99/12/27 第8回厚生科学審議会総会議事録 第8回厚生科学審議会総会議事次第 1.日  時:平成11年12月27日 (月) 10:00〜12:00 2.場 所:中央合同庁舎第5号館 共用第9会議室 3.出席委員:豊島久真男会長       (委員:五十音順:敬称略)         石井威望  内永ゆか子 大石道夫  大塚栄子         岸本忠三  柴田鐵治  三上芙美子 西野瑞穂          寺田雅昭  寺尾允男  竹田美文  矢崎義雄 4.議  事:(1) 審議事項          平成12年度厚生科学研究費補助金公募研究事業について        (2) 報告事項         ・ミレニアム・プロジェクトについて         ・母体血清マーカー検査に関する見解について         ・厚生科学審議会各部会の審議状況について         ・その他 5.配付資料:(1)平成12年度厚生科学研究費補助金公募研究事業の方針 (案)(諮問)        (2)平成12年度厚生科学技術関係予算案の概要        (3)ミレニアム・プロジェクト (新しい千年紀プロジェクト) について        (4)「遺伝子解析による疾病対策・創薬等に関する研究における生命倫理          問題に関する調査研究」の実施等について        (5)母体血清マーカー検査に関する見解 (報告)        (6)厚生科学審議会各部会の審議状況について ○事務局  それでは、定刻になりましたので、ただいまから第8回厚生科学審議会総会を開催さ せていただきたいと思います。 本日は、軽部征夫委員、木村利人委員、曽野綾子委員の3名が御欠席でございます。  次に、委員の任期満了に伴いまして新たな発令がありましたので、御報告と御紹介を させていただきたいと存じます。退任された委員は、日本公定書協会会長の内山充委員 中部大学経営情報学部教授の飯田経夫委員、朝日大学学長の船越正也委員、キッコーマ ン株式会社社長の茂木友三郎委員でございます。新しく選任された委員を御紹介いたし ます。日本アイ・ビー・エム株式会社取締役の内永ゆか子委員、国立医薬品食品衛生研 究所所長の寺尾允男委員、徳島大学歯学部教授の西野瑞穂委員、東京国際大学経済学部 教授の三上芙美子委員でございます。よろしくお願いいたします。  次に、事務局を務めます厚生省を紹介させていただきます。まず、科学技術担当審議 官の堺でございます。同じく厚生科学課長の岩尾でございます。私、研究企画官の中垣 でございます。よろしくお願いいたします。  審議に入ります前に、堺審議官より一言御挨拶申し上げます。 ○堺審議官  堺でございます。日頃から厚生科学の振興に御支援をいただきまして、厚く御礼を申 し上げます。  また、委員の先生方におきましては、年末の非常に御多用中のところ、厚生科学審議 会総会に御出席いただきましてありがとうございます。厚く御礼申し上げる次第でござ います。  本日は、厚生大臣から諮問しています「平成12年度における厚生科学研究費補助金公 募研究事業について」、先週開催されました研究企画部会において御了承いただいたこ とから、本日は総会として御審議くださいますようお願いいたします。 厚生科学を取り巻く環境につきましては、少子高齢化や社会倫理的な観点からの研究 実施体制の整備の必要性をはじめとして大きく変化していることから、5月には、この 審議会から「21世紀に向けた今後の厚生科学研究のあり方について」と題する答申をい ただいたところでございます。いただいた御提言を踏まえまして、来年度の厚生科学研 究費補助金事業の公募課題を決定するものでありまして、よろしく御審議いただきたい と思います。 また、報告に係る案件といたしまして、厚生省科学技術関係予算案について御報告申 し上げます。来年度は、答申でも重要性が指摘されたバイオテクノロジー分野における 研究について、特に人の遺伝子の機能を解明する研究について増額することとしており ます。また、総会の下に2つの部会が設置されており、いずれも厚生科学が直面する多 くの課題に取り組んでおりますので、その審議状況について御報告申し上げます。厚生 省といたしましては、今後とも国民の健康や福祉の増進を図るため、引き続き厚生科学 研究の振興を推進してまいりたいと考えておりますので、御支援、御協力をお願い申し 上げます。ありがとうございました。 ○事務局  それでは、豊島委員に引き続き会長をお願いしておりますので、豊島会長、よろしく お願いいたします。 ○豊島会長  御指名いただきました豊島でございます。至りませんが、座長を務めさせていただき ますので、どうぞよろしくお願いいたします。  それでは、早速でございますが、議事に入りたいと思います。最初に、事務局から本 日の配付資料について御説明をお願いいたします。 ○事務局  (資料の説明と確認) ○豊島会長 ありがとうございます。よろしゅうございますでしょうか。 それでは、まず最初の議題でございます、本年12月24日、厚生大臣から本審議会に諮 問され、研究企画部会に付議いたしました「平成12年度における厚生科学研究費補助金 公募研究事業」につきまして御審議いただきますが、まず、矢崎研究企画部長から御報 告をお願い申し上げます。 ○研究企画部会長 矢崎委員 本年12月24日、厚生大臣から諮問され、研究企画部会に付議されました「平成12年度 における厚生科学研究費補助金公募研究事業」についての件であります。12月24日の第 17回の研究企画部会において審議の結果、部会としまして、諮問どおり了承することと いたしましたので報告いたします。その詳細につきましては事務局から説明いたします ので、審議のほど、よろしくお願いいたします。 ○事務局 それでは、事務局から御説明申し上げます。 まず資料 (2)が来年度の厚生省の科学技術関係予算の政府案の概要でございますが、 一般会計、国立病院特別会計、産業特別会計という形で分かれておりますが、一般会計 をご覧いただきますと、科学技術振興費といたしまして、 848億円、対前年度 5.1%の 伸びということになっております。この中で厚生科学研究費が 285億円、 5.7%の伸び でございますけれども、具体的に申し上げますと、先ほど堺審議官から御挨拶申し上げ たときに触れさせていただきましたとおり、本年5月にいただきました答申を踏まえて 重点とされるべき事項というのが予算措置なされております。具体的に申し上げますと 最初が2の(1)、※印が付されておりまして、これはいわゆる内閣総理大臣提唱のミレニ アム・プロジェクトで、この関係はまた改めて御説明申し上げますけれども、これが9.1 %、(2)として長寿科学総合研究が 7.3%の伸びとなっております。また、感覚器障害及 び免疫・アレルギー等研究経費が19.6%。更に、EBMを中心といたします医療技術評 価総合研究が58.8%の伸びという形になっております。更に、その下のその他のところ でございますが、※印が振ってございまして、これもミレニアム・プロジェクトの一環 でございますけれども、前年度 286.7%の伸びを示しております。 同様に、国立病院特別会計が 3.4%、産業特別会計は前年度と同額ということで、合 計いたしますと 1,124億 1,100万円、対前年度10.5%の伸びとなっております。 このうち厚生科学研究費だけを特記いたしましたのが2枚目のペーパーでございまし て、本日、御審議いただきます来年度の公募課題というのは、ここにございます厚生科 学研究費補助金のIからIVまででございますが、そのうち※印が付いておりますヒトゲノ ム・再生医療等研究経費につきましては、来年度、新規にこの項目が設立されるという こともございまして、今日の審議事項ではございません。また、厚生科学研究費補助金 は、委員の皆様方ご存じのとおり、2年計画、3年計画と数年にわたるものもございま すので、来年度公募いたしますのは、ここの研究費全額ということではなくて、増額さ れた部分、あるいは今年度で研究が終わる部分の研究費が対象となってまいります。  具体的に来年度公募する予定の内容について、資料 (1)をもとに御説明申し上げま す。  資料 (1)の1枚目は諮問書となっておりまして、1枚めくっていただきますと、右隅 に2ページとなっておりますが、ここに先ほどご覧いただきました「政策科学推進研究 事業」から17番の「医療技術評価総合研究」まで各研究事業が並んでおる訳でございま すが、分厚うございますので、大きく変わったところを中心に御説明をさせていただき たいと思います。 まず最初に、1番の「政策科学推進研究事業」におきましては、右側の「平成12年度 研究課題採択方針 (案) 」というところを見ていただきますと、特に社会保障関係業務 従事者による実践的研究や多職種による共同研究を積極的にやるということでございま す。  2番目の「統計情報高度利用総合研究事業」といたしましては、個人医療情報の保護 あるいは厚生統計の国際比較、これに力点を置きたいということでございます。  1つ飛ばしまして、4番目の「がん克服戦略研究事業」につきましては、今年度、公 募がなかった訳でございますが、来年度は公募させていただくということでございま す。  5番目の「長寿科学総合研究事業」につきましては、骨等について力点を当てる訳で ございますが、これについてはまた別途御説明します。  1ページめくっていただきまして、7番目の「子ども家庭総合研究事業」でございま すが、これにつきましては、新規採択予定課題数をご覧いただきますと、2課題から10 課題ということで、来年度はかなり多くの課題を公募するという方針でございます。  8番目の「脳科学研究事業」につきましては、これも本年度が2課題について公募し たのに対して、来年度は20課題。ここにございますように、かなり広範な事業について 公募する予定でございます。 また、9番の「高度先端医療研究事業」につきまして、これは内容が2つに分かれて おりますが、上の人工血液を中心とするものにつきましても、今年度が1課題に対して 来年度は6課題程度公募したいということでございます。  