97/06/23 中央児童福祉審議会母子保健部会議事録  中央児童福祉審議会母子保健部会   議 事 録 (平成9年6月23日開催) 厚生省児童家庭局母子保健課    中央児童福祉審議会母子保健部会会議次第 日 時 : 平成9年6月23日 (月) 午後3時〜5時05分 場 所 : 法曹会館 1階 議事次第 1 小児の肥満とやせの判定表・図について 2 生涯を通じた女性の健康づくりについて 3 平成9年度心身障害研究について 4 その他 ○事務局 それでは、時間でございますので始めさせていただきたいと思います。ただいまから 中央児童福祉審議会母子保健部会を開催いたします。 本日は、大変お忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございます。 本日は、9名の委員に御出席いただいておりまして定数に達しております。     初めに、母子保健課長より御挨拶を申し上げます。                ○母子保健課長 梅雨のうっとうしい中、お集まりをいただきましてありがとうございます。 私共も、新年度に入りまして、出来るだけ早く再開をしたいと思っておりましたが、 延び延びになってしまいまして、厚生省の中も様々な作業がスタートしております。そ んな中で、ぜひ御議論いただいておきたい内容につきまして今日は御審議をお願いをし たいと考えております。前回、3月26日が最終でございまして、資料の最後のところに 議事録をお示しいたしております。すでに先生方にはお目通しいただいた内容でござい ますので、これで公表という形にさせていただきたいと思います。          今回の審議会でございますが、前回からずっとお預けになっておりました、議題の2 番目にございます「生涯を通じた女性の健康づくりについて」、私どもで今後の検討を 考えた案を資料としてお示ししておりますが、総論的な御議論をしていただければとい うふうに思っております。                            一つは、「小児の肥満とやせの判定表・図について」ということで、まだ御到着が遅 れておりますけれども、後ほど東京女子医大小児科のJ教授がお見え頂きまして、研究 班の方からのプレゼンテーションをしていただきたいというふうに思っております。も し出来れば、今日それに加えて、若干の御審議の後、医療の現場で、あるいは保健活動 の現場で御活用いただけるような段取りにしていただければというふうに思っておりま す。 最後は、新年度やっと調整が出来ました心身障害研究 引き続きのものもたくさん ございますけれども、本年度新たにスタートいたしたい課題もございますので、その辺 のところを事務局の方から御紹介をさせていただきたいと思います。         それでは、J先生が御登場されましたので、この議題の順番で進めていただければと 思います。どうぞよろしくお願いいたします。                   ○部会長 お忙しい中をお集まりいただいて、ありがとうございます。では、これから母子保健 部会を始めさせていただきます。                    お手元に議事次第がございまして、今日は三つの議題を中心に御議論をいただきたい と思います。最初は「小児の肥満とやせの判定表・図について」ということでございま すが、この問題については、かねがねこうしたことを中心になって検討してきておられ ますJ教授においでをいただいておりますので、御説明をいただいた上で、御議論ある いは御意見をいただきたいと思います。では、よろしくお願いします。        ○J教授 ぎりぎりになってしまいまして申し訳ありませんでした。実は、幼児期の肥満が問題 になってきましたのはかなり前からでございまして、厚生省の心身障害研究の研究班 で、幼児期の肥満の問題に全国的な統一をとった方がいいということで、詳しい年数は 忘れましたが、六、七年前に研究班が出来上がりまして、そのときは部会長もいらっ しゃいましたでしょうか、楠先生等で決めさせていただきましたが、当時、年齢別、身 長別の区分は細かくはないんですけれども、そういったものをつくっていたのですが、 今回また改めまして厚生省の方で「小児期からの健康的なライフスタイルの確立に関す る研究班」というのが平成5年から出来まして、その中に「小児肥満の予防に関する研 究班」というのが出来まして、もう一度みんなで幼児期の肥満の判定について考え直そ うということで、かつてのように複雑だと使いにくいということがございますのと、そ れから学齢期に入りますと個人差が特に思春期で強くなってまいりまして、ある一定の 数字の扱いというのは出来ないんですけれども、幼児期は、いろいろな点から検討いた してみまして、さほど細かい年齢による差をつけなくてもいいであろうということで、 われわれの研究協力者でありました旭川医大の奥野先生等が中心となりまして、検討い たしました。それが、今回、御説明申し上げます幼児期からの肥満の判定に使おうとい う一つの標準体重であります。                       出典は、平成2年に発表されました厚生省の「乳幼児身体発育値」の中に身長と体重 の相関表が出ております。これは高石先生等がつくられている表でありますが、それを いろいろな観点から相関をとってみますと、年齢を区別することなく非常にきれいな相 関がとれるということでございまして、それが1ページの一番下に書いてございます2 次式でございます。これで少なくとも1歳以降、幼児期と言われております6歳までは 使えるということが分かりまして、その結果として、後でまた御説明いたしますけれど も、4ページ、5ページにわたるような身長と体重の相関図を使っております。    ただ、新生児期といいますか、1歳、出来ましたら2歳ぐらいまでというふうに思っ ているんですけれども、俗に赤ちゃんと言われている時期に肥満を注意するということ は、お母さん方が余り気になさるということは大変問題でございますので、お母さん方 が少しずつ気をつけていただきたいといったことから、身長が70cmぐらいから 118cmぐ らい 今、大体1mになるのが4歳でございまして、1歳のときの身長は75cmです けれど、これですと平均的に6歳の子どもさんの身長は 110cmぐらいでございますが、 そういった範囲の年齢で使えるということで、身長から標準体重を割り出すという方式 を一定にいたしました。                             従来、「カウプ指数」というのが用いられておりまして、これは成人では、BMI  (body mass index)というふうに言われております。これは、日本を含めまして、7ヵ 国ぐらいの共同研究の結果として、われわれが「カウプ指数」と言っているBMIを使 うことで、成人では身長に余り影響を受けないある一定の数字 これは、日本肥満学 会が22という数字を出しておりますけれども、乳幼児期に「カウプ指数 (BMI) 」を 使いますと、身長による正常値の差がかなり出てまいります。それから、御存じのよう に、乳児期には大変太っている体型といいますか、身長に比べまして相対的に皮下脂肪 の多い、体重の多い時期でございますが、それから非常に学齢期に近づくにつれ細身に なってまいります。そういったこと等で、この年齢の時期にカウプ指数の標準値とし て、ある一定の値を使うというのは無理がございます。われわれはカウプ指数の標準値 として一応18という数字を使ったりはしているのですけれども、肥満で身長の大きい子 もいれば小さい子もいる。概して言いますと、肥満の子は少し大きめの子が多かった り、そういった子どもたちを扱うには「カウプ指数」よりも別の指数がいいであろうと いうことで、身長に対する標準の体重を設けて、その標準の体重の何%増しを肥満とし てよいかというようなこと(肥満度)を決めました。 以上が概略でございます。繰り返しますと、1歳、出来れば2歳から学校へ上がる前 の6歳ぐらいまで、保健所、あるいは、これから地域保健で扱っていくいわゆる幼児の 時期の肥満判定に適用するために資料として、厚生省の平成2年の「乳幼児身体発育 値」に身長と体重の相関表を用いました。それをいろいろな観点から検討してみます と、単純に身長と体重で回帰をさせればいいのではないかという結論になりました。そ ういうことで、わりと単純に肥満の判定が出来る表もつくりやすいということでござい ます。それから、カウプ指数(BMI)について一定の標準値が決めにくいことは今申 し上げたとおりでございます。 次が肥満とやせの程度の区分ですが、これは前の厚生省の研究班のときにもそうでご ざいましたけれども、肥満度15%ぐらいが将来の学童期の肥満につながっていく。標準 体重の15%増しあたりからその後の肥満につながっていく傾向が強い訳です。「学齢期 は肥満度20%以上になっているのに、幼児が肥満度15%以上だと幼児肥満の頻度が高く なりませんか」という質問をよく受けるのですが、実はそれはある意味では間違いでご ざいまして、要するに幼児期から学童期にかけて肥満の程度がだんだん強くなってまい ります。ですから、肥満の程度が強くなってくるプロセスの途中でつかまえていますの で、15%ぐらいでつかまえていますと、それが将来、20%ぐらいの肥満につながってい き、かつ頻度といったものも、15%でやりますと、従来われわれがいろいろな観点から 見ております肥満頻度に合致いたします。このことは、私どもばかりではなくて、京都 府立医大の方からも同じような報告が出ております。そういうことで、一応15%以上 と。 それから、一般に肥満度30%以上が学童期では中等度の肥満ですが、今申し上げまし たように、これからどんどん太っていくプロセスでありますので、われわれが中等度と 学齢期で判定しております30%以上になると太り過ぎで、その一つの区切りとして、20 %を途中に設けた訳であります。したがいまして、肥満度15%以上20%未満が太りぎみ で、20%以上30%未満がやや太り過ぎ、30%以上が太り過ぎということになっておりま す。 太っていることとやせとはちょっと意味が違いまして、太っている場合の大部分は単 純性肥満でありますが、やせる、特に体重が少なくなってくるというのは病的なことが 非常に多い。それから、成人でもそうですが、30%上やせるということは非常に病的で ございます。したがいまして、やせにつきましては、15%から−15%未満を普通といた しまして、15%から20%未満をやせ、20%以下はやせ過ぎということで注意を喚起して おります。                                   対応の実際でございますが、教育、指導という言葉がよく使われておりましたが、最 近は、指導といいますと、若いお母さん方がある考えを押しつけられるというようなこ とでございまして、これからは支援という形でこういった問題を扱っていくことが大事 か考えます。太り過ぎの場合には医療機関に紹介をしていただきたい。なぜかといいま すと、幼児期の太り過ぎには病的なことがございます。それから、やや太り過ぎという 場合には教育、指導、支援を行いまして、太りぎみであれば、今後どういう経過を見る か、指導、支援及び経過を見るということにしております。やせは、先ほど申し上げた ような理由で、やせている、やせ過ぎ、こういった場合には注意をして、一応、地域保 健その他では医療機関でその原因を診ていただければありがたいと思っております。  今回の大きな目的は、最近、成人病が生活習慣病に変わりましたが、肥満を通じて生 活習慣病についての理解を深めることであり、成人病よりも、生活習慣病として肥満を 位置づけた方が、いろいろな点でお母さんたちにも分かりやすいと考えております。生 活習慣病でありましても、やはり、両親、母親、家族の成人病としての家族歴その他に 非常に強く影響されますので、ここに書いてございますが、母親が肥満しているとか、 あるいは成人病の家族歴があるような場合はぜひ注意をしていただきたいと思います。 それから、(1)の発育歴は、ここで詳しくは説明してございませんけれども、4ページ、 5ページにございますようなチャートに実際の経過をプロットしてもらいますと、基準 線より上向き、あるいは下向きという経過は分かりますが、上向きになってくるとか、 下向きになってくるとか、ぜひこういうパターンを重視して今後経過を見ていただけれ ば大変ありがたいと思っております。そのことが、肥満度が二、三ヵ月といった短期間 で急速に増加したり、急に減少したりした場合は、病気が原因のことがあるので注意が 必要であるということにもつながります。