98/01/09 第13回年金審議会全員懇談会議事録            第13回年金審議会全員懇談会議事録 日 時 平成10年1月9日(金) 15:00〜17:15 場 所 厚生省特別第一会議室  1 開 会の辞  2 委員出席状況報告  3 議 事   ・ 平成10年度年金関係予算案等について   ・ 資金運用審議会懇談会とりまとめ等について   ・ 次期財政再計算に向けての検討について  4 閉 会 〔出席委員〕   八 木 委 員  砂子田 委 員  岡 崎 委 員  木 原 委 員    国 広 委 員  久保田 委 員  神 代 委 員  坂 巻 委 員  都 村 委 員  富 田 委 員 桝 本 委 員  目 黒 委 員   山 根 委 員  吉 原 委 員  若 杉 委 員  渡 邊 委 員 貝 塚 委 員  船 後 委 員  ○事務局 それでは、まず事務局からお断りをさせていただきます。本日、京極会長にはお身内 に御不幸がおありになりまして急遽御欠席ということになりました。つきましては、年 金審議会令第4条第3項に基づきまして、八木会長代理に本日の議事進行をお願いいた したいと存じます。よろしくお願いいたします。 ○会長代理  それでは会長にかわりまして議事進行を務めさせていただきたいと思います。どうぞ よろしくお願い申し上げます。  それでは、ただいまより第13回年金審議会全員懇談会を開会いたします。まず委員の 出欠状況について、事務局から御報告をお願いします。 ○事務局 ただいま申し上げましたように、会長にはお身内に御不幸がございまして、本日御欠 席でございます。そのほか、高山委員、福岡委員、山田委員が御欠席でございまして、 そのほかの委員は御出席の御予定でございますが、木原委員が少しおくれておられるよ うでございます。また、目黒委員には30分程度おくれて御出席ということでございます よろしくお願い申し上げます。 ○会長代理 それでは、議事に入らせていただきます。 本日は議題は3つ考えております。第1が平成10年度の予算案等でございます。第2 が、資金運用審議会の懇談会取りまとめ、第3が、当審議会の今後の進め方等について でございます。順次御審議をお願いいたします。  それでは、まず平成10年度の年金関係予算案等について、事務局で資料を用意してお りますので、順次説明を受けたいと思います。それではどうぞ。 ○事務局  資料1でありますが、「平成10年度年金関係予算(案)の概要」を説明申し上げます まず1番目の表でありますが、保険料収入であります。厚生年金でありますが、平成9 年度に比べまして、1,922億円増の21兆7,104億円を見込んでおります。被保険者の増、 平均標準報酬月額の増といった要因であります。 それから、国民年金の保険料収入でありますが、平成9年度予算に対しまして247億円 増で2兆3,448億円を見込んでおります。保険料のアップというものも内容になっており ます。 次に2番目でありますが、国庫負担の表であります。厚生年金でありますが、平成9 年度に対しまして、1,188億円増の2兆8,302億円を見込んでおります。 なお、次の2枚目をごらんいただきたいと思いますが、平成10年度予算におきまして も、9年度に引き続きまして、国庫負担のいわゆる繰延べ措置が実施される予定であり ます。2ページにありますように、繰延べ額7,000億円ということであります。この繰延 べにつきましては、一番下のところにありますように、繰延べされた額は利子を含めま して、繰り戻されるということで法律で別途特別法が出される予定になっております。 繰延べ額は7,000億円であります。9年度は7,200億円であったわけでありまして、繰延 べ額が200億円の圧縮ということであります。 今回の繰延べでありますが、厚生年金財政では、新規積立金を生ずるなど、10年度に 必要な歳出は十分確保できており年金の支払いに支障を来すものではありません。しか しながら将来にわたり年金財政の安定と年金制度に対する信頼を確保していくためには こうした措置をできる限り早期に解消していくことが必要だと思っておるわけでありま す。 次に国民年金の国庫負担でありますが、平成9年度に対しまして、57億円減の1兆 3,265億円を見込んでおります。減になっておるわけですが、これはいわゆる国民年金の 国庫負担の平準化法というのがあったわけですが、これで当初国庫負担を減らしたもの を後の年になりますと増やすということになっておったわけでありますが、これが終了 いたしまして、この増がなくなったということで948億円ということであります。 次に福祉年金でありますが、平成9年度に対しまして、192億円減の888億円を見込ん でおります。老齢福祉年金の受給者はかなりの高齢になっておられまして人数がどんど ん減少をしておるわけであります。 次に3つ目、年金給付費であります。まず厚生年金でありますが、平成9年度に対し まして7,293億円増の18兆7,944億円を見込んでおります。なお、物価スライドにつきま しては平成10年度の予算上は1.9%を見込んでおりまして、これを前提に考えますと、老 齢厚生年金の新規受給者は平均月額で平成9年度20万1,600円であったわけでありますが 10年度予算では20万5,400円と見込んでおります。 次に基礎年金の年金給付費でありますが、平成9年度に比べまして8,516億円増の6兆 7,630億円を見込んでおります。 それから、国民年金の年金給付費でありますが、平成9年度に比べまして、848億円減 の2兆9,841億円を見込んでおります。これは基礎年金にどんどん切り替わっていくとい うことからのものでありまして、新しく受給になられる方は基礎年金ということであり ます。 福祉年金の年金給付費でありますが、平成9年度に比べまして190億円減の893億円を 見込んでおります。  国民年金の老齢基礎年金の月額ですが、こちらも同じようにスライドがあって平成10 年度の予算上は1.9%でのアップを見込んでおり、6万5,458円から、10年度予算では6 万6,692円と見込んでおります。なお、共通することでありますが、1.9%の物価スライ ドといいますのは、平成9年の物価上昇率をもとに物価スライドを行うわけであります が、9年の10月までの実績をもとに推計をしたものであります。実際には、9年の1月 から12月までの物価の動向に基づいて行われるわけでありますが、確定した数字は今月 末にならなければ出ない見込みであります。  それから、一番下の4番目、積立金であります。厚生年金の10年度の剰余金見込みは 5兆514億円でありまして、これを加えまして積立金累計は130兆1.503億円であります 国民年金でありますが、10年度の剰余金見込み6,719億円を加えまして累計9兆2,203 億円。厚生年金と国民年金とを合わせますと139兆3,707億円と見込んでおります。 2ページは先ほど申し上げましたので、3ページでありますが、先ほど厚生年金の国 庫負担の繰延べということを申し上げましたが、その対象になるものでありまして、昭 和61年に制度改正があったわけでありますが、それ以前は、厚生年金の保険給付費の20 %の国庫負担であったわけですが、61年度以後は右の四角にありますように、基礎年金 拠出金の1/3ということになりました。36年4月以降の負担分です。そこで、それ以 前の期間につきましては、従来どおり2割の国庫負担ということになっておりまして、 これを「経過的国庫負担」と申しておるわけでありますが、これについて一部を繰延べ をするということであります。基礎年金の国庫負担に関しては繰延べということはござ いません。  1枚めくっていただきまして、4ページが厚生保険特別会計の中での年金勘定であり ます。上の方が歳入でありまして、保険料、国民年金特別会計からの受け入れ、その他 の項目が挙がっております。下が歳出であります。  5ページには、国民年金特別会計のうちで、基礎年金の勘定であります。こちらも上 段に歳入、下段に歳出を記載しております。  6ページは国民年金勘定、拠出への部分でありますが、これらも歳入、歳出、それぞ れ上下に記載をしております。  7ページが福祉年金であります。上の方に歳入、下の方に歳出がありますが、下の方 の摘要欄をごらんいただきますと、受給者が9年度28万9,000人から10年度に23万6,000 人、こういうふうな減少の傾向にあるわけであります。 もう1枚めくっていただきまして、8ページをごらんいただきたいと思います。10年 度予算に関連をすると申しますか、年金現業業務の簡素・効率化の中で2点新たに実施 するものを御説明させていただきます。上の方が現況届における市町村長証明の廃止で あります。受給者はそれぞれ毎年1回現況届を御提出いただくことになっており、その 中で、生存の状況、障害の状況、さらには厚生年金の場合は就労の状況、加給年金の対 象者の状況、また、その方に障害があるかどうか、そういったことを出していただくこ とになっております。この現況届そのものは法律事項であるわけですが、生存について 市町村長の証明を本人がいただいて提出をするということになっていたわけであります けれども、これにつきましては、高齢の方が市町村の窓口に行くのはなかなか大変だ、 また、市町村の方でも大変膨大な量で事務負担が大きいといったようなことが指摘され ておりました。そういった指摘も踏まえまして、この1月から簡素化を行いました。  その内容ですが、今後は受給者本人がみずから御自分の名前を署名して出していただ き、これを信用をするということであります。また御本人が何らかの事情で、例えば手 がふるえて書けないという場合には、代理人の方が記名をするわけでありますけれども だれが代理人として署名をしたのかということを明記をしていただくということで、現 況届の事務の簡素化を行うということであります。これが1点であります。  それから、下の方でありますが、支払通知(振込通知)書の簡素化であります。御案 内のように、現在年金は年6回の支払いになっておりますが、その都度支払通知書ある いは振込通知書を御本人にお送りしておるわけでありますが、これにつきまして、毎回 毎回同じものをお送りするというのも経費の面からみて、また事務面からみてどうかと いうことでありまして、関係規定を改正いたしまして、年6回通知を年1回に改めよう ということであります。なお、年金額の改定があった場合には、これは別途その都度通 知をするということには変わりはありません。  そこで、右の効果でありますが、現行の送付件数が約1億7,500万件でありますが、こ れを年1回にすることによりまして、約1億4,400万件のハガキが軽減になるということ でありまして、その効果額でありますが80億円。現行100億円に対しまして、簡素化後 は20億円で差し引き約80億円の軽減になると考えておるわけであります。ただ、これは 満年度ベースでありますので、10年度は一番下にありますが、4月定期支払があります ので、6月には1回出します。その以後は出さないわけでありますが、満年度分の効果 は初年度はございませんで、節約額は50億円という見込みであります。  以上であります。よろしくお願いします。 ○事務局  引き続きまして、年金関係の特別会計の業務勘定について御説明させていただきたい と思います。今の資料の一番最後9ページでございます。この9ページの資料は、9月 の審議会で、社会保険事務費の国庫負担の関係で、概算要求段階のもので説明したわけ でございますが、その予算セット版でございまして、記載の表題のところに書いてあり ますが、厚生保険特別会計、国民年金特別会計、船員保険特別会計、3つの社会保険の 関係の業務勘定の合計でございます。  