97/06/25 第7回血液行政の在り方懇談会議事録 第7回血液行政の在り方に関する懇談会議事録   1.日  時   平成9年6月25日(水)10時00分〜12時00分   2.場  所   厚生省別館  共用第23会議室   3.出席者     (委  員)            井形昭弘  神尾友和  行天良雄  草刈 隆            坂巻 煕  清水鳩子  菅谷 忍  高久史麿            中谷瑾子  秀嶋 宏  藤田 仁  前田義章            三星 勲  湯浅晋治  渡辺俊介     (専門委員)            小室勝利  中井一士  宮島 剛     (厚生省)            審議官(薬務担当)            企画課長 審査課長            血液事業対策室長  医薬品適正使用推進室長他   4.議事内容           (1)開  会           (2)議  事              (1) 今後の血液行政の在り方について(案)              (2) その他      (3)閉  会 血液室長 本日はご多忙のところご出席いただきましてありがとうございます。ただいまから第 7回血液行政の在り方に関する懇談会を開催いたします。私は厚生省薬務局企画課血液 事業対策室長の外口でございます。  本日は曽野委員、森嶋委員、宮村専門委員、布施専門委員がご都合によりご欠席でご ざいます。なお井形委員、秀嶋委員がやや遅れているようでございます。 高久座長 それでは第7回目の血液行政の在り方に関する懇談会を開かせていただきます。最初 に事務局の方から本日の資料の確認をお願いします。 血液室長 それでは事務局から本日の資料確認と説明をさせていただきます。  資料1は前回までの論点整理に基づいて作成した「血液行政の在り方に関する基本的 考え(案)」であり、後ほど紹介させていただきます。  次に参考資料1は「血液事業への地方自治体の関わりアンケートについて」でありま す。この懇談会でも議論されてまいりました都道府県、市区町村が献血の推進に対し て、どのような対応を行っているかを調査いたしました。47都道府県と 3254の 区町村のうち2900の市区町村から回答をいただきました。参考資料1の別紙のとこ ろに数字がそれぞれの項目別に掲げられておりますが、アンケートの回答結果の数字に 表されておりますように多くの地方自治体で献血の際の会場設営や献血者の確保等の支 援事業が行われております。なお地方自治体からのご意見として「若年層へのさらなる 働きかけが必要である」「献血する側に立って事業を推進すべきものではないかと考え る」「献血推進に関して都道府県の役割についての法制化を望みます」等のご意見が寄 せられております。  参考資料2−1は東京HIV訴訟原告団・弁護団よりご提出の「血液行政・血液事業 の改革についての提言」であります。読み上げさせていただきます。 「血液行政・血液事業の改革についての提言」  I はじめに  われわれは、血液凝固因子製剤によるHIV感染被害(薬害エイズ)事件に被害者も しくは代理人として関与した者として、今後再び輸血および血液製剤による感染等の被 害を発生させないための制度改革が必要であるという視点に立って以下のような改革案 を提言する。(なお、懇談会の「論点整理」の中に われわれの提言も盛り込まれた い。)  II 改革の趣旨 1.薬害エイズ問題から教訓を汲み取り、これを改革の方向に生かすものとる。 2.輸血ないし血液製剤を使用する者の安全性および血液行政・血液事業についての 権限ならびに責任等を明示した以下のような内容の血液行政・血液事業の実施に関 する法律(「輸血・血液製剤安全対策基本法」・「血液事業対策基本法」等)を可 及的すみやかに制定する。  III 血液行政・血液事業の実施に関する法律の内容(要綱) 1.輸血・血液製剤のすべてを国内の献血によるものとする。 2.血液製剤の特殊性(人の臓器が原料、原料の有限性、売血の非人倫性を明示し、 医薬品としての取り扱いにおいて合成化学薬品とは異なる特殊な製剤として位置づ け製造物責任法の対象としての製造物からは除外しないものとする。 3.血液行政・血液事業の主体(権限および責任の所在)は国(厚生省)であること を明示する。 4.血液事業は、国の委託により、血液の採血については日本赤十字社(日赤)血液 製剤の製造については日赤(全血製剤・血液成分製剤)と新たに設立する公益法人 (血漿分画製剤)、血液製剤の供給については公益法人がそれぞれ分担して行い、 間製薬企業に血液製剤の製造委託はしないものとする。 5.採血・製造・供給の際に、日赤(全血製剤・血液成分製剤の採血と製造)、  公益法人(血漿分画製剤の製造と供給)が、それぞれ厳重な安全性のチェックを行 うものとし、それぞれの義務内容(責任)を具体的に明示すると共に国(厚生省) の事業者責任についても明示するものとする。 6.医師の患者に対する輸血ないし血液製剤の副作用・感染についてのインフォーム ド・コンセントの徹底を義務づける。 7.血液製剤の薬価については一般の薬価とは異なる扱いをして価額について厳重な 上限規制を設ける。 8.各種の血液製剤を使用しうる適応症をそれぞれ厳格に限定すると共に、国(厚生 省)は、適正使用量を徹底する指針を作成するものとする。 9.国(厚生省)は、血液行政・血液事業の実施状況に関するすべての情報を年に少 なくとも1回以上国民に公開するものとする。 10.国(厚生省)は、血液・血液製剤の採血者・製造者・供給者・医師・患者・消費 者の各代表参加の血液行政・血液事業運営委員会ならびに医師・患者・消費者・弁 護士等参加の血液行政・血液事業監視委員会をそれぞれ設けるものとする。 11.日赤・公益法人(製造および供給)・厚生官僚・医療機関(医師)の間で 人的・物的癒着関係の生じない措置を講ずるものとする。 12.輸血ないし血液製剤の使用になって生じた被害についても、「医薬品機構」の被 害者救済制度の適用を認めるものとする。 13.遺伝子合成製剤に付いても、血液製剤に準ずる製剤として位置づけると共にその 特殊性を考慮して、安全性と供給量につき厳重な規制をするものとする。以上」  次に参考資料2−2は東京HIV訴訟原告団・弁護団よりご提出の「意見書」であり ます。 「1.これまでの懇談会の議論について  2.論点整理のすすめ方について (1)「国内自給の推進」と「安全性確保」の関係 (2)リコンビナント製剤の位置づけについて  3.懇談会の議論の中心」についてご意見をいただいております。 なおこの意見書で資料提供のご指摘をいただきました資料については第1回の血液 政の在り方に関する懇談会でエクゼクティブ・サマリーを配付いたしましたIO Mリ ポートを除き本日参考資料の3−1〜3−6として配付いたしましたので順に紹介させ ていただきます。 まず参考資料3−1−1は血液製剤調査機構が平成6年にまとめました「海外血液事 業報告書第1集」であり、海外血液事業インタビュー、米国、欧州、オーストラリアに ける血液事業の解説、オランダ1988年輸血に関する法律等が報告されております。 なおこの報告書につきましては367頁ありまして、行政相談室で閲覧できるようにい たしますので、たいへん恐縮ではございますが、傍聴席の方は目次の部分のコピーでお 許しいただきたいと思います。 参考資料3−1−2は血液製剤調査機構がこのほどまとめました「海外血液事業報告 書第2集」であり、WHO、国際赤十字赤新月社連盟、国際輸血学会の取り組みが報告 されております。なおこの報告書につきましても、611頁ありまして、大変恐縮であ りますが、傍聴席の方は総合解説の部分のコピーでお許しいただきたいと思います。 参考資料3−2は日本赤十字社「海外血液事業研修団報告書−1995−」でありイ ギリス、フランス、スイスの血液事業について報告されております。 次に参考資料3−3は「フランスの輸血及び医薬品の安全性に関する1993年1月 4日付法律」であり、参考資料3−4はフランスの公衆衛生法L667−5条に基づき 政府に提出された「輸血活動報告書」であります。なおこの「輸血活動報告書」につい てはたいへん恐縮でありますが、傍聴席の方は総括のコピーでお許しいただきたいと思 います。この参考資料3−3と参考資料3−4については、フランス語でございますの で、血液製剤調査機構の協力を得て、参考に仮訳をつけ急遽準備をしたものであります が、まさに仮訳でありますので引用される際には原文に戻って確認をしてからにしてい ただくようお願いいたします。 次に参考資料3−5はアメリカの「Blood Products Advisory Committee Act of 1995」であり、参考資料3−6は、アメリカの「Tenth Report By The Committee On Government Reform And Oversight.」であり、感染病原体に対す 国内の血液供給保護についての報告であります。 