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医療保険福祉審議会 第20回運営部会議事要旨


1.日時及び場所
平成11年11月15日(月)14:00〜16:15
霞が関東京會舘ゴールドスタールーム

2.出席した委員等
塩野谷、見坊、下村、中西、村上、青柳、喜多、野中、山崎、柳、堀江の各委員
高梨、赤司の各参考人
井出本、増田の各専門委員

3.議題

(1) 運営部会の検討項目について
(2) 介護特別対策について
(3) その他

4.審議の概要

1)はじめに事務局より、議題「運営部会の検討項目について」に関する資料の説明があり、その後、発言及び質疑応答が行われたが、その概要は以下の通りである。

(下村委員)

○ 現状に対して、どういう方向に保険制度を持っていきたいのかという根本的な考え方がわからない。確かにいろいろ個別項目は挙がっていて、それぞれが問題であることは確かだが、そういった項目を含めて、将来保険制度をどのようにしたいのかという方向性が見えない。

○ 健康保険組合にしても、国民健康保険にしても、いつも保険料を上げるという答えだけしか出て来ない。では保険料を上げれば、数年間は安定するかというと、そうはいかず、せいぜい1、2年ぐらいで再び上げなければいけないという話になる。そういう状態を一体どうするのか、ということに対する答えが欲しい。
○ 高齢者の一部負担についても、将来また財政が悪くなったときには、今度は2割負担になるのか、あるいは行く末は3割負担にでもなるのかという不安がある。
○ 薬剤の一部負担の廃止については、政党政治の下で与党が決めたことではあるが、全体の構造が明らかにされる中で、こういった措置についてもはっきりさせていくべきではないか。
○ 平成12年まであと1ヶ月と少しである。これから一体審議会において何を議論するのかを明らかにしてもらいたい。構造改革の議論を続けるのか、それとも12年度の対策だけについて議論するというのか、ということをはっきりしてもらいたい。
○ 介護保険の保険料と医療保険の保険料の問題は密接に絡んでおり、介護保険を円滑施行するためには、医療保険料率の上限のあり方とか、国保保険料の上限額の問題については、介護保険の施行と同時解決が必要である。

(事務局 柴田保険局企画課長)

○ 抜本改革の4つの項目については、資料065の2ページにございますように、進捗状況には差があるがそれぞれ現在進行中ということであり、それぞれのところでやっていただくことになるのではないかと思っている。もともと、どの項目をとっても、関係者、利害が異なる項目でございますから、現時点においては明確な結論が出ていないというのが今の状況である。
○ 資料066の各項目の一つ一つを見ていくと、単なる負担増、あるいは、個別暫定的な当面の対策、というように見えるけれども、この項目については、抜本改革を検討していく中で、保険料負担増をなるべく生じさせないように、ということで議論されてきたというような経緯もある。
○ 運営部会の検討事項は、抜本改革そのものというよりは、いまある制度の運営をご審議いただくという場ではないかと考えている。従って項目だけを並べると、当面の対策ではないのか、あるいは負担増だけではないかと捉えられるかもしれないが、抜本改革全体の大きな流れの中で、それぞれの項目については位置づけられると考えている。

(下村委員)

○ 平成11年の時も、保険料は上げない、と言いながら、実際には保険料を上げている健保組合もあるし、国保の保険料についても上げたところがあるのではないか。保険料については、平成11年の水準以上には上げないというのか、それとも現行上限の範囲内であれば、引き上げはさせるという考え方なのか、そこが考え方の基本としてあるべきではないか。
○ 景気はようやく底をついたと言われているが、健保組合の実態から見ると、財政的に楽になっているとはとても思えない。リストラをこれから行うという企業も多いわけですから、保険料をとりあえず上げないという理由は十分に存在し得ると思う。厚生省として、そういう状況の中で医療保険をどう運営するのかという一つの考え方があっても良いのではないか。

(見坊委員)

