98/01/29 第5回厚生科学審議会先端医療技術評価部会議事録      第5回厚生科学審議会先端医療技術評価部会議事録 1.日 時:平成10年1月29日 (木) 14:00〜16:00 2.場 所:共用第9会議室 3.議  事:生殖医療に関する意見聴取 4.出席委員:高久史麿部会長 (委員:五十音順:敬称略)     軽部征夫 木村利人 曽野綾子 寺田雅昭   (専門委員:五十音順:敬称略)         入村達郎 金城清子 廣井正彦 松田一郎 森岡恭彦 山崎修道 5.出席団体 :日本人類遺伝学会    理事長  中込 弥男   理事  黒木 良和           理事・倫理審議委員会委員長  松田 一郎  日本臨床遺伝学会   会長  青木 菊麿 評議員  月野 隆一   評議員  前田 徹  日本弁護士連合会   人権擁護委員会第4部会委員  西岡 芳樹   人権擁護委員会第4部会委員 福武 公子 ○事務局 委員の先生で交通事情によりまして若干お遅れになられている方もいらっしゃいます が、定刻になりましたので、ただ今から第5回厚生科学審議会先端医療技術評価部会を 開催いたします。 本日は、加藤委員、柴田委員の2名の委員の皆様が御欠席でございます。 なお、既に御連絡申し上げましたとおり、本日は団体からの御意見の聴取を行う訳で ございますが、議事を公開で開催することといたしております。どうかひとつよろしく お願いいたします。 最初に、事務局の方から本日配付の資料につきまして御説明申し上げますので、御確 認をお願いいたします。本日は3種類の資料を用意いたしております。一つは、本日御 出席の団体の意見の概要でございまして、これは後刻、団体の皆様から御意見を陳述い ただきます際に参考にしていただければと思います。2番目の資料は、その説明の際に 使用する参考資料といたしまして、日本人類遺伝学会、日本弁護士連合会の2団体から 御提出いただいております。それから、3番目に参考資料ということで意見募集の関係 の資料をお届けしているかと思いますが、前回の部会で御報告いたしましたとおり、一 般の方々等から広くこの問題に関する御意見を求めるということで、先日、私どものイ ンターネットの方に掲載した資料でございます。なお、この点につきましては、記者ク ラブを通じまして一般広報もいたしております。また、障害者団体、女性団体向けの意 見募集というものも入っております。これも同じ内容のものでございますが、次回・ 次々回の部会において意見聴取を予定しておりますのが障害者団体の方々、あるいは女 性団体の方々ということでございまして、広くその意見を募集する意味で、同じもので はございますが、別に意見を求めるというような格好にさせていただいております。 もう1点、資料についての補足でございますが、委員の皆様方の前に「先端医療技術 評価部会参考資料」というファイルを用意しております。そのファイルの中に信州大学 の方から出生前診断に関連いたします資料の提供がございましたので、6番目というこ とで資料に追加をいたしております。後刻、御参考にしていただければと思います。以 上でございます。 それでは、部会長、よろしくお願いいたします。 ○高久部会長 それでは、本日の議題に入らせていただきます。本日は、生殖医療の問題につきまし て、関係する団体の方々、専門家の方々から御意見を伺いたいと思います。 それでは、早速お話を伺うことにいたしまして、事務局の方から本日の出席の方々の ご紹介をよろしくお願いします。 ○事務局 本日は、日本人類遺伝学会から、理事長の中込先生、それから倫理審議委員会委員長 で当審議会の委員でもございます松田先生、それから理事の黒木先生。続きまして、日 本臨床遺伝学会から会長の青木先生、評議員の月野先生、同じく評議員の前田先生。そ れから、日本弁護士連合会から人権擁護委員会第4部会委員の西岡先生、同じく福武先 生。以上の皆様にお越しいただいております。 なお、先ほども御説明いたしましたとおり、あらかじめ御意見の概要をいただいてお りまして、資料としてお手元にお配りしておりますので、よろしくお願いいたします。 それから、団体の皆様方にお願いでございますが、限られた時間でございますので、 誠に申し訳ございませんが、それぞれ30分程度で御説明よろしくお願いいたしたいと思 います。以上でございます。 ○高久部会長 それでは、それぞれ30分程度、御意見をお伺いいたしまして、その後委員の方々から の御質問をまとめてということになっていますので、よろしくお願いいたします。 最初に、日本人類遺伝学会の方から、中込先生、松田先生、黒木先生、よろしくお願 いします。 ○日本人類遺伝学会(中込理事長) 中込でございます。本日、生殖医療を巡る論点についてということで、4項目の話題 を頂戴しておる訳でございますが、私どもの学会といたしましては、生殖補助医療技術 につきまして、これまで議論の積み重ねがございませんので、主に2を中心に述べさせ ていただきます。 従来は、遺伝病と申しますと、稀で特殊なものという印象が長年にわたりあった訳で ございます。しかし、現在では、ほとんどあらゆる病気の発生に遺伝子が関与している という状況になってきております。生活習慣病という言葉もありますが、これは実は遺 伝的背景に生活習慣が上乗せされているものだということで、遺伝病であるとも言える 訳でございます。がん、あるいはアレルギー、アルコールの影響でございますとか、果 てはエイズなど感染症への体の反応も遺伝子が関係しているということで、ほとんどあ りとあらゆる場面に遺伝が関係している、我々みんなが遺伝子が関係する病気を一つや 二つは持っている、あるいは、少なくとも何かの病気についてハイリスクであるという 状況だと思う訳でございます。 遺伝が原因であるということになりますと、遺伝子の変化を診断することが出来ます 今出来るかどうかは別といたしまして、理屈から言えば今出来ないものも、いずれは出 来るようになるということでございます。がん細胞の中で遺伝子が突然変異で変わった ということはありますが、そういう場合を別といたしますと、基本的に遺伝子というも のは生まれてから変わらないことになります。当然ながら遺伝子診断はそのまま出生前 診断につながる訳でございます。そのような訳で、当学会は出生前診断の問題にかねて より関心を持っている訳でございます。 また、遺伝子診断あるいは出生前診断であれ、その前後には十分な遺伝カウンセリン グが欠かせません。遺伝カウンセリングはこれから広く行われるようになるだろうとい うことで、当学会といたしましては、医療保険で遺伝カウンセリングをカバーするよう にという要望を厚生省に提出しているところでございます。ドイツ等では公的保険で既 にカバーしておりますし、米国でも民間レベルの医療保険で遺伝カウンセリングをカ バーしている、という状況もある訳でございます。また、いずれ多くの国民が乳幼児期 に遺伝子診断などを受けて、それぞれ遺伝的背景に応じて生活習慣を変える、好ましい 生活習慣を身につけるということで、発病を予防するというようなことが実現するので はないかと期待する訳でございます。例えば高血圧の素因がある人は、塩辛い食事を避 けるような食習慣を子どもの頃から心がければ、これは健康にとって非常にプラスにな る訳でございます。そういうようなことを含めて、遺伝カウンセリングの需要は膨大な ものになる。米国などでは、医師だけではとても足りないということで、既に医師以外 のカウンセラーが制度として定着して国レベルの試験が行われている訳でございますが そのような形が必要であろうということで、当学会といたしましても本日出席の黒木理 事を中心に、医師以外のカウンセラー制度の定着に向けての検討を始めているという状 況でございます。 このような背景から、日本人類遺伝学会では、これまでに「遺伝カウンセリング・出 生前診断に関するガイドライン」を発表いたしました。このガイドラインそのものは、 これまでのこの部会におきまして、先天異常学会、先天代謝異常学会より参考資料とし て配付済みになっておる訳でございます。また、これまでに関連領域の五つの学会から ご支持をいただいております。ただし、そのガイドラインでは、母体血清マーカーによ る妊婦のスクリーニングの普及ということを想定していませんでした。その時点では、 母体血清マーカー検査がそれほど広く行われていなかったという状況がございます。そ こで、1年半ほど前から検討を行いまして、本日の配布資料「生殖医療に関する見解の 概要」の後ろに添付してございますが、「母体血清マーカー検査に関する見解」という ものをごく最近公表した訳でございます。 先ほど申しました「遺伝カウンセリング・出生前診断に関するガイドライン」、その 他に「遺伝性疾患の遺伝子診断に関するガイドライン」、それから、先ほど申し上げま した「母体血清マーカー検査に関する見解」、これはいずれも本日出席の松田一郎理事 が委員長を務めます倫理審議委員会でまとめたものでございますので、必要により補足 の説明等をお願いしたいと思う訳でございます。当学会として発言の必要があると考え る事項につきましては、ガイドライン或いは見解の形で公表する、という立場でござい ます。配付資料をご覧いただく事で、我々の立場は明らかと思います。 学会としては以上のような状況でございますが、私の個人的な意見として申し上げれ ば、これまで日本産科婦人科学会等の会告等は一通り目を通しましたが、大枠としては 一応納得出来る内容であるというふうに思っております。ただ、出生前診断の適応とい いますか、対象について、我々のところと日本産科婦人科学会との間には多少違いがあ る訳でございます。ごく簡単でございますが、とりあえず一通りということで、以上で ございます。 ○高久部会長 母体血清マーカーについて、松田先生、黒木先生、何かコメントされることがありま すか。 ○松田委員 ただ今すぐはありません。御質問があればお答えいたします。 ○高久部会長 それでは、日本人類遺伝学会の先生方、どうもありがとうございました。引き続きま して、日本臨床遺伝学会の先生方からよろしくお願いいたします。 ○日本臨床遺伝学会(青木会長) 日本臨床遺伝学会の青木と申します。お手元にございます「生殖医療に関する見解の 概要」に沿って御説明したいと思います。 生殖医療というのは、不妊の治療で、不妊に悩む夫婦に対して挙児の希望を与えると いうことで意義があると思います。それに関しまして、主としてこれは産婦人科医が中 心になって行っている訳でありますから、本学会としてその実態を十分に把握しており ません。