97/04/21 第2回クロイツフェルト・ヤコブ病等専門委員会  第2回公衆衛生審議会成人病難病対策部会   クロイツフェルト・ヤコブ病等専門委員会 議  事  録 厚生省保健医療局疾病対策課 第2回公衆衛生審議会成人病難病対策部会          クロイツフェルト・ヤコブ病等専門委員会議事次第         日 時:平成9年4月21日(月) 13:50〜15:15         場 所:霞山会館ふようの間 議  題  1.開  会  2.議  事   (1)硬膜移植手術歴を有する者への情報提供について   (2)CJD及び類縁疾患調査における報告例の調査について   (3)CJD及び類縁疾患患者等に対する手術、検査及び処置等における     感染防止について   (4)その他  3.閉  会 ○佐藤委員長  それでは、ただいまから第2回公衆衛生審議会成人病難病対策部会クロイツフェル ト・ヤコブ病等専門委員会を開催させていただきます。  会議に先立ちまして、委員の出欠状況について事務局のほうからお願いします。 ○塚原補佐  本日は祖父江先生が御都合がつかず御欠席をされております。それ以外の先生方は全 員御出席をいただいております。  以上でございます。 ○佐藤委員長  ありがとうございました。それでは、議事に移りたいと思いますが、その前に、資料 の確認を事務局のほうからお願いします。 ○塚原補佐  事務局のほうから用意させていただいた資料が5つございます。  資料の1が4月3日に研究班の方から公衆衛生審議会の方に御報告していただきまし た時に用いました研究報告書概要というものをつけてございます。  それから、資料の2でございますが、これは抜粋でございますけれども、これも本日 お集まりの多くの先生方の作成をしていただきましたCJDの診療マニュアルについて 本日の議事に関連しそうな部分を抜粋してございます。 それから、資料の3ですが、4月3日に公表していただきましてからの報道ぶりで特 徴的なものを幾つか集めました。2つございますけれども、資料とさせていただいてお ります。  資料の4でございますけれども、資料の4は3月28日にWHOの勧告を踏まえまして 薬務局のほうでこういう対応をしたというものが分かりますよう準備してございます。  最後に資料の5ですが、これは立石先生が1991年に書かれました論文で、CJDマウ ス伝達実験に関する論文を本日の議論の参考ということで資料としてつけさせていただ いております。  以上、御確認をお願いしたいと思います。 ○佐藤委員長  よろしゅうございましょうか。  それでは、早速議事に入りたいと思います。  最初は、硬膜移植手術歴を有する者への情報提供についてお願いいたします。 ○塚原補佐  本日の議事の内容を事務局のほうからまとめて御説明をさせていただきたいと思いま す。  3つございまして、1番目が今、委員長のほうからございました「硬膜移植手術歴を 有する者への情報提供について」というのが1つ。  2番目でございますけれども、「CJD及び類縁疾患調査における報告例の調査につ いて」ということであります。 3番目に「CJD及び類縁疾患患者等に対する手術、検査及び処置等における感染防 止について」という3点でございます。  事務局のほうから説明をさせていただきますと、まず、趣旨でございますが、硬膜移 植手術歴を有する者への情報提供ということでございますけれども、4月3日に公衆衛 生審議会の方に研究の結果を御報告いただいた後、硬膜移植の手術をされたことのある 患者さんから直接厚生省の方にもかなり問い合わせがありましたし、脳外科の先生方か らもう少し詳しいデータをくれというようなお問い合わせがたくさんございましたもの ですから、資料3の新聞の切り抜き記事にございますように、厚生省の問題を指摘する ような内容の記事があるものですから、結果的に危ないというところが少し強調された 報道ぶりが多かったようです。そういうことで、もう少し正確な情報をお伝えする必要 があるのではないかということで本日の議題とさせていただいております。  それから、2番目の議題でございますけれども、CJDの調査につきましては、2月 13日の第1回の委員会で報告書の様式ですとか、実施要領というものについて御議論を いただいて、決定をいただいた訳なんですが、調査は個人が特定出来ないようにという ことで、本人の氏名はイニシャルしか調査に上がってこないというようなかっこうにな っておりますが、実はその後、薬務局のほうから献血の欄にチェックがあった方につい ては、実名を再度調査をさせていただいて、血液で血液製剤等をつくっている場合には それを回収するというような措置を講じたいという申し入れがありまして、もともと個 人は特定しないという前提で医療機関のほうに調査の協力をお願いしておりましたので 再度調査をさせていただく場合があることについてどう取り扱ったらよろしいかという ことについて、2番目の議題として本日御議論をお願いしたいということでございます  3番目に、(3)としてございますように、「CJD類縁疾患患者に対する手術、検査 及び処置等における感染防止について」という議題でございますが、具体的に言います と、例えば硬膜移植をされた方が再度脳を開けるような開頭手術をするというケースで ディスポーザブルでないものを使った場合の消毒をどうしたらいいのかというようなこ とが具体的には想定される訳ですが、ここ数日間硬膜の問題ばかりが取り上げられてお りまして、硬膜以外にも何か注意喚起をしておくべき事項があるのではないかというこ とで、本日御議論をいただきたいということで議題として挙げさせていただいておりま す。  時間も余りございませんので、事務局のほうから本日の議題3点を挙げさせていただ いた趣旨について御説明をさせていただきました。以上でございます。 ○佐藤委員長  今の3点についてもう一回確認しますと、手術歴を有する患者さんへの問い合わせ等 に関する情報提供の問題。2点としまして、薬務局のほうからお話があったそうですが 本人氏名を特定して、例えば過去3年に遡って、その人が献血をしたヒストリーがある かどうかを確認調査をしたいというお話。3点目は、硬膜移植を受けた患者さんが再手 術などをする際に、手術器具の消毒法についてどこまで感染防止についての指導をした らよろしいかということですが、まず情報提供の問題について、事務局のほうで何か資 料は用意されたのでしょうか。 ○塚原補佐  事前に委員の先生方にはお送りをいたしまして、1回半ぐらい往復をさせていただい て、御意見を頂戴したものでございますけれども、一部意見が分かれている部分があり ますが、それは案の1、案の2ということでペンディングという形で資料をつくらさせ ていただいております。時間も1時間ということでございますので、その3点について こちらの報告書という形でまとめていただければ本日おまとめをいただいて、私どもの ほうから都道府県、あるいは日本医師会さん等の関係団体を通じて医療機関に周知を図 りたいというように考えておりますので、よろしくお願いしたいと思います。 ○佐藤委員長  それでは、今お配りいただいた案につきまして、あらかじめ委員の先生方はお目通し いただいたと思いますが、問題は手術後の消毒を厳重にする対象者の説明をするところ をどうするかということで意見が分かれてますから、ほかは意見を聴取してくださって 一応調整した同意を得たものを掲げていると思いますが、どういたしましょうか。