次に、10番の「新興・再興感染症研究事業」でございますけれども、これも、右の12 年度の採択方針(案) を見ていただきますと、具体的になっているのとともに、公募課 題が本年度の5から10に比べて、37程度ということでかなりの増加を示しております。 次の「エイズ対策研究事業」も、公募される研究課題が増えております。また、ここ で研究費の規模で1(1)ということで書かれておりますが、これは別途御説明申し上げま す。 12番目の「感覚器障害及び免疫・アレルギー等研究事業」の感覚器障害分野について も、大幅に採択予定課題数が増えておりますし、免疫・アレルギー研究分野については アレルギー疾患の環境因子の解明等が新しく公募の中に入ってきております。 5ページにつきまして、最初が「特定疾患対策研究事業」でございますが、これにつ いても、筋萎縮性側索硬化症ほかの公募をするということでございます。  14番の「生活安全総合研究事業」については、今年度に比べて採択予定の課題数が減 っております。 「医薬安全総合研究事業」についても同様でございます。 以上が大まかなところでございますが、7ページから、今、簡単に御説明申し上げま した個別の研究事業について、11年度と12年度の案といたしまして、参考ではございま すが、具体的にこういうテーマで公募をしたいということを述べております。 まず、「政策科学推進研究事業」を見ていただきますと、11年度に比べて12年度が、 1つには、研究企画部会の御示唆もあって、公募する研究課題を具体的に記述する。そ れによって、厚生省として、あるいは厚生科学のあり方として今後の方向性を示すとと もに、申請なさる方々にとって透明性を図るということから、公募する研究課題を具体 的に記述するという方向に改めさせていただいております。この「政策科学推進研究事 業」では、12年度 (案) の7にございます、「社会保障における情報化の役割に関する 調査研究」というのが項目としては新しく立てられております。  8ページの「統計情報高度利用総合研究事業」につきましては、医療情報の保護、あ るいは国際比較というのが先ほど申し上げたとおりでございます。  9ページは昨年度とほとんど同じでございますが、国際協力の評価のあり方を検討し たいということでございます。  10ページが「がん克服戦略研究事業」でございますが、これにつきましては、先ほど 申し上げたとおり、今年度は公募は行われておりません。来年度、新たに公募するとこ ろでございます。 12ページをご覧いただきますと、「長寿科学総合研究事業」ということで、11年度に 比べますと、12年度はボリューム的にも3ページにわたる書き方ということで、先ほど 申し上げましたように、研究対象を非常に具体的に挙げてきたというのがその特徴であ ろうかと思いますし、13ページの上から3分の1のところにあります「骨・関節分野」 というのが項目的には新しくなっております。  次が、15ページの「障害保健福祉総合研究事業」でございますが、これについては本 年度と同様でございます。 16ページが「子ども家庭総合研究事業」でございますが、先ほど申し上げましたとお り、これも非常に具体的に書かさせていただいております。 次が、17ページの「脳科学研究事業」におきましては、右側の12年度 (案) を見てい ただきますと、3番の神経疾患以降が新規に追加されております。3番が神経疾患、4 番が筋疾患、5番が発達障害、6番が中枢神経系外傷、次のページの睡眠・リズム障害 ストレスマネージメント、脳内薬物受容体、リサーチリソース、画期的な治療法という ことで新しく追加されております。  誠に申し訳ないことに19ページに不手際がございまして、19ページの12年度 (案) の ところをご覧いただきますと、最初に1、2、3、4と並んでおりますが、ここは消し ていただきまして、左側の11年度の治療機器等開発研究分野が同様に入ってまいりま す。同じでございます。要するに、先ほど申し上げましたように、2つからなってい て、1つが人工臓器を中心とする研究、もう1つが人工血液を中心とする研究でござい ます。恐縮でございます。  次の20ページでございますが、「新興・再興感染症研究事業」につきましても、内容 を組み直してわかりやすくさせていただいております。これが21ページまでございま す。 次が、22ページの「エイズ対策研究事業」でございますが、これについても柱ごとに 組みかえる作業を行いまして、1番を臨床医学研究、2番を基礎医学研究、3番を社会 医学研究、4番を疫学研究という形で組み直ししております。  23ページが「感覚器障害及び免疫・アレルギー等研究事業」でございますが、これに つきましては、先ほど申し上げましたとおり、特に免疫・アレルギー等研究分野が拡充 されておりまして、アトピー性皮膚炎ほかの研究事業が並んでおります。 24ページ、「特定疾患対策研究事業」でございまして、本年は3分野について公募し たいと思っております。  26ページでございますが、「生活安全総合研究事業」につきましても、本年5月の答 申に基づきまして、室内環境中の微量化学物質等を中心に公募をしたいと考えておりま す。  28ページからが「医薬安全総合研究事業」でございます。ここでは、いわゆるメディ ケーションエラー等についての公募課題案が載っております。 29ページが「健康科学総合研究事業」でございますが、3番目の虚血性心疾患のとこ ろを見ていただきますと、倫理あるいは個人情報保護を尊重した疫学研究のあり方とい う形で、個人情報の保護を尊重したときの疫学研究について研究を公募したいと考えて おります。  最後のページでございますが、「医療技術評価総合研究事業」。これも5月の答申を 踏まえて、6番のEBMのところが具体的な疾病名が挙げられておりますとともに、歯 科保健医療等について新たに公募をしたいと考えております。  以上、簡単でございますが、資料 (1)、資料 (2)の説明とさせていただきます。 ○豊島会長 どうもありがとうございました。今の御説明について、御質問ございますでしょう か。あるいは、御意見でも結構でございますが、よろしゅうございますでしょうか。 ○三上委員 1つだけわからない点を質問させていただきます。資料 (1)の5ページ目のところで すけれども、来年度は新しくミレニアム・プロジェクトですとか、そういった先端的な 研究が大分拡大されていくことになるようですけれども、しかし、依然としていろいろ な生活環境等が危ない状態になっていく中で、健康への影響というのが非常に重要にな ってきている訳ですけれども、14番目の「生活安全総合研究事業」で、特にダイオキシ ン、あるいは、いわゆる環境ホルモンと言われています内分泌かく乱物質などの影響、 そういった研究はこれからもっともっと重要になっていくと思うのですけれども、これ が40課題から25課題に減っているのは、継続の分を含めるともっと多いのでしょうか。 どうして減ってしまったのかということをお伺いしたいと思います。単純に状況がよく わからないものですから。 ○岩尾課長 それでは、御説明させていただきます。まず、このような総合研究課題は、通常3年 を1つのクールとしております。ですから、昨年度募集したのが40課題あるとすると、 それが普通は3年続く。ただ、今年度、予算が増えるとか、昨年度やったものが1年度 の緊急性を持つ研究で終了するというようなものについては早く終わる訳です。そうす ると、来年度、公募する予算枠がある程度取れるということになります。その枠で今年 は25課題程度ということだろうと思っておりますが、詳しくは、担当課が来ております ので、追加説明をさせたいと思います。 ○生活衛生局企画課 生活衛生局企画課でございます。ダイオキシンと内分泌かく乱化学物質につきまして は、実は平成10年度、11年度に大幅に厚生科学研究費を増額させていただきまして、全 体として約40課題前後の新規採用の研究が開始されておりますが、ほとんどの研究が2 年もしくは3年間にわたる研究になってございまして、このうち約3分の2強の研究が 1年目の研究が終了したところでございまして、平成12年度は2年目の研究期間に入る という課題でございますので、研究予算の都合上、継続課題に加えて、増額分もしくは かつてからの継続課題が終了した分の枠内で今回は25課題程度の新規募集ができるとい うことでございます。 ○豊島会長 よろしゅうございますか。ほかに御質問ございますでしょうか。 今年、大分増えている分もありますけれども、かなり具体的に書いていただいている ので、応募の方はしやすいということだと思いますが、よろしゅうございますか。こう いうミッションのはっきりしたものは、このぐらい書いていただいている方が応募は楽 ですね。 ○矢崎委員 今の三上委員の御質問のように、平成11年度と平成12年度で公募の課題数が少し違っ ています。これは、前年度からの継続分は新しいところに入っていないことによりま す。相対的には大きな変わりはないと理解していただければと思います。 ○豊島会長 よろしゅうございましょうか。 それでは、この方向で皆様お認めいただいたものと考えてよろしゅうございますでし ょうか。 それでは、研究企画部会の報告どおり厚生大臣に答申したいと思いますが、よろしゅ うございますでしょうか。               (「異議なし」の声あり) ○豊島会長 どうもありがとうございます。それでは、そのようにさせていただきます。 次に報告事項でございますが、「ミレニアム・プロジェクト」につきまして、事務局 から報告をお願いいたします。 ○事務局 それでは、資料 (3)に基づきまして御説明を申し上げます。 「ミレニアム・プロジェクト(新しい千年紀プロジェクト) について」ということで 12月19日に出されました内閣総理大臣決定の文書の関係部分の抜粋を配らせていただい ております。このミレニアム・プロジェクトと申しますのは、小渕総理大臣の主導で決 められたものでございまして、要点は、項目といたしましては情報化、高齢化、環境対 応、この3つの分野について実施をする。