97/06/23 年金審議会議事録 年金審議会議事録 日 時 平成9年6月23日(月) 10:00〜12:15 場 所 全国社会福祉協議会第3・4・5会議室  1 開 会  2 委員出席状況報告  3 議 事   ・ 財政構造改革の動きについて   ・ 次期財政再計算に向けての検討について  ・ その他  6 閉 会 〔出席委員〕   京 極 会 長   八 木 委 員  砂子田 委 員  岡 崎 委 員  木 原 委 員    久保田 委 員 国 広 委 員 神 代 委 員  古 山 委 員   坂 巻 委 員  都 村 委 員  福 岡 委 員  桝 本 委 員   目 黒 委 員  山 田 委 員  山 根 委 員  吉 原 委 員   若 杉 委 員  渡 邊 委 員  貝 塚 委 員  船 後 委 員 ○会長  ただいまから年金審議会全員懇談会を開催いたします。  まず委員の出席状況につきまして事務局から御報告をお願いします。 ○事務局  それでは委員の御出席状況について御報告いたします。  本日は高山委員が御欠席で、その他の委員は御出席でございます。 ○会長  それでは本日の議事に入ります。 先日財政構造改革会議におきまして、「財政構造改革の推進方策」という文 書が取りまとめられまして、これを受けて政府として閣議決定が行われました。 更にこれに沿った形で財政構造改革会議におきまして、財政構造改革のための 法律案の内容の骨子も取りまとめが行われております。こうした状況について、 まず事務局からご説明をお願いします。 ○事務局  それでは財政構造改革の関係について御説明申し上げます。資料は資料1と 資料2がございます。  資料1の方でございますが、6月3日に「財政構造改革の推進について」と いうことで閣議決定がされておるわけでございます。社会保障関係の方をごら んいただきたいと思いますが、3ページ点線の枠で囲っておりますが、年金制 度に関する記述がございます。年金制度につきましては、早急に国民的かつ徹 底的な議論を開始し、11年度の再計算において、給付と負担の適正化と制度の 抜本改革を行うということになった次第でございます。  その際といたしまして、高所得者、施設入所者、スライドの変更、在職老齢 年金の在り方等を各々検討するとともに、支給開始年齢、給付水準の見直し等 の課題に取り組むとなっております。 また世代間の負担水準の公平化等を行う、あるいは総報酬制を導入する、基 礎年金の国庫負担率の引上げについては財政再建目標達成後改めて検討を行う、 企業年金、私的年金の整備を行う、というようなことが書かれております。  併せまして、社会保険の事務に要する費用について、一層の節減・合理化等 を行うなど、その在り方について見直す。  一定の収入以上の高齢者等に対する年金の見直しを保険原理に反しない範囲 で行う。  このようなことが一応政府の方針として決まったわけでございます。  資料1−2の「財政構造改革のための法律案について」です。こういった政 府の方針を、国会でも承認していただくということで、臨時国会に財政構造改 革のための法律案というのを出すということになっております。  年金部分についてでありますが、3ページの一番下ハでありますが、政府は、 次期財政再計算時に、厚生年金保険法、国民年金法その他の法律に基づく年金 制度について給付と負担の適正化等の抜本改革を行うため必要な措置を講ずる ものとする。  社会保険事務に要する費用の見直し。  高額所得者に支給される年金及び医療給付の見直し等々が記述されておると ころでございます。  以上でございます。 ○会長  ありがとうございました。  それではただいまご説明のありました事項につきまして、何か御質問がござ いましたら、お願いします。 ○A委員  今度の財政の圧縮の数字については、社会保障関係合計自然増が 8,000億と 言っておりますが、年金については 8,000億の中での割合は 1,500億ぐらいですか。 ○事務局 自然増 8,000億の中で年金につきましては、 1,500億と聞いております。 ○A委員 この削減 5,000億というやつが、年金関係に絡んでくるというのは、これを案分 比率したぐらいなのですか。 ○事務局 年金関係につきましては、制度改革自体を予定どおり平成11年に行うという ことでございますので、 8,000億を案分してどうこうするということではあり ません。むしろ医療費等の圧縮等によって予算編成に努めるということになっ ておるところでございます。 ○A委員 これは10年度予算ですね。11年度以降については、これはどういうことにな りそうなんですか。 ○事務局 11年度以降につきましては、ページで申しますと、資料1−1の2ページで すが、「社会保障」とありまして、対前年度伸率を高齢者数の増によるやむを 得ない影響分(全体の2%)以下に圧縮するということが書かれておりまして、 要するに高齢者の増分に対する対応はやむを得ない増加であるということでご ざいますけれども、例えば10年度予算で申しますと、第2パラグラフにありま すように、 8,000億超の当然増に対して 5,000億を上回る削減を行うと。いわ ば、その差し引き分、 3,000億程度が高齢者の増によるやむを得ない影響分と いうことですので、これは11年度以降もそういう形で続くと理解しております。 ○A委員 医療についてはいろいろ制度改革の余地があるのだろうと思うのですが、年 金の場合はそういうのに比べると、余り工夫するといっても、お金集めてお金 配るという感じだから、余りないような気がするのですけれども、その場合の、 年金自体の、ここで平均して全体の2%と言っているのは、社会保障関係費全 部だと思うのですけれども、年金だけとると、ここは伸び率どのくらいになる のでしょう。 ○事務局  年金の国庫負担が約4兆であり、そのうち年金の当然増の分が、 1,500億と いうことでございます。 ○A委員 ありがとうございました。 ○B委員 財政構造改革をしなければならないという国の財政事情はよく分かりますが、 この精神を見ておりましても、国の全体的な予算を見て、大体各省というか、 みんな平等に減らそうという感じが非常によく見えるわけですが、これからの 福祉でありますとか、介護とか、高齢者とか、いろんなことがありまして、高 齢者もある程度負担をしなければならないのは確かでありましょうが、政策目 標をちゃんと政府もつくって、全体的に落とすのではなくて、やはり必要なと ころはちゃんとしてやるということをしないといろんな面で国民の中の不満が 増大していくわけですから、その辺も少し考えてやらなければいかんというこ とだけちょっと申し上げておきます。 ○事務局 例えば、公共事業費、防衛費、その他の経費についてはマイナスにするとか、 社会保障については、高齢者層の増加がその分はやむを得ないということで、 3,000億程度の増加が認められるということでございます。 高齢者層の増によるやむを得ない影響というのは、当面の集中改革期間中で ございまして、当面の3年間、10、11、12の3年間ということでございます。 財政構造改革自体はこの1ページの表にありますように、財政健全化目標を達 成する2003年までの措置ということでございますが、その間やはり社会保障に ついては必要なものは制度改革を進めながらも確保していくということになる のではないかと思っております。 ○会長  ほかにどなたかご質問がございましたらお願いします。それでは先に進んで よろしゅうございましょうか。  それでは、前回から開始いたしました、次期財政再計算に向けての議論を行 いたいと存じます。前回の御議論を基礎にいたしまして、検討項目の制度改正 にかかわる基本的事項について、十分にまた幅の広い議論をお願いしたいと考 えております。この事項につきまして、本日を含めて2回ないし3回、十分に 御議論をお願いしたいと考えておりますが、本日は「我が国の社会経済の状況 や公的年金の機能とその基本的仕組み」につきまして、お手元に資料を用意し てございますので、事務局からまずその御説明を伺うことにしたいと存じます。 お願いいたします。 ○事務局  資料2に沿いまして、我が国の社会経済状況や公的年金の機能と基本的仕組 みについて御説明申し上げたいと思います。  目次をごらんいただきますと、1つは我が国の社会経済状況の中で、年金制 度を取り巻く周囲の状況がどう変化しているかをまず把握したいということで、 人口の少子・高齢化が進んでいて経済・財政状況の基調が変化をしている。あ るいは高齢者の生活状況はどうであるかということを説明したものです。2番 目といたしまして、公的年金の機能なり、基本的仕組であり、基本的仕組みの 中では、社会保険方式と税方式、賦課方式と積立方式、あるいは民営化の議論 もございますので、それらの点に参考となるような資料を取りそろえたところ でございます。  では中身に入らせていただきます。1ページ目でございますが、まず人口構 成割合の推移と見通しでありまして、現在時点で老年人口割合14.8 %で既に ヨーロッパ水準に達しつつありますが、2050年になりますと、老年人口は32.3% ということになるわけでございます。15歳から64歳までの生産年齢人口で見 ますと、95年の21.4%から、2050年には59.1%、約3倍弱になってしまうと いうことが見込まれているところでございます。  