小児科という立場からしますと、この辺をむ しろ肥満度の数字そのものよりも重要視をしていただきたいと思っております。    とりとめのない説明になりましたが、以上でございます。             ○部会長 ありがとうございました。大変クリアな御説明だったと思いますが、厚生省でこうい う肥満・やせの判定の基準、あるいは呼び方をこれからの幼児健診、育児相談等に利用 されるということになれば影響が非常に大きうございますので、今、御説明をいただい たいきさつに基づく判断基準、さらには呼び方 普通、太り過ぎ、やせ過ぎ、いろい ろ苦労なさってこういう名前を付けられたと思いますけれども、これについてひとつ御 自由に御意見をお聞かせ下さい。 これは、あくまでも学校へ入る前ぐらい、いわゆる幼児期を念頭に置いたものです ね。 ○J教授 そうです。場合によると一つ矛盾が生じますのは、これは現場あるいは学校等で学校 へ上がる6歳まではこのチャートで判断をしていただきたいのですが、それ以降はいろ いろな判定基準を使っておりまして、私自身も関係してつくっております肥満度の計算 法があるのですが、移行期に若干ズレが生ずるかもしれないと思います。これは、文部 省が出しております「学校保健統計調査報告書」の平均値 あれは平均値しか出てお りませんが、5歳から統計が出ております。それから、厚生省のものも6歳過ぎまで出 ているのですが、若干食い違いが生じてしまうのは仕方がないことでして、その辺のと ころをまた説明をしておく必要はあるかと思いますけれども、主な目的といたしまして は幼児、特に今度、母子保健が地域保健に移管された際の指導などに分かりやすく使っ ていただきたいということです。 ○部会長 今、学校保健の現場でこの肥満度が一番広く使われているのは何ですか。   ○J教授 今はいろいろになってきていると思います。そして、この間、文部省の健診項目の改 定がございました際に、これも併記されているのですけれども、肥満度であるとか、カ ウプ指数、ローレル指数等で使うようにということで、当時の文部省の専門官の方とし ては肥満度でやろうということだったのですが、私が聞いているところでは、まだいろ いろ問題があるので、肥満の判定法を統一をするというわけにはいかないのではないか という意見を聞いています。肥満度による肥満判定はかなり一般化してきているように 思います。ただ、これも率直に申し上げまして、肥満度というと何でもすぐ肥満に関係 するようで、やせも肥満度というのはおかしいのではないかというような意見があるこ とも事実ですが、現状では最も一般的に使われているように思います。    ○部会長 今、御説明をいただいた方式をこれからの支援に活用するとすれば、かなり影響が大 きいものですから、この考え方そのもの、区分けの仕方、呼び名、その三つを合わせて ひとつお考えをいただきたいと思うのですけれども、いかがでしょうか。   ○D委員 私、産婦人科ですけれども、よく分からない点が一つあります。今、部会長がおっ しゃった呼び名ということですが、これは就学前の基準ということで、赤ちゃんという よりは、もう学校に上がる寸前ですから、ある程度自分を認識していますね。そうする と、「あなたは太り過ぎですよ」、「あなたはやせ過ぎですよ」というような呼び 名でよろしいんですか。                             ○J教授 先ほども申し上げましたけれども、私自身としては、ある一時点でプロットして太り 過ぎとか、やせということよりも、少し流れで見ていただきまして、さっき言いました ように、肥満の度合いが進んできている、やせの程度といいますか、体重が減少傾向を 示している。我が国には、幸いなことに、法的に決められているだけでも、非常にたく さん子どもたちが身長と体重のデータを持っているんです。乳児期に肥満を問題にする ことは非常にまずいと思いますので、乳児期は余り肥満を問題にしていないのですが、 乳児期からの流れといたしましても、乳児期に3回か4回は身長と体重をはかっていま す。それから1歳半、3歳でもはかっておりますし、大体3歳近くになってまいります と保育所あるいは幼稚園へ参りますが、体重は少なくとも一月に1回ははかっているん です。それから、身長もかなり頻回にはかっておりますので、もし身長の資料がなけれ ば、体重だけでもプロットしていただければいいんですけれども、それが上向きのパタ ーンを示す、下向きのパターンを示す、そういったことを確認していただければ、私は そういう言葉の意味を明確にするために、それについて説明するマニュアルづくりもし ようと思って、それも一応準備をしているのですけれども、これもまた厚生省の研究班 の仕事で御相談申し上げなければいけないと思っていますが、そういうパターンがはっ きりしている場合は、さしあたって「太りすぎ」といったことを使っても構わないし、 親の方も十分納得をなさるのではないかと私は思っています。一時点だけをプロットし まして、そういったことをただただラベルを貼るといったことはよくないと思っていま す。                                  ○D委員 流れとしてということですね。                     ○J教授 はい。流れとしてぜひとらえていただきたい。その資料は我が国では各子どもさんた ちが十分持っていらっしゃると思います。                 ○部会長 最近は、親の方でも、ひと頃は「小児成人病」などという言葉がはやりましたけれど も、やはり生活習慣病との関わりで、太り過ぎはとかく気になさる親が多い。母子保健 サービスの中でも、3歳児健診のときに、いわゆる肥満児だと、今までは保健所である 程度指導するような肥満児教室的なものがサービスとして行われておりましたね。これ から先、市町村が中心になっていく場合に、この保健所のサービスはそれでつながるの か、市町村が中心になるのか、この辺はまだはっきりしませんけれども、その辺はいか がですか。何か方針はあるんでしょうか。どうなんでしょう。        ○事務局 特別これといったマニュアルみたいなものはないですね。         ○D委員 母子手帳がございますね。今年の4月1日から市町村に母子保健事業を委譲なさいま したね。そうすると、そこに書き込む内容というのは、今の県単事業と同じように、ま だ全然変わっていないですね。ですから、マニュアルといっても、われわれが何十年と 使っているのと全然変わっていないような書き方になっていると思います。 だから、 マニュアル的なものはないと思います。                  ○J教授 それに関連しまして……。平成2年だったと思いますけれども、これは諸通達の中の 1項目ですけれども、厚生省から恐らく3歳児の健康診査を中心にしてだろうと思いま すけれども、小児肥満予防教室といったものを開くようにという通達が出ています。実 はこれも研究班の一つの仕事としてやったんですけれども、東京都の各保健所にアンケ ートをとってみますと、通達の仕方もそういうことだったとは思うんですが、25%ぐら いはその通達が十分理解出来ていない。それは、通達が理解出来ていなかったというの じゃなくて、話を聞いてみますと、3歳児健診で肥満の扱いをやっているところがほと んどなんです。それで、改めてそういったことに対する注意が喚起されなかったんじゃ ないかと思っているんですけれども、特に3歳児から以降というのは、学齢期、成人に なってからの肥満の関係はたくさんデータが出ているのですけれども、実際そういう事 業が具体的に行われていますので、少しはっきりした指針といいますか、そういったも のがあった方がむしろいいのではないかとは思っています。          ○母子保健課長 今までのは、「カウプ指数」を中心に現場ではその辺をしていたと思うんです。     ○J教授 いろいろです。今のところは「カウプ指数」が一般的です。        ○母子保健課長 一般的にはそうだと思うんです。それを、今回、御研究いただいた新しい指標に変え ていくという理由がみんな納得というふうにならないと、なかなか難しいだろうと思う んです。その辺のところは、本日、いろいろな角度から御議論いただいた方がよろしい かなというふうに思います。もしそれがこの部会でやはり切りかえた方がいいだろうと いうことになれば、今どんなマニュアルで流れていようとも、切りかえの通知を出せば それで済むことでございますので、改めて徹底をさせていただいたらいかがかなという ふうに思います。母子健康手帳にも載っていますね。あれももちろん変えていかなけい といけない話になります。もろもろの話がたくさんございますので、今日、こういった 研究班からの御提言を受けて、母子保健部会としてどんな段取りで今日、十分御議論が 尽くせるかどうか分かりませんけれども、現場で活用された先生方もこの中には何人も おいでになりますので、いろいろ御意見をいただければというふうに思います。 ○D委員 部会長がおっしゃった母子手帳の活用というのは、医療機関はそうですが、個人の生 活記録なども……。そうしますと、生まれてから学校へ上がるまでの期間、お母さんが 大切に持っていて、そこへ「太り過ぎ」と書かれるのは非常に嫌だというお母さんがい るんです。見せっこといいますか、どこの病院で生まれたかというのがステータスに なっている母子手帳もある訳です。それで、そこの中にいろいろなことが書かれてあ る。例えば、こういうことを言っては変ですけれども、私は千葉県ですが、千葉県の市 川に国立国府台病院と言っていたんですが、今は精神医療センター国府台病院といっ て、そこでお産をする人はほとんどいないです。なぜかといいますと、そこに判こが押 されますから。その中を見ますと、精神医療センター国府台病院で生まれたとなってし まう訳です。そうすると、これを持っていろいろな保健所へ行けば、「あれっ、何かあ るのかな」というようなことも考えられる。それから、「肥満」とか「やせ」という項 目があれば、そのお母さんにとっては非常に精神的な心の打撃といいますか、そういう ものも少しはあると思うんです。うちの子はデブと書かれてしまったとか、そういうの が実際にあるようです。ですから、ここの呼び名はもう少しはっきり小児の医学用語で 定義みたいなものはあるんでしょうか。                    ○J教授 今われわれが使っておりますのは、程度ということで言いますと、軽度肥満、中等度 肥満、高度肥満というような言葉は使っております。それから、もう一つの分け方とし ては、単純性肥満と症候性肥満というような形で分けておりますが、今問題になってい ますのは単純性の肥満で、そういった使い方をしていますが、先生がおっしゃいますよ うに、やはり太っているというラベルを付けるための目的に使われるのは私も問題だと 思います。                                ただ、そのプロセスの中で、さっきも言いましたように、今後、お母さん方に注意を していただきたいという意味合いをわかりやすくするには、こういった流れが……。こ れは、私の経験からしましても、例えば「肥満度が50%ですから高度の肥満ですよ」と 言ってもなかなか理解していただけませんけれども、こういったチャートの中で、そう いう子どもさんの体重はびっくりするほど上を向いてしまうんです。特にお母さんが納 得をしてくださるという、そこのところが非常に大事だろうと思うんです。ですから、 単に一時点のデータでラベルを付けるだけという、それだけに用いられるといいますよ りも、ここに発育歴というのがございますが、発育歴をきちんとチャートの上であらわ すことが非常に大事じゃないかというふうに思っているんです。それは、私の経験から しまして、管理、指導、支援、そういったものが必要だと思う子どもさんのチャート は、本当にお母さんの方もびっくりされるようなパターンを持っております。     ○部会長 今、母子健康手帳も、普通、やせ、太り加減というのがありますけれども、あれは、 要するに書き込む医者が、おっしゃるように親を余り傷つけないように、あるいは心配 し過ぎないように、われわれだと普通に○を付けて、その上で、もし太りぎみならば 「もう少し運動をさせなさい」とか、そういう指導をするのが当然の心構えと理解して いるのですけれども、そういう場合に、ある程度の基準みたいなものがあればこれは村 田先生の持論ですが、子どもには基本的にはダイエットさせるよりも運動をさせろとい うのが大事でしょうから、そういう意味の指導の方針みたいなものを、対応する医者は もちろんですけれども、保健婦なり栄養士なりに理解しておいてもらうための手引が出 来れば、現場では大変助かるだろう。