その仕方といたしましては、産学官共同のプ ロジェクトでやる、あるいは省庁横断的な取り組み、官民の十分な連携を図るというこ とがその特徴になっております。  関係部分は総論と各論からなっておりまして、各論部分を御説明申し上げます。真ん 中と右隅にページ数が振られておる訳でございますけれども、右隅のページ数で御説明 をしたいと思います。4ページがヒトゲノム、イネゲノム、いわゆる高齢化対応のとこ ろの各論でございます。  5ページをご覧いただきますと、ヒトゲノム、イネゲノムのところのプロジェクトの 目標が枠囲みで掲げられておる訳でございますが、2004年度、すなわち5年後を目標に 1つには高齢者の主要な疾患の遺伝子解明に基づくオーダーメイド、すなわち病気にか かりやすい人であるとか、副作用が出やすい人であるとか、そういう因子を遺伝子を用 いて解明をして、病気にかかりやすい人には、その予防法でございますとか、副作用が 出やすいということでございますれば、ほかの薬を投与するとか、そういう個人の特徴 に応じた医療、オーダーメイド医療という言葉を使っておりますが、これを実現する。 あるいは、画期的な新薬の開発に着手するというのが1つ。  もう1つには、拒絶反応のない自己修復能力を利用した骨・血管等の再生医療を実現 をする。すなわち、皮膚でございますと、皮膚の培養細胞を用いた人工皮膚みたいなも のがつくられてきておりますが、そういった再生医療を実現をするというのが2番目の 目標でございます。  3番目、イネゲノムの部分の目標といたしましては、アレルゲンフリー等高機能食物 あるいは農薬使用の少ない稲作を実現するということになっております。  これらの目標を実現するために、実現目標という言葉を使っておりますが、詳細な目 標がその下から述べられておる訳でございます。まず、ヒトゲノム解析を突破口とした 5大疾患の克服ということで、ヒトゲノム (完全長cDNA) の解析でありますとか、 日本人の標準的な一塩基多型の解析が載っている訳でございますが、厚生省が主に扱い ますのは、最後のパラグラフ、「上記のヒトゲノム解析を行うとともに」というところ でございまして、「2004年度までに下記の具体的目標を達成する」ということで、痴呆 から喘息まで具体的な疾患ごとに、幾つぐらいの遺伝子を発見するのかを中心に記述が なされております。これにつきましては、総会としては初めてでございますが、研究企 画部会におきましては、10月にも厚生省の案として報告させていただいたところでござ いますけれども、それが内閣総理大臣決定におきましても採用されたところであろうか と考えております。  6ページの下の方から再生医療の目標が同じように並んでおりまして、7ページをご 覧いただきますと、(1)から(6)まで個々の分野ごとに具体的な目標が掲げられておりま す。(1)骨・軟骨分野、(2)血管分野、(3)神経分野、(4)皮膚・角膜分野、(5)血液・骨髄 分野、(6)移植技術・品質確保技術ということでございます。ここで移植技術と申します のは、最後になお書きで書かれておりますように、拒絶反応の機構解明、あるいは移植 組織の生着を向上させるということでございますし、品質確保技術というのは、大量培 養する際の危険因子の検出方法、あるいは、それを通じた製造過程における品質管理技 術ということでございますので、そういう意味では5分野プラス1ということになって おるかと思います。  8ページをご覧いただきますと、イネゲノムの分野が出てまいる訳でございますが、 これもヒトゲノムと同じように、イネのゲノムを解析をしようというのが1つの大きな 目標でございますとともに、アレルゲンフリー等の機能を要する作物・食品の開発とい うのが挙げられております。また、これらの研究を進めるに当たって忘れてはならない ということで、括弧書きで「安全性の確保と国民の理解の増進」というところに重要な 事項が3つ並んでおる訳でございますが、まず1つが、本年度を目途に、遺伝子解析研 究を実施するにあたって必要な個人情報の保護、生命倫理の確保を図るためのガイドラ インを策定するということでございまして、これにつきましては既に具体的な作業を進 めておりますので、また後で御説明をしたいと思います。(2)が、2004年度までにバイオ テクノロジー応用食品の安全性の確保を図っていくということでございますし、(3)が遺 伝子組換え食品の表示の適正化等々について書かれておる訳でございます。  9ページから、それでは具体的にどのような形で事業を実施していくのかというのが 書かれておりますが、厚生省に関係する部分のみ御説明申し上げますと、10ページの上 から3分の1ぐらいのところに「疾患・薬剤反応性遺伝子の解析と治療応用」というこ とで、遺伝子解析を用いた、先ほど御説明申し上げましたオーダーメイド医療の実現 等々について、ここで実施体制が書かれておる訳でございますが、厚生省に関わる部分 は、このうち痴呆から薬剤反応性までの体制でございまして、痴呆ですと国立精神・神 経センター、がんですと国立がんセンター、糖尿病ですと国立国際医療センター、高血 圧ですと国立循環器病センター、喘息については国立小児病院、薬剤反応性については 国立医薬品食品衛生研究所を中心に進めてまいりたいと考えております。  また、ここにいろいろな大学、あるいは財団法人癌研究会癌研究所が掲げられており ますけれども、後で御説明申し上げますが、国立精神・神経センター等々、すなわち厚 生省傘下の研究機関については、厚生省を通じて研究費が流される仕組みになっており ます。これ以外の大学、あるいはがん研究会については、文部省を通じて研究費が流さ れると聞いております。  10ページの下の方に、バイオインフォマティクス技術ということでデータベースの整 備が掲げられておりますが、11ページのちょうど真ん中ほどを見てみますと、言葉がい いかどうかは別にいたしまして、疾患データベースということで、国立がんセンターの 名前が挙げられております。 また、11ページの下の方から、(2)「再生医療」といたしまして、再生医療分野が同じ ように記述されておる訳でございますが、12ページの中ほど、「主たる実施機関」のと ころを見ていただきますと、先ほど申し上げました6分野ごとに、例えば骨・軟骨です と北里大学、藤田保健衛生大学、京都大学再生医科学研究所、血管ですと国立循環器病 センターほかの名前が挙げられておりまして、これらについては、従来から厚生科学研 究費補助金を通じて研究を行ってきたという経緯がございますので、厚生省が中心とな って、これらの大学あるいは研究所を中心にプロジェクト型の研究を進めていきたいと 考えております。 具体的にどのような形で進めていくかということでございますが、14ページをご覧い ただきますと一番下の方に「推進体制」というのがございます。このミレニアム・プロ ジェクトにおきましては、各省庁横断的な取り組みを行うというのが基本的な方針の1 つに掲げられておりますので、15ページでございますが、省庁縦切りではなくて、プロ ジェクトごとに研究者が集まる機会を設ける。すなわち、厚生省が研究費を流そうと、 文部省が流そうと、そういうことに関わりなく、研究者がそれぞれの項目ごとにまとま ったプロジェクトチームをつくる。具体的に申し上げますと、「ヒトゲノム多様性」、 「疾患遺伝子」、「バイオインフォマティクス」、「発生・分化・再生」、「イネゲノ ム」という5つの分野に分けて、各研究代表者からなる各省庁横断的なプロジェクト チームをつくるというのが1つ。それぞれのプロジェクトチームにリーダーを置いて、 リーダーからなるバイオ・ミレニアム実施会議というものを設けるということになって おります。  また、それらの研究状況を評価いたしますために、17ページに「評価の仕組み」とい うのがございまして、プロジェクト評価助言会議というのを設ける。ここは、関係審議 会の代表と、その他の有識者から構成して、議長は科学技術会議の委員が担当するとい うことになっております。すなわち、内閣総理大臣の下にプロジェクトチームが設けら れ、それを評価するための評価会議が設けられるという仕組みでございます。 全体像を御説明したのが19ページからの一連の図表でございますが、大きく分けまし て医療分野と食料分野に分かれる。医療分野は、先ほど申し上げました個人の体質・素 因に応じた医療の実現、あるいは新薬の開発というのが1つ。あるいは、再生医療の実 現というのが1つでございます。また、食料分野については、機能性食品の開発という のが1つの分野ということになっております。  20ページをご覧いただきますと、医療分野、あるいは食料分野ともに、安全性あるい は倫理面の確保が重要であるということが強調されたペーパーでございます。 21ページがその全体像を掲げたものでございますけれども、このうち厚生省が中心と なりますのは、左側の2番目「5大疾患の疾病対策」というところと、右側の「再生医 療」の分野が厚生省が中心となりますし、また、「ヒトゲノム関連データベース整備」 で申し上げますと、先ほど申し上げましたように、疾患データベースというところでご ざいます。更に、「イネゲノム」の分野についても、遺伝子組換え食品の安全性確保な どを中心に厚生省として取り組む訳でございます。  22ページから厚生省としての取り組みを特記したペーパーでございますので、簡単に 御説明申し上げますと、来年度予算で政府予算案にございますのは、ミレニアム・プロ ジェクト関係では合計 100億円でございまして、分野としては、先ほど申し上げました 3つの分野に大きく分けられる訳でございます。  23ページからが、まず最初に遺伝子解析による疾病対策・創薬推進事業でございます が、このプロジェクトの目標については、先ほど御説明しましたので省略させていただ きます。 24ページでございますけれども、表になっておりますが、対象疾患といたしまして6 分野、それぞれナショナルセンター、あるいは国立小児病院、国立医薬品食品衛生研究 所を中心に、ここに61億円。