべき一つの案ではないかと いうふう に思うんですが、前回、私が申し上げた大問題のところで、せっかく大きな 改正をやるのですから、出発点の議論をなるべくきちんと整理しておいた方がいい。 私は、国民負担率の問題で50%以下にしなければいけないということそのものに反対 して言っている訳ではないんです。ただ、国民負担率が50%を超えるかどうかという のはある意味で結果の話だと思いますけれども、その辺の考え方の整理が、せっかく 審議会で議論したのに、そういう大事な論点でこの程度の議論しかしなかったのかと 言われると、われわれも非常に困りますので、どういう問題があって、ここはこうい うふうに考えたんだという問題整理を是非きちんとしてほしいという意味で申し上げ たつもりだったんです。 そういうことで、私は国民負担率が50%を超すような事態になったら、経済的にど う いうことが起こるのかということの論理的な整理を、今までいろいろな議論を専門 家で なさっておられますから、少ししっかりと出してみたらいいんじゃないかという ことで、 私なりに考えますと、例えば八代教授たちのおやりになった、これは97年 の5月に出たものですけれども、ディスカッションペーパーの75というのに出ている ものですが、こちらの方の議論ですと、肝心のところがボカしてあるんです。つまり 社会保険の負担料と税率を両方合わせて、仮に限界税率が高くなるというふうに考え ますと、例えば投資乗数や何かにマイナスの効果が出てくるとか、あるいは税・社会 保険の負担が増えることによって労働供給量が減って、その結果、ただでさえ労働力 人口が減ってくる中で、さらに労働供給が減って経済成長がマイナスになる。そうい うようなマイナスの効果が片一方で確かにある訳ですね。 ところが、社会保障の場合はトランスファーが増える訳ですから、トランスファー が 増えることによって需要が増える面もある訳です。そこが一番気になっていて私は ちょ っと質問したのですけれども、八代さんたちの研究を見ると、増税で政府から個 人への移転支出を賄う場合と同じように、需要を拡大させる効果が大きくあらわれて しまう点に留意が必要だというので、そこのところを除いてある訳です。 トランスフ ァーが増えて、有効需要が増えて、経済成長にプラスになる効果があることは分かっ ていながら、そちらの方はわざと退けて計算しているんです。悪く言うと、マイナス の計算だけ出している、そういうやり方もしている訳です。これは、厳密な計算をし ろといってもなかなか難しい話ではありますけれども、論理的に言って両方の効果が あることははっきりしているので、専門家の研究でも、その点については、ここまで は明らかになっているけれども、ここから先は、さっきの7ページで整理していただ いたように、明白に世代間で年金の給付と保険料の負担の不均衡が拡大するような状 況になれば、これは将来的にいいことはないことはかなりはっきりしているので、細 かい経済学的な論証を待つまでもなく、これは政策的な判断として割り切る必要があ る問題かなという気も私はします。 それから、社会保障制度の、特に年金制度の危機の非常に大きな原因の一つは、や はり少子化の傾向が予想以上に進んできたことで、わずか5年の間にすっかり狂った というぐらいの大きな変化が起こっている。これは、八代さんたちのもう直出る提言 の経済分析の151号に出ておりますけれども、女性の労働力率が増えてきて就労女性 が増えてきて、その結果、育児や家事のコストが非常に高くなってきて、それをコン ペンセートするだけの託児所とか、あるいは税制上の優遇措置とかこれは税制上のこ とは余り書いていないと思いますが……。つまり、ベッカーの家庭内生産の理論など で指摘されている少子化の原因というのは、理論的にはかなりはっきりしている訳で す。それを克服するような社会的な手当てを、ほかの国に比べて、日本は人口問題を タブー視して放置してきた。そのツケが全部回ってきているという面がかなりある。 それだけかどうかは分かりませんが、そういう要素が非常に強い。 ですから、5年ごとに根っこから全部変わってしまうようなことはみっともない訳 で すね。将来の制度の安定のためにもよくないですから、その辺を長期的な政策とし てき ちんと手当てをするべきではないかという趣旨なので、この前、ちょっとフラン スのこ とを申しましたが、フランスの税制は所得税が非常に少なくて、地方税が多く て、日本とそのまま比較出来ませんけれども、こと育児に関しては日本よりはるかに 税制上の優遇措置をとっておりますね。ですから、その辺もきちんと比較をしていた だいた方がよくないかという趣旨です。ちょっと繰り返しになりますけれども……。 ○B委員 先ほどの7ページのところで若干御質問させていただきたいのですけれど も、確認ですが、7ページの世代間のモデルは平成6年の財政再計算結果に基づいて い るということですから、最近言われている少子化の問題はまだここに入っていない ということですか。 ○事務局 これは平成6年の再計算でございますので、注にありますように、最終保 険料が29.8%という前提で計算しておりますが、この前、新しい人口推計に基づいて 計算しますと34.3%という保険料になりますので、そういったベースでやりました場 合には、保険料がもう少し高くなるということでございます。 ○B委員 ということは、−10歳の世代が 4,000万円を超えるレベルぐらいになると いうことでしょうか。 ○事務局 4,000万円を超えるというふうに見込まれます。 ○B委員 先ほどの給付水準の問題ですけれども、現在決まっていることは決まって いることとしまして、給付と負担のバランスがとれているとしますと、平成6年は諸々 の前提条件の中で29.8%の負担は事業主も個人もやむを得ないといいますか、こうい う考えだと思いますが、その後に前提条件が変わっている中で、この29.8%を超えざ るを得ないような状況のときに、負担というのは幾ら増えてもいいのかどうか。負担 の水準というのはどちらが先にあるのか。その辺のところを−10歳の人に聞いてみる と何ということになるのか。事業主に聞いてみると、やはり 4,000万円を超えるのは 企業としては堪えられないということになるのですけれども、−10歳の人に聞いてみ るとどういうことになるのかということです。ですから、2013年までは先ほど言われ ましたけれども、それから先のところについてはどういうふうに考えているのかとい うことは非常に大事じゃないかという気がします。 ○C委員 基本的なことでお伺いするのが恥ずかしいのですが、よく掛け金の方が多 くて給付が少ないと言われます。これで見ますと、確かに10歳から逆転している訳です が、事業主負担を本人の給料とみるのか、それとも法律によって企業が出しているの で、これは本人の所得から出しているのではないというふうに考えるのかでちょっと 違ってくると思うのですけれども、外国と同様に事業主負担も本人の給料の一部とみ て、本来、本人のふところに入るというふうにみるのか。