99/11/04 眼球・アイバンク作業班 第5回議事録          公衆衛生審議会疾病対策部会          臓器移植専門委員会          第5回眼球・アイバンク作業班               議 事 録                      日時:平成11年11月4日(木)                         10:00〜12:00                      場所:通産省別館 第944会議室 出席者 (○:座長 敬称略)   金井 淳  鎌田 薫  ○木下 茂  佐野 七郎  篠崎 尚史     眞鍋 禮三 丸木 一成  八木 明美 横瀬 寛一 1.開 会 2.議 題      (1)強角膜切片作成における技術指針(案)について      (2)移植に用いる強膜切片作成における技術指針(案)について      (3)アイバンクにおけるレシピエント登録・選択の実態について      (4)多臓器と併せて、眼球提供がある場合の対応について      事務局  おはようございます。定刻になりましたので、只今より第5回公衆衛生審議会疾病対 策部会臓器移植専門委員会眼球・アイバンク作業班を開催させていただきます。  最初に、本日の委員の出欠の状況でございますが、小口委員から欠席のご連絡をいた だいております。それと、鎌田委員は少し遅れておいでになるということで、間もなく お見えになると思います。  続きまして、お手元にございます本日の会議資料ですが、最初に議題がございます。 次に資料1が、次に先生方の名簿、そして座席配置。あと順次資料です。  本日の議題として4つ予定をいたしております。第1が、強角膜切片作成における技 術指針(案)。第2に、移植に用いる強膜切片作成における技術指針(案)。3つ目に アイバンクにおけるレシピエント選択の実施について。平成10年度アンケート調査の 結果から。4といたしまして、他臓器と併せて眼球提供がある場合の対応について。こ の4つの議題を予定しております。  資料の関係でございますが、資料番号は右肩に振ってございます。  資料1は、強角膜切片作成における技術指針(案)ということで、これが3ページご ざいます。  資料2は、移植に用いる強膜切片作成における技術指針(案)ということで、これが 2ページです。  資料3は、平成10年度厚生省厚生科学研究事業し「アイバンクネットワークに関す る研究」−アイバンクに対する「レシピエント選択に係るアンケート調査」結果、これ が4ページでございます。  参考資料が3つございます。参考資料1は、眼球あっせん機関の長に対しまして、私 どもの保健医療局長が出しました通知でございますが「角膜移植における提供者適応基 準について」という2ページの資料です。  参考資料2は、角膜移植学会特別委員会の「提供眼球取扱いに関する提言」1993 年度案でございますが、6ページございます。  参考資料3は、レシピエント登録等の実施について、アイバンクのあり方について、 ということで4ページございます。  資料等は以上でございます。不備等ございましたら、お申し出ください。  それでは木下座長、よろしくお願いいたします。 木下座長  ありがとうございました。それでは、早速議事に入りたいと思います。  今日の議題の1番目は、強角膜切片作成における技術指針(案)について、というこ とです。これは、以前に、ここの作業班で、角膜移植におけるドナーの適応基準という ものをご審議いただいてこれを決定しまして、すでに全国のアイバンクに厚生省から通 知されていますけれども、それだけではなくて、さらに、安全で質の高い角膜をあっせ んしていくために、角膜などを処理する技術指針そのものを示すことが必要ではないか ということが考えられまして、確か前回の本作業班で技術指針を作成しましょうという ことが確認されております。そんなことで、事務局のほうで、まず最初に叩き台をつく る必要があるだろうということで、篠崎委員のご協力を得まして、議論の叩き台となる 技術指針(案)を準備していただいております。まず資料1についての説明をお願いい たします。 山本補佐  木下先生からお話のありました、ドナー適応基準につきましては、お手元の資料の参 考資料1に、平成11年4月13日付の保健医療局長通知ということで、ドナー適応基 準を参考のために添付しております。  資料1でございます。これは前回、角膜および強膜のあっせんに関しての技術指針を つくってはどうかということで、角膜センターの資料として提供させていただきました けれども、そのあとそれをまとめて叩き台をということで、引き続き篠崎委員にご協力 をいただきまして、まとめたものです。  1ページ、強角膜切片作成における技術指針(案)。すでに強角膜以外の角膜につい てのいろいろな技術指針を含んでいるのではないかとかいうご意見をいただきましたが とりあえずお手元の資料をご説明させていただきます。まずドナースクリーニングにつ きましては、先ほどご紹介しました通知を遵守することになります。  強角膜切片を作成する施設につきまして、クリーンベンチまたはドラフト等の無菌操 作ができる施設を整備すること、ということになっております。  クリーンベンチ、ドラフトにつきましては、定期的にその中の汚染状況の検査をして 記録すること。やっているところは当然ということかもしれませんが、記録をしておく ということだと思います。  眼球の摘出、それから切片の作成・保存ですが、眼球の摘出の際につきましては、基 本的には無菌的な操作をするために手術用手袋を着用し、それから眼瞼を洗浄して、そ して摘出した眼球も生理食塩水等で洗浄する、ということで、それを専用瓶に入れて持 っていく、ということになります。  摘出眼の保存につきましては、これも保存瓶の使い方、それから生食を入れること、 それから、中に浸した眼球によっては結膜部の雑菌が入るということもあって、その保 存状況についても言及しております。  その眼球を搬送する際ですが、アイスボックスに入れて、4℃から5℃で搬送すると いうことで、温度があまり高くなりすぎないように、また凍結してしまったりしないよ うに、ということの留意点が書いてあります。  4番目に、強角膜切片を作成する際に、まず保存瓶のフタを開ける前に、瓶そのもの をクリーンにして、無菌的操作で行う、ということが書いてあります。  それから、強角膜切片の切除につきましても、抗生物質もしくは抗生剤もしくは生理 食塩水で洗浄した後、切片のつくり方については技術的に書いてございます。ただこの 時に、角膜内皮細胞に損傷を与えないように留意するよう、細心の注意についても書い てございます。  6番目に、強角膜切片の保存ですが、これも保存状態、それから温度の問題、4℃の 冷蔵庫、通常の医療機関の冷蔵庫ということですけれども、そこで保存するということ で、これも凍結してしまったり高温になってしまわないように、ということでございま す。  次に7番ですが、強角膜切片の評価ということで、これにつきましても、スリットラ ンプやスペキュラーマイクロスコープ等で、その角膜についてきちっと評価をして、そ れを残しておくということと、この際に移植に使えないと判定された場合については、 これは臓器移植法に基づいて、不使用臓器記録を作成し、焼却処分をする、ということ です。実際には安全性が証明されて使用されなかった強角膜切片、もしくは強角膜切片 ではなくて角膜一部の部分ということもあるのですけれども、これを緊急手術用で無菌 的に保存する。これは現在でも行われているようでございますけれども。ここの中では もれておりますけれども、1つの眼球から2つの角膜移植、「2つの」という言い方は 適切ではないかもしれませんけれども、一部を用いて、2人のレシピエントに行くとい うこともあるようでございますから、そのへんの取り扱いについても議論していただく ことになろうかと思います。  8番目、保存液について。ここは、アンダーラインで書いたところはちょっと疑義が あったところなんですけれども、アメリカのアイバンク協会で承認されるもの、という ことで、我が国の眼球銀行協会で特に保存液を何か承認しているということは確認でき ませんでしたので、何らかのクオリティ・コントロールがいるのではないか、というこ とがございました。それから、抗生物質を使用している場合、それが有効に作用するた めに、ある程度室温にて静置して抗生物質が有効に働くように、というような時間を置 くというようなことも書いてございます。  9の保存期間については、これも国としては特段の規定はございませんけれども、10 日以内に移植に用いるということでございます。またそれを凍結保存して緊急用に備え るということもございますでしょうから、そこについても書いてあります。緊急に使う 場合は、保管の記録とか管理ということも、今後かなり厳密に行っていただく必要があ ろうかと思いますけれども、それも記載してあります。  それから、ここはちょっと座りが悪いんですけれども、強角膜切片を作成する人の技 術的なレベルについても、十分な研修を積む。今の時点では資格制度等が特にないので 何と書いたらいいかと思ったんですが、ちょこっとここに書いてございます。  記録の保管ですけれども、これは当然のことながら、あっせんの記録は法で求められ ていますし、5年間の保管ということです。  一応こういうことが議論の俎上に乗るのではないかということでまとめさせていただ きました。  それから、参考資料2ですが、これは、後ろのほうに書いてございますけれども、提 供眼球取扱いに関する提言ということで、眼球銀行協会から日本角膜移植学会にお願い をしていただいて以前につくって、1993年に発表されているものです。主には感染 症等の安全基準とインフォームド・コンセントの書式について書いてあって、必ずしも つくり方については細かくなく、一番最後の6ページのところに、眼の絵が描いてあり ますけれども、実際のノウハウ的なものを扱っている、ということでございます。基本 的にはこういう技術指針を作成していただいて、厚生省としては行政の通知なりの形で 各アイバンクに守っていただけるように依頼していく、ということを考えております。 以上です。 木下座長  ありがとうございました。それでは、ご質問、ご意見ございませんでしょうか。篠崎 委員、もう少し何か追加することはありますでしょうか。 篠崎委員  強角膜切片の技術指針ということで、案を出してほしいということで、うちで使って いるマニュアルを一部改竄させていただいて、お出しさせていただいたものですから、 ちょっと特異的なところもあろうかと思いますので、そのへんのご検討をいただきたい という点が1点です。  第2点としましては、強角膜切片はドナースクリーニングをして、ウイルス性の感染 症について、あるいはそれ以外の感染症はすでに取り決めがあるのですが、強角膜切片 をつくって、移植をするという段階で、細菌の感染、コンタミネーションという点と、 第2点として、角膜の特に内皮細胞へのダメージという点が危惧されるのではないかと いうことで、そのようなことを文にさせていただきました。 木下座長  ありがとうございました。この議論というのは、非常に具体的なところもあるんです けれども、山本さんからお話がありましたように、強角膜切片というのは全層角膜移植 を目指してますけれども、99%そうかもしれませんけれども、そうではなく、全眼球 で3日、4日と保存する場合もありますので、そういった例外的なものも含めて、技術 指針の中に入れておくかどうかということ。それから、長期間保存の、いわゆる保存角 膜のことについて、ここにも触れてありますけれども、もう少し具体的に入れるかどう か、というようなところがあるかと思います。それから、アメリカのように眼球が非常 にたくさんあるところでは、必ず1ドナー・1レシピエントという1:1対応になって ますし、その原則を崩してはいけないということになってるんですけれども、日本の場 合は例外的に全層角膜移植に使った後の角膜の端をまた無菌的に保存して、それを特殊 な方法で翼状片の手術に使うとかいうようなこともされておりますので、そういったと ころを含めて、認めるのかどうか。認めるなら、そこの技術指針はどうするのか、とい うようなことも入ってくるかと思います。  金井先生、この技術指針に関して何かご意見ございますか。 金井委員  木下座長が言われたように、確かに強角膜片保存にした場合、表層角膜移植の作成が すごく難しいんですね。