99/11/16 公衆衛生審議会精神保健福祉部会議事録 公衆衛生審議会精神保健福祉部会 議 事 録 厚生省大臣官房障害保健福祉部精神保健福祉課 公衆衛生審議会精神保健福祉部会議事次第  日  時  平成11年11月16日(火) 10:00〜12:15  場  所  厚生省本館2階共用第7会議室   1 開 会   2 議 事    (1)応急入院指定病院について    (2)精神病床のあり方について   3 閉 会  〔出席委員〕                                   高 橋 部会長   北 川 委 員  吉 川 委 員  浅 井 委 員  生 田 委 員   池 原 委 員  伊 藤 委 員  大 熊 委 員  窪 田 委 員   佐 野 委 員  白 倉 委 員  仙 波 委 員  西 島 委 員   新 田 委 員  牧野田 委 員  町 野 委 員  吉 澤 委 員 【部会長】  公衆衛生審議会精神保健福祉部会を開催いたします。よろしくお願いします。  それでは、初めに本日の委員の出欠について事務局からご報告をお願いいたします。 【重藤補佐】  本日は精神保健福祉部会委員23名中17人の委員にご出席いただいております。定数の 過半数を満たしておりますので、部会の開催は成立いたしております。  なお、本日欠席される旨のご連絡いただいている委員は、阿彦委員、木下委員、小西 委員、高杉委員、冨永委員、谷中委員の5名でございます。また、河ア専門委員も本日 欠席となっております。  以上でございます。 【部会長】  ありがとうございました。それでは、議事に入ります前に、事務局から本日の配付資 料の確認をお願いいたします。 【重藤補佐】  本日は資料を5部、参考資料を用意させていただいております。  資料No1、「厚生大臣が定める行動の制限及び処遇に関する基準等について」、これ は前回の部会の資料と同じものでございます。  資料No2、「医療審議会『医療提供体制の改革について(中間報告)』」でございま す。これは概要と本文がついてございます。  資料No3、「精神病床等の在り方に関する検討部会報告書」というものでございま す。  資料No4、「公衆衛生審議会精神保健福祉部会『精神病床のあり方に関する意見抜 粋』」ということで、この部会で以前に議論された内容の意見の抜粋でございます。  資料No5、「精神病床の新たな機能区分の設定について」ということでございまして これはこれまでの当部会の議論をもとに、本日の議論のためのメモとして作成をさせて いただいております。  参考資料としまして、「精神障害者社会復帰施設の設備及び運営に関する基準につい て(取りまとめ骨子)」というものを用意させていただいております。これにつきまし ては、前回の資料と同じものでございます。  それから、資料集ということでお出ししています。この資料集につきましては、以前 この部会で配付した資料と同じものでございます。  以上でございます。資料等、過不足がありましたら事務局までお申し出いただきたい と存じます。 【部会長】  ありがとうございました。よろしゅうございますか。  それから、佐野委員から1枚紙で「措置診察のための移送についての問題点」という ご意見いただいていますけれども、これは皆さんに配付させていただきましたが、この 問題については、また後日議論する機会がございますので、そのときのご参考にしてい ただければと思います。  それでは議事に入りたいと思います。前回の部会におきまして、福祉分野と医療分野 の両専門委員会の報告につきましてご審議いただきました。そのうちで社会復帰施設の 施設基準に関する取りまとめの骨子、また医療分野の取りまとめの骨子のうち開放処遇 の行動制限、移送までを終了しております。しかしながら、医療分野の専門委員会報告 のうちで、応急入院指定病院の基準につきまして、これには前回時間がなくて審議でき ませんでした。したがいまして、本日はまず応急入院指定病院の基準から審議をお願い したいと思います。  なお、本日は議題2の方で、精神病床のあり方につきましてご議論いただくことにな っております。その中で厚生省健康政策局総務課長さんに、10時半ぐらいになるかと思 いますけれども、お呼びしております。その関係、また総務課長さんのお話の中にも出 てくるかと思いますけれども、そろそろ「精神病床のあり方」という非常に重要な問題 でございますけれども、当部会としての意見を集約して医療審議会の方にお返ししなけ ればならない、そういう時期になっております。本日は主としてそちらの方の議論に時 間をかけたいと思いますので、最初の議題の1は30分程度を目安としてご議論いただけ ればありがたいと思います。  それでは、事務局からご説明お願いします。 【重藤補佐】  それではご説明させていただきます。座らせていただきます。  資料No1でございます。「厚生大臣が定める行動の制限及び処遇に関する基準等につ いて(取りまとめ骨子)」というものがございます。その中で5ページからでございま す。  応急入院指定病院の基準ということで、まず(1)で基本的な考え方をお示しさせて いただきます。 ○ 応急入院指定病院に指定された病院においては、常時、応急入院のための適切な医 療及び保護を確保するための診療応需体制を整えておくべきである。 ○ 都道府県においては、適切な入院治療が提供できるよう2次医療圏を勘案し、その 体制を整備すべきである。 という基本的な考え方を踏まえ、(2)で、応急入院指定病院の指定基準についてとい うことでお示しをしてございます。 ○ 応急入院と、法第34条に基づく医療保護入院のための診療応需体制が取れると認め られる基準とするべきである。 ○ 具体的な基準については、次のとおりとするべきである。 1 応急入院の際に、指定医1名(オンコールを含む)、看護婦等3名(オンコールを 含む)が診療応需できる体制にあると認められること。 2 予め定められた日に、応急入院者のために1床以上を確保できると認められるこ と。 3 CT、脳波計、酸素吸入装置、吸引装置、基礎的な血液検査を行うことができる設 備等により、必要な検査が速やかに行われる体制にあること。 4 指定医2名以上が常勤で勤務していること。 5 看護基準 4:1。 6 医療法の人員配置基準を満たすこと。  となってございます。以上でございます。 【部会長】  ありがとうございました。ただいまの説明に関しまして、ご意見、ご質問ございます 方は、どうぞ順次発言をお願いいたします。どうぞ、伊藤委員。 【伊藤委員】  この議論に入る前にちょっと確認しておきたいことが1つあるのですが、前回幾つか 議論があった中で、通知の範囲で細かく決めなければならないことで幾つか私気になる ところがあるのです。その議論は後でしていただけるのか。佐野先生の先ほどの件も含 めまして。 【部会長】  通知その他に関する細かいことは後日また機会があるということです。 【伊藤委員】  後日。 【三觜課長】  後日です。 【伊藤委員】  それでは、早速この問題に入らせていただきます。まず応急入院指定病院の基準なん ですが、基本的な考えについては、私はこのとおりでよろしいと思います。問題は指定 基準の具体的な中身で、「あらかじめ定められた日に、応急入院者のために1床以上を 確保できると認められること」ということは、結局その日以外は満床であっても構わな いというふうに解釈できるわけですね。つまり1床もあいてない状況が続いていても、 その日だけあいていればよろしいというふうに解釈してよろしいのですね。 【吉川委員】  これはむしろ課の方からお答えいただいた方がいいかもしれませんが、私たちの議論 の中では、決してこれは、いわゆる順繰りに回していこうということではなくて、それ ぞれの病院が今おっしゃるように、1床あいていることが大事であって、すなわち応急 指定病院を増やしておいて、そしてできるだけ診療に応需してもらえるような体制をと りたいというのが、私たちの専門委員会の考えでした。  したがって、今おっしゃった意味、それでよろしいかと思います。 【伊藤委員】  これは本人の意志を無視した移送ということですから、ある程度レベルの高い医療を やっているということが大事で、それは恐らく基本的な考え方の一番目に、応急入院の ための適切な医療及び保護を確保するための診療応需体制を整えておくということに入 っているのだろうと思いますが、具体的なところになって、あらかじめ定められた日だ け1床ということが、どうもそこで突然医療レベルが下がる印象を与えてしまうんです ね。  といいますのは、全国の精神病床の利用率は、たしか今93%ぐらいだと思いますが、 平均すると常に100床に7床は普通のレベルの病院であればあいているはずなんですね。 したがって、その日だけ1床あいていればということになりますと、逆にレベルが相当 下がってしまうのではないかということ。  それから、利用する立場から言えば、十分な調査をして、その上でなかなか医療にか かれなかった人を医療に持っていくという制度なわけですから、時間的な余裕があるの で、救急当番のようにある日だけ、どうしてもその日に運ばなければならないというこ とはないはずなので、「あらかじめ定められた日」というのが医療レベルの低い病院に まで指定するということになる。そういうおそれがあるのではないかという読み方にな っちゃっているんですが、その辺どうでしょうか。 【吉川委員】  伊藤委員のおっしゃる意味はわからないでもないんですけれども、私たちの専門委員 会の中の議論では全くそれは出ませんでした。それはなぜかと言えば、もともとしばり がかけてあって、そこでレベルは固定しようとしたわけですね。レベルは固定した上で これに該当するところはみんな立候補してもらうんですね。そして応急指定病院として 指定させてもらうということを議論したわけですから、すべて病床があいている病院に どこかへはめ込もうなんていうことを考えていたわけではありませんので、今、伊藤先 生が言われたのは、当時の専門委員会の中での議論とはちょっとずれているような気が します。 【伊藤委員】  「あらかじめ定められた日」というのが輪番制という印象で私が受け取っているもの ですから。 【吉川委員】  そういうふうに受け取られていることは私もよく承知しています。何回も専門委員会 の中で話し合われたのはそうしたローテーションで輪番制をとるという意味ではないと いうことの確認なんですね。ですから幾つかの応急指定病院があったときに、そこのと ころでたまたまそこにある1床があいているときには、そこのところを使わせてもらう 原則がそうなっています。もちろんそのときには患者さんの出身のところにより近いと ころとか、ほかの条件はいろいろあると思いますけれども、いずれにしても、応急指定 病院が今四十幾つか六十幾つしかないぐらいの現状からは、もう少し事態を改善したい ということがこの議論のもとでございましたので。 【伊藤委員】  輪番制ということに結びつかないということが前提であれば、私はやむを得ないと思 います。ただ、実際問題としてそうであれば、この条項は要らなくなる。といいますの は、普通の医療、適切な医療をやって常時入退院があるところであれば、1床は常にあ いているのが普通でないかと。これをなぜつける必要があったのか。 【三觜課長】  この1床を確保するという意味で、伊藤委員の発言、ちょっと理解しかねるのは、病 床利用率の低い病院はいい病院で、 100%近く病床を利用している病院は質が悪いとい うように聞こえるのですけれども、現実に今日本のアベレージが92.5%ぐらいです。し たがって、ほぼ 100%超えている病院は論外ということで、1床を確保するということ は精神科救急なんかでも、やはり入院を断る一番の理由として「満床です」という断り 方が一番多いものですから、そういう意味合いにおきまして、1床必ずあけておけば断 れないだろうということも含められているのではないかと私は解釈するんです。  要するに満杯のところに想定してない。昔と違いまして、今は病床利用率下がってま すから、この辺は、 365日1床あけておけと言うと、例えば 100床の病院が99床しか使 わせないのかという反論がまた来るんですね。使わない日も含めて1床分どうしてくれ るのだという話につながりますので、定められた日に1床だけあけておいてくださいと いうことを言っているわけで、実際は九十何%の世界ですから、その辺は余り心配され なくてもよろしいのではないかと思います。 【伊藤委員】  わかりました。ちょっとこの表現が、先ほど言いました輪番制とか、その日だけ1床 あければいいのではないかというような印象を受けてしまいますので、今課長のお話の 意図であれば、本当につける必要があったのかどうかというのがむしろ疑問になってい るんです。基本的な考え方に沿った病院であれば、どこかここか1床ぐらいは応急入院 があったときにあけられるはずだと。