97/07/14 公衆衛生審議会成人病難病対策部会 公衆衛生審議会成人病難病対策部会               日時  平成9年7月14日(月)                   15:30〜16:30               場所  虎の門パストラル                   3階「りんどう」の間 (出席者) 石川 達郎   太田 和夫  幸田 正孝  近藤 健文  杉村  隆  杉本 恒明   鈴木  宏  瀬在 幸安  高石 昌弘  ○高久 史麿 寺山 久美子  古谷 章恵  宮本 昭正  山口 規容子 山谷 えり子 (○:委員長 敬称略) 議事次第 1 開会 2 保健医療局長挨拶 3 議題 (1)臓器の移植に関する法律について (2)臓器の移植に関する法律(厚生省試案)について (3)その他 4 閉会 ○成瀬補佐  本日の出欠の状況です。委員20名中15名の先生方が出席をいただいていることを ご報告します。続きまして小林保健医療局長よりご挨拶を申し上げます。 ○小林局長  先程の会に引き続きまして皆様方ありがとうございます。委員の先生方、ご案内の通 りに長年の懸案でございました臓器移植に関する法律が、先の通常国会で成立をいたし ました。本日はこの法律案の審議の経過と、この法律の施行までに定めることとしてい る厚生省令の試案についてご説明申し上げたいと存じます。  まず、今般成立しました臓器の移植に関する法律の審議経過について、簡単にご報告 いたします。  今般成立した中山案は、昨年の12月に衆議院に提出されましたが、本年3月18日 の衆議院本会議における趣旨説明の後、厚生委員会において精力的に審議が行われまし た。その間、脳死を人の死としない立場に立つ対案、通称、金田案と申しております、 が提出されたりしましたが、4月24日の衆議院本会議において、中山案が3分の2以 上の賛成をもって可決されました。  参議院に中山案が送付された時点で、脳死を人の死としない立場にたつ対案、これは 先程の金田案とは別に猪熊案が対案で提出されました。この対案は衆議院で否決された 法案の金田案と内容はほぼ同様でございます。  両法案は5月19日の参議院本会議における趣旨説明の後、臓器移植に関する特別委 員会が設置されまして、その委員会において精力的に審議がなされました。その間、日 本医科大学の救命救急センターの視察や、大阪・新潟における地方公聴会、及び中央公 聴会の開催なども行われました。  そして6月16日の臓器移植特別委員会において、中山案と猪熊案の中間に当たる修 正案が提出され、同日、参議院自民党などから提出された修正案が同委員会で可決をさ れました。  この修正案の主なポイントは、臓器移植の場合であって、かつ脳死判定につきこれに 従う旨の意思表示があるときに限って、脳死した者の身体から臓器を摘出することがで きることとするものであります。  翌17日の午前に参議院本会議で可決、午後に衆議院本会議で可決されまして、参議 院自民党などから提出された修正案により、臓器移植法は成立をいたしたところでござ います。  臓器移植につきましては、これに関する諸問題の検討を行う場として、本部会に臓器 移植専門委員会を設けることについて、本年1月20日にご了承をいただいたところで ございます。臓器移植に関する法律の施行に向けて、脳死の判定基準等を定める厚生省 令について、事務局で試案をとりまとめ、今月11日に臓器移植専門委員会において説 明いたしました。今後、臓器移植法の施行のための厚生省令案につきましては、臓器移 植専門委員会においてご審議いただくこととしておりますが、後日、専門委員会のご意 見がまとまったところで、厚生省令案について正式に諮問・答申を行うこととしており ますので、委員の皆様方にはよろしくお願いをいたしたいと思います。  さて、臓器移植法は通常国会終盤において成立し、公布は7月16日、施行は公布か ら3か月後の10月16日と予定されております。尚、参議院において附帯決議が行わ れており、ネットワークの体制整備やレシピエント選択基準などについても触れられて おります。  