ですから、全眼球で保存する可能性、例えば高齢者の方の場合 などを考えた場合には、全眼球で保存する必要が出てくるのではないかと思います。  それから、強角膜片を保存した保存液を、使用後に細菌検査を行う、というのを入れて おいたほうがよろしいのではないか。  それから、これには書いてないんですけれども、9のところで、強角膜片作成を行う 者は十分な技術研修を積むことが望ましい、ということですが、行う人は、果たして医 者でなければいけないのか、技術者でいいのか、ここらへんもはっきりしておかないと トラブルの原因になるのではないかと思います。 木下座長  この技術指針につきましては、私自身の考えでは、できれば今日、総論的な議論をし ていただきまして、各論のところも大きな問題点があればそれを指摘していただきまし て、何とか次の時にはこれをきっちりまとめた形の技術指針としてお認めいただく、と いった方向に行きたいなというふうに考えております。 眞鍋委員  文章の語尾が、「○○しなさい」というのではなしに、「○○することが望ましい」 という表現がいつくかありますが、「望ましい」というのではちょっと弱いような気が するんですよね。「○○しなさい」というふうに文章を完結しておいたほうがいいので はないかなという感じがします。  確かに、内皮のほうは悪くても表層移植には使えるということ、また上皮がなくても 表層移植は使えるということですので、そういう意味では、表層移植用の眼球は、本当 に眼球のままのほうがずっと使いやすいですからね。表層移植も今後、深層移植なんか ができてから、視力も非常によくなってきて見直されておりますので、それ用の角膜の 確保も考えて、ちょっとついでに書いた、というような書き方ではなしに、ちゃんと、 全眼球で保存する場合はこうすべきだ、ということで、並列ぐらいで書いたほうがいい んじゃないかなという感じがします。 木下座長  具体的にはこれは強角膜切片作成というようなことですので、眼科のドクターには、 ひとつずつの各論のところを、具体性をもってイエス、ノーがあると思うんですけれど も、またそれとは別に、総論的にこういう技術指針をつくっていくということにつきま して、特にこういうことを考えておいたほうがいいんじゃないか、というようなことは ありますでしょうか。 丸木委員  私は新聞記者で技術的な中身については詳しくわからないんですが、こういう指針を つくるということは、必要なことだと思います。その中身については専門家の方に議論 していただきたいと思いますが、ひとつは、こういったような形の、クリーンベンチと かそういうものを義務づけた場合、現状に合うことなのかどうかという点だけ、ちょっ と気になります。「望ましい」か「すべき」かという議論もそこに絡むんじゃないか。 要するに、こういう指針を出して、やりなさいといった時に、そういうことができない ようであれば、絵に描いた餅になってしまって意味がない。だけど、現状の拡大の技術 指針であれば、今の議論で、やるべきだと思うんです。そのへんの実態を考えていただ きたい。すべきか、あるべきか、というのはまたさらに検討する必要があると思いま す。ただ、こういう指針は絶対につくる必要があると思います。 木下座長  実際にクリーンベンチを含めて、完全な無菌操作ができるアイバンクが51のうちど れだけあるかということについては、確かに不明瞭ですね。このへんは十分に整備して いかないといけないというところがありますけれども、あるいは時限で、いついつまで にはしなければならない、というふうに持って行くのが、現状が悪いというのであれば 一番いいんじゃないかなと思うんですけれども。 横瀬委員  今ちょっと話題に出たと思うんですが、これをなさる方の資格についてはどうにもさ れてないんですが、要するに医者でなければならないのか、それともテクニカル的なも ので十分間に合うものであるのかどうか。そのことについては、規定は全然ないんでし ょうか。 山本補佐  こちらの理解としては、眼球を摘出する際には医師が行うということだと思うんです が、その採った後の眼球を処理するということについては、基本的には資格が特に決め られているわけではないというふうに理解していますが、現実的には、医師よりは、慣 れた検査技師さんなり、それなりのテクニシャンなり、一部ではアイバンクコーディ ネーターということもあるんでしょうけれども、そういう形で行われているのも実態だ というふうに伺っております。 木下座長  このへんはあまり議論されないで来たところだろうと思います。 横瀬委員  ですから、追加の質問になるんですけれども、そのことが結局、眞鍋先生がおっしゃ っているようなコーディネーターの資格とか、テクニシャンとしての資格とかいうもの につながってくるのではないかと思うんですが、そのへんを明確にされておいたほうが この際、いいような気がしますけれども。要するに、誰でも触れるんだということでは また困っちゃうでしょうし、ある程度までの技術者、眼球そのものの移植に携わってい る方がもちろんおやりになるだろうと思うんですが、それが全然無資格でいいとかいう ことになると、また何か大きな反論を呼ぶようなことになりませんでしょうか。 木下座長  このへんについては、まず鎌田先生のご意見をお聞きしておきたいと思いますが、い かがでしょうか。 鎌田委員  今の点については、どう解釈していいか、基本的な方向性としては、横瀬委員がおっ しゃったとおりなんだと思うんですけれども、現行法の中で具体的にどういう仕組みを つくっていくのか、厚生省さんに考えていただかないと直ちには答えられませんね。  ついでに、これを拝見していて、実際のところがよくわかってないせいだと思うんです けれども、技術指針の名宛人がどうなのか。全体の流れの中で、例えば最初のドナース クリーニングについては、これは摘出するお医者さんのところで中心になって考えるこ とですね。切片の作成は少しお医者さんの手を離れたところでやる仕事だし、それから 3ページ目の保存期間の2項目目にあるのは、これは移植を実施する病院に方向が行っ ちゃうんじゃないかと思うんで、移植医療機関側での注意事項みたいにも読めるので、 すべての流れを端から端まで覆っている指針なのか、あるいは実際の切片作成に直接関 わる人たちを名宛人にしたものなのか、そのへんがわかりにくいということがひとつで す。  もうひとつは、このもうひとつの強膜移植に用いる技術指針のほうでは、残った部分 の廃棄ということが非常に強調されているんですが、こちらのほうは、使用されなかっ た強角膜切片についての取り扱いはあるんですけれども、強角膜切片を摘出した後のも のをどうするかということについては触れてなかったように思います。そこも、本当は サンプルとかで取っておいたほうがいいんだろうと思うんですけれども、そのへんのと ころがどうなるのかなというのが、ちょっと気になりました。 山本補佐  鎌田先生のお話を聞いていて、整理が悪いなと、私も反省しました。実は、臓器移植 法ができた時に、臓器移植については、臓器移植ネットワークというところがあっせん 業の許可を持っています。ここについては、あっせんをする者として、まずドナースク ニーリングとして、こういうスクリーニングをあっせんする者がやらなければならな い。それをクリアにしたものでなければあっせんしてはいけない、という考え方の下 に、ドナースクリーニングは位置づけられています。その後、例えば腎臓ですと、摘出 しますと、摘出は医師が行うわけですけれども、あっせん業者としてもあっせんする臓 器の安全性なりクオリティというのは一定程度満たすために、保存液については同じ液 を使うように、とかいうようなことをしているんですが、あまり操作が間に入りませ ん。切片をつくったり何かとか。そのまま搬送するということで、搬送のところの議論 はあるわけですが、そういう意味では、アイバンクがどこまで責任を持つのかというと ころが、先生のおっしゃるとおり、非常に曖昧である。世界的に、眼球や組織をあっせ んしているというところというのは、ドナースクリーニングから強角膜の作成、それを 医療機関に届けるまでの間を責任を持ってそこが担う。だからバンクに技術陣もいる。 移植医はそれを受け取って、責任を持ってそれをまた再確認して移植をする、というよ うなシステムになっているんですが、翻って我が国を見ますと、アイバンクのマンパ ワーが前回からお話しているような状況ですので、実際にはアイバンクの仕事なのか医 療機関の業務なのか渾然一体としている状況もあります。しかしながら、医師が自ら摘 出して、角膜切片も眼科の医局でつくって、それを眼科の領域で移植している。但し、 一部のアイバンクは米国のアイバンクの運営などからも学び、技術指針を配しているの ですがそうのようなアイバンクの数は少ない現状にあります。ただ、今後目指す方向と して、バンクがそこを責任を持ってやっていくという意味では、先生がおっしゃってい るように、皮膚移植なんかは皮膚の一部をちゃんと残しておくとか、血液を一部サンプ ルとして保管しておく。それは先生もご存じの血液業界ですとか臍帯血業界なんかと近 いセンスで将来の未知の感染症対策のために残しておく。特に、ひとつの眼球からいろ んな組織が使われる方向性がだんだん出てくる。以前は我々も単純に、1個の眼球から 角膜を利用するのみと考えているが、強膜を使い角膜も一部輪部を別の人に使い、とい うことになりますと、事実上ロットを構成する形になりますから、その時には、例えば 角膜を移植された方に何か問題があった時には、残している強膜を破棄するためにも、 そういう記録の保管といった議論をしなくてはいけない。  そういう意味では、先生のおっしゃるとおり、ここに書いてあるところは全部アイバ ンクの仕事と考えて書いてあります。 木下座長  適切な説明ありがとうございました。  先にご意見をお伺いするということで、佐野委員、いかがでしょうか。 佐野委員  現時点では摘出は医師がやるというのは大原則だと思います。其の他のところでの眼 球を処理する場合には、摘出医や移植あるいは医師の指示で出来るというふうにしたら よいのではないかとそういうように考ております。 木下座長  摘出された眼球の切片を作成する方については、医師の指示の下で行う、ということ でどうだろうか、というご意見です。 八木委員  今の、誰がつくるか、とかいうことですけれども、かなりベテランのドクターからは 技術的なことを教えていただくんですけれども、若いドクターに対しては、こちらのほ うから教えているような状況があるということで、もしそういうことをやっていいので あれば、そういう認定というようなことをしていただけたら、すごくやりやすくなると 思います。  例えば、うちもなるたけこれに基づいて、かなりの責任をアイバンクが負わなければ いけないと思っているんですけれども、ひとつのアイバンクの中ではできないこともあ りまして、そこらへんがちょっと難しいなというか、これが全部アイバンクでできたら 一番いいんでしょうけれども、組織的なこととか、−80℃の冷凍庫が県内にいくつも あるわけではなかったりすると、−80℃にて冷凍保存、とか書かれても、一方ではグ リセリン保存を使っていたりとか、そういうのもあるものですから、現実に則したもの でつくっていかないと、50いくつのアイバンクが行っていくのは難しいような気がし ます。 木下座長  この技術指針案は、あくまでひとつの叩き台ということで、具体性を持った、篠崎委 員のところでの、かなり完成度の高いものを出してきているということになっているか と思います。ですから、この作成・保存方法については、もう少しフレキシビリティの 持てるような、しかしポイントとなるところはちゃんと含んでいるような、そういった 技術指針案をつくればいいかなとは思うんですけれども。そういうことでいいですよね 篠崎委員。ひとつずつの各論のことについては、ここでお時間をかけて議論をし て……。 山本補佐  鎌田委員が言われたことにこだわりたいんですけれども、ドナー情報があった時に、 眼球を摘出し、それを何らかの切片なりという形に処理をして、そしてそれをレシピエ ントを選んでからになるかもしれませんが、移植医に運ぶという仕事を、一貫してアイ バンクの仕事として考えるか。