99/10/27 公衆衛生審議会疾病対策部会第22回臓器移植専門委員会議事録              公衆衛生審議会疾病対策部会              第22回臓器移植専門委員会                  議 事 録   日時:平成11年10月27日(水)      9:00〜11:15   場所:虎の門パストラル 橘の間 出席者 (○:委員長 敬称略)   浅野 健一  井形 昭弘  板倉  宏  大久保 通方 大島 伸一   大塚 敏文  菊地 耕三 ○黒川  清  小泉  明  小柳  仁   竹内 一夫  野本 亀久雄 藤村 重文  町野  朔  眞鍋 禮三   山谷 えり子 1.開 会 2.議 題      (1)脳死下での臓器提供事例の検証について         (1) 第4例目に係る脳死判定等の評価に関する報告書について         (2) 検証に係る最終報告書について      (2)臓器移植に係るHLA検査等のあり方について      (3)膵臓移植について      (4)臓器移植法の運用指針(ガイドライン)等の改正について      (5)その他         (1) 「臓器提供マニュアル」について         (2) 「臓器提供手続に係る関係者会議」の開催状況について ○事務局  おはようございます。定刻になりましたので、只今から第22回公衆衛生審議 会疾病対策部会臓器移植専門委員会を開催させていただきます。  最初に、本日の委員の出欠の状況ですが、桐野委員、田中委員、谷川委員、矢崎委員 からご欠席との連絡をいただいております。また、浅野先生、大塚先生、野本先生がま だお見えでありませんが、出席されるということですので間もなく到着されるかと思い ます。 それから、浅野先生、板倉先生、竹内先生におかれましては、9月末日をもち まして本専門委員会の委員の任期が満了したわけでございますが、審議の関係上、本日 もご出席いただいておりますので、よろしくお願いいたしたいと思います。  資料の確認をさせていただきます。お手元にお配りしておりますが、最初に議事次第 がございます。本日は5つの議題を予定しております。(1)脳死下での臓器提供事例 の検証について、(2)臓器移植に係るHLA検査等のあり方について、(3)膵臓移 植について、(4)臓器移植法の運用指針(ガイドライン)等の改正について、(5) その他、ということで、5つの議題を予定させていただいております。  次に、1枚めくっていただきますと、本日お手元にお配りしております会議資料一覧 がございます。資料1といたしまして「第4例目の脳死下での臓器提供に関する医学的 評価について」報告書(案)ということで、これが17ページほどございます。毎度の ことでございますが、資料ナンバーは右肩に振ってございます。資料2といたしまして 、臓器移植法に基づく脳死下での臓器提供事例等に係る検証に関する最終報告書(案) 、これが7ページで、最後のページに、後ほど詳しく説明させていただきますが、別添 3ということで、ページのついていないものがございます。資料3といたしまして、臓 器移植に係るHLA検査等のあり方について、ということで、1枚紙がございます。資 料4といたしまして、膵臓移植について、ということで、これはページが振ってござい ませんが、続きまして別添資料1、2、3ということで、合計4枚になっております。 資料5といたしまして、臓器移植法の運用指針(ガイドライン)の改正について、とい うことで、3ページございます。最後に、参考資料ということで、臓器提供手続に係る 関係者会議について、ということで1枚紙がございます。資料は以上でございます。不 備等ございましたらお申しつけいただければと思います。  以上でございます。それでは黒川委員長、よろしくお願いいたします。 ○黒川委員長  おはようございます。久しぶりですけれども、今回は第4例目の検討とい うことのご報告をさせていただきまして、先生方のご意見をいただきたいと思うんです が、それっきり、4例目後は実際の移植が行われていないという現状であります。  一方では、いわゆる脳死ではなくて、心臓死における腎移植はどうなっているかとい いますと、これは意外に目立たないんですけれども、大体例年か、例年より少し遅れて いるかなという程度でありますが、あまり脳死が脚光を浴びていると、心臓死での移植 というようなこと、腎臓の患者さんは今非常に多くて、透析の患者さんは今19万人お られまして、大体1兆円の医療費ということで、毎月毎月正味1千人ずつ増えていると いうことであります。こういうことから言うと、腎臓に対する問題もお互いにまた十分 に認識をしながら、特に腎臓をやっている人は、そういう意味では、パブリックに対す るいろんなメッセージを発する必要があると思いますけれども、そういうところからの 着実な移植医療の日常性、まわりに移植を受けた人が増えるということは大変望ましこ とではないかなと思います。  移植を受けた人たちの会でトリオジャパンというのがありまして、この間それにも行 ってまいりましたけれども、草の根運動というのがいつも一番大事なんじゃないかなと いう気もします。  そこで、今日は、脳死下での臓器提供事例の検証について、ということでありまして 、第4例目の報告がまとまってまいりました。6月に行われたわけですが、第3例まで の事例と同様に、これについての検証作業を、竹内先生以下の委員にお願いしてやって いただきました。そこで今日は、班長の竹内先生に、誠にご苦労だったと思いますが、 20分ぐらいの時間があると思いますが、先生方にはこの報告書の案というのがお手元 に届いていたと思うので、お目を通していただけたと思いますが、これにつきまして竹 内先生からお願いいたします。 ○竹内委員  それではご報告申し上げます。4例目に関しまして、今までの3例と同じよ うに、我々の作業班で3回にわたる検討、検証を行いました。その結果が、お手元にあ ります報告書案でありますが、それをご覧いただきたいと思います。検討しました資料 は、従来と同じように、家族の同意を得て閲覧できた診療録、CT写真、脳波記録、あ るいは脳幹誘発反応の記録などでありまして、同時に担当医からも種々伺うことができ ました。  この事例は、6月19日10時頃、バスの中で突然意識消失をきたして、心・呼吸停 止が起こっております。そのような状況下でありますので、周囲の方々が救急処置をや ったのでありますけれども、正式に心肺蘇生術によって心拍動が再開したのが40ない し50分後ということであります。したがって、大変悪い条件が最初からあったわけで あります。来院時には意識消失、瞳孔散大、対光反射消失、その他の脳幹反射消失、と いうような状況でありました。  この患者さんに対して、発症後2時間後にCT検査を行っておりますが、その所見か ら、広範なくも膜下出血がありました。今お目にかけますが、一応説明だけさせていた だきます。その出血の原因と思われる前大脳動脈の動脈瘤の破裂と思われる所見が得ら れたということで、これは動脈瘤の破裂によるくも膜下出血で、心肺停止という状況が 起きた。したがって、その診療を行った機関では、蘇生後の状態ということに対する対 応をしたわけであります。  とりあえずCTを見ていただきたいと思います。 (スライド) ★★ 発症2時間後のCTをお目にかけます。真ん中の丸いのが、これが前交通動脈瘤 の破裂によってできたと思われる血腫で、直径2cm強の血腫があります。それから、両 側のシルビウス裂というところに、両方にはっきりした白い筋があるんですが、これが くも膜下出血。それから、脳全体に腫脹がありますし、それ以外の脳底部のくも膜下腔 にも出血がある。広範なくも膜下出血があるということです。 ★★ そのちょうど1日後に再びCTを撮っております。先ほどの動脈瘤の破裂によっ てできたと思われる血腫は、少し形が伸びて小さくなっております。それから、くも膜 下腔の出血、血液もやや薄くなっておりますけれども、その反面、脳の腫脹が非常に強 くなって、ほとんど脳タンポナーデという状態になっているということで、瀰漫性の脳 腫脹が加わってきている。これが発症後1日たった時のCTであります。 ★★ これは、今のスライスよりもちょっと上のスライスですけれども、側脳室前角が 一応出ております。それから、くも膜下腔の出血が、これは発症の2時間後です。この スライスではあまりはっきりしないけれども、脳室系にも血液が入ってるんですが、こ れはおそらく第3脳室の出血だろうと思います。これは、左右の大脳半球の間に入って いる血液であります。 ★★ この日よりも、その翌日のCTのほうがはっきり脳腫脹が写っている。ただ、く も膜下出血は脳の表面全体を覆っております。それから、先ほどの側脳室の前角の部分 が、脳腫脹によって押しつぶされてほとんど消えかかっている。多少は残っております が。これは側脳室の後角の部分ですが、寝ておりますので重力の関係で血液は下にたま っている。大脳半球の間にやはり血液がたまっている。非常に強い脳腫脹とくも膜下出 血があるということがわかります。 (スライド終わり)  このような状態で、条件としては大変悪かったために、来院以後、動脈瘤に対する早 期の直達手術というようなことはこの状態では考えられない。特に、集中治療室におけ る呼吸管理、循環管理、水電解質管理など、大変苦労されて、はじめのうちは特に苦労 されているようですけれども、積極的な治療の適応がない。特に、脳低体温療法などに 関しても、このような一次的な脳の損傷に対する効果は期待できないので、適応はない という判断がされております。我々の検証の結果も、そのとおりであろうというふうに 考えております。  集中治療室における治療の間に、6月21日から22日にかけて、先ほどの神経症状 その他から、脳死の疑いが非常に強いということで、この施設で脳死の判定を行ってお ります。この施設であらかじめ持っております脳死の判定基準は、厚生省基準と全く同 じということでありまして、無呼吸テストを含めて2回にわたる施設の脳死判定を行っ ております。ただ、この際に、脳波の記録が、通常の増幅度及び2倍の増幅度というこ とで、基準に求められております4ないし5倍の高増幅度というものが記録されていな かったということであります。いずれにしても、臨床的脳死の判定が行われたわけです 。その結果を家族に伝えたところ、ドナーカードが提示された、ということがあります 。  ドナーカードの提示によって、6月23日になって法的脳死判定を行ったわけであり ますけれども、この第1回目に行いました法的脳死判定では、前の臨床的脳死判定と同 じように、脳波の増幅度が十分でなかった。これは感度の設定にミスがあったというこ とでありますけれども、そういうことが、法的脳死ということで行った第1回目のテス トの後でわかりまして、再度、法的脳死判定を行うということになったわけであります 。これが6月23日の19時からということです。その時には、感度を4倍に上げて取 っております。それから、法的として3回目になるわけですけれども、それが6月24 日の午前2時からということであります。  このようにして法的脳死判定を終了したわけでありますが、このように、脳波に関し て規約から逸脱していたということでありますが、最終的な2回の法的の脳死判定は正 しい脳波記録であります。しかも、脳波記録実物そのものは、多少の心電図によるアー チファクトが入っておりますけれども、大変質の高い脳波記録でありました。  もうひとつ、ここで問題になりますのは、無呼吸テストを行った法的脳死判定の際に 、酸素濃度があまり高く上がっておりません。これはおそらく、合併症として起こった 肺炎及び透過性亢進型の肺水腫によるものと主治医も判断しておりますし、私どももそ のとおりだと思っております。最終的には、酸素濃度が、第2回、3回目の法的脳死判 定では大変低くなっておりますが、その時に酸素飽和度も低くなってきているというこ とで、テストを中止しておりますけれども、判定に十分な炭酸ガス濃度は得られており ますので、この無呼吸テストを有効と考えたわけであります。  脳死判定に関する流れというものは、10ページの下にある図でご覧いただくのが一 番わかりやすいかと思いますが、従来行っております臨床的脳死診断では、無呼吸テス トをしなくてよろしいということでありますけれども、この施設では、施設特有の基準 ができておりまして、無呼吸テストを含めて臨床的脳死判定を行った、ということであ ります。それは治療方針を決めるために必要なことであるということで、必ずしも適切 とは言えないけれども、そういう仕組みになっているなら仕方がないのではないかとい うふうに考えております。  