97/05/27 年金審議会議事録 年金審議会議事録 I 日時及び場所  ・日時:平成9年5月27日(火) 14:00〜16:00  ・場所:厚生省特別第一会議室 II 出席委員 京極会長、砂子田委員、岡崎委員、木原委員、久保田委員、古山委員、坂巻委員、 都村委員、福岡委員、桝本委員、目黒委員、八木委員、山田委員、山根委員、 吉原委員、若杉委員、渡邊委員、船後専門委員 III 全員懇談会 ○会長    本日は全員懇談会でございますが、記者クラブから、冒頭にカメラ撮りをしたい、と いう申し出がございました。議事に入るまでの間、カメラ撮りを許可したいと存じま す。よろしいでしょうか。               ( 「異議なし」と声あり)               ( 記者クラブカメラ撮り) ○会長   ただいまから年金審議会全員懇談会を開催します。 まず、委員の出席状況について、事務局からご報告をお願いします。 ○事務局   それでは事務局からご報告申し上げます。  本日は国広委員、神代委員、高山委員、貝塚委員がご欠席で、その他の委員はご出席 でございます。 ○会長    次に、委員の異動がございましたので、ご紹介申し上げます。本年5月16日付で坂東 委員がご退任になり、そのご後任として、新日本製鐵(株)常務取締役の木原誠さんが 新たに任命されました。ご紹介申し上げます。 ○会長    前回の審議会でも申上げましたが、本日から平成11年の財政再計算に向けて議論を始 めたいと存じます。その前に年金局長からご挨拶がございます。 ○年金局長  本日は平成11年の次期財政再計算へ向けての初めての年金審議会でございます。厚生 大臣が出席してご挨拶申し上げる予定でしたけれども、国会用務のために出席出来ませ ん。また政務次官、事務次官も同様でございまして、私が代わりに厚生大臣の挨拶を代 読させていただきます。 (厚生大臣挨拶)  平成11年の次期年金制度改正へ向けて年金審議会の審議が開始されるにあたり、一言 ご挨拶申し上げます。  まず、年金審議会の皆様には、日頃から年金行政について多大なご尽力を賜り、この 機会に厚く御礼申し上げます。  我が国の公的年金は、給付費が約30兆円、受給権者数が延べ約 3,000万人に達し、平 均的な高齢者世帯の所得の半分以上を占めるなど、老後の所得保障の主柱として、名実 とともに国民生活を支える大きな役割を果たしております。 しかしながら、平均寿命が伸長する中で、平成7年の合計特殊出生率が史上最低の1. 42に低下し、少子化が急速に進行しています。また、先般公表された新人口推計におい ては、少子・高齢化の一層の進行が見込まれており、年金財政に対して極めて深刻な影 響を及ぼすことが明らかになっております。 こうした少子・高齢化の急速な進行のほか、経済基調の変化、国の財政状況の悪化等 年金制度を取り巻く環境は前回改正時と比較して一層厳しいものとなっています。こう した状況を考えますと、平成11年の次期財政再計算においては、給付と負担の均衡を確 保し、将来の負担を過重なものとしないよう制度全体の抜本的な見直しを図り、長期的 に安定した年金制度を構築していくことが重要な課題であると認識しております。あわ せて、年金積立金の運用のあり方や企業年金制度の充実が重要な検討課題であると考え ております。 こうした課題の解決は決して容易ではありませんが、徹底した情報公開を進め、国民 的議論を尽くし、国民の合意を得ながら改革を進めていきたいと考えています。国民の 関心・期待が大変高い年金審議会におかれましては、誠にご苦労ではございますが、次 期制度改正について、委員の皆様のご審議をお願い申し上げる次第であります。 年金制度が21世紀の国民生活の礎として、国民の安心と信頼を得てその役割を十分に 果たしていけるよう、委員の皆様には、格別のご支援とご協力を賜りますようお願い申 し上げまして、私の挨拶とさせていただきます。  平成9年5月27日  厚生大臣 小泉純一郎                (報道関係者退室) ○会長    それでは本日の議事に入りたいと存じます。  制度改正の議論に入ります前に、審議会の運営の透明化という問題についてお諮りし たいと存じます。この問題につきましては、一昨年9月に閣議決定された「審議会等の 透明化・見直し等について」を基礎に、昨年1月に本審議会として議論を行い、お手元 の資料1の「現行の取扱い」にありますように、総会についてはすべて公開、全員懇談 会については議事・議事録は非公開、議事要旨は公開、資料は原則公開としたところで ございます。しかしながら、次期財政再計算に向けて議論を行うことでございますの で、議事の透明化をより一層図る必要があると考えております。  そこで現在公開しております議事要旨に関しては、発言者のお名前については公正か つ中立な審議に支障を及ぼすおそれがあると考えますので、今までどおり匿名の取扱い とします。議事の内容については、その詳細がわかるよう議事録に近い形としたいと考 えております。いかがでしょうか。  特にご異論ございませんでしたら、氏名については今までどおり匿名の取扱いとす る、内容については詳細をより詳しく公表をする、ということにしたいと存じます。  それから、皆様のご了解がいただけましたら、本日の審議会からそのように運びたい と存じますが、よろしいでしょうか。               (「異議なし」と声あり) ○会長    それではそのようにさせていただきます。  平成11年の財政再計算に向けての議論を始めたいと存じます。まず意見書取りまとめ に向けた今後の段取りですが、従来の例を見ますと、来年の秋には審議会としての意見 を取りまとめることとなっております。そこで、そこから逆算したスケジュール案をお 手元にお配りしてございます。事務局からご説明をお願いします。 ○事務局   それでは事務局からご説明申し上げます。  お手元の資料2「年金制度改正に向けたスケジュール(案)」をごらんいただきたい と思います。  平成11年の財政再計算、そして11年には法案を提出するということでございまして、 11年の通常国会に法案を提出するという準備を整えていかなければならないということ でございます。この表の一番下にあるとおり、11年1月に諮問・答申をして、2月に通 常国会に法案を提出するという段取りといたしたい。  それに先立ちまして、政府案をつくるに当たりまして、年金審議会の方で意見書をと りまとめていただく。それを踏まえまして政府案を作成するという段取りになろうかと 思います。これが来年の秋ということでございます。  後ほど申しますが、情報公開を徹底するという観点から年金白書をつくったり、ある いは関係者の関心も非常に高いものですから、各方面での調整も必要であるということ を考えますと、意見書のとりまとめは来年9月にはお願いしたいと思っておるわけでご ざいます。  それから逆算して、一番上9年5月、今日でございますが、検討を開始いたしまし て、後ほどごらんいただきますような検討項目を順次検討していただきまして、ことし の秋から年末にかけて論点を整理する。そして複数の選択肢を整理していただく。その 選択肢に対応した形で財政試算を公表するということを一応考えております。  備考の欄をごらんいただきますと、今年から始めることになっておりますが、情報公 開を徹底するという趣旨から年金白書、年金に対するモノの見方、考え方は各方面いろ いろなことが言われておるわけですが、そういう考え方をわかりやすく整理する、ある いは年金に関する情報を提供する、審議会でご提示いただいた選択肢についても解説す るということで年金白書を作成したいと考えております。  それから備考の次の欄、年明けでございますが、前回改正でも実施いたしましたけれ ど、そういう選択肢等の提示を踏まえまして、有識者調査を実施したいと思っておりま す。そのほか、ここには書いてございませんけれども、総理府の世論調査等も活用して 広く広報・公聴というものも実施したいと考えております。10年度に入りましてからま た検討を続行していただきまして、9月には意見書を取りまとめいただくということを 事務方としてはとりあえず想定をし、案をつくらせていただいたところでございます。 ○会長    ただいまご説明いただきましたスケジュール案につきましてご意見、ご質問などござ いましたら、どうぞ、よろしくお願いします。 ○A委員   ただいま改正に向けたスケジュールをお聞きいたしましたが、新聞などで見ておりま すと、国の財政構造改革に従って、年金の在り方について、今年の秋ごろまでに年金審 議会の結論とまで行かないんでしょうけど、何か結論めいたものを出してほしいという ようなことが書いてありましたが、それはこれに対応するように何かやらなければいけ ないのでしょうか。 ○事務局   今日の新聞でも出ておりましたけれども、与党三党の方で、加藤幹事長が座長になっ ています財政構造改革会議企画委員会の中間報告が出されたというところでございま す。年金については三論併記という形で、これが財政構造改革会議の親委員会でこれか ら審議がなされるということでございます。三論併記と申しますのは、若干申し上げま すと、第1案というのは、11年度の財政再計算において制度改革を行なうということ、 及び、将来世代の保険料負担抑制の見地から公的年金の給付水準の適正な在り方につい て検討するということが、掲げられております。  第2案が、ただいまご指摘もありましたが、財政再計算を10年度に前倒しをして、制 度の抜本的な改革を行う。その際、以下の施策を実現するということで制度改革の内容 に踏み込んで、給付水準の切り下げ等いろいろなご意見を掲げてあります。  第3案は、これは11年度の財政再計算においてということですが、給付と負担の適正 化等、制度の抜本改革を行う。その際ということで、また、これも給付水準の切り下げ 等、制度改革の具体的内容に踏み込んだ記述がなされております。  現在のところこの3案が並列しておる段階でございます。  私どもが事務的に考えましたものはこの資料で書いてございますが、仮に10年度に前 倒しをして実施することになりますと、今年の秋ないし冬までに意見書をまとめていた だいて、大急ぎで政府案をつくって来年の1月、2月に手続を経て国会へ提出というこ とになりますが、それで本当に間に合うのだろうか、制度改革の内容にもよると思いま すが、どの案を見ても抜本的な改革を意識されておるわけですから、事務方としては広 く情報公開を徹底し、国民のコンセンサスを得ながら手順を尽くしてやっていくという 立場に立ちたいと思っておるわけでございまして、資料2に掲げるようなスケジュール 案を考えておるところでございます。 ○B委員  ちょっとお伺いしますが、この前の財政再計算はたしか平成6年の実施です。5年ご とに財政再計算をするのは、法令に根拠があるのですか、それとも事実としての慣例で すか。 ○事務局  厚生年金保険法なり国民年金法の法律には「少なくとも5年ごとに」という書き方が してあります。したがって、政策判断としては10年度にやるということはあり得ないわ けではない。ただ、再々申し上げますが、手順を尽くし国民のコンセンサスを得て21世 紀に向けた制度改革を行なうにしては、いささか時間が足りなすぎるのではないかと思 うわけでございます。 ○会長    ほかにご質問ございませんか。 ○C委員   質問ではないですが、私はゆっくりやる方がいいと思います。つまり今出されたこの スケジュールを急ぐのはどうも拙速になりすぎて、私自身の主張を入れられなくなるお それがあると思います。 ○D委員   確認したいのですが、財政構造改革会議でいろいろ方向を出していますし、大臣が国 会の答弁でもかなり踏み込んで将来性の方向づけをしたような答弁をなされています。 この会議で我々が議論するのはそういうことを一切無視して白紙で議論しなければいけ ないのではないかと思うんですが、そういう既成の路線を引かれて、その上で議論する のでありましょうか。それとも白紙の立場で議論するのか、その辺の確認だけしたい。 ○B委員    財政再計算は私にとってこれで二度目ですが、5年ごというふうに理解しておりまし たし、「少なくとも5年」ということは、いくら遅くてもという意味でしょう。  もう一つ、かなり風雨激しかるべしという状況であることは事実ですから、そういう 中で着陸するならクラッシュランディングよりはソフトランディングの方がいいのでは ないか。これが普通の世間常識のように思っております。 ○会長   今の事務局側の原案で、平成11年に改革をするというふうに時間をかけて、慎重に周 到に念を入れて審議するということでいかがでしょうか。               (「異議なし」と声あり) ○会長   ではそのようなことで、今後のスケジュールにつきましては、ただいまご説明いただ きました資料のようにさせていただきたいと思います。  私の今のところの感じといたしましては、夏ごろまでは大体月に1回くらいずつお集 まりいただき、9月に入りましては、原則として毎月2回のペースでご審議をいただけ ればと考えております。また、月に2回というペースでもおさまりきらない場合もあり 得るかと思いますので、その場合には若干追加のお集まりもお願いをし、お時間をいた だくこともあろうかと存じますが、その際にはよろしくお願いいたします。。  次に、次期制度改正の主要検討項目についてのご審議をお願いしたいと存じます。検 討項目自体を取りまとめるにつきましては、できるだけ効率的に行うため事務局にお願 いしまして、お手元にありますような検討項目(案)を用意いたしてございます。これ を事務局からご説明をお願いします。 ○事務局  それではご説明申し上げたいと思います。お手元の資料3、資料4−1、資料4−2 をごらんいただきたいと思います。資料3がまさにご審議いただく本体の資料でござい ます。「年金制度改正の主要検討項目(案)」ということで掲げております。  構成をまずごらんいただきますと、1.制度改正に係る基本的事項、2.公的年金制 度に関する事項、3.厚生年金基金等に関する事項、4.年金積立金の自主運用の在り 方に関する事項ということで、各項目ごとに小見出しを付けてございます。  まず主要検討項目についてご審議いただく前に若干ご説明申し上げます。資料4−1 の「前回改正の年金審議会意見書の実施状況」、左の欄に年金審議会意見書の主な指摘 項目、実施状況、給付についてということで、「60歳台前半の年金の在り方について検 討」など以下いろいろ書いてございます。それぞれ対応する形で実施状況が書いており ますが、若干積み残しの課題がございます。  3ページ目をお開きいただきたいと思いますが、実施状況が空欄になっておるところ がございます。1つは「基礎年金の国庫負担率の引上げについて検討」しなさいという ことでございますが、これについては、引き上げられておりません。  それから、真ん中ほどでございますが、「第3号被保険者の保険料負担の在り方につ いての検討」。これも昭和60年改正以来、第3号被保険者制度設けられておりますが、 そのままの形で維持されておるところでございます。  1つ飛びまして「パートタイム労働者の制度への適用の検討」。これも現在のところ 平成6年に実施をしたということはございませんので空欄になっておるところでござい ます。積み残し課題として主なものとしてはそういうことでございます。  それからもう一つ、資料4−2をごらんいただきたいと思います。これはどちらかと いうと、資料3の主要検討項目等を整理する際の参考としてごらんいただきたいと思い ます。「年金制度改正に関する各方面の主な意見の例示」として、「現行制度を変更す べきという意見を中心に整理したもの」でございます。「各方面の」と書いてございま すが、これは別に厚生省の意見ではございません。財政審、経済審、産構審といった他 省庁の審議会、各種団体、学識者の主な意見を拾ってみたわけでございます。主な意見 の例示ということですので、すべてを網羅したものではございません。  また、(注)書きにございますように、現行制度を変更すべきという意見を中心に整 理したわけでございまして、現状維持の意見も当然ありますが、それはあえて載せてお りません。参考にしていただくということで、これら項目についてはこれから十分議論 をしていただければよろしいのではないかと思います。  こういう資料の4−1なり4−2を横目で見ながら、資料3について若干申し上げた いと思います。  1の「制度改正に係る基本的事項」。 (1)「年金制度を取り巻く社会・経済状況」。少子・高齢化は進行しておるわけでご ざいますし、経済基調も変化をいたしております。また、高齢者の予備軍、経済社会の 状況の変化もあるわけでございまして、これらを踏まえて年金制度をどう認識しどう位 置づけるかという問題がまず1つあろうかと思います。 (2)「制度改正の基本的考え方」といたしまして、「給付と負担の適正化」というこ とが書いてございますが、国民経済とどう調和を図っていくかということもあろうと思 いますし、受給世代の給付、また現役世代の負担、そういう世代間の公平をどう確保し ていくかという問題があろうかと思います。  公私の年金の適切な組み合わせとして、公私の役割分担あるいは企業年金をどう充実 していくかという議論は当然あろうかと思いますが、それに加えまして、資料4−2、 各方面の主な意見の例示として出てきておりますのは、2階部分の厚生年金の民営化で す。積立方式によって企業年金または個人年金に委ねる。