ですから、ここでは臨床遺伝学的な立場から、生殖医療も含めて意見を述べた いと思います。 まず、1番目でありますが、体外受精では、ドナーによる人工授精も含めて、自然な 条件での挙児の場合と同じような頻度で、先天奇形であるとか、染色体異常であるとか その他遺伝性疾患などを含めての先天異常児の出生の可能性というのは十分存在すると いうことを考慮していただきたいと思います。一般的に言われていることですが、生ま れてくる子どもの5%ぐらいに何らかの異常が認められます。これは、優性遺伝、劣性 遺伝、染色体異常、単因子遺伝等を含めて、そういう数字がよく示されております。こ れまで遺伝性疾患といいますと、メンデルの法則に従う、いわゆるsingle gene disorde rs (単遺伝子異常)ということが言われていますが、そればかりではなくて、単因子遺 伝性疾患というものも最近ずいぶん取り上げられております。先ほど中込先生もいろい ろお話になりましたけれども、遺伝学的な立場で考慮しなければならない問題点という のは広がっているような傾向にあろうかと思います。いわゆるcommon disordersという ものも遺伝の問題を避けることが出来なくなっているということであります。ですから 生殖医療を実施するに当たりまして、遺伝学的な知識を十分に把握している医師などの 関係者も含めて、十分なカウンセリングを実施してほしいと思います。 それから、2番目でありますが、普通でもいろいろ先天異常児が生まれてくる訳であ りますが、自然の摂理で生まれてくる場合には、それらを受け入れていく可能性はあろ うかと思います。例えばドナーによる人工授精などを中心とした生殖医療技術の結果、 何らかの先天異常児の出生をもたらしたときの問題というのは、恐らく非常に複雑かつ 深刻ではないかということが予想されます。そういうことも十分に検討しておく必要が あろうかと思います。 3番目であります。確率は低いのですが、同じドナー由来の子どもの間の近親婚の可 能性ということも十分に考えられる訳であります。そういうことから、親子関係の複雑 化ということが予想されます。臨床遺伝学的な立場から、このような状況を避けるため の配慮が望まれる訳です。さらに、プライバシーの保護ということで、生まれた子ども が成人したときに、真の父親・母親を知る権利というものをどう扱ったらいいかという 問題もあろうかと思います。 4番目でありますが、精子・卵子に対する人工的操作をいろいろ加えるであろうかと 思いますが、特に、いわゆる顕微受精は先天奇形などの出生頻度が増加するということ が予想されております。したがって、そういう操作に対して、何か遺伝子に影響を与え るようなことはなるべく避けるような配慮が望まれます。それから、受精卵の扱いであ りますが、受精卵も広い意味でのヒトとしての尊厳性を持つというふうに言われており ます。ですから、受精卵の研究目的での使用ということに対しましては、卵子・精子の 提供者の同意を得るということも必要になろうかと思います。そういうことを実施する 研究機関では、やはりそこに倫理委員会が必要であろうと思います。この倫理委員会も 構成メンバーがいろいろ問題になろうかと思います。出来るだけ第三者を多くするとい うような配慮、あるいは場合によっては障害者の代表の参加ということも必要であろう かと考えております。それから、よく言われるインフォームド・コンセントということ でありますが、これはクライアントとの間にインフォームド・コンセントが得られてい れば、あとは医師個人の判断でいろいろな操作が出来るということは大変誤った考え方 であろうと思います。そういうことを防ぐような配慮が望まれます。 5番目は、多胎・減数手術は場合によってはやむを得ないということも考えられます が、出来れば多胎に至らない技術の開発が望まれます。 それから、出生前診断についてでありますが、これはむしろ我々の学会でもう少し詳 しくお話しした方がよかろうかと思います。出生前に胎児の異常を診断するという技術 は、もともとは羊水診断ということで始まった訳でありますが、妊娠中期の羊水を採取 して、その中に含まれる羊水細胞を利用して染色体異常や先天性代謝異常症の診断を行 うというものであります。以前は酵素的な診断とか、あるいは蓄積物の検索、あるいは 染色体の分析ということであった訳でありますが、最近はそれにDNA分析等が加わっ てまいりまして、精度が非常に向上しているということもあります。診断範囲も拡大さ れております。その後、絨毛を妊娠初期に採取して同じような検査が可能になった訳で ありますが、より早い段階での診断が可能となって、中絶による母体の負担が軽くなっ ているということがあります。 出生前診断は、例えば第1子が先天異常、先天性代謝異常症、あるいは染色体異常症 などで重篤な障害を受けてしまったとか死亡した場合に、次子をどうするかということ が問題になった場合に適用されるのであろうと思います。その際に、十分なカウンセリ ングを経て、両親自らの判断で実施されるということが大事であろうと思います。こう いうカウンセリングをしませんと、妊娠のたびに人工流産を繰り返してしまうという場 合が多いように思います。不都合な結果が得られた場合でも、妊娠の中絶あるいは継続 ということについては、あくまでも父母、特に妊婦個人の自己決定を尊重するというこ とが必要であろうと思います。産む産まないは両親の判断に委ねられるべきであります そういう際にも、やはりカウンセリングということが非常に大事になってまいります。 こういう出生前診断というのは、胎児が異常と診断された場合に中絶するか否かのこ とがしばしば問題になりますが、非常に重篤な疾患で治療法がなくて生命予後が極めて 悪い場合は、両親は判断しやすいだろうと思います。しかし、よく言われておりますダ ウン症候群などの場合に、中絶に反対する意見がかなり強い訳であります。胎児の異常 を理由に中絶するという考え方が障害者を差別するということになってくる訳でありま すが、この場合に、産むか産まないかを決定するのはあくまでも両親、特に妊婦の意見 を尊重するべきものとかと考えます。第三者にはこれを強制する権利はないと思います その際も、やはりカウンセリングということが非常に大事であるということを繰り返し 述べたいと思います。そういうことで、出生前診断にガイドラインというものもつくら れておりますけれども、これも十分に検討する必要があろうかと思います。特に障害者 団体の意見をよく聞いて、同意を求めるということも重要であろうかと思います。この 厚生科学審議会の場でも障害者の意見が反映出来るようにすべきではないかというよう な意見もあります。 それから、よく胎児条項ということも問題になっておりますが、これは中身は非常に 複雑でありますが、非常に重篤な疾患に限り、在胎何週までは人工流産してよいという ようなことを決めていいのかどうかということ、これは決して単純なことではないと思 います。やはり自己決定権ということを尊重する訳でありますが、胎児の生存権という ものもあります。生まれてからの生存が可能な時期になったら、やはり胎児の生存権と いうものも尊重するということが原則であろうかと思います。しかし、胎児診断は必ず しも中絶につながることではありません。出生直後に治療する可能性のある場合も存在 します。手術で治療する可能性もあり、その場合には、あらかじめ手術の準備が出来る というプラス面があります。出産の方法、あるいは出生後の治療指針の検討も可能にな ります。また、出生前診断がすべて中絶につながることでは決してありません。実際に は異常なしと判断出来る場合の方がはるかに多いのであります。例えば常染色体劣性遺 伝でありますと、75%が異常なしというふうに判断出来る訳であります。 新しい生命の誕生というのは、本来は祝福されるべきものであります。大勢に祝福さ れて生まれてくるものであります。しかし、生まれることに対して恐れを抱くようにな ってきつつあるのではないかという感じもいたします。それをどうやって取り去るか。 出生前診断の場でも、やはりカウンセリングの技術ということが非常に求められており ます。カウンセリングの重要性ということを十分に認識することが必要であり、そのた めのカウンセラーの教育・研修というものも必要であります。また、先ほど中込先生も おっしゃっておりましたように、カウンセリング料の認定ということも是非お願いした いと思います。日本臨床遺伝学会では、20年前から遺伝相談のための医師・カウンセ ラーの養成を行ってまいりました。保健婦に対しても研修を行っております。こういう 人たちが現在、全国でいろいろ活躍している訳であります。 7番目でありますが、生殖医療が少数の関係者で行われていることに問題があるとい うふうに指摘されております。やはりそこに第三者の存在ということが望ましい訳であ ります。 最後でありますが、生殖医療はヒトとしての生命の誕生を伴う技術であります。した がって、あらゆる医療の中で問題はより複雑ではないかということは否定出来ないと思 います。したがいまして、生殖医療に関わるすべての人々が守らなければならない倫理 的な課題というのは大変重要であります。各関係学会あるいは諸団体が学際的な立場で 十分に検討する必要があろうかと思います。さらに、それを社会に公表して、社会がこ の問題を適切に判断出来るようにしていくということが望まれます。新しい技術の進展 についての社会的合意を形成しながら、生殖医療が不妊に悩む人々に光明を与える医療 として大きく発展することを切に望んでおります。以上であります。 ○高久部会長 どうもありがとうございました。他の先生方、御追加をどうぞ。 ○日本臨床遺伝学会(月野評議員) 月野と申します。青木会長が申し上げましたことにほとんど尽きているのですけれど も、やはり一番大切なのは、社会・国が遺伝性疾患をもっている子どもに対して、決し て排除するのではない、生まれてきた子どもは手厚くちゃんと面倒をみますという、こ の基本が一番冒頭にあって、そこから始まる問題だと思うんです。胎児診断の結果、カ ップルあるいはお母さんの判断に委ねるという問題がありましたが、そのときに遺伝性 疾患の子どもに対して社会から逆風が吹いていれば、結果はネガティブに出てくるのは 当然ということになりますから、そのあたりを根気強く改善する必要があるかと思いま す。一般市民の方々の遺伝性疾患に対する差別といいますか、そういう子どもさんたち へのいろいろな処遇は、今、決して恵まれているとは言えないと思います。