97/03/26 中央児童福祉審議会母子保健部会議事録  中央児童福祉審議会母子保健部会 議  事  録 厚生省児童家庭局母子保健課 中央児童福祉審議会母子保健部会会議次第 日 時:平成9年3月26日(水) 14:00〜16:00 場 所:霞山会館 議  題  1.開  会  2.検討事項    (1)小児慢性特定疾患対策について    (2)乳幼児突然死症候群について    (3)小児薬物療法の在り方について  3.報告事項    (1)先天性代謝異常症等追跡調査検討会について    (2)本部会の委員の退任について  4.閉会 ○事務局  中央児童福祉審議会母子保健部会を開催させていただきたいと思います。   本日は11名の委員の先生方に御出席いただいておりまして定数に達しております。   初めに、母子保健課長よりごあいさつさせていただきます。            ○母子保健課長  年度末の大変お忙しい中、お時間を御調整いただきましてお集まりいただき、ありが とうございます。                         また、本日から女子栄養大学の栄養学部の教授をされておられますA先生が委員とし て参画をされることになりました。どうぞよろしくお願いいたします。         さて、内容に入らせていただきますが、検討事項にもございますように、前回に引き 続きまして、小児慢性特定疾患対策について、今日は大方の方向性を示していただこう というふうに思っておりますし、新たな課題といたしまして乳幼児突然死症候群、また 小児薬物療法の在り方についても新しいテーマとしてお話を進めていただければという ふうに思っております。                              本日はその関係で、2番目の課題につきましては、東京女子医大のK先生、3番目の 課題で香川医科大学からJ先生にもおこしいただいてます。どうぞよろしくお願いいた します。                                    ○部会長  それでは、部会を始めさせていただきます。お忙しい中を、また今日はお足元の悪い ところをお集まりいただいてありがとうございました。            それでは、今日の議事次第をごらんいただきますと分かりますように3つのテーマを 御検討いただきます。そのほかに報告事項などもございますので、ちょっと盛りだくさ んでございますが、ひとつよろしくお願いをいたします。               では、最初の(1)の小児慢性特定疾患対策、これは前回、前々回ぐらいからいろいろ御 議論、御検討をいただきましたが、それのまとめを厚生省のほうでしていただいたよう でございます。今日は今まで説明に来ていただいた柳澤教授が、医師国家試験の問題の 作成の委員会と重なったそうでございまして御欠席でございますが、事務局からよろし くお願いをいたします。                             ○事務局  資料の説明をさせていただきます。                    お手元の資料といたしましては、この1枚の議事次第と、その下の「本日の論点メモ 」でございます。小児慢性特定疾患治療研究事業についての論点といたしましては、今 後の小児慢性特定疾患治療研究事業の方向性はどうあるべきかという点でお願いいたし たいと存じます。                                 「委員限り」と書きました2枚の資料もそろえさせていただいておりますが、題名が 「小児慢性特定疾患対策について」ということでございます。こちらは過去2回及び本 日の議論を含めた形での取りまとめのようなものでおつけいたしておりますが、平成4 年5月に出されました、「これからの母子医療に関する検討会」の指摘事項につきまし て、達成状況を鑑みまして、今後の方針はどうあるべきかということをまとめたもので ございます。                                   「小児慢性特定疾患対策について(今後の方針)」と書いてある資料でございますが、 1番の「事業の適正化」、2番の「研究の推進」につきましては、「母子医療に関する 検討会」の指摘事項でございます医療費の適正な費用負担のあり方について十分な議論 を行う点でございますとか、治療方法等の調査研究の推進を重要な課題として位置づけ るという点が、現在まで余り徹底されていなかったということに鑑みまして、今後の方 針といたしまして、事業の適正化方策として客観的な審査を行うための詳細な診断書の 書式を設定するという点及び都道府県の小児慢性特定疾患対策協議会における対象疾病 の判定の強化並びに厚生省への結果報告の義務化を今後とも推進していくべきいではな いかという点。それから、特に下垂体性小人症における問題といたしましては、成長ホ ルモンの薬価適正化の推進を進めていくべきではないかという方針をまとめさせていた だいております。                                 研究の推進としましては、今後の方針として臨床研究事業の創設としまして、小児の 希少難病の免疫機能や臨床病理等の基礎研究を行うなど、その疾患の発生率や治療の有 効性、重症度などの疾患の実態に関する調査を行うという点及び研究成果のデータベー スを作成し、評価を充実していくという点ということが今後の方針として挙げておりま す。                                       3番の「医療・福祉施策の推進」につきまして、ます目のほうで4本出しております が、入院環境の改善と在宅ケアの推進と就労、そして教育の機会の確保を挙げておりま す。                                       今後の方針といたしましては、入院環境を改善する対策といたしまして、主に就学前 の児童の対し、プレイルームを確保するための施設基準の見直しですとか、あと病棟内 の保母等を確保するための診療報酬上の評価ということで入れさせていただいておりま す。                                       それから、就学後のお子さんに対する対策としましては、学習室を確保するための施 設基準の見直しですとか、訪問教育の推進などを今後の方針として掲げさせていただい ております。                                   あと自立・就労支援の方策としまして、親の会などの民間団体による自立・就労の支 援や相談事業を援助していくこと。                         あと、在宅ケアの推進方策としまして、在宅で利用する医療機器や生活用品の支給、 診療報酬上の自己医療行為、つまり酸素吸入器などの自己医療の範囲拡大ですとか、医 療関係者による在宅療養指導の充実を図っていくべきであるということを、平成4年 ── 5年前の検討会の指摘事項を踏まえた達成状況を鑑みまして、今後の方針につい てまとめさせていただいております。                        それから、こちらの分厚いほうの資料の説明でございます。43ページまでございます がそのうち小児慢性特定疾患に関する資料といたしましては、前から13ページ目までご ざいます。                                    この資料の2ページ目に、小児慢性特性疾患登録管理の試行と申しまして、平成8年 度の厚生省心身障害研究の報告書の一部でございます。柳澤先生の研究班の中でやって いただいているんですけれども、現状の小児慢性特性疾患事業の問題点といたしまし て、4ページ目のIIの「現状での問題点」の中に地域差の問題、各地における給付対象 者の率が違うという点ですとか、正確な統計をとるための統計上の問題点、あと下垂体 性小人症につきましては、5ページの右の上から3分の1ほどのところに書いています が、副作用の問題ですとか、治療対象児の選定の問題、あと6ページにまいりまして は、その私的機関での診断基準ですとか医療費の問題、総合的な治療効果判定の必要性 の問題点などが、この研究報告書でも挙げられているところでございます。 そして、9ページでございますが、これは母子保健課の事務連絡で各都道府県にお聞 きした資料でございます。下垂体性小人症の判定につきまして、成長科学協会の出され ております「ヒト成長ホルモン治療適用判定書」をどの程度使用されているか。そし て、その申請及び認定において、その判定書の添付の有無がどのように影響を及ぼして いるか。各都道府県において、成長科学協会の判定書の添付を義務化しているかどうか というものを一覧表にしたところでございます。                   そして、その一番右のところでございますが、20歳未満の人口100 万人当たりの下垂 体性小人症の給付対象者の数がどれぐらいあるかという点で地域差を見ておりますが、 まず多いところから挙げますと、4,000 を超えている名古屋市ですとか、2,000 を超え ております愛知県ですとか、少ないところでいきますと、群馬県で171 という形で地域 差があらわれております。                             10ページ目の一番下のところに合計として出しておりますが、申請件数としてヒト成 長ホルモンの適用判定書を添付している方が、全国で7,534 件ございまして、そのうち 7,534 件すべてが認定されていた。そして、添付のない1万680 件のうち、認定された 方が1万646 で不認定の方が34件ということで、判定書が付いていれば全て認定されて いる訳ですが、付いていなくても0.3 %ぐらいしか不認定になっていないというふうな 現状でございます。それから、判定書添付の義務化につきましては、義務化していると ころは29府県市ございまして、していないところが34府県市ございました。      それから、11ページ目にまいりますが、こちらは前回の部会においても資料として添 付させていただきましたが、現在の成長科学協会におけるヒト成長ホルモン治療開始時 の適応基準、そして、12ページにつきましてはヒト成長ホルモン治療継続の基準、そし て13ページにつきましては、その総合判定基準として適応とするか、6カ月間試みで行 うか、あと不適応とするか、そういったフローチャート図でございます。        以上で資料の説明を終わらせていただきます。                  ○部会長  ありがとうございました。                        かなり時間をかけたディスカッションの後始末を大変きれいにしていただいたと思い ますが、今日初めての先生もおられますので、ごく簡単に申し上げますと、この小児慢 性特定疾患治療研究ですが、実際には医療費の補助をしております。その中で内分泌性 の疾患が全体で10種類、病気の数からいうと二百何十種類のうちで過半数、その中で成 長ホルモンを使用するというための医療費が全体の半分近くを占めているという状況。 今、御説明のありました地域差があるというような状況などから、この辺をきちんと見 直す、あるいは今後の申請認定等にきちんとした基準を設けていくというような必要性 が指摘されたところでございます。                         これは、心身障害研究の中で、L教授の研究班がこれらの研究、あるいは申請のフォ ームなどの研究をしておられますが、それもだんだんまとまりつつございます。その内 容がここに書いてございますが、それにつけても、昔は人体から抽出していたホルモン 時代、これは当然非常に値段が高かったんだけれども、最近は遺伝子工学でつくれるよ うになっているのに薬価がなお高いという、そのために医療費もたくさん食っていると いうようなお話もございまして、今日は薬価基準あるいは適正化への動きのようなこと を御説明いただけるんでしょうか。                        ○事務局  そこまでは設定しておりませんが、一応本部会の提言として、薬価がかなり医療費を 押し上げているということを言っていただければ、また薬務局のほうにと思っておりま す。                                  ○部会長  分かりました。これは厚生省の薬務のほうだと思いますが、いろいろ調べられたり、 努力されたりしていると思いますが、とにかくこの委員会として、あるいは部会といた しましては、委員限りと書いたメモの内容の部分について、是非正式に盛り込んだ形の 要旨をきちんと残していき、または提言をしていくようにしたいと思います。  研究の推進もいろいろ前向きに考えていただいているということがここに書いてござ いますし、医療福祉施策の推進につきましても、そこにいろいろ書かれております。