年金としては、国民年金と厚生年金でありますが、御案内のように、厚生年金と政管 健保は厚生保険特別会計という形で1本になっております関係で、この総計の中に政管 健保分の事務費等も入っておるわけでございます。  恐縮ですが、歳出の方からごらんいただきたいのですが、今回の予算におきまして、 業務取扱費でございますが、業務取扱費の大宗は職員の給与費等が占めておるわけでご ざいますが、予算セットで3,152億円ということで、前回御説明した3,222億円の要求 ベースよりも下がっております。これは大半が人件費ということで人件費の10年度にお ける見込みが各省共通でありますが、査定されたということ。あるいはさまざまな給与 改善の手当関係等の新規の要求をしていたわけでございますが、そういったものの査定 減、そういった関係等によって3,152億円になったわけでございます。 それから、保健・福祉事業費についても同様に、要求段階のものの査定減ということ で、3,787億円の金額になったわけでございます。この保健・福祉事業費につきましては 9年度の4,584億円に比べ797億円ということでかなりの減額になっているわけでござい ますが、施設整備費等、公益法人に対する委託費、あるいは今説明のありました業務の 節減の関係等も絡んでいるわけでございます。 こうした歳出面での変化を受けまして、上の方の歳入面でございますが、それぞれの 計数が概算要求のものと若干変わってきてございます。特に国庫負担につきましては、 概算要求段階では2,250億円の要求をしていたわけでございますが、先ほど申し上げたよ うな査定がございまして、予算セットでは2,125億円になったわけでございます。この結 果、前年度の予算に比べて751億円の減になったところでございます。 他勘定からの繰入等については大きく変わってないわけでありますが、前回9月の審 議会に御説明申し上げましたように、職員給与費関係について引き続き国庫負担を行う ということでありますが、事務費の中には職員給与以外の物件的な経費等があるわけで あり、これの財源につきましては、他勘定からの受け入れによって充当させていただく ということでございます。しかしながら、歳出の保健・福祉事業費、これは全額保険料 収入で賄っているわけでありますが、それの圧縮と相殺されまして、歳入の2つ目の欄 でありますが、本体の勘定から繰り入れます保険料財源につきましては、9年度4,586億 円に対しまして、10年度は4,576億円ということで、物件費等に保険料財源を充当しても 総額においては増になっていない、むしろ減になっているということでございます。し たがいまして、それぞれ要求段階のものと計数的な変動が生じておりますが、基本的に 職員の給与費は引き続き全額国庫負担で賄うこと、それ以外の経費については、保険料 財源を充当するけれども、保険料引上げにならない範囲内で行うという、前回御説明い たしました考え方は、この予算セットの数字においても変わっていないわけでございま す。以上でございます。 ○事務局 財政投融資と年金関係融資について御説明を申し上げます。資料2であります。  年金積立金につきましては、全額を資金運用部に預託をいたしまして、財政投融資の 原資といたしまして、被保険者の福祉に直接役立つ分野でありますとか、国民生活の向 上に役立つような社会資本等の整備に充てられているものでございます。平成10年度の 財政投融資計画につきましてもスリム化が図られているところでございます。資料2に 沿いまして、簡単に内容を御説明申し上げます。  厚生省関係の財投の資金計画全体が8兆6,686億円でございまして、このうち年金積立 金を原資としておりますいわゆる年金積立金還元融資が6兆4,085億円でございます。 まず年金福祉事業団でございますが、これは市場運用事業、グリーンピアと言われて おります施設事業、被保険者の福祉に直接役立つような被保険者等に対する融資事業の 3つの事業を行っているわけでございます。  まず市場運用事業でございますが、これは資金運用部から資金を借りてまいりまして 市場で運用するという事業でございまして、年金の財源強化あるいは還元融資事業の資 金に充てるという趣旨で行っているものでございます。平成10年度の計画額でございま すが、全体で3兆8,575億円ということでございます。そのうち償還額が2兆8,575億円 ということでございます。7年ないし10年の期間で資金運用部から借りてきております ので、その借換えに要する費用が2兆8,000億円余でございます。そのほかに1兆円の新 規資金ということでございまして、全体として、これによりまして、安定した資金運用 を継続したいと考えております。  2番目の施設事業・グリーンピアでございますが、これにつきましては、昨年6月の 閣議決定によりまして撤退するという方針になってございます。その観点から10年度財 政投融資計画には予算を計上いたしておりません。別途運営に必要最小限度必要となり ます修繕費等につきましては、特別会計において予算措置をいたしてございます。  それから、融資事業でございますが、全体で1兆6,565億円ということで必要な額が計 上できたものと考えております。そのうち被保険者住宅資金貸付でございますが、前年 度の1兆7,578億円に比べまして、1兆5,021億円ということで、20%減の予算案になっ てございます。これは財政投融資全体に通じる民業補完原則の徹底でありますとか、住 宅需要の減少、また住宅融資事業につきましても、昨年6月の閣議決定によりまして、 適切な経過措置を設けて撤退ということが政府として決定いたしておりますので、これ らを踏まえまして、所要の減額の予算案にしたものでございます。  次に社会福祉・医療事業団でございますが、これは民間の社会福祉施設、病院の整備 に要する融資を行っているものでございます。社会福祉施設の場合、一般的に言います と、国や地方公共団体の補助金で整備が行われているわけですが、1/4程度自己資本 が必要になるわけでございます。この1/4程度の自己資本につきまして、年金資金を 用いまして融資をしているわけでございます。予算額が3,841億円ということでありまし て、前年度に比べて減少しておりますが、ゴールドプラン等々の福祉三プランの推進に は支障がない額が計上されたものと考えております。  それから、1つ飛びまして、国立病院特別会計でありまして、国立病院の病棟等の施 設についても年金資金を充当しておりまして、890億円を計上してございます。 それから、地方債でございますが、地方債のうち年金資金をもって充てる地方債を特 別地方債と称しておりますが、これにつきましては1兆3,651億円を計上しております 自治省が定めております地方債計画におきまして、地方自治体がつくります病院、ごみ 処理施設、ここに書いておりませんが、社会福祉施設等の整備に要する地方債につきま しては、年金の資金をもって充てるということにされているわけでございます。 それから、環境事業団。これは環境事業団の融資事業の1/10を年金資金をもって 充てるということになっておりまして、52億円が計上されております。  最後に国民金融公庫でございますが、これは大学等の教育資金に要する費用に充てる ために年金教育資金貸付、限度額100万円で行っておりますが、これに要する経費として 125億円を計上しておるところでございます。 詳細は2ページ以降に書いておりますが、省略をさせていただきます。以上でござい ます。 ○会長代理  ありがとうございました。それでは、ただいま説明のありました事項につきまして御 質問等ございましたら、どうぞお願いいたします。 ○A委員  資料の1の2枚目のところに、繰入特例で繰延べ額が書いてある。これは累積で言う とどのくらいなんですか。 ○事務局  失礼いたしました。この繰延べは7年度からでありまして、7年度4,150億円、8年度 が8,000億円、9年度が先ほど申し上げましたように7,200億円、10年度が7,000億円とい う額でありまして、これを合計いたしますと、2兆6,350億円であります。 ○B委員  1ページ目の保険料収入のところで国民年金の収入が書いてございますが、これは徴 収率をどのぐらい見込んでいる数字なのかということが第1点です。  第2点は、5ページ目の収入のところで運用収入というのが出ていますが、これは利 率をどのぐらいと見込んでおられるのか、2点教えてください。 ○事務局  国民年金の収納率の過去の実績等から計算しておりますので、今手元にないわけです が、実績をもとに八十数%でやっていると思います。  それから、5ページの基礎年金の運用収入でありますが、基礎年金は積立金はないわ けでありますので、短期で運用部との間で行うということでありまして、その時点時点 での利回りを想定しているということであります。 ○B委員  その時点時点での利回りは何を基準にされているのですか。 ○事務局  これは見込みでありますので、10年度の一般的なそれぞれ期間ごとのものはこのぐら いだろうということで計算しておると思いますが、例えば、短期でありまして、基本的 には2%であります。 ○C委員  1の1ページですが、年金の給付額に共済関係は入ってないわけですね。共済の給付 の総額はいくらになるんですか。わからなければいいです。 ○事務局  ここでは厚生年金と国民年金で計算をしておりますが、ただ、基礎年金の中には国家 公務員共済組合等の基礎年金相当分というもので各会計に渡します。 ○D委員  資料2なんですが、財投関係で、国立病院特別会計に対しまして、年金資金を計上し ておりますが、どういった基準で数字を出されていらっしゃいますか。 ○事務局  国立病院の整備に要する費用につきましては、一般病棟の分については財政投融資か ら借り入れて行い、また研究等のような分については一般会計で充当するというような 原則で予算編成が行われておりまして、国立病院につきましては、御案内のように、年 次計画のもとで現在再編成計画を行っておりますが、そういう1つ1つの病院の計画に 基づいたものを積み上げた額を計上しているところでございます。 ○会長代理  ほかにございませんか。 ○E委員  資料2ですけど、ここに先ほどの説明では、被保険者住宅資金の貸付がだんだん減っ ていって撤退すると言われたのですが、これは私は余り感心しない方向ではないかと思 いますけど。 ○事務局  昨年6月の年金福祉事業団の改革に関する閣議決定におきまして、年金福祉事業団が 行う還元融資については適切な経過措置を置いて撤退をするということが制度としては 決められているところでございまして、事務方としては適切な経過措置の内容を現在検 討しているということでございます。もちろん別途年金の還元融資はいかにやるべきだ という議論が年金審としては当然あるだろうと思いますし、そういった問題については 当然のことながら年金の立場からも検討していただくことだと思います。  平成10年度の予算について言えば、20%減になっておりますが、御案内のように、最 近住宅需要はかなり減少を来しておりますので、平成10年度について言えば、必要な需 要額には十二分に対応できる額が計上されていると思います。 ○A委員  これは会長代理に議事進行に関してのお願いです。今、E先生の御指摘の問題は前回 も当審議会の席でかなりいろいろ各方面からの御発言があったテーマですし、我々とし ても大変重大な関心を持っておりますので、これは恐らく次の資金運用の問題にかかわ るところで改めて多少時間をとっていただくようにお願いをしたいんですが、いかがで しょうか。 ○会長代理  きょうは5時まででございますので、ただいま予算に対する御報告でございますので 当面はその質問ということで、全体の進行を見た上で、時間によりまして、また考えさ せていただきたいと思います。 ○A委員  それから、この予算編成につきましては、実務に当たられた皆さんは大変御苦労だっ たということはにじみ出るほどよくわかるので、その点については御努力を多としてお きたいと思いますが、結論的にはこうした今年度の厚生省の予算編成全体が、年金だけ ではなくて、全体の編成の結果について、私どもはこれはかなり基本的なところで承認 しがたいというふうに考えておるところでございます。特に自然増8,000億円が見込まれ るような日本の社会保障の構造の中にあって、これを3,000億円増に圧縮するというそも そもの財政構造改革に名をかりたというか、あえて言えば、名をかりた社会保障福祉関 係の予算削減というものに本質的な無理というか乱暴さがあると思いますし、そういう 中で、特に医療関係ではほとんど常識を絶したような乱暴な予算編成が導入されてきて おります。 もちろん今のいろんな要素から言えば、改革が必要であることは言うまでもないので、 我々は全体の効率化を図ることについては当然必要だと思っていますし、医療について の抜本的な改革ももちろん必要だと思っていますが、それを予算のキャップをはめるこ とによって行うような性質のものなのだろうかということが1つあります。 もう一つは、景気動向が極めて不透明感を強めている中で、こういった措置がとられ た場合に、これはマクロ経済に対するデフレ効果を持つことは当然のことであって、そ の辺での政策的な判断も決して妥当とは言えないのではないだろうか。その意味ではこ ういう審議会の場で恐縮でございますが、あえて団体としての意思表明を言わせていた だければ、今回の財政構造改革法なるものは、少なくとも景気回復の見通しがつくまで 凍結すべきであり、その凍結の中で社会保障に関する必要な財政措置は、こういった暴 力的な抑圧ではなくて、ぜひとも必要な分を確保すべきである、こういう立場で対応し たいと思っております。 先ほど御報告がありました事務費の一部について一般財源で手当てされてきたものを 特別会計へ振り替える。この措置に関して、御担当の皆さんが大変御苦労なすったこと についてはよくわかりますが、こういう手段をさまざまに積み重ねて、何としてでも国 庫負担だけは切り縮めてしまおうということの一環だろうと思いますので、申しわけな いですが、これについても反対させていただきます。よろしくお願いいたします。 ○会長代理 ほかに御質問、御意見ないようでしたら、次の議題に移らせていただきますが、よろ しゅうございますか。 それでは、昨年11月27日に大蔵省の資金運用審議会懇談会が「財政投融資の抜本的改 革について」ということで取りまとめておりますので、事務局から御報告を受けたいと 存じます。併せまして年金自主運用検討会の報告を受けて、年金積立金の運用の基本方 針につきまして、研究会が発足することとなったようですので、事務局からその点も御 報告していただきたいと存じます。 ○事務局 まず初めに財政投融資改革につきまして論議しておりました大蔵省の資金運用 審議会懇談会の報告が昨年の11月27日に取りまとめられておりますので御説明させてい ただきます。ちなみに本審議会の委員であります貝塚委員が座長をされておられます。 財政投融資改革の行方というのは、年金積立金運用に大変大きな影響のあるものでご ざいます。厚生省におきましては、従来から年金制度本来の自主運用の実現を図るとい うことで検討を進めてきたところでございます。この観点から昨年厚生大臣の私的検討 会であります年金自主運用検討会を設けまして検討しておりまして、昨年9月1日にそ の報告がまとまりまして、その概要につきましては、この審議会におきましても、昨年 9月11日に御説明をし御論議をいただいたところでございます。その後、大蔵省の資金 運用審議会懇談会におきましても同じ内容を御説明申し上げまして、その懇談会の場で 御論議をいただいたものでございます。こうした年金自主運用のあり方を含めまして、 財投の抜本改革の方向につきまして、資金運用審議会としてのお考えを取りまとめたも のでございます。 概要に沿いまして簡単に説明をしてまいりたいと思います。  まず2番目のところにありますように、「財政投融資がこれまで果たしてきた役割と 問題点」につきましては、財政投融資が国内の貯蓄を社会資本整備等に効率的に活用す る財政政策の手段として、我が国の経済発展に貢献してきたという評価をしつつも、 (2)にありますように、経済全体の成熟化、民間部門の対応力の向上等から政府の役 割の見直し、財投の仕組みの抜本的見直しが必要であるという認識を明らかにしている ところでございます。現行の統合運用を柱とする仕組みにおきましては、財投の肥大化 でありますとか特殊法人における財政規律の問題点などさまざまな問題があるわけでご ざいまして、財投の部分的な見直しではこうした問題は解決できない、制度全般にわた る抜本的改革が必要であるという認識に立っているわけでございます。  次に「改革の基本理念と方向」でございますが、(1)にありますように、財投の基 本的な役割、必要性は将来とも残るということでございますが、実際の対象分野事業に つきましては、官民の活動の分担のあり方の精査、民業補完の徹底、償還確実性の精査 コストとベネフィットの十分な比較などが必要であるとしておるところでございます。  それから、資金調達につきましても、従来のように集まったお金を全部使うというこ とではなくて必要な額だけを能動的に調達すること。あるいは市場と完全に連動した条 件で資金を調達するということなどが指摘されているところでございます。  2ページでございますが、「4.対象分野・事業の見直し」ということでありまして 住宅、中小企業、地方とかいろんな財投の対象分野について不断の見直しが必要である としているわけでございます。特に第2パラグラフで、21世紀の少子・高齢化社会の進 展等に対応して、医療・福祉、教育等の分野については有償資金の活用が期待される分 野であるという認識を明らかにしているところでございます。  次に5.にございます「コスト分析手法の導入、充実」ということで、コスト・ベネ フィットをきちんとやることとか、情報公開の必要性を指摘しているところでございま す。  6.の「市場原理との調和の推進」ということで、資金調達については、市場と完全 に連動した条件で行うことなどの必要性が書かれているところでございます。  次に3ページ、「7.資金調達のあり方」ということでありまして、現在、郵貯、年 金積立金については預託義務がかかっているわけでありますが、この仕組みのもとでは 出口と入り口の関係が切り離されて十分な機能ができないということから、郵便貯金、 年金積立金の預託義務を廃止して、財政投融資の資金調達の本来のあり方にふさわしい 新たな仕組みを導入する必要があるとしているところでございます。  具体的な資金調達の方法として3つ挙げておりまして、1)は財投機関債(特殊法人が 政府保証なく発行する債券)2)政府保証債(政府保証のある特殊法人債券)3)財投債 (国の信用で大蔵省が市場原理に基づいて一括調達する債券)、3つ方式を提言いたし まして、それぞれの問題点を検討しているところでございます。詳細は省略いたします が、結論といたしまして、3ページの一番下にありますように、どれか1つをやるとい うことではなくて、この検討会では、4ページでありますが、財投機関債と財投債の両 者を併用すべきであるということで大方の一致をみたということになっているところで ございます。  4ページ、その下で、財投機関債、財投債のそれぞれのメリット、デメリットを書い てございますが、省略をいたします。  5ページでございますが、「8.自主運用のあり方」ということで、資金運用部とい うか、財投の方は市場で資金を調達するということで預託義務が廃止されますので、こ れに伴いまして、郵貯、年金は自主運用になるということになるわけでありますが、自 主運用のあり方について、資金運用懇談会の意見がここに述べられております。8.の (1)でありますが、「結果として納税者の負担となるような仕組みは是認できない」 ということが書かれています。  2つ目に「郵便貯金及び年金積立金が公的資金である限り、運用責任の所在を明確に することに加え、安全・確実な運用を基本とすべきである」としております。  3番目に、「また」以下で書いておりますが「自主運用に際しては、民間金融資本市 場に与える影響にも十分な配慮を行い、市場原理に則した運用とすることが不可欠であ る」としておるところでございます。  (3)で、年金積立金の自主運用につきまして、期待した運用収益が上がらなかった り損失が生じるような場合がございますが、「年金の給付水準の引下げ又は保険料の引 上げといった形で年金加入者が負担することにならざるを得ないことから、運用リスク をとることについては慎重でなければならない」という指摘を懇談会はしているところ でございます。  9.最後に、この改革にとどまらず、今後とも持続的な改革が必要であるということ でございます。  以上が懇談会の報告の概要でございますが、年金自主運用のあり方は、次期の年金制 度改正の重要テーマであると考えております。年末のこの審議会の論点整理におきまし ても検討事項として整理していただいたところでございます。厚生省としてはできるだ け早く本来の自主運用を実現したいと考えているところでございます。  年金福祉事業団に関しまして、昨年6月に閣議決定がなされておりますが、その中で も、平成11年に行われる年金の財政再計算に合わせまして、年金資金の運用のあり方に つき結論を得るとされているところであります。また、この趣旨につきましては、預託 金利をめぐります昨年3月の大蔵大臣と厚生大臣の折衝においても両省間で確認がされ ているところでございます。  厚生省におきましては、次期の平成11年の制度改正に合わせまして自主運用の制度改 正を行うべく、これから運用の基本方針あるいは運用の体制、運用責任のあり方などに ついて具体的な検討を事務的に進めたいと考えているところでございます。これらにつ きまして、一定の考え方がまとまりましたならば、この審議会にもお諮りをいたしまし て、この審議会で改めて御論議をしていただきたいと考えているところでございます。 よろしくお願い申し上げます。 ○事務局  引き続きまして、先ほど御説明ありましたように、年金自主運用検討会や資金運用部 サイドから、自主運用に当たっての留意点あるいは大きな方向が出されたわけですが、 具体的な内容について、今後詰めて年金審議会に御報告するということで、資料4に ございますように「年金積立金の運用の基本方針に関する研究会」というものを設置し てまいりまして研究をしてまいりたいというふうに考えています。  具体的には、まず研究会開催の趣旨の4行目あたりですが、「年金積立金の運用の基 本方針の策定を行い、厚生大臣が責任をもって自主運用すべきである」ということが提 言されておりますので、年金積立金の運用の基本方針のあり方というものについて、金 融・経済の先生方あるいは保険料拠出者の代表を交えて研究会をつくって検討していた だきたいというふうに思っております。  研究の内容でございますが、1)から4)にございますように、1)運用対象に対する考え 方、2)運用のリスクについての考え方、3)政策的資産構成割合の策定方法、4)その他、 移行過程の問題などについて研究をしていただきたいと思っております。  研究会は先ほど申しました研究者、拠出者10名程度で構成をしていただきたいと思っ ておりますが、座長につきましては、自主運用検討会の委員でもありました若杉委員に お願いしようというふうに思っております。  研究会の開催予定でございますが、この23日に1回目を開催した後、月2回程度、10 回程度を目途に開催をし、次の2ページでございますが、6月ぐらいを目途に取りまと めをしまして、年金審にその取りまとめ、どんな形になるかわかりませんが、御参考に なるような形で取りまとめさせていただいて御報告申し上げたいというふうに思ってお るわけであります。