○ 時間がありませんから、意見だけ申し上げておきます。医療保険制度だけでなく、老人保健制度についても、抜本的な改革が平成12年度においては行われなければならない、ということであり、それを踏まえて老人の一部負担の見直しなども行われてきたわけであるが、制度企画部会において十分議論することなく、運営部会だけが部分的な問題を論ずるのはいかがなものか。全体の議論を先送りにしたまま、一部負担とか、薬剤の定額負担とか、こういう部分的な議論だけを行うことは、かえって全体の制度の改革といったものを遅らせることになるのではないか。
○ 医療サービスはそれぞれの保険制度によって若干の差はあってもいいとは思うが、大きな差があることは好ましくない。政管健保、健保組合、あるいは市町村国保、国保組合、こうしたところが並べられますが、一体共済組合とかその他の制度はどうなっているのか。拝見しておりますと、付加給付とか還元給付とか、あるいは実際に病院によっては、ある関係の人はほとんど無料、あるいはそれに近い形でサービスを受けている。医療保険制度によって、給付内容がまちまちでは将来の医療保険制度が本当にいい制度になるのかどうか、大変疑問に思っているわけでありまして、そのあたりについて、資料も十分に各制度並べて出していただきたい。その給付のあり方並びに保険料のあり方といったものも是非比較して論ずるようにお願いしたい。

(村上委員)

○ 97年における医療費負担増というのは相当大きな問題があったが、その時の約束は、2000年までに必ず抜本改革をやる、だから、負担先行でお願いしたいということを内閣挙げておっしゃったはずである。しかるに、抜本改革について全然姿が見えて来ない中で、負担増及び現金給付のカットという問題だけを出して運営部会でやってくれと言われても、私どもの責任として審議のしようがない。負担増なき抜本改革の姿が先に出て来ないで、新たな負担増とか給付を抑制するとか、そういうことについて審議してくれといわれても、我々としては、国会及び行政が国民に約束したことを守れない中で、どうやって審議すればよいというのか。

(事務局 柴田保険局企画課長)

○ 審議項目については、運営部会の所掌として考えられるものにつきまして、この運営部会で審議をお願いしたいということで整理をしたものである。したがって、項目だけ見ると負担増、あるいは当面の対策というふうに見られるかもしれないけれども、これは全体の抜本改革の議論の流れの中で出てきたものであり、しかも、保険料負担をできるだけ抑えるというスタンスの上で出てきた検討項目でありますので、是非ご理解をいただきたい。
○ 通常の審議会では、簡単に言えばゼロから積み上げるというような形で議論を進めるのであろうと思うけれども、今回は自民党の基本的考え方というものも踏まえまして、厚生省が自民党と並行して案をつくるという形になっている。そういった事情のもとで、我々は自民党の基本的考え方を踏まえた案をつくるという立場に立っているわけであり、具体案の作成過程の中で気をつけなければいけない事柄等々につきまして、是非ご審議を賜ればと思っている。そうした上で、最終的に制度改正案をまとめるということになれば、また改めて当審議会に諮問、そして答申をいただくという形になろうかと思う。

(村上委員)

○ 運営部会での検討項目について、制度企画部会の議論の中で全部出てきたということではない。抜本改革の姿を明らかにしてから、個別の検討項目について見直してくれ、というのならば筋が通るが、抜本改革を何もしないで、自民党から要請を受けているからお願いしたいといわれても、審議しかねる。

(事務局 柴田保険局企画課長)

○ 抜本改革については、何もしてないということではなくて、資料065の2ページにございますように、それぞれのテーマについてそれなりに検討を進めている。そういう中で、当部会の検討事項について、しかも抜本改革の議論の中から関連するものとして出てきたものについて、この場でご議論いただきたいと考えている。確かに、ゼロから議論が始まり、そして政府案を固め、それから与党と相談するというのが通常のパターンであるけれども、今回はこれまでの経緯の中で、与党から考え方を示されているということに対してどうするかということも考える必要があり、このような形でご検討をお願いしたいというのが今回の趣旨である。

(村上委員)

○ 抜本改革の姿が見えない中で、個別の検討項目についての議論はできない、ということだけ申し上げておく。

(高梨参考人)

○ 下村委員、村上委員がおっしゃったのと同感である。抜本改革なしでこれ以上の負担増はしないという方針の下で議論を進めるべきである。資料065の1ページの「7.保険料率上限のあり方」について、事務当局から、上限改定は不可避であるということを前提にこの項目を入れたという説明を受けたが、むしろ、上限改定をしないということを前提の下に検討をするべきではないか。