以上、申し上げましたように、法的脳死判定の前に、施設が従来から行ってきた、移 植にかかわらない臨床的脳死判定を行っておりますが、その内容は法に基づく脳死判定 と変わらないものでありまして、合計3回になってしまった法的脳死判定を含めて、無 呼吸テストが5回になってしまったわけであります。しかし、最終的には、法的脳死判 定に関しては問題がなかったというふうに判定して、我々の報告を行う次第であります 。以上であります。 ○黒川委員長  ありがとうございました。以上のご報告につきまして、いくつかのことを 指摘されましたが、ご意見ご質問、どうぞご遠慮なく言っていただければと思います。  ひとつは、竹内先生がおっしゃるように、竹内基準と全く同じように、ここの施設で は臓器提供を前提としない場合でも、救命救急センターですから、脳死の臨床的判定に 無呼吸テストも入れてやっていた。2回終わった時点で、そういうことであれば臓器の 提供はどうかと、ドナーカードを提示されたというわけですが、そのへんについて、ど うでしょうか。菊地委員から何か。例えば、普通だと、というか、そうでない場合を想 定していると、臨床的脳死かもしれませんね、というような話で話が始まるのか、その へんの家族と現場の先生のインタラクションというのはなかなか微妙なものもあると思 うし、家族のほうがどのくらい脳死臓器移植ということに理解があるかによってもずい ぶん違うと思うんですが、それについて何かございますか。 ○菊地委員  ガイドラインには、臨床的脳死診断が終了した後に、ご家族に、本人の臓器 提供意思がなかったかということを確認することになっておりますけれども、この4例 を通して見てみますと、臨床的脳死診断が終了するまでに、ご家族のほうからカードを 提示する事例がやはり多うございます。本事例に関しましては、臨床的脳死診断が終了 した後に主治医が臓器提供の意思を確認した折に、カードを提示されたわけですけれど も、先ほど先生が言われましたように、大きな救命救急施設におきましては、臨床的脳 死診断といいますか、通常の医療、今後の治療方針を定めるための脳死の診断につきま しては、法律と同様の診断をしているところが多うございます。そのへんの兼ね合いが 今非常に難しくなっているところで、全く同じ診断を行っているにもかかわらず、また 新たに2回、同じ診断を行うというふうな形はおかしいのではないかという質問もたく さん頂戴いたしております。ですので、臨床的脳死診断という、法律に移るための脳死 診断という言葉自体が、私自身も、少しおかしいのではないかなと感じてきております し、臨床の場でも、臨床的脳死診断と、通常の治療方針を定めるための脳死の判定、そ れから法律に定められた脳死の判定というところで、かなりの混乱を招いていることは 事実かと考えます。 ○黒川委員長  そのとおりだと思うんですね。救命救急センターの方は非常に一生懸命救 命しているわけですから、そこでもし脳死だというような状況になれば、臓器提供ある なしにかかわらず、今後の治療方針をどう決定するかということはかなり確認しなくち ゃいけないというつもりがあるわけですから、そこから、患者さんのファミリーのほう にその話が出てくるのは、まず間違いなく脳死ですね、という話が出てから話をするの も当然だと思いますが。このように決められていると、だから、さっきのをかわりに使 いますね、というわけにはもちろんいかないわけですね。 ○竹内委員  今のことに関しては、我々の作業班でもいろいろ検討したんですけれども、 実際、脳死という言葉の定義から言うと、やはり、呼吸がないということを確認しなけ れば脳死ではないわけなので、その施設がもともと自分のところの基準を持っていたわ けです。それには無呼吸テストが入っているわけですね。無呼吸テストを行ったあとで ドナーカードが出てきたんで、結果的には回数は増えたわけです。しかも、最後は肺炎 などによる呼吸機能の低下があったので、非常によくない状態ではあったんですけれど も、一応それを乗り切ったということであります。 ○黒川委員長  その他の先生、いかがでしょうか。手続きというのがあるし、現場のやり 方も、いろんな解釈があるのかもしれませんが。  前回からも、4例のところの実際の検証で、新しいマニュアルというものを、きちん と見やすく、普段からどこに一番問題が出やすいか、というか、救急の現場で何例も経 験しているわけではありませんから、どこで混乱を来しやすいか、一番共通の問題があ るか、ということを全部まとめさせていただきまして、前回見せていただきました小冊 子ができまして、今現場にもっとわかりやすい小冊子を出してありますし、それについ ての講習というか、10月に全国の提供病院にこういうのを渡して、さらに、今までど ういうことが問題にされて、どういうところに問題があったのか、ということを説明し ている。この症例もそうですが、移植を前提とした脳死の判定になっても、脳波のゲイ ンが1回間違っていた。それも実際過去にあったわけで、そのへんもわかりやすいよう に書いていると思いますが、そういうことを今させていただいている。あとで報告があ ると思いますが、そういうことはあったわけであります。  それから、竹内先生がおっしゃったように、3回目の時は肺炎、それから肺の問題が あって、PaCO2は74まで上がってるんだけど、PaO2は85から60まで下が っているということで、ティッシュのオキシジェネーションからいうともうギリギリの ところだという感じがしますが、これについては、バイオロジカルな点から言えば、こ れは適切にやられたと解釈していいだろうというお話だったと思います。  PaO2が60でなぜ生理的にギリギリかというのは、喘息とかいろんな病気の人が いると思うんですが、PaO2が70と60の間になると過呼吸が起こってくるという ことがわかってますから、そういうことから言うと、生理的なオキシジェンレセプター は60というところが一番体が反応するレベルだということは生理的にわかっている、 という意味で言ったわけです。 ○山谷委員  素朴な疑問なんですが、それぞれの分野でいろいろ捉え方が違うのかなと思 うんですが、これだけドナーカードが行き渡って、臨床的脳死判定実施の時、家族から 文書の承諾を取っているわけですよね。その時にどうしてドナーカードの件を聞かなか ったのかなと。6月20日の12時に承諾書を取っていて、家族が、忘れてました、と いってドナーカードを出すのが22日の16時15分なんですけれども、ちょっと一言 お医者様が言えば出た話ではないかなというふうに思うのと、それから竹内先生もおっ しゃいましたけれども、それぞれの施設で診断の方法が違う。これはやっぱり統一でき ないのか、それが関係者会議で話し合われたのか、ということと、それから、脳波記録 について、作業班以外の専門家に知見を求めた、とありますけれども、これはただ感度 設定のことについてなのか、他の分野についてなのか。今後ともこのようなことはケー スによってはあることなのでしょうか。 ○黒川委員長  では、最後の質問から、竹内先生にお願いします。他の方に、脳波の読み について相談されたのはなぜか、というようなことですかね。 ○竹内委員  どうしても班員以外に見てもらわなきゃならない、というほどの記録ではな かったんですね。実は、この記録は、今までの4回の記録の中では、悪条件の記録とし ては質はいいんですね。ただ、はじめの記録が増幅度が不十分であったということがあ りますが。したがって、今のご質問に対しては、どうしても参考人として専門家に見て もらう必要があったかと言われると、今から考えればそうではなかったかなというふう に思いますけれども。どうでしょうか、山本先生。 ○山本補佐  状況は、竹内先生がおっしゃったとおりだと思います。ただ、実は3例目、 4例目は並行して作業をしてましたので、3例目のプレゼンテーションをいただいて議 論をし、また4例目のご説明をいただいた時に、3例目の脳波のディスカッションもし ていたために、委員の方はずっと同じ席におられて、同じように専門家としてご意見を いただいたということです。特に脳波筋電図学会の先生方からも、念のためにお話を伺 うということもしておりましたので、従前どおり、その先生にはご参画いただいた、と いうような状況でございます。 ○黒川委員長  実際は、専門の委員といっても、これもゲインを上げれば上げるほどいろ んなノイズが入ってきますから、そういう先生に見ていただくのは一向に差し支えない とは思うんですけれども。わざわざその先生を呼ぶかどうかという話の判断は、第三者 的で、より開かれていていいんじゃないかなと思いますけれども。  それから、第1の、ドナーカードの提出を医療機関側から求めてもいいんじゃないか 、というような話がありましたけれども、菊地委員から何かありますか。そういうシチ ュエーションとしてはどうでしょうか。まだコーディネーターに話が行ってないところ かもしれませんが。 ○菊地委員  この症例につきましては、多分、先生がドナーカードの所持をご家族に確認 はされているはずです。それで、一般的な例から申し上げますと、以前に比べますとド ナーカード、意思表示カードが普及したせいもあって、ご家族への確認は行いやすくな った、という先生が多うございます。その中でも、確認をどのようにしたらいいかとい う質問もございますので、はっきり申しますと、その先生の考え方、もしくは病院の考 え方で、ご家族から提示していただくのを待つ病院もあれば、先生方から積極的に、ご 本人、ご家族の権利としてきっちりと聞いていただく病院もある、ということかと思い ますが。 ○黒川委員長  2つ目の質問も考えて、そういうことをある程度一定のマニュアル化でき ないか、というような話もありましたけど、それについて何か意見はありますか。他の 委員の先生でも、あるいは行政当局でもよろしいですが。 ○山本補佐  1つ目の質問のお答えになるかどうかわかりませんが、ここの施設から何度 にもわたって私どもお話を伺ったんですけれども、施設としては、臓器提供に結びつく 可能性がある場合の特別な取り扱いというのは特につくっていなくて、その病院として 、患者さんの状態を診断して、脳死状態になられた方に、治療の選択ですとか、今後ど ういう治療を選んでいくかということを、インフォームド・コンセントするためのマニ ュアルをつくられていました。ですから、そのマニュアルどおりやってきて、この病院 として脳死状態だと臨床的に確信を持たれた時に、いろんなお話をされた中で、カード の話も出てきたということなんですが、施設の先生も、もし最初からカードの提示があ ったらどうしただろうかとか、今後、もしカードの普及が進んできた時に、今までどお りこういうやり方でいいのか、もうちょっと早い時期に臓器提供の意思について確認す べきかどうかというのは、今後の病院としての課題だろうということは、担当医の方も おっしゃっておられましたので、この事例を踏まえて、施設でもご検討いただけるもの と思いますが、今回は、今までどおりのことをやってきた結果がこうなった、というこ とです。 ○黒川委員長  他にどうでしょうか。 ○大島委員  今は脳死のことでそのことが問題になっていますけれども、私は腎臓をずっ とやってきているものですから、最初に黒川先生がおっしゃいましたけれども、腎臓は 日常的な感じになってるんですけれども、現場で脳死状態になられた時に、腎臓を提供 するというオプションがあります、というようなことを現場の救急の先生方、あるいは 脳外科の先生方が提示をされるということは、非常に難しい状況にある。したがって、 もちろん脳死下の移植の話のほうが非常に大きな話題になってますので、なかなか腎臓 のほうにまで行かないということはあるんですけれども、その点に関しては、もちろん そんなことを積極的にやらなければいけないという枠組みも何もないものですから、そ れは救急あるいは脳外科のそれぞれの先生方の個人的な考え方による、としか言いよう がないのが今の実情かと思います。 ○黒川委員長  私も、一律の何か書くというよりは、家族の方のフィロソフィーもあるし 、ドクターはあくまでも救命救急が先ですから、どういうタイミングで出すのか、家族 のほうが言われるのか、カードを出されるのか、そのへんはなかなか書きにくいし、現 場の判断というのはすごく大事だし、救命救急で入って脳死に近いような状態の患者さ んを前にしてそういうことを口に出すのは、マニュアル化するというのは非常にまずい んじゃないかと思うので。例えば、ここで4例検証しましたよね。そうすると、いろん な事例があって、バリエーションがあるんだけど、それぞれが別に不適切でもないし適 切でもない。アイディアルではないかもしれませんけれども。それは人間のファクター のいろんなものと、時間の経過、そういうことじゃないかなと思うので、私の個人的な 意見ですが、あまりギチギチいろんなことを想定してマニュアル化すると、外れるとす ぐに大騒ぎになるというだけの話で、かえってよくないんじゃないかと思ってますけれ ども。