今まで保健所で肥満を主に扱ってきたいきさつが ありますので、これから先、市町村が中心になるとすれば、市町村の担当者向けの基準 というより、ものの考え方と手引があったらいいだろうなと私も思いますけれども ……。                                   ○D委員 賛成です。                              ○A委員 現場で一目見て太っているなという子どもがいます。それで、いろいろ話を聞くので すが、両親合わせると 200kgを超しているんです。ですから、これは親に似ているんだ ということで、「運動やっているか」と言うと、「やっています」と。「何をやってい る」と言うと、「柔道をやっています」と。「じゃ、おまえは将来、無差別級のチャン ピオンだな」なんていう話をするのですが、親も子どもも気にしていないんです。です から、そういう子どもたちのことも少し考えていないといけないのかなという気が一つ はします。  もう一つは、ある方が調査なさった中で、自分の子どもが太っている か、やせているかという調査をした。ところが、やせている子どもを太っているという ふうに見ている親、逆に太っている子をやせているというふうに見ている親、これがそ れぞれ数%あるんです。この辺はやはり問題だろうと思うんです。一つは、母子健康手 帳がこの間新しくなって、3パーセンタイルから97%パーセンタイルになりましたけれ ども、あれはほとんどプロットされていないんです。私が健診すると、そのプロットを 最初からやり直すのは大変な時間を食うぐらい、やっていないですね。あれを見ただけ で、離乳のやり方がまずいとか、途中から太り始めたというのが分かるはずですが、こ れは保健所でもなかなかやってくれない。病院でもなかなかやってくれないというのが あります。そこら辺をもう少し徹底していただけるとありがたいと思うし、また、予防 にもなるかなと思います。                            ○母子保健課長 そのプロットは、お母さん御自身がお書きになるところですよね。   ○A委員 例えば身長と体重だけしかはかっていない母子健康手帳を持ってくる人もいます。何 とか保健所と判こが押してありますけれども……。それで、今度、頭囲が出来て、ある 年齢から胸囲が抜けましたね。そこははかっていないというのが現実です。そうする と、頭なんて親は余り気にしていませんから、私が全部書いて、それで済みますけれど も……。でも、あのプロットは、少なくとも親にやりなさいと言わなくちゃいけないで しょうし、出来れば健診したところで看護婦さんなり保健婦さんなりがやっていただく と一番いいですね。「こういうふうにするんですよ」と見せてやるだけでも違うと思い ます。                                  ○母子保健課長 私は、母親の子どもに対する成長とか健康というものを、はかってもらって数字はい ただくのですが、改めて自分の手で自分の子どもの成長曲線を書くという行為がとても 必要な行為ではないかというふうに日頃から思っているんです。ですから、むしろ保健 所の現場とか、あるいは市町村の先生方の診療の現場では、「今日帰ったら、あるいは 今待っているときにプロットをしていかれたら」ということをお伝えいただくことの方 が重要かなというふうに思っていたんですけれども……。     ○A委員 確かに課長のおっしゃるとおりですが、今、育児機能が大分落ち込んでいる時期です ので、そこまで指導してあげた方が親切かなと思うんです。    ○部会長 私も、健診をやっていて、親が自分で書いてきてある母子健康手帳というのはほとん どないですね。私も全部自分でやらなければならないんです。それが一番分かりやすい し、太り過ぎ、やせ過ぎも、この子は大柄だから太り過ぎじゃないですよとか、そうい う説明をするのは、あれが一番楽ですからね。ただ、それをやるのはもちろんだけど、 これから先の現場を考えると、ある程度の基準というのも教えておいてあげた方がいい のかなという気は確かにするんですですけれども、ほかの先生方は……。   小児科 の先生から先に伺いましょうか。F先生、いかがでしょうか。         ○F委員 赤ちゃん健診をするときに、グラフが埋まっていないと赤ちゃん健診もなかなかうま くいかないので、帰ってから埋めろというのではだめなんです。診るときに、それを見 ながら健診するというのが一般的に小児科の医者がやっていることなので、看護婦さん の人手があれば一番いいんですが、やはり自分でやるしかないし、お母さんが身長と体 重のバランスが大事だというようなことを知っていてくれて、待っている間にやってく れるということがあれば一番いいと思いますけれども、一般的に、さっき部会長がおっ しゃったように、体重にだけ目を奪われて、体重と身長のバランスが大事だということ は、お母さんたちに比較的浸透していないような気がします。         ○部会長 G先生、どうですか。                         ○G委員 保健所の現場では、多分、カウプ指数中心でやっていると思います。そうすると、当 然、保健婦さんや栄養士さんから、なぜ書きかえるのかということを聞かれると思いま す。それで、J先生に御質問ですが、今回の作表に当たって、同じ対象で、カウプ指数 でとってみるとこういうふうになって、やはりカウプ指数よりもこちらの方がいいんだ というようなことは御検討対象になったかということですが……。       ○J教授 それは、カウプ指数を基準にして肥満度を見るのか、肥満度を基準にしてカウプ指数 を見るのかでかなり違ってしまうという自己矛盾をお互いに起こしてきてしまう訳です けれども、幾つか問題がございます。第1は、さっき申し上げましたように、カウプ指 数は年齢と標準値だけを見ましても、標準値がかなり動いてしまいます。それから、幼 児期は思春期ほどの大きな身長の差は個別で出てこないんですけれども、しかし、身長 によって差が出てきてしまいます。                    それで、ちょっと話が先へ飛んで、またもとへ返ってきたいのですが、体格指数が、 なぜカウプ指数は身長の自乗で体重を割っていて、ローレル指数は身長の3乗で体重を 割っているかということですが、これはかなり数学的なことで論文が出ておりまして、 結局、体重というのは3次元の数字な訳です。もし1cm3重さが同じであれば、体重で なくても、何cm3というふうに言っても構わない訳でして、3次元の数字な訳です。そ れに対して、身長は1次元なものですから、重みを比べるときにかなわない訳です。そ れで、身長を自乗したり、あるいは3乗している訳ですが、幾らやせているといって も、身長を一辺とする正四方形の平面の人はいない訳ですね。それから、幾ら太ってい るといっても、身長を一辺とする立方形ほど太っている人はいない訳です。ですから、 LX分のWとしますと、そのxというのは2から3の間に適切な数字があるはずです。 そういうことを数学的に証明して、すでに論文も出ていますし、小児科領域では今、C 先生のお弟子さんで山梨の朝山先生が小児についてXの2.何乗をとるのが一番いいと か、そういうことを出していらっしゃいます。今でこそ計算機がありますから2.何乗と いう小数点を指数とする計算が出来ますけれども、かつてはそういうことは出来ない訳 です。    したがいまして、原則的に言いますと、こういうことが起こってまいります。身長が 小さくて標準の体重、身長が大きくて標準の体重をしているときに、例えばカウプ指数 を求めていきますと、自乗ですから分母がだんだん弱くなってしまう訳です。したがっ て、標準値の数字が大きくなってしまいます。それから、ローレルの指数は、身長が低 くて体重が正常、身長は大きいけれども体重は正常な体格をしている。3乗してまいり ますと、今度は分母が大きく強くなり過ぎてしまいまして数字が小さくなってきます。 これは、実際に報告されている数字でやってみますと、そのとおりのことが起こる訳で す。したがいまして、さっきも言いましたように、特に幼児期は非常に大きく体型が変 わってきますが、一般的表現をさせていただくと、太りぎみの体型からやせぎみの体型 に変わってくるという本質的な問題と、身長によってカウプ指数の正常値が影響を受け るというのはそういうところにある訳です。ローレル指数などは、小児期では非常に大 きく身長の影響を受けてしまいます。                       ところが、不思議なことに、成長期がある程度止まってしまった、男の子では16歳、 17歳以降、女の子ですと15歳以降になってきますと、カウプ指数は身長の影響を受けな くて、身長に大小があってもほとんど同じ値になってしまうんです。これはどうしてか ちょっと分からないんですが、とにかく発育期は今申し上げたような形でカウプ指数は 身長の大きい子の場合には分母の力がだんだん弱くなってしまう。それから、ローレル 指数は分母の力が大きくなってしまいます。このことは、かなり前から、どういう訳 か、乳幼児期がカウプ指数で、学童期がローレル指数ですけれども、船川先生や高石先 生が学校保健研究に30年ぐらい前に、もし学校でローレル指数を使うのだったら、身長 の高い子は小さい数字、身長の低い子は少し大きな数字を基準値にしないといけないと いうことを書いていらっしゃいますが、実際にやってみるとそのとおりです。カウプ指 数やローレル指数を用いる場合、これが一つ問題点になります。            それから、2番目の問題点は、肥満度もそうですけれども、こういうチャートという 形で見せた場合に、親は身長と体重でプロットしていけますから大変分かりがいいんで すけれども、カウプ指数の正常値をこういうチャートの形で追っていくとすると、カウ プ指数というのは何者だと思って、それが18とか20とか無味乾燥な数字として出てくる 訳です。そういう点でも、太っているぐあい、あるいは私はやせを判定することも健診 の上で非常に大事だと思っているのですが、身長と体重のつり合いで子どもの発育を見 ていかなければいけないという、その辺の理解が、指数に変換されたために親の方がピ ンとこないということがございます。                       それから3番目は、このチャートは全国的なデータからつくられている、一応オーソ ライズされた形といいますか、その数字を使っている訳ですが、カウプ指数の全国的な 調査をされた成績というのは最近では余りないと思います。私が知っているのは、これ も厚生省か文部省かの研究班だと思いますけれども、国立公衆衛生院の高野先生がかな り前にカウプ指数の正常値の分布を出していらっしゃいますが、そういった意味での乳 幼児期の正常値のかなりオーソライズされたものが現在ない訳です。われわれが学校を 卒業した頃は、生まれたときは頭囲が大きくて、1歳になると頭囲と胸囲が同じになっ て、その後は胸囲が大きくなると習ったんですけれども、今は数字が全然違いまして、 二、三ヵ月になると胸囲の方が大きい訳ですね。要するに、栄養状態が非常に変わって しまっている。かなりやせ型の子どもの頃のいろいろな正常値が出ているのではないか と思うんです。                                 ですから、そういう意味から考えまして、では、現状の乳幼児にどういうカウプ指数 の正常値を当てはめるのかというと、そのアップ・ツー・デートなデータが私の知る限 りではないと思います。高野先生が出していらっしゃるのが恐らく……。しかし、それ も私的な機関で全国的に集めてこられたものですから、何らかのバイアスがかかるかし れません。そういう意味から言うと、基準にする意味でのカウプ指数の正常値がないん じゃないかということです。(この会議の後、平成2年度の厚生省身体発育値から、高 石先生方が計算された乳幼児期のカウプ指数のパーセンタイル値が出ていることがわか りました。これをみても50パーセンタイル値は年齢によりかなり違います。 それから、 同じことの繰り返しのようですけれども、やはり我が国で指導の現場で一番遅れている これは清川先生がおっしゃいましたけれども、その時点でパッと見て、「おたくのお 子さんは太り過ぎ」と、こういう指導、あるいは相談されることがわりと多いんですけ れども、そこまで身長や体重の動きがすごく大事だろうと思うんです。例えば肥満度 35%という肥満であったとしても、それがずっとそういう状態を保っているのか、ある いはやせてきてそこへきているのかとか、そういう動きで評価するということが比較的 少ない。