そこのところは厚生省なり 年金審議会はどういうふうに考えているのか。個人のふところから入るなら個人の負 担ですから、−10歳でも7,200万円の負担で年金が 5,800万円入る訳ですね。その辺 の企業主負担をどういうふうに位置づけているのか伺いたいと思います。 ○会長 G委員、今のお話はいかがでしょうか。 ○G委員 これは、まさに役所の方がどう判断しているかということを御質問になっ たので……。 ○事務局 2段に分けて書いておりますのも、そのあたりは二つの考え方があります ので、合わせて 3,000万円と書かないで、例えば50歳のところは 1,500万円、 1,500 万 円と書いた所以でございます。実際に保険料を幾ら払ってというふうに比較されま すと、上の1列だけ見て、最終の−10歳でも 3,600万円払ったものは返ってくるとい う説明が成り立ちますが、経済学とか、そちらの専門家に伺いますと、それは世代間 で比較しますときには、企業の負担も実は給与の一部であるということで考えて、合 算して比べないと世代間の比較が非常にしにくくなる。ボヤける訳でありますから。 そういう意味で、そちらの資料を使う先生方が非常に多いということで、資料の目的 によっていろいろな使われ方をしておるように思います。 ○C委員 そこのところで、経済学では、企業が出すのも本来は給料だというふうに みるんだろうけれども、実際、企業の方は法律になければ負担をしないだろうと思う ので、そのあたりは私はちょっと納得出来ないんです。やはり個人の給料から出てい る部分と企業の部分というのは分けて考えて、個人の負担が給付をオーバーするとい う議論になるのではないかと思うのですけれども、D委員はその辺をどういうふうに お考えになっていますか。 ○D委員 突然の御指名でございますが、労働組合は、昔、「7・3闘争」というス ローガンを掲げたことがあります。つまり、社会保険料について、日本の場合は労使 負担が5割・5割というのが一応の準則ですが、これについて使用者側の負担を7割 労働側の負担を3割にすることが出来ないかということで、例えば民間の健康保険組 合などでは一時期それが実現して、現在もそれが維持されているところが幾つかある 訳です。 これは、視点のとり方の問題だろうというふうに思います。ミクロなレベルで、わ れわれが給料袋から明細書を見たときに幾ら引かれているかという場合には、保険料 負担 というのは、自分の給料から差し引かれた分だけが自分が負担した保険料だとい うふう に考えます。ただ、労使の負担割合の変更ということを要求する場合の思想と いうのは、社会保険料総体が労使で負担されるいわば別個なものであって、それの負 担比率を変え ろという考え方になる訳です。これは、ミクロレベルで言うと合理的な 要求なのかもし れませんが、恐らくマクロ経済学者に言わせれば、それはどういうふ うに変更されよう とも、例えば労働分配率ということを考えた場合には、これは全く ニュートラルなこと だということになりましょう。マクロバランスの中で社会保険料 として徴収されたものが給付され、給付が消費に回るという意味での経済循環の中で、 その負担割合が変わるということは、実際の消費支出主体が変わるだけであって、つ まり年金で言えば、現役世代の可処分所得は増えるけれども、マクロの消費支出は変 わらないといったレベルの問題であって、通常のマクロ経済学の私どもが読んでおり ますような初等的な教科書では、それはニュートラルだという議論がされる訳です。 それから、恐らく企業の皆さんにとっては、これは人を雇うに当たっての法定の労 務 費ということで意識される訳で、税金ではありませんが、人件費はコストの一部と いうふうに意識される訳です。ただ、労働者の場合には、給与生活に入ったときにそ れを支払う義務がある。これは強制的に徴収されるのと同じように、企業側にとって は人を雇うことに伴う義務として課せられてくる。そこのところで、マクロ経済バラ ンスの中での社会保障の持っている位置を考えれば、それはある意味ではニュートラ ルだと考えてしまった方がいいのかなというふうに思います。企業側の負担まで、賃 金の一部だという考え方を労働組合として従来とったことはないはずであります。 ○会長 今の件についてはよろしいですか。 ○G委員 余りきちんとした話ではないので、そういうつもりでお聞きいただきたい のですけれども、前回の年金改定のときに、たまたまNHKスペシャルが、現役の世 代と、今、年金を受け取っている世代では、ずいぶんプラス・マイナスがあるんだと いうことをやりました。そのときのNHKのとらえ方は、私に言わせると、ことさら にと言ってもいいかもしれないですが、本人の負担分だけ取り上げて、現役の人は非 常に低いと。ところが、一方でフィフティ・フィフティで企業負担分が入っている訳 ですから、そのフィフティ・フ0ィフティの企業負担分を除いたところで受け取りと 負担を比べていましたので、非常にいびつな数字が出て、今から年金を負担する人は 非常に損だということがことさらに誇張されたような感じを私は当時受けた記憶があ ります。 したがって、年金についてのフィフティ・フィフティという考え方は大体定着して い るというふうに見ていいのではないかと思います。ただ、さっき御指摘があった八 代さんが提起しているような2階建てをなくすという議論になってきた場合に、その ときの考え方は、ものの考え方がかなり変わってくる訳で、そういう意味ではもう一 回この問題の議論をしなければならないことになるかもしれないとは思います。そう いうことで、今の断面では、いわばフィフティ・フィフティが一つの前提だという考 え方は、今のところは定着しているとみていいのではないか。 ○事務局 いろいろ御議論いただいておりますけれども、特に民営化の問題というの は、実は今回、議論になった中では一番本質的、根本的な話じゃないかと思います。 したがいまして、民営化につきまして、前回、御指摘がございまして、資料もいろい ろ準備した訳ですけれども、民営化問題についてどう思っていらっしゃるのか。もち ろん、ここで最終結論を出す必要はない訳ですけれども、今後の議論に非常に大きな 影響を与える入口のところの議論でございますので、是非、民営化についてのお考え をお聞かせいただけたらと思います。 ○D委員 民営化という場合に、今も2階部分が主として議論になっていると思いま すが、先ほどの国際比較といいますか、国際問題で資料の御紹介があった例の世銀方 式の2階のように、法的に強制されるものなのか、それとも任意で行われるものなの かによって、これは性質が全く違ってくる問題だと思います。任意加入の民営化であ れば、当事者の自由選択の問題ですから、公的な年金制度の問題として当審議会で口 角泡を飛ばして、いいの悪いのと議論する問題ではないのではないでしょうか。