そういう意味では、この検証をしているのは、対応にはいろんなシークエンスが あるということを皆さんの前で検討してみる、ということではないかと思います。  4例だけでもよかったのは、共通のエラーが出やすいところ、救急の現場という、と んでもなく忙しいところでのチェックポイントがかなりわかってきて、新しい冊子がで きて、それを皆さんに説明会をしているというようなことで、非常に前進したのではな いかという気がします。その他に、どうぞ。 ○藤村委員  ここでこういう質問をするのは適切かどうか 懸念ですが、患者さんが入院 されてきてから、臨床的脳死というところに至るまでは、救命を中心にして非常に一生 懸命努力されているということで、それは当然のことですが、その時、ちょっと細かい ことになるんですが、最終的には肺炎が非常に起こりやすいということがわかります。 今回の事例につきましても、心停止期間が40分から50分ぐらいあったので、その後 の肺水腫等々のことによって気道管理が非常に難しかったということも十分わかります が、今までの4例を見てみますと、肺についての管理あるいは治療についてあまり記載 がないというのが実情でございます。人工呼吸でPaO2、PaCO2をどのくらいに 設定してCPAPでやるとか、そういうことはわかるんですが、気道管理についての記 載が余りありません。第3例目について読みますと、入院されてきてから、すぐ抗生物 質を投与したということは記載がありますね。こういうことは普通に行われるのかどう かということを知りたかったので、質問させていただきました。 ○黒川委員長  これは記録していただいて、実際の救急の現場で、第3例だとちょっとト ラウマとかいろんなことがあると思うんですけれど、救急で担ぎ込まれてきた状況によ って、呼吸のために予防的に抗生物質をやるということはまずないんじゃないかと思い ます。だから、そういう状況によるんじゃないのかな。今回は明らかにゾグワラみたい な出血ですから、おそらく竹内先生のお考えでも、何か抗生物質をやるかな、という話 には多分ならない状況じゃないか。そのあと進行していくと使わなくちゃいけない状況 かなと思ったんですけれども。どうでしょうか。 ○竹内委員  こういう場合には誤嚥するんですね。嘔吐をするような場合がある。一度誤 嚥してしまうと、肺合併症が起こるのはほとんど避けがたいということがあります。あ と、尿路感染がありまして、相当抗生物質を先回りして使っても、感染症を完全に予防 するということは非常に難しいことが多い。ことに高齢者になればなるほど、その危険 性は高くなるわけなんですね。  現場としては、感染症対策に本当に頭を悩ませてるんですけれども、ただ、無茶苦茶 に抗生物質を使うということも、保険の見地から言ってもよくないことですし、相手が わかった上での抗生物質ならまだ話はわかるけれども、予防的に使うということに関し ては、かなり神経を使わなければいけないわけです。 ○黒川委員長  そうすると、これは救急の現場の医学的な判断ということでしょうかね。  それから、この報告書の11ページを開けていただきたいんですが、上から4行目、 実際に今回、臓器提供のカードが出て、それを前提とした脳死判定が3回行われて、そ の3回した理由は今わかったようにゲインの問題があったわけですから、「手順、方法 、結果の記載に全く問題はなく」ということは問題があるわけで、これは「問題があっ た」という話に直さなくちゃいけないんじゃないかと思いますし、それから、その前に 2回していたことについては、これは救急の現場としては、治療の方針を決めるために は確実にしたいということでやられたということですから、いいとは思うんだけども、 どういう時期で法的な脳死のプロシージャーを正式にするかという前提だとどうなるか 、というのは、これも、例えば無呼吸テストをすべきかすべきでないか。することによ って本当に確認したかったんだ、という気持ちが救急の現場ではおそらくかなりあるん じゃないかなということも推測されるので、このへんは、する必要はないとか、しちゃ いけないとかいう話でもないから、これは、特にここの整理のような、専門の救急セン ターではどう考えられるかな、という質問を、むしろこの委員会としてはフィードバッ クしてあげればいいかな、という気がします。  ですから、ここは書き直していただけますか。「全く問題はなく」というのは非常に 問題がある。  よろしいでしょうか。これは十分見ていただいたと思うので、他にご意見がなければ 、本専門委員会としてはこれで了承したい、ということにさせていただきたいと思いま す。よろしいでしょうか。ありがとうございます。  ではその次ですが、脳死下での臓器提供事例の検証について、というわけで、今まで 4例行われたわけでございまして、最終報告書といいますか、これからこの報告書もど んどんリバイズするわけですが、4例の経験から本専門委員会でいろいろご検討いただ きました。そこでいくつかの問題点が明らかになって、いくつかの問題点についてはそ れを整理させていただいて、また現場にフィードバックするということをしたわけです が、臓器移植医療の透明性の確保とプライバシーの問題について、という話がひとつの 論点だったし、脳死下での臓器提供に係る第三者機関、検証機関の設置について、とい うことも問題にさせていただきましたので、これについていろんなご意見をいただいた ところでありまして、一応まとめて最終報告と、これはまた将来にもさらにリバイズと いうか、ポリッシュしなくちゃいけないわけですが、その検討結果を事務局で最終報告 書という格好でまとめていただきましたので、事務局から資料に沿って説明していただ きたいと思います。よろしくお願いします。 ○朝浦室長  それでは、資料2の最終報告書の案に基づきましてご説明をしたいと思いま す。6月末に中間報告を出していただきました後に、数回にわたり検証作業を引き続き 進めていただいておりまして、その結果を最終報告という形でまとめさせていただきた いと思っております。  大きく分けまして、1つが臓器移植の透明性の確保と臓器提供者のプライバシーの保 護の両立について。2番目が、脳死下での臓器提供に係る第三者検証機関についてでご ざいます。それから、第3例、第4例のそれぞれの作業班の報告書を別添としてつける 、という構成になっております。  3ページを開けていただきますと「はじめに」ということで、本最終報告書ができま した経緯、あるいはこの報告書の位置づけ、それから今後の対応を記載させていただい ております。読み上げます。 「臓器の移植に関する法律が施行されて以降、これまでに4例の脳死下での臓器提供が 行われている。それらの一連の経過の中で、臓器提供、摘出手術、搬送、移植手術にわ たる関係者の努力の結果が移植医療への国民の理解を高めた一方、さまざまな課題が明 らかになってきており、本委員会においてそれらの事例における救命治療、脳死判定、 臓器あっせん等の手続に係る検証及び今後の対応に係る検討を行った。  本委員会においては、平成11年6月29日に中間報告をとりまとめ、以後4回の会 合を重ね、第3例目及び第4例目に係る詳細な点検・検証を行ってきたところであるが 、各作業班における両事例の医学的・手続的な検討に加え、特に、今後の臓器移植を適 正に推進する体制整備の一環として、臓器提供事例に係る透明性確保とプライバシー保 護の両立及び臓器提供事例に係る第三者検証機関の設置について議論を行った。それら についてまとめたものを本報告書としているものである。なお、今後は、脳死下におけ る臓器提供の個別事例に係る検証は、新設される第三者検証機関により行うこととして おり、本委員会において行った第1例目から第4例目の脳死下での臓器提供事例の検証 作業の「最終報告」という意味で、本報告書は「最終報告書」としている。また、今後 の同機関における個別事例に係る検証結果も踏まえ臓器移植全般に係る検討を行うこと は、本委員会の任務とされているところである。  これまでの臓器移植法施行後2年間に行われた脳死下での臓器提供は4例のみである 。また、各臓器提供施設、(社)日本臓器移植ネットワーク又は厚生省の対応について いくつかの問題点が指摘されており、脳死下における臓器提供及び移植は一般に根付い たものとはなっていない。今後は、これまで指摘された問題点について一つ一つ解決を 図っていくことが重要である。今月中に厚生省において「臓器提供手続に係る関係者会 議」が開催され、各ブロック別に臓器提供施設、都道府県等の担当者に対して全体的な 手続に関し説明を行った上で質疑応答を行うなど、臓器移植を一般医療として根付かせ るための取組がなされているところである。今後は、それらの取組を継続し、かつ第三 者検証機関による事後的な検証及び検証結果の公表により個別事例の適切性を担保し、 臓器移植の適切な発展を図っていくべきである。」  以上のようなまとめをさせていただいております。具体的に、まず、臓器移植の透明 性の確保と臓器提供者等のプライバシー保護の両立についてのくだりでございます。こ こで書きましたことは、これまで審議会において、厚生省からご説明をした内容を記載 させていただいております。まず、これまでの経緯といたしまして、 「1 本年2月に臓器移植法施行後初の脳死下での臓器提供が行われて以降、臓器移植 の  透明性の確保と臓器提供者等のプライバシーの保護の両立を図ることが極めて重 要な  課題となってきている。  2 厚生省は、これまで、臓器提供事例において、移植医療の透明性の確保の観点か ら、臓器提供者の御家族に対して事実関係及び医学情報が開示されることを十分に納得 していただくよう努力し、これまでの事例に基づき、基本的に開示されるべき項目を定 め、御家族に示している。  3 それらの状況を踏まえた上で、厚生省から、平成11年8月12日の本委員会に おいて、そのような努力をしてもなお、情報公開について御家族の承諾がどうしても得 られない場合についての対応方針が示された。また、同省から、平成11年9月14日 の本委員会において、8月12日に示された方針は、臓器提供者の御家族に対して事実 関係及び医学情報が開示されることを十分に納得していただけるよう努力してもなお、 情報開示について御家族の承諾がどうしても得られない場合には、情報開示について臓 器提供者及び御家族の保護を原則とするという基本的なスタンスを提示したものである との説明があった。」  今後の方針でございますけれども、「本委員会としては、厚生省において、移植医療 の透明性の確保の重要性についても十分に認識し、御家族の承諾を得ないまま情報開示 を行うことが可能な場合があるかどうか、または御家族に情報開示の重要性についてよ り深く御理解いただくためにどのような方策があるかどうか等の点について、今後起き る個別事例に即して検討していく方向であることを確認した。」  次に、脳死下での臓器提供に係る第三者検証機関について、でございます。これ以降 、記載している中身については、これまでの審議会において厚生省から提示させていた だいた案をもとに、これまでの委員会の意見を踏まえて書いております。まず、第三者 検証を行う理由についてでございます。 「(1) 現行の臓器移植法においては、各臓器提供事例についてその適切性を担保するた めの検証手続等については格段の規定は存在しない。  (2) しかしながら、これまでに行われた4例の脳死下での臓器提供事例を踏まえ、臓 器提供に関しその手続きが適正に行われたかどうかという点について第三者の立場から 検証を行い、その結果を国民に公表することは、特に臓器移植に係る国民の信頼を確保 しその定着を図る上で非常に重要であり、本委員会においてもその旨の意見が出されて いる。  (3) したがって、既に第4例目までの事例については、本委員会及び本委員会の下に 設置された作業班において検証作業が行われているが、第5例目以降についても、少な くとも臓器移植が一般の医療として国民の間に定着するまでの間、これまで行われてき ている日本臓器移植ネットワークの中央評価委員会等の各当事者による内部検証に加え 、何らかの形で臓器提供施設、日本臓器移植ネットワーク等から離れた第三者の立場に よる検証が行われるべきである。」  機関の審議する事項は、(1)臓器提供者に対する救命治療の状況 (2)臓器提供者に対 する臨床的脳死診断及び法的脳死判定の状況 (3)日本臓器移植ネットワークの行った あっせん業務の状況(臓器提供者の御家族に対するケアの状況を含む)  3番目に、機関の構成員については、 「(1) 構成員はおおむね10名程度とし、事例によって必要に応じて参考人を招聘する ものとする。」  