98/04/03 第3回光感受性発作に関する臨床研究班会議議事録 第3回光感受性発作に関する 臨床研究班会議議事録   日 時:平成10年4月3日(金) 14:30〜18:10 場 所:厚生省特別第1会議室 厚生省大臣官房障害保健福祉部精神保健福祉課 ○山内班長 それでは、ただいまから第3回の研究報告会を始めたいと思います。昨年末から立て 続けに会議といろいろなお願いをいたしましてどうも本当にありがとうございます。今 日はこれで一応のまとめをする会ということになりますので、どうぞよろしくお願いし ます。 それでは、最初に厚生省の田中課長さんに一言ごあいさつをよろしくお願いいたしま す。 ○田中課長 厚生省の精神保健福祉課長の田中でございます。本日は大変御多忙のところ、第3回 の研究班会議に御出席いただきましてまことにありがとうございます。 昨年12月の暮れの事件発生以来、緊急状況への対応ということでさまざまな時間的、 あるいは経済的な制約の中で、山内先生を初め研究班の皆様方におかれましてはいろい ろと御無理を申し上げまして、またその結果と申しますか非常に立派な研究成果がまと まりつつありますけれども、厚く御礼を申し上げたいと思っております。 本日は最終回ということで、これまで3カ月間推進していただきました実態把握、あ るいは医学的検討等の結果のまとめ、それから光感受性発作を誘発する光刺激の物理特 性と人体に対する影響に関する検討の結果と、3つのテーマについて議論が予定されて いる訳でございますけれども、今般のこの事件と申しますか問題につきまして医学的な 観点から一応のまとめを示していただくということで、今後私ども保健医療対策を推進 していく上でどういうふうに対応していくべきなのかというようなことを参考にさせて いただければと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。 この厚生省の研究班のほかに、郵政省とか、あるいは民間の、更にはNHKの放送団 体等、いろいろと検討がされている訳でございますけれども、4月に入りまして続々と その成果が一応まとめられて、そして最終的にはガイドラインもつくられるというふう に伺っておりますけれども、この研究班でまとめられました成果をなるべく早くそうい うところにつなげていきたいと考えております。 本日は、大変長い時間とっていただいておりますけれども、実際にはそれでもまだ足 りないというふうにも思いますけれども、よろしく御検討のほどをお願いいたします。 本日は大変御苦労様でございます。ありがとうございました。 ○山内班長 どうもありがとうございました。それでは、これからの議事を座らせてやらせていた だきます。 初めに幾つか確認でございますが、本日は班員14名のうち、鴨下先生がちょっと遅れ ておりますが、後ほどお見えになるかと思います。 それから、前回もお話し申し上げましたけれども、この研究班会議の議事録は公開さ れるということで、第1回、第2回ともそうでございましたけれども、インターネット 上に掲載されていろいろな形で使われておりますので、本日も速記録をとることになっ ております。発言の際には一々わずらわしいかもしれませんが、お名前を言って、お手 元のマイクの電源が入るようになっておりますので、押してお話いただければというふ うに思います。 それでは、配布資料の確認と、それから番号のついてないのがございますので、一応 始める前に確認したいと思います。 お手元に今日の班会議の会議次第がございまして、これは各班が20分ずつお話をいた だきまして、班員の補足あるいは討議を20分という形で順番どおり進めるようになって おります。議事次第でございます。 その次に、配付資料一覧というのがございまして、その次に座席表があると思います それから、班員名簿がございます。 資料1ですが、第2回の研究班の議事録がございます。 資料2−1は郵政省放送と視聴覚機能に関する検討会の第3回からの資料抜粋でござ います。 資料2−2が、放送と視聴覚機能に関する検討会中間報告(案)(抄)というのがご ざいます。 資料3が本研究会の研究計画書概要、一番最初につくったものを御参考にお手元にご ざいます。 その次ですが、資料ナンバーが付いておりませんが、資料4というのが「光感受性発 作に関する研究速報ダイジェスト版(案)」ということで、これは一番最後にお諮りし たいと思いますが、今日のお話をまとめた形のものでございます。 その次の資料5と番号を振っていただきたいのですが、これは実態調査班中間報告書 ということで実態調査の分担研究の結果が報告されたものを資料5としてください。 なお、1枚だけで「実態調査追加データ」という表になっているものがございます。 これを資料5に追加するものとしてお願いいたします。 それから、資料6という番号を付けていただきたいのは「症例検討班の報告書」、多 少分厚いものでございます。 それから、基礎検討班の報告書で何枚かの厚いつづりになっているものを資料7−1 とし、その次のVEPの波形があるものを資料7−2というふうにお付けいただきたいと思 います。それでよろしいでしょうか。 それからもう一つ、テレビ東京から借りております『ポケットモンスター』のビデオ ですが、これは回収することになっておりますので、まだ提出されていない方は後ほど 厚生省の事務局の方にお返しいただきたいと思いますので、お忘れのないようにお願い します。 以上で、確認その他よろしいでしょうか。 それでは、早速議事に移りたいと思います。 前回のときには多少時間的に余裕がございませんで、それぞれ個々のディスカッショ ンも中途半端になったかと思いますが、その後2回目の会議で出たいろいろの問題点を 含めて各分担班で検討していただきましたので、その結果を20分ずつ代表分担班長から お話しいただきまして、それに各班員の追加あるいはディスカッションを20分ほどとり たいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。 それではまず初めに、この順番に従いまして実態調査班の御報告を班長の江畑委員に お願いしたいと思います。 よろしくお願いいたします。 ○江畑委員 実態調査班の報告をさせていただきます。 実態調査班は、本年1月中旬から2月初旬にかけて全国の4都道府県、東京都、神奈 川県、大阪府、福岡県の小/中高等学校19校において14項目よりなる実態調査表を配布 し、生徒本人または家族による記入を求めて回収しました。対象は小学校9校、中学校 5校、高等学校が5校でした。 実態調査票の配布総数は1万 1,368 票であり、その回収数は 9,350 票、つまり回収 率82.2%と高率でした。そのうち、無効回答が141票ございましたので、有効回答は 9,209票ということになります。これからお話ししますのは、その 9,209人の有効回答の 分析の結果です。 9,209人のうち男子は 4,526人(49.1%)、女子は 4,683人(50.9%)とほぼ同数で した。そのうち当該テレビ番組を見た人数は 4,026人(43.7%)いらっしゃいました。 男女別に見ると、男子では有効回答者 4,526人中 2,182人(48.2%)、女子では有効回 答者 4,683人中 1,844人(39.4%)が当該番組を見ていました。つまり、男子の方が約 9%ほど多く見ていたことになります。 年齢別に視聴率を見ると、添付資料の表2に示しますように7歳児に最も多く85.3% を占めていました。6歳、8歳、9歳、10歳では、やはり80%前後を占めていました。 その後は年齢とともに低減していきますが、18歳においてもなお 9.8%を占めていまし た。 男女別に見ると、男子はどの年齢においても女子よりも高い視聴率でした。学校別に 視聴率を見ますと、小学校では 3,986人中 2,946人(73.9%)の高い視聴率でした。中 学校では33.5%、高等学校では11.4%となっていました。 次に、健康被害の内容とその発生件数を見たいと思います。健康被害の発生件数は視 聴者 4,026人中 417人(10.4%)でした。健康被害の内容と発生頻度は、添付資料表4 に示したとおりで、最も多かったのは「目が痛くなった」が40.5%、次いで「気持ちが 悪くなった」が33.3%、「頭がぼーっとした」が29.5%、「吐き気がした」が14.4%、 「画面から目がそらせなくなった」が11.0%、「画面が目にこびりついた」が10.3%、 「目が一瞬見えなくなった」が 9.4%、「まばたきを繰り返し次第に強くなった」が 8.9%、「手や足が震えたり、引きつけたり、けいれんした」が 7.2%、「周りのことが 分からなくなった」が 5.8%、「目が上に上がった」が4.6%、「頭が痛くなった」が 2.9%、「眠くなった 」が1.95%であり、そのほかにも「目がちかちかした」「頭がく らくらした」「疲れた」「小便をもらした」「長時間視界が狭くなった」「目の奥が変 な感じ」「目の玉が飛び出してきそうだった」などが若干見られました。このように、 健康被害の内容は必ずしも視覚系の症状だけではなく、気分とか自律神経系の症状、あ るいは発作症状といったかなり多彩な領域にわたっていました。 この健康被害の発生頻度を見ると、添付資料表4に示しますように、男子では11.1% 女子では 9.4%と、男子でやや多い傾向がありましたが、統計的な有意差はありません でした。個別の症状の発生率を見ますと、「手や足が震えたり、引きつけたり、けいれ んした」と、「画面から目をそらせなくなった」の症状では、男子が女子よりも著明に 多いのですが、他の症状では男女がほぼ同率でした。 年齢別にその発生頻度を見ますと、表5に示しますように、18歳で28.1%と最も高率 であり、次に15歳が19.7%となり、そのほかの9歳以上は9〜13%を占め、最も低いの は7歳の2.8%でした。このように、8歳以下の低年齢児童よりも9歳以上の児童に多く 特に 15歳以上に多い傾向が見られました。この年齢別発生頻度の相違は、統計的に有意 差が見られました。 年齢別に個別症状の発生頻度を見ると、表6に示しますように、「目が痛くなった」  「気持ちが悪くなった」「頭がぼーっとなった」「吐き気がした」の4項目は6歳よ り出現し、加齢とともに増加する傾向がありました。「画面から目がそらせなくなっ た」「画面が目にこびりついた」「まばたきを繰り返し、次第にそれが強くなった」の 3項目は、12歳より多くなっておりました。「周りのことがわからなくなった」「手や 足が震えたり、 引きつけたり、けいれんした」の2項目は8歳から始まり、15歳から 急激に多くなって、18歳で最多となっています。 次に、健康被害の発生状況についてお話ししたいと思います。 まず部屋の明るさです。明るい部屋でその番組を見ていた 3,757人中35人( 9.4%) が健康被害を発生しました。また、暗い部屋でその番組を見ていた 177人中55人 (31.1%)が健康被害を発生しました。このように暗い部屋でテレビを見ていた場合に 有意に健康被害が多発していました。 個々の症状別に見ると、表7に示しますように、「頭が痛くなった」を除けば、どの 症状も明るい部屋よりも暗い部屋でより高頻度で発生していますが、「手足が震えたり 引きつけたり、けいれんした」は、暗い部屋で特に高頻度でした。明るい部屋よりも暗 い部屋で多発しているが、その相違が余り大きくない症状は「目が痛くなった」「気持 ちが悪くなった」「頭がぼーっとした」の3項目でした。 次に、テレビとの距離についてお話ししたいと思います。 1メートル以内の距離で見ていた 809人中 126人(15.6%)、1〜2メートルの距離 で見ていた 2,000人中 197人( 9.9%)、2〜3メートルの距離で見ていた 926人中 66人( 7.1%)、3メートル以上の距離で見ていた 235人中25人(10.6%)に健康被害 が発生しました。このように1メートル以内の視聴者には、統計的に有意に健康被害が 多発していました。 個々の症状別に見ると、表8に示しますように、一般に1メートル以内に各症状が高 頻度が現れる傾向があります。しかし、「目が痛くなった」と「気持ちが悪くなった」 は、距離が変わってもその出現は余り減少しませんでした。 部屋の明るさとテレビの距離との関係を表9で示しますと、明るい部屋では距離が遠 くなると傾向被害の発生が減少する傾向がありました。しかし、暗い部屋ではそれは必 ずしも明瞭ではありませんでした。これを統計検定しますと、明るい部屋では距離によ って有意に健康被害の発生頻度が異なります。しかし、暗い部屋では距離によって健康 被害の頻度が有意に変わることはありませんでした。すなわち、暗い部屋ではテレビか らの距離にかかわりなく健康被害が有意に多く見られました。 次に、同一番組を一人で見ていたのか、ほかの人と一緒に見ていたのかについて検討 しました。一人で見ていた人 1,083人の中で具合が悪くなった人は 138人(12.7%)で あり、それに対しましてだれか他の人と一緒に見ていた人 2,926人の中で具合が悪くな った人 は 275人( 9.4%)でした。すなわち、健康被害は一人で見ていた人に統計的有 意に多く見られました。 発生時の心理状態は複数回答ですが、表10に示しました。一人で見ていた群では「夢 中だった」とするものが最も多く40.5%、次いで「いつものとおりだった」とするもの が27. 5%、「面白かった」とするもの23.2%、「心配だった」とするものが 4.3%、 「こわかった」とするものが 3.6%でした。他の人と一緒に見ていた群では、「いつも のとおりだった」とするものが最も多く41.5%、次いで「夢中だった」とするものが 38.5%、「面白かった」とするものが29.1%、「こわかった」とするものが 5.1%、 「心配だった」とするものが 4.0%でした。すなわち、「夢中だった」とする人は一人 で見ていた群に多く、逆に「いつものとおりだった」とするものは他の人と一緒に見て いた群に多く見られました。「心配だった」「こわかった」との項目では、一人で見て いる群と他の人と一緒に見ていた群との間にほとんど相違は見られていませんでした。 この健康被害の発生時の心理状態について、追加資料としてけさ出来た資料を本日A 4一枚でお配りしましたので、それをごらんになっていただきたいと思います。 それをごらんになりますと、最初に「目が痛くなった」という症状は、発生時の心理 状態のいかんにかかわらず40%以上ございます。つまり心理状態と余り変わりなく発生 しています。それ以後の症状は、そこにございますように「こわかった」と感じている 人が最も多く見られます。例えば、「画面から目がそらせなくなった」「画面が目にこ びりついた」「まばたきを繰り返し、次第に強くなった」「目が一瞬見えなくなった」 「目が上に上がった」「吐き気がした」「手や足が震えたり、引きつけたり、けいれん した」、これらの症状は「こわかった」と表現している人に最も多く見られます。 更に、「心配だった」と表現している人に多く見られたのは、「気持ち悪くなった」 「頭がぼーっとした」「周りのことがわからなくなった」の症状です。つまり、視覚系 の症状だけでなく、不快気分、あるいは自律神経症状といったものにおいても、「心配 だった」「こわかった」と表現している人に多く見られる傾向があったということです そして、その逆に「いつものとおりだった」、つまり心理状態が普段と変わらない、特 に番組への感情移入が非常に強かったとは言えない人たちが症状の発現が最も低かった ということがこの表から明らかだと思います。 元のページに戻っていただきたいと思います。次に、既往歴についてお話ししたいと 思います。 以前にもテレビを見ていて同様の状態になったことがある人は、417人中83人(19.9 %)でした。同様の状態になったことのない人は 309人(74.1%)であり、残り25人は 不明でした。 また、小さいころからその日までにけいれんや引きつけを起こしたことがある人は、 417人中57人(13.7%)でした。この57人中、以前に同様の状態になったことのある人は 40.4 %、同様の状態になったことのない人は34人(59.6%)でした。つまり、けいれん 発作の既往のある人は同様の状態の経験が非常に高いということです。 しかし、一方小さいころからけいれんの経験のない人は 417人中 322人(77.2%)で した。つまり、けいれんの経験がなくてもこれだけ高率の人が健康被害を発生している ということです。その 322人中、以前に同様の状態になった人が55人(17.1%)、以前 に同様の状態になったことのない人が 264人(82.0%)でした。 小さいころからけいれんの経験のある人は、以前に同様の状態を有意に多く起こして いました。その中でも、特に手や足が震えたり、引きつけたり、けいれんした30例を抽 出して、それについて検討しますと次のとおりでした。 以前にも同様の状態になった人は17人(56.7%)あり、またけいれんの既往のあった 人は14人(46.7%)でした。