このような意見もあります し、また、積立比率を高める、すなわち積立方式の要素を重視した財政方式に改めると いうようなご意見もあります。 それから、主要検討項目(案)、資料3の2ですが、「公的年金制度に関する事項」 といたしまして、幾つか書いてございます。(1)給付については、まず、「給付水 準」をどう考えるか。現行モデル年金で23万円ということがよく言われますが、平均賃 金の68%、手取りベースでは80%というものですが、これをどう考えていくか。  2番目の「スライド方式」がありますが、現在、毎年毎年の物価スライドにプラスい たしまして、5年ごとのネット所得スライドというものをやっておりますが、一方、ア メリカやイギリスでは裁定後の年金については、賃金スライドはせず、物価スライドの みしかやってないではないかというようなご意見もあります。また、昨年、審議をいた だきました小幅な物価変動に対応するスライドの在り方の検討という話もあります。こ れは年金審で検討するということになっている問題でございます。  「高齢在職者・高所得者等に対する給付」につきましては、65歳以上は在職中であっ ても満額の厚生年金が出る仕組みになっている。あるいは収入が幾らあっても年金額の 調整は行わないという仕組みになっておりますが、これに対しては資料4―2にありま すようなご意見もあります。  「支給開始年齢」ですが、平成6年改正で2001年度から2013年度にかけまして、厚生 年金の支給開始年齢を65歳に徐々に移行する予定になっておりますが、主な意見の例示 を見ますと、そういうスケジュールを前倒ししてはどうかとか、支給開始年齢を65歳か らさらに引き上げるというようなご意見もあります。 (2)の「負担について」でございますが、「最終保険料の水準」をどう見るか。前回 改正におきましては、有識者調査を踏まえまして、30%以内にするということにしたわ けですが、主な意見の方を見ていただきましても、やはり最終保険料率を抑制する必要 があるというご意見もございます。  また、保険料負担は総報酬ベースで見て20%が限界ではないか。現状ヨーロッパ、ド イツ、イギリス、スウェーデン等、総報酬ベースで20%で足踏みをしているという現状 を見てそういうご意見もあります。  保険料引き上げのスケジュールを早めるべきではないかというご意見でありますと か、基礎年金の保険料に関して「段階的免除保険料」、つまり負担能力を勘案して全部 は払えなくてもなにがしかは払える保険料、こういう中間的なものを設定してもいいの ではないかというようなご意見もあります。  「総報酬制」については、前回改正でボーナス保険料1%というものを実施したわけ ですが、ボーナスの比率は業種あるいは企業規模等で異なる面がございます。ボーナス 比率が高くなればなるほど結果的に負担を免れてしまう。それが公平であるのかという ご意見もあります。  それから「国庫負担」。これは年金審意見書あるいは国会の附帯決議で引き上げにつ いて検討しろということでございますが、現状の財政事情から見て基礎年金の国家負担 の引上げは困難であるというご意見ですとか、逆に、基礎年金の財源は消費税等をもっ て賄うというご意見もあります。 (3)の「財政再計算の経済前提」でございますが、物価や賃金をどう見るか、予定利 率をどう考えるか、マクロ経済の将来見通しとの整合をどう考えるか、複数の財政試算 を示すべきではないか等々の意見と関連すると考えております。 (4)「その他の個別項目について」でありますが、3号被保険者、パート労働者につ いては、年金審意見書でも触れられております。3号の問題は働く女性との公平性など いろいろ議論が分かれるところでございます。「学生への適用」というのもそれでござ います。  それから、将来、遺族年金についてもやはり検討すべき課題が残っていると考えてお ります。  最近では「少子化への対応」。すなわち、保険料の減免や給付面での優遇措置、そう いったものが考えられないのかというご意見もあります。  「施設入所者等の年金の取扱い」については、医療や介護のサービスなり給付を受け る方々、特に施設に入所したり、病院に入院される方々の医療や介護の給付と年金の給 付を調整する必要があるのではないかというご意見もあります。  それから一元化につきましては、被用者年金各制度の再編成というものを財政再計算 期には制度の安定性なり公平性というものを財政検証を行いながら漸進的に対応すると いうことになっております。 (5)「年金現業業務について」、これは未納、未加入者対策です。その具体的な方策 はどう進めるのかということとも関連しますし、事務の効率化方策も考えていかなけれ ばならないということでございます。  以上が公的年金に関する事項です。  3.「厚生年金基金等に関する事項」といたしましては、(1)で「企業年金に関す る包括的な基本法の在り方」とありますが、これは政府の規制緩和推進計画に盛り込ま れて検討しろということになっておるものです。厚生年金基金のみならず、税制適格年 金を通じまして、年金受給権の保護の問題でありますとか、受託者責任の明確化の問 題、情報開示の問題、そういったことが内容になろうかと思っております。 (2)「厚生年金基金」そのものにつきましては、代行制度を見直すべきであるという ご意見もございますし、厚生年金本体との財政中立性の確保を図るために免除料率につ いても検討しろというご意見もあります。  確定拠出型の導入あるいは支払保証制度の充実強化というご意見もあります。 (3)「国民年金基金」につきましては予定利率をどうするか。加入対象をどうするか というご意見もあろうかと思います。  4.「年金積立金の自主運用の在り方に関する事項」ですが、前回の審議会で申し上 げましたように、この4月から自主運用検討会というものが発足いたしておりまして、 それがまとまれば、年金審議会の場で議論を尽くしていただいて、そしてその上で、資 金運用審議会懇談会でまた議論をしていただいて、平成11年までに間に合わせるという ことです。自主運用の基本的考え方については、全額財投預託という今の制度がいいの かどうか、加入者の利益のために自主的かつ有利・安全に運用する仕組みを構築すべき でないか等々のご意見があるところでございます。  以上、大体の主要検討項目です。これはあくまでも目次というか、見出しであるわけ でございまして、今私が申し上げた内容以外のものも当然こういう項目の中で十分議論 を尽くしていただきたい。そういう意味で見出し的に項目を掲げさせていただきまし た。以上でございます。 ○会長  ありがとうございました。  それではこの検討項目案につきましてご意見などご自由にご発言お願いしたいと存じ ます。特に本日は制度改正に向けた議論の第1回目でございますので、こうした項目ご との年金制度の今後の方向などについて、皆様方がどのようにお考えなのか、忌憚のな い率直なご意見をお聞かせいただければと存じます。  本日の議事はこの項目で終わりでございまして、時間はたっぷりございますので、存 分にご発言いただきたいと存じます。 ○E委員   今ご説明のありました年金制度改正の主要検討項目ですが、目次、見出しというお話 が最後にございましたけれども、これの構成について意見を申し上げたいと思います。  これは年金に限らないのですが、ある制度にとって、かつては外生的要因であると考 えられていたものが、現代社会では内生的要因となり、他の諸要因との相互影響が当該 制度にとって非常に不可欠なものになっています。その最たるものが年金ではないかと 思うのですけれども、年金にも経済成長の状況や年齢構成の変化が非常に大きな影響を 及ぼすわけです。これからの21世紀へ向けての社会保障政策は、今までのような治療的 な視点だけではなくて予防的な視点に重点を置くことが重要です。予防的な福祉政策や 社会保障政策というと、家族や将来の人的な資源である児童に重点を置く必要があると 思います。  そうしますと、ここに盛られている2の(1)給付上の検討問題、(2)負担につい てということですが、少子化への対応の問題や年金制度において家族をどう位置づける かというのは、3号被保険者の在り方とか、パートタイム労働者の取扱いとか、学生の 問題とか、そういったようなフルタイムで働いていない家族をどう位置づけるかという 問題があると思います。その他個別項目にあげられている問題が年金財政の安定、長期 的な年金制度を考える場合に、(1)の給付、(2)の負担、(4)のこれをどう取り 扱うかということに大きな影響を与えてきます。後の方にあげられていますが、特に少 子化への対応は年金制度の内部で対応できる部分と、厚生省のほかの施策、労働省ある いは文部省等の他省庁の施策で対応する部分があると思いますが、個別項目という形で 置いて、従来のように給付、負担という形で検討していくのか。