そういう全体的な動きを見ていく上では、これは単に肥満を判定するだけでは なくて、さっきF先生がおっしゃいましたように、身長と体重のバランスを見ている訳 ですから。今の母子手帳ですと、身長の成長曲線、体重の成長曲線が別々になっている ものですから、身長はほぼ正常だけど、体重が少しやせぎみで経過しているようなと き、「やせ」という形でよくやっている訳ですね。しかし、これをこのチャートで見て みますと、少しやせぎみのところですが、恐らく基準線に沿った発育をしていっている のではないか。要するに、やせ型で健康な子どもさんも非常に判定しやすくなってくる のではないかと思っていまして、いろいろな意味で、当たり前な結論と私は言っている のですけれども、こういったチャートの形で今後、肥満に限らず、子どもさんの乳幼児 期の、特に幼児期の発育を評価していただければ私は大変ありがたいと思っておりま す。   ○G委員 多分、保健所は学齢前で、健診を統一的にやるのは3歳ですから、その後、若干太っ た子どもを追いかけるにしても、学齢期に入ってしまうと学校保健になりますね。だか ら、統一的に乳児期からバランスで見るというスケールが出来れば大変ありがたいと思 います。その際、今のカウプとか、ローレルとか、あるいは最も単純なときには体重だ けで太っているかどうかというのを判断してしまうので、その辺の統一をやっていただ ければ、これは非常に使いやすくなっていくんじゃないかと思うんです。意外に保健所 の現場では、普通の健診は全部そうだと思いますが、スクリーニングといいましょう か、余り数字の厳密な、ちょっと上だからどうだというよりも、ちょっと太り過ぎだか らという感覚で、要注意しよう、あるいはフォローしようという、スクリーニングとし て考えていますから、そういう点で、こういう表の使いやすさをもし工夫していただけ れば……。例えば年齢だったらサッと記入出来ますね。身長を見て、体重をそのバラン スで記入するのだから、そういう点の分かりやすい工夫があれば、これは使えるのでは ないか。しかも、もし乳児期から小児期を通してやれるのだったら、それは先々にとっ ていい方向じゃないかというふうに思います。                  ○部会長 ありがとうございました。具体的に使うとすれば、この図を使って入れてみて、それ で判断するのが一番手っとり早いですか。                 ○J教授 はい。それが一番手っとり早いと思いますし、これはいわゆる報告書という形では上 げていないですけれども、マニュアルをつくっていく上で、それには細かい数字の相関 表みたいなものも出来てはいるんです。しかし、このチャートの上にプロットしていっ て、経過を見るのが一番分かりやすいと思います。             ○部会長 ありがとうございました。E先生、いかがでしょう。           ○E委員 現行の母子手帳ですと、いわゆるパーセンタイルとカウプで、パーセンタイル自体は 身長と体重と二つ後ろの方の表になっておりますけれども、そうなってくると、非常に 熱心な母親がプロットしたにしても、自分の子どもの体型というものが立体的な認識が 出来てくる。身長がずいぶん大きいから、少しやせていてもいいだろうというような感 じになってしまいますし、また、体重がこれだけ太っているのだから、少しぐらい背が 小さくてもいいんじゃないかというふうに自分身びいきに考えますから。ただ、こうい うふうな肥満度判定チャートという そういう名称がいいのかどうか分かりませんけ れども、こういう表で二つの測定データ、身長と体重ということで、一番正確な測定デ ータで自分の子どもがどのぐらいの体型にいるかということがはっきり分かる訳ですか ら、そういう点では非常に便利だろうと思います。    これから乳幼児保健というものが地域の中に浸透してくる訳ですから、お医者さんが ローレル指数で計算するか、あるいはカウプでやられるか、それはそれぞれで、一々計 算するという方式も必要ではございましょうけれども、こういうような一つのチャート の中である程度はっきりとつかまえることが出来る方式の方が、現場としては大変便利 であって、効用度がつよいだろうと思います。 ○部会長 ありがとうございました。こういうのが行き渡ってくる時代になれば母子健康手帳の 改正の時期で、今度は平成12年が新しくはかり直す年ですから、13年かそこいらに改訂 版がつくられるときに、こういうものをコールする時代がくるかもしれない。それまで のこういうものの利用のされ方によるのかなと思いますけれど、C先生、御意見は… …。                                 ○C委員 J先生はじめ、何人かの小児成長発育に関することで一生懸命やっておられる方々 は、今はJ先生がおっしゃるような傾向だと思うんです。私も、それはそれでよろしい んじゃないかというふうに思っています。ただ、翻ってみれば、ここにある肥満度も、 一般の方と言っては失礼だけれども、それまではカウプ指数とかローレル指数を一生懸 命やっていたときに、東大の日比先生とか皆さんが肥満度のこれを使おうというような ことで始まってずうっときた訳ですが、今度は、先生のおっしゃるように、それに身長 の様子を加えながら、しかも、乳児期の小さいところではそれはちょっと問題があるか ら、幼児期というのでやっていらっしゃるのは、学問的意義については私は幾らでも言 えることは出来ていると思うんです。                     問題は、こういうものが一般の大衆のところに出る訳ですから、少なくとも保健婦あ たりには、先ほど先生がおっしゃったように、一点で絶対評価しないでくださいという ことをやって、経過を見ながら、その動きがどうだということがすごく意味があること だということでおやりいただかなくてはならないから、その辺のところは強調していた だいた方が誤解がなくて済むんじゃないかと思うんです。 それから、今お話を伺っていて、一つは小児科医、あるいは産婦人科医のドクター が、患者さんが来て、「うちの子は背は低いんでしょうか」、あるいは「肥満があるん でしょうか」というようなとき、あるいは何かほかのことで来たときに全体的なその子 どもの様子を一緒に診るというのに使われるのは、ドクターなり保健婦なりをかなり教 育をしなくてはだめだと私は思うんです。皆さんがおっしゃっているとおり、今までは 少なくともカウプ指数とか、そういうものを使っているのがどの程度か知りませんけれ ども、われわれはほとんど使っていませんけれども、普通のところの皆さんは使ってい らっしゃるし、手帳がそうなっているということもございますから、その辺もあって、 これからPRもしなくてはならないんじゃないか。そうやっているうちにだんだん定着 していって、なじんでいっていただいて……。                    それから、今は何といっても患者が主体ですから、これはうちの子のプライバシーに 関することだということにもなりかねない。先ほど清川先生からお話があったように、 お産の場所すら云うのを拒否するというようなこともある訳ですから、そういうことを 考えると、かなり慎重に扱わなくてはならないけれども、今の時代としては、そこまで はいいだろうと。                                それから、もう一つ伺いたいのは、確かに幼児期はこうですけれども、学童期になっ て身長の差というのは余りなくなって、一方では骨格の発達とか発育は大分違う部分も あるかもしれない。そうすると、素人の人は先生方に、幼児期はやってくれたけれど も、学校へいったらこうで、しかも、学校へいったら、今まで肥満と言われていたのが 肥満でなくなってみたり、逆になってみたりというような、それはある意味では誤解に つながるんですけれども、確かに今度、小学校へ入ると、使われるものが文部省の値 で、厚生省でなくなるということで、大体は似ていますけれども連続する。ですから、 わざわざ小児科医もそこのところでちょっと切ってあっていくようなグラフをつくって いるという部分もございますから。そういういろいろな問題を加味しながら、おっしゃ られるように、すぐここで肥満だとか、強度肥満とか、そういうようなことをやるので はなくて、その辺が十分認識されながら、個人のプライバシーとか、あるいは心に傷を つけられたり、また親はこの頃は文句を言いますから、その辺の誤解が少ないようにし ておいた方が間違いない。そうすると、平山先生の、これは非常に慎重に扱っていきた いという気持ちも分かりますね。そんなところでございます。                ○部会長 ありがとうございました。                       ○F委員 一つ教えていただいていただきたいのですが、母子手帳の後ろに身長と体重の標準偏 差の曲線がございますね。パーセンタイル値で3%というふうになっているところで、 例えばお母さんが大きい子どもを連れて来て「うちの子は重いんじゃないか」と言った ときに、標準の体重のところまで移行させて、例えば1歳の子が2歳半ぐらいの大きさ だったとして、2歳半のところの標準体重の上3%以上ぐらいだと、「これはちっと太 り過ぎだから」というふうに指導するようにしたりしているんですけれども、今までウ エートとハイトのレシオの表がありませんでしたので、体重の表と身長の表を使って、 標準身長で体重を見て、太り過ぎか、太り過ぎじゃないかというようなことを今までは やっていたんですけれども、この30%というのは、一般的に言って、大体何人ぐらい太 り過ぎに入るんですか。                          ○J教授 この時期で30%の肥満になっているケースというのは、今、細かい数字はちょっと覚 えていないんですが、15%以上というのが大体3%ぐらいです。30%以上になりますと 1%を切ると思います。 ○部会長 そんなに多くはないんですね。    ○J教授 はい。 ○A委員 私は、使わせていただく立場から発言いたします。先程から御発言があるように、住 民参加の方向でのいろいろな健康づくりの中で、セルフチェックがしやすいという点で はすごくよろしいんじゃないかなと。特に体重と身長を重ね合わせたところに自分の子 どものイメージが描けるということはよろしいと思います。一枚一枚のチャートがこの まま独立して使われていくときには、ほかのページに説明文があってもわかりません。 タイトルとか説明文がすごく大事な意味を持ってくるので、タイトルを「肥満度」とい うよりは、このプロジェクトのタイトルのように「肥満とやせ」と並ぶ方が先ほどから の御心配が少ないかなというのが一つあります。   それからもう一つ、「何歳から何歳までの子どものための」と付いていると、間違っ た使われ方がされると心配です。 それから、いいことかどうか分かりませんけれども、この図で表現した場合に、相対 的な関係は分かるんですけれども、高さが分かりにくい。例えば1歳だったら大よそこ のあたり、2歳だったらおおよそこのあたりという、一般的な発育 横軸が身長で、縦 軸が体重ですから、1歳ではこのあたり、2歳になるとこのあたりという、発育の標準 的な位置がこの中に位置づけられるといいと思います。              ○部会長 これは年齢に関わりなく書いてある訳ですね。だから、さっきのお話だと、−15%か ら+15%までの間に、年齢に関わりなく95〜96%の子どもがこの間に入ってく るということじゃないんですか。                         ○A委員 そうです。ですから、そういう意味で相対的な位置関係はよく分かるんですけれど も、1歳だったら身長がどのぐらいで体重がどのぐらいなのか、2歳だったら大体どの ぐらいの場所になるかという、その目安がこの中に本当の目安としてあると分かりやす いと思うんです。                             ○J教授 それは、先生がおっしゃったような意味で、身長や体重の正常範囲といったものをこ こに色で区別すれば、それは可能だと思います。              ○A委員 両方の座標軸のところに、それを点じゃなくて、少し広がりを持って表現さ れると……。                                  ○J教授 その場合、身長と体重を考えてみますと、身長の方が独立変数で体重が従属変数に なってしまうんです。体重は、ある絶対値というのは意味がありませんで、身長は絶対 値は意味があるんですけれども、身長によって体重が左右されてしまいますから、そう いう意味で独立変数としての身長を年齢ごとに正常なゾーンを、これだと横軸から縦に 向かって線が引けることになりますけれども、そうすると、さっきも申し上げましたよ うに、身長というのは独立変数ですから、自分の子どもが大きい小さいといえば、正常 な範囲にあるのかどうかということが分かると思います。            