具体的には医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構への 出資という形でございますけれども、61億円の予算が付けられております。また、これ らの研究を支えるものとして、従来からやってまいりました基盤的な細胞バンク、DN Aバンク、あるいは遺伝子治療の実現等々について、本年度とほぼ同額の予算が付いて おります。これは厚生科学研究費補助金でございます。  更に、具体的な実施方法といたしまして25ページのところでございますが、これらの 研究所、ナショナルセンターを中心にやっていく訳でございますが、遺伝子の解析を行 っていく上で、その塩基配列 (シークエンス) を解析するというのがどうしても必要と なる訳でございますけれども、それぞれの機関でやるよりは、まとまって集中して効率 的にやるということを考えておりまして、26ページでございますが、国立がんセンター に新たに設置される予定の疾病ゲノムセンターにシークエンス解析部門というのを置い て、そこに必要な機械を配置をして、一大シークエンス解析センターとしての機能を果 していただきたいと考えております。 また同様に、データベースにつきましても、27ページでございますが、疾病ゲノムセ ンターの中にデータベース部門というのをつくらせていただいて、そこに各センターか らの情報を集約をするということを考えておる訳でございます。 25ページに戻らせていただきますが、25ページの上から3分の1のところに、 (2)と して「民間部門の参画方法について」というのがございますが、研究の中身としては、 非常に基礎的な研究に近いものから実用化に近いものまで分かれる訳でございますけれ ども、基礎的な研究、学術的な研究に近い分野については、特定の企業を排他的に利す ることがないように、ここに書いておりますジェノックスという会社を通じた共同研究 を考えておりますし、実用化に近いところでは、各社が持っております知識と経験を利 用しないと先に進まないという事情もございますので、個別企業と共同研究契約を結ん で進めていくということを考えております。 これらの研究を推進するために必要な施設、あるいは機器につきましては、本年度の 第2次補正予算で既に確保されておりまして、施設整備につきましては、国立がんセン ターに新築する予定の疾病ゲノムセンターをはじめ29.6億円、機器の整備につきまして は、同様に28.9億円、ここに書いておりますように確保したところでございます。 以上が遺伝子解析の分野でございます。 28ページから、同様に再生医療の分野についてペーパーをまとめておりますが、この 目標も先ほど申し上げましたので省略させていただきます。 29ページをご覧いただきますと、それぞれの分野ごとに、主な実施機関に書いており ます大学、研究所を中心に、プロジェクト型の指定研究として実施する予定でございま す。額的には11.4億円が厚生科学研究費補助金の中で確保されております。 また、民間部門の参画については同様でございます。 31ページからバイオテクノロジー応用食品の安全性確保、あるいは高機能食品の開発 ということで述べられておりますが、厚生省が実施いたします研究といたしましては、 2の (1)「プロジェクトの全体像」の(1)及び(2)に掲げられておりますが、1つの大き な柱は、遺伝子組換え食品を中心といたします食品の安全性の確保の方策、また、32 ぺージに書いてあります高機能食品の開発という、この2本柱を考えておりまして、研 究費といたしましては、厚生科学研究費として1億円を予定しております。  これが全体像でございますが、先ほど申し上げました倫理面、あるいは個人情報保護 の確保を図りますために、資料 (4)に基づいて御説明をしたいと思います。資料 (4)の 1ページでございますが、「『遺伝子解析による疾病対策・創薬等に関する研究におけ る生命倫理問題に関する調査研究』の実施について」ということで掲げられております が、厚生科学研究費補助金を用いまして、国立がんセンターの垣添忠生中央病院長を班 長といたします検討委員会並びにその検討委員会の中に作業委員会が設けられて、既に 検討をいただいておる訳でございます。と申しますのも、この分野はまだまだ新しい分 野でございまして、余り厚生省としての蓄積もないために、このような形で最初は厚生 科学研究費を用いた研究を進めておる訳でございますが、5.「その他」の項を見ていた だきますとおわかりのとおり、この研究班におきます研究成果というのは、報告書を取 りまとめていただく訳でございますけれども、厚生科学審議会に御報告させていただい て、具体的には先端医療技術評価部会を考えておりますが、その先端医療技術評価部会 の中で更に御審議を願う。そのたたき台をつくるのがこの調査研究班であると考えてお ります。また、その先端医療技術評価部会での御議論の間には、一般からの意見の聴取 いわゆるパブリック・コメントもやりまして、できますれば来年の3月を目途に厚生科 学審議会としての御意見をまとめていただき、それを踏まえて厚生省としての方針を決 定したいと考えている次第でございます。  次にミレニアム・プロジェクトの中で再生医療が1つの柱であるということを申し上 げた訳でございますが、ヒト組織の移植等への利用のあり方につきましても、遺伝子解 析におきます生命倫理問題と同様、既に検討が始められております。具体的には、先端 医療技術評価部会の中に専門委員会をつくっていただいて、その専門委員会の中で御議 論をいただいておる訳でございまして、これも先ほどの遺伝子解析の倫理問題と同様な スケジュール、すなわち来年3月を目途に議論を進めていただきたいと考えておりま す。  具体的な研究課題は4ページに書いてありますが、1つには倫理面の問題、2番目に は移植される組織を通した感染症の問題、3番目には、感染症を除く、それ以外の安全 性・有効性の問題でございまして、あと、その他として2つの課題が挙げられておりま す。  これが厚生省として進めておるところでございますが、一方、科学技術会議におきま しても、クローン技術を用いたヒト個体の産生について考え方が示されておりますので 御参考までに御報告をしたいと考えております。  要点となっておりますのは、クローン技術を用いた人個体の産生を禁止をする。具体 的には、法律を用いて禁止をするというのがその考え方でございまして、18ページをご 覧いただきますと、18ページのちょうど中ほどに (6)「規制の対象」というのがござい ます。この2行目のところに「人クローン個体の産生に対する規制は、人クローン胚の 人又は動物の母体への胚移植を禁止することが適切である」という文章がございまして 19ページの上から3分の1ぐらいのところ、3つ目のパラグラフでございますが、これ らの意見について更に検討したところ、人クローン個体の産生は法律により禁止するこ とが妥当であるということでございまして、まず、クローンを用いた人個体の産生とい うのは法律で禁止すべきだということがここで掲げられておる訳でございます。  次に20ページでございますが、4番の「クローン技術以外の生命関係技術」というと ころでございますけれども、これの「また」から始まる第2パラグラフをご覧いただき ますと、人と動物のキメラ、あるいはハイブリッド個体の産生も全面的に禁止すること が妥当であるということが1つの御意見でございますし、個体を産み出さないキメラ胚 あるいはハイブリッド胚を取り扱う研究については、更なる検討が必要であるというこ とで、更なる検討課題という形になっております。  これが科学技術会議の委員会の考え方でございまして、これに基づいて人クローン個 体の産生を目的とする研究、あるいはキメラ、ハイブリッドの個体の産生を目的とする 研究については、法律で禁止すべく法案の準備がなされていると聞いております。以上 でございます。 ○豊島会長  どうもありがとうございました。今の説明につきまして、御質問あるいは御議論ござ いますでしょうか。 ○三上委員  ミレニアム・プロジェクトで、意見、それから感想も交えて2点ないし3点発言させ ていただきたいと思います。  遺伝子解析は確かに注目されている新しい先端的な研究で、これまでわからなかった 遺伝子情報が明らかになっていく中で、さまざまなメリットは確かにあると思うんで す。実際にマスコミ等でも、例えば古代の人のいろいろなことが明らかになってきたと か、人間の体質の情報もわかる。確かにそういう面はあると思うのですが、その一方 で、この研究が進んでいって、これは目的としては、やはり最終的には治療に役立て る、健康づくりに役立てるといったことだと思うんですけれども、一方、リスクという ものも潜在的には可能性としてあると思うんです。私、資料、情報などに目を通してい まして、今お聞きしていましても、そのリスクの方の研究が足りないような気がするん です。とにかく、先端の解析のところだけ最初にゴーサインでいくという感じがして、 ちょっと心配になっているところがあるんです。  例えば、既に遺伝子組換え食品というのができていますけれども、アメリカなどでは それも危険可能性があるというデータもきはじめているんですね。だから、そういった ところの研究、つまりリスクの方の研究もぜひ同時に行っていただきたいと思うんで す。ここの中でちょっと気になったのは、厚生省は国民の理解を得るためにいろいろな 情報公開をすると。もちろん、情報公開は重要で結構ですけれども、理解を得るために といいますと、あくまでもそれをやるんだというのが前提になってしまっているような 感じがしますので、安全性についてのということのみならず、リスクについても、その ためにはリスクについての研究も非常に重要だと思いますので、医学的な専門的な研究 者の方々はそちらにも同じぐらいの比重でぜひ研究していただきたいというのが1つで す。  それからもう1つ、2点目は、このプロジェクトは、あるいは先ほどの厚生科学の研 究の先端医学のところの分野もそうですけれども、特に遺伝子やヒトゲノムのところで しょうか、社会科学、あるいは生態系学というのでしょうか、そういった分野からの研 究がないんですね。