それとも少し発想を変 えて、平成11年度という目標ではなくてもう少し長期的に考えた場合に、根幹にかかわ る議論の仕方が必要なのか。その辺はこれを拝見しておりまして、意見を申し上げたい と思いました。 ○F委員   今のD委員のご提起は、年金制度それ自身で完結しない、あるいはそれを取り巻いて いる外的な構造ないしは年金制度そのものが位置づけられて機能しているシステムと いったものについてある程度の概論的と申しますか、それ自体が平成11年度までにどこ まで結論がつくか、あるいはこの審議会でどこまで議論して意味があるかということは 別にして、本体の議論をする上での1つの前提的な認識の問題も含めた議論が一定程度 必要かというご提起だろうと思います。それについては、私どもは基本的に賛成でござ います。  それと関連して、同じく2の(5)のところの「年金現業業務について」の内容につ いては、内容としては、未納、未加入者対策の問題あるいは事務の効率化の問題という ことでございました。これはいわゆる1号被保険者にかかわる問題だと思いますが、そ れが往々にして言われます公的年金制度の空洞化といった現象を呼んでいるのだとすれ ば、これは単に現業業務の問題として扱うべきではなくて、一番初めの制度改正にかか わる基本的な事項の中に繰り入れられるべきではないかと思います。  既に出されております年金制度のいくつかの改革案の中にも、この基礎年金部分につ いては保険方式をやめて税方式に切り替えてはどうかという提起があります。こういう 提案はそれぞれの趣旨や方向性がいろいろあって提案されているわけで、仮にこれを税 方式に切り替えるとすれば、現在のような保険料徴収にかかわる膨大なコストは、簡単 に言ってしまうと一挙に解決してしまうことができると一方では考えられます。  他方でこのことは税制についてのかなり大きな変更ということを当然のことながらも たらしますし、それから厚生行政の枠内であっても、その場合にその税方式による基礎 年金は、生活保護という制度とどのように連関し区別するのかという整理は最低限必要 になってくることは言うまでもありません。ですから、そこの問題は「制度改正に係る 基本的事項」の中で当然のことながら取り上げてしかるべきではないか。 ○G委員   前回の検討に比べまして、それこそ質的にも量的にもまるきり次元が違う深さの深刻 な問題になっているだろうという気がします。1つは先程来出てますように、経済成 長、財政赤字あるいは実質失業率の高まりというトリレンマが現実のものになってき た。前回も多少そういうことについての意見はあったんですが、ここまで長期に成長率 が低下するとかは実感としてなかった。あるいは財政についても財政赤字の前兆はもち ろんあったんですけれども、必ずしもまだピンとこないときにやってました。  かつ少子・高齢化問題もここまで深刻化することはみんな考えていなかったわけであ りまして、いろんな問題が根本から変わってきている。このレジュメを見ますと、前回 のレジュメに非常によく似ている。今回、こういうとらえ方だけで本当に入るのかなと いう感じが実はいたします。例示しますと、どこまで深めるかは非常に難しい問題です が、税と社会保険というものについて明確な1つの理論整理が要るのではないか。  もう一つは、賦課方式というのは、何も今の戦後の卒業生のためだけの賦課方式でな くて、今の在校生にとっても賦課方式は意味があるのだということを明確にしない限 り、在校生は卒業生の面倒を見る気にはならないわけでありまして、そういうことは賦 課方式としてきちんと整理された議論をしないと、とても在校生の納得を得ることには ならないわけですから、そういった問題も1つあります。  また、3号被保険者の問題も議論しなければいけないわけですが、1号被保険者の問 題も議論すべきであるということでもありますし、基礎年金の問題もきちんと議論しな ければならないということにもなってまいります。  それから、いずれにしましても、それぞれの理論整理は突き詰めた議論をやるべきだ と思いますが、いずれにしましても、ある1つの組み合わせで、1つのモノの考え方の 整理がAという整理、Bという整理、Cという整理ができると思うのですが、それを選 択するのは国民が選択するわけです。その中にはいい話もあるけど、つらい話も入って いる。いずれにしても国民の選択の問題に私はなってくるのだろうという気がします。  前回みたいに議論をして審議会で何か1つの結論が出れば、それでずっと押していく という話になるのか、あるいは逆に言うと、AとBとCというものに、実際はその中に ア、イ、ウ、エ、オというものが、ファクターとしてあるわけですが、それの組み合わ せによって、A、B、Cの案はア、イ、ウ、エ、オの組み合わせで、どれとどれをとる という組み合わせ、あるいはどれを捨てるという組み合わせになっているはずなんです が、そういうものを国民に示すということで、国民がどれを選択することになるのです か、というとらえ方をしないと、とてもとても、これだけ大きな問題をこの審議会で何 か結論に持っていけるのかな、という気がするわけで、少なくともどれを選択するので すか、ということを国民に提示できるまでを何とか議論していくのが、第一段階の大き な仕事なのではないかという気がします。  ただし、どれもこれもパラメーターでは議論になりませんから、何かを固定した議論 になる。こうするとA案になる、これを固定するとB案になるとか、これを固定すると C案になるとか、そういうことで、どれを選択するんですかということは国民に問うと いう形にしか、今回の議論としては範囲なり、余りにも要件が大き過ぎてなかなかしぼ りきれないのではないかという気がするので、そういう進め方をしていただいたらいか がなものかと思います。 ○E委員   今のG委員のおっしゃられた税と社会保険の関連の検討については私も賛成です。ど のようにして公的年金制度を高齢者の増加とそれに対応するコストの増大に適応させる かが課題ですが、その場合高齢者の方の給付を削減することと、現役世代の負担をある 程度増やすということで、結局お互いに分かち合うところが必要だと思います。しか し、その前に現行の老齢年金に対する課税の在り方が現状のままでいいのか。高齢者に 対して優遇措置というか、所得控除が行われているわけですが、年齢ということだけで 所得控除を今のように行なうのが適切かどうかの検討も重要です。これは税制の方に 入っていく問題ですが、やはり年金の給付なり公的年金を考える場合、高齢者の給付の 削減を考える場合には避けて通れないと思いますので、税と社会保険という項目は非常 に重要だと思います。 ○H委員   私の意見も今まで出されましたご意見と同じようなラインに立ったものかと思います けれども、基本的にこの検討項目(案)を拝見していますと、発想として今までの制度 を根本から考え直すという姿勢が余り見られないような感じがいたします。ですから私 たちが今まで何でこういう年金制度になっているのだろうということを考えたときに、 基本的に家族を単位に考えているのか、個人を単位に考えているのかというところがど うも問題ではないかと受けとめられます。  基本的には給付や負担は個人単位になっていますが、その背後に家族がどういうもの かという標準的なイメージがあって、あくまでも家族というのが日本の生活の単位に なっている。その発想が非常にはっきりしているものですから、税制をとってみても年 金制度をとってみても、一見個人単位になっているようだが、そこにいろんな形での不 公平でなくて不公正が出てくるという感じがしてなりません。  ですからこの審議会が取り扱える範囲は非常に限定されるというお答えが返ってくる のはわかりますけれども、やはり今、根本的に日本の社会システムをどう考えるかとい うことを考えなければならない時期にきていますので、全体的に私たちは日本人として これからの社会の仕組みをどう考えるかということをこの審議会でも議論した上で最低 限この審議会の範疇でもってできることを提案するという方向で議論をしていただける と大変にありがたいと思います。 ○会長    意見の取りまとめというところまで1年半ございますのでいろんなことをご議論いた だくことはもちろん問題ないと思います。日本全体の問題、人類全体の問題、それから 初めて全体の中で年金制度を位置づけることをお考えいただいて、もちろん差し支えな いことだと思います。この検討項目は、1つのたたき台を用意したわけで、これのみ議 論しようと言っているわけでは決してございませんで、ご自由に範囲は広げて、ほかの 省庁にまたがることでも、あるいは外国の政府にまたがることでもご自由にお考えいた だいて結構だと思っております。 ○I委員   今まで出ました議論や今会長が言われたことに関係ありますが、この検討項目の1番 の「基本的事項」と2番以降、この間にもう少し最初に掘り下げて議論をしていただい て、1番のところについてもう少し、例えば客観的な事実認識にかかわる事柄と、価値 判断にかかわる事柄を整理して、第1の客観事実に関する認識につきましては今日も参 考資料いただきましたけど、そういうものを十分に開示していく中で財政再計算の経済 前提の相関等を定量的に1つ出していただきたい。  それから、今言った価値判断にかかわることにつきましては、広げれば年金審議会の 枠以外のところについてもご議論いただくと同時に、負担の形態で税の問題、賦課方式 の問題、積立方式の問題、そういうモノの考え方にかかわる議論も整理していただきな がら、2番以降にあります具体的な個別施策なり、制度の改正、運用の効率化等のイ メージにつながる問題を最初に議論していただく中での定量的な意味づけというか、位 置づけをわかるような形でご議論していただければ、項目そのものは個別には私はよろ しいのではないかと思います。  そういう中で、例えば、財政再計算の中で企業の立場で申し上げますと、中長期的に はいろいろ客観的な見通しはあるでしょうけれども、賃金の動向につきましては、短期 的には非常に主体的な考え方がございまして、賃金というのは、支払い能力がないのに 払えないという非常に重要な要素がございます。これは中長期的にどうかというのはい ろんな見方があるわけですけど、そういう中で、直近、鉄鋼業ではこの4年ですが、い わゆるベースアップは月例賃金で 1,000円、0円、1,000 円、 1,000円と4年間で1% も上がらない状況です。  賞与についてもピークのときから比べますとまだいただいてない。これは国際競争を 勝ち抜くためにはやむを得ない状況の中で、それでかつ21世紀には生き抜いていこうと しておりますから、そういう状況の1年1年は足もと短期的な問題があります中で、ど ういうふうに長期的に皆さんが見ておられるか。こういう中で非常にわかりやすい形 の、企業にとっては給与から支払われる従業員の負担と企業の負担との両方の給与から 支払う費用で賄えるという性格ございますから、そういう意味では勤労世代が1人1 人、年金受給者が1人1人あるいは個別企業それぞれが全体との関連で生活慣行もある 形で、全体の中の個別の定量的なイメージが常にはっきりしてないと、非常に国民のコ ンセンサスは得られにくいのではないかと思います。  そういう意味で、並べました議論は、1番目のことを最初に議論していただいてか ら、2番の項目を常に前提の大きな問題に戻るという形で議論していただければと思い ます。そうしないと、順番にこれは悪いと言いますと、全体の中の位置づけは非常にわ かりにくい。よろしくお願いしたいと思います。 ○J委員   私は皆さんのご意見を伺っていまして、今、年金制度というのは一体何だということ が基本から問われているような気がするわけですけれども、今の日本の年金制度、昭和 30年代、40年代にでき上がったのですが、そのときの状況というか、社会経済環境、政 治環境もそうですが、ものすごく変わってきてしまっているわけで、一体年金制度の役 割は何か、あるいは何のための制度なのか。老後生活の中でどの程度年金制度に期待し たらいいのか。あるいはその場合に公私の役割がどうなのか。積立方式がいいのか、賦 課方式がいいのか。税方式がいいのか、社会保険がいいのか。拠出と給付のリンクがい いのか、リンクは弱める方がいいのか、強める方がいいのか。  実は厚生年金をつくるときもそうだったと思うんですが、国民年金をつくるときも実 はそういった問題から議論をしたわけですけれども、そういった議論を今またやり直さ なくてはならないような時期に来ているのではないかという気がするわけです。  そういうことで今いろいろご意見が出ましたが、いきなり1に書いてありますが、2 以下の各論的な問題に入る前に、白紙に絵をかくわけにいかないので、やや、そういう 基本的な問題から少し議論して、ある程度審議会といいますか、各委員の方のコンセン サスをつくっていかないと、いきなり2以下の問題に入ってもなかなかうまくいかない のではないか。  ただ、1年半とおっしゃいましたが、1年半はそう長い時間でもないので、余りそん な基本的な問題ばかり議論していると、具体的にどうするのだということで十分な議論 ができないということも頭に置きながら、せっかく各委員の先生方から今のようなご意 見が出たわけですから、少し1の問題をここに書いてあることだけではなく、もう少し 根本的な問題を少し整理していただいて、そういった問題から議論を始める方がよろし いのではないかという気がいたします。 ○K委員   前回改正の際の1つの大きな目標は、21世紀に向けていかに役立つ安定した年金制度 をつくるかということを視点に改定が行われたわけです。それからまだ何年もたってな いわけですが、さらにこの問題をまた議論しなければならないということで、それだけ 事態が深刻になっているわけですが、長期的に見て21世紀をどうするかというような視 点の議論はさらに突っ込んだ議論が必要だと思います。そうは言ってもどこまで今度の 改正で取り組めるか、ある段階で、また判断しなければならない問題もあると思いま す。  さらに一番重要なのは、前回も議論されたんですが、若い人から彼らが年取ったとき に年金制度は大丈夫なのかという不安をなくすという面の視点が一番基本だろうと思い ますので、今いろいろご意見が出ましたけど、そういう面で幅広い議論を展開されるこ とがまず前提段階としては必要ではないかと思います。  それから社会生活、家族の問題等、いろんな範囲の議論が必要だというご意見ありま したが、社会保障の中だけで見ても、その他の項目の中で「施設入所者等の年金」とい うことで介護制度に関連する問題が出ております。今回介護制度の中で年金受給者から も介護保険料を徴収するというような新たな方向がとられておりますし、今、医療保険 制度の改革の中で老人につきましても負担を引き上げるということで、ある程度今の医 療保険なりほかの社会保障制度の改革の方向というのは、年金についてはある程度の所 得があるから十分負担できるのではないかというような議論もあります。「施設入所者 等の年金」という、福祉も含めまして社会保障制度の中で年金がどうあるべきかという 議論というので、もう少し社会保障制度の中の年金の位置づけを議論していただいたら いいのではないかと申し上げておきます。 ○E委員   先ほどJ委員のおっしゃった時代の変化とともに年金制度がどのような役割を果たす べきかというのはとても大事な点だと思います。公的年金には1つは所得再分配機能が あると思います。それは生涯所得が余り高くない人々に対して高齢期に適切な所得を保 障するということで、所得再分配機能という意味は社会保険で行う部分が大きいと思い ます。もう一つは強制貯蓄機能があるわけで、それは公的年金がなかったら、各個人が 始めたであろう自発的な貯蓄を代替するものです。今の年金制度の中では両方が混在し ていて区別がつかなくなっているのでいろいろ問題もあるし見えにくい部分があるのだ ろうと思いますが、それを分離することが可能なのかどうか。  外国などでは、個人勘定に対応するというようなことを提案しているのもあるようで すが、日本の制度では両機能が混在していると思いますが、所得再分配機能の部分は、 それが過度になりすぎると、確かに年金の支出を膨張させるし、いろいろ問題があると いうことで、過度な所得再分配機能はまた問題が生じるでしょうけれども、両機能を区 別することが可能なのかどうかということはあるだろうと思います。  社会経済状況が変化してきており、所得再分配機能と強制貯蓄機能をどういうふうに 考えるかというのも1つの論点ではないかと思います。 ○L委員   今度の改正は時期として非常に難しい時期ではないかという気がするんです。それは どういう意味かといいますと、先ほどから話が出てましたけど、日本の制度はまだ成熟 化の中途ぐらいの段階にあるわけで、給付水準そのものは制度的にはかなり高いものを 持っておりますが、現実の保険料は低くて済む。これはいずれ高くなることがわかり きっておるわけです。厚生省がどんな試算をされても30%近く保険料率がかかって、こ れが総報酬ベースに直しますとドイツが困っております20%ライン以上になることも確 からしい。  そういうときにやる作業として、しかも1年半という期間の中で、今、委員の皆さん から出ました基本的な問題の論議から初めていって、どうなるのかという問題があると 思うんです。そういう意味で私は非常に難しいのではないかという気がします。  