次ページは労働力等関係です。労働力率等につきましては、高齢者の労働力 率、例えば60から64なり、65以上は男女ともに高まるわけでございまして、 また女性につきましては、一番下の欄ですが、25歳以上の各歳とも労働力率は 高まっていくであろうと労働省は見ております。こうした層の労働供給が労働 市場に大きな影響を及ぼすものと考えております。  3ページ、労働力需給、供給の人口では、労働力人口は2000年をピークにし て、2010年はやや下がってきておりますが、その中で、例えば60から64、あ るいは65以上の方々の労働力人口は増える一方にあります。  4ページごらんいただきたいと思いますが、経済成長率、賃金、物価は右肩 下がりと言ってよろしいかと思いますが、そういう状況の中で、5ページ、6 ページ、国なり地方なりの長期債務は増えてきています。これには出ておりま せんが、国と地方の政府長期債務残高合わせますと 450兆で、GDPの90%に 達しておるというのが状況です。  7ページ、一方、社会保障給付費は高齢化の進行に伴い年々増大をいたして おりまして、平成6年度で60兆円を超えております。国民所得比で16%以上 になっておるわけですが、このうち年金は31兆円、半分以上を占めております。 8ページ、国民負担率。ここ数年、租税負担率は最近の景気の低迷等を反映 いたしまして低くなっておりますが、その分社会保障負担率は増加を続けてお ります。全体として40%弱の水準となっておるところでございます。  次のページ、将来はどうなるかということでございますが、経済企画庁の計 量モデルによるシミュレーションが昨年秋に示されたところでございます。 2025年度のちょうど真ん中の「現行ケース」をごらんいただきますと、国民負 担率は51.5%になるであろうと見ているようですが、矢印のちょうど先の方に、 一般政府財政収支NI比で見てマイナス21.9%があります。これを足したもの が「潜在的国民負担率」と言われているものですが、これは7割を突破すると いうことです。社会保障制度の改革を進めた場合あるいは公共投資、その他、 政府最終消費支出を抑制した場合とそれぞれ分けておりますが、それぞれ一方 だけでは潜在国民負担率はせいぜい60%程度にとどまってしまいます。両方を 行って、初めて国民負担率は50%以内にとどまるのではないかという予測を立 てているところでございます。  10ページをごらんいただきます。「労働コスト」の変化。事業主負担分を見 たわけでございますが、法定福利費及び退職金の費用が少しずつ増えてきてお ります。左から2番目の「現金給与総額」の欄ですが、この10年間で現金給与 総額は月額30万円から40万円、1.3 倍に増えましたが、ちょうど真ん中、法 定福利費のうちの厚生年金保険料が2倍に増えておるということでございます。  11ページ以降は、高齢者の生活状況等を見たものですが、真ん中の黒い部分 は「その他の親族世帯」と言っていますが、基本的には3世代世帯であります。 子供と同居しない単独世帯あるいは夫婦のみの世帯が増えてきておりまして、 両方足しますと4割ぐらい。3世代世帯の割合と大体同じぐらいになっており ます。  12ページ、高齢者世帯の所得に占める公的年金の割合ですが、上の方のグラ フを見ていただきますと、高齢者世帯の所得は、1994年で 332万円ですが、公 的年金の占めるウエートは55%になっている。また、公的年金が総所得に占め るウエートが 100%という世帯数は、全体の世帯数の半分になっているという のが下のグラフです。 13ページ、世帯の収支状況を見たものですが、一番上の高齢無職世帯をごら んいただきますと、実収入に比べまして、実支出の方が大きく赤字が3万 7,000 円ほどあります。これを貯蓄の取り崩し等で賄っておる現状ですが、ただ貯蓄 そのものは、この一番下の標準世帯と比べていただきますと、かなり多く持っ ておられる。 2,100万と 800万の差があります。 一方、負債を見ていただきますと、無職世帯で90万。それに対しまして標準 世帯では 570万。1人当たりの消費支出をごらんいただきますと、高齢無職世 帯で月額11万に対しまして、標準世帯で見ますと8万 1,000円ということでご ざいます。 高齢者世帯の消費については、14ページにありますが、どちらかというと、 高齢無職世帯も勤労世帯も「その他支出」が標準世帯に比べますと多い。その かわり教育費等が標準世帯に比べて少ないということでございます。その他支 出は大半が交際費等であります。 15ページ、平均値だけではなくて、分布状況はどうなのかということですが、 1人当たりで見ますと、収入、貯蓄は標準世帯よりも全体的に高いのではない か。無業の高齢者世帯にいたしましても収入面では現役世帯と遜色ない水準で ありますが、貯蓄面では現役世帯より高い水準になっているのではないかと思 います。 16ページ以降が、第2部ということでございます。公的年金の機能と現状等 をあらわしているものですが、公的年金の機能といたしまして、そこに4つば かり書いております。  1つは、「長生きリスクへの対応」と。右側の「現状」の欄を見ていただき ますと、民間保険や金融市場の発達によって、長生きリスクへの対応は個人で 対応出来る部分も増加しているのではないかということでございます。  2番目の「高齢期の確実な所得保障」。「温情主義」と書いてございますが、 高齢期に備えて十分な備えを計画的に行うということについて国が関与する。 高齢期における一定の所得保障としての役割はやはり重要ではないかと見てお ります。  また、確実な所得保障の一環として、実質価値をきちんと維持していくとい うことがありますが、それを支えているのが賦課方式の機能になると思います。 「現状」の欄をご覧いただきますと、今の経済基調は賦課方式の収益率よりも 積立方式の収益率、つまり人口成長率プラス賃金上昇率と利子率の比較という 点で見ますと、積立方式の方が有利ではないかという意見も出てきているとこ ろでございます。  公的年金の4番目の機能として「世代内の所得再分配」ということがありま すが、「現状」を見ていただきますと、高齢期の所得・資産格差は、むしろ拡 大傾向にあるということでございます。  17ページは、公的年金、企業年金、個人年金の関係を見たものです。  公的年金の部分だけ申しますと、加入は強制加入であります。  給付については実質価値を維持し、支給期間は終身年金であります。  財政方式は世代間扶養の仕組みであります。  積立金の運用については、全額資金運用部で預託しています。  下の2つですが、加入員数の変動による財政的な影響は大きい一方、金利の 変動による影響は小さい。 企業年金、個人年金はこういったものはちょうど逆になっておるところでご ざいます。  18ページは、企業年金・個人年金の加入者数の推移を見ております。  近年若干企業年金で伸び悩みも見られますが、数自体は増加をいたしており まして、厚生年金基金で約 1,200万人。 1,200万人ということは、厚生年金被 保険者全体の4割弱ということでございます。  適格退職年金も 1,100万人。厚生年金基金とかなりの程度ダブっていると推 察しておりますが、伸びています。 個人年金の契約件数も 1,500万件になってきています。 19ページ以降は、年金の仕組みそのもので、1つは社会保険方式と税方式の 比較であり、主として基礎年金について行われている議論です。社会保険方式 は拠出に応じて年金を給付するのに対し、税方式は個々人の拠出を要件としな いで、国内居住年数等をもって年金を給付する。 社会保険の特徴としては、拠出と給付の対応関係が明確であり、加入者の合 意を得やすい。  一方、保険料拠出が十分でない場合には無年金あるいは低年金になることが ある。 税方式ですが、拠出にかかわらず一律の給付を行うということで、給付の必 要性を重視しますが、その結果、所得資産による給付制限を行う場合もござい ます。 一方、拠出要件がないために、低所得者にも必要な給付が可能です。そのほ か、税方式の特徴としては、巨額の税財源が必要であるとか、あるいは景気変 動に左右される要素があるとかがございます。 20ページをご覧いただきます。 現在の国庫負担は、基礎年金に対して3分の1。一番下の折れ線グラフです が、それを税方式に転換した場合に一体幾らぐらいかかるのか。これは一番上 の折れ線グラフでございます。現在の3分の1をベースにいたしますと、9年 度で 4.5兆円と書いてございます。一般歳出が45兆円ですから、ちょうどその 1割を年金の国庫負担にあてている。それが2025年には 8.2兆円。公共事業関 係費が 8.5兆円でございますから、ほぼ公共事業関係費並みの国庫負担になっ ていきます。 それに対して、税方式を採用した場合には、12.6兆円、平成9年度で出発す るわけですが、厚生省予算全体が14.5兆円です。厚生省予算とほとんど同じ程 度になる。2025年には24.1兆円。一般歳出の半分以上を占めるようになるとい うことでございます。  21ページ、諸外国の基礎年金制度ですが、パターンは3つに分かれます。税 方式をとっている国、社会保険方式をとっている国。それから星印については、 注1を見て下さい。徴収は社会保険料でありますが、拠出要件ではなくて、居 住要件を見て、それで年金額を決めている。