ただしアイバンクに今マンパワーがないから、しょうが ないからどこかの医療機関に委託したり、医療機関の場所をお借りするなどということ はあるんだけれども、それはそれとして、将来的にアイバンクの仕事として考えていく のか、そうではなくて、今のアイバンクというのは、以前から申し上げておりますよう に、献眼登録という、どちらかというとドナーの募集・登録はやっているというけれど も、レシピエント側に近いところは十分手が伸びていない部分があるんですがこれが医 療機関の仕事だということになりますと、このアイバンク作業班なり厚生省が技術指針 を出して、医者のやることに「ああせい、こうせい」と言うのはちょっと違うな、とい うことになるので、アイバンクの仕事として見ていくというのが世界的な潮流ではある と思うんですけれども、我が国においてもそういうことを目指していくということなの かどうか。そこを確認していただいたほうがいいかなと思います。 木下座長  いかがでしょうか。この基本的な強角膜切片作成も含めて、アイバンクが将来的に中 心になって、というか、アイバンクの作業としてやるんだ、という認識を持つかどうか ということですけれども。まず私自身の見解を言いますと、ドナースクリーニングとい うことについて、多少不明確であったものが、参考資料1にありますように、厚生省か ら書面で出てきまして、今はこれはアイバンクがするものだという認識になっています よね。ですから、それと同じように、強角膜切片作成あるいは角膜の保存の方法、そう いったことについても、アイバンクが責任を持ってするんだ、というような方向へ是非 持って行くためにも、技術指針が必要だと思っています。だから、その技術的なところ で、クリーンベンチがそこにないから、ある医療機関に依頼して、そして協力体制をと ってやっていく。しかしこれは基本的にアイバンクのすることなんだ、という認識を持 たせるためにも、技術指針は是非必要かなと考えます。 横瀬委員  あっせんできる者はアイバンクでしかないということを基本的な考え方とするならば どうしてもアイバンクの作業としてやるべきではないでしょうか。アイバンクが委託す る、しないは別として。要するに、あっせんできるのはアイバンクだけ、というふうに 解釈してよろしいんじゃないでしょうか。 篠崎委員  議論の前にもう一度クリアにしておいたほうがいいかなと思うんですが、この案は、 現行でできる範囲で収めてベストを出すのか、あるいはこれはサゼッションであるの か。厚生省が出すんですから多分サゼッションにはならないと思いますが。あるいは、 将来的にここまでやるべきである、というものにして猶予を持たせる類いのものなの か、あるいは即効性のあるものなのか。前回の感染症のように、出されますとその瞬間 から我々は義務づけられるわけですから、これを義務づけて、できるところはまだ少な いという話ですから、実際に則したところでは、どういうものをつくって、いつまでに やるとか、そういうものにするのか、というのを議論されたほうがいいのかな、という 気がしたんですけれども。 金井委員  僕が理解しているのは、ドナーのスクリーニングは、厚生省から出た時点で、全体的 な文面は、アイバンクがすべてをやる、ということで、アイバンクはやってるんじゃな いかと思うんですけれども。だから、これ自体はアイバンクが行うという形でいいんじ ゃないかなと考えます。必ずアイバンクが医療機関と契約して、例えば静岡の場合は広 いですからね、ひとつへ持って行くというのは大変なんで、それはいくつかのセンター をつくって、契約して、そこで行っていく、という形であれば、それはあくまでアイバ ンクとして行っている、というふうに僕は理解します。 篠崎委員  各論的なことで申し訳ないんですが、例えばクリーンベンチの点とか、スペキュラー が出てきますよね。国内で今すでにスペキュラーがあるところもある程度あると思いま すし、クリーンベンチがあるところもある程度あると思うですが、買えるところ、余裕 があるところはもうすでに買って手元にあるし、今ないところはかなり厳しい状況では ないかと思うんですが、こういったことを出すために、ある程度、公の、全部とは言い ませんけれども、ある程度の援助的なものもあれば、アイバンクの励みになるのではな いかという気がするんですが。 木下座長  そうですね。 山本補佐  来年度の予算要求で、厚生省ベースとしては要求させていただいております。 木下座長  厚生省としては予算要求をしていく、ということのようですけれども、そうしますと ある程度、技術指針をつくって、時限的にいつまでにはどのように動くこと、というよ うな、そのぐらいのものをつくっていくということになるのでしょうか。望ましい、と いうものではなくて。ですから、そういうことになると、ミニマム・リクワイアメント 的になってきますから、これはかなり厳しいですから、これをもう少し丸めたというか 緩いものになろうかとは思いますけれども。 山本補佐  他の臓器、他の組織などでも、1年ごとに見直すこととするとか、進捗状況とか、技 術の進歩もありますから、常に見直していくということで整理しているのかなと思いま すので、そこは、実現可能なレベルから、ということもひとつの書き方だと思いますけ れども。 金井委員  ちょっとまだ気になるところがあるので、先ほどの強角膜片作成のところが、例えば コーディネーターの方がやってもいいかもわかりませんけれども、何かあった時に誰が 責任を負うかというひとつの問題がかかっているんですよ。ここらへんはやはりはっき りしておかないと、将来何かあった時に、訴えられた時に誰が責任を負うか。メディカ ルディレクターが横にいて絶えず見てなきゃいけないのか。メディカルディレクターが 責任を負うのかどうか。ここは何かあった時のことを考えておかないといけない。 篠崎委員  私どもの理解では、多分あっせん業を受けた者の長がすべての責任を負うというよう なことだと思うんですが、その中でどういう行動があって、医学的なところであれば、 責任を持っていただくことをお願いするのか、その場合どういう責任が発生するのかと いうのは、実はうちでもちょっとクリアでなくて、うちの場合は一応兼務という形でや っていますので、アイバンクとしてすべての責任を持つということなんですが、他に委 託をしているようなアイバンクの場合、そのへんはどういう責任形態になるのか。いま 金井先生がおっしゃったメディカルディレクターに関しては、アイバンク協会でも進め ようとしているところですが、責任があるんだと、しかもボランティアで、いつでも呼 ばれたら来なさい、というのはちょっと現実に即さないのかなという気がするので、そ れも含めて、ご議論いただけると非常に有難いと思います。 木下座長  いかがでしょうか。何か他にご意見はございますでしょうか。実際、強角膜片等の作 成を行う者が誰なのか、というところについて言及していくと、これは非常に議論が、 まだまだ1回や2回では済まないようなところがあるかと思いますので、もしもよけれ ば、強角膜切片作成あるいは提供角膜の取り扱いに関する技術指針ということで、その 中を強角膜切片作成、そしてまた全眼球として保存する場合、それから保存角膜の取り 扱いという、非常に技術的なところをここにまとめてさせていただきまして、そしてこ の、「強角膜切片作成を行う者は十分な技術研修を積むことが望まれる」というところ は、今回はここから削除して、技術的な各論だけのところをいま一度つくらせていただ いて、それを各委員の方々に見ていただいて、次にまとめるということではいかがでし ょうか。 八木委員  全眼球で保存する場合というのは、うちなんかはドナースクリーニングとかいうのが 義務づけられてから、結局、強角膜片にしないと、検査結果が上がるまでに時間がかか ってしまうから、先に強角膜片になってしまうんですね。強角膜片にしてからスペキュ ラーを見ますから、その時点で細胞が2,000以下だったら表層にもっていく、とか いうふうにしてるものですから、そうすると確かに表層用はあっせんしにくいというか そんなに需要が多くないんです。同じ表層移植をするのであれば、全眼球で欲しかった と言われてしまうんですけれども、今のようにドナースクリーニングをきちんとやって いこうとすると、結局は強角膜片に先になってしまうケースのほうが多い。  それと、例えばスペキュラーのことでも、うちは細胞数の出るスペキュラーも持って いるし、もっと昔の、スケールで測って、自分で数えて、というのも使ってるんですけ れども、その数えてというのは、実際にはなかなか1個ずつ数えなくて、このぐらいあ ったら行けるんじゃないか、ということをドクターから教えていただいてやってるんで すけれども、それだとはっきりした細胞数というのは出ていないんです。2,000が いいのかどうかわからないんですけれども、2,000というので全層にもっていくか 表層にもっていくかを決めた場合に、スペキュラーも、新しい、数まで出るのに買い替 えなきゃいけないのか、それとも、昔の数の出ないものをまだ使ってもいいのか。そこ らへんもちょっとわからないんですけれども。 木下座長  八木委員のおっしゃるように、多分90数%は強角膜片保存をすると思うんですけれ ども、90歳以上の人で明らかに眼内レンズ手術がされていて、これは強角膜片にして も全層角膜移植に使わないんだと。片や表層角膜移植で待ってるというような人がいる 場合、もちろん血液検査の結果が出るまで2日から3日待たないといけないでしょうけ れども、あえて全眼球で置いておく、というような例があり得ると思いますので、そこ らへんの保存方法のことも別に書いておいて無駄はないんじゃないかなと思います。 山本補佐  やはり議論としては、眼球摘出のところは医師なんですが、先ほどから言っています ように、その後の処理については、今のところ法的な枠組みはないわけですから、逆に 言うと誰がやってもいいということになるわけですね。眼球銀行協会としても、クオリ ティ・コントロールのために、技術トレーニングをやって、いずれにしても学会認定な り協会認定というような方向を示されているようですから、うまくそれが連動していっ て、というのは、欧米の例を見ますと、提供が多くなればなるほど、医者がこれを全部 やっていたらとても手が回らないというか、逆に八木委員がおっしゃったように、下手 くそな医者が1個ぐらいやるよりは、慣れた人がきちっとやったほうがクオリティ・コ ントロールもいいということもあるでしょうから、そこの方向性が少しあるといいかな と。誰でもいいよと言っちゃうかどうかということで、トレーニングプログラムを来年 なりにまた考えていくということもあるのかなと思います。  行政から、非常に気になる点だけ、作業班の先生方にお願いしたいのは、記録の保管 で、特に長期間の保存となりますと、どこに行ったかわからないとかいうのは非常に困 るので、記録をきっちり保管することと、保存期間はいつまでか、ある程度、例えば6 カ月間経っても使わなければ破棄されるのか。そこは技術指針にお任せするのと、3点 目は、鎌田先生がおっしゃったサンプル保管をしていくのかどうか。それは多分、サン プル保管と資料採血をした場合のドナーの血液についてサンプル保管をしていくのか、 していかないのか、どっちでもいいのか。していくとなると、結構膨大になるんです ね。簡単なことではないので、そこのところもご意見をいただけたらと思います。 木下座長  いかがでしょうか。理想的なことから言うと、サンプル保管をしていくことは、将来 に備えるということで、いいかと思うんですけれども、そうすると、例えば−80℃の 冷凍庫は必須である。そういうものを持っているところはあんまりない、とかいうよう なことにもなってくると思います。 眞鍋委員  これもやっぱり期限を切って、例えば1年間は是非置いておいてほしい、というよう に、期限を切ればいいんじゃないでしょうか。カルテにしろ記録にしろ、全部保管とい うことが義務づけられておりますので、紙の場合だったら5年ですか、十分スペースも あるし、置けるでしょうけれども、生きたものといいますか、凍結組織などはもう少し 短くてもいいんじゃないかと思います。1年がいいか、あるいは半年がいいか、あるい は3年ぐらいにするのがいいかはわかりませんが、そのへんはここで議論して決めてい ただいたらいいと思います。 金井委員  ちょっと余談になるんですけれども、大学のほうで羊膜の移植で倫理委員会に通した ことがあって、最近通ったんですけれども、うちの大学では、サンプルは、弁護士?サ ンプルを含めて抜いていて、大体3年間取っておいています。それで、先ほど山本さん が言われたみたいに、未知の何かが出て場合に調べられるんじゃないかということで、 一応3年間保存ということがうちの大学では決められたんですね。