そのあたり を具体的に解決する方法を提示しないと、幾ら本人のオートノミーを尊重して個人で決 定しなさいと言っても、結論は必ず一方に傾くのは分かっておりますから、私は、カウ ンセリングも非常に重要であると同時に、国や公的な団体がこういう子どもさんもウェ ルカムであるという姿勢を根本的にまず出すべきだと思います。 ○高久部会長 よろしいでしょうか。それでは、日本弁護士連合会の方からよろしくお願いします。 ○日本弁護士連合会(福武委員) では、まず福武の方から申し上げます。日本弁護士連合会の意見ですけれども、現在 まで日本弁護士連合会としての意見はまだまとまっておりません。人権擁護委員会の中 に第4部会というものがございまして、その中に生命倫理小委員会がありますので、ま だ第4部会の意見にとどまっています。ただ、今回出しました日本弁護士連合会の意見 の概要ということ、この程度の段階については日本弁護士連合会としては一応まとまっ ているということです。もっといろいろ細かい問題になると、かなり意見の相違があり ます。まず初めにそれを申し上げておきます。 意見の概要に沿って少し話をします。まず、弁護士なものですから、どうしても人権 及び法的な地位というものをいかに重視するかということが問題になってきます。現在 法規制が日本にはありませんので、それをしなければいけないということがまず第1点 それから第2点は、その法規制を行った中においては、生殖医療審議会を必ず設置す ること。それは、別に医療機関だけでなくて、社会的あるいは倫理的、法律的な面から の委員も全部含めた審議会であること。それから、インフォームド・コンセントなどの 義務付けを行うこと。これは法律において定めるべきことと考えております。 それから3番目としては、子どもの地位と権利というものを確立しなければいけない と考えております。他の医療と違って、生殖医療で一番問題になってくるのは、生まれ た子どもをどのようにみるかという問題ですので、それの法的地位が現在のままでは非 常に不安定だと考えております。ですから、そのためには民法の改正なり何なりで子ど もの地位を確立する必要があるということです。 そして、個別的な規制もきちんと行うこと。その4点にわたってまず述べていきたい と思います。 まず、法規制の必要性ですけれども、今現在、いろいろな学会などの会告という形で 行われることについては、弁護士の方としてはかなり危惧を持っております。それは、 特に女性の地位と権利というものが余り保護されていないのではないかという点及び生 まれてくる子の権利と法的地位が確立されていないという点で、これは世界各国を見て も、いろいろな国でそれぞれの法律が出ておりますが、現在、日本ではまだ出来ており ませんので、生殖医療法を制定すべきだというふうに考えます。 それから、審議会の関係ですけれども、何を法律で許容するか、何を許容しないかと いうことはやはりオープンにされるべきだと思うんです。そして、利用の要件を定める ために、審議会を国で設ける、あるいは各都道府県に設ける。両方設ける必要があるか もしれませんが、それを設けていくことが必要です。そして、医療技術を利用するにあ たっては、認可を受けた専門の医師によって、不妊の原因とか治療の方法とか、リスク とベネフィットをきちんとインフォームド・コンセントした上で同意を得ること。これ は書面による同意です。それから、カウンセリングも必要だと考えております。特に弁 護士の方が気にかけておりますのは、非配偶者間人工授精の問題です。これについては もう少し詳しく述べたいと思います。 まず、非配偶者間人工授精に関しては、本当に生殖医療と言えるのかどうかという根 本的な問題があります。つまり治療ではないのではないか。言葉が悪いかもしれません が、これは科学的な意味では他人の子どもを女性が産むという形になりますので、それ は不倫に一部あるいは結果としては近い形だと考えております。そうすれば、それを不 妊治療という名前で行っていくのが果して妥当なのかどうかということをかなり危惧し ております。したがって、その場合には、生まれてくる子どもとの親子関係及び夫婦の 関係をきちんと考えること。それから、養子制度というものがございますので、それと の比較考量をきちんと行う必要があります。生まれた子どもの父親は一体どうなるのか という点についてまできちんとカウンセリングをした上で同意を取っていて、そういう 場合に限って行われる必要があるということでございます。 それから、今日、子どもの地位と権利に関しては少し詳しく述べたいのですが、まず 子どもの法的な地位を確立するためには、夫の同意書面が定型的に必要であるというこ とです。特に非配偶者間人工授精によって生まれた場合には、今はどういった法律にな っているかといいますと、これは資料をお見せして申し上げた方がいいかと思います。 今日配付された説明用参考資料の23ページをご覧いただきたいのですが、これは民法の 規定です。民法 772条に「嫡出の推定」というものがあります。これは「妻が婚姻中に 懐胎した子は、夫の子と推定する」ということです。懐胎したということは、今の日本 では出産をしたというふうに考えております。つまり子どもを出産した女性が母親であ るということで、そのような届出がなされています。戸籍法の条文もそこにございます が、26ページの「出生」です。これは、医師や助産婦などが書くものについては母親の 氏名を書くことになっておりますが、戸籍の届出については父母の氏名を書くことにな っております。そうすると、非配偶者間人工授精で生まれた子どもについては、恐らく これは法律上の夫婦の子どもとして出されるものですから、父親の欄には法律上の夫の 名前が書かれることになります。そうすると、「妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と 推定される」という形になります。推定するということは、夫の子とみなすという意味 ではなくて、とりあえず夫の子であると考えるという程度のものでありますので、その 後に否定される可能性があるということになります。 否定されるということはどういうことかといいますと、夫婦が円満にあって、子ども もこの父親の子であるということを疑っていない段階では何の問題もないのですが、子 どもがある程度大きくなって、どうも父親とは似ていないとか、少しおかしいのではな いかと考え出したとき、それから夫婦が離婚をするときに「これはおれの子ではない」 とか「あなたの子ではない」という話が生まれてくる可能性があること。それから、か なり将来的になるかもしれませんが、夫が死亡した場合に相続が発生します。相続が発 生したときに、他の相続人から「あれは夫の子ではない」というようなことを言われた 場合に、親子関係の不存在確認の訴えが出される可能性があります。今の民法では、夫 の方から嫡出否認の訴えを出すことは出来ますが、それは期間が極めて限定されており ますし、非配偶者間人工授精によって生まれた場合に、夫が嫡出否認の訴えをすぐ出す ということはちょっと考えられないですが、今後いろいろな問題が起こってきて、親子 関係不存在確認の訴えが出されたときに、今、実務では何が行われているかといいます と、血液鑑定とか、DNA鑑定などによって親子関係を鑑定いたします。非配偶者間人 工授精の場合には、それはほぼ100%否定されるという形になるだろうと思います。私ど もが聞いている限りでは、非配偶者間人工授精のドナーについては、ABOの血液型は 合わせるけれども、それ以外については合わせていないというふうに聞いておりますの で、これはやはり否定されるのではないかということです。そうした場合には、子ども の地位というものは不安定になります。 そして、今の民法では、実子として届け出た場合には、それは養子としての効力は認 められないというのが最高裁の判例でございます。したがって、ずっと実子として育て てきた子どもが、実はこれは虚偽の出生届であったということになった場合には、養子 としての効力はありませんので、夫と子どもとの間には何の親子関係もないという形に なります。そういった問題が発生いたします。そして、今の民法では特別養子制度とい うものをつくっております。それは資料の24ページから25ページにわたって書いてあり ますが、特別養子を認めています。これは、例えばある夫婦の子どもを別の夫婦の子ど もにするときに、子どもが15歳未満の場合には、もともと血のつながりのある夫婦が同 意をして別の夫婦との間の養子縁組をするというのが通常の養子縁組ですが、それより ももっと小さい子どもの段階で、つまり生みの夫婦との関係を絶つやり方があるんです もう10年ぐらい前になりますが、昭和62年にそれが出来ております。そうした場合には 特別養子として裁判所が許可をした場合には、子どもについては養親子関係があたかも 実子であるような形で、それのみを親子関係とみなす。産んだ親については親子関係を 断絶するという形の規定であります。 そのような規定がありますので、これで特別養子というものが、ちょっと見た目では 分からない、あたかも実子であるかのような形の書き方になっております。このような 制度をつくったのは、菊田医師が生まれた子どもを別の夫婦の間の実子として届け出て 社会問題になったということを契機にして出来た件でございます。そういうことを考え れば、特別養子という制度はむしろ利用すべきではないかということと、もう一つは、 法律的に見れば、非配偶者間人工授精の子どもはドナーを提供した男性との間の子ども であって、実質的には夫にとっては養子であるということが実態だと思います。そうい う点で、子どもの地位を保護するためには、今申し上げたところを鑑みれば、夫の子ど もとみなして、ドナーの子どもではないということを明記する必要があるのではないか ということでございます。したがって、これについては民法を改正する必要があると考 えております。 では、子どもが自分のために、親がどのような人であるか、あるいは子どもが自分の アイデンティティは一体何であるかということに疑問を持った場合に、非配偶者間人工 授精の子として生まれたということだけで本当に満足出来るのかどうかという問題が必 ず出てくると思います。別に親子関係を確認する必要はないのですが、親が誰であるか を知りたいというのは子どもの権利として私は当然のものだと考えております。それは 子どもの権利条約においても、やはり明記されているものだというふうに考えます。