北欧諸国はそういう形をとってい る例が多いということです。社会保険方式をとっている国は、オランダ、イギ リス、日本でございます。  22ページ、もう一つの論点であります積立方式と賦課方式の比較です。これ はどちらかというと、主に報酬比例年金について行われている議論です。  積立方式は将来の給付に必要な原資を保険料であらかじめ積み立てていく方 式で、賦課方式は年金給付に必要な費用をその時々の現役加入者からの保険料 で賄う方式です。「保険料率」の欄を見ていただきますと、積立方式は金利変 動の影響を受けやすく、人口構成の変動の影響は受けにくい。それに対して賦 課方式の場合はちょうど逆になっております。  また、収益率の問題として、利子率と賃金プラス人口成長のどちらが高いか によって、どちらの方式が収益率が高いかが決まります。  また「経済変動への対応」ということでは、やはり賦課方式の方がすぐれて いる。その時点その時点での現役の加入者の保険料で対応している結果、当然 そうなります。  「制度発足時の対応」といたしまして、賦課方式ですと、制度発足時の高齢・ 引退世代に高額の保険料負担を求めずに相当水準の年金が給付されることにな ります。  23ページ、これまでどういう財政方式をとってきたかということでございま すが、制度発足時は積立方式でした。ただ、戦争あるいは戦後のインフレ等に より、積立金が減価を受けました。昭和29年に厚生年金が再出発をしたときに は、急激な保険料の増加を避けるために、段階的に保険料を引上げる「修正積 立方式」をとっており、それが基本的に受け継がれております。「平成6年財 政再計算における保険料拠出計画の考え方」というものがございますが、積立 金の運用収入の活用を通じて、保険料を段階的に引上げながら最終保険料負担 を軽減する。  具体的には以下の4つの条件を満たすよう設定しています。 ・ 将来の保険料率を30%以内にする。最終保険料を一定にするということです。  ・後代になるほど保険料の引上げ幅が大きくならないようにする。  ・単年度収支が赤字にならないようにする。  ・一定の準備金を常に保有する。  このような考え方で拠出計画を決めているところです。  24ページは、「保険料率」の欄を見ていただきますと、昭和29年に厚生年 金が再出発いたしまして、段階保険料率をとるようになったわけでございます が、3%から出発いたしまして、平成8年10月で17.35%。 真ん中に、将来見通しに基づく最終保険料率がそれぞれ書いてございます。 直近で申しますと29.8%。それは財政方式として段階保険料方式をとり、4条 件の中で決めたということでございます。  25ページ、一部収益率としてどちらがすぐれているかという議論があるわけ ですが、1980年までは賃金上昇が利子率よりも高かったということです。一方、 80年代以降、バブルの時期、経済が拡大した時期を除きまして、利子率の方が 逆に高くなっているという状況です。 26ページ、公的年金民営化と、2階部分の民営化の議論がありますが、民営 化提言の要点として、4つばかりあろうかと思っています。 1. 公的年金のスリム化なり、報酬比例年金の廃止。それは現役世代の負担  を軽減する、あるいは将来の世代の負担を軽減することになる。  2.強制的に取られる部分を少なくする。自助努力、選択幅を拡大する。  3.積立方式の方がいいのではないかという議論がございます。  4.積立金運用の効率化という観点のものもあります。  問題点として、報酬比例年金を廃止するわけですから、特に企業年金のない 中小企業等の被保険者の老後の所得保障として1階部分だけで本当にいいのか どうかという問題は当然あろうかと思います。  積立方式への移行へという問題につきましては、インフレへの対応等がきち んと出来るのかということに合わせまして、切替時に二重の負担が生じるので はないか。自分の分は自分で積み立てなけれはならないと同時に、現在の高齢 者の分を負担しなければならないという問題でございます。  次のページをごらんいただきたいと思います。  「厚生年金の給付債務と財源構成」。段階保険料方式をとっておりますので、 現在段階引上げの途上にあるということでございますが、今の制度が将来的に 約束している給付の現在価値を一時金換算いたしますと、左側の方に書いてあ りますように、 2,630兆円になります。 その下をご覧いただきたいと思いますが、期間によって分けます。平成11年 を境にいたしまして、過去の期間に対応した給付債務と平成11年以降の将来期 間に対応した給付債務に分ける。過去の期間に対応した債務 780兆円の内訳を ごらんいただきますと、国庫負担あるいは積立金のほかに、将来の保険料率の 引上げにより賄う分というのがございますが、それが 490兆円。2階部分だけ で見ますと 350兆円ほどあります。 また、将来分としては、当然保険料を取るわけですから、保険料分 17.35% のほかに徐々に保険料を引上げていくと。その引上げていく部分も将来の保険 料率の引上げにより賄う部分、これが 420兆円ということです。 なぜ、そういうことになるかというのが右側に書いてございますが、後代負 担になる債務発生の原因といたしまして、やはり一挙には引上げられない。段 階的に引き上げるということで、これまで給付水準に見合った保険料を徴収し ていなかった。また、賃金、物価の上昇に応じた給付改善、これは事後的に発 生する費用でありますが、それは後代負担としてきた。制度創設以降、加入者 期間の短い人にも一定の水準を支給してきた。 こういったことが後代負担分です。 後代負担分の額は今述べたとおりでございまして、特に過去期間分のうちの 2階部分( 350兆円)がありますが、これが2階部分を民営化する場合の問題 点です。過去期間に対応した2階部分( 350兆円) 。被保険者1人当たりで見 ますと、 1,000万円であり、保険料率で換算いたしますと5%です。この債務 を、移行に伴いまして、どう処理するかということが非常に大きな問題になる わけでございます。  さらに加えまして、これまでの給付水準を維持するならば、それ相応の保険 料の引上げは当然に出てくるということです。  以上でございます。 ○会長  ありがとうございました。我が国の社会経済状況と公的年金の機能と基本的 仕組みを御説明していただきましたが、これについて皆様のお考え、御質問を 御自由にお聞かせいただきたいと存じます。 ○C委員  今の一番最後のところの数字ですが、5%というのは、これは永久償却の保 険料なんでしょうか。 ○事務局 350兆を永久償却した場合の保険料換算が5%ということです。 ○C委員  どうもありがとうございました。 ○会長  それでは議論を整理いたしまして「社会経済状況の変化」という部分の方を 先に御質問いただき、御議論していただきたいと思います。3つ検討事項がご ざいまして、1つは「社会経済状況の変化」。2番目が「公的年金の機能と基 本的仕組み」。3番目が「次期制度改正の基本的方向」ということでございま すが、第一に社会経済状況の変化という、資料2の前半の部分について御質問、 御議論していただきたいと存じます。 ○D委員  年金改正を考える場合に、支給開始年齢を引上げるにしても、高齢者の給付 を抑制するにしても、現役世代の保険料を引上げるにしても、国民の生活の実 態がどうなっているかということが問題になると思うのです。ここでは11ペー ジから高齢者の生活状況の資料がいろいろ御説明されましたが、特に13ページ の高齢者世帯と標準世帯の収支の比較の中の貯蓄について、標準世帯の3倍程 度あるということですけれども、貯蓄額は平均しますと、高齢者の中には貯蓄 額が非常に高い人もいるわけで、それが含まれてくると平均値は高くなります。 従って貯蓄の場合は中位数で比較しないと、非常に高額の貯蓄を持っている人 が入ってくると、平均が上がってしまうというところがあるのではないかとい うことが1点です。高齢者については、所得についても資産についても非常に 格差があるというか、両極化していて、非常に豊かな層と、そうではない高齢 のひとり暮らしの人などに分かれていると思います。いちがいに平均では見れ ない部分があると思います。 もう一つ、健康状態については触れられていないのですけれども、やはり高 齢期には健康であるか、健康でないかということによってかなり生活状況にも 影響を及ぼしてくるということです。慢性疾患とか、寝たきりの状況の場合に は、家計収支に及ぼす影響も違ってきますので、高齢者の場合には、健康状態 も見る必要があるのではないでしょうか。 将来の給付水準の調整を考える場合には、健康上問題のある高齢者の保護や 高齢人口内部の所得格差(たとえば、単身の女性高齢者)への配慮が必要とさ れます。  現役世代については、標準世帯ということで、一本で見ておられますが、往々 にして、夫婦と子供2人の世帯が標準世帯として取り上げられるわけですけれ ども、現代社会ではシングル、ひとり親家庭なども増えてきておりますので、 比較する場合には世帯の中身についても考える必要があると思います。  全国消費実態調査によりますと、勤労世帯については、子供の数が多いとか、 子供の年齢が高い場合には、教育費負担等が重いので、収支の差が現役世帯に 厳しい状況になっています。