それで、体型の問題から言いますと、極めて異常な身長から外れる子とか、異常な身 長から高い子、低い子というのは、どこか体型的に無理がきているので、これにプロッ トしますと、非常におかしなところにプロットされるのが普通ですけれども、先生が おっしゃるような意味合いでしたら、それは横軸のところに縦の線になりますけれど も、およそその年齢での正常の範囲を考えて、母子手帳に出ています3パーセンタイル から97%パーセンタイル値が少し重なり合っていますが、それは大変分かりよくなるか もしれませんね。                                   ○A委員 ええ。それと、1ページにある「判定、指導、支援に当たっての注意」の中身に当た るようなものが、一枚一枚が独立的に持ち歩き、使われることが多くなるので、それぞ れに書いてある方が間違いが少ないと思いました。繰り返しになりますけれども、本当 に出来てしまうと、これをこのまま持って歩く人が多くなりますから、ほかのページを 見たりすることはほとんどないと思うんです。そうすると、読み方の基本的なことは各 ページに書かれていることが教材としての役割を果しやすいかなという感じがします。                                       ○J教授 チャートとすると、男の子と女の子が裏表に刷れますね。そして、それを二つの折り 返しみたいにしまして、見開きのところにいろいろな説明を……。ただ、単価が極めて 高くなってしまうという問題点がありますから、冊子があって、表紙とか、そういった ものにいろいろな解説がしてあるというようなことは十分出来ると思いますけれども… …。                                  ○部会長 今のお話は、こういうチャートに書き込んだものをお母さんに渡すとしたら、それが 一人歩きしてしまうということですか。                   ○A委員 一人歩きするという意味です。                     ○部会長 だから、もしこういうものを使ってお母さんに渡すならば、説明を裏にでも書いたも のを用意するということになるでしょうね。                ○A委員 それが、お母さんだけが心配なのではなくて、栄養士等も含めてですけれども、指導 に携わる人たちに誤解のないように、1ページにあることはとても大事なことなので、 1ページの4の項目にあるようなことが、使われていく教材にそれぞれ書いてあること を望みますという意味です。                       それで、先ほどお母さん自身が母子健康手帳などにグラフ化していないという話があ ったんですけれども、今、子育ての自己学習グループがあちこちに大小生まれてきてい て、その人たちはすごく活用しているようです。それで、お互いに比較し合ったりして いる場面も見ております。以上です。 ○部会長 ありがとうございました。    ○C委員 もう一つ、J先生にお聞きしたいんですが、身長と体重の肥満度で書いたものは今ま でありましたよね。それはずいぶん古いですけれども、出来ていると思うんですが、こ れは、それの今様のものということになりますね。    ○J教授 そうです。 ○C委員 結局、今の子どもたちの成長・発育に合わせてつくったものと。そして、注)の2のと ころは式でしょうけれども、こういうものは旭川医大の奥野先生がつくったと言われる けれども、これは数値がちょっと違って、1.83じゃなくて 1.8幾つだとか、そういう話 になりますよね。それを、そういうものではないと。そうでないと、もしそういうこと でやりましょうというのでこの図表が出たときに、また翌年はこういうぐあいになりま したという話になると、毎年それはとても出来ませんから。その点はJ先生の見通しは どうなんですか。                            ○J教授 私は、毎年改訂する必要はないと思っているんです。といいますのは、これを出すま でに、小児保健研究等でも出ているのですけれども、いろいろな式で相関と残渣が非常 に少ないというのでこの式が出ている訳ですが、先生がおっしゃるように、恐らく厚生 省の方針が変わらない限り、毎年身体計測値出る可能性はないんじゃないかと思ってい るんです。10年に1回しか「乳幼児身体発育値」というのはありませんで、その問題 は、実は私が非常に困っているのは文部省なんです。文部省は毎年毎年、国の指定統計 で「性別、年齢別身長・体重相関表」というのが出る訳です。先生がおっしゃるとお り、この式を出す手順がこれしかないということであったとしても、新しく出てきます 数字に当てはめますと、みんな数字が違ってしまうんです。今、先生はそのことを御心 配になっ ているんじゃないかと思うのですが……。               ○C委員 厚生省の指標でも、規模は小さいけれども、毎年出てきますね。      ○J教授 はい。みんな違います。それで、ずいぶん前に厚生省に聞いてみたことがあるんです けれども、10年に1回だというお話で、このところ、ずっと10年に1回なんです 。だと すると、こういう数字は今、新しい調査の準備がなされておりますので、そういう意味 で言うと、もうすぐ変わる可能性もあるんじゃないかと思っているのですが、しかし、 とにかく平成12年値が決まりますと、このプロセスで残りの期間が少なくなっています けれども、一回こういう方式がいいということで決めれば、いまの段階では10年間は先 生が御心配なさっていること はないと思います。            それからもう一つ、私は不思議に思っているのですが、外国のデータでもいろいろ調 べたんですけれども、WHOで世界の栄養調査をするのにどういう方法でやっているか いろいろ調べたら、それは成人ですけれども、やはり身長別の標準体重を使っているん です。我が国ほどデータがきちんと出てこないということもあるんですけれども、1923 年のデータなんです。それで、我が国は栄養状態がちょっと違っておりましたけれど も、今の時点では、10年前でも15年前でも、1970年以降、特に75年以降ぐらいでした ら、我が国の国民の子どもたちの体位というのは、そう目くじらを立てる必要はないと 思います。ただ、発表されたデータを処理しますと、処理の仕方が同じでも、先生が おっしゃるとおり、係数が0.幾つ違ったというようなことは出てまいります。学校関係 の先生方は、新しいデータが出ているのに、なぜ古いのを使うんだという声は聞きます が、もしこういう形でやるとすれば、私としては、もう今であればこういうデータをこ れからずっと使っていって差し支えないんじゃないか。むしろそういう方がいいかもし れない。なぜかというと、肥満傾向の人たちが増えてきたりするようなことを考えます と、あるプラトーになった  それは調べていくと分かりますけれども、体位の向上が ある程度プラトーになって何年かぐらいしたときの体重とか身長を標準に使って、ずっ とこのままいってもいいんじゃないかというふうに思っているんです。             ○部会長 ありがとうございました。最後になりましたけれども、H先生、何かございましたら ……。                                 ○H委員 もう皆さんから御意見が出ておりますので……。私が一番気にしましたのは、A先生 がおっしゃったことなんです。つまり、年齢に相関した身長の絶対値がないと、なかな かこれが使いにくいんじゃないかと思ったんです。それは、ちょうど私どもが胎児の発 育を示しておりますのは、推定体重ということで出しますと、ほとんど病態の把握につ ながらないので、むしろ各部位の計測をして、それぞれの平均値を出しているんです。 あるいは、そのデビエーションを出している訳です。そういう意味で、私はやはり身長 をさっきおっしゃったような形で載せるか、あるいは別表で同じようなものがあるとい う、つまり二方 身長の年齢に伴う変化をこれに加えるか、いずれか工夫なさった方 がいいんじゃないかというのが1点です。                  それからもう一つは、今、J先生がおっしゃいましたことですけれども、こういうふ うに身長と体重ということになりますと、エクスターナルチェックが人種間差異では余 りないはずなんです。                              ○J教授 そうです。                              ○H委員 そうすると、エクスターナルチェックがないと、例えばこれを外国で発表するとき に、どういうふうにレファされるのか。例えばローレルというものははっきり決まって いますので、ブローカーにしてもそうですけれども、これがエクスターナルに見て フィットしているということを何らかのデータでチェック出来ると非常にありがたいと 思います。                                  それから三つ目は、私、ここに(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)という区分が書いてご ざいまして、それに対する対応の実際 (案) が出てございますけれども、例えば(5)と (6)は具体的にはどういうふうに違うのか理解出来ないんです。「要注意として、出来れ ば医療機関に行くように指導する」というのと、「医療機関に紹介する」というのとが ……。上の太り過ぎの方はグレードがあるように思うのですが、下の方にグレードがな いような感じがするんです。これをもう少し分かりやすい解説をしていただけたらあり たいと思います。                                     ○J教授 第1の身長の問題は、先ほどお話ししましたような形で解決がつくかと思います。   それから、このチャートが本当に我が国の子どもたちにフィットしているかどうかと いうことは、多くの正常な子どもたちを、データがたくさんありますので、われわれは それでチェックして大丈夫だというふうに思っているんですけれども、チェックしてい くと、多くの子どもがこの基準線に沿った 平行したといいますか、そういうパター ンを示せば、これは我が国の子どもたちに非常にフィットしているチャートだというこ とが証明出来ると思います。ですから、それから外れるということは、バランスが崩れ るという意味だと思うのですが……。それで、恐らく今後ともそうなるであろうという 予測は、使っております資料が、いろいろ工夫はしてあるんですけれども、毎年 毎 年といっても、10年に1回出ている資料を高石先生たちが身長と体重との関係に直され て使っておられて、これは毎回そのことをやっていらっしゃるんですが、そういったこ とで、これがフィットするかどうか、我が国の子どもにとって、いい身長と体重のバラ ンスを示すものかどうかということが分かると思います。              それから最後の問題は、子どもにとって体重が多くなってきているということと、や せぎみであるとか、やせてくるということは意味が全然違いまして、やはり太っている 子のほとんどは単純性肥満で、放っておいても別に構わない訳ですけれども、ある基準 に達しない体重をしているとか、あるいは、特に体重の増加が、太っていても やせ というのは三つのパターンに分けられると思いますが、これでいくと、身長と体重のバ ランスがとれていて、やせ型で大きくなってきている。ですから、あえて「肥満度」と いう言葉を使いますと、そのパーセントは低いけれども、基準線にわりと平行にいって いるタイプ。それから、体重は増えているけれども、基準線の勾配に対して下向きに なっているタイプ。それから、過去の体重よりも現在の体重が少ないタイプ。バランス がとれているタイプはある意味ではいいんですけれども、しかし、やせの中には、さっ き言いました3群のうちの2群が含まれている可能性がありまして、それは、われわれ から言いますと病的な状態を意味していると判断をしますので、そのときの説明の仕方 も非常に重要だろうと思います。私どものところにも、やせだということで紹介されて くる子どもさんが大変多いですけれども、やせは少し厳しく見て、医学的な対応を早め にしておいた方が問題が少ないんじゃないかというふうに理解をしています。 ○H委員 そうすると、基本的にやせは区別がないというふうに考えていい訳ですね。