99/12/13 第21回厚生科学審議会先端医療技術評価部会議事録 第21回厚生科学審議会先端医療技術評価部会議事次第 1.日  時:平成11年12月13日 (月) 14:00〜16:00 2.場 所:中央合同庁舎第5号館  共用第9会議室 3.出席委員:高久部会長 (委員:五十音順:敬称略) 柴田鐵治 曽野綾子 竹田美文 寺田雅昭 (専門委員:五十音順:敬称略)           雨宮 浩 入村達郎 小澤えい二郎 加藤尚武 金城清子           廣井正彦 松田一郎  4.研究計画説明者:東北大学加齢医学研究所呼吸器腫瘍研究分野教授 貫和敏博 東京慈恵会医科大学呼吸器・内分泌外科診療医長 吉田和彦 東京医科大学外科学第一講座教授 加藤治文           財団法人癌研究会附属病院化学療法科副部長 相羽恵介 名古屋大学医学部脳神経外科学講座教授 吉田純 5.議  事:(1) 審議事項        (1)東北大学加齢医学研究所附属病院、東京慈恵会医科大学附属病院、         東京医科大学の遺伝子治療臨床研究実施計画(肺がん)について        (2)財団法人癌研究会附属病院の遺伝子治療臨床研究実施計画(乳がん)         について        (3)名古屋大学医学部附属病院の遺伝子治療臨床研究実施計画(悪性グリ         オーマ)について        (4)「遺伝子治療臨床研究に関する指針」(平成6年2月8日厚生省告示         第23号) の改正について       (2) 報告事項        (1)大阪大学医学部附属病院の遺伝子治療臨床研究実施計画(慢性閉塞性         動脈硬化症) について        (2)東京大学医科学研究所附属病院の遺伝子治療臨床研究実施計画(腎が         ん)及び岡山大学医学部附属病院の遺伝子治療臨床研究実施計画(肺         がん)の経過報告について        (3)がん遺伝子治療臨床研究作業委員会(第9回)・遺伝子治療臨床研究         審査ワーキンググループ(第11回) の概要について        (4)バイオテクノロジーを活用した研究開発における生命倫理、プライ バシー保護等について        (5)その他 6.資  料:(1)-1東北大学加齢医学研究所附属病院の遺伝子治療臨床研究実施計画 について        (2)-2東北大学加齢医学研究所附属病院の遺伝子治療臨床研究実施計画 の審議経過について        (3)-1東京慈恵会医科大学附属病院の遺伝子治療臨床研究実施計画につ いて  (3)-2東京慈恵会医科大学附属病院の遺伝子治療臨床研究実施計画の審 議経過について  (4)-1東京医科大学病院の遺伝子治療臨床研究実施計画について        (4)-2東京医科大学病院の遺伝子治療臨床研究実施計画の審議経過につ いて        (5)-1財団法人癌研究会附属病院の遺伝子治療臨床研究実施計画につい て        (5)-2財団法人癌研究会附属病院の遺伝子治療臨床研究実施計画の審議 経過について        (6)-1名古屋大学医学部附属病院の遺伝子治療臨床研究実施計画につい て        (6)-2名古屋大学医学部附属病院の遺伝子治療臨床研究実施計画の審議 経過について        (7)「遺伝子治療臨床研究に関する指針(抄)」及び大学等における遺伝 子治療臨床研究に関するガイドラインの一部改正        (8)大阪大学医学部附属病院の遺伝子治療臨床研究実施計画(慢性閉塞性 動脈硬化症・ビュルガー病)について        (9)東京大学医科学研究所附属病院の遺伝子治療臨床研究(腎がん)及び 岡山大学医学部附属病院の遺伝子治療臨床研究(肺がん)の経過報告 について        (10)がん遺伝子治療臨床研究作業委員会(第9回)・遺伝子治療臨床研 究審査ワーキンググループ(第11回) の概要について        (11)「遺伝子解析による疾病対策・創薬等に関する研究における生命倫 理問題に関する調査研究」の実施及び「ヒト組織の移植等への利用の 在り方に関する専門委員会」の設置について        (12)高度情報通信社会推進本部「個人情報の保護について」 (中間報告 案)        (13)東京農大におけるヒトの体細胞と動物の卵子融合研究について        (14)ヒトの細胞を用いたキメラに関する研究等について 6.参考資料:(1)遺伝子治療臨床研究の厚生科学審議会先端医療技術評価部会等での検 討状況        (2)名古屋大学医学部附属病院の遺伝子治療臨床研究実施計画(悪性グリ オーマ) について        (3)財団法人癌研究所附属病院の遺伝子治療臨床研究実施計画 (乳がん) について ○事務局  それでは、定刻になりましたので、ただいまから第21回厚生科学審議会先端医療技術 評価部会を開催させていただきます。  本日は、軽部委員、木村委員が御欠席でございます。また、部会長の高久委員及び曽 野委員が遅れて来られるというふうに御報告を承っております。 本日の議題は、議事一覧の中にございますけれども、議題(1)(2)(3)の関係で、東北大 学加齢医学研究所附属病院より貫和敏博先生、東京慈恵会医科大学附属病院より吉田和 彦先生、東京医科大学病院より加藤治文先生、財団法人癌研究会附属病院より相羽恵介 先生、名古屋大学医学部附属病院より吉田純先生にお越しいただいております。 では、最初に、本日の配付資料について事務局から御説明申し上げます。 (以下、資料の説明と確認)  よろしければ御審議に入っていただく訳でございますが、先ほど御報告申し上げまし たとおり、本日、部会長の高久先生が遅れて来られるという御連絡でございますので、 審議会令第5条により、部会長の指名ということで、寺田委員に部会長代理としての審 議を始めていただきたいというふうに考えております。よろしくお願い申し上げます。 ○寺田部会長代理  高久先生が遅れて来られますので、部会長代理として会をはじめさせていただきま す。  それでは、本日の議題に入りたいと思います。まず最初に書いてあります「非小細胞 肺癌に対する正常型p53遺伝子発現アデノウイルスベクター及びシスプラチン(CDD P)を用いた遺伝子治療臨床研究」という、東北大学加齢医学研究所から出ておりまし た実施計画につきまして諮問を付議されておりますので、この件について審議をいたし ます。 これは東北大学加齢医学研究所だけではございませんで、東京慈恵会医科大学附属病 院、東京医科大学からも出ておりまして、これらの施設におきまして臨床研究を行い、 がん遺伝子治療臨床研究作業委員会において、主として科学的事項についての論点整理 が終了したということでございます。このことにつきまして、作業委員会より報告をし ていただいた上で、部会としての審議をしようということになっております。 まず、事務局より申請の経緯などについて説明をお願いいたします。 ○事務局 それでは、経緯等につきまして御説明申し上げます。 この東北大学加齢医学研究所、東京慈恵会医科大学、東京医科大学、3大学から出て おります肺がんの遺伝子治療の臨床計画につきましては、既に平成10年9月17日にこの 部会で御議論、御承認いただきました岡山大学におきます肺がんを対象とした遺伝子治 療計画と同一内容のものを3大学に拡張しようというものでございます。資料といたし ましては、(1)−1、(1)−2、(2)−1、(2)−2、(3)−1、(3)−2となっております けれども、内容はいずれも同じものでございまして、それが3大学から出てきておりま す。しかも、その内容は、平成10年の9月に御審議いただきました岡山大学のものと同 じであるということを最初にお断り申し上げたいと思います。  中身を簡単に申し上げますと、対象となります患者は、非小細胞肺癌ということでご ざいまして、挿入される遺伝子は正常型のp53遺伝子。ベクターとして、アデノウイル スベクターを用いようとするものでございます。申請されましたのは慈恵会医科大学が 一番早うございまして平成11年の4月、更に東北大学から平成11年の5月、東京医大か ら平成11年の9月に申請があり、それぞれ作業委員会での御議論をしていただいたもの でございます。  以上でございます。 ○寺田部会長代理  どうもありがとうございました。それでは、東北大学加齢医学研究所附属病院の貫和 先生から直接御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○東北大学加齢医学研究所 貫和教授  東北大学の貫和でございます。3大学を代表いたしまして、簡単な御説明を申し上げ ます。  先ほど事務局の方からお話がございましたように、各3大学別々に学内審査を行いま して、平成11年4月、5月及び9月に国に申請しております。7月及び9月のワーキン ググループにおきまして、実施計画書、それから患者さんに対する説明と同意の文書を 4施設共通するプロトコールとして統一するようにというお話がございまして、その点 を訂正いたしまして、今回、再提出しております。また、新GCPに対応します関係上 ベクターの供給でありますRPRジェンセル社が臨床試験の依頼者としての立場を明確 にするようにということで、これは現在準備中でございます。  概要書でございますけれども、4施設が共通であるということは、本日の資料(1)の概 要書中「研究の目的」というところの後半に、4施設が共同で合計24症例に関しての臨 床試験を行うというふうに書いてございます。  この臨床試験は、既に米国におきます臨床試験と同一プロトコールであるということ は岡山大学のときに明らかでございますけれども、米国におきます臨床試験は終了して おりまして、その一部が本年、学術誌にも報告されております。本資料の59ページに、 これは学術誌の情報ではございませんけれども、その前段階の学会におきます発表の本 試験の安全性及び治療の効果というところでの報告を一部引用してございます。学会誌 におきましては、ArmIと書いてございますシスプラチンという化学療法剤を使わずに行 った部分のみが報告されていますけれども、それに関しての治療の成績におきましては 大きな差はございません。現在、岡山大学で5例まで進行しておりまして、それに追加 するような形で3大学が加わっていくことになります。  それから、岡山大学とほぼ同じでございますけれども、もう1点、新しい点といたし ましては、 104ページにございます患者さんへの説明と同意の御説明の文書の中に、104 ページの下の方になりますけれども、今年の秋、9月にペンシルベニア大学で行われて おりましたオルニチントランスカルバミラーゼという肝臓の重要な酵素を欠損する遺伝 子異常に対してのアデノウイルスを使った遺伝子治療で、そこに書いてございますよう に、患者さんの死亡例がございました。これは、そこに示しましたように患者さんへの 説明を新たに追加いたします。しかしながら、本遺伝子治療の臨床試験におきましては アデノウイルスを腫瘍内に直接入れるという方法でございまして、これに関しましては 現在のところ、既に多数例において行われておりまして、大きな副作用はないというこ とになっております。