議論 する意味があるとすれば、これをいわば強制加入の民間保険という提起をした場合に、 ここでの非常に重要なテーマになるのだと思います。 しかし、今まで出されてきております民営化の各種提言というのは、必ずしもそこ の ところが明確でない。あるいは、むしろ任意加入ということを前提にした議論の方 が圧 倒的に多いようでございますので、まずその点の整理をしておく必要があるよう に思い ます。唯一、強制加入に近い形で  私はそう理解しているのですが、提起さ れているのは基金連合会の御提言かと思いますが、これまた 100%の適用は無理とい う前提のようであります。基金が適年を吸収した基金を拡大させても、なおかつカバ ー出来ない小零細企業については個人年金制度でやればよろしいということのようで すので、これまた極めて不完全なものだろうと思います。 ○G委員 今の問題は十分議論を尽くさなければならないテーマだと思っていますけ れども、最近、話がいろいろ混乱してきていますのは、一つは3階建ての話と2階建 ての話が一緒になってくるような議論がわりかし多いんです。それが一つ。 それからもう一つは、公的年金と私的年金という概念ですけれども、公的年金につ い ては、少なくとも1階建てのところは公的年金だということについては何の争いも ない 訳ですが、私的年金といった場合に、私的年金の概念に全くプライベート年金と 今日では適格年金、あるいは年金基金と言われる分野、そこが私的年金なのか公的年 金なの かというところがよく分からないような議論が結構多い訳です。 したがって、純粋に私的な問題と純粋に公的な問題、それから、もし中間にあると すればそれは何なのかということ。ただし、それにどういう性格づけをするのかとい うの はかなり議論しておかないと、さっきの議論じゃないけれども、国民負担率の議 論はそ れはそれとして出来たかもしれないけれども、今度は最大の問題である企業競 争力の絡 みで、全部それが企業にシフトしただけでは何の意味もない訳でありまして そういう ところがどうも整理されないまま、いろいろな議論が飛び交っている。 例えば 401Kというような議論も出てきています。私は、これも非常に重要な議論 だ と思っているのですが、どうもあいまいなまま位置づけられるとちょっと困るなと いう気がします。その辺はまだ早いのかもしれませんが、少し概念整理には入ってい かなけ ればいけない必要性があるのではないかというふうに思います。 ただ、その前に、先ほど来、いろいろな方からパラパラという感じですけれども、 これは一つ一つ非常に重要なんですが、例えば高齢の方といっても、以前と違って高 齢者 がイコール弱者ではない。例えば、持家も持っておられるし、貯蓄もたくさん持 っておられる高齢者の方もおられる。また、支えている方も、逆に言うと、これもま た一律でない。親父の家さえ当てにしておけば大丈夫だ。だから、おれは家を建てな いよ。したがって、極端に言えば、年金も掛けなくても何とかなる。こういう居直っ ているというか、ぜいたくというか、そういう人もいるし、本当に自分の家から自分 の子どもの教育から、一切合財心配しなければいけない勤労者もいる。ただ、国の制 度ですから、しかも、その中には親の世代の自己努力、現役世代の自己努力というも のがたくさんかんで いる訳ですから、それを一々いいの悪いの言うこと自体おかしい じゃないかという議論 もありまして、その辺で国の関与すべき範囲というものは、私 は極力少ない方がいいと 思っているのですが、最低限、公平な論理が確立出来るよう な議論だけはしておかなけ ればいけないなという気が実はする訳です。そういうのは いかにも今までの一律的な ものの考え方からするとパラパラしたような話ですが、そ のパラパラした話が実際に起 こっている訳ですから、それはそれとして認めながら、 しかし、その中には単に羨ましがるという話じゃなくて、相当な努力も入っている訳 だし、そういう意味では、かつ公的な出番というのはなるべく少ないにこしたことは ない訳ですが、しかし、一方で人間 の幸せという問題をどう考えるかという大きな視 点がありますので、その辺を含めた議 論はきちんとしておかなければいけないだろう と。非常に取りとめのない話ですけれど も、最初の段階ですから、言っておきたいな という気がいたしまして申し上げておきます。 ○H委員 今、民営化という話が出ているのですが、その前に、それに至る手前のと ころの議論に参加したいと思います。今日お配りいただいたペーパーの社会経済状況 の変化というところとも関係する訳ですが、私も先般、別の場所でシンポジウムが開 かれたときに駆り出されてちょっとお話をしたのですけれども、今、日本人全体があ る種の自信喪失というか、縮み指向というか、そういうものにとっぷり入り込んでし まっているのではないかと現場にいる人間として感じているんです。今、日本は産み の苦しみみたいなところに立ち至っているというようにマクロ的には考えたらいいの ではないか。少なくとも経済成長がマイナスになっている訳ではないので、1%なり 2%の成長は大体維持できている訳ですから、そこはしっかり押さえておくべきでは ないか。 そして、一方で技術革新も進んでいて、世界のどこの国にも負けない技術を持って い るのですから、必ず日本はある時間軸をもって再生をすると私は思っている訳です どうもそこのところに見通しが立たない苛つきのようなものが、すべて閉塞状態のも のの発想の原点になっているような気がする訳です。もう一度原点をしっかり押さえ て、いろいろな意味で年金改革問題を考えていくべきではないかというふうに思って います。したがって、先ほどからお話が出ています2階部分の民営化の話とか、2階 と3階の話に結びつけて考えるべきではないのではないかというように私は個人的に 思っております。 そしてもう一つは、先ほどから年金保険料の話がございましたけれども、賃上げも 時間短縮も政策制度要求も三つとも要求を並べています。極端に言ったら、1%ない し2%成長でそんなことが出来るような状況に本当にあるのかというのが、われわれ 労働界の立場で、いま申し上げた原点を押さえた運動をするべきであると、私は個人 的には考えています。 そういうことを考えていきますと、今年のベースアップの実態と厚生年金保険料を 対比して考えますと、高齢の人、中高年齢層の人たちはどうしても抑制傾向のベース アップになっています。厚生年金保険料にはね返るような状況の人はそれ以外の人で あって、 いわゆる実質の可処分所得ということになりますと、大変しんどい思いをし ている世代がたくさんいらっしゃる。そういう実態がある訳です。 したがって、もう少しそのあたりのことも含めて、国民一人ひとりというか、大衆 次元の問題をおさえそれに視点を当てていくべきです。一体民意がどこにあるのかと いうのは、このような問題を考えるときに大変大事にすべきだと私は思っている訳で す。