以上でございます。 ○会長代理  ありがとうございました。それでは、ただいま説明のございました事項につきまして 御質問、御意見等ございましたら、どうぞお願いします。 ○F委員  公的年金制度の性格につきましては考え方としましては大きく分けて2つの考え方が あると思うんですね。1つは社会政策的な側面を重視するという考え方、もう一つは、 金融的な側面を重視するという考え方ですね。  第1の方の社会政策的な側面を重視するという立場は、社会保障制度全体の構造改革 の中で、介護基盤整備、少子化対策、そういうほかの社会保障分野との連携を視野に入 れて年金制度を構築する、そういう考え方だと思うのです。  第2番目に金融的な側面を重視するという立場は、現金給付の面から年金制度の負担 と給付の関係をとらえる、そういう考え方だと思うんですね。  先月の論点整理の中でも、ほかの社会保障制度との連携をはかるべきか、国民の信頼 や理解を求めるべきであるとか、そういうことが指摘されているわけですが、どのよう な考え方に立つかによって年金積立金の運用のあり方も異なってくるというふうに思う んです。 運用の基本的な考え方は当然、安全・確実を基本とするということですが、社会政策的 な運用にするか、あるいは市場運用にするかというような運用の仕方が考えられると思 うのです。  第1、第2のそれぞれのメリット、デメリットを整理することが今後の議論に資する のではないかと思います。積立金の運用につきまして、今事務局から御説明がありまし たように、研究会を設置して、これから検討されるということでございますが、公的年 金制度の社会政策的な側面につきましては、前回、A委員からも御意見がございました けれども、社会政策的な側面についての議論は、やはり年金審議会の中で議論を尽くす 必要があるのではないかと思います。  前回、論点整理の年金積立金の運用のところで、私も少し意見を述べさせていただい たのですが、以上のような点を、今後の年金審の議論の中に含めていただきたいと思い ますので、1つ意見を申し上げました。 ○G委員  財政投融資の抜本的改革について、私、座長をしておりましたので発言させていただ きます。この研究会は財投反対派の人をすべて網羅した、改革論者が多数入っておられ る審議会で、ですから理財局としては、自分が自分を改革するという珍しい審議会であ りました。相当程度踏み込んだ改革案になっておりまして、政府の審議会としては珍し い、私自身はその点は評価していただけるのではないかと思っております。  いずれにしましても、相当いろいろなことが書いてございまして、三宅さんが座長に なっておられる「年金自主運用検討会」で、年金のことについては、やや心配な点は結 論的にはあるというふうな御意見がありました。大体そういう感じが今回の研究会だっ たということだけを申し上げておきます。 ○会長代理  ありがとうございました。 ○A委員  先ほどのF委員の御発言との兼ね合いで言えば、先ほど御提起のあった、こちらの局 長の私的研究会なんだと思うのですが、資料4の「年金積立金の運用の基本方針に関す る研究会」の性格づけが確認されればいいことだろうと思うのですが、従来の経緯から いたしまして、一応お金を出しているという立場で、労使も1名ずつ加えていただける ということではありますが、先ほどF委員の御発言にもありましたように、公的年金制 度のそもそも論とか、そういう議論は当然のことながら、本審議会の役割で、ここの真 ん中に書いてあるように、「積立金を市場運用する場合の運用の基本方針」を研究する のがこの研究会の役割であると受けとめてよろしゅうございますでしょうか。 ○事務局  事務局としてもそういうふうに考えています。 ○事務局  少し追加して御説明申し上げますと、市場運用が基本でございますが、還元融資をす る場合も、従来のように赤字を出して、それを年金特会から穴うめするということはこ れからは許されないのではないかと、こういう基本認識を持っております。したがいま して、還元融資をする場合も、これは少なくとも国債並みの利子はちゃんと稼いでいた だく、これが還元融資の基本ではなかろうかと、そういう考え方を持っております。し たがいまして、還元融資をする場合は、研究会の中では、国債などの債券の運用の一環 として位置づけると。債券運用の中に、そういった還元融資分も入っておるのだと、こ ういう考え方でこの研究会は進めたらどうかと考えています。  研究会も具体的にまだ発足しておりませんので、これからの相談ごとにはなるのです けれども、事務方としてはそういうことを内々考えておるということでございます。 ○A委員  事務局にこの際御見解を承っておきたいと思うのですが、もともと厚生省は財投との 兼ね合いで言えば、預託義務を廃止するということで主張されてきたと思うんですね。 預託義務の廃止というのは、どのくらい預託するか、どのくらい自主運用するかについ ては自主的な判断をする、こういうフレームワークだったと思いますが、事態はもう少 し急速に動いて、預託という制度そのものがなくなるというふうに事態は進行して、そ うしますと預託したくてもできないということになっているわけで、現状128兆円あるい は将来もっと増えていくのだろうと思いますが、こういう巨額の積立金を、これ自体に ついて直接それを引受け、それの運用についての責任を厚生省がしていかれるという、 これは考えられていることよりも重大なことのような気がいたしますが、従来言われて きた預託義務の廃止と主張されてきたことと、預託制度がなくなることとのギャップを 厚生省としてはどういうふうに受けとめておいでになるのでしょうか。 ○事務局 この運用問題というのは、これは年金運営をしていく中では制度運営の非常に大事な 部門なんですね。したがいまして、年金制度が発足しました昭和17年の労働者年金保険 の時代から、これは厚生省が責任を持って運用すべきだと、そういう基本的な考え方が あったし、国民年金ができるときも大変な議論になったわけです。そういうことで、私 どもは預託義務の廃止というのは一貫して主張してきたといいますか、そういう考え方 で来たわけでして、年金の保険者としては、これは運用責任を負うのは当然だと。いか に厳しくても、これをしっかりやっていかなければ、責任を持って年金を支払えなくな るわけですから、これは厚生省として責任を持ってきっちりやっていきたい、そういう 覚悟でこれは取り組みたいということで進めています。 ○H委員 関連するのですが、5つの選択肢の関係で特に資金運用について、経済団体、具体的 には経団連と経済同友会のレポートにあります民営化論とこの自主運用のことについて この研究会の中でもそれに対する物の考え方を整理していただかないといけない。 民間企業の立場からしますと、基礎年金についてはむしろ給付水準を上げて、かつそれ を税金にするかどうかは別としまして、報酬比例部分の給付水準をもう少し下げる。こ れについてはむしろ厚生年金基金、適格年金を充実させていくと。そういうものについ ての受給権の保護というのを企業年金給付の中で決めていくというような考え方があり 得るわけですね。  その場合の運用についてはどこまでのリスクをとるか。お役所は、運用リスクはなる べくとらないが、私的年金であれば、受給権の保護を考えつつ、場合によっては、企業 が損失は補填するということであればかなりのリスクがとりうるということになる。保 険者としてはそれがいいということがあり得るんです。そういった問題との関係につい てもぜひとも議論をしたい。 ○事務局  結論から言いますと、今のような問題は、この研究会では考えておりません。 これはあくまで先ほど来、御説明申し上げましたように、今130兆円の厚生年金と国民年 金の積立金があるわけですね。これにつきましては、今後とも確実に増えていく、そう いうことが予測されるわけです。しかも、これまでは資金運用部に全部預託しておった と。 こういうことがこれからなくなるわけですので、経過的にどうするかというのはこれは また別問題としてあるのですが、預託義務がなくなって今度は年金保険者として全責任 を持って運用していかなければいけないわけですから、その場合の運用の基本方針をど うするのか、どういった点に注意して運用していくのか。あるいはどういったポートフ ォリオをこれから考えていくのか、一遍にそれは理想どおりいくわけにはもちろんまい りませんけれども、将来に向けてどういう方針でやっていくのか、こういったことをこ の研究会で御議論いただこうということでございます。 ○H委員 企業の側からしますと、財投の矛盾は矛盾として当然あり得るわけです。また、預託 義務を廃止したい。あるいは厚生省の従来の自主運用の責任の問題、これもよくわかる わけですが、130兆円の運用について、130兆円もの規模では、そう簡単になかなかいか ないのではないかという気がします。ですから、この研究会でどこまで議論するかは別 として、130兆円丸々最初から自主運用するのだという前提で果たしていいのかどうか 非常に心配です。 ○事務局 いろいろ御心配いただいていることは非常にありがたいわけですけれども、いきなり 130兆円を厚生省が市場運用するということはあり得ないわけでして、これは今すべて財 投制度の中で回っているわけですから、それを引き上げるとなると、これは大混乱を起 こしますので、そういうことはできないわけです。これから相当長い期間をかけて徐々 に市場運用部分が増えていくと、そういうことを想定しているわけです。しかも、これ は大変な問題ですけれども、これは年金の保険者としては逃げるわけにはいかない。真 っ正面から受けとめてやらなければいけない、一番保険者として重要な仕事ですので、 これは積極的に取り組んでいかなければいけない。しかもそういった場合に、もちろん 厚生省だけではどうしようもないわけですので、これは官民挙げて、あらゆる人の英知 を傾けて知恵を出していかなければいけないとそういう認識をしております。 したがいまして、こういった研究会をきっかけにしまして、いろんなところでお知恵 をかり、また年金審議会としても御議論いただいて、あるべき姿を追求していきたいと こう思っているわけです。 ○I委員 私は余りよくわからないから、あるいはG委員にお聞きした方がよいのかもしれない のですが、これを今ざっとお聞きしておりますと、今までの財投というものについては ある程度よかったということも書いてありますし、また、リスクは余りとらずに慎重に やるようにと書いてあるし、しかも資金については、安全・確実、効率的に運用するよ うに、と書いてあるわけですが、これは今までの厚生年金の積立金の運用の方法と余り 変わらないことが書いてあるわけですね。 それも結局郵貯であろうが、厚生年金であろうが、国民の出したお金であることに変 わりはないわけですから、それを管理する仕方、例えばディスクロージャーするとかい う話は別としまして、これから運用のあり方を変える。使い方を変えるというのは、こ れはまた別の問題でしょうが、基本的に資金運用部でやっておったのと自主運用が一番 違うのはどこかというのがよくわからないものですから、そこを教えていただけません でしょうか。 私は資金運用部でも同じだから、これでいいのではないかという気もするんですが。 ○G委員 財投債は今までの預託とは違いまして、債券、国債を出すわけです。ですから、それ はマーケットで出す。今度は要するに郵貯も年金もすべてマーケットで買う。