さらに、けいれんの既往があり、以前にも同様の発作のあ った人17人の場合には、そのうち12人、70.6%の高頻度で同様の発作を起こしていまし た。すなわち、けいれんや引きつけを起こしたことがある人は、有意に以前にも同様な 発作を起こしたことがありました。 発生後の対応。上記の健康被害のために医師を受診した人は 412人中22人( 5.3%) でした。 最後、6ページに以上の結果をまとめました。 健康被害の発生率は10.4%、男児11.1%、女児 9.4%でした。 2番、健康被害の発生は、暗い部屋でテレビを見ていた場合に有意に多く見られまし た。 3番、健康被害の発生率は、テレビから1メートル以内の距離で見ていた場合に有意 に多く見られました。 4番、健康被害を発現した人の中で、小さいころからその日までけいれんやひきつけ を起こしたことのない人は77.2%であり、そのような経験のあった人は13.7%でした。 5番、健康被害の個別症状の発生頻度を年齢別に見ると、「目が痛くなった」「気持 ちが悪くなった」「頭がぼーっとなった」「吐き気がした」の4項目は6歳より出現し 加齢とともに増加する傾向がありました。「画面から目がそらせなくなった」「画面が 目にこびりついた」「まばたきを繰り返し、次第にそれが強くなった」の3項目は、12 歳より多くなっていました。「周りのことがわからなくなった」「手や足が震えたり、 引きつけたり、けいれんした」の2項目は8歳から始まり、15歳から急激に多くなって 18歳で最多となっていました。 6番、健康被害の原因として、光感受性発作以外の要因として動揺病(motion sickness)も考慮に入れる必要があるかと考えられました。 以上です。 ○山内班長 どうもありがとうございました。たくさんのデータをおまとめいただいた訳ですが、 一応速報版のこれは基礎ということでありまして、これをもとに早急に訂正、あるいは 分析の追加もしていただいて、出来れば最初のお約束のように4月半ばには決定版をつ くりたいというふうには思いますが、それについていろいろサジェスチョン、あるいは 御質問もあるかと思いますので、どうぞ御自由に。 ○渡辺委員 名古屋大学小児科の渡辺ですけれども、症状のところでさまざまな症状の発生頻度が 示されましたが、これは重複をして検討されて数えられているのか、それぞれ独立で数 えられているのでしょうか。 ○江畑委員 重複回答です。 ○渡辺委員 重複回答ですと、こういった発作というのはシークエンス(順序)がありますね。で すから、順序が非常に診断に重要になるかと思うのです。例えば、自律神経症状が意外 に多かったといっても、それがある順序をもって出てくれば、これはてんかん性発作で ある可能性もある訳であって、その辺のところが単発で出たものと、それからあるシー クエンスをもってその中で出来たものでは、やはり区別しないといけないのではないか と思いますけれども。 ○江畑委員 そのとおりだと思います。御指摘ありがとうございます。 ○山内班長 ただ、このアンケート調査では、その辺は出ないのですか。 ○江畑委員 このアンケートでは、そこまで微細なことを求めるのは少し。約1万件のアンケート なので、実際には不可能でした。 ○渡辺委員 そうしますと、特に最後の結論で若干問題になるのは、光過敏性以外の要因として動 揺病も考慮に入れる必要があるとありますけれども、これは何か動揺病というエビデン ス、そういったものもあるということでされたのか、あるいは私の考えとしては、そう いったエビデンスがないものですから、「光感受性以外の要因の可能性も考慮に入れる 必要がある」としないと、動揺病というのもある種の一つの疾病概念ですから、ちょっ と無理があるのではないかというふうに思いますけれども。 ○江畑委員 確かに、動揺病の可能性はあると思いますけれども、厳密に言えば、光過敏性だけで はこの結果は説明出来ないということを主張したかった訳です。おっしゃるとおりだと 思います。 ○山内班長 今の症状のことですけれども、これはある程度視覚性の症状とか、あるいは不快気分 とか頭痛といったようなグループ分けが出来る、一つずつだと困難ですが、そういうグ ループ分けで年齢的な特徴があるかどうかといったあたりは分かりませんか。 ○江畑委員 症状の年齢別の特徴については若干述べましたけれども、やはりけいれんに関係する 症状は15歳ごろから好発すると。それから、視覚に関係する症状は9歳ごろから多くな るというような傾向があって、全般的には年齢とともに多くなるという傾向でした。 ○山内班長 その問題と、男性の方が症状が多いとかというようなところの理由みたいなものは推 測出来ないのですね。 ○江畑委員 光感受性は一般に女性の方が強いというふうに言われているそうなので、この結果は その逆をいっていますので、その面からもやはり光感受性以外の要因を考慮すべきでは ないかというふうに考えております。 ○渡辺委員 もう一つよろしいですか。この症状で「目が痛くなった」というのが40%と非常に多 いので、少し意外というか驚いているのですけれども、このアンケートの取り方の中で これが多くなるような理由があるのでしょうか。これはありのままにどういう症状があ ったかということではなくて、「目が痛くなった」というようなものが一番最初にアン ケートの中で記載されて、それがチェックするようになっているとか、何かそのような ことがあるのでしょうか。 ○江畑委員 アンケートの中での項目の順番は、1番目が「目が痛くなった」「画面に引き込まれ て、画面から目をそらすことが出来なくなった」「まばたきを繰り返し、次第にそれが 強くなった」「目が一瞬見えなくなった」「目が上に上がってしまった」「気持ちが悪 くなった」「吐き気がした」「頭がぼーっとなった」「周りのことがわからなくなっ た」「手や足が震えたり、引きつけたり、けいれんした」「その他」、こんな内容です 「目が痛くなった」が最初にあるということは事実です。これがその症状が多いという ことの説明となるかどうか。でも、その後の順番は必ずしもそのとおりではないと思い ますけれども。 ○渡辺委員 我々の経験では、「目が痛くなった」という症状が必ずしも多くないというか、少な いというか、余りないものですから、これはアンケートの取り方とか、そういったこと にもよるのではないかと思うのですね。「目が痛くなる」というのはどういうような、 何を考えてそういったアンケートを取られたかということなのですけれども ○江畑委員 約1万件を対象として、だれにでも答えられる内容でアンケートをつくったので、多 少あいまいなところが残るのはやむを得ないところもあるかなというふうに考えていま す。 ○渡辺委員 そうではなくて、「目が痛くなった」というアンケートの項目をつくられた背景はど ういうところから、何を考えてそういう項目をつくられたのでしょうか。 ○江畑委員 これは、考えられる、あるいは今まで報告されている症状として挙げられているもの を列記したと、そういうことです。 ○渡辺委員 光過敏性発作とかそういったものの中に「目が痛くなる」という症状というのは余り ないように思うのですね。何かそういった「目が痛くなる」というような症状を来すよ うな神経生理学的な背景があると考えてされたのか。単純に何か理由があるのかという ことが知りたいのですけれども。 ○江畑委員 そういった報告がある、あるいはそういった経験があるというようなことによってこ の内容をつくりました。 ○山内班長 今の問題は、1番目に出ているので、みんなが付けたかどうかという問題はあるかと 思いますが、ちょっとその辺は見ようがないですね。 ○牛島委員 この症状を羅列されたのは江畑委員長でございますので、私はその詳細は知りません けれども、私どもの、つまり心理的な面から見ようとしている立場の面から見ると、非 定型な症状とか光感受性の定型的な症状をざっと並べて、その中でどういうのがたくさ ん出てくるかというのを見るのが目的なのですね。光感受性の症状がたくさん出るのか 出ないのかを調べるのではなくて、それと余り関連のない症状を一緒に見ていくという のがこのアンケート調査の一番重要なところで、そういうふうな意味では、ちょっと教 えていただきたいのですけれども、光感受性の症状として一番重要とか、一番頻度が高 いと言われるものはこの中でどういうものなのでしょうか。ちょっと私不勉強であれで ございますけれども。 それが明らかになってくると、私、最初見たときに、これは余り心理的なことは関係 していないなという印象を前回のデータまでは持ったのですけれども、今日のデータを 見ると必ずしも否定出来ないデータになっているような気がするものですから。 ○渡辺委員 光過敏性としては、単純部分発作症状としての例えば視覚発作症状ですね、それに引 き続くどこで進展するか。例えば、側頭葉前方に進展するのであれば複雑部分発作、そ れから大脳の前方の方に進んでいけば運動症状というような格好ですね。それでそれに 自律神経症状、頭痛とか、嘔吐とか、そういったことが出てくると。最初の光過敏性発 作の中には視覚症状もありますし、眼球偏位といったようなものも後頭葉発作の症状と してはございますね。そういったものが比較的多いので、むしろ目の症状であれば、目 が見えなくなるとか、あるいはちかちかするとか、何か見えるとか、眼球が偏位すると か、そういった症状が目の症状としては多いのではないかというふうに思いますけれど も。少なくとも痛いというのであれば、これは頭頂葉の症状ですので、初期に出る症状 としてはちょっと考えにくいのですね。視覚発作ですので、光刺激が入る経路を考える と最初の症状としては考えにくいというふうに思いますけれども。 ○山内班長 ただ、これは別に発作性のものではなくて、四千何百人という人たちがどういうふう な自覚症状を持ったかということなので、あるいはもう全くそういう発作性のものに関 係なくそういう症状を持ったといういことかもしれませんが、一番の問題点はトップに ランクされていて高くなったかどうかということですね。 ○渡辺委員 誘導尋問になってはいないかということですね。要するに、それを出してしまうとそ こへ付けざるを得ないというか、そういうふうになってしまう可能性ある訳ですね。だ から考えられる、神経生理学的に言って妥当と思われるものを挙げないと間違った方向 にそのアンケートの結果をしてしまうという危険はあるのではないかということを考慮 しておいて、報告していただく必要はあると思いますけれども。 ○山内班長 ほかの項目でも、最初がみんな高いランクづけになっているかどうかといったような 点もちょっとチェックしてみる必要があると思います。 ○高橋委員 事件直後に、埼玉県内で小・中学校の生徒を対象にアンケート調査が行われたと思い ますが、あのときの結果は20人に1人、すなわち5%の症状発現だったと思うのですが それに対して今回その倍というふうなこと。どういうふうなことが多くなった理由とし て考えられるか、ちょっとそのこと知りたかったのですが。 ○江畑委員 埼玉県での調査の方法がどんなものだったかちょっと詳細が分からないのですけれど も、その辺その調査の具体的な方法を何かお聞きでしょうか。 ○高橋委員 朝日新聞で報じられて、私は余り詳しいアンケート調査ではなかったのではないかと 思うのですが、今回詳しいアンケート調査ということで、その率が倍になったのかなと いうふうに今ちょっと考えていたものですから。 ○江畑委員 これは学校で教師が生徒に配布するという形で行われたので、結果から見てもかなり 総合的に評価すると、生徒はかなり真面目に取り組んでいるという印象を受けるのです けれども、そういったことが反映されているのではないかというふうに思いますけれど も。 ○山内班長 多分埼玉県は教育委員会がやったものだと思いますけれども、余りきちんとしたアン ケート様式をつくったものではないと思っています。ほかにいかがでしょうか。 ○岡委員 今の発生頻度のことですが、岡山では教育委員会が12月17日に各学校に通達しまして 私、今日資料を持っていないのですけれども、かなりの学校で各担当の教師がクラスで 昨日のテレビを見て何かあった人というふうな程度で挙手を挙げたり、そういうふうな ことで頻度を調べたのが出ておりますが、それはやはりほぼ同じ頻度でございました。 詳しいのは今日持ってきておりませんが。 ○山内班長 どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。 ○西浦委員 明るさ、暗さというのが一つの大きな要因になっているように思うのですが、明るい 部屋で視聴していたというのと暗い部屋というのをきれいに分かれるようなアンケート でしたか。 ○江畑委員 それはなるべくはっきり分かれるような質問にしたのです。内容的に今からちょっと言 いますと、質問を繰り返します。「あなたがテレビを見ていたとき、部屋の電気がつき 明るくなっていましたか、それとも部屋の電気をつけないで暗いところで見ていました か」こういう内容です。答えは「部屋の電気がつき明るいところで見ていた」と、もう 一つは「部屋の電気をつけないで暗いところで見ていた」、この2つしかありません。 ○西浦委員 そうしますと、 3,757プラス 177が合計数に足りないのですが、というのは答えなか った人もいる訳ですね。 ○江畑委員 そのとおりです。 ○山内班長 お手元の資料3の中に計画書の概要がございまして、この中の7ページ以降にただい まの実態調査表の実際の質問表が入っておりますので、それも参考にしてください。ほ かにいかがでしょうか。 ○三浦委員 最初に、無効回答が 141とありますけれども、これはどういうようなものが無効だっ たのでしょうか。 ○江畑委員 無効回答は、年齢が書いていない、性別が書いていない、それから5歳以下の年齢が 書いてある、それから19歳以上の人は省いたと、それが無効回答の内容です。 ○三浦委員 それから、いろいろな症状が出まして、医療機関を受診した人が22人とあるのですけ れども、これはほとんどやはりけいれんとか引きつけとか、そういう症状で受診してい るのでしょうか。 ○江畑委員 それは今回のアンケートの内容では判断出来かねます。そこまでアンケートで調査し ませんでした。 ○三浦委員 受診した人のほかの症状等を見ればある程度分かりますね、突き合わせて見ますと。 ○江畑委員 今回の分析では、その方向での分析、検討をしませんでしたので、今後その検討をし たいと思います。 ○山内班長 恐らく症状で引き出せば分かると思いますので、ちょっとその辺も見ていただければ と思います。ほかにいかがでしょうか。 ○岡委員 この追加の方の心理状態に関するもので質問いたします。けいれんがきたグループに 恐怖心が高率に出ておりました。私、実際にけいれんのきた人を10人近く例のこの書式 による予診を全部とって見ましたが、こういうことがありませんでしたもので実際にけ いれんのきた人とかけ離れているなと思うのですが、先ほど渡辺委員のシークエンスと いう問題を出されましたけれども、問いが「具合が悪くなるまでの気持ち」というので すが、あるいはイニシャルシンプトームである可能性もありはしませんでしょうか。け いれんがきた人ですから。 ○江畑委員 つまり、怖かったという心理状態そのものがイニシャルシンプトームではないかとい う可能性ですか、その可能性は含まれていると思います。 ○山内班長 今のことと関係しますけれども、心理状態と関係なかったのは、さっき渡辺委員が問 題にした「目が痛くなる」というのだけなので、何かその辺が意味があるのかどうかよ く分からないですが、ほかのものは大体は夢中になって見ていたりすると、症状として はかなり多発するということになりましょうかね。 ○江畑委員 そのとおりです。 ○牛島委員 この「目が痛くなった」というのは、確かにほかの項目に比べると非常に高いので 一番最初に並べたことが高めたという可能性は否定出来ないと思うのですけれども、 「夢中だった」「面白かった」、それから「いつものとおりだった」という、この3つ の項目で25%以上というのは、「目が痛くなった」と「気持ちが悪くなった」と「頭が ぼーっとした」というこの3つに限られているのですね。ところが、「心配だった」 「怖かった」というので25%以上を取っていくと、数がほかの症状が非常に多彩になっ てくるということは言えるので、ただ一番最初に据えたから、これだけが高かったとい うふうな個別的な見方だけでは少し不十分ではないかというような気がいたします。 ○三浦委員 今の件に関してですが、結局「目が痛くなった」というのは、重複回答ですのでほか の目の症状とダブっているのが多いのではないでしょうか。 ○江畑委員 その可能性があると思いますので、今後そういうふうに検討してみたいと思います。 ○渡辺委員 けいれんが18歳あるいは15歳に多いというようなことなのですが、これを見ますと、 多少この年齢層の例数も少ないようですが、そして有意とおっしゃいましたが、これは 統計的にどういう方法を使って有意だったのでしょうか。