厚 生省としては、学校へ入る前の子どもの医療の環境について、ここに書きましたような ことを進めていただくということになっていたり、あるいは在宅療養の充実、こういう ことをしたり、親の会などの団体の支援、これも実際に親の会の御意見も伺いました が、そういうことでございます。学校へ入る、あるいは入っている子どもたちについて は、これは文部省の所管でいらっしゃいますけれども、いろいろ御説明いただきました が、今日もおいでいただいてますが、何か補足していただくことはございますか。  ○文部省  特に必要なことがございましたらば、また補足させていただきます。    ○部会長  それでは、小慢の部分につきまして今までのまとめをしていただいた訳ですが、先生 方から補足的に御意見、御質問等ございましたらお願いをいたします。     C先生よろしいですか。                            ○C委員  大分申し上げましたから。                       ○G委員  ひとつ伺いたいのですが、愛知県及び名古屋市の頻度が突出しているのは何か理由が 考えられるのでしょうか。                        ○部会長  これは今のところ調べたらこうなったということで、理由については、これから調べ なければ分からないのだろうと思います。                 ○G委員  分かりました。                            ○部会長  地域差等については、これからまた厚生省が行政的にアドバイスをするとか、何らか のことをしていただいて、地域差が余り目立つようなことのないような基準を、また学 問的にも決めていただく方向で何とかしていただきたいと思っております。   ○母子保健課長  今、御説明をさせていただきながら、やり取りをしていただいておりますが、このメ モにつきましては、先生方が、この問題についてこの部会で御議論をいただいてきた結 果、こんなことを行政に提言するというような内容のものでございますので、これは事 務局としては、先生方のいままでの議事録を十分反映させた形で作業をさせていただい ておりますが、もし足りない部分とか、これはもっとこういうふうに言うべきだという ようなことがおありになりましたら、ここで修正というか、追加訂正をしていただけれ ばと思っております。今度は母子保健部会として、こういうふうな形で小児慢性特定疾 患対策については御提言をいただき、またいろんな形で反映をしていくということにな りますし、また児童福祉審議会のほうにも御報告をしていただく内容の一つとなります ので、十分な御審議をお願いいたします。 ○部会長  という御趣旨のようでございます。よろしくお願いをいたします。     ○E委員  前回も出ましたけれども、小人症のことが非常に討論の対象になったと思いますけれ ども、実際ここで出ておりますのは、それに限らず、小慢全体の対策適正化ということ ですよね。そうすると、「特に下垂体性小人症の判定」云々と書いてますけれども、こ れは趣旨の中ではこの位置からは少し外れるんじゃなかろうかと思うんです。五百幾つ かある疾患の中の繙纉ヒ出はしておりますけれども、そういうことでこれをお書きに なっているんでしょうか。                         ○母子保健課長  何回目かの資料を研究班から出していただいて、いわゆる自然増の範囲と特異的な動 きをしていたというのが小人症の領域だったと思うんです。それについて、大分前回も 御議論いただいたと思いますが、様々な要因が考えられると思います。ということで医 療費の面からも、そしてこの対象、勿論、医療費に反映していく訳ですけれども、認定 患者数の数からも、もうちょっと客観性を高めるべきだというのが先生方の御意見だっ たというふうに受け止めております。                ○C委員  したがって、趣旨のところと内容のところ、成長ホルモンとか、特定のものが書いて ある訳ですね。むしろ、これは特定のものとして取り上げて、先ほどの地域性の問題と か、診断基準の問題とか、県によってこんなに大きなばらつきがあるというのはちょっ とおかしいように思うんです。その辺の適正化を図るというようなことをどこかで組み 込んでいただいたらありがたいと思うんです。               ○部会長  おっしゃるとおり基本的にはそういうことで、小児慢性の事業そのものを今後続けて いく必要があるとすれば、適正な運営をということで全体の見直しですが、ただ特に議 論になりました部分あたりが妙に問題になったりすると、事業全体のスムーズな運用が 不可能になる危険性がございますので、この辺も特に気を遣っていただいたというふう なところだと思います。                         ○母子保健課長  1行目は先生がおっしゃるように、全体の適正化を図るべきだよということだと思い ますし、今までの議論を遡ってみますと、特に焦点が当てられたのが特異的な動きをし ている下垂体性小人症だというような形で書かせていただいたんだと思います。                                     ○部会長  これは議事録から拾い出したメモでございますので、今後答申のようなかっこうにす る場合には、また上手な文章にしたいと思います。             ○C委員  少なくとも全体の趣旨はこの1行目ですよね。              ○母子保健課長  そうです。                           ○C委員  それに沿ったような形での答申が基本にありまして、その中に特定のものとして下垂 体性小人症のことというふうな区分けをしないといけないんじゃないか。   ○母子保健課長  1行目の全体にかかる話に関しましては、内容の黒ポチが3つありますけれども、上 の2つがそれに匹敵するんですね。                 ○C委員  そうです。                              ○母子保健課長  特に下垂体性小人症の云々に関しましては一番下の成長ホルモン云々という話になる んだろうと思います。書き方でしょうか。              ○C委員  書き方というか考え方ですね。                     ○部会長  実際、議論をしている中では、事業そのものの今後のためにちょっと危機感を持った 部分なものですから、どうしてもここには強く書いてあります。       ○C委員  L先生が、今度の班研究の中でいろいろなことの御報告がございましたね。本来ああ いうのが基本に、答申の骨子にあったほうがいいんじゃないかという感じがしたもので すから。                                ○部会長 ありがとうございました。                        ほかにございましょうか。今の御発言も踏まえて、この小慢の部分につきましては、 さらに取りまとめをしていきたいと思います。                    今日はあと2つ大きなテーマがございますので、よろしければ、次に進ませていただ きたいと思います。                                第2が「乳幼児突然死症候群について」のものでございまして、これもいろいろ資料 を用意していただいております。最初に、事務局から資料の説明を兼ねて前半の御説明 をお願い出来ますか。                              ○事務局  それでは、資料の14ページから31ページにわたるところが乳幼児突然死症候群に関す る資料でございます。                           簡単に進めさせていただきますと、15ページ目が我が国におけるSIDS(Sudden  Infant Death Syndrome) 、乳幼児突然死症候群の略でございます。問題点として診断 上の問題点ですとか、剖検率の問題、あと家族へのサポートの問題などが挙げられてら れております。                                  16ページ目が平成7年の人口動態統計に占めます乳幼児突然症候群の位置づけでござ いますが、平成7年度から死因の簡単分類の中に乳幼児突然死症候群という疾患の概念 が位置づけられまして、この名前での死因の順位というのは初めてでございますが、ゼ ロ歳児の死亡の第3位ということで526 名の方が平成7年1年間で亡くなられておりま す。男の子の死亡率は出生10万対あたり51人、女の子の場合は36人という形になってお ります。                                     17ページですが、SIDSの診断について病理解剖などの解剖が必要でございますけ れども、病理解剖と法医解剖の位置づけについて、法律の条文を引用させていただいて おります。                                   そして、18ページにつきましては、乳幼児突然死症候群の診断の手引きといたしまし て、研究班の報告の中から抜粋させていただいております。             19ページ目が乳幼児突然死症候群の調査の項目として、現在この研究のレベルで行っ ているものを、どういった項目について調査されているかということについて挙げさせ ていただいております。                              続きまして、23ページ目が乳幼児突然死症候群に関する研究の平成6年度の総括研究 報告で、分担研究者が東京女子医科大学の仁志田先生です。             そして、26ページ目が平成7年度の研究報告でございますが、こちらは「乳幼児突然 死症候群(SIDS)のリスク軽減に関する研究」という形で少し名称は変わっており ます。                                      続きまして、29ページ目ですが、こちらが乳幼児突然死症候群について家族の会が結 成されておりまして、家族の会の概要をパンフレットから少し抜粋させていただいてお ります。                                     そして、30ページ、最後のページでございますが、各国のSIDSの予防に関しての 呼びかけによりまして、そのキャンペーンが行われることによって、発生率は減少して いる。かなり呼びかけの効果があるという表が上の表でございまして、その呼びかけの 内容として、現在行われておりますのが、あおむけ寝で育てようとか、出来るだけ母乳 で育てようといったスローガンを簡単に抜き出させていただいております。      ○部会長  ありがとうございました。                        このSIDSは今のように乳児死亡率の中でも大変重要な部分ということが分かって きましたし、保育所などの場で起きますと、しばしば訴訟問題になったりして難しい点 がございます。SIDSを厚生省の心身障害研究の中でお世話いただいています東京女 子医大のK教授に今日来ていただいておりますので、今の補足説明と研究班としての今 後の方策について御説明ください。                        ○K教授  女子医大のKです。                           母子保健課で大変詳細な資料をつくっていただきましたが、時間が限られております ので、私が追加の資料を持ってまいりましたので確認したいと思います。        資料はワープロコピーが2枚でございます。それから、家族の会が出しているパンフ レット、いま平山部会長が申しました訴訟に関する保育園の新聞記事、この5部でござ います。                                     一番最初に、用意していただきました資料の中の18ページで、SIDSの定義につい てちょっと説明させていただきます。厚生省の班研究で最初につくったものを平成4年 に新しく改正しました。その改正のポイントは、それまでの健康状態及び既往歴から予 想が出来ず、しかも死亡状況ということを加えた点でございます。死亡状況というの は、この疾患が事故、それから最近増えてまいりました乳幼児虐待候群との鑑別が大変 重要でありますので、死亡状況という言葉を加えました。それから、かつては2つは分 けて、剖検はオブリゲーションになかったんですけれども、今回は剖検されたもののみ をSIDSという診断名の定義といたしました。しかしながら、日本ではまだ剖検率が 20%以下ですので、新しい診断書の手引きの中に、突然死の場合には、乳幼児突然死症 候群の疑いというのも最終死因に書くことが出来るというふうに指導されておりますの で、日本の統計に出ております8割は現在でも剖検のされていない症例が含まれており ます。  それから、この疾患は原因の分からない突然死が全部これに入るということではなく て、ひとつの疾患の単位であって、これは主に6ヵ月までが8割ですけれども、2歳ま でと定義しておりますが、2歳までの赤ちゃんが主に睡眠時に起こる無呼吸から覚醒し ないままに死亡に陥るという疾患と考えております。                 