次に参考資料4は、エホバの証人の医療機関連絡委員会 東京委員会よりご提出の 「血液行政の在り方に関する懇談会への提言」であります。概要の部分の2頁になりま すが、紹介させていただきます。 「HIVの混入した血液製剤が招いた今般の事態は、これまでの血液行政の在り方に課 を提起するものとなった。厚生省は本懇談会を通じて多方面の意見を求め、これまでの 血液行政の在り方を総合的に見直そうとしていることを高く評価している。一種の臓器 移植と言われる輸血が、時に命を奪う危険を伴うことは周知の事実である。本懇談会も 血液製剤の安全性の確保や国内自給の推進を主な論点として取り上げておりそういった 努力が血液製剤の安全性の向上にある程度貢献することは確かであろう。しかし、HIV けでなく未知のウイルスを含むおびただしい数の問題について考えるとき、検査体制を いくら整えたとしても、次から次へと出てくる輸血副作用を完全に排除することは不可 能で あり、輸血にかかわる問題の根本的な解決にはならないと思われる。では、輸血 療法の問題と限界を克服すべく血液行政が目ざすべき方向はどこにあるのだろうか。   提言1−無輸血治療の推進 輸血にかかわる問題の抜本的な解決は、「初めに輸血ありき」という出発点を見直す ことから始まると考える。つまり、血液行政がその視点を、同種血輸血を用いない方 法、つまり無輸血治療の推進の方向に転じることが極めて肝要であると思われる。無輸 血治療の有効性および有用性は徐々に、しかも着実に臨床の場で実証され、医療現場に おいて認識されつつある。 無輸血治療を推進するために、どのような方策を講じることができるだろうか。現 在、無輸血治療を行う上で一つの障壁となっているのは、無輸血治療に役立つ薬剤の保 険適用の範囲が限定されていることである。たとえばエリスロポエチンの場合、白血病 などの血液疾患はその適用範囲に含まれていない。また自己血輸血の場合、エリスロポ エチンの適用範囲は貯血式に限定されている。エリスロポエチンの適用範囲が各種血液 疾患および希釈式や回収式の自己血輸血にも拡大されるなら、無輸血治療は一層容易に なり、飛躍的に推進されていくであろう。 さらに、血液代替物の研究・開発に力を注ぐことも、無輸血治療の推進に大いに役立 つと思われる。加えて、医療関係者が無輸血治療に積極的に取り組むと共に、厚生省が 輸血ではなく、無輸血治療を第一選択として考慮するよう医師や医療機関を啓蒙指導す るなら、輸血に伴う問題は激減し、国民全体に対する医療の質の向上に貢献することに なると考える。   提言2−真のインフォームド・コンセントの確立 本懇談会の「我が国の血液行政の在り方論点整理(案)」を検討したが、血液行政に ついて論じる上でもう一つ不可欠で肝要な要素が欠落しているように思われた。それは 輸血に対するインフォームド・コンセントの確立である。輸血がさまざまな危険を伴う 医療であることを考えると患者には輸血に同意する権利だけでなく、それを拒否した り、別の方法を選択したりする権利もあるはずである。しかし、現在厚生省が用いるよ う指導している輸血同意書は同意を前提とした書式になっているように思われる。しか し、輸血同意書が真に患者の意思を問うものであれば、同意する旨の欄だけではなく、 拒否する欄も設け、患者が自由に選択できる環境作りがインフォームド・コンセントの 意義に沿うものであると考える。 また、医療従事者もインフォームド・コンセントの意義を認識し、患者の価値観や倫 理観に基づく決定を尊重することが望まれる。そのため、厚生省はじめ国の行政機関が 真のインフォームド・コンセントの啓蒙と指導に引き続き積極的に当たることが期待さ れる。卒後教育に加え、医学生への教育課程の中にインフォームド・コンセントや自己 決定権に関する法的・倫理的側面を含めることにより、患者の生き方を尊重する高い倫 理観を有する医療人を育成することが望まれる。そうした努力は、医療訴訟の減少だけ でなく、医師と患者の信頼関係の促進にもつながり、結果として国民全体に提供される 医療の質の向上に貢献すると確信する。」 次に参考資料5は日本赤十字社より提出されました「わが国の“問診”とオーストラ リアの対比について」であり、前回の懇談会の議論を踏まえて日赤が調査した結果がま とめられております。 参考資料6は今月3日に薬務局から出した「血液製剤に関する記録の保管・管理につ いて」の通知であります。その内容は本年9月から各医療機関等において血液製剤管理 簿を作成の上、血液製剤の製品名、製造番号、当該製剤の投与日、患者の氏名住所等を 同管理簿に記載することとし、当面10年間の保管・管理をすることとしたものであり ます。 最後の参考資料は日本赤十字社がこのほど作成した「輸血の安全性を高めるためにぜ ひ守っていただきたいマナーがあります」という標題のパンフレットであり「エイズ検 査目的の献血はしないでください」「献血時の問診に対しては正しくお答えください」 「エイズウイルス感染の恐れがありながら、献血をしてしまった場合は、すぐにご連絡 ください」という三つのお願いをしているものであります。 なおこの他に前回の「議事録」を配付しております。以上でございます。 高久座長 どうもありがとうございました。それでは本日の議題に入りたいと思います。 中谷委員  すいません。資料についてですけれども、カナダの中間報告がありましたね。調査委 員会の中間報告。95年2月、それで最終報告書が96年の秋に出ることになっていま したが、それはお取り寄せになっていますか。 血液室長 調査いたしまして、もし入手準備できるものでありましたら、次回の懇談会で配付し たいと思います。 中井専門委員  ご指摘のように報告の予定だったのですが、関係者がその調査委員会の権限について 法廷斗争に持ち込みまして現在カナダ最高裁に係属していると聞いております。そうい うことから今の時点では最終報告書は出てないと思います。 高久座長 事務局の方で調べてみてください。  今まで6回にわたりまして、いろいろご意見をたまわったわけでありますけれども本 日はお手許にあります資料1の「血液行政の在り方に関する基本的考え方(案)」につ いて、さらにご検討願いまして、基本的な考え方がまとまりましたら、この懇談会の提 言起草委員を決めさせていただきまして、提言の作成作業に入りたいと思います。また この基本的な考え方につきましては本日のご議論もありますけれども、その後またお気 づきの点がありましたりするときにはご遠慮なく事務局に申し出願いたいと思います し、またインターネットなどを利用して広く意見を求めて、そのご意見を参考にして提 言の作成を行いたいと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。  それではまず最初に事務局の方から資料1の「血液行政の在り方に関する基本的考え 方について(案)」朗読をお願いしたいと思います。 血液室長 それでは資料1をご参照願います。 「 血液行政の在り方に関する基本的考え方(案) 1.安全性の確保 ・ 血液製剤は、現在の科学技術の水準の下では、ウイルス等の感染の危険性を完全に は排除できず、そのような危険性と製剤の有効性とを比較考量の上使用されるという 特性を有している。血液製剤の安全性の確保に関しては、治験や承認審査、市販後対 策の各段階の安全対策について、このような血液製剤の特性を踏まえた格別の対応が 求められる。 (1)危険性に関する情報の把握・評価及び伝達 ・ 血液製剤による感染症の伝播等の危険性に関する情報を事業者や国等は可能な限り 速やかに把握し、また、得られた情報について適切に評価する体制を確保していく必 要がある。 ・ 危険の程度が不確実な段階にあるうちから、多様な手段を用いて迅速に情報を患者 や医療機関等に対して提供していくべきである。 ・ 患者に対して、血液製剤の安全性に関する情報が適宜理解され易い言葉で提供され ていくことにより、患者自身の血液製剤に対する関心が高まり、また、治療内容の有 効性や安全性等についての理解が深まることとなり、自らの選択や自己決定に資する と考えられる。 ・ 重篤な健康被害が発生し、又は発生するおそれのある場合に、不確実性を伴う安全 性情報に基づいて安全対策の決定を行った際には、その決定の前提となった安全性情 報や決定に当たって考慮した要因、制約条件等を併せて情報の提供を行い、その後の 明らかになった事実についても提供を行う必要がある。 (2)現時点で求められる具体的な安全確保対策 ・ 献血された血液にその後ウイルス等の感染の危険性が生じたため、同一献血者由来 の他の血液の使用を中止する必要が生じた場合等に備え、献血者の記録を保管・管理 しておく必要があるが、献血者が広範囲の献血場所で献血する場合がみられることか ら、献血者に関する全国的な記録の保管・管理体制が構築される必要がある。 ・ 将来未知のウイルス等の感染の危険性が明らかになった場合等に、製剤の投与に関 し患者調査が十分に実施できるよう、献血の受け入れ主体における献血者に関する記 録や血液製剤の製造や販売等に関する記録の保管・管理の期間を延長していくべきで ある。