それでアプローチの仕方ですが、やはり厚生省がお出しになりましたような個別事項 でもって一度議論を始める。それだけで終わりというのは恐らくできないだろうと思う んです。やはりどうしてもその背後にある基本的な問題、賦課方式、積立方式、給付立 て、拠出立てだとか、こういう年金制度の根本にかかわる問題、さらに税方式と社会保 険方式といったような問題、そういった話を今いきなり始めても、現実問題はともかく 現在の保険料のままでもあと5年間ぐらいは日本の年金財政は別に何ということはない んです。その辺の切実度がアメリカやヨーロッパの国々と違う。向こうでは現実に困っ てきており、どうにもならない。そこらあたりがうまく日本でやっていけるかという難 しさがありますので、年金局の舵取りは難しいということだけです。  そして、どう整理されようと、この審議会で意見が済めば、検討項目の追加も要ると いう話も出てきましょうし、もっと哲学問題を議論しなければだめではないかという議 論も出てくるだろうと思います。それはその都度ひとつさばいていただくというのも1 つの方法ではあるまいかと思います。 ○F委員   給付水準の問題がしばしば論議になり、水準の抑制はやむなしということが各所で言 われております。しかし、時どき混乱があるような気がしますのは、現在も60年改正に 基づく給付水準の漸進的な切り下げが進んでいるところであって、21世紀の年金の水準 というものについての、高い低いという議論を踏まえずに、現在新しく受給者になって いく人たちの、又は現在の受給者の人たちの今受け取っておられる水準を念頭に置い て、高いか、低いかというような議論がしばしばされているように思います。  60年改正というのは、私の記憶で申しますと20年間で25%水準を下げました。夫婦で 見た年金水準ということになり、世帯単位という考え方もある意味ではっきりした面も あるわけです。その後、スライドをグロス賃金からネット賃金ベースへ切り替えるとい うことが行われた。 そういうものが加わって将来の着地点というのは一応はっきりしているわけですか ら、水準議論はその着地点を前提にした議論で整理をした上で議論していただきたいと 思います。  現行水準を維持するという意見がいろいろなところから出てまいりますが、我々が制 度論として現行水準という場合も、その着地点を認識した話でございますので、以後の 議論でしばしば現行水準維持論みたいなことを発言いたします場合も、そこのところは ぜひそのように考えていただきたいと思います。  税方式の問題ですが、現在の基礎年金部分は半分保険、半分税方式に実態としては なっているという問題なので、先ほどの第5項目に関してむしろ最初のところで制度論 としてきちんと位置づけていただいた方がいいということは、その認識を踏まえてのこ とですので、その点を補足をさせていただきたいと思います。  1の(2)の2つ目のマルで、「公私の年金の適切な組み合わせ」とありますが、私 的年金というのは、例えば企業年金であれば、企業の労使が、あるいは個人年金であれ ば個人が自由に行うものであって、これ自体について一体どこまで公的な制度の側が議 論できるのか。当審議会はあくまでも政府・厚生大臣に対する諮問機関ですから、その 意味では中心はやはり公的年金にあるはずであって、私的年金に関してはそれの不自由 な面や制度上の不公平な扱いについて公平さを図り、その自由度を高めることが主眼で あるべきで、それ自体についていかにあるべきかということを議論するのはいささか穏 当ではないのではないかという感じを持っております。  また、しばしば厚生年金基金や適年を前提にして企業年金を含めた水準というもので 将来の老後設計が果たされればよいという考え方がありますが、実際にはそういった企 業年金によってカバーされている労働者の数は多く見積もっても約半分ぐらいでありま して、半分ぐらいの雇用労働者はそういったものをほとんど持っておりません。  一元化との関連で官と民、つまり端的にいえば、厚生年金と共済年金との一元化を議 論するときに公務員年金について、民間には企業年金というものがあるのだから、それ に対応して公務員に関しても3階部分の職域年金が必要だというふうな議論がされます が、これもまた1つの混乱であって、現在の厚生年金基金なり税制適格年金というのは これは退職金のいわば分割支給みたいなもので、縦のものを横にしたにすぎません。そ れをもって、それに「年金」という言葉を与えること自体言葉の使い方ですからいいの ですが、それを現在の1階、2階に対応する3階部分という認識がそのまま官民の横断 化の議論にスライドされていいのかどうか。それは適切とは思えないと感じておりま す。 ○A委員   私は今非常に困難で難しいときに委員になったというような感じがいたします。  というのは、今までの年金審議会を見ておりますと、ある意味では給付と負担の間で どう数字を合わせるかということに非常に関心を持ってきたと思っておりますが、なか なかそれでは解決ができないというところに今回の年金の問題の難しさがあるのだと思 います。  事務局がここに「主要検討項目(案)」というのを出しておりまして、年金制度を取 り巻く社会経済状況という中身を見れば、今皆さんがおっしゃったようなことだと思っ ております。その中身はまさにそれでして、どれに手をつけるかというのが非常に難し い。経済学者である人から述べれば、経済学的な議論になるでしょうし、社会学者的か らはまた違う点があるのだと思います。それを全部トータルでやるといってもこれはな かなか1年半でやれといっても大変でして、最後のところでまた変な数字合わせになっ てしまったりするのは大変残念ですから、やはりきょういろんな話をお聞きしたところ を少し事務局でまとめてもらい、社会経済状況ということの中に何を今厚生省が問題に しているのか。少子・高齢化の問題もありましょうし、経済の停滞の問題もありましょ うし、あるいは先ほどから問題になっている国民負担からいって、それは税で負担すべ きなのか、社会保険方式をとるべきなのか、そういういろんなことがありますから、そ ういうことをきょうの議論の中で整理してもらって、この次はそういう議論をしよう じゃないかということを少しまとめていただければ大変ありがたいと思います。 ○C委員  確かに今回非常に難しい段階だと思います。この間、厚生省から出された資料にある とおり人口予測がくるってきた。これの影響が非常に大きいので、経済状況もさること ながら人口の構造が従来思われていたよりも大変悪いので、前回の改正のときにはまだ 楽観できたんですけど、今度の将来推計人口は私に言わせれば非常に危険な状況で、人 間の体で言えば、血圧がどんどん下がっていくということを長期的に見通している格好 になっている。  そうすると賦課式の年金方式をやってもどうにももたなくなる。これをもたせるには しばしば人が言うとおり給付を切り詰めるか、負担を上げるかしかないのですが、それ を悪くやるとますます少子化の方に突っ込むという状態になっていますので、私は今回 の改正のときには、緊急事態の状況になっておるということで、超長期の見通しよりは 緊急事態にどう対処するかという考え方もとりいれて、さらに5年後の改正のときにま たと、こういうことにならざるを得ないのではないかという感じがいたします。  よく言われる老齢年金というのは「世代間の助け合い」というわけですけれど、助け てくれる世代が少なくなるのは子供を産まないのが悪いからという説も成り立つと思う んですけれども、私は人口構成が安定しない間は年金問題は完全積立方式にするのであ れば別ですけれども、賦課方式を幾らかでも残す限りは困難は残るだろうと思っており ます。 ○M委員   これからの日本全体が過去の50年のシステムからいろんな意味で社会システムを含め て転換しなければならない。こういう時期だからこそ少し腰を落ちつけて議論すべき テーマではないかと思っておりますし、そういう意味ではこの審議会の位置づけをどう 考えたらいいのかということを思い悩んでおります。  F委員から提起されたように、ある意味では選択肢を示して本当に国民全体で参加を し、みんなに関心を持ってもらい、自分のこととしてどっちを選ぶのか、これからの国 づくりをどういうふうにするのか、ある意味ではそういう課題ではないか。年金・医 療・介護、それを支える仕組みが社会保険なのか税なのか。要はトータルとして負担と 給付と将来にわたる生活の安定みたいなものをどうするかということではないのかと考 えております。  アメリカやヨーロッパの制度のすばらしさや、そこでの生活の豊さみたいなものを横 目でにらみながら、経済成長でようやく世界の有数の経済大国と言われて、これから生 活の基盤のところをしっかりする時期なのかなと思ったやさきに、逃げ水のようにとい うのが率直な実感ではないかと思っております。  