原因に関してお話する時間が十分ないんですけれども、今一番考えられている病態生 理は、睡眠時に起こる無呼吸からの覚醒反応が遅延するために死に至るというふうに病 態は考えられております。なぜ覚醒反応が遅れるかというのは、児が持っている出生 前、あるいは出生後の何らかのファクターが脳幹部の機能に影響を及ぼしているという ふうに考えられております。                            それから、資料に戻りまして、この疾患は新生児期を過ぎた乳児の4人に1人の死亡 の原因となっているということで、日本を含めた、いわゆる先進国では大変重要な乳幼 児の死因であるということでございます。日本でも平成6年の乳幼児死亡率が4.2 %、 新生児死亡率が2.2 %ですから、新生児期を過ぎて亡くなる赤ちゃんは2人しかいない 訳ですけれども、そのうちの0.5 %がこの病気で亡くなりますので、4人に1人という 計算になります。こういう医学的な重要性に加えて、今まで元気であった子ども、昨 日、小児科の先生に診てもらって元気であったという子どもなども、いわゆる生活の場 である家庭───ある症例は託児所ですけれども───で亡くなるということで、当事 者の 家族に精神的なショックがあるということ。これの医学的、あるいは行政面から のサポートが必要である。                             それに加えて、この病気がだんだん一般の人に知れ渡るようになるにつれて、今の若 いお母さん方が、そうでなくても育児でいろいろトラブルがあるのに、輪をかけるとい うことで、どのようにこの病気を正しく理解させるかということも一つのポイントにな っております。                                  それから、部会長が申されました訴訟の問題が大変多く起こっております。資料の新 聞記事ですけれども、この方々が大阪を中心としてグループをつくって本を出しており ます。そして、この人たちは託児所、保育所の関係者で新しい保険をつくろうというよ うな動きを持っております。それから、自分たちでこの病気に関する対応策を考えてお ります。ということで、この病気が訴訟ということで社会問題になっております。私の 理解するところですと、厚生省がこの班研究を取り上げたきっかけの一つも、ホテルオ ークラでのベビーホテルで赤ちゃんが亡くなった訴訟事件が今後大きな社会問題になる だろうという予想からこの研究班を始めたと伺っております。             それから、SIDSの疫学は、一番新しい私どもの研究班の報告書が───先生方の 手元に平成8年度の報告書が届いていると思います。ここで神奈川県人口850 万のとこ ろで3年間のデータでSIDSの発生率は0.55%でした。これは、従来我々の研究班で 予測しました0.5 %に非常に近いということで、早期新生児期を過ぎた乳児の死因では 第2位でした。第1位が先天性心疾患ですけれども、ほとんど数は同じでした。という ことは、新生児期を過ぎれば───その計算はまだしていないのですが、多分神奈川県 のデータですと、死因の1位になっていたということです。資料にありますように、S IDSの発生率は2歳までで579 例で、乳児死亡の第3位になっております。      それから、SIDSの診断に関して大変大きな問題があるのは、突然死亡して救急車 で運ばれてという状況もあることで、臨床経過とか、症状が十分取りにくいということ で、この病気は診断のためには剖検のみならず臨床経過と症状、それから死亡状況の情 報がないと診断出来ないというのが病理の専門家、あるいは法医の専門家の先生の意見 です。というのは、この病気は窒息とは区別が出来ませんし、もしも犯罪があった場合 も、死亡状況と臨床所見がない場合には、病理所見だけでは簡単に判別出来ないという ことで、この3つを組み合わせるためにはどうしたらいいかということで、この資料に ありますような調査用紙を厚生省の研究班で全国の救急隊、あるいは救急施設に配った のですけれども、1つの施設が遭遇するのが年に1例あるかないかということで、配っ ておいても、その時にその紙が出てこないということで、残念ながら、この方法は不十 分であるということで、私どもの研究班で症例検討研究会というのをつくって、病理の 先生、法医の先生、救急のドクターたちで、これまでに4回会合をしておりますが、そ の中でも情報が集まらないということで、何らかの形で実際にタッチするのは警察です ので、警察へのアプローチ、あるいはそういうオブリゲーションのようなものを法的に つくらなければ、この問題は解決しないのではないかという意見が出てまいりました。  それから、SIDSの予防に関しましては、我々の研究班、それから諸外国のデータ でこの病気の原因とは直接関係ないのですけれども、発生率は明らかに育児環境と高い 相関があるということが分かっております。特にうつぶせ寝でございます。しかしなが ら、うつぶせ寝がなぜこの病気を高める要因になっているかということに関する研究が 不十分でございまして、それが分からない間に、厚生省の班研究として、そういう勧告 文面を出すことは大変慎重であるべきであるという班員が多いので、今回の報告書にも 事実のみを述べて、そのコメントは述べておりません。                しかしながら、家族の会は、世界の今までの歴史が同じような経過をたどって、研究 家がその事実を知りながらも、それを説明出来ないので、1年延ばしにしているところ で、1人でもそういう子どもを救えるならば、家族がその事実を知らせてキャンペーン をするべきだということで、見切りの発車のようにオーストラリアとニュージーランド でキャンペーンが行われました。先生方のお手元にある資料と同じような内容でござい ます。うつぶせ寝をやめる。暖め過ぎない。煙草をやめる。母乳で育てる。赤ちゃんを 1人にしないということです。これで1年の間にオーストラリアとニュージーランドで は半分に減りました。そういう事実からイギリス、ヨーロッパの国がこれを採用して、 同じように単年度で著明なこの病気の減少を見ました。                そして、3年前にアメリカがスリープ・ツー・バック・キャンペーン───バックの バックはうつ伏せから背中で寝るという意味と、このうつぶせ寝というのはアメリカか ら起こったんですけれども、1950年代に新生児学者たちがうつぶせ寝のほうが赤ちゃん にいいという科学的なデータをたくさん出しまして、それがアメリカの子ども全体を仰 向けからうつぶせに変えました。それが10年後ぐらいにヨーロッパに伝わったという経 緯があります。ということで、昔に戻るという意味のバックということでスリープ・ツ ー・バック・キャンペーンといたしました。そして、この2年間にアメリカでもSID Sの発生頻度が30%減っております。                        ですから、このキャンペーンをすることによって、日本でもこの病気が減るだろうと いうことは十分予想されるのですが、日本はもともとこの病気が先進国の中でも2,000 人に1人と約半分でしたので、これ以上減らないんじゃないかという意見と、先ほど申 しましたように学問的な根拠がないということで見なしておりました。しかし、家族の 会は、今月からこのキャンペーンを始め、出来たばかりのパンフレットです。これを何 万枚か刷って配り始めました。私どもの研究班がどうするかは、次年度に検討しようと 思っています。                                  最後に、もう一つの資料ですけれども、行政のサポートが関与するだろうと思う項目 を挙げてみました。これは解剖でございます。日本の病理解剖は乳児の急死であっても 2%以下で、これは乳児に限らず、大人も含めた変死解剖率も船山研究班員が東北6県 では7%、九州8県では5%という具合で、日本で非常に低いのは、とりもなおさず、 監察医制度が普及していないからでございます。これは、私と澤口研究員が東京都の解 剖率───この病気と限らない乳児の突然死の解剖率を見ますと、監察医制度のある23 区では89%の解剖率なのに、監察医制度のない都下では6%です。ですから、明らかに 監察医制度があるなしで解剖の頻度が変わる。ということは、SIDSの正しい診断、 あるいは統計、疫学データが監察医制度を完備することによって期待出来るということ でございます。これはお金の問題がかなり絡んでいるようでございます。監察医制度が 無理であれば、承諾解剖という方法がありまして、最近、東北の幾つかの県が承諾解剖 に関する予算化を少し膨らませたということが報告されております。この承諾解剖等に 関しては、資料の17ページに書いてありますけれども、いわゆる司法行政とは違って、 遺族の承諾を得て行うものでございます。                      それから、この疾患の情報がどうしても年に1回、2回遭遇するところで、あっちこ っちにポツポツあるということで、そのデータの集積が大変困難であるということで、 こういうSIDSに関する研究情報のキーステーションのようなセンターが今後の活動 のたに是非必要であると考えました。そして、その情報センターから啓蒙活動とともに 家族が行っている活動、あるいは家族をサポートするシステムが生まれてくることを考 えております。                                  それから、予防のためにホームモニタリング、呼吸をモニターする機械が使われてお りますが、残念ながら、在宅酸素の中には組み込めておりますけれども、この保険があ りませんので、保険その他のホームモリタリングのリスクの高い症例の医療補助が望ま れております。                                  それから、小さなことですけれども、これまでの研究で日本は非常に詳細な人口動態 統計が取られているんですけれども、目的外使用ということで、研究目的でもなかなか その資料が閲覧出来ないという隘路がありまして、毎年毎年大変な書類を書いて、最後 には、母子保健課のツルの一声で見せていただくということが起こっておりますので、 この辺のところも、研究の目的ならば研究員が資料を閲覧出来るという施策を採用して いただければ幸いと思います。                           最後に、これは1974年にニクソンの時ですけれども、SIDSに関する法案が出来 て、国が補助金を出すことを、こういう場合には認可するというのがアメリカでは既に あります。                                    以上でございます。                        ○部会長  ありがとうございました。                        K先生は、ここ何年間かSIDSに熱心に取り組んでいただいておりまして、疫学研 調査、原因の推定、あるいは対策に至るまでやっていただいていて、特に今後の対策的 なものも今お話をいただいたところですが、皆様方の御討議をお願いしたいと思いま す。 ○H委員  K先生のおまとめいただいたものの左肩に資料と書いてあるところの1番目医学的と いう括弧内で「新生児期を過ぎた乳児の4人に一人はSIDSで死亡する」という表現 は、これはちょっと、もしマスコミで、このとおりに文章になれば、先ほどの御説明で 分かったんですけれども、乳児の4人に1人で全部これで死ぬというふうにとられちゃ うんですね。ですから、乳児死亡の中の4分の1はSIDSだという表現で出されない と、ここのところはちょっと誤解を招くところではないかなという気がするんです。 ○K教授  新生児期が一番いろんな疾患、特に出生時の未熟性とか、仮死でなくなるので、この 表現は気をつけようと思いますが、事実は事実です。            ○E委員  ちょっと意味が違っているんですよ。4人に1人といったら、120 万生まれたら、そ の4人に1人というふうにとられる可能性があるということです。      ○K教授  乳児の死亡原因のです。大変失礼しました。               ○E委員  日本での地域特性はあるんですか。                   ○N教授  疫学は東京と神奈川と愛知の3県しかやっておりません。というのは、いま申しまし たように、調査が大変難しくて死亡小標を見るということが難しいんだそうです。3ヵ 所しかやっておりません。そして、愛知県のデータが0.6 か0.7 でした。東京が0.5 ぐ らいでした。地域差についてはデータが出ておりません。          ○部会長  小標までいかなくても、平成7年から人口動態統計でSIDSが入りましたね。