また、ひとり親家庭についてはやはり非常に厳し い状況にあるわけです。それは稼得者がひとりで、特に母子などの場合には親 の収入が低く厳しい状態にあるためです。  現役世代と高齢世帯の生活実態をある程度考えて、年金改正を考える場合に、 世帯類型、健康、収支、貯蓄等について少し細かな内容についても検討する必 要があるのではないかと思います。 ○会長  追加の資料をご希望になりますか。よろしゅうございますか。 ○D委員  結構です。 ○A委員  今のお話と関連すると思うのですが、高齢者の所得保障の柱と公的年金を位 置づけた場合に、就労の問題と非常に密接に関連いたします。前の方の2ペー ジに、労働省の研究会のデータがございまして、60代前半層のところの労働力 率を、特に男子に対して注目すれば、大体現状でも75%ぐらい。一時期下がっ てまた上がっていますが、これは多分外国に比較すると非常に高いだろうと思 います。  つまり公的年金は今まで60歳支給でやってきていますけれども、実際にはこ このところではかなりの部分が働いていて、在職老齢年金がありますから、そ れによる所得補填は勿論あると思います。ここに関連して追加資料をお願いし たいのは、諸外国とのここの労働力率の比較です。  もう一つは、公的年金制度のフル年金の制度上の支給開始年齢と、実際の引 退年齢、これは多分前倒しの減額支給を受けてリタイアしていく人がかなりい るのではないだろうか。それとこの労働力率等を組み合わせると、高齢者にお ける年金と就労の関係について、一定の我が国の位置が見えてくるのではない かと思います。 ○E委員  先ほど資料の請求をなさらないということでしたけれども、「年齢階級別労 働力率の推移と見通し」のところで、1994年の女性の労働力率を見ますと、非 常に年齢別で労働力率が動いているんですね。30から34は53.5%と成人以降は 一番低くなっておりますが、でも半数以上が就労しているという形になってい ます。それでいながら標準世帯が世帯主の勤労者世帯という形で出ていますの で、実態として標準世帯以外の、例えば世帯主のみではなくて、共働きの世帯 であるとか、子供が15歳から19歳というところでは、労働力率が非常に低いわ けですから、その子供を持った世代の世帯の収支のデータが欲しいと思います。 ○F委員  議論の大前提のところについてお尋ねいたしますが、まず、政府の方でいろ いろ財政再建に絡んで提起されている考え方の出発点に、国民負担率を50%以 下に絶対にしなければいけないという大前提があるように思うのですが、厚生 年金の将来見通しを比較したものがありますけれども、確かに保険料率、医療 のこともありますから、全体で国民負担率が高くなることが大変なことは自明 のことですけれども、よく議論に出るように、スウェーデンや西欧のかなりの 国では国民負担率は相当高くなっている。  結局、高齢化社会における福祉の在り方についての国の基本的な政策スタン スの問題で、そこの議論がほかの選択肢と十分比較考量されないまま、当然の ごとく、50%を絶対に越さないことが最善の解決策だという前提で議論するの か。あるいは19ページと28ページの対比を見れば、保険料率が上がっていけ ば、年金に関してはそんなに問題は多分深刻ではない、そう読んでいいかどう か分かりませんが、そこの大前提の考え方がどうもよく分からないので、そこ の問題をどう扱うのか伺いたい。  もう一つは、これも大前提の1つだと思いますが、やはり年金問題の将来が、 前回の財政再計算時に比べて非常に厳しい状況になって、こういういろいろな 新しい課題が出てきている直接の原因は、不況や利回りの低下、マクロの情勢 に伴う影響は一時的なものとすれば、やはり出生率の予想以上の低下というこ とが何といっても最大の原因なので、それを50年まで先に延ばして、出生率の 回復に関する国の基本的な政策を何もとらないでおいて、そういう議論だけす る意味があるのか。ほかの国はやっているわけです。フランスなどはかなりや っていると私は理解しておりますけれども、例えば税制とか住宅政策が貧困で あるため、あるいは土地税制が貧困であるために、国民が50年の間にそういう 選択をしてきたということがかなりはっきりしているのに、そこのところを全 部棚に上げておいて、当面の解決策だけこういう格好で求めてくるのが果たし て正しい議論の仕方なのか。  もう一つは、高所得層への年金の支給制限の問題ですけれども、いろんな選 択肢を考慮した上で最終的に考えなければいけない1つの選択肢ではあると思 いますが、それならば高所得の人は何も60とか、65で年金をもらわなくても やっていける人はたくさんいるわけで、そのかわり70まで延ばし、少しインセ ンティブをつけてくれと。そういう形で個人がある程度社会に協力をするとい うような選択をした場合に、どの程度選択肢として意味があるのか。あるいは そんなことしてもほとんど焼け石に水で意味がないから、この際、何百万か、 1,000万円以上の人は全部カットしろとか、そういう議論になるのか。そこの辺 の基本的な価値判断のところが、政府が決めたのだから、それでやれというこ とならそれでしようがないけれども、何かもう少しこの審議会としては、政府 の決めたポリシーそのものの前提に何があったのか、あるいはあるのかという ことをもう少しきちんと議論していただく必要があるのではないかと思います。 ○年金局長 今3つほど御意見ございましたけれども、最初の国民負担率の問題につきま しては、実は厚生省関係の8審議会会長会議というところで年金審議会の会長 もお入りいただき厚生省でも随分議論をしました。それから、今回も財政構造 改革会議、こういったところでも当然議論があったわけでございます。  そういう中で、国民負担率50%以下に向けて税と社会保険料の負担を抑える ということについてはそれなりの意義があるということで、政府の目標として 決められたということであります。だから、十分な議論がなかったということ ではなくて、かなり議論が行われた結果、国としての政策目標が示されたとい うことがございます。  それから2つ目の出生率の低下の問題でございますが、これも御案内のとお り年金に一番大きな影響を与える最大の要因であることは間違いないところで ございまして、これにつきましては、厚生省としましても、それから関係省庁 でもエンゼルプランというような形でいろいろ取り組んでおります。ただ、こ れが非常に不十分であるという御指摘もございまして、いろんな面から出生率 の問題にこれから本格的に取り組んでいこうという姿勢で、現在いろいろ対応 を進めております。  勿論、年金としましても、この出生率の低下問題、無縁どころか大きな問題 でございますので、これについて年金としてどこまで給付と負担両面において 対応措置がとれるのかということは、11年改正の中で、これから御議論をお願 いしたいと思っているテーマでございます。  3つ目、高所得者の年金のカットの問題、年金制限の問題ですけれども、こ れについては、実は前々回の年金審議会でも申し上げたとおり、財政構造改革 会議の議論の中で、高所得者の年金カットということがいわれました。しかも 平成10年度からそれを実施すべきだと、こういう議論がございました。  これにつきまして私どもは、年金の根幹に触れる非常に大きな問題であり、 また平成11年、これから議論しようというときに、この問題だけ先に実施する のは問題だと考えております。  また、税制とも非常に絡む問題でございまして、そういった幅広い議論をし た上で考えるべき問題でございます。年金制度改革の全体の中で、この問題を 議論するということであれは結構ですけれども、そういう議論に先がけて実施 するのはいかがなものかということで、今は10年前倒しという議論にはなって ないわけです。これにつきましては、制度全体の改革の中で、この問題をこれ から皆様方に御議論いただきたいと思っております。 ○A委員  ただいまのF委員のお話、私は大変興味深くというか、非常に強い関心を 持って伺いました。先年の会長会議のレポートの前提にあったのは、我が国の 社会保障の全体像が将来についてどのように描けるのかということについて、 各界の関心が非常に高まっている中で、医療は医療、年金は年金、福祉は福祉 ということではなくて、その全体についての1つの見通しについてのかなり高 いレベルでの議論と見通しをつくっていただきたいと、これは私どももお願い してきたところでありまして、それについてはまだ厚生省の作業としては入口 についたところだと認識しております。  国民負担率というような尺度は我が国だけしかとってないということのよう で、それはそれで1つのとり方だと思うのですが、生活している側からいえば、 別に生計費が下がるわけではない以上、例えば、社会的な給付が下がれば、そ れに対応して私的な負担を増やすほかないわけです。  現に前回の大改正、つまり昭和60年の年金大改正の前後に、例えば医療につ いては本人の1割負担が導入されたわけですが、以後、現実に各家庭の黒字純 増はかなり目立って上がっていますし、中でも通常の預貯金ではなくて、いわ ゆる民間保険がかなり増えている。例えば民間の生命保険会社が社会保障関係 の国会の委員会に真夜中まで傍聴者を入れるというのもその時期からの動きで ございましたし、いわゆる個人年金商品などが開発されてたくさん売られるよ うになったのもそれ以降です。