そ うすると、非配偶者間人工授精によって生まれた子どもの記録を現在は各病院が管理し ていると思いますが、それで十分かどうかというと、十分でないと考えております。し たがって、何らかの形で子どもが記録にアクセスして閲覧出来るだけの権利が必要にな ってくるのではないかということです。したがって、その記録を厚生省とか、あるいは 外郭団体が半永久的に、いわば戸籍的なものとして50年から100年ぐらい管理する、その ような制度が必要であるというふうに考えております。 それから、ドナーに関して記録を顕名で残すということになってくれば、精子をミッ クスして何人かの分を一緒に使って、誰が親か分からないというやり方はとるべきでは ないと思いますので、それは記録として残しておく必要があると思います。このような 意見に対しては、恐らくドナーの記録を顕名で残して子どもがアクセス出来るシステム をつくるということにすると、では、ドナーになる人はいなくなるのではないかという 議論が多分出てくると思うのですが、それは、子どもの権利というものを考えた場合に は、やはり子どもの権利の方を優先すべきではないかというふうに考えます。ですから まだ今の段階では非配偶者間人工授精などによって生まれた子どもがさほど大きくなっ ていない、あるいは問題が表面化していないからいいのかというと、そういう訳ではな くて、あと10年後、20年後、30年後には大きな問題になってくると考えますので、この ような法律をきちんと改正し、生殖医療法をつくっておく必要があると考えております それから、出生前診断については、ここには直接書いておりませんが、ほぼ全体で考 えておりますのは、出生前診断そのものを拒否する訳ではありませんが、中絶する場合 には、現在の母体保護法により身体的あるいは経済的条件に合致した場合だけ認めると いう形になっておりますので、それに合致した形での要件があるのかどうかということ で堕胎を認めるという形になるのかと思います。ですから、出生前診断で遺伝子病があ った、なかったということだけで認めるということは、母体保護法違反になりますので それは認められないというふうに考えております。 それから、個別の問題に入りますが、受精卵とか精子とか卵子などについて凍結保存 が可能になっております。ただ、今の民法では、先ほど申しましたように、父親の推定 というのは、妻が婚姻中に懐胎した子ということで、婚姻解消後300日までの子どもにつ いては夫の子と推定されております。それ以上過ぎている場合には、それは推定されな いんです。2年も3年もたってから夫の精子を使って子どもを産んで、それが夫の子で あるというような言い方が出来るかどうかについてはかなり疑問を持っています。です から凍結保存期間については、やはり婚姻中で、かつ3〜5年に限るという形で、条件 を付けなくてはいけないのではないかというふうに思っております。 あと、代理母などについては原則的には禁止すべきである。これは、母体に対する影 響その他いろいろな問題でございます。出生前診断については、重い遺伝病などを除い て、そもそも余りすべきではないというのが意見ですが、特にそれについては今はまと まっておりません。それから、胚の研究などについては、やはり受精後一定の期間まで に限って、それ以上はだめである、あるいは、クローンなどの遺伝子操作については禁 止する、商業的な利用については刑事罰をもって禁止する、という形での生殖医療法を きちんと早急につくるべきではないかというふうに考えております。 私の方はとりあえずそこまでで、あとは西岡委員の方に回します。 ○日本弁護士連合会(西岡委員) 特に補足することはないですけれども、この第4部会は医療部会ということで、前は 脳死の問題等をやっていた訳です。今回の生殖医療についても、部内でアンケートをし たりいろいろした訳ですけれども、なかなか全員一致で一定の結論が出るということは ない。現在の日本弁護士連合会のこの問題をプロパーでやっているところでもそういう 状況だというのが1点です。 それからもう1点は、さっきも指摘されましたけれども、生殖医療というのは本当に 不妊治療なのかどうか。AIH(配偶者間人工授精)の一部の部分については治療と認 められる部分はあるけれども、それ以外の部分についてはほとんど治療と言えない人為 的な生命操作ではないか。そういう意味で、当事者の自己決定、あるいはインフォーム ド・コンセントだけではなくて、社会的にかなり関与すべき分野ではないかというふう に思っています。 それから、さっき中絶の話で自己決定権という話が出ましたけれども、この問題は自 己決定権だけがキーワードではなくて、自己決定権というのは確かに一つのキーワード ではあるけれども、もう一つは、やはり子どもの法的地位がきちんと配慮されていなけ れば、本人が望んで、医療技術でそれが出来るのだからいいじゃないかという問題では 決してない。その辺について、今後どうあるべきかということについて学際的に議論を 進めるべきではないかというふうに思いますので、その点だけ補足させていただきます ○高久部会長 どうもありがとうございました。今、日本人類遺伝学会、日本臨床遺伝学会、日本弁 護士連合会の皆さん方から御意見を伺いました。委員の方から、あるいは御出席いただ いております専門家の方々の間ででも結構ですから、御質問あるいは御意見があったら どうぞ。 ○木村委員 大変重要な問題につきまして、簡潔に御説明いただいて大変参考になりました。三つ ばかり質問があるのですが、第1は、これは私どもが今属しております厚生省の厚生科 学審議会の部会ですが、厚生省では閣議決定に基づいて基本的に公開ということで大変 に御努力していただいて、今日も事務当局からインターネットのいろいろな関連の資料 もいただきましたが、本日出席の学会の代表の方々も含めて、積極的な対応をしていた だいて、こうやって公開の会が恐らく私どもの審議会としては初めて行われた訳です。 その事務的なことの背景につきましては、これはインターネットで募集されて、いろい ろなリスポンスがあったと思うのですが、大体何通ぐらいここに参加したいということ があって、そして今日、何人ぐらいおいでになったのかということを含めてお答えいた だきたいというのが一つです。 あと二つばかり質問があるのですけれども。 ○高久部会長 簡単にどうぞ。せっかく学会から来ていらっしゃるので、主に学会の方に質問してい ただければと思います。 ○事務局 事務局の方でお答えいたしますが、今回、インターネットを通じてということととも に、記者クラブを通じまして幾つかの新聞等に書いていただいたりした訳でございます が、初回ということ、準備期間も短いということもございまして、一般傍聴の方につい きましては23名の方から応募がございまして、今日は全員来ていただいているという状 況でございます。 ○木村委員 どうもありがとうございました。これからもこういう形で是非公開でやる方向でいく ことが、国民に開かれた厚生省の大きな責任だというふうに考えております。 質問の内容に入りますが、日本人類遺伝学会から御配付いただきました資料の中の下 の方を見ますと、「出生前診断に関する見解」というところがございまして、その中で 最初のところを見ますと、「絨毛採取、羊水穿刺など、侵襲的な出生前診断は下記のよ うな妊娠について考慮される」と書いてあるんです。考慮されるというのはどういう意 味なのかちょっと不明だったのですが、その中のa)は夫婦のいずれかが染色体異常の 保因者である。それから、c)のところで高齢妊娠とありますが、日本人類遺伝学会で は、こういう場合の考慮されるということとの関係で、高齢妊娠という場合に、学問的 にどれぐらいの年齢をもって高齢妊娠と言うのかという具体的な内容につきましてお伺 いしたいと思います。 あともう一つございますが、ひとつその点をお答えいただければと思います。 ○日本人類遺伝学会(中込理事長) その件は、倫理審議委員会で原案をまとめていただきましたので、松田委員長の方か ら答えていただきます。 ○松田委員 お答えいたします。その前に倫理審議委員会の構成をお話ししたいと思いますが、現 在は学会委員以外の方にも入っていただいて、この審議会を構成して会議を行っており ます。そのことをまず申し上げておきます。 考慮されるというのは、英語で言うとメディカル・インディケーションといいますか メディカルを取ってもいいのですが、いわゆるインディケーションということです。つ まり、次の場合に考慮されるというのは、実はこの前の方に文がありまして、どういう ことかというと、「クライアントが診断検査の施行を要求しても、医師が社会的・倫理 的規範に照らして、もしくは自己の心情として同意出来ない場合には、これを拒否する ことが出来る」というのがあります。つまり、例え妊婦が要求してきても、それが社会 的もしくは倫理的におかしい、アグリー出来ないという場合、もしくは医師がプロライ フであるとか、もしくは宗教的な心情でそれを拒否したいという場合には拒否出来ると いう項目があります。それとある程度関連している訳でして、次のような場合に、クラ イアントが訴えてきた場合には、それを考慮出来るということは、メディカル・インデ ィケーションとして考えることが出来るという判断です。つまり、これ以外のことを要 求した場合には、それは社会的な判断として不都合であろうというふうに判断しようと いう考えです。 更に、高齢妊婦というのは、日本産科婦人科学会にもこのようなことが書いてありま すが、日本産科婦人科学会は「35歳以上」というふうに規定してありまして、我々は年 齢は規定していないですけれども、心情的には35歳というのを頭の中に描いております 以上です。 ○木村委員 それに関連してでございますが、この間、私の友人の配偶者が妊娠して産婦人科に行 きましたら、すぐその場で出生前診断を行うというふうに一方的に言われたということ です。こちらが言った訳でもなく、メディカル・インディケーションでもなく、当然の こととして「それじゃ、出生前診断をやりましょう」ということになった訳ですが、そ うしますと、その場合は恐らく年齢的な要因でしょうか。35歳以上であったということ になるのでしょうか。そこら辺の対応が、医療側から積極的に勧めるということになり ますと、いろいろな問題が出てくるのではないかと思うんです。 ○松田委員 今の点にお答えいたします。実は、出生前診断というのはどういうクライアントに対 して行われているかといいますと、1993年のときに厚生省のサーベイ(発生動向調査) をやっています。