たくさん項目ありますので、 どのような方法を使われて有意だったのでしょうか。そして、有意の程度はどうだった かということ。 ○江畑委員 今の御質問、すみませんもう一度繰り返していただけますか。 ○渡辺委員 けいれんを起こした方が18歳年齢に有意だったというふうにあるのですが、これは何 と比較して、あるいはどういうような統計的な方法で有意だったかということですが。 ○江畑委員 何ページですか。 ○渡辺委員 表5にありますけれども、表6のところもそうですね。37.5%がそうですが、実際の 文章では、2ページの下の(2)というところに、年齢別にその発生頻度を見ると、18歳で 最も高率であったというようなことがありますね。ほかのところにも、年齢が高いとこ ろの方がけいれんが多いというのが、表の6もそうなのですが、これは統計的にも有意 であるということですね。 ○江畑委員 この場合、統計的に有意だという意味は、症状を各1項目として12あるので、その重 度に基づいて全体の統計的な、全体の偏位がカイ二乗検定で有意だったという意味で、 18歳が特に高率だったとか、そういうことを特に言っている訳ではありません。 ○山内班長 大体よろしいでしょうか。あと細かなこといろいろあるかと思いますが、もう少し、 今指摘のあったようなところを読み込んでいただいて補充していただければというふう に思います。それでは、後で総合討論もしたいと思いますので、次に移りたいと思いま す。 2番目の症例検討班についてですが、資料の6を御覧いただきたいと思います。 1ページ目に書いてありますが、症例検討班では2つの柱を立てまして、1つは問診票 を基にした症状の把握と、それからもう一つは、一定のプロトコールに従って主として 脳波を中心とした神経生理学的な検査を行うという2つの柱であります。 1ページの「結果」のところに書いてある1というところですが、「専門医による診 察(問診)結果」で、問診票に基づきまして症状の把握を行って、症状を呈した人たち の背景、症状発現に関連する因子などの医学的情報を得る目的で、症例検討班の班員並 びに日本てんかん学会会員で協力の要請に応じた医師が直接診察した結果を問診票に記 入し、提出したものを集計したということのデータであります。 1)にあるのが「症例数と症例居住地域」ですが、その後も届いていますので後で追加 になると思いますが、 3月28日現在全部で115症例で、現在のところ36名の医師に協力 していただきました。お名前は後ろの方に付けてございます。地区別には、やはり放映 されなかったところでしょうか、東北、信越、北陸、四国はゼロで、ほかの各地からい ただいております。男性48名、女性が67名ということで、年齢は後ろの方の図1に書い てございますが、3歳から20歳以上にわたってきれいな分布をしております。一番多い のは12歳で20名、その両端11歳、13歳、14歳が多く、男性の平均年齢が11歳、女性は12 歳で、両者に有意な差はありませんでした。 この人たちの 115 名の既往歴ですが、てんかんという診断をもう既に受けている人が 41名(35.7%)でした。現在も抗てんかん薬を服薬中の人は30名で、残り11名は発作が なくなったとかいろいろな理由で薬を飲んでいませんでした。 熱性けいれんの既往は35名(23.2%)で、そのうち無熱性の発作もみられている人は 18名、残り17名が本当の熱性けいれんだけで、無熱性発作はない人であります。 そのほか、そこにあるように片頭痛とか乗り物酔いということを答えた人が25名、周 産期障害と答えた人が9名おりまして、そのうち6名が現在てんかんとして治療を受け ておりますし、知的障害2名、運動障害1名でした。知的障害だけに○がついている人 は9名で、そのうち現在てんかん8名、運動障害3名。出産時体重は 3,015± 450gで 2,500g以下の人は6名、家族歴で家族内にてんかん患者を持つもの17名、熱性けいれん 26名、片頭痛9名といったようなバックグラウンドでございました。 この人たちは当然症状を出した人たちでありますけれども、どんな状況でテレビを見 ていたかということは、テレビの大きさとして答えていただいた人が98名で24.5± 5.2 インチ、テレビまでの距離は 1.8± 0.9メートルと 101名が答えております。 テレビの見方についても、集中して見ていた者81名、ほかのことをしながら見ていた 者17名。見ていた姿勢も、座って見ていた者84名、寝ころんで見ていた者18名。部屋の 明るさは、普通の明るさ 101名、暗い部屋5名。体調について聞いていますが、普通、 元気だった者86名、疲れていたと答えた者8名、発熱があった者3名、睡眠不足6名、 感冒症状4名、下痢1名。食事との関係を聞いておりますが、テレビ視聴時は食事前だ った者53名、食事をしながら見ていた者16名、既に食事を終わった後だった者38名。 症状の出現状況ですが、後ろの方に図2がございますが、それをごらんいただくと分 かりますが、きちんと答えていただいた 100名中の98名が18時50分、これはテレビで見 ていた人ですね。中には、ビデオで見て起こした人もおりますので、テレビで見ていた 者102名中98名(96.1%)が18時50分で、2名が18時45分前、残り2名は番組終了して 10分以内に症状が出ているということで、その各4つの症例についてはそこに挙げてあ るとおりでございまして、もう既に18時45分までの画面のフラッシュに対応して体がシ ョックを受けたように動かなくなった、40分ごろの強烈なフラッシュで意識を失った ケースとか、45分以前からぼんやりとした表情で下肢に間代性のけいれんが始まって、 50分ごろのときにそれが強くなったケース。 あるいは、番組終了後のケースでは、見終わって風呂の準備をしてコマーシャルを見 ているときに体を硬くする発作があった人、それから2例目は結節性硬化症の8歳の女 性で、視聴中から頭痛がありましたけれども、7時5分ごろに全身の強直間代けいれん が出現したという、そういうケースも中にはございます。 出現した症状は、全症例をまとめますと、視聴中に呈した症状はけいれん発作が87名 (75.7%)、意識減損発作のみの人は13名(11.3%)、視覚発作6名、嘔吐2名、欠神 発作、頭痛が各1名、不定愁訴(疲労感)といったものが4名ございました。発作前後 に視覚症状を呈した人は19.1%でありまして、うち8名は視覚症状から全身性のけいれ ん発作に移行しております。 ビデオで見ていた人で13名の人のうち9名は全般性のけいれん、意識減損発作2名、 その他2名ということで、特に実際の放送、放映を見ていた人と差はありません。 それから、無熱性の発作性症状が既往にある人、いわゆる自発発作のある人ですが、 無熱性発作群と呼んでいますけれども、この人たちでは40名のうち57.5%がけいれん性 の発作で、意識減損発作が17.5%、視覚性発作のみは10%、不定愁訴が5%、あと欠神 発作、嘔吐、各1名。 抗てんかん薬を飲んでいる人が無熱性発作症状を呈した40名のうちで30名、未服薬の 人は10名ありますが、その無熱性発作群について見ますと、そこにありますように、や はり薬を飲んでいるとけいれん発作の割合は低く、意識減損のみで終わったり、視覚発 作だけで終わっている人がいますが、未服薬の無熱性発作群では90%がけいれん発作で ありまして、かなりけいれん性の発作を呈する率が高いことがわかります。その次が、 熱性けいれんが既往にあって、ほかには発作症状がない人は17名でしたが、そのうちけ いれん発作が76.5%、意識減損17.6%、視覚発作1名。全く今まで発作性の症状の既往 のなかった人は58例ございまして、けいれん発作が90%、意識減損発作2名、視覚発作 頭痛、嘔吐、不定愁訴各1名であります。 先ほど申しましたように、既往に乗り物酔いの人が25名おりましたので、その人たち の症状も見ていますが、特に変わりはなく、けいれんが84%、意識減損が8%云々とい うことになっております。 こういったような、ほかにもいろいろあるのですが、問診票からの症状を抽出しまし て、それが一体症状発現に関連する何かリスクファクターといったものがあるのかとい うことで、いろいろな解析検討を行っています。カイ二乗検定、あるいはT検定、分散 分析などを用いておりますが、まず発作性の症状が既往にあるかないかといった症状分 類でもって3群に分けました。つまり、無熱性の発作を持っている群で40名、そのうち 30名がてんかんとして抗てんかん薬を服用している。II群は熱性けいれんの既往のもの で、無熱時にはけいれんがない人で17名、III群はこれまで全く発作性の症状がなかった 人58名。それらの各群で何か特徴があるか見ましたけれども、解析結果というところに 書いてあるように、年齢、視聴環境、性別、出現した症状との関係を検討しましたけれ ども、先ほど述べたとおりですが、III群でけいれん発作の比率が有意に多い。それと その他の指標については何ら有意差はなかったということで、そこにテレビの大きさ、 距離、その他についての表としてデータを出しておきました。 次のページですが、発作性症状以外の既往歴として運動障害、その他出生時低体重な どがありますが、そういう項目別に見ましたが、特に有意の所見はありませんでした。 家族歴でもてんかんとか、熱性けいれん、片頭痛といったような家族歴がございます ので、そういう点からも見ましたが、これもどういう意味があるか分かりませんが、て んかんあるいは熱性けいれんの家族歴がない者でテレビの大きさが大きい傾向が認めら れ、全くそういうものがない人では大きいテレビを見ていたといったような、これは傾 向ですが、表の1として後ろに出してございます。 それで、こういう問診から明らかになったことということでそこに一応考えを述べて いますが、専門医の診察を受ける者は、症状が激越であったか、これまでにもかかりつ けの医者がいて受診しやすかったか、あるいは本人または家族の不安が強かったといっ たような背景を持った者が恐らく専門医を訪れているということだと思いますので、そ こには一定のバイアスがありまして、先ほどの実態調査とは大きな違いがあるというこ とが一つあると思います。 そういう観点から見ますと、症状発現者の特徴としては男性より女性の方が症状出現 者が多い傾向が見られた。しかし、その症状、症状出現時間、視聴環境には差はなかっ た。 無熱性発作の既往のあった人が35.7%おりますが、このうちの73.2%が抗てんか ん薬を服用していた。 発現症状としては、症状が出現した時間は96.1%とほとんどの者が18時50分前後であ るが、そのほかに2名ずつそれ以外の時間、早い時間、遅い時間で出ている。症状はけ いれん性の発作症状が75.7%と最も多く、そのうちの 9.2%は視覚症状を前駆症状とし た者である。そのほかに、意識減損のみ11.3%、嘔吐、頭痛は各1名であります。 その次の3)ですが、主症状の前後に次のような合併症状が見られている。視覚症状が 見られた者が20.7%、頭痛52.7%、眼球偏位65.1%、チアノーゼ56%、もうろう状態 66.7%。 この解析結果ですが、無熱性発作を持っている人、過去に熱性けいれんのあ った人、これまで何ら発作性症状を経験したことのない人の間で、症状のあらわれ方や 年齢、視聴距離などに差がなかった。このことは、少なくとも症状を呈して受診した人 に限って言えば 、III群で映像による症状の発現のしやすさに差はなくて、出現した症 状については過去に発作性症状を一度も経験したことのない人たちにけいれん発作が多 かったという特徴が上げられる。 以上のことから推察されることとして、今回の『ポケットモンスター』38週の映像の ように、賦活効果の強い刺激にさらされると、一定の素因を持っている人は一斉に症状 を呈してしまうものと考えられる。その中には、これまでにも発作性症状を経験したこ とのある者もいれば、過去に一度も発作性の症状を示したことのない人もいるけれども 両群とも強力な賦活刺激のために一様に症状が顕在化してしまうと考えられる。そのた め、今回の対象からは賦活されやすさを症候学的に予知する因子を明らかにすることは 困難であったというのが第1段であります。 その次、8ページからは「神経生理学的検査」と書いてありますが、これまで述べま した直接問診し得た者のうち、検査について同意の得られた人について脳波を指標とし た検査を行いました。 この対象は53症例でありまして、地域としては関東、東海、それから中国、九州であ りまして、当然この委員の分担班の方がおられるところということになります。全部で 53例で、男性25名、女性28名、年齢については先ほどの群とそう差はありません。発作 症状の既往については、自発発作の既往歴がある人が17名、すなわち無熱性発作群であ ります。 そのうち抗てんかん薬を服用中は14名、残り3名は薬を飲んでいない。家族 歴については、てんかんの家族歴が10名、熱性けいれん13名、片頭痛4名です。視聴環 境についても先ほどと余り差はなく、そこに書いてあるとおりでございます。 それから、9ページですが、テレビを見ていたときの部屋の明るさについては、普通 は42名、暗い部屋が1名、不明10名でした。体調、食事については、そこにあるとおり であります。 出現した症状を表にして書いてありますが、全体として見ますと、けいれんが77.4% 意識減損 9.4%、視覚発作 3.8%、頭痛、嘔吐、不定愁訴 9.4%で、これを無熱性発作 の人で見ますと、けいれんが58.8%で、そのほかそこに書いてあるとおりですが、これ についても服薬者14名と非服薬者で見ますと、非服薬者は3名だけですが、すべてけい れん性の発作ですが、服薬していますと意識減損とか視覚発作、あるいは頭痛、嘔吐な どの症状のみにとどまるといっていいと思いますが、熱性けいれんの既往のある人につ いては、62.5%がけいれんであります。 ところが、非発作既往と書いてありますのは今まで一度も発作を起こしたことのない 人ですが、この人たちはけいれんが89.3%と、先ほどの問診を裏書きするように非常に 高いけいれん発作の症状を呈します。なお、3名(10.7%)が頭痛、嘔吐、不定愁訴で した。 このような人について脳波を中心とした検索をしていますが、最初は非光刺激として 安静閉眼、過呼吸、睡眠賦活などの一般脳波で見ますと、突発性の脳波異常を示した者 は49.1%、認めなかった人は50.9%ということになりますが、各群で見ますと、そこの 表に出ておりますように、一般脳波での突発性異常の率は今度は無熱性発作群が非常に 高くて、熱性けんれん群のみは50%、発作症状既往なしは39.3%ということであります その次ですが、今度は光刺激の賦活脳波所見をしました。これはGrass社製の刺激が 39名 、残り14名は日本光電、NECの光刺激装置ということで多少ばらつきがございま すが、これについては後ほど申し上げます。 光刺激で突発性の脳波異常を呈した、いわゆるPPRが出現した者が66%、認めなかった 者が34%、ところが、PPRの出現しなかった者のうちには抗てんかん薬を服用していた者 が4名おりました。各群でそれを見ますと、無熱性の発作群ではPPRの出現率が76.5%、 熱性けいれん群が50%、非発作既往群が64.3%ということになります。 症状との関係が2)の下の方の表でありますが、けいれん発作を呈した41名については PPRは73.2%、意識減損発作60%、視覚発作は2名しかおりませんが1名、嘔吐頭痛も 1名ということでありまして、PPRはけいれん発作でも、意識減損群でも、視覚発作群で も半数以上に見られるということになると思います。 11ページですが、光刺激の強度、周波数ということですが、これはGrassでやった39名 では、刺激強度4で出た人が61.5%、8まで上げて出た人が12.8%ということで、10名 については刺激強度8で見ていますが、PPRは出なかったという人であります。 日本光電、NECの光市刺激装置ではPPRの出現率は42.9%ということで、単純に比較 しますとやはり日本光電、NECの刺激は弱いということになるかと思います。同一症 例でもって両者の刺激装置を使ったものが5名ございまして、やはりそれで見ましても Grass社製ではPPRを認めますが、日本光電では認めないということになります。 刺激の周波数との関係は図4にございますが、PPRが出現したときの周波数を見ますと 3Hzから21Hzまで3Hz刻みで上げていって、発作の危険を避けるためにPPRが出ればやめ るというプロトコールですが、出現した症例はすべて15Hz以下の周波数で出ております 図形刺激ですが、幾何学図形凝視による賦活効果を39名で調べていますが、3名で突 発性脳波異常が出ておりまして、これはいずれも安静脳波で突発異常が認められている 者で、そのうち2例は光刺激でもPPRを認めた、残り1名は光刺激では認めなかったけれ ども幾何学図形の凝視で認められたということであります。 おおよそ以上のようなことでございますが、これについての解析を行いました。