厚生省としましては、4か月足らずの準備期間中に本日試案をご説明いたします厚生 省令の他、法律の具体的な運用のためのガイドラインの策定や、ネットワークのあり方 や、ドナーカードの普及策の検討等に向けて、全力を尽くしてまいる所存でございます ので、皆様方におかれましてもご協力のほどよろしくお願い申し上げます。 以上、皆様方のご理解とご協力をお願い申し上げまして、私の挨拶を終わらせていただ きます。今日はありがとうございます。 ○成瀬補佐  では議題に入る前に、お手元にお配りしてございます資料につきまして確認させてい ただきたいと思います。資料の一番上が議事次第でございます。2枚目が資料一覧、3 枚目が委員名簿でございます。4枚目が配置図です。 続きまして、資料−1は法律の審議経過です。資料−2は法律の概要、資料−3は臓器 の移植に関する法律、資料−4は施行規則、厚生省試案でございます。では高久部会長 よろしくお願いします。 ○高久部会長  最初の議題に入らせていただきます。議題の1は臓器の移植に関する法律についてと いうことであります。これについて事務局から説明お願いします。 ○貝谷室長  臓器移植対策室の貝谷でございます。よろしくお願いします。資料−3に法律がござ います。明後日、官報公布されますが、修正後のものをお手元の資料−3としてご用意 させていただいております。既に中山案と呼ばれております当初出された案につきまし ては、一度ご説明をさせていただいておりますので、今日は参議院におきます修正点を 少しご説明申し上げたいと思います。  まず資料−3の1ページ目です。臓器の移植に関する法律案の参議院におきます修正 の第1点目が、第六条の第1項です。六条に従来の中山案では、「死体(脳死体を含 む)」という規定がございました。この脳死体という言葉が修正されまして、「死体 (脳死した者の身体を含む)」と言葉が変えられております。実態は変わっておりませ んが、亡くなられた方の尊厳、ご家族の気持ちというところに配慮するために、表現を 和らげたというのが修正の提案理由説明でなされたところでございます。  その次が2ページ目です。「脳死した者の身体」と第1項で規定されておりまして、 それの定義を第2項において行っております。「脳死した者の身体とは、その身体から 移植術に使用されるために臓器が摘出されることとなる者であって」以下そこに書いて あるような「脳死の判定をなされた者の身体をいう」ということでございます。この箇 所は脳死を人の死とすることについて、限定を行ったものですが、従来の中山案では、 こういう限定はございません。「脳死体とは、脳幹を含む全脳の機能が不可逆的に停止 するに至ったと判定された死体をいう。」ということで、移植のためにという限定は特 にはございませんでしたが、この第2項では、この限定を行ったということでございま す。  第3項では第2項で行う脳死の判定を行う場合について、更に要件を加えておりま す。読みます。「臓器の摘出に係る脳死の判定は、その者が第1項に規定する意思の表 示、つまり臓器の摘出について同意をする意思、の表示に併せて、脳死の判定に従う意 思を書面により表示している場合であって、その旨の告知を受けたその者の家族が当該 脳死の判定を拒まないとき又は家族がないときに限り、行うことができる。」と修正さ れております。  これはご本人が生前に、臓器提供の意思と、それに加えて脳死の判定に自分は従うと いう趣旨を書面に書いてある場合に限って脳死判定を行うという趣旨でございます。  以下、4項、5項、6項と新しく付け加えられておりまして、いずれも脳死判定を行 うに当たって、一層の厳格化を図るべきであるということで要件が加えられておりま す。  第4項は脳死の判定を行うための医師の要件でございます。脳死の判定は「これを的 確に行うために必要な知識・経験を有する二人以上の医師(当該脳死した者の身体から 臓器を摘出し、又は移植術を行うことになる医師を除く。)」ということであります。 脳死の判定にあたる医師と摘出を行う医師とは、別の人であることが求められておりま す。そのような二人以上の医師の行う判断の一致によって行うものとするという規定に なっております。  