また、医療機関においては、血液製剤を投与された患者の氏名等に関する記録 や患者に投与された血液製剤の製造番号等に関する記録の保管・管理を行うべきであ る。 ・ 献血された血液の一部を保管することは、製剤の投与に伴い健康被害が発生した場 合の原因の解明等に有用であると考えられ、将来的には献血者に関する記録と同程度 の期間、保管・管理すべきである。 ・ 献血者がHIV等に感染していることから、以前の献血血液が献血時において感染 を確認できない期間(ウインドウ・ピリオド)であった可能性がある場合や、輸血に よるHIV等の感染が確認され、感染の原因が献血された血液にある可能性がある場 合に遡及調査(ルックバック)が適切に実施されるよう、ルックバックについて一定 の手順をあらかじめ設けておくとともに、これを医療機関等の関係者に対して周知 し、ルックバックが適切に行われるよう対応すべきである。 ・ ウインドウ・ピリオドの危険を排除するには、問診に正確に答えることや、検査そ のものを目的とした献血を行わないこと等、献血者自身の血液の安全性の確保に対す る自覚が重要である。 ・ 新鮮凍結血漿が採血後一定期間保管され、その後再び献血者のHIV等のウイルス 抗体が陰性であることが確認された上で供給され、輸血に用いられればウインドウ・ ピリオドの危険性の軽減が可能であると考えられ、このような体制の導入を検討すべ きである。 ・ ウインドウ・ピリオドの短縮が可能な検査方法や、現時点ではスクリーニング検査 が技術的に困難な病原体に対する検査方法について、情報の収集や導入の検討が適宜 行われていく必要がある。 ・ 血漿分画製剤は、ウイルスの不活化や除去工程の導入等により、安全性は著しく高 まってきているとはいえ、供血の時点からの安全性の確保対策が重要であり、供血時 点の安全性に関わるデータが早期に確認できるようにすべきである。 ・ 血液製剤の使用に当たっては、効果がリスクを上回るかどうかについて十分に考慮 するとともに、患者に対するインフォームド・コンセントが適切になされる必要があ る。 ・ 緊急を要しない、あらかじめ輸血の予定が立てられる待機的な手術等の場合には、 自己血輸血を一層推進すべきである。患者に対するインフォームド・コンセントに際 して、自己血輸血実施の可能性についても説明する必要がある。 ・ 遺伝子組換え技術を応用した製剤や人工血液等血液製剤に替わる安全な代替製剤の 研究開発に関して、民間も含めた広範な研究の一層の発展が望まれる。 (3)献血者に村するHIV等に関する情報提供 ・ 献血者に対するHIV等の検査結果について、特にHIVに関しては、検査そのも のを目的とした者を可能な限り排除するため、「輸血用血液製剤の安全性に関する報 告書」を受けて「検査結果を通知しない方針であることを明言する」との対応がとら れてきたが、感染者の早期治療や知る椎利の尊重、二次感染防止等の観点から、原則 として陽性者には通知すべきである。  通知に際しては、献血者自身が通知を希望していることをあらかじめ確認しておくこ とやプライバシーの手厚い保護が必要である。 2.国内自給の推進 ・ 我が国の社会の国際化に伴う輸入感染症の危険の増大や、我が国の方が感染率の高 い疾患のあること、国外においてウイルス等の病原体の不活化・除去のための技術開 発や製造工程への導入に積極的に取り組んでいる事例があること等から自国の製剤が 国内献血に由来する製剤であるという理由のみで、輸入製剤に対して安全性が優れて いると断定的に考えることはできないが、国内献血に由来する製剤の場合は、未知の ウイルス等による感染症が発生した際に迅速な対応が可能であるという利点がある。 ・ 国内では倫理的な観点から無償献血により血液を確保している一方で、輸入される 血液製剤及び原料血漿の多くが売血による血液に由来するものである現状には問題が あり、国内自給率の向上に関係者は一層努めるべきである。   国や地方公共団体、日本赤十字社等の関係者の役割と責任を明確にした上で、国内 自給を推進していく必要がある。 ・ 国内自給を推進するに当たり、技術開発の進歩に停滞が生じるなど過度な規制によ る弊害は招くことのないようにすべきである。また、国内自給の推進は、国際的な理 解を得ながら進めていく必要がある。 (1)献血量の確保 ・ 国内自給を推進していくには、国民の理解と協力が一層求められる。 ・ 国内自給を目指すに当たり原料血漿の確保量を増やす必要があるが、血漿採取のた めの成分採血は長時間を要することから、ボランティア活動に対する休暇措置のよう な、企業や社会全体による献血に対する配慮が求められる。また、献血の重要性につ いて学校の教育内容に盛り込むことや、インターネットの利用等により広く一般市民 が情報を得る機会を設けていくべきである。 ・ 日本赤十字社のこれまでの取組みに対する国民の信頼には大きなものがありまた、 献血に係る事業の高い倫理性や公共性に鑑み、今後も関係者の役割と責任を明確にし た上で、国民の理解と協力の下に、全ての関係者の努力により献血量の確保が図られ ることが望ましい。 ・ 国及び地方公共団体は、必要な血液製剤を献血血液により確保できるよう、献血に 対する国民の理解と協力を得るべく必要な措置を講ずるとともに、日本赤十字社によ る献血に係る事業に対して積極的に参画すべきである。 ・ 国は、献血に関する安全性確保や予算、事業計画等を含め、事業の健全な運営につ いて全般的な監督責任を負うべきである。 ・ 日本赤十字社は、献血目標量や献血血液を原料として製造される血液製剤の量の見 通し等、事業遂行のための具体的な事業実施計画を策定し実施すべきである。また、 国は血液製剤の需要の動向や献血の促進等に関する基本的な指針を策定すべきであ る。 ・ 献血に係る事業に従事する者は、献血者に関する情報等業務を通じて知り得た事実 を、プライバシーの保護等に十分に配慮して取り扱う必要があり、制度上の整備が必 要である。 ・ 血液事業への信頼性の確保の観点から、献血時に発生する健康被害に対する仕組み が整備されることが望ましい。 (2)中長期の需給計画の策定 ・ 国は、高齢化の進展等を踏まえた、アルブミンや免疫グロブリン製剤等、血液製剤 の種類別の具体的な国内自給の見通しを示すべきである。将来の展望が明らかになる ことにより、国民の献血に対する機運が一層高まると考えられる ・ アルブミン製剤については、高齢化の進行等による増加要因がある一方、使用の適 正化や献血量の確保、また、近い将采リコンビナント製剤の利用が可能となる見通し もあることから、21世紀初頭を目途に自給の達成に努めるべきである。 ・ グロブリン製剤については、重症感染症に対して効果があることが判明してきてお り将来需要が伸長する可能性があり、また、リコンビナント製剤の開発が困難である と考えられる。したがって、今後使用動向について調査・把握しつつ、製剤の適正使 用、献血量の確保、原料血漿の有効活用を促進し、21世紀初頭を目途に国内自給の 達成を目指すべきである。 ・ 国内自給を進める上で種々の不確定要素があるものの、今後の人口の高齢化や血液 製剤の使用の適正化、代替製剤の開発の可能性等を考慮して、今後10年間の間に年 間1千万人の献血者の確保を目標として、国内自給に取り組むべきである。 (3)輸入血漿分画製剤の取扱い ・ 国内自給が達成された後も、国内での自給が困難な一部の製剤については、輸入製 剤が供給される必要があるが、その場合においても我が国の献血が無償であることに 鑑み、原則として無償で採血された血液によるものであることが望ましい。 3.血液製剤の適正使用 ・ 血液製剤は、ヒトの血液という有限で貴重な資源を原料としており、医療上は有効 であっても、安易に第一選択として用いるべきではないという「血液製剤の適正使 用」について、卒前・卒後の教育の充実が必要である。 ・ 医療機関において血液製剤の保管・管理や適正使用の指導を行うための輸血療法委 員会を設置するとともに、輸血部門等の整備を図ることも有効な方策であると考えら れる。 ・ 医療機関の第三者による機能評価に際して、医師その他医療関係者に対する血液製 剤の適正使用に関する教育等を評価の対象項目に取り入れることを検討すべきであ る。 ・ 国は関係学会と連携しつつ、アルブミン製剤や新鮮凍結血漿について使用基準の見 直しや再評価等の具体策を講ずるべきである。また、グロブリン製剤に関して、感染 症に対する適正な使用の在り方が検討されるべきである。 ・ 国・地方公共団体は、医療機関と協力して適正使用のための使用基準の普及を図る べきである。 4.献血血液の有効利用 ・ 献血血液は、国民の善意と連帯の精神から自発的な意志の下に提供される、 国民的な資産ともいうべきものあり、無駄なく有効に活用される必要がある。   具体的には、収率の向上や分画後のぺ一スト等の有効利用に関係者が努める必要が ある。 5.