症状 とそういう所見との関係を見たもので、12ページに書いてありますが、発作症状の既往 があるかとか、睡眠時、過呼吸賦活を含む一般脳波の異常はどうであるか、それから光 刺激による突発性異常波出現の有無はどうであるかというのを一覧表にして見ますと、 後ろの方に表2が載っておりますのでごらんいただきたいと思いますが、この表2にあ るように、こういう組み合わせになる訳で、無熱性発作がある人の中にも一般脳波で突 発性異常波がある人は11例、ない人は6例、そのうち光刺激賦活によって突発波が起こ る人が9例、それでも起こらない人は2例といったようになりまして、この2例、それ から次の一般脳波で異常波が出ないで光刺激でも出ない2例というのは、両方とも抗て んかん薬服用中でしたが、組み合わせとしては右にありますようにabcからiまでの そういう組み合わせが出来る訳で、これを基にいろいろと検討をしてみた訳であります 12ページに戻りますけれども、発作履歴の上から、これまで無熱時に発作性の症状が ある無熱性発作群と、熱性けいれんだけの熱性けいれん群、それから一度も発作を起こ したことのない非発作既往群といった3群で何か特徴がないかということを見ましたが いずれも特徴はありませんでした。 それでは、脳波で出た所見を基にして分類して見たらどうだろうかということで、そ の(3)に書いてあるように、一般脳波で異常波を認めて光刺激で突発性異常波もある者 先ほどの表2の一番右側でa,e,iというグループをA群として、B群は一般脳波で は異常波はないけれどもPPRが見られた者c,g,kです。その次のC群としては、一般 脳波で異常波を認めたけれどもPPRは出なかったというb,f,j、それからD群として は、その両方の検査でもいずれも突発性異常波を認めなかった者をd,h,lというふ うに分けて、その特徴を検討いたしました。 つまり、これは先ほどの表2の次にある表3でありますが、このABCDという群は そういうふうにして分けたものでありまして、それについての一般脳波異常、光誘発異 常波については今御説明したとおりですが、対象数、年齢、性別、てんかんの有無、熱 性けいれんの有無、けいれん性症状、非けいれん性症状、テレビの距離、大きさ、光刺 激周波数などについて一覧表にしてあります。そこで見た結果ですが、各群で性差、年 齢などの背景には有意な差は見られない。脳波異常を認めず、PPRの出現のないD群とい うのでは、有意に近い距離でテレビを見ていて、出現した症状も不定愁訴、自律神経系 の症状が多かったというところだけがプラスとして出た訳です。 これを基にした考察ですが、神経生理学的検討の示唆するところということで、(1)少 なくとも『ポケットモンスター』を視聴していて、症状を呈した人で、医療機関を訪れ た人について言えば、過去に熱性けいれんがあったか、発作性の疾患を有しているかと いった発作履歴は、光により発作を起こす予測因子にはなり得ない。 (2)一方、主として脳波による神経生理学的検査の所見に基づけば、1)一般脳波で突発 性異常波があり、かつ光刺激で突発性の異常波が出現するような場合には、光によって 発作、それもけいれん発作を引き起こす可能性が高い。2)PPRが出るにもかかわらず、一 般脳波に異常がない場合にはけいれん発作を呈する率は高いが、恐らく症状発現は年齢 依存性が高く、今後強力な光入力を避け、経過を注意深く見守ることで良好な経過をた どるものと思われる。3)PPRは出ないのに、脳波の基礎波に突発性異常波が出現する場合 にはよほど強 力な光刺激、あるいは赤色光によらなければ発作が誘発されることはない と思われるが、自発性の発作の出現する可能性もあり、注意深い経過観察が必要であろ う。4)一般脳波で突発性異常波がなく、PPRも出現しないグループでは不定愁訴や自律神 経系の症状も少なくなく、視覚性の迷路刺激による迷路−自律神経反射、迷路−脊髄反 射などが引き起こされた可能性も否定出来ない。また、比較的近い距離で視聴していた 者が多く、したがって必要以上の視覚刺激が加わった結果、発作症状を出した可能性も ある。 最後のところは、多少スペキュレーションが入ってオーバー・エスティメートのとこ ろもあるかと思いますが、結局はこうやっていろいろ検討してみた結果、言ってみれば 常識的なことかもしれませんが、一般脳波で突発性異常波があるのか、PPRが出るのか その組み合わせの上で物を考えるのが一番いろいろなことを説明するのに説明しやすい といったような結果であります。いろいろ御意見あるかと思いますが、どうぞ。 まず最初に、両方とも同じ対象が含まれている訳ですから共通しておりますが、第1 番の問診のところだけで特に質問、御意見のある方がございましたらお聞きして、その 後は1、2を一緒にして考えたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。 ○黒岩委員 ちょっと教えていただきたいと思いますが、まず年齢と性について見てみますと、先 ほどの実態調査班では健康被害は15歳以上が多くて、男性が多いという傾向でございま した。一方、症例検討班では年齢については12歳がピークと少し若く、女性の方が多い ということでございました。例えば実態調査班で出てきた健康被害というものを、大き くてんかん性のものと非特異的なな非てんかん性のものの2つに仮に分けることが出来 るとするとしましょう。今の2つの班の結果を伺っていると、非特異的な非てんかん性 の健康被害が15歳以上に多く、どちらかというと男の方に多いという、そういう一つの 解釈が出来るのかなというのが私が考えたことです。 それから、2番目に確認したいと思いますのは、4ページを拝見いたしますと、視覚 症状を前後に呈したものが22名、19%にあるということですが、視覚症状から全身性の 痙攣という形で移行するものが8例であったということです。一方4ページの非服薬群 のデータを見てみますと、痙攣発作は90%にあるけれども視覚発作例が全くないという 例というのは、視覚性の発作が本当になかったのか、それとも意識を失ったためによく 覚えていないと申しますか、記憶に残っていないというふうに解釈してよいのか。そし て意識減損発作が10ないし20%ということですが、これは本当に意識がアラートなまま の患者さんの発作がかなり大部分を占めていたというふうに考えてよろしい訳でしょう か、そこら辺のところを確認したいと思います。 3番目でございますが、表の1を拝見いたしますとテレビの大きさと距離と2つのパ ラメーターがありますけれども、物理的なことを考えますと、網膜に投影される視角、 (ビジュアル・アングル)ということを考えると、テレビの大きさ÷距離というような 検証をしてみたらどうかなというふうなコメントでございます。 ○山内班長 年齢分布については先ほど江畑委員にも御質問しましたが、15歳以上とか男性たちの 症状がどういうものであるかといったような点がそういう意味では興味がありますが、 このスタディーと実態調査では本質的に違っていまして、一般の人たちを全部9,000人と かを選んだ場合にはさまざまな自覚症状があると思うのですね。ところが、この我々の スタディーで来た人は、その中で特に症状が出て、医療機関を訪れなければいけなかっ たといったようなそういう人ですから、本質的にどんなふうにそこを重ね合わせていい のか分かりませんが、恐らく江畑班の中のほんの一握りの特殊なグループを検討してい るといったふうなことで、その辺は理解するよりほかないかなと思っています。 ただ、視覚発作については、視覚発作だけでとどまっている場合は、はっきりと症状 としてはとらえられますけれども、視覚発作から発展したというふうに各主治医が判断 するような情報がとれない場合には分かりませんので、急速に視覚症状から全般化した りした場合には恐らくこの中に入ってこないというふうに思われます。 意識減損についても、恐らくアラートな状態でぼーっとしたとか、ある時期意識の減 損、喪失があったというケースだけをこれは恐らく挙げているのだろうと思います。当 然全般過程で意識障害というのはあると思いますが、そういうものは入っていないとい うことになると思います。 テレビの大きさと距離との関係というのは、これは相川先生が分析してくれたのです が、指摘のあった点はどうですか。 ○相川 まだこの分析をしていませんので、今後この検討をやってみたいと思います。 ○高橋委員 前半に関する問題で1つ御質問ですが、初発例、しかも全般性の発作があった方、素 因性という言葉を使われたのですが、例えば家族歴でどうでしょう。いろいろ家族の発 症例だとか既往歴などの含めて詳しい調査を行ったのかどうか。やはり素因性という言 葉を使う場合には、同胞例で検査をなさったかどうか、あるいは両親で行ったかという ふうな、やはりそういうふうな所見が必要だと思うのですが、素因性ということは非常 に微妙なニュアンスを持っているものですから、そのようなエビデンスがあったかどう かということが第1問。 後半の脳波の検査に関して、結論の中に赤色光というふうに書いてあるのですが、脳 波の検査で赤の刺激を行っていないのに赤色光というふうな結論で述べることを、どの ようなエビデンスがあったのかということをお聞きしたいと思います。 ○山内班長 第1段階も恐らく前半ではなくて後半だろうと思うのですが、先ほど言いましたよう に、オーバー・エスティメートして急いで書いた最後のところですから、多少素因とか そういうところは不用意に使っていると思いますので、後で直したいと思いますが、実 際にはきょうだい例とか、それから親に熱性けいれんがあったとか、そういうような問 題が見られるのですが、余り検討して統計的には有意ではないものですからちょっとそ の辺のところの表現を慎重にしたいと思います。 赤色光についてもおっしゃるとおりで、エビデンスがあった訳ではなくて、例えばポ ケモンのことを意識しまして、そういう強い光刺激が入ったりしたときの問題を意識し て書いたということですので、エビデンスはありません。 ○満留委員 男女差の件でちょっとお伺いしたいのですが、症例検討のほとんどがけいれん発作で ございますね。実態調査の方で見ますと、この項目の中で表4の真ん中ごろに書いてあ りますけれども、手や足が震えて云々というところが大方これに当たるかなと思うので すが、ちょうど実態調査ではほとんど男の子で、症例検討では逆転しているという、そ こはいかがでしょうか。 ○山内班長 私もちょっとその辺が引っ掛かって、先ほど江畑委員にも男子のことを聞いたのです が、江畑委員の報告を見ますと、1つには、男性の方がこの映像を見ていた率が高くて 多いのです。そんなことがかかわってきているのか、あるいは男性の方がそういう色の 症状をキャッチしやすいのか、その辺はちょっとよく分りません。 いずれにしても、大きな四千何百人という集団の中の非常に特殊なケースだけを出し ているので、むしろ我々の方が従来言われているようにPPRも出て、そういうことで症状 を呈するような限定された群を引き出しているのだろうというふうに思いますので、こ れまでの報告にむしろ近い所見であって、江畑委員の班のようなああいうやり方でいく とさまざまなものが当然入ってくる訳で、一部には視聴者数といった問題もあるかもし れませんけれども、ほかのファクターもあってああいう差が出てきたのではないかとい うふうに思って、先ほどの報告を聞きました。 ○渡辺委員 5ページですが、解析結果のところで、第III群のけいれん発作の比率が有意に多かっ た。これは結果ですからいいのですけれども、I群では抗てんかん薬を服用している者が かなりある訳ですから、けいれん発作を有したものがIII群で多いという結論は、一部 I群で抗てんかん薬を服薬しているということが関係しているかどうかということを一応 検討して、結果のところにお書きになった方が間違いのもとがないと思いますけれども ○山内班長 ページでもう一度言っていただけますか。 ○渡辺委員 5ページの解析結果のところで、第III群でけいれん発作の比率が有意に多かった、要 するに今まで全く発作症状のない方にけいれんが多くて、むしろ無熱性発作がある者に は少ないということになってしまいますけれども、そのファクターの中に抗てんかん薬 を4分の3で飲んでいますので、それが関与している可能性がかなり高いということで すね。 ○山内班長 そのとおりだと思います。どうもありがとうございました。 ○三浦委員 専門医の問診のところに受診時の診断とございますね、てんかんだったとか。これは なかなかそのときだけでは分らないと思うのですけれども、この専門医の診断と、先生 が最後におまとめになった結論と大体合うのですか。 ○山内班長 これは微妙な問題でありまして、読み取るのがなかなか難しいケースもございますし しかし私たちとしても見ている訳ではありませんので、なるべくは主治医の意見を尊重 するという方針であります。 ○八木委員 4ページと、それから結論のところに視覚症状を前駆症状ということで来た人と、そ れから視覚症状だけで受診した人というのはあるのですか。 ○山内班長 ございます。受診したというか、そこでもって聞いたら視覚症状だけだったという。 ○八木委員 あるいは救急車とか、実際に診療に来た人。 ○山内班長 実際には、例えば救急車に乗って搬送された人だけではない訳です。すでに医師にか かった人もいるものですから、恐らくそういうケースでは症状があったときに医師が聞 いたら、視覚症状みたいなことで終わっていることが確かめられたのではないかと思う のです。 ○八木委員 それの主な中身はどうでしょうか。例えば視盲症状だとか、そういうのがあって来て いるのかという。 ○相川 小さなお子さんから問診したのでかなりあいまいな返事が多いのですが、視覚症状は 例えばまぶしいとか、目がちかちかするという羞明感、それから目の前が真っ白になる とか、よく見えなくなったとか、あるいは色が変に見えるというふうな視力低下に関す る症状、それから目が動かせないとか、目が寄ってしまったという眼球偏位に関する症 状と、大きく分けて3つあります。そのうち、眼球偏位はむしろけいれんの前駆症状の パーセンテージが高いと思います。目がちかちかしたり、羞明感を訴えたりという方が それ単独のみで来ている方が7名いるということです。 ○山内班長 それでは、2番目の方も含めて御意見を伺いたいと思います。 ○岡委員 私どもは、この53例の脳波検査を行ったうちの19例を提出しております。その19例が 私どもの方では極めて明確な2群に分かれる訳ですが、それはけいれんのきた症例は、 その19例中13例ですが、その13例中12例、92.3%は脳波上の光過敏性を示した訳です。 けいれんのきた13例のうち光過敏性を脳波上示さなかったのは1例抜けただけですから 随分高率に出る訳です。一方、けいれん以外の気分が悪いとか、もろもろのことを起こ した人は6例脳波を調べておりますが、その6例のうち1例、16.7%しか光過敏性は出 ませんから、この間のポケモンでけいれんのきた人はほとんど光過敏性を持っている人 にくるのだなと思った訳です。 それから、けいれん以外の1人だけ光過敏性を示したという人は、実は頭痛とともに コンフュージョンがきております。したがって、私ども思いましたのは、けいれんもし くは意識障害がくるような事例は光過敏性ではなかったろうか、それ以外の頭痛だけと か、気分が悪くなっただけとか、嘔吐しただけとかいうのでは光過敏性によらないので はなかろうかというふうに思いましたが、今回、全体の集計からの検討ではそういう結 論が出ていなかったものですから、ちょっと申し添えました。 ○山内班長 基本的には私も同じような考えを持っていますが、実際には10ページの下にあります ように、PPRがマイナスはけいれん発作群では26.8%あるということで、多少全体で見ま すと、この辺の割合も高くなってきて、岡委員おっしゃるようなきれいな格好にはなら なくて、いろいろなファクターが入っているのではないかというふうに思っています。 でも、その意味をみていきますと、岡委員がおっしゃるようなことにかなり近いのでは ないかと思っています。 ○渡辺委員 10ページ、出現症状とPPRの関連というところで、視聴中の出現症状とPPRあるなしの 表はあるのですけれども、ここのところに一般脳波の突発性異常がプラスとマイナスで それぞれの内訳が分かればありがたいのですけれども。 ○山内班長 先ほどお示ししました表2のところを見ていただきますと、その辺の関係が分りまし て、無熱性けいれんでは一般脳波の異常がありが11で、なしが6。 ○渡辺委員 これはしかしIII群ですから。 ○山内班長 表3を見ていただければいいのですか。 ○渡辺委員 けいれん、非けいれんしかないのですけれども。例えば、意識減損、視覚発作、不定 愁訴、頭痛という細かいところですね、そこで何かかかわりはないでしょうか。 ○山内班長 この表に一般脳波の所見をつけたらどうかと、そういうことですね。 ○渡辺委員 はいそうです。 ○山内班長 これはやってあります。