安全性に十分に配慮しながら、慎重に試験を進めていくというこ とでございます。  それから、もう1点新たに加わりましたのは、本年の夏に通達のありました臨床試験 に参加をいただく患者さんへの負担でございます。106ページに14項として、検査及び入 院で病院に来ていただくときには、その費用に対して記載の金額を払う。これは、岡山 大学におきまして、治療にかかる諸経費というところで大枠は既に御説明してございま すけれども、それに新たに加わったところでございます。 大よそ以上でございます。 ○寺田部会長代理 どうもありがとうございました。ただいまの説明に関しまして何か御意見を求めるの ですが、その前に、私、当部会部会長代理であると同時に、がん遺伝子治療臨床研究作 業委員会の座長でもございましたので、ただ今の3つの施設からのp53アデノウイルス シスプラチンの併合療法、肺がんに対する審査状況を簡単に説明いたしますと、先ほど ございましたように、東北大学加齢医学研究所と慈恵会医科大学は2回、東京医科大学 は1回、がん遺伝子治療臨床研究作業委員会で審査をいたしました。これは岡山大学と 同じプロトコールで、3つをやるのに、きちんとした「調整委員会」という名前を付け るのはアプルーブされてから後のことであって、委員会の名前は付いていないけれども こういう申請に当たっては4つの施設が共通のプロトコールにするようにというような そういう手続き論的なお話が多かったと思います。それから、先ほどもちょっと話に出 てきましたが、9月になりまして、OTC(オルニチントランスカルバミラーゼ)という 酵素欠損の、19歳か18歳の男の子だったと思いますけれども、米国でアデノウイルスを 大量に投入し死亡例があったということで、そのことに関しての情報を集めるようにし ました。この死亡例と我国の申請されているアデノウイルスベクターの投与法は違い、 先ほど言いましたように、我々の申請の出ているものは局所に入れOTCの場合は全部 投与するということもございます。それから、そのアデノウイルスを局所に入れるとい うことに関しましては、今までたくさんの例がアメリカを中心にして使われておりま す。一番の問題は、大量というのはどのぐらいが大量なのかということ、これは情報を 至急入れていただくようにはしておりますし、岡山大学を通じましても、あるいは会社 を通じても情報を取ってくれるようにお願いしている次第です。その点が大きな問題に なったところでありまして、そのことに関しましては、投与量、それから、ほかのとこ ろで今までずっと問題がないということから、中止するのではなく注意深くやっていく のがいいだろうということで、作業委員会といたしましては、この部会に上げて御審議 を願うのが適切というふうに考えまして、今日出している次第でございます。何か御質 問がございましたら、どうぞおっしゃってください。 ○小澤委員 私、先端医療技術評価部会には途中から参加いたしましたので、今までの岡山大学の 件を存じておりませんので、同じ質問をくり返すことになるかもしれませんが、お許し ください。この患者さんの対象は、どういうふうなセレクションをなさるのでしょう か。それについては、全体の統一意見もあるのかどうかということです。 ○東北大学加齢医学研究所 貫和教授 もちろん、臨床試験でございますので、この試験に組み込まれます患者さんの条件は かなり厳密に決まっております。この実施計画書の「遺伝子治療臨床試験の実施計画」 というところにかなり厳格な選択基準と除外基準がございます。選択基準としまして、 10-2-1の第1項に、まず年齢が15歳から75歳。2としましては、組織学的に病理の医者 が診断をしました原発性又は再発性の非小細胞肺癌であること。そして、前治療がなさ れておって、それが化学療法あるいは放射線療法が無効であったもの。そういうふうな 条件がございますし、今一つ、これは科学的な面でございますけれども、こうした患者 さんの肺がんの細胞そのものが、今回導入しようとしておりますp53遺伝子が明らかに 異常であるという証明が必要でございます。それから、このアデノウイルスが自分で勝 手に増える可能性を持っておりますことから、E1Aといわれる遺伝子はその細胞にな いということが大きな条件になっております。それから、もちろん、通常の臨床試験と 同じような骨髄機能、あるいは肝臓機能、腎臓機能に関しての条件もございます。  それから、10-2-2としましては除外基準が挙げてございます。そういうところは岡山 大学と全く変わってございません。 ○小澤委員 1つ、これは腫瘍細胞に注入するということですけれども、転移や何かのことに関し てはどのようにお考えでしょうか。 ○東北大学加齢医学研究所 貫和教授 今回は、大きな目的としましては、安全性の検討、それに付随するような形での評価 でございまして、臨床評価が可能な腫瘍、あるいは可能な部位の腫瘍を対象としており まして、転移先に関しましては、今回、この方法では治療は難しいということは患者に 対する説明の中でもしてございます。 ○寺田部会長代理  ほかにございますか。 ○金城委員  素人でよく分からないんですが、もう既にアメリカでは結果が出て学会誌に発表され ているということで、その発表の例がここに出ている訳ですね。これはどういうことを 意味するのでしょうか。具体的に効果があったとか、そういう分かり易い言葉で御説明 いただけたらと思います。 ○東北大学加齢医学研究所 貫和教授  御説明申し上げます。これは途中経過でございますけれども、資料の58ページにDose と書いてあります。これは、腫瘍に注入しますアデノウイルスの力価といいますか、そ のアデノウイルスの粒子数にほぼ比例すると考えてもよろしいんですけれども、そうい うものが書いてございまして、横の欄には、CRというのは完全に腫瘍がなくなった。 PRは腫瘍の体積が5割以下になった。SDと申しますのは腫瘍のサイズがほぼ変わら ない。そして、PDと申しますのは、こういう治療をしたにもかかわらず腫瘍が大きく なったという評価でございます。そして ArmIの方がアデノウイルスのみ、 ArmIIの方は 先にシスプラチンを入れた後、同量のアデノウイルスを入れたということで、試験治療 を受けた結果の効果測定で前述の評価に該当する患者さんの数がその表に記入されてご ざいます。 それをまとめたものが59ページで、今度は縦の方がCR、PR、SD、PDというこ とで一覧表になってございます。これを見ていただきますと、 ArmI、ArmIIを足してい ただければ、ほぼその成績になる訳ですけれども、例えば表2の48例で、PRはArmIが 2、 ArmIIが2ということでございますので、トータル48例中の4例が腫瘍体積が5割 以下になったということでございまして、それが 8.4%ということになります。 このアメリカの成績は、一番最初の研究でございましたので、アデノウイルスの量を 10の6乗という、私どもの計画しております1000分の1の量からスタートしております。 岡山大学は既に10の9乗に関しまして5例の患者さんに施行していまして、その成績は日 本の学会で一部報告されておりますけれども、1例、がんが進行したという症例はござ いましたけれども、残りの4例に関しては継続的な治療がなされておりまして、効果が 出ている例もございます。そう聞いております。 ○金城委員  そうしますと、今まで岡山大学1つだったのに、更に3大学が加わってやる。それは かなり可能性が高いということだと思うのですけれども、アメリカの例から見ると、余 り効果は期待出来ないんじゃないか。それを、あえてまた3大学がお加わりになる何か 積極的な意味づけがあるのでしょうか。 ○東北大学加齢医学研究所 貫和教授  1つには、私共も非常に勇気づけられておりますのは、岡山大学が既に5例施行して おりまして、そのうちPRに近いような症例がかなりの数出ておるということが1つの 大きな理由でございます。ですから、アメリカの成績も、現在、II相に入ってきますと アデノウイルスの量を多くして試験をしようという方向があります。私ども日本でやり ますのが、アデノウイルスの量が多いという点がアメリカと違った点になりますことも 今回の意義でございます。  もう1点は、こうした遺伝子治療をなぜ私ども肺がんの専門医が考えるかというとこ ろでございますけれども、肺がんは高齢者に非常に多いがんでございまして、通常の化 学療法というものに対して副作用など難しい点がございます。そういう点で、遺伝子治 療によりまして、患者さんに余り負担を与えることなく、同等の効果を得ることが出来 るならば、それは望ましいことというふうに考えております。 ○金城委員  では、濃度はどのぐらいになるんですか。そして、そういうふうに濃度を高くすれば アデノウイルスですから今度は危険が出るかもしれない。それについてはどういうふう にお考えでしょうか。 ○東北大学加齢医学研究所 貫和教授  これに関しましても、もう既にアメリカで私どもと同じ10の11乗の濃度までやってお りまして、その副作用に関しましては56ページにまとめてございます。アデノウイルス を使っての主な副作用は、やはりウイルスの感染でございますので、当日、熱が出るこ と、それから悪寒がするというふうなことが頻度の高い副作用でございます。先ほどお 話がございました、アメリカで行われました遺伝子治療の死亡例は、直接血管中にかな り多量なアデノウイルスを入れたことが原因ではないか。これも、先週の末3日間、ア メリカのNIHで議論がなされていますので、その詳細が届きますれば、もう少し正確 なことがお話し出来るのではないかと思います。 ○金城委員  ありがとうございました。 ○東京医科大学 加藤教授 先ほど余りレスポンスがないのにという御意見もございましたけれども、今 私どもが対象として行おうとしている患者さんは、放射線療法、化学療法あるいは、と もに無効であるというような患者さんでございまして、そういう従来の治療法が効かな くても、パーシャルレスポンスが6%から 3.1%、あるいは全く病巣が大きくならない というのがかなりのパーセントあるというのは、私、かなりの意義があるのではないか と存じております。 ○寺田部会長代理 ほかにございますか。 逆に一般の考え方から言いますと、がんで進行したのは情けないぐらい効くものが余 りないということの裏返しになる。ですから、何か取っかかりがつかまりますと、安全 性をきちんと確保して、効果があればドースを上げていく。フェーズIあるいはIIのかか りみたいな、もちろん効果もあれば大変ありがたいということで、そこのところはイン フォームド・コンセントで安全性は必ずチェックして、効果がある見込みがあって、危 険性はこれだけの範囲であるという現在の知識をすべて、専門家からみて違うと思った ものでも、やはりちゃんとインフォームド・コンセントでお知らせするというところが ポイントかと思います。委員におかれましては、その気持ちは私もよく分かります。そ ういうところから入っていくというのがわりあいございます。ほかにどなたか。 ○松田委員  OTC欠損症で急速に肝機能が悪化して亡くなったという18歳の男性の症例の話は、 私たちもかなり問題にしています。