先ほどから出ています2階建て部分の話も含めまして、本当に改革を抜本的にや らなければ今回の改革問題が解決出来ないのかどうなのかと思っています。日本の社 会保障をとりまく大衆の意識というのは、まだまだそこまで浮上しているというよう に私は思っていません。先般、私の組織のところでスウェーデン、ドイツに社会保障 の目的でミッションを出して、現地で研修をしてきた人たちに言わせれば、きちんと バックアップをしてくれるのであれば、われわれの負担が上がることについては納得 出来るんですよということを現地の人から言われて大変感銘を受けたというふうに申 していました。 今、日本人はそこまで意識が上がっているかどうかということを考えています。私 流に言わせていただきますと、前段申し上げましたようなことも含めて考える時、現 状の制度をどんでん返しにして抜本的に変えなければいけないほどの危機的な状況に 今ないのではないかというふうに思っています。改革すべき方向性というのは今から 議論になるとして、考えていくべき改革の方向性や具体的な中身は抜本的なものでな く別個のところ(現状の見直し)にあるのではないかというふうに思っています。以 上です。 ○I委員 今のH委員に基本的に賛成ですけれども、先ほどからの世代間の負担の不 公平ということですが、本当に不公平なのかどうかというのを、個人個人の生活の中 で考えたときに、今の年金受給世代から、今話題になっている団塊の世代というか、 現役世代の間で、日本人のライフスタイルに大きい変化があったと思うんです。しか も、 今の50代前後の世代というのは、私、正確なことは分からないんですが、3〜 4人の兄弟がいるような世代だと思うんです。3人から5人とか、それが珍しくない 世代だと思うんです。その後、急に少子化が起きて、現役世代と呼ばれている50歳前 後の世代の人が生んだ子どもが急に少なくなっていると思うのです。それが全部の人 口を構造変化させて、そして、それ以降はそんなに変化なく子どもの数は少子化でせ いぜい2〜3人というような形で移行していると思うんです。 そうしますと、例えば個人として幾ら負担したから幾らもらうかという話ではなく て 、近い将来及び将来の現役世代という人は、ひとりっ子同士で結婚するようなケー スが非 常に多くなって、上に親を4人、その上にといって8人面倒をみなければいけ ない高齢 者を抱えるというような生活をすると思うんです。それを、もし年金という ようなシス テムなしに全部やると、本当に大変な負担になると思うんです。そういう ことは、その前の今の年金受給世代にはなかったことですし、今の現役世代という50 代の世代もなかったことなんです。そういうふうにすごくドラスティックに家族のあ り方とか世代間のいろいろな扶養のあり方が変わっている中で年金を考えなければな らないにもかかわ らず、そういうことへの意識というのは、働いている方にもまだ全 然ないというふうに 思うんです。それをやらないで、制度だけ変えてもどうなんだろ うかというふうに思い ます。やはり真剣に、特に今の50代の方たちが、自分の親が 暮らしていた生活と子どもや孫が生活するあり方がすごく違うんだということを自分 の問題として考えるような 広報も必要ですし、年金だけではなくて、全般に考えなけ ればいけないことだと思うん です。だから、年金だけいじってもだめじゃないかとい うふうに思って、それだからこそ負担もしなければいけないというふうに考えるので すけれども……。 ○D委員 現在出されている企業年金法というものの考え方については、私どもは余り 包括的な議論をしていませんが、あれは少なくともかなりの部分の年金を民営化し、 しかも、その民営化された年金が今の適年や厚年基金のような確定給付ではなくて、 確定拠出型になるということを前提としたときの受給権確保という枠組みで議論され ていて、その場合に念頭に置かれているのは、アメリカのエリサ法のようであります が、実際に構想されている問題は非常に違う。そこのところについて、極めてあいま いなまま雰囲気だけが先行しているという議論だろうと思います。私どもの方では、 受給権を確保するための制度が今の企業年金制度には不十分だということは従前から 主張しておりますが、そういう意味でかなりすれ違っているなという印象を否めませ ん。 それから、3階という議論がよくされます。特に公務員の年金について、職域年金 に当たるものが必要だと。これは、民間の側では企業年金があるから、それに対応し たものだという説明がされますが、現在あります適年や厚年基金というのは、これを 年金と 呼ぶこと自体が混乱を招くだろうと思うんです。あれは退職金であります。退 職金を一 時金払いから分割払いにする選択を導入したということであって、退職金が 全く別にあ って、公的年金の1階と2階に加えて何か3階といったものがあるかのよ うな印象を誘 う議論というのは非常に誤解を招きやすい。まず、そこのところははっ きりさせておくべきではないか。 それから企業年金につきましては、現在、厚生年金基金と適格年金を合わせても、 適用対象労働者は半分しかおりません。半分の労働者にとって、そういう企業年金制 度というのはない訳です。つまり年金化するほどの額のファンドを持った退職金が現 実には存在していないということであります。したがって、3階という議論をここの 審議会でやるのは極めて不適切だというふうに思います。 ただ、私的か公的かというところについて言えば、これは是非ともきちんと整理す べきことで、その中間に存在するものがあるという言及がG委員からありましたけれ ども、 今、中間にあるものは基金のいわゆる代行制度というグレーゾーンだろうと思 います。このグレーゾーンというものは概念上、整理をしておくことが是非とも必要 ではないか。これは、3年間のプログラムで去年から始まりました企業年金の議論、 厚生年金基金の議論の中でまた発言をさせていただきたいと思いますが、われわれの 基本的なスタンスは以上のとおりでございます。 ○J委員 今のD委員の意見と多少ダブるところがありますが、大企業の退職金制度 の実態というものを御参考までに御披露したいと思います。一般に、大企業の退職金 制度は、定年退職の場合に 2,000万円とか 3,000万円という退職金を一時金で支給す るというのが原則であります。これが、適格年金の採用で、退職金の一部を本人の希 望によって年金で受け取ることが出来るということでありまして、基本は一時金で、 年金は例外だというのが実態です。 例えば当社の場合は、適年の制度はありますけれども、ほとんどの従業員は全額一 時 金で受け取っておりまして、わずか数%の人が退職金の3分の1とか、4分の1と か、 その程度のものを年金で受け取っているというのが実態であります。ほとんどの 企業が企業年金という別個のものを制度として持っており、それに報酬比例部分を転 換するといいますか、そういうふうなことをもしかして考えておられる向きがあると すれば、実態は到底そういうものではない。