(下村委員)

○ 平成9年末の議論の時に、医療保険制度を議論する審議会ではなかなか議論がまとまらないまま12月の半ば過ぎぐらいになって、そこで突如、退職者医療の老人医療費拠出金を被用者保険サイドで負担し、同時に国庫負担をカットするという案が提案されたことがあった。それで、我々委員としてはいきなりそのような議論を出されても困ると言って当然反対したが、とにかく財政的にもたないというなら仕方がない、ということで部会長がとりまとめられた。その数日後に、中医協が最後までもめて、実際上、審議打ち切りに近い形で中医協の審議が強引に終わらせられて、翌日には1.5%に引き上げるという厚生省の決定がなされた。今回は、あの時のような進め方はしないで、もっとフェアなやり方で議論するという厚生省側のはっきりしたお約束を頂戴したい。この審議会での議論と、診療報酬改定と両方の考え方を合わせて12年度の姿を明らかにするように努力をすると約束いただきたい。

(塩野谷部会長)

○ 本日の2つの議題のうち、介護特別対策については11年度の補正予算に組み込まれる内容でありますので、11月末頃には国会に提出される。また、運営部会の議題については12年度予算に組み込まれるものである。従って、この2つの予算について、土壇場に来ていきなり成案を示すのではなく、議論の材料を示しながら、早く議論を始めたいということで、現在2つの問題を取り上げているつもりである。

(事務局 近藤保険局長)

○ 2年前については、財革法の問題もあり、無理をお願いしたということは承知しているし、中医協の関係でも閣議決定そのものを遅らせるという非常事態であった。そういう意味で、非常事態的な処理の仕方がされたということは、承知している。
○ この医福審の運営部会におきましても、また中医協の場におきましても、円満な解決を図るべきというのは当たり前であるが、関係者の利害が錯綜し、また政府全体としての予算編成という問題もあり、きれいな形でいかない場合も当然予想されるわけである。今回は、2年前のような形をなるべく避けたいということで審議をお願いしたいと考えていますし、抜本改革そのものについてももちろん諦めたわけではない。
○ 高齢者医療のあり方についての検討がもっとも遅れているが、この問題については、利害関係が鋭く対立する中で、なかなか決着がつかない。ゼロサム的な状況の中で、高齢者の増加による医療費の増加を、一部負担で支えるのか、公費で支えるのか、あるいは保険料で支えるのか、どの方法が国民の納得を得て負担していただけるのか、という問題であろうととらえている。
○ 従って、高齢者医療のあり方については粘り強く議論していかざるを得ないのではないかと思っている。そういった状況の中で、老人の一部負担の関係では、ある程度の方向性は示されており、また、薬剤の定額負担については与党としては廃止する、という方向が明確になっている。これが実施されるとかなりの額のしわ寄せが保険料にまわって来ることになるが、これをどうするかという問題であり、ご議論を是非ともお願いしたいということである。

(村上委員)

○ 過去の経緯からいっても、抜本改革の姿が見えないうちは審議が進められない。
○ 薬剤定額負担の問題については、以前に運営部会において意見書を出しており、我々の意見ははっきりしている。97年度以降の経過を見ていると、我々が出した結論は全然見向きもされず、また、制度企画部会が苦労して出した結論についても与党に握りつぶされてしまった。これではどうにもならない。

(見坊委員)

○ 平成12年度予算に内容を盛り込むことを想定してこの検討事項を出しているのか、それともタイムリミットを別に考えているのか。

(事務局 柴田保険局企画課長)

○ 運営部会の検討事項につきましては、少なくとも、ここにある事項については平成12年度の予算に間に合わせて、次の通常国会に法案を出すというつもりである。
○ 抜本改革の姿が見えないうちは審議できないというお話であるが、現実問題として、薬価や診療報酬というのは中医協で議論しており、これは診療側と支払側がそれぞれの立場で議論を戦わせるという性質上、通常はギリギリにならないと決まらないということは事実である。従って、来年度予算に盛り込む必要のある事項について、中医協の結論を待ってから議論していたのでは間に合わないということで、今から案をつくるに当たって注意しなければいけない事項についてご指摘をいただきたいということである。