全体を巻き込んで年金の問題について認知をしてもらう、あるいは関心を持ってもら うことについては大変重要なんですが、半面非常に専門的な領域ですし、素人ではなか なかわかりにくい。過去の経過もなかなかわからないので関心を持ちたくても、つい、 わからないから黙ってしまうとか、あるいは発言の機会がないとかということで終わっ てしまいます。上から俯瞰して見る日本の国をどう設計するかという視点と同時に、受 け手側の1人の人間といいますか、もちろんそれはこれから世代間の問題が一番大事で しょうから、今高齢者の方、これから高齢化を迎えていく団塊の世代、もっとそれを支 えていく下の世代として見たときのわかりやすい数字というものは一体どうなのかとい うことも、この審議会の中で提出される資料についてはできるだけわかりやすい、ある いは下から見たといいますか、受け手側から見た資料やデータなども出していただきた い。と同時に一体日本の年金は高いのか低いのか、世界の中でどうなのか、もちろん諸 外国はいろんな見直しにありますけれども、水準的には、余り高過ぎて低めようとして いるのか、日本と比べてどうなのかというようなことについても、できるだけわりやす い資料、客観的にお互いに認識ができる資料をぜひ出していただきながらやるべきでは ないかと思っております。  結論的に言えば、みんなで選択をしていく事柄ではないかと思いますので、この審議 会で1つの結論が出れば、それでこうだというようなことが本当に言える問題なのかと いうのが私の結論ですから、やり方としては、先ほどA、B、C案づくりというような ことを言われましたけど、そういうことは非常にいいのではないかと思っております。 ただ、それを受けて国民的議論を聞くというのはどういう作業をするのかということ が、また別の問題としてあるでしょうから、じっくり腰をつけた議論をしていきたいと 思いますし、ぜひ、そうさせてもらいたいと思っております。 ○D委員   公的年金というのは国と1人1人の国民の契約だろうと思うんです。それも非常に長 期にわたる契約ですから、今入っている方たちが負担と給付がアンバランスだから、お まえは年金をやらないとか、おまえは所得がたくさんあるからカットするという形にな りますと、ますます公的年金に対する国民の不信感は強まっていくと思います。現実に 最近の週刊誌や新聞・テレビの報道を見れば、公的年金に対する不信感は澎湃としてわ いているわけで、これをそのままにしておけば未加入者が出てくるだろうし、保険料を 払わない人も出てくるだろうと思うんです。  そうしますと余りドラスチックな変革を出した場合、ますます不信感というものに輪 をかける危険性があるのではないかという気がするわけで、やはり制度を維持するため には、国民の信頼というものが欠かせないわけですから、そのためには今おっしゃった ような情報の公開あるいは有識者調査だけではなく、国民に幅広く普通の市民レベルに 意見を聞くとか、そういったPR活動をよほどしっかりしませんと、結局改正案を出し てもみんな公的年金はやめたということになりかねないのではないかと思いますので、 その点を配慮して、私自身は余りドラスチックな変化は好ましいことではないと思うん ですけれども、やるならばしっかりとPR活動や情報公開をしていただきたいというこ とをお願いしたいと思います。 ○N委員   公的な年金制度が危機に瀕しているということを最近しきりに言われておるわけです けれど、数理的には、もっと大分前の時期から将来問題が起きるのではないかというこ とはある程度予測しておったと思うんです。それがD委員がおっしゃったようにPRし きれない。これが年金制度の難しさだと思うんです。20年先、30年先のことを言っても だれも聞いてくれないというのが実情ですし、一番の日本の今の年金の問題点は、さっ きL委員がおっしゃったようにまだ成熟しきってない、まだかなりの積立金を持って、 積立段階によって給付がトータルでは大きくなってないところが一番の問題なんだろう と思います。  そういう意味では、C委員が緊急事態というふうにおっしゃいましたが、実際それほ ど緊迫感は、逆に数理的にはないような気もしないではないということでこの辺に年金 制度の難しさが如実に出てきているのだなと先ほどから皆様のお話をお伺いしながら考 えております。  やはり何よりも必要なのは、M委員がおっしゃったように、だれもが本当にわかるよ うな年金制度の内容についての開示方法をここで工夫していくことではないか。それが 具体的に何なんだろうということになると私自身もよくわからないんですが、そういっ たことで1年半の間できるだけそういうことをやっていきたい、そのように考えており ます。 ○O委員   平成6年の改正のときに、65歳とか、ネットスライド制に変えまして、これでしばら くは大丈夫かなと思っておりましたら、大変な緊急事態というふうなことになりまし て、その原因は何かというとやはり人口の将来推計が変わったことが一番大きな要素で はないかと思います。経済成長が低迷しているのは5年前と同じですから、そこで人口 推計がどうして変わったかをいろいろ伺っていますと、女性の非婚率が4%台から13% になったと、それが一番大きな要素だという話を伺いました。これだけ大きな影響力を 持つ人口推計がちょっとした数字の扱い方で厚生年金の保険料が29%から34%に変わる ということを考えますと、この次の人口推計は大丈夫か。今度の平成9年1月の推計を 基礎にしていろいろ検討するわけですが、5年後にまたこれが大幅に変わるようなこと では大変困ったことになりますし、人口の将来推計についてもう少し確度の高いものが 出てこないと、5年ごとに右往左往するのでは大変具合が悪いと思っております。  この辺は専門的なことはわかりませんので何とも言えませんが、こういう問題もよく ご検討いただきたいと思っております。 ○C委員   私の言っている趣旨をちょっと違っておとりいただいていると思うんですが、人口推 計がうまく当たらなかったということは、要するに人口推計が外れたので、従来考えて いたよりも厳しくなったということは確かです。  それを今責めても仕方ないので、私が言っているのはそういうふうに状況が変わって いるということを認識した上で、公的年金の制度を考えてみないとこれからはだめです よということを言っているので、例えば、賦課方式を徹底的にやろうとすれば、若い人 口はだんだん少なくなっていく状態です。それだから賦課方式という概念は非常に危険 だということが言いたいわけです。したがって、積立方式的な考え方で、ある世代が自 分のために積み立てていき、それを老齢になったときにもらうという考えにすれば成り 立つわけで、賦課方式という考え方をかたく持っておればだめになるということを言い たいわけです。おっしゃるとおり、出生率がもっと上がって、年齢構成が安定しておれ ば、これは非常におめでたい。それを望みますが、私は近い将来それはだめではない か、次のときもまた同じような推計になる。  したがって、ますます公的年金制度の仕組みそのものを変えていく勇気を持たなけれ ばだめなんだということを申し上げたいわけです。 ○P委員   前回改正のときに、最終局面で先ほどからご意見がございましたように、制度をもう 少し国民1人1人が理解、納得のいくようPRする必要があるのではないですかという ことを申し上げたことがあります。その時点と今日を考えたときに、マスコミがいい意 味では役割を果たしてくれていると思うんですが、皆さんが大変関心を寄せられてい る。とりわけ先程M委員も言われましたが、我々職場や企業の段階で見ても大変関心が 高まっている。それだけにこの審議会の責任は大変重いのではないかと個人的には思っ ております。そういう変化がある中で、改革に取り組むということではないかと思って います。  今、人口推計の話が出ましたが、過去いろいろ財政再計算も含めて人口推計の中位推 計を使われたことが誤算を呼んでいる部分もあるわけでして、行政が主導されて少し目 測を誤りましたということを入り口というか、出発時点のところでしっかり言われた方 が私はみなさんの溜飲が下がっていいのではないかと思います。過去はいろいろありま したということだけで出発しているような感じがしてしょうがないです。  厚生年金基金にしても規制をたくさんかけられて、身動きとれない状態になってし まった。言い方は悪いんですが、見方によれば、ある種のお手上げみたいな感じになっ ているわけですから、そこのところについて溜飲が下がるように、国民大衆の方へ向 かって、いろいろ検討した結果こういう点にまずい部分があったということも、私は出 発点のところでしっかり確認をする必要があるのではないかと思っています。  