あくまでも全額一時金支給の退職金が基 本であって、企業年金という名前で各会社で年金制度が普及しているものではないと いうことを御参 考までに申し上げたいと思います。 ○F委員 個々の例を挙げるといろいろな例が出てくると思うのですが、たしか厚生 年金基金で一時金をもらっているのは半分ぐらいで、年金をもらっているのも半分ぐ らいいるんじゃないですか。統計の話はいいですけれども、現状がどうなっているか というのは確かに一つの論点ですが、民営化の議論をするときに、是非ここで議論を した方がいいと思うのは、やはり将来的に公的年金をどうするかということとの絡み で出てきている訳ですね。ですから、経企庁でやったような考え方ですと、将来的に は賃金スライドを廃止せざるを得ない。世代間の負担の不平等の問題を考えたり、経 済成長へのマイナスの影響を考えたりすると、物価スライドは残すけれども、賃金ス ライドは廃止せざるを得ない。そういう前提が非常に強い訳ですね。もしそういうこ とで議論するということになれば、賃金スライドが仮に将来的に廃止されたり、ある いは削減されたり、そういう前提で考えた場合には、所得の高い人は当然、自前で企 業年金なり私的年金なりで2階建て、3階建てのいわゆる民営化の方向で補充を図ら ざるを得ない訳ですよね。ですから、 401Kみたいなものでもいいし、あるいは日本 にはそのほかに労働省のやっ ている財形年金とか中退金とか、特退金とか年金と言え るかどうかは問題ですけれども、そういうものもある訳で、全体として老後所得の確 保の手段が既にいろいろある訳ですから、そういうもの全体を含めて、公的年金の賃 金スライド部分をどうするのかということとの関係でそこのところを選択せざるを得 なくなってくる面が非常に大きい。 ただ、議論がすぐそこへいってしまうのか、あるいは、そこまでは到底いけないの か。その辺の交通整理がよくできていないので、民営化のことを本当に議論するのだ ったら、そこの出発点の選択肢のところをまず議論しないと非常にやりにくいのでは ないか。厚生省が出しておられる 「二重の負担」の問題というのは片一方で非常に重 要な問題としてありますけれども、 やはり賃金スライドがなくなったら、否応なしに 私的年金を何かの格好で企業年金なり個人年金で強化せざるを得ないということにな るんじゃないですか。違っているのだったら、どうぞ御批判をいただければと思いま す。 ○ D委員 グロスでやるのか、ネットでやるのかは別にしまして、賃金スライド自体 は 企業年金だと本質的には無理なんです。つまり積み立て型をとる限り、原理的に スライドというのは困難です。もちろん支給計画を最初は低めにしておいて、後で高 めにするということはありますけれども、これは別にスライドではないですね。  私は、世代間の公平ということを給付の側から言うのであれば、可処分所得ベース で、つまり手取りのベースで現役と高齢者の水準がなるべく同一に保たれるというこ とではないかというふうに思います。賃金スライドを廃止するという考え方は、経企 庁の報告書がはっきり言っているように、そのときの経済成長の成果を退職者には配 分しないという考え方ですね。これはこれで一つの考え方かもしれません。そこは選 択の問題だと思いますが、もう一つ、賃金スライドという場合に、これは物価スライ ドもそうですが、積み立て型の場合に本質的に無理なのは、最初から、つまり積み立 てている過程からは利回り以上のプラスαは出てこない訳です。問題なのは、給付開 始時点までのところについてもしないのか、それとも、給付開始時点から以降につい てスライドをしないのか、ここは本質的に違うはずです。今の我が国の年金制度は、 5年ごとの再評価というものを通じて支給開始時点の水準というものが現役の賃金上 昇を反映するようになっていますね。それが、出発点が確認された後からそれを取り 止めるということは一つの選択としてあり得るかもしれませんが、いわゆる積み立て 型というのは、積み立て過程からして既に積み立てられたものの再評価というのはな い訳であって、例えば30年前を振り返ってみたときに、30年前の1万円というのは、 恐らく現在の5万円ぐらいになっているのでありましょう。それにもかかわらず、30 年前に1万円積み立てたものは1万円としてしか評価出来ないというのが積立方式と いうことになると思いますから、もちろん、そのところで運用利回りというのは別に ついてくるにしても、一般的に言えば、例えばこの30年ぐらいに経験してきた我が国 のようなインフレというのが、これから先、40年も50年も全くないなどということ は、いかなる経済学者も保証してくれるはずがないときに、積み立て型というやり方 をそもそもとれるのかどうか。これは、民営化かどうかという前に、まずそこが一番 基本的な問題なのだという気がしております。 現に、厚生年金基金連合会がおつくりになった案では、そのスライド部分がどうな るのかについては、具体的なことは言及されていない訳です。現在の厚生年金の本体 がかなりスケールが大きくて、基金というのはその中の一部であるというシステムの 中では、基金自体はスライド機能を持たず、スライド部分は本体から持ち込むという 形で結果として保障されることになっていますが、全体が基金になってしまったとき に、持ってくるべきところはほかにない訳で、これをどうするのかということについ て、あいまいなままにされているのは議論として大変不徹底だなというふうに私ども は感想として持っておりますけれども、そういう意味で、スライドシステムというの が一体将来の年金について必要ないのかどうかですが、われわれは必要があると思い ます。そして、世代間の公平ということであれば、ネットで見たときの現役と受給者 の支給水準はなるべく安定的であるべきだと思いますし、その限りで経済成長の成果 配分というのは、退職者についても当然のことながら行われるべきでしょう。 いわゆる現役の水準と、退職者が受給する年金とのネットで見たときの比率という と ころの代替率というのはどのぐらいのものであるのか。これを議論することが今後 の水 準議論の一番基本的なことではないだろうか。もしここで物価スライドだけとい うこと にいたしますと、現役の手取り賃金に対して、退職者の手取り年金は先へいく ほどどん どん小さくなる訳ですね。これは果して公的年金制度として容認出来るのか どうか。私 どもは反対でございます。 ○K委員 今のD委員の御意見に関連して、厚生年金の民営化の問題で、基本的に公 的年金をどこまで考えるかというので、沿革的に見たときに、かつては定額部分、報 酬比例部分を合わせて一体として公的年金というふうに考えていた訳です。それから 基金制度が出来ましたけれども、いずれにしても、公的年金であるという性格であっ たのは間違いない訳です。