安定的かつ効率的な供給 ・ 血液製剤を供給する事業者は、重大な社会的責任を果たしているという自覚に立っ て、製剤を安定的かつ効率的に供給すべく業務の遂行に努める必要がある。 (1)輸血用血液製剤 ・ 輸血用血液製剤の製造については、従来日本赤十字社により輸血用血液製剤が提供 されており、今後も引き統き日本赤十字社により行われていくことが望ましい。ま た、国は日本赤十字社による事業に対して適切な監督と支援を行う必要がある。 (2)血漿分画製剤 ・ ウイルス等の病原体の不活化や除去の技術開発が民間事業者の創意・工夫により発 展してきたことや、今後の技術開発力の維持向上や運営の効率性の観点から、現行の ように複数の民間事業者による競争を通じて、効率的かつ適正な供給を図るべきであ る。 ・ 各事業者は、血漿分画製剤の安全性のレベルを高めるため、ウイルス等の不活化や 除去のための新技術の開発・導入に積極的に取り組む必要がある。 ・ 国は、血漿分画製剤の製造・販売に関しては、不当廉売を防止し、不適正な使用が 助長されるような事態が生じることのないようにすべきである。 ・ 不当な行為が事業者にあった場合には、原料の提供を制限するなど適切な対応がと られるべきである。 ・ 日本赤十字社から民間事業者に対する献血由来の原料血漿の譲渡に関しては今後も 配分量や価格の設定を公正かつ透明なルールで、国の監督のもとに行なっていくこと が必要である。 6.透明性の確保 ・ 血液事業はその公共性から、情報が幅広く国民に公開され、透明性が確保されるべ きである。情報の提供を受けることにより、国民の血液事業に対する関心が高まり理 解が深まるとともに、事業への信頼が増すこととなり、また、国民の献血に対する協 力につながると考えられる。 7.法制度の整備 ・ これまでの血液事業の成果を承継しつつ、提言の個々の内容を具体化し、21世紀 に向けた事業の一段の飛躍を期すため、時代の要請に応えた新たな法制化が必要であ る。」 以上であります。 高久座長 どうもありがとうございました。今までのこの委員会ですでに各項目につきましてご 議論を願ってきたわけでありますから本日は逐一ご議論を願うということではなくて、 委員の皆さん方からこの1ページから6ページの内容につきましてご随意にお気づきに なった点をご指摘願えればと思います。残り時間が後1時間10分ほどございますの で、どうぞご自由にいろいろとご発言を願いたいと思いますよろしくお願いいたします 。 前田委員  たしか第2回目の懇談会で一度申し上げたかと思いますが。最初は技術の問題という か、安全性に重きをおくというやり方で議論を始めるというのは当然だろうと思いまし た。しかしその後になっても血液行政あるいは血液事業の仕組みとか、枠組みについて の種々の議論は十分ではなかったと思っています。湯浅委員も述べられましたが、始め に血液行政や血液事業の責任体制の確立がキチンとされなくてはならないと感じていま す。勿論、事務局としても、そのことは考えていられるのでしょうが、責任体制が出来 た上で、この懇談会で出された意見を受けて、具体化されるのだろうと理解していま す。多分この後は、具体化のためにいろんな委員会や諮問委員会も設けられるのでしょ う。責任体制が確立された後に、枠組みの中でどのような役目の委員会が必要なのかと いう議論があるべきだと感じています。  それと、もう一つは「血液行政の在り方に関する基本的な考え方(案)」の最後の7 番目で“法制度の整備”のところで触れられている法制化のことです。具体的に出され たのは今回出された市町村にたいするアンケート調査結果の中での、市町村の役割を法 的にキチンとしないと献血の仕事がやりにくいとしか述べられていない。法制化の範囲 をもっと広げて、たとえば血液センターに関する部分は血液事業法、医療機関に関する 部分は輸血法、日赤分画センターと製薬メーカーの分画製剤に関わるところは現在の薬 事法でいいのか、さらに言えば国・厚生省にかかる部分の法制化も含めた法制度の整備 は。というような論議はどうなるのか。この懇談会を受けて枠組みをつくる時には、今 までの議論では中身は薄かったのではないかと、いま頃思いついて言わせて貰っていま す。 高久座長 どうもありがとうございました。その点につきましてご意見ありませんでしょうか。 いま責任体制の問題と、法制化についてはもう少し具体的なものを作る必要があるので はないかという議論をもう少しする必要があるというご意見がございましたが、どなた か。これは起草委員会のところで起草するときにその点を考慮して作っていくことにな りますですね。責任体制の問題と法制度の整備の問題はあるていど関連がありますね。 湯浅委員  4ページの左側にある項目の、上から2番目と3番目の所です。今まで懇談会は国と 日本赤十字社(もちろん医療機関も含めてですけれども)の役割と責任を明確にすると いうことでした。つまり「国は、献血に関する安全性確保や予算、事業計画等を含め 〜」の項目とその次「日本赤十字社は〜」とございますけれども、単なる「事業」の健 全な運営ではなくて、ここのところに「血液事業」と入れていただくことが大事と思い ます。「赤十字社は〜」とここにもやはり血液事業とはっきりと入れていただいて「血 液事業の遂行のため具体的な施策を実施する」とする。国は血液事業に対して指導監督 責任、それから日本赤十字社は血液事業等の実施の主体となるというそれぞれの責任と 役割が明確に示されたと思います。 高久座長 どうもありがとうございました。ここのところで国と日本赤十字社の責任ということ が書かれております。いま湯浅委員がいわれた事は国のことについて血液事業の健全な 運営だけでなくて、全般的な指導責任ですね。そうですか。 湯浅委員  いままでの議論はこういうことだとと思うのです。 草刈委員  最初に高久先生がおっしゃったように何人かの起草委員が選ばれてやられるので全体 的なことで理解すれば良いのではないかと思ってます。たとえばいまの先生おっしゃっ た4ページの上から3番目の・などは日赤だけではできないんですね。都道府県と市区 町村が責任をもってもらわないと。でも後を読んでいくとそういう役割は入っているか ら全体としては良いのかなと思って了解してまして、そういう文言一つひとつやって いったら、起草委員の仕事をここでやることになっちゃいますからね。全体の考えの中 でとくに強調しておきたいことを申し上げておいた方が良いのかなというスタンスでお るわけでございます。 湯浅委員  私はいまそういう点をここで確認しておきたいと思ったのです。 高久座長 どちらでも全体のことでも結構です。どうぞ。 坂巻委員  起草委員の先生方にまとめていただくことになるんですが、まず基本的な考え方とい う場合に順番がですね、いきなり「安全性の確保」というところから行くというのはど う考えてもおかしいと思うんですね。基本的な考え方を最初に国としてはこれから血液 行政をどういう視点でどういう責任で行うのかという決意表明みたいなものがまず最初 に来て、いま4ページにある部分がどうかでありましょうけれども、その部分が最初に こないと。いきなり「安全性」という技術論に入っちゃうんじゃなく、われわれの懇談 会が血液行政の在り方に対しての考え方ですからまず原理原則をもってくることが順番 だろうと思います。  それからもう一つは訴訟団からいろいろと提言が出ているわけですから、この中で もって取り入れられるもの、取り入れられないものというものは当然出てくると思うん ですね。そうするとたとえばPL法についての責任をどうするのかということについて は一切触れられていないわけですけれども、そういったものについてやはりせっかく原 告団の方が出していただいた提言なんですから、取り入れられるものは取り入れるよう な議論というものは少しした方が良いんじゃないかなという気がいたします。以上で す。 高久座長 ほかにどなたか。 清水委員  先生方のご発言で私も賛成で、やはりかなり技術的な部分が多すぎて、基本的な姿勢 というんですか、何を目指すかというところが多少欠けているので、それは補強してい ただきたいというふうに思います。とくに一番最後の法制度の整備というところでも 「血液事業の成果を承継しつつ〜」とありますけれども、むしろこの懇談会は輸血およ び血液製剤による被害を二度と再び発生させないというところにあったので、成果だけ でなくて、むしろ反省の上にたって法制度という文言にした方が良いんじゃないかとい うふうに思います。  それから前回の私の発言で責任主体をということをもう少しこの場で議論した方が良 いという素人なりのことを申し上げたので、意見を申し上げる責任があるように思いま すので、発言させていただきたいんです。考え方の案の3ページの国内自給の推進の・ の三つ目あたりがそれに関係するのかと思いますけれども、ここを読みますと「国や地 方自治体、日本赤十字社等の関係者の役割と責任を明確にした上で、国内自給を推進し ていく必要がある」ということですが、これは原告の方の意見書とか、提言とかを拝見 しますと、やはり製剤の安全性確保、安定供給の観点から国が血液行政と血液事業の責 任主体であるべきだということをはっきり示しておられます。