それによりますと、97%の場合は染色体異常が対象になっております 残りの場合が single gene(単遺伝子)の異常とか、そういう話になります。97%のう ちの約70%が高齢の35歳以上の人が対象になって行われています。ですから、先生がお っしゃったのはどうか分かりませんけれども、一応そういうことになっています。 その次の問題ですが、今おっしゃったように、インフォームド・コンセントをとらな いでもしやっているとすれば、我々としては同意出来ないということでございます。な ぜならば、「遺伝カウンセリング・出生前診断に関するガイドライン」というのが前に 学会から提出されておりますが、それによりますと、十分にカウンセリングをやって、 しかも、書面でのインフォームド・コンセントをとらなければいけない。しかも、終わ った後ももう一度カウンセリングしなければいけないということが決められております ですから、その医師が行ったことはルール違反だと思います。 その次の問題は、今のことに関連しますが、これは中込理事長の方から説明してほし いというお話もございますので、今日「母体血清マーカー検査に関する見解」というの が出されています。これは、1月19日に私どもがやった仕事ですが、ここに書いていま すように、現在は血清マーカーをチェックすることによって、35歳以上の人と同じぐら いの高率でダウン症児とか、そのほかの幾つかの染色体の異常が推定出来る、リスクが 推定出来るという状態です。つまり、その後に出生前診断を行わなければ確定診断は出 来ませんが、一応そういうことが出来るということが分かっています。 ただし、これは大きな問題がありまして、日本の国の場合にはそれを一部のコマーシ ャルの会社がやっている訳ですけれども、その場合にもインフォームド・コンセントが 十分にとられていないというのが第1の問題です。2番目の問題は、これは確率の問題 ですから、当然、日本では、しかも人種によっても違います。ですから、日本人につい て行ったデータをベースにしなければいけないのに、必ずしもそれが行われていない会 社もあります。その点は、今日は時間がありませんのでこれを読んでいただきたいと思 いますが、幾つか問題がありますし、決してこれはルーチン(慣例)で行う方法ではな いということです。つまり、妊娠している方について、年齢を問わずルーチンに行う方 法ではないというふうにわれわれは考えています。そこで、そこに書いてあるような マーカー検査に対する見解というものを出しました。これはイギリス、アメリカではか なり広く現に行われておりますが、それにしても、日本の国ではまだ幾つか問題が残さ れていますので、特にコマーシャルレベルで行われることに対しては、われわれとして は非常に嫌悪感を持っております。 ○日本人類遺伝学会(中込理事長) ただ今の木村委員のお話に関連する訳でございますが、出生前診断は、羊水診断その ものは、先ほど話が出ました厚生省のホームページを来る前にちょっと拝見してきたの ですが、全国で80大学の医学部で年間4,000例程度の出生前診断が行われている。つまり 限定的な対象で行われているというふうに理解される訳です。大学だけが全てではなく て、他の病院もありますが。 ところが、最近、一部の大学では、訪れる妊婦の7割が母体血清マーカー検査による 出生前診断を受けているというような状況があります。それから、一部の開業医などで は、検査会社と組みまして大々的に(建前は勧めていないということですが)実質的に 勧めているようです。実は妊婦さんに配布している資料の現物のコピーを私ここに持っ ておりますが、その資料を見ますと、例えば妊娠何ヵ月ではこういう検査を受けなさい と、当然、妊婦さんが受けるべき検査が列挙してある訳です。その中に母体血清マー カー検査がちゃんと入っていて、知らない妊婦さんは当然に全員が受ける検査と思って 受けることになります。私、これは実質的には勧誘に当たると思いますが、そういうよ うな実態があるということでございます。 羊水検査等についてはそれほど問題はないのですが、母体血清マーカー検査による出 生前検査、あるいは出生前検査もどきというものが、1件2万円で、全国120万人の妊婦 に普及すれば240億円の市場になる、というような発想で一部動いている方たちがあるや に思えるものですから、これは急いで何らかの対応が必要であると思いまして、松田委 員長の倫理委員会にお願いして、「母体血清マーカー検査に関する見解」というものを 大至急まとめていただいた、というのが実状でございます。 実際に、かなり積極的に勧めているような実態があるやに思っております。と申しま すのは、例えば虎の門病院のように、こういう検査があるということは明記している、 しかし、積極的に勧めていないという病院では、数%程度しか妊婦さんがそういう検査 を受けません。ところが、一方、ある私立大学病院では妊婦さんの7割が受けているそ うです。勿論、マスコミの報道等によってそこへ多少集まりやすいということはありま すが、実際にはかなり勧めていると思えるような状況が確かにございます。  以上でございます。 ○高久部会長 他にどなたか。 ○金城委員 今お話を伺ったのですけれども、そうすると、日本人類遺伝学会その他ではきちんと 考慮してそういうお話になっているにもかかわらず、現実には商業化がどんどん進んで いく。それに対して、今後どういう対応をとるのか、お医者様方の倫理とか、そういう ものだけでは難しいような気がするのですけれども、何か具体的な対策をお考えでしょ うか。 ○松田委員 今の御質問に対してお答えいたします。まず第1の話ですが、我々が対応する前に、 もう既に1992年からコマーシャルベースでの母体血清マーカー検査というのは日本に入 ってきています。 第2点は、これからどのようにしなければいけないかという問題ですが、その場合に 現在、厚生省のもう一つの班で母体血清マーカー検査に関しての実態調査が行われてい ます。今年の初めにサーベイの用紙を送ってありまして、現在、私どもの方に返ってき ておりますので、これは厚生省の班会議の方で結果が出てきてから実態が分かると思い ます。 第3番目ですが、その過程で私どもは四つの検査会社にヒアリングを行いました。そ の結果、幾つか分かりましたことを5項目にまとめて既に厚生省の方に報告を出してお ります。内容はどういうことかというと、今日は持ってきていませんが、一番最後に書 いてあるのですが、これから先のことを考えると二つのことが言えると思います。一つ は、それを望んでいる方がいるということです。つまり、妊娠をなさっている方でそれ を望んでいる方がいるということです。第2点は、したがって、それを禁止してしまう とか、やめてしまうということはほとんど不可能だろうと思います。3番目には、そう しますと、どのようにして行われるのが最もフェーシャナブルなのかという解決法に導 かれると思います。そのためには、現在行われている方法をこのまま認めることは勿論 出来ない訳ですから、やはりプロスペクト(将来)にこれから先を見越して、はっきり したデータがないと前にも後ろにも進めないだろうというふうに思います。ですから、 これが日本の国に今入ってきていますし、やめる訳にいかないと思います。ですから、 これをちゃんとするためには、今、中込理事長が話をしましたように、こういう検査法 があるということは情報として知らせなければいけないと思いますけれども、これを勧 めることはすべきではない。存在するということを知らせないということが起きますと これはフェアではありませんから、知らせなければいけないと思います。そこの時点で 正しいインフォメーションを与えて、チョイスしてもらうということが大事だと思いま す。 そうすることが、患者さんと言っていいのか分かりませんが、仮にダウン症児の方達 の生活そのものに対しての偏りのない、十分な説明が片一方でなければいけないという ふうにわれわれは考えています。というのは、産科の先生たちには悪いのですが、実際 にその子どもたちを診ていくのは私たち小児科医がほとんどです。したがって、むしろ 小児科医の人たちの方が、子どもたちがどういうように育っていくのか、社会にどのよ うに適応しているのかというのをよく知っています。そういうことに対するインフォ メーションというのは正しい形で与えられなければいけない。そして、そういうものを チョイスするかどうかは、お母さん、もしくはカップルの自由意思によるものでなけれ ばいけない。そういうふうに考えていまして、検査法そのものに対する問題があります ここに書いてありますが、つまり検査そのものがどれぐらいフォルス・ポジティブ(疑 陽性)があるのか、フォルス・ネガティブ(疑陰性)があるのか。そういった問題があ りますので、そういったデータを蓄積しなければいけないということです。現時点では データそのものは十分ではありません、と我々は思っています。 ○金城委員 では、そのガイドラインをつくっていこうということを考えていらっしゃると。 ○松田委員 ガイドラインはつくりました。「母体血清マーカー検査に関する見解」という形で検 査のエバリエーションから一応全部書いてあります。これ以外にも、四つの検査会社に ヒアリングが終わった後の見解を、もう既に厚生省の方に報告してあります。 ○廣井委員 私は産婦人科医ですが、日本弁護士連合会の方にお聞きしたいのですけれども、先ほ ど産婦人科医が行っている生殖医療については、これは治療法ではないと言っておられ たのが気になります。特に最近、結婚年齢が遅くなっているせいもあって、子宮内膜症 などが非常に増えています。そうすると、従来の方法ではほとんど妊娠しません。です から、例えば卵子を取り出して体外受精しなければ妊娠率は向上しません。それから、 乏精子症、精子無力症、中には無精子症で、睾丸内には精子は作成しているけれども、 精液中に精子が一匹もないのに、どうしても子どもが欲しいという場合には、睾丸内あ るいは精管内から精子を取り出して顕微授精を行わなければ全く妊娠の望みはありませ ん。そんなことをやらないで健康な人の精子をもらってくればいいじゃないか、という 意見もない訳ではありませんけれども、どうしても夫婦間の子どもが欲しいという場合 には、そういうような先端医療技術を使わなければ妊娠しないということは事実です。 ですから、このような不妊症に新しい生殖医療技術を用いることは治療の一種だろうと 思います。  それから、生殖医療法などを策定した方がいいのではないかというような御意見もご ざいましたけれども、例えば、アメリカではインフォームド・コンセントを中心にした わりあいマイルドで、余り法的に規制をしない方向ですね。