これ ではどうなんでしょうか。                        ○K教授  まだ見ておりません。                         ○部会長  診断の角度は分からないけれども、ある程度分かるんですね。一頃うつぶせ寝がは やった時期があって、産科の先生の中にも、うつぶせ寝を勧める先生が広告なんかに ───あれは本当をいうとマットの広告に、ある著名な先生の推薦なんかが出ていたり してちょっと気になったことがありましたが、そういう意味では、うつぶせ寝を研究的 には慎重に扱っていらっしゃっていただいているので助かると思うんですけれどもE先 生、その辺の話というのはございますか。                   ○E委員  むしろ、どちらかといえば、小児科の保育の側からうつぶせ寝の推奨があった訳で す。しかも、NICUの実績が一番大きく出まして、産科全体としてうつぶせ寝がいい ですよということを提言したことはないと思います。特定の先生がそれを取り上げてお やりになった。H先生、そうですね。                    ○H委員  そうです。                              ○部会長  新生児室の中でのうつぶせ寝とは意味合いが違うと思うんですけれども、その辺を ちょっと御説明いただけますか。                      ○K教授  実は私どもの新生児室も、J先生のところも、今でも未熟児、病児はうつぶせでござ います。うつぶせのほうが呼吸器の横隔膜の動きとかもいいですし、心拍数も安定し、 それから体温の保持もいいですし、ガストリック・エンピティングタイム(胃からの通 過時間)も短い、それから、よく眠るということで、そういう生理学的なデータはうつ ぶせのほうがいいのはほとんどなんですが、それは病児、未熟児にとってということ で、元気な赤ちゃんにそのメリットがどのぐらいプラスになるかということは、ほんの わずかだと思います。                            ところが、日本でこれが広がったのは、小児科学会とか、小児科医会とかではなく て、もう亡くなられましたが、大関早苗というスタイリストの方が自分のお孫さんがイ ギリスで育って、帰ってきたらば、自分の孫とは思えないぐらいバタくさい顔でスタイ ルがよかったというところから、彼女はスタイリストですから、頭を刈っている時に、 日本人の頭の形というのはデコボコしてというようなことから全く素人の方が本を書き ました。それがいろんな育児雑誌に取り上げられて、そして、ある産科の先生方のグル ープが実際に赤ちゃんはよく寝ますので、保育しやすい事実があるということと、それ が結びついて一部で広がりました。ですから、私は小児科医として、あるいは新生児の 専門として忸怩たる思いがあるのは、そういうものに自分たちがちゃんとした意見を述 べないままに、日本で広がってしまったということでございます。             ○部会長  ありがとうございました。 C先生どうぞ。                                ○C委員  SIDSの診断に剖検が───最終的に先生方が全体的なもので決める。剖 検はど のぐらいの有力差があるのか、先生なんかは、一生懸命そういうので亡くなった方は剖 検はしてくれというのでしょうけれども、それがかなり有力であるのか。それから、法 廷で争いになっているところ、そういうのは必ず剖検はしてあるのかどうか、その辺は どうなんでしょうか。                           ○K教授  剖検をして、ほかの病気が分かるものは約20%、ですから、8割は剖検しても原因が 分からない。突然死なのか、窒息なのか。私は窒息というのは分かると思ったんですけ れども、専門家は分からないと言っておりますし、その窒息というのは外因死と呼んで おります。ですから、原因が分からなくても外因死であるという場合には、この病名は つけないということになります。ですから、原因が分からない内因死の場合にSIDS とつける。外因死の場合には首の周りなどに痕があるとか、顔面にうっ血があるという ことがないのですかと聞いたんですけれども、例えば枕を押しつけるとか、昔やったぬ れた紙をあてるとか、そういう方法の窒息だと、外形所見からも全く分からないという ことを法医の先生が言っておられます。                   それから、実は法医の先生方の中でも、剖検をすると、かなりの症例は、ちょっとし た気管支、肺に白血球浸潤とか、軽い炎症がありますので、そういう炎症が見られたら ば、名前をつけるべきだとして肺炎、気管支肺炎とつける先生がたくさんあります。こ れは私どもの研究班からの報告ですけれども、3人の監察専門医で1人の先生は8割S IDSとつけて、もう1人の先生は8割SIDS以外の病名をつけるということで、専 門家の間でも、剖検をしても意見が違うというのは加藤先生がおっしゃるように事実で すが、ただ、解剖しないと原因が分からないというのは、解剖して、もしも頭蓋内出血 とか、心疾患とか、ほかの疾患が2割ほど見つかりますので、それをルールアウトしな い限りは、この病気に名前をつけることは定義上も出来ないというふうにしたほうがい いだろうということになっております。                      ○C委員  現在は全国的に剖検率がすごく下がって30%どこでも割っているような様子になって まいりましたよね。ある教授なんは、万一あった時には剖検がしてなければ話にならな いよ。剖検をしておいたほうがというような進め方でやって、わりあい率を高めている というような話も聞くものですから、それはなお有力であれば、かなりもの申せるんで しょうけれども、必ずしもそうではないということにはなるんでしょうね。  ○部会長  ほかにございますか。                         ○A委員  何も分からなくて素人の質問になるかと思うんですけれども、突然の死というのが数 多くの子どもに対する観察のきめの細やかさというのでしょう、日常生活の中でのきめ の細やかさが低下しておりますね。そういう中で必然死というか、従来だったら、当然 そのことに気がついて、その原因と結果の関係も分かるだろうものを、最近の養育状況 の中でたまたま出てきた突然の死のような区別が、従来でしたら当然それが分かっただ ろうに、最近の養育環境の中でうまく分からないために判断が出来ない部分というのが あるんでしょうか、その辺について伺いたいと思います。           どうしてそういう質問を申し上げているかといいますと、そうしますと、先生から御 提案くださったサポートを必要とする項目の中に何かもう少し日ごろの子どもの行動に 対する観察とか、そうしたものをサポートするような側面が必要なのかと思います。   実は私どもは子どもの摂食行動の調査をしまして、質問に対して答えられない母親が すごく多いんです。本当にあたりまえのことが分かっていない。小さな変化にかなり大 きく驚いているんですけれども、それは日々見ていたら何でもないことである場合が少 なくないものですから御質問したいと思います。                  ○K教授  おっしゃられるとおりで、育児環境が幅広く発生頻度に関係していまして、日本が少 ないのは、もしかすると、お母さん、お父さんと川の字で寝るような、そういう生活ス タイル、育児スタイルが少なくしているんじゃないかというふうに言われております。 そういうデータも出ております。しかしながら、この病気は、お母さんが見逃した、例 えば赤ちゃんが暴れているのに見逃したというのはほんの一部で───そうい うのも 多分あると思うんですけれども、典型的な症例は、苦しむことがほとんどないんです ね。眠っているままに、そのまま亡くなる症例が典型的で、お母さんがそばで仕事をし ていて気がつかないということもあります。                   ということで、これは家族の会のお母さん方が自分の観察が不十分なために子どもを 亡くしたのではないかと大変罪の意識になりますので、それをそうではなくて、これは 保育所でベテランの保育士さんがそばで見ていても亡くなった症例があるということで 話しております。実際そういう症例があります。                   それから、この病気は、最近増えてきたか増えてこなかったというデータはまだあり ません。20年ぐらい前に、日本では愛育会で調べたデータでも大体同じぐらいの頻度な んですね。突然死なんですけれども、これは旧訳聖書に、あるお母さんが眠っているう ち自分の子どもが亡くなったので、キングソロモンのところに連れていく話があるんで すけれども、その症例も今から考えるとSIDSだろう。100 年前にイギリスでお母さ んが添い寝の間でおっぱいで窒息させた二百八十何例という論文があるんですけれども それも今から振り返るとほとんどが突然死だろう。お母さんが添い寝をしていて、おっ ぱいで赤ちゃんを窒息させるということは、よく巷で言われましたけれども、現在いろ いろ調べると、それはほとんど突然死である。お母さんと赤ちゃんは一緒に寝ている間 は───アクトグラムというお母さんの行動と赤ちゃんの行動を眠っている間に調べる 研究があるんですけれども───非常に一致率が高い。ということは、お母さんは眠り ながらも赤ちゃんのことをある程度観察している。お母さんが特別な病気とかがない限 りは、そういうことはまず起こらないだろうということで、そうすると100 年前から二 百何十何例を集めた研究が出るぐらいの発生頻度がありました。私は人間の赤ちゃんの 持って生まれた未熟性が起因にあるので、6ヵ月からは突然少なくなるんですね。2ヵ 月から4ヵ月がピークで、6ヵ月まで8割で、アメリカは1歳まで定義しているんです が、日本はいろんな事情で家族の会の方をサポートしなければいけないので2歳までに しております。ですから、ある発達の段階に起こる病気と考えております。      ○部会長  つまり、お母さんの気付きが悪かったから亡くなっちゃったとか、あるいは赤ちゃん が死にそうなサインを出していたのに見逃したということはこれに関してはないという ことです。                               ○A委員  失礼いたしました。                          ○E委員  メタアナライシスのデータを見ますと、ひどいところは15分の1ぐらい下がっていま すよね。例えばニュージーランドとか、地域的なことはともかくとしまして、これだけ 下がりますと、先ほどのように乳児死亡の4分の1を占めるということになりますと、 乳児死亡そのものが下がっているんですか。                ○K教授  下がっています。                           ○E委員  すべての国でね。                           ○K教授  そうです。かなりのパーセントです。例えばニュージーランドでは、乳児死亡のかな りの部分を占めたのが、SIDSがなくなることによって下がってきます。  ○E委員  乳児も下がっているんですね。そうすると、原因の解明はともかくとして、こういっ たキャンペーンというのは非常に大きな効果があるということになりますね。 ○部会長  K先生、さっきA先生の御諮問に関連して、今2ヵ月から4ヵ月がピークとか、未熟 性というの話があったけれども、もうちょっと突っ込んで、今考えられている、どこの 未熟性のために、こういう出来事が起こるのか。今ポシブルな原因をお話しくださいま すか。                                  ○K教授  高嶋先生がSIDSでなくられた赤ちゃんと交通事故とか、ほかの事故でなくなられ た赤ちゃんの脳幹部の呼吸中枢のところの神経の棘突起、スパインの数をクロノロジカ ルに30週、32週、35週、40週、1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月数えました。そういうスパイン の数というのは、脳のネットワークの数なんです。人間の脳というのは、最初から目の 細胞にいくシナプスが出来ているんじゃなくて、たくさんのネットワークが出来て、だ んだん使っているうちに目にいくのがつながって、そこだけ残るということで、あると ころから数が減っていく。発達につながる。ところがSIDSの赤ちゃんは正常な赤 ちゃんが38週ぐらいからだんだんシナプスの数が減っていくのに減らないものが残って いるということで、いわゆる生まれた後の適応とか、発達が遅れているというのが一つ の傍証になっているというデータがあります。                 それから、先ほどうつぶせ寝と仰向け寝のことなんですが、これはベルギーのアンド レ・カーンという、この仕事を一番やっている人の睡眠時ラボで、同じ子どもをうつぶ せ、仰向けにして脳波から呼吸から心拍から、いわゆるポリグラフをいろいろ調べてい る。