資料 (3)は全部医学の中で行われていまして、遺伝子の解析、ある いは情報を読み取る、そういったものはもちろん医学の分野ですけれども、私は、こう いった研究は、そして、このような研究の方向というのは、医学だけで進んでしまって いいのかなという心配がありまして、この遺伝子解析のミレニアム・プロジェクトの研 究を押し進めていって、私たち人間の生き方というのはこれからどうなっていくのかと いうことも、遺伝子によっていろいろなことがわかってきてしまう、あるいは遺伝子と いう新しい、全くこれまでと違ったやり方で出てきてしまうといったときに、私たちの 生き方はどうなっていくのか。今、人類社会はどういう方向に行こうとしているのかと いうのが、ちょっと戸惑いがあると思うんです。 それから、もう1つは経済の問題ですけれども、これには非常にコストがかかる。こ れがいずれ人体実験といいますか、それから治療というふうに進んでいったときに、膨 大な費用がかかる。この費用は一体どれぐらいかかるのかということです。そして、そ れはどこがどういうふうに負担していくのか。これもやはり社会科学の方の研究になっ てくると思うんです。ですから、同時に社会科学の方の、あるいは生態系全体がどうな るかといった方の研究も併せてぜひ行っていっていただきたいと思います。現在行われ いるのは倫理面、個人情報保護といった、あくまでもこのプロジェクトを行うに当たっ ての守るべきことでありまして、それ以降進める中で、医学だけでなくて、今申し上げ たこともぜひ研究に入れていっていただきたい。そういう必要があるのではないかと問 題提起させていただきます。 ○豊島会長  どなたかお答えいただけますでしょうか。今おっしゃったようなことが幾つかここに も書かれておりますし、厚生省だけでなく、文部省、科学技術庁を含めた、各研究機関 を含めたところで一応問題になっておりまして、多分その方面でも進めていくだろうと 思います。技術面だけの開発ということではなくて、安全性の検査もここには一応入っ ておりますね。それは、今までよりも大分進歩だと思っておりますが、いかがでござい ましょうか。 ○寺田委員  確かに三上委員が言われるとおりでありまして、ただ、ここは疾病ということに限定 されていますので、リスクの研究などがここには余り入っていないようにみえます。し かし、いろいろなところでリスクの研究を、特に今、遺伝子組み換え食品の話も言われ たと思うのですが、その生態への影響、そういうことに関する研究も当然入れなくては いけません。健康そのものに関しましても、例えば一番極端な例が遺伝子治療という、 将来的には有効である可能性が高い治療法、そういう解析とか診断というのではなくて 遺伝子に介入するような研究に対しましては、別に遺伝子治療の審査会がずいぶん厳重 に審査をしています。かえって審査が遅過ぎるというようなこともございます。その際 ベクターの安全性とか、そういうことがいろいろ検討されています。  おっしゃいました経済の問題ということに関しましては、これは実際どうなるものや ら、これは遺伝子治療だけではございませんが、個別化した場合に、本当に医療として どれほど経済性があるものができるかどうかというのは、実際にやってみないとわから ないところがずいぶんあると思います。確かに、おっしゃったことはすべて大事な研究 の対象になると思います。特に完全に個別化された場合に、私自身も本当に医療として 成り立つのかなと考えます。遺伝子の研究といいますのは、すぐ治療とおっしゃいまし たようですけれども、どちらかというと、ハイリスクの人を特別に予防するとか、病気 の予防という方向にもずいぶん強い影響が出てくるのではないかと考えます。長い長い 期間の間かもわかりませんけれども、そういところで、医学そのものに関するインパク トはかなり大きいものではないかと考えております。まとめますと、おっしゃいました ように社会的な面、生態環境への面、あるいは経済性の問題は非常に大事な問題で、こ のミレニアム・プロジェクトはその中の大きな新しい先端医療の中の一部を扱っている ものであると理解しております。リスク、経済性や倫理などの研究も、ほかの省庁も含 めましていろいろな面でやられておりますが、ぜひそれは強化していかなくてはいけな い分野であろうと考えております。 ○豊島会長  ほかに御意見ございますでしょうか。 ○大石委員  今、三上委員がおっしゃったことで、アメリカで人体に害があるという報告があった ということですけれども、少なくとも私はそういう例は聞いておりませんので、どうい う事情でしょうか。どういう事実でございましょうか。 ○三上委員  私は医学の専門ではありませんので、ただ情報として得たものですけれども、私、人 体にとは申しませんで、何か動物実験だと思います。 ○大石委員  BTコーンの話ですか。 ○三上委員  例えばで申し上げました遺伝子組換え食品、イネか何かだったと思います。8ページ に、イネゲノム解析のところで「農薬使用量の大幅削減が可能な稲作等を実現する」と 書かれておりますけれども、アメリカの科学者が実験を行って、その可能性があると。 実験では人体ではなくて、たしかマウスか何か使っていらしたと思いますけれども、し かし、そういう可能性がゼロではない。もちろん、それはまだ始まったばかりですから データが蓄積されて完全な証明にはなっていないけれども、その可能性はあると。です から、私が申し上げたいのは、そのことだけではなくて、これから遺伝子のいろいろな 分析、先端医学を特にミレニアム・プロジェクトで進めていくので、ここの印象として 何か安全性について理解、理解という形がちょっと感じられたものですから、私は、リ スクがあるかもしれないという研究が一方で同時にあってもいいのではないでしょうか ということを申し上げたかったんです。 ○大石委員  少なくとも私の聞いている範囲では、遺伝子組換え作物が人体あるいは動物に影響が あったということは全然ございませんし、アメリカでは、FDAが恐らく三千数百人の スタッフで今度の遺伝子組換えについてアレルギー源からすべてチェックしまして、そ れが安全だということがきちんと報告されていて、少なくとも私個人の意見といたしま しては、それだけ厳密に安全性が保証された作物というのはないのであって、それ以外 我々が組換えとか、掛け合わせとか、あるいはいろいろなものを入れてつくったものが 熱にあれしたときはどうなるかとか、そういうことについては全然チェックされない訳 で、それに比べれば、はるかにきちんとした研究がなされているというのが私の理解で すし、少なくとも人とか動物に対して影響があるということは私は聞いておりません。 ○三上委員  私はそういった可能性があるという情報を聞いておりますので、大石委員がおっしゃ ったのは、これまではですけれども、これからまだそういう研究がなされて、かつ、こ れは絶対大丈夫だと出ればもっと確認される訳ですから、それはそれでいい訳です。進 めて無駄だということは私はないと思います。本当にこの一、二年、いろいろな事件、 いろいろな事故が起きていまして、安全だと信じられてきたことが、そうではなかった ということもある訳ですから、私は、別に稲作のことだけではなくて、まだ今、未知の ところを開発していくところですので、いつも最初に安全性は大丈夫だということが先 に出てくるのは研究の道筋としてはちょっと違うのではないかということを申し上げた かったんです。 ○内永委員  今、三上委員や、大石委員がおっしゃったようなことはとても大事だと思うのです。 特に今、アメリカのFDAで非常に徹底的に評価されたことは、一方、新しいことを探 るとともに、安全性というのを、それだけの人数をかけてアメリカでやったのであるな らば、日本も新しいエリアについてそういうことをやる必要があるのではないかという ことではないかと思うんです。ですから、この中で見ると、新しいことを探るというこ とが一方で非常に大きくクローズアップされているけれども、それに対応して、安全だ ということに対してのアクティビティというか、アクションをとる必要があるのではな いかということを三上委員はおっしゃっているのだと思うのですけれども、私は、科学 というのは、いつも新しいことを発見していくのですけれども、しばらくいくと、また もう一回もとに戻って、いや、そうじゃなかったとか、こうだったということがいつも あるので、そういう意味では、おっしゃっていることはとても大事なポイントじゃない かと理解しました。 ○豊島会長  ほかによろしゅうございますでしょうか。 ○事務局  資料(3) の31ページをご覧いただきたいのですけれども、食品分野の柱というのは、 委員の皆様方から御指摘いただいております安全性をどうやって評価できるのか、もっ といろいろなことが考えられるのではないかということで、2つの柱からなっておる訳 でございますが、大きな柱の1つは、そういった安全性評価についてもっといろいろ研 究してみようと。あるいは、パブリック・アクセプタンスのため、情報提供等について ももっとやっていこうというようなことでございまして、これについては具体的にミレ ニアム・プロジェクトの中で研究を推進していくということになっております。 ○豊島会長  よろしゅうございますでしょうか。31ページから32ページにかけまして、開発その他 でどういうことをやっていくかということを一応書いてございます。食品に関するこう いうことを特に新しいプロジェクトとして取り上げられたのは、厚生省では多分初めて じゃないかと思っております。今、三上委員のおっしゃったことは、皆様もご存じのよ うに、非常に重要なことであることは間違いなくて、いろいろな場で開発をやっている 方々のところにも、安全性の確保については十分な研究を並行して行ってほしいという ことは今でも申し入れしております。