(下村委員)

○ 抜本改革の中で要の問題というのは、老人医療の問題である。その老人医療について、厚生大臣は委員会等の答弁では、平成12年当初からはできないと言っている。また、先ほどの近藤局長のお話でも、これはゼロサムゲームであるから難しいということであり、これでは本当に改革を実現するという姿勢が感じられない。本当に検討するつもりがあるのかどうかをはっきりしてもらいたい。
○ 老人の一部負担の問題については、介護保険と同じように原則1割負担として、負担が加重になるものについては高額療養費制度のような形でやるべきである。医師会の主張するような上限3千円という案には反対である。ただ、原則1割負担とするとしても、今後の展望をあわせて説明し、将来的に1割負担がどうなっていくのかということをはっきりさせておく必要があるのではないか。

(見坊委員)

○ 老人の一部負担についてのこれからの審議日程と、事務当局の現在の考え方をうかがいたい。

(事務局 柴田保険局企画課長)

○ 委員の先生方の日程調整が必要になるが、できれば、次回は12月1日、その後1週間に1回ぐらいのペースで審議をお願いし、予算の最終期限である12月20日頃までに、次回の1日を入れて3回ぐらいお時間をいただければと考えている。

(青柳委員)

○ 抜本改革の中で、一番の重点は高齢者医療制度の見直しである。今年の8月に出した意見書「新たな高齢者医療制度のあり方について」のとりまとめがなされて3ヵ月余り経つが、その後の進捗状況を教えていただきたい。

(事務局 井口老人保健福祉局企画課長)

○ 8月の意見書では、4つの考え方が示されているが、議論の中で大きく論点が分かれたところは、一つは財源を公費中心とするのか保険料中心とするのかという問題、もう一つは保険者のあり方をどうするかということであった。4つの考え方のそれぞれの案の積極面、あるいは問題点について整理していただきましたので、その中でどれが一番現実性があるか、あるいは関係者の合意が得られるかどうかについて、引き続き検討を行っている。
○ 財源の問題について言えば、公費中心とした場合の財源の問題、また、保険者のあり方について言えば、全国一本の保険者にして新たにつくったらどうかといった考えや、あるいは地域を単位としてすべての保険を一本化したらどうかといった考えなど、さまざまな意見をいただいた。現在、それぞれについてさらに検討を加えているが、現段階で関係者の合意が得られるような具体的な提案ができるまでには至っていない。ご指摘のさまざまな点については引き続き検討を続けたい。

(青柳委員)

○ 提案できるような整理をするまでは省内で検討を続けるということか。今後のスケジュールはどのように考えているのか。意見書から3ヵ月以上経っているのだから、多少は議論も集約されているのではないかと思うが、もう少し具体的に、これからの予定について教えていただきたい。

(事務局 井口老人保健福祉局企画課長)

○ 8月の意見書の時点では、さまざまな意見を踏まえた上で、政府として成案を得た上でとりまとめをせよという注文をいただいており、次回のとりまとめをする際には、成案という形で今度はお示しをする必要があると考えている。
○ ただ、現段階ではまだ意見の提示という段階には至っておらず、また、与党の中で協議という手続き的な面もあるので、そういった要素を勘案しながら、平成12年度から改革への一歩が踏み出せるようなものを目指したいと思っている。

(下村委員)

○ 成案を出せるようなことを言うから誤解を招くのであって、本当は成案は出ないのではないか。出すというのなら、8月以降の検討状況を出してもらいたい。
○ このままでは、現在の医療費を誰も払えなくなる。そこをスタート地点として考えるべきである。そこをはっきり認めないと、きちんとした議論はできないのではないか。

(事務局 井口老人保健福祉局企画課長)

○ 成案を出せというのが審議会からの注文であり、私どももそういう方向で平成12年度に第一歩でもということで約束していますし、努力もして参りましたので、最後までその努力を続けて参りたい。

(下村委員)