それがひとつご参考 になるかと思います。 木下座長  あとは本当にお金との関係がありますから。方向性としては、是非そういうサンプリ ングをして保存しておく、というようなシステムをつくっていく、ということを盛り込 んでいけたらいいかなと思いますね。他臓器はどうですか。 山本補佐  臓器移植の場合は保存していないと思います。 木下座長  血液に関して。 山本補佐  少なくとも義務づけてはいません。日本臓器移植ネットワークとしてはやっていない んですが、ただ、移植医の中には、自分のところで移植した人の分については、必ずク ロスマッチをやりますから、その際の血液の一部を保存しているところもあるのかもし れません。臍帯血は保存するということになりましたので、基本的には臍帯付属物とし て保存していくということで、あれは今のところ期限を決めていませんが、ヤコブを想 定していたので10年では足りないという議論もあったかと思います。血液製剤は今の 時点では全部無期限ですべて保存しているという状態です。ただ、膨大なコストがかか るということがあります。 木下座長  少なくとも技術指針の中に、そういうことをすることが望ましい、というふうに、意 識として、皆さん、余裕があればしていただきたい、ということは盛り込んであればい いかと思いますけれども。  それから、鎌田先生、これは法律的には問題ないんですね。角膜移植に使わなかった ところはすべてできるだけ速やかに処分せよというところには引っかからないですか。 山本補佐  引っかかるでしょう。 鎌田委員  その問題が、前回からのご議論の中でも出ていた。ただ、他の用途に使うことがいけ ないんで、サンプルを取っておくなんていうのは移植医療の一環ではないかというよう な感じもする。しかしそれは厚生省が考える解釈の問題で、そのへんの解釈も絡めて考 えないといけない問題ではないかと思います。ですからそれは前にも、強膜のほうには 廃棄の可能性が定めてあって、不適合のものだけを廃棄することになるのだろうけど、 残った部分には触れていないものだから、それでさっきちょっと気になったんです。 山本補佐  採血はいいですけれども、確かに、眼球の一部、例えば強膜の一部とかは、確かに今 の法律で行くと移植に用いないわけですから、これは焼却処分をしなければなりま せん。 木下座長  ただ、レシピエントのことを考えてやってることは、継続的に移植に関わることだと いう解釈はできないのかなと。だから、別の利用を考えているわけではありませんので それはどうなのかなと思うのですが。 鎌田委員  文理からは難しいですよね。だから、そういう意味では、法律のほうを少し変えてい くといいのかもしれない。 山本補佐  確かに、角膜が臓器移植の臓器と一緒になっていることにより矛盾が出ていることも あります。皮膚、骨等の組織移植には法的規則がないので、必ずサンプル保管をしよう としています。皮膚だと1人から20枚採れますから、一部は将来のために必ず残して おく、ということになっているようです。 眞鍋委員  これは、腎臓のほうから、とにかく、使わなかった臓器が、本当に自分が使わなくて よかったと安心したいということで、一部採って調べて、やっぱりこれはこういう経時 変化があって、使わなくてよかった。あるいは実際使えるのに使わなかった、というこ との反省の材料にしたいから、研究に使いたいということを申し上げますと、絶対駄目 だという答えが厚生省から返ってきまして、その意図はどういうことですかと尋ねたら 研究をさせないためです、という返事が返ってきたんですね。研究するために組織を残 すということは絶対に許さない、という法律の精神のようですね。だから僕は、これは なかなか越え難い壁があるなという感じを抱きました。結局今まで医者が悪かったのか もしれません、研究の名を借りて悪いことをしてきたというのがあるので、研究をさせ ないということになってしまったのではないかという反省があることはあるんですけれ ども、とにかく、使わなかった臓器を他の目的に使ってはいけない。その「他の目的」 というものの第一が研究であるというふうに厚生省から説明を受けまして、ちょっと唖 然としましたけれども。それがなかなか乗り越えられないひとつの壁になっているとい うことは事実です。 篠崎委員  研究という言葉のニュアンスが、昭和33年の角膜移植法と、53年の角腎法の場合 に、法律上は「礼意に反しない」という条文だったのが、それが通達で、「礼意に反し ない」とは何かというので、焼却だということがあったわけですが、臓器移植法には、 本文に入ってますね、確か。そこがちょっとニュアンスが違ってきたのかな、というか 精神論的に違うのかなということと、もうひとつ、眞鍋先生がおっしゃった研究という のは、移植を受ける患者さん、あるいは移植のための研究以外の研究を指していたとい うような認識がずっとあったわけですが、突然、移植に関する研究もいかん、というよ うなニュアンスに、いつか変わった、という感じを我々は持ってるんですが、多分、解 釈上で文言が変わってきたのではないかという気がして、精神的に言いますと、例えば 移植医療をよくするために研究するということに反対する国民はおそらくいないという 気がします。あるいは1回1回その承諾を取るなり、他にいろいろ方法はあるのではな いかと思うんですが、それを禁止するというのは、納得がいかない。法律だと言われて しまえばしかたないんですけれども、非常に納得がいかない。 眞鍋委員  僕の隣りに法律家の町田先生がいらして、町田先生も絶対にそれはおかしいと、法律 上もおかしい、と言ってるんですけれども、厚生省側の説明としては、そのためにこう いう条項が入ったのだと。 篠崎委員  多分、出だしの部分の研究というのは、それ以外の研究で、勝手に病院で使ってはい けないという意味だったのではないかという理解をしてたんですが。 眞鍋委員  結局わからないですからね、法律上、研究という言葉が出たら。医者のほうは金科玉 条にして、研究という名前さえつければ何にでも使えるという形で利用するから、研究 そのものを禁止しているのではないか。だから、もともと我々が悪かったのかもわかり ませんね。 篠崎委員  移植に関係する研究かどうかという評価をするのは難しいところがあるとは思います が。  ちょっと話を戻して申し訳ないんですが、角膜以外の組織を残すか残さないかという 点で、血清は5年間保存させていただいてるんですけれども、それ以外の組織は、今度 は、例えば強膜の移植とか何かがありますので、先ほど木下先生がおっしゃったように 移植に今後使う予定がある、あるいは凍結保存すれば半永久的に保存できる、あるいは 強膜の場合はアルコールでも半永久的に保存できるわけですから、それも1年で破棄し なくちゃいけないのか、というのもひとつ問題になってくるかな、という気がしたんで すが。 鎌田委員  研究に使えるかどうかの議論になるときりがないんだと思うんですが、これは国会で 相当いろいろ議論されたことを踏まえているので、ここで解釈を変更することは大変難 しいんだろうと思うんですが、ただ、臓器移植の場合には、その臓器自体が移植しない と全部捨てる以外にないんですけれども、これは使わなかった臓器なのか、使った臓器 の一部がサンプルとして残ってるのかというのはかなり違いがあるので、場合によって は、今の法律の中でなお、使わなかった臓器ではなくて、使った臓器というふうな読み で対応できることがあるのかもしれないな、と多少思ってます。そのへんのところはま た、現行法の上で何が可能かということと、現行法の見直しがどういう形で必要かとい うことを、分けてご議論していただければと思います。 山本補佐  確かに鎌田先生のご意見も1つのアイディアだと思います。肝臓移植でも、使わなか ったら捨てなきゃいけないというけど、検査のためにバイオプシーをした場合は、その 一部は残してますからね。当然それでいいと思って移植をしているわけで、それは心筋 のバイオプシーも同じですし、膵臓なんかも採ってきますもんね。そういうふうに考え れば、確かにそれはサンプルとも言える。 阿萬補佐  法律は違う。内輪もめのような形になってしまって申し訳ございません。いま山本が 申し上げましたのは、ちょっと不正確な面がございまして、要するに、法律上の条文で は、臓器移植法の規定によって摘出された臓器の中で、使われなかった部分については 厚生省令で定めるやり方で処理しなければいけない、となっておりますので、いま山本 が申し上げましたような、臓器移植の前にバイオプシーなどで採ったものというのは、 条文とはまた別の話になりますので、そういう意味ではまた別の扱いが可能だと思いま す。ただ、結局、鎌田先生がおっしゃった形でも、なくはないのかもしれませんが、移 植術に使用されなかった部分の臓器、とはっきり書いてございますので、きちんと公明 正大にやろうとすると、やっぱり施行規則の改正が必要になってくる部分かな、という ふうに思います。 丸木委員  今の議論を聞かせていただいて、ここで結論を出すのは難しいんでしょうけれども、 本委員会として、こういうふうなのが望ましいとか、そういう意見の方が多いんでした ら、そういうふうなまとめ方でいいのではないか。あとの法律的な解釈というのは、厚 生省さんのほうに、規則改正なり何なり、整合性のあるようにやっていただく、という ことでいかがでしょうか。 木下座長  是非提案していこうということですね。  まだ議題の1をやっているわけでして、今日はちょっとゆっくりなペースなんですけ れども、技術指針そのものにつきましては、各論のところは少し考えさせていただきな がら、それも次回までの間に何回か、ファクスなりで各委員とやりとりをさせていただ いて、熟したものをつくっていきたいなと思いますが、よろしいでしょうか。  ひとつだけ、先ほどからの議論の中に入っていなかったことを確認しておきたいんで すけれども、1人のドナーから、例えば全層角膜移植に使った。そのまわりに残ってい るものを保存角膜として、また違うレシピエントに角膜移植をするというようなことが 現実にはされています。望ましいことではないのはよくわかるんですけれども、提供の 眼球が少ないということですので、そういうことがされているのも事実でして、そうい ったことを基本的に容認したような形で技術指針をつくっていくのか、あるいは、それ は望ましくないから、この際、それはしてはいけないというような技術指針をつくって いくのか、というところがあるんですけれども、いかがでしょうか。 篠崎委員  参考までに、先々週ですか、アメリカのアイバンク協会の医学基準委員会がありまし て、アメリカのアイバンク協会は、1つの強角膜から1人しかいけない、という方向だ ったんですが、最近、先生がおっしゃったような、そのサイドを使ったりというような ことがあるのと、やはり向こうも、数が潤沢とはいえ、緊急に間に合うわけではないの で、実は改正しまして、複数の方に移植してもいい。ただし、問題になったのは、アイ バンクから搬送して先生にお渡しした。その後で一回開けて、打ち抜いて、もう一回戻 して、という行為が入りますね、オペ室であれどこであれ。その後のドナーのウイルス 性の感染症などについては、アイバンクの責任が継続しているんですけれども、いわゆ るコンタミネーションについての責任は、開けた段階で、最初に密閉を開封された段階 で打ち切る、というような技術指針で承認されまして、アメリカではそういうふうにな りました。 木下座長  ありがとうございます。ということは、後で出てきます強膜移植につきましても、角 膜と強膜と、違うレシピエントに行くことがあるわけですから、角膜についても、別の レシピエントに行くことは、基本的には認められるべきものであろう。ただ、細菌感染 汚染ですね、そういうことについて、どこに責任があるかということを明確にしておこ う、ということになろうかと思います。そういう整理の仕方で、技術指針案を再度つく らせていただいてよろしいでしょうか。 眞鍋委員  使った眼球をもう一度アイバンクに戻すんですか。そんなことはできないですね。2 つの手術は、1つの施設でやってもらわないといけないね。そういうところは決めてお かないとね。Aという病院で角膜を使って、Bというところでリンブスを使うというの では、ちょっと。その間にまたアイバンクが入るということは、ちょっと無理だから。 金井委員  同一病院ということと、あとは保存液ですよね。それをあと一回細菌の検査を行う、 というのを入れておいたらどうですか。 