ただ、最近のように、基金制度、あるいは運用関係、物価 が非常に安定しているというような状況の中で、スライドの問題が余り考えられなく なってきたので、民営化の問題が議論されてきたので、やはり公的年金と物価スライ ドの問題、それから賃金スライドの問題は別として、公的年金とスライドの問題とい うのは離されない問題ではないか。したがって、スライドをどこまで考えるかという 点で、公私の年金制度を考えるべきじゃないか。私的年金だったら、スライドはまず 考えられないと思いますから、その辺が一つのこれからの仕分けだと思います。 それから、今までの年金制度の歴史は、5年ごとに見直しをやっていますし、今回 も少子化の問題が出てまいりましたけれども、将来の人口構成、人口推計を見た上で 5年 ごとにやっている訳です。しかも、今まで歴史を振り返ってみますと、大体10 年ごとに大きな改正をやっているんです。前回の改正も、高齢化と21世紀に日本の年 金制度が耐えられるかどうかということを頭に置いて行われた訳です。確かに前回の 改正より若干見通しが厳しくなりましたけれども、しかし、これは前回の改正時点で も、人口推計はどこをとるかということで、一つの考え方として中位推計をとったと いうだけであって、厳しい推計をとることは選択肢としてはあり得たことだと思いま す。そういう面で、見直すというのも大事ですけれども、今までの歴史を踏まえた上 で見直しを考えるというのがこれからの議論として大事ではないかということを1点 申し上げたいと思います。 それからもう1点、先ほどの7ページの表で、年金制度における世代間の年金給付 額 と保険料負担の関係の資料です。先ほど会長もおっしゃったように、年金制度だけ で物事を考えるのではなしに、社会全体として、これだけ国民経済も成長しておりま すし、 それから前世代はいろいろな面で社会的に苦労している訳です。その成果とい うのが国民経済の面でも、それから国民生活の豊かさという面にもあらわれている訳 ですね。ですから、それを何らかの形で計量的には非常に難しいと思いますが、評価 する必要があるのではないか。そうでなければ、年金制度だけで将来の若い世代は大 変だ、大変だと言うことになる。年金制度だけで物事を判断するということじゃなし に、社会全体のトータル、それから社会資本でどれだけ後世代が潤っているかという 面も必要だと思います。もっと限定して、例えば年金の積立金も、過去何年間の積立 金があり最近は出口論でいろいろ議論されておりますけれども、これが財投やいろい ろな形で社会資本の形成に役立っているという面も何らかの資料があれば非常にあり がたい。この点だけ申し上げておきます。以上です。 ○B委員 民営化の問題ですけれども、何のために民営化という議論がされているか。 経団連、経済同友会と産業界のレポートを私も一部読んでいたのですけれども、公的 負 担をこれ以上増やさないという考え方が一つあります。2番目は世代間の不公平。 3番 目は、運用効率を上げていくという観点で、3点あったように思いますが、第1 番の公的負担をこれ以上を増やさないということからしますと、一体だれが負担する のか。あ るいは給付水準を下げるのか。こういう問題がはっきりしないと、この問題 は議論出来 ないと思います。 それから、2番目の世代間の不公平というのは、いろいろな支障が出てくる訳です が、それをどう考えるか。これが一番大きな問題だと思います。 3番の運用効率の問題は、1番、2番の問題が議論されてから後でないと、運用効 率は民営化した方が効率がいい、利率がいいというようなことについては、最初の基 本的 な問題を議論してからじゃないかというふうに思います。 一番の問題は世代間の不公平でしょうけれども、この問題は給付と負担をどういう 形で バランスしていくかということで、先ほど7ページの資料にもありますように、 平成6年の財政再計算でも、長い時間をかけて将来の世代に負担をかけながら、この 問題を処理するというのが今の年金の体系で、そうじゃないとすれば、どこかの形で 確定給付から確定拠出、それから賦課方式から積立方式、そういう形に変え得る方法 がない限り、民営化というのは議論しても議論にならないんじゃないか。 そうしますと、この前出ました 350兆円という、これから発生するであろう過去の 債 務をどのように償却するかという具体的な方法がもしあれば可能だろうと思いま すが、 それが不可能であれば、議論しても民営化は非常に難しいというふうに考えま す。 ○事務局  基本的な仕組みの関係で、民営化の御議論を大分聞かせていただきました け れども、もう一つ、基本的な仕組みで、前回も資料を出させていただきましたけれ ども、税方式と社会保険方式の関係、特に今、社会保険方式を一応とっている訳です けれども、いろいろな御批判もあるようでございますが、そのあたりをどのように考 えていいのか、御意見をいただければ大変ありがたいのですが……。 ○D委員 それは、1階部分のお話だというイメージでよろしいんでしょうか。 ○事務局 はい。 ○G委員 今のは1階建てに関してという話でしたが、1階建てに関してだけ社会保 険か税かという問いかけが私にはちょっと理解出来ないんですけれども……。 ○事務局 別に限定という意味ではなくて、今の年金制度全体が社会保険という仕掛 け をもとにしている。ただ、議論として、例えば今の民営化の議論にしても、あるい は具体的な強制加入の仕掛けの中での問題とか、そういう意味で1階部分について税 方式な のか保険料方式なのかというところで問題がよく指摘をされているという意 味での問題 認識ということだと思います。ですから、全体で御理解いただければと思 います。 ○G委員 そもそも年金を社会保険と考えるのか、税と考えるのかという問いかけに 近い問いかけのような気がするんです。というのは、1階部分というのは定額ですか ら、本来、社会保険なのかという議論はもちろんありますよね。社会保険じゃなくて も、税で適用すればいいじゃないかと。ただ、その税というのは、日本は諸外国と違 って、税そのものの中身に関して議論が非常に希薄なものですから大問題なんですが もし仮に、1階建ては定額だから税だというふうに言われるのだったら、負担も当然 のことながら 間接税で負担するということならば非常に明快な訳ですね。諸外国の場 合は、そういう ことで非常に明快な話になってくる訳ですが、社会保険である以上、 例えば今の2階建 てがある意味では典型的かもしれませんが、いわゆる自分の負担そ のものは標準報酬に 従って負担する。もちろん、受け取るときには、それがかなり再 配分機能を受けて多少縮められますが、しかし、一応それが形としては多少残る形でい っている訳ですね。したがって、それは、そもそも負担した人がもらう権利を持つとい うことが非常に明確で あることと、それから確かに税に似た再配分機能を一部持つこと は事実だけれども、一 応リンクした形が保たれるということで、社会保険の社会保険 たる所以というものがあ るだろうと思うんです。 ○D委員 今、事務局からお出しになったテーマについては、恐らく今の基礎年金制 度というものをどう考えるかということが問題意識としては非常に強くおありになっ て のことだろうと思います。従来、税方式が1階に関して提言されてくる場合には、 特に第1号被保険者の未加入とか未納とか、こういう問題が今や無視出来ないまでに 広がっ ている。いわゆる空洞化という議論がある。この空洞化に対してどうするのか と。実践的にはそこが関心なんだろうと思います。私どもの方から言えば、現在の基 礎年金制度というのは、かつての縦割りになっていた被用者以外の人たちの年金とし てあった旧国民年金が財政的に破綻してきた。それをいわば救済するという機能がそ こに込められていたはずでありまして、確かに元農民のお父さんの息子がサラリーマ ンをやっているケースはたくさんありますから、別にそのことを一概に否定すること は出来ないのですが、しかし、現在のような空洞化状況がそのまま進行して、被用者 年金の財源から自営業者の年金財源へのシフトがどんどん拡大するということが放置 されていいのかという問題意識は私どもも持っているところであります。 ですから、その点では、厚生省としては、むしろ現行の基礎年金制度というものを 全体としてこれからどのようにしていくお考えなのかということを、ある時点できち んと 整理をして出していただきたいと思います。その場合の一番大きな焦点は、国民 皆保険という、それこそ空洞化している概念をどこかで部分的には放棄されるのか、 それとも、あくまでそれを貫徹しようとされるのか、その点だろうと思います。国民 皆年金ということをあくまでも貫徹しようということであれば、その一つの手法とし て、現在の保険料徴収制度ではうまくいかないから、これを税方式に変えようという のが一つの考え方だろうと思います。 他方で、保険方式ということで制度を一貫させようということであれば、それは特 に 1号被保険者に関しては、部分的には選択性を導入してしまう。その意味では、ド イツでも、フランスでも、必ずしも完璧な国民皆保険制度にはなっていない訳であっ て、それはそれで一つの選択だろうと思います。何かそこのところで、国民皆保険と いうのは金科玉条、侵してはならぬ聖なる観念であるというふうにばかり考えなくて もいいのかもしれません。ここは現実的な年金制度上の選択なのではないでしょうか。 それからもう一つは、税の問題を考える場合に、これは現在の日本の税金の制度自 体 が持っている非常に大きな矛盾が繰り返し指摘されている訳であります。例えば高 額所得高齢者に関する年金の支給制限の問題について、本来は、現在の「クロヨン (9・6 ・4)」とか「トウゴウサン(10・5・3)」と呼ばれている税の不公平を なくし、そして総合課税方式にすることによって解決するのが本道であるというふうに 私は意見を述べたと思います。しかし、年金制度上、税制の方の不合理を年金制度で部 分的に糊塗しようということがやむを得ぬ選択として2年後の制度改正の中で議論さ れるなら、それを改めて、そういうふうに提出をされるべきだろうというふうに思い ます。その両面からの問題の整理がまずされて、ここのテーブルに出していただきた い、このように思います。 ○L委員 私も、税方式か社会保険方式かという問いかけについての問題の整理の仕 方は、D委員がおっしゃったような方向で大体いいんじゃないかと思います。当面は やはり基礎年金の財源構成をどうするんだということだろうと思う訳でありまして、 税方式か社会保険方式かというような問い方をしますと、G委員がおっしゃいました ように、問題が拡散していく訳でございます。ですから、今日のペーパーの一番後ろ の13ページにありますように、確かにコントリビューションといいますか、拠出に基 づいて給付を決めるという方式をとっているところは、その拠出をタックスと言おう が、コントリビューションと言おうが、何と言おうが、これはすべて社会保険方式だ と。ですから、ここにアメリカが載っておりませんけれども、恐らくアメリカがつく った表ですから、自分の国は載せていないんだろうと思うのですが、アメリカはSocial Security Tax と言っておりますけれども、これはそう言っているだけでありまして、 私は、明らかにアメリカは社会保険方式だと考えております。ですから、基礎年金の 財源を一体どう考えていくのかということを一つのテーマにして問題を整理していっ た方がいいのではないか。そして、税方式という場合に、それはまさに一般税であり まして、目的税じゃない訳ですね。ですから、それが直接税であるのか、間接税であ るのか、それは議論する必要は当審議会では差し当たりはないと考えております。 ○C委員 とにかく15歳以下の子どもの数より65歳以上が増えたという状況の中で、 いわゆる従来の社会保険の考え方というのはもう成り立たないと私は個人的に思って い るんです。まさに介護保険もそうですけれども、社会保険と呼ぶのがおかしいんで 半分は税金が注ぎ込まれている訳ですから、まさに日本的な長寿社会に対応する一つ の新 しいシステムというふうにむしろ考えるべきで、税と社会保険というふうに二つ に分け た考え方はとれないのではないかというふうに思っている訳です。すでに基礎 年金にも 3分の1の国庫負担が入っている訳です。税金が入っている訳ですから、む しろ税とか 社会保険方式かというような考え方を捨てて、やはり21世紀に通用する 新しい財政をどうするかというふうに考えた方がいいんじゃないかというふうに個人 的に思っているんです。私、個人的には基礎年金の部分は税金でというふうに思って いますけれども、実際それが可能かどうかは別問題としまして、介護保険の場合は5 割が税金でありますから、それを保険と呼ぶのがおかしいというふうに思っておりま す。そういう意味で、税か社会保険かという聞き方はちょっと問題があるんじゃない かという気がいたします。 以上です。 ○D委員 もう余り時間がないと思いますが、二つ要望をしておきたいと思います。 一つは、やや先走った議論になるかもしれませんが、例の高額高齢者の給付制限に 関わる問題であります。これは、仄聞するところによりますと、一定以上の高額所得 が認められる高齢者の人に対して、基礎年金の中の公費負担部分に相当する部分をカ ットする、こういった形で議論されているというふうに漏れ聞いておりますが、これ は、あくまでも政府の財政の側からつまみ食い的に議論される考え方であって、年金 制度がいかにあるべきかというアプローチでは全くないと思います。在職老齢年金と いうのは、大変高い水準で支給カットをしている訳ですね。しかも、それが65歳に至 るまでと。ですから、その意味で言えば、保険の契約違反という議論を適用しようと すれば、現在の在職老齢年金そのものについて大いに言われるべきことだと思います。 ここは、高齢者の就業と年金との兼ね合いを含めて、ぜひもう一度、今回の改正議論 の中で全面的に再検討するテーマにしていただきたい。