その意味では、現に進んでいるのだろうと思い ます。  政府は、世界に冠たる経済大国で、そういう将来の年金不安、もう少し広く 老後不安が逆に拡大してきた状況について、国民に将来の安心というものをき ちんと示す役割を是非積極的に果たしていただかなければいけないと思います。 しかし、場合によっては、むしろ政府自身がそういう国民の中にある不安や制 度不信をどうもかきたてているところがあって、これは是非とも抜本的な解決 をお願いをしなければいけないところで、これは年金の額が多少下がるとか、 下がらないとかという範囲をはるかに超えた問題だろうというふうに思います。  それから、出生率の話がございました。これは年金制度にとっては、いわば 外的な要件に属するところというふうにとりあえず数理上は言っていいのだと 思います。この資料の中にあった、各国の高齢化率の変動の中で、日本だけが 先進国の中で全くイレギュラーな動きをしていることについては、これは1つ の社会現象として、ある程度の見識みたいなものを当審議会は示して然るべき ではないかということが1つあります。  また、政府に関連しては、大変広範な政策がこれに関連してくるのであって、 現在の各省庁間でこの少子化問題を我が国全体に関わるかなり大きな問題とし てとらえ、共通の努力がされているのかどうか。ここはどうもいささか心もと ない感じがいたします。子供のことというと、厚生省がやればいいみたいな雰 囲気が他省庁にもしあるのだとしたら、大変重大な問題ではないでしょうか。  そういう意味で、財政構造改革会議が出されたものというのは、もっぱら支 出を削ることのみに集中していて、例えば歳入を引上げるための問題等々とい う、収入の側についてはほとんど言っていませんし、それを支えている社会全 体の今の状況についてポジティブな政策が打ち出されているとはとても思えな いので、そこは是非厚生省が直接年金その他で影響を受けるという意味では、 政策官庁として一番影響は大きいところなので、是非ともイニシアチブをとっ ていただきたいと思います。 ○H委員  最初の国民負担率の問題なんですが、確かに国民負担率という概念が世界的 に確立されているかどうかは分からないのですが、税プラス社会保険という考 え方はこれは大体国際的にも共通する概念としてあるということは1つ申し上 げておかなければいけないと思います。  もう一つは、国の活力というものを考えると、やっぱり個人でも企業でも自 分が使えるお金をある比率以上に持っていないと国がだめになる。国民負担率 の問題は国民の活力、個人の活力という意味で非常に重要な問題だということ を1つ申し上げておきたい。  もう一つ、私もこれを理論的に何とか解明出来る方法はないかということを ここ2年ぐらい考えてきていたのですが、ある研究会でいわゆる国民負担率、 社会保険プラス税金というものの在り方と成長率の相関を調べたものがありま して、ほぼ逆相関であるというようなニュアンスにとれるデータが出てきて、 私はこういうものを少し学問的に深めたらどうかというアドバイスをしておい たのですが、国の活力と成長率と、国民負担率の関係はかなりあるということ は大体間違いないと思われます。  そういう意味で、特にこれからの日本を生かしていくのに、財政支出だとか、 いろんな手段がとれなくなってきている現状の中では、特にこの問題、自分が 使えるお金というものの比率をいかに増やしていくかという問題がかなり重要 な問題であると受けとめるべきではないかと思います。  ピラミッドの上の小さい三角を支えるのに大きな台形で今まで支えてきたわ けですが、それがずん胴型になれば、それとほとんど変わらないような円筒が 支えなければならないという、そういう構成の問題ですから、これは算術の問 題なんですね。算術の問題を解決しようとすると、結局今まで小さな上の三角 形に乗っていた人は大きな台形が支えていましたから、かなりの支えが可能だ ったわけですが、だけど、今度は円筒形になってほぼ変わらない比率で支える とすれば、前の水準を維持しようとすると、下の負担はかなり増えてくるし、 負担は前の負担と同じだと仮定しますと、上の方々のいただく金を半減しなく てはいけない。あるいはその両方を分け合うかどうかということです。  特に私が一番心配している国民負担率の問題は成長率の問題、つまり経済全 体の成長と絡んでくる問題で、このまま行きますと、この国は本当に低成長で ずっと行く可能性があるわけですが、かつまた、それもある程度成熟社会のど この国を見ても、4%とか、5%の成長を示す国はないわけですから、これは 冷厳な事実として2%前後で考えておかなければならない。仮によくなっても、 今の金融問題などが解決されても、せいぜいそれぐらいで考えておかなければ ならないという大前提のもとで、今申しました人口構成というものがある1つ の形を示しているとすると、みんなでパンを小さくして分け合うしかないので はないかということが1つ原点にあるだろうと思います。  したがって、これは足した方がいいとか、これはどうした方がいいという、 過去の水準としていただいているから、これは当然保障してもらうべきだと。 あるいは過去負担はこの程度だったから、これ以上の負担は出来ませんとか、 成長そのものがむしろ昔よりも鈍化するという前提のもとで、お金の降ってく るもとがないという前提で考えていきますと、これは後は算術の問題になって くる可能性がありますね。  今出ましたそういうことにしない1つの方法として、今の三角形、つまり人 口構成そのものをずん胴型にしない。再びこれを三角形に戻す方法がないのか という提言は1つあると思います。これは私もここで議論してしかるべき議論 だと思いますが、これは間違いなく、場合によっては、更に在来の人のお金を むしり取って、少子化につけるという問題であると思います。  少子化の問題は、私も今、女性の方々とかいろんな方々を含めて議論を行っ ていますが、多分に文化的要素だとか、生活観の要素、教育観の要素とか入っ てきますから、一律に単なるお金の問題として考えることでもないし、まさか お年寄りのために産んでくださいとも言えないような性格ですから、なかなか 一律にはいかないんですが、しかし非常に冷静に言えば、在来の方のそれを少 しちぎって、少子化に向けますかという問題になってくる。どこからかお金が 出てくるのだという物の考え方はこの際ないという前提で物を考えていく。そ の中で何をがまんして、何を重点的にやっていくのですかということになって くるのではないか。  一番最初の基本問題として議論されても大いにいいのでないか。  この間、この背景をなす問題について少し議論をしておかないと、あと技術 論に入って、高いの、低いということでは済まないのではないかということを 申し上げたのは、そういうことを含んで実は申し上げたつもりでありますので、 その辺について、どこまで突っ込めるのだとおっしゃっると、私も正直言って 全く自信ありませんけれども、何かそこのところをパラメーターにして、どれ もこれも議論するということにもいかないだろうし、さりとて、ここでとにか く1つのスタンダードとして、何を認識として置いて議論していくのか、そう いうことを含めて少し議論しておく必要があるのではないかということを申し 上げておきたいと思います。 ○I委員  基本的な議論するということを私が前回も希望いたしましたときに、頭の中 にありましたことなんですが、やはり今日もいろんな方の御発言に出てきまし たが、年金制度とその他諸々の制度との関係について、この審議会でどう位置 づけるか、どうとらえるかということをやはり基本的に確認する必要があると 思います。  例えば福祉制度として年金制度をとらえるのか。とらえる場合にどうなのか。 雇用政策の中との関係でどうかとか、あるいは今も出てきました人口政策との 関連でどうかという、そういうふうなただ年金制度ありき、だから年金制度が どういうものでなければならないか、そういう議論ですと、全く全体的な日本 社会の将来図が分からないままで、与えられた枠組みだけの中での議論の繰り 返しになると思います。ですから、そこのところの議論を是非確実にしておき たいと私自身はそういう希望を持っております。  年金制度というものを考えたときに、例えば国民がどういう形で国民として の責任を、例えば拠出金という形あるいは税金という形で払うかということを 納得するためにはどういうサービスが得られるかということを明快な図式の中 で見ないと納得出来ないと思うんですね。ですから年金というと、金銭的な報 酬が得られるということなんですけれども、その他にいろんなサービスという 形での受給を見る必要がある。商品というものがあるわけですから、それとの 対応を確実にしておきませんと、やっぱり国民としては、取れるところから取 るとか、少子化対策として、これは人口構成上重要であるから、少子化に歯ど めをかけるためにはその資金として取れるところから取るなんていう議論は、 これは全体に納得がいくことにはならないと思います。  ですから受けられるサービスの種類とか、現金とか、そういったものを全部 並べた上で、どこがどういうふうなプラスマイナスになるか、こういう提供を した場合にはこういう報酬が得られるかとか、そういうふうな図式が全体に出 てこないととても国民が納得出来るような方向にはいかないと思います。  