○ 12月が目前に迫っているのだから、当面のところ何を解決しなければいけないかぐらいのことが言えなければ、案が出てくるはずがない。現実に立って答えをすべきである。

(野中委員)

○ 抜本改革については、保険料と患者負担と国庫負担、事業主負担、これらの負担があってはじめて医療保険が成り立つということを考える必要がある。
○ 政治家に審議会での議論をしっかりと伝える場が必要である。そうしなければ、選挙対策のために、審議会で議論した医療の実態や保険者の負担過重の内容が政治家に伝わらないのではないか。審議会の委員と、社会部会なり、医療保険に関わる先生方との論議を行う場を厚生省で作るべきである。そうしないと、せっかく審議会で議論しても、国会議員の先生方が選挙目当で政策内容を変えてしまうのでは、いったい何のための審議会なのか分からない。
○ 老人の一部負担の見直しについても、当然行う必要がある。介護保険では、保険料が所得に応じて5段階になるが、これに対して健康保険料が老人の負担がないという中で放置されるのはおかしい。従って、健康保険についても、所得のある高齢者については、医療費の一部負担ではなく保険料で負担してもらうような制度に改めるべきである。私の町で調査をしたところでは、年間所得が800万円以上の方が17%いらっしゃる。この方たちから保険料を多くいただいて、その分を低所得者にまわせば、低所得者の負担の軽減ができる。このように、健康保険についても、お年寄りに一定の負担を求めるべきである。
○ 被用者保険の加入者であった高齢者については、ほとんどが扶養家族と言うことで保険料を払っていないのに対し、国保の加入者については、70歳以上であっても資産があり、世帯主である人は全部国民健康保険料を負担している。せめてお年寄りだけでも、高額所得の人には保険料を負担してもらい、扶養家族にも一定の負担を求めるような制度にしないと、非常に不公平である。
○ それぞれの保険制度における相違点を、厚生省はもっと明らかにすべきである。高額療養費についても、また、傷病手当等の現金給付にしても、さまざまな点でおかしいところがある。そういったところは思い切って是正して、みんなが公平に負担をするかわりに、給付も受けられるという道を開く必要がある。
○ 来年からの介護保険との連動を考えて、所得差による負担割合の是正を、老人保健の見直しの中で議論してもらいたい。

(下村委員)

○ 現在健保組合で被扶養者になっているのは、税法上の扶養義務がある者だけに限られているので、年間800万円の所得のある人を被扶養者として健保組合のほうに入れているという事実はない。
○ 我々は1割負担に反対しているのではなく、抜本改革が実現しないのに、保険料の上限の見直しと患者負担の引き上げという、負担増の問題だけが先行し、それが構造改革と言われるようであっては困る、ということである。
○ 厚生省側は8月になって制度企画部会から答えをもらったというけれども、制度企画部会の議論は4月頃からほぼ同じような状態が続いていたのであるから、次に検討すべき課題については、事前に見通しが立っていたはずである。であるにもかかわらず、8月に意見書をもらったばかりであるから検討中である、というのでは誠意が感じられない。もう少し準備を進めておくべきではなかったのか。

(塩野谷部会長)

○ この審議会は厚生大臣に対して政策問題について意見を具申するというものであり、たとえ国会の場において政党政治が行われようと、我々は政府、行政に対して意見をまとまった形で述べることをしていきたい。この問題については、継続審議とする。

2)次に事務局より、議題「介護特別対策について」に関する資料の説明があり、その後、発言及び質疑応答が行われたが、その概要は以下の通りである。

(青柳委員)

○ 老健拠出金が所得のある人すべてによって賄われているのに対し、介護保険料の納付金は40歳から64歳という年齢区分で賦課されており、この齟齬が負担の軽重という問題を生んでいるものと認識している。そうすると、既に財政基盤が脆弱で医療保険料が高い水準にあるという健保組合というのは、被保険者の年齢構成が高く、そのため介護納付金の負担が重くなる保険者ということであって、そのような保険者を支援するために、補助金により基金を設置するということは問題がないように思われる。

(事務局 間杉保険局保険課長)

○ 保険者対策については、具体的にどこで線を引くのかについては今後検討していく。

(青柳委員)