第5項では「脳死の判定を行った医師は、直ちに当該判定が的確に行われたことを証 する書面を作成しないとならない」ということでございます。脳死の判定を行った二人 のお医者さんは、直ぐにその脳死判定に関する証明書を作成するという義務づけがなさ れております。  第6項におきましては「臓器の摘出にあたる医師は、予め脳死の判定にかかる証明書 の交付を受けないとならない」という規定になっております。書面を作成し、交付を受 けることによって的確に行う、ということが参議院におきます修正で加わったところで ございます。  主な点は以上のような点でございまして、その他は罰則の強化、そのようなことが併 せて行われたことでございます。以上が参議院における修正の主な点でございます。  先程局長からご説明しましたように、参議院の特別委員会におきましては、この資料 の一番最後でございますが9ページをご覧ください。この法案の採決にあたりましての 附帯決議を行っております。  項目としては八つございます。簡単にご説明申し上げます。  一が、客観的かつ医学的な基準による公正・公平なレシピエントの選定が行われるよ うな適正な基準の設定、臓器移植ネットワークの体制整備等に万全を期すことというよ うな点でござます。  二が、移植を実施する施設を厳選するために、従前の検討結果の再検討を行う、とい うことでございます。  三が、家族及び遺族の範囲についてのガイドラインを作成するということについて、 検討を行うということでございます。  四が、臓器を提供する適正な意思表示ができる者の年齢等の範囲について、関係方面 の意見を踏まえ、早急に検討を行うことです。  五が、ドナーカードの普及に努めること。脳死及び臓器移植に関する普及啓発を図る こと、コーディネーターの資質の向上と養成に努めること。  六が、脳死の判定基準につきましては、臓器移植の実施状況を踏まえて医学の進歩に 応じて、常時検討を行うということです。  七が、脳死の判定につきましては脳低体温療法を含め、あらゆる医療を施した後に行 われるものであって、判定が臓器確保のために、安易に行われるとの不信を生じないよ う、医療倫理の確立などに努めること。  八が、移植医療についての国民の理解を深めるために、実施状況等についての、毎年 度の報告書を国会に出すこと。 このような八つの項目について決議が行われているところでございます。法律に関して は以上でございます。 ○高久部会長  臓器の移植に関する法律はすでに決められたことでございますが、何かご質問はおあ りでしょうか。ご意見はいろいろあると思いますが、今更言ってもあまり意味がないと 思いますが。 ○杉村委員  費用とか保険とか、例えば脳死をしたら何点になる行為であるとか、その点はどこに 出ているのでしょうか。後から説明が出てくるのでしょうか。 ○貝谷室長  費用につきましては、特に心臓と肝臓は、今は保険点数に入っておりません。それ は、今後、中医協で議論になるという予定でございます。 ○小林局長  ただ、腎臓移植では入っているので、おそらくそれにならって、あとは実際にかかる 需要量等を合わせて値段が算定されるものと思っております。ただ、当面は今まで中医 協の中では新しい治療技術が出てきたときには、高度先進医療といって、最初の5例く らいまでは自己負担でやってくれということになっているのですが、5例まで待ってい るということになると、何年かかるかわからないという話もあって、第1例目から、高 度先進に入れたらどうかというご意見もあって、中医協でその辺はご判断されることに なりますが、そちらには我々もご説明には呼ばれたら行くことになると思います。そこ は今後の中医協のご議論の結果だろうと思っております。 ○高久部会長  生体肝移植はまだ保険で認められなくて、高度先進医療でやっているのですね。 ○幸田委員  臓器移植を全部保険でやるということになったら、保険はもたないですよね。 ○小林局長  いろいろなやり方があって、ただ高度先進医療にしておいて、手術代等は民間保険で やってくれという手もあり、いろいろな方法はあると思います。 ○幸田委員  中医協でご議論していただくことであって、ここで議論をすることではないですよ ね。 ○小林局長  ただ腎臓移植だけは、逆にいうと一方の透析医療の方にコストがかかるので、それと の比較論でいくと、透析よりは安くなるというのは事実です。 ○太田委員  移植は高いと言われるのですが、そう高くはないです。透析の場合と比べますと、遙 に安いです。何分の1になってしまいます。それの浮いた費用で、他が賄えるというこ とになります。肝臓移植もそう高いものではありません。癌の抗ガン剤は高いですから ね。癌の治療はね。だって数がそういっぱいはありません。年間で何百という数と、何 万という数では比べ物にはなりません。だから移植で保険が破綻するということは絶対 にないと私は思います。 ○幸田委員  経過措置の6ページと7ページの附則第四条と第十一条でしょうか。ここに当分の間 と書いてあるのですが、これはいつまででしょうか。 ○貝谷室長  特に指定はございません。特に附則第四条の経過措置は従来から腎と角膜がなされて いたことも受けまして、特例措置として残しているものでして、いつまでということは 全くございません。 ○幸田委員  腎と角膜については、本則にはよらないということをいっているわけでしょうか。そ れは未来永劫でそれでやるのでしょうか。 ○貝谷室長  はい。本人同意というのが本則でございますので、それに合わせて家族の同意を認め る趣旨です。 ○幸田委員  同じ臓器移植の中で、どうして腎臓と角膜だけが未来永劫になるのですか。 ○小林局長  といいますのは、腎臓と角膜の場合には脳死ではなく心臓死で摘出することができま すから、これは脳死体のものとは違うということです。 ○幸田委員  そうであれば、法律は別に書くべきですよね。脳死か脳死でない場合に分けて書くべ きですよね。 ○貝谷室長  もう一つの附則第十一条の方は、医療保険の適用ということで、脳死後も当分の間や るということです。ここは脳死について国民の理解がある程度深まって、脳死後の医療 は必ずしも必要ではないという認識がかなり定着していけば、この規定を見直すという ことだと思うのです。 ○幸田委員  第四条の方は未来永劫ということですか。 ○貝谷室長  そういう可能性があります。 ○太田委員  脳死で臓器提供ということですが、家族と書いてありますが、これは死んだことには ならないのでしょうか。遺族とはなってないのですが、死んでないという認識で摘出す るわけでしょうか。 ○貝谷室長  今先生がおっしゃった通りに、よくみると遺族と書き分けております。それは脳死判 定が正式に終わるまでの間は家族という表現です。だから脳死判定した後は遺族になり ます。 ○太田委員  脳死での摘出であっても遺族という表現になるわけですね。 ○貝谷室長  そうです。 ○瀬在委員  その辺では医療費はちゃんと賄えるのでしょうか。遺族とはいっても、そこでは遺族 と家族というふうに分かれますが、摘出までの医療費はちゃんとやっていただかない と、現場は非常に混乱します。脳死判定後の摘出までですね。 ○杉本委員  細かなことですが、死亡診断書はどの時点で出るものでしょうか。 ○貝谷委員  臓器移植法に基づいて脳死判定が行われた場合には、脳死判定は2回行いますので2 回目の段階で死になるということです。 ○杉本委員  それでしかし移植が行われなければ、それは撤回されるわけですか。 ○貝谷室長  結果的にそれが何らかの事情で中断されたという場合でも脳死判定は行われたという ことになります。それはその段階では2回目の時点でもって死亡診断書を書くという取 扱になると思います。 ○杉本委員  もう一つ、意思表示カードですが、何か構想をもっていらっしゃいますか。 ○貝谷室長  一つは、この法律はかなりいろいろな要件が入ってきましたので、従来示してなかっ たのですが、厚生省の一つのモデル的な案を作って出していこうと考えております。も う一つは、そもそものカードそのものを、厚生省の方でネットワークと連携しながら、 全力を尽くして普及を図っていきたいと思っております。 ○杉本委員  自動車免許証であるとか健康保険証を利用するというような話も聞いたことがありま すが、それは具体的にはなってませんか。 ○貝谷室長  免許証なり医療保険の保険証というものも、勿論方法としては十分にあり得ると思い ますが、スタートからというわけにもいきませんし、それぞれの制度での検討というこ とがありますので、まずは私どもの自力でできるドナーカードを中心にやっていこうと 思っております。 ○重藤補佐  誤解がないように申し上げます。脳死の判定で2回目の判定で死になるのは、臓器移 植につながる、臓器移植をする意思が書面によってあって、なおかつ、脳死を受け入れ るという書面がある方の場合だけです。これまでどおりに脳死判定に繋がらない救急の 場面で、予後判定とか、患者さんのその後の家族との相談のために行われる脳死判定が 行われたとしても、それには基本的には、そこで死亡診断書を書くということには直結 はしません。 ○貝谷室長  今回はっきり決まりましたことは、今お話申し上げましたこの法律の枠内のことでご ざいます。今回この修正を行った参議院側の提案者の説明では、この法律以外の一般の 医療の現場で行われている脳死判定については、この法律は一切言及してない。簡単に いえば言及してないということは、従来通りという言い方で説明されております。そこ はこの脳死判定を行った場合の取扱と、臓器移植に繋がる場合の脳死判定の取扱と、一 般的に行われる脳死判定との関係をどうしていくのか、ここは政府全体として議員立法 をどう受け止めていくのかということで、大変難しい問題ですが、施行までに政府全体 としてどういうスタンスでいくのかは検討しているところです。 ○高久部会長  3種類の死亡ができたわけですな。 ○小林局長  だから3種類の死ではおかしいという法律家もいて、例えば考え方はいろいろあっ て、この法律では脳死で臓器提供をする人は脳死をもって死ということになったわけで す。ということは、その他についても脳死をもって死としたらおかしいという理由には ならないのではないかという読み方もあるし、いやそうではない。臓器移植する場合に 限ってのみ認めたのであって、その他は認めないという考え方もある。いずれにしても この法律では、そのことには何も触れてないのです。だから今後はそこをどうするのか というのは、多分、死の判定ということになると大変です。  例えば、同じ車に乗って、二人とも事故にあったご夫婦で、二人とも脳死状態になっ た、片方は提供するといって、片方は提供しないといっていた。すると死亡時刻が違っ てしまうのではないかというようなときに、どう扱うのかという話が具体的にありま す。それをどうするのかというのは、この法律では触れてないというのが今の現在の段 階です。  それをどうするのかというのは、今後の問題であって、まだ政府として正式に見解を 出しているわけではないということです。それまでは実は大変な問題があります。後で 出てくる省令案にも出てこない話で、実は大変に大きな問題です。法律家の中にも二つ の死があってもいいという人もおりますし、いや駄目だ1つでないと駄目だといってい る人もいる。そこもいろいろあろうと思っております。遺産相続の問題にも関わりま す。一番微妙なところが抜けているから、国会の審議の中でも法律家の人達はこの法律 は不備だといって反対をされた方がいらしたのも事実でございます。しかし、少なくと も国民の中で臓器移植を希望している人、それからあげたい人もいるわけですから、そ の人達のために夢を繋ぐということのためには、どうしても今回一歩前進すべきだ、と いうのが国会議員さんの多くの意見でして、法律上、問題が出てくることは承知の上 で、なおかつこの法案に賛成された面があるということかと思います。 ○高久部会長  すみませんが時間が限られていますので、次の議題に進みます。議題の2の臓器の移 植に関する法律施行規則、これを手短に説明していただけますか。 ○貝谷室長  お手元の資料−4でございます。10月の16日の施行までに関係する省令を決めて いかないといけませんが、先週の11日に先程局長からご説明しましたように、専門委 員会の方にこの厚生省試案をお示し申し上げまして、今後ご議論いただくという趣旨で 公表させていただきました。