基本的には損をする人、得をする人、また、時代によって損をする時期と得 をする時期が出てくるのは当然だと思います。ですから、それの全体的な帳尻 がどこでどう合うかという図式、これがやはり出てこないと、国民としてはあ る程度嫌々ながらも将来像を描いて納得をするというところに落ち着かないと 思います。  私が期待するのは、そういった全体の日本社会の将来像を私たちがどうビジ ョンとして描くか。日本政府がそういうビジョンを出さないならば、少なくと も年金との関連で重要なファクターを取り上げて、全体図、日本社会の将来像 をこの審議会として描いた上で、年金というものの在り方を明確にし位置づけ るという作業をしないと、どこかで、だれかがそういうことをやるだろうとい うことはなかなか最近では期待出来ない。私はかなり幻滅を感じておりますの で、年金制度を少なくとも議論するに当たっては、そこまで一応とらえた上で、 国民的な議論をするたたき台をつくる。そういうことが出来ればいいと思って おります。 ○J委員  私はいつも少し現実的なことを申し上げるのですが、先ほどから出ています 国民負担率に関して、同じ厚生省の所管で先般国会を通過しました健康保険法 の改正、あの1つの事例をとって国民負担率ということで、考えると今日いた だいた資料1−1には、ある方向性が出してあるように思うんです。健保法の 改正は、そういう範疇に入っているのか、入ってないのかいささか疑問だと思 います。I委員がおっしゃったように、どちらかというと取りやすいところか ら財源を取って、要するに財政の穴埋めをするというのか、そういう発想に 立っていて、一方で国民負担率を声高に叫ぶと、そこに齟齬を来しているので はないかと思えてならないんです。  国民負担率という問題については、先ほどから議論があるように、私もどち らかというと疑問を持っている方なんですが、今前段申し上げた、側面からい くと、税と社会保険料というような形で考えるなら、国際的にいろいろな場で も通用する話かもしれません。しかし、そのことだけに焦点があてられて、実 態を離れていろいろ話がされていることをみるにつけコンセンサスが本当に得 られるのかと思います。そういうことについて整合性をもっと持つ必要がある のではないかということが1つです。  それから、年金も財政も含めて、先ほどH委員から国全体の「活力」という 話ございましたけれども、全体の活力を失わせている要因は経済成長がこうい う状態になっているということだと思いますが、産業あるいは企業の活力を失 わせているもうひとつの背景に、ある種の私は政治の貧困があるのではないか と思っています。  もう少し産業・企業が活力を出せるような社会全体の機構のスリム化という ことが背景になければならないのではないか。そういうバックグラウンドづく りが要るのではないか。どうもその辺のところはこの資料1−1の中に、数字 的なことは別にしまして、あるべき論というか、方向性というか、いろいろ示 唆的に書いてある部分があると思うんです。官民の役割の見直し、民業の役割 と補完機能、納税者の信頼に裏打ちされた公平な税負担だとか、さまざまに考 えなければならないことがありますが、全体の基調として、社会保障全体をめ ぐる、あるいは年金をめぐるシステムの問題で、いろんな意味で肥大化してい る部分を、こういう資料1−1の内容を文章にしたためる際に、我々も痛みを 伴うことをやるので、国民の皆さんにも痛みを伴うことをやってほしいという ような基調というか、くだりというか、そういう部分がはっきり見えないと思 います。  そういうことで、社会全体のコスト低下をどうしたら図れるのかというのも 年金を取り巻く周辺問題としてはあるのではないか。それが肥大化を招いてい るがゆえに、今日的な課題が浮上しているとも思うところです。  資料2の方の、社会経済状況の中の、高齢者の生活状況なんですが、これは いわゆる生活状況がメインの資料として提出されているのですが、今の若い人 も含めて、高齢者が今自分たちの生活をどう見ているのかという公的な意識調 査があると思います。私も見かけたことがありますし、そういう意識調査もこ の場にやはり出していただく必要があるのではないかと思います。確かに数字 上はこういうことになっているかもしれませんが、どういう意識を持って、今 の世の中を、若い人は将来を、そして現状の給付の対象になっている人たちは 現状を見つめているのか。そういう意識調査も大変必要なことではないかと思 っています。  また、出生率の低下の問題ですが、これは大変将来に禍根を残すことになる のではないかという懸念を持っているひとりです。とりわけ東京、大阪を中心 にした大都市圏の若い人の特殊出生率は大変低い。その背景は、あれが悪い、 これが悪いと、たしかF委員も、土地とか住宅の問題を引き合いにお出しにな りましたけれども、確かにそういう背景はあるのでしょうけれども、どこかの 政策が悪いということではなしに、国挙げて、これをどうするのかという問題 を基本問題としていく必要があります。年金をめぐる大変大きな課題ですから、 国家的なプロジェクトに近いような思いで、私はこの問題は解決していく必要 があると思います。それは回り回って、すべての国民の生活の活力を損なう背 景になっているはずですし、産業・企業の将来も、子供の数が少なくなってい くことによって非常に縮み志向になっていくと思っています。そういう発想で 問題点を整理をしていく必要があると思います。 ○K委員  幾つかあるのですが、1つは国民負担率が上がるから活力がなくなる。それ は分かるんですが、それだけではないと思うんですね。やはり活力がなくなる というのは、例えば今の規制緩和の問題などもそうですけれども、政治の在り 方自体がさまざまな規制をかけたりして活力なくしている部分もあるので、高 齢化イコール国民負担率が上がるから、イコール活力がなくなる、それだけで はないと私が思うのが1つでございます。  それから、年金保険でありますが、保険というのは支える人がたくさんいて、 受ける人が少ないから成り立つのだろうと思うんです。そうしますと、今のよ うな人口構造になっていれば、社会保険の原則は年金の場合当てはまらない部 分が出てくるのではないかと思うわけです。当然税金でもってそれをカバーす るということで基礎年金の部分に3分の1入っているわけですけれども、これ からはいわゆる保険原理だけでなく、保険プラス税金のような原理を導入しな ければ、介護保険の場合に半分が税金という形になっていると同じように、若 い人が少なくなって高齢者(受給者)が増えるわけですから、当然そこに新し い考え方を入れなければ、公的な年金保険は成り立たないと思うんです。  ところが1−1の資料を見ますと、国庫負担の引上げについては財政難だか ら無理で見送るという形で、その大前提で議論していけば、どうしてもひずみ が若い人に行くわけですから、やはりこの辺で保険原理だけでなく、そこに税 金を入れるということをもう少し考えてもいいのではないかと思うのが第2点 でございます。  年金制度が充実していけば、それによって要らなくなってくる福祉のお金が 出てくるだろうと思うんです。例えば生活保護にかかわる費用、これは医療保 険制度や年金が充実していけば、生活保護の費用はどんどん減っていくわけで すし、もうちょっと年金だけでなく、福祉全体を見た上での議論が必要ではな いかと思うのが三つ目です。  それから、高齢者を若い人たちが支えるというのは、勿論限度もありましょ うけれども、日本の文化の1つだろうと思うのです。その意味では、高齢者が 豊かになって、若者が苦しむのはけしからんと言うけれども、しかし、若者が ある程度犠牲になっても高齢者を支えていき、そのかわり自分が年を取ったら 若い人が支えてくれるのだという安心感というものがあれば、また違った部分 が出てくるのではないかと思うのが第4点です。国民負担率が高い国が必ずし も悲劇的な様相かといえば、非常に高くても高福祉で安心している国もあるわ けですから、そういう意味では文化的な視点、若い世代が高齢者を支えるのは 1つの文化的伝統なのだという考え方も私は必要ではないかと思います。 ○L委員  いろいろ前提条件の話、基礎的な認識についての話でございますが、年金制 度とほかの制度との関連ということを、先ほどI委員も言われましたけれども、 そういう意味では同感でございます。先ほどA委員も言われましたとおり、国 民あるいは今働いている若い人も含めまして、将来日本の国や社会がどうなる のか。今あるいろんな制度も結局5年に1回やそういう状況の中でどんどん変 わっていく。あるいは将来どうなるか分からないという不安感や不信感が広 がっていくことが一番最悪のことではないかと思いますので、そういう意味で 言いますと、年金をもたせるための打出の小槌ではないとは思いますが、やは り支える側と支えられる側との関係をどうするのかということの話の中には、 雇用の問題は1つあると思っております。  先ほどH委員も言われましたピラミッド構造からずん胴構造というところが ございますが、これは年金の世界だけではなくて、日本社会全体がそういう形 に発想の転換もし、出来るだけタックスペイヤーを増やしていく。