八木委員  それはアイバンクが間に入るんですか。 眞鍋委員  入らない。 八木委員  アイバンクは、まず1番目のところに届けたらそこまでで、その後は、アイバンクは 関係なしでいいんですね。 木下座長  そういうことになりますね。 鎌田委員  移植法上、大丈夫ですね。 山本補佐  アイバンクは、開けたものをまた入れられる? 鎌田委員  医療機関も、アイバンクからもらったものを……。 山本補佐  レシピエント選択はどうするのか。またそれは……。 阿萬補佐  あともう1点だけ。今のような形で、直接医療機関から医療機関のほうへ角膜なり、 摘出されたものの一部を渡すということになりますと、もともと移植をやった医療機関 が、余ったところを別の医療機関にあっせんしているのではないかというような話にも 取られかねませんので。実際に、最初の角膜移植法ができた時は、初期のアイバンクを 認可する時の、過去の資料とかを見ていると、やっぱりその時に、あるひとつの病院が 他の病院に角膜を供給するような場合には、その供給元の病院がアイバンクとしての、 あっせん機関としての承認を得なければいけないのではないか、という話もいろいろあ りましたので、ちょっとそこは、今の段階で、そのような形でアイバンクを経ずに全部 やってしまうというのは……。 眞鍋委員  いやいや、そうじゃない。絶対に、病院から病院ではなしに、同じ病院の中で、同じ 主治医でやってもらう。 金井委員  だから、2人入院させておいて、真ん中を1人の患者さんに使って、まわりをあと1 人の患者さんに使うと。 眞鍋委員  同じ施設内でないと駄目だということ。 阿萬補佐  勘違いしていました、すみません。 山本補佐  そこはファジーですね。 八木委員  同じ施設内でないと駄目なんですか。 眞鍋委員  そうですね。 八木委員  うちなんか、くり抜いたまわりを、他の医療機関、まわりだけほしいからって言われ る場合があるんですよ。そうすると、病院が別になってしまう。 眞鍋委員  あなたがなさった時にはかまわないわけでしょう。 八木委員  アイバンクが間に入れば、それは……。 木下座長  汚染の問題がありますんでね。汚染の責任をどこが取るかというようなことがありま すから。アイバンクがある病院にあっせんした時に、2人のレシピエントに対してあっ せんすることが可能かどうかという、そこまででしょうね。それ以上のことになってく ると、難しいでしょうね。 鎌田委員  観念的には、A病院とB病院に別々の部分をあっせんするんだけど、手順として、ぐ るっと回るという発想ですよね。 山本補佐  ただ、今の話ですと、コンタミネーションの問題が絶対に出てくるのと、それから、 2度目のレシピエントが決まってないことがありますよね。一部使っておいて残してお いて、出てきた人に、となると、必ずしも最初にあっせんしてるわけではないんですよ ね。 眞鍋委員  強膜の場合はどうなんですか。これはかまわないわけですね。角膜が欲しいという病 院と、強膜がほしいという病院は、別であってもかまわない。 山本補佐  それはもちろんそうです。アイバンクで、最初の時点で強膜だけで切片をつくってお くわけですね。 篠崎委員  プロセスを、アイバンク内でしているからですね。 眞鍋委員  だからやっぱり、強角膜片としたもので、角膜だけ使って、そのまわりのリンブスは 別のところへ、というのは、禁止しなきゃしょうがないんじゃないですかね。それはも うアイバンクは関与しないということで。 木下座長  よろしいですか。鎌田先生、法律的には。 鎌田委員  多分法律的に、ある部分はA病院の患者さん、ある部分はB病院の患者さん、という あっせんは、あっていいんだろうと思いますよね。問題になるのは、いったんA病院に 行って戻ってくると、コンタミの責任問題があるということで、いま血液製剤も戻って きたら捨ててるんですよね。それは、責任を内部的にどう分担するかがはっきりさえし ていれば、システムとしてはやっちゃいけないということには多分ならないでしょう ね。 山本補佐  ただ、クオリティ・コントロールが非常に難しいんですね。 鎌田委員  だからといって、そのリスクを患者さんに押しつけるということさえしなければいい はずなんです。しかし、バンクの側が責任の重いのはかなわんというんだったら、やめ たほうがいい。 木下座長  そのへんは、ここの実際の技術指針案を作成させていただいて、各委員の意見をとり まとめて、次回までに十分、ファックス上ではありますが、十分に練ったものを出して くる、ということにさせていただきたいと思います。よろしいでしょうか。  では、次の議題に移らせていただきます。移植に用いる強膜作成における技術指針案 について。これは、ちょっと昔ですけれども、4月28日に開催されました第3回目の 作業班で、強膜移植の需要について、ということが確認されました。そういうことで、 強膜作成についても、技術指針を示す必要があるだろうということで、ここに資料がつ いておりますので、山本さんからこのことについてご説明をいただきます。 山本補佐  資料2でございます。今の角膜の技術指針とかなりダブるところがございまして、あ えて2つにするのかどうかという議論も出てくるかと思いますけれども、基本的には、 クリーンベンチ等を持っている、無菌操作ができる施設で行って、作業環境も同様の基 準を持つということですし、ドナースクリーニングも同様のものを行う、ということで す。ただ若干、手技的に違うところ、強膜を単離して、そして洗浄していく、というよ うなところがございますのと、保存のところが、いろんなご意見があって、エタノール での密封保存という意見と、グリセリンを使う施設もあるので、全国的な基準で行くと 組織を硬化させてしまうことと、グリセリンの後の除去について十分ではないので、必 ずしもリコメンドしないということで、エタノールがいいんじゃないかということで、 これは先生方にご議論していただければいいのかなと思います。使う時はリンスして使 う。強膜は長く保存できますので、金井先生がよくおっしゃっておられます保存液の培 養問題もきちっとしておくということですが、半永久的という議論なので、何年保存と かいうことは全然書いてないので、そういう書き方でいいのかどうかということと、使 わなかったところは、礼意に反しないようにということになっています。強膜について は1枚に残しておいてもいいし、はじめから4分割もしくは2分割しておいて、それを 分けておいて使うということもあるでしょうけれども、考え方としては同じように、1 回開けて出して使って一部を使用し、残りをまた保存しておいて、ということはあまり 想定してなくて、そういうことが多いようであれば、前もって分割しておいてね、とい う考え方です。記録の保管については、きちっとあっせんの記録を残すことと、保管の 記録についてもかなりきちっと管理していかないと、一部、何年前に提供されたものか わからない、というようなことでも困るので、そこがあります。  各アイバンクが角膜のあっせんの厚生大臣の許可を取っておられるわけですが、強膜 については今回初めて出てきた問題ですので、各アイバンクは強膜のあっせん業の許可 はもらっていないので、今までの事業計画は角膜だけを想定していますので、この技術 指針が出た段階で、厚生省としては、各アイバンクに対してお示しして、強膜もあっせ んしたいというバンクについては、強膜のあっせんの変更手続きを取っていただく必要 があると考えております。 木下座長  ありがとうございました。技術指針の内容そのものにつきましては、もう少し整理さ せていただいて、ということで、議論そのものにつきましては、先ほどの強角膜片作成 のところでかなり議論が煮詰まったと思いますので、これももう一度整理させていただ いて、皆さんに次回までに何回かお目通しいただく、ということをさせていただきたい と思います。  強膜移植に関するあっせん業のことにつきましては、これは厚生省のから各アイバン クのほうに問い合わせて、強膜のあっせんをしたいところは再度申請していただく、と いうことになるかと思います。 眞鍋委員  強膜をあっせんする許可基準というのをつくっていただくとしますと、将来、強膜の 組織の価格というのが決まると思うんです。その場合、角膜だったら1枚いくらという ことでいいんですけど、強膜はいくつにも分割できる。例えば20個に分割してでも、 1個あたり同じ値段というのではちょっと困るような気がするんですが、このへんは、 なんぼにするかということもはじめに決めておいたほうがいいんじゃないかと思うんで すが。20個に分割してでも、これ1個です、なんていってあっせんするアイバンクが できたら、ちょっと困るような気がします。 金井委員  保険はもう認められてるんですよね、確か1枚1,500円ぐらい。 山本補佐  移植術だけが。 金井委員  ええ、強膜移植術として。 山本補佐  実際には、医療保険では移植術は認められているのですが、強膜については評価され ていません。ただ、各団体、それから眼科の関係団体からも、強膜についての保険適用 については、4月の診療報酬の改定に向けて要望書が出されており、このことについて は中医協での議論になると思うんですけれども、考え方としては、保険点数がつくかど うかは別としまして、角膜のほうがはるかに需要が高いということで、強膜移植だけの ための強膜摘出というのはない、ということからしますと、感染症検査は角膜移植の際 にもう行っている。角膜を使用した後の強膜を利用するという考え方をしていると思い ます。ですので、あとはかかる費用はそれほど高額ではないのではないかと思いますが こちらのほうの技術指針の中である程度方針が出れば、あとは中医協での議論というこ とになろうかと思います。 木下座長  よろしいですか。それでは次の議題に移らせていただきます。  議題の3番、アイバンクにおけるレシピエント登録・選択の実態について、というこ とで、平成10年度のアンケート調査からですね。これは前回の作業班で、角膜移植の レシピエントの登録・選択についてご検討いただきました際に、今後のあり方を検討す る上で、各アイバンクの実態把握をする必要があるだろう、というのが各委員のご意見 だったと思います。それで、平成10年度の厚生科学研究事業で、全国のアイバンクに 対しまして実態調査が、眞鍋先生を班長として行われておりますので、その結果につい て、事務局からご説明をお願いします。 山本補佐  お手元の資料3でございます。参考資料3に前回と全く同じ資料をつけておりますが アイバンクが今後レシピエント登録なり選定をやっていくのかどうかという議論をした 時に、必ずしも実態がわかっていなければ議論はできないのではないか、というような ご意見を多々いただきました。厚生省で調査をしようと思っておりましたら、いま座長 からお話がありましたように、平成10年度のアンケート調査で、以前、この一部を安 全基準のところでご紹介しましたが、ほとんどの項目がここで調査されていて、新たに 何を調査したらいいか、事務局もアイディアを出しあぐねたものですから、詳細に関連 部分について資料3でご紹介させていただきます。  アイバンクに対して、51アイバンクを調査し、50バンクが回答してくださって、 ほとんどのバンクのご回答をいただいたということになります。  レシピエント選択のための待機患者リストの作成はどこが行っているか、というのも 各医療機関が多いんですが、アイバンクで18バンクございますけれども、この中で事 実上、医療機関の中にアイバンクが置かれているところがかなり含まれておりまして、 アイバンクでやっているのか医療機関でやっているのか判然としないところもあるよう です。  待機患者数については、300〜500人というところもございますし、1〜20人 というバンクもありかなり幅があるということです。  次に書いてあります二重登録の問題ですけれども、認めていないというのは1カ所だ けです。その他の答えは、認めているとか認めていないとかいっても、チェックのしよ うがないという問題はあります。  2ページ目ですが、レシピエントの選択について明確にアイバンクがやっていると回 答したのは4バンクで事実上、コーディネーターが配置されているアイバンクに限られ ていまして、ほとんどの施設は医療機関がレシピエントを選択しているという回答なの で、このへんが、アイバンクに対して詳細に、レシピエントの選択基準はどうですかと か、誰が担当してるんですかと聞いても、この4バンクの答えしか返ってこないという ことで、事実上、医療機関に委ねているということになります。  