つまり、 15%以下の場合と20%以下というのを特別区別する必要はないということになるんじゃ ないでしょうか。                            ○J教授 ですから、私自身は、最初に申し上げましたように、こういうことがありませんと実 際にはなかなか分かりにくいし、そのとき、どういうカテゴリーに入れるかということ で、ある意味では仕方のないことだろうと思うけれども、特に幼児期の子どもたちとい うのは、どういう身長の増え方とどういう体重の増え方をしているかという動きを評価 しなければいけないんじゃないかと思うんです。動きを評価するためには、時系列とい いますか、経時的な複数のデータがなければいけないんですけれども、もしそれがなけ れば実用性に欠けるのですが、我が国には十分そのデータがありまして、仮に身長がな くても、体重だけでもある場合には役に立つというふうに思っています。ある1点にプ ロットしたときに、そこにどういうプロセスでその点にたどり着いたのかということを ぜひチェックをしていただいて、そして指導に当たっていただきますと、今、H先生が 御心配になっているような点はかなり問題がなくなってくると思います。   ○H委員 私がなぜやせにこだわったかと申しますと、実は胎内発育障害児の1歳までの発育で すが、それが1歳半健診のときにどういうふうに評価されるかというのが産科医にとっ ては案外大事なんです。その辺のことがもう少しはっきりいたしますと非常にありがた いと思って申し上げた訳です。 ○J教授 分かりました。                            ○部会長 ありがとうございました。実は、会場の都合で5時には終わらなければなりません。 あと二つ議題がございますので、まだいろいろ御意見があるかもしれませんけれども、 一応、今までの御意見を記録に残させていただきます。いずれにしましても、子どもの 肥満とやせを、今までのインデックス以外に分かりやすい方法で表現するということ は、多分、指導ないしは支援をしていく上でも、あるいは親たちの理解を得やすいとい う意味でも得策ではないかということで、今日このお話が出たと思います。先生方 の全体のお話としては、幾つかの注意点のお話はございましたが、方向としては大変い い方向ではないかというふうに伺いましたので、また前向きに少し検討していただい て、具体的に現場で使っていただけるようなものに向けて、これは研究班の資料ですか ら、考えていただいた上で、また必要なら再度お示しをいただければありがたいと思い ますが、そういう方向でこの議題はよろしいでしょうか。                ○母子保健課長 一つだけよろしいでしょうか。やせの方は「やせ」と「やせ過ぎ」の2段階で、太っ ている方は3段構えになっていますが、それは要医療の病的な度合いから考えて、実態 と合ったものだと思うのですけれども、太っている方に「肥満」というゾーンがないの はいいんですか。やせの方は「やせ」というのがありますね。あとは、両方から言う と、「太り過ぎ」と「やせ過ぎ」でしょう。それから、「やや太り過ぎ」、「やややせ 過ぎ」というのはないんですよね。それで、「太りぎみ」で、太っている方に「太」と いう言葉を入れるのか、「肥満」という言葉を使っていくのかはあれですけれども、そ れはよろしいんでしょうか。                      ○J教授 くくりとしては、「肥満」という大きなくくりがありまして、それに三つの段階が出 来ているというふうに理解していただければいいと思います。片方のやせの方は、率直 に言いますと、「やせ」という概念しかないんですけれども、注意を喚起するという意 味で「やせ過ぎ」というのが入ってきているということです。        ○母子保健課長 母親の視点から言うと、突然「やせ」と言われてしまうより、「やややせぎみ」と か、そういうステップがあるんじゃないかと思うんです。突然そういうふうに入ってし まって、余り問題はないんですか。分からないですけど、普通は真ん中の正常を挟んで 同じゾーンがあるような気もするのですが……。            ○J教授 分かります。気持ちとしては、「やややせ」というのは経過をみるということになり ますね。さっきから言っていますように、本当は私自身としては、こういう区別より も、パターンの方が大事じゃないかと実際思っているんですけれども、それはなかなか うまくいきませんので、やせの場合はちょっと観察をしようということをやめて、観察 していてもいいのか、それとも何か医学的対応が必要なのか、それをステップを少し早 めてやっていただきたいという気持ちでこうなっています。           ○部会長 表現はもっとゆっくり、説明しやすく、お母さんがギョッとしないような表現をうま く考えていただくことにいたしまして、方向としては、そういうことで実用化に向けて 前向きにさらに研究班ということになるんでしょうか、あるいは村田先生個人なのか分 かりませんけれども、進めていただいて、再度、必要があればこの部会にまたその結果 を見せていただけるとありがたいと思います。               ○J教授 わかりました。                            ○部会長 どうもありがとうございました。                    それでは、次の議題に移らせていただきまして、2の「生涯を通じた女性の健康づく りについて」、資料が出ております。これを事務局からご説明をいただきたいと思いま す。 ○事務局 それでは、資料の8ページをお願いいたします。生涯を通じた女性の健康づくりにつ きましては、先ほど課長の方から経緯を若干御説明申し上げましたが、検討の趣旨でご ざいますけれども、女性の健康対策につきましては、平成8年の優生保護法の一部改正 の附帯決議といたしまして、「女性の健康等に関わる施策に総合的な検討を加え、適切 な措置を講ずること」とされております。また、同じ年の12月に策定されました男女共 同参画2000年プランにおきましても、重点目標といたしまして、「生涯を通じた女性の 健康支援」が盛り込まれたところでございます。また、今般、労働基準法、男女雇用機 会均等法の一部改正によりまして、働く女性の健康確保が大変重要な課題となっており ます。これらの新しい動きを踏まえまして、新たな検討が求められておりますことか ら、国におきまして、今年度から生涯を通じた女性の健康づくりに関する具体的支援策 とその推進方法等を検討課題といたしまして検討に入ってまいりたいということを考え ております。                               検討の場でございますが、1、2にございますように、一つといたしましては、専門 の先生方からなりますリプロダクティブヘルスに関する検討会を設置いたしまして、生 涯を通じた女性の健康づくりに関する具体的な支援対策とその推進方法等について総合 的に検討を進めていただきたいというようなことを考えております。2点目といたしま しては、実は生涯を通じた女性の健康づくりにつきましては、骨粗しょう症の問題、喫 煙の問題等、健康増進栄養課が所管している部分、また、乳がん・子宮がん等のがん検 診 老人関係が所管しておりますが、また、麻薬の問題、それから政府の男女共同参画 2000年プランの厚生省の窓口になっております政策課という課もございますので、そう いった関係課で省内連絡会を設けまして、生涯を通じた女性の健康づくりにつきまして 省内の連絡調整を行うとともに、総理府をはじめ、いろいろな関係省庁との連携を図っ ていったらどうかということを考えているところでございます。           こういったことを今年度からスタートさせてまいりたいと考えておりますので、ぜひ 先生方に御意見をちょうだいしたいと思います。                  ○部会長 ありがとうございました。生涯を通じた女性の健康づくりを推進していくのに御反対 の方はないんですけれども、検討の場として、今、御説明のあった二つ、一つは検討 会、一つは省内の連絡会がございます。そういうところに所管課でいらっしゃる母子保 健課を通じて、何か先生方の御希望なり何なりをお伝え出来ればということだと思いま すので、今度は逆に産婦人科の先生から……。D先生、何か御注文がございましたら… …。                                   ○D委員 最初の「検討の趣旨」というところに、平成8年の優生保護法の一部改正となってい ますが、すでに「優生保護法」という名前がなくなっておりますので。平成8年9月26 日に「母体保護法」に変わっていたと思います。その中で一部変更して、こういうこと が附帯決議に付いたということだと思います。               ○母子保健課長 優生保護法を改正するに当たって、結果として母体保護法なんですが、改正経過の最 後の附帯決議としてこれが付いておりますので、これはこれでいいと思います。それが 結果として母体保護法ということですので、これをしっかりやれということを条件付け て母体保護法になったということでございます。            ○部会長 この附帯決議を実行しようということですね。              ○H委員 結構なことだと思います。労働基準法、男女雇用機会均等法は労働省が相当主体的に 対応していますね。そのときに、国会質問などで出ました深夜労働の任用減少そのもの に対する影響があるかないかとか、余りはっきりしたデータがないんですね。何とか答 えてはおりますけれども、そういった問題を、省内ではなく、省庁間の連絡会で同じよ うに御検討いただくと非常にありがたいと思っています。          それからもう一つ、この間、労基法で決めましたのは、ほとんどが生殖年齢のことで して、妊娠した母体保護ということには、われわれの意見も相当申し上げた訳ですけれ ども、それから後のことについてはほとんど触れていないんです。多分、樋口先生など が生涯を通じた女性の健康づくりなどでおやりになると思いますけれども……。それ と、ただ単なる生活改善ということだけではなくて、就労に関係するようなことも含め て、ここで御検討いただくと……。例えば骨粗しょう症にしましても、単に年齢変化と いうことだけではなくて、そんな追い方も出来れば、もう少し幅の広い研究になるん じゃないかと思います。                                ○部会長 ありがとうございました。A先生、いかがですか。            ○A委員 大賛成で、ありがとうございます。二つお願いがあります。        一つは、検討の場にぜひすてきな男性を入れてほしいということ。この種の会合にな りますと少し女性に偏るということで、かえって逆差別になったりして、将来像が狭く なってしまうのではないかと思うので、ぜひ男性で、しかも、すてきな男性というのが 一つ。                                     それからもう一つは、省内連絡会はすばらしいと思いますので、近い将来は、厚生省 だけじゃなくて、今の御発言にもありましたように、文部省とか、他の省庁も参画して ほしい。特に今、女子大生レベルの健康状態、食生活はものすごく悪いです。女子大生 はすぐ次の母親になる人たちですから、そういう人たちに対してどうするかも将来に向 かってお考えいただければありがたいと思います。以上です。            ○部会長 ありがとうございます。大事な点でございますね。ほかのすてきな男性の先生方、何 か御意見あるいは御注文がありましたら、どうぞお願いいたします。E先生、お立場 上、何かございますか。                           ○E委員 就労という問題は非常に大事な訳でございまして、特に育児期間中の就労、それに対 して、いわゆるヨーロッパ諸国のように、有給の育児休暇という制度を日本でどうして もとれないと。一部とっている企業もありますけれども、ほとんど大多数はとっていな い。これは少産社会にとって非常に不利な状況にあると思いますし、また、子育て自体 が、ゆとりのない、あくせくした子育てになってしまいますので、これは女性にとって も、育てられる子どもにとっても大変不幸なことであると思います。ですから、労働省 関係というものは非常に大事な接点になってくるだろうと思います。      ○部会長 ありがとうございます。確かに今、給料もそうですけれども、育児休業中にその人の 欠けた分を補ってくれる労働力を配置するというのは、学校の先生にしかないんじゃな いですか。