この基準があることが誤解を生むのではないかと いうことで、表現を変えていただければと思います。 【部会長】  ほかの方、ご意見ございますか。 【大熊委員】  文章というのは一遍出てしまえば、それを普通の日本語読解力によって人は読むわけ ですので、これを読めば、やはり輪番制だというふうにとるわけで、それにいつも吉川 先生が出てきて、これはそういう解釈じゃないよというふうに言うわけではないので、 文章そのものが輪番制を否定しているようにした方がよろしいと思います。体の方の救 急でも輪番制をとっているための無益な死というのがすごく多かったりして問題になっ ておりますので。 【滝川補佐】  座長。 【部会長】  どうぞ。 【滝川補佐】  事務局から若干補足させていただきますと、吉川委員の座長されていた専門委員会で の議論の中で、必ず輪番制をとらなければいけないとか、絶対に輪番制はだめとか、そ ういう議論ではございません。輪番制もとれる体制にしておくということでございま す。 【部会長】  これは医療関係の方は関心がおありかと思いますけど、いかがですか、医療関係の 方。どうぞ、西島委員。 【西島委員】  何のために移送制度ができたのかということをまず前提に話をしないといけないと思 うんですよ。移送制度の移送先が応急入院指定病院であるというところが今現実的に六 十幾つしかないわけですね。そうするとかなり遠くへ患者さんが移送されていくわけで すよ。それがいいんですか。現実的に考えれば、そういう体制が整えられるところであ ればいいですよ。ところが応急入院指定病院そのものは六十幾つかできてないわけで す。だから、もっと数を増やさなければいけない。数を増やすときに、いつも看護婦を 置かなければいけない云々ということが現実的なのかどうか考えなければいけないわけ です。場合によっては輪番制といってもみんなの病院回すわけではないわけですから、 少なくとも質の担保はしているわけです、施設基準の中で。質の担保をしている中で、 初めてその患者さんに一番近いところへ移送していくという考え方で我々は議論をして まいりましたので、先生の話を聞きますと、何か質の低いとか質の高いとか言われます けれども、質はきちんと担保しているんですよ。  何を根拠にして先生は質が低いと言われるんですか。非常にこれは不愉快です、はっ きり申し上げて。 【伊藤委員】  一番患者さん方が心配されているのは、あるとき応急入院で移送された場合に、自分 で病院を選ぶことができないわけですから、ある程度のレベルは絶対保たれてなければ ならない。そのレベルが、例えば看護基準4:1とか、指定医の数とか、これは措置入 院の指定病院の基準と同じですよね。  そういう意味では、措置入院の指定病院それ自体が無理して看護基準満たしてなかっ たり医師の基準を満たしてないときでも指定せざるを得ない状況にあるわけですけれど も、少なくともこの移送制度ができた以上、レベルを上げる方向に基準を決めておいて どうしてもその基準が満たせない地域については、特例的に基準を下げても仕方がない というふうな決め方にした方がよろしいのではないかということです。 【西島委員】  我々が議論やった中では、先生が今おっしゃった本人が行きたい病院があれば、その 病院が受けてくれれば、それがいいわけですよ。本人がここの病院へ行きたい。だけど あなた、応急入院指定病院しか行けないよという話ではないわけですよ。そこの病院が 受けてくれるのであればいいわけですよ。ただ、現実的にそういう病院が受けてくれな いという現実があったからいろいろ問題があったわけでしょう。  ですから質の担保はきちんとしているわけですから、先生がおっしゃったのは、質の レベルが低いとか云々というのは非常に民間病院をばかにした言い方ですよ。これは絶 対この発言取り消してくださいよ。 【伊藤委員】  一般論として言っているわけで、今具体的にどういう病院が質が悪いとか言った覚え ありません。 【部会長】  質に関してはほかの項目である程度担保されていることだろうと思いますので、質を 上げるという本来の趣旨は満たされるのではないかと思いますが、いかがですか。よろ しいですか。 【伊藤委員】  一番気になっているところが、先ほど言った2番目の「あらかじめ」のところなんで すが、この表現の問題、誤解されないようにということが1つ。  それから、もう一つ、これから医療法の問題が論じられて、病床のあり方が論じられ るわけですね。どういう病院が応急入院の指定病院になるべきかというのは、次の医療 法の中で病床類型か何かが定まってきたときに、もう一度論議していただくということ で、今の時点では、先ほどの「あらかじめ」のところが、私としてはやはりひっかかる と言うことだけ申し上げておきます。 【部会長】  先生、恐らくこういう規定は、実際スタートしてみてからいろいろ見直しということ も必要になると思いますので、今ご意見伺ったところでは絶対的にこれを直さないとい けないというような話でもないようですので、一応専門委員会の意見を尊重して、これ でひとまずスタートということでいかがでしょうか。 【大熊委員】  これをなぜ入れるかという理由がもう一つよくわからない。なくていいような気が文 章としてわかりやすいような気がする。 【三觜課長】  それは先ほど説明したように、一般的に受けたくないときに「満床ですから」と言わ れちゃうと、本当にそこが満床かどうか、我々は調べるわけにいかないんですね。病院 の方が満床で受け取れませんと、そういう断りを防ぐという意味も含めて書いていま す。要するに応急指定病院たるものは、必ず患者さんを受け取ってくれるという意味も この言葉には含まれているわけです。 【部会長】  仙波委員どうぞ。 【仙波委員】  この問題ですが、実際には応急病院は数が少ないですね。それを増やしていかないと 対応できない。そのときに実際言うと、応急輪番制の制度もできるというふうにしてお いてもらった方が、例えば2次医療圏に2つぐらいあって、AとBも、きょうはそちら で、きょうはこっちだということの融通もきくようにしておいた方が実際的には運用の 幅がスムースですね。  重要なことは宙に浮かないように、その患者さんがどこかの医療機関に結びつけると いうことが重要なので、Aに行くかBに行くかは問題ではない。そのときに受ける方と しては、常時あけているというのはかなりロスも多いし大変なんですが、例えば2つあ った場合、2週間ずつでもいいし、あるいはもっと別な方法もあり得るのではないかと いうことで、だから輪番制もあり得るということで、常時あけてもらうといったら 365 日全部あけなくちゃいけませんので、こういう意味ではここをそのまま残しておいて、 実際は常時やった方がそれは先生おっしゃるようにいいのかもしれませんが、必ずしも 日本全体がそういう状態にはならないことも可能性があります。 現実に救急も輪番制で、輪番制の当番が当たったとしても、きょうは保護室もあいて ないので、そこをもう一度救急でやってください。ほかの病院でやってください。それ でまたこちらへ戻ってくるというふうなシステムをやっているところが、実際的にはむ しろ体制づくりにはいいのではないかと思いますから、このまま残しておいてもいいの ではないかというふうに私は思います。 【部会長】 現実的な状況を見ると、ある程度必要な場合もあるということでございますね。どう ぞ、白倉委員。 【白倉委員】 医療の現場の方の立場から申しますと、確かに仙波委員のおっしゃること、それから 三觜課長のおっしゃったこと、非常に一理ございまして、今六十幾つしかできてないと いうこと、この現実を踏まえて、できるだけ速やかにそういう病院を、少なくとも手を 挙げていただく病院を増やすという形のことが非常に必要ではないかというふうに考え ています。1年(365 日) 1床以上確保しろと言われたら、私もちょっとどうするかと 思って迷う部分も出てまいります。  そういう意味では、少なくとも指定基準は、後で改正することもいずれは可能になる だろうと思いますので、部会長がおっしゃられたように、当面はこれを入れておいてい ただいてスタートするというのが現実的な対応ではないかというふうに考えます。 【部会長】  どうぞ、窪田委員。 【窪田委員】  診療所や我々お願いする側からしても、三觜課長おっしゃったみたいに確かに断ると きの口実がやはり「満床です」というのが一番多いんですね。ですから、これができて も、この文句がなければ、結局「満床です」で全部終わっちゃって、結局機能しないと いう危険があるだろうと思います。そういう意味ではこの1文句、1床確保するという のは重要だと私は思います。 【部会長】  ありがとうございました。 【伊藤委員】  最後によろしいですか。 【部会長】  手短にお願いします。 【伊藤委員】  お話聞きまして、私の応急入院に対するイメージが、措置入院とか救急とはちょっと ニュアンスが違って、それほど緊急性の要件はないんですけれども、本人がなかなか病 院を受診していただけないという方に事前の調査をして、じっくりと事前の準備があっ た上で、応急指定病院に移送するというふうに考えておりました。皆さんのお話だと、 かなり緊急の事態を想定して、そこのイメージの差が相当あるということが今よくわか りましたので、お願いしたいことは、ぜひこれをやってみて、その上でもう一度どこか で組み直す必要があるのではないか。今随分ずれがあるというのがわかりました。  そういう意味では、皆さんこれに賛成される方はかなり緊急の事態を想定されていて 事前調査とかじっくり保健所の方がかかわってという事態とちょっと違うことを想定さ れているのかなと思って、この辺だけ最後につけ加えておきます。 【部会長】  そうしますと適宜見直す必要があるだろうというようなことを意見として。 【伊藤委員】  はい。 【三觜課長】  今、極端におっしゃられたので、緊急を要するケースも想定しています。前者のふだ んの保健所などの活動の中で説得に応じなくて、やはり無理やり運ばざるを得ないよう なケースもじっくり時間かけてやるケースと時間をかけれないケースとそれぞれいろん な場合を想定しております。できるだけふだんの活動の中で説得を試みて、やむを得な い場合とか突発的に起こることも含めて、あらゆる状況に対応できるようにしたいとい う考えでございます。 【生田委員】  質問よろしいですか。 【部会長】  では手短にお願いできますか。 【生田委員】  (2)の 5のところで、「看護基準 4:1」と出ておりますけれども、こういった 応急入院の性格上から、緊急性と救急治療といったことと、それから、やはり様々な病 態に対応すると。その周辺にいらっしゃる家族とか関係者への安心感、ご本人の心の安 心感を与えなければならないなど4:1では基準が低過ぎると考えます。  資料に医療審議会の一般病院の中の中間報告で急性期の治療ということで 2.5人とい う基準が出されておりますが、精神科の応急入院でも同様に2.5 :1が相当すると考え られます。この問題は次のところでの議論とも絡んできますので、ここで決めてしまわ ないでほしいと考えておりますが、いかがでしょうか。 【部会長】  今の点について、吉川委員いかがですか。 【吉川委員】  現在少なくとも基準として示されているものは、先ほどもちょっと話出ました指定病 院ですね。それを下回ることだけはさせたくないのははっきりしてますから、とりあえ ずこういうところでおさめたということでございまして、病床問題やきょうも含めて、 これから議論が進むことでしょうから、それが進んだ段階でまた再考することはあり得 ると思いますが、専門委員会の中ではこれで現在のレベルを下げないということで話し 合われたということです。 【部会長】  いかがでしょうか。むしろこの基準に到達すべく努力する病院が増えるということも 期待してだと思いますけれども、現実としてはなかなか厳しい面があるだろうと思いま す。 【生田委員】  今、吉川委員がおっしゃられたように、今後の病床のことに合わせて人員の配置基準 のところでもう一度議論していく中で、ここにまた戻っていただければありがたいとい うふうに考えています。 【三觜課長】  病床の話は今後の話でありまして、この指定基準は来年の4月から適用しなければな らないという時間のずれがございますので、病床の方が決まらないとこれも決まらない ということですと、現実動かせなくなりますので、そこの辺は、先ほど来、座長が申し 上げていますように、この基準は運用してみて問題があれば、また将来今後手直しする 可能性もありますので、いずれにいたしましても、4月の新基準として、これはこの場 で先生方のご了解を得ていただかないと、来年の4月から動かせなくなっちゃうという こともありますので、ご理解いただきたいと思います。 【部会長】  そういう現実的な問題があるようですので、適宜見直すということは非常に必要だと 思いますので、いろいろな条件が今後見直されていくだろうと思いますので、ここでは それをご了承いただけませんでしょうか。 