それ以外に、先ほど三上委員のおっしゃった、も う少し文系も含めた意味での社会的合意に関する研究組織というのが必要だろうという もう1つの面があるのではないかと思いますが、その点に関しても、これからぜひよろ しくお願いしたいと思います。  それから、資料 (4)で垣添先生がされている分は、多分、1つはそのような方向を目 指しておられて、文系の方もかなり入っておられるのですが、また、直接以外にも、世 の中で全体としてそういうことに対する研究の進行が盛んになってくることが望まれる のではないかと思いますが、今のところ、募集しても、なかなか適切なものが出てこな いというところもあるのではないかと思います。それでは、よろしゅうございますでし ょうか。 ○内永委員 評価の問題ですけれども、評価の仕組みの中で、一番最後に評価結果の取り扱いとい うことで、報告書を作成し、公表し、当面性ということが書いてあります。これは大変 大事なことだと思うのです。加えて、いろいろな遺伝子、そういったものに関して、こ れだけの費用を投下して研究をする訳ですけれども、その結果として、例えば特許を取 るとか、そういったような方向性というのはどこかに示されているのでしょうか。ただ 情報を公開して透明にということだけでなくこういったもののパテントというのがこれ からとても大事になってくると思いますので、その辺が1つ、評価の中の課題として出 てきてもいいのではないかと思ったんです。 ○豊島会長  事務局の方からお願いします。 ○事務局  資料 (3)の15ページ(2)「民間部門の参画方法について」というところでございますが 先ほど簡単に御説明したところでございますけれども、研究段階、実用化段階というと ころで、研究成果をどうするのかというのがございますし、16ページの最初の方には特 許権等の取り扱いについて述べられておる訳でございまして、基本的な柱といたしまし ては、実用化を目指すということで、特許権、あるいはそういった知的所有権を確保し ていくというのが大きな考え方の中にはあるという説明を聞いております。 ○内永委員 そういう方向性で考えますということですね。 ○豊島会長 そういうことがありますし、現に評価委員会でも、現在は特許をどれぐらい出してい て、どうなっているかというのが評価の対象になっております。 ○内永委員 例えば評価の中にそういうことが言葉として出てきてもいいのかなと思ったのですけ れども。 ○豊島会長 評価委員会の評価基準の中に言葉として入っております。 ○内永委員 ありがとうございました。 ○豊島会長 ほかにいかがでございましょうか。よろしゅうございますでしょうか。 それでは、次へ進めてまいりたいと思います。次に、「母体血清マーカー検査に関す る見解」が、先端医療技術評価部会において出生前診断に関する専門委員会から6月に 報告されておりますので、この件に関しまして事務局から御報告をお願いいたします。 ○事務局  それでは、資料 (5)に基づきまして、本年の6月23日付をもって、先端医療技術評価 部会出生前診断に関する専門委員会から出されました見解(報告)について御説明を申 し上げます。  「はじめに」ということで書かれておりますけれども、技術の進歩によって出生前、 子どもが生まれる前に診断をする技術が非常に発達をしてき、一部の疾患については生 まれる前に診断ができるというような状況が出てきた訳でございます。ただ、その際に 治療が可能な場合が限られている、あるいは障害のある胎児の出生を排除し、あるいは 障害のある方の生きる権利、命の尊重を否定することにつながるのではないかというよ うな懸念も一方ではある訳でございます。このようなことから、当該専門委員会で、約 1年にわたって、医療の団体、あるいは法曹関係団体、あるいは障害者の団体、あるい は女性を中心とした団体などから意見を聴取し、論議をしていただいたところでござい まして、その見解を本年の6月末にまとめていただいた訳でございます。  まず検討の趣旨でございますが、具体的には、II「検討の趣旨」の第2パラグラフに あるように、現在ある技術から申し上げますと、α−フェトプロテイン、あるいはhC G、エストリオール、こういった物質について、例えばダウン症候群等の場合に増減を するというような形でございまして、それによって疾患のある確率を算出をするという ような方式がある訳でございます。  問題として挙げられておりますのは、1「問題点」 (1)にございます、妊婦がいろい ろな認識を十分知らないで検査をしてしまうのではないか。 (2)は、確率で示された疾 患について誤解を与える、あるいは不安を感じるのではないか。3ページにございます のは、マススクリーニング、すなわち、いろいろな疾患を調べるという意味で、不特定 多数の妊婦を対象にしたふるい分けの検査(スクリーニング)として行われるのではな いかというようなことでございます。  専門委員会の見解は、3ページの2「対応の基本的考え方」というところにまとめら れてございますが、本来、医療というのは受診者が適切な情報を持って、更に十分な説 明を受けて、受診者自身が選択をするというのが原則である。しかしながら、先ほど申 し上げましたようなことをいろいろ考えてみますと、まず、医師が妊婦に対して、本検 査の情報を積極的に知らせる必要はないのではないか。また、医師はこのような検査を 勧めるべきではないのではないか。更に、企業等がこのような検査を勧める文書などを 作成することは望ましくない。しかしながら、妊婦が本検査を教えてくれと、すなわち 受診者が決定をするという原則から考えますと、妊婦から説明の要請があった場合、検 査前に医師が説明をする事項がわかりやすい言葉で書かれておる(別紙)の「母体血清 マーカー検査の説明と実施に当たり配慮すべきこと」を用いていただきたいということ でございます。  以上、先端医療技術評価部会出生前診断に関する専門委員会の経過について御報告申 し上げます。 ○豊島会長  ありがとうございました。それでは、ただいまの説明につきまして、御質問、あるい は御議論ございますでしょうか。  これは、先ほどの垣添班(遺伝子解析による疾病対策・創薬等に関する研究における 生命倫理問題に関する調査研究検討委員会)での検討事項の1つ手前のような、もう既 にあるものに関してこれぐらい研究してきたということですね。ですから、恐らく垣添 班もこれから先のことについてこのような検討をされなければいけないということだろ うと思いますが、何か御質疑ございますでしょうか。  基本的な情報提供のためには、どうしてもその前に患者の個人情報を得ないと情報提 供ができない訳ですから、その手前の情報提供をするときに、その患者さんのプライバ シーの守秘に対する問題を十分検討していただくということと、それをどのように患者 さんの直接のことを抜いた形で提供できるかということに関する検討というのが、多分 今の課題として行われていると私は理解しております。  それでは、最後に厚生科学審議会各部会の審議状況につきまして、事務局より御報告 をお願いいたします。 ○事務局  厚生科学審議会の中には研究企画部会と先端医療技術評価部会の2つがございますが まず研究企画部会でございますが、第16回を本年の10月25日に、ここに書いております ような議題でやっていただいております。更に、その次の部会(12月24日開催)を、こ こには書いておりませんが、先ほど議題の1番で御議論いただきました来年度の公募課 題の検討を行ったところでございます。  次に、先端医療技術評価部会におきましては、6月以降、4回の部会を開催していた だいております。まず、第18回、6月の部会が、千葉大学におきます食道がんの遺伝子 治療臨床研究計画について審議していただいております。更に、7月19日の第19回にお きましては、ES細胞を利用した研究の現状と将来について議論をしていただいており ます。9月に開催されました第20回につきましては、岡山大学におきます前立腺がんの 遺伝子治療臨床研究計画、東京医科大学におきます肺がんの遺伝子治療臨床研究計画、 更には、財団法人癌研究会におきます乳がん、名古屋大学におきます悪性グリオーマ、 これらの遺伝子治療臨床研究計画について御議論をいただいております。 12月に開催されました第21回におきましては、東北大学、東京慈恵会医科大学、東京 医科大学におきます共同で行われます肺がんの遺伝子治療臨床研究計画、更に、その前 の回に御報告いたしました、財団法人癌研究会におきます乳がん、名古屋大学におきま す悪性グリオーマ、これらに関する臨床研究計画について御議論いただくとともに、 「遺伝子治療臨床研究に関する指針」の改正について御議論願ったところでございま す。 以上でございます。 ○豊島会長 どうもありがとうございました。それでは、今の御説明に関する質疑がございますで しょうか。 ○柴田委員 科学技術審議会全体に関してですけれども、先ほどの説明の中に、例えばクローン人 間の研究についての法律をつくろうというのが、今、科学技術会議でなされていると思 います。大変結構だと思いますし、私は、どこの省庁でやっても、そんなことは一向に 構わないと思うんですけれども、例えばクローン人間の研究について、個体作成の一歩 手前までいったと言われる韓国からのニュースが伝わってきたのが去年の暮れでしたけ れども、この研究者は不妊治療の専門家な訳です。それから、アメリカから伝わってく るニュースでは、クローン研究は将来の臓器移植のためのスペア臓器をつくるための技 術開発といいますか、そういうようなニュースが次々と伝わってくる訳です。そんなニ ュースを見てもわかるとおり、一連の先端生命科学というのは全部つながっていると思 うんです。同時に、生命倫理という問題は、すべて人間の生命に関わるところで発生す る問題だと思うんです。 もっと極限すれば、人間への臨床応用といいましょうか、臨床研究のところで生命倫 理という問題が全部に関わってくると思うんです。しかも、それが相互に連関している という観点に立って、厚生科学審議会に与えられているテーマを考えてみますと、既に 生殖医療技術という問題と、先ほど出生前診断の問題が大きなテーマとして与えられて それぞれ専門委員会がつくられて論議されている訳ですけれども、出生前診断について は、母体血清マーカーテストについてのみ見解が出ただけで、まだその他たくさんある 訳ですね。