構成員は、○救命治療に係る専門家 ○脳死判定に係る専門家 ○移植医療に係る専 門家 ○法律の専門家 ○移植希望患者の立場を代弁できる者 ○患者・家族の精神的 ケアの分野において造詣の深い者 ○生命倫理に造詣の深い学識経験者 ○ジャーナリ ストとなっております。前回、この委員会においてお示ししたものから2つ変わってま す。1つは、前回は臨床心理の専門家ということで挙げさせていただいておりましたけ れども、そこで意味するところは、この場で提示しました、患者・家族の精神的ケアの 分野において造詣の深い者、という意味で、臨床心理の専門家ということで書いていた わけですけれども、字義どおり捉えますと私どもの意図するところが十分反映されない ということで、このような書き方にさせていただいております。最後にジャーナリスト を入れております。委員会におきましても、報道関係の造詣の深い方を入れたほうがい いというご意見もあったかと思いますので、ジャーナリストを追加させていただいてお ります。  それから、次に移りますけれども、 「(2) 救命治療及び脳死判定に係る部分の検証については、同機関の下に別途設置する 医療専門家のみからなる作業班においてまず行う。その上で、同作業班の検討結果を基 に全体会合において最終的な検証作業を行い、その上で結果を公表する。  (3) 臓器移植ネットワークの行ったあっせん業務については、全体会合において直接 検証を行う。  (4) 上記構成員が関係する臓器提供施設等が審議の対象となる場合には、当該構成員 はその審議には加わらないものとする。」  それから4番目に、審議の方法については、 「(1) 審議を行う上で必要な参考人に加え、審議される対象の臓器提供施設及びネット ワークより適宜招聘するものとする。  (2) 上記(1)の招聘等により情報提供を当事者から求めることについては、当面はあ くまで任意とする。」  当事者に何らかの情報提供の義務を課すことについては、法的な手当が必要であり、 当面は強制というのは無理、という考え方でございます。 「(3) 会議は原則として非公開とするが、審議状況及び結果報告書については公表する 。 (4) 上記の結果報告書の公表は、臓器提供者の御家族の了承を得て行う。  (5) 同機関の設立後速やかに検証を行う際のチェック項目等についてあらかじめ検討 し、公表するものとする。」  5番目に、第三者検証機関の設立・運営でございます。 「(1) 中間報告においては、第三者検証機関は、病院側、あっせん機関、行政側等から 完全に中立な専門家から構成されるべきであるという意見を出しているが、構成員の守 秘義務に係る問題、事務作業の負担の問題、財政的基盤の問題等にかんがみ、当分の間 は、事務局を厚生省とする暫定的な機関として設置・運営を行わざるを得ないものと考 える。」  (2) 具体的な機関の形態としては、厚生大臣の私的諮問機関とし、大臣により任命さ れた委員により審議を行うものとする。  (3) 委員の選定については、本委員会における議論を踏まえ、厚生省において行うも のとする。」  それから、一番最後の、別添3でございます。これは3例目と4例目の日本臓器移植 ネットワークのあっせん業務に係る評価に関する作業班の報告書の中で、前回の委員会 においてご議論いただいた点を踏まえて修正を加えております。  コーディネーターが行う業務の中で、御家族の総意のとりまとめに関して、「コーデ ィネーターはそのとりまとめにどのように関与するのか」というくだりがありますけれ ども、あたかもコーディネーターが中心的な役割を果たしてとりまとめるような印象を 与えるので、少し表現ぶりを変えたほうがいいのではないかということで、この趣旨と するところは、とりまとめの状況をどのように確認するかといった趣旨でございますの で、このような文章に変えて、最終報告の別添として付けさせていただきたいと思って おります。  以上でございます。 ○黒川委員長  どうもありがとうございました。今のご説明、この間の中間報告、さらに その後の議論をいろいろ踏まえて、主な論点がいくつかありますので、先生方に伺いた いんですが、資料の1ページ、2ページはよろしいですが、3ページについては、今ま での経過、4例に基づいたとりまとめをして、特に提供側その他についてのいろんな状 況の整備をさせていただいている、というところであります。  そこで、まず第1に、4ページに行くと、透明性の確保と臓器提供者等のプライバシ ー保護の両立について。いろいろな議論をいただいた上で、一応の経緯を書かせていた だきまして、今後の方針というところまで書き込んで、4例に基づいた最終報告案をま とめたいということですが、これについてご意見はございますか。プライバシーの保護 と透明性の確保でございます。  特に今後の方針というところが一番問題なのかなと。論点があったわけですが。プラ イバシーの保護と情報の提供ということですね。板倉委員から何かございますか、全体 の構成その他につきまして。 ○板倉委員  基本的にはこれで結構かと思いますけれども、ちょっと先のほうについての 質問かもしれませんが、6ページの(4)の(4)「結果報告書の公表は、臓器提供者の御 家族の了承を得て行う」というところなんですが、これは御家族の了承を得られなかっ た部分は公表しない、という意味なのか、了承がない時には結果報告書そのものをすべ て公表しないという意味なのか。全部公表しないとなると問題だろうと思いますけれど も、その点が気にかかるわけです。 ○朝浦室長  御家族の了承が得られない部分について、公表は差し控えるということでご ざいます。 ○板倉委員  全部公表しないという意味ではないということですね。 ○朝浦室長  そういうことでございます。 ○黒川委員長  それはちょっと誤解されないように書き直したほうがいいと思いますね。 ○浅野委員 ここも、この前、8月12日に示された厚生省の方針と同じような表現をさ れたほうがいいと思います。原則として、というふうに。ですから、全くしないという ことではなくて、どの程度まで家族が全部ダメと言うかわかりませんが、少なくとも、 この4ページに書かれているような方針、大臣もそういうふうに言われているわけです から、そういう表現にしたほうがいいんじゃないかなと思います。  それから、その前に、4ページのことですが、朝日新聞の世論調査が10月13日の 紙面で発表されまして、そこでこのように質問をしています。「厚生省が、家族が同意 しない場合は、臓器提供があったことも含めて、一切の情報公開をしないことを決めま した。これについてどう思うか」という質問に対して、「公開しなくていい」が50% 、「情報公開が必要だ」というのが39%、その他・答えがない、というのが11%。 この質問自体がかなり誘導で、私は朝日新聞の見識を疑うんですが、つまりこういうこ とは朝日の社説では確かに言ってるけれども、この委員会をきちんと取材していれば、 そういうことは厚生省は決めていないわけで、こういう質問でも50%が情報公開しな くていいと言ってるんですね。そういう意味で相当、国民の間で、情報開示=マスメデ ィアの報道、になってしまうということに対する危惧が表明されていて、おそらく朝日 新聞はこの結果を見て、どうやって報道していいかわからなかったんじゃないかと思う んですけれども。つまり、朝日新聞は社説で家族の同意がない場合の厚生省の方針を撤 回しろと言って、そのまま今日まで変えていないわけです。そういう意味で私は、厚生 省は、脳死の判定があったこと、移植があったことについては、最低限公表できるよう に努力していくという姿勢でいいんじゃないかと思います。 ○小泉委員  4ページの「今後の方針について」の文章ですが、これを読んでいると、今 後は、新しい事例が起きた時の検証ということで、透明性の確保の議論をする。情報公 開が可能かどうかとか、重要性とか。そういう文脈からすると、ケース・バイ・ケース に検討するというふうに読めるんです。ということは、透明性と情報の開示ということ については一般論に導いていくというか、そういう方向ではないのかどうかという疑問 を持ったんですが、いかがでしょうか。 ○黒川委員長  事務局で返事しますか。どうぞ。 ○朝浦室長  中間報告においてある程度、情報公開と個人のプライバシーの保護の両立に ついての基本的な考え方を整理していただいておりまして、基本的にはその線に沿って 、厚生省としてもいろんな公表の仕方、具体的な公表内容については考えていきますし 、これまでのケースにおいても、中間報告の基本的な考え方に沿って、ご家族の方にも ご説明をしてきた経緯がございますので、基本的には中間報告の考え方に沿って、我々 は検討していきたいと思っております。  最終報告に書きましたのは、あくまでも、ご家族の了承を得ないまま情報開示を行う ことが可能な場合があるかどうかとか、非常に例外的な事例についてはどう考えていく のかという問題を特に書いておりますので、これについてはケースごとの個別事例に即 して検討していく必要がある、ということで、非常に矮小化された問題になってきてい ると思いますが、一般原則としては中間報告の考え方に沿っていきたいと考えておりま す。 ○黒川委員長  そうすると、これはちょっと書き直さないと。それが一般原則だという話 を書いて、そうでない個別の事例についてはまたそういう話がある。だけど基本的には 臓器提供及び移植……、作文の問題よ、これは。あまりにもディフェンシブで、エクセ プショナルなことばかりを書いていると、基本は何だ、というのは書いてないから、ち ょっとまずいんじゃないかという意見だと思います。 ○朝浦室長  中間報告で書かれている中身をここで書き込む、ということで、修文をさせ ていただいて、もう一度ご了解いただきたいと思います。 ○黒川委員長  ご了解いただくのは構わないんだけど、ここのところをまた皆さんにファ クスなり何なりを送って、この趣旨を書き直したものでご意見をいただいて。1回か2 回やりとりがあるかもしれないけど。臓器提供があったということ、実際それが移植で きなかった場合も今までもあるんだけど、臓器提供及び移植があったことについては公 表する、という話でよろしいんじゃないですか、基本的には。それで、プライバシーに 関わる問題その他については、前の中間報告に書いたことがあって、さらにどうしても 承諾が得られない情報についてはどうするか、という話は、これの最後に書けばいいん だと僕は思うんだけど。 ○朝浦室長  少なくとも脳死判定あるいは臓器提供があったこと自体についての公表は行 う、ということで……。 ○黒川委員長  順番が、そっちから入ってもらいたいんですよね。  それから、もうひとつ、先ほど板倉委員が言われましたように、6ページの(4)の (4)のところでもそうですが、結局、いろいろ審議をして、臓器提供者のプライバシーの 問題その他のところと、ご家族がどうしても了承できないところを除いたものは公表す る、としているわけですから、それでさらに後でのチェックも公表されるという格好で 、非常に健全というか、透明性の高いものになるんじゃないかなと思いますが。あまり ギチギチには決めないけど、いろんな予想できないケースが起こりますけど、それにつ いても検証はきちんとする、ということでよろしいかなと思います。  その他にもし何かありましたらいただくとして、それでは、そのように書き直したも のはもう一回委員の先生方に配ります。  脳死下での臓器提供に係る第三者検証機関、これもずいぶん議論していただいたので 、パッと済まさないで、5ページについて、何かご意見ございますでしょうか。 ○小泉委員  6ページの上から4つ目に「ジャーナリスト」というのが加わりましたね。 私はこのジャーナリストが加えられることに異論があるわけではありませんけれども、 移植希望患者の立場を代弁できる者という、前回出て、今回生きている、これが具体的 にはどういうジャンルの方から選ばれるのかということがよくわからない。しかも今回 、ジャーナリストと出てくると、ジャーナリストはまさにこの一番上の、移植希望患者 の立場を代弁できる者でもあるのではないか、と思ったものですから、原案の作成者の ご意見を伺いたい。 ○朝浦室長  移植希望患者の立場を代弁できる方は、本委員会では大久保先生のお立場で ございますけれども、移植を実際に受けられる方、あるいはご家族の方の立場を代弁で きる方、ということで想定をしておりまして、ジャーナリストはまたちょっと別の立場 からご参画いただければ、というふうに思っております。 ○黒川委員長  ジャーナリストと言った時に、事務局の言葉どおり言ったほうが正しいん じゃないかと思うんだけど。ジャーナリストとやると、ジャーナリストになっちゃって すごくまずいんじゃないかと思う。そちらが最初に言ったみたいに、放送・報道に造詣 の深い者、というのが正確なんじゃないの。