【生田委員】  資料の中で、現在精神病院の中でとられている基準などを見てもかなり高いところが 多くなっておりますし、実態調査の中でも2:1とかという形で急性期の治療をやって いるところでは見受けられます。 【部会長】  非常に少ないですけれどもね。 【生田委員】  かなり実態とずれている数字になってらっしゃると思うんですけれども、そういった 点で多少上げる。例えば3:1とか、そういったご考慮はいただけないものでしょう か。 【西島委員】  議論の中で、これは最低基準なんですよ。ですから多ければ、それだけ職員もそうい う意味では余裕持って対応できるかもしれません。それはわかりますが、とにかく数を 増やさないと、制度はできたけど、動かないということがありますので、最低基準とし てこれをやったわけです。今の精神の特例が6:1になっていますよね。これは4:1 ですから、これは違うわけです。これは最低基準です、もう一度申し上げますが。  今、委員がおっしゃったようなことでいきますと増えない。だから現実的な、先ほど からいろんな委員の方がおっしゃっていますように、まずスタートさせて、この制度を 円滑にしていかなければいけない。そのためには応急入院指定病院の数を必要な数、増 やしていかないとだめだということで実は4:1。これは現行の基準を1つも下げてい ません。 【三觜課長】  看護基準問題になっていますので、ちなみに私どもの把握してます精神病床の看護基 準ですが、2.5 :1以上の病床数は全体の1%しかございません。それから、3:1以 上ですと19%。ちなみに4:1でとってみますと約40%の病床が該当する。ということ で、半分以上が4:1ということで、看護基準で見れば該当しないということになりま す。ちなみに現在の応急指定病院のアベレージが大体3:1ぐらいの病院になっていま す。  したがいまして、4:1という基準である意味では相当セレクトされるのではないか と考えています。 【部会長】  よろしゅうございますか。 【生田委員】  ありがとうございます。一応4月出発ということで、最低を守ったということで理解 できます。ただ、この入院数の短縮と社会福祉施設の整備ということでかなり在宅で可 能な方々を、できるだけそういった支援をしながら在宅に帰そうという法の精神の中で これから出発するわけですので、その出発した時点の中で、またこの病床数を議論する 中で、その辺のことを改めて議論していただければ、4月1日ということと、以後実状 に合わせて見直していくということでのご理解いただければ了解します。 【部会長】  今後必要に応じて見直していくことは非常に重要なポイントだと思いますので、ほか にも議論する点はおありかと思いますが、そういうことを踏まえまして、この応急入院 指定病院の基準についてはお認めいただいたということでよろしゅうございましょう か。  前回、私の方に一任されております附帯意見ございますので、附帯意見を配付してい ただけますか。                 (附帯意見配付) 【部会長】  それでは、ただいまの意見を加えて附帯意見を作成いたしますので、5分ほど休憩い たします。                  (休 憩) 【部会長】  専門委員会取りまとめ骨子に対する精神保健福祉部会附帯意見(案)でございます。  精神保健及び精神障害者福祉に関する法律等の一部を改正する法律の施行にあたって は、下記の点について十分配慮されたい。                                        記 1 精神障害者社会復帰施設における面積基準、職員の配置等施設の在り方については 実態を踏まえた上で検討が行われる必要があること。 2 移送の際の具体的な手続きについては、移送される者の人権に配慮して定めるこ と。  これは前回ご承認していただいた分でございます。それに加えまして、今回の意見を 踏まえて、以下の文章を加えたいと思います。  「応急入院指定病院の基準については、整備状況等を踏まえ、適宜必要な見直しを行 っ ていくことが求められる。」  以上でございます。  よろしゅうございましょうか。異議ございませんですか。                (「はい」と声あり) 【部会長】  それでは、お認めいただいたこととします。どうもありがとうございました。  それでは、次の議題に入りたいと思います。議題2は、「精神病床等のあり方」につ きまして、冒頭にもお話しましたけれども、そろそろこの問題について、当部会として の意見を集約して医療審議会にお返ししなければならない時期でございます。本日は結 論まで出すことは非常に難しいと考えますが、次回取りまとめを行いたいと思います。 本日は委員の先生方にはその辺をご認識いただきまして、実質的なご意見をちょうだい できればと思います。  まず、精神病床のあり方を議論する前に、医療法の全体の流れについて理解しておく 必要があろうかと思いまして、本日、医療法を所管しておられます厚生省健康政策局の 総務課長さんをお呼びしておりますので、課長さんどうぞよろしくご説明のほどお願い 申し上げます。 【角田健康政策局総務課長】  健政局総務課の角田でございます。よろしくお願いいたします。  医療提供体制の改革ということで、医療審議会の方でずっと議論しておりまして、そ ういった状況をご説明するということでございます。資料No2でございますけれども、 医療提供体制の改革は、実は資料No2と書いてあるものは、医療審議会で昨年の9月30 日から医療提供体制の改革の問題を議論していただきましたけれども、ことしの7月1 日に中間報告というのが出て、そのときまでにまとめられるところをまとめたというも のでございます。その中身のご説明と今後の医療審のスケジュールなどをご説明したい と思います。  資料No2でございますけれども、ここでご承知のように、医療提供体制の改革は三本 柱ということになっておりまして、入院医療を提供する体制の整備ということで、いわ ゆる今その他病床ということになっておりますけれども、そこを急性期のための病床と 慢性期のための病床に区分するという考え方でございます。  2番目が情報提供の推進ということで、診療情報の開示という問題と広告規制の緩和 ということでございます。  3番目が医療の質の向上ということでございまして、医療従事者の資質の向上という ことで、制度改正に関係するのは、臨床研修の必修化ということを考えているというこ とでございます。  以下、特に本部会で関係が深い病床の見直しということにつきましてご説明させてい ただきたいと思います。  お手数ですが、資料No3というのがあるかと思いますけれども、参考資料というのが ございまして、8ページですが、ここに現行の病床がこうなっているという図がござい ます。これは大分前の資料でございますけれども、今の法律上は「その他」の病床、い わゆる一般病床というのは「療養型病床群」というのが特別に出ておりまして、長期の 療養する者を収容する一群の病床であるという定義になっていますけれども、そこで病 室面積が広くて人員配置基準値が若干ほかと違うとこんな形で、点線で区分されていま す。  実は医療法上の病床というのは、ここにある一般病床以外に、ご承知のように精神病 床と結核病床、感染症病床、そのほか3つあるわけでございますけれども、今回一般病 床で考えているのは、精神とか結核と同じような形で区分しようということで新しい病 床区分というのがございますけれども、「急性期病床」、「慢性期病床」とこんなこと が基本的な考え方でございます。  実はこのページで下の方で若干変わってきておりますけれども、医療審の過程が変わ っているのは、特に「平均在院日数」。(2)の「新たな病床区分の基準の概要」の下 の方に「平均在院日数」という区分がございますけれども、これはこういうことは診療 科によって平均在院日数は随分違いますので、その辺を一緒にするのもいかがなものか ということで、今「在院期間の目安」というふうに変わっておりますけれども、基本的 には8ページであらわしたものを基本といいますか、論議のスタートとしてやってきた ということでございます。  それで、病床区分のお話でございますので、概要版ではなくて、医療審議会そのもの の報告、資料No2の3ページめくったところにまた1ページというのがございまして、 6ページに「一般病床の在り方の見直し」ということで「基本的な考え方」で、今の一 般病床というのはいろんな人が入っていると。それで短期間の集約的な医療を必要とす る患者グループと長期にわたる療養を必要とする患者グループに大別ということ。こう いったグループは特性とか非常に異なるから、提供される医療サービスも変わってくる だろう。それに着目して一般病床としては、急性期の患者が入院する病床を主として慢 性期の患者が入院する病床に区分する。そして機能分化を図り、それぞれの病床におい て提供する医療サービスにふさわしい人員配置基準と設備構造基準を設定する。こうい うのが基本的な考え方でございます。  それで尽きるわけでございますけれども、 2の「新たな病床の在り方」というのは、 急性期患者のための病床というのは、集中的な医療を効率的に提供することが求められ るだろうと。そのためには専門スタッフを充実するという考え方でございます。  先ほどちょっと触れましたけれども、在院期間について一定の目安を設けて病棟管理 上の目安にしようということでございます。  慢性期の患者のための病床につきましては、長期の入院にふさわしい良好な環境とい うことでございまして、そういったもの。これは現行の療養型病床群がありますので、 それを同じような基準でいくべきであるか、こんな考え方でございます。  実はこの中間報告は、具体的な数値が入っておりませんで、その辺は今後詰めていこ うということになっております。  次のページをちょっとお開きいただきたいのですが、精神病床と結核病床につきまし ては、現行の一般病床の在り方の見直しに併せて、それぞれの在り方を踏まえた検討を 別途行うべきと、こういう医療審議会の意見でございます。  これを受けて、皆様方ここで議論していただきたい、こういう流れであるということ だと考えております。  病床区分の話は今申し上げたところが内容でございまして、それ以外のところにつき まして、若干補足して説明させていただければ、概要版の方に戻っていただきたいので すが、資料No2の最初の方でございますが、その2ページでございまして、まず医療計 画は見直すということで、区分に応じて見直すということでございまして、 2の「新た な病床の在り方を踏まえた見直し」ということで、ここは実は2段階でいこうという考 え方でございまして、まず医療計画。私ども全体と呼んでいますけれども、今の一般病 床としての必要病床の算定をまずしておく。それで、慢性期、急性期の病床が各地域に おいてバランスがとれていくということ。それを受けた後で、それぞれ必要病床数を算 定していこうという考え方でございます。  それから(3)「その他」につきましては、4つあろうかと思うのですが、最初は必 置規制、選択施設とかというのもございますけれども、医療法上病院には法律で必置す るものがあるのですけれども、今の目で見て必要なものかどうかということで、規制緩 和の観点も踏まえて必要な見直しを行うというのが第1点でございます。  2番目が、現行では人員配置基準を満たしてなくても命令はかけられないということ になっています。指導ということでございますけれども、この辺は改善命令等の措置を 講じて適正な入院が託されるようにするということでございます。  3番目が非効率な病床。これは医療法上は 200床の許可を受けているけれども、現実 は100床で運用しているのがたまにあるわけでございます。そういうものについても100 床分、使ってない分はほかの人に使っていただく、あるいは過剰地域では減していただ く、そんなような措置がとれないかということでございます。 4番目は在宅医療等の充実、そういったことが指摘されたということでございます。  以上が、第1の柱の一般病床の在り方の見直しの中の問題でございます。「入院医療 を提供する体制の整備」ということでございます。  2本目の柱が「情報提供の推進」ということでございまして、医療審でいろいろ意見 が出たわけでございますけれども、1つ基本的な考え方としては、医療従事者と患者の 双方が診療情報を共有し、患者自身が治療に積極的に取り組んでいくことが必要であ る。  そのためには、原則として診療記録そのものを示していくことが重要である。こうい う基本的な考え方でございます。  「当面の取組み」といたしまして、実は3点セットと言っておりますけれども、医療 従事者の自主的な取組み。これは実は日本医師会で、診療録開示のガイドラインをつく って、それを守っていくというようなことが表明されていますので、そういった自主的 な取組みということ。  