明文化したレシピエント選択基準はありますか、といった時に、あると答えたのは2 バンクしかないものですから、この2バンクというのは実は名前もわかっておりますの で、それ以外の施設に、あなたの基準は、とか言ってもあまり意味ないかなということ です。主には、登録順、プラスアルファのモディフィケーションみたいな形だと思いま すけれども、そうなっております。  通常と緊急の待機時間ということで、緊急でも30日とか365日以内とかいって、 こういうのを緊急と言うかどうかという非常に難しい問題がありますが、いずれにして も、眼球の提供が少ないことから、こういう事態になっているのだろうと思います。  眞鍋委員のやってくださった研究は、次の3ページ以降、逆に、角膜学会会員、医療 機関側に対しても、同じような設問を聞いてくださっています。角膜移植希望者の登録 を行っている機関は、病院が、という答えは、これも同様な傾向で、アイバンクという のは、医療機関がアイバンクを兼ねているようなところがございますので、こういう形 です。  二重登録を認めている、認めていないといっても、認めていないというのは18回答 いただきましたが、結局事実上自己申告で、各アイバンクでレシピエントの登録リスト が必ずしも一元化していないから、二重登録の確認のしようがないというのが現実で す。  レシピエントの選択は医療機関がやっている、というのが圧倒的多数です。  明文化された基準はあるか、ということですが、これも医療機関でつくっておられる ところ、「はい」が10%、残りは「いいえ」で、明文化はされていないということで す。 待機時間についても、先ほどと同様の傾向ですし、緊急時の待機時間も同様で す。  事務局のほうで、これ以上アイバンクに詳細に調査しても、事実上、医療機関に委ね ている部分が濃く出ているものですから、もし新たに調査する項目があればと思って、 このまま出させていただきました。以上です。 木下座長  ありがとうございました。このへんのことにつきましては、なかなか難しいですけど ……。 眞鍋委員  北川班の研究はいまだに続いておりまして、こういうアンケートもありましたし、そ の他、コーディネーターとかメディカル・ディレクターなんかについても、もうちょっ と実態把握をしてから考えるべきだと。勝手に提案ばっかりしていても、各アイバンク がなかなかついて来ないんじゃないかということで、もういっぺん、アンケートを取ろ うということで、いま篠崎先生にチェックしてもらっているんですが、これを見ていま すと重複している部分もありますので、そのへんも整理して、厚生省からも何か要望が あるのであれば、一緒にまとめてアンケートを取ったらどうかなと思いますので、お願 いします。 木下座長  わかりました。具体的なアンケートの内容として、もう少し……。 横瀬委員  私の考え方としては、本当の狙いは、アイバンクと言いながら、現実の問題として、 それらしい活動は全然せずに、ただ都道府県に1つずつ置くということの義務的な意味 でもって、いろんなものを兼務されておられる方が1人おられるというだけのアイバン クと、現実的に、静岡さんみたいに大変盛んに活動してらっしゃるところと、あまりに も格差があるので、ただアイバンクという名称のもとに、いろんな施策を考えたとして も、受けるほうの格差がありすぎて、結局それが非常に大きなネックになってしまうの ではないかなと思って、そういう面の理解を深めるためにお願いを申し上げたような記 憶があります。  現実的にやはり、大部分のアイバンクというのは地元の医療機関とのつながりを十分 密接に保ちながら運営しておられるというところがほとんどですし、それにすらまだ及 んでないというアイバンクもあるだろうと思うんですが、問題は、眞鍋先生がいろいろ お話しになっておられた、メディカル・ディレクターの問題とかコーディネーターの問 題とか、そういったものの育成を、果たして、こういうアイバンクを対象としてやって いくのか、それとも厚生省なり国のベースでもってそういったものの育成をしていって それを、各アイバンクの人たちと協調して、もっと活性化を図っていくというような形 に持って行くのか。いずれの方向にしても、現在、眼球の提供者はまだ非常に十分でな いということは事実ですから、結論的には、提供者を増やしていくというような方向に 持って行くために、アイバンクにどういうふうな活動を求めるのか。そういうことが当 初の狙いであったような気がします。  もちろん他にも、ロータリークラブとかライオンズクラブとか、現在一生懸命やって おられるところも、今後も協調してやっていただいていかなければならないとは考えて いますが、技術的にいろんな面の方策とか施策を決めたとしても、末端にそれがどのよ うな活動になって反映されていくかということは、非常に個体差がありすぎて、一概に できない。そうかといって、同じレベルまで持って行くには相当な時間がかかるでしょ うし、またその必要もあるのかどうかということも問題になるだろうと思います。  しかし、現在一生懸命やっておられるところは、それなりに助成をしていただいて、 そういう方が中心になって、むしろブロック化していくとかいう形で、未開の、まだそ れほど活動されていないアイバンクを育成していく、ということも、民間などのレベル で考えていく必要もあるのではないかなという気がします。  以上なんですが、要は、ひとつの目的としては、提供者、ドナーをもっと増やしても らうための方策というものを、どのへんから手をつけたらいいかということを、皆さん でお考えいただければと思っています。以上です。 木下座長  ありがとうございます。51のアイバンクの中に差がありすぎる、ということで、そ れをどういうふうに底辺を引き上げていくかということだと思います。  この議題で掴むことというのは、結局、臓器移植に関する法律で、提供する時の公平 性とかいったことをどういうふうに担保していくか。それは本来、アイバンクが、レシ ピエントを選択することも含めてするのが望ましい、するはずであることが、現実には そうなっていない、というところもありますので、このあたりを、現実的に公平性を担 保するために、どういうふうなシステムを最低限つくっていくかというところの議論も あるかと思います。  八木委員、何かご意見ありますか。 八木委員  篠崎先生からいろんなことを教えていただいて、選択基準というのは、結構自分の中 で頭がクリアになったというか、2眼提供があった場合はどうするとかいうのはわかっ たんですけれども、今度それがわかったら、公平な待機患者リストをつくるにはどうし たらいいかということで頭を悩ませてしまいまして、ただ単に登録順で、もっと眼球が あるんだったら登録順でもいいのか、どんどん捌けていくんだったらそれでいいような 気もするんですけれども、今、かなり待っていただいている状態の中だと、ただ単に登 録順だけでもあまり公平ではないような気がして、待機患者をどういうふうに、アイバ ンクが、この人に使ってください、というあっせんの仕方だと、今度は時間ばっかり食 ってしまうというか、あっせんする時に、どこそこの病院のこの患者さんに使ってくだ さい、と言うと、まずそこの病院がオペができる状態かどうか、ドクターがオペができ る状態で、オペ室が空いているかどうか、ということプラス、その患者さんがイエスか ノーかというのがあって、もしイエスだったらそれですんなり決まるんだけれども、断 われらた場合は、今度はまた全然違う医療機関に同じことを聞いて、そこで断わられた 場合はまたもとの病院に戻って、ドクターとオペ室はOKだけど、じゃあ次のこの患者 さんは、とかやっていると、実際にあっせんするのにすごく時間がかかってしまうんで す。本当だったらアイバンクがきちんと公平に分配しなきゃいけない、というのは理屈 ではわかるんですが、ある医療機関にあっせんして、その中でドクターに選んでいただ いている、というのが静岡の今の現状なんです。そうした場合は、ドクターがこの人と 思った人がもし駄目だった場合でも、すぐに自分の待機患者の中で次に移れるというこ とで、眼球を保管したりするのでも、時間的に短縮ができたりするものですから、それ がいいかどうかはわからないんですけれども、静岡の現状はそんなところです。 木下座長  ありがとうございました。実際、レシピエントの選択のための様々なアンケート調査 がされているわけですれども、まず具体的には、この項目以外に、何かさらに調査すべ き項目があるかどうか、ということですね。先ほど眞鍋先生もおっしゃっておられまし たけれども、またこれからアンケートを取るというお話もありますので、さらにプラス の調査すべき項目がありますか、ということ。それからまた、前回から、参考資料3に もついておりますけれども、今後のアイバンクのあり方について、レシピエントの登 録・選択についての今までの議論を踏まえて、さらにプラスアルファの論点があるかど うか、ということをお聞きしたいと思います。丸木委員、いかがでしょうか。 丸木委員  正直申して大変難しい問題で、前から言っていますけれども、公平性の担保は絶対に 必要ですし、今のままでいいとは思いませんし、八木さんのところのように熱心にやっ ているところでも、現実は医療機関の選択に任されている。だからおそらく、この種の アンケートをもう一度やっても、これと同じような結果になってしまうかもしれませ ん。差がありすぎるというのはみんな認めていることなんですけれども、じゃああなた はどういうふうなアイバンクを望んでいるのか、どういうふうにすべきなのか、という ような、もうちょっと本音の部分を引き出せるようなアンケートがあればよいと思いま すが。 山本補佐  先に篠崎委員のご意見をお聞きしたらいいのかなと思ったんですけれども、臓器移植 法に眼球も入っているものですから、かなり臓器移植法に引っ張らられているので、腎 臓のレシピエントは登録順に全部並べて、医療機関ではなくてネットワークがあっせん して、レシピエントを選択しているんですけれども、それと比べますと、確かに皮膚組 織移植のバンクは、世界的にもそうなんですが、別に患者登録をしているわけではなく て、重度の熱傷の患者が出た場合は、医療機関からのオファーがあったら、その医療機 関に渡す。それから、かなり皮膚の変形があった場合に、形成的な理由で皮膚移植をす る場合には、別に医療機関の患者登録リストをバンクが持っているわけではなくて、あ る程度の技術指針があったら、その基準を満たす患者さんであれば、オン・ザ・リクエ ストで提供する。ただし、医療機関の選び方は、順番にA病院、B病院、C病院、みた いな形で、成績は後で出してもらう、みたいなやり方をとっている組織バンクもあるよ うです。例えば骨髄移植などは、整形外科領域ですと待機手術をやるわけですけれども これも別に患者リストをバンクがつくっているわけでなくて、各医療機関のニーズに応 じて、八木委員がおっしゃっているのとかなり近い線でやっているので、レシピエント 選択基準なり患者登録をアイバンクがしなきゃいけないというふうに考えると、必ずし も現実に合わないのかもしれません。  それから、横瀬先生がおっしゃっていることで、さっきからずっと気になってたんで すが、鎌田先生とほとんど同じことになるのですが、そもそもアイバンクというのはど うあるべきなのかというオーバービューがあって、そのために、丸木委員はそれを裏返 して、アイバンクに聞いてみたら、ということだと思うんですけれども、ここで議論に なっているのも、そもそもアイバンクというのは何をするところで、将来どういうふう にあるべきか、というのがあって、我々は逆に個別問題から手をつけてるんですけれど も、そこをクリアにしていく必要もあると思います。 横瀬委員  私、アイバンクの将来性とかそういったものを云々するわけではないのですが、眞鍋 先生の眼球銀行協会の組織に、できればもっと強固になっていただいて、アイバンクそ のものを、非常にレベルの低い、小さなアイバンクをもっと強烈に指導していただく。 もちろん我々も協力しますけれども。今例えば臓器移植の場合にはネットワークという ひとつの全国的な組織があります。アイバンクは、現在51のアイバンクがあっても、 核になって動くところはないんですね。現在、それは眼球銀行協会にやっていただいて いるはずなんですが、大変申し訳ないんだけど、予算的にもそれほど力を持って指導し ていらっしゃるというふうには見えない。