というのは、私自身がOTCの遺伝子治療の動物実 験をやっていますので、かなりショッキングな事件だったんですけど、そこで1つお聞 きしたいのは、アデノウイルスに対する抗体のチェックというようなことを患者さんに ついてやる必要はないのかということと、それから、今度の18歳の患者さんについても アデノウイルスに対する抗体というか、免疫の状況がどうだったのかというようなこと がもし分かったら、是非お教えいただきたいんですけれども。 ○東北大学加齢医学研究所 貫和教授 この遺伝子試験の実施計画の中には、アデノウイルスの力価を投与前、投与後の経過 を追いまして測定することが決められておりますので、それは実施いたします。アメリ カの成績は既に出ておりまして、確かに投与後にかなり力価が上がってまいります。ま た、アメリカの方から9月の事故の詳細な報告がくれば、おいおいまた必要な検査が出 てくる可能性もございますけれども、1つには、非常に大量のアデノウイルスを用いた ということで、投与後の血中IL6の高値な状況が続いたという報告があるようでござ います。そういうことも、必要ならば術前及び投与直後に測定、あるいは、既にこの試 験は多数例で試行されておりますので、保存の血液を使って測定が可能ならば、そうい うことも追って測定していく必要があると考えております。 ○松田委員  一番大きな問題になってくるのは、抗体価よりも、むしろ細胞性免疫だと思うんで す。だから、それをどのようにチェックしていくのかという問題と、それから、PFU が10の11乗とおっしゃいましたね。かなり大量だと思うんです。だから、今、岡山大学 でやっていらっしゃる例がまだ5例で、1011にいきなり上げることに対するディスカッ ションはどうだったんでしょうか。 ○東北大学加齢医学研究所 貫和教授  これは、現在、10の9乗から行われておりまして、この実施要綱の中にも書いてござい ますように、3例ごとに評価しまして、大きな副作用が認められました場合は、その段 階で止めまして検討するというプロトコールになってございます。 ○松田委員  もう1つ、実際にp53を注入した場合に、明らかにそこの場所で発現しているという こと、つまり今、先生たちがやっていらっしゃるのは外から見てどうなったかというこ とですけれども、そういうことに対するチェックは、実際は難しいと思いますけれども 可能なんでしょうか。 ○東北大学加齢医学研究所 貫和教授  それは、あくまで部分的でございます。といいますのは、p53を打ちました後、患者 さんの許可を得まして腫瘍の一部を生検します。その生検をしたものに、確かに注入し たアデノウイルス中のp53遺伝子が入っている。そして、p53蛋白がつくられている。 更には、可能な場合は、p53蛋白がつくられたことによってがん細胞がアポトーシス (細胞死)を起こしているという証拠を出来るだけつかみたいという計画でございます。 ○松田委員  どうもありがとうございました。 ○寺田部会長代理  ほかにございませんか。 ○加藤委員  たしか岡山大学のときには、プロトコールの内容とインフォームド・コンセントの内 容が一致しているかどうかという問題が1つあって、プロトコールでは、化学療法と遺 伝子治療等の複合的な作用についてチェックするという研究目的が掲げられていたにも かかわらず、患者の同意文書の中では、遺伝子治療の安全性についてだけ触れていたと いう点が問題になったと思います。  それからもう1つは、アデノウイルスの危険度についてどういう説明をするかという ことが問題になった訳ですが、これは今回のインフォームド・コンセントの中では、生 ウイルスの混入によって起こるものということで、この前よりは具体的にはっきりと説 明が出ている点は大きく改善したのではないかと思います。  それからもう1つは、曽野委員からちょっと難し過ぎて読む気がしないんじゃないか という点がありましたけれども、これは余り改善されていないように思いました。  第1点については、これで構わないということでしょうか。つまり、研究目的とイン フォームド・コンセントの内容のズレということですが。 ○東北大学加齢医学研究所 貫和教授  この点は、私自身、岡山大学の審査のときの細かいところまで聞き及んでおりません でしたので、今すぐにこのページということでお答えは出来ませんけれども、抗がん剤 との併用という基本的な考え方は、抗がん剤を先に使用しておる場合に、p53を注入す るとがん細胞が死にやすい、そういう動物実験があるというのが科学的な根拠でござい まして、これは確かに御指摘のとおり、患者さんに説明するのはなかなか難しい点では あると思いますけれども、更に効果が高くなる可能性はあるという点を御説明する必要 があるのではないかと思います。 ○加藤委員 もう1つ、アメリカのデータを解析した結果、この研究を取りやめなければならない という可能性はあるのでしょうか。 ○東北大学加齢医学研究所 貫和教授  それに関しましては、最終的な結果といいますか、報告が出ておりませんので、取り やめというところまではまだ解析されていないと思います。あくまでも、先ほど申しま した本年の「ジャーナル・オブ・ナショナル・キャンサー・インスティテュート」の報 告にしましても、 ArmIに関してのレスポンスと安全性の報告でございますので、この意 義に関してはまだ報告が出ていないと私は理解しております。 ○寺田部会長代理  補足ですけれども、このニュースが出ましたときに、がん遺伝子治療臨床研究作業委 員会の座長として、事務局から、岡山大学の方に「こういうことは当然ご存じだろうけ れども、注意をしてやってください」と電話で伝えました。それから、「岡山大学の方 も情報を出来るだけ集めてください」というふうに言っております。このことは、もし 一般的な話で私どもが思っているような、血管へ大量に入れたためとか、大量というの がどのぐらいの量であるかとか、そういう情報がはっきりすることが大切です。当然の ことですが、危険性があるということであれば直ちにやめていただく。やっている方は やめられると思いますけれども、もしやめないようであれば、やめていただくようにす るというのが私のがん遺伝子治癒臨床研究作業委員会の座長としての立場でございま す。 ほかにございませんでしょうか。それでは、本件に関する遺伝子治療臨床研究実施計 画につきまして、科学的・倫理的に妥当と認め、厚生科学審議会会長に報告いたしま す。布告は高久部会長よりいたすということでいかがでございましょうか。よろしゅう ございますか。                (「はい」の声あり) ○高久部会長 ご迷惑をおかけいたしました。寺田委員、どうもありがとうございました。 それでは、次の議題の財団法人癌研究会附属病院における「乳癌に対する癌化学療法 の有効性と安全性を高めるための耐性遺伝子治療の臨床計画実施計画」、これは平成10 年の7月に付議されていますので、この件について御審議をお願いしたいと思います。 この遺伝子治療臨床研究は、がん遺伝子治療臨床研究作業委員会で、主として科学的な 事柄について論点の整理が終了しております。作業委員会から御報告いただいた上で、 部会として審議をいたしたいと思います。事務局から申請の経緯等について説明してく ださい。 ○事務局  それでは、御説明申し上げます。資料は(4)−1、(4)−2並びに本日お手元に配らせ ていただいております参考資料(3)、この3つでございます。  この申請は、財団法人癌研究会附属病院で、まず対象疾患となりますのは、再発又は 進行の乳癌ということでございまして、挿入される遺伝子はMDR1と呼ばれます多剤 耐性の遺伝子でございます。また、用いられますベクターはレトロウイルスというふう に計画書に書かれておるかと思います。平成10年の7月に申請が出され、がん遺伝子治 療臨床研究作業委員会で5回、審議いただいたところでございます。よろしく御審議の ほど、お願い申し上げます。 ○高久部会長  どうもありがとうございました。本日、財団法人癌研究会附属病院から相羽恵介先生 に御出席いただいています。相羽先生から実施計画の内容について簡単に説明していた だきます。よろしくお願いします。 ○財団法人癌研究会附属病院 相羽副部長  財団法人癌研究会癌附属病院の相羽です。よろしくお願いいたします。  では、お手元の参考資料(3)をご覧いただきたいと思います。要旨につきまして読ませ ていただきたいと思います。  「乳癌に対する癌化学療法の有効性と安全性を高めるための耐性遺伝子治療の臨床研 究」の概要。私たちがこの遺伝子治療で計画していることは、一言で言うと、血液細胞 に工夫をして、抗がん剤に対して抵抗性を持たせることです。抗がん剤による治療に際 し、最も重要で、かつ対応が難しい副作用の1つに血液に対する副作用があります。血 液の成分である白血球が減少したり、貧血をきたしたり、また、血小板が減少したりし ます。これらの副作用は普通一時的なものであり、じきにもとの状態に回復します。し かし、時には発熱を起こしたり、あるいは輸血が必要となることもあります。これらの 副作用は、患者さんの生活(生命)の質(QOL)を低下させるばかりでなく、抗がん 剤治療時の安全性を低下させる原因となるものです。この遺伝子治療により、血液細胞 が抗がん剤の治療に対して血液細胞は抵抗性を獲得すれば、白血球が減少したり、貧血 をきたしたり、血小板が減少したりすることが起こりにくくなると期待されます。つま り、抗がん剤で一番厄介な副作用が少なくなると期待されます。これは、患者さんのQ OLの向上と抗がん剤投与時の安全性の向上につながるでしょう。  それでは、次に、6ページに模式図がございますが、これが私たちが計画しておりま す大量化学療法と遺伝子治療の模式図でございます。この説明は3ページにございます ので、これから読まさせていただきます。この模式図をご覧になっていただきたいと思 います。  この臨床研究全体の流れについてお話しします。図1の左上の方を見てください。ラ クダのこぶのような形は、乳がんのしこりを模式的にあらわしています。図中の(1)であ ります。治療前はある程度の大きさの乳がんがありました。そして、通常の量の抗がん 剤の治療(寛解導入化学療法)を3〜4週間ごとに繰り返してきました。図中(2)であり ます。幸い、患者さんの病気は抗がん剤に感受性で、どんどん病気は小さくなってきま した。図中の(3)です。治療前から比べるとかなりよくなりましたが、まだ少し病気が残 っています。あるいは、病気は目で見て分からないほどによくなりましたが、顕微鏡で 見れば分かる程度のがん細胞がまだ残っている可能性があります。そこで、残っている あるいは残っているかもしれないがん細胞を徹底的に叩くために、大量化学療法を今後 予定すると仮定します。図中(4)です。先ほどもお話ししましたように、大量化学療法単 独では骨髄抑制のためにやがて致命的な状態に陥ります。これを防ぐために、あらかじ め末梢血の幹細胞を採取しておきます。図中の(5)です。もものつけ根の静脈から6回な いし9回程度、末梢血幹細胞を採取する操作を反復します。採取した細胞のうち、約3 分の1の細胞よりCD34陽性細胞という細胞だけを取り出します。図中の(6)です。この CD34陽性細胞というのは、血液細胞の中でも最も未熟な細胞で、血液細胞の卵のよう な細胞と考えられています。