高齢者も女 性の方も子育てをしながら、出来るだけそちら側に参加する社会や仕組みをど うつくるのか。これはまた活力の問題と兼ね合わせが出てくるのでしょうけれ ども、そこはいいとこ取りをしながら、全体をそういう制度に、おんぶに抱っ こというわけにはとてもいかないのではないか。  世界に類を見ない、そういう比率をどこか切り抜けなければならないわけで すから、最後へ行けば、また経済成長問題ということになるのかもしれません けれども、どうしてもそこの部分を抜きに、あと負担をどこでどうお互いに痛 みを分かち合うのかという議論だけでは一般国民の目から見ると、切り込むだ け、あるいは将来はパンクになってしまうのではないかということで一向にポ ジティブな新しいこういう厳しい状況だけど、日本としてはこういう道を進も うと。あるいはこういうことを検討しようではないか。あるいはA案だったら こういうことは出来ますよということについてもう少し示していく必要性があ るのではないか。 ○N委員  年金については給付と負担の均衡はその都度か、長期的な観点でいずれかで バランスがとれていなければいけないだろう。そのバランスのとり方について 議論がされるということはございますが、その際に、個人にとってみれば、自 分の給料がどのぐらい増えて、年金の負担がどのぐらいあったにしても、可処 分所得はどのぐらいあるか。あるいは税金がどうなるか、こういうことかと思 いますが、企業の立場で言いますと、先ほどの資料にありました、例えば法定 福利厚生費が相当伸びてきているわけですが(10ページですけれども)、これ が今後どうなっていくのかということと、年金以外につきましても議論があり ましたような医療保険がどうなるのか。あるいは税制という観点では法人税が どうなるかのか。  そういう観点の中で、現在決まっております平成6年度の財政再計算で決ま っている29.8 %というものが、現在の人口推計の結果からすると三十数%に ならざるを得ないということが本当にいいかどうかということのような気がい たします。  そういう中でいずれにしても均衡しなくちゃいけないということで、基礎資 料で御説明になっているのですが、19ページ、財政の見通しが出ておりますが、 非常に気になりますのは、29.8%の前回の計算だろうと思いますが、その際に5 年ごとに 2.5%ずつ保険料率を引き上げるとなってますが。前提条件は標準報酬 上昇率が4.0 %、消費者物価が2.0 、運用利回り 5.5となっておりますが、例 えば標準報酬上昇率は 4.0%という前提が本当に今後どうか。 といいますのは、先ほどの資料にありました過去の賃金の上昇率、物価の上 昇率のグラフがありましたが、平均すれば、それなりの上昇率はあるにしても、 個人個人と同じように、企業・産業間でもかなり格差が出てこざるを得ない。 そういう中で個人にしても企業にしてもこの保険料率の負担は本当に耐えられ るのか。 そうしますと、その都度長期的に均衡しなくてはいけないということにしま すと、何らかの再検討をその中でしないと回らなくなるということで御議論い ただくテーマを議論していただかないと、負担の問題が個人なのか、企業なの かとありますけれども、それだけではとても均衡が出来る状況にないのではな いか。 そういう意味では、だれが損するかという議論の中で、給付率を下げるとか、 いろいろな間の中で、時点の取り方によって、もらいが少ない人、あるいは払 いが増えて困る人がその都度違うような気がします。 今までの御説明でもそういうのがあったんですが、これは非常に分かりやす く説明していただくと、個人なり企業なりが、どちらを選択するのがいいのか というのが見やすくなるのではないかと思います。ですから、今まで御説明い ただいた資料につきまして、時点を追って、損をする人がもらいが少なくなる 人がどういうふうになっていくのかと。現時点である処置をとりますと、もら いが少なくなると、今後もらう人は非常に少なくて、払う方を払わなくて済む 人がたくさんいると、こういうことがあるのではないかと思います。それが時 点の取り方によって変わるんじゃないかと思いますが、そういう資料をもしで きるのでしたら、考えていただいて議論したいと思います。 ○O委員  私もいろんな委員の方々の御意見を伺っていまして、これから年金制度の議 論する場合に、すぐ年金の問題だけではなしに、今までいろんな先生方おっ しゃいましたけど、国の政策全体の中で年金制度がどう位置づけられて、どう あるべきなんだ、そういう視点を常に念頭に置いておく必要があるのではない かという気がいたします。国の経済政策、金融政策、人口政策、雇用政策いろ いろあると思いますけれども、そういった全体の中での年金の位置づけをはっ きりさせるということと、今特に財政の面から年金制度に対する注文、しかも 何といいますか、言ってみれば、やや乱暴な注文がやたらかぶせられてきてい るような感じがしますけれども、冷静な議論が必要だということと、もう一つ 年金制度の面から見ほかの制度、ほかの政策に注文をつけていくということも どの程度具体的に出来るかわかませんが、私はこれから大事ではないかと思う んです。  単に国民負担率を下げるとか、国の財政赤字をなくすとか、そういう観点か らだけ年金の在り方を論じていたのではおかしいということで、具体的に雇用 政策、賃金政策、金融政策、そういうものにも積極的に発言なり注文をつけて いくということでないと、年金の給付と負担をどうするということだけではい けないのではないかという気がしております。  国民負担率も今の時点では、50を超えないようにするという考え方は分かり ますが、政府の考え方がそういうことで、厚生省もそれに従ってというのはよ く分かりますけれども、それが余りにも絶対的なものだと、少なくともこの審 議会では思う必要はないので、出来るだけ、そうしたい、望ましい目標ではあ るけれども、それありきということで年金を議論したのではいけないのではな いかと思います。 ○P委員  今、若い世代の人たちは、自分たちは年金保険料を払っても将来本当に年金 もらえるかどうかということに対して非常に不安感を持っていると思います。 これは多少不安感をあおり立てるようなマスコミの報道も含めて、そういうこ とがかなり影響していると思いますが、例えば、きょういただいた資料1−1 の3ページの一番下の囲みのところに、「年金財政は現在の保険料率の水準の ままでは将来の給付総額の約6割しか賄えない」と。こういう言葉も非常に説 明不足ではないかと思います。  一般的に考えても、出生率の低下あるいは成長率の低迷ということから、若 い世代が将来の保険金の給付について不安を持つのは当然ですけれども、それ に更に不安感をあおり立てているような報道、政府の説明もあるのではないか と思いますが、もう少し国の人口政策、経済成長についての前向きの展望もあ ってしかるべきだと思いますし、そういうことから、こうすれば、将来の年金 給付は自分たちも生活が出来る程度のものをもらえるという安心感を与えるこ とが若い世代に対して、そういう教育・宣伝をすることが必要ではないかと思 います。  先ほど高齢化世代のための若い世代が負担する。今度は若い世代は、その次 の若い世代に負担してもらうという御意見もありましたが、今の若い世代はそ の次の若い世代に負担をしてもらえるだろうか、そこが非常に不安のタネにな っているのではないかと思います。そういう意味で、若い世代に対する必要以 上の不安感を払拭するようなことも必要ではないかと思います。 ○Q委員  各委員さんの発言で大体異議がないんですけれども、先ほどのO委員の意見 に私も同感であります。年金審議会に対する任務割り当てといいますか、国全 体で見て、こういう状況にあるから、年金審議会はこの範囲において審議を集 結してくれという方向の決定をいただかないと合点いかない感じがいたします。  一番感じることは、少子化の問題はおっしゃるとおりで、厚生省が中心にな って対策を立てなければいかん。そうして、自治省に一番に連携をとってもら って、この少子化対策問題を解決してもらいたいという気持ちを強く感じてお りますので、よろしくお願いしておきます。 ○R委員  少子化の問題について随分おっしゃったと思うんですけれども、大変大きな 問題で、私自身は非常に心配しているのですけれど、11年改正、比較的近い将 来についての年金の問題を考えるときには、あまりそれにとらわれすぎている と議論が深みにはまり過ぎると思います。  さっきおっしゃったように、人口推計というのは、直近あるいは10年ぐらい 先までですと、割に正確に当たりまして、仮に今から出生率を上げてても、20 年後でないと保険料を納める年齢に来ませんので、あまりそれを大きく意識さ れると議論が深みにはまり過ぎるのではないかと思います。ただ、人口問題は 極めて重要だということは、私は身にしみて感じている世代でございます。 ○S委員  私は資料2の20ページの表に関してでありますけれども、基礎年金について、 基礎年金化した方向なり、経緯からしましても、税負担の割合を高めていくと いいますか、税負担方式が国の責任という考えでとられてきていると思うわけ ですが、この表を見ますと、税負担方式は、これが数字的には事実ということ であろうと思いますけれども、圧倒的に、例えば全額国庫負担と考えた場合に は難しいですよという表の描き方になっておるのではないかという懸念を持つ わけであります。  