逐次 お読みいただくか、それとも概要説明だけで問題点だけを詳しく審議するか両方の方法 があると思いますけれども、どういたしましょうか。 ○塚原補佐  では、事務局のほうで読み上げましょうか。 ○佐藤委員長  お願いします。 ○三丸補佐  それでは、こちらほうから読み上げさせていただきます。    クロイツフェルト・ヤコブ病に関する情報提供及び                    その感染防止等について(報告一案) 1.趣旨   ヒト硬膜使用の中止とクロイツフェルト・ヤコブ病の調査及び研究の推進について は、平成9年4月3日の公衆衛生審議会成人病難病対策部会において、厚生省特定疾患 調査研究事業クロイツフェルト・ヤコブ病に関する緊急調査研究班の報告を踏まえ、意 見がとりまとめられたところであるが、今般、クロイツフェルト・ヤコブ病専門委員会 において、クロイツフェルト・ヤコブ病(以下、「CJD」という。)をめぐる諸課題 と基本的考え方について審議が行われた。その結果を報告する。 2.CJD等をめぐる諸課題と基本的考え方について 硬膜移植手術歴を有する者への情報提供について ア. 硬膜移植の既往暦のある者の健康上の不安の軽減を図るため、相談に当たる 医師、保健婦等に対して平成9年4月3日に公表された調査報告から明らかになった次 の内容について情報提供を行う必要があること。 ・硬膜移植者からのCJD患者発生率は、調査対象期間である11年5ヶ月 (1985年月1月〜1996年5月)で約5,000 から10,000人に1人の程度をあったこと     ・硬膜移植者からのCJD患者の多く(43例中41例)は、手術の時期が      1979年から1987年であったこと     ・硬膜移植からCJD発症までの期間は、 16ヶ月から193ヶ月、平均約7年で あったこと     ・1988年以降に硬膜の移植を受けた発症者は2例のみである。これは、1987年 から硬膜提供者の選別と強アルカリによる処理が行われたためで、1988年以降に硬膜移 植を受けた者からの発症は少ないことが予想されること ○佐藤委員長  アの項目で一応御意見を伺いましょうか。ここでは研究班の調査結果の事実を要約し て書いてございますけれども、重要なことは、ほとんどの方が1979年から87年に硬膜移 植を受けているということを記載してあります。それと、ほとんどの硬膜が旧処理法で あるという内容でありますが、御意見ございませんでしょうか。 ○端委員  脳外科の医者から脳外科学会のほうに、この調査の詳しい内容が分からないかという 問い合わせがいろいろあります。いろんな質問があったんですが、この43例という数が 実は脳外科学会で調査しました数は24例だったので、それと相当かけ離れておって、一 つは、我々のほうの調査は脳外科側からだけしか把握出来ていない状態ですから、神経 内科、精神科から把握したものとは大分数が違うと思うんですが、それにしても数がか け離れているという意見があって、この43例というのがどういう形で硬膜移植がされ、 どういうことが把握されたのかというところをお聞かせいただけないでしょうか。 ○佐藤委員長  これは、一次調査票が神経内科と精神科と神経病理、それから文献で報告されている のは、文献の施設で問い合わせ可能なところは文献の施設に問い合わせまして、端先生 おっしゃった脳外科の調査を途中で伺っておりまして、研究班がつかんだ以外の脳外科 独自でつかまえたケースが3例ございまして、それを足して43例なんですが、一応硬膜 移植歴はありという御返事をいただいたところには、2次調査票の中で、例えばどうい う脳外科の手術で、どういう種類の硬膜を用いられましたかというアンケート用紙があ るんですが、その中で、手術場所を記載するところがありませんでしたので、後で電話 かFAXで手術はどこで行われましたかということと、いつ行われましたかということ それはすべて確認してあります。ここで発表したのは、そういう方法で全例について、 42例は脳外科、1例が整形外科で後縦靱帯骨化症の時に用いられたという報告を受けて おりまして、それは班会議の時にも最終的な報告をしております。 ○端委員  そうすると、43例につきましては、いつ、どこで、どういう手術が行われてというの はみんな明らかになっているんですか。 ○佐藤委員長  それはすべて確認しております。それから、出来るだけFAXとか文書で記録を残す 形にしています。 ○端委員  手術した側が調査を受けた覚えがないということがあるんですが。 ○佐藤委員長  例えば同一病院の内科から、うちの脳外科で確かに手術をしましたという文書がきて いる時には問い合わせをしなくて、その文書をそのまま用いてあります。  例えば東京の病院で手術をされても、また京都とか地方にお帰りになる方があるけれ ども、地方の病院から東京の病院で行われたという時には、東京の病院に、おたくで行 ったでしょうかということは確認しております。 ○端委員  脳外科学会からの新しい症例が3例とおっしゃいましたけれども、その3例のうち、 硬膜移植が行われたかどうか不明という症例があったんですが。 ○佐藤委員長  不明は1例だけです。 ○端委員  それは手術は受けたけれども、硬膜移植が行われたかどうかは分からない。それはど うしても分からなかった症例ですけれども。 ○佐藤委員長  42例の中には不明が1例あるのですけれども、実際これを締め切ってから1例また分 かりましたけれども、数としては締め切っているので、一応その不明が万が一使ってい なくても数としては合うかなという考えもあります。不明であるが、恐らく使ったと思 われるけれども、確かめようがないという御返事なんです。 ○遠藤疾病対策課長  私どものほうへも、脳外科で硬膜移植を行った症例についてフォローアップをしてい かないのかというふうな言い方をされることもあるんですけれども、一番多い時で2万 件とすると、そのうち10年間で10例発症するというふうなことで、非常に母数が大きく て分子が小さいものですから、これを過去に遡って、あるいはこれから硬膜移植を受け た患者さんを追いかけていって、そこからヤコブ病が出てくるかどうかという形の調査 をするのは非常に効率的ではないし、またそれで果たして把握しきれるかどうかも分か らないということで、これからのサーベイランスはヤコブ病と診断されたところから遡 っていって、過去についてできる限りの調査をしたいというふうな言い方はしています ○端委員  脳外科学会としても何かしないといけないというようなこともあって、83年から87年 の手術例が圧倒的にそこに固まっておって、大体そこから発生しています。その期間の 硬膜移植を受けた人たちがどうなったかというのを追跡調査をしてくださいという要望 を脳外科学会のほうから先日送りまして、今、各施設で手術した側としてはやってはお りますが、それをどういう形で追跡調査をするかというのは微妙な問題ですから元の施 設に任してあります。どうなりましたか、最近どうしておられますかというような調査 になるかもしれませんけれども、一応隠れたクロイツフェルト・ヤコブ病があれば出て くるかもしれないと思っております。