そういうものの見解はもちろんまだ出ていませんし、生殖補助医療技術の方 については、去年、日本産科婦人科学会の会則ではこの問題が機能していなかったとい うことがはっきりしたニュースが流れた中で、非常に対応が急がれている状況だと思う んです。つまり、会則を堂々と破って、今後もこの臨床応用を続けると言っている産婦 人科医がいるというような現状に対して、まだガイドライン1つできていないという状 況があると思うんです。  そういう意味では、今、厚生科学審議会に与えられているテーマは大変重いだけじゃ なくて、同時に、急がなくてはいけないテーマではないかと思うんです。その点で、別 に省庁がどこということは問いません。それから、私は、多分、生命倫理の問題という のは、そういう意味では、すべて先端医療と生命倫理と括られるものではないかと考え ているのですけれども、この問題はやがては国際条約とか、そういう問題に発展する テーマだと思っているんです。もう既にヨーロッパでは始まっていますけれども、そう いうことから考えても、日本の国としてどうするのかということを比較的早く答えを出 していかなくてはいけないんじゃないかと思うんです。ですから、先端医療技術評価部 会の更に専門委員会が今議論している段階ですけれども、その結論をもっと急いでいく ということと同時に、一応の結論を出して国民の意見を聞くという形に進めていかなく てはいけないんじゃないか。だから、クローンの禁止だけの法律でいいのかというのが むしろ不思議で、先端医療と生命倫理に関する基本法までいくか、あるいは私はガイド ラインでもいいと思いますけれども、そういうものを早く確立するのが、今、日本にと ってものすごく重要な時期にあると思いますし、厚生科学審議会の責任が非常に重いの ではないかと思うんです。多分、厚生省の分野が一番中心になるのではないかとさえ私 は思っています。  結局、遺伝子治療の審議がずっと進んでいますけれども、多分、最終的には遺伝子治 療と人間改造との境目をどこに引くのかというようなテーマに発展していくのかなとい うことまで考えて、別に私に名案がある訳ではないですけれども、とにかく早く国民的 な論議を起こしていった方がいいということを私の意見として申し上げて、それぞれの 審議を急ぐべきだということを提言させていただきたいと思います。 ○豊島会長  今の御提言につきまして、何か御意見、その他ございますでしょうか。 ○三上委員  柴田委員の御意見を伺って、私も全く賛成でありまして、先ほどちょっと付け加えた かったことは、国民みんながこれからのこういった先端医療技術の方向、生命倫理をど ういうふうに考えていくのかということを広く意見を聞いた方がいいと思うんです。つ まり、今の状況を見渡してみますと、非常に猛スピードでずっと突っ走ってといいます か、言葉は語弊があるかもしれませんけれども、いこうとしている。私たちは、情報も 限られていますし、専門家でないとわからないということでついていけない。その間に どんどん技術だけが走っていってしまう。ですから、最も根本的な、つまり医療・医学 以前の生命倫理のことについてもっと議論する必要があると思います。私は個人的には 現在の先端医療・医学研究はできればもっとスピードダウンしていただきたい。一般の 人々が納得してついていけるような形でいってほしいという感じがいたします。そして 情報が偏らないようにといいますか、伝え方も重要だと思います。私の経験で、これは 全く小さな例ですけれども、臓器移植が非常に議論になって、移植法ができたとき、私 大学のゼミナールで賛成・反対という二手にグループを分けまして議論させたことがあ るんです。最初は、臓器移植、いいじゃない、積極的にという学生たちも、知識をそれ ほど多く持っていなくて、お互いに議論していく中で、最終的には、どんどんいいよと いう学生たちも、もっと慎重にすべきだというふうに変わってきたということがありま す。だから、情報、そして議論というのは非常に重要ではないか。知らないで、いい面 だけ聞いて、貢献できるのだからいいとストレートにいってしまうのはやはりちょっと 危険ですし、先ほど柴田委員がおっしゃったようなことは重要だと思います。 ○豊島会長  ほかに御意見ございますか。 ○柴田委員  今の御意見に補足して。今の研究がもっとスピードをダウンしてくれればとおっしゃ って、それは願わないではないんですけど、それは絶対無理だと思うんです。しかも、 日本だけじゃなくて、世界中で研究しているので、むしろ日本は遅れていると思います し、もっと研究のスピードを上げてもいいぐらいだと思うのですけれども、ただ、人間 に関わる研究でも何でも後戻りはできないんですよね。例えば生殖医療などはその典型 ですけれども、AIDというのは、日本で言えば、1949年から始めて、そういう人がも う既に1万人という状態があってからそのことを議論しても、なかなか難しい訳です ね。人間に関しては後戻りはできないと私は思うんです。ですから、生殖医療の問題な どもやはり基準なりガイドラインを急がなければいけないというもう1つの側面がある と思っているんです。これは、クローンについても同じだと思います。難しいことで、 なかなか答えが出ないテーマであることはわかるんですけれども、やはり急がなければ いけないということ。つまり、いわゆる科学は生命操作にどこまで関わっていいのかと いうそういう大テーマだと思っております。 ○豊島会長  座長として余りしゃべるのはよくないのかもしれませんけれども、私の存じ上げてい ます範囲では、今、柴田委員がおっしゃった問題に関してもかなり活発な議論がされて おりまして、それに対しては、厚生省関係でやっておられたのは全部ホームページで開 示されておりますね。それで、それに対する意見もかなりたくさんきておりまして、意 見を集約すれば集約するほど、その落としどころが難しい。簡単には落とせないという ことになっていると私は思っております。  それで、国全体として、ばらばらな方針決定が行われるということは非常によくない ので、厚生省関係の人も、文部省関係の人も一緒になったところで、今、科学技術会議 がイニシアチブをとった形で議論の調整をやっているというのが現状だろうと思いま す。その中で出てきたのが、今日、事務局から御説明いただきましたような人個体の禁 止条項、それからキメラの禁止ということでございます。そこのところは最も早くここ だけは押さえておかないと、そこの抜け駆けをされたときにはどうしようもないという ことで、生まれてしまえば人間でございますから変わりはない訳で、だから、手前で禁 止する以外にはないだろうということで、そのあたりが独立して進んだということでご ざいます。後の方が議論されていない訳ではなくて、同じように議論されていますけれ どもこれは非常に簡単に法律で決めてしまって改正できないというのでは、社会情勢が いろいろな変わり方をいたします。先ほどおっしゃったように、生殖医療の問題もござ いますし、そういうことがあれば生殖医療はそれでいいのかということも全部含めまし て、これは議論の対象として捉えざるを得ないということから、慎重に議論が進められ ている。  早くしなければいけないということは皆さん思っておられて、その委員をやっておら れる方にはかなり重荷になるぐらいの頻度で会議が行われてはおりますが、それでも、 そんなに簡単にはこういう方向でという答えは出てこないというのが現状なのではない かと思っております。 ○堺審議官  今、会長がおまとめていただいたので、私の方からあえて言う話でもございませんが 現在の状況といたしましては、先端技術といいますか、技術全般については、科学技術 会議というところでやっております。それと、今回、ミレニアム・プロジェクトという ものが来年度から研究がスタートするということもございまして、遺伝子の研究をす る。今までもやってきた訳ですが、それを重点的にやっていくということで、こういう 言い方は語弊があるかもしれませんが、そういう研究の試料を体からいただく。主に血 液かと思いますが、そういう作業。それから、いただいた結果を分析して、研究して、 その結果をどういう格好にしてもお返ししていくという手続きが要る訳でありまして、 それについて、まず一定の基準といいますか、手続の基準というものを早急に詰めてい ただこうというのが、垣添班であり、それから再生医療のところでやっていただいてい るところでございます。これは、また厚生科学審議会で御審議いただきながら、パブ リック・コメントをいただきながらということでおまとめいただきたいと思っておりま す。  また、先端医療技術評価部会でございますけれども、まず、今日、御報告したのです べて終わりではございません。その他の部分も現在、精力的に御議論いただき、各方面 からの意見もいただきながら御議論いただいているという状況でございます。そういう ようなことで、どんなことをやっているんだということができるだけわかりやすく皆さ んに伝えられるようにと言うと、そんな上意下達ではいけないという話にもなってくる 訳でございますが、わかっていただくように努力するということと、皆さんにわかるよ うな手続にするというようなことだと思います。  それから、もう少し前の御議論で、三上委員から御提言のあったことから多少ディス カッションがございましたけれども、たしか三上委員が最初におっしゃったお話という のは、いわゆる組換え作物の花粉や何かで、いわゆる生態系といいますか、環境に影響 があったということで、「生態」という言葉ですと、生きている体も生態ですし、エコ ロジーという意味の生態も生態でございます。恐らくエコロジカルな意味かと思うので すが、そちらの方に影響があった。特に、大石委員がおっしゃった蛾の幼虫や何かとい うことの方で出ているのではないかと私は承知しております。  いずれにいたしましても、安全性というのは、体の中にどういう変化が起きるか。