ヨーロッパなどはわりあい 法的規制をやっています。日本は、これからかなり法的規制をやるのか、もう少しアメ リカ的な形で、ある程度インフォームド・コンセントを得ればやっていいのかというよ うなところで、どのようなお考えなのか、お聞きしたいのですけれども。 ○日本弁護士連合会(西岡委員) この辺は全く個人的な見解だと思うんですけれども、現在のアメリカについては生殖 医療の規制が全然出来ていません。さっき私が言いましたように、自己決定権があるの だから、本人が望んで、医療技術があれば、かなり何をやってもいいという状況だと思 っています。そういう意味で、ある意味ではドイツなどはむしろ逆にきつ過ぎるという 感じがしないでもないですけれども、我が国のこれからの方向はやはりヨーロッパ型で はないかというふうに思っています。 さっきおっしゃった、確かに夫婦間での正常な性交渉による妊娠が難しくなってきて います。それを手助けするという意味では治療だと思うのですけれども、我が国では、 今、代理母とか借り腹とか、そういうことは認めていませんけれども、これは会告とい う何のペナルティーもないやり方でやっていまして、現にアメリカへ行ってそういう形 で子どもをもうけている、それも何人もいらっしゃるということもあります。そういう 意味で言えば、そういうものをどうするか。生まれてきた子どもについて、親に罰則を 適用するのがいいのかどうかとか、いろいろな問題がありますけれども、場合によれば 罰則も含めて禁止するというようなことも必要ではないかというふうに基本的には考え ています。 そういう意味で、当事者間が自由に自己決定出来るというものとこの問題は違うと考 えます。要するに、それは産む側の立場しか考えていなくて、子どもの立場が十分考え られていないのではないか、というふうに思っているからです。 ○高久部会長 どうもありがとうございました。他にどなたか御質問は。 ○寺田委員 今のことに関連することですけれども、日本人類遺伝学会はガイドラインをつくって やっておられる。日本弁護士連合会の方は、法律という言葉でしたが、当面は国として 何かやった方がいいという御意見ですが、日本人類遺伝学会は、国としてやるよりも、 やはり学会レベルでやっていった方がいいというようなお考えでしょうか。 ○松田委員 恐らく会長の方からは、私と違う意見が出るかもしれません。というのは、日本人類 遺伝学会で討議したことはありません。ただ、いつでも問題になるのは、会告でやった 場合には、先ほどどなたかおっしゃっていましたが、それに違反した場合に対応する方 法がないんです。弁護士会であるならば弁護士会の除名ということはあるかもしれませ んけれども、医師会の場合には強固ではありませんので、医師会の除名ということに効 力はありませんので、人類遺伝学会も、仮に除名したところで何の意味もないというこ とになります。そういうことで、私自身は余り規制に走るのはどうかなという気がしま すけれども、現在の法律で満足しているとは思っていません。やはりフランスの生命倫 理三法がよく私たちの勉強の対象になるのですけれども、ある程度の法的な規制という のは、先ほどヨーロッパ型とおっしゃっていましたけれども、まだ個人の人権よりも社 会秩序の方に重きを置こうとするヨーロッパ型が日本の国には望ましいのではないかと いうふうに私個人は思っています。現在の会告だけではかなり難しいという気は勿論し ています。 ○日本人類遺伝学会(中込理事長) 違う意見が出ることを期待されておるのではないかと思いますが、松田理事と大きく 違う訳ではございません。ただ、余り厳重な規則をつくりますと、結局、外国へ行って やることになります。今、肝臓移植にしても、他の臓器移植にしても何でもそうですね そうしますと、結局、何千万円かの費用を工面出来る金持ちだけが受けることになると いうことで、会告とかガイドラインだけでは強制力がないという問題は確かにございま すが、法律はごく緩やかな程度のもので、余りガチガチに法律で何でも決めようとする のはいかがなものかという感じも多少は持っております。 ○木村委員 先ほども中込理事長の方から御指摘があったように思うのですが、母体血清マーカー 検査の方が産業と結びついて、そこに利益が生ずるということですね。ですから、繰り 返しますが、先ほどの私の聞いた例ですけれども、その場で「やりますか」と聞かれて 「お幾らですか」と聞いたら、5万円と言われたという訳です。ですから、お金が絡ん でいる。それがいわば利益につながるということで、しかも、出来れば元気な赤ちゃん を産みたいと思っているお母さんにとっては、どうしてもそれをやらざるを得ないよう に追い込まれていくようなところが出てくることがあり得ると思いますので、その点は ガイドラインできっちりとするようなことが必要になってくるのではないかと思うので す。 その点に関連して言いますと、例えば羊水診断とか、そういうことは保険の点数は効 かない訳ですね。全く個人負担ですね。 ○日本人類遺伝学会(中込理事長) 私は保険の点数のことは詳しくないのですが、羊水診断については効かないと思いま す。 ○木村委員 それに関連して、私、先ほど質問しようと思いましたのは、日本臨床遺伝学会の方で は、20年前からカウンセラーの養成をしているということで、20年といいますと大変な 長さになる訳ですけれども、現在、実際に何人ぐらいいて、どういうところで、どうい うお仕事をしていらっしゃるというようなデータも日本臨床遺伝学会としてはお持ちな んでしょうか。 ○日本臨床遺伝学会(青木会長) データはございますが、昭和49年から757名、20年間で600人ぐらいでしょうか。毎年 1回行っていますが、30名ぐらいでございます。 ○日本臨床遺伝学会(月野評議員) 大体30名前後で、10日間かけてやります。どうしてそんなに長期間にわたってするか といいますと、今の医学部に臨床遺伝の講座が全然ない訳です。だから、トレーニング を受ける場所がないということで、基礎から始めていかないとなかなかカウンセンリグ のところまで到達しないということで、メンデルの遺伝の法則から始まって、カウンセ リングが出来るところまでやっていきます。それで10日間かかる訳です。実際にそこで ロールプレイとして遺伝相談も実際にやって、それに対して検討していく、そういう作 業の講習会を20年前からやっています。最近は、それだけではまだ足りないだろうと考 えまして、今ここで問題になっているような、最近のいろいろな新しい問題があります から、それに関して集中的に講習会を2日間やります。今回は、家族性ポリポーシスに ついて2日間、ディスカッション、講義、ロールプレイを含めてやってきました。我々 の日本臨床遺伝学会はそういうぐあいに今までずっと地道にカウンセラーを養成してき て、さらに、ドクターだけでなしに、保健婦さんも3,000名〜4,000名受講をされており ます。 ○日本人類遺伝学会(中込理事長) ただ今お話になりましたようなカウンセラーの養成というのは、実は日本人類遺伝学 会で第1回目をやったんです。そのときの指導者の方が、その後、日本人類遺伝学会か ら分かれて日本臨床遺伝学会をつくられたというような事情がありまして日本臨床遺伝 学会ということになっております。その間いろいろありまして、日本人類遺伝学会の方 はその後もう一度やり直すのにちょっと時間がかかったということでございます。我々 は何年か前から認定医制度をつくりまして、試験をやって、そして日本人類遺伝学会の 臨床遺伝学認定医という形で今まで370名ぐらいを医師ということで養成しております それから、アメリカでは、遺伝カウンセラーというのは医師ではない訳です。生物系4 年を終わって、その後、修士課程2年間の教育を受けて、純然たる遺伝カウンセラーと いうものをつくる。これが 1,000名単位でいる訳でございますけれども、こういう制度 も必要であろうということで、これから臨床遺伝学会、その他関連の方たちと相談をし ながら、最終的には何らかの形でコメディカル(医師を除く医療関係従事者)のような 形でカウンセラーの国家資格のようなものをつくっていく必要があるのではないかとい うことで、現在検討を始めている段階でございます。 ○曽野委員 一つは日本臨床遺伝学会にお伺いして、一つは日本弁護士連合会にお伺いしたいと思 いますけれども、私はこの中で文学部系の自然科学に一番弱い立場でございますので、 素人の質問かもしれませんけれども、国民の過半数は私のような程度の人もいると思い ますので、あえて質問させていただきます。 この資料の4ページの日本臨床遺伝学会の(2)のところに「自然の摂理で生まれてくる 様々な先天異常児に対しては、」とございます。この「自然の摂理」というのをどうい うふうに解釈していらっしゃるのか。私は、かつて中近東で、セム族というのは今でも ほとんどいとこ結婚でございます。ファーザーズ・ブラザーズ・ドーターズ・マリッジ で、これは聖書の世界なのでお笑いになるかもしれませんが、母マリアとヨゼフはいと こ同士である可能性が非常に多い訳でございます。今でも一族80人全部が血族で結婚し て、つまり、これは血族と同宗教以外のものを信じないという砂漠の民の疑心から出て いるものでございますが、そういうところに参りますと、素人ですから分からないです けれども、健康そうなお子さんが80人とか90人という大家族で、われわれの言うマンシ ョンみたいなところに住んでいて、みんな元気なんです。それで、思わず「いとこ結婚 は悪いと日本では通俗的に言うんですけれども」という質問をしたら、「みんな元気で すよ」と。その旅行のとき、たまたま日本人のドクターにお会いしましたら、中近東で は流産を一切止めていないと。私、本当か嘘か分からないですけれども、「マルフォ メーション(奇形)がある場合の子どもはどちらかというと流産をしやすいから、それ を止めていないのです」というお答えが一つありました。こういう問題を含めまして、 「自然の摂理」と簡単におっしゃいますけれども、どういうふうにお考えになっている のかというのが一つでございます。 それから、もう一つは日本弁護士連合会に伺いたいのでございますけれども、私は脳 死臨調や、いろいろなところに参りますと、すぐ日本弁護士連合会はこうだと言う。そ れに驚嘆したんです。もし文芸家協会でございましたら、絶対に一人の考えを許さない 80人いれば80人の考え方があるんだと。