すなわち、この細胞から全ての血球細胞、例えば白血球や 赤血球、血小板といったものが増殖分化し、どんどんつくられてくると考えられていま す。このCD34陽性細胞に対して、多剤耐性遺伝子を導入します。図中の(7)です。この とき、遺伝子の運び屋としてレトロウイルスベクターを用います。この多剤耐性遺伝子 が入ったCD34陽性細胞は、使用するまで凍結して保存しておきます。図中の(8)であり ます。一方、採取した末梢血の細胞の残りの約3分の2には、多剤耐性遺伝子は導入せ ず、そのまま凍結して保存しておきます。図中の(9)であります。そして、時期を見て患 者さんの骨髄細胞も手術室で採取し、これも凍結して保存しておきます。このように準 備が全て整ったところで、図1の中央に示すごとく大量化学療法を行います。図中(4)で す。そして、その後に起こる強度の骨髄抑制を救援するために、あらかじめ凍結保存し ておいた多剤耐性遺伝子を導入したCD34陽性細胞と無処理の末梢血の幹細胞とを患者 さんの体に戻します。図中の(8)と(9)です。戻した細胞から新しい細胞がどんどん増殖 して、血液がもとの状態に戻ってくるまでに最低2週間以上かかります。通常は、大量 化学療法を行った後、約1ヵ月もすれば骨髄の機能は従来のものとほとんど変わらない 状況にまで回復します。回復した骨髄を再生骨髄といいます。しかし、この再生骨髄は 血液を作る能力(造血能力)が比較的弱いため、大量化学療法施行直後に、継続して抗 がん剤による治療を行うことは非常に難しいことが多いです。しかし、大量化学療法を 行った後でも、まだ乳がんのしこりが残っている場合もあるでしょうし、あるいは表面 上は全く病気が消失したと思われるような状況でも、顕微鏡で見れば発見出来るような がん細胞が残っている場合も考えられます。図中の(10)です。わずかでもがん細胞が残 っていれば継続して治療をする必要がありますし、表面的にはなくなったと思われるよ うな状況でも、ダメ押し的な治療(地固め療法といいます)が必要なことは言うまでも ありません。従来の治療スケジュールでは、再生骨髄自体が弱いため、継続して抗がん 剤の治療を十分に行うことはかなり難しい状況でした。しかし、このような遺伝子治療 を併用すれば、患者さんの体の中の血液細胞が抗がん剤に対して抵抗性を持つようにな るので、抗がん剤の治療を引き続き施行しやすくなると期待されます。また、このとき に使用する抗がん剤には、導入化学療法や大量化学療法時に使用しなかったドセタキセ ルというお薬を用いるので、図中の(11)です、病気そのものに対する効果も期待できま すし、他方、主な副作用である血液への副作用が軽減すると期待されますので、治療効 率とQOLはより向上すると期待されます。この遺伝子治療は、治療全体の流れとして は従来の大量化学療法と全く同じです。ただし、患者さんに戻す造血幹細胞の一部に多 剤耐性遺伝子が入っているということが違う点です。模式図中、陰を付けているところ が遺伝子治療の部分であります。私たちは、このような治療体系を考えており、この試 みがうまくいくかどうかを調べるのが今回の臨床研究です。  それから、同様の臨床研究が海外で行われております。資料(4)−1をご覧いただきた いと思います。これはプロトコールでございますが、それの46ページから47ページにか けまして、海外での状況をここにお示ししております。現在までに35例の患者さんに対 しましてこれと似たような治療が行われまして、重篤な副作用は認められておりま せん。 以上であります。 ○高久部会長 どうもありがとうございました。次に、本申請に関するがん遺伝子治療臨床研究作業 委員会の委員長の寺田委員から、作業委員会での検討結果について御報告をよろしくお 願いします。 ○寺田委員 先ほど説明がありましたように、これは乳がんに対する血液細胞を抗がん剤から守る という遺伝子治療でございまして、5回にわたって本当に慎重に検討してまいりまし た。最初、たしか60項目ぐらいの質問事項に対して非常に丁寧に答えてくださいました けれども、それでも、いろいろな質問事項が出てまいりました。これは、1つには第1 回の東京大学医科学研究所の場合とちょっと似ておりまして、企業が間に直接入ってい ないということもございまして、作業委員会としては、より慎重にも慎重を期して、い ろいろなことをチェックした訳でございます。  中でも、途中でMDR遺伝子が、マウスではございますが、前白血病を起こすという ような実験データが1つ出ましたものですから、それで大変神経質になりまして、その ことにつきましても財団法人癌研究会附属病院にお伺いしましたところ、それを目的に して実験をやった訳ではございませんけれども、 500匹以上にわたるマウスに入れても 特別そういうことは起きなかったし、それから、東京大学医科学研究所でマーモセット で安全性実験をやっていて、その結果が出るまでとにかく待とうというようなこともご ざいまして、それも、結果は特別異常なことはないということになりました。それから 先ほどちょっとお話にも出ましたように、外国でも人間でやっておりまして、悪い副作 用は特別出ていないということで、全体の書き直し、そういういろいろな細かいことの チェックをした結果、この申請書は作業委員会としては妥当と認めて、この部会に上げ るという結果になりました。 以上でございます。 ○高久部会長 どうもありがとうございました。今、財団法人癌研究会附属病院の方から、更に寺田 作業委員長の方から御説明がありましたが、財団法人癌研究会附属病院から出ています 乳がんに対する遺伝子治療につきまして、委員の方々から御自由な御意見をお伺いした いと思います。どうぞよろしくお願いします。 ○雨宮委員 今、寺田委員の方からお話がありました、特に専門委員会の方で、会社が介在しない からという御検討があったようですが、これは補償か何かの問題でしょうか。 ○寺田委員 補償の問題が1つございますし、それから、例えばウイルスが勝手にレプリケーショ ンするところの安全性をどういうふうにチェックしてあるのかとか、クオリティコント ロールをどういうふうにして保つのかとか、普通、企業が入っていたら、そこで薬とし ての審査がございますね。だから、その部分もちゃんと検討いたした。この場合は、よ り研究者レベルで、それから、アメリカの会社に頼んで安全性をチェックしているので すけれども、そういうことをこちらとしてもより慎重に検討したという意味でございま す。 ○高久部会長  ほかにどなたか。 ○松田委員  確認になりますけれども、そうすると、これは日本で開発するベクターであって、そ のベクターのチェックはどこか外国にお願いしてチェックしたと、そういうふうに考え てよろしいんですか。 ○財団法人癌研究会附属病院 相羽副部長  はい、そういうとらえ方もできると思います。 ○松田委員  そうすると、日本でつくったとなると、初めてのケースですよね。 ○寺田委員  ちょっと違うんじゃないですか。全部がそうじゃないでしょう。組み込んだりしたの はこちらだけれども、ベクターそのものはハーベイウイルスの一部を用いたベクターで しょう。中に入れるのはMDRの遺伝子で、これは財団法人癌研究会附属病院が持って おられたものですね。それと直接関係あるかどうか分かりませんが、財団法人癌研究会 附属病院でMDRという、要するに、薬を細胞外に吐き出す遺伝子の抗体を世界で最初 につくられた方がいらして、この方面で研究が進んでいるのも確かです。その一方が一 体となってやっておられるかどうかは分かりませんけれども。 ○高久部会長  ほかにどなたか御意見ありませんか。 ○金城委員  これはどういう患者さんに対してなさるのでしょうか。肺がんの場合は、ほかに何も 治療法がないということでしたけれども、この場合はどうなんですか。 ○財団法人癌研究会附属病院 相羽副部長  プロトコールに対象となる患者さんの条件、あるいは除外する条件が事細かに規定し てあります。38ページに選択基準と除外基準ということで2つのたがをはめてありまし て、適正な患者さんを選択するという手順になっております。一言で申し上げますと、 対象は進行乳がんの患者さんでありまして、通常は普通のいわゆる抗がん剤の治療を行 う訳でありますけれども、それでがん病変の面積が半分以下、あるいはほとんど消えて しまったというような、抗がん剤の効果が非常にあった患者さんであります。そのよう な患者さんが対象となります。 ○高久部会長  ほかにどなたか。 ○曽野委員  私の立場はいつも医学的でないことばかり申し上げるほかないんですけれども、57 ページに「補償について」というのがあります。私は法律の方もよく分からないんでご ざいますけれども、補償というのはかなり厳密でないといけないような気がするので す。ここは極めて日本的な善意に満ちた文章でございまして、私なども、こういう文章 のやりとりの背後にある日本的心というものを大変好きだし、信用もしているのでござ いますが、「可能な限り誠意をもって対応したいと考えております」というのは、ほと んど何も言っていないに等しいという感じで、これは患者としてはどういうふうに考え たらよろしいんでしょうか。 ○財団法人癌研究会附属病院 相羽副部長 この研究実施計画書は、財団法人癌研究会の施設内の倫理委員会、あるいは審査委員 会も通っております。財団法人癌研究会がすべて責任をもって研究をさせていただくと いうことであります。 ○高久部会長 作業委員会で科学的な検討は既に行ってますので、ここでは、曽野委員からのような ノンサイエンティフィックな質問を大いに歓迎しています。財団法人癌研究会附属病院 も出来るだけのことをやられると考えていますが、これ以上の表現はなかなか難しいの ではないかと思います。 ○金城委員 でも、法律家としてちょっと申し上げたいんですけど、そうすると、これは無過失責 任ですか。とにかく何か起こったらあらゆることをしますと。 ○財団法人癌研究会附属病院 相羽副部長 そうです。 ○寺田委員 このことは作業委員会でも問題になりまして、そういうことをお聞きしたら、財団法 人癌研究会附属病院として全部責任をもってやるという言い方で、一応こういう文章で それなら大変ですねと。けれども、こういう文章でオーケーということになったのです が、例えばどういうふうにしたらいいでしょうか。本当のことを言いまして、大変だと 思うんです。 ○小澤委員  サイエンティフィックじゃないのか、あるのか分かりませんけれども、先ほどお見せ いただいた参考資料の図1ですけれども、この段階で大体は消えたように見える。だけ ど、大量に叩かなければいけないということで、これをやらなかったらどういうことに なるんですか。 ○財団法人癌研究会附属病院 相羽副部長   ほとんど再発いたします。 ○小澤委員  どのぐらいの期間にですか。 ○財団法人癌研究会附属病院 相羽副部長  当科では多分2年ぐらいだと思います。 ○小澤委員  (4)をするためにこういうことを考えておられるんでしょうけれども、(4)というのは 絶対に必要だというケースはどの程度と推定出来るのかという疑問を持ったということ です。それだけです。ですから、それをやらなければ、2年間にほとんど再発するとい うことであれば、それはそれで結構です。 ○財団法人癌研究会附属病院 相羽副部長  多分、(4)の対象となります患者さんはとりあえず全体の患者さんの2割以下だと思い ます。さらに、例えば心臓の機能が十分保たれているとか、あるいは腎臓がいい、肝臓 がいい、すべてそういう状況を満たす患者さんとなりますと、またその数字から少しず つ減ってまいります。実際はそういうふうな小さな数字になると思いますけれども。 ○廣井委員  普通は、抗がん剤などをやって縮小した場合に外科的手術を加えるというのが常識だ と思うのですけれども、今回は外科的手術を加えないで経過を見ようという形ですか。 ○財団法人癌研究会附属病院 相羽副部長  がんの種類にもよりますけれども、進行乳がんの場合には全身病というふうに私たち は考えております。この患者さんは進行乳がんということで、何ヵ所かに病気があると か、そういう状況ですので、必ずどこかに病気が潜んでいる。ですから、今の医学のレ ベルでは、どこを検査をしてもがん細胞が見つからないということがありますけれども 実は目に見えないものが潜んでいる。それが、やがて半年あるいは1年たって再発する ということであります。それを叩き込むにはどうしたらいいかということで、その選択 肢のひとつに大量化学療法があります。その効果をもう少し後押し出来ないかというこ とで考えましたのが、今回の遺伝子治療であります。 ○高久部会長  よろしいでしょうか。時間も限られていますので、財団法人癌研究会附属病院から出 されました遺伝子治療研究についての討議を終わらせていただきまして、本件に関する 遺伝子治療臨床研究実施計画について、科学的、更に倫理的に妥当と認めて、私から厚 生科学審議会の会長に報告したいと思います。よろしいでしょうか。                (「はい」の声あり) ○高久部会長  それでは、御了承いただいたものといたします。どうもありがとうございました。相 羽先生、御苦労さまでした。  引き続きまして、名古屋大学医学部附属病院からの「リポソーム包埋ヒトβ型イン ターフェロン遺伝子による悪性グリオーマの遺伝子治療臨床計画の実施計画」につきま して諮問を付議されていますので、この件につきまして御審議願いたいと思います。  この遺伝子治療臨床研究は、作業委員会におきまして、主として科学的な事項につい て論点整理が終了したとのことですので、作業委員会から報告をいただいた上で、部会 として審議をしたいと思います。まず、事務局の方から申請の経緯等について説明をよ ろしくお願いします。 ○事務局  名古屋大学から提出されております遺伝子治療研究について御説明をしたいと思いま す。資料は、(5)−1、(5)−2並びに参考資料(2)の3つでございます。  この実施計画は、脳腫瘍の1つでございます悪性グリオーマを対象とするものでござ いまして、挿入しようといたします遺伝子は、ヒトβ型のインターフェロン遺伝子、ま た、そのベクターはリポソームを使うという計画でございまして、本年の4月に申請が ございまして、作業委員会で3回にわたり御議論を賜ったところでございます。よろし く御検討をお願いいたします。 ○高久部会長  それでは、吉田先生、よろしくお願いします。 ○名古屋大学医学部 吉田教授  名古屋大学の吉田です。それでは、私の方から、私どもが計画しております遺伝子治 療臨床研究の実施計画につきまして、本日配付いたしました参考資料(2)に沿って簡単に 御説明いたします。  1枚めくりまして、1ページ目をご覧いただきたいと思います。私どもが計画してお ります遺伝子治療は、ヒトβ型インターフェロンの遺伝子を正電荷リポソームに包埋し このDNA製剤を悪性脳腫瘍の局所に注入し治療を行うものであります。そしてその安 全性と効果を評価する臨床研究であります。  まず、私どもの遺伝子治療の特徴をここに5つ挙げてみました。私どもが対象として おります脳腫瘍は脳の実質の中から出る腫瘍でありまして、悪性グリオーマと呼ばれて いるものであります。この腫瘍は、この図の中にありますように、正常の脳に根を張っ たように増殖します。そのため、手術で全部取ることができなくて、予後が非常に不良 であります。こういう腫瘍を対象にしております。しかし、一方で、脳には血液脳関門 がありまして、通常この腫瘍は、脳以外の他臓器に転移いたしません。そのため、局所 治療で十分だということであります。さらに、我々は局所に遺伝子治療剤を注入します が、血液脳関門のため治療薬が脳以外の臓器に拡散していくことが極めて低いというこ とであります。  その他の特徴は、私どもが行っておるのは、日本でクローニングされたβ型インター フェロン遺伝子を使うということと、純国産の正電荷多重膜リポソームを使う。それか ら、日本の製薬企業の協力にて製剤化を行い、安全性試験を行ったということ。そして 実際に臨床に使うのは、学内の遺伝子治療製剤調製室で臨床用のものをつくるというこ とであります。以上のことより、本研究は日本独自の遺伝子治療法を開発するとともに 純国産の遺伝子治療薬の開発に将来つながっていく臨床研究と考えております。  次の2ページ目を見ていただきますと、これは、我々が使いますリポソームの遺伝子 治療製剤を図にしたものであります。左上の方にプラスミドと書いてありますが、プラ スミドは輪になったDNAでありまして、この中にインターフェロンの遺伝子が組み込 まれております。そして、このプラスミドをリポソームに包埋して遺伝子治療薬として 投与いたします。このリポソームというのは脂肪の膜から出来ているマイクロのカプセ ルでありまして、私どもは、更にこのリポソームの表面にプラスの電荷を付けることに よって細胞の中に入りやすくしてあります。そして、カチオンニックリポソームと言い ますけれども、これを遺伝子治療剤として使うということであります。このリポソーム 製剤を用いることの特徴として、これまでウイルスベクターが主として用いられており ますけれども、ウイルスベクターに比べまして感染性がないということで安全性が高い ということ。もう1つは、大きな遺伝子が入るということ。たくさんの遺伝子を同時に 入れることが可能。それから、免疫原性が低いということで何回も投与が出来るという こと。また、大量に生産することが容易である。以上のことから、これは一般の薬と似 たような形の、いわゆるDNA製剤として将来扱うことが可能であるということであり ます。  今回、私どもは遺伝子を使ってインターフェロン療法を計画していますが、これまで 脳腫瘍に対してインターフェロン療法が行われております。そして遺伝子を使うことに より、更に強い効果がみられることを期待しております。その理由は、いろいろな基礎 研究結果が示しています。ここに3つの抗腫瘍効果の作用機序を挙げております。イン ターフェロンの遺伝子の入ったリポソームを投与しますと、脳腫瘍の中に、3つの変化 が起こってまいります。1つは、遺伝子が導入された細胞がアポトーシスで死亡すると いうこと。もう1つは、アポトーシスで死亡するまでの間に、その遺伝子が導入された 細胞が大量に局所にインターフェロンの蛋白を産生します。そしてこの蛋白が周りの脳 腫瘍細胞の増殖を抑制するということ。それから、1と2が総合的に作用し、今度は生 体の免疫を活性させます。動物実験ではNK細胞とかCTLの活性化が証明されていま す。こういう3つの作用機序によりまして、これまでのインターフェロン療法に比べて より高い抗腫瘍効果が期待出来るのではないかと考えております。  次の4ページ目に移ります。私どもは、この写真にありますように、極めて無菌性の 高い遺伝子治療製剤調製室を学内につくっております。ここで実際に臨床に使いますイ ンターフェロンの遺伝子製剤をつくります。そして学内でつくった製剤を第三者機関に 依頼し、その品質と安全性をチェックしていただきます。そして一定の基準に合格した ものだけを患者さんに投与することになります。  次に5ページを見ていただきますと、一般に脳腫瘍の発生数は年間10万人中1人、1 年に大体1万人ぐらいの患者さんが発生しますが、その約4分の3は良性腫瘍でありま す。このグラフにありますように、手術で全摘出来ればほとんど完治出来る。ところが 残り約3分の1の悪性の神経膠腫というものは、先ほど言いましたように、根の張った ような形で増殖しますので、なかなか完治が難しい。特にその中でも悪性星細胞腫と膠 芽腫というものは、これまでの治療法では平均が2年以下ということで、予後が大変不 良なものであります。  そうした2つの悪性グリオーマの中で、今回対象にしますのは、6ページにあります ように、グループ1、グループ2に分けて対象患者を選択したいと思っています。グ ループ1というのは再発した悪性星細胞腫、あるいは膠芽腫でありまして、手術して摘 出した後に従来の治療、放射線化学療法、あるいは免疫療法の補助療法をしたにもかか わらず、腫瘍が再発あるいは増悪したものであります。こうした症例では、現在、はっ きりとした治療法がないのが現状であります。こうした患者5例に対してまず行いまし て、その後、安全性等、効果が確認出来た後に、今度は第2グループに移ります。これ は、脳の深部にありまして手術で摘出出来ない。しかも、膠芽腫として非常に悪性なも の、こういうものに関して第2グループとして5例行う予定であります。そして、そこ の下にありますような幾つかの審査を設けまして対象疾患を選んでいきたいと思ってお ります。  7ページに移ります。実際に患者さんに対してどんな手術をするかということを絵で 示してあります。再発例でありますが、まず再手術で摘出します。それでも残存腫瘍が 残ってしまいます。正常な脳の中に浸潤性に入っておりますので、その局所にこの治療 薬を投与します。そして、その後、下の図にありますように、今度は開頭するのではな く、頭蓋骨に穴を1個あけまして、そこから定位脳手術、病変をねらって薬剤を注入い たします。最近は、一番左の図のようにフレームを使う定位脳手術以外に、ナビゲーシ ョンシステムというものが非常に進歩してまいりましたので、フレームレスの方法、あ るいは神経内視鏡を用いた投与法を行う予定でおります。  そして、8ページにいきますと、実際に投与する製剤の量は、30μgのDNAを投与 する予定でおります。  そして、治療後に関しては、治療前も含めて、いろいろな臨床検査、画像診断、そし て遺伝子発現がどうであるかを調べます。これは腫瘍内の細胞診とか、提出組織、髄液 の細胞診などを通して、遺伝子発現、あるいはそこに産生されるサイトカイン、あるい は投与したプラスミドの代謝等を調べると同時に、免疫が関与するということで、免疫 に関する解析を行う予定であります。  効果及び安全性に関しては、10ページにありますようにプライマリー・エンドポイン トとしては、画像上の抗腫瘍効果、本治療後からの腫瘍の増大が確認されるまでの期間 を評価いたします。それから、効果と同時に、安全性に関しても詳細な解析をする予定 であります。 名古屋大学におきましては、名古屋大学医学部の倫理委員会のほかに、主としてこの 研究の審査をする審査委員会がありますが、その下部委員会に実際に使う製剤が本当に 大丈夫かどうかという検証をする製剤検証部会、それから、治療全体を通じての安全・ 効果を評価する部会、あるいは患者を選択するための適応判定部会というものがありま して、これらの委員会を通していろいろなことをディスカッションして評価していただ くものと思っております。 