ただ、アンケートをお取りいただくとか、そ ういう形でのご指導されていることについては大変尊敬申し上げておりますけれど、も うちょっと、眞鍋先生のところの組織をうまく活用していただいて、いろんな面で、例 えばアンケートにしても、お役所を煩わすことなしに、独自の力でもっていろんな面の 解決をしていく方法はいくらでも出てくると思うんですね。そういうことで、もういっ ぺん全国的なネットワークという形で、うちでもちろん構わないんですが、眼球銀行協 会さんの存在というものをもう一度認識をさせていただいて、もっと強固な指導性を持 っていただくという形で、ある程度までのものはカバーできるんじゃないかという気が しますけれども、いかがでしょうか。 眞鍋委員  私もそう思うんですけれども、なかなか現実は厳しくて、そうは行っていません。最 近になりまして、去年からですか、評議員会というのを新しくつくることにしました。 というのは、各アイバンクができてきたのと、眼球銀行協会ができたのとは、創設の歴 史は全く別々で、各アイバンクが集まって眼球銀行協会をつくったのではなくて、全然 別に眼球銀行協会をつくって、それで各アイバンクの連絡調整、それから全国的なキャ ンペーンをしようというような意味でつくられてしまったものですから、各アイバンク との連携がうまくいっていない。頂点として総括するというような意味の組織になって いない、というのがひとつあります。定款のほうでも、全国のアイバンクを取り締まっ てどうこう、というようなことは一切書いてなくて、各アイバンクの連絡調整をする、 というだけのことしか書いてありませんので、なかなかできなかったんですが、やっぱ り法人の中には理事会だけではなしに評議員会をつくるべきだということが今度新しく 決められまして、我々のほうでも評議員会をつくりました。僕は各アイバンクから1人 ずつ評議員が出ていただいたら、と思ったんですけれども、それでは人数が多すぎると いうことで、20名の評議員がいます。その評議員の選出の方法ですが、一番最初から 全国のアイバンクから、選挙とか推薦とか、そういうことで出てきたら一番よかったん でしょうけれども、そうではなくて、理事会が選任するというような形になっています ので、それを改めて、各アイバンク、あるいは中核アイバンク、ブロック別に選挙でも して、評議員の人には各アイバンクの代表として出てきていただいて、そして眼球銀行 協会の運営にいろいろ意見を言っていただいて、全国のアイバンクの意思として眼球銀 行協会が動けるようにしたい、というふうに思っています。一番最初の評議員はこちら のほうからお願いしたような格好になっていますけれども、将来は各アイバンクから選 出された評議員の方が、眼球銀行協会を運営していただく、という形を取ったらいいん じゃないか、というふうに考えています。もうちょっと時間がかかるかもわかりません が、その方向で頑張っておりますので、よろしくお願いします。 佐野委員  非常にざっくばらんの話で恐縮です。前にもお話ししたと思うんですが、日本眼球銀 行協会は資金面で大変に苦労しておられるんです。私もずいぶん前から日本眼科医会の 役員をしているんですが、当時10数年前でしたか、大阪で日本眼球銀行協会の理事会 が開かれまして、そこに出席した時、国から出る年間の補助が300万円ということを 聞きまして、少ないと思ったんです。とにかく、もう少し国から補助してもらえないか ということが話題になったと思います。それを更に減らすという話があるということで びっくりした記憶があります。今は600万円? 眞鍋委員  いや、またうんと少なくなっておりまして、280万円ぐらいしかないです。 佐野委員  そうですか。今日本眼科医会も財政が苦しくなっておりますが、それでも、日本眼球 銀行協会に現在、200万円補助金を出しております。もう少し何とかならないか、考 慮していただかないと、かつての事務局の方がお話していましたように、日本眼球銀行 協会は発展しないと思います。実は、眞鍋理事長と日本眼科医会の前前会長の話し合い で、日本眼球銀行協会の事務所を阪大から東京の日本眼科医会事務所へ移し、事務局を 日本眼科医会がお引き受けしました。それまでは、阪大の眞鍋先生が苦労されていたと 思います。日本眼科医会へ移転してから、日本眼科医会の事務員を協会に派遣しまして 日本眼球銀行協会を公益法人にするなどして、大いに活動して、協会はかなり発展した んです。年間何だかだと1000万円くらい医会から持ち出しになりました。ところが 医会も、数年前からいろいろなことがありまして、経費を節減することになり、日本眼 科医会から日本眼球銀行協会の事務所に移していただいたんです。平たく言えば、出て いっていただいた。日本眼球銀行協会は大変お困りになり、申し訳なかったんですが、 そのかわり、協賛会員リストラとかいうことで、だんだん目まぐるしくなってきたので 眞鍋先生にお願いして、これからいろいろ対応するには、先生のような方に出て行って もらわなきゃいけないということで、実は2年ぐらい前に出て行ってもらった。その分 眼科医会の会員に協賛金5,000円をだしてもらいたいと、すごく運動をしましたけ れども、どうも実効が上がらない。 私がここでポイントとしたいのは、腎臓移植は年 間100ぐらいですか、アイバンクは1,500ということで考えますと、腎バンクの ほうは国から億というお金を出しているんじゃないかと思うんですが、アイバンクは移 植数が多い割には大変少ない。どこにしわ寄せが行っているのか、私は非常に不思議に 思っています。。ネックは資金ですね。いくら眞鍋理事長が努力されても、資金がない 限りはできない。ライオンズクラブの先生方にも資金の面で本当にお世話になって感謝 をしております。  それと、アイバンクとレシピエントの問題ですが、私はどうしても公共性は必要だと 思うんですね。待機患者の方々の気持ちがどうなのかということは私はちょっと見えて こないんですが、前にも申し上げたように、昔の角腎法の時代ですけれども、東京都で パーティーをやった時に、参加した腎臓のほうの方はドクターは誰ですか、といったら 3人来てるんだけど、医師が誰もいないんですね。アイバンクのほうは私が東京都眼科 医会の会長をしていたから出たわけですが、腎臓の方は、移植を受けておられる方も含 めて患者さんばかりで、なぜドクターは出て来ないのかとお聞きしたら、ここに来てい ただいた間にドクターには研究してもらいたい、手術をしてもらいたいんだと。こうい うところに出て来たら1日つぶれちゃう。その間に1人の患者を救ってもらいたい、と いう強烈な患者さんの声を聞いて、私もはたと考えましたけれども、角膜の場合には、 一応みんな体は動けるから、少し患者さんも甘いのかなという感じがしておりますが、 とにかくアイバンクはレシピエントのためのものですから、それを第一に。  アンケートのことになりますけれども、例えば、順番制でやるのが一番公平だと思う んですけれども、緊急にドクターが、この患者は失明してしまう、だから、次の順番に 待っているレシピエントに、実はこういうことがあって、順番だったんだけど、こうい う状況だから、あなたは3年先でもいいんだよ、もう少し待って欲しいというようなこ とをおやりになっているかどうかわかりませんけれども、やはり順番制も大事にしなき ゃいけないし、そうかといって医学的な立場も尊重しなければいけないし、そんなこと を、受ける側の方のご意見等を引き出せれば、というふうに思っているわけです。  そんなことで、言うは易し、実行は難しいんですが、私としては、ある程度、レシピ エントの順位というのを、この委員会でできればと。あとは各アイバンクの問題だと思 うんですね。ですから、例えば、八木委員は大変苦労しておられて、というのは、静岡 の県民がいろいろお金を出して、ライオンズクラブもお金を出して、県民のためにやっ ているわけです。他の自治体はおそらく、自治体がやっていれば県民のためということ になるけど、どうも角膜が足りないから、静岡の方へ他府県からどんどん角膜を移植を 受けにきてしまうということが実態で、そのへんのところも考えなければいけない、と いうふうに考えております。 木下座長  ありがとうございました。  先ほどからご意見をお聞きしていますと、眼というのが、臓器として取り扱ってあっ せんを公平にするという場合と、組織として取り扱ってあっせんを公平にするというこ とでは、少しレベルが違ってくるということで、かなり根幹に関わる内容かと思います ので、いま各委員のご意見をある程度お聞きしましたので、それをとりまとめていただ いて、また次回に議論させていただきたいと思います。  それでは、4番目の議題、これはかなり具体的なことになるかと思いますので、あと の時間を使って議論していただきたいと思います。「他の臓器と併せて眼球提供がある 場合の対応について」ということで、具体的には、心停止後の腎臓と眼球を提供いただ く場合、あるいは脳死のもとで他臓器と併せて眼球の提供をしていただく場合は、現在 は臓器移植ネットワークのコーディネーターがご家族に説明して、そしてその後、承諾 を得た後、アイバンクから改めてご家族に説明をして、別の承諾書に署名をしていただ く、というのが現状です。  これは、遺族の方に関わってくるということもありますし、他の臓器と併せて眼球の 提供をいただく際には、ネットワークコーディネーターに眼球についても説明をしてい ただいて、併せて承諾書もいただくということはどうだろうか、ということが検討課題 になっています。今後、ネットワークとアイバンク関係者で実務的な話し合いをする必 要がありますけれども、このような場合に、留意すべき点があるかどうか、ということ について、ご意見を伺いたいと思います。  ひとつは遺族への説明の際の留意点ですし、もうひとつは、アイバンク側の24時間 の連絡体制、これは日本眼球銀行協会のほうでかなり整理されたものを持っております けれども、実際的にアイバンクへ連絡した際に、どれくらいの時間で提供施設へ医師を 派遣することができるのか、というようなところを、現実的にもう少し整理する必要が あるかと思われますけれども、何かご意見があれば。篠崎委員、いかがですか。 篠崎委員  考える際に、ご提供いただく方、あるいはそのご家族をベースにすべて考えていくべ きだろうと思います。例えば臓器の意思表示カードなりで、コーディネーターが派遣さ れた場合に、臓器の話をしまして、例えば「意思があったので何でも提供したいです、 眼も」と言った瞬間に「あ、うちは関係ないですから、眼の方を呼びます」と。それで 眼のコーディネーターが来て、また1から話を聞き、組織もあったら組織も、というの は全くナンセンスであるから、そういう場合の切り口として、提供する側から切れば、 臓器があったらネットワークの人が全部やっていただいて、最後の承諾まで取って、承 諾が取れた段階でアイバンクに連絡をいただく。あるいはその前にも事前には協議す る。現に一部ではコーディネーターがアイバンクにいるところでは動き出しているよう ですから。  それともうひとつ、組織、眼、あるいは眼だけ、という3カテゴリーがあると思うん ですが、それの各々にどう対応するかというのは、やはりドナーサイドで考えていくべ きであって、我々サイドで考えるべき要件ではないだろうというのがひとつです。  じゃあそうなった時に、例えば、他臓器とか組織がかなり多い、特に東京、大阪あた りはそういうようなケースが多いわけですが、臓器のネットワークのコーディネーター ですと、かなり忙しいものですから、組織の先生がいつ来て、どういう体制で、オペ室 をどう使って、というのは瞬間的に決めなくちゃいけない事柄なんですが、私自身、ネ ットワークのコーディネーター委員もやっていまして、非常に多いクレームとしては、 アイバンクに電話しても、それこそ1時間、2時間、平気でかかっちゃうじゃないか。 逆にアイバンクにしてみると、普通そうですよね、というような状況なんですが、その へんの差が、臓器が始まって、運営していく場合に、かなり大きな溝になっているので はないか、という気がします。そういった意味でも、アイバンクももう少し、意識改革 といいますか、連絡をもらったら5分なり10分以内にすぐにお返事できるような態勢 もつくっておかなければいけないでしょうし、連絡網もつくっておく、というあたりも 我々としても必要でしょうし、逆に言うと、組織のコーディネーターに関しても、そう いったことを我々がしていけるような、ある程度の技術指針的なものを、眼に関しての 部分を織り込んでいただく、他のコーディネーターの方が知っていただくということは 非常に重要なのではないか、という気がします。 