診療録を開示するにしても診療録自体のいろんな条件整備が必要だろうというのが2 つ目でございます。  診療録開示をするというのは、広告に追加するということ。  こういった3点セットでやっていくということでございます。  問題になりました法制化につきましては、両論併記ということで引き続き検討という ふうになっております。  それから、「広告規制の在り方」につきましては、当面の取組みということでござい ますけれども、要するに客観的な事実や中立的な医療機能評価機関が行う医療機能評価 の結果、そういった検証が可能な事項については、幅広く広告すると。診療内容に関す る事項など検証が困難なものについては、慎重な検討を加えた上で、個別に広告しうる 事項としていくことが望ましい。こういうご意見でございます。  最後の柱でございますけれども、「医療の質の向上」ということで、これは先ほどち ょっと申し上げましたが、(2)の「医療従事者の資質の向上」というところで、臨床 研修の必修化ということで、これは医師、歯科医師ともに、今は努める規定ということ ですけれども、これをそういうことではなく、必ずするということで、医師法、歯科医 師法を直したいということでございます。  (3)「医療の現場における取組み」としては、いわゆるクリエーティブパスとかE BMとかそういったことを積極的に進めるということが示されているということでござ います。  こういう中間報告でございまして、これを受けて、私どもとしては、資料No2の一番 最後についておりますけれども、「今後の審議会開催スケジュール(年内)」というこ とでございまして、実は今もちょっと申し上げましたが、この中間報告は具体的にどの ぐらいに人員配置するとか、そういうことについては触れておりませんので、その辺肉 づけをしていただくということで、年内4回か5回やりたいということでやっておりま す。11月2日から、再開、第1回でございまして、あと3回行いまして、人員配置基準 とか設備構造基準、あるいは広告規制の緩和、新たな病床をどうするか、そういったこ とを決めていただくというふうに考えております。  それで、私どもとしては、医療審議会の方でも成案が得られれば、これは医療制度改 革という4本柱を立てておきました。診療報酬、薬価、高齢者医療保険制度、医療提供 4本柱がございます。その4本柱については、12年度から段階的に実施するということ でございますので、私どもは医療保険と並んで制度改正を行っていきたいということで ございます。  簡単でございますが、以上でございます。 【部会長】  どうもありがとうございました。それでは、ただいまご説明いただいた内容に関しま して、ご質問ございましたらどうぞご発言ください。何かご質問ございませんでしょう か。よろしいでしょうか。  それでは、総務課長さんどうもありがとうございました。大変お待たせして申しわけ ございませんでした。             (角田健康政策局総務課長退席) 【部会長】  それでは、これから「精神病床のあり方」ということでご議論いただくわけですが、 これまでの当部会の意見をおさらいしておく必要があると思います。事務局の方に資料 が準備されていますので、事務局からどうぞご説明お願いします。 【重藤補佐】  それでは、私から説明させていただきます。座らせていただきます。  資料No3、「精神病床等の在り方に関する検討部会報告書(平成11年1月8日)」と いうものでございます。これにつきましては、以前にも部会の資料として出させていた だいたものでございます。この部会は委員ご承知のとおり、平成10年(昨年)の9月に 「長期入院患者の療養のあり方に関する検討会」に、「精神病床等に関する検討部会」 というもものが設置されまして、その部会として数回の検討会をいたしていただきまし て、その結果の報告書でございます。この中身につきまして、若干おさらいということ でご説明をさせていただきます。  まず、この報告書の1ページでございます。「はじめに」というところで医療法の改 正が行われる予定であって、一般病床を急性・慢性というような区分をしていく。その 中で精神病床はどういったことにするのかというものの検討が必要性があるというよう なことを述べてございます。  2番の「精神病床等の現状」という中で、精神病床は特例で医師等の配置基準が別途 定められているということ。2ページに行きますけれども、33万人の方が入院されてい て、そのうち3万人が社会復帰を可能とすることを目指して社会復帰体制の整備を図る ことが示されている。  2ページの真ん中ごろでございますけれども、診療報酬制度の概要について説明され てありまして、その中で急性期治療病棟、精神療養病棟、老人性痴呆疾患治療病棟、老 人性痴呆疾患療養病棟等の現在の状況が書かれてございます。  それから、その下の方で専門病床というものの状況が、大体全精神病床の14.6%とい うような現状があるということ。  2ページの最後の方に、現状として様々な患者が同じような療養環境で治療されてい るということがありまして、それがどういうふうに今後考えていくかというようなこと が書いてございます。  3ページでございます。「精神病床等の機能区分」ということで、1)「精神病床に 求められる機能」で、いろいろな病態の患者さんがいらっしゃる中で、ニーズに対応し たケアが必要ではないかということが書いてございます。  2)の「精神科病床の区分の考え方」というところでは、4ページにまいりますけれ ども、一般は急性・慢性という分け方の考え方をとるようであると。精神はどうするの かということですが、急性期・慢性期という時間軸については精神にそぐわないではな いか。もっと総合的に検討することが必要ではないかというようなことが書いてござい ます。  4ページの3)の「精神病床の機能分化を進めるための留意点」ということで、その ような一般病床を踏まえた精神病床の病床の機能のあり方を検討していくことが必要で はあるけれども、問題点として幾つか挙げられるということで、5ページになりますけ れども、最初の方の1番から4番の中にその問題点が列記されております。こしたこと から医療法上の区分は最小限にしながらも、医療法、診療報酬というものをセットで考 えていく必要があるのではないかということが書いてございます。  5ページの4、「精神病床等の整備について」ということで、医療計画上の必要病床 数の算定は、一般は新たに見直すということとされておりまして、精神もそのような考 え方でどうしていくのかということを検討する必要があるのではないかということが書 いてございます。  6ページでございますが、そうした算定の方式の中で、精神の整備圏域は、医療計画 障害者プランとも連携を図りながら、そうした病床の算定方式、病床の整備体制を検討 するべきではないか。現行は都道府県単位になっていると。これからきめ細かにどうや っていくのかというのを検討しなければならないということが書いてございます。  以上が大体概略でございます。  それを踏まえまして、当部会でことしの2月にご議論を部会でいただきました。その 内容が資料No4でございます。「公衆衛生審議会精神保健福祉部会(平成11年2月1 日)精神病床のあり方に関する意見抜粋」という資料でございます。これは読まさせて いただきます。 ○ 基本的には、まだ精神分裂病の患者が精神病院の相当のパーセント入っているとい う現実がある。精神分裂病患者の比率はどんどん下がってきているが、快適でアメニテ ィーが高く、しかも人権が守られ、質の高い医療をうけられるようにすべき。 ○ 精神病院協会のデータでは、6カ月ぐらいで70%ぐらいの患者が退院している。残 る人たちは結果的にかなり重度の人々が残っている。 ○ 病院に残っている人が重症だとすると、国際的な格差として日本だけ重い精神病が 流行っているということを言わないと説明がつかない。国際比較からは、日本の入院患 者は多すぎており、これを重いからというのは当たらない。 (精神病床の現状) ○ 病院についてはWHOが示しているとおり、日本は病院が足り過ぎていて病院が足 りないという理屈はもうない。医師が、他の病院の3倍も患者を受け持たなければなら ないことや、看護婦も人員基準の差別があるゆえに病院に来手が集まらない悪循環を断 つべき。 ○ 問題は、周辺整備が進んでいないこと。社会復帰施設の整備が進まないので、病院 で長期療養をせざるを得ない部分がある。 ○ 全国の病床の人口万対病床数をみるとかなり差がある。病床の少ないところが治療 を受けられない患者がたくさんいるのかどうかという問題もある。現状の数が少ない県 に合わせてやっていけるのではないか。 ○ 日本はベッドが多いということもあるが、施設処遇という観点からみれば、フラン スでもイギリスでも万対50〜60となる。 ○ 長期入院で地域に帰せる人について努力しているが、3分の1が定着する程度。医 師が「帰ってくれ」と言っても一向にベッドが減らない。一方、だんだん重症者がたま る。そこでとどまってしまう。外国と比しても成績は変わらない。 ○ 公立病院が、地域に患者を帰そうということで一生懸命やって、病床が半分に減っ たということはない。社会復帰はどこかで大きな展開がないとだめじゃないか。 (精神病院の人員) ○ 病院に医者が来ない、患者が来ないのは、偏見をどう解消するかとういことに係っ ている。特に、テレビや新聞での報道は、精神障害者が事件を起こした場合、実名を出 さずに匿名とする理由に「精神病院入院歴」を記すこととしているが、これは偏見を助 長している。 ○ 現在ある様々な国が作っている差別をなくしていくべきであり、その差別の根元が この病床の特例である。 (社会復帰施設との関連) ○ 社会復帰施設については、苦労しながら施設数は増えている。問題は利用率が上が らないこと。病院から地域、あるいは社会復帰施設に出す力が弱い。3万人の方が社会 復帰施設へ移ったら3万床のベッドはカットすべき。 ○ 社会資源がないため社会的入院になっているケースもあるが、社会復帰施設整備等 の義務化がなされていないなど、地域の法制度が不備な中でも継続的な地域での医療管 理により、かなりベッドを減らしてやっている地域がある。 ○ 我々第一線でやっている者が援護寮、福祉ホームを病院の前に建てようとすると地 域住民が全部反対するということも事実。 ○ バンクーバーで一番感心したのは重篤の精神障害者も町の中に生きる権利があると いう理念。地域の中のマンパワーが60万人のところに 400人の心理やソーシャルワー カーが配置されている。私のところでは44万人のところに 140人の精神障害者がおり40 人で支えている。10倍の人数をいただければ地域で支えることができる。 ○ 社会復帰施設に行って、自分の職業を探さなければ生活できない。実際には自活し なければならないが職がなく、施設にいる障害者に対する経済的な待遇をよくしないと いくら建物を建ててもそこには行かない。国、市町村が責任を持って経済的な援助を根 本的に考えない限り移っていかない。 (これからの対象患者) ○ 今までの精神病床の考え方は、どうしても精神分裂病の患者さんを中心にした病床 のあり方という考え方。これから先の精神病院の対象患者は、様々な疾患や病態の患者 に応じられるよう、対象をもっと広げていかなければならない。広げていかないといつ までたっても偏見はなくならない。 ○ 痴呆の患者、うつ病の患者が非常に増えている。精神分裂病だけ考えていると退院 した患者数分だけ病床をカットするという議論になる。もっと幅広く議論すべきであ る。 (検討の進め方) ○ 精神病床が拡大するのではなく、むしろ量的に少なくなっても中身を充実する方向 で施策を検討すべき。 ○ 診療報酬でいろいろな施設基準が定められている。これを変えていくことにより周 辺整備をしながら、改めて将来の精神病院のあり方を考えるべき。 ○ 今は非常に重要な時期で、議論を長引かせるべきではない。今をおいて他の病気と の格差を縮めるチャンスはない。 ○ 長期入院者については、長期プランを出して年次的にきちんと進める方向でマス タープランを持たなければいけない。家族の行動をみると、病院に預け型の家族がかな り多いことも問題がある。 ○ 精神病院関係者のいうことのできない3点セットがある。すなわち、社会の偏見、 家族が引き取らない、国が金をつけない。町の中に精神障害者が暮らせるようにしてい る精神病院は存在している。家族がどんどん引き受けるという国は存在しない。同じ日 本という国の中でもできているところもあり3点セットを繰り返すのはよくない。 ○ 病床のあり方については、病院がよくなることによって偏見もなくなり、社会資源 の開拓もできるという形で検討を進めるべき。精神病院以外の隘路があるということで 議論が進まないというのはよくない。 ○ 医療法の精神科特例を解消する何らかの形で前向きな歩調を続けていかなければな らない。 ○ 病棟単位の人員配置基準の導入による総合病院の精神科病床の新たな特例の適用と いうことも十分検討すべき。せっかく急性期のよい治療ができる医療関係者を病院経営 上、役割を果たせなくなってしまうことがないようにすべき。  それから資料No5でございます。資料No5につきましては、こうした議論を踏まえて 今回こうした考え方をたたき台にして審議の中身を深めていただくということで、これ までお出しした部会の資料のメモの中を、私どもの方で、今回の議論用に変えまして出 させていただきました。この内容につきましても、読み上げさせていただきます。           精神病床の新たな機能区分の設定について                (議論のためのメモ) I 基本的な考え方  現在、医療法改正の動きの中で、患者の状態にふさわしい医療を適切な療養環境のも とで効率的に提供していけるような医療体制の確保を検討している。  具体的には一般病床を 1急性増悪を含む発症後間もない患者又は病状が不安定な患者 を対象とする急性期病床と、 2病状は安定し疾病若しくは障害を抱えている患者又は長 期にわたる医療の提供が必要な患者を対象とする慢性期病床とに機能を分化することの 検討がすすんでいる。  この検討の場において、精神病床については、その特殊性から別途検討することとさ れたところである。  精神病床については、その機能として治療水準の向上、患者の様々なニーズへの対応 社会復帰の促進等を図っていくために、患者の病態像に応じたよりきめ細かな入院治療 を提供できるシステムの構築が求められている。  このため、精神障害者の様々な病態を踏まえ、充実した専門スタッフの集中的な医療 を必要とする患者群や治療上ゆったりとした療養環境のもとで長期にわたる療養を必要 とする患者群等に、より効率的な医療を提供していけるよう機能の分化をすすめる必要 がある。  その際、精神病床等の在り方検討部会報告で提示されたように、急性期や慢性期とい った時間軸のみによる区分や重症度のみによる区分ではなく、これらを総合的に捉えた 病床区分とする。  これらを踏まえて、総合的な観点から、以下のように現行の精神病床の機能の分化を 図ることとする。  1)患者の病態に応じた人員配置基準及び構造設備基準の設定  現行の精神病床を、 1充実した専門スタッフの集中的な医療を必要とする患者群を対 象とする病床、 2治療上ゆったりとした療養環境を必要とする患者群を対象とする病床 とに機能の分化を図り、提供されるべき医療サービスの形態に応じ、それぞれにふさわ しい人員配置及び構造設備の基準を設定する。 2)病床機能の単位  病床機能の単位は原則病棟単位とする。  ただし、社会資源の地域バランスの確保や地域の疾病構造への対応を考慮すると、病 棟単位での区分が困難な病院については病室単位で区分もできることとする。 3)新たな病床機能区分への移行について  既存病床については、各医療機関が患者の病態や提供している医療の状況等を踏まえ 自主的に判断し都道府県知事に対し申請を行うことにより、新たな病床機能区分への移 行を行う。  その際、精神病床の地域偏在、医師等必要な人材の供給が十分でない実態等を踏まえ て、地域での円滑な移行が行われるよう必要な期間を設定する等、患者に対する医療の 提供に支障が生じないよう十分配慮する。 4)新たな病床機能区分の医療法における位置づけについて  新たな病床機能区分の医療法での位置づけは、精神科医療に求められている病床機能 がより効率的に提供できるよう、また、地域での疾病構造の変化などに柔軟に対応でき るよう十分配慮する。  精神病床を病床の種別の一つとする現行の考え方を踏襲し、精神病床という疾病種別 の中に新たに求められる病床機能区分を定義し整備目標を設定する方式や、新たな病床 機能区分毎に病床の種別を設定し、それぞれの必要病床数を算定する方式などの中から 精神科医療が最も効率的に機能する位置づけを行う。 5)新たな病床機能区分に基づく必要病床数の算定  医療計画における必要病床数算定式を見直し、医療計画が医療資源の効率的な配置、 医療提供体制の体系化を目指した趣旨から、必要病床数の地域間格差を是正するため、 現行のブロック値の考え方を改め、最終的な目標を全国統一値に置くこととする。  また、精神科医療が初期入院治療から社会復帰後の外来治療まで一貫性が求められる ものであること、さらにその医療資源の地域偏在のないバランスを確保する必要がある こと、障害者プランの障害保健福祉圏域との密接な連携を図る必要があることなどから 現行の都道府県単位の整備圏域から、最終的には2次医療圏を参考にしたより地域に密 着した圏域を設定することを目標とする。  その際、既存病床が新たな病床機能区分に移行するために必要な期間を十分配慮し、 当分の間は、その整備圏域を都道府県単位に必要病床数を算定する。また、新たな病床 機能区分毎の整備目標数または必要病床数の設定も当分の間、行わないことする。  本日これまでの議論の流れをご説明いたしまして、本日説明しました議論のためのメ モというものに基づいてご議論いただければと思います。よろしくお願いいたします。 【部会長】  どうもありがとうございました。大変まとまりよくおさらいをしていただいてありが とうございました。  それでは、残された時間で、議論のためのメモを中心にどうぞ活発にご議論いただき たいと思います。どうぞ順次ご発言ください。  伊藤先生、これは既に配付されておりますけれども、今、お配りしますか。それとも 最後にでも。 【伊藤委員】  皆さんに既にお配りしていますが、お持ちでない方がありましたらどうぞという意味 ですので。 【部会長】  この資料がございますが、お持ちでない方、手を挙げていただけたら、こちらから配 付いたします。全員ですね。  どうぞ、どなたからでも結構です。ご意見をどうぞ。 【西島委員】  1つだけ確認なんですが、議論のためのメモといいながら非常に具体的に書き込まれ ている。あくまでもこれは議論のためのメモであって、要するにこういう方向づけで議 論をするという話ではないということだけ確認しておきたいと思います。ようございま すね。 【部会長】  議論のためのものということで議論を進めていただきたいと思います。 【伊藤委員】  私は基本的にはこの流れには賛成といいますか、こういう方向で進んで医療法に上げ ていただきたいと思うんですが、ただ、1つ問題になるかなと思うのは、2ページ目の 医療法の中での「精神病床を病床の種別の一つとする現行の考え方を踏襲し」というと ころですが、この考え方で言えば、一般病床と同じ基準ではいかない。例えば、一般病 床では急性期と慢性期という言葉になるかどうかわかりませんが、一般病床と療養病床 と大きく2つに分かれるとしたら、精神病床もその中に含めて議論するのではなくて、 別枠でやるという意味ですね。 【重藤補佐】  別枠です。 【伊藤委員】  そこのところが議論の余地があるのではないかということが1つです。  3ページ目にいきますと、一応都道府県単位の病床の必要配置数の設定について、 「最終的には2次医療圏を参考にしたより地域に密着した圏域を設定する」となってい るのですが、当分の間は都道府県でいくというようなことが書いてあります。「当分の 間」というのが不明確なので、もう少し急いでいただくような方向が進められないかな というのが1つの私の意見です。  それから、先ほど出ました応急入院の指定が病床の偏在があってできないということ があったわけですが、そういうことを将来解決するためにも地域ごとにある程度機能が 備わった急性から慢性、いろんな種類の病棟が建つようにすることをもう少し進めてい くような表現になっていただければなと。 【部会長】  ありがとうございました。先生、最初の点は、精神病床ということを分けずに一般病 床の中へ全部入れてということですか。 【伊藤委員】  ですからそこが議論になるといいましょうか、私は理想的には精神病床を別枠でする よりは一般病床という中でやっていくようにしたい。現実の問題がまたありますので、 それはこれから議論されるのでしょうけれども。 【部会長】  今の流れでいきますと、医療法の中には一般病床と精神病床というふうに分けられる わけですね。 【三觜課長】  分けないというのはどういうことを想定されているのか、もう少し説明していただけ ますか。 【伊藤委員】  人員の配置基準とか面積基準ということ。例えば、急性期を扱う病床であれば医師の 数とか看護婦の数は、一般病床と一緒に考えていいのではないか。療養を中心とする病 床であれば、それも一般病床と人員とか面積基準は別に分ける必要があるのかなという のが、これは現実的にすぐに移行できないとかいろんな問題がありますので、その辺は 議論になるのでしょうけれども、最終的には分けないでもいいのではないかということ です。それでよろしいでしょうか。 【三觜課長】  確認しておきますけれども、一般病床と精神病床という、そういう名称も外すという 意味ですか。 【伊藤委員】  そこの名称の問題まではちょっと。具体的な中身としては同水準にして欲しい。 【三觜課長】  後者の説明だと、要するに一般と同じ面積、マンパワーにしてほしいということで、 現行の精神病床と結核病床と一般病床という区分はありながらも、マンパワーと面積基 準は一般病床と差をつけないでほしいというご意見として承ればよろしいのですか。 【伊藤委員】  確かに精神保健福祉法のしばりとか、入院させる病床を別に決めなければならんとい うことがありますから、全く同じには確かに運用上はできないのかということもあるの ですが、中身については最終的には一緒にしてもいいのではないかということです。 【部会長】  どうぞ、仙波委員。 【仙波委員】  私は精神病床は別枠で慎重に検討すべきだというふうに思います。伊藤委員は理想的 なんですが、余りにも理想的で現実論から離れているのではないかということを危惧い たします。  医療法はえてして決まれば、それは実行される法でありまして、直接に近未来10年ぐ らいを考えてみましてもかなり検討を要するのではないかというふうに私は思いますの で、別途やはり検討すべきではないかと思います。 【部会長】  どうぞ、西島委員。 【西島委員】  部会長にお願いしたいのですが、きょうマスコミの方も入っておられますので、こう いうメモが出るとこういう方向性を示したということで、あしたの新聞記事に出るはず なんですよ。これはぜひ差し止めていただきたいと思うんですね。それだけはお願いし たいと思うんですが、でないと、これはあくまでも、先ほども私が申し上げましたよう に、議論のためのあくまでもメモでございまして、私どもがこれを認めているわけでも 何でもございませんで、これからの議論ですから、それをぜひマスコミの方にお願いし てもらいたいと思います。 【部会長】  この資料の扱いに関して、今そういうご意見ですが。 【三觜課長】  オープンで結構です。 【重藤補佐】  説明をさせていただきます。西島先生おっしゃるとおり、この資料は合意事項に基づ く結論ではなくて、今までの部会の議論の流れを事務局で判断するとこういうした流れ かということで書いた内容でございまして、これは部会としてオーソライズした内容で はなくて、これをたたいていただいて部会としておまとめいただければというものでご ざいますので、これは成案ではなくてこれから議論するためのものということです。 【部会長】  これはあくまで部会が承認したものではないということは確認したいと思います。一 応議論のたたき台として参考にするという資料でございます。どうぞ、大熊委員。 【大熊委員】  資料No3の「精神病床等の在り方に関する検討部会報告」の1ページ目に、医療法に おける精神科病床の位置づけについては、その特殊性から一般病床の基準に対し特例と して別にしましたよということが書いてあります。これについて前の審議会で、その特 殊性とはどういうことかというのを事務局にお尋ねしたところわからないというお答え でありましたけれども、常識的に考えれば2つ理由はあると思います。40年前にはどの ようにして精神病の患者さんを治していったらいいかがわからないから、世の中は危険 だというので囲っておかなければいけない。ただ、囲っておくには人間も足りないこと だし、特例という名目のもとに、一般医療と差別した人員、病床の面積というのが定め られたわけですけれども、この40年間に状況は非常に変わって、お薬も出てきたし地域 精神医療も方策が見つかってきたしということで、その場合、他の医療の場合には検査 するとか、CTを使うとかいろんな医療器具がありますけれども、精神医療においては 一番大事なのは人的な問題で、一般医療以上にむしろ特例とするならば、ほかより厚く するべきが精神医療ではないかと。