時間が限られておりますので、ごく簡単にポイントだけお 話申し上げます。  厚生省試案のうち、一番大きな点は第二条でございます。厚生省試案第二条というの がございまして、脳死の判定の基準を厚生省令で定めるというのが、法律の先程ご覧い ただきました規定の中に入っております。これをこのように第二条のような形でお示し してございます。いわゆる脳死の判定につきましては、従来、竹内基準というものに準 拠して省令を定めるということでございまして、そこに書いてございますような少し長 い省令になっております。  第二条の第1項というものでございますが、ここでは脳死判定を行う対象を書いてお ります。いわゆる器質的な脳障害を受けた方、あるいは自発呼吸を消失した状態にある ケース、原因疾患がはっきり特定されている場合であって、かつ、あらゆる治療を行っ ても回復の可能性がないと認められるものに限って脳死判定を行うという考え方が示さ れております。ただし適用から除くものとして、一・二・三・四と書いてございます。 6歳未満の者であるとかの方々は、そもそも脳死判定の対象としないということを書い ております。  第2項では脳死判定で行うべき検査の項目、判定の項目というものを一〜五までに掲 げてございます。一は深昏睡、二が瞳孔の固定、三が脳幹反射の消失、四が平坦脳波、 五が自発呼吸の消失ということでございます。この5つの項目について必ず検査を行っ て確認をするようにと書いております。  また、この第二項につきましては一〜五の確認を6時間以上の時間をおいて、観察期 間をおいて、再度確認をしてそれでも同じ状態であることを確認した上で脳死判定を行 うというのが、この第二項の本文に書いてございます。  第3項では細かい規定ではございますが、一〜五までの確認に当たっての検査の順番 としまして、最後の五番の自発呼吸の消失ですが、無呼吸検査というものを行うことに なってます。この検査は一番最後の段階で行う、人工呼吸器を外して検査を行いますの で、患者さんに対する侵襲性を考えまして、最後の段階で行ってほしいということを第 3項に書いてございます。  第4項につきましては、判定に当たっての留意事項ということで、薬の影響がないこ との確認、血圧が一定以上あることの確認を行った上で行う。  第5項がいろいろ報道されましたが、判定にあたりましては、聴性脳幹誘発反応の消 失を確認するように努めるものとするということでございます。ご説明すると、先程の 一〜五までの必ずしなければならない五つの確認の他に、医学的には必須ではないが、 行った方が家族なり国民の目から見てわかりやすい、補助検査というものもできるだけ やってほしい、やるべきであるというのが、国会でのご議論としてございました。  それを受けまして、あくまでも補助的な検査でございますが、聴性脳幹誘発反応とい うものを、比較的に簡単な検査でございますので、脳死判定にあたってはできるだけ、 そういうものをやってもらうようにということの根拠規定をここにおいているところで ございます。以上が脳死判定に関します第二条の規定でございます。  以下、第三条・四条・五条とありますが、先程お話申し上げましたように脳死判定を 行った際の、医師が作る証明書に書く項目が第三条。  省令試案の第四条では、使用されなかった臓器の処理、実際に使用されなかった場合 には焼却して行うというようなことを定めてございます。  第五条は、脳死判定を行った場合に、残すべき記録の項目。 第六条は、臓器の摘出にあたって、作成しなければならない記録の項目。  第七条は、実際にお医者さんが移植を行った場合に記録を残すべき項目ということ を、それぞれ具体的に列記しているところでございます。  第八条は、残された保存されている記録を、閲覧できる者を列記しております。法律 上でドナーのご遺族は例示はされておりますが、その他にもレシピエントまたはそのご 家族または臓器の斡旋機関、ネットワーク機関ですね。そういうものも諸々の記録を閲 覧することができるということで書いてございます。  第十条は、記録の閲覧の方法でございますとか、閲覧に供する記録の範囲で5ページ の真ん中ほどにございます。