先ほど現行でも12.6兆円ということで行きますと、厚生省予算14兆円の全 部ですよという話になりますと、これは到底難しいのかなと最初から思ってし まうわけでありまして、こういう部分についても一定の予見があるとは思いま せんが、当然2025年には、経済成長もわずかではありますが、財政規模につい ての在り方も変わってきておるわけでありまして、そういう時期の我が国の姿 なり、先ほどからいろいろ議論が出ておりますが、社会経済的な状況をどう見 るかということとも関連しますので、そういう面ではもう少し公平に見ていた だいてはどうかと思います。  もう一点、この議論との対極にあるのかどうかというのはちょっと私も判断 つかないのですが、26ページに「公的年金民営化の提言と問題点」と題されて いるわけでありまして、民営化の提言がどういう姿で、どういう担い手でイメ ージされているのかという部分についても、このままの資料では不十分です。  民営化が今回の財政構造改革会議の方策のように、例えばトップダウンで出 てきたときに、一体この年金審議会がどんなような言い方が出来るのかという 心配も率直に言うとあるわけでして、そういう意味につきましては、この民営 化の問題につきましても、もっと問題点を分析しておく必要があるのではない かと思っています。 ○A委員  今お話しがありました最後の点についてだけ1つだけお願いしたいのですが、 いわゆる積立方式は必ずしも民営化ではないと思います。公的な積立方式もあ るはずで、積立方式の問題点と民営化ということをまず区別していただくとい うのは、その点ではこの資料若干の整理必要かという感じがしました。  また、民営化の場合にも、これが制度によって強制されるものなのか、それ とも全く任意のものなのか、ここの点は性格が違うので、もし任意の民間保険 ということであれば、これは当審議会で扱うべき性質のものなのかという疑問 を持つわけで、そんなものは現在でも商品としてかなりの人間がやっているわ けでして、そういう個人が自由選択で行うものについて、何か審議会であああ るべきだ、こうあるべきだという議論が出来るのかなと思います。 ○年金局長  今までS委員、A委員お二人から御意見ございましたのでお答え申し上げた いと思うんですけれども、まず税のところの資料でございますが、これは私ど もとして、税方式は難しいという、そういう意図を込めてつくった資料ではご ざいませんで、これは全く客観的な事実関係だけを示したということでござい ます。これだけの巨額の財源が必要なわけですから、国民が納得して、それで 税金でやるということになれば、これは行政がとやかく言うべき問題ではない と思いますので、こういう実態をよく御承知の上で、それで御議論を是非お願 いしたいということです。 もう一つ、民営化のところですけれども、この資料は、御承知のとおり大変 不十分なものです。これは非常にたくさんの論者がいろんな角度から民営化の 問題をおっしゃっていまして、民営化はこれだという共通の御意見なり考え方 はまだ日本では出来てないと思うのです。それで「民営化提言の要点」という ことで、こういうことを論者がいろんな角度で、あるいは濃淡をこめておっし ゃっていますということで資料をつくってみたわけです。 今、A委員がおっしゃった積立方式と民営化とは別問題だというのはおっし ゃるとおりだと思います。ただ、民営化を指示される方々の中には、積立方式 を基本とすべきであるという意見が非常に強いということで、こういう資料に 挙げさせていただいたということでございます。 ○C委員 最初に自分が公的年金を受給する立場になってみまして、大学卒の初任給を 上回るような年金というのはいかがなものかなと。少し高過ぎるのではないか、 実はそのように私個人は考えております。もし、公的年金の財政に四苦八苦す るということならば、やはり将来に向けて公的年金の水準ということを別途考 える必要があるのだろうと、このように考えております。 社会保険と税方式ということではいろいろお話も出ておりましたけれども、 厚生年金保険自体について、今更これを社会保険方式から税にと考えることは ないのだろうと思うんです、必要は全くないと。 問題は基礎年金をどうするか、あるいは国民年金にかかわる部分ということ なんですが、国民年金の国庫負担率が3分の1である。これは2分の1にする べきではないかということをある場で私主張したことがあるんですけれども、 昨今の財政事情からむしろ後退しているということですが、2分の1がいいの かどうか、私ははっきりした考えを持っておりません。しかし出来るだけ2分 の1に近づけていくということを主張してみたいなという感じがございます。  これは今日の資料の後段の部分になるので、ここでお話しするのはまだ適切 でないかもしれませんが、老齢化が更に進むと賦課方式による運営に限界があ ると。何らかの形で積立方式の導入が必要ではないかというような議論をする 人がいるということで資料が出ておりました。そこに書かれておりましたよう に、現役世代に二重負担がかぶるというのは、これは事実でございまして、実 はここで出しておられる 350兆というような数字、私も「社会保険年報」を何 冊がのぞいてみて、ちょっとした年金数理を使いまして計算してみたら、その ような数字が出てまいりまして、300 兆から 400兆の過去部分の負担がかぶっ てくるというようなことで、これは大変なことになると思っております。 ○T委員 最後に問題ありました民営化資料では、実は、しかしこれだけでは説明不十 分ですので、非常に論議を巻き起こし、かつ誤解を生むおそれもある。これは 報酬比例部分の全面的民営化ということを前提にしておられるわけですね。  日本のいろんな提言の中には全面的な民営化を言われる方もいらっしゃるし、 部分的な民営化を言っておられる方もいらっしゃいますし、必ずしもここで計 算された 350兆全部が民営化の対象になるのではなくて、このうちの一部が民 営化の対象になるという物の考え方もあるわけですから、ですから、もしこの 審議会でこの問題をお取り上げになるならば、きょうは時間がありませんから 詳しくは申しませんが、もう少し時間をかけて議論された方がいい。このまま ではひとり歩きして危ないのではないか、かように思います。 ○U委員 民営化について、私、最近関心を持っておりますが、世界的にIMFと世銀 が民営化案を出して、それでILOと大論争をやっている最中でして、その辺 の議論がどういうロジックでなっているのかというのは最小限、これは厚生省 にとって大変な問題ですが、しかし、その点はもう少しきちんと資料として少 しまとめられた方がいいのではないかという気はいたします。日本よりもある 意味で非常に急進的な提案が出ていることは事実で大論争の最中です。  もう一つ、現在の年金をめぐる問題は相当大変な状況になっているというの は私の理解でして、1人か、2人、相当のうるさ方を呼んできて論争をすれば いいのではないか。日本でも2〜3、学者の中で、かつて相当ラジカルと思わ れた人も、今やある意味ではそれほどでもないという感じの人もおられるので すが、一度参考人として呼んで、何を考えて、どういうつもりなのかというの を聞いた方がいい。  そういうのを踏まえて、相当流動的に事態は動いているというのは、ここ数 カ月の間、物すごく年金をめぐる論調は変わっていると私は感じておりますの で、その辺、今後の議論の中で考えていただきたい。 ○H委員  今の両委員の話とも関連してきますが、先程A委員が言った問題ともちょっ と関連するので念のために申し上げておきたいのですが、公的年金を議論する 以上、私的年金というのは当然議論になってくる。ただし私的年金の細かい設 計の議論までここでとても出来るということには毛頭なりませんが、ただ、 さっきA委員の話だと、私的年金はこの審議会の審議対象ではないと頭から外 されるとこれは非常に困るので、そういうことの中身の議論までは出来ないま でも、全体的な位置づけの議論の中には、とにもかくにも、今の断面でそれを 外してしまえという根拠もないわけですから、これは是非入れておいてもらわ ないと議論が出来ないと思いますので、そこは是非よろしくお願いします。 ○会長  きょうは当初予定いたしておりました議事といいますか、議題については目 立った進展はございませんでしたが、これで閉会してよろしゅうございましょ うか。  本日の資料につきましては、これをすべて公開することとしたいと考えます が、よろしゅうございましょうか。(「はい」と声あり)  それでは皆様のお考えのように、公開したいと存じます。  本日はこれで閉会したいと思いますが、今後の日程がございますので、事務 局から御連絡をお願いします。 ○事務局  それでは今後の日程につきまして御連絡申し上げたいと思います。  次回は7月14日月曜日、14時から2時間程度。厚生省の特別第1会議室(7 階)で行いたいと思います。その次の会が、7月30日(水曜日)同じく14時 から、場所も同じく特別第1会議室、厚生省の7階でございます。以上でござ います。 ○会長  それでは、これで閉会いたします。どうもありがとうございました。 問い合わせ先 厚生省年金局企画課    担 当 須田(内3316)    電 話 (代)03-3503-1711