そ の変化はどういう変化なのか、中身はどういうものかということで、安全性というのは ちゃんとあるのかどうかというのを確認していくということをずっとやっていく訳であ ります。ただ、こういう作業というのは、すべて現在の科学でわかる範囲ではこうです というのでしかない訳で、それが、いつの時点になっても、5年前にやった評価でずっ とやっていく訳ではなくて、科学の進歩に伴って、その科学のわかる範囲というのが広 がったりしてくる訳ですから、常にその評価基準というのは変わってくるものだと思っ ておりますし、それを忘れないようにというような貴重な御示唆だと思っております。  また、ダイオキシンで、特に母乳のことを測定いたしましたときに、たまたま先人た ちが残してくれた母乳の資料が大阪の方にあったりということがあったものですから、 さて、今の母乳のダイオキシンの含有量はどれぐらいだろうと。ただ、それは経年的に どういう変化をしてきたのかということがわかった訳でありまして、いわゆるバンク事 業といいますか、それがどうも日本では弱い。これは、この審議会でもいろいろ御提言 いただいておりますけれども、そういう方にもこれからも留意していかないと、安全性 がどうかというときに振り返ってみるということも大切なことでございますので、そう いうことも気をつけながらやっていきたいと思っております。  ただ、私の能力の点もございますけれども、生命倫理の研究をやれといいますと、な かなか大上段に振りかぶって漠として難しいものですから、できるだけ具体的な切り口 なり、手続なりということから生命倫理というものを考えていきたいというのが現在の 私の状況でございます。もしいろいろな御提言がございましたらいただきたいと思いま す。ありがとうございました。 ○豊島会長  よろしゅうございますでしょうか。まだ少し時間がございますから、もし御意見がご ざいましたらどうぞ。 ○石井委員  個別的なことではないんですけど、先ほどからのいろいろなお話の背景になろうかと 思いますので一言申し上げたいと思います。  例えばガイドラインをつくって、そのとおりやる、だからいいでしょうというのが今 問われているんじゃないかと思うんです。ガイドラインはあくまで1つの目安であって ほかの技術関係でも、私もいろいろ尻拭いみたいなことをずいぶんやっているんですけ れども、要するに、今、テクノロジーとか、医学の方もそうかもしれませんけれども、 外から見ても、急速に前よりも信頼性が低下していると思います。だから、信頼性の回 復がない限り、こういう書き物をつくりましたとか、こういう申し合わせをしましたと いうことだけではなかなか納得されない。では、どうすれば信頼性が回復できるのか。 これは大変難しい問題ですね。これは九仭の功を一簣にかくことがありまして、バケツ 一杯で原子力発電所がつくれなくなってしまうというようなことが起こる訳ですね。で すから、これをやっている職業倫理というか、社会のいろいろなルールの成文法的なも のじゃない、一般的な信頼を営々として築き上げる努力も、こういう会議とはなじまな いかもしれませんけれども、一方にあった上で、こういうきちんとした体系化をしてい ただきたいということを一言申し上げておきます。 ○大石委員  今、石井委員が問題提起されたのは、私が日頃思っていることと全く同感でございま す。といいますのは、例えばさっきの遺伝子の組換え食物の問題でも、実際、アメリカ でFDAというのは非常に権威があって、そこの言ったことに対して国民のほとんどが 信頼する。あるいは、CDCというのもはっきりございまして、きちんとしたそういう 信頼に足る組織があって、そこにおいてはトップレベルの研究者が非常に洗練している というのがあるから、はっきり言いまして、国民がそういうことに対してのクレディビ リティ・ギャップが日本ほどない訳です。だから、私は、今、石井委員のおっしゃった ことをもう少し考えますと、やはりそういうものを日本できちんとつくっていくという 努力が一番問われている問題じゃないかと思うんです。  そうしませんと、今、石井委員がおっしゃったように、結局、これはいつまでたって も本当のサイエンスか、そうじゃないかということが、今、新聞の報道というのは錯綜 してしまっている訳ですね。さっき三上委員がおっしゃったような生態によくないとい うことは、少なくとも私の持っている情報には全くない訳です。それは、蛾とか何とか に影響が及んだということは知っていますけれども、食べて悪いということは一切なく て、むしろそういうことがきちんと報告されているけれども、それが世の中の皆さんに はわかっていない。少なくとも、私は専門柄、そういう情報が必ず入ってきますからわ かるだけの話ですが、それ1つとっても、やはり本当の意味での客観的な、みんなの批 判に耐え得る、クレディビリティのある機関なり、あるいは情報の提供というものが日 本には一番必要である。非常に難しい問題かもしれませんけれども、やはり長い目で見 て、日本の本当の意味のサイエンスをきちんとした形で進めていくということが必要だ と私は思います。 ○石井委員  ちょっと追加で申し上げたいのですが、これは科学でも技術でも経済でもそうだと思 うのですが、人材の育成というのが非常に重要ですが、私は今でも非常に若い者に接し ていますけれども、今、大石委員がおっしゃったように、そういうことに対して極めて 鋭敏であります。純粋であります。だから、ある意味では、その人たちが寄ってこなく なったらもうおしまいだと思うんです。幾らお金を付けても何をしてもうまくいかな い。そういう産業もたくさんあります。政治力でうんとお金を付けても、結局、お嫁 さんの来手もなかったり、とにかく質の悪い若者しか行かないということになると、こ れは全体として、例えば生命が守れるかどうかということもあると思います。  さっき審議官もおっしゃいましたけれども、今こうだということの有効期限といいま すか、それが非常に短くなっているんですね。ですから、前は10年ぐらいもったのが、 今はそう言っていられない。ですから、どんどん変えていくことも必要ですし、あるい は、そういう実態の変化について、そこにギャップができてしまいますと、後継者はも ちろんのこと、予算とか何とかよりも、先に世の中の方が早く動いてしまうようなこと を最近感じておりまして、この分野は重要でございますので、ミレニアムもたくさん予 算が付いて政府もやるというときに、今、大石委員がおっしゃったような、本当に若者 から見て「いいな」というところは、極端に言うと、逆にお金がなくても一生懸命やる んですね。そういう時代だと思います。ですから、ぜひそういうふうにひとつこちらの 方でもやっていただければと思います。 ○柴田委員 私ばかりおしゃべりして申し訳ないんですけれども、石井委員の話の前半に大賛成で 今、信頼感を回復するのが先だと言われたのはそのとおりだと思います。バケツ一杯で 原子力が崩れたのと同じように、日本で脳死移植ができなくなったのは、やはり31年前 のたった1回の札幌医大の和田教授の暴走だったと思うんです。その31年間の空白をも たらしたのは、もっと早くできたと思うのは、厚生省を含めてですけれども、日本の医 学界が、あの移植についてきちんとした総括をしなかった訳ですね。そのために31年間 しかも、法律まで用意したのだと、私はそう見ているんです。ですから、1回の暴走が 人間に関わることは原子力どころではないと私は思っているんです。ですから、和田教 授の場合は、ああいうことは密室でやってはいけない、しかも当事者だけでやってはい けないということを非常にはっきり示したケースだと思うんです。そういうことから言 っても、生命倫理の問題はやはり手続論というのがものすごく大事ですし、同時に、社 会的コンセンサスをつくるための努力というのは、早くから、しかも前に議論をしてい かなければいけない。これは繰り返しになりますからやめますけれども、そういうこと で、信頼性の回復と、石井委員が後半におっしゃった、今、ガイドラインをつくるとき ではないというところだけは私はちょっと賛成できないんです。  信頼性回復が先だということで先へ延ばしていても、事態はどんどん進んでいく訳で 既成事実ばかり増えていく訳です。ある産婦人科の医師が日本産科婦人科学会の会則を 破って新しい人間が生まれた。生まれた以上、先ほど会長が言われたように、もう後戻 りはできない訳ですよね。その人間を否定することはできない訳でして、それだけに生 命に関する問題は早く論議していくこと、しかも、密室はいけない。ただ、同時に、ヒ トゲノムでも明らかなように、明らかになってくる事実に対するプライバシーの守り方 というのがものすごく難問だと思うんです。だから、公開性とプライバシーというのは 私もこの会議では何度も意見を述べてきたのですけれども、ものすごく難しい問題をも ともと抱えていると思うんです。それだけに、急ぐと同時に、大いに議論を高めていか ないと、信頼性の回復はできないというふうに、臓器移植の問題でもそういうふうに私 は考えています。 ○石井委員  少々言い間違ったかもしれませんけれども、当面の措置と、今申し上げたのを並行し て両方やるべきだと申し上げたつもりです。信頼性の回復ができる前は何をやっても無 効だと、そういうことは申し上げていない訳で、今やっている、あるいは当面やらない と、柴田委員がおっしゃるように、不幸なことが起こってしまう場合の緊急的なことは どんどんやるべきだと思います。しかし、それとパラレルにと申し上げた訳です。つま り、長期的にそういう人材育成なり、モラルのあるプロフェッショナルな、信頼される 集団をつくっていくということを申し上げた訳です。 ○豊島会長  どうもありがとうございました。そろそろ時間が近づいてまいりましたのでこれで終 了させていただきます。それでは、年末のお忙しいところ、どうもありがとうございま した。 (了) 問い合わせ先 厚生省大臣官房厚生科学課 担 当 宮本(内線3804)・新木(3806) 電 話 (代表)03-3503-1711 (直通)03-3595-2171