ことに、例えば窃盗をどういうふうに考えるか という簡単な問題なら出ますでしょうけれども、人間の哲学とか思想に根ざしてもとい うのはどうして日本弁護士連合会が代弁なされるのか。御承知かと思いますけれども、 昔、『ミシュナー』という古いユダヤ教の教えを2世紀に集大成したものがあります。 それまで口伝でございました。そうしますと、例えば清めの方法とか、貸し借りの方法 とか、民法とか刑法とか、清めというのは宗教の中でございますが、あらゆる問題がご ざいます。それに対して、ユダヤ人の解釈をされて結論を出していないんです。例えば ラビ・ハシュナーはこう言っている、ラビ・シャンマイはこう言っていると、全く反対 のことを併記しているんです。そういう問題について、日本弁護士連合会は今後も意見 を敢然と調整出来るとお思いなのか。どうしたら文芸家協会は統一出来るようになるの か、あるいはならないのか、それを是非一度伺いたいと思っております。 ○日本臨床遺伝学会(青木会長) 曽野委員の前で「自然の摂理」という言葉を使ったのはちょっとまずかったと思いま すけれども、要するに人工的な操作を加えないで、夫婦の間に自然に生まれてくる子ど もという意味で使いました。 それから、いとこ婚のことを今おっしゃいましたけれども、日本でも、今でこそずい ぶん減りましたけれども、特に戦前はいとこ婚の率の非常に高い国であった訳です。そ ういうことが影響しているかどうか分かりませんけれども、例えば我が国での先天性代 謝異常症などは非常に頻度が低いように思っていますけれども、それがそういうことの 影響かどうか分かりませんけれども、かつてはいとこ婚が非常に高率であったというこ とがございましたが、今では減りました。 ○日本臨床遺伝学会(月野評議員) 「自然の摂理」ということですけれども、これは遺伝ということをどう捉えるかに関 わっているのですけれども、我々自身がこうしてヒトとして存在している。そのために は生殖機構の中に必ず大多数の集団と、そして大多数の集団の遺伝のタイプと違う少数 の個体をつくってきた。そういう格好で我々は遠い昔からやってきたから、今、ヒトと していられるという認識です。少しの人たちが遺伝性疾患をもっている子どもたち、遺 伝子の変異をもった子どもたちである。そういう意味で、我々の生殖機構そのものには 普遍的にそういうぐあいに、大多数だけじゃない、必ず一定の少し変異をもった個体を 生ずるという生殖機構をもったことこの事実が、我々がここまでやってこれたという認 識で遺伝性ということを見ている訳です。だから、そういう営みで生まれてくる子ども たちが先天異常であり、遺伝性の疾患であるという認識です。だから、特別変わった子 どもであるとか、そういう認識は持っていません。生殖機構には必ず付随して生まれて くる、そういうつもりで見ていかなくてはいけないと考えます。 それから、いとこ婚の問題ですけれども、これは昔から、ある一定の集団でいとこ婚 血族婚が繰り返されると、いわゆる劣性遺伝同士のホモになった個体は淘汰されていき ますから、かなり長年月たつと、そこの集団はみんな元気になるということは昔から言 われています。 ○日本弁護士連合会(西岡委員) 非常に難しい問題ですけれども、日本弁護士連合会は、ご存じのとおり、作家協会と か、あるいはこういう学会と違って強制加入団体で、弁護士をやる以上はここに加入し ないと出来ないという団体です。そういう意味で、曽野先生がおっしゃったように、全 員一致ということはまずあり得ません。さっきもちょっと申し上げましたけれども、 我々はこの問題を検討している中でも、アンケートをすれば幾つかの回答がある。 ○曽野委員 一致していらっしゃるんです。それが不思議なんです。いつも日本弁護士連合会とい う形で代表意見をお述べになるので、私は不思議なんです。 ○日本弁護士連合会(西岡委員) 一致していないんです。だから、今回の我々がつくっているこれよりもう少し詳しい 意見書においても、幾つかの点で両論併記というのがあります。これは、どちらかが絶 対正しいというものではないということで、両論併記にせざるを得ない部分があります 基本的には、この件で言えば、治療を受けたいという患者、技術を持っている医師、そ の技術によって生まれてくる子どもの立場があります。特に子どもの立場について今迄 十分な議論がなされていない、子どもの権利という視点からの検討は必要だという点に ついてはかなり一致できます。それがどうあるべきか。例えば子どもの親を知る権利に ついても、我々の中でもかなり議論しています。全員が親を知る権利がある、いわゆる アイデンティティを知る権利があるということで一致している訳ではないです。でも、 今のところ、大多数は知る権利があると考えます。一部は、そこまでやるとうまくいか ないのではないかという意見もあります。そういう意味で、我々がこういうところへ出 てくるときは日本弁護士連合会の代表として出ざるを得ませんので、日本弁護士連合会 の中の多数意見を代表して出ているというふうにお考えいただきたいんです。私個人の 意見はというと、場合によっては別の意見が出るかもしれません。でも、私は日本弁護 士連合会の代表として出ている以上は、日本弁護士連合会の大多数の意見を述べざるを 得ない立場にあるということです。 ○森岡委員 日本弁護士連合会の方にお伺いします。こういう問題では、例えばさっきおっしゃい ましたように、子どもの権利を優先すべきだといってもすべての場合にそうかと言われ ると、疑問がある場合もある訳ですね。母親としても、親の権利もある訳ですね。いろ いろな意見が日本弁護士連合会の中でも出ると思います。そこで、臓器移植の議論でも そうですけれども、法律をつくるということになると、どういう過程でつくったらいい のでしょうか。まず、国民の大多数が賛成するということがありますが、世論というの もかなり無責任です。そうすると、どのように世論を判断してどういう方法で法律をつ くっていくかということが問題になると思います。 例えば、この前の臓器移植法案の成立のときが典型例ですけれども、議員立法という 形でしたね。では、議員さんだけでこういう問題を判断すべきなのかという疑問も起こ ってくる訳です。私は法律をつくるというのは、学会などが倫理的な規制をつくってや っても規制しきれないというときに、最後の手段としてやるのはいいだろうと思うので すが、実際に法律をつくっていくときに、日本ではどういう過程でつくっていったらい いのでしょうか。そういうことについての御意見はどうでしょうか。 ○日本弁護士連合会(福武委員) 過程というのは、プロセスという意味ですか。 ○森岡委員 そうです。 ○日本弁護士連合会(福武委員) 今回については、特に審議会を設置することと子どもの法的な地位を確立するという 意味が中心です。ですから、それについては、厚生省が中心になって法案を作成するか もしそれがだめだったら議員立法でやることになります。最終的には、それは国会の方 で決める話ですから。ただ、先ほどから私どもが気になっているのは、会告とかガイド ラインをつくるときに、なぜその学会の人たちだけで決めるのかというのが大きな問題 だということです。誰が誰の親であるか、誰が誰の子どもであるかということを決める のは、やはりある程度の規制をつけておかなければ決まらない話だと思うのです。まし て、今現在の日本の民法というのはかなり古い話で、明治の話及び戦後の継ぎ足しの問 題ですので、そういう意味では生殖医療の先端技術というのはそこから抜け出てしまう んです。そういう意味では、むしろ整合性がとれていないと考えておりますので、子ど もの法的地位が危うくなっているという現実があります。ですから、それを変えるため には法規制が必要であるということです。あと、法律的な手段というのは、いまのとこ ろは議員立法及び各省庁からの政府提案しかありませんので、そのどちらかでやるしか ないと思っております。 ○高久部会長 日本人類遺伝学会は、学会以外の人も入っていただいてつくったとおっしゃっていま したね。だから、学会だけで決めているのではないかと思います。 ○廣井委員 我々は、その上で会告を出しているということでございます。われわれの団体だけで 決めている訳ではございません。 ○日本弁護士連合会(福武委員) それは分かるのですが、ただ、例えば違反した場合に何のペナルティーもないという ことで、むしろそれをオープンにした形で議論をして、何らかのガイドラインを出して いく、そのためのものとして生殖医療審議会のようなものを設置して、そこが出すべき だということです。 ○高久部会長 先ほど話題になった母体血清マーカー検査は、大きな問題だと思いましたが、母体血 清マーカー検査のための検体を採るのは産婦人科のドクターですね。日本産科婦人科学 会で母体血清マーカー検査についての見解か何かを出しておられるのでしょうか。 ○廣井委員 本当はこういうマーカーが導入されてくる前に学会で議論しなければいけないのです けれども、どちらかというと、コマーシャルが先に入ってしまったということで、学会 というのは大変遅れていると思います。しかし、学会ではそれなりの委員会などで検討 しておりますので、先ほど松田先生が言っておりました厚生省の班研究の中にも学会員 が出ております。日本母性保護産婦人科学会の先生方も協力して、現在、実態を調べた 上で何らかの形で対応しようという考えているところでございます。 ○高久部会長 どうもありがとうございました。他にどなたか。 ○軽部委員 先ほどのカウンセリングの件ですが、私、非常に興味があるのですが、今、両学会で 別個にカウンセリングをやっているということですが、医師以外のカウンセリングを受 けた人はどのぐらいいて、そういう人は職業としてカウンセリングというものをやって いるのでしょうか。そこら辺の情報をちょっと教えてほしいのですが。 ○日本臨床遺伝学会(月野評議員)  医師以外は、保健婦さんが主体になりますけれども、大体3,000名から4,000名で、実 際にやっておられる方では、保健所でやっておられる方もいます。そこで医師とドッキ ングしてやっている形が一番多いタイプです。保健婦さん単独でやっているところはほ とんどありません。 ○軽部委員 では、それはビジネスとして成り立っている訳ではないんですね。 ○日本臨床遺伝学会(月野評議員) 保健所の業務の一環としてやっております。 ○軽部委員 どうもありがとうございました。 ○日本人類遺伝学会(黒木理事) 現在日本人類遺伝学会では医師以外の遺伝カウンセラー制度の導入に向けて動いてお ります。