やってありますけれども、意味あるような形にならなかった のでこれに出ていないと思います。いっぱいいろいろな表をつくったものですから、勿 論出せますけれども、余り煩雑になって意味がないものが出てもしようがないのでとめ てあります。 ○高橋委員 先ほど来のいろいろ議論をお聞きしていて私なりに感じるのは、今回のこの光感受性 発作というのは、従来の疾患モデルを念頭に置いて考えると、いわゆる光でもってすぐ 全般性の発作を起こす群、これは光過敏てんかんの代表例だと思います。 あともう一つは、光刺激があっても後頭部にちょっと微妙な脳波所見が出て、ですが 主症状は目の痛みだとか、視覚的な症状だとかを訴える後頭葉てんかんで視覚性の発作 を持つグループ、その2つを私は念頭に置いて考えることが出来るのではないかなとい うふうに思っていたのですが、やはり多彩な症状、先ほど来、脳波所見が報告されてい るのですが、一応そういうふうな従来の疾患モデルを念頭に置いて考えるということも 重要なのではないかなということを思って追加発言いたしました。 ○山内班長 これがそれほど実際にはシンプルではないのですね。薬を飲んでいるグループとか、 そうでないとかというので恐らく違うのだろうと思うのですが、高橋委員おっしゃるよ うに、そういう考えとしては持って見ているのですが、きれいな形でいかないというの が実態みたいです。 ○渡辺委員 それから、13ページの結論に近いところで、先生はオーバーエスティメーションとお っしゃいましたが、やはり結論の4のところでPPRの出現しないグループでは不定愁訴や 自律神経系の症状も少なくなくと、視覚性の迷路刺激による迷路性云々とありますね。 これはやはりエビデンスがない訳ですから、結論出来ないというふうにされた方がいい のではないか。つまり視覚性の迷路刺激によるというエビデンスはない訳です。 こういった自律神経症状というのは、例えば後頭葉発作という観点で考えても、例え ば後頭葉発作の症状でも視覚発作というよりはむしろ嘔吐とか頭痛とか、自律神経症状 が強いI群があることは最近分かってきている訳ですけれども、そういった症例なども考 慮に入れますと、PPRが出ていないから直ちにこれは迷路性のものもあるのではないかと いうふうに言うと、少し言い過ぎになってしまうので、これはPPRと言いましても通常の 脳波検査ですね。ですから、今回あった映像の刺激とはまた違う形のものですので、む しろ通常の日常のルーティンで行われている視覚刺激によってPPRはつかまるものと、つ かまらないものがあると思うのですね。 そういった観点からしますと、やはり高橋委員もおっしゃっているように低輝度の赤 ダークレッドということがむしろ刺激としては強いのだと。今回もGrassの4と8でむし ろ4の方が割合が高く出ているということもある訳ですから、そういった観点からしま すと、通常のルーティンの脳波でPPRが出ていない、あるいは一般脳波が出ていないから 直ちに迷路性の刺激だということは非常に難しいので、先生も御指摘されていますけれ ども、余りこういうところに議論を持っていかないと、少しサイエンティフィックに考 えて結論出来ないというふうに書かれた方がいいのではないかと。 ○山内班長 1つ訂正は、Grassは4が多かったのではなくて、4から上げていくものですから、4 で出たらもう8になかったということです。 ○渡辺委員 分かりました。 ○山内班長 それで、私もこれをやっていて、基本的には同じ映像でもってやった訳ではないので そこには多少の齟齬がもちろんあると思います。ひとつの刺激方法によるという限定の 中で考えなければいけないと思っています。 ただ、いろいろな刺激をやったらこのPPRが出るようなものもこの中にあるだろうとい うことも考えた上でなのですが、どうしても説明のつかない自律神経系の症状があるも のですから、実はうちの平衡神経科の教授に相談に行って見てもらったのです。そした ら、迷路−脊髄反射とか迷路−自律神経反射というのがあって、昔から視覚刺激で眼球 運動が誘発されて脳や迷路の機能が賦活されることがあるということでした。 それで、本当だったらちょっとその辺の検討も我々としては出来ればと思ったのです が時間がないので、これは課題としてそういうことの示唆はしておいた方がいいのでは ないかといったふうに思った訳ですから。 ○満留委員 10ページのところに関しましてちょっとお聞きいたしますが、Grass社の刺激装置で 39名が行われておりますが、PPRがGrass社でマイナスだったのは何例かございましたで しょうか。 ○山内班長 ございます。11ページの光刺激の強度並びに周波数というところですが、残り10名の 25.6%は刺激強度8でもPPRはマイナスということです。この辺が先ほど渡辺委員 おっ しゃったように、こういう刺激ではマイナスだったという人が、もしかしたらほかの刺 激では出るかもしれないとかといったような意味合いはありますけれども、こういう条 件ではこうだったという意味です。 ○高橋委員 先ほどの刺激の問題に関して、私は出来るだけ今回の検査した方法内でのデータとい うことで考えたいと思ったのですが、一番今回の問題でのキーポイントというのは赤が 関与している。それでの赤の刺激、しかも低輝度の刺激だということが恐らく後ほど触 れられるかと思うのですが。もう一つそのことと、単に静止図形で見るのではなくて、 それに点滅を加えると、私の今までの経験ではGrassの機械よりもっと光過敏性の検出に すぐれているものですから、そのような検査も今後必要でないかというふうなこと、私 の今までのデータのことを強く言うようで失礼なのですけれども、その辺今回もし確か めることが出来なかったというのであれば、今後に向けてその辺先ほどの迷路反射のこ とを含めて、将来の課題として述べておくことが大事でないかなというふうに思います が。 ○山内班長 赤も一応プロトコールにあったのですが、これは高橋委員秘蔵の機種ですからなかな かみんなで使えなくて、後から手に入るということでほとんど出来なかったのですね。 それで、うちで1例だけやって、確かに赤だけで出たというケースもあるので、パーセ ントとしてどのくらいか分りませんけれども、そういうケースもあるかと思います。で すから、これはいろいろな刺激方法を工夫すれば、またそれに特殊な反応をするという ケースはあるかと思いますが、今回はそこまでいかなかったということで、可能性とし ては取っておくということになるかもしれません。おっしゃるとおりです。 ほかにいかがでしょうか。 ○八木委員 もう一遍確認しておきたいのですが、視覚症状に非常にこだわりますけれども、脳波 上で後頭部に限局性のスパイクが出たケースというのは、なかったというふうに考えて よろしいのですか。 ○相川 脳波のフォーカスなどに関してはまだ分析が未施行なので申し訳ありません。 ○山内班長 完成版にその辺も入れることにします。 それでは、次に移らせていただきます。3番目の基礎検討班の黒岩委員、お願いしま す。 ○黒岩委員 基礎検討班の黒岩でございます。私どもの検討班におけるスタディーは3人の班員に よって分担されました。まず、速報版資料7−1をごらんいただきたいと思います。 速報版にございますように、A、B、Cというふうにまず3つに分けておりますが、 Aを担当しました私は主に視覚誘発電位の波形について調査いたしました。Bの杉下班 員は、ファンクショナルMRIを用いて検討をいたしました。Cでございますが、飛松班員 は正常例並びに発作症例両方につきまして脳波、VEP、脳磁図と広い範囲でスタディーを 行いました。この発表におきましては、まず私が全体のまとめ、それからAの部分に関 する詳しい説明をいたしまして、その後、B、Cにつきまして詳細を杉下班員、飛松班 員に説明していただく手順といたしたいと思います。 まず、全体の結論といいますか、結果のサマリーから申し上げたいと思いますが、A の私のスタディーから得られたサマリーといたしましては、18時50分に放映された、 赤・赤・赤・青・青刺激による光刺激は、健康人において灰色刺激よりも同期性の高い VEPを発生し、大脳を広範囲に興奮させる効果があるであろうという結論が示唆される結 果が得られました。 それから、Bの杉下班員のスタディーから得られた知見といたしましては、2つの重 要な点があるかと思いますが、単なる青・赤刺激よりも複雑な複合刺激は後頭葉内側面 だけではなくて、色覚中枢をも賦活するということが1つと、あと1Hzよりも高い刺激 の方がより後頭葉の内側面の興奮を強く引き起こすという、この2つのことが重要かと 思います。 それから、3番目の飛松班員のスタディーからの重要なポイントといたしましては、 ポケモン症例におけるスタディーを行いましたところ、実際のアニメ画像が棘除波を誘 発する記録が得られましたが、同じ周波数の灰・黒刺激、灰色と黒の混合による12Hzの 刺激ではほとんどスパイクが認められなかったということが第1点でございます。  それから、正常人におけるVEPのスタディーを周波数解析でトータルパワーというパラ メータ(指標)で調べましたところ、部屋の照明、画面の距離は正常人においてVEPに必 ずしも有意な影響を与えなかったということ。それから、刺激の周波数もトータルパ ワーの振幅に関しては正常においては大きな影響をもたらさなかったということでござ います。 これが全体のサマリーでございますが、次に私のAの部分につきまして詳しく御説明 をさせていただきます。 それでは、スライドをお願いいたします。 (スライド) テレビとシネマの変換に2-3 pull down system を用いるわけですが、テレビにおいて くりかえされる赤・赤・赤・青・青、赤・赤・赤・青・青という規則的な順序が重要な ポイントです。これからテレビでお見せいたしますが、60分の1秒の1フィールドを1 秒に変換したスローモーション画像を記録いたしました。 (スライド) どうして12Hzかということでございますが、赤・赤・赤・青・青の1ユニットだから です。これが実際に60分の1秒を1秒に変換した1フィールドごとの画像です。赤・赤・ 赤・青・青がくりかえされ、1フィールド60分の1秒を1秒とした、すなわち60倍のス ローモーションでございます。赤・赤・赤・青・青のユニットが約50回くりかえされ まして、トータルとして4秒間続いた訳でございます。 そして、これが実際のノーマル・スピードによる画像でございます。これが私どもの つくった実際の視覚刺激でございまして、これが1Hzの青・赤刺激でございます。レス トとして灰色の刺激を使っております。この音が出ている音声信号はトリガー信号とし て使われます。これが2Hz刺激、次に5Hz刺激、次が10Hz刺激、次が15Hz刺激というこ とになります。 (スライド) 先ほど、ビデオで示しました1Hz刺激のシェーマを示します。こからここまでが1秒 間でございます。2Hz刺激、5Hz刺激、10Hz刺激、15Hz刺激のシェーマを続けて示しま す。一番先頭のところにトリガー信号を音声信号で入れております。 (スライド) これがコントロールとした灰色刺激のシェーマでございまして、先ほどの青・赤の代 わりに灰色を挿入したということでございます。また、灰色・黒・灰色・黒という灰・ 黒刺激も作成いたしました。 (スライド) それで、実際にまずOZで記録した1チャンネルのVEPを見てみます。分析時間は 300 msecでありますが、青・赤刺激と灰色刺激を比べますとVEPの波形に大きな差がございま す。 (スライド) これは2Hz刺激でございますが、青・赤刺激と灰色刺激を比べますとOZでの1チャン ネルのVEP反応の波形そのものに大きな差がございます。 (スライド) 5Hz刺激になりますと、長潜時のVEP成分でも灰色刺激と青・赤刺激の間で波形の差が より顕著となってまいります。 (スライド) 15Hz刺激になりますと、定常状態VEPとなり、VEPの反応は少し抑制されますが、他の 周波数と同様に波形の差が出ております。 (スライド) これが実際に波形を重ね合わせたものでございます。上が青・赤刺激、下が灰色刺激 のOZでの1チャンネル記録でございますが、1Hz、2Hz、5Hz、10Hz、15Hz、このよう に刺激周波数を変えても周波数の影響はそれほどございません。波長の違いによるVEP波 形の違いが同波数の影響より目立つ訳でございます。 (スライド) 以上はOZの1チャンネルでの検討でしたが、FZ、CZ、OZ9.3チャンネルで見てみますと 上の方が青・赤刺激で、下が灰色刺激です。先ほど示したようにOZでのVEPは両方ともよ く出ておりますが、青・赤刺激では FZ、CZでもVEPが出ております。それに対しまして 灰色刺激では前頭部、FZ、CZでは反応がないということで、ここが大きな差であろうと 思われます。OZにおける波形の差のみならず、FZ、CZにおける反応が灰色刺激では silentであるのに対して、青・赤刺激ではvepの反応があるということでございます。 (スライド) これはポケモンの実際の実像刺激を1秒間与えたときのVEPでございまして、OZでこの ようなVEPが出ますが、F3、FZ、CZ、PZにおいてもかなり反応が活発に見られます。ダブ ルトレーシングで再現性は確認しておりますが、持続時間20msecぐらいのシャープな波 が全汎性に記録されております。 (スライド) そこで、青赤刺激ではOZだけではなくて、CZ、FZでもVEPが出てくるということで、こ のような32チャンネルの電極をつけまして、これでもって脳波の分布を調べてみました (スライド) そういたしますと、青・赤刺激におきましては32チャンネルの反応を全部重ね合わせ たものでございますが、非常に波形が一致しているのですね。頭皮上の32チャンネルの 反応がほとんどぴったり同期しているのであります。ということから、青・赤刺激では 頭皮上32チャンネルの反応が脳の比較的深部からシンクロナスに出ているというふうに 考えられます。 (スライド) ところが、灰色刺激を行いますと32チャンネルの反応が非常にばらつきまして、余り シンクロナスでないということであります。このことから言えますことは、灰色刺激の 場合には後頭葉に限局した興奮性の反応であるけれども、青・赤刺激の場合には頭皮上 全体に広がるディフューズな反応であるということが予想されます。 (スライド) そういうことで、脳トポグラフィーを見てみますと、青・赤刺激の120msec前後のとこ ろの陰性ピークを見てみますと、1Hz刺激でも2Hz刺激でも5Hz刺激でも、ディフュー ズな反応のVEPでございまして、余り限局性がないのであります。 (スライド) ところが、灰色刺激におきましては、このように陰性ピークが後頭葉に限局しており まして、非常に限局した狭いところの興奮性の反応であろうということです。まとめる と灰色刺激の場合には後頭葉に限局した狭い反応、狭くてしかも比較的浅いところの皮 質の反応と思われますが、青・赤刺激においてはディフューズで、どちらかというと深 いところから出てくる反応ではないかというふうな推論ができるわけです。 (スライド) 実際は、2つのフィールドから1つのフレームがつくられる訳でありますが、この組 み合わせとしまして赤・青でまだらなものが出来る訳であります。赤・赤で赤のフレー ムとか、あるいは青・赤で青・赤のまだらなフレームとか、いろいろな組み合わせで多 様な視覚刺激をつくってみまして検討いたしました。 これで私のスライドは終わりですが、ライトをお願いします。 実際のB4版の資料7−2をごらんいただきたいと思うのでございますが、このVEPか ら得られた所見を簡単に申し上げますと、まず、1チャンネル記録をしましたところ、 1Hzの赤刺激と青刺激と灰刺激を比べますと、どうも赤での反応が最も振幅が高いとい うことです。それから、青・赤と灰色を比べますと、先ほどスライドでも見ましたよう に非常にVEPの波形が異なっています。 このプリントでは左と右と2つ図がありますが 2人の異なる健常被検者のものを並べております。 それから、青・赤刺激でその周波数を変えてみた訳でございますが、1Hz、2Hz、 5Hz、10Hz、15Hzと、周波数が上がるにつれまして一過性の反応が抑制されて、むしろ 安定したステディーステイト型の反応に移行する傾向がございますが、基本的にそれほ ど大きな差が周波数間においてはございません。 次のページへいきますと、灰色刺激でもって周波数を変えるとどうなるかと申します と、やはり周波数を変えますと、周波数を上げていくとステディーステイト型の少し複 雑な波形を示してまいります。 それから、同じ15Hz刺激でもって青・赤刺激と灰・黒刺激を比べてみますとVEPの波形 に少し差があるということであります。反応のフェーズが少し異なるようでございます が、振幅にはそれほど差がございません。 次に赤・青、それから混色のマジェンダ、それから青・赤(これはいずれも刺激は全 部で15分の1秒でございますが)これらの刺激でもってVEPを比べてみますと、青が先行 する青・赤刺激になりますと、どうも青の方がVEPを抑制する傾向があるようでございま す。 