閲覧に供する記録の範囲では、それぞれ臓器の斡旋機関 は、どういう記録が閲覧できるか、これは全記録が閲覧できるという規定になっており ます。  第二号では、移植術に使用されるための臓器を提供した遺族とありますが、ドナー側 の家族は何を見られるのかということです。これはドナー側に関する情報だけが見られ るということです。レシピエント側の情報は見られないことにしております。  第三号では逆で移植を受けた人、あるいはそのご家族は誰から貰ったのかという記録 は見られません。しかし、その他の記録は見られるという形で省令案を作っているとこ ろでございます。 第十一条以下は、事務的な手続き規定ということで、従来、角膜及び腎臓の移植に関す る省令にございますような規定に倣いまして、規定を整備しているところでございま す。このような省令試案を公表しまして、専門委員会は元より、各方面での様々なご意 見がこれから寄せられると思いますので、そのような意見を再度ご検討いただきまし て、8月中にはこの省令案というものを専門委員会レベルでおまとめいただきまして、 正式に審議会に省令案としてご諮問申し上げたいと考えているところです。以上です。 ○高久部会長  ありがとうございました。今厚生省の試案として、法律の施行規則について説明があ りました。ご質問あるいはご意見があればどうぞよろしくお願いします。 ○貝谷室長  非常に関心の高いのは、脳死の判定基準と残された記録を誰が見られるのかという閲 覧ですね。 ○高久部会長  現在病院の病歴を家族は見られるのでしょか。医療機関の判断に任されているのです ね。この場合には見せなさいということですね。 ○貝谷室長  法律上では閲覧させるように書いてございます。なお、説明を少し漏らしましたが、 省令の冒頭の規定で、今回の法律の対象となります内蔵の範囲についての規定がありま す。法律上は臓器というものに定義をおいてまして、法律の第五条で、心臓・肺・肝 臓・腎臓・その他厚生省令で定める内蔵と眼球ということになってます。したがいまし て、省令で委任されている部分では、冒頭ございますように、膵臓を今回省令で別途定 めたいというご提案をしているところでございます。移植関係者からは、膵臓を入れる なら小腸も入れてほしいとかいろいろな声もございます。考え方としては、今は医学界 においてある程度移植医療として成熟しているというか、成果が一般的に認められてい るものについての適用ということで考えさせていただきたいということで、ご説明をさ せていただいております。 ○太田委員  小腸の移植をするわけにはいかないのでしょうか。 ○貝谷室長  死体ということからは難しいと考えるべきであると思います。今されているのは、血 族間での生体移植はございますが、特に脳死段階ということであるならば可能なのかも しれませんが。 ○太田委員 脳死ということではなく、心臓死でも小腸はいいと思うのです。使える可能性はあると 思うのですがどうなのでしょうか。 ○貝谷室長  そこは実は先週の金曜日の専門委員会でも議論されました。小腸に関する移植の現状 を移植学会の方で少し情報を収集して、世界の状況と日本の状況を収集した上で、次回 にそこを議論しようという形になってます。 ○太田委員  例えば肝臓移植などは同時にやるとつきやすい。そういうことで、脳死でやるという ことで、これはかなり利用される可能性はありますね。ですからその辺のところで最初 から蓋をされていると、動きが取れないという感じがします。 ○貝谷室長  ここの省令で、こういうものを決めるという趣旨は、まさに状況に応じて、医学の進 歩に応じて適宜、ここはやっていいというのが省令としての規定でございますので、そ こは医学が進めば省令で追加できるということです。 ○高久部会長  他にどなたか、ご意見ありますか。議題の1についてでも結構です。 ○太田委員  議題の1ですが、腎臓のことに関してです。一番皆が心配しているのは、腎臓移植に 凄く影響が出てしまうのではないかということです。今は腎臓移植は確かに心臓停止後 にもらってますが、その前に脳死の判定をしないといけないわけです。