産休代員という、あれをもう少し何とか出来ないと、同僚に気兼ねがあっ て、せっかく制度があっても休めないという声がよくありますので、そんなことももし 考えていただけたらありがたいと思っておりました。 ほかにございますか。それでは、この問題はぜひよろしくお願いをいたします。 ○B委員 今、E先生とA先生がおっしゃったんですが、生涯を通じてですから、やはり大人だ けでなくて、もうちょっと小さい部分、例えば乳幼児から学校保健につながる部分も女 性の問題はありますね。これは、今、E先生がおっしゃったような文部省との関係があ ると思います。それから小児科領域では、生理が始まったという問題がこの頃いろいろ とありますが、この辺で、母親はまだ未熟であるかどうか分かりませんが、親子ともど もで悩んできます。そういった問題、それから性の早熟の問題、ホルモン異常、こういっ たものもやはり含めなくてはいけないと思います。小池先生がおっしゃった文部省の問 題で、例えば女子の中学生ぐらいから、いろいろな意味の早期教育というのをやらなく てはいけないんじゃないかと考えておりますので、よろしくお願いいたします。 ○D委員 その点について、今のB先生に付け加えて、やはり学校保健法の中で、学校に産婦人 科医が入っていく機会はほとんどないです。学校保健法で、先生方は内科、小児科、科 の先生で、産婦人科は必要じゃないという学校がほとんどです。そうすると、今、B先 生のおっしゃったような性教育とか、そういうことを教えている専門の先生方という は、ほとんど専門家じゃない訳です。ですから、文部省の方にお願いというふうにこら から提言で、ぜひとも学校医の中に産婦人科医が入れるような何かをつくっていただた いと思います。                       ○部会長 ありがとうございました。今、不登校とか、いろいろなことがあるので、同じ意味で は、精神科の先生をという声もございますね。これは日本医師会としてでも、あるいは 厚生省としてでも、機会がありましたらよろしくお願いをいたします。 ほかにございますか。もしよろしければ、そういう方向でよろしくお願いをいたしま して、3番目の議題でございます。「平成9年度心身障害研究について」、これは9年 度に入りまして、本年度の心身障害研究の班の構成等をお決めいただいたところと思い ます。その概要の御説明をお願いいたします。                 ○事務局 では、説明させていただきます。資料の9ページ目でございますが、「平成9年度心 身障害研究の概要」という1枚のペーパーでございます。          平成8年度までは研究課題が14課題でございましたが、平成9年度につきましては19 課題ということで増やさせていただいております。そして、平成9年度から新規の課題 として増えましたものが、11番の「市町村母子保健計画の評価に関する研究」以下9課 題でございます。母子保健部会とこの研究班との連携をより緊密に行っていくために、 主任研究者の中にもたくさんの母子保健部会の先生方に入っていただいているところで ございます。その新規の研究につきまして、10ページ以降に簡単に解説いたしておりま すので説明させていただきます。                         まず10ページの二つの研究でございますが、出生前診断の実態ということでございま して、最近、妊婦に対するトリプルマーカーの検査の問題などが盛んに言われておりま すが、平成4年、5年と2ヵ年にかけて行われました出生前診断の実態について、もう 一度、今の時点でサーベイしてみようというのが1点目でございます。それに加えまし て、インフォームド・コンセントや遺伝相談についても研究をするというふうな実態の 調査でございます。                               そして、2番の「遺伝相談に関する研究」でございますが、こちらも適切なカウンセ リングを妊婦さんとか、御結婚前の方、第1子が生まれて第2子目を妊娠しようとされ る方に行われるような、そういうシステムが必要ではないかということをこの研究で 行っていただいております。                            と同時に、この資料の後の方に、「委員限り」という形で別冊に綴っておりますが、 4枚のペーパーの一番最後に「望ましい遺伝相談サービス(素案)」という形でフロー チャートをお示ししております。現在、平成10年度の予算要求作業を行っているところ ですが、中央遺伝相談センター(仮称) を中心といたします この15ページの後に4 枚綴りで綴っております。それは「委員限り」という別冊になっております、その4枚 目でございます。今のところ、事務局の方と案としては、適切な遺伝相談サービスの提 供のために、こういった一次相談施設及び都道府県遺伝相談センター、そして中央遺伝 相談センターという3部の構成から成ります相談システムの体系化が必要ではないかと いうふうに現在考えているところでございます。こちらにつきましても、その実効性で すとか、遺伝相談センターの規格などにつきまして、研究班の中で研究していただこう というふうに思っております。                          続きまして、資料の11ページ目にまいります。こちらの上の方に、「乳幼児死亡の防 止に関する研究」と題しまして、現在、幼児期の死亡の第1位であります不慮の事故及 び乳児期の死亡の第3位を占めております乳幼児突然死症候群(SIDS)の両者につ きまして、死亡小票による調査並びに救急告示病院における実態調査を行いましてサー ベイランスシステムの構築のための検討を行うということと、現在どういうふうな状況 で不慮の事故やSIDSが起こっているかということの実態把握のための研究を行うも のでございます。                               そして、11ページの下の4でございますが、「子どもの健康と栄養に関する研究」と いうことで、栄養の研究について、今まで個別に行われてきたことが余りなかったとい うことでございますが、栄養を前面に押し立てるような形で乳幼児の食生活習慣と食教 育ですとか、栄養法と健康・疾病に関する研究などを総合的に行っていただこうという 研究班を一本起こしているところでございます。 次に、12ページ目でございますが、こちらにつきましては、今までかなり長い歴史を 持っております母子保健事業につきまして、最近ですと神経芽細胞腫のマススクリーニ ング検査などをはじめとして、その有効性ですとか実効性について疑問視される場合が ございますので、スタート後、ある程度期間のたちました神経芽細胞腫のマススクリー ニング及び3歳児健康診断における視聴覚検査、そしてB型肝炎の母子感染防止対策事 業、そういった四つの事業につきまして、現在での評価を行おうというものが「母子保 健事業の評価に関する研究」でございます。 そして、6の「我が国の小児保健医療体制の在り方に関する研究」でございますが、 小児医療に関するマンパワーですとか、医療を行っていくためのネットワークシステ ム、そして休日・夜間・災害時といった小児の救急医療のあり方、あとは地域母子保健 スタッフの役割と供給体制等について研究していただく研究班が6班の「我が国の小児 保健医療体制の在り方に関する研究」でございます。   次に、13ページ目にまいりますが、平成9年度に市町村において母子保健事業が基本 的な部分につきまして一元化された訳でございますが、それの移行計画といたしまし て、平成8年度につくられました市町村母子保健計画を都道府県の立場から総合的に評 価するという形で、保健所の役割のあり方などについて検討する「市町村母子保健計画 の評価に関する研究」を起こしているところでございます。             あと、妊産婦の死亡につきましてですが、今までの研究におきまして、分娩施設のマ ンパワーですとか、検査機能の充実により、妊産婦の死亡をより逓減させることが出来 るというふうな御意見をいただいているところですが、個別の症例を解析するととも に、妊婦健診で行われます超音波検査の有効性ですとか、合併症を有する妊娠の分娩管 理などについて明らかにすることを目的とした「妊産婦死亡の防止に関する研究」も今 年度よりスタートさせるところでございます。                    それから、14ページ目でございますが、こちらが心身障害研究の課題を決定するに当 たりまして、評価委員会の方から強く意見として出されたものでございます。最近、子 宮内膜症についてかなり話題に上がることが多いということで、リプロダクティブヘル スから見た子宮内幕症の実態と対策に関する研究ということで、研究班を一本立ててお りまして、子宮内幕症の実態ですとか、診断、治療法、そして子宮内幕症を有する方の 不妊症の治療などについて研究していただく研究班でございます。          以上の新しい研究九つを含めました19班につきまして、今年の5月8日の心身障害研 究の評価委員会でその方針が承認されまして、6月22日を期限ということで各研究者よ り研究計画を出していただいているところでございます。そして、この新しい研究班に ついても、幾つかの班におきましては、もうすでに研究班会議を開くなど立ち上げが行 われているところでございます。                         以上で研究班についての説明は終わらせていただきます。 ○部会長 それでは、今、御説明いただきましたように、平成9年度の心身障害研究はかなり大 幅に組みかえをしていただきまして、9ページの一覧表で見ますと、今の御説明のよう に、11番以降が全部新しい研究班ということになるようでございます。この場におられ る、あるいは、おられた先生が主任研究者をやっておられる班も四つございますし、そ れぞれ部会の先生方、御承知の上、御注文等ございましたら、それぞれの主任研究者に も御連絡いただいたりして、よりよい研究が進みますように御支援のほどをお願い申し 上げます。何か御質問ございましょうか。                 ○E委員 平成8年と9年の研究費の総額はどのぐらいの変化がございますか。    ○事務局 母子保健課分につきましては、平成8年度は5億 6,030万円で、9年度につきまして も5億 6,030万円でございます。                     ○E池委員 拝見しますと、欠落部分というのが大変少ない。逆に言えば、総花的であって、各研 究部門が零細化している。したがって、非常にたくさんの領域にまたがっておりますけ れども、実効的な成果が余り期待出来ない。外部から見ると私はそのように思います が、いかがでしょうか。                         ○母子保健課長 今回は、評価委員会に年度末に前年度の評価をしていただきまして、そのときの御指 摘もございます。先生のような御指摘を踏まえて、出来るだけ集中的にめり張りをつけ た研究体制ということで、事務局としても作業を進めさせていただいたつもりでござい ます。ということで、3年度計画で今まではずっと流れてきておりまして、突然飛び込 みの課題があったときには、主任研究者のテーマに出来るだけ合ったところで追加をさ せていただいていたというのが実態でございましたが、今回は、その辺のところをしっ かり今の時点に立っての必要性といいますか、優劣を付けさせていただきまして、1年 間でアウトプットを出していただきたいテーマ、あるいは引き続き3年計画で進めてい ただきたいテーマ、あるいは数年していただいて、そのときまた評価をして次の継続を 考えるというような形で、これは何年計画というのが出ておりませんけれども、その辺 はめりはりをつけさせていただいたつもりでございます。少し変わってくるかなという ふうに考えておりますが、よろしくお願いいたします。 ○部会長 ありがとうございました。厚生省の研究班でございますので、すぐにでも政策に反映 出来るような結果を各研究者の先生方が出していただけることを部会としても大変期待 をしているということだと思います。よろしくお願いをいたします。 ○母子保健課長 それから、心身障害研究とは別立ての厚生科学研究というのがございまして、そちら の方では、今話題になっております母乳とダイオキシンの絡みの研究もスタートしたい というふうに考えておりますので、その辺を事務局の方から紹介をさせていただきま す。 ○事務局 平成6年度から3年間、心身障害研究におきまして、母乳中のダイオキシンの調査を 実施していただきまして、これまでに73検体の調査結果が出ております。