ですから 国債を買うという面では、ある意味では似ているんですが、しかし、一度マーケットで 国債を買うというところで、みずからのポートフォリオを組むというところは非常に違 って、要するに今までですと、理財局とか資金運用部とかが一元的に国債を買ってきた  しかし、これでもうだめになりました、これで無理ですというぎりぎりのところまで 来ている。大体改革というのは学者が考えると遅くなりますから。それでとにかく今回 はここまで来ている、とどのつまり、変えざるを得ない。結局のところ、皆さん自主運 用してください。ただし、運用するアイテムはそんなに安全な施策があるわけではない 今までの国債だけでしたら、立ちどころに国債はなくなってしまいますので。 ですから、資金運用部が出している、要するに今までの預託金にかわるものをすべて 国債でやりますと。それは政府が保証しているものが大部分ですから、今までの国債と 変わりませんが、とりあえずはそれで運用してくださいと。それから先、長い間、これ からございますから、だんだんそういうのが少なくなってくることがあり得るし、それ は結構ですよと。当初の段階は、今までは無理やりに預託させていたものを、とにかく こういうふうに言うとおかしいですが、義務があったものが義務はなくなった。後は御 自由に運用してくださいと。実質的には、先ほどA委員がおっしゃった点と関連します が、やはり財投債は国債の1つでして、それは一番信用度が高いし、デフォルトもあり ません。それでやらざるを得ないのは当たり前の話でして、経過的に全部変えちゃうと いうことで、恐らく常識的には、年金で新しく積立ができた部分は、それは新しく運用 する。今まで資金運用部に預けていたものを全部引き出すとか、そんなことは、先ほど 事務局も言われていましたが、もちろんあり得ない話で、それがだんだんなくなってい って、最終的には、名実ともに自主運用という形になる。  そういう感じでありまして、猛烈な混乱が起きてむちゃくちゃになるというふうなこ とは大変なことですので、そういうことは普通部分的にといいますか、増えた部分につ いて、たしか2 年後からやるということで、最終的にはまさに名実ともに自主運用する ことになると思いますし、自由にポートフォリオをやることになると思います。 ○I委員 おっしゃっていることは大変よくわかるのですが、結局自主運用するというところで 実は私たちは今いろいろやっていますが、一番やはり問題になるのは、リスクをどうい うふうにしていくかということになるわけですが、ここの文章を読んでおりますと、リ スクは慎重にやらなければいかんとか、安全・確実にちゃんと運用しなければいかんと かいうことになると、今まで年金資金でも、地方債に充ててみたり、国債に充ててみた り、そういう事業に充ててきたわけですから、それを財投債と名前を変えようが変えま いが、行きつくところは、使い方なり管理の仕方の話で、どこが一体資金運用部に預け ておったことと、基本的に全く違ってしまうのか、ここが全くだめだからこうなんだと いうのはどこなんでしょうか。 ○G委員 対象としてだめだということではなくて、基本的にはマーケットをつくるというのが 一番違う。今までですと、自動的に預託していた部分を、資金を運用されている側が判 断されて、これは財投債に運用したり、その時どきで多少マーケットの事情も違います し、それ以外の国債もあり得るわけで、一応そういうところから出発するということで 結果的に預託義務があるというのとそう違わないです。最初の段階はそうだろうと。た だし、制度が大きく変わるわけですから、自動的に全部お金をそこへ集中してしまうと いうものでは決してなくなるし、そうでないと年金局が主張されているように自主運用 というものでは決してないわけですから、そこのところは非常に変わってくると。長い 目で見れば変わる。 ○事務局 変わるという点では、これは厚生省の立場からですけれども、今までは預託義務があ って全額大蔵省に預託しておった。したがって、運用がどうなろうとも、それは大蔵省 の責任ですよと、厚生省の責任ではない。預託金利を少しでも上げてもらうことが唯一 最大の問題だったわけですね。したがって、しょっちゅう大蔵省と預託金利の上げ下げ をめぐって年がら年中議論しておるというのが現状なんですね。それでしっかりやって くれ、預託金利を上げてくれと、これで済んだわけですね。それで運用が失敗しても厚 生省の責任ではない、大蔵省の責任だと。俗なことを言いますと、そういうことだった わけですが、これからはすべて年金サイドの権限であり責任であるということで、極め て重い責任を負うと、こういうことになるわけです。 したがいまして、その場合にやはり保険料の拠出者の意向を反映した運用をしていか なければいけない。これはこの前の年金自主運用検討会の一番基本にある考え方ですね したがいまして、運用問題が年金制度の運営の非常に大きな課題になってくるというこ とでございまして、年金審議会もこれまでは制度をどうするかといった問題が中心に議 論されてきたと思うのですが、これからは運用問題につきましても、それと同じぐらい 絶えず議論をし、状況を監視をし、おかしくならないようにやっていくと。そういう非 常に重い責任を年金審議会も負う、こういうことにつながってくると思うんですね。  この点につきまして、自主運用検討会では、年金審議会とは別組織で運用委員会をつ くりなさいと、こういう御指摘だったわけですけれども、運用審議会を年金審の中につ くるのか、外につくるのかというのは、これから御相談しなければいけない問題なので すが、年金審議会としても大変な責任を負うということにもつながってくる、こういう 問題ではないかと思っております。 ○会長代理 この問題、よろしゅうございますか。 ○J委員 ちょっとわからないところがやはりあるんですね。自主運用をするとか預託義務を廃 止するということについては話し合ってわかったのですが、郵便貯金と年金では全然性 格が違いますよね。年金制度に入るのは基本的に納税者全部ですよね。ですから5ペー ジの自主運用のあり方の、「結果として納税者の負担となるような仕組みは是認できる ものではなく」というところがありますけれども、郵便貯金の運用についてはそういう ことが言えると思いますが、年金積立金の自主運用についても、納税者の負担となるよ うな仕組みは是認できないのかどうかというのは非常に大きい議論があるところだと思 うんですね。  先ほどのH委員の発言と私のは関連しているのですが、疑問があります。厚生省とい う省に国民が期待しているものは別に年金省というものではないので、運用運用という ことをそれほど年金審議会においても重要だというふうに位置づけるのであれば、運用 の得意なところを別個に年金公社ですとか何か、わかりませんけれども、そういうもの として独立させるぐらいのものであってもいいのであって、それほど年金の運用面だけ が重要という位置づけには私は疑問を覚えます。  むしろ年金に加入している人は、最終的な責任は年金加入者であるとしてデメリット を得るようなことになるのであれば、納税者として、むしろそれを負担せねばならない という覚悟を持っていた方が、例えば今のいろいろな金融機関の破たんなどを見ていて 結局納税者が負担しているわけですから納得がいくわけですね。ですから郵便貯金の自 主運用と年金の積立金の運用について同じ論理を用いるというのは私は疑問に感じます ○H委員  関連しますが、今のJ委員と同じです。もし、これに穴があいたら税金で補いますと いうと国民は安心するんです。ところがそうじゃないとなりますと厚生省の運用能力に ついて国民の納得が最初に得られるか、どうも疑わしい。運用についての金利の問題は 非常に難しいのですが、私も財務の専門家ではありませんが、今の非常に厳しい外資系 の運用なり、今の日本の金融市場からしますと、そういう中で安全で、かつそれなりの ものを運用していくことがいかに難しいことか私企業の財務責任者はわかっているわけ です。  当社の場合の適格年金でも現在2,500億円、将来3,000億円ぐらいの資金があるのです が、これをいかに運用するか、相当な神経を遣っているんです。会社の場合には、これ にもし穴をあければ、会社が補填をするという覚悟でやっているわけですね。 そういう意味で、一般の国民もそうですし、民間企業の財務の専門家から見ますと、 今おっしゃった税金で補てんしてくれるならいいけど、そうじゃないとなりますと、給 付水準を下げるか、負担を上げるかしなければいかん。そうなると最初から非常に心配 だなということがあるということだけ申し上げたいと思います。 ○K委員 今お話になったお二方の意見とも関連するのですが、このペーパーを事前に見たとき に、今J委員がおっしゃった部分について、なぜ、郵便貯金と年金積立金が同列視して 書かれているのかということを非常に疑問に思ったのですが、この点について、もしG 委員の御意見があれば、ちょっとお聞きしてみたいと思います。 ○G委員 同列であると考えています。資金運用部の立場からは、原資として重要な部分は今郵 便貯金、それからもちろん年金ですね。原資として見たとき2つの重要な、それぞれに ついて、今までとシステムを変える必要があるということもそうです。それぞれの性格 が違うということも十分認識されていると思いますが、郵便貯金のケースは、郵便貯金 ももしかすると将来うまくいかない可能性だってなきにしもあらず。そのときは現在の 貯金はすべて国が保証しておりますから、最後は財政で見なくちゃいかんというところ が出てくるでしょう。  年金のケースはどうなるかというと、年金はそれ自身として、もともと年金の独立勘 定で保険料と拠出で計算をして大体収支がうまくおさまるようにやってきて、その中で 収支のところで、自主運用したときに利回りをどういうふうに見るか、そこの問題に関 係している。そこがまずくいくと、そこで問題が発生するということはあり得るでしょ う。だから、そこのところはよく考えてください。多分普通の意味では、安全な資産だ とすると、アメリカなどは実質的にある意味で日本で言っている自主運用にやや近いの ですが、結局はほとんどの部分が国債に運用しています。  ですから一番安全な資産で利回りを確保できるということになると大体国債だと。で すから実態として、資金運用部に預託しているのとそうは違わないのですが、しかし、 基本的に自主運用というのは、自分でボトルを選ぶことが一番重要な問題ですので、結 果として何で運用しているかはある意味では似ているかもしれませんが、そこのシステ ムを変えなくちゃいかんというのは厚生省の御意見でありますし、それはなるほどそう でしょうということです。郵貯はまた別の論理です。大体そういう感じです。 ○事務局  ちょっと補足させていただきますと、年金と郵貯は違う、同列に論ずるのはおかしい ということですけれども、これは大蔵省の懇談会で書かれたので、どうしてこうなった のか私はわかりませんが、前々から、私は絶えず郵貯と年金の金というのは本質的に性 格が違うということで、それに同じ預託金利をつけるのはおかしいのではないかという ことで随分議論してきたことがあるわけです。  それから、また、運用が失敗すると税で補填とかというような話が出ましたけど、こ の問題につきまして、この要約の5ページの8の(3)にございますように、もし運用 が失敗すると、結局保険料の引上げ、給付水準の引下げに行き着くということがありま すが、これはこれまでも年金の歴史を通じて、こういう原理原則でやってきたわけです ね。例えば昭和30年代、40年代の高金利時代にも年金は低い預託金利に甘んじてきたわ けでして、その低い預託金利を前提に財政再計算をやってきたわけですから、運用がも っとうまくいけば、保険料をそんなに上げなくても済んだ、あるいは上げ幅が少なくて 済んだと、こういうことになるわけで、預託義務があろうとなかろうと、運用成果が保 険料にはね返ってくるのは昔も今も変わらない。  