それから、どうも最近年金審議会の先取りみたいな感じで、国会議員も含めて何かい ろいろ教宣活動をやられている。本来の役割として国民の声を吸収していかに具体案に 対して審議をしていただくのかというのが国会議員の仕事だと思うんです。その国会議 員さんの方がむしろ行政の仕事を先取りされたり、また、行政の方が国会議員的な仕事 をしたり、線引きが非常にあいまいななかで世論構築がされ、今回の審議がスタートす るということですから、逆にこの審議会は非常に重心を下げてゼロ点から論議をしてい く必要があるのではないか、このように基本的には思っています。  「制度改正に係る基本的事項」というところの問題で言いますと、もう少し年金を取 り巻く社会経済状況というところの入口論をしっかり私はやる必要があるのではないと 思います。時間の過不足の話が先ほどございましたけれども、大変ここの部分が重要な のではないかと思っております。  先ほど賃上げ、一時金の話もございましたけれども、生産性を上げて分配の構造をど うするのかというところで労使が悩んでいます。一方、社会に還元をいかにするかとい うところにも配慮をしています。税であったり年金財源であったりしているわけです が、これ以上取られると、極端に言ったら労使関係にひびが入るぐらい大変つらい状況 に今日なっています。そういう状況の中で、社会的な保障システムのコストをどう捻出 していくのか。コストをどう生み出していくのかということになりますと、先ほどから 出ているように、何に財源を求めるかということになると思います。  そういう面では先ほどから言われましたように、年金の将来像を描くときに入り口の ところでしっかり議論が必要です。税なのか、保険料で行くのかいろいろあると思うん です。手だてをどういう格好にするのか。これ以上取っていかれると産業はよたよたに なりますし、従業員・産業人のモラルの問題も私はあるように思うんです。したがっ て、もっと違う財源の捻出の仕方はないのか検討も必要です。あるいは国民にとって痛 い思いをしてもらってでも財源を捻出する方法はないのかも含めて、少し奥行きのある 論議をする必要があるのではないかと思っています。  現状のシステムの中で技術論に入るのは、そんなに私は難しくはないのではないかと 感じています。むしろ入り口のところでしっかり議論しておくことが国民の最終的な納 得を得られるような土台づくりにつながるのではないか、こんなふうに思っていますの で、検討項目のテーマ、とりわけ1番のところに少し時間をさいていただいたらいいの ではないかと思います。 ○年金局長  確かにこれまで年金行政として見通しが甘かったという批判は受けなければいけない と思っております。それだけに今回の改正は我々としても本腰を入れてしっかりやって いかなければいけないと思っているわけでございます。  何しろ我が国だけではなく世界の社会経済構造が変わってしまったということがある わけですから、年金につきましても徹底したご議論をお願いしたい。先ほどから出てい ますような、賦課方式なのか、積立方式なのか、税なのか、保険料なのか、こういった 問題をはじめ根本的な問題についてご議論をお願いしたい。  そういう意味では、最近厚生年金の民営化論というのが若い学者や経済団体から非常 に強く主張されておるわけですけれども、私個人としては民営化というのは非常に問題 が多いと思っております。しかし、民営化論には年金の根本的な問題に絡む問題が背後 にあるわけでして、こういった議論も徹底してやる必要があるのではないかと思ってお ります。年金水準にいたしましても昭和60年改正で、当時既に、平均標準報酬の68%の 水準となっており、これ以上増えないようにということで、例の生年月日に応じて給付 乗率を下げるという改正を行ったわけです。その前にはしばしば年金審議会でも、60% が適正ではないかという議論があったのはご承知のとおりであります。そういう意味 で、68%が本当に適切かどうかといった問題、あるいは保険料負担につきましても、前 回標準報酬の30%が限度というご議論があったわけですが、これで本当に納得してそれ だけの保険料を納めていただけるのか、ぎりぎりの本音の議論をぜひお願いしたいと思 うわけでございます。  また、先程来複数の選択肢というご議論が出ておりまして、これは私どもとしても、 これしかないのだという単一の選択ではなくて、複数の選択肢の中から選択をするとい うことで、ぜひ複数の選択肢をお示しいただきたいと思っております。  それから、情報公開等を徹底して進めたい。私どもとして今回これは肝に命じて徹底 して、洗いざらい情報公開をしてご議論していただこうと思っております。  ただ、11年改正では、11年の春には国会に法案を提出しなければいけない。こういう タイムリミットが切られておるわけですので、11年改正にはぜひ間に合うように全体的 なご議論をお願いしたい。来年の9月には年金審議会としてのご意見をぜひ取りまとめ ていただきたい、こう思っておりますのでよろしくお願いしたいと思います。 ○Q委員   基礎年金の導入以降、そういう面では本来の年金らしい年金といいますか、そういう 形になりまして、大変意義のある制度になってきているわけです。さらに一元化の方向 に向けてさまざまな努力がなされておることも大変評価できると思っているわけであり ますが、制度別にも分野別にも不公平が生じないような仕組みはどんな形で、さらに今 おっしゃいましたようないろんな課題がある中でそれをつくり上げていくかということ を十分検討していただきたいし、検討していきたいと思っています。 ○F委員   来年9月までには年金審としての意見をということですが、その場合はA、B、Cと いう複数選択肢ではなくて1本ということでしょうか。 ○年金局長  私どもとしては、最終的には単一の選択肢を選び、それを法案の形にして国会にお諮 りしなければいけないという立場でございます。最後の段階ではいろいろご議論があっ たとしましてもやはり1つの考え方に何とかまとめていただかなければ、現実問題とし て困るわけですので、ぜひ、最終的には1つの考え方に集約していただきたいと思いま す。 ○R委員   全国の町村長が今一番困っているのは国民健康保険、これが年齢層の関係で、高齢者 が増え、保険金の滞納が大変増えて各町村困っております。それにご承知のように今度 老人の介護保険をやられたということで、これも相当もめまして、しかし各市町村が事 業主体にならないといけないだろうということでいろいろ厚生省とも話をしてこうなっ たわけですが、一番心配しているのはこれでうまく行くかなということです。今健康保 険だけでもやっておるんだけれども、老人の介護保険もやらなければということで困っ ています。 今、年金制度のことを聞いても大変至難なときであるなと思いますから、厚生省はそ の辺のモラルの問題をみんなわかるわけですから、もう少し平成11年にはこういうとこ ろまでレベルを割っていってもらいたいとか、こういう枠があるのだということをはっ きりしてもらって、審議をさせてもらったらいいのではないかと思うわけであります。 どうぞよろしくお願いいたします。 ○会長    皆様からもれなくご発言をいただけたと思いますが、事務局の方で用意いたしました 「年金制度改定の主要検討項目」という大枠はこのままにいたしまして、いろいろご発 言のありました1の「制度改正に係る基本的事項」というところをもう少し広げるとい いますか、ご発言のあったようなことをもう少し細かく詳しく議論をするというふうに してはいかがと存じます。  また、2から先は大体このとおりにいたしまして、1の年金制度を取り巻く大状況と いうものについてもう少しご議論いただくことにしてはいかがかと思いますが、いかが でしょうか。               (「異議なし」と声あり) ○会長    それでは、1をもう少し広げていろいろご議論いただくということにいたします。  本日の議事は、これでおわります。なお、本日の資料につきましては、先ほど申しま したような形ですべて公開をすることにしたいと考えますが、よろしいでしょうか。               (「異議なし」と声あり) ○会長    次回の日程については、6月に1回、7月に1〜2回審議を行なうということで別途 事務局の方で皆様のご日程を調整させていただくことにいたしまして、ほかにご発言が ございませんでしたら、本日はこれで閉会といたしたいのですが、よろしいでしょう か。               (「異議なし」と声あり) ○ 会長    それでは閉会いたします。長時間ご苦労さまでございました。 問い合わせ先 厚生省年金局企画課    担 当 須田(内3316)    電 話 (代)03-3503-1711