ほとんど差がないんですけれども、音に対するだけの研究ですが、いわゆる覚醒反 応、音に対して眠っている時反応するかというのは、うつぶせのほうが有意に遅れてい るということで、なぜうつぶせ寝がこの病気が多いかというのは、もしかすると一番言 われている覚醒反応がうつぶせの場合に少し遅れるので、この病気が多いのではないか ということで、呼吸中枢のところの発達の遅延、あるいは適応の遅延ではないか。   ○部会長  ほかに。G先生どうぞ。                        ○G委員  もし月例分布で、発生の分布曲線をとりますと、ピークは大体どの辺になりますか。                                     ○K教授  大体2ヵ月になります。                        ○G委員  それからもう一つは、未熟児でこれを起こした赤ちゃんはいますか。    ○K教授  未熟児は疫学的には発生頻度は倍です。ただ未熟児の場合は逆にそれなりに注意され て見てしまうということがありますので。                 ○G委員  全般的なリスクファクターは非常に細かな調査をなさっているんですが、この中から 拾えるものは余りないんですか。                     ○K教授  疫学だと、先生がおっしゃられた未熟性はかなり多くのリスクにしています。低出生 体重、男児、お母さんが若い、二、三十のリスクファクターは挙がっております。 ○G委員  そうしますと、一つずつのそういうファクターがその子に同時に起これば、リスクは より高くなるということで将来は検討づけは可能になりますね。       ○K教授  そういうことで、実はシェフィールドという場所で、先生がおっしゃられたリスク ファクターの中で高いものを10個集めて点数をつける。シェフィールドのスコアリング システムというのがあって、細かいことは忘れましたが、500 点をカットする。それ以 上高い人にはルチーンにモニターをつけるという方法をやっておりました。ところが、 日本の私の研究班でそれをしますと合わないんです。場所によって違うのかということ で、そのリスク因子でスクーリングすると、余りにもリスクのことが多くなってし まって、実は今それをもうちょっと詰めようというのも研究班の仕事でございます。 ○部会長  そうすると、先生が書いてくださった行政的サポートを必要とするというか、何かも の申すというか、4番にホームモニタリングのことがありますが、これをもうちょっと 補足していただくと、どういう子にホームモニタリングまでやる必要があるというよう な、いわゆるハイリスクというか、そんなようなものの検討づけがあるんでしょうか。                                      ○K教授  かっては、前にこの病気になった子どもは数倍の確率でこの病気が起こるということ で、同胞がSIDSになった場合、リスク因子であったんですけれども、最近のデータ ではそれが消えてしまいました。双子の場合は絶対することに勧めております。  アルテという、言葉が悪いんですけれども、かつてニヤミスSIDS、未然型SID Sと言われた、呼吸が止まって救急車で運ばれて助かったという症例には必ず使うこと にしています。それから、お母さんが心配でという方には使っております。何台か家族 の会に寄付されているものを無償で貸しているんですけれども、数に限りがあるという ことで、最近、民間の会社がレンタルの制度を始めました。               ○部会長  要するに呼吸をしないでいるとブザーが鳴るとか、そういうような形ですか。 ○N教授  研究者の間にもいろいろ意見があるんですけれども、この病気は、9割以上は呼吸停 止から心停止に至ると考えられておりますので、呼吸停止の段階で気がつけば助かる子 どもがあるのではないか。実はデータはないんですけれども。        ○部会長  そういう大雑把な言い方をすると、覚醒中枢だか、睡眠中枢だか、中枢の未熟な場合 は寝ていて息するのを忘れちゃうことがあるからということですか。      ○K教授  そのとおりです。                           ○B委員  解剖の件なんですけれども、実は私、二十何年前だと思いますが、そのころSIDS という名前がなかった時代だと思いますが、多分そうだろうと思う例を経験しました。 明け方に電話で起こされまして、赤ちゃんがおかしいから来てくれということで飛んで 行ったんです。車で行ったら、もう死んでいましたから、死後30分から1時間経ってい たと思うんですが、お母さんしかいないんです。当然警察にすぐ電話して、お母さんに 行政解剖だよという話をして、お母さんは納得して行政解剖していただきました。開業 医の場合は、たしか法律で24時間以内に診ていなければというのがありますよね。です から、それを守れば行政解剖の率は上がると思います。私はその時、笑い話ですけれど も、御主人が出張中でお母さんと私と赤ちゃんしかいなかったということで、後で警察 の取調べみたいなものを受けました。たまたま私、自宅を出る前に、110 番に電話しま して、パトカーで先導してくれと頼んだんです。そうしたら、110 番の担当がうるさい ことをいろいろ言いまして、どこだ、赤ん坊の名前、何ヵ月なんだと、こっちも頭にき て、「要らないよ、間に合わないから」と言ってガチャンと切っちゃったんです。それ が記録に残っていましてOKだったんですけれども、そんなようなこともあるんです。 我々の場合はお母さんに解剖を言いやすいと思うんです。出来るんじゃないでしょう か。                                  ○K教授  先生がおっしゃいましたように、主治医であっても、24時間診ていなくて赤ちゃんが 亡くなった場合には、死亡診断書を書けなくて死体検案書なんです。ただ、監察医制度 がないと行政解剖にならない。犯罪の疑いがあるという場合には必ず強制的に司法解剖 なんですけれども、行政解剖は、行政の監察院がないとだめなので、監察院制度がない ところでは、それで承諾解剖という制度がとられつつあります。       ○H委員  非常に次元の低い話なんですけれども、今のお母さんたちの会、先ほどの仰向け寝を 産科が推奨したというようなことがあって、性格的には被害者の会というようなもので はないだろうと思いますけれども、これはそうですね。           ○K教授  全く違います。実はそういう別な会があるんです。訴訟が百何件ありますので、そう いうところには私も関与しないようにしております、このSIDSの会というのは、普 通のボランティアよりももっとボランティアだと思うんですけれども、自分たちには全 くメリットがないんです。もう既に起こってしまったことなんです。この人たちにもう 一回SIDSの不幸が襲うかというと、逆に確立が少ないぐらいな訳ですけれども、自 分たちが味わった地獄のような体験をほかの人にさせたくないということで、自分たち がそうなったのは、みんなこの病気を知らないからだからということで、この病気を何 とか少なくしたいために調査やなんかに協力しています。          ○H委員  その会は、そういう意味では非常に純粋な会だということですね。     ○部会長  ほかにございますか。D先生、何かありますか。             ○D委員  初めてのお話なんですが、さっき御指摘のあった5万分の1というデータのところの 「新生児期」のジの字がこれは多分子どもの「児」ではないかと思います。ワープロの 変換ミスだと思います。2ヵ所ございます。                ○K教授  大変失礼しました。                          ○部会長  ワープロの転換ミスという昔は余りなかった間違いです。         ○K教授  後で差しかえます。                          ○H委員  SIDSという言葉が厚生省の統計のほうへ入ったということはICD9の中にもS IDSの点から入ったということですね。                 ○K教授  ずっと前から入っていたんですけれども。                ○H委員  ICD9の時もあったですか。                     ○K教授  ありました。千九百七十何年からあったんですけれども、日本の統計の中に入ってこ なかったんです。                            ○部会長  前は何に入っていたんですか。不慮の事故に入っていたんでしょうか、それともしか るべき病名があったんですか。                      ○K教授  不慮の事故のところに入っていたと思います。              ○M(人口動態統計課)  乳児突然死症候群、あるいは乳児の突然死というのが分類されるようになったのはI CD9からございます。その場合は、原因不明の大項目がございまして、その中に、い わゆる頓死というふうにかつては言われていたものの項目の中に入っております。それ 以後は、そのための項目というのはございませんでしたので、突然の死亡、あるいは原 因不明、そういうところに振り分けられていたものというふうに考えられると思いま す。原因不明の死亡の中で乳幼児突然死症候群という形で入っております。ただ、それ を大きくまとめて死因の順位をつけるようなまとめた分類の中ではICD10の乳児死因 分類の中で、初めて順位として位置づけられ得る形で乳幼児突然死症候群は入ります。 それ以前のICD9では、基本分類、細かい分類ではありましたけれども、取り上げる ところはその他に分類されていたというような事情がございます。 ○部会長  ありがとうございました。                       ○G委員  人口動態の3冊の本が毎年出ますね。それで個別の例数がすぐ拾えるということにな りますか。                               ○M(人口動態統計課)  はい。                         ○部会長  ほかにございませんか。                        ○E委員  今のことで、死亡診断書に書く時のガイドラインは特別つくっていますか、いわゆる SIDSに関しては。                          ○M(人口動態統計課)  関してはないです。                   ○K教授  最終死因に書いていいと。                       ○M(人口動態統計課)  個々の死因についていい悪いというふうには書いてございません。こちらで指定する ことではなくて、やはり医師の判断のもとにということになります。ただ、統計をとる 場合は、疑いと書いてあっても、統計上の約束といいますか、割り切りですので、乳幼 児突然死症候群疑と書いてあって、分類上は乳幼児突然死症候群に入ります。   ○部会長  疑いでも入るんですね。                        ○M(人口動態統計課)  はい。統計のほうから、そういうふうにしてくれというよう な指示はございません。あくまで死亡診断書にそのように判断された書かれたというも のを集計するという形になっております。                     ○部会長  ありがとうございました。                        いろいろ勉強もさせていただきましたが、是非今日の御議論をまた事務局でまとめて いただければと思います。                             時間の都合もございますので、次に、第3番目の議題に移らせていただきます。3番 目の議題は、「小児薬物療法のあり方について」でございますが、この議題が選ばれま した理由と、あるいは資料のおおよそをまず事務局から御説明ください。       ○事務局  第3番目の議題として小児薬物療法に関するものでございますが、その資料の説明も 兼ねてまして、その議題を選定させていただいた理由を述べさせていただこうと思いま す。                                   資料31ページ目から37ページまででございまして、32ページに、日本小児臨床薬理学 会雑誌から抜粋させていただいております。こちらは、日本小児科学会の薬事委員会に おける小児薬物療法の実態調査結果といたしまして、現在の小児の薬物療法の問題点な どを簡潔にアンケート調査でまとめていただいております。              そして、2段落目の「まず」で始まるちょうど真ん中あたり、全登録薬剤のうち小児 における有効性と安全性が確認されている薬剤は、アメリカにおきましては6%、日本 において約10%と極めて低いという問題点がございます。