一応その危ない期間の手術例は学会のほうでは追 跡調査をすることにはなっております。それはどうしてもしないといけないのかという 問い合わせもあるんですが、厚生省の指令じゃないから、それは病院の自主性に任せて くださいとは言っております。 ○立石委員  脳外科、整形外科以外の手術例は1例もありませんか。 ○佐藤委員長  今回のアンケートの設定が、まず硬膜移植を受けたことがありますか、ありませんか あるとすると、その手術は「脳外科手術」、「整形外科手術」、「その他」に丸をつけ るようになっていまして、「その他」の場合はその手術内容を記載するようになってい るんですが、それは1例もありません。そういう答えはありませんでした。 ○立石委員  例えば耳鼻科あたりへアンケートがいかなかったから、耳鼻科領域は漏れたという可 能性はありませんか。 ○遠藤疾病対策課長  今回の逆の調査で、まずヤコブ病をつかまえて、その人について手術はどうだったか ということですので、耳鼻科に問い合わせる必要は最初からはないんです。 ○佐藤委員長  恐らく発症すると、神経内科、精神科が主に拝見するだろうけれども、今回脳外科の ことでも事務局が把握出来なかった脳外科独自で診ておられた患者さんが3名ですから そうすると43分の3で把握率が今、75%ですけれども、それが少し下がるかもしれない けれども、大体その割合では把握していると思います。 ○立石委員  もう一つ、今の手術との関連で、結局は43例の内でLyodura が同定出来たのは最終的 には何例ですか。 ○佐藤委員長  同定出来なかったのは1例だけです。91年の手術の1例だけで、残りはすべて手術時 期と納入問屋等からB・ブラウン社のものであるということは特定しています。 ○立石委員  そうしたら42例はLyodura である。そしたら、これは私は重要な情報だろうと思いま す。それは是非入れるべきじゃないでしょうか。 ○佐藤委員長  85年は1社しかないんですね。バイオダイナミックス社のチトプラストが出回ったの が、87年か88年の遅い時期からでして、時期的に1社しかないんですけれども、そうい う意味で特定したということです。 ○立石委員 しかも、それに付け加えると、それは、すべて1987年以前のLyodura であったという 情報は私は一番重要じゃないかと思います。 ○佐藤委員長  問題になるのは、89年の1例と91年の1例なんですが、91年のはカルテとかを見せて いただいたんですけれども、結局2社入っていて特定出来なかった。これはお手元の班 の報告書に詳しく書いております。これは65歳のミスプリントですが、2ページ目に一 連のいきさつが書いてあります。89年のケースは今、訴訟になっているケースですが、 このケースは薬務局のほうで問屋に問い合わせていただいて、旧処理法のものだという ことを調べていただいたので、その記録から89年の手術のものは古い消毒法のものであ るということと、2つの方法で確認しまして、もう一つは、同一の箱に入っていたドゥ ラが別の患者さんでは記録されておりまして、それは納入時期から古いものであると主 治医の先生がお話になっているで、一応その2つから89年のものは旧処理法のものであ ろうということはほぼ特定しております。 ○端委員  私どもも同じような情報で89年のものは古いものが使われていて、91年のものは主治 医に問い合わせましたけれども、患者さんも亡くなって焼いちゃったから分からない。 ○佐藤委員長  それは今お話しした同一の症例です。 ○端委員  91年の自治医大の症例ですね。 ○遠藤疾病対策課長  チトプラストのほうは1985年に承認されているそうです。 ○佐藤委員長  たしか実際に出回ったのは1988になってからだと思います。 ○塚原補佐 硬膜の流通の話なんですが、チトプラストのほうが輸入の承認をされたのが1985年で す。すぐに輸入されて入ってきている可能性はあるんですよね。 ○遠藤疾病対策課長  それはどちらでもよくて、ここでは43分の42がLyodura だったということを付け加え ましょうか。 ○立石委員  それともう一つは、87年以前のLyodura であったと。 ○佐藤委員長  実際に市場にチトプラストが出たのはいつごろなんですか。 ○遠藤疾病対策課長  可能性としては85年からはあり得るだろうということではあります。 ○佐藤委員長  実際に市場に出始めたのが87年の後半で、その記録は薬務局にあるんですが、今まで の会議で何回か出ているので、もう確認したものと思っていたんですが。 ○塚原補佐  薬務局が来ていますので。 ○佐藤委員長  チトプラストが実際に市場に出回り始めたのは、何回か会議で話がありました。それ は確認していただけますか。 ○遠藤疾病対策課長  ただ、それはいつから出たかは余り問題ではなくて……。 ○佐藤委員長  旧消毒法、処理法については共通はしているんですが、B・ブラウン社のものかどう かということについて、たしか幾つか確認して、今までの調査ではチトプラストを除外 出来たんです。今、調べていただいている間、この問題は伏せておきまして、問題は、 要するにこの説明書の中に、旧処理法のものでLyodura であるということを明記するか どうかということのお話だと思います。 ○端委員  チトプラストがほとんど除外出来るというのは非常に大事な情報だと思います。最近 の症例ですと、どっちの硬膜を使ったかというのは分かっておりますし、患者に安心を 与えるということになりますね。 ○塚原補佐  先ほど、佐藤先生がおっしゃられた87年以前にはチトプラストはないという根拠が、 一つひとつの症例のカルテに遡って確認したということではないと思いますので、多分 薬務局が何らかの会議の時に、87年以前にはなかったというようなことの記憶でおっし ゃられているのであれば、それは今、確認してもらっていますので、そこは事実関係と しては85年から輸入が認められていて、86年から入ってくる可能性があるということで それは確認をした結果、また議論していただくことで、時間もございませんので先に進 めていただけますか。 ○佐藤委員長  硬膜移植の手術年代で、どこまで確認したかということが分かっておりますので付け 加えたいと思います。  それでは、2の(1)のイの項を続けて事務局のほうで御説明お願いします。 ○三丸補佐  それでは、続けさせていただきます。     イ. 患者から医療機関に対して硬膜移植に関する照会があった場合に       は、使用した硬膜に関する情報、前述の調査結果など必要な情報を提供す       ることにより、患者の不安が少しでも軽減されるよう、その対応について関係医 療機関に協力と理解を求めること。       以上です。 ○佐藤委員長  ほかによろしゅうございましょうか。  特にありませんでしたら、(2)に移りたいと思います。 ○三丸補佐  朗読いたします。  (2)CJD及び類縁疾患調査における報告例の調査について     CJD及び類縁疾患調査において報告されたCJD患者について、感染防止上 必要と判断される場合には、厚生省は、患者のプライバシーの保護に充分留意した上で 医療機関に対して患者の状況等について照会する必要がある。   以上です。 ○佐藤委員長  この問題は先ほど冒頭に事務局のほうで、薬務局のほうからの要請で本人が献血した かどうかということが不明な場合には、本人名を特定して、一応献血の記録から逆にそ ういう人が献血しているかどうかの調査をしたいというお話がありましたので、この項 目はそういうことにも関係するんですね。よろしゅうございましょうか。御意見ござい ませんか。  これは既に過去3年前に遡りまして、一応調査班のほうで集めた一次調査記録の全コ ピーと、全患者の死亡年月日ごとに800 例から900 例を並べ替えしまして、溯る時には ともかく3年前まで生存していた人をそこから見ていくとよろしい訳ですが、その資料 はもう既に渡してあります。  次に移りたいと思います。事務局お願いします。 ○三丸補佐  ここは続けて読ませていただきます。  (3)CJD及び類縁疾患患者等に対する手術、検査及び処置における感染防    止について     ア. CJD等の異常プリオンを有するおそれのある者に対して手術又       は検査処置等を行った場合、使用された医療用具等を介しての感染防止が       図られなければならない。     イ. このため、当面の間、表1に該当する者に対して、脳外科、脊髄       脊椎等の整形外科、真珠腫等の耳鼻咽喉科などの手術及び腰椎穿刺等の検       査や処置の際、使用した医療用具を再使用する場合には、表2の方法によ り消毒を行う必要があること。また、可能な場合はディスポーザブルの医 療用具を使用すること。     ウ. 今後、対象の範囲及び消毒法については更に研究を行っていく必       要があること。    表1 対象者(第1案)     ・CJD及び類縁疾患と医師に言われたことがある     ・血縁者にCJD及び類縁疾患と診断された人がいる     ・ヒト由来成長ホルモンの注射を受けたことがある     ・角膜移植を受けたことがある     ・硬膜移植を伴う脳外科手術、整形外科手術等を受けたことがある    表1 対象者(第2案)     ・CJD及び類縁疾患と医師に言われたことがある     ・アルカリ未処理の硬膜移植を伴う脳外科手術、整形外科手術等を受け      たことがある    表2 医療用具の消毒法     a 3%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)、5分間、100 ℃     b 高圧蒸気滅菌:132 Cで1時間オートクレーブにて高圧滅菌する     c 1規定水酸化ナトリウム溶液に1時間、室温にて浸す     d 1〜5%次亜塩素酸ナトリウムに2時間、室温で浸す    注1)aはプリオンを完全に消失させ、b、c、dは10-3以下のオーダーで      不活化させる。    注2)aを第一選択とし、bが次の適用となる。高温に耐えないもの及び巨      大なものについては、c、dを適用する。    以上です。 ○佐藤委員長  ありがとうございました。  この項は、実際にCJDあるいはその疑いのある患者さんを手術する際に用いた器具 の消毒をかなり厳重にする訳ですが、その対象者についての注意書きと、それに関連し て消毒法を同時選択で行うかということですが、この第1案、第2案と出てきました背 景は、ここで余り詳しく掲げますと現場の手術する先生は非常に制約感を受けるという 御意見がありましたので、ひとつはそういうことが背景になっていると思います。  それから、表2での問題は、例えば脳外科の手術の際に、金属だけのものは3%SD Sで煮沸しても可能ですし、実際にほとんどオートクレーブ滅菌しているんですが、エ アトームとか、直達鏡とゴムの部分があるような器具については、この消毒法は全く行 えませんで、そういうものについてどういう取扱いをするかという背景をあると思いま す。  まず、全体についての御意見はございませんでしょうか。 ○品川委員  表現ですけれども、アの「異常プリオン」の「異常」をとったほうがいいと思います ○佐藤委員長  いかがでしょうか。「異常」だけではなくて、「プリオンを有するおそれのある者に 対して」までとったほうがいいと思います。プリオンの異常だけをとると、正常な人が 持っている時期があるので、そういう意味ではないですか。 ○品川委員  そう意味ではなくて、プリオンというのは、前の指針のほうでもきちんとなっている んですが、要するに異常なものがプリオンだという形になりますから。 ○佐藤委員長  私なんかは正常プリオンと感染性のプリオンと分けて使っているんですけれども、そ れは間違いなんですか。 ○北本委員  蛋白なんです。 ○品川委員  そうであれば、最後に「異常プリオン蛋白」を加えるか、そうでなければ、「異常」 を取り除くか、どちらかということでしょうね。 ○山内委員  蛋白を付けたほうが混乱しないかもしれませんね。 ○佐藤委員長  これは専門家の先生方に意見をいただきたいと思いますが、どういたしましょうか。 ○立石委員  蛋白を加えたほうでいいでしょう。 ○佐藤委員長  「CJD等の異常プリオン蛋白」と付け加えてください。  ほかに個別の議論に移る前に全般的にお気づきのことはございませんでしょうか。 ○端委員  表1の第2案のアルカリ未処理の硬膜移植を伴うと断定されていますが、アルカリ未 処理の硬膜移植を伴ったかどうかはなかなか分かりませんですよね。ですから、アルカ リ未処理の硬膜移植を受けた疑いのあるというぐらいのことにしないと、現実的に、そ の人がアルカリ未処理の硬膜移植を受けたのか、処理の硬膜移植を受けたのか分からな い場合があります。 ○佐藤委員長  表の1の第1案、第2案を議論する際に、第2案のほうの「アルカリ未処理の疑いが ある」と「疑い」が先にきますね。「アルカリ未処理の疑いのある硬膜移植を伴う」に していただいて、今、端先生のほうから、そういう御意見をいただきましたけれども、 お分かりでしょうか。  それでは、第1案と第2案について御意見を賜りたいと思います。 ○北本委員  資料の診療マニュアルの25ページ、これは「クロイツフェルト・ヤコブ病診療マニュ アル」の抜粋からなんですが、「輸血、血液製剤、臓器移植について」というふうな項 がございまして、この質問事項は、皆さんとのコンセンサスをつくったものがあるんで すね。つまり、輸血、血液製剤に対してここまでやって、もっとはっきり言うと、もっ と危ないと思われる脳外科、脊髄・脊椎等の整形外科、真珠腫の手術に対して、それよ り甘い基準の第2案にするというのはと思うんです。 ○佐藤委員長  この背景は、脳外科の一、二の先生から直接私のほうへ電話をいただきまして、この 案について、脳外科の先生が受ける印象が非常に厳しく規制されるというふうに印象づ けられているんですが、外科の先生がそうおっしゃるのであればそうかなということで 承っていたんですけれども、端先生いかがでしょう。 ○端委員  輸血、血液製剤など将来的にはいろんなスタディが必要だと思います。でも、今回の この報告というのは現実問題で、現実にかなり痛みを伴うと言いますか、消毒しきれな い機械もたくさんありますし、仕事の手間も随分増やすことにもなりますし、患者その ものが受ける印象もあります。いろんなことがあって、ただ痛みを伴う処置を強制する のであれば、相当な理論的な根拠がないと我々が脳外科学会のメンバーに説明する場合 に納得させにくいと思います。 ○佐藤委員長  痛みを伴うというのは、患者に痛みをということですか。 ○端委員  念のためにやるということではなくて、現実に苦労を伴うといったほうがいいかと思 いますけれども、労力を伴う、あるいは手術の種類も制限されると思いますし、患者そ のものも不利益を受けることにもつながることですから、かなりの理論的根拠がないと いけないと思いますので、血液そのものを現在の常識では輸血などは一応大丈夫という ふうに思われていると理解しておりますし、輸血も現実にはそう規制されておりません ね。だから、硬膜移植そのものが、今、使われているチトプラストを含めまして、アル カリ処理をされた硬膜移植そのものが本当に危険であるかどうかということは何ら証拠 もないですね。今のこのデータから見る限りでは、自然発生と少しも変わらないと言え ば少しも変わらないですし、アメリカではチトプラストが使われていると思いますけれ ども、ほとんど発生しておりません。そういうことから考えますと、硬膜移植そのもの が危険を伴うものであるというよりも、そういう疑いを示すものは何も出ていないと思 います。脳外科もずっとその前提で仕事をしてきた立場でありますから、硬膜手術その ものが危険であるということはなかなか説得しにくいと思います。 ○佐藤委員長  端先生の御意見を少し整理しますと、1つは前回コンセンサスを得ました現行の硬膜 についても、安全性についてどういう判断をするかということについての疑念と、もう 一つは、この文書そのものが患者さんに不利益をかなり与えるというお話ですけれども 後のほうに関しては、これは硬膜移植を受けた患者さんを再手術するなり、脳外科手術 をする際に用いた器具の消毒法についての話なんです。そして、その時の対象はどうい う選び方をしますかという、特に注意する対象者はどういう対象者であるかということ です。 ○端委員  現実問題として消毒しにくい器具がございます。それを使わないと手術の種類が制限 されるといいますか、そういう意味で申し上げておりまして、たくさんはないのですが 一番困るのは電気メスのたぐいがオートクレーブしにくいです。液体につけることもで きませんので、それをどうするかが、勿論ディスポーザブルのものがあればよろしいで すけれども、脳外科手術は電気メスをほとんどの症例に使いますので、そこがちょっと 困るところです。オートクレーブの代用ができるのが一部あることはあります。ですけ れども、コードのたぐいは仕方がないからディスポーザブルのコードを使うということ です。それはお金がかかることなんです。消毒が全部対応出来るのならいいんですけれ ども、そのほかにもさっき佐藤先生がおっしゃいましたように、この消毒法がしにくい 機械があって、そこのところがちょっと具体的に多少問題があると思います。 ですから、出来るだけ対象を絞っていただいて、現実的に余り混乱がないようになれば そういう意見が脳外科のほうでは多うございます。処理された後の硬膜移植を受けた人 は、本当にそれほど危ないのかという質問をいつも聞かされて答えられません。 ○佐藤委員長  いま、端先生の御意見をまとめますと、1つは、現実的に脳外科の手術の際に電気メ ス、エアトーム、直達鏡とか、ゴム部分があるところはどういう消毒方法でも消毒は不 可能であるということで、その器具についての混乱が生じるということと、対象者が非 常に多いような印象を受けられて、それで手術がやりづらくなるのではないかという2 つの御意見なんです。 ○端委員  硬膜移植を伴う脳外科手術は多いんです。 ○佐藤委員長  角膜移植とか、ヒト由来成長ホルモンは200 名ですか、これは日本ではそんなにいな いんです。 ○端委員  角膜移植はたくさんおられるんですね。硬膜移植も年に3万件ぐらい今までにやられ ております。 ○佐藤委員長  2万件ぐらいと言われていますね。 ○端委員  はっきり実数がつかめないですけれども、十二、三万の脳外科手術のあるうちの20% 30%ぐらいある。 ○佐藤委員長  まず、器具のことに関しては、マニュアルの中でも、例えば内視鏡は現在のところで は消毒法は知られていないというふうに書いてありますので、同じ扱いかと思いますけ れども、それを一々器具名を挙げるかどうかですね。これとこれとこれは、この中の消 毒では消毒出来ないので、例えば先端部だけを丁寧に洗ってほしいとか、そういう記載 の仕方をするかどうかですね。 ○端委員  現実的に各施設が対応するとは思いますけれども、消毒はまあいいやというかっこう になるんですかね。 ○佐藤委員長  逆に、第1案、第2案の対象者の指定の仕方ですけれども、第1案はマニュアルで、 例えば献血などを受ける場合に供血者の除外基準がありまして、それをそのまま使って いるんです。その除外基準はフランス、アメリカなどが定めたものをほとんど踏襲して いるんです。 ○端委員  これをやめようと積極的に今やっていることを変えて、こうしようというのとは大分 意味が違っております。積極的に変えることによってその影響が及ぶ。 ○佐藤委員長  1項目ずつ第1案と第2案を読み比ベていきたいと思いますが、第1案の「CJD及 び類縁疾患と医師に言われたことがある」、これは同じですからよろしいですね。その 次の「血縁者にCJD及び類縁疾患と診断された人がいる」。第2案のほうはとってあ りますが、これはいかがですか。立石先生、北本先生、いかがでしょうか。 ○北本委員  家族性のことがあって、特に我々のところの遺伝診断に送られてくる患者さんが発症 スレスレ、臨床的にはほとんど発症していないというふうなんですが、実はミューテー ションがありまして、その後何ヵ月と経たないうちに発症した。その前に胃がんの手術 を何の情報もなしにしている。手術器具に関しては従来どおりのガス滅菌しかやってな いというのが2例ぐらいたて続けに経験したものですから、家族性CJDを除外すると いうことからすれば、この血縁者にというのを、輸血製剤の時にどうでしょうかという ことを申し上げたんだと思います。 ○佐藤委員長  これは、私も必要な項目と思いますが、脳幹手術を受ける患者さんの家族歴にヤコブ あるいはその疑いの患者さんと診断された人はいますかという設問で、本当は血液製剤 の除外基準の時に、痴呆と診断された人がいるというところまで広げたんですが、それ では余りにも対象が広すぎるとい意見があって、ある程度ここを絞ってきたんですけれ ども。 ○山内委員  その場合に、ファミリアでない人も当然いる訳で、そういう時に、実際にはDNA診 断まで何らかの形でバックアップして、この人ならば大丈夫といったようなことは難し いですか。 ○佐藤委員長  それはちょっと難しいですね。痴呆症じゃない患者さんについてどこまで出来るかと いう話になると思います。 ○北本委員  その時に現実問題としては無理であろう。その場で聞く時には除外しておいたほうが と。脳外科の手術なんかの時では1週間以内に出来ますので、それは調べることは出来 ます。 ○佐藤委員長  全部にはとても対応しきれないですね。 ○山内委員  今のような形で実際には対応出来る場合もあるんじゃないですか。 ○佐藤委員長  それから、3番目のヒト由来成長ホルモンの注射を受けたことがあるということは、 今回の調査でヒト由来成長ホルモンでのCJDの発症患者は報告がなかったんですが、 ヒト由来成長ホルモンを受けてフランスで注射を受けた時期は1984年、85年なんです。 潜伏期が10年から20年近くあるとすると、受けたグループは非常に発症率は高いので、 記憶が正確じゃないんですが、多いとしても日本では2,000 名なんだそうです。これは 小児科関係の先生が追跡調査をしておられるということで、この数は伺っているのです が、実際に脳外科のほうは。 ○端委員  これは、クラニオアンジオーマとか、下垂体の病気で、このごろは違うんですか。 ○佐藤委員長  昔の10年前に2,000 人の集団が受けたことがあるんだそうですが、ほとんど小人症で 受けているんだそうですから、対象を限定して、実際にかかる率は少ないんじゃないで しょうか。 ○端委員  これは、生のものを打っている訳ですから、危ないと言えば危ない。 ○佐藤委員長  恐らく、五、六年経つとこの問題が外れてくると思います。  それから、角膜移植を受けたことがある。これは世界的に例が少ない。日本では、今 回の調査では1例の報告例だけだったんですが、実際には角膜移植例が多い訳ですから ここの項目はどういたしましょうか。血液製剤の場合は、世界的なコンセンサスで角膜 移植を受けた症例は除外基準の中に入れている訳ですけれども……。 ○端委員  これは生の組織を移植された人ですから、報告例もあるんでしたら、除外基準に書い ていてもらって結構です。 ○佐藤委員長  除外基準というのは手術をしないということではなくて、こういう人の手術をする時 には消毒を気をつけてくださいということですね。そうすると、この一番最後の項目の 「硬膜移植を伴う」の硬膜移植の説明としてアルカリ未処理の疑いのある硬膜移植とし ますと、一般の脳外科の先生も恐らく御存知ないと思いますから、未処理のものはいつ からいつまで使われていてと、かなり説明をしないとだめですね。  それから、先ほど言いましたが、例えば87年から91年にかけては両方のアルカリ未処 理のものと処理されたものとちょうど混在している時期ですから、なおのこと特定がや やこしくなってきまして、年間2万人としますと、わずか数年でもかなりの数に上って きます。 ○端委員  脳外科医に対しましては、このクロイツフェルト・ヤコブ病の情報は十分提供されて おりまして、脳外科学会のほうから情報提供はしておりますので、未処理のものと、そ うでないものとが何年から変更になったということは多分情報提供されております。 ○佐藤委員長  逆に私が恐れるのは、処理済みと判断されたけれども、本当は未処理だったというこ とも逆に分からない訳です。 ○端委員  明らかにチトプラストであるとか、最近のものとかいうのを除外するだけでも大分助 かるのではないかと思うんです。硬膜移植を伴う脳外科手術ということになりますと、 最近の症例も全部ということになってしまいますので。  それともう一つ、これはグチのようになりますけれども、アルカリ処理をされたもの も危ないと知りながら使っておったのかというような患者からの責めがまいります。ア ルカリ処理のものは、現実的には臨床的には安全であるという線を保ちたいんです。そ れは厚生省の評価にもありました。 ○佐藤委員長  この問題をもう一回確認しますと、前回の専門委員会で、今回調査班としてのまとめ が今日用意された資料に2ページにありますが、この根拠となったのが、2ページの65 歳の症例です。これは脳外科学会で調べられたケースなんですが、ちょうどこの時期は Lyodura とすると新しい処理法のもので、チトプラストをすると旧処理法のもので、い ずれとも特定出来なかったんですが、絶対に新処理法のものではないということも断言 出来ないという判断から、灰色ですけれども、安全性を重視して一応危険勧告を出すと いうことになったんです。 ○端委員  でも、これは一例でございますので、硬膜移植全例の何十万人かの一例、自然発生と 変わらないと言えば変わらない。 ○品川委員  要するに、アルカリ処理法の脳硬膜が使用され始めてからの年限がそんなに長くない 訳です。アルカリ処理法をすれば、確かにアルカリでやれば感染価があったとしても落 ちると思う訳です。そうなると、私、スクレイピーなんかの経験からすれば、これは潜 伏期が長くなる訳ですね。まだ私が十分理解出来ていないのは、アルカリ処理法という のが絶対的に安全だというようなことが証明されているかどうかということだと思うん です。 ○佐藤委員長  それは前も立石先生の研究が紹介されているんですが、アルカリ処理の方法では完全 に不活化はされない。そうすると、ドナーを非常に厳しく特定するのは、その次の安全 策になる訳です。 ○端委員  実際に発症していない人の硬膜をアルカリ処理して、それでもだめだったというのは 逆にない訳でして、発症している人のものをアルカリ処理しても完全ではなかったとい う実験結果でございますね。チトプラストの会社に言わせますと、そういうことだから ドナーを選択して発症していない人を選んさえおれば安全だというふうに我々は聞され てまいりました。 ○遠藤疾病対策課長  私のほうもこれを受けて、また広報なりをしなければいけないという立場で確認をさ せていただきたいんですけれども、1つは、硬膜移植を受けた人の再手術の可能性とい うのはどのぐらいになるのか。  それから2番目には、表2のaからdで消毒の出来ないものについて何もここで言っ ていませんので、それをどうしたらいいのか。  3番目がUのイのところは、これを準備する段階で議論をしていたのは、硬膜に再度 触った場合にという前提で議論をしていたんですけれども、そういう理解でよろしいの かどうか。例えば血液中にもあり得るというふうな対応をするとなると、この表現では 足りなくなっている訳ですけれども、その3つについてお聞かせいただければありがた いんです。 ○佐藤委員長  遠藤課長からの質問ですが、硬膜に触った人に対する注意かどうかという御質問です が、これは私の理解は、Uのイが脊髄も整形外科、耳鼻科などが入っています。当然ほ かの手術でも、ヤコブの方で、例えば腹部の手術はどうしても緊急手術の必要性がある 場合がありますので、その場合の患者さんの処置についても、手術器具の消毒について の注意かと考えておったのですけれども、この文面は……。 ○遠藤疾病対策課長  同じ局所というつもりで原文は書いてあるんです。 ○佐藤委員長  そうすると、同じ局所という言葉はないので、腹部手術でも、ヤコブの人を腹部手術 する時にはかなりな注意をしたほうがよろしい訳ですから、私自身はこの文面はそうい うふうに解釈していたんですけれども、事務局の考えた趣旨は、今、遠藤課長がおっし ゃったように硬膜に限るかどうか、塚原さんいかがですか。 ○塚原補佐  事務局で案を練った段階では、FDAの血液の取扱いの勧告が1985年8月8日に出さ れたのが、ここの表1「対象者」(第1案)がそれなんです。血液の取扱いと一緒にし なくていいのかというような議論も事務局でした訳ですが、余りヒステリックになるの もというようなこともありまして、少なくても硬膜をあたる時、例えば硬膜なり脳外科 手術で何らかの異常プリオン蛋白を伝達されているリスクがある方について、脳硬膜を 破るなり、切るなりというような処置をする時に限っては、少なくともこのぐらいの強 い喚起というものが必要ではないかという趣旨であります。 ○佐藤委員長  それでは、脳外科、整形外科、耳鼻咽喉科、腰椎穿刺になりますけれども、中枢神経 系に触れる手術の際にはとか、もう少し限定した表現にするかどうか。 ○遠藤疾病対策課長  もし同じ局所ということでよければ、そのように対応しますけれども、全身くまなく という話になると、この書き方ではちょっと、そういうふうには読めないという話にな ります ○端委員  問題はアルカリ処理以後の硬膜移植が危ないというところなんです。 ○遠藤疾病対策課長  そこのところは、前のところでかなり弱めてはある訳なんですけれども。 ○端委員  危ないかどうかは水かけ論でして、その91年の症例をどう解釈するかというのは…… ○塚原補佐  事務局のほうでドラフトを考えた段階で、第1案か第2案か、特に硬膜移植のところ で水酸化ナトリウム処理の有無について、していないものだけを問題にすればいいのか したものも含めてより安全性を考えてやるべきかという議論はありまして、例えば1991 年症例の取扱いなんですが、処理したものか、処理しないものか分からないということ しか今分からなくて、CJDの類縁疾患調査を何年か継続していくと、場合によるとア ルカリ処理したものの評価というものも出てくるんじゃないかという考え方があって、 イのところに、「このため、当面の間」ということを入れさせていただいて、CJDの 類縁疾患調査をしばらく様子を見て、場合によっては硬膜でもアルカリ処理したものか らは出ていないということが確認出来れば表現の一部見直しがあってもいいと思います し、出てくるということになれば、また評価が変わってくるということで、イのところ に「当面の間」というものを入れて、そういうふうなニュアンスで案をつくったつもり でおります。 ○佐藤委員長  今の説明で、結局アルカリ未処理が本当に安全かどうか、現在1例ですが灰色ですし その結論が分かるのは恐らく五、六年、新しくスタートしましたサーベイランスで上が ってくる症例の解析から答えが出てくると思います。私自身もやはり灰色でも安全性を 重視すると、この言葉を入れなくても現場の先生に対する趣旨は同じじゃないかという 気がするんです。ただ、先ほどおっしゃった消毒しきれない器具名を挙げて、こういう ものについては仕方がないので、その触れた場所、先端の場所だけを丁寧に洗ってくだ さいとか、そういう表現の仕方をせざるを得ないんじゃないかと思います。マニュアル では内視鏡はそう書いてあるんです。現行では消毒の仕方がない。 ○遠藤疾病対策課長  マニュアルには、消毒出来ないものについてどうしろというふうなことはなかったん じゃないですか。 ○佐藤委員長  名前は挙げているんですよね。 ○端委員  内視鏡は今後の課題であるといっている。 ○遠藤疾病対策課長  ほったらかしにしてありますが、それは結局通常の消毒法をとりあえずやっておくし かないという理解でよろしいですか。 ○塚原補佐  資料2の4ページのW「医療器材」のポツの4つ目に「気管支または消化管内視鏡の 有効な消毒法は今後の課題である」というふうに書いてありまして、どうせいというこ とは書いてありません。 ○三丸補佐  また、そのためにウの項目を入れて、患者の範囲と……。 ○遠藤疾病対策課長  ウはいいんだけれども、イで消毒しろといっちゃっているものだから、ちょっとそこ は。 ○佐藤委員長  これ自体はマニュアルに書いたように、いまの電気メスとかエアトームなり、直達鏡 などのように、ここに掲げた消毒法では消毒出来ない器具については従来の消毒法で丁 寧で行うことと品名を挙げて記載しましょうか。 ○端委員  そうしていただけると大分弱まりますね。 ○佐藤委員長  医療器具の消毒法の注3)にしまして、一応私の案ですが、器具名は先ほどおっしゃ っていたのは電気メス、直達鏡、エアトームも入るんだそうですね。 ○端委員  エアトームもメーカーによっては入ると思います。 ○佐藤委員長  「などの上に掲げた消毒法では処理出来ないものについては、従来の消毒法で丁寧に 洗浄する、あるいは丁寧に消毒すること」、そういう文章でいかがでしょうか。 ○北本委員  それでいいと思うんですが、今後のことがございますので、実は内視鏡をつくってい るメーカーの人に、実際にこの処理法で出来るかどうか試していただいたんです。エア トーム、電気メスというのは、一時的に仮にそうするのはいいと思うんですが、これを つくっているメーカーの人に……。 ○端委員  対応出来るものはありますから、将来的には、そういうふうになると思います。 ○北本委員  今、挙げたものに関しての滅菌法を確立していくというのは重要じゃないかと思って います。 ○佐藤委員長  そうすると、さらに研究を行っていく。具体的に新しく開発された器具もあるそうで すから、もう少し丁寧に幾つかメーカー名を挙げて、この器具については消毒可能であ る、オートクレーブ可能であると書くかどうかですけれども、そこは少し時間をいただ いて具体的な品名を挙げて、ただし、電気メスがどこどこのメーカーのものは消毒可能 であると書くかどうか。 ○端委員  それはセールスポイントで、これは対応出来ますよというのは、売り込みにくる時に そうなっております。 ○佐藤委員長  実際にオートクレーブ滅菌出来ないのは直達鏡だけになりますか。 ○端委員  将来的には、そうなるんじゃないかと思います。 ○佐藤委員長  品名として挙げるものはですね。 ○立石委員  オートクレーブは132 度までいきますか。 ○端委員  それは、問い合わせましたらいくと言ってました。 ○立石委員  132 度にいかないと意味がないんですよね。それと、SDS処理ではやってみられた んですか。 ○佐藤委員長  直達鏡は、接続部ゴムとか、アルミニウムの接続部分は溶けます。次亜塩素酸ソーダ でもさびが出てだめだったんです。 ○立石委員  次亜塩素酸はいかんと思いますが、SDSは何をやってもいけるので。 ○佐藤委員長  ゴムを使っているんですね。注の3の品名を挙げるのについては、直達鏡あるいは内 視鏡はプリオンに有効な消毒法はないそうですからないそうですから、従来の消毒法で きちんとやること。 ○端委員  「内視鏡」と書いていただいたほうがいいと思います。 ○佐藤委員長  直達鏡でなくて、内視鏡でよろしいですか。 ○塚原補佐  内視鏡だけでいいんですか。 ○端委員  内視鏡、電気器具等のほうがいいと思います。電気メスもいろいろありまして、測定 用の電気のものは具合が悪くなるんですね。電気メスは対応出来るものがあると思いま す。 ○佐藤委員長  うちの病院は大丈夫だ、オートクレーブ出来ると言っていました。 ○端委員  測定用の電気のものが具合が悪いといっています。 ○佐藤委員長  先ほど遠藤課長の御質問の2の項目が消毒出来ないものは、今の議論でよろしいでし ょうか。 ○遠藤疾病対策課長  2は分かりました。3のほうは、全手術、要するにプリオンを伝達するおそれのある 手技を行った場合にしますか。それであれば、脳外科、脊髄・脊椎等みたいな例示を逆 にもっと広げないといけないというか、無限定での手術、処置は脳外科の話ではなくな ってしまうんですよね。