以上です。 ○高久部会長 どうもありがとうございました。今の吉田先生の御説明の中で、「アポトーシス」と いう言葉がありますが、これは、強いて訳せと「自殺」というような言葉になると思い ます。日本語には余りいい訳がないものですから。それから、CTLといいますのは細 胞障害性リンパ球ということを御理解願いたいと思います。  それでは、寺田委員、本件に係るがん遺伝子治療臨床研究作業委員会での検討状況の 説明をお願いします。 ○寺田委員  作業委員会で3回審査を行いまして、先ほどの財団法人癌研究会附属病院の場合、研 究者がつくったと申し上げましたけれども、名古屋大学の方も、それを日本の企業とい いますか、実は長年そこでリポソームを研究された方がつくった会社と一緒になって、 新しい方法で治療をやるというので、よりユニークさが出ている研究だと思います。も ちろん、そういう意味でも非常に慎重に検討いたしまして、ただいま話がありましたよ うに、科学的には了承ということになりました。ただ、1つ気になりましたのは、リポ ソームの安定性、あるいは再現性、そういうものは性質として大丈夫かというようなこ と、そういう専門家の方からの質問がございましたけれども、それに対して、保存もき くし、クオリティコントロールをきちんとやるという回答を頂きました。それから、今 日ここにありますように、製剤の安全委員会が客観的にそれを判断するということで、 いいだろうということになりました。  それから1つだけ。これはごく最近出てきたことで、作業委員会の座長としてこんな ことを質問するのは適切ではないと思いますが、つい最近の「ネイチャー・メディシ ン」に、動物実験ですけれども、サイミティンカイネース・アデノウイルスで、一旦腫 瘍は治るけれども、広範に3ヵ月後ぐらいまで脳に炎症が残っていて、脱髄状態が出る 可能性がある。この対象にされている方は大変悪い方ですから、脱髄状態とか、そうい うことがくるような状態まで効くようであればかえって大変いいわけですが、そういう 危険性は名古屋の場合ございませんか。 ○名古屋大学医学部 吉田教授  私も、「ネイチャー・メディシン」の論文をよく読みまして検討しております。我々 の場合には、動物実験で幾つか類似の検討をしております。実際に治療をした後に、1 ヵ月とか3ヵ月後に動物をサクリファイしまして、そして脳の組織をみております。ど こにそういう点があるかというのは正確には分かりませんけれども、私どもの観察では 腫瘍そのもの、局所での変化はございますけれども、それから離れた遠隔部の変化とい うのは組織上みられておりません。ということで論文の症例のように、アデノウイルス を使ったものと少し違うんじゃないかと思っております。しかし、正確なところは分か りません。 ○寺田委員  これは作業委員会が終わってからペーパーを読みましたものですから今になってそう いう質問をしました。どうも失礼しました。注意深くお願いします。 ○高久部会長  それでは、どなたか御質問、御意見おありでしょうか。 ○雨宮委員  本文の75ページあたりに患者さんに対するインフォームド・コンセントの仕方が書い てございますね。先ほど先生から御説明いただいた症例は、かなり末期と言うと大変失 礼ですが、非常に難しい状態になっているということで、それにしても、何か選択肢と いうものをインフォームド・コンセントの中で述べる必要があるかなということをちょ っと思ったんですけれども、その辺はどうなるんでしょうか。 ○名古屋大学医学部 吉田教授 従来の治療法というのは、再手術とか、放射線の再投与とか、セカンドラインの化学 療法とか、再治療する場合と、あるいはそのままでフォローする場合があります。従来 の方法をお話しし、そして、現在、こういう新しい試みがあるということをお話しして そして患者さんに選択していただこうと思っております。 ○高久部会長 ほかにどなたか。 ○金城委員 その際に、この病気は非常に難しいというお話が再三出ている訳ですね。ですから、 もしこれが成功すればすばらしい画期的な治療になると同時に、患者さんを大変難しい 状況に置くのではないかと思うんです。それで、苦痛はどの程度なのか。そして、ほか の治療ももうだめだから、自分は何も治療を受けないで、このまま死を迎えたいという ような方もいると思うんです。そういう点については御説明をしているのでしょうか。 ○名古屋大学医学部 吉田教授 我々脳腫瘍を専門とする臨床医なものですから、そういう患者さんはたくさん経験い たします。現在も入院患者さんの中におられます。いつも患者さん及び患者さんの家族 と相談しながら、次の治療としてはどうするかということを話し合いながら進めており ます。その中で、このままにしておきたいという方もおられますし、積極的な治療を是 非お願いしたいという患者さんもおられます。そこで話をしまして、このままにしてお きたいという患者さんにはそのようにさせていただいておりますし、積極的な治療を希 望されている方にはいろいろな選択肢をお話しして再治療を進めていきます。 ○金城委員 そのときに、もう治療を受けたくないというようなことをおっしゃるパーセンテージ というのはどのぐらいの感じですか。 ○名古屋大学医学部 吉田教授 一般にそこまでいくのは結構進んだ状態の患者さんですが、再発しても、やはり治療 を受けたいという患者さんの方が圧倒的に多いです。ところが、2回、3回と再発して まいりますと、このままにしてもらいたいという患者さんがいらっしゃいます。 ○金城委員  パーセントは分かりませんか。 ○名古屋大学医学部 吉田教授 パーセントは、本当の末期では多くなりますが、再発時では少ないと思います。やは り積極的な治療をしたいと。ただ、患者さん自身は、実際に病期が進みますと判断力あ るいは意識レベルが低下してまいりますので、正確に判断出来ているかどうかというの は分からないかもしれません。家族と相談しながら、総合的にどうすべきかということ をお話ししております。 ○高久部会長  ほかにどなたか。 ○入村委員  これは、今の段階でベンチャーのような企業が製剤をつくっているということをバッ クにした上で、御自分のところでつくられていくもので、これは将来的にやはり薬とし ての申請がうまくいったら出てくるということを一応考えられた上でやっているのでし ょうかということと、こういうリポソームに組み込んだDNAが遺伝子治療として、実 際に医薬品としての治験が行われていることが外国ではあるのかというのを私はちょっ と存じ上げないもので、そういう例があるかどうか。もしご存じだったら、この際お伺 いしたいのですが。 ○名古屋大学医学部 吉田教授  実際に、もしいい結果が出れば、是非、薬というところまで持っていっていただけれ ばいいと思っています。ただ、今のタイプの製剤がベストではないと思いますから、改 良を加えていくことになると思います。今後の臨床研究の進み方次第によっては、薬に まで持っていっていただければありがたいと思っております。 ○高久部会長  次の質問の、リポソームを使った研究はありましたか。 ○寺田委員  リポソームを外国でベクターとして使ったのがあるかどうか。 ○名古屋大学医学部 吉田教授  同じタイプじゃないですけれども、SUVという非常に小さなものでリポヘェクチン というものがありまして、これは実際にフェーズ1、2、3というところまで今いって おります。まだ薬にはなっておりませんが、薬にすることを目指してそういうような治 験が進んでおります。 ○高久部会長  どうもありがとうございました。他にどなたか。  もし御質問がなければ、この名古屋大学から出ています遺伝子治療臨床計画の実施計 画につきまして、妥当と認めて、私から厚生科学審議会会長に報告したいと思います。 よろしいでしょうか。                (「はい」の声あり) ○高久部会長  どうもありがとうございました。吉田先生、どうもありがとうございました。  引き続きまして、議題(4)の「遺伝子治療臨床研究に関する指針」の改正について御審 議願いたいと思います。まず、事務局の方から経緯を説明していただけますか。 ○事務局  それでは、御説明申し上げます。資料は、資料(6)と書いたもので、A4の横書きでご ざいます。  本日も3課題について御議論願いました遺伝子治療臨床研究の計画につきましては、 ここにございます「遺伝子治療臨床研究に関する指針」というものが平成6年に告示さ れている訳でございます。この中の抜粋でございますが、第3「対象疾患等」というと ころを見ていただきますと、一の1のところに「致死性の遺伝性疾患、がん、後天性免 疫不全症候群その他の生命を脅かす疾患であること」というふうに規定されておる訳で ございます。二の「遺伝子標識臨床研究」につきましても、全く同じような表現で規定 がなされておる訳でございますが、本年の4月にこの部会でも御議論いただきましたと ころでございますけれども、また後で報告させていただきますが、大阪大学におきまし て慢性閉塞性動脈硬化症、あるいはビュルガー病の詳細につきましては、この資料の2 ページをご覧いただきますと、南山堂の医学大辞典の抜粋を掲載しておりますが、いず れにいたしましても、足の血管が閉塞して詰まってしまって、足を切断することに至る 事例が多いという病気でございますが、これらの病気の取り扱いについて、本年の4月 に御議論を賜ったところでございます。  この件につきましては、1ページに戻りますが、文部省におきましても全く同様でご ざいまして、1ページの左側にございます「大学等における遺伝子治療臨床研究に関す るガイドライン」というのは、改正案となっておりますが、本年の5月に文部省といた しまして正式に改正をいたしております。改正案ではなくて、もう既に改正がなされて おります。その内容は棒線が引かれておるところでございますが、「生命を脅かすか」 という従来からあった後に、「又は生活の質を著しく損なう難治疾患」という表現を付 け加えることによって文部省におきましては改正がなされたところでございます。  したがいまして、私どもでは、現行の厚生省の指針におきましても、先ほど申し上げ ました大阪大学の事例も対象として解釈し得ないものではないというふうに考えており ますが、今後の取り扱いを明確にするためには、改正することの方がより合理的ではな いかというふうに考えた次第でございます。よろしく御検討をお願い申し上げます。 ○高久部会長  どうもありがとうございました。今、事務局から説明がありましたように、血管障害 に対する遺伝子治療ということが外国ではかなり広範に行われていますが、今回、大阪 大学の方からも申請が出ていますので、その申請に合わせる形で、しかも、文部省の方 では既に改正を行っていますので、厚生省の方のガイドラインも対象とする疾患の中に 血管障害が入るような形の改正をしたいということです。この件につきまして、どなた か御質問、御意見がありましたらよろしくお願いいたします。  文部省のときには私も出席していたのですが、血管障害、特に小さい動脈が詰まる閉 塞性疾患をどう表現するかということで大分議論がありました。