○ 資料として出される推計値は平均値であることが多いが、できれば平均値からさらに一歩踏み込んだ形でその内容が読み取れるような資料も一緒に提出願いたい。

(村上委員)

○ 資料067の7ページの2について、与党3党の要請では「介護サービスの適正な給付が実現されるまでの概ね半年間、保険料に関わる部分については実施しない。この措置については国が負担する。なお、2号保険者については、概ね半年間全体として負担増を解消するため、国が医療保険者に財政支援を行う」ということになっている。
○ 1号保険料については、「適正な給付が実現されるまでの概ね半年間、この間、適正な給付がされないから保険料をとらない」というのが与党の趣旨であるのに対し、厚生省の回答としては、「要介護認定などの手続きや介護サービスの利用方法に慣れるまでの間とし」ということが書いてある。どうしてこのような回答になるのか。
○ 2号保険者については、「概ね半年間全体として負担増を抑制しなさい」という申し入れが与党からあったにもかかわらず、厚生省の回答では、市町村への給付金が600億、健保組合は660億という形になっている。これでは与党の申し入れとの整合性が取れないのではないか。

(事務局 井口老人保健福祉局企画課長)

○ 「介護サービスの適正な給付が実現するまでの間」ということについては、政府としては、要介護認定などの手続き等介護サービスの利用方法に慣れるまでの期間、という形に受けとめさせていただいた。

(事務局 柴田保険局企画課長)

○ 政府の回答では、1号保険料についても2号保険者対策についても与党の合意にプラスアルファした内容になっている。2号被保険者については、概ね半年間全体として負担増を解消する、という与党の申し入れに対し、政府としては負担増の1年分について対応する、ということで、政府の方が与党の合意に対して付け足しをしているということがある。
○ さらに、与党の合意に対して法改正をしないで対応するというやり方を考えた場合には、先ほど説明したような方法しかないと考えている。

(村上委員)

○ 与党は介護サービスが適正に給付されないという理由で、概ね半年間、保険料に関わる部分については実施しないと言っているのに対し、政府は、介護サービスは適正に給付できるけれども、手続き等の問題で慣れるまでの間は徴収しないと言っている、そのような認識でよいか。

(事務局 高井介護保険制度施行準備室長)

○ 与党の指摘については、「適正な給付」の中身として、新しい制度であって混乱も生じるということも含めて表現していると聞いている。

(村上委員)

○ 亀井政調会長が、昨日のテレビで、介護基盤ができていない市町村が多く、だから保険料が取れないんだということ言っていた。どういう理由で保険料を取らないのかをはっきりしてもらいたい。

(事務局 高井介護保険制度施行準備室長)

○ 介護保険が新しくスタートしたときの給付については、概算要求に出ていますように、在宅については32.7%という枠に対して給付がされるわけであり、今後次のプランをつくって基盤整備を進めていくという状況の中で、2号保険者対策については、新しい制度であって手続きやその利用に慣れるまでの期間という位置づけで手当てをしようという考え方である。
(村上委員)
○ 与党は、介護基盤整備はできていない、と言っているのに、厚生省としては介護基盤整備はできている、という認識であるということか。

(事務局 高井介護保険制度施行準備室長)

○ 基盤整備については、32.7%という市町村の事業計画の積み上げがあり、それからスタートをして5年の計画を各市町村につくっていただいている。これを今後整備していくということは説明しており、徐々に比率を上げていく予定である。ただ、2号保険者対策については、新しい制度についての混乱はあるということの位置づけをしたということである。

(村上委員)

○ 32.7%というのは、要介護者が100人おられるとして、そのうちの32.7%の方々が制度利用をするというアンケート調査結果ではないのか。

(事務局 高井介護保険制度施行準備室長)

○ サービスを利用するか、しないかという希望と、希望するとすればどれくらいのサービスを利用するか、という数字が加味されており、結果的には要介護の方がどれぐらいの量のサービスを使うかということの数字になっている。

(村上委員)

○ 与党が「サービスの適正な給付ができない」と言っているのは、基盤整備ができていないということを言っているのではないか。それに対して、厚生省は、新しい制度で混乱があるから慣れるまでの間である、と言っているが、これは中身が違うのではないか。