ジャーナリストというと、そういう職業に 限定されちゃうから。それに詳しい人。今のジャーナリズムに非常にハッピーな人とそ うじゃない人とか、いろいろあるわけだから。 ○朝浦室長  それでは、私の説明が不十分だった点もありますけれども、ジャーナリスト という意味は、一般国民の方の声を代弁できる方、という意味も含めて、ここに掲げて おりまして、そういう意味で書いておりますけれども。 ○黒川委員長  これは誤解されますよ。報道や何かのあり方についてずいぶん議論された わけだから、やっぱり放送・報道関係に造詣の深い方。 ○浅野委員  ジャーナリストという表現ですと、今日も後ろのほうで傍聴していらっしゃ るような科学部の専門の記者というイメージが強くなると思います。おそらく日本のジ ャーナリズムでは、取材者はこういう委員会とか第三者機関にコミットしない、当事者 にはならないという原則があって、そのこと自体が非常に難しいんじゃないかというふ うに危惧しますが、ただ、元共同通信編集主幹の原寿雄さんのように、現役のジャーナ リストで今は企業には属していないというような方がイメージされているなら、それは それでいいと思うんですが、もう少し幅広く、メディア・ジャーナリズム関係者とか、 先ほど黒川委員長が言われたような表現でもいいと思うんですが、ジャーナリストとい うのは非常に限定されてきて、あるいはいろんな人がいろんな解釈をしてしまうので、 変えたほうがいいと私も思います。 ○山本補佐  若干混乱があるのでクリアーにしたいのですが、このジャーナリスト、もし くは報道関係に詳しい人という意味が、次につくる第三者検証機関は報道のあり方論を 議論する場ではなくて、実際の検証をやる場なので、普通の国民の視点を持った人がそ の報告を見て理解できるかとか、疑問がないかとかいう視点を持ち出してくれる方で、 一般国民を誰が代表できるかという問題はありますが、そういう意味で、報道関係者と いうか、ジャーナリストと言うか、というようなことであればいいんですが。報道のあ り方論の専門家という趣旨ではなかったということです。 ○黒川委員長  だから、広くしておいたほうが選ぶ時に選びやすいということと、妙な誤 解を受けないということでは、そのほうがいいんじゃないでしょうか。その中で、ジャ ーナリストであった人のOBとか、いろんな人ももちろんキャンディデイトになるわけ だし。そういうことでいかがでしょうか。広くしておいて、そこのところだとしたほう が、おそらく選ばれる時にもより適切な人になって、何でこの人がジャーナリストを代 表するんだ、なんて言われてもちょっと困るんじゃないかと思いますので。よろしいで すか。  それから、その次の(2)ですが、「救命治療及び脳死判定に係る部分の検証については 、同機関の下に別途設置する医療専門家のみからなる作業班」と、わざわざ「のみ」と 書かなくてもいいんじゃないかと思うんですが、どうですか。「……からなる」と言っ て他の人が入ってもいいわけだから。町野先生が入ったら云々と、いろいろあるじゃな いですか。「のみ」なんていうのは限定的だから。 ○小泉委員  だけど医療関係者しか入れないんじゃないですか。 ○黒川委員長  そうじゃなくてもいいようにしておけばいいわけで。「のみ」を取ってお けば、いろんな方が入るのはよろしいんじゃないですか。 その他に。 ○浅野委員  今のところで、医療専門家からなる作業班と、全体会合との関係なんですが 、作業班で様々に提供される資料とか議論される内容と、それを全体会合に出す時には ある程度限定されて出てくるのか、それともそれはイコールの状態で開示されるのかと いうことをお聞きしたいと思います。 ○朝浦室長  これまで本委員会の下で作業班を開いていただいて、いろんな個人情報に関 わるデータ、カルテ、あるいは脳波測定の記録とか、たくさんいただいて、その中で医 学的な検証を行っていただいた経緯があり、そういったデータを出していただいたから こそ、いろんな細かな検証もできたという面があります。この委員会は公開しておりま すので、公開するということは、そこに出すデータはすべてオープンという形になりま す。第三者検証機関は基本的には会議自体は非公開で行うことになっておりますので、 出した資料がすべてオープンになるということにはならないと思います。非公開で行い ますので。ただ、作業班で作業するに当たって必要ないろんなデータをすべて全体会合 のほうに上げるのかどうかというのは、具体的なケースごとに違ってくるんじゃないか なというふうに思っております。 ○黒川委員長  確かにここでも、今の竹内先生のご報告でもそうだけれども、CTの話か ら、前は全部ビデオを流していたり、テープも録っておられたり、という話は、本当に そこまでやっていいのかなと。別に障害はないにしても、いくらでも、いろいろやろう と思えばやれることもあるわけで、そのへんは、制限してるわけではないんだけれども 、かなりプライバシーの問題もあるということは確かにあるなという気がしてますので 。これは前々からご質問が出ていて、はっきりした答えがない。例えば裁判の傍聴では テープを録ってはいけないと言ってるんだけれども、まあテープを録ってもいいやとい うことに、何となくなしくずしになってるわけですけど、そのへんをどうするのかなと 思いますが。実際は審議の状況及び結果報告書については公表すると。ここにも公表さ れるわけですし。それから、ご家族の了承を得ていない部分についてはもちろん出さな いような報告書にしていただくという格好で、これの成長を見守っていくというところ じゃないかな、という気がします。 ○大久保委員  ひとつは、この第三者機関での公表の仕方、どういう形で公表するのか、 要するに記者会見をするのか、1回1回どういう形でするのかということ。それから、 第三者機関とこの委員会との関係。我々のほうとしては、第三者機関に対して、ある程 度、こういう形で、とかいう意見が言えるのかどうか。そのへんの、第三者機関とこの 委員会との関係はどういうふうに捉えていらっしゃるのか。 ○朝浦室長  公表の仕方の具体的な内容はまだ決まっておりません。今後、できるだけオ ープンな形で公表できるような方法をとっていく必要があるだろうと思います。  それから、この委員会との関係ですが、本委員会は本来的には臓器移植制度全般のい ろんな問題について幅広い検討を行う場でございます。必ずしも個別の事例についての 検証を行う場として設定されたものではございません。本委員会で4例までの検証を行 ったのは暫定的な意味がありまして、この場が一番適当だという判断で、厚生省のほう から臨時委員の先生3名を加えて検討をさせていただいた経緯がございます。今後は、 第三者検証機関において個別事例についての個々の検討を行っていき、この委員会にお いては制度全般についての幅広い議論を行っていく、という整理で行っていきたいと思 いますけれども、検証機関において、ケースごとの検討ですけれども、幅広い観点から のご提言とか、あるいはいろんな問題点とか、そういうものが出てくれば、当然本委員 会において検討していただく材料にもなるでしょうし、また逆に、本委員会のほうから 検証機関のほうに、こういった観点からの検討をお願いしたい、ということであれば、 それはまた投げかけてもいいというふうに思っております。 ○黒川委員長  私もそういうことじゃないかなと思います。問題点があれば、そこでまず 整理して、ここで検討させていただく。 ○菊地委員  6ページの(3)の(3)ですが、「日本臓器移植ネットワークの行ったあっせ ん業務については、全体会合において直接検証を行う」というふうに記されているんで すが、あっせん業務の流れ、手続き、各施設への連絡のタイミングなど、かなり専門的 になると私自身は考えるのですが、この検証については、下部といいますか、専門機関 での検証は行わないということになるのでしょうか。 ○朝浦室長  (4)の(5)にありますように、検証を行う際のチェック項目を事前に決めて 、それで公表して、それに沿ってやっていくという形をとりたいと思っております。こ れまでの1例目から4例目までの検証を小泉先生を中心にやっていただきまして、大体 、チェック項目のようなものは、どこをポイントに置けばいいのかというのはある程度 固められるんじゃないかと思っておりまして、それをもとに全体会合でやっていただけ れば、敢えて作業班を置いて別の場で検討する必要はないのかなと、今のところは思っ ております。 ○黒川委員長  もうひとつの問題は、ネットワークの中で、ひとつひとつの評価委員会、 それから全国の評価委員会もあるし、全部の事例についての報告と検討ということをし ているわけだから、ネットワークをまた評価する機関がありますから、そういうプロセ スになってくるのかな、という気はしますね。そこで問題があればまたここの委員会に 上がってくる問題だと思います。  その他に。よろしいでしょうか。それでは一応、この委員会の最終報告ということで まとめさせていただきたいと思います。 ○浅野委員  この最終報告書は、臓器提供のプロセスを中心にされてるんですけれども、 レシピエントの選定の過程、1例目で、ミスが阪大の先生によってわかったという経過 もありまして、そのことについてのケアは非常に必要ではないか。それから、ドナーの 意思確認と家族の同意のプロセスについて、コーディネーターの側から説明を受けるだ けでなく、家族の側というか当事者の側からの、どういうやりとりがあったのかという 、もう一方の側からの検証がされてこなかったという問題があって、その2点を今後の 検討課題にしていただきたい。  それからもう1点は、私は前からこの委員会で申し上げてるんですが、やはりマスメ ディアに対して、脳死移植報道について、やはり一定の、できるだけみんなが協調でき る全体の取材・報道ガイドラインをつくるように、本委員会として要望すべきであると 、重ねて提案したいと思います。これまで、この提案はほとんど議論していただいてい ないので、お時間を取って大変申し訳ないんですが、今回の資料の4ページのところの いろんな悩みも、その原因は、1例目以降の取材・報道による国民の危惧があると思う んです。つまり、臓器は提供するけれども、あるいは情報は関係者には開示するけれど も、マスメディアに公表してほしくない、ということをドナーカードに書く人も出て来 ている状況の中で、確かに報道の自由、取材の自由というのはあって、そのことに対し てこの委員会がどうこうできるわけではないということはわかるんですが、しかし、要 望、要請として、きちんとすべきではないか。その対象は日本新聞協会、日本雑誌協会 、日本民間放送連盟、NHK、この4団体に対して、早急にそういう要望をすべきであ る。それが、メディア自身が、この4回、我々の委員会が検証したのと同じように、報 道界もこれをきちんと全体で検証し、そういうガイドラインをつくるように要請する。 そのガイドラインはおそらく、毎日新聞や産経新聞が先駆けて行った、第2回脳死判定 後から報道を始めるとか、あるいは救急医学会ではお見送りの後という考え方があって 、そのどちらかになると思うんですが、少なくとも、何らかの同一歩調を取るようにし てほしい。そうしないと、医療関係の側も、いつ開示するか、公表するかということに ついて困惑しているというのが実態だと思います。  現在、日本におけるジャーナリズムの現状を考えますと、個人情報保護法、これは堀 部政夫先生が代表してますけれども、その動きの中で、日本新聞協会は、個人情報保護 法について、取材・報道の自由を侵害されては困るということで、それに対して、自主 的なガイドラインをつくって、自分たちで対応する、という回答を10月6日付でして おります。法務省の人権擁護推進審議会は、マスメディアによる取材・報道の被害につ いて検討するということで大きな取り組みをしております。一方で、新聞労連、日本弁 護士連合会が、そういうものを全体でつくろうという呼び掛けもしているわけですから 、その他、政党の中にもそういうことを申し入れているところが、与党の中にあります 。そういう全体状況を踏まえて、本委員会として、第三者検証機関の円滑な運営を保証 するためにも、厚生省と厚生記者クラブの間で頓挫したままになっている話し合いを早 急に始めて、そして、先ほど言いました4団体に対して強く申し入れるように、再度望 みたいと思います。 ○黒川委員長  この委員会ではそんな立場はあるのかしら、どうでしょうか。ちょっと違 うんじゃないかなという気もしないでもないけど、そちらの立場ではどうですか。これ は何回も言ってるんだから、公開された場で。 ○朝浦室長  事務局で答える筋合のことではないと思いますが、いずれにしてもこの委員 会そのものは政府の審議会の下につくられている委員会になりますので、報道のガイド ラインをつくるようにという要請をすること自体が、一歩間違えば報道管制、報道統制 ということにも取られかねないので、私的な検討会であれば別に構わないと思うんです けれども、政府の審議会の下にある委員会という性格上、なかなか難しいのではないか な、という感じは、事務局としては持っておりますが。 ○黒川委員長  何回も言って、何人の人にも聞いてもらっているわけだから、会社の組織 の問題かなと。あんまり会社の大物が来てないということもあるのかもしれないけれど も。上に上げてくださいねと、私は何回も言ってるんだけど。 ○朝浦室長  浅野委員のご提言の、レシピエントの選定の過程については、当然、あっせ ん業務を検証する中で検証してまいりたいと思います。それから、ドナーのご家族に対 していろんなお話を聞くかどうかについては、これはご家族のお気持ちがどうかという 問題がありますけれども、今後、立ち上げる検証機関の中で十分検討していきたいと思 っております。 ○黒川委員長  まだ数が少ないというのは、確かにいろんな意味での制約があるというこ ととですが、報道のあり方についてもここでは何回も議論されて、皆さんに聞いていた だいているわけなので、それぞれの担当で、ここで聞いておられる方、いろいろご事情 もあるし、それぞれの考えもあると思いますけど、それぞれ一人一人、先生のおっしゃ る市民として考えみよう、という提言は、自由な発言としてさせていただきたい。前か ら何回も言っているところですので。これでよろしいでしょうか。それでは次に進ませ ていただきたいと思います。  第三者検証機関については、このような方向で、審議会に上げていただきたいという ことであります。  それでは、HLA検査、これは臓器移植に非常に大事なポイントでありまして、これ についてもいろいろな事例がありまして、理屈から言うといろんなことができてるはず なんですが、日本臓器移植ネットワークのあっせん業務に係る評価に関する作業班の検 証作業で、1例目においては肺移植のレシピエントの血清、第3例目では心臓移植及び 肺移植のレシピエントの血清がHLA検査センターに保存されていなかったという問題 があるわけで、その他にも、今後の臓器提供の増大ということが期待されると思います が、そうなると、精度の高いHLA検査及び感染症検査を実施する体制、これがいつ出 てくるわからないという体制と、地域的な問題等、いろいろありますので、これらのこ とについて、事務局のほうから、現在どうなっているのかということ、それから問題点 について、ご説明をお願いします。 ○朝浦室長  資料3に基づきましてご説明をいたしたいと思います。HLA検査あるいは 感染症検査は、臓器移植を行う上で非常に根幹的なものでございまして、特に腎臓ある いは膵臓につきましては、HLAの適合が極めて大きなファクターになってまいります 。その検査体制をしっかりしておかないと問題になるケースが出てくるだろうと考えま して、今後、将来的に見ましても、HLAの検査体制あるいは検査方法について、十分 議論をしておくことが現時点で求められているのではないかと思っております。  現状ですが、全国に47カ所設置されているHLAの検査センターで、レシピエント の登録時の検査と、ドナーが発生した時の検査を行っております。これは平成7年度に 臓器移植ネットワークが発足した時に、都道府県の推薦を受けて、厚生省の指定を受け て整備されたものです。この体制そのものは、日本臓器移植ネットワークが改組された 後も引き継がれております。  検討課題として挙げましたのは2点ございます。 (1)検査体制の整備について  検査施設のあり方ですが、現在、夜間、休日の実施体制について、それぞれの検査セ ンターごとに格差がありまして、結果的にはブロック別に基幹的な役割を担っている検 査センターが中心になって実施しているという実情でございます。そういった実態を踏 まえて検討していく必要があるだろうということです。  次に、効率的な検査体制の整備ということで、検査精度の向上、あるいはこれから検 査種類が多様化してまいりますので、効率的に多様化する精度の高いものをどうやって 行っていくのかということを、システムとして検討していく必要があるだろうと思いま す。  3番目に、精度管理の必要性が求められておりまして、精度管理を今後とも十分推進 する必要がある。過去の脳死下での臓器提供施設においても、先ほどお話があったよう に、血清の保存あるいは更新が徹底していないといったことも指摘されておりまして、 十分なマニュアルの拡充あるいは徹底を図っていく必要があると思います。 (2)新たな検査方法の導入及び検査結果の取り扱いについて  検査方法そのものは日進月歩、新しい検査方法が開拓されておりまして、新しい治験 をどのように移植の分野で導入していくのかといった問題が出てまいるかと思いますけ れども、個別的に見てまいりますと、ひとつは、HLA検査の結果、一部の抗体が判明 していない登録レシピエントをどのように扱っていくか。現在は、腎臓移植のレシピエ ントの選定の際に、ある一定の客観的な基準を定めておりますが、  (1)判明しない抗原を持っていらっしゃる方がいる場合、下のランクに落ちてしまう。 そういった患者さんに対して非常に不公正な取り扱いになってしまってはいないか、と いった問題があります。それをどう考えていくのか。  (2)現在実施しているパネルテストの必要性。これまですべてパネルテストをやってき ているわけですけれども、これを今後さらにやっていく必要があるのかどうかという問 題。 (3)DNAタイピングという方法も導入されておりますが、これを今後HLA検査 においてどこまで導入していく必要があるのか。  (4)検査技術の進歩によって、新しい抗原への読み替えというものが出てまいります。 そのルールが確立されていない、地域によってバラバラである、という問題点がござい ます。統一的なルールをつくっていく必要があるのかどうか。  という問題を含めて、非常に専門的なものになりますので、今後の対応としては、作 業班を設けていただいて、専門家の先生に十分議論していただいた上で、本委員会で結 論を出していただくということでお願いできないかというふうに思っております。 ○黒川委員長  今のご説明でよろしいでしょうか。HLAというティッシュ・タイピング はドナーとのマッチングの意味で非常に大事な医学的な検査ですが、レシピエントに登 録されている方の血清が、ドナーが出た時にすぐに対応できるかという問題、それから どこで出るかわからないという搬送の問題、それから出た時に24時間体制でそこはで きるのかという体制の問題、それからそこに運搬する問題、いろんな問題がありまして 、そういう体制としての物理的な問題がひとつ。もうひとつは、HLAといって、クロ スタイピング、野本先生がご専門ですが、現在はどんどんサイエンスが進んでおります ので、DNA分析によって型を同定するという時代になってまいりました。従来はそう いうことに対応する抗体というか、血清を使ってやっていたわけですが、精度がどんど ん上がってきた。上がってきた精度に変えるほうがもちろんいいわけですが、一斉に変 えた時に、それによって不利、有利になる方がどうしても出るわけで、今まで6つ全部 タイピングしてない方も、コンピューターで全部登録されてますから、そのへんの技術 的な移転度、それによる不公平感をなるべくなくしたい。それから、不完全だったのが 、いずれ全部DNAになってくると思いますが、そうなる時の技術的な問題、それをコ ンピューターに移し替える問題、いろんな問題があります。  そういうことについてですが、この委員会では、そういうのに対応するのに、専門家 を集めて、両方の問題を検討していただいて、現状がどうなっているのかということを 分析した上で、どういうふうにするかというプロポーザルも検討していただいた上で、 ここの委員会に上げてきていただいたほうがいいんじゃないかということですが、これ について何かご質問その他ございますか。 ○菊地委員  これはお願いになりますが、HLAに加えまして、脳死臓器移植に対応すべ く必要な感染症につきましても、追加項目の中に入れていただいて、是非早期のうちに 検討していただきたいと思います。 ○黒川委員長  これも検討課題の(1)の1番目の○に書いてありまして、確かにいろん な感染症の問題があった時に、いつ出るかわからないので24時間対応していただきた い、という整備をしなくちゃいけない。するところにも、ただお願いするだけでは、そ うもいかないですから、そのへんも含めて検討する必要があるというふうに思います。  それから、パネルテストというのをやってますが、これは非常にお金もかかるし、む しろダイレクトクロスマッチなどいろんな新しい方法がどんどん出てきていますから、 必ず今までのマニュアルどおりにしないといけないかというと、本当は医学的な優位性 、優秀性が優遇されるべきなんですが、いったん書き込むとそうなりますから、これを 書き直す必要があるかないかも含めて検討していただく。  野本先生から何かございますでしょうか。 ○野本委員  ネットワークのほうはいつも申しておりますように、ルールを執行していく 、絶対にルールを曲げないで執行していくというのが役割なんで、キーポイント、キー ポイントを、こういう委員会なり作業部会できちっと決めていただく。キーポイントと キーポイントの間は多様な道筋がある。それは現場でデシジョンをしてやっていく。し かしキーポイントを押えてくれてないと、流れの本質が狂ってくる。それはきちっとや っていただきたい。あとはこちらに任せていただきたいと思います。  それからもうひとつ、こういう作業部会がなくても、野本の傘下にいる専門家でやっ たらどうかという声があるかもしれませんが、それはできません。できない理由は、ネ ットワークでそういう担当で集めている人たちは、むしろサイエンスよりもテクノロジ ーが主体の人たちに集まってもらっているんです。だから、いい技術でいいデータを出 してくれる人を集めたい。ところが、流れを見て、こういう技術が今優れているから、 今の時点ではこれを入れたほうがどのくらいメリットがあるかとか、将来を見通してど うしたらいいかというのは、これは科学主導型ですから、科学がわかる人たちで委員会 をつくっていただきたい。そこは役割が違うと思うんです。私のほうで、ネットワーク でルールを決めろ、ということになると、テクノロジー主導型でものを考える。実際に はそういう人を集めていなければこの実務は引き受けられませんので、そういう人たち で動いてるんですが、キーポイントのルールは、テクノロジーもわかるけれども、しか しやはりサイエンス主導でものを考える人に決めていただきたい、ということです。 ○黒川委員長  そういうプリンシプルがあって、菊地委員も言われたように、現場のとこ ろではいろいろそういう問題があって、今はトランジションですし、トランジションだ と言ってるうちにサイエンスもどんどん進んでしまうということがありますから、そう いうところを常に補完しながら、きちんとしたキーポイントを押えながら、実務に移せ るような具体的な方策、実践的な方策も考えていただく、という委員会をまたお願いし たい。従来はこれは厚生省の班会議があって、いろんな班会議で上げてきたのを、ご意 見をいただくという格好だったんですけれども、今はこういうのができて、ネットワー クもできて、という話ですので、別のあり方で検討していくということになると思いま す。  それでは、そのへんの整備について、少し検討していただいて、またご意見をいただ くということにします。  それでは、膵臓移植、これについてもいろいろお話は伺っていると思いますが、膵臓 移植というのが、10月からレシピエントの登録が始まりました。そこで、レシピエン トの選択基準その他も研究班でずっとやっていただいていたわけでありますので、これ についての確認ということで、事務局から資料4の説明をお願いします。 ○朝浦室長  膵臓移植につきましてご説明をしたいと思います。10月1日からレシピエ ントの登録が始まりまして、現在15名の方が膵臓移植のレシピエントとして登録をさ れております。膵臓の臓器提供については、1番で書いておりますけれども、脳死下及 び心停止下での提供が可能でございます。ドナーカードの記載の中にも、膵臓は脳死下 と心停止下、両方記載されておりますけれども、両方で可能でございます。いずれの場 合にも本人の書面による臓器提供に係る意思表示が必要であります。  膵臓の臓器提供施設については、脳死下での膵臓提供において、他の臓器の脳死下で の提供と同じように臓器提供施設が限定されておりますが、心停止後の臓器提供につい ては、臓器提供施設の限定はございません。