それでこそ患者さんはよくなって、ここにおられる 精神科のお医者さんたちも世の中から尊敬される存在になって収容所長だというふうに 思われないで済む道が開けるのだと思います。  ただ、仙波先生はかつてすごく私は理想主義者だと思って尊敬をしていたのですが、 このごろは現実主義者になられたようでとても残念ですが、私もそれを理想から少し現 実に引き伸ばせば、本当は一般病床より手厚くあるべきだけれども、それも無理だろう から、せめて一般病床並みに、特に急性期医療については一般病床並みにするべきだ と。今はそのチャンスであって、特例というようなものが40年間も続いているというの は異常で、特例というのは特別な今事情がありますからというのが特例だと思います。  もう一つ、今非常に困難になっている問題として、精神病の患者さんがほかの病気に なって手術が必要とかいろんな事態が起きていますけれども、総合病院の精神科にもこ の特例が援用されているものですから、総合病院の精神科がどんどん地盤沈下をして、 そこにおられる方がお困りになるだけでなくて、そういう患者さんを受け入れるような 状況になくて、精神病であると普通の手術や治療も受けられないという非常に差別的な ことが行われていて、この審議会では精神病の患者さんへの差別・偏見というのがたび たび語られますけれども、どこから解きほごしていったらいいかと言えば、この精神科 特例というのをなくすところから始めるのが適当だと思います。 【部会長】  どうもありがとうございました。どうぞ、吉澤委員。 【吉澤委員】  今の「特例」という言葉に関連して申し上げますけれども、私はここに多い医療関係 者の方々と比べれば全く医療と縁のないところで仕事をしておりますが、精神病も病気 の一種の意味で、こういった法律の中で特例とかいう形で扱われていることに実は極め て奇異な念を持ったというのが率直なところなんです。同じ病気であるのになせ精神科 だけ違う扱いをする必要があるかというのは、私の方の感覚で言いますと、ほかの患者 さんというのは全部自分の意思で入院しています。重篤な状態で入院される方について はその意思を確認しないまでも、病気を治すために本人がそれに反した意思を持ってい るとは通常考えずにまず病院に運び込むという形に対して、精神科の患者さんだけが自 分の意思に反して病院に入院されるという点で極めて違っていると思います。  ただ、これに関しましては、逆に自分の意思に反したのに病院に入院させられたとい う状況をフォローするための人的パワーが余分に費やされるというふうな形での法律の 定め方は正しいと思いますけれども、通常の病気についてはこれだけなのに、精神科の 場合は48:1とか逆に非常にケアとしてはレベルを低くするのははっきり言って、病気 としては同じだという感覚を持っている医療以外の人間にとっては奇異としか受けとめ られません。その点をちょっとご理解いただいて論議いただきたいというふうに思うん ですけれども。 【部会長】  特例というのは非常に奇異な印象があるというご意見ですね。 【中村(健)補佐】  部会長。 【部会長】  どうぞ。 【中村(健)補佐】  今の精神病床の特例といいますか、人員配置基準の定め方について少しご説明をさせ ていただきたいと思います。  基本的には精神病床につきましても16:1の一般病床と同じ医師対患者の配置基準が 定められておりますが、主として精神病の患者さんを収容する病室又はその病院につい ては16:1という一般病院に適用されている表示によらないことができるということで 事務次官通知が出されているということでございます。  したがいまして、先ほど大熊委員の話で、総合病院でも特例というか適用されている というお話がございましたが、現実には精神病床が8割未満の場合は医療法上は一般病 床並みの標準16:1という医師数、看護を4:1というものが適用されるという実態で ございます。  8割以上をもって主としてという言い方されておりますが、それを超えた場合にその 標準によらないことができるということで、16:1を3て割った数、48:1、また看護 については4:1ではなくて6:1というものが適用されるということがあの通知で示 されているということでございます。 【部会長】  大熊委員よろしいですか。ですから総合病院では精神病患者さんの率はもちろん8割 以下ですから、特例は認められないということになると思います。 【吉澤委員】  よろしいですか。 【部会長】  どうぞ。 【吉澤委員】  今のに対しての質問なんですけれども、現実の問題として48:1ということが大事な んであって、総合病院の場合はこういうケースがあるということは全く説明になってい ないように受けとめるのですが。 【部会長】  もう一度繰り返していただけますか。 【吉澤委員】  要は精神科について、48:1が許されているということが問題なんであって、総合病 院の場合はどうだということは全くその問題に対する答えにはなってないというふうに 理解しているのですが、いかがでしょうか。 【部会長】  先ほど大熊委員が特例があるために総合病院の中の精神科がおくれをとっているとい うご発言があったものですから、そういう事実はないのではないかというお話をしたわ けです。 【三觜課長】  大熊先生のおっしゃられたことは、精神科特例があるから総合病院で精神科がなくさ れていくと言われたんですよね。 【大熊委員】  もう少し専門家の方に話していただいた方がいいと思いますけれども、総合病院の中 の精神科の方たちが今非常な現状の中で危機意識を持っていらっしゃる。それはご自分 のためでなくて患者さんのために危機意識を持ってらっしゃるという事実を申し上げ た。 【部会長】  よろしいでしょうか。どうぞ。 【伊藤委員】  今のお話、恐らく総合病院は精神病院よりは人員配置厚く、看護婦さんにしろ医師に しろ単科の精神病院より厚く配置されているという現実があるんですね。実際さっきお 話したように特例はだめだということになってますから。しかし実際には診療報酬上は 精神病床というのは一緒に算定されますのでギャップが生じるということで非常に経営 が苦しくて肩身が狭くて病床が減ってきたりする。逆に言えば、特例が足を引っ張って いるという言い方がよろしいのかもしれません。 【部会長】  むしろその方が正しいかもしれません。 【西島委員】  その議論は私は間違いだと思うんですね。それはなぜかというと取れるものがないん です、技術料として。それだけのことです。しかも看護に関しては、新看護体系をとっ ているところが非常に多いわけですから、そうすると例えば3:1をとっている病院も 先ほどの数値から出ていますし、それぞれの病院が努力してきていることは間違いない んです。今先生おっしゃったのは間違いで、要は取る技術料が何もないんです。それを 言わないとだめです。 【伊藤委員】  結局同じことなんですが、技術料が認められてないということは、医師が少なくても いいのだということの裏返しになっているわけで、厚い医師がいて、それだけ医療が濃 いものが必要だということになれば、当然医療費もついてきたはずだと私は思っている わけです。技術料も上がったのではないかと、そういうことで特例が支障になっている のではないかとお話したわけです。 【中村(健)補佐】  事務局で補足させていただきますが、医師数についてみれば、48:1ということが精 神科の病床に対して適用されておりますが、これは主として長く療養される方、慢性期 の病気だということで設定されているのだろうというふうに理解しております。その意 味では精神科だけに限られたわけではなくて、結核病床についても考えられております し、また一般病床においても療養型病床群については同じ人員配置が適用されていると いうことでございまして、48:1が精神科に特別の今規定になっていると。他科と比べ た場合に。ということではなくて、療養体制といいますか、医療提供体制のあり方に応 じて医療法の中では16:1の世界と48:1の世界と区分されているというふうに理解し ております。 【生田委員】  看護の点から申し上げますと、私どもの経験とかいろんな事例から申し上げますと、 発症初期に非常に適切な対応をしていると、慢性化を防止するとか、あるいは慢性状態 のときで急変して、そのときにもやっぱりタイムリーに対応していくことによって、こ の悪化防止をすることができるといった、そういった経験を持っております。また、最 近話題になっております身体拘束はなるべくしないような病院の環境づくりといったこ とが話題になっておりますけれども、そういった点から申し上げれば、看護基準もやは り特に精神科の単科病院において配されているような現在の規準値ということよりも、 むしろその点から言えば、一般病床との規準と同様な考え方で私どもは考えていただけ れば大変ありがたいというふうに考えております。慢性期についても同じような考え方 を持っております。 【部会長】  そうすると一般病床は急性と慢性の2つの方向に機能分化しようとしているわけです けれども、精神科も同様に考えるべきだということですね。 【生田委員】  はい。 【西島委員】  精神が本当に急性・慢性に分けられるかというところがあると思うんですね。例えば 前回出されました資料の中で、看護のマンパワーが多ければ、これだけ短期に退院でき るという資料が提示されましたが、あれは中身は何も分析されてないんですよ。どうい う病態の方がどうなったのかということを分析しなければ、それは結果として言えない んです。どういう患者さんがそこに入院されているのか。例えば、うちが今ストレス病 棟というのがありますけれども、ここにうつ病の患者さん入って来られます。平均在院 日数は18日です。アルコール依存であれば、例えば、急性期なんて3日ですよ。振戦譫 妄がとれればもういいわけですから、あとは本人が飲みたいか飲みたくないかの問題で すよね。それが急性・慢性と言えますかということなんです。  ですから、そういうあたりを全く議論しないまま、分裂病の患者さんだけを問題にし て、それで急性・慢性を語られているからおかしいということを私どもはこの前から申 し上げているわけです。それをぜひお願いしたいと思います。 【三觜課長】  今の看護婦さんの話ですけれども、これは今私ども厚生科学研究で調査していまして 看護基準と行動制限のありようを、今生田委員のご意見は、看護基準が高くなれば行動 制限が少ないということをおっしゃられているんですけれども、その辺も今研究してお りまして、どうもそのようにはならないようなところもありますので、そこの辺は水か け論的議論になるかなという感じがします。 【部会長】  どうぞ。 【吉澤委員】  きょう配っていただきました資料集の中に、ページが22ページ前後でしょうか、「民 間病院における看護体制と社会復帰率」、23ページ「民間病院における入退院率」、24 ページ「医師・看護体制と社会復帰率」、25ページ「医師・看護体制と入退院率(民間 病院)」と、この辺の資料というのは、今看護する立場からというご質問のありました ところと関連する資料ではないかと思うんですけれども、これについて説明を厚生省の 方からしていただけませんか。 【部会長】  中村補佐お願いできますか。 【中村(健)補佐】  22ページから、この表につきましては、横の3対1、 3.5対1等は看護体制というこ とで、社会復帰された方がどのくらいいるかということで各病院について調査をまとめ たものでございます。ごらんいただきますように、看護体制が高いほど、また医師数が 1人当たりの患者数を見た場合に多いほど指標として見た場合にはそれぞれ高くなって いるということはこの図をごらんいただいたとおりでございます。 【西島委員】  この資料は非常に意図的ですよね、はっきり申し上げて。パーセンテージが1%ずつ 上げていて、それで棒グラフで高いからという話でしょう。非常に意図的としか考えれ らないです、この書き方は。 【吉澤委員】  また質問でよろしいですか。 【部会長】  はい。 【吉澤委員】  今、意図的というのがあってちょっと意味がわからないんですが、例えば25ページの 「医師・看護体制と入退院率(民間病院)」というのは、これを見ますとやはり3体1 の方が早く回復して退院されているというふうに理解をするべきではないかということ で、医療関係者以外には非常にそういう意味ではやはり人員配置がきっちりできるとそ れだけ結果が出るという資料ではないかというふうに受けとめられるんですけれども。 【北川委員】  よろしいですか。 【部会長】  はい、どうぞ。 【北川委員】  これは統計の見方の問題だと思うんです。結果がそうであったのか、あるいは急性期 の患者さんというのは恐らく手がかかりますよね。そういう場合には看護婦の配置を厚 くしなければならないとか、原因の問題もあると思うんですね。だから、物差しを使っ てはかるときにはベースを合わせておかないといけませんね。だから両方あると思うん です。  