(事務局 高井介護保険制度施行準備室長)

○ 介護サービスの適正な給付ということを議論している際に、新しい制度だから混乱をする、というようなことも話に出ていたのは事実であり、今回の対策にはそういった内容も含まれているということである。確かに申し入れの文言からすれば、基盤整備もまだ課題ありと読めるところもあるが、政府としては、基盤整備については、先ほど述べたような計画で対応し、新しい制度の中で半年間手当てをすることについては、認定手続き等、利用方法に慣れるまでの助走期間と位置づけてこのように手当てをしていくということである。

(事務局 堤老人保健福祉局審議官)

○ 3党協議の経過の中で、亀井政調会長を含めていろいろお話をお伺いしたが、亀井政調会長ご自身も慣らし運転であるというふうにおっしゃっており、具体的には、例えば、要介護認定の手続きは初めてのことだからトラブルもあるだろうという話や、あるいはケアプランについては全く新しいシステムであるので、すぐにうまくいくかどうかわからない、といったご議論があった。それで、手続きあるいは利用法に慣れるまでの間という位置づけをした。これについては、3党政策責任者の亀井先生と坂口先生はこれで良とするということなので、認識について大きな違いはないものと考えている。

(村上委員)

○ 与党の申し合わせでは半年間ということになっているのに、政府の回答ではさらに1年間保険料を半額にするというのはどうしてか。

(事務局 高井介護保険制度施行準備室長)

○ 資料067の10ページにあるように、高齢者の方に新たな負担に慣れていただくための配慮が必要であろうということで、この施策を組んでいるものである。

(村上委員)

○ 2号被保険者対策について、与党の申し合わせでは、全体として負担増を解消する、と書いてあるのに、健保組合だけに支援を行うというのは、全体としての解消になるのか。

(事務局 柴田保険局企画課長)

○ 今度の合意項目の中では、その実現について法改正をしないという前提に立っており、全体の負担増という現状を踏まえ、財政的な問題の生じる保険者を重点的に支援していくというのが最善のやり方であると考えて、このような構成にしている。

(村上委員)

○ 法的に問題がある、というのはどういうことか。

(事務局 柴田保険局企画課長)

○ 法律改正をしないで今回の特別対策をやるという前提に立っているということである。

(村上委員)

○ 国保や政管健保に財政支援をしたら法律改正が必要になるのか。なぜ、国保と政管健保に対する支援はできないのか。

(事務局 柴田保険局企画課長)

○ 介護保険料の軽減ということで考えると、これまで老人拠出金でもっていたものが抜けて、そのかわりに介護納付金という形で新たな負担になる。そのときに、いままで持っていたものは持っていたものであるから、それよりも新たに加わる部分について手を打とうというのがまず一つの考え方である。
○ 2号保険料に着目して軽減できるかどうかということについては、法律上、2号保険料の決め方というのははっきりと書いてあるので、法律改正しないで保険料の軽減を行うことは難しい。その中で、トータルの決まった財源をどう振り向けるかというときに、困ったところ、あるいは問題のあるところにお金を重点的に投入することによって、より実効を上げるということがいいのではないか、ということでこのような構成にした。

(喜多委員)

○ 一体誰が保険者なのかということをしっかりと認識してもらいたい。保険料をとる、とらないというのも、介護保険法においては政令の定めるところによって、保険者である市町村が条例で定めることになっている。それにも関わらず、その定める権限のある者にはなんらの通知をすることなく、無料にするとか、半年半額にするとか、1年半額にするといった話をすること自体、問題がある。
○ 介護保険の1号保険料は統一しているのに、2号保険料はバラバラでいいのか。そういった問題も含めて、保険者は誰かという観点で国会でも議論をしてもらいたい。

(下村委員)

○ 今回の対策については、旧来の医療保険からの振り替え分を控除して、残りの金額について医療保険者に対して支援をするということである。しかし、老人拠出金の面で負担が減る部分があっても、実際には一般の医療保険料率を下げられない保険者が多いというのが現状である。そうすると、介護保険料はとにかく取らなければいけないという前提がある以上、上限の問題が生じてくる。この問題について、厚生省として、医療保険料率を下げることで対応すべきと考えているのか、それとも上限改定をやって保険料を上げることで対応すべきと考えているのか、はっきりさせるべきである。