そこでちょっと説明したいのですが、結局母体血清マーカー検査にしても、十 分な遺伝カウンセリングがなされていないために、不都合な事態が生じているのです。 私は遺伝カウンセリングを非医師の遺伝カウンセラーが独立して行うことは考えられな いと思っています。遺伝カウンセリングのできる医師が核となり、非医師の遺伝カウン セラーがそれに協力して、或いは遺伝カウンセリングの一部を分担して行うのが理想的 だと思っています。一般的に医師と対面する患者は十分に意見を言えなかったり、また 十分な質問もできないことがよくあります。しかし、カウンセリング技術を体得した非 医師のカウンセラーには、かなり本音を話したり、とことん質問もできるのではないか と思います。例えばダウン症児が生まれた時、どういう社会支援体制があるかというよ うなことは、ドクターよりも、むしろノンメディカルな方のほうがいいだろうと思うん です。現在は日本人類遺伝学会でカウンセラー問題を検討しておりますけれども、遺伝 性疾患の広がりを考えますと、今後は臨床遺伝学会、日本小児科学会、日本産科婦人科 学会、日本内科学会、日本遺伝子診療学会など、多くの関係学会と協力し、さらに患者 代表、あるいは法律関係者等を加えて、全ての臨床遺伝領域で通用する遺伝カウンセ ラー制度を創設し、またカウンセラーの養成を早急にやらなければいけないと考えてお ります。 ○日本臨床遺伝学会(青木会長) 今の御意見はそのとおりだと思いますが、保健婦に対してそういう講習をやってきた のですけれども、何か遺伝の問題を抱えていても、それが実際に遺伝相談の場に上がっ てくるというのは、その人たちにとってもかなり決心しなければいけないような問題が たくさんあるだろうと思います。そういうところに保健婦というのが一般の家庭とのコ ネクションが非常にやりやすい立場だと言えるだろうと思います。保健婦がそういう問 題をうまく拾い上げて遺伝相談の場に持ってくる。そういう意味では、保健婦に対する 講習会はかなり効果があるだろうというふうに考えております。 ○日本人類遺伝学会(中込理事長) ただいまのお話で、それで職業として成り立つのかというお話があった訳で、まさに 国内ではそれが問題な訳でございます。例えば「病院で遺伝カウンセラーを雇ってくだ さい」と言いますと、保険の点数で認められていないから病院の収入にならない、だか らだめだということがある訳です。そこで、我々の学会としては、その実現に向けて、 まず保険の点数として認めてくださいという要望を厚生省に出しました。それから、ま だ条件等を詰めていないのですが、将来は何らかの形で国家資格として認めていただけ ないかということを希望として持っている訳でございます。以上でございます。 ○木村委員 今、大変重要なカウンセリングの問題点について御指摘されてきて、私も大変教えら れている訳ですが、先ほどの曽野委員の「自然の摂理」というところにもちょっと関係 してきますけれども、アメリカをはじめ、欧米諸外国では、専門のジェネティック・カ ウンセラーというのが教会に付属でいたりする訳です。それは、人間の生まれてきた運 命をどう受けとめていくかということを含めて、宗教者が大変関心を持って、神父の方 とか、あるいは牧師の方々で専門の教育を受けて、そしてカウンセラーを教会並びにコ ミュニティの中でやっているという状況がある訳です。そこら辺は、例えば日本の場合 は保健婦というお話がございましたが、これがネガディブに働きますと、かつて1960年 代にあった訳ですが、兵庫県など一部の地域では、むしろいろいろな欠陥が起こりそう なケースについては、保健婦の立場からリコメンデーションをしてむしろ中絶を勧めか ねないような、例えば不幸な子どもを産まない運動みたいなものがかつてあった訳です 今、そういうことは絶対にあり得ないと思いますが、そこら辺のところを日本の社会で これからどういうふうにするのかという点は大きな課題の一つだと思うのですが、その 点について、御経験のある松田委員からお話をお伺い出来ればと思います。 ○松田委員 最初に先生が外国の教会でというお話をしましたが、日本の国はよその国と遺伝的に 非常に違う風土、バックグラウンドがまずあるんです。どういうことかというと、日本 の国は、世界的にメジャーな遺伝病と言われているヘモグロビンの異常、システィック ファイブローシス(嚢胞性線維症)、アシュケナージジューにおけるテイ・サックス病 (常染色体性劣性遺伝をする。β-N-アセチルヘキソサミニダーゼA欠損によるG-M2-ガ ングリオシドーシスの一つ。乳児期より発達停滞その他の進行性中枢神経症状を示す。 眼底のチェリーレッドスポットが特徴的。)、これはありません。だから、結婚する前 にカウンセリングを受けて、または検査を受けて、サラセミアの保因者同士は結婚しな いようにという結婚前カウンセリングが制度としてあるんです。しかし、日本の国には それはない。なくてもいいということは、日本の国民はそれだけの遺伝的な負担を負っ ていないんです。ですから、そこがまず違うと思います。 それから、もう一つの問題は、先生が懸念されましたけれども、これも非常に大きな 問題です。遺伝のカウンセラーそのものは必ずしもみんな同じではないと思います。 我々は、基本的な概念とか、どういったものに問題があるかというカウンセリングの基 本や遺伝知識は教えますけれども、外国でもそうですが、何十人もの人が遺伝カウンセ リングをやっている人にアプローチして、あなた方は何を目指して遺伝カウンセリング をやっているかという話をすると、中には、プリベンション、特にダイレクト・プリベ ンションということを言う人もいます。それは、先ほどの日本弁護士連合会と同じよう に、いろいろな人がいると思うんです。ただ、我々は基本的なことを伝えなければいけ ないと思っています。 もう一つ大事なことは、医学の教育、看護学校の教育、福祉の教育、そういうところ で実際に何が行われているかというと、クリニカル・ジェネティクスの講義がないんで す。だから、看護婦さんはそれを必ず受けなければならないという状況で看護婦さんに なっていないところに問題があるんです。別な言い方をすると、我々がどんな人でも全 てミュータントの遺伝子を少なくとも五つ持っているということを知らない人が看護婦 さんになったり、保健所に入ってきたりすることに問題がある。だから、青木先生たち が言ったように、保健婦さんたちの教育が非常に大事ですけれども、本当はその前に看 護教育、医学教育のときにしなければいけないものだと私は思います ○日本人類遺伝学会(中込理事長) ただいまの松田委員の発言は、まさにそのとおりでございまして、看護教育の中で、 あるいは保健学部がたくさん出来ておりますが、その中での遺伝教育というものがほと んどなされていないということです。これは問題であると思いまして、当学会では、以 前、医学教育の中でどの程度人類遺伝教育が行われているかという調査をやったことが ありますが、看護系の大学、保健系の大学で遺伝系の講義がどうなっているかという実 態調査を、現在実施中でございます。一言付け加えさせていただきます。 ○高久部会長 時間が大分たちました。部会ではまだ報告などもございますので、各学会、日本弁護 士連合会の方々への質問をそろそろ終わらせたいと思います。日本人類遺伝学会、日本 臨床遺伝学会、日本弁護士連合会の皆様方、今日は本当にどうもありがとうございまし た。お陰様で、我々先端医療技術評価部会委員がいろいろ勉強させていただきました。 感謝しております。お忙しいところ本当にありがとうございました。 それでは、これでヒアリングの方は終わらせていただきまして、部会の議事の方に移 らせていただきます。事務局から報告をお願いします。 ○事務局 事務局の方から1点、御報告申し上げたいと思っております。先端医療技術評価部会 では、遺伝子治療臨床研究計画の確認の作業を従前の遺伝子治療臨床研究中央評価会議 から引き継いで実施しておりますが、昨年5月末に確認の通知をいたしました熊本大学 医学部附属病院におきますHIV感染者に対する遺伝子治療臨床研究のことについては 既に一部新聞等で報道されておりましたので、ご存じの先生方が多いかと思いますが、 26日に熊本大学医学部におきまして、学内の審査委員会が開催され、ベクターの供給を 担当することになっておりました(株)ミドリ十字から、米国での臨床治験の成績を受 けまして、ベクターの供給を断念するとともに、医薬品としての治験計画の届出を取り 下げたいという申し出があったことを検討されたそうでございます。 26日時点で、とりあえず委員会としては、計画の断念はやむなしという結論を出され たということでございますが、まだ書面による通知は、文部省、厚生省にはこれから提 出ということでございますので、事務局といたしまして、とりあえず口頭で御報告だけ 申し上げたいと思います。 ○高久部会長 それについて、松田先生、何か追加することはありますか。 ○松田委員 特にありません。 ○高久部会長 以前、遺伝子治療臨床研究中央評価会議で熊本大学でのエイズに対する遺伝子治療に ゴーサインを出しましたが、その後いろいろなことがありまして、最終的には、今、事 務局の方から報告がありましたような結果になりましたので、この部会で御報告して御 了承を得たいと思います。何か御意見おありでしょうか。 特にないようでしたら、これで御了承いただいたものとしたいと思います。 本日の部会はこれで閉会といたしたいと思いますが、事務局から次回のことについて お願いします。 ○事務局 次回は2月16日、月曜日の午後2時から開催いたしますが、既に御連絡申し上げてお りますとおり、場所が変更になっておりまして、会場は新霞が関ビルの5階、第4・5 会議室に変更されておりますので、再度、御注意をお願いしたいと思います。なお、次 回2月16日、次々回の3月18日の議事につきましては、障害者団体及び女性団体からの 意見聴取を行う予定といたしております。以上でございます。 ○高久部会長 2月、3月と引き続いて皆様にお集まりいただくのはお忙しいところ恐縮であります けれども、引き続いてヒアリングを行うことになっておりますので、委員の先生方、よ ろしくお願いいたしたいと思います。 本日は、お忙しいところ、お集まりいただきまして大変ありがとうございました。特 に学会の先生方、日本弁護士連合会の先生方、どうもありがとうございました。 問い合わせ先 厚生省大臣官房厚生科学課 担 当 坂本(内線3804) 電 話 (代表)03-3503-1711 (直通)03-3595-2171