その脳死の判定 はドナーカードをもってなくても、腎臓は遺族がOKであればいただけるのですが、そ れが脳死の判定をするということが、本人が脳死を認めるということでないとできない ということになると、まずいのですが、そこはいいのでしょうか。 ○貝谷室長  今のような懸念が、この法律議論の後で、救急の現場の先生方にはかなりの不安を与 えているようです。5月とか6月の摘出件数が少し減り気味です。そこは先生が今おっ しゃったように、実際の脳死判定は腎臓の場合でも行うのですが、今回この特例がこの 法律で要件が厳しくなりましたのは、まさに脳死体からの摘出に関わる臓器の移植に関 するものでございますので、腎臓につきましては、従前の取扱いを変更する必要はない と考えております。したがいまして、腎臓移植を行うに当たって行われている通常の脳 死判定、これは臓器移植のためということでは現場ではないわけでございますし、ま た、脳死体からの移植ではないわけでございますので、そこはこの法律による影響はな いと考えておりまして、その趣旨が徹底されるように、私どもの局長の方から文書を出 す方向で今準備をして、早急にやりたいと思っております。 ○太田委員  とにかく救急の先生方がこの法律ができてから、かなりびびってしまっているわけで す。何かあると罪になるのではないかということですよね。皆腰が引けているというの が現状なので、その辺を安心してできるように、明確にやってほしいと思います。 ○小林局長  この法案は3年後の見直しというのが入っております。今回議員さんがこの法律を作 られるときに、先生方もいろいろ問題点があることは承知の上でございます。死にも2 通りあったりして、大変に問題だということは承知の上で、この法案を作られたという のは、先に夢を繋いでおきたいということで、どうしても作りたいということで作られ たわけです。  先生方は頭の中では3年後には見直しをするのだというのが、あって、それも含め て、先生方は不十分でもいいから、作っていこうということだろうと思います。  ただし死のところの判定だけは厳格にしないと、国民の皆さんに大変迷惑をかける、 というような趣旨で、脳死判定については限られた人をやるしか法律上では認めないと いうふうに動かれたと、私は思っております。その意味では、今回は新聞とかテレビ等 で報道されているよりは、本当に国会議員さんはよくよく考えられて、現状でやれる最 大のことをされたと私は思って、国会議員の先生に大変に感謝をしているわけです。こ れ以外の選択肢は私はなかったと思っているところでございます。 ○山谷委員  今、3年後の見直しとおっしゃいましたが、例えば小腸を加えるとか、あるいは6才 未満の者に適用するとか、無呼吸テストのあり方とか、医学科学の進歩で変わる部分は どういう扱いでしょうか。 ○小林局長  それはさっと変わってしまえば、法律を改正しろといえばできないことはない。これ は行政府に対して3年後には見直しをしないといけませんといっているわけでして、科 学的にはっきりと違うことがあれば、直ぐにその前に改正しても構わないわけです。省 令の方はいいですよ。小腸を入れるという話はね。 ○山谷委員  その手続きはどうのこうのというのではなく、適宜ですか。 ○小林局長  今回は3年後は見直しをしないといけませんよといっているのであって、ここはもう 一回見直しをするということです。 ○高久部会長  法律の見直しをする。それから省令の方は専門委員会の方でということです。 ○小林局長  ですからこれは正式に審議会、今は専門委員会でやっておりますが、ここにお諮りを して、この皆さん方が結構ですといわない限りは、省令にはならないわけです。だから この会議は大変に緊張する会議だということです。 ○高久部会長 他に何かご意見ございませんか。ないようでしたら、時間も来ましたのでこれで終わら せていただきます。今日のご議論は、今後、専門委員会の検討の中で、いろいろ参考に させていただきたいと思います。ありがとうございました。 以上    問い合わせ先 厚生省保健医療局エイズ疾病対策課臓器移植対策室       担 当 重藤(内2361)、眞鍋(内2364)       電 話 (代)03-3503-1711