そこで、文部省のガイ ドラインでは「生活の質を著しく損なう難治疾患」という表現になっています。具体的 な言葉についてはまた御意見をお伺いしたいと思います。こういう形で対象とする疾患 の範囲を広げたいということで御意見をいただければと思います。 ○松田委員  将来どうなるか分かりませんが、例えばフェニルケトン脳症とか、先ほどのOTC欠 損症なども場合によっては治療で相当効果が上がりますけれども、一生続けなければい けないという問題があります。もし遺伝子治療でもってそれを続けなくて済むのである ならば、確かに生活の質の改善という点では大変大きなメリットを患者さんに与えるだ ろうと思います。そういうこれから先のことを考えると、やはりこういった表現でそう いった疾患を総括するというのは、将来性を考えると、いいのではないかと思います。 ○高久部会長  どうもありがとうございました。他にどなたか御意見が。  松田委員がおっしゃったように、先天性疾患の中にも、生命の危険はないが、クオリ ティ・オブ・ライフが非常に障害される疾患があると思いますし、その中には、外国で 遺伝子治療がある程度有効であったという報告もありますので、今後、そういう疾患を 対象とする遺伝子治療の申請がこの部会に出てくる可能性が非常にあります。文部省の 案を参考にしながら、事務局の方で訂正した案をつくっていただきたいと考えていま す。この事につきまして、今日、御賛同いただいたと思います。部会長に一任というこ とでよろしいでしょうか。 ○金城委員  「クオリティ・オブ・ライフ」の訳だと思うんです。ただ、「生活の質」というと、 かなり具体的な問題がないとだめなのか。「生命の質」というふうに訳せば、もっと広 範になると思うんです。ですから、あえて「生活の質」ということで限定的に解釈して いこうということでこういう言葉を使われたのかどうか。文部省のときの議論なども御 紹介していただけたらと思います。 ○高久部会長  大分前の事で記憶が薄れていますが、要するに、難治疾患であるということで良いの ではないかという議論もありましたが、それでは余りにも範囲が広過ぎるので、「生命 を脅かす」、または「生活の質」としたのだと思います。そのときに、「生活の質」と いうことと「生命の質」ということと区別して議論をした記憶はなかったと思います。 ○金城委員  私は言葉にこだわるんです。もう少しきちんとした歯止めをかけ、そして、これから 道が開かれるようなもの、ある程度具体化出来るようなものにしておかないといけない のかなと思うのですが。「生活の質」という言葉も余り使わないような気もするんです けれども、加藤先生、いかがですか。 ○松田委員  使いますね。辞典では、「クオリティ・オブ・ライフ」の日本語訳としては「生命 (生活)」とか、「生活(生命)」と書いていますね。 ○加藤委員  「クオリティ・オブ・ライフ」は訳しようがないので、片仮名で「クオリティ・オ ブ・ライフ」と言っていることもあるんです。ただ、法律用語では、たしか片仮名はな るべく避けるという方式なので、それでこういう訳になったと思うんです。つまり、遺 伝子治療というのはそもそも危険度があるので、なるべく限定して、特に生死の境目に なるような病気でなければ適用してはいけないといったのに対して、例えば歩行が困難 であるというようなものまで拡大しようという趣旨だと思うんです。ですから、その趣 旨から言えば、「生活」でも「生命」でも、どちらでもいいんじゃないかと思います。 ○高久部会長  ほかにどなたか御意見は。金城委員の御意見も十分に参考にさせていただきながら、 もう少しはっきりした表現が出来れば、そういうふうにしたいと考えています。治療法 はどんどん変わるものですから、対象疾患も今後また変わる可能性が十分にあります。 現在のガイドラインは7〜8年前に出来たものですから、変える必要が出てきたと思い ます。さしあたってどうするかということで、事務局の方と具体的な文言について検討 をさせていただきたいと思います。 引き続きまして、報告事項に移りたいと思います。先ほどのガイドラインの改正で説 明のありました「大阪大学医学部附属病院の遺伝子治療臨床研究実施計画の申請につい て」、事務局の方から説明をよろしくお願いします。 ○事務局 資料(7)をご覧いただきたいと思います。4ページをご覧いただきますと、「研究の区 分」で研究の目的、対象疾患などについてここに記載されておりますが、先ほど御議論 いただきましたとおり、末梢性の血管の疾患でございます慢性閉塞性動脈硬化症、ある いはビュルガー病を対象にする。導入する遺伝子は、肝細胞増殖因子、通称「HGF」 と呼ばれているものでございまして、これを筋肉内に注射をするというものでございま す。また、研究の目的の最終行にございますように、アメリカタフツ大学メディカルセ ンターのプロトコールに準じて行うというものでございます。  対象疾患、あるいはその数につきましては、第1ステージとして6名、第2ステージ として16名を考えるということでございます。なお、アメリカにおきましては、既に100 人に及ぶ患者に投与されておるというものでございまして、その次のページをご覧いた だきますと、上の段の中ほどに、プラスミドDNAについては、アメリカタフツ大学に おける研究計画に準拠して、ドイツキアゲン社によって生産されるものを用いるという ようなことが書かれております。  事務局といたしましては、本件につきましては、既に当部会で御議論願いました遺伝 子治療臨床研究作業委員会規定の中に、研究計画ごとに作業委員会を置くという規定が ございますので、この規定に従いまして、会長あるいは部会長に御相談しながら、作業 委員を指名していただきまして、作業委員会における御議論を賜りたいというふうに考 えております。よろしくお願いいたします。 ○高久部会長  今、事務局の方から大阪大学から出ています遺伝子治療臨床研究申請計画について説 明がありましたが、どなたか御質問、御意見おありでしょうか。  これは、企業は直接関係をしていなくて、自分のところでつくるということです。も ちろん共同研究で、治験ということではないですね。 ○事務局  そういうふうに聞いております。 ○雨宮委員  本文の方の29ページになりますが、9という項目がありまして、「遺伝子治療臨床研 究の費用について」というのがあります。今、部会長からちょっと御説明があったよう ですが、ここのところに「本試験に関連して保険で支払われない部分は研究資金によっ て支払われます」となっていますと、これは何か研究費が出ているのかなというふうに 理解したのですが、どういう意味なのかということが1つあります。  それから、10番の「健康被害が発生した場合について」は、先ほど御議論があったの と同じような表現でありまして、最も好まれる日本的表現ということかもしれませんが ちょっとそんな感じを受けました。この辺の研究費でということはどういうことなの か。要するに、研究費というのは、大体、目的がそれぞれあっての研究費だと思うので すがこういうことをやることについての研究費がどこかから拠出されているのか。そこ ら辺がむしろ疑問に思ったところですが、いかがでございましょうか。 ○高久部会長 まだ作業委員会の方で具体的に検討しておりませんので、私もお金がどこから出てく るのかよく分からないですが、恐らく研究費として申請をされるのではないかと思いま す。厚生科学研究の中には遺伝子治療についての研究費がありますし、ほかのところで も、財団とか、あるいは文部省関係でも出てくる可能性がありますので、全く個人的な 推定ですが、そういうお金を使うのではないかと思います。 それから、もう一つの補償の方ですが、先ほどの財団法人癌研究会附属病院の場合に は法人ですが、大阪大学の場合は国ですから、そうすると、国の対応ということも当然 問題になってくると思います。  それでは、先ほど事務局から説明がありましたように、作業委員会をつくって、この 大阪大学からの研究のプロトコールについて検討していただくことにしたいと思いま す。 次に、事務局の方から、現在、遺伝子治療臨床研究が行われています幾つかの施設の 実施状況について、よろしく説明をお願いします。 ○事務局 資料(8)と(8)−2の2つの資料で御説明申し上げます。  まず、資料(8)から御説明申し上げますけれども、現在実施されておりますのは、東京 大学医科学研究所と岡山大学の2つでございまして、資料(8)は、最初、東京大学医科学 研究所の腎がんの遺伝子治療の臨床研究の経過報告でございます。これは、10年の7月 にこの部会で御審議いただきまして、御承認いただいた件でございまして、まず1例目 につきましては、7月の本部会で既に報告済みの案件でございます。 2ページをご覧いただきますと、中ほどに腎がん遺伝子治療臨床研究経過報告(第2 例目)というのがございますけれども、そういう意味では、この2例目の8月以降とい うのが新しいものでございます。この例では、平成11年6月3日から接種を開始いたし まして、平成11年8月まで1回接種を行っております。その後、平成11年9月2日から 再度の接種に入りまして、再度の接種が平成11年11月11日まで行われております。現在 のところ、腸閉塞のため予定した接種の延期をするということで止まっている訳でござ います。 第3例目でございますが、次の例で登録除外となっておりますけれども、インフォー ムド・コンセントを経た後、実施しようとした段階でGM−CSFの産生量が規定に合 わない、研究計画に合わないということで中止になっております。その次の第3例目 (新)と書いてあるものが、インフォームド・コンセントを経て始まったというふうに 報告がされております。  次の4ページ、5ページ、6ページは全く同じものをコピーしてしまいまして、誠に 申し訳ございません。  7ページが岡山大学の肺がんの経過報告でございます。これは、10年の9月17日にこ の部会で御了承いただいたものでございまして、現在までに5例、試験が行われており ます。そのうち1例が平成11年9月25日にお亡くなりになられております。症例ごとに 御説明申し上げますと、まず被験者No.1というのは、11回目の投与が行われて、安全性 等について重篤なものは認められておりません。  被験者No.2、これも10回目までの投与が行われておりますけれども、重篤なものは認 められておりません。 被験者No.3でございますが、9月の本部会で口頭で御報告させていただいたものでご ざいまして、9月25日にお亡くなりになられております。資料(8)−2をご覧いただきた いのでございますけれども、それに対します岡山大学としての中間的な報告が上げられ てきている訳でございまして、これを簡単に御説明申し上げますと、6月8日から計4 回投与をした。しかしながら、病変は進行し、無気肺が認められ、呼吸状態が悪化し、 閉塞性の肺炎の状態を呈しておったということでございまして、岡山大学としての中間 的な報告といたしましては、病変の進行による死亡ということで、この治験薬投与との 因果関係はないということでございますが、作業委員会にも報告させていただきまして より詳細な検査データ等があれば提出するようにというお言葉もいただいておりますし また、大学としても、病理解剖の顕微鏡の写真でございますとか、病理組織の医学的な 検査を行っておるところと聞いておりますので、それらのデータが出れば、また報告さ せていただきたいというふうに考えております。  