次に赤・赤、赤・青、更に赤・青・赤・青の比較です。赤・青・赤・青というのはそ れぞれ60分の1秒のフィールドからなり、まだらな色調のものがくる訳でございます。 赤・青・赤・青になりますと、当然それぞれに対するVEPが出てまいりまして、赤・青・ 赤・青刺激は単なる赤・赤刺激よりも持続時間の長い、複雑なVEP波形を誘発してまいり ます。 それから、次に赤・赤、青・赤、青・赤・青・赤の比較ですが、青が先行するように なりますと、どうも全体の反応を抑制するようでございます。 それから、赤と黄色と緑色など、赤以外の色と比べてみた訳でございます。青・赤、 青・黄、青・緑の比較ですが、VEP反応の陰性ピークを見てみますと、どうも赤が最も ピークの潜時が早いような印象で、波形がやはり違っております。 先ほどスライドでもお示ししましたが、1チャンネルではなくて3チャンネルにいた しますと、どうも青/赤刺激の場合には、OZだけではなくてFZ、CZにも反応が出てくると 特に、赤/青/赤/青刺激を行いますと、FZ、CZからかなり大きな反応が出てくるようでご ざいます。 それから、6チャンネルでポケモンVEPをとりますと、非常にシャープで持続時間30 msecぐらいの棘波様の波がFZ、CZ、PZに出てくるということでございました。 以上でございますが、続きまして、杉下班員、よろしくお願いいたします。 ○杉下委員 それでは、始めさせていただきます。 私どもは最初に4色の刺激を行いました。と申しますのは、ポケモンの本当の刺激で は 最初に4色の刺激が出て、それから青−赤刺激になっておりますので、これを最初 にやりました。 (スライド) コンビネーションはこれでございます。白・赤、青・黒・赤、それから青・赤でござ います。これが10Hzと15Hzが混合になっているというちょっと複雑な刺激でございます 輝度はこのようなもの、赤は少し輝度が高い、こういう刺激であります。 (スライド) 条件ですが、1.5メートルで行いました。撮像条件ですが、複雑なので省きます。 (スライド) 得られたのがこういう反応です。後頭葉の内側面に非常に広範な活動が見られます。 (スライド) これがいわゆる色覚中枢で、V4と言われる部位ですが、V4も賦活されております。私 どもの経験なのですが、単一刺激でこれほど後頭葉が刺激されるものはなかなかないと 思います。例えば、コマーシャルなどを見せますと、後頭葉はこのようには光りません (スライド) 次は、もっとシンプルにして青・赤で12Hzの刺激を行いました。 (スライド) これは同じく後頭葉の内側面に両側にわたって大きな活動が見られますけれども、色 覚中枢の活動は少しです。 (スライド) 3番目に 7.5Hzを行いました。と申しますのは、これを測定するときに電磁波が出る とまずいので、普通のプロジェクターやテレビが使えない訳です。それで、私どもは液 晶のプロジェクターを使っておりまして、そうすると応答速度が遅いものですから、 12Hzや15Hzを出しても大体 5.6Hzぐらいになるようなのです。それで、なるべくHzの高 いものをつくろうと思いまして、 7.5Hzだと割に応答についていけるので、そのような 刺激をつくりました。液晶を使う限りはこれが目いっぱいのようでございます。 (スライド) 同じように、後頭葉の内側面に 7.5Hzでも大きな反応が得られます。V4の活動は少し です。 (スライド) 次に15Hz、実際には 5から6Hzぐらいに減ってしまいますが、 5〜6Hzと、それから 1Hzの比較を行いました。そして引き算をいたしました。 (スライド) 背景には灰色の同じ輝度の光を出している訳なのですが、15Hzの方が刺激が強いよう でこのような反応が見られます。V4の活動はみられません。 (スライド) 以上でありますが、本研究はレッスンも少なく、液晶プロジェクターを使用するため に、切りかえ刺激の周波数が 7.5Hzを超えないという制限がございますけれども、先ほ ど述べました3点について言えると思います。すなわち、1つは、複合刺激を出すと色 の中枢が刺激されるということと、それから 7.5Hz以上の刺激を出すと後頭葉内側面が かなり活動すると、それから1Hzと15Hzなど、7.5Hz当たりを比べればもちろんHzの高い ものの方がずっと刺激が高いという、そういう結果でございます。 以上です。 ○黒岩委員 ありがとうございました。 それでは、引き続きまして飛松班員よろしくお願いいたします。 ○飛松委員 それではスライドをお願いします。 (スライド) 私どもは、視覚誘発電位、脳波、脳磁図を、健常若年者とポケモン症例で福大病院小 児科の満留教授と、友田先生の御協力を得まして検査することが出来ましたので、その 知見を御報告させていただきます。 (スライド) それでは、まず今回の実際に使われた画像がどういった刺激であるかということを調 べるために、視覚誘発電位に対する刺激頻度の影響を検討いたしました。健常若年者を 使いましてVEPを記録しました。視覚刺激としては、青・赤刺激、灰・黒刺激、それから 格子縞、それと実際のアニメ画像を使いまして、刺激頻度が3、6、8.57、10、12、15 Hzを使いました。格子縞の場合は刺激をニューロパック8で作成しましたので、9Hzと 13Hzになっております。 (スライド) これは1例の典型的なVEPですが、青・赤刺激を使いまして、3Hz、6Hz、8.57Hz、10 Hz、 12Hz、実際のアニメ画像、15Hzというふうに刺激を呈示して、1秒間の誘発電位を 50回加算平均しますと、こういうふうに波が融合してまいります。これは先ほど黒岩委 員が言われましたように、ステディー・ステイト型という表現をいたしますが、実際に ある周期を持った反応でありますので、それをフーリエ分析しますと、例えば12Hz刺激 だと12Hzの成分、その2倍の24Hz、その3倍の36Hzというふうに反応が出てまいります これらの成分の振幅(パワー)を求めまして、この1、2、3倍の成分はどの刺激でも 見られますので、それをトータルパワーとして換算しました。 (スライド) 他の視覚刺激と比較しますと、パターン刺激はこういった高頻度刺激になると振幅は 小さくなる傾向はありますが、実際に青・赤刺激と灰・黒刺激を比べるとさほど振幅に は変わりありません。 そこで、4名ですが、時間周波数に対する振幅、トータルパワーを表しますと、青・ 赤刺激で10Hzにピークが出てくるのですが、何せ振幅のバリエーションが大きくて有意 差が出ませんでした。灰・黒刺激では12Hzにピークが出てきますが、これもバリエーシ ョンが大きくて統計学的に有意差は出ません。パターン刺激でも同様です。 (スライド) ということで、要するに刺激によって余り振幅、トータルパワーは変わらなかった訳 ですが、それはどういうことかということで、ちょっと文献を検討いたしますと、EZG Jaurnal(1988年)にポーラスという人たちが黄色刺激、緑刺激、青刺激、赤刺激、それ から白色光、それでVEPを記録しますと、彼らの見解、これは10人のサブジェクトの平均 値ですが、一番高いところはミッドライン、後頭部正中部の電位ですが、赤刺激とか青 刺激、緑刺激では大体1,987msecの陰性が出てくる。 ところが、白色刺激ではそれが出 なくて、むしろ1,000m〜100msecぐらいの陽性が出る。波形の形が変わってくるという ことを報告しておりますが、振幅は余り変わらないということを報告しております。 (スライド) 次に、部屋の照明と画面との距離が誘発電位に及ぼす影響ということで、大学生を使 いましてVEPを記録しました。実際のアニメ画像を使いまして、部屋の照明をつけた場合 と消した場合、画面との距離が1メートルと2メートル。視角にしますと、1メートル の場合に大体視野23×17度ぐらい、部屋の照明が明るい場合、テレビ画面の輝度は大体 120キャンデラぐらいです。 (スライド) そういう状態で、明るい状態で一番距離が短い、Onの1m、Offの1m、Onの2m、Offの 2mというふうにしてVEPのトータルパワーを出しますと、予測されたのは一番暗いとこ ろで距離が近いところ、ここが一番振幅が大きくなるかなと思ったのですが、予想に反 して全然変わらないという結果が得られました。 (スライド) ではなぜかということを考えますと、一応こういった青・赤刺激、色刺激というのは 網膜の錐体(コーン)を刺激しております。コーンの分布というのは大体中心窩(視野 5度)に非常に密に分布しております。要するに、視覚刺激の距離が変わろうが、この コーンの部位をいつも刺激している訳です。17×23、あるいは2メートルでも8×12度 ぐらいになりますので、十分刺激されている。ですから、反応は変わらないだろう。そ れから、部屋を暗くしても、画面が非常に明るいためにコーンは既に明順応しておりま して反応はあまり変わらないだろうと考えました。 (スライド) 次に、ポケモン発作3例において脳波とVEPを検討しました。対象としまして、健常小 児とポケモン発作例で2例は未治療、1例はバルプロサン投与、それからテレビゲーム てんかんを2例、1例はバルプロサンが投与されていました。兄弟例でありまして、1 例はポケモン発作である病院でバルプロサンを投与された。もう1人はお兄さんで、以 前にテレビゲームてんかんを起こしているのでバルプロサンを投与された、その同胞例 を検討いたしました。脳波とVEPを同時記録、視覚刺激はアニメ画像を使いまして、それ とのコントロールということで、灰・黒刺激を使いました。発作を起こさないようにと いうことで、明るい部屋で、画面との距離は 1.3mにしました。その理由は福大病院で検 査しましたので、テレビ画面が小ささかったためです。私どもは大きなビデオ画面を使 いましたので、その視角に相当する 1.3mの距離で記録いたしました。 (スライド) これが1例目ですが、この例はポケモン発作例で未治療例です。ここでポケモン画像 が 出ていまして、1秒間提示されて5秒間休止します。1回目、2回目、3回目と提 示しまして、4回目に全般的な棘除波の発作波が出現いたします。5回目にはなくて、 6、7、8、9と頻発しますので、10回目で検査を打ち切りました。この例はGrass社の 刺激頻度9Hzで一応PPRが出ております。しかし、これほど頻発していなかったと聞いて おります。大事なことは、刺激が出て、大体600〜700msecで発作が出ているということ で、非常に常間時に出ております。 (スライド) ところが、灰・黒の12Hz刺激をいたしますと、ここで1秒間刺激提示して1秒間Offに なりますが、大体6回目ぐらいですか、後頭部に怪しい鋭除波が出ますが、ほとんど出 ません。 (スライド) 先ほどの症例と、それから他の症例で発作波が出た症例のVEPを記録しましたが、大き さ自体は特に変わっておりません。加算回数は10回ですので、これはちょっと分りませ んが、50回刺激出来た例ではどちらかというと、本当は12Hzにピークが出てくるのです が、この例では10Hzにピークが出てしまって波形が非常に乱れています。なぜか分りま せんが、灰・黒刺激だと非常にはっきりと12Hzのところにピークが出てきます。しかし VEPの振幅が大きいという証拠は得られませんでした。 この例は未治療例でやはりポケモンのアニメ画像を見せると発作波が頻発いたします が、灰・黒刺激ではほとんど出ません。大体50回見せて22回発作波が出ました。灰・黒 刺激では1回怪しいのが出ていました。それから、バルプロサンを飲ませた例では、ア ニメ画像でもやはり50回中20回ほど発作が出ましたが、灰・黒刺激では1回ぐらいしか 出ておりません。それからGrass社の刺激では、確か9Hzでちょっと出たと記憶しており ます。いずれにしても、ポケモンの画像、12Hzという刺激が非常にPPRを誘発している、 しかしVEPは余り変わらないという結果が得られました。 最後に、もし症例で協力出来る例があったら脳磁図を測定し、その時の発作波のソー ス、電流源を取ろうかと思ったのですが、なかなか時間的な余裕がなくできませんでし た。健常者1名で実際に脳滋図を記録しますと、どうしても半側視野ではなくて両側の 視野を刺激して、両方の後頭葉が活性化されるということで、通常の若い人では電流双 極子パターンがなくて、結局推定出来ませんでした。それから非常に視覚刺激が暗くな るという問題点がありまして、今回これ以上の検索は出来ませんでした。 ということで、Hardingさんが『Nature medicine』に実際のポケモン画像の赤の吸光 度が大体 640であって、非常に赤のコーンを選択的に刺激するということで、赤が非常 に危険であるということを書いておるのですが、実際によく吸光度カーブを見ますと、 赤のコーンがセンシティブなのはもう少し短い波長レベルなのですね。ということで、 単純に赤だけでは説明つかない。それから、アニメ画像の刺激は青と赤であるというこ とで、こちらの青の鉢体もやはり重要ではないか。 (スライド) リビングストーンとヒューペルという有名な生理学者の生理学的な実験がございます マカクザルの一次視覚野の細胞の反応を取りますと、一次視覚野の細胞の反応性という のは、二重対立色型と言いまして、例えばこのスポットのところに赤の光が出ると反応 する、しかし緑が点滅すると反応が抑制される。逆に、赤が消えた時に反応するけれど も、青が消えたときには反応が抑制されると、そういうふうに非常に二重対立色型とい うのを呈しております。そういう場合に従来の真ん中にぽんと青い刺激を出すと反応が 出るけれども、赤だけ、ここは赤のマイナスのときにしか反応しないので赤を消すと出 てくる。しかし、赤を全体に照らすと逆に反応が抑制されると、そういう複雑な構造を とっている訳ですが、そういったものに対してこういった赤と青の刺激を見せて、この 刺激画面に赤の波長だけを照らしますとこの青が見えにくくなります。暗赤色になりま すので、そういうふうにすると反応が出ない。それから、青い色を点滅させると赤がマ スクされますので、やっぱり出ない。しかし、赤と青を非常に鮮やかに点滅させますと 非常に反応が上がるということから、やはり赤だけではなくて、赤と青は神経細胞の中 では拮抗関係になくて、むしろ相乗関係にありますので、こういった赤と青の刺激があ ると視覚野の細胞が興奮して、その興奮が恐らく視覚前野を経由して側頭葉あるいは頭 頂葉にいって、あるいは網膜からダイレクトに上丘にいく経路もありますので、何かそ ういうものを含めてポケモンの発作が起こったのではないかと考えております。 (スライド) ということで、私はてんかんを専門にやってきた訳ではありませんから、文献を検討 して、今回のスタディーを考え合わせますと、光過敏性てんかんには恐らく4つのファ クターがあるのではないかと思っておりまして、1つは、光過敏性、フォトセンシティ ビティー、これは光過敏性というよりもモノクロマティック、単色に対する光過敏性。 もう一つはテレビてんかんでよく見られる図形過敏性、パターン・センシィビティー それからポケモン画像に見られる色過敏性、クロマティック・センシィビティー。こ の場合は赤でも青でも、要するに対立がない、拮抗関係のない色を使うとより賦活され るのではないか。 それからもう一つ大事なことは、時間周波数依存性ではないか。テントポラルフリー ケソーシー・ディペンデンスがあって、それは恐らくGrass社の光刺激でも9とか、12と か、15Hzで非常に PPRが誘発されますが、ポケモン画像も12Hzであるということから、 こういった4つの要素があって、光過敏性てんかんが起こっているのではないかと考え ます。特に、ポケモンでは3と4が効いているのではないかと考えております。 以上です。 ○黒岩委員 どうもありがとうございました。 以上、基礎検討班の報告をさせていただきましたけれども、最後に謝辞でございます が、ソニー中央研究所の医療工学グループの日下部部長、それから鎌田工学博士、それ からNECのC&Cメディア研究所の山崎研究課長、また剣持スタッフ、それから上條 スタッフに御礼を申し上げます。この刺激に用いましたビデオの作成には2日間、トー タルで26時間の作業が必要でして、非常に多大の御援助をいただいたことを感謝いたし ます。 以上でございます。 ○山内班長 どうもありがとうございました。 多少時間が押していますので、3つの報告を一緒にして御討議、御質問いただきたい と思いますが、いかがでしょうか。 ○高橋委員 黒岩委員に、例の問題映像の赤・青の輝度、先ほど飛松委員が2つのピークがあると いうことを、赤に関してハーディングが報告しているのですが、そのこともやはり先生 方のグループで確かめられたことなのでしょうか。 ○飛松委員 輝度に関しましては、1回目のときに資料をお渡ししたと思いますけれども、赤が私 どもの色彩色度計ではかりますと120カンデラで、青が140カンデラです。ハーディング さんの測られたものよりも約 2.5倍ぐらい明るい状態ですが、それはどのビデオ画面を 使うかとかで機種によっても変わると思います。