その中で、高額高齢者につい ての給付制限の問題を、単に公費負担部分というふうなつまみ食い的な議論ではなく て、年金制度のあり方という中できちんと議論出来るようにしていただきたいという ふうに思います。これが第1点です。 それから、今日の議論の最初のところでA委員からお話がありました積立方式か賦 課方式かというものを対立的に考えるのはおかしいのではないかという御論議でござ い まして、そこで積立金を積み上げていくことの意義について御説明がございました こ れは、従来から事務局からも何回か説明をされてきた点を、もう少し御専門の立場 から 詳しく御説明いただいたものだというふうに思っておりますが、そもそも一体ど のぐら いの積立金が積立金として必要なのかという問題について、一定の考え方が整 理される べきだというふうに思います。 それから、その前に、現在、年金の財政統計のところで出されてまいります積立金 額というものは、厚生年金基金の代行部分を含んでおりますね。自主運用との兼ね合 いに もなりますが、実際には、あの積立金の中から基金の側にプールされているもの は、例え全面的な自主運用ということが可能になっても、これは厚生省が運用するこ との出来 ないものというふうに思います。したがって、年金財政見通しの表について は、ぜひ積立金の中のどこまでが基金の代行部分としてプールされていて、どこまで が厚生年金本体にあるのか。これを額で明示をしていただきたいと思います。 基金の方は積立方式ですから、将来、この基金にプールされる部分の方が急速に積 み 上がり、全体の年金積立金の中で厚生年金本体に残る部分は、相対的には、当然の ことながら小さくなっていくはずでありまして、そこについての見通しを是非資料と してお 出しいただきますように希望しておきたいと思います。 以上です。 ○C委員 ついでに伺いたいのですが、実は先日、地方に行きまして、たまたま大規 模年金保養基地グリーンピアという施設へちょっと行ってみたんです。そうしました ら、大変広大な施設に立派な建物が建っていますが、利用者がほとんどいないという か、そのときだけだったのかもしれませんが、非常に閑散としておりました。これは 積立金を使っている事業でありますから、それでお金がどんどん増えていけばいいん ですけれども、逆に、そういうものをどんどんつくることによって赤字になって、将 来、年金の財政に影響を及ぼす危険性があるのではないかというふうに印象として受 けたんです。 ですから、現実に積立金を使ったさまざまな事業を展開しておられる訳 ですが、その収支決算というのは一体どうなっているのか。その辺のところを、もし 資料があれば、積立金を使ってどんな事業をしていて、それがどのぐらいのプラスに なっているのかということを教えていただきたいと思います。以上です。 ○事務局 今、幾つか御質問があった訳ですけれども、まず第1点の基礎年金の国庫 負担分を高額所得者についてはカットするという議論でございますが、これは前に御 紹介申し上げましたとおり、財政構造改革の議論の中でこういう問題が出てきたとい うことでございますけれども、これにつきましては、年金制度の根幹に関わる問題で ある。 それから、税制等、ほかの問題とも非常に密接な関係がある。こういういろい ろな理由がございますので、これについては次期平成11年度の制度改正の中でこの問 題を、ほかの関連のある事項と併せて検討したいということで、平成10年度から早速 実施という意見も一部にはあったのですけれども、平成11年改正の中でどうするかを 検討していくということで落ちついた訳でございます。したがいまして、この問題に ついては、在職老齢年金のあり方、こういった問題とも非常に関係の深い問題でござ いますので、是非、御議論をお願いしたいと思います。 それから、先ほど積立金に関する、特に基金分がどうなっているかという関係のデ ィ スクロージャーということでございまして、これは資料を何らか工夫したいと思い ます 。 それから、グリーンピアでございますけれども、これは先般、閣議決定が行われま して、正式にグリーンピアからは撤退をするという方向が示されまして、私どもとし ては、地元でぜひ引き受けていただきたいということで、これから交渉を本格化した いと思っ ておる訳でございます。年金積立金が、グリーンピア等のいわゆる福祉運用 に、どれだけ使われているかということで、これも資料につきましては工夫してお示 ししたいと思います 。 ○会長 本日の資料につきましては、これをすべて公開するということでよろしゅう ございましょうか。 (「異議なし」の声あり) ○会長 制度改正に関わる基本的事項につきまして、前回と今回と2回にわたり御議 論をいただきましたが、まだ議論の尽きない部分もございますし、本日、御欠席の委 員もいらっしゃるということでありますので、基本的事項につきましては本日で終わ りということではございませんが、他方、全体的なスケジュールの関係もございます ので、次回は基本的事項も含めて、給付水準、負担水準につきまして御議論をいただ いたらいかがかと考えておりますので、よろしくお願いいたします。 それから、今後の日程につきましては、事務局の方から御説明をお願いします。 ○事務局 それでは、今後のスケジュールにつきまして申し上げたいと思います。既に 御連絡いたしておりますが、次回の審議会は7月30日、水曜日でございます。午後2 時から厚生省の特別第1会議室で開催させていただきたいと思っております。9月以 降の日程につきましては、現在、各委員の御都合を承っておりまして調整中でござい ます。追って御連絡をさせていただきたいと考えております。 なお、本審議会の検討項目の一つでございます年金積立金の自主運用のあり方につ き まして、年金自主運用検討会でも御議論をいただいておりまして、この検討報告が まと まり次第、9月早々にでも年金審議会におきましても、この問題について是非優 先的に 御議論いただけたらというふうに考えておるところでございます。このため、 9月以降 は月に3回の御審議をお願いすることも今後考えられますが、何とぞよろし くお願いを 申し上げたいと思います。 以上でございます。 ○D委員 自主運用の件ですが、自主運用ということだけでなく、先ほどC委員から の御発言もありましたように、現在の年金福祉事業団の組織問題にも絡み、各種の事 業の問題も絡むところでございますので、次回、簡単にでも全貌を御説明をいただい て、実際の自主運用検討会の報告そのものはまとまっていないかもしれないので、そ れはその後でもいいと思うのですが、問題領域の全体については、ひとつこの場で次 回、御紹介いただけないでしょうか。 ○会長 それでよろしゅうございますか。 それでは、本日はこれで閉会したいと 存じますが、よろしゅうございましょうか。どうもありがとうございました。 問い合わせ先 厚生省年金局企画課    担 当 須田(内3316)    電 話 (代)03-3503-1711