今、吉澤委員がおっしゃられたように、配置が厚ければ退院率が高いよと、こういう 見方があるかもしれませんけれども、そうでなくて、そういう病院に入っている患者さ んは非常に流動性が高いといいますか、さっき西島委員が分裂病だけで議論してはいけ ませんよとおっしゃったけれども、分裂病で非常に古くなった患者さんはどうしても在 院日数が長くなりますよね。そういうところは実際に病院の中で手が余りかからないと いうこともあるんですね。  だから、その両面をよく分析しないといちがいに今のような議論はできないと思いま す。 【部会長】  どうぞ、大熊委員。 【大熊委員】  これは連立方程式を解けばいいわけで、日本の中だともしかしたらそういう議論が成 り立つかもしれませんけれども、ほかの国々と比べてみますと、よその国の場合は人員 配置が厚い。そしてほかの国は日本よりずっと入院日数が短くて社会復帰率が高いわけ ですから、この2つを突き合わせてみれば、人手を厚くすれば早く退院できるというこ とは自明のことであると思います。 【北川委員】  国際的な比較をする場合には、例えば、アメリカは非常に在院日数短いですよね。し かしそれは根っこを切っちゃうわけですから、そういうことも考えていかないと思いま す。おっしゃる意図はよくわかるんですけれども、やっぱり科学ですから、そこは冷静 に分析をしていくということが必要で、単純に大熊委員のおっしゃるような結論にはな らないと思います。 【大熊委員】  私も科学部に18年おりましたから、そういう因果関係と前後関係についてはさんざん 紙面でも書いてきたところですけれども、ここでアメリカの例を持ち出されるところに 意図的なものがあるわけで、アメリカというのはこういうことではむしろ後進国であり まして、そういうことを言うのであれば、ヨーロッパの精神医療にきちんと取り組んで いるオランダであるとかデンマークであるとか、イギリスであるとか、そういう国と比 較すべきであると思います。例えば、イタリアなんかですと、国と言えないくらい南北 で状況が違いますから、同じイタリアの南と北と比べてみれば、これもはっきりするこ とだと思います。 【部会長】  資料4の下から3番目のところに、施設処遇という観点から見ると、日本でもフラン ス、イギリス余り差がないとありますが、その点は大熊委員いかがですか。 【大熊委員】  これは多分施設というのの定義によるのではないかと思います。多分イギリスで施設 と言っているのは、日本の精神病院のようなところではないのではないか。  18日にはWHOのサルトリュースさんも来ますけれども、私、WHOに行って聞きま したときに、日本は非常に異常なことでみんな不思議がっているというふうにじかに聞 いております。 【部会長】  それは在院日数が長いということと入院率が高いということですね。どうぞ仙波委 員。 【仙波委員】  いっぱい解決しなくちゃいけない問題がたくさんあると思うんですね。諸外国のもの は入院医療か地域医療かの。地域医療のプログラムを見れば、日本はまだまだ追いつか なくちゃいけないところがあるという話なんですね。今、入院医療を日本でも地域医療 に向かっているんですが、いろんなことがあって、まだ欧米のように比較するところま で残念ながらいってないというところが指摘されておるのではないかと思うんですね。  それから、入院医療につきましては、先ほどのもうちょっと細かく言うと、一般科と 精神科は別建てで論議しろということは統計を見れば明らかなんですね。長期入院者が 圧倒的に多いし、逆転しているんですね。短期と長期の入院は比率が全く逆転。  その辺のところで長期入院者は何かということがあって、重症者もいれば、我々はマ ンパワーは、今特例の医師だけの数でなくて、長期の人たちはバイオブ・サイコ・ソー シャルという見方から言えば、サイコ・ソーシャルのメンバーがあって、いわゆるヒ ューマン・リソーシスがたくさんあることによって解決するのであって、医者だけの数 じゃないし、医者の機能も含めてもう一度考えてみたらどうかと。  現実的に指定医の数は1万人いますね。この数は世界的に見て多いです。それほど少 ない数じゃないんですよ。その配分をなお3倍もある人数を病院にやったとすれば、こ れは人件費も上がりますし供給が不可能なんですね。その辺で私は現実主義者に戻りま して、先生に悪いですけれども、そのことを申し上げているわけでございまして、もっ と細かく日本の医療全体をどういうふうにしわ伸ばしをしていくかという視点から私は 申し上げているので、単に医療法で人数がどうのこうのだけの問題ではないというふう に私は思っているのでございますが、大熊先生いかがですか。 【大熊委員】  言っていただきましたので1つだけ申し上げますが、地域医療が発達しているから ヨーロッパ諸国では退院日数が短いというわけではなくて、地域医療が深いということ と、もう一つ、急性期医療のところがどんどんさっさとよくして復帰させるという、こ の2つがそろわなければ、入院日数は短くならないわけで、地域医療が進んでいないと いうことをもって急性期医療の医師や看護婦さんの数がこのままでいいという理屈には 全くならなくて、まず元栓のところをきちんとして、早くよくして、それを地域が引き 取ってという、そういう関係になっているというふうに私は思います。 【仙波委員】  さっきサルトリュースの話が出ましたのですが、実は金曜日にサルトリュースの一行 が私の病院を見たいということで来ますので、大いにディスカッションをしたいと思う んですが、おっしゃるように、そのことのほかに、やっぱり経済的なものがあると思う んですね。2つ条件をおっしゃいましたけれども、経済的な側面をどうするかというこ とも含めて改善しないといけないのではないかと思います。 【部会長】  先生の言われるのは診療報酬その他ですね。 【仙波委員】  診療報酬です。 【部会長】  恐らく今後の議論で1つ重要な問題は、精神病床の機能を分化していく必要があるか どうかというところだと思います。その辺、皆さん方いかがでしょうか。 【西島委員】  周辺整備が全くなされてないまま、この病床のあり方を話すこと自体が問題だと思う んです。それはなぜかというと、今回の精神保健福祉法の改正に関しても、周辺整備を かなり言ったわけです。それが1つもなされてない。これは昭和62年の精神衛生法から 精神保健法に変わったときにこの問題はすべて出ていたのを全部先送りにしてきた結果 が、例えばある意味では閉鎖病棟云々の話にもなってきましたし、それから社会復帰が なかなか進まないということにもなってきた。  この周辺整備をした中で初めて今後の精神病床のあり方はどうなのかという議論をす べきてあって、例えば社会復帰施設は、これは日本医師会としては義務規定をつくらな ければならないというふうにぜひしてもらいたい。そうすれば社会復帰施設をつくるこ とがどんどん進むわけですから、義務規定であれば。そういう議論が全くなされてない まま、精神病院悪論、入院悪論、その中だけで議論が進められていくところに、逆に言 えば私は奇異に感じるんです。  この前も私申し上げましたが、これから先は精神分裂病の患者さんだけではなくて、 うつ病の患者、例えば、自殺する人が3万 2,000人いらっしゃる。これはうつ病の人達 なんですよ。うつ病の患者さん、これからどんどん増えていく痴呆の患者さん、これを どうしていくのか。これは全部精神科病院の役割だと私ども考えておるんですね。その 議論がなされないまま、前回の大熊委員の発言の中で、痴呆と精神科は関係ないみたい なことを言われまして、非常にこれは私心外だったんですが、精神科病院に対してそう いう認識なのかという気がしてならなかったわけでございますけれども、今全国の精神 科、私は日本医師会でございますから、公立病院、民間病院どちらの側に立つというわ けではございませんけれども、今回のこの法が改正になるという中で、一番害を受ける のは民間病院なわけですね。 ですから、そういう意味では民間病院の立場に立っていきますと、そういう経済的な 問題も当然考えなければいけないわけですけれども、周辺整備をきちんとしていく中で それぞれの病院が自分たちの今後のあり方をどうしたらいいのかと考えてくると思うん です。そういう環境整備がなされないまま、ここへ議論が出てくるところにやっぱり大 きな問題があるのかなという気がするんですけれども。 【部会長】 どうもありがとうございました。どうぞ、牧野田委員。 【牧野田委員】 今の環境整備、社会資源の整備ということは非常に大事だと思うんですが、そうしま すと周りの環境が整備されなければ患者さんは退院できない。だから長く在院する。大 変悪循環になってしまうわけですよね。多分、多分というか、今長期に在院されている 方はそういう資源もなかったし、急性期のときにきちんとした治療が受けられなかっ た。そのために10年、20年長引いてしまって社会に出られないというふうな状況に陥っ ているわけですから、あれが整わなけれは退院できないというようなことでなくて、そ の辺の病院も退院に向かっていろいろな体制づくりもして両方でやっていかないと、何 かお互いに資源がない、病院が退院させないからということで、患者さんに大変しわ寄 せがいくというふうに思うんですけれど。 【西島委員】 反論でございますけれども、患者さんを退院させないわけではないですよ。この情報 化の中で、患者さんはどんどんと外とアクセスできるわけですから、それは大変失礼な 話。 【牧野田委員】 はい、大変失礼いたしました。 【西島委員】 もう一つは、急性期のときに十分な治療を受けられなかったから慢性期になる。これ も間違いですよ。その証拠は何ですか。証明してもらえたらいいと思うんですけれども そういうことはあり得ないですよ。最初の急性期のときに十分に治療しなかったから慢 性化したということはあり得ないですよ。 【牧野田委員】 退院させないというのは大変失礼いたしました。退院できないという状況というふう に理解していただければと思います。 それから、急性期のときに治療が十分でなかったから退院できないというか、慢性化 したというのは、必ずしも病院の医学的な治療だけではなくて、いわゆる病院の中でも うちょっと社会性をつけるとか自発的に行動できるとか、そういうようなことも含めて 言っております。 【西島委員】 それで日精協の資料の中で、つまり今入院した人が大体6カ月ぐらいでもう既に70% 退院しているんですよ。残っている人たちがどんどん重症化してきているということは 言えるわけで、ですからこれからの先の議論をしないと、過去の数値の中で今議論され ていますから非常におかしな議論になる。要するに牧野田委員と私のすれ違いが起きて くるというふうに思うんですけれどもね。 【部会長】  西島委員、そういう資料からすると、主に分裂病でしょうけれども、その患者さんは 二極化する。すなわち、非常に重症で長くなる患者さんと急性期で比較的早く治る患者 さんの2群にわかれてゆく、そういうふうに考えてよろしいですね。 【西島委員】  はい。 【伊藤委員】  西島委員の意見をお聞きしますと、もし長期の患者さんで非常に重症であれば、逆に そういう方も含めて48:1ではおかしいという理論に発展していかなければおかしいこ とになりまして、先ほど先生、16日の平均在院日数だとおっしゃる。 【西島委員】  18日です。 【伊藤委員】  18日とおっしゃいましたけど、私の病院はようやく 130日全病院として。それで医療 法のぎりぎりの医師で特例のぎりぎりでやっているわけですが、非常に厳しいです。130 日になってくると、通常の勤務内では業務が消化できない。恐らく現実に全病院平均し て70〜80日の平均在院日数の病院出てきていると思いますが、そういう病院は実際には 48:1の医師でないはずです。  そういうことも含めまして、やはり押しなべて全体として病床区分しないで、人員配 置規準やなんか決めようとしますと低い値で決めざるを得なくなるわけですから、やは り手のかかる濃厚な医療をしてあげなければならない病床に入る方については、何らか 今の規準よりも高い人員配置なりする方向を出さなければ、患者さんの立場を考えた場 合にはやはり今のままでいいという議論にはならないと思うんですね。 【部会長】  伊藤委員は機能的に分化していくべきだというお立場ですね。 【伊藤委員】  はい。確かに一般病床でさえ療養病床ということで、療養を中心にした病床が出てき ているわけですから、精神科でも病棟によっては医師ばかりが多ければいいというわけ ではない。 【部会長】  ほかの医療関係者の方、いかがですか。機能分化をしていくべきか、そうでなく、は い、どうぞ。 【白倉委員】  ただいまのご意見伺っていて、確かにそれぞれにおっしゃる言い分はわかる部分がご ざいます。医療関係者としましては、現実に、確かに今まで特例として48:1でやって きたという事実が1つございます。