ただ、アメリカでは、1994年 に所要の改正を経てきまして、randomizedh clihnical trials 以外の方法で小児疾患 への薬物療法の適用が得られる道が開かれるようとしているということで、大人にも有 効である薬剤であれば、子どもについても適応を広げていこうというふうな動きがされ ている。日本では、そういう動きがされていないということが問題ではないかという点 が指摘されております。                             32ページの下から個別のアンケートの項目にも、その論点が述べられている訳です が、32ページの下のほうに、患児の救命や治療に不可欠であり且つ国際的に適応が確立 しているけれども、小児では認められていない薬物というのはどういうものがあるかと いうことで、動脈管開存症におきますとメフェナム酸を初めとして様々な薬剤が挙げら れております。                                 33ページにおきましては、小児の使用書が曖昧になっている事例があるという点です とか、34ページにおきましては、不採算などの理由で輸入が中止となっている事例、そ して長期間の薬物投与が必要なものでも、2週間しか処方出来ない事例、そしてorphan drugsで健康保険を適用がされていないということで拡大が望まれる薬剤というのはど ういうものがあるかというのが挙げられております。                 そして35ページにいきましては、都道府県の間での地域差、問題点ですとか、小児に おいて血中濃度のモニタリングが必要な薬剤についてもどういうものがあるかというこ とで小児科医の方々の意見として挙げられております。               次に、37ページにいきますと、こちらも小児科学会さんの報告でございますが、新生 児における未承認薬の使用の実態について、現在、新生児に使用禁忌のものを初めとし て承認されていない薬物がどの程度使用されているか、その実態について、小児科学会 さんのほうで調査されておりまして、その数につきましても、現在かなり問題となって いるということで議題に挙げさせていただいているということでございます。      以上でございます。                              ○部会長  ありがとうございました。                        この問題につきましては、今も御紹介がありましたが、小児科学会の薬事委員会で委 員長をしておられます香川医大の大西教授に遠路来ていただきましたので、今の御説明 の補足的な御説明とか、あるいはこの部会を通しての御要望事項などがございましたら おっしゃってください。どうぞお願いします。                   ○J教授  説明をさせていただきます。                       ただ今、前田先生から昨年(1996年)9月発行の日本小児臨床薬理学会雑誌に掲載いた しました「小児薬物療法の実態調査結果」資料32ページの概略を説明していただきまし た。私は、唯今、「小児薬物療法の現状と問題点」という別冊のコピーを配らせていた だきましたので、そちらのほうに沿って説明をさせていただきます。          これは「日病薬誌」という日本病院薬剤師雑誌4月号に出る予定なんですが、「小児 薬物療法の現状と問題点」というテーマで総説を依頼されまとめたものです。今、日本 の子どもの薬物療法がどんな状況になっているかその実状についてお話ししたいと思い ます。                                      5ページの「はじめに」というところでございますが、ご承知のように1960年の初頭 に、大人や年長児の薬物療法の経験からは全く予想だに出来なかった、非常に有名なサ リドマイドによるphocomeliaの悲劇が発生したのが契機となって、薬物による奇形や副 作用の発生を予防するために、治験のプロトコールが非常に厳格になりました。その方 向性は正しかったのですが、結果として製薬会社や行政から子どもの薬の開発が胎児や 妊婦の薬と同じように放置され、捨て子のような状態になってしまっていると、1963年 に小児科の高名なShirkeyという先生が指摘され、そういう状態を比喩的にtherapeutic orphansと表明され記載されたのがtherapeutic orphanの語源であります。それに対し てFDAのEdwardというコミッショナーが1972年、すなわち10年後に、こういう無視された 事態に対して、非常にのろわれた状態であるということで改善を働きかけました。しか しアメリカはキャピタリズムのお国柄ですので、ほとんど問題にもされませんでした。 捨て子という表現はよくないかもしれませんが、薬物療法全体の中で、小児の薬物が孤 児のように見捨てられた状態で、これは日本だけでなくて世界的にこういう状態で今日 まで35年間経過しているという事です。一方、orphan drug という紛らわしい似たよう な言葉が同じ5ページの右側の初めてパラグラフにございます。これは薬局の片隅にい つも置かれ、実際は調剤して使われ、患者にとってはなくてはならない薬ですが、対象 患者の数が少ないため製薬会社により開発されることもなく放置されている薬をやはり 比喩的にhomelessないしはorphan drugと1968年にProvostが記載したことに端を発して おります。現在ではここに括弧で書いてありますように、「まれな疾病に対する治療薬 や必要欠くべからざる薬でありながら製薬企業にとって市場性が極めて低く採算のとれ ない薬」で、見て見ぬふりされた状態でずっときているものをorphan drugと言っており ます。同じようなorphanがついておりますが、therapeutic orphanの場合とorphan drug とは意味も歴史も全く異なっておりますので、そのことを初めに説明させていただきま した。                                     ここにご出席の委員の方は臨床の先生がほとんどで必要ないかと思いますが、5ペー ジのI.とII.の項の内容は薬剤師の先生に向けて書いたものです。I.小児科学の本質的 な特徴では、“小児科学は小児の疾病だけを対象とする学問ではなくて、健康な子ども の心身、あるいは社会性の成長と発達を対象とする学問である”ということが理解され てないために大学医学部付属病院のみならず、一般の病院においても内科中心の臓器別 疾患の考えで扱われて、非常に困っているということをここで訴えております。6ペー ジの、II.小児医療が医療の中でtherapeutic orphanに陥り易い原因について、具体的な 例を挙げました。みなさんよくご存じでいらっしゃいますが、7ページの右側に、“こ どもは大人の縮図ではない”と昔から言われており従って“小児医療は大人の医療の縮 図ではない”ということがなかなか正しく理解されず、長年にわたって日本では小児科 学が医学の中で見捨てられてきたことと関係があるんじゃないかということで、小児と いうものの本質を理解していただくためにここに書いてございます。3番目としまし て、7ページのIII.病院内での小児用薬剤の問題点を書いてあります。ここにあります ようにNICUで500 gとか、1,000 gの赤ちゃんに毎日日常的に使われている必要な 薬でありながらその使用量が少ないために病院全体を見ると誤差範囲に入ってしまっ て、削除薬品の対象になったり、使用量が少ないという理由で購入してもらえないとい うようなことが起こっておりますので、ここで指摘してあります。今回の会議の検討の 項目の(3)小児薬物療法の在り方について取り上げていただいてきましたが、先ず子ど もの特殊性を皆さんに理解していただかないと、なかなか解決しない。よほど本気に なって取り組んでいただかないと、製薬会社自身は、初めから尻込みして手を出さない というのが実状ですので、そういうことについて、総説として書かせていただいて皆さ んに訴えているのです。                              次の8ページのIV.本邦における小児薬物療法の問題点につきましては、先ほど事務局 から御紹介いただきました。私が薬事委員長をしている時に、実態調査を致しまして、 8項目のアンケートについて薬と疾患との関係が明らかになりました。資料の32ページ から37ページにその全文を記載して頂きました。こういう重要な問題を何とか解決して いただけないかと思っております。私は現在小児科学会の薬事委員会の担当理事をして おり、熊本大学医学部小児科の松田一郎教授が現在薬事委員長でやっておられますの で、いろいろお願いしているわけです。それと同時に、私自身としましても、何度も薬 務局のほうへ伺いまして、どうしたら解決出来るかということにつきまして見解をお聞 きしました。現在の法律と機構の下での問題点の一つは、先ほど紹介していただきまし た薬、特に新生児におきましては未承認薬というのが日常的に使われている事だと思い ます。  10ページの表4新生児未承認薬調査結果という一覧表がございますが、さらにこれ以 後に再調査をしますと、実際は86種類の薬が、新生児NICUで日常的に使われている ということが分かってきております。そういう薬をorphan drug として指定していただ いて解決しようとしますと、恐らく100 年ぐらいかかるんじゃないかと思います。従い まして、別の次元で取り組んでいただかないと解決出来ないんじゃないかと思います。 薬務局の担当の先生の立場ではorphan drug しか解決の道がないおっしゃるのです。そ ういう取り組み方ですとorphan drug が増える一方というか、therapeutic orphanの状 態からの脱却はとても出来ないと思います。また仮に一部にものがorphan drug で認定 されましても、日常的に使う薬につきましてorphan drug の指定を受けますと、使用す る毎に報告書を書かないといけないという非常に煩雑なことが起こって、現場の医師が 非常に困るということです。今までorphan drug でインドメタシンが一つだけ通ってい るのですが、もっとありふれた薬が八十何種類もorphan drugで仮に通ったとしたらその 報告書を書くのに非常に手間がかかり肝心の医療ができないという問題が出て参りま す。もっと別な次元で取り組んでいただかないと、therapeutic orphanからの脱却とい うことは難しいと思います。端的に申しますとそういうことです。           それから次に、13ページのところですが、V.米国における小児薬物療法のtherapeutic orphanからの脱却への胎動ということでまとめさせていただきました。これはアメリカ のFADが日本と同じように子どもの薬がtherapeutic orphanの状態になっているもの ですから、それを何とか改善しようということで取り組んで1996年の12月13日迄の期限 付きで救済策が出されました。先ほど申しましたように大人で治験をやったものの成績 をある程度子どもにそのまま外挿出来るようなものは、そのまま同じことを子どもでや らなくてもよい。大人のデータで流用してやるという救済策をFADが出しておりま す。  13ページの表6に、FADのサマリーの全訳を載せさせていただきました。それの もっと詳細なものが表7として14ページから15ページに追加情報という形で(事務局の ほうに英語の原文はファックスでお送りしてございますが)全訳しまして、掲載をさせ ていただいております。                             最後の15ページに、前母子保健課長がエンゼルプランについてスポット小児科医に書 かれましたように、非常に深刻な問題が起こっているということで、子どものいろんな 問題を最大限に尊重するように配慮して施策を推進すべきであるという文部、厚生、労 働、建設の4大臣の合意がなされているようですが、その精神を、こういう子どもの薬 物療法やもっと広く小児科医療の問題の解決に是非生かしていただきたいと念願して私 の説明を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。         ○部会長  ありがとうございました。                        薬の名前がいっぱい出ているので、臨床の先生でないとちょっとピンとこないという お感じをお持ちかもしれませんが、まず今の御説明に御質問がございましたらお願いい たします。                                    さっき新生児の分だけで八十種類以上とおっしゃっていましたが、その中で現場で是 非欲しいというのは何種類ぐらいあるんでしょうか。                ○J教授  当面緊急に処置していただきたい薬が絞り込んでも数十種類ぐらいになるかと思いま す。86種類が一応リストアップされて現在集計中で、以前のが10ページ表4新生児未承 認薬使用調査結果としてございますが、それ以後、藤村正哲先生(大阪府立母子保健総 合医療センター)を中心にしてもう一度小児科学会の薬事委員と未熟児新生児学会の薬 事委員と両方でこの問題に取り組んで再調査をやっていただいております。ごく普通に 日常的に使う薬がこんなに沢山ありますから、もし仮にこれが未承認だからといって禁 止しますと、立ち所に日本の新生児医療がストップしてしまうというような状況で医療 が行われております。                          ○部会長  今新しい薬の評価とか、開発というのは条件が多くて難しい。しかも、相手が子ども だったり、さらに新生児だったりすると難しい点が多いと思うんですが、薬務局から今 日わざわざおいでいただいているそうですけれども、今のような御説明について、何か 補足的にお話しいただけることがありましたらお願いします。        ○N(薬務局)  研究開発のほうから今日、来させていただいていまして、昨日、この会議のことにつ いて伺ったものなので、具体的な施策についての回答は多分出来ないと思いますので、 何か御依頼とかがあれば、御意見として持ち帰りたいと思います。最初にそれだけ申し 上げたいと思います。                        現状に関してなんですが、orphan drug の制度の御説明を大西先生からいただきまし たが、基本的にorphan drug というのは、先ほどこれにも書いてありますが、3点あり ます。症例で人数を決めておりますのは本邦で5万人。それから製薬会社がそれぞれ開 発をするのは、それぞれのプライベートカンパニーの主義でもうけを考えてやられるん でしょうが、その時に、特に有用性の高い、医療上ニーズが高いものについては、国が 指定して後押しをしましょう。それから開発段階も、リスクが非常に高すぎるものにつ いては、時期を待って、その評価が定まったある程度の段階で後押しをしようという形 になっています。                                 その根拠としては、人数が少ないために薬価とかで回収出来ないというものについ て、いろんな意味で援護をしてあげよう。一つは予算を組んでありまして、開発する資 金の50%を上限として助成金を還付する。それから税額控除、その研究に関しての税額 控除行うということになっています。指導・助言というのは、研究開発がうまくいって いないところについては国のほうから、つくり方、プロトコールの設計、エントリーに ついての助言して、優先審査という項目がありますが、承認申請に通常タイムクローク というのがありまして、順次申請された順番に承認申請されるんですが、それについて orphan drug に指定されますと、最初に列を飛び越して承認申請の適用を受けるという ことになります。また再審査期間の延長ということは客観的に分からないと思います が、承認申請をされたものについては、再審査期間というのが設定されまして、その期 間、先発の優先性みたいなものが認められます。通常、新薬でありますと6年なんです が、これがorphan drug でありますと10年に延長されます。そういう意味で回収率を上 げる。先発権の特権を認めてあげるというような承認サイドからの研究・開発・助成と いう形のスタイルになっています。                         先ほどお話になったことで、審査のほうもお話しさせていただきたいんですが、今の 話は、むしろ、そもそも対象疾患が稀少疾病、要するに発症率が少ないという。観点で はなく、先生のお話しになったように、小児という切り口で一律適用がとれていないと いう形なんですが、特別な承認体系をとらないと、現行としては安全性が確認されてい ない以上、その病態病態ごとに、その患者さんに適用可能であろうというものを使う以 外は、不特定多数の患者に、研究ないし、安全性が担保されていない段階で、厚生省が 認可を与えるという形については、まだスタイルとしては整っていないという形になる のが見解になると思います。いまICHという形で海外の相互承認乗り入れということ の調停も行っておりますが、現時点で人種差繙纉チに人種差の大きいものもあったり、 ましてや小児であると体内動態、特に新生児であると代謝系、酵素系がかなり違います ので、適用についても、ひと区切りで踏み越そうとすると、薬害という形ではね返って きかねないものですから、そこについてのハードルは、それなりの試験を行わなけれ ば、今度患者さんに大きな負担をかけるという形になりますので、そこについては、現 行体制としては適切なデータをそろえなければならないというふうな形になっておりま す。  実際に厚生省薬務局で承認申請という意味でデータに基づいて承認を行いますが、結 局一番大きいのは、薬価なしは回収の値段という形になってきますので、先ほど薬務局 というお話がありましたが、薬価の値段というのは保険局のほうで保険収載される時の 薬価水準によって決められるものになりますので、その値段によって研究開発の分野が 振り分けられたり、あるいは品目が増えたりするものですから、そこら辺についてはま た薬価等の切り口からアプローチすることが必要なのではないかと思われますが、大体 orphan drug の説明と今の審査状況について簡単にお話しいたしました。       ○部会長  ありがとうございました。                        私もよく分からないんだけれども、orphan drug に認定してもらえば、いわゆる仮免 みたいに路上は走れるけど、本免許じゃないというような感じになるんですか。    ○J教授  使用のたび毎報告をしないといけないというようなことがあります。    ○部会長  それを10年間の間に、何例かためるためにでしょうか。          ○N(薬務局)  承認後のフォローアップについて安全かどうかは詳しくないのでよく分からないので すが、日本は迅速承認とか、承認の中に種類がございません。承認は1種類ですので、 仮承認とか、仮免許みたいなものはないので、とにかく承認は一つという ことになります。今言った報告については、多分市販後調査ということで、承認は orphan  drug に限らず、限られた数で臨床試験をしているものですから、副作用の発 現率が低いもの、あるいはそういうものを取り上げ切れないままで承認することが実際 であります。  そういうものをとらえるには、市場に出回った中でも、副作用を集計して随時その添 付文書、ないし使用説明書を刷新する意味で、そのフォローに入るという形になると思 います。ですから、先生がおっしゃっていたものは、特にその辺でぎっちりとフォロー するようということで特にモニターがかかっているんではないかと思うんですが。    ○J教授  今おっしゃったようなことは私も必要だと思うんですけれども、どうも期限がついて いないみたいですね。インドメタシンにつきましては、かなり副作用の可能性を持って おりますので、これについては必要と思いますけれども、今リストアップしました10ペ ージの薬物とか、あるいは86種類の薬というようなものは、ごく日常的に世界の新生児 医療の中で使われている国際的に確立された治療薬が殆どですので、orphanという形で 取り組んで、その後も書類により報告することが義務づけられますと、1人の患者さん について、全部ひとまとめにされて、何十枚というような書類をまた別に書かないとい けないという問題が出てきます。ですから、薬によっては、例えばインドメタシンと か、副作用の可能性のある薬は確かに後の報告をきちんとやらないといけないでしょう けれども、それ以外のは一定期間はやって、そしてその間に問題が起こらなければ、世 界的にも認められている薬ですので、少なくともorphanで取り組むしか今のところ道が ないみたいなんですけれども、仮にorphan drug として承認をされる場合も、あとは実 際の現場に即した形でしていただかないと非常に困ることが起こるということを申し上 げたいんです。                              ○部会長  確認なんですけれども、これらの薬は大人には正式に使える訳で、保険もきく訳なん ですね。ただ、子どもなり、新生児なりには適用が認められていないから大変使いにく いというふうに理解してよろしい訳ですね。                ○J教授  はい。                                ○E委員  これは本当にびっくりするぐらいの数ですよね。外国が、例えばFADなんかがどう いうふうな基準をもって、新生児にやっているのか、外国との比較は薬務局はやってい らっしゃるんですか。つまり、こういう状態は、まだ小児はいいんです。大人と同じよ うだからいいじゃないかということでいいんですけれども、胎児に対する、妊婦に対す る薬剤というのも、製薬会社そのものが、胎児に対する安全性は確認されていないとい うことで逃げてしまっているんですよ。そういうことに対する薬務局サイドからの我々 に対する救済は一切ないんです。その辺は、もっと行政の面でしっかりした線を出して もらわないと困る。新生児もそれと一連のものですよね。          ○J教授  それに関連したことで発言しますと、先生がおっしゃる問題のほかに、日本は健康保 険という縛りで、それの適用になっていないという問題がもう一つ別にある訳です。外 国でしたら、そういう縛りがなくて、安全性とか、有効性が確立されていれば実際に使 われているんですが、日本では保険で適用になっていないという形のorphanという、で すから、これは非常に複雑な、異質の一まとめに出来ないような種類の薬と対象疾患に よって、もっときめ細かく分けて、そして取り組まないといけないということを私も13 ページのところに書いておきました。今日は第1回目ですので、非常に大雑把な全体像 だけ御理解願えればと思って説明させていただきました。          ○H委員  今の保険適用の問題なんですけれども、結局実際にお使いになった場合には保険申請 はたてまえ上出来ないんですね。全部自費で親がかぶるというような形にさぜるを得な いんですね。                              ○J教授  安いものですから、そのままコストがゼロの形で扱われていることが多いです。                                       ○H委員  医療側で全くかぶっているということですか。              ○J教授  そうです。                              ○H委員  請求しないんですか。                         ○J教授  はい。ですから、例えば無呼吸発作に対してアネオフィリンやテオコリンを使うとか いう場合ですと、大人の何十分の一とかいうような量なものですから、薬価としては誤 差範囲な訳です。ですけれども、実際に調剤とか、投薬するとかいうところにものすご く手間をかけておるんですけれども、全然それが反映されないという形になっている訳 です。ですから、薬価として請求しても、通っていないと同時に、計算しても全然点数 にならないというか、そういうことが新生児の場合、いろんな面でいっぱいあるんです けれども、何しろ500 g前後の成育限界の近辺の赤ちゃんが多数を占めているものです から、そういう場合はなおさら薬の量というのが非常に少なくて手間ひまだけかかると いう問題が横たわっている訳です。                    ○事務局  保険局の所管になりますので、それはこちらのほうでまとめて、そちらのほうに要望 していただくようにいたします。                     ○部会長  量が少ないから大したことないけれども、それを使うために大変な手間とリスクを もってやっていらっしゃるということでございますね。            ○J教授  しかも、モニタリングをしないといけないんですけれども、かなり副作用のある薬も あるんですが、そういうものはみな保険で認められていないという状態になっているま す。                                  ○C委員  健康保険で使っていいよというもの以外のものは使ってはいけないということになっ ていますから、しかも、健康保険法でやりとりして請求しているほかに、認められてい ないものを請求してお金をとるということは出来ないことになっている訳です。 ○J教授  ただになる訳です。                          ○C委員  ただならいいのかどうか。例えば一つ伺いたいんだけれども、乳児に関しては安全性 は確立されていないというのはよく書いてありますよね。それを認識すれば使えるの か、あるいはどうなのかという、それはどうなんですか。           ○N(薬務局)  薬務局でお答え出来ることではないので、サポーティブな意見としてお聞きいただき たいと思います。                          医事法のほうで、医師の権限という範疇に入ると思います。お金の問題ではなくて、 医師が医療上、特定の個人、不特定多数ではなくて、病態を確定している患者さんにお 使いになる場合は、その辺を使うことも出来る。要するに医療行為であれば、何を薬と するか、それを医師の個人責任に帰着するものであって、それがたまたま製薬企業がつ くっているものも、そこら辺の石ころと同じように、特に有効であると思えば、それは 医師の個人の責任の中で出来るものだと思っております。薬務行政の中で承認という形 は不特定多数、どのような方がお使いになっても、あく程度の幅では飲み込める、その 安全性を確立するものについての申請行為という形になっていますので、医師が個人の 責任のうちの中で薬をお使いをなる分には、その責任の中で出来るというふうな形にな ると思います。                                  ただ、混合診療とか、保険点数の話になりますと、ちょっとその辺は厄介になるかと 思いますが、物質の安全性と使用の適正という問題とお金の問題はまた別と考えていた だければと思います。                              ○C委員  薬務局の方の言われるのはまこにそのとおりなんだけれども、大学で、我々が厚生省 からの共同指導とか、そういうところでは、一切それ以外のことはやってはだめだとい うのが保険局の原則になって、今言われたようなことであれば、我々が考えていること だからいいんですけれども、今はそうじゃありませんよ。してはだめだという話になっ ているから。                              ○J教授  先生がおっしゃるように、一方ではだめだと言われると医療はその瞬間からとまる訳 です。一方では、医師の裁量権というところで……。            ○C委員  保険でないのならいいので、今許されているのは、研究でやることは許されているか もしれませんけれども、少なくとも保険を使って医療をやるのに、それはだめだと言わ れている。薬務局じゃないんですよ。それは保険局だと思います。      ○J教授  厳密に追求されますと、先生がおっしゃることは医療がストップしちゃうんです。で すけれども、それをやりますと日本の医療が大混乱しますので、まあまあという形で やっているものですから。                         ○事務局  J先生の大学ではとめられていないんでしょうか。C先生の大学ではとめられている と。                                  ○J教授  とめたら日本の新生児医療は成り立たない。               ○C委員  今、共同指導で各大学みんなあれですけれども。             ○事務局  それは保険局からの指導でしょうか。                  ○C委員  保険をやる以上はそうなんですと。保険と関係がないなら、御研究はいろんなものを 使っていろいろおやりなさいということになっていますから、これは日本全国そういう ことになっています。大きなところでこういうことは言えないんだと思いますけれど も、実際にはそういうことがあるから、先生なんかが御苦労をなさっているのは重々分 かるんですけれども、そこはすごくきつくなったんですよ。          ○J教授  先生おっしゃるように、厳密に言いますととまる訳です。         ○C委員  とまると言ってはちょっと大げさなんだけれども、ほかの保険の中のものでおやりな さいというのが原則なんですよ。それ以外のものは認められない。それだったら、保険 でおやりにならないでくださいと、そういうことにはなるんですよ。     ○J教授  医療が成り立たないでしょうね。                    ○C委員  特に先端医療とか、パイロット的ないろいろなことをおやりになるのはどうぞおやり にくださいと言われますよ。それは研究費をお使いくださっておやりになるのは一向に 構いませんと。                             ○J教授  新生児医療の日常的な医療の中で、そういうことが行われているだけに、非常に問題 が深刻だと思います。                          ○C委員  どうにかしてほしい部分ですね。80とか、90のうち、これとこれとこれは早いところ というのがあるんですね。順次広げていってもらう以外にはないんじゃないかと思いま す。                                  ○J教授  先ほどの先生からの御質問のように、仮に、当面絞っても恐らく数十ぐらいあると思 います。                                ○部会長  議論が尽きなそうですけれども、時間がきてしまいましたので、御趣旨はよく分かり ました。                                ○事務局  こちらのほうで御意見を取りまとめて関連局に……。           ○部会長  その辺は母子保健課に、なお必要なことを調べていただくことにしまして、今日、J 先生にわざわざ来ていただいての御説明は、皆様お分かりいただいたと思いますので、 ひとつよろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。      それでは、あと報告事項がございますので、資料の残っているページになります。38 ページ以降でございますが、事務局お願いします。                 ○事務局  報告事項でございますが、資料の39ページからでございます。先天性代謝異常症等追 跡調査検討会という検討会を昨年の12月に設置いたしまして、3回検討を行いました。  趣旨といたしましては、先天性代謝異常症の追跡調査について効果的なシステムを確 立するということを目的といたしておりまして、学識経験者等による検討会を厚生省に 設置し、意見の調整を図ってまいりました。平山先生にも委員長をお願いいたしまし て、検討内容としまして、マス・スクリーニング追跡調査システムについて、神経芽細 胞腫マス・スクリーニングについて、マターナルPKU対策について、そしてマス・ス クリーニングの新しい対象疾患について検討していただきました。  その検討の経過は40ページ、41ページと簡単にまとめておりますが、最終的な考え方 として、42ページと43ページと2ページにわたる考え方をメモとしてお配りさせていた だいております。                                 中身としましては、マス・スクリーニングの追跡調査システムについて全国データを 一元的に管理して情報を解析する。国はスクリーニング事業の評価を行い、県はスクリ ーニング検討委員会を設置するということ。そして神経芽細胞腫のマス・スクリーニン グにつきましては、この事業を継続するとともに、国は心身障害研究の様々な課題とし て研究を進める。そしてマターナルPKU対策については、患者・家族に対する教育・ 啓発を行うとともに、その主治医に対するPRを今後とも広げていくということと、新 しい対象疾患につきましては、胆道閉鎖症がかなり有力視されておりますが、関係学会 等との調整を行いながら導入の可否を決めるべきであるという点が42ページの考え方の メモでございます。                               43ページの最後のページですが、マス・スクリーニング追跡システムの構築につい て、国の役割としてスクリーニング事業の評価、そして都道府県の役割としてスクリー ニング検討委員会の設置などを御意見としていただいております。             ○部会長  ありがとうございました。                        小児慢性疾患の見直しということで、どこをどうしていくべきか、今後どうすべきか ということで御議論をいただいてまとめをしていただいたところですが、それと同じよ うに、先天性代謝異常症等のマス・スクリーニングについても、その評価をまた改めて してみて、この事業を継続する価値が十分にあるのか。もし問題点があるとすれば、ど こをどうすべきかというような意味で専門家の方々の検討会が出来て今、御説明いただ いたようなことを検討していただきました。要するにフォローをきちんとやる必要があ るということが第1でございますが、特に問題になったのは、これは新聞にも出ました けれども、神経芽細胞腫の6ヵ月におけるマス・スクリーニング、これが本当に効果を 上げているのかとか、いろいろな議論がございます。ただ、見つかっているのは事実 で、自然緩解といいましょうか、治ってしまうようなケースがどのくらいあるのか、ど の程度ならみていてよくて、どの程度なら手術をしないと命にかかわるのかとか、ある いは疫学的にも神経芽細胞腫のケースが年齢別にどうなっているのかとか、そういう問 題があります。ほかの先天代謝異常症と違って神経芽細胞腫は何といってもがん検診な ものですから、そういう意味でまた違った面があるというようなことなどが議論されま した。  要はもう少しきちんと評価の出来るデータを集めるというところから、さらに努力し ましょうということで厚生省でその対応を研究班の組織等をお考えいただいているとい うところでございます。                              そういうことでマス・スクリーニングの事業も順調に検討が進み、特にPKUの方が 大人になって次の世代を生むことが出来るようになってきたということで、マターナル PKU問題が新たに日本でも大きく取り上げられるようになったということでございま す。これは産科の先生方に、今後健康管理等よろしくお願いしなければいけない点だと 思います。そういうことを御検討いただいたということの御報告でございます。     何か御質問ございましょうか。                          もしよろしければ、さらにこの後のことが分かりましたら、フォローの方法等作戦が きちんと出来ましたら御報告をさせていただくということにさせていただきたいと思い ます。ありがとうございました。                          それでは、あと事務局にお返しをいたしますので、お願いいたします。       ○北井母子保健課長  途中抜けてしまいまして、大変失礼をいたしました。       報告事項の(2)の「本部会の委員の退任について」ということでお話をさせていただき たいと思います。  この3月31日をもちまして、任期満了となる委員の先生方が3人おられます。今日は たまたま中村委員、吉田委員は御欠席でございますが、坂本委員におかれましては、そ ういったことになりますので、いろいろと長い間ありがとうございました。もし一言あ ればお願いいたします。                             ○D委員  この部会の臨時委員で昨年拝命をいただきまして参加させていただいておりましたん ですが、当初は乳幼児の健康問題のさぐりというようなところで、私の分野からも少し は意見を述べる機会がございましたが、その後、小児慢性疾患の具体的な疾病になりま すと、私はほとんど自分の専門にも、また現在の職場にもかかわりのない話題でござい ましたので、むしろ勉強させていただくことのほうが多くて、委員としては余り成績の よろしくない委員でございましたが、どうもいろいろとありがとうございました。 ○部会長  乳幼児の健康問題の時に、学校保健との関係、給食関係等の議論のところでいろいろ な御意見をちょうだいしましてありがとうございました。これからもよろしくお願いい たします。                               ○母子保健課長  御熱心な御議論をいただいたところを抜けまして大変失礼をいたしました。最後のほ うを伺いましたが、これで結論が出たとかいう話ではなさそうでございますので、引き 続き、来年度もいろいろと御検討、御審議をお願い出来ればというふうに考えておりま す。どうもありがとうございました。                ○部会長  今日はどうもありがとうございました。                 問い合わせ先 厚生省児童家庭局母子保健課    担 当 今村(内3174)    電 話 (代)03-3503-1711