ところが私、薬とか、医 療とか、まったく素人で一消費者としての意見ですけれども、昨今いろんな起こってお ります社会的事件を見ますと国というのは何なのかということです。国というのは非常 に善意ですべて万能の何か神みたいなことを思っているのが、むしろいまの日本でいろ んなひずみを生じてきているというふうに思いますので、国が責任主体であるというこ とが、果たして安全性の確保にとって現状よりプラスになるのかどうかということが疑 問であるということをまず申し上げたいと思うんです。国が責任主体となるというとき には、国が自ら事業を実施するのか、それともこれを他に委託するのかという二つの選 択があると思うのです。まず最初の国が自ら事業を実施するということはやはり今のい ろんな社会的現象からみてこれは問題があるというふうに一般的な認識が高まってきて いる。  またどこかにこれを委託するというときですけれども、委託された側というのは委託 されたので、委託した側の責任で自らの責任というのがどうもあいまいになるというそ ういう現象があるんではないかというふうに思います。これは今起こっておりますいろ んな問題でも痛切に感じておりますので。  したがいまして結論から申し上げると国とか、地方自治体とか、日本赤十字社、それ から事業者いろんな部分がそれぞれ責任と役割の範囲を法的に明確にしておくというこ とでお互いの緊張関係の中で事業がよりよく進むのではないかなという感想を持ってお ります。  国が事業の責任主体となるということは何か私もそういうふうに思っていろんな問題 に取り組んできましたけれども、国っていったい何なのかということが今問題として問 われている。お互いの責任と役割分担を明確に法律の中に位置づけて、緊張関係の中で 情報公開とか、透明性の確保ということを担保しながら進めていくことが良いのではな いかなというふうに思っております。  今の意見は私が前回申し上げた委員会の発言に対する自分なりの責任の範囲で発言い たしました。 高久座長 4ページに書いてありますけれども、国の監督責任ですね。実施責任ではなくて、監 督責任を、あるいは湯浅委員が指導監督責任とおっしゃいましたが、指導監督責任とい うことですね。3ページのは国内自給の問題で国、地方公共団体、赤十字社等の関係者 の役割と責任を明確にした上で国内自給を推進していく必要があるという、国内自給に 関しての国、地方公共団体、日本赤十字社の役割と責任をということで少し4ページの 部分とは違うというふうに私は理解をしていました。さきほどご意見がありましたよう に最初に血液事業に各分野がどういう役割を分担していくかということを明瞭にしてそ れから安全性の確保、国内自給の推進というような問題を議論をしていく方が筋道だと 思いますので、坂巻委員のおっしゃったこと等を十分考慮したいと考えております。  他にどなたかご意見を。 渡辺委員  全体の枠組みについては坂巻委員のおっしゃったことに私も賛成でありまして、いき なりちょっと技術論は,という気はいたしますので、そのことを申し上げておきます。  ちょっと各論にいきますと1ページですね。「危険性に関する情報の把握・評価及び 伝達」と、たいへん重要なことで薬害エイズに関してもこのことが行われていれば違っ た結果になったと思われますし、このことはたいへん重要なのですが、ここで申し上げ ておきたいのは、これは重要なのだけれども、きわめて難しいということですね。それ でいま国の責任の問題ありますが、たとえばここの表現は「事業者や国等は可能なかぎ り〜」とあって、後は章は「事業者や国等」だと思うんですがこの書き方ひとつとって みても非常にあいまいですね。「事業者や国」ここだけどういうわけか事業者が先にき てね。「事業者や国等」となっている。だれがこういった情報を適切に評価して多様な 手段をしかも「危険のていどを不確実な段階にあるうちから」と。  たとえば国がやるといっても、非常に言いにくいことはっきり言いますと、とくに国 はこういうことは非常に苦手なんですね。「多様な手段を用いて不確実な段階にあるう ちから柔軟に情報を発信する」というのはきわめて苦手な分野なわけですから、ここに こういうふうに書いたって、そのとおりできるかどうか私は疑いますね。ですからそう いったちょっとした外国から、まさに薬害エイズの問題もそうだったんですが、そう いった危険な情報が入ってきた。それを危険かどうか評価する。危険でなかったと判断 したから伝えなかったということもあるようですけれども、そういったものもすべて情 報伝達しろと言っているわけですね。それがほんとうにたいへん重要なことだけにもう 少しだれがどのようにやるかということを明確にしておかないとただ書いただけという ことになりかねないというような気がいたしますので、このへんをもう少し何とかしな いと。確かに難しい点はあると思うんだけれども、具体的にと申しましょうか、してい く必要があるのかなと思います。  以上です。 高久座長 はい。どうぞ。 中谷委員  坂巻委員がおっしゃられたこと、私この基本的考え方(案)を拝見したときにすぐに 思いましたのですけれども、おそらくそれは起草委員会の方でちゃんとされるんだろう と思いますけれども、先ほど前田委員からのご提案の責任体制の所在する委員会の設置 というご提案がございましたけれども、そういうことになりますと起草委員会の権限を 越えるんだろうと私は思います。だからそれはこの懇談会でキチンとご検討いただいた 方がよろしいのではないかと。それから法制化についてもいろんな問題があるわけです が、それもだいたいの概要ぐらいについては懇談会の委員の皆さん方のコンセンサスを 得ておく必要があるのではないかなと思いますので。 高久座長 その点について委員会、それから法制化の問題についてご意見。前田委員いかがです か。 前田委員  今までの資料で見ました諸外国の血液行政や血液事業への取り組みですが、やはりエ イズ問題を契機として明確になった問題について、各国とも対策を立てる際には、最高 の責任部所とか、決定を行う最高の委員会をまず最初に設けていますね。 高久座長 常設の委員会ですか。 前田委員  はい、その部所とか委員会には、日本の行政組織にはそういうものは無いと聞いてい ますが、リーダーシップがとれる高い地位の者をチーフを据えて積極的に仕事を推進で きる仕組みにしたと述べてあります。このやり方は日本ではとれないのでしょうか。日 本でもそういう本当の責任がとれる親委員会のようなものが必要ではないでしょうか。 外国の資料を見ているとそう思います。 中谷委員  これにだいたい出ていますからね。各国の対応が。これご参考にされて良いんじゃな いですか。 高久座長 常設の血液の問題に関する委員会、どういう方が委員長になられるか分かりません が、その方は危険な立場になり得るかもしれませんね。  法制化については中谷委員どういうふうにお考えですか。 中谷委員  具体的に考えておりませんけれども、こういう各国の立法例なんかみますとずいぶん 参考になりますので、それを検討した上で日本ではどうあるべきかということを考える ベきだというふうに思っております。 高久座長 どうもありがとうございました。  他にどなたかご意見。どうぞ。三星委員。 三星委員  安全性ということと、今日の資料の5ページの「4、献血血液の有効利用」というこ とでちょっと感じたことを申し上げたいと思います。実は今回ちょっと所用がありまし て北海道に行きました。かねてから日赤の千歳のセンターを分画センターを拝見したい と思っておりましたのでお願いして分画センターの施設を見させていただきました。わ れわれ素人ですから当然のことで十分な知識もないわけですけれども、全国から血液の 原料が集まって分画製剤の製品ができるまでのあれを一通り見させていただいたんです が、センターではあらかじめ原料を長期間保管しておられさらに製造の中でウイルスを とり除き不活化をし、最終的に製品を検査をしてPCRというんですか、国家検査を 行っているとうかかったわけですが、しかしこれだけいろいろな検査をされてできたも のであっても、輸血時の副作用等のいろんな情報で製造の途中や製品の段階で止まって いるものというものがあるわけでして、千歳の倉庫にはそういうような製品がご指示に よるわけですが、出荷できないといいますか、保存されているものが献血の量にして1 万4千〜5千人分にあたる量の製品が止まっているんだというふうにお話を聞いてきた わけでありますが、いろいろと安全性ということを今日もまた議論しておりますから安 全にはこしたことはないわけでありますけれども、さきほどの前田先生のお話もあった ように科学的に立証されているのであれば、あるていど売血ということとはいっしょに しないで公正な立場でちゃんとする。