基本的には、この前マニュアルの中には、少なくともCJDの 患者さんを手術する場合の注意については書いてある訳なので、それに準ずる処置を硬 膜移植を受けた患者さんの場合にもしてくださいということになるんでしょうか。もう 少し研究を進めていただかないと。 ○佐藤委員長  先ほどの課長の御質問で、硬膜手術を有する患者さんで再手術を受ける割合は大体ど のくらいのものなんですか。 ○端委員  病気によって再手術をします。良性腫瘍ですとかなり再手術を受けることになる思い ますので、動脈瘤の手術なんですが、動脈瘤が10年ほどすると、またもう一つ出来てく るということになっております。動脈瘤の再手術の症例ももっと増えてくると思います 悪性腫瘍などは死んでしまいますので。 ○佐藤委員長  私素人なんですけれども、年間10万から12万の脳外科全体の手術件数があって、その うちの大体2割が硬膜を使用するというお話で、この間どなたか、そのうちのさらに2 割が再手術になるというお話だったんですね。大体そんなものですか。全員が再手術に は到底ならない訳ですね。 ○端委員  手術する人のフィロソフィーにもよりまして、再手術をやろうと決めるかどうか。 ○佐藤委員長  疾患によって違ってくる訳ですね。半分はない訳ですね。 ○端委員  そんなにはないですね。 ○佐藤委員長  2割ぐらいと、この前どなたかおっしゃっていたけれども。 ○端委員  2割あるかどうか。 ○佐藤委員長  硬膜移植を受けた患者さんが、さらにまた再手術をする機会です。 ○端委員  2割はないと思いますね。死んでしまう人がありますから。 ○佐藤委員長  それでは、予定の3時が少し超過しておりますが、そろそろまとめたいと思います。 まとめる前に、是非御意見をという委員の先生方はおいでになりませんでしょうか。  今の御議論を確認いたしますと、表1の対象者についての第1案、第2案は大方の委 員の先生は、血液製剤の除外基準が第1案ですが、当面の間は脳外科の先生にとっては かなりきつい印象を与えるかもしれないけれども、この案でいこうという御意見と承り ましたが、よろしゅうございましょうか。  それから、表2の注の3として、内視鏡とこういう上掲の消毒法で出来ないものにつ いては、従来の消毒法で十分注意して行ってほしいということを1項目入れるというこ と。  それから、今後の課題ですが、そういう手術器具の消毒法の安全性、アルカリ処理さ れたものについて現行のものを灰色と結論した訳ですが、それはどのぐらいの観察期間 で、その安全性を確認するかということについては今後の課題だと思いますが、大体今 日御議論いただいたことは以上のことだと思いますけれども、何かございませんでしょ うか。 ○立石委員  この文章の一番上にクロイツフェルト・ヤコブ病等専門委員会の名前で出すことにな るんですか。それなら、我々の意見として文章までチェックしなきゃいかんという責任 があるので申しますが……。 ○遠藤疾病対策課長  また、この後中薬審がありますし、一日、二日遅れても大丈夫だということであれば もう一度直しますので、それで御意見をいただくということにしましょうか。 ○立石委員  この趣旨は非常によろしいし、是非やらなきゃいかんことだろうと思うのです。非常 に分かりやすい文章で一番大事なインフォーメーションは何と何と何ということに絞っ て、それ以外の文章を省いて整理していけばすっきりすると思います。 ○端委員  外国の状況を知らせていただきたいということがございます。今のところ、硬膜移植 が悪者になったのは日本だけになっておりますので。 ○遠藤疾病対策課長  アメリカはやめているような言い方で報道されておりますね。 ○端委員  アメリカ側はびっくりしておるというような情報もあって、我々脳外科医も大分びっ くりしておりますので。 ○遠藤疾病対策課長  最初に話題になったLyodura というのを入れようという話なんですが、1ページ目の 2のSのイのところで、医療機関に対して照会があった場合に使用した硬膜に関する情 報を伝えてやってくれというふうなことを入れてありますので、余りLyodura を強調し ても、多分医療機関のほうで使った硬膜が分からないという場合が多いので、Lyodura という話を余り入れても、またその医療機関はそれさえもつかんでいなかったのかとい う話になりかねないので。 ○端委員  ほとんど一般名詞で使われておりましたので、かえってLyodura という名前を入れる んでしたら、ブラウン社のほうというふうに特定しませんと。 ○遠藤疾病対策課長  いまのところ、88年以降はかなり安全性を増しているのではないかという感じをにお わせるぐらいのところでどうなのかなと思うんですけれども。 ○立石委員  医療機関とか、そういう情報提供者に我々の真意を伝えるというのであれば、私は具 体的にCJD発症者に使用した硬膜のうち、確認出来たのは42例で、そのすべてが1987 年以前のライオドゥラであったという、そういう文句を是非入れるべきだと思います。 ○遠藤疾病対策課長  ここには逆の言い方で書いてある訳なんです。 ○立石委員  そういうのを入れれば、今、課長さんがおっしゃった2の(1)の文章なんかは前半 を全部省いてもいいんです。使用した硬膜に関する情報という一言を入れるよりも、私 は具体的に何年の何が悪いということを入れるべきで、そういう判かり易い文章に是非 しなきゃいかぬと思います。 ○佐藤委員長  それは重要な御意見で、研究班として用意しております今週の末に3,000 施設に発送 する研究班の概要のパンフレットの中にも、ご審議いただいた今日の資料の2ページご ざいます、どういう時期の硬膜かということは明記してございますので、そういうこと を参照していただくと自ずからその背景も分かるかと思います。  まとめますと、立石先生からいただいた御意見、それから端先生からいただいた御意 見等をまとめまして、文章を直して、それを委員の先生方に二、三日中にやり取りしま して、御意見をいただいた上で、一応委員長一任の形にさせていただくか、もう一回会 議を開く必要があるかどうかということですが、委員長一任にしていただいてよろしい でしょうか。重要な項目は今、審議されたと思いますが、よろしゅうございましょうか ○立石委員  文章をFAXでやり取りして、まとめは先生にお任せする。そういう形がいいのでは ないでしょうか。出てきて集まるのは皆さん時間的に無理でしょうから。 ○佐藤委員長  今のようなことでまとめさせていただきたいと思います。  では、長時間御審議ありがとうございました。  事務局のほうでアナウンスございますでしょうか。 ○塚原補佐  それでは、この専門委員会の報告の取扱いについてでございますけれども、先ほど申 し上げましたように、委員長のほうと調整をさせていただいて、最終的にまとまった段 階で委員会の報告ということで公表して関係機関には周知を図りたいというように考え ております。  あと、本日の議事につきましては、議事録の公開ということになっておりますのでよ ろしくお願いいたします。 ○佐藤委員長  それでは、長時間どうもありがとうございました。 問い合わせ先 厚生省保健医療局エイズ疾病対策課    担 当 三丸(内2355)    電 話 (代)03−3503−1711        (直)03ー3595ー2249