そこは若干、他の臓器、心臓や肝臓、肺と 異なるということになろうかと思います。  ドナーの適応基準は、資料1のとおりでございます。また後ほどご覧いただきたいと 思います。  脳死下での膵臓移植実施施設は、現在、ここに掲げております13施設でございます 。これは移植学会合同委員会において選定をしていただいて、それをネットワークのほ うに登録していただいている、ということでございます。  膵臓移植のレシピエントの登録状況は、先ほど申し上げましたけれども、現在15名 でございまして、いずれも膵臓・腎臓の同時移植の適応患者さんとして登録をされてお ります。具体的には、膵臓移植のレシピエントの登録と、腎臓移植のレピシエントの登 録の両方を、それぞれ行っていただいております。現在、膵臓移植の選択基準の中で、 若干疑義があるところがございます。それについて、本日確認をさせていただきたいと いうわけでございます。レシピエント選択基準は別添の資料3になります。ABO型の 血液型、それからHLAの適合度の優先順位、それから待機期間等々で選択をするわけ ですが、附則のところで、DR座の1match 以上のHLA型の適合があれば、1腎は膵 腎同時移植の移植希望者に優先的に配分する、というふうになっておりまして、腎臓移 植よりも膵腎同時移植を優先するという原則がここで掲げられております。  そこで、もとに戻っていただきまして、臓器提供があった場合に、膵腎同時移植のレ シピエントとして優先的に選択をされて、その後、臓器摘出時の3次評価、あるいは臓 器搬送後に膵臓のみが移植に適さないということが判明したケースが出てくる。その時 には、結果的に腎移植だけを行うことになるけれども、その場合のレシピエントの選択 についてどのように考えるか、といった問題が出てまいります。この時に、私どもとし ては、膵腎同時移植のレピシエントが選択されている場合、臓器摘出手術の開始以降に 膵臓が移植に適しないと判明した場合には、再度腎移植のみのレシピエント選択をやり 直すのではなくて、膵腎同時移植のレシピエントとして選択された患者に腎のみの移植 を行うこととする、という方針をご確認いただいて、これをレシピエントの選択基準に 付記したい、というふうに考えております。  したがいまして、そういった方針になりますと、膵腎同時移植のレピシエントとして 選択された患者さんに対して、そのインフォームド・コンセントを行う際に、膵臓が移 植に適さない場合は腎臓のみの移植を行うということについて十分同意を得ておく、と いうことが必要になってくると思います。  以上でございます。 ○黒川委員長  ということですが、いかがでしょうか。膵腎移植については、今あったよ うに、脳死の下でもできるし、心臓死の下でもできる、というのはドナーカードにはっ きり書いてあって、今までの研究班、ワーキンググループでもずっと了承されていて、 今まで少し遅れていたのは、その選択の基準とか、実施施設とか、いろんな話であった わけですが、別添資料1、2、3というのは、専門委員会あるいは研究班で今までずっ と議論されてきたことが十分練られていますので、おそらく、これしかないかと言われ るとそういうわけじゃないと思うんですけれども、現在はこれで行きましょう、という コンセンサスが得られたものが出てきているというふうに考えていただいていいと思い ますが。 ○大久保委員  質問なんですけれども、実施施設13施設に関して、これは脳死移植とい うことなんですけれども、心停止後の提供施設は制限がないということが書いてあるん ですけれども、では、レシピエントとしての登録というのは、この13施設以外に登録 した場合、そのへんのところの違いというのはどうなってるんですか。 ○山本補佐  膵臓移植につきましては、心停止後のご提供であっても、13施設における 移植ということで施設を限定しております。ですから、13施設からの登録になります 。 ○大久保委員  それからもうひとつ、私は膵臓移植については詳しくはないんですけれど も、日本での膵臓移植は、ずっと昔は行われたことがありますけれども、最近はほとん ど行われていない。外国とかで膵臓移植を経験している医者が非常に少ないわけですよ ね。その割に13施設と、患者が多いからという可能性もあるんですが、他の臓器に比 べると非常に多い。そのへんのところで、実施に当たっての心配というのはないのかど うか。この13施設がそれだけの経験を備えているかというのは、ちょっと疑問に思っ てるんですが、いかがでしょうか。 ○山本補佐  事務局からお答えするよりも、本当は合同委員会にお話しいただいたほうが よかったのかもしれませんけれども、13施設という数になった時の議論にオブザーバ ーとして参加させていただいた時に、膵臓移植の適応の患者さんというのは、インシュ リンのコントロールが非常に難しい、糖尿病の患者さんがほとんどになるわけですが、 その方は、実際にはインシュリンと、腎不全を生じた場合は透析治療で、生活されてい るわけですけれども、そういう方ですので、これは救命治療というよりはQOL向上の 治療に近いニュアンスが強くて、それをあまり限られた施設で行うと、患者さんがその 施設の周辺に移り住まなければならないとか、いろんな問題があって、相当議論があっ た中で13施設になりました。  いま大久保委員がおっしゃった、経験の問題なんですが、そういうこともあって、経 験している医師は非常に少ないんですけれども、逆に合同委員会の膵臓移植の先生方は 、チームを組まれて、全国、オールジャパンチームと言っておられましたけれども、合 同チームで、移植が起きた時には、お互いの経験を共有して、知恵を出し合う、という ようなことの体制をおとりになられて、それでこの13施設を選定されたというふうに 承知しております。 ○小柳委員  山本先生のご説明は非常に明快できれいなんですけれども、実際に私は多少 矛盾を感じて合同委員会に出ておりました。心臓と膵臓の代表の間でも激論がありまし て、皆さんお気づきだと思いますが、心臓3、肺が4、肝臓が2、そして膵臓が13と いう、この乖離はどういうことかというような話は確かに出たと思うんですね。膵臓が 心停止下でもいい、虚血許容時間が心臓なんかよりはもっと長い、ゆっくり運べる、多 分日本列島をカバーできそうな虚血許容時間があるかもしれない臓器で、なおかつ13 施設というのは、実際にはこの紙面には出ておりませんが、地域性というような言葉も 出たように記憶しています。心とか肺は地域性というようなことを全く考えないで施設 が決められたと思うんですが、私はこの2年という時間の間に、各臓器を取り巻く環境 で多少乖離が起きつつあるなということを正直感じているんですね。ですから、これは 将来の問題ですが、ここの先生方に是非ご理解いただきたいのは、臓器間の事情は少し ずつ離れつつあるかな、というようなことを、この膵臓から感じていただければ。私は 強烈に感じております。 ○黒川委員長  もうひとつの違いは、ご存じのように、腎臓透析をやっている人は19万 人いるわけですね。登録している人が1万4千人。今糖尿病がどのくらいかというと、 そのうちの15%が糖尿病の腎疾患ですね。去年、1998年は新しく3万人の人が透 析に入りましたけれども、その理由の一番は糖尿病性腎症、これがいま糖尿病が増えて きて、ついに1998年は日本のナンバーワンになりました。糖尿病の人は多いですか ら、これからどんどん増えていきますから、透析患者さんは糖尿病の人がどんどん増え る、ということになると、さてその中で膵臓移植の適応になる人は何人いるかというと 、これはおそらく、そんなに数はいないのかもしれないけれども、心臓、肺臓、肝臓の ように全国どこでもしなくちゃいけないというふうになるのか、もうちょっとベースが 広いということもすごくあるんじゃないかな、と思いますので、その違いがいろいろ感 じられているのは、レシピエントの登録されるベースと、普段の生活が透析をしている ということだから、そのへんもあるのかなと。私は参加していなかったからわかりませ んが、そういうこともあるんだろうなとは思いました。もっとも、やるほうはオールジ ャパンでやっていただけるというわけですから、高知の1例目の肝臓の摘出・移植のチ ームのように、移植に関わる先生方がオールジャパンでボランタリーにやるぞというス タンスを出されることが一番大事だと思います。そういうスタンスだということであれ ば、多いのは、おそらく、患者さんのベースがかなり広いということだと思います。実 際には、小柳先生がおっしゃったように、これから移植の患者さんが増えるということ が一番大事な問題かなと思います。  一番の問題点はそれではなくて、4番のことなんですよ。4番の真ん中から下に書い てある、膵腎同時移植のレシピエントという、この委員会でずっとやっていただいた順 番というのがありますが、ただ順番でも、膵臓が移植に適さなくなったと途中でわかる ことがあるので、その時に新たに、これはなしだよ、という仕切り直しはなしで、膵臓 と腎臓両方やるということで選ばれた人にあげましょうと。あらかじめそういうことを インフォームしておくということでよろしいか、ということでございます。  よろしいでしょうか。これが一番無難なやり方で、常識的な対応だと思いますが、一 応こういうふうに認めていただければ、差し当たりはこのようにして実行していく、と いうことにさせていただきたいと思います。どうもありがとうございます。  実は、余談ですが、今アメリカでも糖尿病の人が非常に多くて、腎臓がそれほど悪く なくても、膵臓だけ移植するというのが結構あるんですね。ミネアポリスなんかで一番 やってますけれども、腎臓がどんどん悪くなってくるんだけども、それほど悪くならな いうちに膵臓の移植だけするということ、特にIDDMがありまして、日本では非常に 少ないですけれども、そうやっていくと、5年、10年やっていると、腎臓もきれいに なっちゃって正常になっちゃう、というのが「ニュー・イングランド・ジャーナル・オ ブ・メディスン」に出ていますが、そういうことですので、膵臓移植だけやるというの が日本で出るにはもうちょっと時間がかかるのかもしれないなと思います。余分なこと でございます。  では、これはこのようにさせていただきまして、次に、臓器移植法の運用指針(ガイ ドライン)等の改正について、ということで、これまでの脳死下での臓器提供の事例を 踏まえて、ガイドラインについても改正すべき点がいろいろ指摘されておりますから、 事務局から資料の説明をお願いして、委員の先生方のご意見をいただきたいと思います 。 ○朝浦室長  厚生省からお示ししている臓器移植法の運用指針、いわゆるガイドラインの 改正につきまして、いくつかの点についてご提案申し上げたいと思います。資料5に沿 ってご説明をいたします。  これまで、脳死判定の準拠すべきものとして、竹内基準から法的脳死判定マニュアル に変えるというガイドラインの改正を一度行っておりますが、今回ご提案申し上げるの は2点ございます。第1点目は、第1回目の脳死判定と第2回目の脳死判定の観察時間 に関するガイドラインの記載内容。2点目が、死亡診断書を書く際に、第1回目の脳死 判定の時刻を死亡診断書の付記事項として書くこと、という記載があります。その点に ついてでございます。  まず第1点目ですが、2ページ目に現在のガイドラインと改正案を掲げております。 現在、第2回目の検査は、第1回目の検査終了時から6時間を経過した時点において行 うこと、となっております。ただし、ここに書いてありますように、原疾患、経過等を 考慮して、特段の事情がある場合にはさらに長時間観察すること、という規定がござい まして、医学的な理由においてのみ6時間以上というものを認めています。現在、厚生 省の施行規則では6時間以上という記載がありまして、ガイドラインでは6時間という 規定になっております。そのへんでどういう整理をしたらいいのかという問題が生じる わけです。  これまでの事例におきまして、医学的な理由以外の理由で6時間以上の経過観察期間 が生じた事例があります。そういったことが今後も生じてくることを想定しますと、6 時間とした場合、若干混乱が生じてくるのではないかという危惧がございまして、現在 、例外的な事項として書いている医学的な理由以外に、その下に下線で引いております けれども「医学的理由以外でも、家族の立会いに係る便宜、家族の脳死判定及び臓器提 供に対する承諾に係る心理状態等を勘案の上観察時間が6時間を超えることはやむを得 ないこと。ただし、特定の者が遺産相続等により財産上の利益を得るなどの恣意的な目 的での延長は行ってはならないこと」という記載をさせていただければと思っておりま す。  