これは外国にはそういう委員会もあるということ をうかがいましたけれども、ちゃんとそこで検査をして責任をもった形て出荷ができる ような体制、市場うかがいますといろんな意味で薬品がタイトになっていると、VIII因 子ですか、に関するようなものがタイトになっているということもうかがいましたの で、あるていどのことはやむを得ない、インフォームド・コンセントで血液はすべてい まPL法の関係で出荷されている、しかもそこでそういう形をとっているわけですから あんまり安全性完璧なもの、100%ということは血液は不可能だということになって いるわけですからそのへんのことをちょっとアメリカ並にちゃんとした今のような委員 会ができて最終的な決断ができるような形をとっていただけないかなと、そう思って感 じたわけです。  われわれもここにも書いてございますが、今後委員会から出てくる国内自給というこ とを向けますと一千万人献血ということをどういう形でやるか今非常にわれわれも練っ ているところの最中でございますので、せっかく善意の献血をしていただいた血液が1 万何千人分も使えない状況だということになりますと、ちょっと抵抗を感じると思うわ けでありまして、先般この会で最初の方でしたか「血液の安全性を求めることは神学の 世界である」というようなことを言っておられましたが、事実そうだと思いますので、 しかし科学的にキチンと評価すれば、評価されたものをこれはなんとしても流通させて いただければありがたいなと思うわけですが、われわれが今後献血をますます拡大して いく意味においても、献血者への理解を深める意味においてもせっかくやったものが何 らかの形で止まってしまって破棄されるということが出てきますと大変困るわけでして このへんのところをいろんな機関、もちろん厚生省をはじめとしてご理解をいただきな がら、患者さんの不便が起きないような形にしていただけんかなと、こういうふうに感 じてきましたので、よろしくお願いいたします 。 高久座長 どうもありがとうございました。  ほかにどなたか。 神尾委員  この血液行政の在り方に関する懇談会が担っている役割の守備範囲というのはいま一 つぼくには分からないんですが。と言いますのは、今回ここに提出されたものが血液行 政の在り方に関する基本的考え方(案)が出てきた。これは基本的考え方でこれで役割 が終わってまた違う委員会ができて具体的な方策を検討されるのか、そこらへんがもう 一つはっきりしないので、この基本的な考え方だけですむならばこれに前文をどなたか が言われたようにつけて、こういうものが基本的なんだろうなということだと思います が、それから先に突っ込むのかどうかというのがいま一つはっきりしないので申し上げ られない。  それともしも具体的な案というところまで話が進まれるならば、いままでの第6回ま での検討の流れを踏まえてこの血液製剤、全血も含めて薬価に収載されるということ自 体が非常に大きな問題になるんじゃないかなとぼくは思っているんですけれどもそこら へんもまったく触れられていない。それは具体的なところで触れていくのかどうか。そ ういうことまでこれは基本的な案だからということになってしまうと、話が先に進まな いんじゃないのかなというふうに思っております。 高久座長 これは後でお話申し上げようかと思いましたが、起草委員会ができまして、それで起 草委員会の方々に報告書の案を作っていただき、この委員会でそれについて議論をする ということになると思います。したがいましてこの基本的な考え方で終わるという事で はございません。薬価はつけないと血液事業は成り立たないことになります。草刈委 員。 草刈委員  大きな変革だと思いますが、オーストラリアのたまたま問診のことで調査しました ら、血液代金は国または州で全額負担しているんですね。ですからそういうことも含め まして大変革が必要な場合があるよということですね。もし全部国でやるということに なりますと。先生。 高久座長 どうぞ。 草刈委員  日本のインタビューも決して悪いわけではないということがはっきり分かったわけで ございますが、オーストラリアの場合は最終的には収監あるいは罰金を食らわすための キチンとしたシステムが必要だったということで、ウイットネスつまり立会人とインタ ビューアはイコールです。ただし、3ページのところにありますようにHIV検査の結 果を知らせるという意見もございましたけれども、オーストラリアについてわれわれが 新たに知ったことは向こうは100万人の献血者、日本は600万人献血でHIV陽性 の方の割合は変わらないんです。大体。 1996年だと私ども46人、オーストラリアが4人とか、それからその3年前の9 3年はオーストラリアが5人だったのが、日本では35人と、だいたい献血者の数と比 例しているということでございます。ところがHIVの感染者の数はオーストラリアの 方が非常に日本より多いわけです。いま、公表されている数におきましては。そうする と公衆衛生的なHIV予防というHIV感染を早く発見し、早く治療していただくため には保健所での検査の強化充実が必要だなということがこれで分かってきたような気が いたします。 高久座長 どうぞ。 秀嶋委員  血液製剤の適正使用ということでございますけれども、適正使用というのは何かばく ぜんとむだな使い方をしているというふうに考えられてもいけないので、たとえ有効な 場合であってもウイルスの混入の危険性、それからまた貴重な資源ということからして 人の血液ということから考えますとやっぱりリコンビナントとかそういう代替物をでき るだけ使うというような有効な使い方、大切に使うというような考え方をどこかに盛っ ていただきたいなと。医学教育の中でもけっこうですけれどもそういう印象を与えた方 が良いんじゃないかなというふうに思っております。 高久座長 適正使用ということばは確かに良いことばですが、私は場合によっては使用の制限を せざるを得ないのではないかというふうに考えます。もちろん自給ということを目標に して、自給が達成されない場合には使用の制限をせざるを得ないのではないかと。とく にガンマーグロブリンの場合問題になると思いますが、ガンマーグロブリンが重症感染 者に有効なことが報告されていますが、しかし抗生物質もあるわけですから、あるてい ど有効と判ったとしても使用制限せざるを得ないのではないかというふうに考えていま す。適正ということだけですまない可能性があるのではないかというふうに思っており ます。  他にどなたかご意見おありでしょうか。さきほど坂巻委員の方からPL法のことなど も議論すべきではないかというのですが、何回目かの委員会で議論がありましたね。こ の時点でPLの事について論じるのは問題だと思うのですが、どなたかご意見ございま せんでしょうか。  どうぞ。 行天委員  PLの問題はものすごく大きな問題になってしまうので、どのくらいこれに盛るかど うかという問題があるかと思うんです。一応法律的にはもう動いているわけですから、 そこの解釈だと思うのです。ただPLをどう考えるかということ自身が今まで各委員の 方からも出たこの委員会でどこまで具体的な方向性を入れるかという問題と非常に似 通っていると思うんでございますね。  私が前回PLのことに対してちょっと触れさせていただいたのは基本的にはまず国内 の自給体制であるとしたら、ほんとうに献血が確保できるんだろうかと。大丈夫なんで すかというその具体策の方がちょっと抜けていて、それを大前提にして考えるんであれ ばそうとう強力な献血体制というものを具体化していかなければいけないのではないか というふうに思っているんですが。  それからさきほど三星委員が千歳をご覧になって使えなくなって廃棄もしくはペン ディングになっているものが非常に多いというお話があったんですけれども、私は血液 はしょせん危ないものですから、ちょっとでもダウトがあるんなら廃棄せざるを得ない と。そういうものなんだという前提をやはり了解しないと、せっかく善意でいただいた から何とかして使おうというのではなくて、安全という問題に関してはたいへんなリス クを持っているから廃棄しなきゃならないんだと。そして廃棄は必ずしも善意を否定し ているんではないという教育の方がむしろ大事じゃないかなという感じがいたします。 PL問題も実は結局は臓器移植の問題で臓器移植のものをPLに適用するかしないかと いう問題が根本にあるんですけれども、それを今やっていますと、なんといってもほと んど弁護士の方の法的な解釈の問題とぶつかりますので、ちょっと今回はネグった方が 良いんじゃないかと。 高久座長 どうもありがとうございました。  どうぞ。草刈委員。 草刈委員  献血者の方々の意志を削がないでほしいと私は思います。アメリカのFDAは「安全 (というのをfreedom fromと言っていますが)は、絶対的でなく相対的なものである。 求めるべきゴールであるけれども」ときちんと言っています。日本の薬事法体系はもと もと絶対に安全でなければならないと解釈されるものなのです。それから最近の事例で ございますが、FDAが出した書簡の中にこれは前にも触れましたけれども、現在使用 されているものの危険性を上回るかどうかの判断で使ってよろしいかまたは回収せよと やっているんですね。