それから、さらにより進まなければいけない目標と いいましょうか、一般医療との間の格差をいかに是正していくか。それを少しずつ段階 的に埋めていくような方針をここで私どもは打ち出していきたいという気がいたしてお りますが、これは理想と言われればそうかもしれませんが、しかし着実に少しずついろ んな条件を整備しながら、片方では一般の医療により近いレベルにいろんな基準を持ち 上げていく努力は少しずつやっていかなければならないというふうに思っております。 【部会長】  規準を上げるというのは皆さんよろしいのだろうというか、そういう方向を目指すべ きだという考えはいいのだと思うのですけれども、機能分化をここで整理していった方 がいいかどうかという点はいかがでしょうか。 【白倉委員】  基本的には私も急性期の患者さんと慢性期の患者さんについて何らかの形でやはり分 化をする形を考えた方がいいと思っております。 【部会長】  窪田委員いかがですか。 【窪田委員】  もちろんより質の高い医療をつくらなければならないわけですから、この間の議論の ように少しでも多くの医師、看護婦が配置される必要はあるとは思います。機能分化と しては急性期と慢性期という区別は必要になるだろうと思います。私も都立墨東病院の 精神科救急にいましたから、どんなに退院の努力しても5%内外の患者さんは長期在院 に残ってしまうという経験をしていますし、そういった急性期の治療と慢性期の治療は 別れてくると思います。  それから幾ら理想的な数字を言っても、それが現実的に機能できないのでは話になら ないわけで、今の状況で一体何対何ならば可能なのかという、数字的な根拠なり経済的 な根拠が必要と思います。それから16:1、一般病床と同じようにするのであれば、そ れに見合った診療報酬をつけなければ病院そのものが成り立たないだろうと思いますか ら、その問題の整備なしに数だけを議論してもほとんど意味がないと思います。どの位 が現実的なのかという数字を示していただかないとどうも話が進まないという気がいた します。 【部会長】  機能は分化する必要があるだろうと。しかしその数に関しては環境整備とか診療報酬 とかいろいろな条件が絡むであろうということですね。 【窪田委員】  それを整備してその数字を出してきて、初めて現実的な数字が出てくるのではないだ ろうかと思います。 【部会長】  佐野委員いかがですか、センターのお立場としては。 【佐野委員】  私は基本的には皆さんおっしゃられているように、できるだけ理想に近づける方向と いうのがもちろん望ましいわけで、機能分化ということも、これは現実的な対応として やらざるを得ないのかなと、むしろそういうふうに思います。例えば、分裂病でとって も慢性の患者さん、最近の事情、私かかわってないのでよくわかりませんけれども、私 昔、武蔵におりましたときに、慢性病棟といいますか、そこで服薬自己管理をさせたり とか金銭の自己管理をさせたりとか、アパートを借りてそこに外泊をさせたりとか、そ ういった社会復帰のいろんな試みもしてきたんですけれども、これはまた非常に人手が かかるんですね。  また、そういうことをしていかないと、当時は大変でした。今その辺でいくと、社会 復帰施設というのがどの程度機能してその辺ができるのかどうか。そういった兼ね合い も当然出てくると思うんですけれども、基本的には、私はできるだけ理想に近づけてい くべきであろうと。  もう一つ、地域の方の立場から申し上げますと、やはり病院でどういう治療を受けた かということ。これは単に医学的な問題だけではなくて、そこでのいろんな体験が地域 で暮らしていく上で患者さんにとっては非常にいろんな影響を与えると。そういう意味 で、できるだけいい医療が提供されれば、例えば、今回移送の問題なんかも出てきてい るわけですけれども、例えば、再発・再入院というようなときに、そんなに患者さんが 抵抗されずに入院をむしろ自分から納得するのではないか。  そういった意味からも医療の質をどんどん高くしていく、理想に近づけていくことは 非常に大事だと思います。 【部会長】  浅井先生、総合病院あるいは大学としての立場ではいかがでしょうか。機能分化とい うような方向に関しまして。 【浅井委員】  全体としてはいずれにしてもあるべき姿というか、理想を目指すということは全く間 違いのないといいますか、だれが聞いてもそれはそのとおりだと思うんですね。一方で 現実今まであるというものを一挙にそういうふうにできるのかという問題が1つあると 思いまして、全体として言えば、少しずつでもいい方向へ持っていくということを皆で 協力して考えていくということが一番いいのではないかと思うわけです。  それで機能分化という面では、これも急性期・慢性期というのは簡単に分けられるの かどうなのか。精神障害もいろんなもちろん種類もございますし、頻度もあります。そ れから、また地域によっても違いがあります。病院の設立のあり方によってもいろいろ な役割、病院としての特色があると思います。ですから、そういったものが現実にあり ますので、それをいちがいに全部こうでなければならないというふうに簡単に規制して しまうことがそう簡単にできるのかと。  しかし、そうかといって、何でも今のままでいいというわけにはいかないんだろうと 思いますので、その点をできるだけ十分な資料を集め、できるだけの議論を尽くして、 少しでもよい方向に持っていきましょう、そういうのが私はいいのではないかと思って おります。 【部会長】  どうもありがとうございました。今、理想論から現実論、機能を分化すべきかどうか いろいろ重い課題があるわけですが、この問題はこの部会の意見をまとめて医療審議会 の方にお戻ししなければいけないという、そういう現実もありますので、次回、本日の 意見も踏まえた上で、意見の取りまとめを行いたいと思います。  何かほかにご発言、それではどうぞ、吉澤委員。 【吉澤委員】  大変事務的なことなんですけれども、この委員会の場合に、委員会の資料を手元にい ただくのが前日ですとか当日ということが極めて多うございます。少なくとも1週間前 に資料を次回は出していただくという形にお約束をいただきたいと思います。 【部会長】  なかなか厳しいご要望かもしれませんね。 【重藤補佐】  事務局からご説明をさせていただきます。資料につきましては、私どもは毎回いろい ろ検討して、部内で考え方とか委員会の進め方を考えてやります関係上、いろいろな仕 事の合間になってしまいます。要するに確定して出せるところは出せますけれども、や っぱり最後の最後まで詰めていって、部会長とも相談をしながらいろいろ諮らなければ なりませんので、早くということになりますと、その段階で出せる資料ということでご 了解いただければ、配布はできるかと思いますが、あとの1週間も貴重な時間でござい ますので、その間に課内で詰めなければなかなか進まないというような資料につきまし ては、当日配付ということでやむなくなってしまうということがございます。  今、最初に先生方にお渡しするのは、それまでに課内や部会長にご相談しながらまと めた資料を配付できるようにということでぎりぎりになってしまうということで、そこ ら辺のところをご容赦いただくということであれば、1週間前をめどということで、私 はできるかと思いますが、とにかく私ども最大限努力させていただきますのでご了承い ただければと思いますが、やはり1週間前ということが必要でございますか。 【吉澤委員】  私がこの委員になりましたときに、調べなければわからないことがたくさんあります ので、事前に欲しいと言いましたところ1回目無理で、二度目は前日の5時半に厚生省 まで参りました。そのときだめで、8時に電話がかかってきまして、まだできません、 当日になります。その次のときには二百十何ページという資料が2冊、ここへ来ました らここに置いてございました。それは読ませてくださいとお願いしまして持って帰って 読みました。  やはりここは医療分野の方だけでなく、他の分野の人間も入っておりますし、そうし ますと事前に調べないとわからないことが多々がございます。議論をスムーズに進める ためにも事前に、それを読んで検討する時間があるように資料を出すのは当然のことだ と思います。 【部会長】  先ほど補佐の説明ありましたけれども、内容によって準備の長短があるかと思います ので、できる資料は早いという、そういうことだったら事務局対応可能ですか。 【重藤補佐】  最大限努力します。 【部会長】  その方向で、それでは努力するということで、しばらく様子をごらんいただきたいと 思いますけど、いかがでしょうか。よろしいですか。どうぞ。 【大熊委員】  資料も急性期と慢性期とあるわけで、きのう速達で来たものでも、別に考えなくても とうの昔に半年前にできているというようなものもあるわけで、それは1週間前でも2 週間前でも可能だと思います。それから、急性期の方にしたって、きのうの晩にはせめ てできているわけですから、昔と違ってファックスというのがあるわけですから、幾ら 遅くとも前日までにファックスでお届けをいただきたい。  さっき事前に手挙げていたことは理想論と現実論なんてすけれども、それは相反する ものではなくて、まず理想というものがあると。理想はこうであるということはこの審 議会は言っていいと思います。理想はこうだけれども、こういう理由、こういう理由、 こういう理由があるから、この線を今回は出すということを書くべきであって、その理 由の中には、国全体が精神医療というものに無理解であるからということもあるし、精 神病院の方たちがにわかに変わることができないという理由から、幾つかの理由が複合 しているわけですから、それぞれこの理想がなぜすぐにできないかという理由を書いて おくことがその理想に一歩近づくために重要だというふうに思います。  さっき2つほど、私に投げかけられた質問がありまして、1つは1万人のお医者さん を3倍に増やすのかということですけれども、そうしないで済む方法が機能分化であっ て、急性のところにはお医者さんをもっと手厚くして、慢性のところにはコメディカル とか、福祉関係の人を手厚くするということにして、同じお医者さんの数で機能が分化 できるのだろうと思います。  それから、はっきり慢性と急性に分けられないじゃないかというのは同じ議論が医療 審議会でもありまして、それは2つに分けられるようなものでないことは確かなんです けれども、でもとりあえず今の特例というのをなくしていく、1万人のお医者さんをう まく傾斜配分させるためには、そのような機能分化によって、それが達成できるのでは ないかというふうに思います。  それから、西島先生から痴呆の人を精神病院で治療することについて、私の意見につ いてのお話がありましたけれども、もちろん精神病院が大いに変身して、病院、病院し てないところになるというのであれば、痴呆の方のお世話にとっていい面があるだろう と思いますけれども、それもそうすべての痴呆のお年寄り全部に病院という環境が適し てないということは、これも国際的にも日本の先進的な方たちの例でも明らかではない かと思います。キノコ・エスポワール病院という10年来痴呆に取り組んでおられるとこ ろがありますが、そこへ行きますとすごい病院ぽいところから、どういうふうに変わっ ていって、今は一番いいのは託老所形式というのが患者さんの治療上もよいのだという ところに到達しておられて、病院というものに象徴される白い壁とか高い天井とか白衣 の人が行き来していて、50人とか40人とか大規模でやるという、すべてのことが痴呆の お年寄りにとって悪い方へ悪い方へいくのだということはかなり実証されているのだと 思います。  だから、もし西島先生のところで非常にいい成果を上げていらっしゃるのだとすれば それは精神病院という形をとっているけれども、高い天井ではなく白い壁ではなく、お 医者さん、看護婦さんという感じではない、非常に先進的なことをやられているのかも しれませんけれども、痴呆の患者さんは精神病院の領分だよと言って、従来のような精 神病院のところに患者さんというか、患者さんと言っていいかどうか、痴呆症というあ る障害を持っておられる方と言った方がいいように私は思いますけれども、穏やかに人 生を全うされるためには、今あるような精神病院の中に連れ込むのは、西島先生のとこ ろは別ですけれども、よくある安田病院みたいなところに連れて行かれちゃったら、お 気の毒なことだと思います。 【部会長】  どうもありがとうございました。  大変長い時間にわたって先生方熱心にご審議いただきましてありがとうございまし た。きょうの意見を踏まえて、また次回取りまとめを行いたいと思いますので、よろし くお願いします。次回は12月7日の予定でございます。  それでは、これで審議会を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。 (了) 照会先 大臣官房障害保健福祉部 精神保健福祉課医療第一係 高橋(内3057)