第2番目の死亡診断書につきましては、3ページの一番下に出ておりますが、「死亡 診断書の記載に際しては、脳死判定により死亡診断がなされた場合には、死亡時刻の記 載の他に、脳死判定に係る第1回目の検査終了時の時刻についても、死亡診断書の『そ の他特に付言すべきことがら』の欄に併せて記載すること」ということで、第1回目の 脳死判定の時刻を記載するようになっております。これにつきましては、各方面から、 この方が脳死判定を行われたということがわかってしまうのではないか、死亡診断書は 生命保険の受給の際などにも使われますので、いろんなところに出回る可能性がある。 それは個人のプライバシーの保護という観点からは非常に問題なのではないかといった 意見があります。ここで第1回目の脳死判定の時刻をあえて死亡診断書に書く必要性が あるのかどうか、ということを事務局で検討しました結果、これは必要はないのではな いか、もし第1回目の脳死判定の時刻を知る必要があるということになれば、脳死判定 記録書に記載がございますので、そこに遡っていけば知り得ますので、あえて死亡診断 書の中に記載することは必要ないのではないかという結論で、ここは削除という形にさ せていただけないかと思っております。以上です。 ○黒川委員長  これも前から議論があるところで、ご意見を伺いたいんですが、まず2番 目ほうがより短くて済むかなと思いますが、板倉先生、何かございますか。要するに、 死亡診断書に、1回目の脳死判定をされた時間も書いて、2度目の死亡時刻も書かれれ ば、あ、この人はドナーだったんだなということがわかってしまう。死亡診断書の広が りはもっと多いんじゃないかということです。 ○板倉委員  これはやっぱり削除するということであるべきだと思います。 ○黒川委員長  よろしいでしょうか。そういうことですので、削除するほうが適切だと。 これについて格段のご意見はございますか。こういうことをどうして考えなかったのか と今更言われるとあれですけどね。事例が起こってみると、いろんな具体的な反応があ って、より広い意見が収集できるということだと思います。  では、そのようにさせていただいてよろしいでしょうか。  1番目の、6時間というのは、これもだいぶ議論があったわけですが、6時間ジャス トか、6時間を過ぎたらどのくらいか、という話が常にあるわけで、実際に4例起こっ てみると、いろいろな事情があって、今日報告があったのは、6時間4分となっていま すけれども。そういうことから言うと、6時間というのは一体何なのかとか、1回目を やるのはどうして決めるのかとか、いろんなシチュエーションがあるわけで、いろんな ことを想定して書き込んでも、これもまた難しいわけですから、上のほうを少し直す。 つまり、医学的な理由で6時間を経過してもう少し延びるということがあってもいいけ れども、その場合になぜ延びたのかという話をちゃんと書いておいてくださいね、とい うことはありますし、先ほどからの現場のいろんな検証の場でそういうことになってま したね、ということがわかるわけですが。その他に、医学的以外の理由でも、家族の立 会い、遠い親戚の方が来るのにもうちょっと待っててくださいということもあるかもし れないし。それから、柳田参考人が来られた時にもありましたが、受容の時間、ドナー カードを出して、OKだと言っても家族の葛藤というのは相当あると思うし、そのへん をどう許容するかですね。そこまで来てから判定を始めて6時間後にするのか。いろん な理由があると思います。そういうこともあるので、そういうところを勘案して、そこ はちゃんと後で書いておいてください、というようなことにした、ということでありま す。  引っかかるのは、「ただし、特定の者が遺産相続等により財産上の利益を得るなど… …」と、これは日本的なのかね。 ○町野委員  私はこの部分は削除すべきだと思います。今のようにちょっとギラつくとい うところはありますし、さらに、こう書きますと、2回目の脳死判定の時期が相続の開 始時期ということを認めているという具合に取られますから、それはやっぱり具合が悪 いだろうと思います。 ○黒川委員長  板倉委員は何か。ちょっと考えていただいて結構ですから。  その他に、他の委員からどうでしょうか。 ○大久保委員  家族の立会いに関わるとか、このへんのところは、それでよろしいんでし ょうけれども、こういうふうに具体的に2つの事例を挙げるのがいいのかどうか、ちょ っと疑問に思ったんですけれども。 ○黒川委員長  どういうふうに書いたらいいかというのは、また考えてください。どうし てこうなったか、というのもあるけど。 ○山谷委員  私がまず医学的理由以外で思いついたのが、妊婦が盛んに陣痛促進剤を打た れた時に、お医者様がゴルフに行きたいためだと理由が非常に多かったなんていう話、 嘘か本当か知りませんけど、だから、まずお医者様の都合かな、なんていうふうに思っ たんですけれども。だから、若干違和感を感じますね、この2つを並べて、さらに遺産 相続等により、というのは。ですから、これは非常に混乱が予想される部分なので、6 時間を超えてどのくらい、10時間でもいいのか、20時間、30時間、40時間…… 素人はどのくらいが常識の範囲と言えるのか、全くわからないので、ある程度のコンセ ンサスみたいなものはつくってほしいなと思うんですけれども。 ○黒川委員長  それがおそらく、オリジナル版の、上のほうだと思いますけれども。具体 的な事例が出てくると、あれはどうだ、これはどうだ、となっちゃうから、少し心配し てるんだと思うんですが。  この上のほうには、医学的な必要、というふうに書いてあるから、医学的な必要の他 に、もうひとつぐらい何かあるといいのかもしれないですね。医学的じゃない理由って いうのがあるわけでしょう。それをわざわざ書き込むと不自然になる。法律家の立場か らはどうでしょうか。だけど、そういう社会的なこと、それからやっぱり心の受容の問 題、それから家族の見送りの問題とか看取りの問題とか、いろんな問題があると思うん ですよ。そこは脳死の状況というのはどうしても急に起こることですから、昨日まで元 気だった家族がそうなんだけど、という話は常に出てくるわけで、そのへんの配慮、医 学的なことだけじゃないな、という気がします。 ○町野委員  症例のほうでは、たしか6時間以上となっていて、これは逆に限定している ということなんですね、ガイドラインで。そもそもこれが許されるかどうかもひとつ問 題だろうと思うんですけれども、このように例外をたくさん、ある範囲で認めざるを得 ないということだと、むしろこれはないほうがいいんじゃないか、もとへ戻って、6時 間以上ということで十分ではないだろうかという感じがいたします。 ○黒川委員長  そこでやっぱり検証というのが出てきて、6時間以上というと、以上だか らいくらでもいいじゃない、という議論もあったわけで、一応6時間としているのは、 じゃあどのくらいを過ぎるまでいいんですか、なんて言われていたわけですけれども。 きっちり6時間というわけにもいかないと思うんですよね。今度見たら6時間4分で、 ずいぶんカッチリしてるなと思ってたんだけど。 ○竹内委員  この6時間というのは、最初の基準をつくる時に、日本全国から症例を集め て、6時間という設定で問題ないということで決まった時間なんですね。ところが、現 場では必ずしも6時間をストップウォッチで見ていて、というようなことではないこと が多いので、6時間4分というのは大変タイミングがよかったなとは思うんです。実際 に、この医学的な理由というものの中には、現場の主治医の家族へのいろんな対応を含 めて、医学的な判断をして、じゃあ2度目をやろうか、というようなことになることも あるので、いま町野先生が言われたようなことでも、実際には医学的な理由としてカバ ーできる範囲で、そういうものを引っくるめてこそ、主治医の対応というのがあるんだ というふうに、私は現場の人間としては言いたいです。 ○黒川委員長  確かに竹内先生のおっしゃるように、医学的な判断というのは、患者さん の体の、メディカルな、フィジカルなことだけじゃなくて、家族とか、いろんな状況の 最終的な責任者としてのメディカル・ジャッジメントというのが必要とされている、と いうご意見で、それも大変もっともな理由だなと思いますけれども。一般的にはお医者 さんに対する信用がないから、何でも締めなくちゃいけないんだ、という人もいるかも しれないけど、それがここで全部公開されて議論されているから、これをメディカル・ ジャッジメント、医学的な根拠で判断したと。ご遺族の看取りを見るのもお医者さんの 役割だと思いますけど。  板倉先生、何かございますか。 ○板倉委員  医学的理由というものを、今おっしゃったようにかなり広い意味に捉えると いうことであれば、わざわざ書かなくてもいいように思いますけれども、それじゃまだ はっきりしない、やはり書いておくべきだと仮にしたとして、その場合でも、「ただし 」以下は削除、要らないように思います。 ○黒川委員長  そうですね。だから、「また、医学的理由以外にも……」とわざわざ足し たのは、これは医学的な範囲には入らないのか、という意見も当然あるわけですよね。 ○野本委員  私のほうはそこまではお願いしたりなんかはしない立場で、じっと時間を待 っているだけですけれども、6時間と決まっているからといって、ネットワークの対策 本部から、6時間過ぎましたよ、今からお始めください、と言えるような状況ではない 。様々な理由で、言えるような状況ではないということをご承知おきください。もしそ れが6時間と設定できるなら、設定して、ネットワークの対策本部でじっと時計を見て いて、6時間が来たら私が「始めてください」と言えば済むことですけど、そういうこ とは不可能ですから。あり得ないことですから。 ○黒川委員長  それがあってもおかしな話ですよね。 ○山本補佐  事務局のほうで書きぶりを引き取りたいと思いますけれども、ただ、今のガ イドラインでは、竹内先生がおっしゃったような社会医学的な要素が読みづらいといい ますか、純サイエンティフィック、医学的な要素しか読めないようなガイドラインにな っていますので、もうちょっと広い形で読める形で、もう少しさらっと書けるかどうか 、工夫します。趣旨は了解いたしました。 ○黒川委員長  わかりました。医学的というのをフィジカルなことに限定しすぎるという のは、日本の検査機械医療に傾き過ぎたところがあるのかなという反省はあるのかもし れない。またそういうふうにパブリックからも認識されてきてるのがまずいんじゃない かな、という気はしますね。基本的な概念になってきたような気もするので、それでは 事務局で工夫してみてください。  よろしいでしょうか。では、そのような方向で、また先生方には、こんなのはいかが なものか、ということはご相談させていただくことにしまして、またファクスで送るな り何なりしてください。  その他に、事務局から何かございますでしょうか。 ○朝浦室長  参考資料として、臓器提供施設のマニュアルと関係者会議の実施状況につい て、お配りしております。特に臓器提供手続に関する関係者会議につきましては、臓器 提供施設、それから都道府県の方、それから都道府県コーディネーターの方、あるいは 搬送担当の警察の関係、消防の関係の方をお招きしまして、7ブロックに分けて説明を 行いまして、いろんなご質問もお受けして、我々としても今後、そのご質問にひとつず つ回答する形で対応していきたいと思っております。以上でございます。 ○黒川委員長  どうもありがとうございました。その他に。 ○井形委員  見直しの期間が迫ってきつつあるんですけれども、実際の手続き、準備状態 とか、あるいは、これは法律の改正になるんでしょうか、それとも省令とかそういうも のだけで見直しということになるんでしょうか。ちょっと教えていただきたい。 ○朝浦室長  臓器移植法の附則の中に、法律施行後3年を目処として、実施状況を見て制 度全般の検討を行い、必要に応じて所要の措置を講じる、という記載がございます。こ れは必ずしも法律の見直しということを明記しているわけではありませんで、制度全般 の検討を行うということになっております。各関係団体、あるいは関係者からいるんな 要望書を私どももいただいておりますけれども、今後幅広く、いろんな方々のご意見を 踏まえて、3年ということは来年の10月がひとつの時期になってまいりますので、そ のへんを念頭に置いて、議論が行われていくというふうに考えております。 ○黒川委員長  予定の時間を過ぎましたけれども、大変貴重なご意見をいただきまして、 ありがとうございました。それでは今日の委員会を終わらせていただきます。どうもあ りがとうございました。                                   (了) 問い合わせ先  厚生省保健医療局エイズ疾病対策課臓器移植対策室    担 当  山本(内2361)、木村(内2364)    電 話 (代)03−3503−1711