そういうことで、私どもの自主運用検討会で御議論いただいたときには、要は自主運 用やると、その結果というのは、運用がよければ、保険料が抑制される。失敗すると保 険料を引き上げる方向に働く。したがって運用は保険料拠出者の利益に直結する。だか ら保険料拠出者の参加を得て合意を得ながら運用していく、そういう仕組みをつくるべ きではないかと、こういうことになったわけですね。  したがって、自主運用検討会で御議論いただいたことと、資金運用審議会懇談会の報 告は全く同じ考え方に立っているわけで、したがいまして、ああいう自主運用検討会の 報告につながったということでございます。 ○A委員  積立金の規模というのもこれは関連いたしますし、実際に完全積立方式でやることを 考えれば、積立金の規模は今の程度ではとても済まず、それの変動の影響も非常に大き い。あるいは完全賦課方式で考えれば積立金はほとんどないという意味では、運用の状 況が給付あるいは負担に与える影響もそれなりのものでしかない。そういうところを勘 案するならば、運用問題イコール年金問題では必ずしもないのだろうと思いますね。む しろ先ほどF委員が冒頭強調されたように、社会政策としての社会保障のあり方の問題 の中でこれを位置づけるという議論のフレームワークさえ確認されればいいことのよう に私は思います。その社会保障としての、社会政策的な枠組みの方の全体を運用問題が 覆うということは恐らくあってはならないし、ないのだろう。  ただ、H委員からも表明された不安は私どもも共有しているところでございまして、 現在までの預託制度を前提にして、昭和60年制度改正以降、部分的に行われてきた自主 運用そのものが通常巷間よく話題になりますような1兆円とか1兆4,000億円とかという 実際のマイナスを生んできたということは、これは短期的な判断で云々していいことか どうかというのは、これ自体議論の的ですが、そういう意味での現在までの、ないしは 現状の足元での事実がそういう不安を呼んでいるということについては、この際一言、 そんな大きな意味ではありませんが申し上げておきたいと思います。 それから、もう少し理念的な話ではなくて、具体的なことを2〜3この際お伺いして おいた方がいいと思うのですが、先ほどの議論の中でありました事務局の口からも少し 御言及ございました転貸融資の問題をどうするか。これ自体は大変大きな問題で、実際 に判断を迫られることになると思うのですが、住宅転貸融資に関連して、事務局に御質 問してもよろしいでしょうか。3つほど伺いたいと思うのですが、1つは実際に今の厚 生年金の被保険者が住宅購入に当たって資金調達をするときに、年金の転貸融資は大体 どのくらいの割合を占めているのか。つまり、どのくらいの比重があって、どのくらい の重要度があるのかという問題。  それから、事務局から、先ほど大変大事な点が御指摘あったと思うのですが、要する に赤字型の運用をやって、それを補てんするような、言ってみれば利子補給型ですね。 かつてそういう事実があり、年金福祉事業団の事業そのものがそういう意味では持ち出 し型ではないかというイメージはあるところで広く持たれているので、持ち出し型とい うのはあるべきではないというのが先ほどの御発言かと思いますが、実際の貸出金利と 市中金利とが逆ざや型になっているのだとすれば由々しいことだろうと考えています。 その辺の事実はどうなのか。  3つ目、あえてこれは制度論になりますが、この制度を多くの組合員が非常に大事に 活用してまいりました。それは共済組合の場合にはこれは住宅融資制度がもともとから あるのに、民間労働者の厚生年金に関してはこういう制度がなかったところに、後から ですが、つくってもらった経緯がありますので、その意味では全体の利用度ないしは ニーズが下がれば、こんなものなくしていいと思うのですが、ただ、共済組合ではかな り本格的にこれは最初から制度の中に組み込まれてきたものかと思いますので、その辺 での制度の比較を簡単に御紹介いただけたらありがたいと思います。3つほど、ごく簡 単にで結構ですから。 ○事務局  年金の住宅融資を利用している方々の利用状況でありますが、平成8年度の実績で申 し上げますと、全体で4,000万円近くの住宅費用がかかるわけですが、そのうちの1,000 万円程度を年金住宅融資を利用されてございます。また、利用されたサラリーマンの方 の数は、平成8年度で言えば、18万5,000人でありまして、実際に利用されている層も意 外に若い方が多くて、平均で37.2歳でありまして、その中でも、20代、30代で6割強を 占めるということで、かなり若い層の人が年金の住宅融資を利用しているということが 言えるかと思います。  それから、金利の問題ですが、年金住宅融資は昭和48年に始まったわけでありますが その当時大変金利が高い時代でありまして、7%、8%の時代でございました。という こともありまして、当時財投の金利も6.5%ぐらいだったわけでありますが、市中の金利 が非常に高いということで、財投金利よりも低い金利でスタートをしたということであ りまして、制度発足の当時、既に逆ざやがあったということでございます。ただ、この 当時、恐らく年金積立金の運用の利回り全体が5.5%ということでしょうから、逆ざやが あったとしても積立金の運用全体としてはそうマイナスはないという判断が当時あった のではないかと思います。 そういうことで、財投金利よりも低い金利で貸すということで制度がスタートしたこ ともあったのか、その後、基本的にはずっと逆ざや状態で推移をしておりましたが、平 成8年の10月から逆ざや状態は解消しております。現在の金利で言いますと、財投金利 が2.2%でありますが、年金住宅融資の金利は、35年償還で3.55%ということで、純ざや になっている状態でございます。 それから、公務員との比較でありますが、国家公務員共済と比較いたしますと、国家 公務員共済の場合は30年償還で固定金利で2.96%ということでございます。現在の状態 でいくと、一般のサラリーマンの方が高い金利になっているということが言えるかと思 います。 ○K委員 今のことに関係がある転貸融資に関してですが、もともと被保険者が拠出したものを どう事業として生かしていくかというような側面で考えますと、先ほど御説明があった ように、将来どうするか、経過措置をとって云々という話もございましたが、こういう 制度は被保険者の立場に立ってどうするのかということを考えてもらわないと、私は大 変大きな問題をはらんでいるように思っています。被保険者としては住宅融資について 選択肢がたくさんあるということは大切です。こういう世の中ですから、いろんな都合 があって住宅金融公庫ではなくて年金転貸融資で借りたいという人もいらっしゃるでし ょうし、さまざまな制度をどう生かすかというのは選択の時代に見合う、要するに個人 の選択の問題であり必要だと思うんです。 どうもそれが行政サイドや国会の方で一方的にそれが見直されて、被保険者の既得権 とは言いたくありませんけど、そういうものが一方的にはぎ取られていくのは、いかに も問題が大きいのではないかというふうに思っています。 今、御説明がありましたように大変若い世代が転貸融資制度を利用しているというと ころに、私は大変重大な意味をはらんでいると認識をしています。年金制度の改革の話 と、今若い人が転貸融資を使っているということは、年金改革をどうするかという意識 の面で大変重要なデータを御提供いただいたなというように思っていますので、あえて 申し上げておきたい。 ○会長代理 まだ御意見もあると思いますが、資金運用の問題はまた第2ラウンド全体でいろいろ これからも議論すると思いますので、今後の問題ということで、次の問題に移らせてい ただいてよろしゅうございますか。               (「はい」という声あり)  それでは、最後にきょうお諮りしますのは、今後の当審議会の進め方等でございまし て、昨年、年末の当審議会で事務局から選択肢も示されましたが、これからの当審議会 の進め方等について御相談させていただきたいと存じます。今後のスケジュール等につ きまして、事務局で案を用意しているようですので御説明をお願いいたします。 ○事務局  それでは資料5をごらんいただきたいと思います。「年金制度改正に向けたスケジ ュール(案)」というものをまとめさせていただいております。  既に御連絡させていただいておりますが、本審議会につきまして、資料にございます ように、3月18日までの日程のお願いをいたしております。次回1月20日につきまして は、後ほど御説明させていただきますが、公聴会をお願いいたしたいと考えております 2月13日以降の審議テーマにつきましては、給付と負担を初めといたしまして、個別検 討項目につきまして、事務局で用意いたしますテーマにつきまして、2巡目といたしま して、順次御審議をいただけたらというふうに考えておるところでございます。  なお、3月6日につきましては、この資料5に2枚資料をつけさせていただいており ますが、日本とドイツの年金通算協定につきましては、2ページ目でございますが、 (注)に書いておりますように、昨年末までに本法律案の前提となります協定につきま して、両国政府におきまして、最終調整中であり、ほぼ条文ベースにおきます合意が成 立いたしまして、現在それぞれの国におきまして最終調整中でございます。署名が行わ れ次第、この協定とともにその実施のための特例法案につきまして御審議をお願いいた したいというふうに考えているところでございます。ここには概要を書いておりますが 昨年11月の審議会におきまして、交渉の状況、協定内容などについて御説明をさせてい ただいたところでございます。  併せて、資料の3ページでは、今回の予算の関係におきまして、組織体制の強化とい うことで「国際年金企画室」の新設が認められたところでございます。今申し上げまし たドイツのほかに、2に書いておりますように、今後アメリカ、イギリスなど各国との 通算協定の交渉を行う必要があるというふうに考えておるところでございまして、これ に向けまして、所要の体制強化のための組織及び定員が認められたものでございます。  こういった前提に立ちまして、3月6日の審議会におきましては、この協定の実施特 例法案につきまして御諮問をさせていただきたいと現在のところ考えておるところでご ざいます。  それから、その先でございますが、月2回ないし3回の審議をお願いをいたしまして 9月のところに書いておりますが、「意見書とりまとめ」ということで、昨年の5月の 当審議会、次期財政再計算に向けた冒頭の御審議におきまして、意見書のとりまとめを 置いていただいたところでございまして、こういったスケジュールをにらみまして、こ れから御検討をお願いいたしたいというふうに考えておるところでございます。  なお、備考欄に書いておりますが、現在「年金白書」をまとめておりまして、私ども といたしましては、できれば月内にまとめたいというふうには考えております。  それから、3月の欄に書いておりますが、「有識者調査」というのを前回の改正にお いても行いましたが、今回も実施したいということで、現在事務局で、素案をまとめて おるところでございます。  以上、今後の年金制度改正に向けましてのスケジュール案につきまして、資料に沿い まして御説明をさせていただきました。 ○会長代理  ただいま御説明ありました件につきまして、御質問、御意見等ありましたら、どうぞ お願いいたします。 ○K委員  スケジュールについてではないのですが、私の方から事務局に二度ばかりお願いをし ているのですが、タイミングはいつでも結構ですが、積立金のことについて、支払い準 備金をどれだけ持ったらいいのかという問題について一度しっかりした議論をどこかの タイミングでやっていただくスケジュールを入れていただけるとありがたい。