木下座長  現実に24時間体制で動いているアイバンクというのはどれくらいあるんでしょうか。 アンケートを前にしましたよね。10個ぐらいでしたか。 篠崎委員  眼球銀行協会で「アイバンクジャーナル」に昨年掲載されていまして、ほとんどが医 局なり何なりで対応されている形で、今はほとんど24時間受けられる状況ではある。 木下座長  電話を受けられるという状況ですね。実際に摘出に24時間体制で当たっているとこ ろは、ないことはないでしょうけどね。 篠崎委員  四国だとか、静岡とか、あると思います。 木下座長  すぐ行きます、というのは10ぐらいの施設じゃなかったかなと思いますけれども。 現実には全部ではないですから。八木委員、何かありますでしょうか。 八木委員  臓器と一緒の提供の場合、説明とかは、コーディネーターが入れ代わり立ち代わりと いうことではないほうがいいと思うんですけれども、臓器のほうはきちんとセミナーが あったりとか、皆さん勉強をしているんですけれども、アイバンクのコーディネーター というのは、ある意味で自称のアイバンク・コーディネーターというか、その県では認 めてもらっていても、ちゃんとした認定があって、とかいうものではないものですから 調整が難しい。本当に同等に持って行けるように、アイバンクのコーディネーターの育 成もしていっていただきたいなと思います。  ちょっと戻ってしまうんですけれども、眼球銀行って、先ほど眞鍋先生が言われたよ うに、例えばPRとかいう意味でできたのであれば、あの眼球銀行は眼球銀行でそうい うものとして残しておいて、そういうことをやるためのきちんとした組織でいいと思う んですけれども、それ以外に、今後、コーディネーターを育成するとか、メディカル・ ディレクターのことを考えるとかいう時に、今の眼球銀行のメンバーだけでどこまで専 門的な話ができるかというのが、ちょっと難しいような気がするものですから、別組織 か何かで、今後のアイバンクの育成に向けての新しい組織ができて、そういうところで コーディネーターの研修などをやっていっていただければ、かえって、今眼球銀行の中 に手をつけて、アイバンクのコーディネーターをするとかいう話は、かなり難しいと思 うので、そういうものを希望します。 木下座長  組織的な問題というか、広報活動的なものと、それから臓器移植ネットワークみたい なシステム構築というのは、若干違うのではないか、というご意見だったかと思いま す。丸木委員、何かありますでしょうか。 丸木委員  さっきの、銀行協会のほうを拡充するという話で、私は銀行協会のメンバーにどうい う方がおられるのか、存じ上げないものですから、その問題はちょっと置いておきます けれども、対応については、やっぱり基本的には、ドナーの負担を考えると、入れ代わ り立ち代わり説明されるのもどうかと思います。結局、アイディアルなアイバンクはど うあるべきか、というところとも密接に関係する議論になりますけれども、私自身は、 ちょっとよくわかりませんけれども、銀行協会がそういう組織としてあるのであれば、 もう少しそこに協力体制をつくっていって動いていく。ただ、八木さんのおっしゃるよ うに、コーディネーターをこれから育成しようとした時に、やっぱり何か全国統一的な ものがあったほうが、バラバラのアイバンクがそれぞれコーディネーターを育成してい くというやり方は、あんまり馴染まないのではないか。むしろ、統一の研修機関なり、 プログラムなりで、育成していく、その面ももう少し、組織はどうあれ、考えたほうが いいのではないかと思います。 木下座長  鎌田委員、何かございますでしょうか。 鎌田委員  篠崎委員のおっしゃったことはもっともだというふうに思っております。あとは実務 的にどういう対応をするのが一番効率的なのかという問題で、現場がどんな形で進んで いるかによることではないかと思います。脳死移植で、臓器が全部提供されるという場 合に、眼球をどうするかという場面と、むしろ脳死移植を家族が拒んでいるときに、せ めて眼球だけでも、死後移植したい、という頼み方をする時とでは、少し違うのかな、 という感じもしなくもないんですけれども、臓器移植ネットワークでカバーしていただ けるところはカバーしていただくという形をとりながら、アイバンクのコーディネー ターの養成・充実をやっていくしかないのかなという気がします。 木下座長  佐野委員、いかがですか。 佐野委員  難しい問題だとは思いますけれども、さっきの教育の問題は、あくまでも、私が申し 上げたように、是非厚生省が音頭を取って、例えば、医療研修推進財団とか、ああいう ところでやってくださるととてもありがたいし、コーディネーターもハクがつくんじゃ ないかと思っております。 木下座長  基本的には、ネットワークのコーディネーターに、眼球についても説明をしていただ いて、承諾書を取っていただくことについては、各委員、ご異論はないことだろうと思 いますので、実務的なところで、どういうふうにネットワークを話をしていくかという ことはまた少し考えさせていただいて、事務局のほうでとりまとめていただいたらと思 います。  最後に、眼球銀行協会になるか、そうでないかわかりませんが、コーディネーターと か、あるいはメディカル・ディレクターを含めて、教育的なところをどういうふうにし ていくか、ということについて、金井委員、いかがですか。 金井委員  僕の考えは、アイバンク・コーディネーターやメディカル・ディレクターは、やはり 眼球銀行協会がありますので、そこが指導的な立場をとって、委員会をつくるなりして 第三者の方、専門家を入れてやっていく。  眞鍋先生のおっしゃった眼球銀行協会のあり方、僕はちょっと勘違いしてたかもしれ ませんけれども、僕の理解では、眼球銀行協会というのは、各アイバンクは個々には対 外的には交渉できないので、確か7つできた時に、対外的に交渉するために1つの協会 をつくって、そこが代表で厚生省なりといろんなことを話し合う、というのもひとつ入 っていたと思います。そういう考えが今も続いていると思っているので、いろんな面で 眼球銀行協会がイニシアチブを取って、委員会をつくるなりして、どんどん積極的に動 いていく。 それから、提供が少ない。どうしたら増えるのか。そこらへんを考えて、 社会的にどういうふうにしていくかということまで含めて、やはり協会がやるべきでは ないかなと思います。それに各アイバンクがそれをサポートする、という考え方です。 木下座長  篠崎委員、どうですか、EEAの報告と日本眼球銀行協会の今の現状と。 篠崎委員  まず、名前は、眼球銀行協会で同じなんですが、ひとつは、アメリカのアイバンク協 会は、理事と呼ばれる方が10名いますけれども、結局、アメリカの協会は何をやって いるかと言いますと、全国のアイバンクから800名を集めて技術指導をしたりしま す。オフィス自体はたった5名の若い方で、ワシントンでやっていますけれども。アメ リカアイバンク協会自体の予算は年間5千万円しかないんですね。ほとんど給料と場所 代だけなんです。その他に年2回やっている、過日もありましたアカデミー、総会で、 20の委員会があって、いろんな運営全部は、実はアイバンクの人がやっているわけで す。協会の理事は全く関与してなくて、アイバンクの人たちが出て来て運営しているの がアイバンク協会であって、ですから、先ほど真鍋先生がおっしゃった協会の評議員と か理事とかいうのは、財団としての眼球銀行をどうやって運営していって、どうやった らいいのか、という問題だと思うんですけれども、今僕たちに足りないのは、多分現場 の、あえてプロフェッショナルと言っていいのかわかりませんが、現場のアイバンクで 業務に携わっている人たちがみんな集まって、こういった事業展開をしたらこんなふう になった、あるいはこういう失敗があったからこれはやめようと。例えば、アメリカで すとこういう発泡スチロールの箱まで全国のアイバンクの人が持ち寄って、どれが一番 いいか決めて、頼むと、1個1円50銭でできるんですね。そういうことをアイバンク の人がどんどんやっているから、うまくいっているんであって、アメリカアイバンク協 会も理事が出てきて決めようとしても、アイバンクのことは何も知らないわけですか ら、アイバンク協会で全国150のアイバンクの方策を決めようと思っても何も決まら ないと思うんですね。だから、各アイバンクからの、もうちょっとアクティブなインタ ラクションと言いますか、アイバンク協会は理事がやってて、理事の言うことを聞くん だ、というのではなくて、もう少し各アイバンクの人が出てきて、現場で困っているこ とをどうしたらいいのか、あるいはどうやったらうまくいった、どうやったら失敗し た、という話が日常的に出てくるようなプロの集団にしていかない限り、うまくいかな いだろうと。予算規模から言うと、アメリカは10万眼で5千万円ですから、日本の場 合は100万円でいいのかな、という感じはするわけですけれども、基礎的な運営の費 用もあるでしょうから、それはできないと思いますが。 先ほどの公平性にも関わって くることだと思うんですが、そういった慣れた方がいて、角膜の選別まで、ある程度ち ゃんとクオリティ・コントロールができるようになって、先生方に、こんな角膜が出ま した、という情報が伝われば、先生方も選べると思うんですね。これはうちの患者には できないと。それはある程度の順位をつけておいて、先生、こういうのが出ました、と いうことで、ちゃんと書式になって、細胞まで写真を撮って、ファクスで送ってくる、 というのが向こうのやり方ですから、そこまでプロが成長すれば、レシピエント選択云 々がうまくできるようになると思うんですね。  ちょっと付け加えて言いますと、前にも一回言いましたが、アンケートを取った時の 一番多い勘違いは、先生方が、あるいはアイバンク側が、レシピエントの選択基準とい うのは患者の適応だと思っている方が、実は8割いますので、全くアンケートになって いないというのが僕の印象で、この患者さんが移植をするのかしないのかを決めるのは アイバンクはやらない、というお答えがほとんどです。ですから、移植の先生が適応を お決めになって、この患者さんには、例えば若い新生角膜で3,000ぐらいの角膜が ほしいとか、35歳ぐらいのがほしい、というリクエストをアイバンクに出す。それを もらったアイバンクが、それが出てくるまで待つ、というのが公平性だと思うんですが そこの誤解が、非常に溝が大きくて、アイバンクはうちに来る患者が移植かどうかわか るわけねえじゃねえか、という反応が非常に多い、ということもあえて付け加えさせて いただきます。 木下座長  ありがとうございました。最後に眞鍋先生。 眞鍋委員  眼球銀行協会の力不足を指摘されまして、私自身もつくづくそれは感じております。 何とか強くしていかなければならないと思います。それをするためには、一番いいのは 各アイバンクから実際の実務者が眼球銀行協会の、評議員という名前がいいのかどうか わかりませんけれども、構成メンバーの1人になって、眼球銀行を指導していただく、 というのが非常にいいのではないかなと感じています。評議員会ができたということを 契機に、その方向に向かって私も努力していきたいと思っておりますので、よろしくお 願いします。 佐野委員  医療研修推進財団ですけれども、日本眼科医会は会員になっていまして、年間60万 の会費を払っている団体でありますので、日本眼科医会の方から、あるいは日本眼球銀 行協会、それから角膜移植学会の連名で、お願いするかもしれません。 木下座長  大体時間になりましたけれども、日本眼球銀行協会は決して力がないわけではないと 私は思っておりまして、ここ数年でずいぶん組織的にも中を充実させようというふうに なってきておりますので、まず資金的なところがついてくれば、この組織は十分これか ら大きく活動できていくのではないかと思いますので、そのあたりにつきましても、厚 生省でも考えていただきましてよろしくお願いいたしたいと思います。  では、定刻になりましたので、本日の第5回の眼球・アイバンク作業班につきまして は、これでお開きにさせていただきます。ありがとうございました。                                       (了) 問い合わせ先  厚生省保健医療局エイズ疾病対策課臓器移植対策室    担 当  山本(内2361)、木村(内2364)    電 話 (代)03−3503−1711