行政の責務(われわれの責務もそうでしょうけれども)は安全に 提供することであって、あまりに保身的になって確認を怠って捨ててしまって良いのか ということも献血者の心情を考えるとたいへん悩むこともあるということだけはお判り いただきたいと思います。 高久座長 すべての薬は決して100%安全といえないわけですから。どんな薬でも人によっ て、あるいは状況に応じて非常に重篤な副作用が起こる可能性がある。よく新聞などに 報道されていますが、副作用の委員会に出ますと風邪薬でも致命的になることがありま すし、すべての薬は血液製剤だけでなくて、危険なものであるということをもう少し知 らせる必要があるんではないかと、これは私の個人的な意見です。 菅谷委員  こういう問題、それからことが起こると一般的には非常に規制を加えよと、それでう まくいくんだという幻想を皆もってしまう。しかし本来的にはこれがそういうことでは なくて、たとえば今出ている法律で規制するとか、あるいは何とか委員会を作ってそこ でチャンとやれば良いんだと。あるいは国に責任を持たせればそれですむ問題かという ことを考えると必ずしもそうではない。血液製剤そのものがどういうものであるかとい うことを基本的に国民に十分理解してもらう。これが一番大事なことだろうと。そして 次はそれを使用する医療の現場、ここでの教育、こういうものをキッチリとやらないか ぎりはいくら法的に規制を加えてみたところでそれでうまくいくというふうなことはと ても考えられない。やはり基本的な問題をどう国民に理解してもらうか。一方医療の現 場で対応を適正にやってもらうかということをキチッと求めていく、そのことの方がむ しろ大事で、それを支える意味で国がどう関与するか、あるいはどういうシステムを作 れば良いのかということがむしろまとめられていく方向ではないのかというふうに思っ ております。 高久座長 はい。どうもありがとうございました。 湯浅委員  今のことに関連しますけれども、この1ページ目のところに大事な情報の伝達方法が 書いてございますけれども、いろんな危険な情報を患者や医療機関に提供すると書いて ございますけれども、医療機関に対して行政機関からいろんな情報や、書類が回ってく るわけです。医療機関も今までみたいに回ってきたものに判子おして一部の人に回すの ではなくて、的確に現場のドクター一人ひとりに伝わるようなシステムを作ることが大 事じゃないかと思っております。 高久座長 おっしゃるとおりで、偉い人に言っても下に伝わらない場合がありますので、また伝 えられた医療機関ではその情報を周知徹底する努力をする必要があるということだと思 います。  どうぞ。 前田委員  多分、この懇談会では献血の現場で仕事をやっているのは私だけのようですので、現 場に密接した話しをさせで貰います。この懇談会でもう少し議論をするか、あるいは他 の場所で議論するのか、決めて頂きたいのは:「血液行政の在り方に関する基本的な考 え方(案)の 1.安全性の確保の(3)献血者に対するHIV等に関する情報提供: の部分です。HIVの検査結果についてどう決めるのか。考え方をもう一度整理し直し て、献血者に伝えるのであれば、実務としてどういうやり方であるのか、現状のまま結 果を伝えないのならば、それなりに再確認するという手続が必要でしょう。結果を伝え ていないもので、HIVに類するものにHTLV-1抗体の検査があります。いろんな 意味で、この二つの検査の通知の持つ影響は違うと思います。この懇談会以外で議論す るところとしては国の“安全性の委員会”が考えられます。そこでもう一度議論をする こともあるでしょう。献血を受け入れている現場でのもう一つの重大関心事は、分画製 剤用の原料血漿の確保の問題です。現場では、ナマで使用される一般の輸血用血液と、 分画製剤用の原料血漿を一緒くたに採取しているのが実状です。本当は一般の輸血用血 液と、いろいろ加工して製造される分画製剤の原料とは、出来るだけ切り分けて考える ようにして頂ければ現場としては有り難いと思います。と申しますのは、いつも日赤の 血液センターでは一般輸血用血液と原料血漿はセットで考えて働いていますが、小さな 県では必要な輸血用の血漿は大した量ではありません。しかしその県の分画製剤用の原 料血漿はどれだけ確保すればいいのか。あまりはっきりしていません。地域での自給自 足の原則を振り回せば、その県で治療を受けている血友病の患者さんは殆どいないこと もありえます。そういう具合に大変幅広い状態での血液事業であることも認識してほし いと思います。ただ血液確保は原料血漿も含めて日赤の仕事で当然だということではな く、日本全体として全国的にどうあるべきかというコンセンサスが分画剤についても得 られることが欠かせないということです。  それともう一つは、輸血用の血液も分画製剤用の原料血漿もすべて国内の献血で賄う 話がされましたが、血液確保を実際に行っている現場としましては、21世紀の初頭に はということでは、あまりに曖昧な目標の示され方であると思います。もっとはっきり 具体的にタイムスケジュールを決めることをしないで、現場の、あるいは日赤の、努力 に待つということでは、今までと状況は同じであり国内自給は困難です。これは現場を 預かるものの実感として言えます。 高久座長 最初のHIVの問題については3ページの上の方にあります。これが果たして問題で あるかどうかという先ほどのご議論もありましたが、「感染者の早期治療や知る権利の 尊重、二次感染防止等の観点から原則として陽性者には通知すべきである」というふう に書いてあります。これで現場の方は良いのですが。 前田委員  HIVそれにHTLV-1の検査結果の取り扱いは、もう一度はっきりして頂かないと 現場としては大変困ります。この「血液行政の在り方に関する基本的考え方(案)に示 されている -1.安全性の確保の(3)献血者に対する HIV等に関する情報提供 -の中で述べてあるように“原則として通知すべきである”についてどうするのか。ここ にはこう書いてあるが、やはり現状のままで通知しないことにするのか、今後は通知す る方向で検討するのか、どちらかはっきりして欲しい。この懇談会では問題として取り 上げましたということで終わってしまうのは現場としては非常に困ります。 高久座長 全血とか、分画の問題は日赤さんの方の問題になるんでしょうね。 草刈委員  輸血用血液は100%日本赤十字がやらしていただいていますので、そうだと思いま すが、それだけに輸血用血液から出てくる副作用の情報はわれわれに入ります。それが 直接に分画事業の方に反映するものですから先ほど三星委員が言ったようなたとえば白 血病の患者さんに100本輸血した場合、どうもその白血病の患者さんからB型肝炎が 出たらしいとなるとわれわれは、100人の献血者の全部が大丈夫とわかるまで製造を 止めてしまう。絶対に日赤らしくないことをしたくない。検体保管前の去年の9月から 以前の献血の場合には献血者の方々のご協力いただいてそのあとの検査をさせていただ いてぼくら胸を撫で下ろすこともございますが、そういう100を越すことだと有効期 限もあり廃棄せざるを得なくなることがあるということを申し上げたのでこれは日本赤 十字が両方やっている特性かも知れません。三星さんがこの間ご視察いただいてびっく りしたのでございます。病院から情報は入れていただくには輸血前を検査していないも のですから、そのような状態になっています。そのへんは輸血のインフォームド・コン セントのときに医療の現場では必要なのかなという気はいたしております。患者さんた ちの認識も非常に高まってきたということと、それから検査技法もできてきたというこ ともございますので。その中でも厚生省とも打ち合わせながらわれわれの貯留保管を長 くして対応していきたいと考えています。それから分画センターでもPCRをやって小 分けにした検体の中でやって、無為に捨てなきゃならんという被害を少なくするような 努力をいま着々と続けておりますので、三星さんのおっしゃるような危機的な状況をや がて解消するべく努めています。 高久座長 「国は基本的な指針を策定すべきである」とか「制度上の整備が必要である」とか 「仕組みが整備されることが望ましい」とありますけれども、一つひとつ具体化してい くわけですね。 血液室長 最初にこの懇談会の守備範囲についての議論もございましたけれども私どもが懇談会 の委員の先生方に一番期待していることは今の血液行政、あるいは今の血液の事業の現 状等につきましてどう変えるべきか、かくあるべきというご議論をできるだけいただき たいと考えております。  その中で国の方で法律にしなければ実行できないもの、あるいは法律にした方が実行 しやすいものというものもございますし、そうでなくて、法律事項以外でたとえば通知 とか、他の手段によって可能なものもあります。ご議論いただいたなかですでに実行で きるもので実行しているものもございます。  