資料の提 供もいただきさまざまな角度からの検討が出来るようにしていただいたらいいのではな いか。  きょうも運用の話しか出ないんですが、一方に財政構造改革の問題があって、全体を スリムにしようという話の中で、ストックの話ですから、それがいかなる状況であるべ きなのかという1つのナショナルコンセンサスみたいなのが私は要るのではないかと思 っておりますので、ぜひその点について時間をさいていただくことをお願いしておきた いと思います。以上です。 ○会長代理  ほかにございませんでしょうか。 ○J委員  スケジュールではないのですが、前回の5つの選択肢とか年金審の論点整理とか、そ ういうものがマスコミに出たと思うのですが、それで厚生省への意見を公募していると 思うんですね。年金審への意見も集めていらっしゃるかと思うのですが、それがある程 度まとまった時期に、なるべく早い時期に見せていただきたいというふうに思います。  それから、できれば、前回の5つの選択肢ばかりがマスコミで取り上げられているよ うに思うのですけれども、審議会でどのようなことが話し合われているかということに ついても積極的な広報をお願いしたいと思います。 ○ 会長代理  選択肢の話も出ましたので、それを含めてフリーディスカッションをお願いしたいと 思います。時間は5時ぐらいまでですので、まだ若干の時間がありますので、フリーに 御議論いただきたいと思います。 ○C委員  前回出していただいた資料を年末・正月の休みにもう一遍いろいろ勉強させていただ いて、非常に大事な問題提起があったと思うのですが、前回伺った御説明の範囲では、 私の理解力が足りなかったのかもしれないけれども、5つの選択肢の問題とその他のた くさんの改革点が出ていましたね。5つの選択肢は保険料と給付の関係についてだけ絞 って問題を出されていたと思うのですけれども、5つの選択肢のほかに、個々の改革を やると保険料にどれくらい影響があるかというような、例えば賃金スライドをやめれば どれくらい最終保険料率が低くなるとか、たくさんありましたけれども、両者のつなが りのところが前回の御説明が非常に短い時間だったので余りよく理解できなかったんで すね。  かつ、いろいろ細かく見ていくと、例えば賃金スライドなどは、賃金上昇率と物価の 上昇率とのバランスの関係で、一番上のケースでしたか、たしか賃金はまだ4%ぐらい 上がるようなケースだと保険料率の引下げに相当効果があるけれども、2%ぐらいしか 賃金上がらないのではないかと思っている、そのケースだと物すごく効果が悪いわけで すね。かえって実質的には保険料を上げなければいけなくなるようなケースも出ている のではないかと思うのですが、もう少し両者のつながりを含めて、半年あるわけですか ら、順次議論していただくのだろうと思うのですが、その辺からもう少し細かい議論を 委員の中でもいろいろ意見が違うと思うのですけれども、やっていただけると大変あり がたいです。 ○事務局  選択肢に関する資料としては、1冊目と2冊目、それから、1枚紙がございます。1 冊目に上げましたのは5つの選択肢ということで、これは例えば1枚紙をごらんいただ きますと、A,B,C,D,Eとありまして、特にB,C,Dのケースは、保険料を幾 らぐらいにすると給付はどれぐらいコントロールしなければいけないというバランスで 書いております。  そうなりますと、選択肢そのものでまいりますと、例えば保険料が30%を超えないよ うにしようということになると、今度は給付を1割下げなければいけなくなる。という ことになりますと、今度は2冊目との関係でまいりますと、保険料を30%にとめようと いうことであれば、例えばほうっておけば、34.3%になるものを30%にするということ でございますから、4.3ポイント保険料を下げなければいけないということと同じ意味で ございます。 分冊にありますのは、どういう方法をとれば、保険料を幾ら下げることができるか、 こういう組み合わせになってまいりますから、例えばCのケースのように、最終の保険 料を月収ベースに直すと26%ぐらいにおさめようということであれば、ほうっておけば 34.3%になるものを26%ぐらいに抑える。これは8ポイントぐらい保険料率を下げなけ れはいけない。そうすると、2冊目の方でいろんな手法をごらんいただきまして、こう いう方法をとれば2ポイント下がる、これでいけば3ポイント下がると読める。組み合 わせると、8ポイント下げるということはこういうことなのかなという組み合わせでご らんいただけるという使い方で、1冊目と2冊目の選択肢と手法を区別いたしたところ でございます。  ですから、一番簡明に言えば、手法の中でも給付のレベルそのものを1割下げるとか 2割下げるとかというふうにしてしまえば、その他の手法を一切使わなくても、それは 例えば8ポイント保険料を下げるということが達成できるわけでありますが、これも組 み合わせでございまして、給付水準自体を下げるのは、例えば1割ぐらいにしかしない ということであれば、財政効果はそれだけでありますが、そのほかに賃金スライドであ るとか支給開始年齢とか、いろんなものを組み合わせれば、さらに保険料を下げる効果 が生まれて、合計すれば、8ポイントなり十何ポイントという効果が生まれるというこ とです。このように1個1個の手法の組み合わせをごらんいただければできるかなと。 こういうイメージをつくっていただくときに資するのではないか。こういうようなこと で分冊にし、御説明を申し上げたところでございます。  それから、今の賃金スライドの効果でありますが、御指摘のように、もしよろしけれ ば、前回12月5日の資料の2−2の5ページをご覧下さい。これが賃金スライド制の効 果でありますが、今、委員御指摘のように、賃金スライドは実質の賃金が伸びていると きにはこのスライドをとめれば、大変財政効果があるわけでありますが、実質賃金が伸 びないときは、それはスライドをとめても余り効果がないということでございまして、 5ページに書いておりますように、ケース1、2、3とございますが、1では前回改正 で前提にしましたように、賃金上昇は4%で物価が2%伸びている。これでは毎年2% 実質賃金は増えている。こういうことであれば、増えた2%の伸びを年金に反映しなけ れば、このように最終保険料を6%下げるの効果がある。これは34.3%になるものを6 %下げる効果があるわけでありますから、これ1つで28.3%になってしまいますので、 例えば極端に言えば、B案ぐらい達成するだけの財政効果があるわけですが、そう簡単 に見切れるかどうかは問題です。  例えばケース3のように、賃金が2.5%伸びて、しかし物価も2%伸びている。この差 が0.5%であれば、財政効果は、最終的に34.3%というところも少し変わりますけれども 大まかにいって1ポイント強ぐらいの効果しかない。そうすると賃金スライドをやった ところで、最終保険料率34.3%になるはずのものがそう変わらないということでござい ますから、この辺は経済前提が変われば、保険料に及ぼす効果も相当幅がある。ここに つきましてはそういう幅でお示しをしております。  こういうことで、B,C,Dを達成するに際してのいろんな手法は組み合わせという ことで御理解いただければと思います。 ○C委員  今の御説明でかなり前よりはよくわかったんですけれども、給付の水準と保険料率と の関係だけで見ていくというケースの場合に、多分保険料率をある程度抑えようと思っ たら給付を下げなければいかん。その際に支給率を多分下げるのだろうと思うのですが 私も自分が今度は年金をもらうことになったので、給与課かなんかで呼び出されて説明 を受けたが物すごく長くたくさん式が書いてあって、私が見てもよくわからないのです よ。非常に複雑で、しかも制度が途中で変わっているとさらに複雑になる。  もうちょっと具体的に支給率というのが現在どうなっているのかを、多分標準報酬の レベルによって結果が違ってくるでしょうし、もう少し細かく説明していただかないと 私が頭が悪いのかどうかわからないけれども、多分普通の方には非常にわかりにくいの だろうと思うのです。今おっしゃった中で、後の方のことは、ここにある程度書いてあ るので、その範囲ではわかるのですけれども、むしろ前段の方のメカニズムが必ずしも 細部までよくわからんという感じがするんです。 ○事務局  それではもう少しお時間をいただいて、そこのところを御説明させていただきたいと 思いますが、今申しました資料2の今度は「主な手法と保険料への影響」という冊子の 2ページでございますが、これは実は1人1人の年金額に当てはめて書いているわけで はないわけでありまして、全体のマスでとらえておりますが、これは支給水準というも のをこういう割り切りで説明しています。上の四角い箱、試算の前提とありますけれど も、このケース1、2、3、「現行水準」とある中で、現行水準は手取りの年収に対し て62%の年金水準になっておる。これは平均値でございます。手取りの62%というもの を、例えばケース1であれば、これを55%の水準にして、55/62に下げてしまう。一律 これは下げようという考え方でございます。  それから、ケース2であれば、今、手取り年収の62%のものを50%に全員一律下げて しまおうと、こういう過程で3つのケースを置いたわけでございます。  そうしますと、全員一律下げるとどうなるかということで、額で今度はイメージをつ くりますと、右端の23万983円が幾らになるかというふうに見まして、今、これは平均の モデルでございますが、23万983円のものが、ケース1のケースであれば、20万7,000円 ケース2であれば、18万8,000円ぐらいの水準になります。これは1つのイメージで ございます。 こういうことで、全員一律に下げる方法は、一番これはベーシックなやり方でありま すが、保険料率に影響を及ぼすことになる。そうしますと、一番下のこの「影響」とい う欄でありますけれども、ケース1のように、62%手取り総報酬に対してあるものを、 55%の水準に全員一律下げれば、標準報酬で▲5%と書いてございますからこれは34.3 %に到達するはずの最終保険料率が5%落ち29.3%になるということを説明しておりま して、右端の国民年金の最終保険料については、月額2万4,300円までいくものが3,500 円ほど安くあがる。  これをケース2、62%のものを50%まで全員一律に下げるとすると、ケース2の影響 でありますが、81/2 %保険料を押し下げる効果があります。そうしますと34.3%に到 達する最終保険料率を 8.5%下げるわけでありますから、約26%ぐらいの最終保険料率 にとどまるということで、こういうぐあいに、全員一律に給付水準を下げれば、財政効 果は5%なり 8.5%なり、あるいはケース3ぐらいやれば、11%ぐらい下げることがで きる、こういうふうになるわけでありますが、これは言ってみれば、真っ正面から切り 下げる案でありますから、例えばこれと組み合わせる方法もある。そうすると、例えば 8%ぐらいの保険料を抑えることを考えた場合に、これ1本で、ケース2みたいにやっ てしまうやり方もあれば、例えばケース1みたいに、給付水準全体は55%ぐらいにして 一律下げて、ほかにいろんな手法が多々出ておりますから、1%とか2%下げる分を組 み合わせていけば、8%という保険料の抑制を達成する方法もあるということです。真 っ正面からこういうふうに、給付水準そのものを下げるというやり方もあれば、給付水 準もある程度下げ、しかし、ほかの賃金スライドを下げるとか、支給開始年齢で調整す るとか、いろんなやり方を書いていますので、そういうことで組み合わせて達成する方 法もあるということで、B,C,Dを実現するにしても、いろんな道行きがあるという ことを表現しておるところでございます。 ○L委員  年金制度のあり方を考える場合に5つの選択肢をこの間出されまして、いろんなとこ ろからいろんな意見が出てきていると思うのですけれども、その中で私もそうだと思う のですが、やはり年金制度だけをどう改革するかということだけの視点で考えるといろ いろ問題が出てくるのではないか。最初にF委員がおっしゃいましたように、社会保障 全体が今後どういうふうに変わっていくのか、あるいは変えていかなくてはいけないの か。 特に今度医療保険が大きな問題になっていますし、介護保険というのができましたし、 そういった中で、年金はどういう役割を果たして、年金制度はどうしなくてはいけない のかという視点をやはり忘れてはいけないと思うのですね。  そういう意味での議論を少しこの審議会でも、医療保険とか介護保険の将来の改革の 方向や動向を見きわめた上での年金制度のあり方についての議論をする時間といいます か、機会をお考えいただいた方がいいのではないかと思うのですね。今、給付水準の話 がいろいろ出ておりますが、今の給付水準は当然下げなくてはいけないのですけれども 例えば、これから医療保険の老人についての自己負担率も上がってくるとか、また介護 保険は年金の中から保険料を払うようになるとか、今の介護保険は保険料が同額2,000円 とか2,500円と言われていますが、2025年になると5,000円とか1万円になる可能性だっ てないわけではないのではないかというようなことを考えますと、そういったことも十 分頭に置いた上で年金の給付水準はどうあるべきかということを当然考えないといけな い。年金制度の枠の中でいろいろつじつまを合わせようとしますと、社会保障全体がゆ がんだ姿になるのではないかと思いますので、そういう議論をぜひこの審議会でもでき るようなことをお考えいただきたいと思います。 ○A委員  今、L委員から御指摘があった点は大変大事なところだと思いますね。これは狭義の 社会保障だけではなくて、恐らく社会福祉の現行措置制度と言われているものについて の給付の問題までかかってくるのだろうとは思うのですが、とりあえずそういうことを 射程に置いて、年金の側でこのことをどういうふうに考えられるかというと、先ほど事 務局から御指摘のあった2ページのところで、「所得代替率」という項目で55から50、 45等々という幾つかのケースが挙げられていますが、これは対手取り総報酬ですから、 現役の方は手取り賃金で、それに対して年金の方は総額で出された数字だと思うのです が、実際の年金生活者の方も、今御指摘があったように、介護その他でもって負担はこ れから増えていく。これは増えていくこと自体は不可避なので、そこはどこが適切かと いう議論はまた別にあるとしても、今、給付と負担のバランスというふうに通常言われ ているのはこういうレベルでの議論が多いのですが、年金の水準というのはやはり現役 の労働者の賃金に対して、退職者の人たちの制度的に保障される水準がどのくらいが妥 当かということを示しているのではないか。このことは非常に大事な指標だと思います  その意味では、賃金と年金との比率を手取りベースで考えるということが、今、L委 員から御指摘のあった点を勘案する上での1つの年金サイドでの考え方の軸なのではな いか。 これは私どもは前から主張してまいりました。  それから、その点で、給付水準は引き下げることが前提という議論が社会的に非常に 大きいし、その場合の前提として、要するにこれ以上の負担には耐えがたいという、あ るいは将来の若者はこういう負担には耐えられないであろう、あるいは耐える意思がな いであろう、こういうことがしばしば喧伝されるわけでありますが、現在の若い世代の 年金制度の将来に対する不信感というのは、私どもが思っているよりもやっぱり強いの だろうと思います。  これを何らかの形でちゃんと評価し判断する材料をぜひとも考えていただきたいと思 うのですが、恐らく有識者調査というふうなものは、一番若くても50代ぐらいで、年金 審議会の審議会委員の平均年齢はごらんのとおりですし、私どもの労働組合も意思決定 などをやろうとする人は大体50歳以上です。要するにそういう世代の人間たちが、今の 若い世代のことを慮って、ああだこうだという議論にどこかきちんと歯どめといいます か、めどをつけておく必要はぜひともあるのだろう。私どもの組織内で今大体4万サン プルぐらいで組合員の意識調査を始めました。これはどんな回答が出てくるかわかりま せん。ただ、いずれにしても、私ら周辺で聞いている限りで言えば、自分たちが高齢に なったときの年金の支払いが保障されるかどうかについての不信が一番強いのですね。 自分たちが高齢になったときにきちんと支払いが保障されるような場合の負担と、それ が危ういという場合の負担とでは、これは全然意味が違うので、私どもの世代の責任と いうのは、今の若い諸君に対して、彼らが年金を受給するときに、少なくとも基本的に 必要と思われる年金水準を確保するという制度設計と、ここで議論しているのだよとい うことだけははっきりと彼らに表明できる立場での議論をすることが必要ではないのか むしろ、若い人は払わないに違いないから、とにかく負担をまず下げてやるのが先行で その結果給付が下がるのはしようがないという議論は、逆に彼らの将来の年金制度に対 する不信と不安を助長しかねないという面をともに踏まえた検討をしていかなくてはい けないのではないか、そのように自戒をこめて思いますので、意見として申し上げてお きたいと思います。 ○事務局  今、L委員から御指摘のあった点ですが、これは私どもとしても非常に重要な視点だ ろうと思っております。従来、年金は年金、医療は医療、福祉は福祉と縦割りできたと いうのは否めない事実だろうと思いますし、これを給付と負担両面において総合的に整 合性のある形で、これから考えていくというのが非常に重要だと思っておりまして、こ れがまさしく社会保障の構造改革だと、こういうことで今取り組んでおるところでござ います。  特に介護保険がおかげさまで今度成立したということで、制度も出そろいましたし、 そういう点では議論がよりしやすくなったのかなとこう思います。医療とか介護で高齢 者の負担が増えるということですが、一方で介護のサービスをきっちり受けられるとい うことになりますと、寝たきりに備えて、年金を節約するということも必要なくなるわ けですから、そういう点で、一方では負担が増えますけれど、一方ではそういうメリッ トもあるということで、これは総合的に考えていくべきでなかろうかと思います。  ただ、医療が今非常に微妙な時期で、なかなか将来の具体的な姿を描くのが難しいと いうことかもしれませんけれども、できるだけ総合的に考えるということで、いずれこ の審議会でも御議論をお願いしたいと思います。  それから、若い人の意見を聞くということにつきましては、これまた大事なポイント だと思っておりますし、今度の有識者調査では少し若い人を増やすとか、こういうこと も考えております。また有識者調査だけでなく、一般の世論調査も実施したいと思って おりまして、そういった中で若い人の意見も聞いていきたい、こう思っております。 ○会長代理  まだまだ御意見あると思いますが、どうしましょうか。今日どうしてもおっしゃりた いという方がございましたら、どうぞおっしゃってください。 ○M委員  すいません、時間がないところを。5つの選択肢で出された手法なり、そういうこと を具体的なユニットとして、どこかの時点でこういうふうに提示をされるということは 行なわなければならない課題だとは思います。ただ、私が少し疑問に思いますのは、論 点整理をした上で、今後これにのっとってこの審議会として議論をしていくのだと思う のですが、そのうちの余りにも給付と負担にどう切り込むかというところのシミュレー ションに少し特化をしてないかなという感じはいたします。  例えば同じようなシミュレーションという形で一度数値化をしたり予測をしたりして 出していただきたいなと思っていることにつきましては、例えば人口動態に非常に原因 があるわけですが、支える側を少しでも増やし支えられる側を少なくする、いわゆる徴 収ベースを広げるということが一体どれだけの影響を持つのかというような視点もある と思うのです。例えば高齢者や女性の雇用を促進することで、ダブルインカムテーカー でダブルタックスペイヤーの社会構成をもっと広げていくようにしたときに一体どうい う影響を持つのか。いわゆる少子化率という問題だけではなくて、そういう変数を、も ちろんいろんな打出の小槌として余り大きな期待をそこにかけた前提で再計算するとい うわけにはなかなかいかないと思いますが、社会全体のありようをどういうふうに向け ていくかということの中で、その影響度を数値化すれば、どれだけ影響を持つのかとい うことについても、そういう数字をもとに幅広く議論していくことができるのではない かというふうに思います。 そういう意味では、5つの選択肢とそれに伴うユニットということだけのシミュレーシ ョンでいいのかどうか、要は今後論点整理について議論していく過程で、年末に示され たものがどうリンクするのか、我々としてはどう活用したらいいのか。これだけでいい のか、もっとシミュレーションが必要なのか、そういうことの論議をどこかの時点で要 るのではないかという感じがしておりますので、関連して御意見だけ申し上げておきた いと思います。 ○N委員  大変遅くなって恐縮ですけど、今、若い人の意識調査をするというお話がありました が、今の若い人が持っている年金についての知識は非常に偏っているといいますか、マ スコミを通じていたずらに不安感をあおりたてるようなそういう情報しかないのではな いか。やはり意識調査をするからには、事前によく正しい情報を与えて、そうでないと また誤った答えが出てくるとかえって年金問題の議論をする場合に阻害要素になるので はないかと思いますので、その辺の若い人たちへの教育宣伝活動といいますか、それを やった上での意識調査ということでないと、正しい答えが出てこないのではないかと思 いますので、御配慮をお願いしたいと思います。 ○会長代理  まだまだ御意見があると思いますけれど、この次の機会もあると思いますので、きょ うは予定の時間を経過いたしましたので、本日はこの程度にしたいと思います。  なお本日の資料につきましては、すべて公開することとしたいと考えておりますが、 いかがでございましょうか。                (「はい」と声あり)  それでは、そのようにさせていただきます。  今後の日程について、それでは事務局から確認をお願いします。 ○事務局  それでは今後の日程につきまして2点申し上げたいと思います。  第1点は、お手元に次回1月20日、21日の年金審議会の御案内をさせていただいてお ります。20日の日は資料に書いておりますように、大阪の厚生年金会館におきまして、 公聴会をお願いさせていただきたいと思います。意見陳述をいただきます有識者の方は 資料記載のとおりでございまして、当日は公開ということで、記者、一般傍聴者を含め まして100名程度の座席を準備させていただきたいと思っておりますので、あらかじめお 含みおきをいただきたいと思います。 それから、第2点目は、今後の審議会の開催についてでございますが、先ほど資料5 で日程は申し上げたところでございますが、2月13日は午後3時から、3月6日も午後 3時から、3月18日は午前10時からということで、繰り返しになりますが、2月13日は 3時から、3月6日は同じく3時から、3月18日は午前10時からということで、本会議 室におきまして開催をお願いいたしたいと考えております。 ○ 会長代理  それでは、本日はこれで閉会させていただきます。どうもありがとうございました。 問い合わせ先 年金局 企画課 須田(3316)