Grass社などで使われている光刺激に比 べてそれほど明るくはありません。私どもは、福大で測らせていただきましたけれども 日本光電の分が大体 150〜300、フリッカー刺激していますのでかなり変動する訳です Grass社がその3倍ぐらいという結果があります。 ○黒岩委員 私たちの刺激では、赤・青の混合した刺激の輝度と、それから灰色刺激とは同等にな るような形で刺激を行っております。 ○高橋委員 もう一つ細かいことですが、先生の表示が青・赤というふうに書いてありますが、今 まで報じられたのは赤・青というふうな形、それはどちらが今後記載する場合にベター なのかということをお聞きしたいのですが。それが混同されると、いろいろと誤解を招 く点があるかと思いますが。 ○黒岩委員 私たちは、当初青・赤で刺激を行った訳でございますが、このB4の追加資料の2枚 目の一番下で示しましたけれども、赤・青刺激と青・赤刺激を比べますと、赤・青刺激 の場合には、赤に対する大きな反応が出て、次に青に対する割と小さな反応が出てくる と。青・赤刺激では、その逆に青に対する比較的小さな反応が出て、次に赤に対する大 きな反応が出てくるということがございます。実際に目で見たときに、赤・青よりも 青・赤の方が強く感じたのですね。赤・青の場合には、赤の残像が青によってかき消さ れるのか、視覚的には弱く感じて、青・赤の方が視覚的にはサブジェクティブに強く感 じたものですから、私は青・赤で刺激を作成したのでございますけれども、実際にVEPで 見てみますと、やはりこういうふうに違うということでございます。赤・青の方がむし ろ強い大きな反応がより先に出てくるということでございます。 ○高橋委員 今回のハーディングの論文は重要だと思うのですが、ハーディングの場合、ディープ レッド、 607ナノメートル以上の刺激だから、レッドコーンを特異的に刺激して青は影 響ないというふうな感じの、結局青はブルー、グリーンコーンを刺激しているのでとい うふうな書き方だと思うのですが、その辺非常にクルーシャルな解釈の仕方になると思 うのですが、飛松委員、教えてください。 ○飛松委員 先ほど言いましたように、赤のコーンというのは感受性のカーブで見ますとテレビ画 面で使われたもののかなり端っこにあるのですね。ですから、赤だけでは感受性が落ち ている訳です。あの波長を使うと。だから、赤だけを刺激しているかもしれませんが、 その刺激の効果というのはどのぐらいあるかは、私は分かりません。というか、正直い って疑問です。 先ほど言いましたように、赤と青は対立関係にありません。しかし、赤と緑は対立関 係にあります。つまり、赤と緑の入力が同時のところにくると黄色になって、それでは 刺激効果がなくなる、脳の視覚野に関してですね。しかし、赤と青は拮抗関係にありま せんので、そういった青・赤刺激をつけ加えることによって、何か非常にインパルスが 出やすい状態にはあるのではないか。ただ、VEPではそういった結果が既得られておりま せんが、ただ杉下委員のデータで青・赤刺激を使うと非常に後頭葉全体、色中枢まで刺 激される、賦活されるということを考え合わせますと、そういった2つの対立関係のな い色を組み合わせて刺激を使うことが非常に効いてくるのではないか。 もう1点は、時間周波数の刺激頻度が効いてくると思われます。というのは、杉下委 員のデータでもやっぱり 7.5Hzで脳血流が増えてくるということ、それからGrass社の刺 激を使いましても9とか12とか15とか、ある程度高頻度刺激で起こされやすくなる。時 間周波数、非常にこれは運動知覚に関係していますので、いわゆる大細胞系が賦活され る訳ですが、要するに色覚の系と運動の系が両方賦活されるような刺激を使われている ということがやはりこのポケモンの画像の一番重要な点ではないかと思っております。 ○山内班長 今お話に出ました、どんな刺激が一番刺激効果が高いのかと、逆に言えば健康被害を 引き起こすかという問題になるかと思いますが、そういう意味からいくと、飛松委員の 今のお話ですと、赤・青のコンビネーションで刺激頻度としてはどういうふうに言えば いいのですか。 ○飛松委員 どこら辺まで刺激頻度を上げればいいかという検討はやっておりませんが、大体9と か10とかそういうところが一番出やすいのではないかなと思っております。恐らく杉下 委員のデータ、あるいは私どもはスペクトで脳血流を測る時に、放射線科の先生が言わ れるのは10Hzぐらいの光刺激をすると、一番脳血流が上がるということで、その辺の頻 度が一番効いてくるのではないか。もっと高頻度になる、あるいは低頻度になっても余 り脳血流が上がらないということはあると思います。 ○山内班長 今のお話に、黒岩委員、杉下委員、どのくらいの条件が刺激効果が最も高いかという 設問ではいかがでしょうか。 ○杉下委員 実際のポケモンは5つぐらい場面があって、一番最初は、先ほども申し上げましたけ れども4種類ぐらいの複合刺激なのですね。それで、青・赤が4番目ぐらいな訳です。 ですから、青・赤はもちろん赤だけより、青だけより効くのでしょうけれども、そうい う白と赤とか、黒と赤とか、青と赤とか、何種類も重ねたものの方が刺激が強い可能性 はあるのではないかというのを一つ感じます。 それから、私どもが飛松委員より少し輝度が低くて、青は18カンデラぐらいで、それ で赤は47カンデラでございました。そして、『Nature medicine』の論文があるので、非 常に気にしまして、大体赤が本当に600nm以上なのかどうか一応はかりました。そうし ましたら、やはり 602〜603nmぐらいありましたから、ハーディングが言っているよう に、日本で使っているああいう赤の刺激というのはヨーロッパのものより高くて 600を 超えているようであります。 ですから飛松委員と同様に、何種類もの色を使うという、私の意見は飛松委員より少 し違うのは、もっと多いと強いのではないかという気がします。色数が多いとですね。 ○山内班長 いずれにしても、赤だけよりはそういうコンビネーションで、しかも赤・緑より赤・ 青という、そういう対立関係にないものがいいということになりますか。 ○黒岩委員 今の私どものスタディーで、正常人におけるデータからの解析と、てんかんの患者さ んにおけるデータの解釈と、その2つを別にして考えないといけないと思うのです。て んかんの患者さんにおいて周波数がどういう影響を与えるかということに関しては、今 は必ずしも直接的なデータが私達にはないというのが現状ではあると思います。しかし 状況証拠としてソニーのPCR研究所で実際にエディティングルームの現場のアニメを編集 を毎日やっている方たちの話を聞きますと、ポケットモンスターの先ほど示しましたあ あいう刺激は今までに見たことがないということでございますので、やはりあの刺激の 中にヒントがあるのではないかと思います。 そういう意味で、あの12Hzという非常に速い刺激と青と赤の組み合わせというものが 重要であるかと思うのです。しかしてんかんをおこすリスクが本当に1Hzよりも12Hzの 方が強いのだと、あるいは青・赤の方が例えば青・黄色よりもより賦活効果が強いのだ という直接的なデータについては今後更に検討していかなければいけないと思っており ます。 私たちの研究では単なる12Hzの単純な青・赤刺激よりも、実際のポケモンの赤・赤・ 赤・青・青という、赤と青が混ざるそういう刺激の方が正常人において見る限りどうも より賦活効果が強いように思います。赤・青の問題が一番メインだと思いますけれども 赤と青がミックスした場合に強調される効果というものも重要かと思います。 ○山内班長 どうもありがとうございました。ほかに御質問ございましょうか。 ○高橋委員 私は今回のことは勿論色のことが主題だと思うのですが、光過敏てんかんの 患者さ んの脳波を見ていると、図形に点滅が加わったのが私の経験では、赤の点滅とほぼ同等 あるいはそれ以上くらいに脳波異常の賦活効果が強いものですから。私は、今回そのこ とが余り論じられなかったのですが、先ほど杉下委員が言われたように、問題の映像の 前にどうも図形の、極端な図形の変化などが次々ありますが、あれは一言で点滅幾何学 的図形というふうに呼んでいるのですが、そういうふうなことの考慮も必要だし、その 辺のことも今後に残された問題として、最後の結論あたりには触れておく必要があるの ではないかなというふうに思うのですが。 ○山内班長 勿論可能性としてはそうなのでしょうけれども、ここでちょっと注意して我々考えな ければならないのは、どうしても光感受性発作ということに我々の目はいきやすいので すが、最初の実態調査の班であったように、また先ほど御指摘あったようにそういう動 揺病とか、そういうものかどうかということの検討にもゆだねられるので、勿論図形も 重要だと思いますので、今後の問題としては広い視野でもって考えた方がいいのではな いかと思っています。勿論高橋委員の御意見に反対という訳ではありません。 それでは、特に今のお話で、赤・青の複合刺激という言葉が使われましたが、コンビ ネーションで持っていくといったようなことも重要なファクターかもしれないというこ とでしょうか。 それで、よろしいですか、一応また後で御意見があればお伺いすることにして、ここ までいろいろなデータが出そろった段階で、現実はこうなのだけれども、これを統合し てどう考えるかという問題がございます。そこまで詰めたいと思いますので、お手元に 実は速報ダイジェスト版というような形で、私がスペキュレーションを含めて書いたも のがございます。これの最後の部分が特に検討したいのですが、少しお疲れでしょうか ら、数分休憩をとりまして、ストレッチしていただいて、一応6時までというお約束で したので、5時半から始めたいと思いますので、少し休憩をとりたいと思います。 (休 憩) ○山内班長 ただいま3つの分担班からお話、報告をいただきましたけれども、各班とも精力的に やっていただきまして、短期間にたくさんのデータが出たと思います。ところでこうい うこともありました、ああいうこともありましたということではなかなかそれが、例え ば郵政省などもガイドラインなどをつくるときに、厚生省の結果はどうなのだというこ とを期待しておりますし、社会一般でもそういうところがありますので、少しかみ砕い た形でエッセンスをつくる方がいいのではないかというふうに考えまして、お手元の資 料4に速報ダイジェスト版というふうに一応書いてありますが、要するに今日お話いた だいたもののエッセンスという形で提出したいと思います。 これについて皆さんの御意見を伺いたいと思いますが、1ページ目は「はじめに」と いうことで、研究の背景、研究内容の方法としてこの3つの側面から検討を行ったと。 3番目の「研究成果とその報告」は、合同の研究会を3回行って、相互に討議、調整を 行って、速報として概要を伝えると。最終報告書は5月に公表の予定であるといったよ うなことを一応言っております。 2ページからは、「結果の概要と考察」ということですが、1番の「実態調査の結果 について」は、本日江畑委員の方から御報告いただいた数字を基に、健康被害の内容と 頻度というところを、目・視覚系に関連したもの、不快気分・頭痛・不定愁訴、発作様 症状といったような形で分けさせていただいたところは私が作為的にしました。あと重 要と思われる部分を、明るさとの関係もいろいろ言われていますので引き出させていた だきましたし、3ページ目にテレビとの距離との関係、見方とか既往歴の関係、医療機 関への受診状況といったようなことも含めて、社会的に関心の高いような問題も含めて 出させていただきました。一応これについては、江畑委員に短時間でしたが、昨日の夜 送りましてチェックは受けております。また気がついたところはお話しいただきたいと 思います。 4ページから「症例研究の結果について」ということで、問診結果については先ほど お話しした点で、症例数、あるいは年齢、既往歴、視聴環境、症状出現状況、出現した 症状、それから5ページに解析結果として、先ほど申し上げたことのエッセンスを書い てあります。 それから、2番として「神経生理学的検査」につきましては、53症例について発作症 状の既往を無熱性けいれんと熱性けいれん、それから視聴環境についての数字、出現症 状というふうに書きまして、6ページに「神経生理学的検討」としては、先ほど来議論 のありました一般脳波の異常のパーセント、それから光刺激賦活脳波で突発性の脳波異 常を呈した者の割合、それから出現症状とPPRとの関連というのも一応言葉として挙げて あります。それから「解析検討」のところですが、(1)のところはそういうことで、これ までに発作を起こしたことがあるかどうかで3群に分けて、それぞれの群の特徴、発作 の起こりやすさと脳波所見との関係を検討したけれども、各群で特徴的な所見はなかっ たという問題の次の「脳波所見に基づく検討」ですが、脳波所見に基づいて、これをA 群、一般脳波で異常波を認め、光刺激で突発性異常波を認めたもの。B群、一般脳波で は異常波を認めなかったけれどもPPRが見られたもの。C群、一般脳波で異常波を認めた がPPRは見られなかったもの。並びにD群は両者のないものというふうな、ちょっと群に ついてを強調しています。各群で性差、年齢などの背景には有意な差は見られなかった が、脳波異常を認めずPPR の出現のないD群では有意に近い距離でテレビを見ており、 出現した症状も不定愁訴、自律神経系の症状が多かったといったふうなまとめにしまし た。 「基礎研究の結果について」が7ページからありますが、これについてはちょっと最 初に、昨日まで提出していただきましたデータに、今日はお聞きしていますと、先ほど の色の問題、複合刺激といった問題を含めて、多少つけ加えた方がいいかなと思われる ようなところがありますので、一応昨晩は黒岩委員にチェックいただきましたが、もし かしたらお3人の先生に見ていただいて、この辺の追加、訂正をしていただきたいとい うふうに思います。 ここまでは今までのデータのまとめですが、ちょっと御意見をいただきたいのは、 「考察」部分でまとまったことを言わなくてはいけなくて、いろいろ苦労して私なりに 考えたところですので、御意見をいただきたいと思います。読んで見ます。    (IV「考察」朗読) ○山内班長 多少、私が強引にまとめたところもあるかと思いますが、何かこういったタイプのこ とが必要ではないかというふうに考えたのと、もう一つは、いろいろの症状、あるいは これまでのアナムネーゼの上でいろいろのことを示唆するファクターが引き出さればと 思って検討したのですが何もなくて、結局はこの一般脳波の所見とPPRというものの組み 合わせで物を考えるのが一番統一的に解釈出来るということになりまして、ではみんな 脳波をとらなければいけないかということになると大変なことになるので、最初に頭書 きにそういうけいれん症状を繰り返すとかといったようなことを条件として付けたとい うことであります。この辺についてはいろいろ御意見あるかと思いますが、どうぞ御自 由に。 ○牛島委員 当該画像により症状を呈した人々にどのような人がいたかというのは、いわゆる症例 検討の中でなされたものだけに限られているような気がするのですね。これはやはり実 態調査の結果も何らかの形でここに入れるべきではないかというような気がするのだけ れども。これが果たして純粋に心理的なレベルだけのものなのか、例えば飛松委員の基 礎研究の中で出てきたいろいろな刺激が脳全体に及ぼす影響というのははかり知れない ものがあるというのは基礎結果が出ている訳ですね。これらがけいれん発作とか、脳波 異常まで起こさないにしても、ポケモンそのものが子供たちに及ぼした影響みたいなも のもある程度示唆した方がいいのではないかというような気がするのですけれども、い かがでございましょうか。 ○山内班長 分かりました。2番のタイトルが少しうまくないので、こういうふうに書くと、先生 がおっしゃったようなそういういろいろなケースを入れなければいけないので、これは 症例検討で検討した人ということにして、今の話はDグループの実態調査をどう理解す るかというところに、心理的影響とかそういうものをもしかしたら入れた方がいいかも しれないと思います。 ○牛島委員 その際、ただ社会的、心理的影響だけではなくて、基礎研究でなされたいろいろな データが出ましたので、そういったことの影響の可能性までは少し言及し過ぎかもしれ ないけれども、何かそういうふうなことと関連して一言触れておいた方がいいような感じをいたしましたけれども。 ○鴨下委員 大変立派に、コンパクトにまとめられたと思うのですが、今、牛島委員がおっしゃっ たように、実態調査でどういう症状がこのポケモンの主なコアというのですか、それを どこかにはっきり書かれた方がいいのではないかと思いますけれども、いかがでしょう か。これは特に実態調査班である程度それをうまくまとめれば出てくることではないか と思うのですけれども。 ○山内班長 実はどういう人にどういう対応をしたらいいのか、予後はどうしたらいいかというよ うなことを考えるとするとベースが必要だったものですから、こういう脳波の所見を基 にした考えになったのですが、先ほどの議論にもありましたように、実態調査でどうい う症状があったかというのを、それが何を意味しているかというのを読み取るのがなか なか難しくて、本当にこれはけいれん性の疾患かどうかとか、そういう問題があるもの ですから、ちょっと入れて混乱するのは嫌だったものですから、まとめの最初の方には それぞれ症状として出してあるのですが、この最後のところには入れなかったという状 況があります。少し考えてみますけれども。 ○牛島委員 この委員会の一つの共有する意見として、ポケモンに反応した人たちがけいれん性の 疾患がメーンであることは間違いないんだけれども、その周辺にかなりいろいろな人た ちがいたという、この認識はこの委員会で共有するのでしょうか、しないのでしょうか ○山内班長 私は当然すると思っております。それは、2の症例検討だけいくと見えなかったもの が、やはりそういう実態調査をしたことによって見えてきたと思いますので、その辺当 然数としては多いものですから、入れることになるでしょうね。 ○牛島委員 それで、もしそれを共有するとするならば、その意味を全体として、勿論スペキュ レーションする以外にないのでございますけれども、どこら当たりまでスペキュレート するのか。先ほど言いましたように、心理的なレベルだけで片づけていいものかどうか ということについて多少疑問があるような気もするのです。 先ほどの基礎研究などを見ていると、これは単なるそれだけではないなという印象を 受けたものですから、そうなると脳レベルでのあれも多少影響しているのではないかと いう、非常に漠とした多彩な症状を呈したということの意味ね。だから、そこまで言え るのか言えないのか、これは少し難しいだろうと思うのだけれども、もしポケモンに対 する反応にこれだけの人たちがいたということをもう少し、受診したけんれい性の疾患 以外のものまで含めるとするならば、それに関してどういうふうな意見をこちらが持つ かということが、次の段階として必要だろうというような気はするものですから。 そうすると、提言としてはけいれんを起こした人たちに対する対応はあるかもしれな いけれども、当然こういった映像を世に売るテレビその他の放送関係の人たちに対する 提言もあってしかるべきではないかというような気がするのです。その提言というか、 対応とかいったものはいかがでございましょうか。 ○山内班長 これは実はDグループにみんな含まれると思うのです。ところが、牛島委員おっしゃ ったような問題は今回の緊急対応のスタディーではやっていないのです。実際に、先ほ ど動揺病とか、迷路刺激反射のことが話題になりましたけれども、これはエビデンスが ないものですから、結局我々は推定の域を出ないと。それで、症例検討班がやったのは 専らそういう発作性のものだったものですから、可能性として言うことは出来ると思う のですけれども、余り広げ過ぎると何かスペキュレーションということになるので、そ ういうものは数の上で多かったけれども、これは恐らくD群に属するもので、そういう 脳全体が賦活された可能性もあるでしょうと言うくらいになって、だからどうしろとい うことになると、そこの部分は余り強い刺激を与えるなとか、そういうことになってし まうかもしれませんね。というのは、我々の今後の検討課題だろうと思うのです。我々 が扱わなかった部分ということになるのではないかと思います。 ○高橋委員 私は、やはりこの事件が報道されたとき、報道内容を見ると数に関してさまざまだっ たと思うのです。病院に搬入された方が約 700人、警察庁の統計ではこうだったと。で すが、もう少し調べると六百数十人だったというふうな。いろいろ症状さまざまですが 今回起こった中核群はけいれん群だったとすると、その数だけにしても推計学的に実態 調査から全国でどのくらいの被害者があったかというふうなことを、その数をある程度 出すということが必要でないかなと思うのです。これだけだと視聴者が四百数十万人い た。そのうちけいれんはどのくらい起きたものだろうというふうなことをこのデータか ら推測出来ないものかどうか。もし出来るのであれば、それを結果の一つとして記す必 要があるのではないかなというふうに思うのですが、いかがでしょう。 ○山内班長 もしやるとしたら実態調査班から引き出すということになると思うのです。ところが 実態調査班の設問はアンケートでああいう形になっているものですから、本当に私が分 けたようなああいうけいれん性、発作性の症状というものがそこに拾われているかどう か分からないものですから、あんまり深く踏み込まない方がいいかなという気はするの ですね。 それと、方々でもっていろいろなことが行われていますが、母集団の違いというもの が結構いろいろなところであって、小児科を受診した人の中でいった附帯条件をつけな いといけない問題があるものですから、あんまりそこまで具体的な数を述べて、それが 一人歩きしない方がいいのではないかなというふうに私個人は思っていますが、ほかの 方はいかがでしょうか。 ○渡辺委員 私も今の班長の御意見に賛成でありまして、健康被害といってもどこまで言うかとい うことが出てきますよね。例えば、別にこのポケモンばかりでなくて、いろいろなテレ ビの番組を見ていて、不快だとか、嫌だとかということは幾らでもあるのでそういった ものまで広げますと非常に広がりまして、さまざまな既往が入ってきますね。今お話に もありましたけれども、心理的といっても非常に高次な脳の機能全体をあれすることか ら、情緒と感情とかそういうことの影響までありまして、それは非常に広い範囲になり ますね。 ですから、少なくとも国として、厚生省としてといいますか、健康政策としてやる範 囲のものがあると思うのですね。だから、やはりそのあたりの中核に絞らないと、例え ば画面が目にこびりついたとか、そういったものまで含めてしまいますと何が何だか分 からない、焦点がなくなってしまうと思うのです。だから焦点は絞ってやらないとこう いったものはいけないのではないかと思いますけれども。 ○山内班長 それから、もう一つ我々の抱える問題点というのは、これだけ短期間の間に一斉にと にかく何がどうなっているかということを明らかにしようということに集中したもので すから、当然足りないところがたくさんあって、そういうものは今後の課題ということ になって、出来ればこういうものがどこかのところで学会レベルでも何でもいいですが 継続した形でもう少し意味を明確にしていくということが求められるので、だから限定 づきで今この段階で言えることというふうになるべくした方がいい。ただ、そのとき可 能性は示唆しておいた方がいいというふうに思います。 ○岡委員 A、B、C、Dグループに分けられて論じられたその件なのですが、勿論それでよろ しいと思うのですが、一般の人口の中に突発性異常波が何も症状のない人にも存在する こと、またPPRも一般人口の中の何も症状のない人にも存在する、よくいう潜在性てんか んとかいろいろな言葉で申しますが、そういうものが実は存在しているということもど こかに触れておく必要があるのではないかと思ったのです。そうしないとポケモンのあ あいう刺激によって恒常的な脳波異常が果たしてつくられるのかどうかということは分 からない訳ですから。 ○山内班長 ここも実際には少し慎重だったのです。前にはラテント・エピレプシー(潜在性てん かん)とか、そういうような言葉を使ったこともあるし、そういう言葉を使った論文も あるのですが 、これは本当にその人がどちらに動いていくか分からないですね。これは フォローして、それぞれのケースが持っている 115なら 115名を先生方にフォローして もらうといったような意味合いは大事だと思うのですが、岡委員がおっしゃるように、 今まで症状のなかった人の中にそういうPPRを出したり、あるいは一般脳波で異常がある 人はいるというところまでは言えますけれども、これがどちらに動くか、潜在的なてん かんなのかというのは何とも言えないものですから、そこの判断の表現は避けたのです これはやはり今後の問題でしょうね。 ○八木委員 私は、先ほど牛島委員が提起されたことは非常に重要な意味合いを持つのではないか と思っています。例えば、今回みたいな非常に集団的に光の刺激が曝射されるというこ とはそうあることではないと思うのです。この際、やはりきっちりした形で、その中核 がラテントのエピレプシーに近いものであることは確かなのでしょうけれどもそれ以外 の部分のことも、やはり臨床的に非常に重要な知見ではないかと私は思うのですけれど も。 ですから、この実態調査そのものが質問項目として、アンケートとしてまずいところ もあるのかもしれませんけれども、現実としてそういう報告案が出された訳ですから、 その実態はきちんと知らせて、それがまた一つのこういう画像を見る、視聴する場合の 注意といいますか、見る側に対する注意でもあるのではないかというふうな気もします ○山内班長 分かりました。どうもお話を伺っていると、このDグループの解説のところに実態調 査の結果などを入れて、そういう人たちがかなりの数存在すると。それでそれについて 対応のところでも、それに対応した形でもって書くというふうにしたいと思います。 どうもありがとうございました。 ○三浦委員 皆さんの御意見を伺っていまして、おっしゃったことは10ページの山内班長が書かれ た対応と予後のところに大ざっぱなことは書いてあると思うのです。ですから、それを もう少し詳しくとか、今後の問題点とか、今回やったけれどもまとめにくかった点を具 体的に書かれた方がいいのではないかと思いますけれども。 ○山内班長 どうもありがとうございました。 ○高橋委員 5月に最終的な報告が出るということですが、勿論国内だけでなくて、この問題に関 して国外からも問い合わせが私のところにあって、私が少し懸念するのは、国内での5 月初旬の報道が正しく翻訳されて外国向けに報道されることまでお考えがあるかどうか ということをちょっとお聞きしたいのです。 ○山内班長 その問題は次のテーマでしたいと思います。 少なくとも、今の速報ダイジェスト版についてはよろしいですか。大体こんなことで、 今御指摘のあったところを膨らますということで。では、そういうふうにさせていただ きます。 それで、お話を伺っていて考えたのですが、この速報版はみんなが分かりやすいとい う意味でつくっていたのですが、これのほかに今日のものをまとめた速報版をつくると 二度手間になるので、もしこのダイジェスト版で各班のもの、あるいは言おうとするこ とを多少手直しして、エッセンスとしてはいいという御了解が得られれば、今日出して いただいた各分担班の報告をもう少し今日のことも含めて膨らませていただいて完成版 の方に回すということ。最初は、このダイジェスト版に今日出たのを全部くっつけて、 そして速報版として出すと、ほかに完成版を出すというふうに考えていたのですが、こ の速報版のダイジェスト版だけでもって一応速報としていいか。あるいは、各班の今日 出してもらったのもくっつけて、各分担班の3つの資料を速報版とするかというあたり についての御意見ございますか。 ○牛島委員 僕が申し上げたのは、今日のデータを添えた方がいいということではなくて、どうい うふうな人に反応が出るかということの認識ですね。だから、かなりけいれんといった ことを中心にしてはいるけれども、かなり幅広いものだということをちょっと書いてお かないとまずいのではないかという気がするのですけれども。 ○山内班長 それは手直しします。その上で、ダイジェスト版で一応速報ということでよろしいです か。私が手直しして皆さんに送って御意見を伺いますけれども、なるべく来週の早い時 期くらいにまとめる努力をいたします。 それで、次の完成版の話ですが、完成版はこういうふうに考えています。各分担班、 特に実態調査班は恐らくたくさんのデータがございますので、なるべく後に記録に残る ような形でデータをたくさん入れていただいて、代表して書いていただいて、あとはほ かの先生方もしコメントがあれば分担の中でしていただく。例えば50枚とか、そのくら いになってもいいかと思います。 それから、症例検討班ですが、症例検討班はまとめの今日出した報告書を私はつくり ますが、各班員がそれぞれのケースを持っていて、先ほどの岡委員のケースというのも あるかと思いますし、1例のケースでもよろしいですが、この研究に携わって自分たち の経験したものを20枚くらいで書いて、各班員の報告としてそれをこのまとめの次につ けたいというふうに思います。それは出来ましたら遅くても連休明けの5月6日には届 くように、ディスクに入れて送っていただきたい。 それから、基礎研究班はそれぞれ独自の研究ですので、20枚くらい3人がそれぞれ書 いて5月6日までに出してもらう。それを全部まとめて完成版として発刊をしたいとい うふうに考えます。 それで、一応今日でもってデータの締めも大ざっぱなところ終わった訳ですから、自 分のしたお仕事を報告するのは、前にもちょっと言いましたけれども、それぞれこの特 別研究の助成によるといったようなことをつけていただいて、どういう形で報告してい ただいてもいいということでよろしいですか、厚生省の方は。要するに、各自のやった ものについて原著論文みたいな形になると思うのですが。 ○田中課長 報告書をいただいて、その後の扱いというのはそれぞれクレジットを入れていただけ れば、いかようにもお使いいただくことに関しては問題はないと思います。 ○山内班長 先ほど高橋委員から御指摘がありましたように、出来ればこの研究班の報告をもっと エッセンスとして、もしかしたら実態調査班のそれぞれ3班が独自ということになるか もしれませんが、外国向けに論文を出すということも必要なことかと思いますので、ち ょっとその辺は各分担班と相談したいと思います。 一応、このデータの取扱い、まとめ、報告についてはそういうことでよろしいですか そういうことでお願いいたします。また改めて報告します。 ○田中課長 御確認させていただきたいのですけれども、一応速報ダイジェスト版の暫定版という のは今日いただくという格好にさせていただきますけれどもよろしいですね。 ○山内班長 これは暫定版で決定版でありませんので、私がそういうことでなるべく早い時期に、 来週決定版を差し上げますが、一応これは少し膨らませたりする部分はありますが、大 きな間違いはないということで御了解をいただいていいと思います。 それでは、予定の時間を数分オーバーしましたが、ほかに何かございますか。 ○渡辺委員 今のダイジェスト版ですけれども、10ページのところで、くどいようなのですが、D グループの属する人の問題、先生先ほどつけ加えていただくというお話がありましたの で結構なのですが、動揺病に類する発現機序の働く可能性が高いと、高いと書いてしま うと少し語弊があるので、可能性もあるとか、そういうふうにされた方がいいように思 いますけれども。 ○山内班長 この辺はどのくらいか本当に分かりませんので。 ○岡委員 症例検討班に属しているものですから、20枚の追加という先ほどおっしゃった件を確 認します。それはダイジェスト版に付けるのでしょうか、それとも5月の正規の方。 ○山内班長 完成版にそれぞれの班員の名前でもって載せたいと思います。 ○岡委員 それから、以前、2月28日付でいただいた文書に、やはり20枚以内の個別データを基 に論文を提出するようにというのは、それとは別でしょうか、同じもののことでしょう か。 ○山内班長 これは各分担班ではなかったでしょうか。各班員でしたか。 ○岡委員 各班員となっておりますが。 ○山内班長 それが今お話ししたものと同じというふうに理解してください。 ○岡委員 分かりました。 ○渡辺委員 4月20日が5月6日になったということですね。 ○山内班長 そうです。よろしくお願いします。よろしいですか。 ○田中福祉課長 大変御無理を申し上げまして、短期間に密度の高い仕事をしていただきまして、なお かつ一応の成果物も年度内ではありませんでしたけれども、ほぼ年度内にいただけると いうことで、大変ありがとうございました。 なるべく早く都道府県、あるいは医師会等の関係団体にこれらの情報はフィードバッ クをさせていただきますし、またこれに関連する省庁もございますので、そういう関係 部局に対してもこの情報を提供させていただきたいというふうに思っております。大変 ありがとうございました。 ○山内班長 本当にどうもいろいろと御無理を申し上げてありがとうございました。おかげさまで 私も無事これで役割を果たさせていただきますので、皆さんに感謝申し上げます。 どうもありがとうございました。 これをもちまして、閉会といたします。 連絡先  大臣官房障害保健福祉部精神保健福祉課 中村補佐 (3053)        阿部補佐 (3065)                社会復帰指導係  金山、清水(3059)