そういったことも含めて先生方の大所高所からの立場でいろんなことをご指摘いただ きましたなかで、われわれの方としてはすぐ実行できるものは実行するし、法律が必要 なものについてはその方向で検討を進めていくという方向で対処していきたいと考えて おります。 高久座長 ということでございます。  他にどなたか。どうぞ井形委員。 井形委員  国内自給の達成目標が20世紀の初頭というふうに書いてありますけれども、こうい うことが議論されますと医療現場では血液製剤使うときに「それは外国製品ですか、輸 入製品ですか、国内自給ですか」ということを聞かれるようになりますね。そうすると 非常に私たちの対応はしにくいので、少なくとも国内自給の達成目標がもう少し具体的 に極力早くというニュアンスを込めていただきたいと思います  これによるとなんとなく20世紀の初頭には達成しましょうというニュアンスですか ら・・・ 高久座長 どうぞ。 坂巻委員  国内自給については3ページ〜4ページに書いてあるわけですけれども、やっぱりも う少し国民の献血参加というものを強調されても良いんではないかなと。むしろそれを ベースにおかなければいけないということで10年間に一千万人と書いてありますけれ ども、いまの輸血推進の体制を基本的に見直すとか、若者中心のこの前笑われたんです が、若者はどんどん21世紀に減っていくわけですから若者を中心にしたキャンペーン だけではぼくは限界もあるだろうと思いますし、いま 60までですか、献血できるの は、そのへんがまったく認知されていなくて、献血は若い人のものだというようなこと を中高年考えるわけですから。  64までですか献血ができるのは。そうするとやはり献血体制の抜本的見直しでもう 少し献血ムードを盛り上げるような部分をもう少し書き込んだ方が良いんじゃないかな というふうに思います。以上です。 高久座長 確かに献血をどんどん増やすということ必要だと思うのですがこの現在のような使用 状況ですと、ガンマーグロブリンとか、国内で自給しようとすると他の血液が余ってし まうんじゃないか。そのところはいかがなものなんでしょうか。たとえば一千万人にし たときにガンマーグロブリンはいまのより増えない限りは自給できるんですけれども、 赤血球が大量に余るということがないのか、あるいは血漿分画だけでやれば大丈夫なの か、そこらへんについてはどういうふうに考えたらよろしいのでしょうか。湯浅先生何 かご意見おありでしょうか。 湯浅委員  赤血球の方が充分であれば、分画製剤の自給達成ということで成分献血をお願いする ことが大事じゃないかと思います。 高久座長 成分献血についてはこの提案の中で清水委員が、成分献血がしやすいような施策を講 じるべきてあるとおっしゃっていましたね。そういうことで差し当たっては成分献血を 促進するという方向にいくのが良いと思います。どうもありがとうございました。  どうぞ。草刈委員。 草刈委員  またオーストラリアのこと言って恐縮なんですが、法律で問診を厳しくしたんで、2 0%献血者が減っちゃったということがございます。成分献血で減るのは40分から一 時間かかっちゃうところをわれわれは一生懸命引き止めてご協力いただいております が、会社などのご協力があるとたいへんありがたい。そのようなことをここに書いてあ りますので、そういうところも強調していただければありがたいと思います。 高久座長 そうですね。  ほかにどなたかご意見おありでしょうか。 前田委員  さっき草刈委員がお話になったFDAの書簡の内容にも関係することですが、第1回 の懇談会で頂いた“HIVと血液供給”の原文の中にアメリカの考え方を最もよく示し ている部分が Risk Reduction Versus Zero Risk(211ページ)の章にあります。英語で 恐縮ですが「The perfect should not be the enemy of the good」と書いてあります。 多分パーフェクトを求めていくと、前よりは少しは良いことでも出来なくなってしまう ことの危うさを戒めているのではないでしょうか。一番極端な例はパーフェクトに安全 な血液を求めると、使える血液は足りなくなることもあり得るので、血液の安全性とい うことはリスクとバランスの上でどうするかという考え方が必要ではないでしょうか。 現在の我が国で最も必要なことは、誰が、あるいは、どのような部所がリスクを勘案し ながら責任を持って決めるのかということではないでしょうか。今後、種々の委員会等 が設けられるでしょうが、一番難しいところになるでしょう。 高久座長 そうですね。おっしゃるとおりだと思います。他のことでも欧米で一般にプラスの面と マイナスの面がすべてのことにあってプラスの面の方がマイナスの面をオーバーしてい る場合にはそれを受け入れるということがあり得るのですが、日本の場合にはしばしば マイナスの面が強調されてプラスの面が無視されるということが医療行政や血液行政だ けでなくて、いろんな面である。そのなかでいま前田委員がおっしゃったようなことを 実行するのは日本の風土としてはかなり難しいと個人的には感じておりますが。  他にどなたか。どうぞ。 三星委員  献血についてですが、高校生の献血ということ、いま都議会の先生と話をやっている んですが、選挙が近いものですから選挙が終わってからにしようということになってい ますけれども、かねてよりやっているんですが、なかなか公立高校の生徒のというか、 学校中心の反対もありまして、なかなかうまくいっていない。いまのいろんなエイズの 問題も含めて問題がとくに若い高校生中心にした薬害の問題やら何かありますからこの 方面の教育を十分していただくと同時に献血というものについてもっとはっきり教科書 にでもどんどん入れてもらって高校生の献血を思い切ってやることがわれわれも高校生 についてはまだ200という単位で止めているわけですけれども、このへんのところは 若い連中は勢いがあるわけでございますので、もうちょっと400にするとか、私立は まあまあなんですが、公立がなかなかできないのを解決すればかなりお客さんは増えて くるだろうというふうに感じておりますので、そのへんのところもなかに入れてもらえ ばありがたいと思います。 高久座長 3ページの方に「献血の重要性について学校の教育内容に盛り込む云々」と書いてあ りますが、ここのところはもう少し強調して三星委員がおっしゃったようなことを入れ たいと思います。  他にどなたか。  もしご意見がありませんでしたら、本日もいろいろなご意見を各委員の方々からいた だきまして、その中にはかなり基本的な問題等も含まれておりますので、一応皆さん方 からご自由な意見をうかがうことは一時停止といたしまして、本日のご議論を基にいた しまして最初申し上げましたように提言の作成作業に入りたいと思います。  提言は基本的な考えをより具体化したものになると思いますので、その中にはさきほ どからご議論がありました委員会の問題とか、あるいは法律の問題も入ってくると思い ます。この提言を作るための起草委員会を作ることをお認め願いたいと思います。起草 委員になられた方はご苦労ですが、一定期間の中にうちで提言をおまとめいただきまし て、この委員会の皆さん方に提言についてご議論をお願いをしてより具体性のあると申 しますか、質の高い提言をしたいと考えておりますので、よろしくお願いしたいと思い ます。  起草委員についてぜひ起草委員になりたいとお考えのご奇特な方いらっしゃれば手を 挙げていただくとありがたいんですが、多分そういう方はいらっしゃらないと思いまし て座長の権限で私の方から僣越ですけれども指名させていただきたいと思います。もち ろん私も責任上起草委員の一人になりますが、行天委員、清水委員、湯浅委員、中谷委 員の4名の方にまことに恐縮ではありますが、起草委員としてご尽力お願いしたいと思 います。よろしいでしょうか。  もしご異存がなければ私を含めまして今申し上げた4人の方総勢5人で提言をまとめ たいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。  事務局の方から次回のことについて 血液室長 それでは次回の日程についてでございますが、次回第8回の開催日は先ほど座長から お話のありました提言の作成作業の進み具合にもよるわけですが2カ月後を目途に開催 したいと思いますので、日程等につきましては各委員の皆様に後日ご案内をいたしたい と思います。 高久座長 2カ月となりますとちょうど7月、8月と暑い夏で夏休みの時間が入るわけでありま すが、2カ月ぐらいを目標にして提言をまとめたいと思いますので、起草委員の皆さん 方ほんとうにご苦労さまでありますけれども、よろしくお願いいたします。  以上をもちまして第7回の血液行政の在り方に関する懇談会を終わらせていただきた いと思います。本日はいろいろとご意見をたまわりましてありがとうございました。 問い合わせ先 医薬安全局血液対策課   担 当 菊池(内2903)   電 話 03-3503-1711