それを踏まえ まして、去年の12月に検討会の中で、直ちに問題となる程度ではないけれども、今後も 調査研究を進めていくべきだということで、母乳中のダイオキシンに関する評価をいた だいているところでございますが、今般、大変大きな問題になっておりますことから、 母子保健課のみでなく、厚生省全体といたしまして、このダイオキシン問題に総合的に 取り組んでいこうということが検討されておりまして、今週の予定でございますが、厚 生省内の連絡調整会議のような関係課の会議を立ち上げまして、それに引き続き、これ は来週以降になろうかと思いますが、環境庁と厚生省の専門家の合同の検討会を設けま して、総合的な研究調査体制をつくっていこうという動きになっております。そんなこ とで、母子保健課といたしましては、そういった大きな傘の中で、この母乳中のダイオ キシン問題につきましても引き続き検討課題としていきたいと思っておりますので、ま た、ぜひいろいろな方面から御助力をいただければと思います。          以上でございます。                              ○部会長 ありがとうございました。今、われわれが一番触れてもらいたくないのが母乳の中の ダイオキシンでございますが、マスコミは盛んに取材して歩いたりして、火消し的に一 所懸命説明をしてはおりますけれども、今のお話のように、全省的にいろいろな立場 で、しかも、今まで検体をはかるのにすごくお金がかかるらしくて、今までの心身障害 の研究班の中では、何検体もはかれなかったらしいんですが、その辺も幅を広げて各地 でモニタリングをしていただける。あるいは、さっきの子宮内幕症もあれと関係がある のではないかといううわさがあって、多分うそだと期待しているんですけれども、その 方もまた調べていただくようになるかななどと思っております。部会の先生方もぜひ応 援方、よろしくお願いをいたします。                     ○B委員 それについて、せんだって御発表のありました分については、部会長の御発表の骨子 が三者協で問題になりまして、一応、全国に周知徹底してほしいというような通達をい ただきましたので、実はそのエッセンスだけをわれわれの雑誌に出しました。もちろん 今のところ何も問題は起きていませんが、マスコミその他の方が先行している状況でご ざいます。ですから、これは出してもいいようなデータがありましたら、またお出しい ただければと思います。                         ○母子保健課長 その都度、この部会に諮りまして、出せるものは出していきたいと思っております。                                  ○部会長 産婦人科、小児科、栄養、それぞれが、こういう問題が出ると、現場の先生方は質問 が出て困るところですので、差し支えない資料、情報はぜひ早めに出していただきたい と思います。よろしくお願いいたします。                 それでは、「その他」ですが、資料の15ページ目にもう一つ紙がございます。これの 御説明をお願いいたします。                           ○事務局 前回3月26日に、小児慢性特定疾患対策についてということで、今後の小児慢性特性 疾患対策治療研究事業につきまして、客観的な審査を行うための詳細な診断書をつくる べきではないかという御意見ですとか、各都道府県の小児慢性特定疾患対策協議会にお いて、対象疾病の判定の強化を行うべきであるということと、厚生省への結果報告の義 務化を行うべきというような御意見をいただいたものを踏まえまして、事務局の方で今 後の具体策につきまして検討いたしました。その改善策をお示ししましたのがこの15 ページ目でございます。                          まず問題点としましては、特に下垂体性小人症につきましては、各都道府県の小児慢 性特定疾患対策協議会が客観的な審査を行い、判定を強化することが必要との指摘を母 子保健部会の方で受けておりますが、今後の改善策といたしまして、適用基準等の見直 しと小児慢性特定疾患対策協議会の活用というこの2点が挙げられております。    その1点目といたしまして、疾患群ごとの意見書の書式を示すということと、今年度 の柳澤先生の研究班におきまして、この事業の対象疾病すべて10疾患群の診療マニュア ルが示されるということで、下垂体性小人症などの診断基準の明確化を行うことによ り、補助対象者や治療期間の適正化を図ることを1点挙げております。         それから、各都道府県に設置することをこちらの方で通知いたしております対策協議 会の方ですが、現在、71の都道府県市、これは指定都市及び中核市を含む数でございま すが、そのうち58の都道府県市が設置しております。そして、その開催回数も年に1回 から月に1回とさまざまであるということで、今後、十分な審査が行われますように、 協議会の委員の充実と開催回数の増加を図り、専門家による診断ですとか、治療期間の 妥当性を厳格に検討する必要があるということです。そして、適正化の実効を上げるこ とを方針といたしております。                          そして、その具体案としまして、15ページの次に、先ほども遺伝相談のフローチャー トを示しました「委員限り」の4枚のペーパーでございますが、母子保健課長通知の (案)ということでお示しいたしております。まず、昭和63年4月15日の課長通知にとき まして、小児慢性特定疾患対策協議会を設置するようにということで通知しているとこ ろでございますが、その機能をより一層強化するために、「小児慢性特定疾患対策協議 会の運営指針」と「ヒト成長ホルモン治療の適応の判定について」という二つの別添資 料を付けまして、昨年度から適用するということで、御了知の上、円滑な実施を図られ たいということで別添資料1と2を付けて出しております。              そして、1枚めくっていただきまして、別添1でございますが、「小児慢性特定疾患 対策協議会運営指針」でございます。その目的としましては、この事業並びに協議会の 機能を強化するということで、客観的で透明性の高い判定を行うということをまず目的 といたしております。そして、検討内容としまして、従来、一部の県におきましては診 断名のみによって事業の対象かどうかというのが判定されていたという反省点を踏まえ まして、診断名が本当に妥当なのかどうか、そして公費負担の対象とすることが妥当な のかどうか、そして治療期間として妥当なのかどうかといったことなどを中心に検討し ていただく。そして、新規の場合ですとかなり厳密に審査されていましても、継続申請 はかなり甘かった場合があるということで、継続申請においても同様に厳正な審査を実 施するということを検討内容の拡充の中に入れております。そして、協議体制でござい ますが、関係者の例示といたしまして、小児科医、内科医、都道府県医師会、保健所等 の関係者で構成する。また、10疾患群ございますが、各疾患群ごと、その判定を適正に 実施するために、例示といたしまして、各疾患群ごとに複数の専門家を委員とすること ですとか、それぞれ3名程度の専門部会を設けて審査するといったきめ細かな対応が必 要なのではないかという点。そして、客観的な審査を行うために、その協議会や専門部 会の委員が診断した事例、もしくは、自らが所属する医療機関の事例については、判定 に参加しないというような配慮などについても述べております。そして連絡調整としま して、保健所における療育指導ですとか、福祉サービスの提供をバックアップするよう な連絡調整機能を持つことを概念として定めております。              そして別添2といたしまして、今日、参考資料でお配りいたしておりますが、成長科 学協会の発行されております「ヒト成長ホルモン治療適応判定申請書記入の手引」、こ ちらが下垂体性小人症とターナー症候群につきましては、この4月1日付で出されてお ります。そして、軟骨異栄養症につきましては、今年の6月1日付で成長科学協会か ら、ヒト成長ホルモンが適応になったということで記入の手引が出されておりますが、 こういった新しい判定基準が出されたことに伴いまして、成長科学協会の出されている 基準を遵守していただくということ。つまり、具体的には、下から4行目あたりに書い ていますが、ヒト成長ホルモンを使用する場合は、治療適応判定書が付いているかどう かというのを確認するということと、もし添付されていない場合には、同協会の定めま す下垂体性小人症の適応基準ですとか、ターナー症候群の適応基準ですとか、軟骨異栄 養症に係る適応基準に沿って判定を行うということで、この協会の手引がある程度の歯 止めになっているということを鑑みまして、厳密にこちらの手引を使ってくださいとい うふうな適正化を行っていくための通知の素案でございます。             説明は以上でございます。                           ○母子保健課長 ちょっと追加説明をさせていただきますと、成長科学協会が発行する云々と書いてご ざいますが、この診断基準といいますのが厚生省の保健医療局の特定疾患研究事業の一 環としてなされた厚生省の研究班の成果だということを付け加えさせていただきまし て、それがたまたまこちらで御活用いただいているということのようでございますの で、私ども、今、柳澤先生のところで各疾患ごとの診断基準といいますか、プロトコル をつくっていただいてはおります。より簡便なものは可能かと思いますが、基本は厚生 省の研究班で出来ているということもございまして、これがベースになるのかなという ことが、前回以降、いろいろと情報収集をさせていただきました結果でございます。私 どもは、協会が出されておる判定基準が厚生省の研究班でなされていたということは、 情報が十分でなくて、前回のときにお話しするのが欠けてしまった訳でございますが、 前回の議論は前の基準で御議論いただいたと思いますが、今回改めて新年度に入りまし て4月1日に新しい基準に基づいて実施をされるということでございますので、今回の 通知の中にもそういった形で盛り込ませていただこうかなというふうに考えておりま す。前回の議論もございますので、もし何か御意見があれば承りまして、これはあくま でも案でございますので、修正した方がいいとか、さまざまな御意見があればいただき たいと思っております。                         ○部会長 ありがとうございました。この前の回から先生方も大分気になさっていただいている ところで、ただでさえお金がかかったのに、また病気の名前が一つ増えてしまったとい う感じでございますけれども、適正に運用されるように、ひとつ厚生省の方でも十分御 注意していただければ大変ありがたいと思います。             会場が終わるという催促があらわれたような感じでございますので、これで終わらせ ていただきたいと思います。最後が脱兎のごとくなって申し訳ございませんでした。そ れでは、課長から御挨拶をいただいて終わらせていただきます。           ○母子保健課長 ぎりぎりのお時間で大変恐縮でございます。まだまだ御議論いただきたいという感じ がいたしますが、会場の都合もございまして今回はこれまでということになりますが、 また引き続き次回、御議論をいただければというふうに思っております。 いずれにいたしましても、今日は三つ議題がございましたが、一つ目のJ先生から御 紹介をいただきました内容につきましては、御指摘事項が幾つかございましたので、そ れをクリアするよう事務局と調整をさせていただきます。新たな動きのときには、また 改めて御考査していただきたいというふうに思っております。            それから、2番目の話につきましては、近々、検討会をスタートしたいというふうに は思ておりますが、人選等々につきましては先生方にもいろいろと御協力いただくこと があるかと思いますので、よろしくお願いをいたします。また、発足、あるいは議論の 進捗状況につきましては、その都度、この会に御報告をさせていただきながら進めてま いりたいというふうに思っております。                      3番目は報告事項でございますので、引き続きさまざまなお立場で御協力をいただけ ればと思います。                                本当に今日はどうもありがとうございました。                  ○部会長 どうもありがとうございました。また折を見て、この部会を開いていただきたいと思 います。よろしくお願いします。                     問い合わせ先 厚生省児童家庭局母子保健課    担 当 今村(内3174)    電 話 (代)03-3503-1711