(山崎委員)

○ 家族介護に対して、法の外とは言いつつも、年間10万円の現金給付をお決めになったことに関して、一言意見を申し述べておきたい。まず、一体お金がどこから出てくるのかということ、それから、ただでさえ介護保険の根幹にかかわる理念が揺れている中で、法の外とはいえ、このような決定があったことについては、審議会がこのことについて議論を重ねてきたにもかかわらず、厚生省はなぜ頑張っていただけなかったのだろうかと大変忸怩たる思いである。
○ 支給は13年度からとあるけれども、その期限、用途についての決定もないまま、バラまきをするというのは、厚生省もふがいないのではないか。このことについては賛成しかねるし、こんなことで介護保険の根幹が崩れていこうとしているのに、永年かかわってきた者としてみすみす手をこまねいているのは大変残念である。

(高梨参考人)

○ 資料067の19ページの考え方について、政管健保が対象外という形になっており、これでは1号被保険者対策と2号被保険者対策とのバランス、また、第2号被保険者の制度間でのバランスを欠いている。政管健保も第2号被保険者対策の対象となり得るような対策を講ずることが必要ではないか。

(柳委員)

○ 村上さんや高梨さんがご指摘になった点について同感である。

(野中委員)

○ 保険者を無視してこういう制度をいきなりつくられたことに憤りを感じる。
○ 市町村としては4月1日から否応なしに介護保険を実施する、ということで、これまで全国で真剣に取り組んできた。それが国会という権威の中で崩されるということについては、厚生省ももう少ししっかりしてほしい。
○ 地方負担がどこかで加味されるような可能性を危惧している。例えば、資料067の13ページの家族介護の関係では、市町村が自らの選択により行った場合に国も助成をします、という表現になっているが、国の負担という表現でなく、助成という表現になっている。これは、地方負担がある、という読み替えになるわけであって、こんなことは私たちはいかなる理由があっても保険者として受けるわけにはいかない。審議会なり、保険者が合意の上で出された施策ならいざ知らず、国会、政府という権威の中で勝手にやられたことですので、このことだけは、助成という表現は、国の負担という表現として読み替えて了承しておくということだけは、ここで申し上げておく。

(事務局 柴田保険局企画課長)

○ 介護保険の導入によりまして、保険料が本来下がる部分があるが、現実にそれが下げられず、上限問題にもかかわってくるというお話がございました。この話はご指摘の通り医療保険の問題であり、介護対策としては、いろいろな前提の中で工夫をして、最善の策を講じたというふうに思っておりますけれども、それで医療保険制度の保険料が実際下げられないといった課題に対処できているわけではない。これについては、医療保険制度の抜本改革に取り組み、急ぎ議論を詰めていくということで対処していきたい。
○ 政管健保になぜ財政支援を行わないのか、ということについては、政管健保に対しては、政管健保の財政基盤が弱いということに着目して、既に介護納付金の16.4%に国庫負担が入っているということであり、細かいところまで詰めきっているわけではないが、大まかに申し上げれば、このような政管健保よりもさらに悪い保険者を重点的に対象とする、というのがこの健保組合のところの対策の考え方である。

(塩野谷部会長)

○ 次回の運営部会の日程と、抜本改革との関係の中で、運営部会が取り扱う問題について、お伺いしたい。

(事務局 柴田保険局企画課長)

○ 次回は12月1日にお時間を頂戴できればと思っている。その後、大まかな目論みとしては、8日、次が10日か13日にご審議をお願いできればと思っている。正式にはまた改めてご連絡を申し上げたいと思いますけれども、いま申し上げた3日間についてはお時間を頂戴できればと思っている。
○ 今後の進め方については、今日、ご指摘いただきましたので、少し頭を整理して、部会長とも相談の上で次回に提出したいと思っている。

(塩野谷部会長)

○ 本日はどうも長時間ありがとうございました。

(了)

問い合わせ先 保険局企画課 北波(内線3228)


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