被験者No.4、更に被験者No.5、これらの状態が報告されておりますが、いずれも重篤 なものは見られておりません。 以上でございます。 ○高久部会長 どうもありがとうございました。今の報告に対して、何か御質問がおありでしょう か。 もしなければ、次に、がん遺伝子治療臨床研究作業委員会について、これも事務局の 方から資料(9)に基づいて説明をよろしくお願いします。 ○事務局 資料(9)を御説明申し上げます。 本年の11月30日に行われました文部省のワーキンググループと合同の委員会でござい ますけれども、本日御議論を賜りました東京医科大学の肺がん、岡山大学の肺がんの件 が議事内容の1番でございます。また、議事内容の (3)を見ていただきますと、本日同 じく御議論いただきました名古屋大学の件を御議論を賜っております。それ以外に、議 事内容の(2) でございますが、岡山大学の前立腺がんにつきましては、意見がまとまり まして、更に作業委員会で継続して審議をするということでございます。 以上、御報告させていただきます。 ○高久部会長 どうもありがとうございました。ということですので、特に御質問がなければ次に進 ませていただきます。 前回のこの部会で報告をさせていただいておりますが、いわゆるミレニアム・プロジ ェクトについて、これに関連しまして起こってくる倫理的な問題に対応するために検討 会が開始されていますので、事務局の方から、その検討会について説明をよろしくお願 いします。 ○事務局 資料(10)について御説明を申し上げます。 まず最初に、6ページに平成11年10月19日に公表されました内閣総理大臣のミレニア ム・プロジェクトに関する考え方をまとめたものでございます。情報化、高齢化、環境 対応の3つの分野について、産学官共同プロジェクトとして実施をしてまいるというこ とがここに書かれております。  その次に高齢化といたしまして、2004年度を目標に、痴呆、がん、糖尿病、高血圧等 の高齢者の主要な疾患の遺伝子の解明に基づくオーダーメイド医療の実現、画期的な新 薬の開発着手、更に、自己修復能力を利用した骨、血管等の再生医療を実現するという ことが書かれております。これが10月19日の時点のものでございまして、この後、内閣 官房内閣内政審議室を中心に計画の具体化を図るということで、現在作業が続けられて おるというふうに聞いているところでございます。 1ページに戻っていただきたいのですが、こういう形で内閣総理大臣あるいは内閣を 中心に御議論が続いておる訳でございますけれども、1ページにございますのが、平成 11年9月の時点で厚生省としてこのプロジェクトに参加をしたいということで要求をし た要求内容でございます。3本の柱からなっておりまして、遺伝子解析による疾病対 策・創薬関係ということで、国立がんセンターなどのナショナルセンター、あるいは国 立試験研究機関において、遺伝子解析を通じた研究を進めていきたいということで合計 136億円。次に、再生医療の関係で19億円。最後が、バイオテクノロジー食品の安全性と いうことで4億円の要求をしている訳でございます。  その具体的な内容は2ページからある訳でございますけれども、先ほどご覧いただき ました内閣総理大臣の御決定にございますように、遺伝子解析を利用した痴呆、がん、 糖尿病、高血圧等、高齢者の主要な疾患になりやすい遺伝子を持つ方、あるいは特定の 薬に副作用が出る、あるいは特定の薬が有効などのような遺伝子があるのかというのを 解析するということが主体となっておる訳でございます。  このようなことで、現在、内閣におきましても最終的な詰めが進んでおる訳でござい ますが、一方では、先ほど部会長から御紹介いただきましたとおり、倫理的な問題、あ るいは個人情報保護の問題というのが、このような研究を進めるに当たりましては、ど うしても解決をしなければならない、一定の守るべき条件というのをつくらざるを得な いということでございます。そのために、平成11年10月22日に設立したものでございま すが、多くの方々から血液あるいは組織といった生体試料の提供を受ける。また、遺伝 子に関する情報を収集していく。更に、ナショナルセンター同士、あるいは国立試験研 究機関同士でそういった情報交換をしていくために、生命倫理の観点、あるいは個人情 報保護の観点から統一的な基準をつくるということで、厚生科学研究費補助金に基づき ます調査研究班をつくらせていただいた訳でございます。班長は国立がんセンター中央 病院の垣添院長でございまして、ここに検討課題として(1)から(6)までございますけれ ども、これらのものを中心に現在、御議論を賜っておるところでございます。  5.「その他」の(2)をご覧いただきますと、私どもといたしましては、この調査研究 班の御報告を踏まえまして、当部会におきまして最終的な御検討を賜りたい。出来ます れば、平成12年1月下旬から、当部会におきまして本格的な御審議を賜り、一般からの 意見も聴取をし、プロジェクトの開始が平成12年4月でございますので、出来ますれば 来年の4月、プロジェクトの開始までに統一的な基準を御審議の上、定めてまいりたい というふうに考えている次第でございます。  もう1点は、13ページをご覧いただきたいのでございますが、厚生科学審議会先端医 療技術評価部会におきます「ヒト組織の移植等への利用の在り方に関する専門委員会の 設置について」というタイトルでございますが、組織バンクを中心として、ヒト組織の 移植におきます利用という、これも先ほど申し上げました倫理的な問題でありますとか 感染症の問題でありますとか、そういった有効性・安全性に関わるような問題がやはり 顕在化してきている訳でございまして、これについて御議論をいただきますために当部 会の下に専門委員会を設ける。組織規程から申し上げますと、専門委員会というのは会 長の判断によって設けることが出来ますので、14ページにございます(1)から(4)、これ らのものを御議論いただきたいということで、京都大学大学院法学研究科 位田隆一教授 から明治乳業(株)細胞工学センター 松村外志張参与まで、12名の先生方に御参加を お願いをして、専門委員会で御議論を賜りたいと考えております。 先ほど来、倫理的な問題と個人情報の保護ということを申し上げた訳でございますが 資料(11)をご覧いただきたいと思います。  内閣総理大臣を本部長といたします高度情報通信社会推進本部が設置されたというこ とが書かれている訳でございますが、その中で、個人情報保護の問題について御議論が 進んでおります。膨大な内容でございますので詳細は省略させていただきますが、12 ページをご覧いただきますと、III「個人情報保護システムの在り方」ということで、基 本的な考え方がここに述べられておりますが、広く民間部門をも対象とした個人情報保 護のシステムを整備をするという観点から、案の1、案の2と2つの方法が提示されて おります。すなわち、全分野を包括するような「指針」をつくる。あるいは、全分野を 包括するような基本となる法律をつくるという考え方でございます。 更に、14ページをご覧いただきますと、4「個別法等」というところでございますが 機密性が高くて、かつ漏洩した場合に被害が大きい分野ということで、ここでは3つの 分野が具体的に挙げられておりますが、信用情報分野、医療情報分野、電気通信分野、 これらのものについては個別法の整備を別途考えるということが述べられており、この ような形で個人情報保護についても内閣を挙げて取り組んでいただいているところでご ざいますし、先ほど申し上げました遺伝子解析研究の倫理的な問題、あるいは組織バン クの倫理的な問題を検討していただく際には、こういった個人情報保護のシステム、個 人情報保護の問題というところにも観点を置いて御議論を賜りたいと考えております。 その双方が一体となって、ミレニアム・プロジェクトの適正な実施がされるのだろうと 考えておりますし、先ほど御報告申し上げました垣添院長の研究班の成果を踏まえて、 平成12年1月下旬、あるいは2月の初めぐらいから本格的な御議論をこの部会において お願いをしたいと考えておりますので、よろしくお願い申し上げます。 ○高久部会長  どうもありがとうございました。今、事務局から報告がありましたように、遺伝子解 析などに関する倫理的な問題を検討する委員会と、それから、ヒト組織の利用などにつ いての専門委員会が設置されています。お手元の資料に専門委員、検討委員の方々の名 前が出ていますが、この部会の委員の方々の中にも両方の委員会に入っておられる方が いらっしゃいますが、今説明のあった検討会あるいは専門委員会で検討の結果を、この 部会で更に御検討願うことになると思います。一応、目標が本年度中ということになっ ていますので、委員の皆様方にその時にはよろしくお願いをしたいと思います。 ○事務局  資料(12)(13)について御報告申し上げたいと思います。  資料の(12)をご覧いただきますと、新聞報道で既にご存じかと思いますけれども、平 成11年11月の初めに、東京農業大学におきまして、ヒトの体細胞の遺伝子を牛の除核し た卵細胞に融合して入れるというような試験研究が報道されたところでございますが、 これにつきまして、私どもといたしましては、資料(12)2ページ目でございますけれど も、まず、関係する国立試験研究機関の長に、ヒトのクローンに関する研究に該当する ものにつきまして、平成9年3月の科学技術会議の見解を踏まえて、差し控えるよう再 度所内に周知徹底をしろというような通知を出したところでございます。それと同時に ヒトのクローンに関する研究に該当するおそれがあるかどうかというようなグレーゾー ンの問題がどうしても出てまいりますので、グレーゾーンのものについては倫理委員会 に諮るよう通知したところでございます。  また、資料(13)をご覧いただきますと、ヒトの細胞を用いたキメラに関する研究、あ るいはハイブリッドに関する研究につきましても、クローンに関する研究と同様に差し 控えるよう、更に、ヒトの胚に関する研究につきましても、慎重に対応するよう通知し たところでございますし、先ほど御説明したのと同様に、グレーゾーンにわたるものに ついては倫理委員会に諮るよう、併せて通知したところでございます。  御報告申し上げます。 ○高久部会長  どうもありがとうございました。では、最後に、事務局の方から今後の日程について よろしくお願いします。 ○事務局  先ほど御報告の中で申し上げましたとおり、ミレニアム・プロジェクト、具体的に申 し上げますと、遺伝子解析による疾病対策・創薬に関する事業の倫理問題、個人情報保 護の問題を今後御議論いただきたいと考えております。よろしくお願い申し上げます。 ○高久部会長  そういうことですので、よろしくお願いします。  これで本日の部会を終わらせていただきます。 (了) 問い合わせ先 厚生省大臣官房厚生科学課 担 当 宮本(内線3804) 電 話 (代表)03-3503-1711 (直通)03-3595-2171